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火属性のウィザード

14話 火属性のウィザード

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灯魔台神館

アールモンドが上級灯魔作業を行っている

《 あの騒動から1週間 色々あったが 結果として 全て元に戻った 》

補助灯魔台に水が灯ると  周囲の魔力が水流となり  水で出来た龍が現れ咆哮する  観覧席から歓声が上がり  拍手が沸き上がる

《…まぁ 俺の魔力が 半端なく上がって 上級灯魔作業専門のウィザードになったってぇのは 今更だが 》

アールモンドが口角を上げて思う
(今日のは 良い感じだ コイツなら!)

龍が灯魔台にとぐろを巻き  そのまま水の灯魔となって灯魔台に灯る  アールモンドが微笑して思う

(良しっ)

アールモンドが構えを解除して  杖を手に退路を歩き始めると  観覧席から拍手喝さいが沸き上がる
アールモンドが正面を向くと  控え出口奥でアーサーが笑顔で拍手をしている  アールモンドが微笑する

《いや?そういやぁ 例の一件で アーサーが死に際の魔力まで 俺にくれちまったせいで》

アーサーが灯魔台を見て気付く

《 実は今 ちょいと迷惑な事が起きてる… でもって この調整が出来ねぇって所が… また 俺らしいンだが…》

アールモンドが反応して思う
(…うん?何だ?…まさかっ  ”今日も”かっ!?)

観覧席からどよめきが起きる  アールモンドが立ち止まり横目に見ると 灯魔口から  魔力で出来た子龍が 顔を出し辺りを見渡す アールモンドが表情をしかめてから退路を再開する

子龍がアールモンドを見付け  灯魔台の細工に沿って上手に下まで降り  アールモンドを追って 向かって来る
観覧席の人々が息を飲んで見守った後  安堵し笑って 再び拍手をする

アールモンドが不満気に言う
「…チッ」

アールモンドが思う
(折角  今日のは 恰好が付いたと思ったのによ?ぶち壊しじゃねぇか…っ)

アールモンドが言う
「…こっち  来ンなよっ  戻れっ」

アールモンドが無視して歩くと  子龍が追って来る  アールモンドが控え出口まで戻って来ると アーサーが軽く笑う アールモンドが横目に子龍を見てから  不満の声を最小限に抑えて言う

「~~っ  アーサーっ!」

アーサーが微笑して言う
「あっははっ  了解!アーリィー!」

アーサーがしゃがんで子龍を掬い上げる

《 どんな上等な幻想を見せても 最後に恰好が付かねぇって… それだけで 他に 実害はねぇモンだから それもあって余計に 調整をしようと言う 気にもなれねぇんだが…》

アーサーが子龍を手に 灯魔台へ向かい現れると 歓声が上がる  アーサーが一度 観覧席へ礼をしてから  灯魔台の下へ向かい  子龍を灯魔口へ置く

《 …ま、良いだろ こんくれぇは?》
 

翌朝

レイモンド邸  アールモンドの寝室

アーサーの声が響く
「アーリィーーーッ!」

アーサーが寝室へ駆け込んで来て  アールモンドを強揺して言う

「アーリィー!アーリィー!起きて!起きて!見て見て!」

アールモンドが怒って言う
「また新聞かあ!?アーサーっ!?」

アーサーが言う
「そうだよ!アーリィー!それでねぇ!今度は!」

《 でもって コイツも 日課となった… どぉでも良い 迷惑の2つ目だ 》

アールモンドが言う
「今度はあっ!?」

アーサーが言う
「今度は  ”龍神の  龍ちゃん”だってー!」

アールモンドが言う
「寝る!それから  もう二度と  アイツらの名前  ンかで起こすんじゃねぇよ!アーサーっ!」

アーサーが言う
「ごめーん  アーリィー  だって  俺  嬉しくってぇ?」

アーサーが新聞を見て微笑む 

アールモンドが溜息を吐いて言う
「…たくっ」

アールモンドが右手を上げる  アーサーがその手を取って  アールモンドの身を起き上がらせる


土手

アールモンドが魔力を収集している

《 あれから公開灯魔作業を再開しようと 調子見の為に行った 非公開の上級灯魔作業の頃から 俺の灯魔作業には オマケが付いて来る様になった… 灯魔力が多過ぎるのか 何だか分かんねぇが…》

周囲に風が吹き  アールモンドが目を開くと思い出す


回想

アーサーがアールモンドへ法衣を着せながら言う

『そう言えば  アーリィー  覚えてるよね?灯魔作業で生まれる 幻獣の子たちの中で  最初に生まれた  あのユニコーンの仔!』

アールモンドが言う
『ああ…  雷属性の灯魔台に現れた奴だろ?』

アーサーが言う
『そう!その仔もね?アーリィーの灯魔作業で生まれた幻獣だって  メディアで紹介されてから  大人気なんだって?知ってた?アーリィー?』

アールモンドが言う
『知らねぇし  興味がねぇって…  何度も言わせンなよ  アーサー?』

アーサーが言う
『そお?因みに  この仔の名前は  まだ決まっていなくて  現在募集中なんだけどぉ…?』

アールモンドが言う
『ふーん?』

アーサーが言う
『アーリィー  ホントに  そっちもに興味はなあい?俺…  応募しちゃおっかなぁってぇ?』

アールモンドが衝撃を受けて言う
『はあっ!?本気かよ!?』

アーサーが言う
『うん!駄目かなぁ?アーリィー?』

アールモンドが言う
『別に  したけりゃ勝手にすりゃ良いが…  …  …因みに  何ってぇ?』

アーサーが言う
『うん!俺はね!?あの仔は  白い毛並みだったから"シロ"って名前が  似合うんじゃないかな?って!だから!』

アールモンドが言う
『却下』

アーサーが驚いて言う
『ダメなのお!?』


回想終了

アールモンドが風を受けると反応して思う
(…こいつは…)

アールモンドが目を開けると言う
「…しょうがねぇなぁ?」

アールモンドが思う
(後でアーサーにも  教えてやっか?アイツの名は…)

アールモンドが苦笑して言う
「ユニコーンの"ユニちゃん"だとよ?…たくっ!威厳も何も  ありゃしねぇ  …けど、まぁ」

アールモンドが思う
("シロ"よか  ましか?)

アールモンドが苦笑して言う
「ハッ  …犬じゃあるめぇしなぁ?」

アールモンドが風を受けると杖を掲げる  風が巻き上がると共にアールモンドの姿が消える


レイモンド邸  アールモンドの部屋

アーサーが携帯サイトを見ていると 呆気に取られて言う
「あれぇ?なんだ  もう名前の募集  終わっちゃってるのぉ?なになに?"応募多数の為  募集は締め切らせて頂きました"か…?そんなにいっぱい来てたんだねぇ?後で アーリィーにも  教えてあげないと!」

アーサーが手帳に書き込んでいると  ボールペンのインクが切れる

アーサーが一瞬呆気に取られると言う
「あれ?…  えっと…?ん?ひょっとして  インク切れ?」

アーサーがペンのインクを確かめると無くなっている

アーサーが言う
「あ~  どうしよう?他にペンなんて…  俺  持って無いよね…?」

アーサーがバックを漁ってから  時計を見て言う
「アーリィーが修行を終えて帰ってくる時間まで…  後1時間  …今直ぐに 行って  戻って来れば…?」

アーサーがテーブルの上の書類へ目を向けてから  立ち上がって言う
「良し!」

アーサーがテーブルの上の書類をサッとまとめて  部屋を出て行く


同時刻

TVのモニターに 仔ユニコーンの姿が映っていて  レポーターが言う
『アールモンド・レイモンド  ウィザード様による  公開上級灯魔作業によって  生まれた?もしくは召喚されたのではないか?とも言われます  魔法の幻獣ですが!何と!それ以前に行われていた  同ウィザード様による  非公開の上級灯魔作業によって  現れていたのが!こちらの  まるで  白馬の様な…!』

マキがTVに食い付いて言う
「わあっ!この子も  魔法で造られた幻獣!?すっごーい!」

レポーターが言う
『この様に  隣に立ってみますと  分かりますでしょうか!?こちらの幻獣の 白馬の大きさは  地上から頭上までの高さが約50センチも有り!他の灯魔台にて  現れました幻獣たちの中では  ひと際 大きいと言う事もありますが  実際に目に致しますと  とても大人しく!』

モニターに仔ユニコーンの顔がアップにされる

マキが言う
「かっわいい~!やっぱ  見てみた~いっ!行っちゃおっかなぁ~?あ~ でも?何処の灯魔台神館だろう?」

レポーターが言う
『他の灯魔台神館と同じく  こちらの灯魔台神館も  連日入館制限を設けているとの事ですので  観覧希望の方は…』

マキが微笑んで言う
「そ~言う事でしたらぁ~?ふっふふ~ん!こんな時こそ!奉者様の特権を つっかわないとね~!?」

マキが携帯を見て言う
「あ~でもなぁ~?これがアールモンドさんじゃなくて  マリアのウィザード様とかだったら?マリアに電話してー?"もしもし  マリア!?あの仔馬ちゃん  何処に居るのぉ?おっしえてぇ~!?"なぁーんて  言えちゃうんだけどー?」

マキが携帯の電話帳をスライドさせていると アーサーの名前と番号が出る

マキが思わず手を止めて言う
「…それとも?…掛ける?掛けちゃう?あたし?思い切って!?」

マキが通話のボタンを押そうとして  葛藤してから  脱力して言う
「…っくぅ~  ダメだぁ~?やっぱりちょっとね~?一応  奉者同士?番号交換はしておいたんだけど…」

マキが天井を見上げて言う
「会って話す分には  全~然  平気なんだけどね~?アーサーさん  優しいしお茶目だし~?…でも」

マキが携帯のモニターを見て言う
「…それでも  やっぱり…  男の人だもんね~?…  …ん?男の人?…あっ!忘れてたあ!うちの!?」

マキが立ち上がって言う
「うちのウィザード様に  聞けば良いんジャン!?…ねぇー?シュイー!?」

マキが走って部屋を出て行く


屋外

周囲に風の魔力を集めていたシュイが 閉じていた目を開くと言う

「…見付けたぞっ」

シュイが視線を強めると杖を掲げる  周囲に風が舞いシュイが消える そこへ マキが到着するが  置いてけぼりにむくれて言う

「ちょっと  シュイー!?どこ行ったのー?シューイー!?」


街中

アーサーが歩いて周囲の装飾を見ながら言う
「あれ~?今年はもう装飾が付いてるんだ?何時もこんなに早かったっけ?」

通り沿いに色鮮やかな電球が飾られている

アーサーが言う
「イルミネーションも始まってるのかなぁ?いつかは見てみたいと  思っていたんだけど…」

アーサーが装飾を見上げていた状態から苦笑して歩き始める


同時刻  アーサーの後方

マリアの声が聞こえる
「わ~  可愛い!」

マリアが周囲の装飾と共に街並みを見て言う  
「クリスマスの装飾も綺麗だけど  この街の風景!このレトロな建物の感じが とっても素敵!」

マリアが雑誌をパラパラ見て  ふと気付いてページを戻すと  アールモンドの写真がある

マリアが注目して言う
「ん?"古城の王様の子孫とされているのは  この街のかつての貴族である  レイモンド卿であり…"レイモンド卿?レイモンドって…  ひょっとして?」

マリアが首を傾げて思う
(アールモンドさんの事?)

マリアが雑誌から顔を上げて言う
「…あら?」

マリアがアーサーを見掛けて思う
(あの人…?)

マリアが言う
「ひょっとして  アーサーさん?」


マリアの視線の先

アーサーがイルミネーションを 見上げていた状態から 近くのショーウィンドウを見て  ハッとして言う
「あ、もしかして行き過ぎちゃったかな?装飾ばかり見ていたから?」

アーサーが周囲を見渡して言う
「…ん?行き過ぎてない?そうだよね?確かに  このお店が…  文房具店だった筈なんだけど…?」

アーサーの前には  マジシャンズショップが在る

アーサーが疑問して言う
「あれぇ~~?」

アーサーが首を傾げた後  間を置いて  気を変えて言う
「ま、しょうがない?それじゃ  どこか他の  お店を探して…」

アーサーが店を過ぎると  ハッとして立ち止まり 周囲を見渡して思う
(なんだ?今  一瞬?)

アーサーが言う
「殺気…?」

アーサーが沈黙してから 苦笑して言う
「…っ ははっ?…まさか?」

アーサーが視線を強め周囲の気配を伺う 


アーサーの後方からマリアが呼ぶ
「アーサーさーん!」

マリアがアーサーへ向かっている

アーサーは前方に意識を向けていて思う
(何だ?この感じは…っ?何か 分からないけど  この先へは  行っては いけない気がする…っ!?)

アーサーが手を握り締めて思う
(こんな事  思ったのは初めてだ…っ "怖い"だなんて…?)

アーサーの身に風が纏わる  アーサーがハッとして思う
(っ?この風はっ!?風の…っ  魔法っ!?)

アーサーの姿が消える マリアが到着して驚いて周囲を見渡す


路地裏

アーサーの身体が壁に叩きつけられ 衝撃に悲鳴を上げる
「うあっ!う…っ  うぅ…っ」

アーサーが思う
(咄嗟に受け身は 取ったけれど…っ)

アーサーが痛みに閉じていた目を開くと  視線の先の地面に ワインレッドの法衣の裾が見える

アーサーが思う
(この色…っ  アーリィーじゃないっ  この色の法衣は…っ!)

アーサーが顔を上げると言う
「…っ!やっぱりっ  ――シュイさんっ?」

アーサーの視線の先シュイが無言で佇んでいる

アーサーが苦笑して言う
「え、えーっと?ど、どうも?こんにちは?それで?今のって  …シュイさん  ですよね?風の魔法で  俺をっ?」

アーサーが思う
(例え善意の魔法であっても  魔力者ではない者へ魔法を使う事は  魔力者共存法で禁じられているっ  それは  本来なら 己の奉者と共にする  ヴィザードの移動魔法であっても  黙認されている程だと言うのにっ!?)

シュイが無言のまま  アーサーへの距離を縮める  アーサーが後方へ引ころうとするが  背には壁がある

アーサーがシュイの接近に怯みつつ言う
「あ、あのっ!?俺に?何か用ですか?それとも?ア、アーリィーに?俺のウィザード様に  何か?…そ、そうですよね?ウィザード様が  御用って事はっ  お、俺なんかじゃなくてっ?」

アーサーが視線を巡らせシュイを見る  シュイがアーサーを見詰める

アーサーが思う
(さっきのは間違いなく シュイさんから  俺へ施された 魔法だったっ  シュイさんは  俺が――)

アーサーが壁を背に焦って思う
(俺が  アーリィーの従者だと言う事を 知っているからっ?だとしたらっ!?)

シュイが言う
「アーサー・スペイサー」

アーサー呆気に取られると  シュイが杖を持つ手を握り締める


街中

マリアが周囲を見渡して思う
(見間違えなんかじゃ無いっ  だって  私 以外の人たちも!アーサーさんが 一瞬で 消えた事に 驚いていた…っ)

マリアが移動して立ち止まると  周囲を見渡して思う
(アーサーさんのウィザード様は  アールモンドさん…  いくら相手が 自分の奉者だからって  魔法を使えない人へ  魔法を使う事は許されない  だから…っ)

マリアが移動して 周囲を見渡し 息を切らして言う
「はぁ…はぁ…  この近くには居ないのかな?…  …それなら?」

マリアが携帯を取り出し  電話帳を検索しながら思う
(アールモンドさんが 魔法で?自宅や  自分の近くへなんかへ  送ったと言うのなら兎も角…っ  念の為  電話して確認してみよっ!だって  アーサーさん…っ)

マリアがアーサーのページを見つけて思う
(あの瞬間…)

マリアが通話ボタンをタップしようとした瞬間  アーサーの悲鳴が聞こえる
「うあぁあああーーっ!!」

マリアが驚き振り返って思う
(この声…っ  まさかっ!?)


路地裏

アーサーが自身を襲う雷撃に悲鳴を上げて言う
「あぁあああーーーっ!!ああー!!あぁあああーーー!!」

アーサーが目を開くと 自分へ向けられている杖の先に居るシュイへ手を向ける  シュイは自身へ向けられる手を尻目に 雷撃を強める

アーサーが思う
(苦しいっ  痛いっ  …意識が)

アーサーが服の中に在る指輪を意識して思う
(アーリィー…)

アーサーの瞳から生気が薄れる  その様子にシュイが目を細めると  後方からマリアの声が響く

「シュイさんっ!?」

シュイがハッとすると  マリアが駆け付けて叫ぶ
「どうして  シュイさんがっ!?止めて!こんな事…っ  やめて下さいっ!!」

マリアがシュイの杖へ掴みかかる  シュイが驚くと  魔法の発動が止まり アーサーの身体が地に倒れる

マリアが駆け付けて言う
「あのっ!?大丈夫ですかっ!?」

マリアがアーサーの顔を確認すると思う
(やっぱり  この人はっ!)

マリアが叫ぶ
「アーサーさん!!」

アーサーが意識を取り戻し苦しそうに言う
「…うっ  …うぅっ  …はぁ  …はぁ  …その  声は…  マリ…  ア…  ちゃん…?」

アーサーが薄っすらと目を開く

マリアが言う
「そうです!アーサーさん!私  マリアです!良かった…」

アーサーが言う
「マリア…  ちゃん…  に…げて…  シュイ…  さん…  から…っ  はぁ…  はぁ…っ」

マリアが一瞬 呆気に取られるが 苦笑して言う
「…そ、それはっ  だ、大丈夫ですよ!?アーサーさんっ!?これは  きっと…っ」

マリアが顔を左右に振ってから言う
「きっと  何かの間違えですよっ!?そうですよね?シュイさ…  っ!?」

シュイがマリアの肩を掴み  払いのけて言う
「退けっ!」

マリアが悲鳴を上げる
「きゃっ!?」

マリアが払われると  シュイがアーサーへ杖を構える

アーサーがマリアの声の方へ顔を上げて言う
「マリアちゃ…っ!?」

シュイが杖を発動させると アーサーの体に雷が落ち感電が始まる  アーサーが悲鳴を上げる
「うあぁあっ!!あぁあああーー!!」

マリアが怯えてから叫ぶ
「や、止めて…っ 止めて下さい!シュイさん!これ以上したらっ!?」

マリアが見詰める先 シュイは無表情に雷の魔法を放ち続けている

マリアが怯えてから意を決して言う
「シュイさんが こんな事をしただなんて  知ったらっ!――マキがっ!」

シュイが僅かに反応する

マリアが言う
「マキがどんなに 悲しむと思ってるんですかっ!?自分の大好きな人がっ!自分たちの友人へ  こんな事をしたなんて知ったら!?マキは…っ  シュイさんの事なんて!嫌いになっちゃいますよ!!」

シュイが歯を噛締めて言う
「…クッ」

マリアが言う
「目を覚まして下さい!シュイさん!!」

シュイが言う
「…っ  黙れっ!お前には  関係ないっ」

マリアが言う
「関係なくなんてありません!シュイさんもマキも!アーサーさんもアールモンドさんも!私の大切な人です!」

シュイが視線を強める

マリアが言う
「それに!人々を守るべきウィザードが!魔法で人を傷付けるだなんて!そんな事…っ  アークだって許しませんよ!?」

シュイが怒り言う
「黙れと言っているっ!」

シュイがマリアへ向く  魔法が止まり  アーサーが倒れる  マリアがアーサーの下へ向かおうとすると  その前をシュイが杖で塞いで言う

「私は奴を殺す」

マリアが目を見開く

シュイが言う
「邪魔をするな  …例え  アークの奉者であろうとも  次は容赦をしないっ」

シュイがマリアを見下ろす  マリアが思う
(これが…っ  人の命を奪おうとするヒトの  目…っ  ――怖いっ!)

マリアがペンダントを握り強く目を閉じると  一瞬の後  柔らかな風が吹き抜ける

シュイがハッとすると言う
「そうか…っ  お前は  呼べるのかっ」

マリアが気付き安堵の微笑で言う
「ウィザードさまっ!」

マリアの視線の先  シュイとマリアの間に割って  レイが背を向け存在している

マリアの声に レイが振り返ると言う
「マリア!俺が来たからな!マリアはもう  何も怖がらなくて良いんだぞ!マリアのウィザードさまは  最強のウィザードだからな!」

マリアが微笑すると言う
「…はい!ウィザードさまっ!」

マリアがシュイを見て視線を強める マリアの視線に シュイがバツが悪い様子で舌打ちをすると杖を掲げ 風に消える

マリアが一度 ホッとして肩の力を抜くが 直ぐに思い出して言う
「…っ そうでした!それより  ウィザードさま!?」

レイが言う
「ん?なんだ?マリア?」

マリアがアーサーの下へ行って言う
「ウィザードさまの魔法で!アーサーさんを…っ!」

マリアがアーサーの顔を覗き込むとハッと驚いて言う
「…えっ?」

アーサーの瞳から光が失われている

マリアが息を飲んで言う
「そんな…っ!?アーサー…  さん…っ?」

レイが言う
「アーサーって?」

マリアがレイへ振り返って言う
「アーサーさんを  助けて下さいっ!ウィザードさまの魔法でっ!お願いしますっ!」

レイが言う
「ん?ああ アーサーって そいつか マリア?俺は マリアが言うなら  そいつに何の魔法でも  掛けてやるけどさ?」

マリアが表情を明るめて言う
「有難う御座います!ウィザードさまっ  では  今すぐに…っ!」

レイが言う
「けど そいつは  アーモンドの従者で  魔力を使い切っちゃってる奴だから  癒しの魔法であっても  他の魔力者がやったんじゃ  身体は治っても  命が落ちちゃうんだよ?」

マリアが呆気に取られて言う
「え…?身体は治っても  命が…?…っ?あの…っ  それは?」

レイが言う
「だから マリアが そいつを助けたいって言うなら」

レイが杖を掲げる マリアが思わず掲げられた杖を見上げる と、間もなく 遠くからアールモンドが飛ばされてきて叫ぶ

「のあぁあ~~ぁあ~~あーーっ!?」

マリアが振り返って言う
「えっ!?」

マリアの振り返った先  アールモンドが地面に落ちバウンドして転がって言う
「ぎゃっ!イテッ!のあああ~!?」

アールモンドがスライドして止まると言う
「ぐぅ…っ  テテ…っ」

マリアが呆気に取られつつ近付くと アールモンドの背を見て言う
「こ、この黄色の法衣は…」

アールモンドが振り返り  怒ってレイへ詰め寄って言う
「おいっ  いきなり  アにしやがンだっ!?この  アークもどきのウィザードっ!?」

レイが言う
「おい  アーモンド?」

アールモンドが怒りを押し殺して言う
「アーモンドじゃねぇ…っ」

アールモンドの周りに雷が迸る

マリアが呆気に取られていた状態からハッとして言う
「あ、あのっ  ウィザードさまっ!?」

レイが言う
「俺がやったんじゃ  今のあいつには  どんな魔法でも  命を奪ちゃうからさ?だからお前  サッサとあいつに魔力を供給をしろよ?…って  マリアが言ってるぞ?アーモンド?」

マリアが衝撃を受けて思う
(私が言った事になってる!?)

アールモンドが言う
「あぁ?魔力を供給…?それから  俺はアーモンドじゃねぇって  何度言やぁ…」

アールモンドが視線を向けると 目を見開いて言う
「なっ!?アーサーっ!?」

アールモンドがアーサーへ駆け寄ると言う
「おいっ!アーサーっ!?どうしたっ!?おいっ!?アーサーっ!?」

アールモンドが思う
(一体どうなってやがる!?今朝会った時には  何でも無かったじゃねぇか!?何時もと同じで!?馬鹿みてぇに騒いで…っ)

アールモンドがアーサーの肩を掴む  アーサーの頭が力無くうなだれる  アーサーの身体から アールモンドの手に感電の残留がほとばしる

アールモンドが一瞬 呆気に取られると気付いて言う
「…っ!?この魔力はっ!?」

アールモンドが思う
(まさか…っ!?)

マリアが言う
「あの…っ  ごめんなさい  アールモンドさんっ  私が…  もっと早く…っ」

レイが言う
「おい  アーモンド  早くしないと  そいつの命  ホントに落ちちゃうぞ?…って  マリアが!」

マリアが衝撃を受けレイへ向く

アールモンドが言う
「…冗談じゃねぇ!」

アールモンドがアーサーの身体を抱きしめる  杖が倒れて音を鳴らす

アールモンドが思う
(アーサーっ!お前は…っ  …俺は  お前を  死なせたりなんかはしねぇよ!!)

アールモンドが意識を集中させると  アールモンドを中心に周囲に魔力が集まる

マリアが辺りを見渡して言う
「これは…?この光は  ひょっとして …魔力?」

マリアが周囲を見て思う
(以前見たのは  確か  ヴィザードさまが魔力の測定をしていた時…  けど  あの時見えた魔力とは少し違う)

マリアが魔力に触れて思う
(あの時のとは 違って…  一つ一つの粒子が  きらきら輝いて…  触れると確かに  その存在を感じる…  まるで  光ではないみたいに?)

レイが言う
「へぇ?アーモンドの奴  すげえ魔力が上がったんだな?魔力の結晶化が 出来る様になってたなんてさ?」

マリアが言う
「魔力の結晶化?」

レイが言う
「うん!魔力はたくさん集まると  魔力者以外にも見える様になる  で、もっと集まると  魔力の粉末結晶って言って  触れられる様にもなるんだ」

マリアが言う
「魔力の粉末結晶…?」

レイが言う
「魔力は元々物質の無い物だけど  その存在しない物質同士を結合させて  魔力の粉末結晶を作る事が出来るのは  雷属性のウィザードだけなんだ  それに それが出来るって事は  アーモンドの魔力は  今居るウィザードの中で最強って事になるな?」

マリアが驚いて言う
「え?アールモンドさんが  今居るウィザードの中で最強?…と言う事は?」

レイが言う
「俺は そのウィザードの中に入らないから  安心しろ  マリア!俺はマリアのウィザードさまでも  アークだからな!元々ウィザードとは  桁が違うんだよ!あはは!」

マリアが苦笑して言う
「…そ、そうですか  でも  ウィザードさまを除いた  ウィザードたちの中では 最強と言う事は…」

マリアがアールモンドを見る

レイが言う
「ああ!今居るウィザードの中で  これだけ魔力を集められるウィザードは  アーモンドだけだろうな?大したものだよ  たった1年前には  先輩の足元にも及ばなかったのにさ?今では  グレーニッヒよりも  魔力を使いこなしてる」

マリアが呆気に取られて思う
(そうなんだ?アールモンドさんが  そんなに…?)

レイが言う
「まぁ  そうは言っても  やっぱり  アーモンドはアーモンドなんだよな?」

マリアが衝撃を受けて言う
「え?アーモンドはアーモンド…?それは一体?」

アールモンドが意識を薄れさせると  言う
「うぅ…  アーサー…  …」

アールモンドがアーサーの上に倒れる

マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?アールモンドさんっ!?」

レイが言う
「ああ  やっぱり  倒れちゃったか?」

マリアが慌てて言う
「やっぱりって!?ウィザードさまっ!?」

レイが言う
「アーモンドは魔力反動を受けちゃったんだよ」

マリアが言う
「魔力反動を?では…!?」

マリアがアールモンドを見る

レイが言う
「アーモンドも  きっと  驚いて気が動転したんだ  それはそうだよな?自分の大好きな奴が  倒れちゃってたらさ?俺だって  マリアが怪我をした時には慌てちゃって  必要以上の魔力を集めちゃったもんな?」

マリアが言う
「な、なるほど…?では…?どうしましょう?魔力反動と言う事は 直ぐには目を覚ましませんよね?ここへ このままにして置く訳には行きませんし…」

マリアが辺りを見渡す

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