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火属性のウィザード

15話 友達として親友として

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マリアが路地の入口を見る  マリアの視線の先  多くの人が路地の前を通り過ぎている

レイが言う
「大丈夫だよ  マリア  ここは結界が張ってあるから  普通の人間には  俺たちの 声や姿も見えないんだ」

マリアが呆気に取られて言う
「え?そ、そうだったのですか?…あ、でも そうですよね?もし…」

マリアが思う
(私たちの姿や声が  見えたり聞こえたりしていたとしたら…)

マリアがアーサーの近くへ行って 様子を見て思う
(アーサーさんの悲鳴に  私以外の人だって…?)

マリアが言う
「では?私だけが  アーサーさんの悲鳴を聞いて  ここへ来られたと言うのは…?」

レイが言う
「ああ!マリアには  俺の残留魔力があるから  普通の人間とは違って  結界の影響を受けづらいんだ  おまけに  俺の魔力を込めた お守りもあるからな!」

マリアがペンダントを握って言う
「このお守りのお陰で…?」

レイが言う
「そいつは マリアの知り合いなんだろ  マリア?だから  お互いの波長が合って  マリアが持っている  俺の魔力を使えたんだよ!魔力はただあっても  使おうと思わないと使えないからさ?」

マリアが言う
「私が?ウィザードさまの魔力を使えた?」

レイが言う
「ああ!マリアが会いたいと思って  魔力を使ったお陰で  マリアはここに来られたんだ  だからそいつの命を助けたのは  マリアだぞ!マリア!」

マリアが微笑して言う
「…そうですか 有難う御座います  ウィザードさま  でも、私はここへ来る事は出来ても  何も出来ませんでしたから  やっぱり  ウィザードさまと…  アールモンドさんのお陰です」

マリアがアーサーの息を見るとホッとして言う
「呼吸もさっきより しっかりしているので  大丈夫かもしれません  …本当に  良かった…」

マリアがホッと胸を撫で下ろす

レイが微笑すると言う
「そっか それで?マリアは  どうするんだ?マリア?」

マリアが呆気に取られて言う
「え?私は?…あっ!そうでした!?私っ  お仕事の途中でっ!」

マリアが携帯を取り出すと時間を確認して言う
「時間は間に合うけど…」

マリアが携帯へ向けていた視線を アーサーへ向け続け 続いて アールモンドを見てからレイへ言う
「あのっ  ウィザードさま?アーサーさんは… まだ難しいとしても  アールモンドさんが 後どの位で目を覚ますのか?…なんて言うのは  分かったりしますか?私  まだ今日のお仕事があるので  それほど長くは…」

レイが言う
「うーん?そっちのアーモンドの従者は  アーモンドが目を覚まして  魔力供給をしないと  何時まで待っても起きないよ!それで  そのアーモンドの方は…  そうだな?普通なら そんなに掛からないから  アーモンドでも  夕方くらいには 目を覚ますんじゃないか?」

マリアが衝撃を受けて言う
「え!?夕方っ!?」

マリアが思う
(とても間に合わないっ  何とかしなくっちゃっ!?でも?何とかと言っても…っ  どうしたら?)

レイが言う
「だから  マリアはもう  お仕事に戻った方が良いんじゃないか?それで  こいつらの事は…」

マリアがハッと表情を明るめて思う
(2人の事は!私に代わって  ウィザードさまが!?)

レイが言う
「放っとけばさ?」

マリアが衝撃を受けて言う
「介抱してはくれないんですねっ!?」

マリアが思う
(それじゃ  どうしよう…っ?)

レイが言う
「介抱なんかしなくても  夕方くらいには目を覚ますって!それより  マリアは何処へ行くんだ?会社に行くなら  送ってやるし  他の場所だって構わないぞ?マリアが行くって言うなら  何処へだって 俺が送ってやるからな!マリア!」

マリアが顔を上げると思う
(…ならっ!)

マリアがレイへ向いて言う
「では ウィザードさまっ!お願いします!」

レイが言う
「ああ!マリア!何処へ行くんだ!?」


マリアの家  レイの部屋

ダブルベッドにアーサーとアーモンドが寝かされていて  毛布が掛けられる

レイが言う
「マリアの言う通り  こいつらを  このお家の  俺がいつも寝てる ベットの上まで運んでやったけど?」

マリアが毛布を整えて言う
「はい  有難う御座います  ウィザードさま」

レイが言う
「それで?この後は どうするんだ?マリア?」

マリアが言う
「この後は…  私はお仕事に戻りますので  ウィザードさまも…」

レイが言う
「俺は今日の魔力供給のお仕事は  午前中に終わらせたから  この後は  いつもよりちょっと遅い  昼寝をする予定だったけど?マリア?俺のベッドを使ってる  こいつらはどうしたら良いんだ?」

マリアが気付いて言う
「あ…  そうですね?ウィザードさまの お昼寝の場所は…」

マリアが思う
(それじゃ  しょうがないよね?)

マリアが言う
「では  ウィザードさま 宜しければ  2階の私の部屋にあるベッドを使って下さい  このベッドとは違って  シングルベッドなので  ちょっと狭いかもしれませんが?」

レイが言う
「そっか  俺は  このベッドじゃなくて  マリアのベッドを使って良いんだな?マリアのベッドなら!俺は気持ちよく眠れそうだよ!もしかしたら  うっかり寝過ぎちゃうかもしれないな?あはは!」

マリアが衝撃を受けて思う
(それはどういう意味ですかっ!?)

マリアが困惑している

レイが言う
「今ならまだマリアの残留魔力が残ってるだろうし  マリアと愛の証をしているみたいで  俺も  嬉しいよ!マリア!」

マリアが言う
「そ、そうですか…っ  それはその…っ」

マリアが思う
(ち、違うからっ  落ち着いてっ!?ウィザードさまの言う  "愛の証"は  ただ ”一緒に寝る” と言うだけでっ  決して  …そ、そう言う意味では…)

マリアが視線を逸らすと  視界にアーサーとアールモンドの姿が見える  2人は仰向けだが  互いに向き合っている

マリアが頬を染めて思う
(…って?そう言えば  何も考えずに  2人をここへって…  ウィザードさまへ お願いしてしまったけど)

マリアが言う
「あ、あの…?ウィザードさま?折角  アーサーさんと アールモンドさんを  ここへ送って頂いたのですが?」

レイが疑問して言う
「うん?それがどうかしたのか?マリア?」

マリアが言う
「あの…  やっぱり…っ  お2人は  その…」

マリアが思う
(そうよね?これが  ウィザードさまと 私とか?若しくは…  私とマキだったり?せめて 女の子同士だったりするのなら  良いのかもしれないけれど…?)

マリアが苦笑して言う
「だ、男性同士ですので?」

マリアが思う
(やっぱり  別々のベッドにしてあげた方が?…あぁ  でも そうすると?ウィザードさまの お昼寝の場所が…?)

レイが言う
「『2人は男性同士』で?それが どうかしたのか?マリア?」

マリアがハッとして言う
「あ、はいっ  ですから  その… お2人は  別々のベッドにしてあげた方が 良いと思うのですが…」

マリアが思う
(そのベッドが足りないから  どうしようって…)

レイが言う
「別々のベッドに?何でだ?」

マリアが言う
「何でって…  ですから  その…  男性のお2人を  同じベッドに寝かせると言うのは… あまり良くは 無いのではないかと?」

マリアが思う
(これでまた  何でだ?って聞かれると  私も答えに困っちゃうんだけど…)

レイが言う
「そんな事無いよ!マリア!こいつらはこのまま  同じベッドで  愛の証をさせて置いた方が良いに決まってる!」

マリアが衝撃を受けて言う
「そ、それはそのっ!?違うと言う事は 分かっているのですがねっ!?ですからっ!?いえっ  …そうではなくて!?」

マリアが思う
(ああっ  どうしようっ!?ウィザードさまの 言いたい事は  分かるんだけどっ!?)

レイが言う
「違くなんかないぞ  マリア?こいつらは このまま  愛の証をさせて置けば  一応  魔力は保たれるからな?むしろ  今こいつらを離しちゃうと  さっきアーモンドが  アーモンドの従者へ供給してやった魔力も消えて  アーモンドが目を覚ました時じゃ  もう間に合わないかもしれない」

マリアがハッとする

レイが言う
「けど  マリアが  こいつらに 愛の証をさせちゃ 駄目だって言うなら  俺が!」

マリアが慌てて言う
「ででっ でしたらっ!そのままでっ!!お二人には このまま!このベッドで  愛の証を させて上げて下さい!ウィザードさま!」

レイが言う
「そっか!分かったよ  マリア!」

マリアがホッとして言う
「は、はい…」


マリアの職場

時計が16時を告げている  マリアがPCへの入力を終えて  軽く息を吐いてから気付いて思う
(あ…  もう  こんな時間?)

マリアが窓の外を見て思う
(アールモンドさん…  そろそろ目を覚ましたかな?それで  アーサーさんへ  魔力の供給を…)

マリアが気付いて思う
(…ん?あら?昼間は気が動転していて  ウィザードさまに  そうと言われて  納得してしまっていたけど  よく考えたら…?…どう言う事なんだろう?人に…?)

マリアが独り言を言う
「魔力供給って…?」

課長の声が響く
「マリア君っ!!」

マリアが衝撃を受けて言う
「は、はいっ!課長っ!?」


マリアの家

マリアがレイの部屋のドアをノックして言う
「あの…  失礼します?」

マリアがドアを開けると  その先で  アールモンドが  アーサーへ魔力供給をしている

マリアがホッとして思う
(先に  ウィザードさまから  聞いてはいたけど…)

マリアが微笑して言う
「アールモンドさん…」

マリアが思う
(良かった…  アールモンドさんだけでも  目を覚ましてくれて  本当に…)

アールモンドが言う
「世話になったな  恩に着るぜ  マリア奉者」

マリアがハッとすると慌てて言う
「あっ!い、いえっ!?魔力供給の  お邪魔をしてしまってっ!?」

マリアが思う
(確認するだけのつもりがっ  つい声を…っ!)

アールモンドが言う
「迷惑ついでに  暫くこの部屋を貸してもらえねぇか?無理にとは言わねぇ…」

マリアが言う
「あ…  はい  それは構いませんが…  その…っ  アーサーさんは?容態の方は?」

アールモンドが一度奥歯を噛み締め 感情を押し殺す  マリアが気付いて心配する

アールモンドが気を落ち着かせて言う
「容態は…  …命の心配とかってぇのは  もうねぇから  今すぐ連れて戻るって事も 出来なくはねぇンだけど…  俺が馬鹿やっちまったから  俺の魔力が足りねぇ」

マリアが言う
「魔力が足りない?…それは?」

マリアが思う
(それは  つまり…?魔力供給が続けられない  …って事?それとも  アーサーさんを連れての  移動魔法が出来ないって事かな?)

アールモンドが言う
「ここにはアークの結界が張ってあっから  …少なくとも  この結界の中では  攻撃魔法は使えねぇ  だから」

マリアがハッとして思う
(攻撃魔法が…?それじゃっ!?)

マリアがアールモンドを見る

アールモンドが視線を強めて言う
「…あの野郎が  何のつもりかは知らねぇがっ  向こうが その気だってぇンなら…っ!」

アールモンドの周囲に雷が迸る

マリアがハッとして言う
「あ、あのっ!あれはきっと…っ  何かの間違えでっ!?ですから…っ」

アールモンドが言う
「…間違え?」

マリアが言う
「はいっ  ですからっ!?」

マリアが思う
(これでもし?アールモンドさんと  シュイさんが…っ  戦うだなんて事に なってしまったら…っ!?)

アールモンドが叫ぶ
「ざけんじゃねぇっ!!」

マリアが驚いて息を飲む
「っ!!」

アールモンドが言う
「間違えで?…どんな間違えで  アーサーをこんな目に合わせるっ?非魔力者のコイツにっ!ウィザードの攻撃魔法を食らわせやがったっ  許せねぇ…っ」

アールモンドの周囲の雷が上昇してプラズマ粒子が弾け始める  マリアが呆気に取られ怯えると  マリアの後ろにレイが立つ  マリアがハッとして振り返ると レイが微笑する

マリアが安心して アールモンドを見る  アールモンドの周囲からプラズマが消える

アールモンドが言う
「…悪ぃ  アンタへ当たるつもりは無かった  アンタは…  アーサーの命の恩人だ  …感謝してる」

マリアが一度アーサーを見てから アールモンドへ言う
「あ…っ いえっ  ごめんなさいっ  私も…  その…っ」

マリアが思う
(そうだ… アールモンドさんは  自分の奉者である  アーサーさんを傷付けられて…っ  とても冷静でなんて  居られる筈が無いのに…っ)

マリアが言う
「私の言い方が悪かったと思います  でもっ  その…っ  これで  アールモンドさんが  もし…っ」

マリアが思う
(もし?アールモンドさんが アーサーさんの  復讐を…っ!?って そんな事になってしまったら…)

アールモンドが言う
「言っとくが  俺は  仕返しをしようだとか  考えている訳じゃねぇよ?」

マリアが呆気に取られて言う
「え…?」

マリアが思う
(そうだったの?復讐を…  仕返しは考えていない?…って?それじゃ  さっきのは?)

アールモンドが言う
「出来るもんなら  今すぐにでも 飛んでって  野郎を ぶっ殺してやりてぇ 所だが」

マリアが衝撃を受けて思う
(やっぱり  それは思ってるのねっ!?)

アールモンドが言う
「ソイツをやっちまったら  どうなるのかが分からねぇ程  俺は馬鹿でもガキでもねぇよ」

マリアが言葉を飲んで思う
(…そうだ  アールモンドさんの気持ちは  私にだって分からない訳じゃない  でも  アールモンドさんは  私と違って  もっと冷静で居られている…)

マリアがアーサーを見てから思う
(自分の大切な人が…  こんな状態でも…)

マリアがアールモンドを見る

アールモンドが言う
「…魔法は放つ事よか  抑える事の方が辛ぇんだ  今の俺だと  野郎からアーサーを守ってやれる自信がねぇ…  だから  こいつが目ぇ覚ますまで  ここを貸して貰いてぇンだ  …駄目か?」

マリアが顔を上げて言う
「いえっ!大丈夫です!大丈夫ですよ!?お二人とも  何時まででも居て下さい!」

アールモンドが苦笑して言う
「…助かる」

マリアが微笑する


マリアが部屋を出て行く

アールモンドが魔力供給をしながら  アーサーを見ると言う
「…アーサー」

アールモンドの視線の先  アーサーの顔が力なく横たわっている

アールモンドが手を握り締めて思う
(まさか…  本当に  こんな事になっちまうだなンて…)

アールモンドの脳裏に シュイの姿が浮かぶ

アールモンドが怒りを噛み殺して言う
「…っ  あの野郎…っ」

アールモンドが思う
(…完全に油断してたっ)

記憶の中でマリアが言う
『あ、あのっ!あれはきっと…っ  何かの間違えでっ!?ですから…っ』

アールモンドが思う
(俺だって  野郎が本気だとは思っちゃ居なかった…っ  それが  まさか…っ)

アールモンドが悔しそうに言う
「アーサー…っ」

アールモンドが思う
(お前に  魔法を…っ  お前の命を  狙うだなんてよ…っ?)

アールモンドが握る手を振るわせて涙を流す


数時間後 廊下

マリアが湯上りの様子で歩いて レイの部屋の前で立ち止まると ドアを見を思う
(アーサーさん… 大丈夫かな…?アールモンドさんも…)

マリアが一度ドアをノックしようかと手を向けるが その手を止め 引っ込めると 心配しつつも立ち去る


翌朝 台所

マリアが目玉焼きを焼いていると  レイがやって来て言う
「お?やっぱり マリアだ!おはよー マリアー?今日は 早いんだなー?」

マリア微笑して言う
「おはようございます  ウィザードさま …はい  今日は珍しく  目が覚めてしまって…」

マリアが目玉焼きを皿へ移すと  振り向き様に通路を気にしてから レイへ向いて言う
「…あの?ウィザードさま?」

レイが言う
「ん?何だ?マリア?」

マリアが言う
「アールモンドさんの魔力供給は…   いえ、アーサーさんは  いつ頃 目を覚ますのでしょうか?アールモンドさんは…  ずっとアーサーさんへ 魔力供給をしているんですよね?」

レイが言う
「そうだな?俺はやった事が無いけど  灯魔台と違って 生物への魔力供給は 時間が掛かるみたいだな?人間には補助灯魔台も無いし  アールモンドの従者は 自分の魔力も無いから  今は…  まだ2割くらいしか入ってないな?これだと まだまだ  人の目は覚めないよ  マリア」

マリアが言う
「まだ2割くらい…」

マリアが思う
(約1日で2割?それじゃ…)

マリアが言う
「では  人の目が覚めるには 大体  何割くらいの魔力が 必要なのでしょう?」

レイが言う
「そうだなぁ  目が覚めている状態から 下がる分には 分かるんだけど  逆は余り無いから  はっきりとは分からないけど  多分  半分くらいは 必要なんじゃないか?」

マリアが言う
「半分  …では」

マリアが思う
(後…  2日位?)

レイが言う
「けど  魔力供給だけじゃなくて  外的要因でも 目を覚まさせる事は 出来るかもな?灯魔台と違って  生物には感覚があるからさ?それに  失って行く分には 残り1割でも話が 出来ていたからな?あいつ?」

マリアが言う
「そうなんですか?失って行く分には残り1割でも…」

マリアが気付いて思う
(…ん?”あいつ”って?)

マリアがレイを見る  レイが言う
「何だったら  一発 攻撃魔法を掛けてやったら 良いんじゃないか?1割だって  あいつは ギリギリ目を覚まして いられるんだからさ!」

マリアが衝撃を受けて言う
「そんな乱暴な  目覚ましをして頂かなくても  結構ですからっ!」


廊下

マリアが出勤前の装いで  レイの部屋の前で立ち止まると  表情を落とす


マリアの職場 昼休み

マリアが溜息を吐くと  モニターを前に思う
(…一体  どうしたら良いんだろう?そもそも  シュイさんは  どうして…?)

マリアが思う
(シュイさんは  アーサーさんを…  本気で?…嘘と言う様子は無かった…  実際  あの時 ウィザードさまが来てくれなかったら  アーサーさんは…  あのままっ  シュイさんに…っ!?)

マリアが頭を抱える  後輩1が言う
「マーリア先輩っ!」

マリアがハッとして言う
「はいっ  課長っ!?…って?」

後輩2が苦笑して言う
「課長は  お昼休憩行ってますよ?」

後輩3が言う
「マリア先輩も  私たちと一緒に  お昼いかがですか?」

マリアが呆気に取られて言う
「え?…あ、もうそんな時間だったんだね?」

マリアが表情を落として思う
(ずっと悩んでいたから  気がつかなかった…)

後輩たちが心配する  マリアがその様子に気付くと  明るく振る舞って言う
「あ…ははっ?私  てっきり  また  課長に怒られちゃったと思って!?もう  お昼休みだったのね?びっくりして  損しちゃった!」

後輩たちが微笑する  後輩1が言う
「そうですよぉ!だからぁ  マリア先輩も  ご一緒にぃ!」

マリアが言う
「う、うんっ!それじゃ  ご一緒  お願いしまーす!」


会社通路

マリアが歩いていて立ち止まり  横を見ると  携帯通話エリアがある  マリアが携帯を見る

回想

後輩たちが言う
『でしたら ここは!そのご友人へ お願いしたら良いんじゃ無いですか?』

マリアが言う
『え?友人に?でも…  友人は多分  2人が 喧嘩をしたって言う事を  知らないと思うから』

後輩が言う
『だったら 尚更ですよ!?マリア先輩!』

マリアが言う
『尚更?』

後輩が言う
『自分の彼氏だと思って考えたら  分かるじゃないですか?自分の彼が  誰かと喧嘩してるとしたら?話して欲しいって?教えて欲しいって 思いませんか?本当の友人なら!?』

回想終了

マリアが思う
(確かに  ミンリちゃんやララちゃんの言う通り  私がマキの立場だったら?もちろん  私も教えて欲しい…  私の…  レイの事ならっ  何でもっ!?)

マリアが通話エリアへ向く

携帯のモニターにマキの名前がある  マリアが通話を掛けると  着信してマキの声が聞こえる
『マリア!?おっひさ~!元気してるー?』

マリアが思わず表情を明るめて言う
「うん!私は元気だよ?マキはどう?」

マリアが思う
(あぁ…  何だか  本当に久しぶりで…)

マキが言う
『もっちろーん!あたしも元気だよー!マリア 全然 連絡くれないんだもーん!』

マリアが苦笑して言う
「マキだって…!」

マリアが思う
(この他愛ないやり取りを ずっと続けたい…  だけど…)


夜 マリアの家

薄暗い室内

光を放ち続けている杖を支えに 魔力供給を続けているアールモンドが 閉じていた目を開くと思う
(…静かだな)

アールモンドが横目に窓の外を見ると  窓の外に見える家々の明かりが消沈している

アールモンドが思う
(…もう  誰も起きちゃ居ねぇのか?こんな時は…  何時なんだろうな?)

アールモンドが視線を変えると  杖の魔鉱石の明かりに照らされて  ベッドに眠っているアーサーの顔が見える  アールモンドが一度 表情を辛そうにしてから口を開き掛ける
「ァ…  …っ  …」

アールモンドが一度視線を落とし  もう一度 窓を見て思う
(…もう何日経ったンだ?確か  ここで アーサーへ魔力供給を始めて…  3度目の夜だ  …って事は?)

アールモンドがアーサーへ向いて言う
「アーサー…」

アールモンドが思う
(以前の時は  もっと早くに  アーサーは一度 目を覚まして)

アールモンドが言う
「アーサー?」

アールモンドが思う
(俺の呼び掛けに…  いや?アイツから 声を掛けて来たんだ  ”大丈夫か?”って…  ”無理はするな”ってよ…  お前の方が  よっぽどやべぇってぇのに  お前は何時もみてぇに…っ  だったら?)

アールモンドが言う
「アーサーっ」

アールモンドが思う
(今回は  そこまでは望まねぇよ…っ)

アールモンドが言う
「アーサー!」

アールモンドが思う
(だから  せめて…  答えろっ)

アールモンドが言う
「アーサーっ!」

アールモンドが思う
(何時もみてぇにっ)

アールモンドが言う
「アーサー!返事をしろ!俺が呼んでンだぞ!アーサー!?」

アールモンドが思う
(返事を…っ!…ンで…っ!?それが出来ねぇ!?)

アールモンドが言う
「おいっ  返事くれぇしろよ!?それ位ぇの魔力はやっただろっ!?アーサーっ!?」

アールモンドが思う
(一言で良い!)

アールモンドが言う
「アーサー!」

アールモンドの目から涙がこぼれ落ちる  アールモンドが思う
(俺は今っ)

アールモンドが言う
「お前の声が聞きてぇんだよっ!アーサー!」

アールモンドが思う
(だからっ)

アールモンドが言う
「何時もみてぇに  言えよ!」

アールモンドが思う
(お前にだけ許してンだっ  "アーリィー"って…)

アールモンドが言う
「俺を呼べっ  アーサー!」

アールモンドが思う
(何で…?)

アールモンドが言う
「…ンでっ  目を覚まさねぇ…っ?」

アールモンドが思う
(何で…  こんな事になるンだよっ?)

アールモンドが言う
「アーサー…っ」

アールモンドが思う
(こんな事は  2度と御免だって…  2度とねぇって思っていた…っ  なのにっ  …クソッ)

アールモンドが杖にもたれて言う
「アーサー…  俺には…  お前しか居ねぇンだよ…っ  …のにっ  …ッ  …うぅ  …っ」

アールモンドが泣いている


廊下

ドアを背にマリアが居て  口を押えて哀しみを堪えて居る


マリアの職場

マリアが思う
(昨日…  夜中に目が覚めて…)

マリアの脳裏で  夜中に廊下へやって来たマリアが  部屋から聞こえる声に気付き  顔を向ける

マリアが表情を落として思う
(直ぐに立ち去ろうと思ったのに… 聞いている私まで  苦しくなる位  アールモンドさんの気持ちが伝わって来て…)

マリアがPCを前に溜息を吐くと額を押さえて言う
「もう…  本当に限界…」

マリアが思う
(なんだろうな…  アールモンドさん…)

課長が言う
「マリア君」

マリアが衝撃を受けて言う
「は、はいっ  課長っ!」

課長が言う
「本当に調子が悪いと言うのであれば  無理はしなくて良い  今日は早退をして  自宅でゆっくり休み給え?」

マリアが慌てて言う
「あっ い、いえっ だ、大丈夫ですっ!ちょっとその…っ  ね、寝不足くらいで!?」


マリアの家

マリアとレイが廊下を歩いていて  レイの部屋の前でマリアが立ち止まる  レイは気付かずに歩いて行く  マリアがレイの部屋のドアへ向き直ると  前方に居るレイが気付いて振り返る

マリアが思う
(この時間なら?…アールモンドさん  落ち着いているかな?)

マリアがドアを見て 一度ためらってから 気を取り直して向き直る


レイの部屋

ドアの外からマリアの声が聞こえる
「失礼します  アールモンドさん…?」

マリアがドアを開けて 顔を向けるとハッとして  慌てて駆け寄って言う
「アールモンドさんっ!?大丈夫ですかっ!?アールモンドさんっ!?」

アールモンドがベッドへ倒れる様に眠っている  マリアがアールモンドの肩へ手を伸ばそうとすると  アーサーの声が聞こえる
「ごめんね…  マリアちゃん…」

マリアが驚き 目を見開いて 声の方へ向くと  アーサーが言う
「アーリィー…  今…  疲れちゃってて…  だから…  少し  休ませて…  あげて…  もらえるかな…?」

マリアが呆気に取られたまま言う
「アーサーさん…っ!」

アーサーが苦笑して言う
「ずっと…  お邪魔しちゃってる…  俺が言うのも…  申し訳… ないの  だけど…」

マリアが顔を左右に振ると  嬉し涙を浮かべて言う
「良かった…っ アーサーさん…っ!本当に…っ」

マリアの目から涙が流れる

アーサーが苦笑して言う
「ありがとう…  マリアちゃん…」

マリアが涙を拭って微笑する


台所

マリアが嬉しそうに料理をしている  レイが風呂上がりの様子でやって来ると  マリアの様子に気付き微笑して言う
「マリア!」

マリアが気付き 顔を向け微笑して言う
「はいっ  ウィザードさま!お夕食  もうすぐ出来ますからね?」

レイが言う
「マリア  何だか嬉しそうだな?何か良い事があったのか?マリア!」

マリアが言う
「え?それはもちろん!アーサーさんが 目を覚ました事ですよ!ウィザードさま!」

レイが疑問して言う
「ん?マリアは  アーモンドの従者が  目を覚ました事が嬉しいのか?」

マリアが一瞬疑問してから 苦笑して言う
「もちろんですよ?ウィザードさま?あら?私  ずっと言ってませんでしたか?アーサーさんは  何時目を覚ますのかな?って?」

レイが考えて言う
「うん  そうだな?確かに  マリアからは  そんな声が聞こえてた気もするけど…」

マリアが言う
「直接  そうは言っていなくても  私は毎日 そう思っていたんですよ?ですから!」

マリアが思う
(そうよね?それこそ四六時中  お陰で  お仕事も手に付かなくなっちゃう位だったし?)

レイが言う
「俺は  マリアは  アーモンドの従者に  目を覚まして欲しくないのだと  思ってたよ  マリア?」

マリアが呆気に取られて言う
「え…?」

レイが言う
「だから  アーモンドの従者が 目を覚ました事  マリアに言わなかったんだけどな?けど  そんなにマリアが喜ぶんなら  教えてやれば良かったな?アーモンドの従者なら  今日の昼頃に 目を覚ましたぞって?」

マリアが呆気に取られたまま言う
「今日のお昼頃に…」

マリアが思う
(そうだったんだ…  でも、どうしてだろう?ウィザードさまには私の思いが  逆さまになって伝わっていたみたい?…けど  そんな事も あるのかな?私、毎回 はっきりとは  言っていなかったのかも知れないし?)

マリアが気を取り直して言う
「そうでしたか… 有難う御座います  ウィザードさま 教えて下さって!」

レイが喜んで言う
「ああ!礼には及ばないぞ!マリア!」

マリアが軽く笑って作業を再開しながら言う
「後は お味噌を入れて…  これで―」

レイが疑問して言う
「けど  やっぱり分からないな?マリア?」

マリアがコンロの火を消しながら言う
「はい?何がですか?ウィザードさま?」

レイが言う
「マリアはアーモンドの従者が目を覚ましたら  何かやらないといけないんじゃなかったか?」

マリアがハッとする

レイが言う
「それで  マリアは  それはやりたくない事なんだって  俺はそう思ってたんだけど?」

マリアが思う
(そうだった…っ  私  アーサーさんへ…っ)

レイが言う
「けど良かったよ!マリアが  アーモンドの従者に  目を覚まして欲しくないって言うんだったら  俺が今度こそ 間違いなく目が覚めないように  デカイ魔法の一発を!」

マリアが衝撃を受けて言う
「それはして下さらなくて 結構ですからっ!」

――…

マリアが洗い物をしていると  レイが欠伸をして言う
「マリア?俺は今日も先におやすみなさいしちゃうけど  マリアは今日も俺と  愛の証をするか?マリア?」

マリアが洗い物をしつつ言う
「あ…っ はい  そうですね?今日も 私は ウィザードさまと…」

マリアが思う
(愛の証を…  つまり一緒に…  一緒のベッドに寝ると言う事  …アーサーさんは目を覚ましたけど  今度はアールモンドさんが眠っちゃったから…  でも、それは仕方がないよね?3日間も寝ずに  魔力供給をしていたのだし?)

マリアが言う
「アーサーさんは 目を覚ましましたけど  まだ  動けそうも ありませんでしたし?アールモンドさんも お疲れですから… ですので?きっと  後2、3日位は  私  ウィザードさまと  愛の証を続ける事になりそうですね?」

レイが喜んで言う
「おお!そうなのか!?マリアと後2、3日も愛の証を出来るなんて  俺  すげぇ嬉しいよ!マリア!」

マリアが苦笑して思う
(正直 言うと 流石に シングルベットに2人で寝るのは ちょっと窮屈だけど… けど…)

廊下から声が聞こえる

マリアがハッとして顔を向けて思う
(え?今  声が…?)

アールモンドの声が聞こえる
「…は  こっちか?馬鹿でけぇ  魔力を感じるからよ?」

マリアが言う
「…アールモンドさん?」

マリアが思う
(アールモンドさん…?もう  目を覚ましたんだ…?それで?何か?)

マリアが言う
「アールモンドさん?何か?」

マリアが思う
(お水が欲しいとか?そう言う事かな?他には…?)

アーサーの声が聞こえる
「あ、ホントだ  マリアちゃんの声も聞こえたから  こっちで合っていたみたいだね?アーリィー?」

マリアが驚き目を見開くと思う
(…え!?まさか!?)

マリアが顔を向けた先  リビングの出入り口から  アールモンドに続き  アーサーが顔を覗かせる

マリアが驚いて言う
「アーサーさんっ!?」

アールモンドが言う
「世話になった」

マリアが言う
「あっ  いえっ?えっとっ!?」

マリアが思う
(どうしよう!?まだ何も考えて…っ!?)

アーサーが言う
「お世話になりました 急に ごめんね?マリアちゃん」

マリアが言う
「い、いいえっ!?何のお構いも 致しませんでっ!?」

マリアが思う
(私  アーサーさんに…っ)

アールモンドが魔法で札束を現して言う
「少ねぇが礼だ  受け取れ」

マリアが衝撃を受けて言う
「え!?そ、そんなっ!?頂けませんっ!?」

アールモンドが疑問して言う
「ああ?ンでだよ?コイツの命を助けてもらった礼だ  それと宿代…  全部を金で払うには足りねぇから  今日の所はあの部屋を借りた分だ  後は働きで返すっから  俺に出来る事があれば  何時でも言えよ?」

アーサーが言う
「もちろん  俺に出来る事でもね?マリアちゃん?」

マリアがハッとして思う
(アーサーさんに 出来る事…?それなら!?)

アーサーが言う
「って言っても  アーリィーに出来る事はあっても  俺に出来る事なんて大して無いけど?」

アールモンドがアーサーを横目に言う
「お前の分は  俺が払うっつってんだから良いだろ?お前は黙っとけよ?」

アーサーが苦笑して言う
「それは分かっているけど  俺も言わない訳に行かないかなって?そもそも  俺が迷惑を掛けた訳だし…?」

アールモンドが言う
「お前は俺のモンだから  俺が払うっつってんだ   …ま、そう言う事だからよ?」

アールモンドがマリアへ向く

アーサーが言う
「そうだね?ごめーん  アーリィー?」

マリアが言う
「あ、あのっ  私…っ」

アールモンドが言う
「とりあえず受け取れよ?話はその後だ」

マリアが言う
「い、いえっ  それは受け取れません!それより…っ」

アールモンドが言う
「はぁ?ンでだよっ?受取れよ?メンドクセェ…」

アールモンドがムスッとする

マリアが衝撃を受けて慌てて言う
「あのっ  ですから…っ  お金は要らないですっ!」

アールモンドが言う
「理由になってねぇ!」

マリアが困って言う
「そ、そうは言われても…っ」

アールモンドが言う
「世話になったからには  その分の代金を支払うのは 当然だろ?アーサーの命を助けてもらった分は  後で返すって言ってンだ  分かったら受け取れよっ」

マリアが言う
「でしたら!やっぱり  それはどちらも要らないですっ!」

アールモンドが言う
「はぁ?」

マリアが言う
「私  確かにアールモンドさんに  部屋を貸してほしいとは言われましたが  お2人を部屋へ連れて来たのは私ですし  それに   お世話はしていませんっ  お食事も  お茶さえも出していませんしっ  それに!」

マリアが気を取り直して言う
「アーサーさんも  アールモンドさんも  私にとって  大切な人ですからっ  そのお2人に  私に出来る事があるなら  それをするのは当然で…っ  だから  お礼も何も  要らないです!」

アールモンドとアーサーが呆気に取られる

マリアが思う
(そうよね?私は何も  お礼が欲しかった訳じゃない  この3日間  毎日  本当に心配していたのは…)

アーサーが言う
「ありがとう  マリアちゃん」

マリアが微笑して言う
「はいっ  アーサーさんがご無事で  本当に良かったです!」

アールモンドが言う
「…いつから  お前らはンな仲になってたンだよ?アーサー?」

アーサーが笑顔で言う
「あれぇ?マリアちゃんは  俺だけじゃなくて  アーリィーにも言ってるんだよ?アーリィー?」

アールモンドが衝撃を受けて言う
「あぁっ!?」

マリアが思う
(そう  だから  私は…)

マリアがアールモンドを見ると  アールモンドがプイッと顔を逸らして言う
「知らねぇよ!」

マリアが衝撃を受ける

アーサーが言う
「またまたぁ?アーリィーったら  照れちゃってぇ?」

アールモンドが衝撃を受け 怒りを押し殺して言う
「照れてねぇ…っ」

アールモンドの周囲に雷が迸る

マリアが衝撃を受けて思う
(お、怒ってる…っ  どうしよう?)

アールモンドが気を取り直して言う
「なら  礼も何もねぇ!ただの部屋代だ  受け取れ!」

アールモンドがもう一度 マリアへ札束を向ける

マリアが慌てて言う
「で、ですからっ  部屋代は要りませんっ  あの状態で  部屋を貸さない友人は居ないですよっ!?」

アールモンドが言う
「なら  その部屋のクリーニング代だ  それ位ぇ払うのは  当然だろ?」

マリアが言う
「クリーニングなんて…っ  強いて言うなら  掃除機を掛けて  シーツを替える位ですが  それは私がやりますし!?それに  それは お二人が使ったからと言う訳では無くて  何時もやる事で…っ  だから  こんな大金は要らないんですっ」

アールモンドが言い負かされて言う
「…っ  …どうあっても受け取らねぇって事かよ?」

マリアが言う
「受け取ってしまったら  それは友人とは言えないと思いますから!」

アールモンドが言う
「俺はアンタと友人になったつもりは  無かったンだけどな?」

マリアが衝撃を受けて言う
「あっ  ご、ごめんなさい!私  勝手に…っ」

マリアが思う
(そうだった…っ  そもそも  アールモンドさんはウィザードで  しかも貴族の人でっ  お部屋のクリーニング代に  札束を渡そうとする程の…っ)

アールモンドが言う
「けど考えてみりゃ  アンタの親父殿には借りがあるし  アンタのウィザードはアーク…  おまけに  アンタは奉者だってぇなら  アーサーの同僚でもある  …なら  良いか…  許してやる」

マリアが衝撃を受けて思う
(とっても遠回しだけど  私  許された?アールモンドさんの 友人として?)

アーサーが言う
「アーリィーってば  素直じゃないんだから?」

アールモンドが言う
「るせぇぞ  アーサー!」

マリアが衝撃を受けて思う
(って?結局どっちなんだろう?私  アールモンドさんの友人に  なれたのかな…?)

マリアの前に3万が向けられる  マリアが疑問する

アールモンドが言う
「ならコイツは  それをするアンタへのチップだ  …上乗せしてぇ所だが  また断られたら  今度こそやってらんねぇからな?」

マリアが思う
(3万も!?ただ 掃除機を掛けて シーツを替えるだけなのに?)

アーサーが言う
「マリアちゃん  アーリィーは貴族のお坊ちゃまだから  普通の人とはちょっと桁が違うんだけど  それはアーリィーからの気持ちだから  受け取って上げて?」

マリアが言う
「あ、はい…  分かりました  では…」

マリアが思う
(一枚だけ  受け取ろうかな?それ位なら…)

マリアが3枚の中1枚に指を向ける  アールモンドが気付くと  パッとマリアの横のテーブルへ札を投げ捨てる

マリアが思わず言う
「あっ!?」

テーブルへ舞い落ちる札の向こう  アールモンドが背を向けて歩き始めていて言う
「行くぞ  アーサー」

アーサーが微笑して言う
「うん  アーリィー  それじゃ  マリアちゃん  また改めてお礼に伺うので  今日の所はこれで  長い事お邪魔しました」

アーサーが一度頭を下げて アールモンドを追って行く

マリアがハッとして思う
(…あっ  そうだ!それより  私…っ!?)

マリアが言う
「あ…っ  いえっ  何のお構いもしませんで  こちらこそ失礼しましたっ!?」

アーサーが立ち止まると 向き直って微笑して言う
「マリアちゃんには  俺の命を助けてもらったのだから  お礼は尽きないけど」

マリアが思う
(命を助けてもらったお礼?そんなお礼なんて  在りはしないんだけど…っ  でもっ  そのお礼で  今度は…!?)

アールモンドが部屋の外から呼ぶ
「アーサーっ」

アーサーが言う
「今 行くよ  アーリィー  それじゃ  失礼します  マリアちゃんのウィザード様も  お邪魔しました  おやすみなさい」

レイが言う
「ああ!何時でも邪魔しに来いよ?お前らが俺のベッドを使ってくれれば  俺は  マリアのベッドで マリアと愛のあか…  ンム!?」

マリアがレイの口を押さえて言う
「ウィザードさまっ  その言い方ですと 誤解を招きますので!?」

レイが言う
「誤解じゃないよ?俺はマリアと…  ムグ!?」

マリアが赤面して言う
「ただ一緒に寝るだけですからっ  それは…っ」

マリアとレイのやり取りに アーサーが疑問している

外からアールモンドが叫ぶ
「アーサーっ!」

アーサーがハッとして慌てて言う
「は、はぁいっ!今 行くよっ  アーリィー!?では  そう言う事でっ!失礼しますっ」

マリアがハッとして言う
「あ…っ」

マリアが思う
(アーサーさんっ!?)

マリアがレイを放してアーサーを追う  部屋の外からアールモンドの声が聞こえる
「エントランスはどっちだ?」

アーサーが言う
「右の方じゃないかな?アーリィー?」

アールモンドが言う
「本当に  靴もそこにあンのかよ?」

アーサーが言う
「庶民の住宅では  エントランスで靴を脱ぐんだって  昔読んだ本に書いてあったから?」

アールモンドが言う
「ふーん?大体  ンで家の中だからって靴を脱ぐんだ?足が汚れるじゃねぇか?」

アーサーが言う
「汚れない位  綺麗に出来るんだよ?お屋敷と違って狭いからね?」

アールモンドが言う
「ああ…  ま  確かに狭ぇな?…ん?あれは俺の靴か?」

アーサーが言う
「そうだね?隣に俺のも揃えてある  へぇ~  こう言うのも良いのかも?」

アールモンドが言う
「そうかぁ?」

マリアが追って来て言う
「あのっ  アーサーさん!」

アールモンドとアーサーが立ち止まり  アーサーが言う
「うん?なあに?マリアちゃん?」

マリアが言う
「えっと…  その…っ」

マリアが思う
(あぁ…っ  でも  何って言ったら 良いんだろう?いくらマキから 頼まれた事だと言っても…っ)

アーサーが疑問する  アールモンドが向けていた顔を戻すと欠伸をする

マリアが思う
(でも  ”それ”を そうと言ったら?それはそのまま"私はシュイさんのした事を認めます"って言ってしまっている事になっちゃう?それは…  …それはっ  違うっ!私は…っ!…だけど)

アーサーが微笑して言う
「俺に 何かあるのなら  気軽に言ってね?マリアちゃん?」

アールモンドが言う
「俺が居ちゃ 言い辛ぇってンなら  先に外で待ってる  サッサと来いよ  アーサー?」

アーサーが言う
「あ、それじゃ  マリアちゃん  俺  アーリィーに靴を履かせて来るから  その後で聞くね?」

アールモンドが衝撃を受けて言う
「靴ぐれぇ 自分で履けるっ」

アーサーが言う
「そお  アーリィー?俺  アーリィーが屈んで靴を整えている姿なんて  見た事無いのだけど?」

アールモンドが衝撃を受けて顔を逸らして言う
「そ…っ  ンな事は…っ  した事…  ねぇ…  …っ  大体  ンな事はしなくたってっ」

マリアが困って言う
「あの…っ 私…っ  …  …」

マリアが思う
(言わないと…っ  だって  私  マキと約束をして…っ それに もし 魔力者では無い アーサーさんが 今回の事を 誰かに言ってしまったら… シュイさんが…っ)

アーサーがアールモンドの靴を整えて言う
「はいっ  これでどお?アーリィー?」

アールモンドがプイッと顔を逸らして言う
「…普通だ」

アーサーが軽く笑って言う
「それなら良いんだけど」

マリアが思う
(それならっ  例え  私が…っ  アーサーさんやアールモンドさんから  嫌われてしまったとしても?それで…っ 皆が助かるのならっ!?)

マリアが一度ギュッと目をつぶる  アーサーが一瞬 表情を苦しめて言う
「俺  今、感覚が無いから」
 
マリアが驚いて目を見開く

アールモンドが横目に見ていて言う
「ああ …で?何だか知らねぇが  まだ  考えがまとまってねぇンなら  後から電話でも良いだろ?それに  直接じゃ無けりゃならねぇ事なら  アーサーは  改めて礼に来るってンだから  その時にでもよ?」

アーサーが言う
「そうだね アーリィー?マリアちゃん  そう言う事で  どうかな?」

マリアが言う
「あ…っ  でも…っ  …ごめんなさい  それだとっ」

マリアが思う
(あぁ…っ  アーサーさんは  まだ  完全に良くなった訳では 無いみたい…  だったら  今は  こんな話をするべきでは無いのだろうけれど…っ  でも  それなら尚更に?いつ訴えを起こすかも 分からない…っ もし起こされてしまったとしたら  その後だと 間に合わないかもしれないからっ  だからっ  早く…っ!)

マリアが言う
「あの…っ  アーサーさんっ  その…っ  今回の事なんですがっ!」

アーサーが言う
「うん  今回は本当に お世話になっちゃって  でも  俺  今は何も持ち合わせが無いものだから  後日改めて  今回のお礼を」

マリアが言う
「そうではなくてっ!」

アーサーが言う
「違うのっ!?」

マリアが思う
(言わないと…っ)

マリアが言う
「私へのお礼なんて  そんなのは要らなくてっ  だからっ  そうではなくて…っ」

マリアが思う
(出来る事なら  もう一度ゆっくり考えたいっ  だって  もっと良い方法があるのかもしれないっ  折角…っ  1度や2度会った事があるだけの 知り合いだった2人と  お友達になれたのに…っ  …でも  ここで!今…!)

マリアが意を決して言う
「シュイさんの事…っ!」

アーサーが反応する

アールモンドが一瞬驚き 不満気に言う
「チッ…  何を言い出すのかと思ったら  …行くぞっ  アーサー!」

アーサーが言う
「あ、うん…  アーリィー」

マリアが言う
「あの…っ  アーサーさんは…っ!?」

アールモンドが言う
「アンタも随分と無神経だな?今 野郎の名を出しやがるとはよっ?」

マリアが困って言う
「それは…  ごめんなさい  でも…っ  あのっ  私…っ」

マリアが思う
(マキと約束をしていて…っ  それに…っ  私も…っ!)

アーサーが苦笑して言う
「…嫌だなぁ  マリアちゃん?ひょっとして  俺が…  シュイさんの事を  訴えるだとか  思って居るんじゃない?」

マリアが慌てて言う
「違うんですかっ!?」

アーサーが苦笑して言う
「そんな事  する筈が無いじゃない?そもそも  俺が訴えた所で  証拠不十分だし?」

マリアが思う
(証拠不十分?それは…  アーサーさんは従者で  身に受けた相手の魔法を  証明する事が出来ないから… でも  だからこそ 私が…)

アーサーが一瞬息を飲む

アールモンドが言う
「アーサー  もう良いだろ?行くぜ?」

アールモンドを追って アーサーが玄関の方へ踏み出す

マリアが言う
「でもそれは…っ  私が…」

マリアが思う
(それを目撃したと 証言をすれば…)

マリアが言おうとすると その前で アーサーが崩れる

マリアが驚き

アールモンドが言う
「アーサーっ」

アーサーが床に手を着いた状態で堪える

マリアが呆気に取られて思う
(アーサーさん…っ  身体はまだ 治っていなかったんだ!?それなのに  私が…っ)

マリアが言う
「大丈夫ですか!?アーサーさんっ!まだ  動かない方が良かったんじゃっ!?」

マリアが思う
(それなら  もう一度  お部屋に…っ?)

アールモンドが言う
「サッサと 屋敷へ戻るぞ  アーサー」

アーサーが顔を上げる

マリアが言う
「そんな無理を させなくても!?アーサーさんっ?」

マリアが右手でアーサーの肩に触れようとする

レイが言う
「マリアっ!」

マリアが反応してレイへ向き掛けるが  右手は止まらずアーサーの肩に触れる直前  バチィッ!と強い音が鳴る  マリアが目を見開く

アーサーが言う
「あっ マリアちゃん…っ」

マリアが右手首を掴んで言う
「い、痛っ!?」

レイが慌てて言う
「マリアっ!?」

マリアの右手に雷の魔法が伝播して マリアの右手を攻撃する マリアが悲鳴を上げる

マリアが言う
「痛い!痛いっ!」

レイが慌てて言う
「マリアっ!?マリアっ!?」

アールモンドが言う
「…ったく  見てらんねぇっ!」

アールモンドがマリアの前に立つと言う
「これで俺を  訴えたりは  しねぇだろうなっ!?」

アールモンドがマリアの右手へ杖を向け意識を集中させる  マリアがアールモンドの顔を見上げると 周囲に砂が舞い  次の瞬間 アールモンドの杖が光る

マリアが驚くと 右手に土魔法の攻撃を受けて悲鳴を上げる
「キャアッ!?」

レイが言う
「マリアっ!」

マリアが思う
(痛いっ  今一瞬  手の骨が粉々になるんじゃないかって  強い痛みが…)

マリアが痛みに閉じていた目を開くと  驚いて息を飲む
「っ!」

マリアの右手の骨が折れて 腫れ上がり ぶら下がっている

レイが慌てて言う
「マリアっ!痛かっただろっ!?今すぐに 治してやるからなっ!?」

レイがマリアの右手を両手で包んで 活性魔法を掛ける  マリアが呆気に取られていると  右手の腫れは引いて  続いて現れた青あざも消えて行く

マリアが思う
(…治った?…痛みも?)

マリアが右手の感覚を確かめるとホッとして言う
「あ…  ありがとうございます  ウィザードさま それに… えっと?」

マリアが思う
(ウィザードさまには  いつもの感じで  怪我を治して貰ったけど…  その前の…?)

マリアがアールモンドの姿を探すと  アールモンドがアーサーへ肩を貸して起き上がらせている

マリアが言う
「あの…っ」

アーサーが一度アールモンドへ向いてから マリアへ言う
「ごめんね  アーリィー?…ごめんなさい  マリアちゃん  俺の身体には  まだ  シュイさんの 魔法が残っているから…」

マリアがハッとして思う
(っ!あれが?シュイさんの…っ?)

アーサーが続けて言う
「それが  マリアちゃんにも…  伝播しちゃったみたい  ごめんね  俺のせいで…」

アールモンドが言う
「結界を一部だけ解除するだなんて  器用な真似して置きながら  野郎の攻撃魔法を解除してやる事は 出来ねぇのかよ アーク?」

マリアが思う
(攻撃魔法の解除?それが…  さっき  アールモンドさんが  私に使ってくれた魔法…?)

レイが言う
「いくら解除の為でも 俺がマリアに 攻撃の魔法なんて  使える訳が無いだろ!アーモンド!」

マリアが言う
「攻撃の魔法?それを解除する魔法では?」

レイが言う
「攻撃の魔法を解除する魔法は  対極属性の攻撃魔法なんだよ  マリア  だから俺には  マリアを助けたくっても  出来なかったんだ  …マリアに攻撃の魔法を使うなんて  そんな事は絶対出来ない  だから  ごめんな?マリア?」

レイがアークの姿で 泣きそうな表情で マリアを見詰めている

マリアが呆気に取られると  ハッとして言う
「い、いえっ  ありがとうございました  ウィザードさま   それに…  アールモンドさんも?」

アールモンドが言う
「…くどい様だが  解除の為に使ったンだからな?それで…  俺を  訴えたりはしてくれるなよ?」

マリアが呆気に取られると苦笑して言う
「もちろんですよ?助けて頂いたのに  その恩を  訴えるだなんて?」

アールモンドが言う
「そうは言っても  アンタが今日 明日にでも 訴えを起こせば  アンタの身体からは  間違いなく  俺の魔力が検出されっからな?…クソッ  こういう時は  長く滞留する  自分の属性を呪うぜ」

マリアが言う
「…ですから?私は  アールモンドさんを  訴える事なんて…」

マリアがハッとしてアーサーを見る

アーサーがマリアの視線に気付き言う
「俺も  シュイさんを訴える事は… しないから? 安心して…?マリアちゃん?」

アールモンドが横目にアーサーを見て言う
「お前は  訴えるべきだろ?証人だって  ここに居るんだしよ?」

マリアが言い掛ける
「あ…っ」

アールモンドがマリアを見る

マリアが表情を落とし沈黙している

アーサーが苦笑して言う
「そんな事  俺  頼めないよ アーリィー?シュイさんの奉者は  マキちゃんだから」

マリアが驚きアーサーの顔を見る

アーサーが続けて言う
「俺がマリアちゃんに頼んだら  マリアちゃんは…  マキちゃんの  親友でしょ?その2人に  迷惑は  掛けられないからね?」

マリアが思う
(アーサーさん…  私とマキの事…  考えてくれていたんだ?それなのに… 私は…)

アールモンドが言う
「はぁ?アーサー?お前は  そのマキ奉者のウィザードに  殺され掛けたンだろうがっ!?違うかよっ!?アーサーっ!?」

マリアが顔を向ける

アーサーが言う
「それは そうだけど…  多分  マキちゃんは  今回の事に  関係が無いと思うし?それに  マリアちゃんも…」

アールモンドが言う
「奉者とウィザードは  一心じゃねぇのかよっ!?マキ奉者だって  同意の上で  お前をっ!?」

マリアが言う
「それは違いますっ!マキは何も知りませんでしたっ!それで…っ!?だから…っ  私…っ」

マリアが思う
(あぁ…っ  どう言ったら良いんだろう?今  ちゃんと言わなくちゃ いけないのにっ  なのに…っ)

マリアが言う
「…っ  …  …っ」

マリアが思う
(ダメ…っ今は怖くて  思ったことを口に出来ないっ  だって…っ  私  さっき…っ)

アーサーが苦しそうな息遣いをしている

アールモンドが言う
「…もう良いか?早く戻って  今度はコイツから  野郎の攻撃魔法を解除してやらねぇと」

マリアが顔を向ける

レイが言う
「お前は  自分の大好きな奴に  攻撃魔法を使えるのか?アーモンド?」

アールモンドが言う
「俺だって使いたかねぇが  他に方法がねぇだろ?3日経っても  ちっとも薄れやしねぇ  この家のアークの結界を出て  それこそ自然に薄れて消える頃までだなんて待ってたら  コイツの精神が持たねぇよ」

マリアが言う
「でしたらっ!?ウィザードさまっ!?」

マリアが思う
(それならせめて  攻撃魔法は…)

マリアがレイへ言う
「さっきはアールモンドさんが  私を助けてくれましたからっ!今度はウィザードさまがっ!?」

マリアが思う
(ウィザードさまが  アーサーさんにっ!?)

レイが言う
「それは出来ないよ  マリア  俺の魔力はデカイから  殺さない程度に攻撃するって言うのは  難しいからやりたくないし」

マリアが衝撃を受けて思う
(難しいって事は  出来ない訳では無いんじゃ…っ!?)

レイが言う
「何より  アーモンドの従者は  アーモンドの魔力以外で攻撃すると  折角、供給したアーモンドの魔力が減っちゃうからさ?」

マリアが言う
「あ…」

マリアが思う
(そう言えば  あの時も?ウィザードさまの回復魔法は  アーサーさんには  使えないって)

レイが言う
「アーモンドの従者に  死にそうな程与えられた  マッキのウィザードの魔力を相殺させた頃には  今あるアーモンドの供給した魔力なんか  とっくに切れちゃうよ?」

マリアが言う
「そ、そうですか…  それでは  そんなに…」

マリアが無意識に右手を庇って思う
(シュイさんの攻撃魔法…  さっき私も間違いで受けてしまったけど  とても…っ  耐えられない痛みだった…っ  右手だけでも  あんなに苦しい  ただ  悲鳴を上げる事しか出来ない痛み…っ  あれが…っ)

マリアがアーサーを見る  アーサーは苦しそうに耐えている  マリアが表情を苦しめる

アールモンドが言う
「そうとなりゃ  やるっきゃねぇだろ?じゃ  話は途中かもしれねぇが  もうこいつも限界だからよ  行かせてもらうぜ?」

アールモンドが家の外へ向き杖を突く 周囲に風が舞い  アールモンドが杖を掲げると 杖が光り2人が消える

マリアが息を吐き  身体の力を抜くと思う
(結局…)

マリアが2人の消えた場所を見詰めて思う
(言えなかった…  でも)

レイが顔を向けるとドアが魔法で閉まる

マリアが思う
(お陰で  最悪の状況になる事は免れたから  それなら…?)

マリアの脳裏にアールモンドの言葉が蘇る
『…で?何だか知らねぇが  まだ  考えがまとまってねぇンなら  後から電話でも良いだろ?それに  直接じゃ無けりゃならねぇ事なら  アーサーは  改めて礼に来るってンだから  その時にでもよ?』

マリアが思う
(早速  明日にでも  掛けてみようかな?少し早過ぎるかもしれないけれど  間に合わなくなってしまう訳には いかないから  …アーサーさんは訴えたりはしないと言っていたけれど…  それに  アーサーさんの体調も気になるし)

マリアが意を決して言う
「それならっ!」

マリアが思う
(早速  明日!電話をしてみよう!)

《だけど  意を決して掛けた  翌日も  その次の日も  電話は繋がらなかった…》
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