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【 第5プラント 】帝国へ!堂々と潜入大作戦!

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ペンライトの光が灯され  バッツスクロイツがレビへ手渡して言う
「レビっちはこれ使って?オレっちはこれで…」
バッツスクロイツがタブレットのライトを点ける  金田が言う
「なら  どう言う順番で行く?階段は一人ずつしか行けそうにないけど?」
バッツスクロイツが言う
「戦力もある上で  相手に見られた時  驚かさない為にも…  出来ればレビっちに先行して貰いたいんだけど?」
レビが銃を手に言う
「分かった  では  俺が先頭を行く」
金田が言う
「それじゃ  俺がレビっちの後ろで  灯りを持つよ?」
金田が手を出すと  レビが言う
「分かった  頼む」
レビが金田へペンライトを渡す

レビ、金田、ブレード、バッツスクロイツ、デスの順番で階段を降りて行く  皆が慎重に向かう  階段が終わり  レビが立ち止まって言う
「…階段が終わる  通路へ出るぞ?」
皆が無言で頷く

レビが階段から先の空間へ飛び出し銃を構えて周囲を警戒する  金田がペンライトで辺りを照らす辺りは瓦礫に埋もれている  金田が言う
「…地下も崩れてたのか」
レビが上を見上げて言う
「安全とは言い難い  探索は極めて短時間にて  終わらせるべきだ」
上空から砂埃が落ちて来る  金田が怯えて言う
「うぅう…っ  それこそ大声出しただけでも  崩れそうだな…っ?」
バッツスクロイツが言う
「確かにヤバそうだね?行ける範囲で良いよ  レビっちっ?」
レビが言う
「了解  キャプテン」
レビが銃を構えて進行する  金田がビビりながら続く  ブレードから後ろが続く

レビが先行して立ち止まって言う
「…っ  これは…?」
金田が続いて立ち止まり  ペンライトで周囲を照らし見て言う
「広いなぁ?こりゃ…  逆にどっちへ行ったら良いのか  分からなく…?」
金田が一歩踏み出す  足元でポキッと何かが折れる  金田が疑問して言う
「ん?何か?…ひっ!?ひぎゃぁああ~~~…ンッ!?」
金田の持っていたペンライトが地に落ちる  レビが金田の口を抑えている  バッツスクロイツが言う
「な、何っ!?どうしたっ!?」
金田がレビの手に抑えられながらモガモガ言っている  レビが言う
「問題ない…  ただ…」
金田が頷きながらレビの手を叩いて言う
「ンッ  ンッ…」
金田が口を解放され  進行方向へ背を向けて息を整える  レビが落ちていたペンライトを拾って周囲を確認して言う
「周囲に大量の人骨があるだけだ」
バッツスクロイツが悲鳴を上げて言う
「ンノオォオー!イッツ  プロブレーー…ムガッ!?」
バッツスクロイツの口を金田とレビが抑えている  天井から砂埃が落ちて来る  バッツスクロイツが衝撃を受ける

金田とバッツスクロイツが2人で震えている  レビが屈んで人骨を確かめて言う
「古い物だ  城の崩壊より  ずっと以前から放置されて居たのだろう」
レビがペンライトで辺りを照らす  バッツスクロイツが言う
「ずっと以前からってっ!?ソークレイジー!」
金田が言う
「それじゃ  それが  お城の人たちかな?だとしたら  このお城には  ずっと以前から  誰も住んで無かったって?」
レビが言う
「誰も住んでいない城を  わざわざ破壊する必要があるとは思えない  決して小さくはない城だ  ここまでの破壊を行うには  相当量の爆薬を必要とする」
金田が言う
「なら?」
レビが考える  レビの服からチッピィが現れ  鼻を利かせる  バッツスクロイツが言う
「なら  取り敢えず  ここは  エスケープするって事で  どおっ!?そろそろ  ココもデンジャーゾーンになってっ!?それこそオレっちたちまで  ココに居る皆さんの  マーナカになっちゃったり何か  しちゃったり何かしたらっ!?」
チッピィがチュウチュウ鳴く  レビが言う
「うん?どうした  チッピィ?」
チッピィが再び鳴いてレビの肩から地面へ降りて進み  振り返って呼ぶ様に鳴いて道を行く  レビが言う
「チッピィ?そっちに  何かあるのか?」
チッピィが振り返り再び鳴いて進む  金田が言う
「レビっち?ネズミさん  何だって?」
レビが言う
「分からない  だが  俺たちを  向こうへ向かわせたい様だ」
金田が言う
「って事みたいだけど  どうする?キャプテン?」
バッツスクロイツが言う
「うーん…  オレっちとしては正直もう  ここからはエスケープしたい所だけど…」
チッピィが言う
「チィチィ!チィチィチィ!」
バッツスクロイツが言う
「あの怖がりなチッピィっちが  あんなに呼んでるんだもん?ここでキャプテンのオレっちが  行っかなーい  何て?言えないっしょ?」
金田が微笑する  レビが言う
「流石は  我々のキャプテンだ」
金田が言う
「それじゃ  出航!前方の  …チッピィ丸に続けー!」
チッピィが一瞬呆気に取られた後  嬉しそうに鳴いて走る  皆が付いて行く

皆が呆気に取られる  チッピィが小さい隙間の先を示してチュウチュウ鳴いている  皆が困り  金田が言う
「チッピィ丸?我らの船体では  この先へは  航行不可でありますー  どうぞー?」
チッピィが反応して隙間と皆を見比べて言う
「チチッ  チュウッ!」
チッピィが猛スピードで居なくなる  金田が言う
「あれ…?逃げちゃった?…ごめん  レビっち?俺  レビっちのネズミさん  逃がしちゃったかも?」
レビが言う
「…いや  問題ない  そもそもアイツは…」
チッピィが戻って来る  金田が言う
「あ!?戻って来る!捕まえるか  レビっち?…て?あれ?増えてるっ!?」
金田が衝撃を受けて改めて見る  チッピィの後ろに別のネズミが居て  チッピィがレビへ身振りを加えて説明している  レビがチッピィへ言う
「うん?それは…  この城のネズミか?道案内をしてくれると?」
チッピィが肯定する様に鳴く  金田が驚いて言う
「すげぇ!?レビっち  やっぱ  ネズミの言葉が分かるのかっ!?」
レビが言う
「いや、分からない」
金田が衝撃を受け苦笑して言う
「やっぱ  分からないのか  …それじゃ?」
レビが言う
「俺は彼らの言葉は分からない  だが  少なくとも  チッピィは  俺たちの言葉を分かっている」
金田が呆気に取られて言う
「え…?それって?」
バッツスクロイツが言う
「だよねー?なら  チッピィっち?オレっちたちの身体でも  通られる場所ーを?ソッチのお友達から  聞いてもらえるー?」
チッピィが頷いて  隣のネズミに掛け合い  ネズミが頷いて一度バッツスクロイツたちを見てからチュウと鳴いて走り出す  チッピィがバッツスクロイツとレビにチュウチュウ言って追って走る  レビが言う
「行こう」
バッツスクロイツが言う
「りょーかい!豪華客船バッツ丸の皆さんー?面舵一杯ー?リレッツらゴー!」
レビとバッツスクロイツが向かう金田が困惑しながら言う
「ほ、本当に大丈夫か?…氷山に激突とか  …しないよなぁ?」
金田が続き  ブレードとデスが続く

瓦礫同士が重なり隙間がある  レビがその隙間を確認して言う
「…確かに  コレなら  我々でも通られそうだ」
金田が呆気に取られる  バッツスクロイツが言う
「ベリーナイス!チッピィっち?お友達に  お礼を伝えて置いてよ!?」
チッピィが頷いてネズミへ伝える  レビが身を下げてキャンディーサイズのチーズを差し出して言う
「礼はこれで良いか?」
ネズミが反応してチーズの匂いを嗅いでチッピィへ向く  チッピィが説明してチーズをネズミへ渡す  ネズミが受け取って逃げて行く  レビが微笑する  金田が軽く笑って言う
「お礼のチーズなんて持ち歩いてるのか?」
レビが立ち上がって言う
「いや…  あれはたまたま  第2プラントを立つ朝に取った  朝食にあったものを…」
レビの肩にチッピィが登って来てチュウチュウ鳴く  金田が気付き微笑して言う
「本当はレビっちのネズミさんに  あげるつもりで  取っといていたんじゃ?」
レビが顔を逸らして言う
「…まぁ  そんな所だ  流石に人の姿で居る時には  渡せないからな…」
金田が疑問して言う
「え?人の姿でって?」
チッピィが疑問して言う
「チュウチュウ?」
レビが言う
「何でもない  …それより」
レビが隙間を見て言う
「この先に  何かあるのか?」
金田が言う
「また人骨とかじゃ無ければ  良いんだけどな?」
レビが言う
「骨になる以前の方が問題だ」
金田が衝撃を受けて言う
「えっ!?」
バッツスクロイツが言う
「…帝国の人間でさえなければ  誰でも良いよ」
金田が苦笑して言う
「そ、そう言う事か  … ははっ」
3人が顔を見合わせて頷き  レビが銃を持ち直す  金田がペンライトを確認する

レビが隙間の終わりから先を確認して言う
「…通路の途中に出る様だ  近くに気配はない  …出るぞ?」
金田がペンライトのスイッチに指を掛けて頷く

レビと金田が飛び出して  通路の左右を警戒する  見える範囲に異常は無い  金田が息を吐きペンライトの光軸を下げる レビが気付いて言う
「…っ!人が歩いた跡だ」
金田が驚いて言う
「えっ!?」
金田が右往左往する レビが金田の手を押さえて光軸を床へ下げさせる  床の砂埃が靴底に払われた様子が見える  金田が気付いて言う
「ホントだっ  向こうへ  向かったみたいなっ!」
レビが頷き顔を向ける  隙間からバッツスクロイツが言う
「どう?オレっちたちも行って  大丈夫そう?」
金田が反応してレビの顔を見る  レビが言う
「この床の様子だと  相手は1人…  他の場所から  集まっていると言う可能性も  否定は出来ないが…」
金田が言う
「他の奴が居たら  その道もあるって事だろ?だったら  いざって時には  俺たちだって  ソッチからも逃げられるかもしれないよな?」
バッツスクロイツが言う
「じゃ  運んじゃうよ?タマちん?」
金田が隙間へ向かって言う
「ああ!ブレードっち  デスっちも  よろしくなっ!?」
隙間の手前で  ブレードとデスが頷き  ブレードが男を背から降ろす  デスが近付く

バッツスクロイツが隙間から出る  金田がバッツスクロイツの通過した狭い通路へ近付き心配する  ブレードとデスが2人で男の身体を受け渡して通路を抜けて来る  金田が男へ近付いて言う
「大丈夫か?辛かったよな ごめんな?」
デスの腕に支えられている男が目を開く  視界に心配する金田の顔が見える  男が沈黙する  レビが言う
「どうする?2手に分かれる  …と言う手もあるが?」
レビがメンバーを見渡す  金田はデスと共に男をブレードの背に担がせている  バッツスクロイツが言う
「ううん  皆で行こう  本当にヤバい時には  第2プラントへ緊急エスケープする  これはマジで1回しか出来ないから一緒に居ないと」
金田が頷く  レビが言う
「了解  …では  行くか?」
皆が頷く  レビが先頭で皆が続く

通路の出口

レビが立ち止まり後方へ向いて言う
「通路の先に明かりが見える」
皆が息を飲み  金田が言う
「やっぱり  誰かいるって事かっ?足跡のっ!?」
レビが言う
「恐らくそうだ  俺が先に…」
金田がレビの腕を掴んで言う
「待ってっ  レビっち  …俺に行かせてくれないかな?」
皆が反応して  レビが言う
「しかし卿では…」
レビが金田の武器を持たない丸腰を心配する  金田が言う
「ヤバかったら呼ぶから  その時は頼むよ  レビっち?」
レビが呆気に取られた状態から  微笑して言う
「分かった 気を付けろ」
金田が微笑して言う
「ああ!」
男が顔を動かす  ブレードが背負っている男の動きに顔を向ける

地下訓練所跡地

金田が現れて言う
「あの~?」
その先で瓦礫を漁っていた 兵士のような男がハッとして言う
「誰だっ!?」
兵士のような男が瞬時に近くへ置いていたランタンを手に取り もう片方の手に短剣を持って金田へ構える  金田が両手を上げて言う
「待った待ったっ!俺は  何もっ!?」
兵士のような男が金田の丸腰を確認して  肩の力を抜いて言う
「お前は誰だ?帝国の人間か?」
金田が言う
「いや  俺はアンタの言う  『帝国の人間』じゃない」
兵士のような男が金田の様子に警戒を解きながら言う
「なら何処の誰だ?このプラントには  もう  帝国の人間以外  居る筈が無い」
金田が言う
「そうなのか?それじゃ  アンタも?」
兵士のような男が手にしていたランタンを元の場所へ置く 明かりが安定して兵士のような男の顔が照らされる ウィルシュが表情を落として言う
「俺は…っ  …」
ウィルシュが視線を下げると  金田が微笑して言う
「あ、悪い  名乗って無かったな?俺は  金田玉児  このプラントじゃ無くて  確か…  “第6プラント”って言ってたかな?大和国の者だ」
ウィルシュが言う
「ヤマト…?第6っ!?」
金田が言う
「うん  確か  そう聞いた気がする  ここは “第5プラント” なんだよな?その“帝国”って所には  俺は行った事は無いんだけど  このお城の前には  壊された村を見て来たよ?」
ウィルシュが金田を見る  金田が続けて言う
「それで  そこに居た機械兵士って奴らの痕跡を追って  ここまで来たんだけど  お城は壊されちゃったんだな?アンタは?このお城に居たのか?お城の人?怪我とか  しなかったかっ?」
ウィルシュが呆気に取られていた状態からぷっと吹き出して言う
「お前…  面白い奴だな?」
金田が言う
「え?そうか?何で?」
ウィルシュが苦笑して言う
「初めて会った  赤の他人に…  何の疑いも無く  そんなトップシークレット言っちまって…  オマケに  俺の怪我の心配までするとかな?」
金田が言う
「とっぷしーくれ…?えーっと  それは分からないけど  怪我の心配をするのに  初めても他人も関係無いだろ?痛いものは痛いし  苦しい時は苦しいじゃないか?」
ウィルシュが言う
「そりゃ  そうだけど…」
ウィルシュが苦笑する  金田が微笑して言う
「どうやら  怪我とかは無いみたいだな?良かったっ」
ウィルシュが言う
「ご心配どうも?お前  どこへ行っても  そうなのか?」
金田が言う
「どこ行ってもって?まぁ  こんな所に来たなら  そうもなるだろ?このお城  昨日までは壊れて無かった筈なんだ  それが」
ウィルシュが言う
「ああ、この城は…」
通路からバッツスクロイツの声がする
「タマちん…っ?」
金田とウィルシュが反応して  ウィルシュが言う
「っ!?誰か他にも居るのかっ?」
金田が苦笑して言う
「ああ、悪い!話に夢中になっちゃって  連れを待たせてたんだ  呼んでも良いかな?」
ウィルシュが言う
「お前の仲間か?同じプラントの?」
金田が困って言う
「えーっと  話すと長くなるんだけど  彼らは  俺とは違うプラントの人で」
ウィルシュが言う
「違うプラントの?それなのに  行動を一緒にしているのか?」
金田が言う
「ああ!俺を助けてくれた  第2プラントの人たちなんだ」
ウィルシュが驚いて言う
「第2プラントのっ!?」
バッツスクロイツたちがやって来る  ウィルシュが顔を向け  ブレードとデスの姿を見てハッとして構えて言う
「人型機械兵士っ!?」
バッツスクロイツが慌てて2人の前に体を張って言う
「ノンノンッ!ストップストップ!彼らは違うっ!帝国の機械兵士  なんかじゃなくてー!彼らは人間!ちょっちメカニカルな鎧を着ているだけのー…  …っ!?」
ウィルシュが疑問して言う
「メカニカルな鎧を?…そうなのか?なら  帝国の人型機械兵士じゃないのか」
ウィルシュが構えを解除して言う
「第2プラントには  そんな鎧なんかもあったんだな?俺も以前…」
バッツスクロイツがウィルシュを見詰めていて言う
「お…  お前…っ?」
ウィルシュが反応して言う
「ん?…ああ  そうだった  俺は  このログヴェルン城の…」
バッツスクロイツが言う
「ファースト  クラスター…っ!」
ウィルシュが驚いて言う
「…っ!?何で  それをっ?」
バッツスクロイツが怒って言う
「ログヴェルン  ファースト  クラスター  ウィルシュっ!」
ウィルシュが驚き  金田とレビが反応して  金田が言う
「バッツ?知り合いなのか…?」
バッツスクロイツが言う
「そうだっ!コイツだっ!お前の顔っ!間違いないっ!」
ウィルシュが面食らっている  バッツスクロイツが怒って言う
「お前があの時っ!第7地区をっ!俺の…っ  父さんや母さんをっ!ファクトリーの皆を  帝国へ明け渡した  あのクラスターだろう!?」
ウィルシュが表情を落として言う
「…そうか  すまなかった」
バッツスクロイツが言う
「何だってっ!?」
ウィルシュが言う
「お前の両親や  そのファクトリーのスタッフが  第7地区に居たって言うなら…  確かに  あの地区の駆逐作戦に参加したクラスターは  俺で間違いない  直接手を下しては居なかったとしても  責任はある…」
バッツスクロイツが怒って言う
「何だよそれっ  まるで自分の手は  汚していないみたいに言うな!俺はこの目で見たんだっ  うちの超強化扉を吹き飛ばしたのは  お前だっ!お前が馬鹿デカイ剣を振り下ろしてっ!魔法みたいな力を使ってっ!」
ウィルシュが反応して言う
「超強化扉を吹き飛ばした?…第7地区で?それなら  覚えてる  機械兵士の砲弾でもびくともしない扉の家の… そこに居る  博士の息子を連れて来いって…っ!それじゃ  お前は  あの時のっ!?」
バッツスクロイツの記憶とウィルシュの記憶が交差する  バッツスクロイツが怒りに歯を食いしばり  叫ぶ
「この野郎ーーっ!!!!」
バッツスクロイツがウィルシュへ殴り掛かる  ウィルシュが表情を困らせ一歩下がる  バッツスクロイツの身体が抑えられる  バッツスクロイツが驚き  自分の身体を押さえる相手を見て  更に驚いて言う
「デスっ!?何でっ!?離せっ!離せよっ!!お前だって知ってるだろっ!?覚えてるだろっ!?コイツがっ!!コイツがーっ!!!…う  うぅう…っ」
バッツスクロイツが涙を流す  ウィルシュがデスを見る  デスがバッツスクロイツを押さえていた状態から  バッツスクロイツを守る様に抱きしめる  バッツスクロイツが声を上げて泣く
「うわぁあああーー…っ!」
ウィルシュが表情を困らせて言う
「…本当に  …すまなかった  …  …  …謝って  済む事じゃねぇって  分かってる…  …けど  それでも…」
バッツスクロイツが言う
「うるさいっ!なら言うなよっ!?ずっと  悪人のままで居ろっ!俺にお前を恨ませろよっ!いくら  お前が後悔した所で!お前が犯した罪は  消えたりなんかしないんだっ!!」
皆が反応して沈黙する  ウィルシュが俯いて言う
「…ああ  分かってる…っ」
皆が困る  ウィルシュが苦笑して言う
「だから  本当は  …死のうとしたんだ  もちろん  それをした所で  償えるだなんて思っちゃいない  それも分かってる  けど…」
皆がウィルシュを見る  ウィルシュが言う
「そのつもりで  この城を壊したんだ」
皆が反応して  金田が言う
「アンタが?」
ウィルシュが言う
「ああ  俺は元々  このログヴェルン城の兵士だったから  …帝国の兵士ファーストクラスターに  なる前までは」
金田が言う
「それじゃ  アンタも帝国に連れて行かれたのか?このお城に居た人たちと一緒に?」
ウィルシュが言う
「分からない」
金田が疑問して言う
「え?」
ウィルシュが言う
「俺は  皆とは別に…  最初に  アイツが来た時に誘われて…」
金田とレビが疑問して顔を見合わせる  ウィルシュが言う
「あ…  “アイツ”って言うのは  その…  帝国の司令官  …“クレター司令官”って  分かるか?」
金田が言う
「それって  あの?」
金田がバッツスクロイツを見てからレビへ向く  レビが頷いて言う
「帝国の者…  確か  その者が  機械兵士に使用する  生体パーツを集める為に人々をさらわせていたと言う」
ウィルシュが言う
「ああ  ソイツで合ってる  …そのクレター司令官って奴が  2年ちょっと前に  このログヴェルン城に来たんだ」
金田が言う
「2年ちょっと前ってっ!?」
バッツスクロイツは押し黙っている  ウィルシュがバッツスクロイツの様子に表情を困らせて言う
「その頃は  俺もまだ  この城の普通の兵士で  突然やって来た  帝国の…  …って事も  あの時はまだ  分からなかったな…  アイツは  1人で  機械兵士はもちろん  武器も持って無かった  だから  俺らも油断して」
金田が言う
「それで?」
ウィルシュが言う
「それで  アイツは…  この城が気に入ったとかって…  こう言った城は  あの山脈の内側には  無いんだとか?俺はもちろん  この城の皆も  帝国の事を知らなくて  アイツが誰だろうと  この城を気に入った  元は山脈の内側に住んでた奴だって  その程度に思ってたんだ…  それにアイツは  最初は  それだけで帰るって言うから」
金田が疑問する  レビが言う
「既にその時  下調べに来ていたのだろう  この城の戦力を算出し  次は  必要な戦力を持って来る様にと」
金田が表情を困らせて言う
「ああ  それで  お城を壊されちゃったのかっ?…ん?…あれ?」
レビが言う
「先を急かすな  カネダ  今の話は  2年ちょっと前の話だろう?」
金田が言う
「ああっ  そうだったなっ!?ならっ!?」
ウィルシュが言う
「うん  それで  その時…  アイツが帰るって言った時に  聞かれたんだ  …この城で  一番強い兵士は誰なんだ?って」
金田が言う
「なら  やっぱり  レビっちの言う通り  戦力を算出しようとっ!?」
レビが金田の肩へ手を置いて言う
「話を聞け  カネダ」
ウィルシュが苦笑して言う
「こう見えても  当時  このログヴェルン城の兵士で  俺は一、二を競う兵士だったんだ  だから  別の土地から来たってアイツに  それは俺だ!って  答えたらさ?なら  帝国へ来ないかって?」
金田が言う
「帝国の仲間に引き込まれたのかっ!?」
金田が言ってからハッとしてレビを見る  レビは金田の視線に同意の意を示してウィルシュを見る  金田が自信を持ってウィルシュを見る  ウィルシュが言う
「この城で一番強い俺に  帝国を見て欲しいって…  ソレだけだって  言われただけだったから…」
金田がガクッと脱力して言う
「帝国の兵士への誘いじゃなかったのか?」
レビが言う
「…予想外だった」
ウィルシュが言う
「帝国の兵士になれって誘いだったら  今も昔も  俺は断ってた  けど  アイツはそうは言わなかった  だから…  俺自身も  別の土地ってモノに興味があったし  一緒に行ったんだ…  けど  そんな軽い気持ちで行った俺に  帝国は  あんまりにもデカくて…っ」
金田とレビが反応して  金田が言う
「そんなにデカイのか?帝国って?」
ウィルシュが言う
「デカイって言葉じゃ  収まり切れない位デカイっ  帝国はこのプラントの世界だ!」
金田が呆気に取られて言葉を失う
「世界…」
ウィルシュが言う
「だから  その世界を統べる…  このプラントの神の前で  神の兵士ファーストクラスターにならないかって  誘われたら  俺はもう…っ  何も考えられなくなっちまって…っ」
金田が言う
「それだけ圧倒的な差を見せられたら  そりゃ  参っちゃうよな?“漁船から戦艦を見上げる”様なもんだ」
ウィルシュが言う
「ああ!それも  自称村一番の漁師から  帝国戦艦の艦長にならないか?って誘われたんだぜ!?断る理由なんてないだろっ!?オマケに  自分の守る港は  このログヴェルン城で良いって言われたんだ!」
金田が呆気に取られて言う
「あぁ  漁師と艦長じゃ  やる事は違うけど  自分の港が一番なのは同じだよな?」
レビが半ば呆れて居る  ウィルシュが言う
「そう言う事だっ!だから俺は  大喜びで  皆に自慢してやろうと思ってっ!戦艦の艦長になって  ログヴェルン城の港へ戻って来たんだっ!なのに…っ!!」
金田が言おうとした言葉を止めてレビを見てから  ウィルシュを見る  ウィルシュが言う
「以前と同じ  ログヴェルン城って姿の港は…  その中身は  帝国になってた…っ」
金田が思わず言う
「え…?」
今まで視線を逸らしていたバッツスクロイツが顔を向ける  ウィルシュが言う
「何処も彼処も  帝国の機械と帝国の人間にすり替わってて…っ  俺の知っている連中は  全員居なくなっていたんだっ  そんな中で  俺の知っている顔が  唯1人…っ  この城に現れて  俺を帝国へ連れて行った  アイツだけがっ!」
ウィルシュが手を握り締める  金田が言う
「なら?アンタは  どうしたんだ?」
ウィルシュが金田へ向かって言う
「分からないかっ!?皆は何処だって!!俺の家族や仲間たちを  何処へやったんだって  問い詰めたさっ!?」
金田が慌てて言う
「あっ  そ、そうかっ!そうだよな?うん!ソイツしか居ないんじゃ  ソイツに聞くしかないよな?」
ウィルシュが言う
「そしたら…  帝国の役に立たない人間は  生体パーツへ  生まれ変わらせたって…っ」
金田が呆気に取られる  レビが『そうだろうな』と言った表情を浮かべている  ウィルシュが言う
「残っているのは  俺みたいに人の姿のまま  帝国の役に立たせられるかもしれない  兵士だけだって…  そう言われて…」
レビが言う
「卿への人質と言う事だな?」
金田が反応して気を取り直して言う
「そ、そうなのか!?そう言う事かっ!?それじゃ  アンタはそれで!だから  帝国の命令に従って  悪い事もしちゃってたんだなっ!?」
ウィルシュが言う
「そう言う事になる…」
金田が言う
「そっか  それじゃ  アンタも大変だったな?」
バッツスクロイツがグッと息を飲む  ウィルシュがバッツスクロイツを見てから言う
「けど  今は  許されない事をしたんだって  分かってるよ  …今更言った所で  もう  何もかも遅いって事も…  恨まれて当然だ  それに  俺は…  浮かれてた…  神の力に…  あんな力を与えられて…  仲間を人質に取られてるって  言い訳に隠れて…  俺は…  確かに  力を使う事を楽しんでいたんだ…っ」
金田が何か言おうとして  バッツスクロイツを見て言葉を飲む
「…っ」
ウィルシュが言う
「…けどさ?本物の神様って居るのかもな?俺がそんな馬鹿をやってた間に…  いや、本当は  最初からだったのかもしれない  人質にされてた仲間なんて…  とっくに居なくなってたんだ…」
金田とレビが呆気に取られる  ウィルシュが腰に付けているドッグタグの束を握る  軽い金属たちの音が鳴る  レビが言う
「…なるほど  卿を操る為の  嘘であったと言う事か?」
金田が言う
「その間は?仲間の兵士たちには  一度も会わせてもらえなかったのか?」
ウィルシュが言う
「会わせろって  何度も言ったよ  強硬手段に出た事もあった  けど  結局どれも失敗して…」
金田が困って言う
「そっか  それじゃ  うーん」
ウィルシュが言う
「…まぁ  今更  何を言っても  後の祭りだ  …これからの事  考えねぇと」
金田が苦笑して言う
「うん  そうだな?残念ではあるけど  後悔しても  …あ、いやっ!そうじゃなくてっ!?」
ウィルシュが苦笑する  バッツスクロイツが息を吐いて言う
「俺だったら  一度も会わせて貰えない人質なんて  信じないけどね?」
金田が表情を困らせて言う
「バッツ…  気持ちは  その…  分かるつもりだけど  …けどさ?」
バッツスクロイツがウィルシュの前へ行って言う
「人質を確認しなかったのは  お前が本気じゃ無かったからじゃ無いのかっ!?」
ウィルシュが一瞬呆気に取られるが  気を取り直して言う
「それは無いっ!俺は必死にっ!?」
バッツスクロイツが言う
「力を得られた事の方が嬉しくてっ  手を緩めていたんだろっ!?」
ウィルシュが怒って言う
「そんな訳ないっ!俺は皆に会えるならっ  力を失っても良かったっ!」
バッツスクロイツが言う
「噓だっ!それなら  その力を使って  クレター司令官を脅せば良かっただろっ!?それをしないで従っていた  そんな奴の言葉なんて  何の説得力も無いっ!!」
ウィルシュが言う
「アイツを脅す事は  出来ないんだよっ!」
金田が間に入ってオロオロしている  バッツスクロイツが言う
「自分を脅したら  仲間を殺すと言われて居たから?そんなのは  それこそ逆に  奴の命を掴めば良いだけだっ!!お前は兵士で  奴は司令官っ!力の差何て言うまでも無い!今のお前と  俺のそれと変わらないっ」
バッツスクロイツがウィルシュの胸ぐらをつかむ  ウィルシュが言う
「そんなのは当然やった!けどっ  そんな事をやっても意味がないって  それを…っ  …っ!?」
ウィルシュがバッツスクロイツの顔を見てハッとする  バッツスクロイツが怒って言う
「意味がない筈が無いっ!誰だって  痛みや苦しみを感じるし  命は惜しい筈だっ!それともっ!?帝国の人間には  痛覚も恐怖心も無いって言うのかよっ!?」
ウィルシュが言う
「…リーゼス?」
バッツスクロイツが疑問する  ウィルシュが言う
「…いや?“エリーゼス”  …じゃ無いか?お前の  家族の名前!」
バッツスクロイツが呆気に取られて言う
「っ!?何で  俺のファミリーネームを?」
ウィルシュが慌てて言う
「そうだっ!やっぱり  間違えねぇ!良く見りゃ  そっくりな顔してるじゃないかっ!?お前!?」
バッツスクロイツが疑問する  ウィルシュが言う
「聞いてくれ!お前の両親!生きてるぜっ!?」
バッツスクロイツが驚く  レビと金田が驚き呆気に取られて  金田が言う
「ほ…本当か?」
ウィルシュが言う
「本当だっ!言い逃れの為の噓なんかじゃない!エリーゼス博士!機械兵士のAIに生体パーツを使わない方法を研究してる!俺が会ったのは  この前帝国へ戻った時だから  確か半年位前だったと思う  けど  その研究開発は  帝国としても欲しい技術だから  今もきっと  続けられている筈だ!」
バッツスクロイツが呆気に取られて言う
「…生きて  …る?」
バッツスクロイツが数歩後退して  そのまま脱力する デスが向かおうとするが それより速く  ウィルシュがバッツスクロイツの身体を支えて言う
「助けに行くなら  手伝うっ!手伝わせてくれ!」
バッツスクロイツが見上げる  ウィルシュが力強い目でバッツスクロイツを見詰めている  バッツスクロイツが苦笑して言う
「は… はは…っ ちょ、ちょっち  今は…  考えさせてくれる?」
バッツスクロイツが自分の足で立ち  ウィルシュの手を外そうとする  ウィルシュがハッとして 慌てて手を放して言う
「ああっ  悪い…っ つい  その…」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「ううん…  教えてくれて  ありがとう…」
ウィルシュが一瞬呆気に取られてから 慌てて必死に言う
「噓じゃないぞ!?俺の命を…っ!いや!仲間たちに誓ってっ!」
ウィルシュがドッグタグを握り  バッツスクロイツへ訴え掛ける  バッツスクロイツが呆気に取られてから苦笑して言う
「分かった  そこまで言うなら…  って言うか  そもそも  アンタは兵士でしょ?頭脳戦で戦う  司令官やなんかじゃ無いんだから  疑わないよ」
ウィルシュが苦笑して言う
「…そうか  そうだな?それでも…っ  本当に  悪かった…」
ウィルシュが頭を下げる  バッツスクロイツが表情を困らせる  金田とレビが顔を見合わせてから苦笑する

城の外

ウィルシュが地下から地上への道を上がりながら言う
「博士が居るのは  帝国のB-6エリアにある  システム研究開発室  16号室だ  ドアの前までなら誰でも行ける」
ウィルシュの後に付いて来ていた金田が言う
「誰でもって?それならっ  俺達でもっ!?」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「まさか?帝国の施設でしょ?まず  オレっちたちが入り込むのだって…」
ウィルシュが振り返って言う
「いや  お前達でも」
バッツスクロイツが言う
「え…?」
ウィルシュがバッツスクロイツたちを見渡してから言う
「…うん!お前たちなら  他のエリアから来た奴らに  見えなくも無いし!堂々と入って行けば  不審に見られる事もないと思うぞ?」
バッツスクロイツが言う
「マ、マジで?」
ウィルシュが言う
「ああ!マジだ!それに  そもそも帝国はデカイから  道をすれ違う連中の事なんて  皆気にしないんだ  帝国の兵士を従えて居る奴なんかは  特にさ!」
金田が言う
「帝国の兵士を従えて?」
ウィルシュがバッツスクロイツの後ろに居るデスと  金田の後ろに居るブレードを見てから言う
「“メカニカルな鎧”って言われても  やっぱり  どう見てもソッチの2人の姿は  帝国の人型機械兵士に見えるからな?特に  そう…  エリーゼスみたいな  普通の姿の奴と歩いていたりなんか  するとさ?」
皆がバッツスクロイツとデスを見る  バッツスクロイツが反応して言う
「ん?あぁ…  まーね?バーネッ…  いや?オレっちたちを  このプラントへ送った  女王様ーみたいな人も  このメンツは  それを狙ってたみたいだし?」
ウィルシュが疑問して言う
「女王様?第2プラントは  女王が管理しているのか?…あれ?そうだったかな…?」
ウィルシュが疑問している  金田が疑問して言う
「え?女王?何言ってるんだよ  バッツ?俺たちを送り出したのは  男の…  モガッ!?」
バッツスクロイツが金田の口を押えていて言う
「タマちんは  そういうっ  ワールド  トップシークレットを  どんどん  カミングアウトしちゃうの  止めてーっ!」
金田が口を押えられながら言う
「その、とっぷしーくれっと  って…っ!?俺は  バッツが  間違えているから  そうじゃないって…っ?」
バッツスクロイツが言う
「ノオォオー!」
ウィルシュが呆気に取られていた状態から苦笑して  荷物から取り出して言う
「俺の事  信用出来ないって言うなら  それでも構わねぇよ?改心したから受け入れてくれだなんて  そんな都合の良い事は言わない  …けど  これは信じて  受け取ってくれ」
ウィルシュがバッツスクロイツへ差し出す  バッツスクロイツがそれを見て言う
「CITC?」
ウィルシュが言う
「帝国のB-6エリアにある  転送ブースに繋がってる  それから  こっちも…  こっちは帝国の第1地区に住む人たちが  地区内の移動に使っている奴だから  転送ブースの警備には  こっちを見せれば大丈夫だ」
バッツスクロイツが言う
「受け取っちゃって良いの?」
ウィルシュが言う
「本当は  いつか仲間たちを助けに行く時に  使おうと用意していた奴だったんだけど…  必要無くなっちまったからな?地下の訓練所に  隠していたんだ  城をぶっ壊した時に壊れなくて良かったぜ」
金田が言う
「もう帝国には行かないのか?」
ウィルシュが言う
「そうだな… 何か良い作戦や  帝国をぶっ潰したいって奴らが行くなら  俺も行くかもしれないけど」
バッツスクロイツが言う
「今回のオレっちたちのターゲットは  帝国の破壊じゃなくて  このプラントの下調べだからね?それでも  もし…  今後  ウィルっちの希望と重なる事になったら  その時は  呼びに来るよ!」
ウィルシュが驚いて言う
「エリーゼス…っ  それじゃっ?」
バッツスクロイツが言う
「バッツね?バッツスクロイツ  だから  バッツって呼んで?」
金田とレビが反応して顔を見合わせ微笑する  ウィルシュが言う
「分かった バッツ…」
バッツスクロイツが言う
「うん!だから…  …良し!覚えた!こっちは返しとく」
バッツスクロイツが渡されたCITCの片方を返す  ウィルシュが疑問して言う
「え?だけど  こっちが無いと  ワールドエンドマウンテンを超えられないぜ?そっちは  第1地区内の転送にしか使えねぇ奴だから?」
バッツスクロイツが微笑して言う
「ノープロブレム!ラインコードは解析させて貰ったから  これで  そこの転送ブースへのラインは  ゲット出来ちゃったもんね?ラインコードさえ分かれば  後は  このハイスペックマルチCITCで  行きたい放題!」
バッツスクロイツがタブレットを操作する  ウィルシュが驚いて言う
「それ1つで  何処へでも繋げられるのかっ!?すげぇな!?それに…っ」
ウィルシュがバッツスクロイツを見て言う
「ラインコードなんて  68桁もある英数字の羅列を  あの一瞬で覚えたのかっ!?」 
バッツスクロイツが微笑して言う
「ふっふっふー?伊達に天才博士  エリーゼスのファミリーネームを  継いじゃいませんよー?」
バッツスクロイツが操作を終える  ウィルシュが言う
「へぇ~…  通りで  あのクレター司令官も  エリーゼス博士へは手を下さない筈だ…  天才は違うんだな」
皆がウィルシュを見る  ウィルシュが言う
「博士は人質を取られてるから  会う事が出来たとしても  助け出す事は出来ないと思う」
金田が言う
「その人質ってっ!?」
バッツスクロイツが視線を逸らして言う
「もしかして  母さんを…?」
ウィルシュが言う
「両方だ」
金田が疑問して言う
「両方って…?」
バッツスクロイツが疑問する  ウィルシュが慌てて言う
「ああっ  言ってなかったかっ?お前が…っ  バッツが  最初  俺に言った  父さんや母さん  ファクトリーの皆  …って?そのファクトリーのスタッフたちだ」
バッツスクロイツが呆気に取られて言う
「…へ?」
ウィルシュが言う
「ソイツら  皆  生きてるんだよっ?エリーゼス博士が  自分だけじゃ開発は無理だって?自分が天才なんじゃなくて  自分の集めたスタッフたちの全員の力が無いと  開発は出来ないとか?そう言い包めてさっ!?あのクレター司令官と取引するなんて  すげぇ人だよっ  本当に!」
バッツスクロイツが呆気に取られて言う
「皆…  生きて…?」
金田が言う
「良かったな!?バッツ!」
バッツスクロイツが涙目で言う
「うん…っ  うん…っ!」
金田が微笑する  ウィルシュが言う
「けど、さっきも言った通り  人質に…  と言うか  2つの場所に離されて居て  片方を助けても  もう片方が…っ  博士がB-6エリアなのに対して  奥さんともう半分のスタッフたちはA-7エリアに居るみたいだってさ?通信で顔を見て話も出来るけど  会う事は許されないらしい」
金田が微笑して言う
「顔を見て話が出来ているんなら!今度は大丈夫だよなっ!?なっ!?」
レビが言う
「カネダ  言葉を慎め」
金田がハッとして言う
「あっ  そっかっ!?ごめん  ウィルっちっ!」
ウィルシュが言う
「いや  俺は自業自得だ  俺が  皆を殺した様なもんだ…っ  城の皆も…」
金田が困って言う
「ウィルっちだって  その皆を助けたかったんだろ?その為に  出来る事はやったって  …それならさ?結果はその  …残念ではあったけど  その時の自分が  必死に考えてやった事なら  そんなに悪く言うなよ?」
ウィルシュが苦笑して言う
「ああ…  必死だった  それだけは嘘じゃない  結果は最悪だったけど…  ありがとな?えっと…  カネダ?」
金田が微笑して言う
「ああ!」
バッツスクロイツが言う
「ノンノン?彼の事は  “タマちん”って!」
金田が衝撃を受ける  ウィルシュが言う
「え?タ、タマ…?」
金田が慌てて言う
「カネダで良いよっ!?」
バッツスクロイツが言う
「ホワイノー?タマちんもウィルっちを  ニックネームで呼ぶなら  ウィルっちにもタマちんって呼んでもらわないとー?」
金田が慌てて言う
「カネダで良いっ!タマちんは  バッツだけで  十分だって!?」
バッツスクロイツが言う
「何でー?」
レビが苦笑してデスとブレードを見る  2人はバッツスクロイツたちを眺めている  ブレードがレビの視線に疑問する  レビが言う
「いや…?」
ブレードが視線を戻すと  レビもバッツスクロイツたちを見る  バッツスクロイツが言う
「さて?それじゃ…  早速行く?それとも?」
レビが近くへ来て言う
「これから向かうとなると  それなりに遅い時間となる…  街を堂々と歩くには  少々具合が悪くないか?」
バッツスクロイツが言う
「それもそうだね?それに  帝国の様子を観察するなら  やっぱり明るい時間の方が良いって?」
レビが頷く  金田が気付いて言う
「なぁ?それならさ?今から向かって  帝国じゃ無くて  街の方で過ごさないか?」
バッツスクロイツが言う
「えっ!?それはまたー?タマちんって  やっぱ  色々と大胆だよねー?ターゲットの懐でー?一夜を過ごしちゃおーってー?」
金田が言う
「いや  そこまでは言わないけど  明日  帝国の偵察に行くならさ?今日の内に  アイツをどうにかしてやらないと  …だろ?」
皆がブレードの背に背負われている男を見て  レビが言う
「言われてみれば」
バッツスクロイツが言う
「そうだった  流石に怪我人運んで偵察ーは  ちょっち  ハイレベルだよねー?」
ウィルシュが言う
「怪我人?ソイツ  怪我人だったのか?」
ウィルシュが首を傾げる  バッツスクロイツが言う
「そうなんだ  体中の骨が折れちゃってるみたいでね?それでも  命が助かったのが奇跡的ー  としか思えないんだけど?」
ウィルシュが驚いて言う
「体中の骨がってっ!?大怪我じゃないか?」
金田が言う
「ここに医者がいるかと  期待してたんだけど  こうなったらもう  帝国の医者に見てもらうしかないだろ?」
ウィルシュが言う
「帝国の街で医者を探すのは難しいぜ?医者は帝国の研究室に  皆  連れてかれちまった  裏で  患者を診ている医者が居るって  そんな噂なら聞いたけど…」
金田が言う
「そうなのか?参ったな?流石に裏で患者を診てるって  その噂の医者を探すのは  俺たちでは難しいよな?バッツ?」
バッツスクロイツが考えてから言う
「そうだね…  けど  こうなったらもう…っ  彼を帝国へ  返しちゃうって手も  有りだと思うけど?」
ウィルシュが驚いて言う
「えっ!?」
ウィルシュが男を見る  金田が言う
「『帝国へ返しちゃう』って?」
ウィルシュが言う
「ならソイツはっ!帝国の人間なのかっ!?」
ウィルシュが男へ向かって行く  ブレードがウィルシュを見て  バッツスクロイツを見て金田を見る  金田が困って言う
「あっ  えっとっ!?」
ブレードが応対を求めてレビへ向く  レビが沈黙して視線を逸らす  ブレードの前にウィルシュが立ち止まる  ブレードがウィルシュを見る  バッツスクロイツが言う
「この城の裏で 瓦礫の上に怪我を負って倒れてたんだ  その上  帝国の制服を着ていた  …だったら間違いない  彼は帝国の人  帝国へ引き渡せば  彼は助かると思う  …けど  タマちんが  ボンボン  オレっちたちのシークレットを暴露しちゃったから  正直  どうしようかって…」
ウィルシュが男の顔を隠している毛布に手を掛けて言う
「この城に居た帝国の人間はっ  全員  あのクレター司令官の手の者だっ!そんな奴を帝国へ帰したりしたらっ  お前たちの事を洗いざらい暴露するに決まってる!そんな事になる位ならっ  俺が今  ここでっ!」
ウィルシュが毛布を取り上げる  金田が慌てて言う
「ま、待てよっ!ソイツは  怪我しててっ!」
ウィルシュが言う
「それなら  この際だ!一思いに…っ!」
ウィルシュの目が見開く  金田が言う
「それは卑怯だろっ!?それに  話せばきっとっ!…今はまだ  話も出来ないけどっ!?」
ウィルシュが手に持ったままだった毛布を落とす  バッツスクロイツが反応する  レビが言う
「…知っている顔か?」
金田が反応して言う
「そうなのか?それならっ!?」
ウィルシュが言う
「…レター…?」
ウィルシュが男の髪を掴んで顔を上げさせる  金田がハッとして向かおうとする  ウィルシュが言う
「…クレター司令官っ!?お前…っ  そうだよなっ!?」
皆が驚き  金田が言う
「…えっ?」
クレターがウィルシュを見て沈黙する
「…っ」
ウィルシュが言う
「てっきり  アイツらの機械兵士にでも  踏み潰されたか…っ  帝国へ逃げ帰ったのかと思って居たのが  まさかこんな所で再会出来るなんてなっ!?…“アイツ”の言葉に従って  生きてて良かった!!今度こそっ!!皆の恨みを晴らさせてもらうぜっ!!クレターぁああ!!」
ウィルシュがクレターを殴り飛ばす  クレターが悲鳴を上げて吹き飛ぶ
「がはっ!!」
クレターが地に倒れる  皆が呆気に取られる中  金田がハッとして言う
「あっ!?お、おいっ!?」
ウィルシュが短剣を手にクレターへ向かいながら叫ぶ
「食らえーーっ!!」
バッツスクロイツとレビが呆気に取られる  ブレードが向かうべきか戸惑い  レビとバッツスクロイツへ顔を向ける  金田が驚き叫ぶ
「止めろーーっ!!」
金田が向かうが  それより早くウィルシュがクレターの下へたどり着き  クレターの胸に短剣を振り下ろす  金田が目を見開いて息を飲む
「っ!!」
クレターが叫ぶ
「あぁあっっ!」
ウィルシュが短剣を引き抜き  クレターの身体に馬乗りになって  何度も短剣を振り下ろしながら言う
「何が仲間は保護をしているだっ!?何がお前次第で城へ帰してやるだっ!お前は最初からっ  俺を騙してっ!皆を騙してっ!このっ  クソ司令官がぁああ!!」
ウィルシュがクレターの身体へ突き刺した短剣をそのまま下向させてクレターの身体を切り刻む  クレターが悲鳴を上げる
「あぁああああっっ!!」
バッツスクロイツが青ざめ悲鳴を上げて言う
「ひいっ!?い、い…っ  生きてる人間にっ  あ、あんなぁあっ!?」
レビが表情を歪めて言う
「…っ  どの様な拷問であっても  あれほどのものは  見た事がない…っ」
バッツスクロイツが手で遮って言う
「アレはもう  拷問じゃないでしょっ!?」
レビが言う
「では…  惨殺…  と言った所か?」
バッツスクロイツが言う
「惨…?殺…って?まさか?こんな目の前で…っ!?」
レビが言う
「彼の…  今の心境からすれば  …と言うよりも  もう既に…」
バッツスクロイツが情景を遮った手の隙間を覗く  ウィルシュが短剣をそのままに  クレターの顔を殴りながら言う
「まだまだっ!こんなもんじゃ終わらねぇぞっ!!ログヴェルン城の皆の恨みを晴らしたらっ  次は俺のっ!その次は  お前の命令で侵略した  このプラントの皆の恨みも晴らしてやるっ!…アッハハッ!?何日掛かるか分からねぇなっ!?全部終わる頃には  お前の身体なんて  原形も留めてねぇんだろうなぁあ!?えぇえ?帝国のクレター司令官様よおっ!?」
クレターが殴られながら悲鳴を上げる
「ぐ…っ  がはっ!があっ!うっ!ああっ!…はぁっ  …はぁ  …っ!」
ウィルシュがクレターの胸倉を掴み上げて言う
「どうだよ?苦しいか?…皆は  もっと苦しかったんだよっ!お前のせいでっ!!」
クレターが目を開きウィルシュを見るが何も言わない
「はぁ…  はぁ…  ……」
ウィルシュが怒りに歯を食いしばってから言う
「てめぇ…っ  何とか言ってみろっ!?皆に謝れっ!お前が皆へやった事をっ!皆を苦しめてっ  命を奪ったっ!この城にいた皆にっ!」
クレターが苦しそうに呼吸をして吐血をしても何も言わない
「ぐはっ  ゲホゲホ…  ぐ…  ゼェゼェ…」
ウィルシュが収まらない怒りのままに叫ぶ
「この野郎ぉおお!!」
ウィルシュが殴り掛かる  クレターが痛みへ備えて目を強くつぶる  ウィルシュの腕が抑えられる  ウィルシュが驚き顔を向けると  金田が必死にウィルシュの腕を掴み止めていて言う
「もうっ  もう良いだろっ!?」
ウィルシュが呆気に取られて言う
「あぁあっ?」
金田が言う
「もう十分だ  これ以上やったら  本当に死んじまう!…いや  今生きてるのだって  奇跡だっ!」
金田がクレターを見て表情を歪ませる  ウィルシュが言う
「何言ってんだ?まだまだ  全然足りねぇよっ!」
ウィルシュがクレターへ向いて言う
「俺は言ったよなクレター?何日掛けても  お前に皆の恨みを晴らしてやるってよっ?」
金田が言う
「お前こそ  何言ってんだよっ  本当に殺すつもりかっ!?お前  さっきまで  後悔してたんじゃないのか?仲間の為であっても  他の人たちを  傷付けてしまった事をさ?もうやらないんじゃなかったのかよっ?」
ウィルシュが嘲笑って言う
「ッハハハ?冗談言うなよ?そのすべての元凶である  コイツが目の前に居るんだぜ?…そうとなればっ!」
金田が言う
「だからって  もう良いだろっ!?相手は無抵抗なんだぞ?動けもしゃべれもしない奴に  乗り掛かって  剣で突き刺して  殴り付けてっ  もう十分だっ  コイツを助けてやってくれよっ!?なぁ?頼むっ!」
ウィルシュが困惑して言う
「…はあ?」
金田が言う
「コイツは昨日からずっと苦しんでるんだ  お城から落ちて身動き一つ取られなくて  野生の動物に襲われて  …やっと熱や痛みが和らいだと思ったら  今度はアンタにっ」
ウィルシュがニヤリと笑って言う
「ハハッ  何言ってんだ?それなら今度はどうしてやるかな?体中に短剣を突き刺して  城は無くなっちまったけど  もう一度  あの崖から叩き落としてやろうか?」
金田が驚く  ウィルシュが言う
「その後は  火をおこして3日も4日も火あぶりにしてやろうか?あぁ  その前に  火で焼いた剣で突き刺してやる方が苦しいかな?」
金田が言う
「何…っ  言ってんだよ?そんな事…っ  する前に  死んじゃうだろっ!?」
ウィルシュが言う
「なんだ?ひょっとして  お前たちは知らないのか?このプラントの神  リジル様に選ばれた者は  不死身になれるんだぜ?」
金田が呆気に取られて言う
「へ?」
バッツスクロイツとレビが驚いてレビが言う
「不死身…?何をしても  死なないと言う事か?」
ウィルシュが言う
「そう言う事だっ」
バッツスクロイツが言う
「マージでっ!?」
ウィルシュが言う
「だから俺も…  武器や力は失ったけど  身体の丈夫さは健在だ!…まぁ  俺は  後付けだから  致命傷を受ければアウトらしいんだけど…  けど  …コイツは違うっ!」
ウィルシュが短剣をクレターの心臓に突き刺す  クレターが悲鳴を上げて言う
「がはっ!?」
クレターが吐血する  ウィルシュが短剣を引き抜くと勢い良く血しぶきが吹き上がる  バッツスクロイツが悲鳴を上げて言う
「ひぃいいっーっ!?」
金田が目を見開いて呆気に取られていた状態から  慌ててクレターの傷口を押さえて言う
「ち、血がっ!無くなっちまうよっ!?」
金田が傷口を押さえ怯えながら  クレターの顔を見てハッとする  クレターが苦しそうに息を継いでいる  金田が一瞬表情を悲しめグッと息を飲む  ウィルシュが言う
「どうだ?心臓を突き刺したんだ  元ファーストクラスターの俺だって  コレなら助からないっ  …けど  コイツは死なないっ  コイツは  初めから帝国で作られた人間なんだ  だから  力を添付された俺なんかとは違って  正真正銘の不死身らしいっ  …からな?終わらないぜ…?終わらせてやらねぇ…っ  死んでいった皆の恨みを…  永遠にっ!!」
金田が言う
「止めてくれっ!!」
ウィルシュが疑問する  金田が言う
「もう良いっ  もう限界だろっ?死なないからって  永遠に苦しめられるなんてっ  そんなの殺されるより苦しいよ…っ」
金田がボロボロと泣いている  ウィルシュが驚いて言う
「なっ!?なんでっ  お前が…っ!?」
金田がクレターの傷口を押さえたまま泣き続ける  ウィルシュが沈黙する  間を置いて  ウィルシュの手から落ちた短剣が地面に突き刺さる  

バッツスクロイツがホッと息を吐いて言う
「…ふぃ~  やっと終わった…」
レビが言う
「…状況は理解しているつもりだったが  …なんとも居た堪れない事態だった」
バッツスクロイツが言う
「ホントに…  エンジニアのオレっちは  血なんて見慣れていないからさ…  もー少しで卒倒しそうだったよー?」
レビが言う
「戦傷による出血には見慣れているつもりだが…  アレは  それらを超えるものだ」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「そんな中で  タマちん…  ホント  良く動けるよ  オレっちなんて  今でも動けないんですけどー?」
レビが言う
「ああ…  俺も動けない」
バッツスクロイツが衝撃を受けて言う
「えっ!?レビっちもっ!?」

ウィルシュが身を背けて言う
「興が削がれたぜ  …クソッ  折角のチャンスだったって言うのによ…っ」
金田がクレターの傷口を両手で押さえたまま クレターの身体を見て言う
「こんなにボロボロにされちゃって…  バッツの  あの薬…  まだあるのかなぁ?」
クレターが目を開き金田の顔を見る  金田が表情を悲しめる  その様子を横目に見ていたウィルシュが言う
「…ソイツに薬なんて要らねぇよ?」
金田が反応してウィルシュを見上げる  ウィルシュが言う
「勘違いするな?そういう意味じゃない  ソイツは…  水さえあれば  回復するんだ」
金田が反応して言う
「水?」
ウィルシュが言う
「ああ…  それこそ  浴びせる位の水を与えれば  人体の中でも柔らかい  血や肉や内臓何かは直ぐに回復する  骨の回復には  少し時間が掛かるらしいけど  …そうだった  コイツを殺してやろうと  調べ上げていたのに  お前たちが言った  『体中の骨が折れた奴』って  その言葉で気付かなかったなんてなっ?」
バッツスクロイツとレビがやって来て  バッツスクロイツが苦笑して言う
「いくら何でも  それで気付いちゃうー何て事は  無いでしょー?」
ウィルシュが言う
「そうでもねぇよ?体中の骨が折れた人間なんて…  普通なら死ぬ!」
バッツスクロイツが衝撃を受け苦笑して言う
「言い切られちった…」
レビが言う
「…まぁ  そうだろう」
バッツスクロイツが衝撃を受けて言う
「普通に肯定っ!?レビっち  相変わらず  大人だねぇっ?」
バッツスクロイツとレビが顔を向けると  2人の視線の先  金田がクレターへ水を飲ませていて言う
「ごめんな  もっと早く助けてやりたかったんだけど」
クレターは水を飲み続けている  金田が反応して苦笑して言う
「水ラブなんかじゃなくて  本当に水が必要だったんだな  アンタはさ?………あ?」
金田の水筒が空になる  金田が言う
「全部なくなっちゃったか?足りないよな?それじゃ  …っ?」
バッツスクロイツが水筒を差し出して言う
「はい  コレ?」
金田が言う
「良いのか?けど  バッツの分無くなっちゃうぞ?」
バッツスクロイツが言う
「それはタマちんも同じでしょ?喉が渇いちゃったら  その時は…  オレっちと一緒に  オアシスを探そうよ?タマちん!」
金田が呆気に取られた後苦笑して言う
「…ああ!一緒に探そう!ありがとな  バッツ!」
金田がバッツスクロイツから水筒を受け取り  再びクレターへ飲ませて言う
「良かったな!バッツが譲ってくれたから  まだ飲めるぞ!?」
クレターが与えられる水を飲んでいる  バッツスクロイツが苦笑して言う
「…所でタマちん?“オアシス”って  何だか分かってる?」
金田が言う
「分かんない!」
バッツスクロイツが衝撃を受け言う
「だよねー?そうだと思ったーっ!」
金田が言う
「けど  バッツが一緒に探そうって言うなら!その時は俺もちゃんと聞いて  全力で探す!バッツは俺の大切な友達だからなっ!」
バッツスクロイツが呆気に取られて言う
「タマちん…」
金田が気付いて言う
「…ん?飲み終わったか?まだ  足りないか?それじゃ  バッツ?早速その“オーシス”とかって所探すかっ!?」
バッツスクロイツが衝撃を受けて言う
「オーシスじゃ無くて  オアシスだねーっ  タマちんっ!」
金田が言う
「お、おあしす?分かった!ならそれを!?」
金田の前に水筒が差し出される  金田が反応して顔を向けると  レビが言う
「その時は  俺も探しに行こう  …乗り掛かった舟  だからな?」
金田が微笑して言う
「うんっ!もちろん!レビっちが居ないと  俺とバッツじゃ  戦力ゼロだからなっ!」
バッツスクロイツが言う
「あれー?心配しなくても  オレっちが行くなら  勿論  オレっちのデスが付いて来るって?な?デス?」
デスが頷き金田へ水筒を渡す  金田が呆気に取られて言う
「デスっち  っ!?ブレードっちも?」
ブレードが水筒を差し出している  金田が微笑して言う
「ありがとうな!皆っ!コレなら  ウィルっちが言ってた『浴びせる程』に与えられそうだ!」
金田がクレターへ水を与える  皆が見守っている  ウィルシュがバツが悪そうに横目に見てプイッと顔を逸らす

地面に空の水筒が転がっている  金田がクレターへ水を与えていて言う
「…あ?これも終わったか?えっと  これで  俺たちの持っていたのは全部なんだけど  まだ足りないか?」
金田がクレターの顔を見詰める  クレターが息を切らせていた状態から僅かに表情を苦しめる  金田が心配する  バッツスクロイツが気付き驚いて言う
「た、タマちんっ!?見て見て!彼の傷っ!」
金田が反応して言う
「え?…あっ!?治ってるっ!?」
金田がクレターの身体にあった傷口が消えている事に  驚いて言う
「凄いなっ!?傷痕すら無くなってるよっ!?もう  痛みも無いのかっ!?」
金田がクレターの顔を見る  クレターは軽く息を切らせたまま沈黙している  金田が疑問して言う
「まだ?痛みがあるのか?それとも何処か?」
クレターが身体を動かそうとするが筋肉の動きのみで身体は動かない  金田が疑問する  バッツスクロイツが言う
「いくら治ると言っても  水だけだもん?血や肉が治るだけでも  サプライズ?骨が治るにはー?後何日掛かるんだろうねー?」
金田が言う
「そっか?骨は時間が掛かるんだったな?ウィルっち?どの位掛かるんだ?」
ウィルシュが一瞬息を飲んでから言う
「っ  …知らねぇよ?俺はソイツを殺したかっただけで  助けようだなんて考えちゃ居なかった  …今でも思えねぇっ  それにっ」
ウィルシュがクレターを見て手を握り締めて言う
「帝国が作ったものなんかっ  全部ぶっ壊れちまえば良いんだっ  機械兵士もっ  ソイツも要らねぇよっ!このプラントは  ログヴェルンの皆の物だっ!いつか  分からせてやるっ!」
ウィルシュが立ち去る  金田が言う
「あ…っ」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「今はしょうがないよ?タマちん」
レビが言う
「結果として  我々は  彼の仇を救助してしまった  彼が気分を害するのも無理はない」
金田が言う
「うん  それは  分かるけどさ?けど」
バッツスクロイツが金田へ向き苦笑する  金田が言う
「バッツだって  ウィルっちを  仇だって言ってただろ?けど  それを許して  友達になれたじゃないか?だったらさ?」
バッツスクロイツが衝撃を受けてから  苦笑して言う
「まぁー?アレはね~?結果として  オレっちの両親やファクトリーの皆は  無事だったって事が分かった訳だし?だからその~  誤解だった  とは言わないにしても?そんなんだったものだから?」
金田が言う
「けど  その前でも  バッツは  ウィルっちに暴力を振るったりは  しなかったじゃないか?」
バッツスクロイツが衝撃を受けて言う
「振るってはいないけど…  振るおうとして  止められちったからね…?デスに?」
バッツスクロイツがデスを見る  デスが疑問する  バッツスクロイツが苦笑する  金田が言う
「なら  バッツは  デスっちに止められなかったら  ウィルっちを殴ってたか?」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「うん…  多分ね?だからさっきも  ウィルっちを止められなかった…  って言うかー?物理的な力の問題としても  オレっちじゃ無理だったしー?」
レビが言う
「それはカネダも同じであったと思われるが?」
バッツスクロイツが言う
「それを言うなら  レビっちこそっ!?」
レビが衝撃を受け視線を逸らして言う
「俺は…  ウィルシュの気を晴らさせてやる必要も  あるだろうと…  だが途中からは  バッツと同じく  手が出せなかった」
金田が言う
「俺も怖かったよ?それに多分バッツならウィルっち相手に  あそこまではしなかっただろ?」
バッツスクロイツが言う
「そりゃ…  そもそもウィルっちは  不死身ーなボディでは  無いって言ってたし?…もちろん  そうだったとしても  俺はあそこまでやる事は出来ないかな…  一発だって  人を殴るのなんて怖いよ?オレっち喧嘩もした事が無いからね?モノホンの戦場も未経験だし?」
レビが言う
「それを言うのであれば  先ほどと  戦場のそれは異なる  戦場では  互いに  やるかやられるかのみであって…  相手を傷付ける事自体が目的では無い」
金田が言う
「そうだよな?相手を傷付ける事が目的だ何て  可笑しいんだ」
バッツスクロイツが言う
「あぁっ  け、けどさ?ウィルっちにとっては…  このログヴェルン城の皆の仇だった訳だから?そこは  その…  酌量をしてあげないとね?だから…  これでっ!?フィフティ・フィフティって事でっ!?」
金田が疑問して言う
「ふぃ…?ふぃふぃ…?フィ?」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「フィフティ・フィフティ!50対50!つまり  引き分けって事!お互いもう  これでお相子にして  この事は  根に持たない様にしようって意味!」
金田が言う
「そっか…?そうだな?あんだけ一杯傷付けたんだ  ウィルっちも  もう  根に持ってないよな?その!ふぃ…  ふぃふぃ…  ふぃ…  何とかって奴だもんなっ!」
レビが笑いを隠す  バッツスクロイツが苦笑して言う
「フィフティ・フィフティね?」
金田がクレターへ向いて言う
「うん!だからさ?もう大丈夫だぞ!?…よく耐えたな?辛かっただろ?」
金田が苦笑する  クレターが金田を見ていた状態から目を閉じて意識を失う



焚き火が燃えている  バッツスクロイツがカロリーメイトを食べ衝撃を受けて言う
「う…  ヤバい  めちゃくちゃ  水分持ってかれる…」
レビが言う
「軽さと言い  携帯面に置いては優れて居るが…  やはり  もう少し  水分のある物の方が良さそうだ…」
バッツスクロイツが言う
「レビっちに賛成~  水分さえあれば  パーフェクトなんだけど…」
茂みが揺れて  金田がやって来て言う
「あった  あった!あったよ!水!」
バッツスクロイツとレビが顔を上げ  バッツスクロイツが言う
「マージでー!?」
金田が水の入った水筒を2本見せて言う
「マジでマジで!レビっちのネズミさんが  案内してくれてさ!?」
デスとブレードが続いてやって来る  チッピィが金田の肩へ飛び乗って  不満気に鳴く  金田が疑問した後微笑して言う
「ああ!ネズミさんが大活躍したって!今  2人に伝えていた所だよ?」
チッピィが不満気に鳴く  金田が疑問して言う
「ん?何だ?レビっちの所へ行かないのか?ご褒美のチーズ  貰えるかもしれないぞ?」
チッピィが一瞬反応するが慌てて否定して不満気に鳴く  金田が疑問すると  レビが言う
「『ネズミさん』ではなく  彼の名は  チッピィと言う  カネダにも  その様に呼んで欲しいと  不満を言っているのだろう」
チッピィが反応して頷いて見せる  金田が言う
「へぇ~?凄いな レビっち 何で分かるんだ?やっぱり少しはネズミの言葉が分かるのか?」
レビが言う
「いや…  そうでは無いのだが…」
バッツスクロイツが咽て言う
「ゲホゲホッ  タマちんっ  水  プリーズッ  ゲホゲホ」
金田が慌てて言う
「ああ、ほらっ  飲んでっ!?大丈夫かっ  バッツ!?」
バッツスクロイツが金田から水筒を受け取って飲んで言う
「ふぅ…  助かったぁ…」
レビが言う
「金田が水を探しに行くと言わないでいたら  危ない所だったな?」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「確かに?エネルギーメイトを喉に詰まらせて  ライフエンドしちゃうなんてー?死んでも死にきれないって感じでー?」
レビが言う
「正に  卿の命は  水に救われた」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「人体の70%は水分だからね~?」
レビが言う
「では残りの30%が骨や肉なのか?」
バッツスクロイツが言う
「ノンノン?そうじゃないよ  レビっち?ここで言う70%の水分に対する30%はー!」
金田が腰を下ろして  クレターを見て気付いて言う
「あ?気が付いてたのか?水見付けて来たんだ!飲むか?」
クレターは沈黙している  金田が疑問する  レビが言う
「成程…?肉や骨と言った話では無く  もっと…  分子的な話であると?」
バッツスクロイツが言う
「お?付いて来るねー  レビっち?アバロンの人たちはさー?こういう話になると  3ミニッツで寝ちゃうんだからー?オレっち  いつも話し損ーって感じでー?」
金田が言う
「バッツの話は  知らない言葉も入るから  俺にはちょっと難しいけど  人間の身体は70%が水なんだってさ?だからきっと  アンタの身体も水で治るんだろうな?」
金田が笑う  クレターが間を置いて少し顔を動かす  金田が気付き微笑して言う
「うんっ  なら  少し飲んでみるか?明日帝国へ行けば  骨も治せるようになるだろうから  …早く治ると良いな?」
金田がクレターへ水を飲ませる  クレターは沈黙している

翌朝

焚き火が消えている  バッツスクロイツがボロボロの上着を見て言う
「プイオフィールの限定モデル…っ  当時でも40万もした超プレミアのシャツが~っ!」
バッツスクロイツが挫折して居る  レビが言う
「火は消してしまった  捨てるのなら  土の中へ埋めて置くと良い」
バッツスクロイツが言う
「まさか  一度も袖を通す事無く  お別れーだなんてーっ!あうぅううう…っ」
レビが言う
「では  一度袖を通してから…  いや  それだと  余計な血が付く事になる  推奨はされないが…  卿がそれほどと言うのであれば?」
バッツスクロイツが言う
「着ないよっ!」
金田がクレターへ帝国の制服を着せながら言う
「アレ脱がす時に破っちゃった事は  バッツには内緒な?けど  どの道ボロボロだったし…  仕方ないよな?人が着る服より  それを着る人の方が大切に決まってる」
クレターが沈黙している  金田が片方の袖を通し終えて言う
「じゃぁまた  ちょっと痛いだろうけど  我慢してな?こっちの袖を通すには  どうしても  …っ?」
バッツスクロイツが服のお墓へ手を合わせて言う
「オレっちの  40万のシャツ…っ  オレっちは着てあげる事が出来なかったけど  成仏して下さいっ」
レビが言う
「服も成仏するのだろうか?…分子的に?」
レビが疑問する  金田がクレターに服を着せ終えて言う
「お待たせ!こっちは準備完了だ!」
レビが言う
「こっちも  問題ない  …行くぞ?キャプテン?」
バッツスクロイツが言う
「りょーかい!…ん?そう言えば  今更だけどタマちん  “キャプテン”って言葉は知ってるんだよね?」
金田が言う
「ああ!船長の事だろ?海に関する事なら知ってるよ!ヨーソローとかも?」
バッツスクロイツが疑問して言う
「何それ?」
金田が言う
「えっ!?バッツたちの言葉じゃなかったのかっ!?」
バッツスクロイツが疑問する  クレターを背負ったブレードが顔を向ける

帝国  B-6エリア  転送ブース

ブースの中央CITCの光が立ち登る  バッツスクロイツたちが現れる  帝国兵が顔を向けて言う
「CITCを」
帝国兵がスキャン装置を向ける  バッツスクロイツが言う
「ハイハイ!いつもご苦労様ー?」
バッツスクロイツがスキャン装置にCITCをかざすと  ピッと電子音が鳴り  グリーンランプが灯る  帝国兵が言う
「通って良い」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「相変わらず  不愛想だねー?」
帝国兵が顔を逸らして言う
「ふんっ  たまたま第1地区に住んでいたから  助かった分際で…っ」
バッツスクロイツたちが過ぎ去ると  帝国兵が不満気に唾を吐く  バッツスクロイツがCITCを手に言う
「…成程?帝国兵も  穏やかじゃない訳だ?」
レビが小声で言う
「もう少し  態度を周囲の者へ合わせた方が  良いのではないだろうか?バッツの様子は…  彼らに比べ  目立ち過ぎる」
バッツスクロイツが言う
「ノンノン?こういう時は  我を通しちゃった方が  返って安全ーってね?そもそも?このメンツで  暗ーい顔をするだなんて  ナンセンスだし?」
レビが言う
「ナンセン…?…そうか  では  ここは  卿へ合わせるとしよう」
バッツスクロイツが言う
「そうそう!堂々と行っちゃいましょー?皆さんー?」
バッツスクロイツたちが堂々と街を歩く  クレターが沈黙している  道行く人たちが  バッツスクロイツたちを避ける様に過ぎて行く

バッツスクロイツが言う
「大きい道をずっと歩いてたら  到着ーってー?まるでどっかのアバロンの城下町みたいだねー?」
レビが言う
「それでは  どっかのでは無く  アバロンのと言ってしまっている訳だが…  …まさか  このまま向かうつもりか?」
バッツスクロイツが言う
「出来ればもうちょっち  街の方を見て置きたかったんだけどー…  ここまで真ーっすぐ来たのに  目の前でUターン何てしちゃったらー?折角の作戦も台無しー  でしょー?」
金田が言う
「そもそもバッツの言うその作戦って?」
バッツスクロイツが言う
「もっちろーん?堂々と行きましょうー!作戦っ!」
レビと金田が呆れて言う
「…やはりそれか」  「作戦って言うのか?それ?」
バッツスクロイツが意気揚々と笑む  その胸の内でバッツスクロイツが思う
(なんて言って見せてるけどさ…?オレっちホントは…っ  マジで冷や冷やっ!今直ぐにでも  第2プラントへエスケープしたい気持ちマックスなんだけどねーっ!?だって  今のオレっちたちには…っ)
バッツスクロイツが横目にブレードを見て  その背に背負い毛布を被らせているクレターを気にして思う
(帝国内の情報をゲットする筈が  相手側のトップと言える  帝国の司令官っ  クレター司令官にガッチリ監視されてるって――っ!?こんな状態で  帝国の何を調べてみろって言うのよっ!?情報筒抜け所か  本人介抱しちゃってるってっ!?前代ナンセーースッ!!!)
バッツスクロイツが心の中で叫んでから脱力する  レビが言う
「…作戦は続行中だぞ  キャプテン?」
金田が言う
「帝国の建物は目の前だ  気合い入れ直して行こうぜっ!?キャプテン!」
バッツスクロイツが泣きながら思う
(もうダメっ!!敵の親玉担いで  そのアジトに忍び込もうってっ!?しかも堂々とっ!?テンパってたとは言え  我ながら何てクレイジーなプランズをメイクイットしちゃったんでしょうっ!?嗚呼  シリウスな神様ぁあっ!?バーネっちな女王様ぁあっ!?誰か助けてぇええっ!?プリーズぅううっ!?)
バッツスクロイツが引き笑いで言う
「オ、オーケー?それじゃぁ…  アユーレディーガーイズ?レッツらゴー!?」
金田が言う
「ヨーソロー!」
レビが視線を強める  バッツスクロイツが帝国の宮殿を前に思う
(も~~~っ  無理ーーっ  エスケープしたい~~~っ!!!)
デスとブレードが意識を向ける  ブレードの背に背負われているクレターが沈黙している

帝国宮殿内

バッツスクロイツたちが入口を入る  金田がバッツスクロイツへ言う
「なぁ  バッツ?ここって  帝国の…  お城の中って事だよな?」
バッツスクロイツが言う
「そうねー?お城って感じでは無いけどー?本拠地では在るんじゃなーい?」
金田が言う
「本拠地…  うん!そうだよな?なのにさ?」
バッツスクロイツたちの向かいから帝国の制服を着た者がやって来て横目に見てから過ぎ去る  金田がそれをやり過ごしてから言う
「…なのにさ?何でその入り口や  お城の…  本拠地の建物の中に  警備をしている奴が居ないんだ?こんなんじゃ  不審者とか入りたい放題じゃないか?」
バッツスクロイツが言う
「うんー…  まぁ  そもそも  ここへ入りたがる人間が  居ないんじゃなーい?何て言っても  ここは帝国様の本拠地だものー?入ったら最後  …二度と生きては出られない  …とかってー?」
金田が言う
「二度と生きては…  か…」
再び別の帝国の制服を着た者が通り過ぎて行く  金田がチラッと見てから言う
「それにしたって  どう見ても自分らと違う俺たちの横を過ぎても  全く意に返さないなんて?」
バッツスクロイツが言う
「誰だって面倒事には関わりたくないからねー  見なかったー  気付かなかったーって事にしたいんだよ」
金田が言う
「そりゃ  分からないでも無いけどさ?自分らの本拠地だろ?守ろうって  普通  思わないか?」
バッツスクロイツが言う
「思わないんだよねー?これが?」
金田が驚き何か言おうとして言葉を飲む  レビが言う
「…それで?卿は一体  何処を目指しているんだ?もしや…?」
バッツスクロイツが分かれ道の標識を確認した上で通過する  バッツスクロイツが言う
「一応  中央を目指してはいるけど…  折角なら?場所位は確認して置こうかなーと思ってー?」
レビが言う
「卿の父親が居ると言う  研究室か?」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「そー言う事!」
金田が表情を明るめる  バッツスクロイツが言う
「ま、流石にー?今は会う事は出来ないけど…」
金田が疑問して言う
「え?何でっ?」
バッツスクロイツが言う
「場所さえ確認出来れば  後は  いつか…」
金田が言う
「『いつか』  何て言わないで!今  会えば良いじゃないかっ!?」
バッツスクロイツが言う
「タマちん  しーっ!」
金田がハッとして口を押える  バッツスクロイツが言う
「いくら出入り口や通路に  警備の人間が居なくても  扉の向こうまではそうは行かない  きっと各部屋の扉には  超ハイレベルなセキュリティロックが掛けられている筈  それを解除するなんて…」
バッツスクロイツがチラッと近くの扉のロックを見て思う
(A20…  スカロジックシステムロック…  …少し時間が掛かるけど  やろうと思えば…)
レビが言う
「バッツ」
バッツスクロイツがハッとしてレビを見る  レビが言う
「卿の目的地と共に…  その卿も言っていた  この本拠地の中央へと向かう経路   …ここが分かれ道となるようだが?」
バッツスクロイツが正面を見直すと道が2つに分かれていて  壁に標識がある  レビが言う
「左側の文字は読まれないが  ウィルシュが言っていた  かの研究室やそれらを示す文字は  右であると思われる」
バッツスクロイツが言う
「セントラルルーム…  正に  中央の部屋  この帝国の中枢…  って事かも…っ」
レビが言う
「ではそこに…?」
バッツスクロイツが言う
「何があるのかは分からないけど  …いかにも  何か大切な物が在りますって  装いだね?」
レビが言う
「あの…  門のような物か?」
バッツスクロイツが言う
「多分  ありとあらゆる種類のセンサーが  張り巡らされてる  …出来れば解析したい所だけど」
バッツスクロイツがチラッとクレターの様子を見る  クレターに変化は無い  バッツスクロイツが思う
(ここまでオレっちたちの行いに  反応を示さないなんて…っ  けど  あのウィルっちの証言に  不死身の身体…っ  彼が  この帝国の司令官  クレター司令官だって事は確かな筈  それなのに…っ!?)
金田が言う
「そんな事に  危険を冒す位ならさ?バッツの親父さんに  会いに行く方が先だろっ?」
バッツスクロイツが驚き金田へ向く  レビが微笑して言う
「そうだな?カネダの言う通りだ  どちらを行っても見つかると言うのならば  そちらを行く方が遥かに価値がある」
バッツスクロイツが呆気に取られて言う
「レビっち…っ」
金田が言う
「バッツの親父さんに  会おうぜっ!バッツっ!?」
バッツスクロイツが感激して言う
「タマちん…っ」
デスとブレードがバッツスクロイツを見て頷く  バッツスクロイツが涙を堪えて言う
「皆…っ」
バッツスクロイツが頷いて言う
「…ありがと!」
金田とレビが微笑して  レビが言う
「では急ごう」
金田が言う
「ああ  堂々と  な?」
バッツスクロイツが微笑して頷き歩き出す  皆が続く  書類を手に通りかかったレンソンが  バッツスクロイツたちを見掛け疑問して言う
「うん…?」
レンソンがバッツスクロイツたちの後姿を見てから  不満げに鼻を鳴らして言う
「あの若さで2体も…っ  オマケに警備付きか  …ふんっ」
レンソンがセントラルルームへの道を行く  レンソンが通ると通路が色取り取りのセンサーで照らされる

B-6エリア  システム研究開発室16号室  前

バッツスクロイツたちが部屋番号を確認しながら歩いて来て  1つのドアの前で立ち止まる  レビが言う
「システム研究開発室  16号室…  ここだな?」
金田が言う
「どうする  バッツ?俺たちは?どうしてたら良いっ?」
金田が周囲の様子を気にする  通路には何人かの研究者らしき人たちの行き来がある  バッツスクロイツが言う
「この状態でコソコソしたって怪しまれる  だったら  やっぱりっ?」
レビが言う
「堂々と…か?」
バッツスクロイツが携帯端末を用意しながら言う
「二人はオレっちの作業を  監視するみたいにしてて?デスやブレードっちは  人型機械兵士の真似でっ!」
レビが言う
「了解」
金田が微笑して言う
「分かったっ」
ブレードとデスが視線を合わせて頷く

道行く研究者が反応して顔を向ける  研究者の視線の先では16号室の前で1人が作業をして  2人の黒い服の男が人型機械兵士を背に  作業を見下ろしている  研究者が言う
「やれやれ  …ここも随分と監視が厳しくなって来たものだな?」
研究者が立ち去る  道行く研究者たちも同様に過ぎ去って行く

クレターが目だけを動かしてバッツスクロイツの様子を見る  バッツスクロイツが携帯端末へ素早い入力を行っている  ディスプレイには大量のプログラムが流れている  クレターが沈黙する
「…」
ブレードがクレターの顔を見る  クレターは変わらぬ状態で目を閉じている  ブレードが様子を伺う様に覗き込んでから  クレターの身体を背負い直す

バッツスクロイツが作業をしながら思う
(電子ロックの基本セキュリティに  追加A20のスカロジックシステムロック…  ターヘンからのギミック解除でメインの生体セキュリティを回避…  これで…っ!?)
バッツスクロイツが視線を上げて言う
「ロック…  解除っ!」
電子ロックの表示がグリーンになると同時に扉がスライドオープンする  バッツスクロイツが表情を明るめる  金田が小さなガッツポーズと共に言う
「良しっ!」
レビが思わず緩みそうになった表情を戻して言う
「…警戒  怠るな  カネダっ」
金田がハッとして言う
「…っ  ごめんっ」
レビが微笑して  バッツスクロイツを見る  バッツスクロイツが硬直している  レビがその背を前に  周囲を警戒してから言う
「…では  入るぞ?」
バッツスクロイツが言う
「う、うんっ」
金田が言う
「落ち着いて行こうっ」
バッツスクロイツが頷き部屋へ足を向ける  バッツスクロイツと皆が部屋へ入りドアが閉まる  通路にレンソンの足が現れる

システム研究開発室16号室  内

ドアがスライドオープンするが  室内の研究員たちは見向く事も無く  それぞれの作業を続けている  バッツスクロイツを先頭に皆が入って来ると  金田とレビが周囲を見渡した後顔を見合わせ  バッツスクロイツへ向く  バッツスクロイツが目の前の風景に過去のそれをダブらせ呆気に取られる  金田が声を掛けようとするのをレビが止める  バッツスクロイツがふと顔を向け歩き出す  金田が反応してレビへ向くと  レビが頷く  金田とレビがバッツスクロイツの後に続く

バッツスクロイツが向かった先  研究室の一角  沢山の機材に囲われた場所で作業をしている人物を見て  バッツスクロイツが目を丸くする  人物が機材の操作をしてディスプレイに表示された数値を見て軽く息を吐いてから顔を上げ  その視界にバッツスクロイツたちの姿が入る  一瞬の間の後呆気に取られて言う
「…バッツ?」
決して大きくないその声に  研究者たちがハッと顔を向ける  バッツスクロイツが父の声に表情を悲しめて言う
「父さん…っ」
父が手に持っていた資料を手放し  バッツスクロイツの下へ向かって言う
「バッツ!」
バッツスクロイツが泣きながら父へ向かって言う
「父さんっ」
バッツスクロイツが父と抱擁して言う
「父さんっ  良かったっ  良かった  本当に…っ!うぅ…っ  ううう…っ」
父が言う
「バッツ…  会いたかった…っ  まさか私の生ある内に  もう一度会う事が出来るとは…  …大きくなったな?」
バッツスクロイツが顔を上げて言う
「何言ってんの?たったの2年振り…っ  それに  俺…  ずっと前に  成人超えてるってっ?」
父が苦笑して言う
「そうか…  そうだったな?っはは…」
父がバッツスクロイツの頭を撫でる  バッツスクロイツが照れ臭そうにはにかむ  金田とレビが微笑している  父がバッツスクロイツの後方に居る2人に気付きバッツスクロイツへ言う
「そちらの2人は?」
バッツスクロイツが言う
「うん…  2人は俺の仲間で  こっちは第6プラント出身の  金田タマちん!」
父が言う
「ほう…?第6プラントの?」
金田が衝撃を受け言う
「金田玉児ですっ  タマちんはバッツスクロイツが付けた  あだ名でっ!」
バッツスクロイツが言う
「そうそう!それでこっちの2人が  第2プラントのレビっちとブレードっち!」
レビとブレードが頷く  バッツスクロイツが言う
「第2プラントの事は  父さんも知ってるんだよね?デスの故郷でもあるんだし?」
父が言う
「いや  知っていると言う程のものではない  彼が元居た世界であると…」
バッツスクロイツが言う
「えっ!?“世界”?」
父がバッツスクロイツへ言う
「ああ…  私はその“プラント”という言葉は知らない  だがバッツの言う  その様子だと…  成程?我々の技術は  まだまだ遠く及ばぬ様だ  …息子が世話になったな  デス?本当に…  こうして再び合う事が出来たのも  貴方のお陰だ  ありがとう」
父がデスを見る  デスがバッツスクロイツ父を見て顔を左右に振る  バッツスクロイツ父が微笑する  バッツスクロイツが微笑して言う
「母さんや  他の皆も無事なんだよね?」
父が頷いて言う
「無事だ  連絡は取られる」
バッツスクロイツが言う
「そっか…  良かった  詳しい場所とかは?聞いてないの?」
父が言う
「あまり詳しくは聞いていない  聞いてしまうと  居た堪れなくなってしまうだろう?」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「どうにかしようとは  思ってないんだ…?」
父が言う
「そうだな  この状態であるからこそ  我々は信用を得られている様なもの   だからこそ  一時の感情で  それを壊す訳にはいかない」
金田が言う
「信用って?」
父が言う
「この帝国の実質的な指導者である  クレター司令官の信用だ」
金田が反応する  父が言う
「我々は現在  彼の指示の下  機械兵士に使用するシステムの開発を続けている  そして  それを行う為に  我々は  人の姿のまま生きる事を  許されていると言う状態だ」
レビが言う
「研究を行わないとあれば  機械兵士の生体パーツにすると  脅されているのか?」
父が言う
「直接  その様に言われた事は無いが  クレター司令官に刃向かった者は  皆  その末路を辿る事になる  しかし  クレター司令官にとっても  機械兵士の研究開発を行える人員は不可欠だ  従って  今はその人員たる我々を2分割する事で  互いを人質とする形を取っている」
金田が言う
「人質か」
レビが言う
「己に取って有益である者を使うには  最も効率的な方法ではあるが  同時に  反逆を起こされる危険性をも孕む策だ  …だからこそ  諸卿は  要らぬ疑いを持たれぬ様  人質としての互いを  詮索せずに信用を示していると」
父が頷いて言う
「今のこの帝国で  人間のままに  互いが生きられていると言う事が  我々にとっては唯一の救いだ  …お陰で  こうして再び  バッツに会う事も出来たしな?」
父がバッツスクロイツの肩に手を置いて微笑する  バッツスクロイツが微笑して頷く  金田が言う
「人質なんてしなくたってさ?機械兵士の  その研究とか開発をするって  約束したら?ダメなのか?」
皆が金田を見る  金田が言う
「だって会いたい人に  会えないなんて悲しいじゃないか?お互い生きてるって  少なくとも  この同じプラントに?同じ帝国の中に居るんだろ?それなのに…」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「タマちん…」
父が苦笑して言う
「いつか会えると信じて  その時を待つさ?それに…  今研究開発を行っている  このシステムが完成さえすれば  少なくとも  人間を機械兵士のAIに  生体パーツとして用いる必要が無くなる  そうとなれば  我々も他の者たちも機械兵士の生体パーツにされると言う恐怖に怯える必要は無くなるだろう」
バッツスクロイツが言う
「それって  ひょっとして?ヒューマニックAIの事?」
金田が言う
「ひゅ…  ひゅーまにっくえーあい?」
レビが言う
「人間の様な人工知能…  と言う事か?」
金田が言う
「え?人間の様な人工?」
バッツスクロイツが言う
「うん…  でも  そんなの出来ないって?そもそも人間の脳みそだって  解析しきれてないのに?」
父が言う
「過去アンドロイドの製作をしていた我々にとっては  とても  手の届く範囲では無いと思っていた物だ  しかし  ここへ来て  発想を変えてみたんだ  機械で作る事が難しいのであるなら…  生体で造れば良いのではないかと?」
バッツスクロイツが言う
「えっ!?それってっ!?」
父が言う
「人工的に人間の脳を作り上げ  それを量産し機械兵士としての能力を学習をさせた上で  そのAIに用いる…  まさしく人工生体パーツと言った所か  この開発を成功させれば  少なくとも  その後は  我々の様な非人工的な人間から  元々機械兵士として作られるソレを置いて  用いられる事は無くなるだろう」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「そうなんだ?でも…  なんか…  …それって?」
バッツスクロイツが思わずデスとブレードを見る  デスが沈黙し  ブレードが視線を逸らす バッツスクロイツがハッとして言う
「あっ!ごめんっ  違うっ!2人は違うよっ!父さんが言ってるのは  人間が作る奴でっ  つまり  やっぱ人工的なものの事っ!2人はっ  ちゃんとっ  プラントの神様である  シリウス様が作ったんだっ  だから  2人は俺たちと同じ  …人間だよっ!」
ブレードがバッツスクロイツを見てから頷く  デスがそれを見て頷く  バッツスクロイツがホッとする  父が頷いて言う
「私も  出来る事なら  このような事はしたくは無い  人工的に作るとは言え  分子的にも細胞の構造も  我々人間と同じモノだ  それを我々の代わりに  機械兵士のAIにしようと言うのだからな」
バッツスクロイツが言う
「けどさ?それこそ  分子も細胞の構造も同じにした所で  本当に…  その…  “動く” のかな?…だって  それってさ?」
父が言う
「ただ人間のそれと  同じものを作り上げたとしても  バッツの言う通り  “動かない”…  自我や命と言った感覚は  宿らないかもしれない」
バッツスクロイツが言う
「それじゃ…」
父が言う
「しかし  我々が知らないだけで  それをもたらす方法が  この帝国には  既に  あるのかも知れないのだ」
バッツスクロイツが言う
「帝国に?」
父が言う
「さっきも話したが  この帝国の実質的な支配者は  クレター司令官と言う者だ」
バッツスクロイツが言う
「あ、うん…っ!俺も  こっちに戻って  調べたりして…  チョッチなら知ってる?」
バッツスクロイツが横目にクレターを気にする  金田が直に見る  レビが焦りの汗を流す  父が言う
「では  この事も知っているか?クレター司令官は  不死身の肉体を持つ」
バッツスクロイツが衝撃を受け苦笑して言う
「う、うん…っ?知ってる…  気がする?」
金田が言う
「不死身とは言ってもっ!…モガッ!?」
レビが金田の口を押える  金田がバタバタしている  父が言う
「常識的には  考えられないだろう?その様な事…  しかし  事実だ  彼はどの様な致命傷を受けようとも  死ぬ事が無い  そして  それ以前と変わらぬ姿と  記憶を持って現れる  それは記憶の保存場所である  脳を潰されたとしても  変わらない」
バッツスクロイツが言う
「は…  ははは…  す、凄い回復パワーだね?記憶まで回復しちゃうーみたいな?」
父が言う
「信じられ無いだろうが  これは事実だ」
バッツスクロイツが言う
「う、うん  信じてない訳じゃ  無いんだけど…  ね…っ?」
父が言う
「しかし  それもその筈だ  彼こそが  人工的に作られた  その人間なのだ」
バッツスクロイツが僅かに顔を顰めクレターを気にする  金田が表情を怒らせている  父が言う
「実の所  彼を作った  博士の名前が  クレター博士と言うのだが  もう  数世紀以上も昔に亡くなっている  恐らく  その博士の残した研究資料を基に  再び  現代に作られたのが  今の彼だろう  そして  私も  その資料を基に今の研究を行っている」
バッツスクロイツが言う
「う…っ  あ、あの…  さ?父さん?その事って…  彼は?クレター司令官… 本人は?知ってる…  んだよね?」
父が言う
「いや  知らないだろうな?」
バッツスクロイツが表情を困らせる  父が苦笑して言う
「恐らく知らない筈だ  ヒューマニックAIの話をした際にも  特にその反応は見られ無かった  もし知っていれば  自身へも何らかの影響が現れる可能性を  示唆するだろう  少なくとも  己と同じ方法を用いて作り上げた “物”へ」
金田が怒ってレビの拘束を解こうとする  父が続けて言う
「その貴方へ用いた  命を吹き込む技術を  帝国から提供して貰いたいと願い入れるとなれば  穏やかではいられない筈だろう?…最も ヒューマニックAIが  どれ程  我々と同じ感覚を…  人間らしさを持っているのかは  分からないがな?」
バッツスクロイツが困りつつ言う
「…そう  …なんだ?」
父が落ちていた資料を拾いながら言う
「人間らしさと言うものは  やはり  人間が産み育てていく上で  培われて行くものだ  親から与えられる愛情や温もり…  クレター博士の資料では  作り上げた人工生命体は  最初から成体の姿だ  その事実からしても  不死身のクレター司令官が  変わらぬ姿と言うのも理解出来る  変わらないのではなく  変えられないのだろう」
バッツスクロイツが言う
「うん…  だとしても…  姿は変えられなくてもさ…? …心(AI)は  変るかも…  よ?」
皆が反応する  バッツスクロイツが苦笑して言う
「だって?それこそ人の手で作り上げた  機械のアンドロイドだって?大切にしてあげれば  そう学習して行く…  人間と同じ様に  …だったら?」
父が苦笑して言う
「うむ…  そうかもしれない  しかし  それをするには  彼は  もう…  フォーマット(初期化)をする他にはないだろうが  それもまた  出来る者が  この帝国には居ない  博士は遥か昔に  亡くなっており  その方法も示されてはいなかった」
金田が怒りを押さえて言う
「バッツ?『フォーマット』って?」
バッツスクロイツが反応して困って言う
「え?…えーっと… … …“説得”  …かな?」
金田が言う
「…本当に?なんか違う気がするんだけど?」
バッツスクロイツが困り苦笑していると  突如  室内に異常を知らせる警報が鳴る  皆が驚き  バッツスクロイツが言う
「なになにっ!?何の警報っ!?ひょっとしてっ!?」
レビが言う
「見付かったか?」
金田がハッとしてレビを見る  父が言う
「いや  これは  その扉のセキュリティーエラーだ  お前たちのミスでは無いが…」
研究員がシステム解析をしていて言う
「室外から  直接アクセスされてますっ  ロジックは解除済み  生体セキュリティを再入力中…っ  アクセス者…  レンソン中将ですっ」
扉が開き  レンソンが人型機械兵士2体と人間の兵士たちを引き連れて現れる  バッツスクロイツが言う
「ヤバ…っ」
金田が気を引き締めて周囲を見る レンソンの連れてきた人型機械兵士2体と人間の兵士たちがバッツスクロイツたちを囲う  レビが銃を抜こうか迷う  レンソンが言う
「おっと  動くな?そこのコート?後  お前の機械兵士どもにも  動くなと命じろ…  そこの!」
レンソンがバッツスクロイツへ銃を向ける  バッツスクロイツが視線を強める  レンソンが視線を強めて言う
「命じろと言っているっ!その2体はお前の物だろうっ!?」
デスとブレードが反応する  レンソンが周囲を見渡し言う
「うるさい警報が…っ  まだ止まらんのかっ!?」
バッツスクロイツ父がバッツスクロイツへ言う
「バッツ  逃げなさい」
バッツスクロイツが言う
「けど…っ」
父が言う
「後は私が何とかする」
バッツスクロイツが言う
「何する気っ!?俺の仲間たちなら  こんなの余裕だからっ  父さんは無茶しないでっ!?」
レンソンが言う
「おいっ  そこ!何を話しているっ!?」
父が言う
「お前たちの事が  クレター司令官に知られては大変だっ  そうなる前に  私が  あの者の口を…っ」
父がメスを握っている  バッツスクロイツが言う
「父さんには無理だよっ  動物実験だって出来ないくせにっ!」
父が言う
「殺す訳じゃないっ  脅すだけだ…」
バッツスクロイツが言う
「出来る訳ないってっ!?」
レンソンが近付いて来て  気付いて言う
「何を話して…っ  うん?お前は…?そうか  お前たちは  親子か?そっくりな顔をしている」
バッツスクロイツが言う
「だったら何だよっ!?」
父が言う
「バッツ…っ」
レンソンが笑って言う
「ッハハハ!なるほど?つまりお前は…!いや?お前たちは  お前の父親である  この男を  連れ出しに来たと言う事だな?最近はあまりない事だったが  そう言う事か?」
バッツスクロイツが言う
「だとしたら何っ?言っとくけど  オレっちの仲間は強いよ?お前の兵士なんか  あっと言う間に沈めてやるよ?」
レンソンが言う
「ほう?たった今陛下より賜った  この最新の人型機械兵士が  お前の型落ちなポンコツに倒されると?」
バッツスクロイツが言う
「嘘だと思うなら  試してみなよ?こっちは1体で十分  アンタたち全員が相手で良いよ?」
レンソンがグッと息を飲み バッツスクロイツとバッツスクロイツ父を見て言う
「…そうか  父親に頼んで  チューンアップしてあると言う事か  違法改造だな?クレター司令官に報告してやろう  大幅チューンアップとなれば  表彰物だ  それを報告した私がな?」
バッツスクロイツが言う
「出来るならね?」
デスが武器を手に構える  レンソンが言う
「出来るとも?」
レンソンが言うと共に手に持った銃をデスへ向けて言う
「よし、フリーズだ  そこの機械兵士  ドントムーブ!私はこの帝国のレンソン中将だ  武器を捨て  両手を上げろ!」
デスが武器を構えたままレンソンへ向いている  レンソンが言う
「聞こえないのかっ!?優先順位を…  っ!?  まさか  オーダープライオリティシステム(優先順位)まで改造しているのではないだろうな?そうとなれば  極刑は免れんぞ?」
バッツスクロイツが言う
「そんなシステムなんか  最初から無い  彼は人間だっ」
レンソンが呆気に取られて言う
「に、人間…っ?まさか…  機械兵士の装甲を着ているだけ  だと言う事か?」
バッツスクロイツが言う
「そうとも言うけど  アンタの機械兵士より強い  …試したいんでしょ?やってみなよ?」
レンソンが言う
「…クッ  たかが人間の相手を機械兵士になどさせるかっ  おいっ  お前たち!その機械兵士モドキを拘束しろ!」
人間の兵士たちが反応するが  デスを見て困惑しつつも銃を向けて近付く  金田がレビへ言う
「ど、どうするっ!?俺たちもっ!?」
レビが言う
「いや  この程度であるなら  彼一人で十分だ」
人間の兵士たちが2人の会話に焦る  皆の間に緊張が走る  レンソンが言う
「何をしている!拘束しろ  ムーブイット!」
レンソンの機械兵士たちが反応して  デスへ向かう  レンソンがハッとして言う
「っ!?しまったっ!」
バッツスクロイツが言う
「デス!やっちゃって!」
バッツスクロイツ父が言う
「ダメだ!機械兵士に攻撃をしてはっ!」
バッツスクロイツが驚き父を見る  父が言う
「セントラルセキュリティシステムに  ヒットしてしまう!」
バッツスクロイツがハッとして言う
「ごめんっ  デス!よけてっ!」
デスが頷き  ひょいっとよけると機械兵士2体が感性のままに進行して互いに接触して倒れる  金田が衝撃を受けて言う
「えっ!?ぶつかった!?」
バッツスクロイツが言う
「今の…  攻撃を受けたってレーンジに  入らないよね?」
警報が増加する  バッツスクロイツが頭を抑える  デスが横目に倒れている機械兵士2体を見る  レビが言う
「デス  ドンマイ  事故だ」
デスが落ち込む  金田が言う
「鈍米って?鈍足な新米兵士って事か?」
レビが言う
「don't mind…  気にするなと言う事だ」
金田が言う
「どんと…?」
レンソンが言う
「クソッ  お前らが動かんからっ  …おいっ  スタンダープ!…スタンドッ  アップだっ!」
機械兵士たちが立ち上がる  金田が言う
「何かやっぱ  鈍米だな?」
レビが言う
「それは鈍足な新米兵士の意味か?」
金田が頷いて言う
「そうっ」
レビが言う
「そうだな?確かに奴らは  …使えん  今の内に逃げるか?」
レンソンが衝撃を受ける  金田が言う
「俺らは良いけどさ?バッツの親父さん  大丈夫かな?」
レビが言う
「うむ…  恐らくだが  大丈夫であると思われる」
金田が言う
「そうなのか?」
レビが言う
「俺であっても  機械兵士を作られる研究者と  使えぬ中将ならば  迷わず  中将を切り捨てる」
レンソンが衝撃を受け怒って言う
「なぁっ!?」
金田が言う
「確かに!」
レンソンが言う
「貴様ら…っ」
レンソンが壁にある受話器を取って言う
「レンソン中将だっ!この部屋に侵入者が居る!直ちに兵を向かわせろ!」
金田が言う
「あっ  応援呼んだぞっ!?どうするっ!?」
レビが言う
「そろそろ引いて置いた方が良いだろう…  バッツ!」
バッツスクロイツが頷き父へ向いて言う
「いつか必ず助けるよっ  父さん!母さんも…  皆もっ!」
父が言う
「バッツ  危険は犯すなっ」
バッツスクロイツが言う
「大丈夫!オレっちには  第2プラントの皆が付いてる!プラント管理者のシリウス様もっ!」
レンソンが言う
「第2プラント?管理者…っ?まさか  貴様らはっ!?」
応援の人型機械兵士が現れて銃を構える  皆がハッとする  レビが言う
「やるかっ!?」
レンソンが自分へ向けられている人型機械兵士の銃口へ慌てて言う
「ま、待てっ!私は違うっ!侵入者は  そっちの…っ」
人型機械兵士たちが銃を撃ち始める  皆が慌てて逃げる  バッツスクロイツがデスに救助されていて言う
「何あれっ!?いきなり撃ち始めるなんて!?」
レビが金田を救助していて言う
「ターゲットは  この部屋に居る者  全員と言う事かっ!?」
金田が言う
「イカレテるよっ!」
バッツスクロイツが言う
「このままじゃ  皆まで…っ」
レンソンが自分の機械兵士を盾にしていて言う
「撃つな!ドントショット!ストップだ!聞かんか  ポンコツどもがっ!!」
レビが言う
「やはり  撃ち壊すかっ?」
金田が言う
「それ駄目だって  さっきバッツの父ちゃんがっ!?」
レビが言う
「それはそうだが…っ」
父が言う
「こうなっては…っ  もう構わない  奴らを壊してでも  君たちは  逃げなさい!」
バッツスクロイツが言う
「俺たちが出てけば  奴らは  俺たちを追う!?」
父が言う
「それは…っ」
バッツスクロイツが言う
「そうはならないなら  全部壊すしかないっ!デス!レビっちっ!やっちゃってっ!」
デスが頷き  レビが銃を持ってデスへ向く  デスとレビが戦闘を開始する  人型機械兵士は機械的に照準を合わせる為  デスとレビが次々に倒して  侵入して来た機械兵士たちは殲滅する  レンソンが呆気に取られて言う
「人間に倒されるだと?人型機械兵士とは  こんなに使えん物なのか?」
レビとデスが戦闘を終え  レビが言う
「衝撃は十分に与えてしまった  再び応援が来る前に脱出するべきだ  諸卿らも」
レビがバッツスクロイツ父を見る  バッツスクロイツが言う
「そうだよっ  このままじゃ  俺たちだけが居なくなったってっ」
新たな警備機械兵士がやって来る  レンソンが携帯端末でマニュアルを確認していて言う
「機械兵士へ命令は…っ  専用コマンドか  己の地位を認識させた上で…  コマンド入力を…っ  そうかこれかっ!」
金田が言う
「また来ちゃったぞっ!?デスっち  レビっちっ!?」
デスとレビが構える  レンソンが言う
「私はレンソン中将だ!機械兵士どもっ!ターゲットはソイツらだけだ!銃を構えろ  私が命令を行うまでは撃つな」
レンソンがデスとレビへ銃を向ける  警備機械兵士たちが2人へ銃を向ける  レンソンが言う
「そして  お前らは…っ!」
レンソンがバッツスクロイツへ銃を向ける  バッツスクロイツがハッとすると  バッツスクロイツの前に父が身を呈する  バッツスクロイツが言う
「父さんっ!?」
父が言う
「息子へは手を出させないっ」
レンソンが言う
「ほう?たかが  1研究員の分際で  大したものだな?その様な事をした所で  人の身を持つ貴様が  その息子を守られると思っているのか?」
レンソンが引き金へかかる指を強めて構える  バッツスクロイツが言う
「止めろっ!!」
レンソンが言う
「そして  貴様  先程の話は何だ?第2プラント?貴様らは何を知っている?先日現れた  侵略者の仲間か?」
バッツスクロイツが言う
「侵略者の?」
レンソンが言う
「違うのか…?…まぁ良い  貴様らを拘束し  調べ上げれば済む事だ  …良しっ  機械兵士どもは  そのまま威嚇を続けろ  その間に  お前たちは奴らへ拘束手錠を掛けろ!」
人間の兵士たちが銃を構え 数人が手錠を手にバッツスクロイツたちへ向かう  金田が言う
「レビっちっ!」
レビが言う
「デスっ  卿はバッツをっ!」
デスが頷く  レンソンが言う
「動くな!機械兵士どもっ!奴らを撃…っ!」
クレターの声が聞こえる
「Cease fire  総員動くな」
皆が驚き顔を向けると  ブレードの横にクレターが立っている  レンソンが疑問してクレターを見て言う
「帝国の…?」
人間の兵士たちが顔を見合わせ  クレターへ銃を向ける  クレターが機械兵士へ言う
「優先順位の再確認を行え」
機械兵士たちがクレターへ向けていたレッドアイをグリーンに変える  人間の兵士たちが反応する  クレターが言う
「クレター司令官だ  総員武器を収めろ」
人間の兵士たちが衝撃を受け銃を手放して手を上げる  レンソンが呆気に取られて言う
「なぁっ!?ば、バカなっ!?クレター司令官が  こんな所に居るはずがっ!?」
レンソンが銃を持ったまま一歩後づ去る  バッツスクロイツ父が呆気に取られている  バッツスクロイツが警戒して構える  デスとレビが武器を構えたままクレターを見る  クレターが近くに居た機械兵士から銃を取り  その銃を向ける  バッツスクロイツとレビが驚く  金田が横目に見る  クレターが金田の頭に銃口を向けて言う
「聞こえ無かったのか?武器を収めろ」
バッツスクロイツが表情を怒らせる  レビが言う
「カネダへ銃を向けるとは…っ」
デスが武器を収納する  レビも銃を納める  レンソンが言う
「何故っ  このような場所に?本当に…っ  お前が…っ  クレター司令官なのかっ?」
クレターが言う
「機械兵士どもが  貴様ではなく  私の命に従っている  この事実で分からぬのか?」
レンソンが衝撃を受け  慌てて銃を手放して言う
「し、失礼を致しましたっ!どうかっ!どうかっ!!生体パーツにだけはっ!!」
レンソンが土下座する  クレターが言う
「ならば  この侵入者どもを  全員拘束し  牢へ入れて置け  余計な詮索は不要だ  全て  私が確認を行う」
レンソンが言う
「はいっ!直ちにっ!」
バッツスクロイツたちの手に拘束手錠が付けられ人間の兵士たちが連行する  バッツスクロイツ父がクレターを見る  クレターが視線を向けて言う
「貴様どもは  開発作業を続行しろ」
クレターが言い終えると共に部屋を出て行く  皆が居なくなった研究室に鳴り続けていたサイレンがしばらくして消える  父が周囲を見渡してから言う
「バッツ…っ  どうか…っ」
父が思いを胸に作業へと戻って行く

地下牢

扉を閉める音が響く  レンソンが言う
「そこで大人しくして居ろ!」
人間の兵士たちが言う
「武器を押収しなくても良いのでしょうか?」
レンソンが反応して迷ってから言う
「…ク、クレター司令官からは  その様な指示は無かった」
人間の兵士たちが言う
「しかし…」
レンソンが言う
「黙れ!余計な事は言うなっ!牢への収監は済んだっ  クレター司令官へ報告をしろ!」
人間の兵士たちが言う
「は、は…」
レンソンが立ち去り  兵士たちも続く

バッツスクロイツたちが息を吐き  レビが言う
「それで…  どうなる?」
レビがバッツスクロイツを見る  バッツスクロイツが言う
「第2プラントへ  エスケープしたい所だけど…っ」
バッツスクロイツが後ろ手に拘束されている手を動かすと感電して言う
「イタタタタっ!これじゃ  端末の操作が出来ない…  何とか  手を動かせないかな?」
レビが言う
「手を動かす事だけで  エスケープ出来るのか?」
バッツスクロイツが言う
「ラッキーな事に  端末は取られて居ないからね?でもこの後もし  取られちゃったら…  デス?お前は?今でも出来るのか?」
デスが顔を横に振る  バッツスクロイツが言う
「それじゃ  ちょっちマジでヤバいかも…  クレター司令官は…  やっぱ  オレっちたちの事」
レビが言う
「監視をされているだろうとは  思っては居たが…  まさか  これを狙っていたとは…  迂闊だった」
バッツスクロイツが言う
「オレっちも  まさか  動けるとは思ってなかったからさ…  正直  マジでピンチって時には  人質として使っちゃおうかって  思ってた位で…」
レビが言う
「同感だ…  しかし  だからこそ  奴はここまで  動かれる事を隠していたのだろう…  一体  いつから  そのフリをしていたのか  それに気付く事が出来てさえいれば」
金田が言う
「ごめん…  俺  気付いてた」
皆が金田を見る  金田が言う
「今日出発する時に…  服  着替えさせた  あの時に」
バッツスクロイツとレビが反応して  レビが言う
「そうか  言われてみれば」
バッツスクロイツが言う
「前の時とは違って  悲鳴とか上げてなかったもんね?オレっちも  言われてみればー?」
金田が落ち込んで言う
「うん…」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「けど  それなら  今回の事は  皆のミステイクって事で!だから  タマちんだけのせいじゃないよ?」
レビが言う
「奴がクレター司令官だと分かった時点で  手を打つべきだった  せめて  今の我々の様に  両手の拘束位はして置くべきだったのだろう」
バッツスクロイツが言う
「だよねー?それならあの時  タマちんを人質にされなくて  済んだだろうし」
レビが言う
「ああ…  寄りに寄ってカネダを…っ  恩を仇で返されるとは  正にこの事だっ」
バッツスクロイツが言う
「全くだよっ  オレっちもアレにはマジ切れっ   やっぱアイツは  この帝国の  クレター司令官だよっ」
金田が困って言う
「けどさ?俺…っ  アイツは…  …悪い奴じゃ  無いと思うんだよ…?」
皆が金田を見る  金田が言う
「ごめん…  こんな状態で言っても…  だけど…  …」
金田が落ち込む  レビとバッツスクロイツが顔を見合わせ  レビが溜息を吐く  バッツスクロイツが苦笑して言う
「タマちんは優しいよね…?」
レビが不満げに言う
「騙されやすい奴だと言うのだろう」
バッツスクロイツが衝撃を受け苦笑して言う
「まぁまぁ…?」
金田が表情を落とす  バッツスクロイツが心配してから  自身の拘束を気にする

レビが電子手錠の電撃に表情を顰める  バッツスクロイツが言う
「ねぇ  タマちん?オレっちの上着の内ポケットに入ってる  携帯端末なんだけど…?その…  口で取れないかな?」
金田が顔を上げて言う
「そうか!やってみる!」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「ごめんね?嫌な事頼んじゃって?」
金田が言う
「大丈夫だっ  ゲームだと思えばっ」
バッツスクロイツが言う
「確かに?王様ゲームか  何かみたいだよねー?…っ  あ…  結構くすぐったいっ  …っ  うぅ~っ」
金田が携帯端末を口に咥えて言う
「ン…っ  取れた…っ」
バッツスクロイツが言う
「おおっ  ナイス!タマちんっ」
金田が床へ携帯端末を置いて言う
「ココで良いか?」
バッツスクロイツが言う
「ばっちり!それじゃ…  電源入れて…っ」
バッツスクロイツが携帯端末の電源を顎で押す  携帯端末に電源が入る  金田が言う
「やった!これでっ!」
バッツスクロイツが言う
「いや、まだ  ちょっち待って…  入力が…  ムムム~っ  滅茶苦茶  ムズイ…っ」
バッツスクロイツが苦戦しながら携帯端末を操作して言う
「良しっ  これでっ  第2プラントへエスケープ出来るっ!」
金田が言う
「良かったぁ」
レビが微笑する  バッツスクロイツが言う
「…このプラントの管理者や  その辺りの情報  あんま得られなかったから  バーネっちは怒るだろうけど」
レビが言う
「緊急事態だ  仕方がない  それに  情報は得られた  バッツスクロイツの両親や  この帝国内の構造も…  最初の偵察としては  十分だと思われる」
バッツスクロイツが言う
「そうかな…?まぁ  この際  そうと言う事で  タマちんには悪かったけど」
金田が言う
「しょうがないって?ザキの事は  また…  次の偵察の時にでもさ?」
バッツスクロイツが言う
「うん  その時はもちろん協力するから!それじゃ…  行くよ!皆!」
皆が頷く  バッツスクロイツが言う
「緊急エスケープ!」
バッツスクロイツが携帯端末のディスプレイに鼻先を付ける  皆が思わず緊張する  沈黙の間  バッツスクロイツが言う
「……あら?」
金田が言う
「ん?」
レビが言う
「どうした?」
バッツスクロイツが言う
「エスケープ出来ないっ!?」

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