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アーサーの秘密
20話 アールモンドの新たな奉者?
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TV映像にアールモンドの公開上級灯魔作業の様子が映し出されている
マキが画面に注目して言う
「むむむむ~っ?」
映像の中で灯魔台に雷が灯り会場内はしんとしている
マキが言う
「さあっ!?」
映像は退場して行くアールモンドの姿を追った後 灯魔口を映している マキが思わず画面に近寄ると 灯魔口からコロンと転がり出て 幻獣のハリネズミがキョロキョロと辺りを見渡す 映像内から拍手と歓声が上がる
マキが喜んで言う
「キター!今日は ハリネズミ―!かーわいー!」
マキが荷ほどきの終わっていない部屋で拍手をしている
屋根の上
シュイが視線を強めて言う
「今日も居るようだな?」
シュイが思う
(この6日間 日々異なる町で行われている アールモンドの公開灯魔作業… その場所に 何時も見える 同じウィザードの魔力…)
シュイが言う
「…考え過ぎか?」
シュイが思う
(俺の時とは 異なれば良いのだが… 気付いては居るのか?アールモンド?)
シュイが再び視線を向けた先には 強い光を放つ黄色の光と 同じ色で弱く光る光がある
シュイが杖を掲げ 風に消える
灯魔台神館 舞台袖
退場して来たアールモンドが振り返った先 アーサーが観覧席へ向いて礼をしてから やって来て言う
「ごめーん アーリィー お待たせ!」
アールモンドが言う
「別に構わねぇよ?…わざわざご苦労なこったな?」
アールモンドが背を向けて歩き出す アーサーが嬉しそうに言う
「俺にとっては 全然 ご苦労なんかじゃないよ?」
アーサーがアールモンドを追って歩いて言う
「アーリィーのファンの彼女たちのお陰で 俺は どんなに遠い灯魔台神館にだって 一瞬で連れて来てもらえるし?」
アールモンドが歩きながら考えて言う
「ああ そいつは確かにそうだな?」
アールモンドが思う
(とは言え その俺らは自分の管轄の街を外れた 灯魔台神館へ向かわされるンだ その場所が 分からなけりゃ それを指示した 奉者協会へ車を出させれば 良いだけの話だけどな?)
アールモンドが扉の前で気付き立ち止まる アーサーがアールモンドの前にある扉へ手を掛けて言う
「それに彼女たちは 遠い場所まで応援に来てくれる位 アーリィーの事が大好きなんだから 俺は彼女たちに いくらお礼を言っても足りない位だよ?」
アーサーが扉を開くと同時に 大量のフラッシュが降り注ぐ
アーサーがハッとして言う
「あっ!?そう言えば この灯魔神館って…」
記者やレポーターたちが言う
「アールモンド様!」「アールモンド様!本日の灯魔作業に対して どうか 一言!?」「幻獣も現れたと言う事は 本日も大成功と言う事で!?」「アーサー奉者っ!?いかがでしょうかっ!?本日の…!」
アーサーが気を取り直して言う
「はい!本日もアールモンド・レイモンド ウィザード様の灯魔作業は 大成功です!これも一重に灯魔台神館にて ご声援を下さる皆様と TVの前で応援をして下さる皆様 そして 神様のおかげです!本当にありがとうございます!」
アーサーが一礼する フラッシュが降り注ぐ
アールモンドがアーサーの様子を見て思う
(…本当に大したもんだぜ?)
アールモンドが帽子のつばを下げて表情を隠す レポーターがアーサーへ向けて言う
「本日もとても愛らしい幻獣が生まれましたが!あの幻獣たちは 事前に生まれる事が分かっているのでしょうかっ!?アールモンド ウィザード様の 灯魔作業を見守る方々も 日々どの様な幻獣が生まれるのかと…!?」
人々がアールモンドとアーサーへ群がる中 通路の陰で青年が視線を向けている
アーサーがレポーターたちへ言う
「どの様な幻獣が生まれて来るのかは 事前には分からないんじゃないかなぁ?ね?アーリィー?」
アールモンドが言う
「多少の事なら…」
アーサーがギクッとして レポーターたちへ背を向けて 小声で言う
「アーリィーっ ここは分からないって言っとかないとっ!?質問が長くなっちゃうしっ!今後の灯魔作業の予定発表の時にも ソニア副会長にも 御面倒を掛けちゃうからっ!?」
アールモンドが言う
「アイツらは灯魔台の属性と その土地の歴史が創るモンなンだ だったら そいつが分かりゃ 事前にだって ある程度は分かンだろ?」
フラッシュが降り注ぎ 記者たちが押し寄せて言う
「では アールモンド様っ!?お次の灯魔作業をされる場所に生まれる幻獣はっ!?」「各町や村の人々からは 是非とも 愛らしい幻獣を授けて欲しいとの声が!?」
アールモンドが言う
「悪ぃが 俺が言えるのは そンだけだ 後はアンタらで調べてくれよ?そこ 退いてくンねぇか?」
記者たちが詰めかけて言う
「そちらは!?事前にアーサー様にも分かると言う事で!?「もう少し詳しく!?」「アールモンド様っ!?」「アーサー様!?」
アーサーが困り苦笑で言う
「アールモンド様も そうと仰っているので それ以上 俺に聞かれても… あ、アーリィーにっ!アールモンド様へは マイクを向けないで下さい?お願いします~?」
青年がその様子を見て唇を噛んで小声で言う
「何だよっ もっとハッキリ断れよっ!?」
アールモンドが周囲の騒動に言う
「収まると思ったら 悪化しちまった …なンでだ?」
アーサーが苦笑して言う
「記者やレポーターの皆さんにとっては 次の幻獣と同じ位 アーリィーの発言は 記事になるからね?…あのっ すみません 今日の所は どうかこの位でっ?」
アールモンドが言う
「って事は 俺が何を言おうが 火に油って事かよ…?…黙るか」
アールモンドが顔を伏せる
アーサーが記者たちへ頭を下げつつ アールモンドを庇って先へ進み 通路へ入って扉を閉める
アーサーが一息吐いて言う
「ごめんね アーリィー?この灯魔神館って 控え口から屋外へ出る為の通路が 一度 一般通路を横切らないといけない構造になってるから 記者の人たちも それを見越して待ち構えていたみたい」
アールモンドが言う
「なるほど?それでいつもより観覧席のカメラの数が 少なかったって事かよ」
アーサーが言う
「あれぇ~?アーリィーってば?意外とそう言う所を見ているんだ~?」
アールモンドが言う
「別に… 意識している訳じゃねぇけど」
アーサーが微笑して言う
「またまた~?アーリィーってば 照れちゃって~?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「照れてねぇよっ 俺はただ…」
アールモンドが思う
(いつもと何か 違う事でもありゃ… ソイツが お前に危害を加えるモンでなければ 良い様にと…)
アーサーが疑問して言う
「アーリィーは ただ…?」
アールモンドがハッとして言う
「誰だっ そこに居ンのはっ!?」
アーサーがハッとして言う
「えっ!?」
アーサーが瞬時にアールモンドの前に立って身構える
青年が姿を現して言う
「流石 アールモンド・レイモンド ウィザード様!しっかり隠れていたのに 何で分かったんです?」
アーサーが呆気に取られて言う
「えっと… 君は?」
アーサーが思う
(服装は普通の服だから ウィザードや魔法使いでは無い… それに少し やんちゃそうな青年だけど 年齢的にも 出入り口に書かれた 関係者以外立ち入り禁止の表示が 読めなかったなんて言う事も無いだろうし?)
アールモンドが思う
(普通の人間か… てっきり この数日間の灯魔作業に 何時も居やがる あの魔力の持ち主でも現れると思ったんだが…)
アーサーが優しく言う
「ひょっとして 迷い込んじゃいました?ここは 関係者以外立ち入り禁止で 灯魔作業やそれらがある時には ウィザード様か奉者しか 入ってはいけないので そこの扉から…」
青年が一度アーサーを見てから アールモンドへ言う
「アールモンド様!俺を アールモンド様の奉者にして下さい!」
アーサーが驚いて言う
「…って!?えぇっ!?」
アールモンドが疑問して言う
「はぁ?」
青年が言う
「こんなナヨナヨした 頼りない奴より 俺の方が ずっと!アールモンド様の奉者に向いてます!」
アーサーが苦笑して言う
「ナヨナヨした 頼りない奴よりって?あれぇ?と言う事は?ひょっとして 君も奉者なの?」
青年が一歩踏み出して言う
「俺が仕えるべき ウィザード様は アールモンド様しかいません!」
アールモンドが思う
(チッ… 心配して損したぜ 魔力者じゃねぇんなら 何もビビる必要はねぇ)
アールモンドが息を吐いて言う
「消えな てめぇに 用はねぇよ?」
青年が驚き息を飲む
アーサーが言う
「アーリィー カッコイイぃ~!」
青年が視線を落とし唇を噛んで言う
「クッ…」
アールモンドが言う
「行くぞ アーサー」
アールモンドが歩き出す
アーサーが言う
「うん アーリィー!では そういう事で?ごめんね 君?アーリィーは…」
青年が感激して言う
「かっこいいーっ!」
青年の横を過ぎたアールモンドが衝撃を受けて言う
「あぁ?」
青年がアールモンドへ向き直って言う
「やっぱり 俺の仕えるウィザード様は 貴方しか居ない!お願いします!アールモンド様!俺は貴方の奉者にしてもらえるならっ 何でもしますっ!」
アールモンドが反応して言う
「何でも?」
青年が言う
「はいっ!何でも!何だって言って下さい!俺は 命懸けでやります!」
アールモンドが青年の目を見て言う
「へぇ?…なら そのてめぇの命を 俺に捧げろよ?」
青年が呆気に取られて言う
「え…?」
アールモンドが言う
「さっきお前 何でお前の存在に 俺が気付いたのか って聞いたよな?別に俺じゃなくたって 魔力者なら見えンだ お前も含めた 全ての生物の その命を支えている 魔力がな?どんな物体も すり抜けて見えンだよ?」
青年が言う
「命を支える… 魔力?」
アールモンドが言う
「お前が俺の奉者になりてぇンだったら その魔力を… お前の命を支える力を 全て俺に捧げてみせろ?」
青年が言葉を失う
アールモンドが言う
「出来ねぇなら 俺の奉者にはなれねぇよ?」
アールモンドが立ち去る アーサーが青年を見て苦笑する
アールモンドが言う
「さっさと来い アーサー!置いてくぞ!」
アーサーが青年の横を過ぎ 上機嫌に向かいながら言う
「またまた アーリィーってば~?あんな事 言って置いて?その俺を 置いて行く気なんてないくせに~?」
アールモンドが衝撃を受け 怒って言う
「本当に置いてってやろうかっ!?」
アールモンドとアーサーが風に消える
レイモンド邸 エントランス前
アールモンドとアーサーが風に現れると 2人の前にワインレッドの法衣が見える
アールモンドが言う
「あぁ?」
アーサーが言う
「シュイさん?」
シュイが言う
「無事に戻ったか」
アーサーが言う
「え?無事にって?」
シュイがアールモンドを見て言う
「接触したのだろう?この6日間 毎日見えていた魔力者と?」
アーサーが疑問して言う
「魔力者?」
アールモンドが言う
「ソイツじゃねぇ奴になら 会ったけどな?」
シュイが言う
「ソイツではない者と?」
アールモンドが言う
「おう… 良く分かんねぇけど 男の奉者だって奴だ」
シュイが言う
「ほう?」
シュイがアーサーを見る
アーサーが反応し苦笑して言う
「ナヨナヨした俺よりも 自分の方がアーリィーの奉者に合ってるから アーリィーの奉者にして欲しいって?熱烈なアタックを受けてたよね?アーリィー?」
アールモンドが言う
「ハッ 口先だけのガキに用はねぇよ?」
アーサーが言う
「アーリィー カッコイイィ~!」
シュイが言う
「では あの魔力者とは 会ってはいなかったと言う事か?言われてみれば 確かに お前たちが消えるのと ほぼ同時であったとも思える」
アールモンドが言う
「俺らが去った直ぐ後に 現れたって言いてぇのか?警戒はしてたが あの時周囲には見えなかったけどな?」
シュイが言う
「私の目には 一時的に消えていた様に見えた」
アールモンドが言う
「なら 姿だけじゃなく わざわざ結界張って 魔力まで隠してたって事か?だとしたら…」
アールモンドが思う
(狙いは…?何だ?)
シュイが言う
「しばらく警戒をしておいた方が良いだろう」
アールモンドが言う
「警戒…?ンな事しながら 上級灯魔作業なンか 出来っかよ?今日だって この後 茶の休憩を挟んで もう一か所予定してンだ …だよな アーサー?」
アーサーが言う
「そうだね アーリィー?けど 何か危険な事が起きそうなの?それなら…」
アーサーが視線を強めて言う
「アーリィーの灯魔作業の間は 俺が警戒をして アーリィーに危害を加える様な者が 現れた時には!」
シュイが言う
「貴方が灯魔作業を行っている間は 私が警戒をして アーサーを守ろう」
アーサーが衝撃を受けて言う
「そういう事ぉっ!?アーリィー!?もしかして 俺 また狙われちゃってるぅ!?」
アールモンドが言う
「そう言うこった 相手はウィザードだ 魔力者でもねぇ お前が警戒しても意味がねぇ …シュイ 悪ぃが 頼めっか?」
シュイが言う
「引き受ける」
アールモンド微笑して言う
「助かるぜ?」
アーサーが呆気に取られて居た状態から微笑む
――…
灯魔台神館 舞台袖
アールモンドとアーサーが居て アーサーが言う
「アーリィー?例の魔力者… ウィザードは ココにも居る?」
アールモンドが言う
「ああ… 居やがンぜ?」
アールモンドが壁越しに観覧席にある 1つの魔力に注目して目を細める
アーサーが言う
「そうなんだ?」
アーサーが考える
アールモンドが言う
「とは言え 心配すンな アーサー?こっちには ウィザードが2人も居ンだ 間違っても 今回は お前が食らう事はねぇよ?」
アーサーが反応し微笑して言う
「そうだね アーリィー!以前は それこそ 2回も俺を魔法で襲ったシュイさんが 今回は俺たちを警備してくれているのだものね?」
アールモンドが言う
「おう なんせ 4億飛んで1千5百何万の貸しがあンだからな?シュイの奴も それこそ今回は命懸けでお前を守るだろうぜ?」
アーサーが苦笑して言う
「それはそうかもしれないけれど 借金をダシに協力をさせているみたいな言い方は止めようよ アーリィー?俺 勝手かもしれないけど シュイさんはそんなつもりで協力してくれている訳では 無いと思うんだ …所で?そのシュイさんは?」
アールモンドが言う
「アイツも観覧席に居る 例の野郎もそこに居っから 既に目は付けてンだろう この状態で何かありゃ シュイの方が先に動く筈だ アイツはそれこそ短気の代名詞 火属性のウィザードだからな?」
観覧席
シュイがくしゃみをして言う
「ックシッ …ふむ?クシャミなど 久方振りだな?」
シュイが疑問してから 視線を向け 目を細めて言う
「これも やはり 奴の影響か?」
シュイが殺気を向ける 周囲に火が舞う
シュイの視線の先 対側の観覧席に居るウィザードがハッとして言う
「なっ!?何だろう?何だか…?強い意識が向けられているみたいな…?」
ウィザードの周囲に炎が舞う ウィザードが衝撃を受け慌てて言う
「わっ!?強い火の魔力っ!?これはやっぱり…っ あちらに居らっしゃる シュイ ウィザード様の?だとしたら?…どうしよう?僕 ここに居たらいけないと言う事かな?だけど…」
ウィザードが一般観覧者たちの中へ視線を向ける
舞台袖
館内アナウンスが流れる
『観覧席にて御待機中の皆さま 大変お待たせ致しました これより…』
アーサーが腕時計を見て言う
「予定時間丁度になったけど アーリィー どお?」
アールモンドが言う
「問題ねぇよ じゃ 行って来っけど お前もシュイだけに頼らねぇで 警戒しとけよ?ンで やべぇ時には 全力で俺を呼べ 分かったな アーサー?」
アーサーが一度呆気に取られてから 喜んで言う
「うんっ 分かった!ありがと アーリィー!」
アールモンドが視線を逸らして言う
「ば、馬鹿っ 勘違いすンなよ?お前に近付いて良いウィザードは 俺しか居ねぇからっ だから… 下手にシュイを頼ったりなンかは するなって事だからなっ?」
アーサーが緩み切った笑顔で言う
「えへへ~?俺が助けを求めて良いウィザードは アーリィーだけだもんね~?」
アールモンドが赤面を逸らして言う
「分かってりゃ良い… それと あんま ヘラヘラしてんな?下手すりゃ そのツラがカメラに映っちまうかもしれねぇだろ?」
アーサーがハッとして言う
「あっ そうだね?折角アーリィーが クールにキメてるんだから 俺も頑張るよ アーリィ~?」
アールモンドが呆れて言う
「期待出来ねぇな?」
アールモンドが灯魔台へ向かう
アーサーが言う
「アーリィー 行ってらっしゃーい!俺はここに居るからね~?」
アーサーが笑顔で送り出すが 間を置いて 真顔で警戒する
灯魔台
アールモンドが現れ観覧席から拍手が湧き上がる
アールモンドが視線を向けた先にシュイが居て シュイがその視線を受け 対側に居るウィザードへ向ける
アールモンドがシュイの視線を追って ウィザードを見付け 視線を強めて思う
(アイツかっ?)
観覧席
ウィザードが身を引いて言う
「どっ!?どうしよう?今日はアールモンド ウィザード様まで…っ?」
前方の観覧席に居る人々が言う
「あっ!アールモンド様 こっち見たっ!?」 「私と目が合ったわ!?」 「私よっ!?」 「私だったらっ!?」
ウィザードの周囲に 雷とプラズマがスパークする
ウィザードが言う
「…僕だ…っ」
ウィザードが身を引く
灯魔台
アールモンドが灯魔台の前に立って思う
(こっちっから挨拶を仕掛けてやったが 反応は無しか… ふぅん?気のせいかもしれねぇが シュイが言うほど 警戒する必要は ねぇ様な?…まぁ良い どの道 灯魔作業中は シュイに任せるしかねぇ)
アールモンドが横目に 舞台袖の奥に居るアーサーを見てから思う
(頼むぜ?シュイ!)
アールモンドの遥か後方 観覧席の後ろに居るシュイが頷く
アールモンドが気を入れ直して杖を突く 観覧席の拍手が止み しんと静まる
アールモンドの杖が浮き 魔力が集まって舞い 周囲の補助灯魔台に水が灯る 観覧者たちがざわつく
観覧席
ウィザードが反応して言う
「水の灯魔…」
ウィザードが微笑し思う
(わぁ… 心地良い… 何だろう?まるで 僕の魔力と 共鳴している様な…?)
ウィザードが目を閉じると 周囲に水の魔力が溢れる
灯魔台の周囲に水の魔力で創られた白鳥が現れ 翼を広げて優雅に飛び立つ 観覧者たちが歓声を上げる中を白鳥が舞い やがて灯魔台に降り立って甲高く鳴き 灯魔口へ飛び込む
一瞬の後 灯魔台に水が灯り 観覧者たちが拍手喝さいを上げる
アールモンドが軽く息を吐き アーサーへ顔を向ける 舞台袖の奥で アーサーが観覧者同様に拍手をして喜んでいる その様子に アールモンドが思わず安堵の表情を表すが 直ぐに気を引き締め 澄まして帰途を歩く
観覧席
シュイの視線の先で ウィザードが観覧者同様に拍手をしている
シュイが困惑して言う
「…要らん 警戒だったか?」
シュイが不満気にウィザードを見続けていると 観覧者たちがどよめく シュイが思わず灯魔台へ視線を向ける
灯魔口でキョロキョロしていた水で出来た白鳥の雛が 灯魔口の淵へ向かって歩いて行く
人々が息を飲み ファンたちが叫ぶ
「アーサー様ぁあーっ!」
ウィザードがハッとして言う
「あっ 危ないっ!」
灯魔口から落下した雛が アーサーの手にキャッチされる 観覧者たちが安堵して再び拍手喝さいが上がる アーサーが照れ笑いを浮かべる中 一瞬立ち止まっていたアールモンドが視線を戻して言う
「…別に落ちたって 平気なンだけどな?」
アールモンドがツンと澄まして帰途へ戻る
観覧席
青年がアールモンドの様子に感激して言う
「くぅっ!痺れるぜっ!あのクールっぷり!あれこそウィザード!たまんねぇ!…てぇのに?」
青年が視線を向けた先 アーサーが雛を灯魔口へ置いて軽く撫でてから 観覧席へ向かって礼をする 拍手がひと際大きくなる アーサーが顔を上げて微笑すると ファンたちが叫ぶ
「アーサー様ぁー!」 「アーサー様ー!素敵ー!」
アーサーがファンたちの声に手を振って答えつつ 帰途を歩き始める
青年が呆れて言う
「アールモンド様はクールにかっこいいって言うのに 奉者は あの緩みっぷり… ったく!頭に来るぜっ アールモンド様の奉者を 務めさせて頂いて置きながらっ んだよ?あの軟派っぷりはっ!?」
青年が席を立つ
灯魔台 舞台袖
アールモンドが待っている所へ アーサーが戻って来て言う
「ごめんね アーリィー お待たせ!」
アールモンドが言う
「特に問題は無かったみてぇだな?」
アールモンドが周囲を見渡す アーサーが言う
「そうだね?俺の方では 特にこれと言って 気になる事は無かったかな?」
アールモンドが言う
「そうか なら 結局奴は…?」
アールモンドが壁越しに光を見て言う
「…もう 居ねぇみてぇだな?」
アーサーが言う
「そうなんだ?それじゃ ウィザードではあるけど アーリィーの灯魔作業を見に来ていただけ って事なのかなぁ?」
アールモンドが言う
「…かもな?」
アールモンドが思う
(それならそうと シュイの奴もそれを言いに ここへ来るかと思ったが…?)
アールモンドが言う
「アイツ 何も言わずに 帰る気か?」
アーサーが言う
「アイツって?あ、シュイさん?そうなんだ?それじゃ 俺 お屋敷へ帰ったら お礼のメールを送って置くね?アーリィー?」
アールモンドが間を置いて言う
「…だな?それで良いか?」
アールモンドが思う
(何もなかったとは言え アイツのお陰で 俺は灯魔作業に集中出来たんだ だったら…)
アールモンドが言う
「一言 礼でも言ってやろうと思ったのによ?感が外れたからって プライドの高ぇ奴だな?」
アーサーが軽く笑って言う
「そうだね?でもひょっとすると アーリィーに いぢわるでも言われると 思ってるんじゃなあい?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「言わねぇよっ!?」
アーサーが笑う
「あははっ」
アールモンドが言う
「ったく… まぁ良い 帰ンぞ アーサー」
アーサーが言う
「うんっ それじゃ 帰ろう!アーリィー」
アールモンドが出口へ向かいながら言う
「今日もまたこの先で待ち構えてンのか?」
アーサーが言う
「今日は大丈夫!この灯魔台神館の関係者通路は 一般通路とは合流しない作りだから!」
アールモンドが言う
「そうか なら ソッチの問題もねぇな?」
アーサーがドアを開け通路の先を見るとハッとして言う
「うん そうだね アーリィー?…あれ?」
アールモンドとアーサーの視線の先に 青年が居て言う
「アールモンド様っ!」
アールモンドが言う
「またてめぇか?しつけぇ奴だな?」
青年言う
「何度でも来ます!アールモンド様の奉者にして頂けるまで!」
アールモンドが言う
「俺の奉者は アーサー1人で十分だ てめぇは要らねぇっ!」
青年が一瞬驚いた様子で俯く
アーサーが苦笑して言う
「アーリィー?仮にも彼は アーリィーにお仕えしたいと言っているのだから もう少し優しくしてあげても良いんじゃないかなぁ?」
アールモンドが言う
「うるせぇぞ アーサー 俺は 要らねぇモンは要らねぇンだ だったら中途半端な優しさだって…」
青年が感激して言う
「たまんねぇええっ!」
アールモンドが呆気に取られて言う
「はぁ…?」
青年が言う
「無駄も容赦も無い言葉!それでこそ 人と神の間と言わる ウィザード!やっぱ 俺がお仕えするウィザードは アールモンド様以外に居ない!」
アールモンドが素通りして言う
「言ってろ」
青年が呆気に取られる
アールモンドが青年の後方で振り返って言う
「置いてくぞ アーサー!」
アーサーが青年の前で言う
「ごめんね 君?折角アーリィーを お慕いしてくれて居るみたいだけど アーリィーの奉者には もう俺が就いている訳だし?それに君の熱意なら アーリィーでは無くとも きっと…」
青年が言う
「アールモンド様以外に居ない!俺は何としてもっ アールモンド様の奉者になる!その為だったら」
青年がアーサーの前で 両手を広げて言う
「アールモンド様の下へ行きたければ 俺を倒してから行けっ!」
アーサーが呆気に取られてから苦笑して言う
「え?えーっと?」
アールモンドが後方に聞こえた言葉に振り返って言う
「…っ!?おいっ?」
青年が拳を構えて言う
「男なら拳で来いって事だ 何時もヘラヘラしやがって !さっきだってそうだ!アールモンド様が クールに決めたのに いつもお前が現れて その場を台無しにしちまう!お前みたいに女々しい優男が アールモンド様の奉者を続けたら アールモンド様までそんな風に見られちまうんだよっ!」
アーサーが苦笑して言う
「そうかなぁ?俺は丁度良い位だと 思ってるのだけど?」
青年が言う
「うるせぇ!」
青年がアーサーの襟首を掴み ニヤリと笑って言う
「これからは 俺がアールモンド様の奉者になって もっと男らしくキメてやる!お前は無様に 観覧席から 女どもと一緒に 歓声でも上げてろよ?その方が ずっとお似合いだぜ!?」
アーサーが呆気に取られていた状態から 軽く息を吐いて言う
「俺 アーリィーの所へ 行かないと… だから その手を 放してもらえないかなぁ?」
青年が言う
「言っただろ?通りたかったら 俺を倒せってよ?ま 無理な話だけどな?」
アーサーが言う
「暴力を振るう事が 男らしさではないと思うのだけど?」
青年が言う
「男なら力で奪い取る時だってあんだよっ お前には 一生 出来ねぇだろうけどな!」
アーサーが言う
「そんな事は無いけれどね?けど アーリィーが…」
青年が怒って言う
「その呼び方止めろっ!分かんねぇのか?てめぇの そう言う所 アールモンド様は 大嫌いなんだよっ!!」
アーサーが一瞬呆気に取られてから笑って言う
「へ?あっははは!」
青年が一瞬驚いた後 怒って言う
「てめぇっ!!」
アールモンドが言う
「おい アーサー?」
アーサーが言う
「ごめーん アーリィー?けど 可笑しくって?」
青年が怒って言う
「この野郎っ!」
青年がアーサーを殴る
アールモンドが驚いて言う
「なっ!?おいっ てめぇ!良い加減に…っ!」
青年が感銘して言う
「あぁ…っ 良いっ!やっぱ アールモンド様こそ 俺の理想とする ウィザードっ!」
アールモンドが言う
「てめぇの理想なンざ 聞いてねぇンだよっ!それ以上 俺のっ」
アーサーが言う
「アーリィー… もう良いよ?」
アールモンドが言う
「良いってっ?」
アーサーが微笑して言う
「彼には きっと 言葉で言っても分からないのだと思う それに」
アーサーが青年を見る 青年がアーサーとアールモンドの間に立ってニヤリと笑む
アーサーが苦笑して言う
「彼を倒さないと 俺 アーリィーの所へ 行けないんでしょ?それは困っちゃうし?それに… 彼がこう言った解決を望むなら 俺 出来なくはないからね?」
アールモンドが反応して 視線を逸らす
「っ…」
青年が言う
「へぇ?腕に自信ありとでも?言っとくけどな? 俺は今まで コイツで負けた事はねぇんだぜ?」
青年が拳を見せる
アーサーが青年の身体を一瞥してから ヘラっと笑って言う
「それは 子供の喧嘩だったからなんじゃ ないのかなぁ~?」
青年が衝撃を受けて言う
「なっ!?このヤロウ!俺をガキ扱いしやがってっ!?後悔させてやるぜっ!食らえーっ!」
青年が殴り掛かる
アーサーが豹変して言う
【…てめぇがな?】
青年の頭が壁に叩き付けられる
青年が驚き目を見開いて言う
「があっ!?」
アーサーが片手で青年の頭を壁に押し付けたまま言う
【餓鬼が… 何時までも吠えやがって るせぇンだよ?】
青年の頭が圧迫される
青年がアーサーの腕を掴んで悲鳴を上げる
「あぁあああっ!…あっ!?」
青年が頭から床へ叩き付けられ悲鳴を上げる
「ぎゃぁあっ!?」
青年の頭から手が離れ 続いて足で踏み付けられる
青年が悲鳴を上げながらアーサーの足を退かそうとするが叶わず悲鳴を上げる
「あぁああぁああーっ!!」
アーサーが屈んで言う
【どうだよ 餓鬼?力任せに殴り掛かるだけの てめぇじゃ 俺には 勝てねぇぜ?さぁ 分かったら どうする?】
アーサーが足に力を加える 青年が悲鳴を上げる
「ぎゃああっ!」
アールモンドが言う
「アーサー 結界張ってるからって ぶっ壊したモンは治んねぇンだ …やり過ぎンなよ?」
アーサーが口角を上げて言う
【分かってるよ アーリィー?】
アールモンドが顔を逸らして言う
「その声で呼ぶな… 怖ぇから…」
青年が苦しんで言う
「うぅうっ」
アーサーが屈んで言う
【そういやお前 俺が女々しいとか 言ってたな?】
青年の頭から足が離される 青年が目を開けると 次の瞬間 目を見開いて叫ぶ
「うあぁああぁあああっ!!」
アーサーが青年の股間を踏みつけている
青年がもがき苦しむ様子に アーサーが悪笑んで言う
【その俺と 喧嘩してみた ご感想は如何だよ?あぁ?】
青年が悲鳴を上げる
「ぎゃぁあっ!!あぁああーーっ!?」
アールモンドが顔を逸らして言う
「うぅ…っ!見てらンねぇ…っ」
アールモンドが身震いする
ウィザードの声が聞こえる
「サクラ君!!」
アーサーとアールモンドが驚きハッとする 結界が壊れ ウィザードが姿を現す アーサーが呆気に取られたまま アールモンドへ視線を向ける
アールモンドが呆気に取られていた状態からハッとして言う
「そうかっ!?てめぇっ 奉者だっつったなっ!?俺の奉者になりてぇとか抜かしときながらっ!てめぇにはもう 仕えるウィザードが 居ンじゃねぇかよっ!?」
アーサーが言う
「えぇ!?って言う事はっ!?彼が コイツの…っ ウィザード様っ!?」
シュイの声が聞こえる
「アールモンド!アーサー!」
アールモンドとアーサーが衝撃を受ける
炎を纏った風が吹き 現れたシュイが アーサーの状態を見て衝撃を受けて言う
「ア、アーサー?何を…っ?」
アーサーがハッとして足を退かして言う
「あっ いや…っ これには その… 正当防衛と言う 理由があって… ね?"サクラ君"?」
ウィザードが青年の横で言う
「大丈夫っ!?サクラ君?ごめんね 僕は サクラ君に 近寄らない様にって 言われていたけど…っ でもっ サクラ君の悲鳴が 聞こえたものだから…っ」
シュイが床に倒れている青年の姿を見て言う
「正当防衛?何があったのかは知らないが… いくら何でも これはやり過ぎではないのか?格下を相手に 一方的過ぎるだろう?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「お前が言うなよっ!?」
アーサーが言う
「えっと?…ごめんね サクラ君?ちょっと やり過ぎちゃったかなぁ?けど 俺 君は このくらいを 望んでいるんじゃないかなぁ~って?」
サクラがうつ向いたまま言う
「…ご感想」
アーサーが言う
「え?なあに?」
サクラが言う
「は… 如何だよ?…って」
アーサーが衝撃を受け苦笑して言う
「あぁ… あれはね?その…?」
サクラが喜びに満ちた顔を上げて言う
「さいっこぉーですっ!!!」
アーサーとアールモンドとシュイが衝撃を受け ウィザードが苦笑する
サクラがアーサーの手を握り 感激の眼差しで言う
「アーサー様っ!どうか俺を 下僕にして下さいっ!お願いしますっ!!」
アーサーが呆気に取られて言う
「え?…えぇっと?今度は俺?だって君は?俺を倒して アーリィーの奉者に なりたかったんじゃ?」
サクラが言う
「アールモンド様は 最高のウィザード様ですがっ 俺のご主人様は アーサー様ですっ!!」
アーサーが困惑して言う
「ご主人様って?君は 奉者で… つまり ウィザードに仕える人であって 俺を ご主人様と言うのは違うんじゃ?」
サクラが言う
「奉者になったのはっ ウィザードが圧倒的に強くてっ!恐ろしい存在だと思っていたからですっ!けど 実際は全然 そんなウィザードは居なくってっ!?物理的な力は弱いしっ!?強ぇ魔法は人には与えられねぇって言うしっ!?」
アールモンドが横目にシュイを見る シュイが衝撃を受けて言う
「わ、私とてっ 通常の人間へはっ!?」
ウィザードが気付いて言う
「あっ サクラ君…っ 頭から 血が出ちゃってるから 僕が…」
サクラが振り向いて言う
「うるせぇ!てめぇは黙ってろっ 俺は今 アーサー様と 話してんだよっ!」
ウィザードが困って言う
「ご、ごめんね サクラ君 でも…っ 血が…っ それに とっても痛そう…っ」
アールモンドが視線を逸らして言う
「俺は頭よか 下の方が痛そうだと 思うけどな…?」
アーサーが苦笑して言う
「血が滴っちゃうと 会館のお掃除の方にも悪いから 取り敢えず 止めてもらったら良いんじゃなあい?それと 俺の手を放してもらえると?」
シュイが衝撃を受けて言う
「会館の掃除の心配をするよりも…」
アールモンドが言う
「アーサーに取っちゃ 手を放してもらう事が 最優先だろうぜ?」
シュイが衝撃を受けて言う
「そ、そうなのか…?」
アーサーが手を振り解こうと 微笑のまま手を振るうが サクラが離さない
アーサーがキレて言う
【離せ ゴラァ!】
アーサーがサクラを蹴り飛ばす アールモンドとシュイが衝撃を受け
シュイが言う
「アーサー・スペイサー… 分からない男だ…」
蹴り飛ばされたサクラの下へ ウィザードが慌てて向かって言う
「サ、サクラ君?大丈夫っ!?流石に 今のは痛かったんじゃ…っ」
アーサーがアールモンドの横へやって来て微笑して言う
「お待たせ アーリィー 遅くなっちゃって ごめんね?」
アールモンドが言う
「やりすぎだろ アーサー?」
アーサーが言う
「ちゃんと力加減はしているよ アーリィー?」
アールモンドが言う
「だからって…」
サクラが嬉しそうに言う
「くぅう…っ たまんねぇっ!!」
アールモンドが言う
「…ああ 大丈夫みてぇだ つーか おい?そこのウィザード?」
ウィザードが衝撃を受けて言う
「は、はいっ!アールモンド・レイモンド ウィザード様っ!」
アールモンドが言う
「ウィザードから ”ウィザード様”だなンて 呼ばれたかねぇよ?」
ウィザードが言う
「す、すみませんっ!アールモンド様… つい…っ」
アールモンドが言う
「なら 先ずは名を聞こうじゃねぇか?この無礼な奉者は てめぇの奉者なンだろ?」
ウィザードが言う
「はいっ 申し遅れましたっ 僕はプリム・ワークナー 彼は 僕の奉者で サクラ・ランハートと申します!この度は 僕の奉者が ご迷惑をお掛けしてしまいましてっ!本当に 申し訳御座いませんでしたっ!」
プリムが頭を下げる サクラが言う
「…止めろよ プリン」
プリムが衝撃を受けて言う
「プリンじゃなくて プリムだよ サクラ君…っ それより サクラ君も 謝ってっ?」
サクラが沈黙する
プリムが言う
「サクラ君…っ!」
サクラが言う
「俺は別に… 自分が悪ぃ事したとは 思ってねぇし?」
アールモンドとアーサーが呆気に取られ アールモンドが言う
「重症だな こりゃぁ?」
サクラが言う
「それに…」
サクラがアーサーを見る アーサーが一瞬呆気に取られるが 視線を強める
サクラが喜んで言う
「アーサー様に ご褒美を頂けたんだ~っ!」
アールモンドとアーサーが衝撃を受け アールモンドが疑問して言う
「ご褒美って…?壁に叩き付けられて 踏み潰されていた だけだろ?オマケに あンな所まで…っ」
アールモンドが震える
サクラが言う
「たまんなかったっす!最高でしたぁ!あんな快感を感じたのは 今までで 初めてですっ!!」
アーサーが言う
「君… もしかして?」
プリムが言い辛そうに言う
「そうなんです サクラ君は その… マゾヒズムの様で…」
アールモンドが疑問して言う
「おい アーサー?マゾヒズムって なンだ?」
アーサーが衝撃を受けて言う
「えっ!?あぁ そうだね?アーリィーは そういう事 知らないよね?でも ウィザード様は 良いんじゃないかな?そういう事は知らなくても…?」
シュイが言う
「痛みや恐怖で 快楽を感じる 変態の事だ」
アーサーが慌てて言う
「シュイさーんっ!?」
アールモンドが言う
「痛みや恐怖で快楽を…?…ンなの おかしいンじゃねぇのか?」
シュイが言う
「だから変態だと言っている」
アールモンドが言う
「へぇ?…なら アーサー?」
アーサーが言う
「なあに?アーリィー?」
アールモンドが言う
「お前も… ソレなのか?」
アーサーが衝撃を受け慌てて言う
「違うよっ アーリィー!?どうして そうなっちゃったのっ!?」
アールモンドが言う
「いや… だって 従者だし?」
アーサーが慌てて言う
「俺の父さんを含めた 過去の従者の皆に謝ってっ!?」
シュイが怒って言う
「俺の母への侮辱は 許さんぞっ アールモンド・レイモンドっ!!」
シュイの周囲に炎が舞う
アールモンドが疑問して言う
「良く分かんねぇけど… 違うんなら悪かった」
アーサーがホッと息を吐く シュイの炎が収まる
アールモンドが言う
「で?」
サクラが跪きアーサーを見上げて言う
「アーサー様っ!どうかこれからも 容赦なく お願いします!その為でしたら 俺は何でもっ!?」
アーサーがキレて言う
【しつけぇンだよっ!】
アーサーがサクラの顔を踏みつける
サクラが踏みつけられたまま言う
「ありがとうございますっ!」
シュイが衝撃を受ける アールモンドが呆れる
マキが画面に注目して言う
「むむむむ~っ?」
映像の中で灯魔台に雷が灯り会場内はしんとしている
マキが言う
「さあっ!?」
映像は退場して行くアールモンドの姿を追った後 灯魔口を映している マキが思わず画面に近寄ると 灯魔口からコロンと転がり出て 幻獣のハリネズミがキョロキョロと辺りを見渡す 映像内から拍手と歓声が上がる
マキが喜んで言う
「キター!今日は ハリネズミ―!かーわいー!」
マキが荷ほどきの終わっていない部屋で拍手をしている
屋根の上
シュイが視線を強めて言う
「今日も居るようだな?」
シュイが思う
(この6日間 日々異なる町で行われている アールモンドの公開灯魔作業… その場所に 何時も見える 同じウィザードの魔力…)
シュイが言う
「…考え過ぎか?」
シュイが思う
(俺の時とは 異なれば良いのだが… 気付いては居るのか?アールモンド?)
シュイが再び視線を向けた先には 強い光を放つ黄色の光と 同じ色で弱く光る光がある
シュイが杖を掲げ 風に消える
灯魔台神館 舞台袖
退場して来たアールモンドが振り返った先 アーサーが観覧席へ向いて礼をしてから やって来て言う
「ごめーん アーリィー お待たせ!」
アールモンドが言う
「別に構わねぇよ?…わざわざご苦労なこったな?」
アールモンドが背を向けて歩き出す アーサーが嬉しそうに言う
「俺にとっては 全然 ご苦労なんかじゃないよ?」
アーサーがアールモンドを追って歩いて言う
「アーリィーのファンの彼女たちのお陰で 俺は どんなに遠い灯魔台神館にだって 一瞬で連れて来てもらえるし?」
アールモンドが歩きながら考えて言う
「ああ そいつは確かにそうだな?」
アールモンドが思う
(とは言え その俺らは自分の管轄の街を外れた 灯魔台神館へ向かわされるンだ その場所が 分からなけりゃ それを指示した 奉者協会へ車を出させれば 良いだけの話だけどな?)
アールモンドが扉の前で気付き立ち止まる アーサーがアールモンドの前にある扉へ手を掛けて言う
「それに彼女たちは 遠い場所まで応援に来てくれる位 アーリィーの事が大好きなんだから 俺は彼女たちに いくらお礼を言っても足りない位だよ?」
アーサーが扉を開くと同時に 大量のフラッシュが降り注ぐ
アーサーがハッとして言う
「あっ!?そう言えば この灯魔神館って…」
記者やレポーターたちが言う
「アールモンド様!」「アールモンド様!本日の灯魔作業に対して どうか 一言!?」「幻獣も現れたと言う事は 本日も大成功と言う事で!?」「アーサー奉者っ!?いかがでしょうかっ!?本日の…!」
アーサーが気を取り直して言う
「はい!本日もアールモンド・レイモンド ウィザード様の灯魔作業は 大成功です!これも一重に灯魔台神館にて ご声援を下さる皆様と TVの前で応援をして下さる皆様 そして 神様のおかげです!本当にありがとうございます!」
アーサーが一礼する フラッシュが降り注ぐ
アールモンドがアーサーの様子を見て思う
(…本当に大したもんだぜ?)
アールモンドが帽子のつばを下げて表情を隠す レポーターがアーサーへ向けて言う
「本日もとても愛らしい幻獣が生まれましたが!あの幻獣たちは 事前に生まれる事が分かっているのでしょうかっ!?アールモンド ウィザード様の 灯魔作業を見守る方々も 日々どの様な幻獣が生まれるのかと…!?」
人々がアールモンドとアーサーへ群がる中 通路の陰で青年が視線を向けている
アーサーがレポーターたちへ言う
「どの様な幻獣が生まれて来るのかは 事前には分からないんじゃないかなぁ?ね?アーリィー?」
アールモンドが言う
「多少の事なら…」
アーサーがギクッとして レポーターたちへ背を向けて 小声で言う
「アーリィーっ ここは分からないって言っとかないとっ!?質問が長くなっちゃうしっ!今後の灯魔作業の予定発表の時にも ソニア副会長にも 御面倒を掛けちゃうからっ!?」
アールモンドが言う
「アイツらは灯魔台の属性と その土地の歴史が創るモンなンだ だったら そいつが分かりゃ 事前にだって ある程度は分かンだろ?」
フラッシュが降り注ぎ 記者たちが押し寄せて言う
「では アールモンド様っ!?お次の灯魔作業をされる場所に生まれる幻獣はっ!?」「各町や村の人々からは 是非とも 愛らしい幻獣を授けて欲しいとの声が!?」
アールモンドが言う
「悪ぃが 俺が言えるのは そンだけだ 後はアンタらで調べてくれよ?そこ 退いてくンねぇか?」
記者たちが詰めかけて言う
「そちらは!?事前にアーサー様にも分かると言う事で!?「もう少し詳しく!?」「アールモンド様っ!?」「アーサー様!?」
アーサーが困り苦笑で言う
「アールモンド様も そうと仰っているので それ以上 俺に聞かれても… あ、アーリィーにっ!アールモンド様へは マイクを向けないで下さい?お願いします~?」
青年がその様子を見て唇を噛んで小声で言う
「何だよっ もっとハッキリ断れよっ!?」
アールモンドが周囲の騒動に言う
「収まると思ったら 悪化しちまった …なンでだ?」
アーサーが苦笑して言う
「記者やレポーターの皆さんにとっては 次の幻獣と同じ位 アーリィーの発言は 記事になるからね?…あのっ すみません 今日の所は どうかこの位でっ?」
アールモンドが言う
「って事は 俺が何を言おうが 火に油って事かよ…?…黙るか」
アールモンドが顔を伏せる
アーサーが記者たちへ頭を下げつつ アールモンドを庇って先へ進み 通路へ入って扉を閉める
アーサーが一息吐いて言う
「ごめんね アーリィー?この灯魔神館って 控え口から屋外へ出る為の通路が 一度 一般通路を横切らないといけない構造になってるから 記者の人たちも それを見越して待ち構えていたみたい」
アールモンドが言う
「なるほど?それでいつもより観覧席のカメラの数が 少なかったって事かよ」
アーサーが言う
「あれぇ~?アーリィーってば?意外とそう言う所を見ているんだ~?」
アールモンドが言う
「別に… 意識している訳じゃねぇけど」
アーサーが微笑して言う
「またまた~?アーリィーってば 照れちゃって~?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「照れてねぇよっ 俺はただ…」
アールモンドが思う
(いつもと何か 違う事でもありゃ… ソイツが お前に危害を加えるモンでなければ 良い様にと…)
アーサーが疑問して言う
「アーリィーは ただ…?」
アールモンドがハッとして言う
「誰だっ そこに居ンのはっ!?」
アーサーがハッとして言う
「えっ!?」
アーサーが瞬時にアールモンドの前に立って身構える
青年が姿を現して言う
「流石 アールモンド・レイモンド ウィザード様!しっかり隠れていたのに 何で分かったんです?」
アーサーが呆気に取られて言う
「えっと… 君は?」
アーサーが思う
(服装は普通の服だから ウィザードや魔法使いでは無い… それに少し やんちゃそうな青年だけど 年齢的にも 出入り口に書かれた 関係者以外立ち入り禁止の表示が 読めなかったなんて言う事も無いだろうし?)
アールモンドが思う
(普通の人間か… てっきり この数日間の灯魔作業に 何時も居やがる あの魔力の持ち主でも現れると思ったんだが…)
アーサーが優しく言う
「ひょっとして 迷い込んじゃいました?ここは 関係者以外立ち入り禁止で 灯魔作業やそれらがある時には ウィザード様か奉者しか 入ってはいけないので そこの扉から…」
青年が一度アーサーを見てから アールモンドへ言う
「アールモンド様!俺を アールモンド様の奉者にして下さい!」
アーサーが驚いて言う
「…って!?えぇっ!?」
アールモンドが疑問して言う
「はぁ?」
青年が言う
「こんなナヨナヨした 頼りない奴より 俺の方が ずっと!アールモンド様の奉者に向いてます!」
アーサーが苦笑して言う
「ナヨナヨした 頼りない奴よりって?あれぇ?と言う事は?ひょっとして 君も奉者なの?」
青年が一歩踏み出して言う
「俺が仕えるべき ウィザード様は アールモンド様しかいません!」
アールモンドが思う
(チッ… 心配して損したぜ 魔力者じゃねぇんなら 何もビビる必要はねぇ)
アールモンドが息を吐いて言う
「消えな てめぇに 用はねぇよ?」
青年が驚き息を飲む
アーサーが言う
「アーリィー カッコイイぃ~!」
青年が視線を落とし唇を噛んで言う
「クッ…」
アールモンドが言う
「行くぞ アーサー」
アールモンドが歩き出す
アーサーが言う
「うん アーリィー!では そういう事で?ごめんね 君?アーリィーは…」
青年が感激して言う
「かっこいいーっ!」
青年の横を過ぎたアールモンドが衝撃を受けて言う
「あぁ?」
青年がアールモンドへ向き直って言う
「やっぱり 俺の仕えるウィザード様は 貴方しか居ない!お願いします!アールモンド様!俺は貴方の奉者にしてもらえるならっ 何でもしますっ!」
アールモンドが反応して言う
「何でも?」
青年が言う
「はいっ!何でも!何だって言って下さい!俺は 命懸けでやります!」
アールモンドが青年の目を見て言う
「へぇ?…なら そのてめぇの命を 俺に捧げろよ?」
青年が呆気に取られて言う
「え…?」
アールモンドが言う
「さっきお前 何でお前の存在に 俺が気付いたのか って聞いたよな?別に俺じゃなくたって 魔力者なら見えンだ お前も含めた 全ての生物の その命を支えている 魔力がな?どんな物体も すり抜けて見えンだよ?」
青年が言う
「命を支える… 魔力?」
アールモンドが言う
「お前が俺の奉者になりてぇンだったら その魔力を… お前の命を支える力を 全て俺に捧げてみせろ?」
青年が言葉を失う
アールモンドが言う
「出来ねぇなら 俺の奉者にはなれねぇよ?」
アールモンドが立ち去る アーサーが青年を見て苦笑する
アールモンドが言う
「さっさと来い アーサー!置いてくぞ!」
アーサーが青年の横を過ぎ 上機嫌に向かいながら言う
「またまた アーリィーってば~?あんな事 言って置いて?その俺を 置いて行く気なんてないくせに~?」
アールモンドが衝撃を受け 怒って言う
「本当に置いてってやろうかっ!?」
アールモンドとアーサーが風に消える
レイモンド邸 エントランス前
アールモンドとアーサーが風に現れると 2人の前にワインレッドの法衣が見える
アールモンドが言う
「あぁ?」
アーサーが言う
「シュイさん?」
シュイが言う
「無事に戻ったか」
アーサーが言う
「え?無事にって?」
シュイがアールモンドを見て言う
「接触したのだろう?この6日間 毎日見えていた魔力者と?」
アーサーが疑問して言う
「魔力者?」
アールモンドが言う
「ソイツじゃねぇ奴になら 会ったけどな?」
シュイが言う
「ソイツではない者と?」
アールモンドが言う
「おう… 良く分かんねぇけど 男の奉者だって奴だ」
シュイが言う
「ほう?」
シュイがアーサーを見る
アーサーが反応し苦笑して言う
「ナヨナヨした俺よりも 自分の方がアーリィーの奉者に合ってるから アーリィーの奉者にして欲しいって?熱烈なアタックを受けてたよね?アーリィー?」
アールモンドが言う
「ハッ 口先だけのガキに用はねぇよ?」
アーサーが言う
「アーリィー カッコイイィ~!」
シュイが言う
「では あの魔力者とは 会ってはいなかったと言う事か?言われてみれば 確かに お前たちが消えるのと ほぼ同時であったとも思える」
アールモンドが言う
「俺らが去った直ぐ後に 現れたって言いてぇのか?警戒はしてたが あの時周囲には見えなかったけどな?」
シュイが言う
「私の目には 一時的に消えていた様に見えた」
アールモンドが言う
「なら 姿だけじゃなく わざわざ結界張って 魔力まで隠してたって事か?だとしたら…」
アールモンドが思う
(狙いは…?何だ?)
シュイが言う
「しばらく警戒をしておいた方が良いだろう」
アールモンドが言う
「警戒…?ンな事しながら 上級灯魔作業なンか 出来っかよ?今日だって この後 茶の休憩を挟んで もう一か所予定してンだ …だよな アーサー?」
アーサーが言う
「そうだね アーリィー?けど 何か危険な事が起きそうなの?それなら…」
アーサーが視線を強めて言う
「アーリィーの灯魔作業の間は 俺が警戒をして アーリィーに危害を加える様な者が 現れた時には!」
シュイが言う
「貴方が灯魔作業を行っている間は 私が警戒をして アーサーを守ろう」
アーサーが衝撃を受けて言う
「そういう事ぉっ!?アーリィー!?もしかして 俺 また狙われちゃってるぅ!?」
アールモンドが言う
「そう言うこった 相手はウィザードだ 魔力者でもねぇ お前が警戒しても意味がねぇ …シュイ 悪ぃが 頼めっか?」
シュイが言う
「引き受ける」
アールモンド微笑して言う
「助かるぜ?」
アーサーが呆気に取られて居た状態から微笑む
――…
灯魔台神館 舞台袖
アールモンドとアーサーが居て アーサーが言う
「アーリィー?例の魔力者… ウィザードは ココにも居る?」
アールモンドが言う
「ああ… 居やがンぜ?」
アールモンドが壁越しに観覧席にある 1つの魔力に注目して目を細める
アーサーが言う
「そうなんだ?」
アーサーが考える
アールモンドが言う
「とは言え 心配すンな アーサー?こっちには ウィザードが2人も居ンだ 間違っても 今回は お前が食らう事はねぇよ?」
アーサーが反応し微笑して言う
「そうだね アーリィー!以前は それこそ 2回も俺を魔法で襲ったシュイさんが 今回は俺たちを警備してくれているのだものね?」
アールモンドが言う
「おう なんせ 4億飛んで1千5百何万の貸しがあンだからな?シュイの奴も それこそ今回は命懸けでお前を守るだろうぜ?」
アーサーが苦笑して言う
「それはそうかもしれないけれど 借金をダシに協力をさせているみたいな言い方は止めようよ アーリィー?俺 勝手かもしれないけど シュイさんはそんなつもりで協力してくれている訳では 無いと思うんだ …所で?そのシュイさんは?」
アールモンドが言う
「アイツも観覧席に居る 例の野郎もそこに居っから 既に目は付けてンだろう この状態で何かありゃ シュイの方が先に動く筈だ アイツはそれこそ短気の代名詞 火属性のウィザードだからな?」
観覧席
シュイがくしゃみをして言う
「ックシッ …ふむ?クシャミなど 久方振りだな?」
シュイが疑問してから 視線を向け 目を細めて言う
「これも やはり 奴の影響か?」
シュイが殺気を向ける 周囲に火が舞う
シュイの視線の先 対側の観覧席に居るウィザードがハッとして言う
「なっ!?何だろう?何だか…?強い意識が向けられているみたいな…?」
ウィザードの周囲に炎が舞う ウィザードが衝撃を受け慌てて言う
「わっ!?強い火の魔力っ!?これはやっぱり…っ あちらに居らっしゃる シュイ ウィザード様の?だとしたら?…どうしよう?僕 ここに居たらいけないと言う事かな?だけど…」
ウィザードが一般観覧者たちの中へ視線を向ける
舞台袖
館内アナウンスが流れる
『観覧席にて御待機中の皆さま 大変お待たせ致しました これより…』
アーサーが腕時計を見て言う
「予定時間丁度になったけど アーリィー どお?」
アールモンドが言う
「問題ねぇよ じゃ 行って来っけど お前もシュイだけに頼らねぇで 警戒しとけよ?ンで やべぇ時には 全力で俺を呼べ 分かったな アーサー?」
アーサーが一度呆気に取られてから 喜んで言う
「うんっ 分かった!ありがと アーリィー!」
アールモンドが視線を逸らして言う
「ば、馬鹿っ 勘違いすンなよ?お前に近付いて良いウィザードは 俺しか居ねぇからっ だから… 下手にシュイを頼ったりなンかは するなって事だからなっ?」
アーサーが緩み切った笑顔で言う
「えへへ~?俺が助けを求めて良いウィザードは アーリィーだけだもんね~?」
アールモンドが赤面を逸らして言う
「分かってりゃ良い… それと あんま ヘラヘラしてんな?下手すりゃ そのツラがカメラに映っちまうかもしれねぇだろ?」
アーサーがハッとして言う
「あっ そうだね?折角アーリィーが クールにキメてるんだから 俺も頑張るよ アーリィ~?」
アールモンドが呆れて言う
「期待出来ねぇな?」
アールモンドが灯魔台へ向かう
アーサーが言う
「アーリィー 行ってらっしゃーい!俺はここに居るからね~?」
アーサーが笑顔で送り出すが 間を置いて 真顔で警戒する
灯魔台
アールモンドが現れ観覧席から拍手が湧き上がる
アールモンドが視線を向けた先にシュイが居て シュイがその視線を受け 対側に居るウィザードへ向ける
アールモンドがシュイの視線を追って ウィザードを見付け 視線を強めて思う
(アイツかっ?)
観覧席
ウィザードが身を引いて言う
「どっ!?どうしよう?今日はアールモンド ウィザード様まで…っ?」
前方の観覧席に居る人々が言う
「あっ!アールモンド様 こっち見たっ!?」 「私と目が合ったわ!?」 「私よっ!?」 「私だったらっ!?」
ウィザードの周囲に 雷とプラズマがスパークする
ウィザードが言う
「…僕だ…っ」
ウィザードが身を引く
灯魔台
アールモンドが灯魔台の前に立って思う
(こっちっから挨拶を仕掛けてやったが 反応は無しか… ふぅん?気のせいかもしれねぇが シュイが言うほど 警戒する必要は ねぇ様な?…まぁ良い どの道 灯魔作業中は シュイに任せるしかねぇ)
アールモンドが横目に 舞台袖の奥に居るアーサーを見てから思う
(頼むぜ?シュイ!)
アールモンドの遥か後方 観覧席の後ろに居るシュイが頷く
アールモンドが気を入れ直して杖を突く 観覧席の拍手が止み しんと静まる
アールモンドの杖が浮き 魔力が集まって舞い 周囲の補助灯魔台に水が灯る 観覧者たちがざわつく
観覧席
ウィザードが反応して言う
「水の灯魔…」
ウィザードが微笑し思う
(わぁ… 心地良い… 何だろう?まるで 僕の魔力と 共鳴している様な…?)
ウィザードが目を閉じると 周囲に水の魔力が溢れる
灯魔台の周囲に水の魔力で創られた白鳥が現れ 翼を広げて優雅に飛び立つ 観覧者たちが歓声を上げる中を白鳥が舞い やがて灯魔台に降り立って甲高く鳴き 灯魔口へ飛び込む
一瞬の後 灯魔台に水が灯り 観覧者たちが拍手喝さいを上げる
アールモンドが軽く息を吐き アーサーへ顔を向ける 舞台袖の奥で アーサーが観覧者同様に拍手をして喜んでいる その様子に アールモンドが思わず安堵の表情を表すが 直ぐに気を引き締め 澄まして帰途を歩く
観覧席
シュイの視線の先で ウィザードが観覧者同様に拍手をしている
シュイが困惑して言う
「…要らん 警戒だったか?」
シュイが不満気にウィザードを見続けていると 観覧者たちがどよめく シュイが思わず灯魔台へ視線を向ける
灯魔口でキョロキョロしていた水で出来た白鳥の雛が 灯魔口の淵へ向かって歩いて行く
人々が息を飲み ファンたちが叫ぶ
「アーサー様ぁあーっ!」
ウィザードがハッとして言う
「あっ 危ないっ!」
灯魔口から落下した雛が アーサーの手にキャッチされる 観覧者たちが安堵して再び拍手喝さいが上がる アーサーが照れ笑いを浮かべる中 一瞬立ち止まっていたアールモンドが視線を戻して言う
「…別に落ちたって 平気なンだけどな?」
アールモンドがツンと澄まして帰途へ戻る
観覧席
青年がアールモンドの様子に感激して言う
「くぅっ!痺れるぜっ!あのクールっぷり!あれこそウィザード!たまんねぇ!…てぇのに?」
青年が視線を向けた先 アーサーが雛を灯魔口へ置いて軽く撫でてから 観覧席へ向かって礼をする 拍手がひと際大きくなる アーサーが顔を上げて微笑すると ファンたちが叫ぶ
「アーサー様ぁー!」 「アーサー様ー!素敵ー!」
アーサーがファンたちの声に手を振って答えつつ 帰途を歩き始める
青年が呆れて言う
「アールモンド様はクールにかっこいいって言うのに 奉者は あの緩みっぷり… ったく!頭に来るぜっ アールモンド様の奉者を 務めさせて頂いて置きながらっ んだよ?あの軟派っぷりはっ!?」
青年が席を立つ
灯魔台 舞台袖
アールモンドが待っている所へ アーサーが戻って来て言う
「ごめんね アーリィー お待たせ!」
アールモンドが言う
「特に問題は無かったみてぇだな?」
アールモンドが周囲を見渡す アーサーが言う
「そうだね?俺の方では 特にこれと言って 気になる事は無かったかな?」
アールモンドが言う
「そうか なら 結局奴は…?」
アールモンドが壁越しに光を見て言う
「…もう 居ねぇみてぇだな?」
アーサーが言う
「そうなんだ?それじゃ ウィザードではあるけど アーリィーの灯魔作業を見に来ていただけ って事なのかなぁ?」
アールモンドが言う
「…かもな?」
アールモンドが思う
(それならそうと シュイの奴もそれを言いに ここへ来るかと思ったが…?)
アールモンドが言う
「アイツ 何も言わずに 帰る気か?」
アーサーが言う
「アイツって?あ、シュイさん?そうなんだ?それじゃ 俺 お屋敷へ帰ったら お礼のメールを送って置くね?アーリィー?」
アールモンドが間を置いて言う
「…だな?それで良いか?」
アールモンドが思う
(何もなかったとは言え アイツのお陰で 俺は灯魔作業に集中出来たんだ だったら…)
アールモンドが言う
「一言 礼でも言ってやろうと思ったのによ?感が外れたからって プライドの高ぇ奴だな?」
アーサーが軽く笑って言う
「そうだね?でもひょっとすると アーリィーに いぢわるでも言われると 思ってるんじゃなあい?」
アールモンドが衝撃を受けて言う
「言わねぇよっ!?」
アーサーが笑う
「あははっ」
アールモンドが言う
「ったく… まぁ良い 帰ンぞ アーサー」
アーサーが言う
「うんっ それじゃ 帰ろう!アーリィー」
アールモンドが出口へ向かいながら言う
「今日もまたこの先で待ち構えてンのか?」
アーサーが言う
「今日は大丈夫!この灯魔台神館の関係者通路は 一般通路とは合流しない作りだから!」
アールモンドが言う
「そうか なら ソッチの問題もねぇな?」
アーサーがドアを開け通路の先を見るとハッとして言う
「うん そうだね アーリィー?…あれ?」
アールモンドとアーサーの視線の先に 青年が居て言う
「アールモンド様っ!」
アールモンドが言う
「またてめぇか?しつけぇ奴だな?」
青年言う
「何度でも来ます!アールモンド様の奉者にして頂けるまで!」
アールモンドが言う
「俺の奉者は アーサー1人で十分だ てめぇは要らねぇっ!」
青年が一瞬驚いた様子で俯く
アーサーが苦笑して言う
「アーリィー?仮にも彼は アーリィーにお仕えしたいと言っているのだから もう少し優しくしてあげても良いんじゃないかなぁ?」
アールモンドが言う
「うるせぇぞ アーサー 俺は 要らねぇモンは要らねぇンだ だったら中途半端な優しさだって…」
青年が感激して言う
「たまんねぇええっ!」
アールモンドが呆気に取られて言う
「はぁ…?」
青年が言う
「無駄も容赦も無い言葉!それでこそ 人と神の間と言わる ウィザード!やっぱ 俺がお仕えするウィザードは アールモンド様以外に居ない!」
アールモンドが素通りして言う
「言ってろ」
青年が呆気に取られる
アールモンドが青年の後方で振り返って言う
「置いてくぞ アーサー!」
アーサーが青年の前で言う
「ごめんね 君?折角アーリィーを お慕いしてくれて居るみたいだけど アーリィーの奉者には もう俺が就いている訳だし?それに君の熱意なら アーリィーでは無くとも きっと…」
青年が言う
「アールモンド様以外に居ない!俺は何としてもっ アールモンド様の奉者になる!その為だったら」
青年がアーサーの前で 両手を広げて言う
「アールモンド様の下へ行きたければ 俺を倒してから行けっ!」
アーサーが呆気に取られてから苦笑して言う
「え?えーっと?」
アールモンドが後方に聞こえた言葉に振り返って言う
「…っ!?おいっ?」
青年が拳を構えて言う
「男なら拳で来いって事だ 何時もヘラヘラしやがって !さっきだってそうだ!アールモンド様が クールに決めたのに いつもお前が現れて その場を台無しにしちまう!お前みたいに女々しい優男が アールモンド様の奉者を続けたら アールモンド様までそんな風に見られちまうんだよっ!」
アーサーが苦笑して言う
「そうかなぁ?俺は丁度良い位だと 思ってるのだけど?」
青年が言う
「うるせぇ!」
青年がアーサーの襟首を掴み ニヤリと笑って言う
「これからは 俺がアールモンド様の奉者になって もっと男らしくキメてやる!お前は無様に 観覧席から 女どもと一緒に 歓声でも上げてろよ?その方が ずっとお似合いだぜ!?」
アーサーが呆気に取られていた状態から 軽く息を吐いて言う
「俺 アーリィーの所へ 行かないと… だから その手を 放してもらえないかなぁ?」
青年が言う
「言っただろ?通りたかったら 俺を倒せってよ?ま 無理な話だけどな?」
アーサーが言う
「暴力を振るう事が 男らしさではないと思うのだけど?」
青年が言う
「男なら力で奪い取る時だってあんだよっ お前には 一生 出来ねぇだろうけどな!」
アーサーが言う
「そんな事は無いけれどね?けど アーリィーが…」
青年が怒って言う
「その呼び方止めろっ!分かんねぇのか?てめぇの そう言う所 アールモンド様は 大嫌いなんだよっ!!」
アーサーが一瞬呆気に取られてから笑って言う
「へ?あっははは!」
青年が一瞬驚いた後 怒って言う
「てめぇっ!!」
アールモンドが言う
「おい アーサー?」
アーサーが言う
「ごめーん アーリィー?けど 可笑しくって?」
青年が怒って言う
「この野郎っ!」
青年がアーサーを殴る
アールモンドが驚いて言う
「なっ!?おいっ てめぇ!良い加減に…っ!」
青年が感銘して言う
「あぁ…っ 良いっ!やっぱ アールモンド様こそ 俺の理想とする ウィザードっ!」
アールモンドが言う
「てめぇの理想なンざ 聞いてねぇンだよっ!それ以上 俺のっ」
アーサーが言う
「アーリィー… もう良いよ?」
アールモンドが言う
「良いってっ?」
アーサーが微笑して言う
「彼には きっと 言葉で言っても分からないのだと思う それに」
アーサーが青年を見る 青年がアーサーとアールモンドの間に立ってニヤリと笑む
アーサーが苦笑して言う
「彼を倒さないと 俺 アーリィーの所へ 行けないんでしょ?それは困っちゃうし?それに… 彼がこう言った解決を望むなら 俺 出来なくはないからね?」
アールモンドが反応して 視線を逸らす
「っ…」
青年が言う
「へぇ?腕に自信ありとでも?言っとくけどな? 俺は今まで コイツで負けた事はねぇんだぜ?」
青年が拳を見せる
アーサーが青年の身体を一瞥してから ヘラっと笑って言う
「それは 子供の喧嘩だったからなんじゃ ないのかなぁ~?」
青年が衝撃を受けて言う
「なっ!?このヤロウ!俺をガキ扱いしやがってっ!?後悔させてやるぜっ!食らえーっ!」
青年が殴り掛かる
アーサーが豹変して言う
【…てめぇがな?】
青年の頭が壁に叩き付けられる
青年が驚き目を見開いて言う
「があっ!?」
アーサーが片手で青年の頭を壁に押し付けたまま言う
【餓鬼が… 何時までも吠えやがって るせぇンだよ?】
青年の頭が圧迫される
青年がアーサーの腕を掴んで悲鳴を上げる
「あぁあああっ!…あっ!?」
青年が頭から床へ叩き付けられ悲鳴を上げる
「ぎゃぁあっ!?」
青年の頭から手が離れ 続いて足で踏み付けられる
青年が悲鳴を上げながらアーサーの足を退かそうとするが叶わず悲鳴を上げる
「あぁああぁああーっ!!」
アーサーが屈んで言う
【どうだよ 餓鬼?力任せに殴り掛かるだけの てめぇじゃ 俺には 勝てねぇぜ?さぁ 分かったら どうする?】
アーサーが足に力を加える 青年が悲鳴を上げる
「ぎゃああっ!」
アールモンドが言う
「アーサー 結界張ってるからって ぶっ壊したモンは治んねぇンだ …やり過ぎンなよ?」
アーサーが口角を上げて言う
【分かってるよ アーリィー?】
アールモンドが顔を逸らして言う
「その声で呼ぶな… 怖ぇから…」
青年が苦しんで言う
「うぅうっ」
アーサーが屈んで言う
【そういやお前 俺が女々しいとか 言ってたな?】
青年の頭から足が離される 青年が目を開けると 次の瞬間 目を見開いて叫ぶ
「うあぁああぁあああっ!!」
アーサーが青年の股間を踏みつけている
青年がもがき苦しむ様子に アーサーが悪笑んで言う
【その俺と 喧嘩してみた ご感想は如何だよ?あぁ?】
青年が悲鳴を上げる
「ぎゃぁあっ!!あぁああーーっ!?」
アールモンドが顔を逸らして言う
「うぅ…っ!見てらンねぇ…っ」
アールモンドが身震いする
ウィザードの声が聞こえる
「サクラ君!!」
アーサーとアールモンドが驚きハッとする 結界が壊れ ウィザードが姿を現す アーサーが呆気に取られたまま アールモンドへ視線を向ける
アールモンドが呆気に取られていた状態からハッとして言う
「そうかっ!?てめぇっ 奉者だっつったなっ!?俺の奉者になりてぇとか抜かしときながらっ!てめぇにはもう 仕えるウィザードが 居ンじゃねぇかよっ!?」
アーサーが言う
「えぇ!?って言う事はっ!?彼が コイツの…っ ウィザード様っ!?」
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アーサーがハッとして足を退かして言う
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アールモンドが衝撃を受けて言う
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アーサーが言う
「えっと?…ごめんね サクラ君?ちょっと やり過ぎちゃったかなぁ?けど 俺 君は このくらいを 望んでいるんじゃないかなぁ~って?」
サクラがうつ向いたまま言う
「…ご感想」
アーサーが言う
「え?なあに?」
サクラが言う
「は… 如何だよ?…って」
アーサーが衝撃を受け苦笑して言う
「あぁ… あれはね?その…?」
サクラが喜びに満ちた顔を上げて言う
「さいっこぉーですっ!!!」
アーサーとアールモンドとシュイが衝撃を受け ウィザードが苦笑する
サクラがアーサーの手を握り 感激の眼差しで言う
「アーサー様っ!どうか俺を 下僕にして下さいっ!お願いしますっ!!」
アーサーが呆気に取られて言う
「え?…えぇっと?今度は俺?だって君は?俺を倒して アーリィーの奉者に なりたかったんじゃ?」
サクラが言う
「アールモンド様は 最高のウィザード様ですがっ 俺のご主人様は アーサー様ですっ!!」
アーサーが困惑して言う
「ご主人様って?君は 奉者で… つまり ウィザードに仕える人であって 俺を ご主人様と言うのは違うんじゃ?」
サクラが言う
「奉者になったのはっ ウィザードが圧倒的に強くてっ!恐ろしい存在だと思っていたからですっ!けど 実際は全然 そんなウィザードは居なくってっ!?物理的な力は弱いしっ!?強ぇ魔法は人には与えられねぇって言うしっ!?」
アールモンドが横目にシュイを見る シュイが衝撃を受けて言う
「わ、私とてっ 通常の人間へはっ!?」
ウィザードが気付いて言う
「あっ サクラ君…っ 頭から 血が出ちゃってるから 僕が…」
サクラが振り向いて言う
「うるせぇ!てめぇは黙ってろっ 俺は今 アーサー様と 話してんだよっ!」
ウィザードが困って言う
「ご、ごめんね サクラ君 でも…っ 血が…っ それに とっても痛そう…っ」
アールモンドが視線を逸らして言う
「俺は頭よか 下の方が痛そうだと 思うけどな…?」
アーサーが苦笑して言う
「血が滴っちゃうと 会館のお掃除の方にも悪いから 取り敢えず 止めてもらったら良いんじゃなあい?それと 俺の手を放してもらえると?」
シュイが衝撃を受けて言う
「会館の掃除の心配をするよりも…」
アールモンドが言う
「アーサーに取っちゃ 手を放してもらう事が 最優先だろうぜ?」
シュイが衝撃を受けて言う
「そ、そうなのか…?」
アーサーが手を振り解こうと 微笑のまま手を振るうが サクラが離さない
アーサーがキレて言う
【離せ ゴラァ!】
アーサーがサクラを蹴り飛ばす アールモンドとシュイが衝撃を受け
シュイが言う
「アーサー・スペイサー… 分からない男だ…」
蹴り飛ばされたサクラの下へ ウィザードが慌てて向かって言う
「サ、サクラ君?大丈夫っ!?流石に 今のは痛かったんじゃ…っ」
アーサーがアールモンドの横へやって来て微笑して言う
「お待たせ アーリィー 遅くなっちゃって ごめんね?」
アールモンドが言う
「やりすぎだろ アーサー?」
アーサーが言う
「ちゃんと力加減はしているよ アーリィー?」
アールモンドが言う
「だからって…」
サクラが嬉しそうに言う
「くぅう…っ たまんねぇっ!!」
アールモンドが言う
「…ああ 大丈夫みてぇだ つーか おい?そこのウィザード?」
ウィザードが衝撃を受けて言う
「は、はいっ!アールモンド・レイモンド ウィザード様っ!」
アールモンドが言う
「ウィザードから ”ウィザード様”だなンて 呼ばれたかねぇよ?」
ウィザードが言う
「す、すみませんっ!アールモンド様… つい…っ」
アールモンドが言う
「なら 先ずは名を聞こうじゃねぇか?この無礼な奉者は てめぇの奉者なンだろ?」
ウィザードが言う
「はいっ 申し遅れましたっ 僕はプリム・ワークナー 彼は 僕の奉者で サクラ・ランハートと申します!この度は 僕の奉者が ご迷惑をお掛けしてしまいましてっ!本当に 申し訳御座いませんでしたっ!」
プリムが頭を下げる サクラが言う
「…止めろよ プリン」
プリムが衝撃を受けて言う
「プリンじゃなくて プリムだよ サクラ君…っ それより サクラ君も 謝ってっ?」
サクラが沈黙する
プリムが言う
「サクラ君…っ!」
サクラが言う
「俺は別に… 自分が悪ぃ事したとは 思ってねぇし?」
アールモンドとアーサーが呆気に取られ アールモンドが言う
「重症だな こりゃぁ?」
サクラが言う
「それに…」
サクラがアーサーを見る アーサーが一瞬呆気に取られるが 視線を強める
サクラが喜んで言う
「アーサー様に ご褒美を頂けたんだ~っ!」
アールモンドとアーサーが衝撃を受け アールモンドが疑問して言う
「ご褒美って…?壁に叩き付けられて 踏み潰されていた だけだろ?オマケに あンな所まで…っ」
アールモンドが震える
サクラが言う
「たまんなかったっす!最高でしたぁ!あんな快感を感じたのは 今までで 初めてですっ!!」
アーサーが言う
「君… もしかして?」
プリムが言い辛そうに言う
「そうなんです サクラ君は その… マゾヒズムの様で…」
アールモンドが疑問して言う
「おい アーサー?マゾヒズムって なンだ?」
アーサーが衝撃を受けて言う
「えっ!?あぁ そうだね?アーリィーは そういう事 知らないよね?でも ウィザード様は 良いんじゃないかな?そういう事は知らなくても…?」
シュイが言う
「痛みや恐怖で 快楽を感じる 変態の事だ」
アーサーが慌てて言う
「シュイさーんっ!?」
アールモンドが言う
「痛みや恐怖で快楽を…?…ンなの おかしいンじゃねぇのか?」
シュイが言う
「だから変態だと言っている」
アールモンドが言う
「へぇ?…なら アーサー?」
アーサーが言う
「なあに?アーリィー?」
アールモンドが言う
「お前も… ソレなのか?」
アーサーが衝撃を受け慌てて言う
「違うよっ アーリィー!?どうして そうなっちゃったのっ!?」
アールモンドが言う
「いや… だって 従者だし?」
アーサーが慌てて言う
「俺の父さんを含めた 過去の従者の皆に謝ってっ!?」
シュイが怒って言う
「俺の母への侮辱は 許さんぞっ アールモンド・レイモンドっ!!」
シュイの周囲に炎が舞う
アールモンドが疑問して言う
「良く分かんねぇけど… 違うんなら悪かった」
アーサーがホッと息を吐く シュイの炎が収まる
アールモンドが言う
「で?」
サクラが跪きアーサーを見上げて言う
「アーサー様っ!どうかこれからも 容赦なく お願いします!その為でしたら 俺は何でもっ!?」
アーサーがキレて言う
【しつけぇンだよっ!】
アーサーがサクラの顔を踏みつける
サクラが踏みつけられたまま言う
「ありがとうございますっ!」
シュイが衝撃を受ける アールモンドが呆れる
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