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1章

アナザーゲートキーパーズ 『運命の再チャンス』

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キッチン

ユウヤが目玉焼きを焼いている ユキがやって来て気付き横から覗き込んで言う
「へぇ…?きれいに焼けるんだ?」
ユウヤが一瞬驚いてから言う
「あっ ユキ 勝手にゴメン…っ!」
ユキが言う
「別に?私のキッチンって訳じゃないんだから」
ユウヤが言う
「そ、そっか?そうだよな?確かに…」
ユウヤが思う
(このアジトの設備は 共用だっけ…?)
ユキが言う
「でも 珍しいんじゃない?」
ユウヤが反応して言う
「珍しい…?ああ、昨日は 早めに寝たから それで 早く目が覚めたのかな…」
ユキが言う
「そうじゃなくて そうやって きれいに目玉焼きを焼ける男って?」
ユウヤが言う
「え?…ああ、そっちか?そう… かな?うちは 俺が子供の頃に 母親が死んで 親父と2人で住んでたから 料理とか俺がやってたんだ だから…」
ユキが言う
「ああ… そうだったの ゴメン」
ユウヤが言う
「いや 別に… でも、そうだよな?そんな理由でもなければ 普通 男が料理出来るって 無いよな?ユキは やっぱり女性だから?」
ユキが言う
「私も同じよ うちは両親とも居なくなっちゃって それで 私が… でも そうね?カリムの方が年上だけど やっぱり女だから 私が料理を作ってたわ カリムは目玉焼き所か 玉子焼きだって無理だと思う」
ユウヤが言う
「あ… ユキたちの方は 両親が…?それは 大変だっただろう?」
ユキが言う
「そうでもないわ 私たちの街では 結構 普通で… 私は覚えていないけど お母さんは どちらかと言えば美人だったみたい そう言う女は あの街の貴族だった ベーゲンベーゲン男爵に徴収されて 他の街に売られてたの それで」
ユウヤが言う
「そうだったのか… 酷いな… あ、でも その貴族は?」
ユキが微笑して言う
「ええ!私たちゲートキーパーズが討ち取ってやったわっ!これで お母さんを奪い返そうと 城へ向かって返り討ちにあった お父さんの仇だって取れたのよ!だから 私にとって ゲートキーパーズは…!」
ユキがハッとする ユウヤが疑問して言う
「うん?どうした?」
ユキが視線をそらして言う
「何でもない 何かちょっと 熱くなっちゃって…」
ユウヤが微笑して言う
「え?良いじゃないか?ユキの気持ちは凄く分かるよ 俺も… 今日は 俺の街へ行くんだから 終わった後は きっと 俺も今のユキと同じ気分になる筈さ?」
ユキが微笑して言う
「そうね なら協力するわよ ゲートキーパーズの仲間として」
ユウヤが言う
「うん 有難う」
ユキが微笑した後 気付いて言う
「って 良いの?焦げてるけど?」
ユウヤが衝撃を受けて言う
「え?…あっ!ああ!」
ユウヤが慌ててフライパンをあおる 焦げた目玉焼きがユウヤの手に落ちて ユウヤが叫ぶ
「あっちぃいーっ!」
ユキが呆気にとられた後笑って言う
「ふふふっ 馬鹿 しょうがないから 一緒に作ってあげるわよ?」
ユウヤが苦笑して言う
「う、うん ごめん やっぱり今日もユキに頼むよ」
ユキとユウヤが笑う

通路

ユウヤとユキが通路を歩いていて ユウヤが言う
「俺はいつも 皆より遅い方だと思っていたけど 皆もそんなに早いって訳では なかったんだな?」
ユキが言う
「まぁそうね?でも いつもなら テールとラシェ位は起きて来ても おかしくないんだけど」
ユウヤが言う
「それじゃ… 昨日は飲み過ぎたのかな?そのどちらも来なかったけど?」
ユキが言う
「昨日は 誰もそんなに飲み過ぎたって程では…」
ユキが気付き呆れて言う
「そうじゃなくて …アレのせいじゃない?」
ユウヤが言う
「え?アレって… なっ!?」
ユウヤがユキの視線の先を見て驚く 2人の視線の先 テールと仲間たちが部屋のドアに耳を付けている ユウヤが苦笑して言う
「皆… 何をやってるんだろう?」
ユキが言う
「あの部屋 ヴィンの食料庫よ?貴方も男なら 分かるんじゃない?」
ユウヤが言う
「え?ヴィンの食料庫… それじゃ あの女性たちが居る?…それで?」
ユキが咳払いをしてから言う
「うんっ …それを 私に説明させる気?気になるなら 貴方も行って来なさいよ?ついでに 皆に 朝食は自分たちで用意するようにって 伝えておいて!」
ユキがプイッと顔を背けて立ち去る ユウヤが言う
「あ… 分かったけど…?」
ユウヤが呆気に取られつつ思う
(玉子焼きも 作れないって言ってたのに…?)
ユウヤがテールと仲間たちのもとへ向かいながら言う
「あの 皆…?ユキが朝食は自分たちでって …それから 何を?」
ヤウがユウヤを見て言う
「シッ!静かにしろっ 今良い所だっ」
ユウヤが疑問して言う
「良い所?」
ユウヤがテールと仲間たちを見た後自分も同じようにドアに耳を付ける 室内から女の声がする
「あ… ああっ 駄目よ そこは…っ ああっ もっと 良いわっ あっ ああっ!」
ユウヤが驚いて耳を放して思う
(こ、これは…っ)
ヤウが言う
「どうだ!?良いだろっ!?」
キウが言う
「さっきっから すげぇ攻め みたいだっ 堪まんねぇよ!」
ユウヤが苦笑して言う
「いや… だからって あの…」
ユウヤが思う
(皆して それを聞いていたのか… そりゃ 皆の朝食を作ってあげるつもりだったユキも 怒る訳だ…)
テールが真剣に生唾を飲んで言う
「い、今の!”そこよそこよ”って何処だっ!?何処を攻めたら あんな…っ!?」
女の悲鳴が聞こえる
「あぁ~んっ!痺れちゃうわっ ヴィン お願い もっと あたしを… はっ あぁ…っ!」
ユウヤが苦笑して思う
(…にしても 皆も皆だけど ヴィンも こんな早朝から)
ドアが開き テールと仲間たちが押し退かされ ユウヤの前にヴィンが現れて言う
「うん?おや ユウヤ お早う 昨夜は良く眠れたかな?」
ユウヤが言う
「あ… は、はい… お陰様で…?」
ユウヤが思う
(自分の寝ているベッドの下に 棺があるって事で かなり 気は滅入ったけど …それでも 何とか)
ヴィンが言う
「それは何より 私もやはり 己の獲物の為になる研究が出来たというのは 気分の良いもの …では お次は」
ヴィンが立ち去る テールと仲間たちがそれを見てから ヤウが言う
「ここまで聞いちまったら もう 我慢出来ねぇよ!」
キウが言う
「同じ部屋で あんなの聞いてたんなら 他の女たちだって同じだろ!?だったら…っ!?」
テールが言う
「い、今ならっ!?」
ユウヤが言う
「あ… 皆?ゲートキーパーズは 仲間の女には手を出さないって ルールが…」
ラシェが言う
「相手も了承の上なら 構わねぇだろっ!?」
ユウヤが言う
「え?えっと… そうだっけ?」
カリムが言う
「おーい 女たちっ!誰か俺と!」
ヤウが言う
「あ!カリム フライングしやがって!」
テールが言う
「だ、駄目だ!フライングは駄目だぞ!リーダーとして そこはっ!」
テールと仲間たちが部屋に入ろうとするが感電して叫ぶ
「「んぎゃああぁああっ!?」」
ユウヤが呆気に取られる テールと仲間たちが床に倒れて言う
「し、痺れたぁ~」 「大切な所もぉ~」
ユウヤが苦笑して言う
「やっぱり ルールは守るべきだよ …あぁ それじゃ ルールのひとつである 伝言はちゃんと伝えたからな?」
テールが言う
「りょ… 了解~ リーダーが 痺れて 了解した~…」
ユウヤが苦笑して言う
「お大事に」
ユウヤが立ち去る

ユウヤの部屋

ユウヤが部屋の扉を開けて顔を向けた先で ヴィンが作業をしている ユウヤが思う
(うん?…もしかして 俺が居ると邪魔になるかな?)
ユウヤが立ち去ろうとする その耳に小さな物が水に落ちた音と続いてシュワシュワ~と音がする ユウヤが気付いて思う
(あれ?この音は…?)
ユウヤが振り返って視線を向けた先 ヴィンが作業をしている横で 水の入ったコップに入れられた錠剤から気泡が発生して 水が赤色に変わる ユウヤが思う
(あれは… ヴァンパイアが吸血代わりに使う …血漿タブレット?)
ヴィンが作業をしながらコップに手を掛け 口を付けた所でユウヤに気付き視線を向ける ユウヤがハッとして言う
「あの… それは」
ヴィンが言う
「ああ… いくら 理性は強いと言っても 血液の抽出を目の当たりにしながら 自身の吸血を抑えると言うのは やはり苦しい 昨夜 ユウヤの血を頂いたと言うのに」
ヴィンがコップの水を飲む ユウヤが言う
「自身の吸血を抑え…?じゃぁ さっきのは?」
ヴィンが水を飲み干してから言う
「彼女たちの首に牙を立て 快楽を味合わせて置きながら …こちらで」
ヴィンが抽出器に触れる ユウヤが言う
「え?何故そんな…?」
ヴィンが口元を拭って言う
「本日向かう メルス街の城に居るであろうヴァンパイアへの 土産になる物を作ろうかと思ってね?…よし、完成だ これが凝縮血液」
ヴィンが席を立ち装置から試験管を取り出して言う
「う~ん 我ながら良い出来だ 人の血液内の… ヴァンパイアにとっての不純物を全て排除し 必要な成分を凝縮した …言ってみれば 美味い所だけの 一級品… 流石3人の女たちに協力させただけの事はある」
ユウヤが言う
「それじゃ さっきみたいな事を3人も!?」
ヴィンが言う
「ああ… お陰で こちらが干乾びる所だったよ しかし これなら…」
ヴィンが辛そうに視線をそらす ユウヤが言う
「あの… ヴィン?何か…?」
ヴィンが言う
「すまないが こちらは ユウヤが持っていてくれないか?やはり 少し辛い…」
ユウヤが一瞬驚いた後慌てて言う
「あ!は、はいっ!」
ユウヤがヴィンの手にある試験管を持って見上げた先 ヴィンが一瞬 吸血衝動を表してユウヤを見る ユウヤが驚く ヴィンが衝動を抑えて手を放す ユウヤが呆気に取られている前で ヴィンが席へ戻り口を押さえた後 タブレットを直接飲み込む ユウヤが呆気に取られて思う
(あれ…?俺 この光景も…?)
ヴィンが落ち着いてから 口へ当てていた手を離して言う
「…はぁ 次からは これほど急な依頼は 控える様にと 伝えて置くか…」
ユウヤが声をかけようとして 慌てて試験管を内ポケットにしまってから言う
「あ、あの…」
ヴィンが苦笑して言う
「ああ、見苦しい姿を見せてしまった 謝罪しよう ユウヤ」
ユウヤが言う
「いえっ 今日の依頼は 俺の街なんで 俺にも責任は… 後 その… 出来たら 少し話を聞いても?」
ヴィンが言う
「もちろん、構わない もう落ち着いたから大丈夫だ 何でも聞いてくれたまえ」
ユウヤが言う
「えっと その、タブレットなんですが…」
ヴィンがユウヤの示すタブレットを見てから言う
「うん?ああ… こちらは 私が以前に作ったもので 彼女たちが居れば 必要ないと思っていた物なのだが… この様な時は やはり 役に立ってくれる」
ユウヤが言う
「そのタブレットは 他のヴァンパイアも手に入れる事が出来るんですよね?それは何処で?それとも…?」
ヴィンが言う
「いや、こちらは 世界に これしかない 私が作り 私が使用するだけの物」
ユウヤが疑問して言う
「え?でも… 俺は 確かに見た事があるんです それで… その頃は まだ幼かったから 意味は分からなくて ただ 泡が出て色が変わるって事が面白くて…」
ヴィンが言う
「うむ、そちらはきっと 過去に人の手によって 作られていたモノだろうな?」
ユウヤが言う
「過去に?ああ… そうなのか」
ユウヤが思う
(何だ そう言う事か… でも、それがあれば ヴァンパイアだって人を襲って 吸血しなくても大丈夫なんじゃ…?)
ヴィンが言う
「しかし、過去に置いての そちらの物は 今は作られていない そして、作られたとしても 恐らく誰も使用はしないだろう」
ユウヤが言う
「え?それはどうして?」
ヴィンが言う
「あれは ヴァンパイアが使用するには 欠陥があったからさ」
ユウヤが言う
「欠陥が?」
ヴィンが言う
「そう、私の作るタブレットは 人の血を凝縮しているが あのタブレットは… ヴァンパイアの血を凝縮していた」
ユウヤが驚いて言う
「ヴァンパイアの…?それじゃ ヴァンパイアがヴァンパイアの血を!?」
ヴィンが言う
「それをすると 一時的にだが吸血衝動を抑える事が出来るのだよ しかし、抑えるだけであって 吸血の代わりにはならない そして そのタブレットを常用し続けて行くと 極度の吸血衝動が発生し いくら血を吸っても満足を得られない ただひたすらに 人を襲い吸い尽くす鬼となる …それが 後に吸血鬼と呼ばれた 彼らの正体だ」
ユウヤが言う
「そうだったのか…」
ヴィンが苦笑して言う
「皮肉だな?人の血を吸う事を嫌い 人と共に生きる事を望んだ彼らが 吸血鬼となり 人に狩られる存在となった… だが、その作業を行ったのは もちろんヴァンパイアだ 人の力で 吸血鬼となったヴァンパイアの力を抑える事など 到底出来はしない」
ユウヤが言う
「それじゃ… ヴァンパイアが ヴァンパイアを狩った…?」
ヴィンが言う
「その通り、そして 私も そちらの作業を行った1人だ 多くの哀れな同胞たちを 楽にしてやったよ …そうだな このタブレットは 殆どがその時に作ったものだ 救うと言う名の下に 仲間たちの命を奪った …その報酬として得た 人の血を頂く事が出来ずに その保存方法として 元凶となったタブレットと同じ手法を用いて 人の血液を凝縮させた」
ユウヤが言う
「それじゃ 最初から 人の血を使ったタブレットを 彼らも使っていたら…」
ヴィンが苦笑して言う
「残念ながら 吸血鬼退治ほどの理由でもなければ 誰が ヴァンパイアの為に 己の血を提供してくれるだろうか?私の食料となった彼女たちとて 全てを失い 貴族に売られた事で 私の下へ運ばれ 結果として幻覚の快楽にしか 喜びを見出せなくなった 哀れな者たちだ」
ユウヤが視線を落として言う
「それじゃ… もしかしたら ディークも…?あの タブレットは彼も使っていた …だから それで」
ヴィンが言う
「いや 彼は吸血鬼にはならなかったよ」
ユウヤが驚いて言う
「ディークを知っているんですかっ!?」
ヴィンが微笑して言う
「もちろんだとも …とは言え 私が彼と最後に会ったのは ユウヤよりもずっと昔だ そして 彼の事は 人伝に聞いたのだが… 彼は 確かにタブレットを使用していたが その危険性を知った仲間に止められ 一度はタブレットの使用を止めたそうだ …だが」
ユウヤが言う
「だが…?」
ヴィンが言う
「タブレットを使用しても 吸血鬼にならずにすむ方法が1つだけあった …最も そちらをすると 吸血鬼になる事さえも超え 吸血衝動そのものが発生しなくなる」
ユウヤが呆気に取られた後に言う
「それは… 良い事なのでは?」
ヴィンが苦笑して言う
「フフフ… そう思うかな?ユウヤ?…そうだな 表面的に考えれば そうかもしれないが …ヴァンパイアは人の血を吸わなければ 生きてはいかれないのだよ?」
ユウヤがハッとして言う
「では… 吸血衝動が無くなったヴァンパイアは… 死ぬんですか?」
ヴィンが言う
「いや?ヴァンパイアは 銀を打ち込む事でしか 命を失う事は無い 従って 活動するエネルギーを失ったヴァンパイアは 深い眠りに付く… まるで死んだ様に それで人々は昔 死んだと思われた彼らを棺に入れ 埋葬した」
ユウヤが言う
「では ディークは深い眠りに…?」
ヴィンが言う
「さて…?すまないが 彼が最終的にどうなったのかは 私は聞いてはいない」
ユウヤが言う
「そうですか…」
ヴィンが言う
「答えを出してやれなくて すまなかったな ユウヤ」
ユウヤが言う
「あ、いえ… 話を聞かせて頂いて 有難うございます」
ヴィンが微笑して言う
「昔話が聞きたければ いくらでも話してやれるさ 頭脳派のヴァンパイアの役目でもある 遠慮なく聞いてくれたまえ」
ユウヤが微笑して言う
「はい… でも 俺なんかに教えてもらうには 何だか申し訳ない気もします 俺は 本当に 色々な事を知らない 世間知らずなので」
ヴィンが言う
「その様な事は気にしなくて良い ユウヤは… 私の大切な獲物なのだから」
ユウヤが衝撃を受けて思う
(うっ… そうだった… 俺は)
ヴィンが微笑して言う
「話を聞かせる位なら いくらでもその価値はある …とは言え、そちらはまたの機会に 今は これ位で 少し休ませてもらおう」
ヴィンがユウヤのベッドのボタンを押す 棺がスライドして来て蓋が開く ユウヤが衝撃を受けて思う
(…やっぱり 俺のベッドの下に 棺があるって言うのは…)
ヴィンが棺に入る ユウヤが表情を引きつらせつつ言う
「あ… もしかして 今朝は俺が起きるよりも前に 起きていたんですか?」
ヴィンが言う
「ああ、彼女たちからの血液の抽出に どれ程の時間が掛かるかが分かり兼ねたものでね?ヴァンパイアは平時はゆったり過ごすのが常だ 時間に追われる事は好まない 追われる位なら 早めに動こうと …お陰で 後は依頼へ向かうその時まで 安らかに休めそうだ」
ユウヤが苦笑して言う
「なるほど… 羨ましいです 俺は 分かってはいても 早く起きるのは苦手ですから」
ヴィンが軽く笑って言う
「フフフ… 私とて 若い頃はそうだったよ ざっと800年ほど昔までは?」
ユウヤが衝撃を受けて思う
(800年って…っ!!)
ヴィンが言う
「しかし 年を重ねるにつれて出来る様になって行ったのだよ ユウヤも もっと年を取れば きっと 出来る様になるだろう」
ユウヤが言う
「は、はぁ…」
ユウヤが思う
(俺には 一生無理な気がするよ…)
ヴィンが言う
「…ああ それから」
ユウヤが反応する ヴィンが言う
「先ほどの話だが ディークのその後がどうなったのかは 近い内に ユウヤ自身の目で 確認する事が出来るだろう」
ユウヤが呆気に取られて言う
「近い内に…?」
ヴィンが微笑して言う
「…では お休み ユウヤ」
ヴィンが横になるのと平行して棺の蓋が閉まり ベッドの下に収納される ユウヤが思う
(…けど、ヴィンの言う”近い内”って 一体 何百年後なんだろう…?)
ユウヤが苦笑して言う
「生きてるかな…?俺…?」
ユウヤが溜息を吐いてから部屋を出て行く

アジト前

テールが言う
「よーし 皆 集まってるなーっ!?」
仲間たちが叫ぶ
「おうっ!」
テールが言う
「おお!?お前ら 今日は ヤる気満々だな!?」
ヤウが言う
「あったりめぇよ!今朝あんなのを聞かされて 痺れが切れてからは この時の為に 堪えておいたんだ!」
キウが言う
「おうっ 俺もよ!」
テールが言う
「だからって お前ら 先を急ぎ過ぎるなよ!?俺はー!痺れてる間に ちょっと出ちゃったから 今は丁度良い感じだぜ!」
ユウヤが苦笑して言う
「皆… 張り切って依頼に向かう理由が…」
ユウヤが思う
(不純過ぎるよ…)
ユキが呆れて言う
「最低」
ユウヤが苦笑して言う
「だよな…?」
リックがやって来て言う
「何だか盛り上がってやがるな?」
ヴィンが続いて来て言う
「それが若さと言うものだろう?僻まない事だな リック」
リックがムッとして言う
「僻んでねぇよ…っ」
ユウヤが言う
「あれ?ヴィンも行くんですか?」
ヴィンが言う
「もちろん ユウヤが行くなら 私も行かなければ?」
ユウヤが苦笑して言う
「え?あ… え、獲物だから ですか?」
ヴィンが微笑して言う
「そう …誰よりも ”大切な”」
ユウヤが視線を落としつつ言う
「そ、それは どうも…」
ヴィンが微笑する ユウヤが困っている テールが言う
「よーし!それじゃ ユウヤの故郷メルス街へ向けて 張り切って しゅっぱーつ!」
仲間たちが言う
「おーっ!」

メルス城 城内

カリムが言う
「それじゃ 早速!」
ユウヤが思う
(門番の2人は リックとヴィンが一瞬で… やっぱり頭脳派のヴァンパイアであっても ヴィンの動きはリックと同じで 人間とはかけ離れてる)
カリムが催涙弾を手に取る ヴィンが言う
「うん?なんだ まだその様な時代遅れなものを?」
カリムが言う
「え?」
ヴィンが言う
「その様なものより こちらの方が 遥かに効率的だ」
ヴィンが試験管を見せる カリムが言う
「その液体は?」
ヴィンが言う
「見れば分かるとも」
ヴィンが試験管を通路の角の先へ放る 試験管がその場にいた用心棒たちの前で床に落ちて割れる 試験管の中にあった液体が瞬時に蒸発して用心棒たちが ガスを吸い首を押さえて叫ぶ
「ぐああっ!」
用心棒たちが倒れる ユウヤが驚く ヴィンが微笑して言う
「一時的に意識を失っただけだ 周囲のガスが消え しばらくした頃には 目を覚ますだろう」
カリムが言う
「そいつは 便利だなっ!?」
ユウヤが言う
「うん!それに…!」
ユウヤが思う
(これなら 間違って命を奪ってしまう事も無い)
テールが言う
「よし!なら この調子で 行くぜ 皆!」
皆が言う
「おうっ!」

リビングルーム前

待ち構えていた用心棒たちの前に試験管が放られ 床に落ちて割れるとガスが発生する 用心棒たちが慌てて言う
「ガスだっ!」 「うああーっ!」
用心棒たちが倒れる ヴィンが来て言う
「これで薬は品切れだが どうやら目的地には辿り着けた様だ」
アルサが言う
「何だ 結局1発も撃たずに 到着しちまったな?」
テールが言う
「なーに 良いじゃねぇか!?俺らが撃ち込むのは 野郎なんかじゃなくて 女たちの…!痛ぇ!?」
ユキが言う
「もうっ 全部 ヴィンに任せて あんたたちも倒れてたら!?」
テールが殴られた頭を抑えつつ言う
「いや ダメだっ!目標を目の前に 倒れてなんか居られないぜ!行くぜ!野郎ども!」
仲間たちが言う
「おう!」
ユキが呆れる ユウヤが苦笑する

テールを先頭に皆がリビングルームへ現れる テールが銃を構えて言う
「悪党貴族ナラーシャナラーシャ公爵!この街の住民に代わり 俺たちゲートキーパーズが成敗してやるぜ!大人しく 女を差し出して 金庫を開けろ!」
ユウヤが思う
(余計な一言さえ無ければ かなりキマる台詞なんだけどな…)
ナラーシャナラーシャが言う
「ふん ゲートキーパーズか 噂は聞いていたぞ?」
テールが言う
「なら話は早え!さっさと!」
キウが言う
「女を差し出せ!」
ユキがキウを殴る キウが頭を抑えて言う
「お、おいっ 仲間の頭を殴るなって!」
ユキが言う
「少しは自制しなさいよっ!」
テールが言う
「そうだ!女を…!」
ユキがテールを殴る テールが言う
「痛ぇっ!」
ユウヤが苦笑して言う
「相当飢えてるな 皆…」
ラシェが言う
「とりあえず 何か出せ!」
ユウヤが思う
(それじゃ もう強盗と一緒じゃないか…?)
ユウヤが苦笑する ナラーシャナラーシャが言う
「お前たちの要求は… 理解しかねるが…」
ユウヤが思う
(ごもっともです…)
ナラーシャナラーシャが言う
「今 各街の貴族たちを脅かしている ゲートキーパーズを 私が捕らえたとすれば 私の功績も上がるというものだ 従って こちらも用意をしておいたぞ?ゲートキーパーズ お前たちが従えていると言うヴァンパイアを倒す為の最強のヴァンパイアをな?」
ナラーシャナラーシャが指を鳴らす 部屋の片隅で人影が立ち上がる ユウヤが気付いて思い出す

ユウヤが言う
『親父が… それじゃ もしかしてっ その連れて行ったヴァンパイアって言うのはっ!?』
警部が言う
『ああ、君のお父さん タカヤの親友だったヴァンパイア …ディークだ 戻って来たタカヤの話では 公爵のヴァンパイアはとてつもなく強く ディークはまったく歯が立たなかったと 共に向かった警官たちはあっという間にその命を奪われ ディークは何とかタカヤを城から救い出しはしたが 敵のヴァンパイアの白銀の剣に刺され 敗北したとの話だった』
ユウヤが呆気に取られて言う
『公爵のヴァンパイアは それほどに…』

ユウヤが思う
(ナラーシャナラーシャ公爵のヴァンパイアは とてつもなく強いと… 親父がその目で確認した …けど、こっちには リックだけじゃなくてヴィンも居るんだっ ヴァンパイアが2人も居るのなら 例え ディークを倒したと言う 強いヴァンパイアが相手でもっ!)
ユウヤが顔を向けると 驚き目を見開いて言う
「え…?あれは…っ!?」
ユウヤの視線の先 武器を構えたリックの前に ディークが立ちはだかっている ユウヤが言う
「ディーク!?そんなっ!何故っ!?彼は殺されたんじゃっ!?」
ヴィンが言う
「いや?ディークは死んではいない その事実は 仲間のヴァンパイアには分かっていた …もちろん 私も その1人だ」
ユウヤが言う
「それじゃっ どうしてあの時!?アジトで話を聞いた時は 貴方はディークがどうなったのかは 分からないとっ!」
ヴィンが言う
「ああ、生きている事は分かろうとも どの様に生きているのかは 直接 確認を取るまでは分からない… 不確かな答えを論ずる事は 私の美徳に恥じる行為 従って 言ったはずだ ”近い内に ユウヤ自身の目で 確認する事が出来るだろう”と」
ユウヤがディークを見て言う
「ディークは生きていた… それも この街の… 俺の敵である ナラーシャナラーシャ公爵のヴァンパイアとしてっ!」
ユウヤが怒り手を握り締める ヴィンが言う
「果たしてそうだろうか?」
ユウヤがヴィンを見て言う
「え?」
ヴィンが言う
「よく見たまえ 彼は… 意識を喪失している 極度のエネルギー不足だ 恐らく その体を動かすために 直接人の血液成分を体内へ流し込まれたのだろう 彼は今 人間に操られているだけの 哀れなヴァンパイアだ」
ユウヤがディークを見る ナラーシャナラーシャが言う
「さあ ディークよ!目の前に居る そのヴァンパイアを 殺せっ!」
リックが武器を構えるディークがリックを見る ユウヤが言う
「なら どうしたらっ!?」
リックがディークへ襲い掛かる ディークが拳に付けたメリケンサックでリックを攻撃する リックがその攻撃をトンファーで受け止める ユウヤがハッと息を飲んでから言う
「二人を止めないとっ!?」
ヴィンが言う
「いや、しばらく戦わせるしかない 体内へ注入された血液を消費させるまでは 彼は 公爵の操り人形だ こちらの言葉はもちろん 自身が何をしているのかも分からない… とは言え」
リックがディークの攻撃を受け流しつつも押されている ヴィンが言う
「ディークは戦闘タイプのヴァンパイアの中でも かなりの実力者だ そうとなると体格差による力で劣るリックで 果たして最後まで抑えきれるだろうか?」
ユウヤが言う
「なっ!?でしたらっ ヴィンも戦って下さいっ!ヴァンパイアが2人ならっ!」
ヴィンが苦笑して言う
「残念だが 力の差を数で補うと言うのは 弱者と強者の差が さしてない時にのみ有効な手段だ 完全なる戦闘タイプの2人の戦いに 私が入った所で まったく付いて行けるものではない」
ユウヤがリックとディークを見て言う
「それじゃ… 何も打つ手は無いと?このままでは…っ」
リックがディークの拳をトンファーで受け止めるが 苦しそうに表情をしかめる テールがサブマシンガンを放ちながら言う
「おらーっ そこのヴァンパイア!俺も相手をしてやるぜ!掛かって来いーっ!」
ユウヤが言う
「テールッ!」
ディークが被弾してテールへ向き直り テールへ向かう テールが慌てて言う
「うわー ホントに来たーっ!?」
ヴィンが言う
「ふむ、そうだな?その手は有効かもしれない」
ユウヤが言う
「え!?」
テールが慌てて逃げる テールとディークの間にリックが入って叫ぶ
「俺の獲物に触んじゃねぇえ!」
リックの攻撃でディークがふっ飛ばされる ヴィンが言う
「少々危険だが 銃弾を浴びせ ディークから直接血液を排出させる… これにより 彼の身に取り入れられた血液の効力が無くなるのが先か もしくは 彼自身の血液が尽きるのが先か… 彼自身の血液を減らせば 戦闘能力も落ちる リックを守るにはそれしかない」
ユウヤが言う
「それならっ!」
ユウヤがサブマシンガンを構える ヴィンが言う
「出来るのかな?ユウヤ?相手はディーク 君の…」
ユウヤが言う
「彼自身を助けるための方法でもありますっ それに… 例え自身の血液を失っても ヴァンパイアは死なないっ!」
ヴィンが言う
「エクセレント その通りだ ユウヤ」
ユウヤがディークへ向かってサブマシンガンを放ちながら叫ぶ
「ディークー!」
ディークが被弾してユウヤへ向く ユウヤがサブマシンガンを撃ちつつ思い出す

幼いユウヤが家を飛び出して叫ぶ
『ディークー!…はっ!?』
ユウヤが立ち止まって後退る ユウヤの視線の先 ディークが壁を背に 全身から血を流し倒れている ユウヤが目を丸くして息を飲む ディークが苦しそうに言う
『ユウ… ヤ…』
ユウヤが言う
『ディーク…っ』
ディークへ銃を向けていた警察たちがユウヤを見てから言う
『子供… タカヤ巡査の息子だろう その子は良い 総員ヴァンパイアを狙え!』
警察たちがディークへ銃を向ける ユウヤが叫ぶ
『止めて!ヴァンパイアだって!…ヴァンパイアだって 撃たれたら痛いんだよっ 仲間に撃たれるのは 心が痛いんだってっ!?』
警察が言う
『仲間か… 流石はタカヤ巡査の息子だ ヴァンパイアを仲間と言うとは… 構わん 総員 撃てー!』
警察たちが銃を放つ ディークが被弾する ユウヤが目を見開く 警察が言う
『まだ吸血衝動は出ないか?…よし続けるぞ 総員構え!』
ユウヤが叫ぶ
『止めろーー!』

ヴィンの声が聞こえる
「ユウヤ!」
ユウヤがハッとする ディークがユウヤへ襲い掛かって来る ユウヤが驚いて言う
「う、うあ… わあぁあっ!」
ユウヤが観念して強く目を瞑る ディークとユウヤの間にヴィンが入って ディークへ水銀を振るい浴びせる ディークの肌が焼けてディークが悲鳴を上げる
「ぐああっ!」
ユウヤが驚く ヴィンがユウヤの腕を引いて言う
「さあ 今の内に下がるんだ ユウヤ!」
ユウヤがハッとして言う
「は、はいっ!」
ユウヤが返事をする間も無く ヴィンがユウヤを引き連れてディークから離れる 反対側でテールがサブマシンガンの弾倉を入れ替えて言う
「ほら こっちだ!もう一丁!掛かって来ーい!」
テールがサブマシンガンを放つ ディークがテールへ向かう テールがサブマシンガンで防御体制を取るが その前にリックが間に入って戦いを行う ユウヤがヴィンへ向いて言う
「有難う 助かりました… ヴィン」
ヴィンが苦笑して言う
「ふむ?まるで別の事でも 考えている様子だったが?」
ユウヤが言う
「あ… はい 昔の記憶を思い出していて…」
ヴィンが苦笑して言う
「ふふ… なるほど?」
ユウヤが気付いて言う
「いや、すみません そんな事へ意識を向けている場合じゃなかった 銃弾が切れていた事にも気付かずに 後一歩で 危うく 俺…」
ヴィンが言う
「いや?心配は不要だとも ユウヤ 意識の無いヴァンパイアに 獲物を取られるほど 私も落ちぶれては居ない 安心したまえ」
ユウヤが苦笑する ヴィンがディークを見て言う
「それに ユウヤとリックの獲物のお陰で 彼も大分弱って来た 後はもう リックが1人でも十分だ」
ユウヤがディークを見る ディークが体中から血を流しながらよろめく ユウヤが表情を苦しめる リックが武器を構えて言う
「さあ… そろそろトドメだぜ?覚悟は出来てるか?ディーク?」
ディークが疲れた息をする
「ハァー… ハァー…」
リックが言う
「言葉も理解出来ねぇか… 哀れなヴァンパイアだ 未練はねぇな?」
ディークがリックを見たまま疲れた息をする
「ハァー… ハァー…」
リックが言う
「今楽にしてやるよ?」
リックがディークへ襲い掛かり 次々にディークを攻撃して ディークが床に叩き付けられる ユウヤがディークへの想いを堪える リックが言う
「ここまでやっても 吸血衝動が出ねぇだなんて… もう ヴァンパイアじゃねぇのかもな?だとしたら こいつで終わりだ!」
リックのトンファーから刃が出る ユウヤが驚いて言う
「あの刃はっ!?」
リックが叫びながらディークへ襲い掛かる
「食らえっ ディークーッ!」
ユウヤが堪えきれずに 幼い頃と同じように叫ぶ
「『止めろーーっ!』」 
ディークへ向けられた刃がディークの首ギリギリの所で止められる ユウヤが駆け寄って呼ぶ
「ディーク!」
ユウヤがディークの横に屈んで言う
「ディーク!しっかりしてよ!ディークッ!?」
ディークが言う
「… ユウ… ヤ…」
ユウヤが驚く リックが反応して言う
「答えた…?ここまで自我を失っている状態でっ!?」
ヴィンが来て言う
「これなら助かるかもしれない …ユウヤ?預けて置いた物を」
ユウヤが一瞬疑問しつつハッとして凝縮血液の試験管を取り出す リックが疑問して言う
「そいつは?」
ヴィンが言う
「高純度の凝縮血液だ …ユウヤ そちらをディークへ飲ませてくれ 脱水症状のある今なら 彼でも飲まれる筈だ」
ユウヤが頷いて言う
「はいっ」
ユウヤが栓を抜き ディークの肩を起こして試験管の凝縮血液を飲ませる ディークが飲み終え小さく呻く
「… う…っ」
ユウヤが見つめている前でディークの体中の傷が癒えて行く ユウヤが驚いて言う
「す、すごい… 傷が…っ」
リックが言う
「ヴァンパイアなら 当然だ」
ユウヤが衝撃を受ける ヴィンが微笑して言う
「だが、それこそが 彼がヴァンパイアとして 保たれている証拠」
ユウヤがハッとして言う
「それじゃ!?」
ヴィンが言う
「彼の命も意識も これでもう大丈夫だ」
ユウヤが安堵の表情を見せる ヴィンが言う
「しかし、吸血衝動の方は そう簡単に回復はしない そちらが戻らなければ やはり 彼は生きる事は出来ない」
ユウヤが疑問して言う
「生きる事は出来ない?では…?」
リックが言う
「分かんねぇか?生きるって事はな?ただ命が続くだけじゃ意味がねぇんだよ 自分の意思の下に行動が出来なけりゃ… 少なくとも ヴァンパイアは 生きているとはされねぇ」
ユウヤが言う
「自分の意思の下に…」
ヴィンが言う
「生きる意志を持てなくなったヴァンパイアは 長い眠りに着く… ともすれば 永遠に目覚める事のないかもしれない深い眠りに …それを無理矢理に起こし 己の道具として利用した …奴の行いは 我々ヴァンパイアにとって 到底 許せるものではない」
リックが言う
「ぶっ殺してやんよ?」
リックが武器を構える ユウヤが衝撃を受け慌てて言う
「ま、ま、待ってくれっ!リックっ!」
リックが不満そうに言う
「あぁ?何で止めるんだよ ユウヤっ!?あぁあっ!?」
リックがユウヤに凄む ユウヤが慌てて言う
「ご、ごめんっ!だけどっ!ここで殺してしまったらっ!」
リックが言う
「しまったら何だっ!?」
ユウヤが言う
「この街の皆だって 公爵には多大な恨みがあるんだっ だから…っ!」
ヴィンが言う
「リック?ユウヤは奴をただ殺すだけではなく 多くの人々で 嬲り殺したいと言っている そちらの意見には 私も賛成だ」
ユウヤが衝撃を受けて思う
(えっ!?い、いや…っ 俺は… 法的な処罰を受けさせたいと…)
リックが言う
「なんだ そう言う事かよ… はっ!そうならそうって言えよ ユウヤ?お前も 言うようになったじゃねぇか?…クックック」
ユウヤが思う
(いや、俺 言ってないしっ!?そもそも そんな物騒な事は…っ!)
ヴィンがユウヤへウィンクを見せる ユウヤが気付いて思う
(…え?もしかして?)
リックが気を取り直して叫ぶ
「テール!良いぞ!いつもの通りだ!」
テールが気付いて言う
「お?お、おう!そうかっ!?よっしゃ!それじゃ!気を取り直して!」
リックがテールの下へ向かう ヴィンが微笑して言う
「彼の様なタイプには ああ言った 物騒な言葉の方が受け入れて貰える ”物は言い様”と言う 結果は同じとなるだろう?」
ユウヤが言う
「な、なるほど… 流石ですね?」
ヴィンが言う
「彼とは長い付き合いなものでね?」
ユウヤが苦笑する ヴィンが微笑を返した後 ディークの容態を見る ユウヤがその様子を見ている

城外

ユウヤが伏せていた目を開き意を決して言う
「この城に居た悪党貴族ナラーシャナラーシャ公爵は 我々ゲートキーパーズが 討ち取った!」
城の入り口前に集まっていた街人たちが喝采を上げる ユウヤが微笑してから振り返る ヴィンが頷きその後ろにリックがディークを担いでいる 民衆の一部にユーノスが居る ユウヤは気付かずに ディークを見て心配する

アジト

リビングルームで テールが叫ぶ
「よーし それではー!今日は 俺の花道5回目と6回目を祝って!かんぱーい!」
ラシェが言う
「何でも良いから かんぱーい!」
テールと仲間たちが乾杯して酒を飲みまくる テールがエールを飲み干して言う
「かっはぁ~!やっぱ 2回もイッた後は 喉も乾くぜ!」
ユキが呆れて言う
「最低」
テールと仲間たちが喜んで言い合う
「いやぁ~ 今日の貴族の城は 女だらけだったなぁ!」
「しかも どいつもこいつも 高飛車な奴ばっかりでよぉ!?」
「それがあの貴族の趣味なんだろ!?」
「お陰で 容赦なくガンガン行けたなぁ!?」
テールが言う
「ああ!お陰で今日の俺は 花道を2つも進めちゃったもんねー!?」
テールと仲間たちが笑う ユキが溜息を吐いてからリビングのドアを見る

ユウヤの部屋

ディークがユウヤのベッドに寝かされている ヴィンがディークを診察して言う
「やはり このままでは足りないか…」
ユウヤが言う
「足りないとは?」
ヴィンが言う
「取り入れさせた 血液の量がね… 今回は そのエネルギーの殆どが 彼の体の回復に使われてしまった お陰で 当初の目的であった 吸血衝動の回復には繋がらなかった …これでは 眠らせる事は出来ても 復帰させる事は難しい」
ユウヤが言う
「では もう一度!?」
ヴィンが言う
「ふむ… そうしたい所だが 正直 同じ手法で彼女たちから血液を抽出するのは 私には辛いな それに、必要とされる量を作るには 彼女たちでは到底足りず… 元より そちらをやっていては 私の食料が本当に無くなってしまう」
ユウヤが言う
「では… どうしたら?」
ヴィンが言う
「やるとするなら 彼は このままの状態で一度眠らせ 時間をかけて ゆっくりと 行っていくしかない… とは言え その時間の方は計りかねない …もしくは ゲートキーパーズの依頼の中で 女たちを犯すだけではなく その女たちの血を抽出すると言う手も有るが… やはり難しいな?抽出には時間が掛かってしまう ただでさえ彼らの性の欲に使われる事で 時間を取られている 人数も今日のように大人数を従えているのなら良いが 1人2人ではそれも不可能」
ユウヤが考える ヴィンが気を取り直して言う
「とは言え そちらも含め 気長に行うしかないだろう… となると もう1つベッドが必要か?このままではユウヤのベッドが 無くなってしまうからな?」
ユウヤが閃いて言う
「あのっ ヴィン?」
ヴィンが言う
「何かな?ユウヤ?」
ユウヤが言う
「俺に案があります!付き合ってもらえますか!?」

メルス街 街頭

ユウヤが言う
「お願いします!昨日の事で 怪我を負った仲間の為に 献血のご協力を!」
ユウヤの後ろに建物がある

建物内

警察が言う
「この街を救うために戦った ゲートキーパーズの為という事なら 協力しない訳には行かないな?」
ヴィンがマスクをした状態で言う
「ご協力を感謝しますよ」
ヴィンが警察の腕に針を刺す 建物のドアが開き ユウヤが言う
「ヴィン!もう1人 協力してくれるって!」
ヴィンが顔を向ける 警部が入って来て言う
「ユウヤ君の仲間が怪我をしたのだろう?それなら もちろん 協力させてもらうさ?」
ヴィンが微笑して言う
「流石は この街出身の”ユウヤ君”だ これほどに続々と 有志が集まるとは…」
ユウヤが言う
「はい!知り合いは結構多いので」
ユウヤが振り返って言う
「皆の お陰で助かるよ!」
建物内で献血をしている警察たちが微笑する ヴィンが言う
「警察の方々が居られると言う事で 他の方々も安心する 素晴らしい相乗効果だ」
ヴィンが警部の腕に付けた 献血機材を調整して管に触れる ヴィンの心臓がドクンとして ヴィンの指が管に通る血液に執着する ユウヤが言う
「ヴィンッ!」
ヴィンがハッとして平静を取り繕って言う
「これで… 後は安静にして この袋が一杯になるまで 楽にしていて下さい」
警部が言う
「ああ、分かった では 私も向こうの席に…」
警部が席を離れる ユウヤがヴィンの前に来て言う
「ヴィン 大丈夫ですか?」
ヴィンが一度目を伏せてから言う
「ああ… すまないが 少々休ませてもらう …すぐに戻る」
ヴィンが席を立つ ユウヤが心配そうにヴィンの背を見る

別室

ヴィンが目を閉じて顔を上げ 吸血衝動を抑えている ユウヤが入って来て言う
「ヴィン…」
ヴィンが目を開きユウヤを見て言う
「少し 休ませて欲しいと…」
ユウヤが言う
「苦しいですか?」
ヴィンが苦笑して言う
「そうだな 流石に… 少々堪える」
ユウヤが苦笑して言う
「なら… 少し位…」
ヴィンが言う
「いや、折角 ユウヤの案が上手く行っている この調子なら 今日一日で必要分が揃うかもしれない… そうとなれば 今はその少しでも無駄には出来ない」
ユウヤが一度視線をそらしてから言う
「後 どの位必要ですか?」
ヴィンが言う
「ざっと 今までの人数の倍と言った所だが この調子ならば きっと夕方までに揃うだろう …とは言え、このままでは 私の方が持たないな?出来れば この手は使いたくはなかったが」
ヴィンが懐からピルケースを取り出し タブレットを手に出す ユウヤが気付いて言う
「それは…?先日のものとは 少し色が…?」
ヴィンが苦笑して言う
「これが 例のタブレットだよ 後に こう呼ばれた …吸血鬼タブレットと」
ユウヤが驚いている前で ヴィンがタブレットを飲み込む ユウヤが慌てて言う
「そ、それを飲んではっ!」
ヴィンが苦笑して言う
「1度や2度 使った所で そうなると言う訳ではない …言葉もそうだが 物も使い様だ ユウヤ」
ユウヤが言う
「…はい」
ヴィンが立ち上がって言う
「では 続けよう これで後の時間は大丈夫だ」
ヴィンがドアへ向かう ユウヤが思う
(ヴィンは そこまでして協力を… 仲間のディークの為なのか?それとも…?)
ヴィンが振り返って言う
「ユウヤ?」
ユウヤがハッとして言う
「あ、はい!」
ユウヤが急いで向かう ヴィンが微笑する

アジト

皆が食事をしている テールが言う
「なんだ~ それで 朝から2人して居なかったのか!?俺はてっきり~?」
ユウヤが言う
「いや、それは無いから」
テールが言う
「え?なんだよ?まだ 言ってないだろ?」
ユウヤが言う
「どうせ ヤりに行ってたとか 何とかって言うんだろう?」
テールが言う
「そうは言わねぇけど… で?結局 何人とヤッて来たんだ?」
ユウヤが思う
(やっぱり同じじゃないか… …よし、こうなったら)
ユウヤが言う
「…うん!地元で有志を募ったから ざっと 30人位かな?」
テールが衝撃を受けて言う
「さ、30人だってぇえっ!?」
ユウヤが言う
「うん、そのくらいの人に ヤッてもらったよ?」
ユウヤが思う
(献血を… だけど)
テールが驚きながら言う
「す… すげぇ…」
ユウヤが呆れて思う
(本気にしたのか…?)
テールが言う
「で、でもよ!?30人と いっぺんになんて 出来ねぇよな!?」
ユウヤが苦笑して言う
「うん… いっぺんには無理だな?1人1人に刺してたよ?」
ユウヤが思う
(献血用の針を…)
テールが真剣に言う
「そ、そうか… 1人1人に… でも 30回だよな!?…ちなみに何回位イッたんだ?」
ユウヤが言う
「え?う~ん、なら… 10億の精子が尽きるまで?」
テールが衝撃を受けて言う
「じゅ、10億っ!???」
テールが謎めいている ユウヤが苦笑して思う
(本当に 言葉も物も使い様 だな)
ユウヤが立ち上がって言う
「ご馳走様 それじゃ ちょっとその成果を見て来るよ お休み」
テールが言う
「お、おうっ それだけヤッたら疲れるもんな?良く休んでおいてくれ!お休み ユウヤ先輩!」
ユウヤが苦笑して思う
(先輩って… まぁ 確かに 1日中献血のお願いをしていたせいか 俺も疲れたみたいだ… 今日も早く休む事にしよう)
ユウヤが言う
「ああ もうクタクタだよ…?お休み!」
テールが衝撃を受けてから言う
「お、おうっ!そりゃ… そうだろうな!?お疲れさん!」
ユウヤが苦笑して立ち去る ユキが呆れてテールへ言う
「少しは気付きなさいよ?馬鹿」
テールが言う
「ああ!やっぱり ユウヤはすげぇ奴だった!俺の目に狂いは無かったぜ!」
ユキが呆れて溜息を吐く

ユウヤの部屋

ユウヤが部屋に入って顔を向ける ヴィンが装置を操作している ユウヤが言う
「ヴィン どうですか?」
ヴィンが言う
「ああ、量と種類が多い分 少々手間は掛かっているが おおむね順調だ」
ヴィンが操作をしている ユウヤが言う
「あの… 少し休んでは?」
ヴィンが言う
「心遣いは感謝するが 私は1つの事を始めると とことんやらなければ気が済まない性質でね?それに… タブレットの効力がある内に 終わらせてしまいたいのだよ」
ユウヤが気付く ヴィンが微笑して言う
「大丈夫だ ユウヤ 例え効力が切れても 私がこちらの操作をミスするような事は 絶対にない」
ユウヤが頷いて言う
「はい ヴィンなら 大丈夫だと信じています」
ヴィンが微笑して言う
「それは嬉しいな」
ユウヤが微笑してから 自分のベッドを見て 空のベッドに疑問する ヴィンが操作を続けながら言う
「リックが ディークのベッドを用意してくれた 残念ながら この部屋にはもう置く場所が無いので 地下室のリックの隣に置いたと… 彼はそちらへ移しておいた 今日はユウヤも疲れただろう?リビングのソファではなく 自分のベッドで良く休むと良い」
ユウヤが微笑して言う
「分かりました 有り難う御座います」
ユウヤがベッドに座り 作業を見つめる

翌朝

ユウヤが疑問して思う
(あれ…?俺は…?)
ユウヤが目を開くとベッドに寝ている ユウヤが身を起こして言う
「いつの間に?」
ヴィンが言う
「お早う ユウヤ」
ユウヤがヴィンへ向いて言う
「あの… もしかして ヴィンが俺を?」
ヴィンが軽く笑って言う
「フフフ… 急に倒れたものだから 私も少々驚いてしまったよ 大分 疲れていた様だな?」
ユウヤが苦笑して言う
「あ、あぁ… そう言えば 人に何かを頼むのは あまり慣れていなくて」
ヴィンが言う
「では 気疲れかな?ユウヤらしい」
ユウヤが言う
「え?そうですか?」
ヴィンが言う
「ああ、未だに ユウヤは私に敬語で話をする 気を使っていると言う証拠だろう?」
ユウヤが気付いて言う
「あ… その… 敬語は 何となく… でも 気は使うといっても 嫌ではないので」
ヴィンが言う
「そうか… では 今は それで良しとしようか?」
ユウヤが微笑して言う
「はい」
装置が音を鳴らす ユウヤとヴィンが顔を向け ヴィンが言う
「完成した」
ヴィンが立ち上がり装置へ向かう ユウヤが続く ヴィンが装置からビーカーに入った凝縮血液を取り出して言う
「さぁ ユウヤ これを 昨日と同様に ディークへ…」
ユウヤが言う
「はい では」
ユウヤがビーカーを受け取ろうとすると ヴィンの心臓がドクンと高鳴りヴィンが言う
「うっ…」
ユウヤがヴィンを見る ヴィンが苦しそうに堪える ユウヤがビーカーを持つヴィンの手を見てから ハッとしてヴィンを見て思う
(まさか またっ!?)
ユウヤが言う
「ヴィン!?」
ヴィンが苦しそうに言う
「…は…なせ これ は… 私の…っ」
ヴィンが吸血衝動を表してユウヤを見る ユウヤが思う
(吸血衝動がっ!?)
ユウヤが言う
「しっかりして下さいっ!ヴィン!これは ディークに…っ!」
ヴィンが言う
「ディークに?…渡さない これは 私のモノだ…っ 離せっ!」
ヴィンがビーカーを持つ手を引く ユウヤがハッとして慌てて言う
「ヴィン!」
ユウヤが思う
(駄目だ 吸血衝動に支配されているっ!これでは 何を言ってもっ!?)
ユウヤが言う
「ヴィン!しっかりして下さい!ヴィン!」
ヴィンが怒りの表情を見せる ユウヤが強く思う
(まずいっ ヴァンパイアに 力では敵わないっ こうなったらっ!)
ユウヤがビーカーを持たない手を握り締めて言う
「すみませんっ!ヴィン!」
ユウヤが握りこぶしでヴィンを殴る ヴィンが不意を突かれ殴り飛ばされて床に倒れる ユウヤがビーカーを両手で持って言う
「後で もう一度 謝ります!」
ユウヤが急いで部屋を後にする

通路

ユウヤが地下室へ向かう通路の前でハッとして思う
(そうだっ!?この先には ディークだけじゃないっ リックも居るっ!…もし 戦闘タイプのリックに狙われたら!?例え不意を付いたとしても 俺の力では ヴィンの時の様には 行かないかもしれないっ!?)
ユウヤが言う
「ど、どうしたら…?」
テールがやって来て言う
「お?ユウヤか?どうしたぁ こんな所で?」
ユウヤがハッとして思う
(そうだ!テールにっ!)
ユウヤが言う
「テール!頼みがあるんだ!」
テールが呆気に取られて言う
「お?お、おう?」

地下室

テールがリックと共に地下室を出て テールが言う
「ごめんなー?リック 気持ちよく寝てた所をさ?」
リックが眠そうに言う
「あぁ… まったく 気持ち良く永眠してたってぇのに… まぁ テールがどうしてもって言うんなら しょうがねぇ…」
テールが嬉しそうに言う
「リックは何だかんだ言っても 俺に優しいからなぁ~?」
テールとリックが地下室のドアを過ぎる ドアの裏にユウヤが潜んでいる リックが言う
「はんっ 当たり前だろう?ヴァンパイアは自分の… …ん?…何だか 吸血衝動を誘う 良い匂いがしやがるが…?」
ユウヤがハッとしてビーカーの上を手で塞ぐ リックが言う
「誰か怪我でもしてんのか?」
テールが言う
「んー?どうかなぁ?あ!もしかしたら ユキが アレなんじゃねぇの?ほら あの… 月に一度の ほら?」
リックが言う
「ん~ そうか… まぁ確かに なんっつうか 普通の血よりも 熟成された匂いだ… なら 今度…」
テールとリックが立ち去る ユウヤが急いで地下室へ入ってドアを閉め 室内にある棺を確認する

ユウヤがディークの棺の蓋を開ける 重い蓋が開き その下にディークが眠っている ユウヤが呼ぶ
「ディーク?」
ディークがゆっくりと目を開く ユウヤが言う
「ディーク 分かる?俺… いや、僕だよ?」
ディークが言う
「ユウヤ…」
ユウヤが微笑して言う
「うん 良かった…」
ディークが言う
「すまない… 私のせいで リーディアが…」
ユウヤが言う
「僕は覚えて… いや、思い出せないけど 今は貴方を助けたいと そう思うんだ だから」
ユウヤがビーカーを向けて言う
「これを飲んで?体を元に戻す為に」
ディークが言う
「私も 良く思い出せない… だが… 私はユウヤに助けられた… そのユウヤが 私に言うのなら」
ユウヤが微笑して言う
「もしかしたら 飲むのは 辛いかもしれないけど…」
ユウヤがディークの肩を抱き起こしてビーカーを口へ近づけて言う
「こんな入れ物で ゴメン 移し替えている余裕も無くて」
ディークが苦笑して言う
「大丈夫だ それに… とても 懐かしい気分だ…」
ディークがビーカーに触れて凝縮血液を飲む ユウヤが言う
「懐かしい?」
ディークが凝縮血液を飲み干してから言う
「以前にも… 彼に 似たような物を作ってもらった… 彼の名は… ヴィーンリッヒ」
ユウヤが驚く ディークがユウヤを見て言う
「これも その彼が 作ったものだろう?」
ユウヤが静かに頷くディークが言う
「礼を言っておいてくれ 以前に続き また世話になると」
ユウヤが苦笑して言う
「…うん」
ディークが微笑した後言う
「もっと 話をしていたいが… 今は とても 眠い…」
ユウヤが微笑して言う
「うん、ヴァンパイアは たくさん睡眠を取るんでしょ?ゆっくり眠って 早く良くなる様に」
ディークが言う
「ああ、そうさせてもらう ユウヤ …有難う」
ユウヤが言う
「うん… お休み… ディーク」
ディークが微笑して頷いてから眠りに着く ユウヤがそれを確認してから棺の蓋を閉める

ユウヤがリビングの前に来て立ち止まる リビング内からテールの声がする
「よーしそれじゃ!ゲートキーパーズのリーダーとして 俺が!」
ユウヤがリビングのドアに手を掛けてから ふと手にしているビーカーを見て言う
「…その前に ヴィンに」
ユウヤがその場を去る

ユウヤの部屋

ユウヤが部屋に入って言う
「あの…っ ヴィン!?さっきは… …あれ?」
ユウヤが部屋の中を見渡して言う
「居ない?…あ?もしかして?」
ユウヤがベッドの近くへ行きボタンを押す 棺がスライドしてくるが蓋は開かない ユウヤが思う
(うん?…蓋が自動で開かないな?これは やっぱり 中で寝てるからって事なのか?)
ユウヤが蓋に手を掛けて思う
(開けてみようか…?でも 寝てるのなら 起こしたら悪いか?それに… もしかしたら さっき殴った事 怒っているかもしれない… だとしたら 俺は…?)
ユウヤが考えた後立ち上がる

リビング

テールがエールを片手に言う
「おおー!ユウヤー!」
ユウヤがやって来て苦笑して言う
「さっきは 有難う テール」
テールが言う
「なーに!良いって事よ!」
リックがワインを片手に言う
「何かあったのか?」
ユウヤがテールの下へ向かう テールが言う
「ああ、何でも リックに見られると 取られちゃうかもしれない すげー美味い”何とか血液”って奴を あのディークってヴァンパイアに飲ませたいから リックを 退かしてくれってさ?」
リックが言う
「何だと?」
ユウヤが衝撃を受けて思う
(う…っ せめて何か もっと包み隠して… まさか そのまま 本人に伝えるだなんて…)
リックが言う
「なら そのすげー美味い”凝縮血液”は 全部ディークに飲ませちまったのか?」
ユウヤが思う
(凝縮血液だって事が バレてるし!?)
リックが言う
「一口くらい 味見させろよ?」
ユウヤが困って言う
「いや… その… 量もギリギリだって話だったから… それに 吸血衝動が出たら 一口じゃ満足出来ないだろ?」
リックが言う
「まぁ そうだな?」
ユウヤが苦笑して言う
「理性の強い方だって言う ヴィンでさえ ああなってしまったんだから… リックじゃ多分… 俺を殺してでも 奪おうとするんじゃないかと思って…」
リックがムッとして言う
「うん?そいつはどういう意味だ ユウヤ?てめぇは ゲートキーパーズの 一応 仲間だろ?」
ユウヤが思う
(一応って言われた… 俺 一応だったのか?)
リックが言う
「いくら吸血衝動に駆られたって 俺がゲートキーパーズの仲間を 殺したりなんかする訳ねぇだろ?」
テールが言う
「そうだぜ?ユウヤ?」
ユウヤが言う
「あ… ゴメン そうだな?ちょっと言い過ぎたかもしれないけど でも、本当に取られてしまっては困るものだったから」
リックが舌打ちをしてワインを飲む ユウヤが言う
「あの… それで実は 2人に少し相談があるんだけど…?」
リックが言う
「だったら もう一度 その恐縮血液を持って来い 話はそれからだ」
ユウヤが思う
(それは無理だし…っ)
ユウヤが言う
「そ、それをするにも… それを作れるヴィンが…」
リックが飲もうとしていたワインを止めて言う
「うん?ヴィンがどうした?」
ユウヤが言う
「その… 実は…」

テールが驚いた表情で言う
「それで ヴィンを 殴ったのか?」
ユウヤが言う
「う、うん… やっぱり その…」
ユウヤが思う
(まずかったのか…?)
リックが笑って言う
「あっははははっ ヴィンの奴 自分の獲物に殴られたのかよ!?傑作だな!?っははははっ!」
ユウヤが困って言う
「一応 その時にも謝って… でも、改めてちゃんと謝ろうと思ったんだけど… 部屋に戻った時には ヴィンは もう 棺… ベッドに入っちゃってるみたいでさ?…その …怒ってるかな?やっぱり?」
テールが言う
「はぁ… そうだなぁ?」
リックがワインを飲む テールがリックを見る ユウヤが困って言う
「あ… でもさ?人間に殴られたって ヴァンパイアにしてみれば… そんなに 痛くは無いよな?」
リックが言う
「痛ぇもんは痛ぇよ… 増して 自分の仲間だと思っていた 人間から殴られたりしたらよ?体以上に痛ぇんだよ …ココがな?」
リックが言葉と共に胸を示す  ユウヤが衝撃を受けて思う
(う…っ それは 正に 俺が子供の頃から 知っていた筈の…っ!)
ユウヤが苦笑して言う
「…ち、ちなみに 例えば だけどさ?もし テールが… 同じ理由で リックを殴ったとしたら?リックは テールを… 怒るか?」
リックが言う
「ぶっ殺す」
ユウヤが衝撃を受けて思う
(そんなに怒ってるのかっ!?)
リックが言う
「俺はお前を そんな息子に育てた覚えはねぇぞっ テール!?」
テールが軽く笑って言う
「俺がリックを殴るだなんて そんな事する筈が無いだろ?リックは俺にとって 父親同然だぜ?」
ユウヤが苦笑して言う
「そ、そうだよな?父親同然… 俺は… 俺とヴィンは そんな仲じゃないし…」
テールが言う
「けど 殴るのは良くないだろ ユウヤ?父親同然なんかじゃ無くったってさ?ユウヤもヴィンも ゲートキーパーズの仲間同士だぞ?」
ユウヤが言う
「それは… そうだよな?だから」
ユウヤが思う
(ちゃんと謝ろうと 思っていたんだけど…)
リックが言う
「それだけじゃねぇよ ユウヤはヴィンの獲物なんだし ヴィンはユウヤのヴァンパイアだろ?互いの絆は 仲間のそれよか 強くなけりゃならねぇ」
リックがワインを飲む テールが言う
「ヴィンが飲みたいって言ったんならさぁ?そいつを 飲ませてやれば良かったんじゃないか?ユウヤ?」
テールがエールを飲み干してぷはーと息を吐く ユウヤが驚いて言う
「え!?いや、だ、だからさ?さっきも言ったけど 吸血衝動が出ている時に渡したりなんかしたら そのエールみたいに 全部 飲み干されちゃうだろう?だから!」
ユウヤが思う
(だから 俺は…っ!)
テールが言う
「なら それで 良いじゃないか?」
ユウヤが呆気に取られて言う
「は?」
テールが言う
「飲み干しちまったなら もう一度作れば良いだろう?それも駄目だったら もう一回さぁ?」
ユウヤが言う
「そ、それじゃ 何時まで経ってもっ!」
テールが言う
「けど、何時かはきっと 大丈夫だろ?大体 俺だったら 絶対出来ないな!リックがそんなに欲しがるんならさ?飲ませてあげたいじゃないか?」
ユウヤが驚く リックが微笑して言う
「流石は俺のテールだ イイ男に育ったぜ… 安心しろ 一度でも飲み干して満足すりゃぁ 次はちゃんと耐えてやるよ?」
テールが言う
「おう!そうだよな!俺だって 花道1回目の時は 耐えられなかったけどさ?2回目の時はちょっと耐えて もう少し 気持ち良いのを味わってから 出せたからな!」
リックが言う
「ああ、そう言う事だ」
ユウヤが思う
(分かりやすい例えだけど それと一緒にしないでくれっ!)
リックが言う
「ヴィンは自分の獲物は大切にするし 自分の息子同様に可愛がる… 心配しなくたって 怒っちゃいねぇよ ユウヤ」
ユウヤが驚いて言う
「リック…」
リックが言う
「だから さっさと謝って来い 何時までも 痛ぇ思いさせるなよ?早く癒さねぇと 傷が深まっちまうだろう?」
ユウヤが気付いてから 立ち上がって言う
「そうか… うん 分かった 有難う リック… それから テールも!」
テールが言う
「おう!どうって事ねぇよ!俺は リーダーだからな!」
ユウヤが苦笑して言う
「ああ… 本当に頼れる リーダーだよ」
テールが驚いて目を丸くする ユウヤが軽く笑ってから言う
「それじゃ 謝って来る」
ユウヤが部屋の外に出る 部屋の中からテールの声が聞こえる
「き、聞いたっ!?聞いたか!?リック!?俺 頼れるリーダーだって!?聞いた!?今の!聞いた!?」
リックが言う
「のぼせてんじゃねぇよ テール」
テールが言う
「よーし!それじゃ この日を記念して 俺はこのエールを… ぷはー!」
ユウヤが軽く笑ってから立ち去る

ユウヤの部屋

ユウヤが室内へ入って顔を向けた先 引き出してあった棺がベッドの下に戻っている ユウヤが思う
(あれ?元に…?)
ユウヤがベッドのボタンの近くに来て言う
「勝手に戻る仕掛けだったのかな?」
ユウヤが思う
(まぁ良いか とりあえず もう一度)
ユウヤがボタンを押す 棺がスライドして来るが蓋は開かない ユウヤが思う
(やっぱり 蓋は開かない… リビングにも居なかったし きっと中に居るよな?)
ユウヤが棺の横に屈んで言う
「ヴィン…?あの… さっきは殴ったりして 本当にゴメン… その… 俺は… 俺…」
ユウヤが考えた後苦笑して言う
「俺は… ヴィンを信じて… いえ 甘えていたんです ヴィンなら きっと分かってくれるんじゃないかって 俺を許してくれるんじゃないかって… だから 今は… ディークを助けようと それで… でも… ゴメン だからって いくらなんでも 駄目だよな 俺もテールみたいに… けど… それは俺だって ヴィンの事はっ!」
ユウヤが棺を見て言葉を止める シーンとした室内 ユウヤがハッとして思う
(あ… そう言えば?この棺って 確か超防音仕様だって…?)
ユウヤが衝撃を受けて言う
「そ、それじゃ ここで喋っても 中のヴィンには 聞こえないじゃないかっ!?」
ユウヤが思う
(何1人で言ってたんだよっ 俺っ!)
ユウヤが慌てて考えながら言う
「え、えっとっ!?なら?どうするっ!?蓋… 開けちゃうか!?って言うか 開けちゃって良いのかなっ!?」
ユウヤが困っていると棺の中から ヴィンの笑い声が聞こえる
「…クックック」
ユウヤが衝撃を受け思う
(あれ?聞こえる…?えっと?中からの声が聞こえるって事は…?)
ユウヤが蓋を開けて言う
「ヴィンっ!?聞こえてるんじゃないですかっ!?防音仕様だってっ!?」
ヴィンが笑いを抑えていながら言う
「フフフ… ああ、もちろん?しっかりと閉めていれば聞こえはしないのだが 先ほど 私に何か用があったのだろう?引き出しておきながら それっきりだったので 様子を伺うためにも 少し開けていたのだよ」
ユウヤが思う
(なんだ… そう言う事だったのか…?って いや?今はそれよりっ!)
ヴィンが身を起こす ユウヤが言う
「それは 分かりましたが… それより その… さっきは 本当にゴメン… なさい… 俺 …っ!?」
ユウヤが言葉の途中で驚く ヴィンがユウヤの頬に触れて言う
「私の方こそ すまなかった ユウヤ… 長時間の作業をしていたせいで 私とした事が タブレットの効力が切れていた事に気付かなかったのだよ 折角仕上げた ディークへの凝縮血液を 奪おうなどと… 私が悪い」
ユウヤが言葉を失って呆気に取られている ヴィンが微笑して言う
「ユウヤが謝る事は無い」
ユウヤが苦笑して言う
「ヴィン…」
ヴィンがユウヤから手を離して言う
「ディークは 飲む事は 出来たかな?」
ユウヤが言う
「はい」
ヴィンが微笑して言う
「結構 では 夜が更けたら 治療の続きを行おう それまでは 私も休ませてもらうよ」
ユウヤが言う
「はい 分かりました お休みなさい ヴィン」
ヴィンが一瞬驚いた後微笑して言う
「ああ、お休み ユウヤ」
ユウヤが疑問している前で ヴィンが棺に横になり 自動で蓋が閉められた棺がベッドの下へ戻る



月明かりの中 ユウヤが土を掘り終えて言う
「普通なら この位だと思うんだけど?」
ヴィンが言う
「ふむ 十分だろう では…」
ヴィンがディークの棺を抱えて穴の中へ降り その場へ下ろす ユウヤが言う
「それにしても… ただ眠りに着かせるのなら あのまま アジトの地下室に置いといても 良かったのでは?これではまるで…」
ヴィンが言う
「ヴァンパイアにとって 睡眠中は最も無防備な状態となる あのアジトでは 仲間が誰も居ない時もあれば 城と違い 侵入者を拒む仕掛けも無い それでは 安心出来る場所とは言い難いのだよ」
ユウヤとヴィンが穴の外へ出て 棺を見下ろし ヴィンが言う
「それに 城を持たないヴァンパイアは 通常は この様にして永い眠りに着く 土の中は ヴァンパイアにとっても 安らぎを得られる場所だ」
ヴィンがユウヤへ向く ユウヤが言う
「なるほど… 分かりました それじゃ…」
ユウヤがスコップで土を被せて行く 穴が埋められた後 ヴィンが十字架を立てる ユウヤが十字架を見て言う
「あの… 名前は…?」
ヴィンが言う
「命を落としていないヴァンパイアの墓標には 名前を記さない… それにより これを掘り起こすのは その名を知る者か もしくは… 何も知らない者となるか… 後者の場合は 俗に 運命の出会いと言われる」
ユウヤが苦笑して言う
「運命の…?」
ユウヤが思う
(俺たちの思う 運命の出会いは 恋愛事だと思うけど…)
ヴィンが言う
「そう、正に… 私とユウヤの出会いと同じく」
ユウヤが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
ユウヤが思う
(俺たちの出会いが 運命の…!?)
ヴィンがユウヤの肩へ手を置いて もう片方の手で頬をなでる ユウヤが衝撃を受けて言う
「う…っ あ、あの…っ?」
ヴィンが言う
「この私なら ユウヤの求めるものを 何でも与えてあげられるだろう… 君は何を求めるのかな?ユウヤ?」
ユウヤが言う
「え えっと… 俺は…っ」
ヴィンの指がユウヤの顎を上げさせる ユウヤが冷や汗を流す

アジト

テールがエールを片手に言う
「おー お帰り!丁度良かったぜ ユウヤ!」
ユウヤが微笑して言う
「た、ただいま…」
ヴィンが言う
「フフフ… ”今すぐに仲間の下へ帰りたい”とは 君の願いは謙虚だな?ユウヤ?」
ユウヤが思う
(それは願いと言うよりも あの状態から抜け出したかったって言うのが 本音だったけど…)
ユウヤが苦笑して言う
「…はい やっぱり 俺も 一応とは言え ゲートキーパーズなので…」
リックが言う
「あぁ?一応だと?んな 生半端な気持ちで ゲートキーパーズを名乗るんじゃねぇよ ユウヤ!」
ユウヤが思う
(さっきは リックが言ったのにっ!)
ユウヤが表情を引きつらせつつ言う
「ゴ、ゴメン…?」
テールが言う
「まぁまぁ 良いじゃねぇか!それより とりあえず ほれ 座って!まずは1杯エールでも飲んでから 話はそれからで良いぜ?」
テールがユウヤをソファへ引き寄せ ジョッキを渡す リックがヴィンへグラスを向けて言う
「自分の獲物に殴られた 哀れなヴァンパイアにも 飲ませてやるよ?」
ユウヤが衝撃を受ける ヴィンがグラスを受け取りワインを注がれながら言う
「失敬だな リック?私とユウヤは 吸血衝動を殴ってでも 止める事が許し合える 深い仲だと言う事だよ?」
リックが舌打ちをして言う
「チッ…」
ヴィンが微笑してワイングラスを軽く上げてから口を付ける ユウヤが苦笑して思う
(物は言い様か… でも まぁ そう言う事にしてもらえたのなら…)
ユウヤがジョッキを軽く上げてから一気に飲み干して言う
「ぷぱ~ 美味いっ」
テールが言う
「おお!相変わらず 良い飲みっぷりだな!ユウヤ!」
ユウヤが苦笑する テールがユウヤへエールを注いで言う
「よーし!それじゃ もう1杯!」
ユウヤが言う
「いや、それより 何か話でもあったんじゃ?」
テールが気付いて言う
「お!そうだったぜ!よし それじゃ!全員そろった所で 皆に報告だ!」
皆がテールを見る テールが笑んで言う
「俺たち ゲートキーパーズは!ついに 警察公認の組織になる!」
皆が驚く ユウヤが言う
「えっ!?貴族の女を 強姦するのにっ!?」
リックが言う
「ついでに その女の1人を吸い尽くしちまう ヴァンパイアまで居るぜ?」
テールが言う
「ああ!それで その最終決定のために 次の依頼を受けて欲しいって ヨルス街の貴族退治を頼まれたんだ!これを無事こなす事が出来たら 俺たちゲートキーパーズは 晴れて 公認の傭兵組織として 活動を許される!」
ヴィンが言う
「ヨルス街… あの城のヴァンパイアは 眠りに着いたままである筈だが?」
リックが言う
「それなら 余計にだな?何か裏でもありやがるのか?」
テールが疑問して言う
「裏ぁ?」
ユキが言う
「騙されてるんじゃないかって事よ」
テールが言う
「誰が?」
ユキが言う
「あんたが」
ユウヤが言う
「それなら ヨルス街出身の仲間って言うのは…?誰か居ないのか?それか 少しでも事情を知っているとかは?」
ラシェが言う
「俺は 出身って訳じゃないが その隣の街出身だから 多少は聞いた事がある けど… 特に 他の街と違う様な事は無かったと思うぜ?」
キウが言う
「ラウンスターク家の貴族は 何処の街でも横暴してるのが 普通だろ?」
ユウヤが言う
「なら… 大丈夫かな?」
ヴィンが言う
「心配ならば 事前に街の者から話を聞いたら良い ゲートキーパーズの名は 既に庶民へも浸透している 従って 助けが欲しくば 向こうから話を持って来る筈だ」
リックが言う
「一応 確認はして置くか?」
ヴィンが言う
「賢明だな?…と言う事で」
リックとヴィンがほぼ同時に呼ぶ
「テール」 「ユウヤ」
テールとユウヤが驚いて言う
「「え?」」
リックが言う
「ってぇ事だから ゲートキーパーズのリーダーとして」
ヴィンが言う
「賢い 私の獲物として」
リックとヴィンが言葉を合わせる
「「事前に」」
リックが言う
「確認を取って来い」
ヴィンが言う
「情報を収集して来たまえ」
テールが言う
「あ~… 依頼は 明日なんだけどな?」
リックとヴィンが言葉を合わせる
「「事前に」」
ユウヤが苦笑して言う
「それじゃ 依頼を行うより前に… ヨルス街って言うと ちょっと遠いから 早起きしないと…」
テールが言う
「俺は父親代わりに似て 夜型なんだけどなぁ?」
ユウヤが苦笑して言う
「俺もまだ 早起き出来るほど 年は取ってないんだけど…」
リックが言う
「テール」
テールが言う
「ま、リーダーだもんな?しょうがねぇか?」
ヴィンが言う
「ユウヤ?」
ユウヤが言う
「う、うん… それじゃ… 一応 行って来るよ…」
テールが言う
「じゃぁ 一緒に行くか?ユウヤ?」
ユウヤが言う
「あ、ああ そうだな?」
リックが言う
「流石は 俺のテールだぜ?」
ヴィンが言う
「流石は 私のユウヤだ」
リックとヴィンが視線で火花を散らせる ユウヤが苦笑して言う
「な、なんだろう…?」
ユキが言う
「親馬鹿な2人って事じゃない?」
ユウヤが衝撃を受けて言う
「お、親…」
ユウヤが思う
(そっか… ヴィンにとって 獲物の俺は リックとテールの様に 自分の息子と同等なのか…?でも、まぁ それなら?)

ユウヤの部屋

ヴィンがユウヤの頬を撫でて言う
「では お休み ユウヤ 明日は早いが 気を付けて行って来たまえ」
ユウヤが苦笑して言う
「は、はい…」
ユウヤが思う
(これも… 親として 子の俺を可愛がってくれているって事で… 変な意味ではないんだよな?それなら…)
ユウヤが衝撃を受ける ヴィンがユウヤの頬を愛撫して言う
「フフフ… 何を怯えているのかな?私がユウヤを吸い殺す様な事など 決して無いと言う事は もう 分かってもらえているものと 思っているのだが?」
ユウヤが言う
「は、はい それは…」
ユウヤが思う
(それは分かっては居るんだけど むしろ それ以外の心配が…っ)
ヴィンが言う
「そうか ならば良いのだが では これで…」
ヴィンがユウヤの首筋を舐める ユウヤが衝撃を受ける ヴィンが言う
「ゆっくり休みたまえ 起きられなければ 私が 起こしてあげよう もちろん優しく… …クックック」
ヴィンがユウヤの頬を撫でてから棺に入って蓋が閉まり収納される ユウヤが思う
(こ… これもきっとっ …ヴィンとしては 親としての愛情表現の一つなんだろう… 俺にはちょっと 過激過ぎるけど)
ユウヤが布団に入って思う
(明日は ヴィンに優しく起こされる前に なんとしても 自力で起きよう じゃないと また 何をされるか…)
ユウヤが溜息を吐いてから毛布に潜る

翌日 ヨルス街

テールが言う
「やっぱヨルス街は遠いな!?早めに出て正解だったぜ!」
ユウヤがあくびをしてから言う
「テールは夜型って言っていた割には 元気だな…?俺は…」
ユウヤが思う
(ヴィンに起こされないためにも 早く起きようと強く思っていたお陰で 中々寝付けなくて 結局…)
ユウヤが思い出す

ユウヤが眠っているベッドの下から棺がスライドして来て蓋が開く ヴィンが起き上がり朝日を眩しそうに手で遮ってから ユウヤに近付き頬を撫でて言う
『ユウヤ…?もう眩しい朝日が昇っている そろそろ起きなければ 約束の時間に遅れてしまうが?』
ユウヤが寝苦しそうにする ヴィンが微笑して言う
『フフフ… まだ眠り足りないのかな?しかし…』
ヴィンがユウヤの顔に唇を近付ける

ユウヤが身震いして顔を左右に振って記憶を掻き消してから気を取り直して言う
「いや!それじゃっ!早速っ …ど、どうしようか?」
テールが言う
「そうだな~?それじゃ 適当に… おーい そこのお姉さ~ん!」
テールが2人組の女性に声を掛けて言う
「今、ちょっと 良かったら 話を…」
ユウヤが思う
(あぁ すごいな テール… 相変わらずと言うか 見ず知らずの女性にも あんなに親しげに… とても 今まで彼女が0人だったなんて 思えない位)
テールが言う
「でもって ついでに そのまま俺と 一発ヤっちまわない!?」
女性2人がテールの頬をひっ叩く ユウヤが衝撃を受けて思う
(納得したよ…)
女性2人がテールから去る テールが殴られた頬を押さえて言う
「何だよ?いきなり… なぁ?」
ユウヤが言う
「いや、いきなりは君だろ?テール?」
テールが疑問して言う
「え?俺は ただちょっと話を聞こうとしただけだろ?…で、もし気が合ったら 1発ヤっちゃわないか?って…」
ユウヤが言う
「それは思っても 普通は 口にしないものだからっ」
テールが言う
「え?そうか… それじゃ…?」

ユウヤが言う
「なるほど… 参考になりました」
女性が言う
「何処の街も同じだと思うけど 綺麗な奥さんが欲しかったら やっぱり 別の街が良いと思うわ 最近は貴族が退治された街なんかも あるって言うじゃない?」
ユウヤが言う
「そうですね… やっぱり 新居を構えるなら そっちの方が良いのかな~?」
女性が軽く笑って言う
「うふふ… ええ、私も 引っ越せるものなら そうしたいと思う程だから それじゃ…」
ユウヤが言う
「はい 有難う御座いました」
ユウヤがテールへ向いて言う
「4、5人聞いてみたけど 皆同じで… どうやら この街の貴族 ラムールラムール男爵も 街の綺麗な女性を自分のものにする 貴族みたいだ」
テールが言う
「みたいだな?じゃぁ 今までの依頼の街と 同じって事か?」
ユウヤが言う
「少なくとも この街の貴族を退治したら他の街の時と同じ様に 住民には感謝されるんじゃないかな?」
テールが言う
「よし!それなら大丈夫だ!依頼は予定通り引き受けようぜ?」
ユウヤが言う
「うん それで 良いんじゃないか?」
テールが言う
「…にしても ユウヤは女と話をするのが上手いんだな?流石は 5人の女と付き合ってただけの事はあるぜ!」
ユウヤが苦笑して言う
「いや、下手なんだろ?5人も付き合って 結局 別れちゃってるんだからさ…?」
テールが疑問して言う
「そうかぁ?俺なんかより ずっと上手いと思うけどなぁ?」
ユウヤが思う
(そりゃ… 0人の人よりは… って言うか あのテールの話し方じゃ 絶対無理だと思うんだけど)
テールが言う
「何で別れちゃうんだ?」
ユウヤが言う
「え?」
テールが言う
「ユウヤが その女に飽きちゃうとか?」
ユウヤが言う
「い、いやっ そんなっ!俺は… いつも 振られる側だよ」
テールが言う
「へぇ… で、何で?」
ユウヤが言う
「いや、だから それが分かったら 振られないと思うんだけど?」
テールが言う
「あ、そっか?」
ユウヤが苦笑して言う
「うん… まぁ そんな感じで… 所で、情報収集もひと段落したし 何か軽く食べに行かないか?朝は時間が無くて 昼も食べなかったから 俺…」
ユウヤが周囲を見渡していて 驚いて目を止める テールが周囲を見ながら言う
「そうだな!どっか店に入って… がっつりと!…ん?どうした?ユ…」
ユウヤが目を止めていた女性がユウヤを見て驚いて言う
「…ユウヤ君?」
ユウヤが言う
「リマ… ちゃん?」
テールが疑問して言う
「お?知り合いか?ユウヤ?」
ユウヤが言い辛そうに言う
「あ… 彼女は その… 俺の… 元、彼女」
テールが衝撃を受けて言う
「何ぃ!可愛いじゃないか!」
リマが一瞬驚いた後微笑してユウヤへ言う
「ユウヤ君の お友達?」
ユウヤが言う
「あ、うん そうなんだ 彼は…」
テールが言う
「俺はユウヤの大親友の兄貴分で!テールって言うんだ!よろしくな!」
ユウヤが思う
(いきなり 大親友になった上 勝手に兄貴分にまでなってるけど… まぁ 良いか?)
ユウヤが苦笑する リマが微笑して言う
「初めまして リマです」
テールが言う
「おう!初めまして!リマって言うのか!それじゃ リマ!良かったら これから 俺と1発ヤらな… がっ!?」
ユウヤがテールを殴る リマが呆気に取られる テールが苦笑して言う
「冗談だって!仲間の女には 手を出さないルールだろ?」
ユウヤが言う
「ルールの前にっ テールはその初めて会う女性に いきなりそう言う事を言うのは 止めないと!何時まで経っても 0人のままだぞ!?」
リマが声に出して笑って言う
「うふふっ 変わってないね?ユウヤ君」
ユウヤが一瞬呆気に取られてから言う
「え?そ… そうかな?」
リマが微笑して頷いて言う
「うん とっても…」
テールがユウヤの腕を引いて言う
「ユウヤ!ちょっと こっち来い…っ」
ユウヤが驚いて言う
「え?」
テールがリマへ向いて言う
「悪い!ちょっと 一瞬だけ!」
リマが呆気に取られて言う
「え?あ、はい?」
テールがユウヤを少し離してコソコソ言う
「ユウヤ?もしかして お前 まだ リマの事が好きなのか?」
ユウヤが言う
「えっ!?そ… それは…」
テールが言う
「隠すなってっ!どうなんだよ!?」
ユウヤが困って言う
「だから… さっきも言った様に 俺はいつも振られる側だから…」
テールが言う
「つまり好きなんだな!?」
ユウヤが言う
「う、うん…」
テールが言う
「俺が思うに リマもユウヤの事が好きだぜ!?」
ユウヤが驚いて言う
「えっ!?いや…っ それは無いと思うよ?リマ… ちゃんは 他に好きな男が出来たからって… それで…」
テールが言う
「いやっ!あの感じは間違いないっ!ユウヤ!これぞ 運命の再チャンスだ!?」
ユウヤが言う
「う、運命に 再チャンスって… わっ!?」
テールがユウヤを引き連れて リマのもとへ戻りながら言う
「あ~悪い悪い!実はこの後 軽く飯でも食いに行こうか?って話してたんだけどさ?俺ちょっと 昨日の酒が残っちゃってて まったく食えそうにないんだわ?けど 知らない街に来て 1人でどっか行って 食って来い!って言うのも 難だろ?だからさ?」
テールが微笑して言う
「リマ!良かったら ユウヤに少し付き合ってもらえないか?」
リマが頬を染めて言う
「え…っ?」
ユウヤが驚き 慌てて言う
「な、何言ってるんだよっ!?テールっ!?」
テールが言う
「良いじゃねぇか?ちょっと位さ?昔話に花を咲かせても良いし 最近どうしてるー?とかさ?何か話でもしながら 適当に食って来いって!」
ユウヤが言う
「けどっ!?」
テールがリマに言う
「駄目かなぁ?頼むよ リマ~?」
リマが呆気に取られた状態から軽く笑って言う
「ふふふっ 面白い …それじゃ 折角だし ユウヤ君?」
ユウヤが言う
「えっ!?」
リマが言う
「近くにね?おいしいパスタのお店有るよ?ユウヤ君 カルボナーラ好きだったでしょ?そこのお店のカルボナーラ 多分好みだと思うな?」
ユウヤが言う
「そ、そうなんだ?それじゃ…」
テールが言う
「おー!行って来い 行って来い!俺は 適当に ラーメンチャーハンセットでも食ってくるわ!じゃぁな!また 夕方駅前でなー!?」
ユウヤが衝撃を受けて思う
(昨日の酒が残ってて まったく食べられそうにないって 言って置きながら ラーメンとチャーハンのセットを食いに行くって言っちゃってるよっ)
テールが嬉しそうに去って行く ユウヤが呆れている横でリマが呆気に取られた後 笑って言う
「ふふふっ 面白いお友達だね?」
ユウヤが苦笑して言う
「う、うん… 面白いって言えば 面白い… かな?」
ユウヤが思う
(リーダーとして考えると そう言う所は ちょっと心配だけど…)
リマが言う
「それじゃ… さっき言った お店で良い?」
ユウヤが言う
「あ、うんっ 有難う」
リマが頷き リマとユウヤが店へ向かう



続く
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