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1-12 バッツスクロイツの帰郷

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【 アバロン城下町 ヘクターの家 】

オライオンがベッドに入り天井を見つめている 脳裏に昼間の様子が思い出される

回想

ローゼント城 地下牢

ヴェルアロンスライツァーを先頭に ガイ、ヴァッガス、ロドウ、メテーリ、オライオンが歩いて来る ヴェルアロンスライツァーが言う
『…我々も 何とか情報を聞き出せぬものかと 語り掛けたりはしたのだが ウェルシュは一言も口を利いてはくれぬのだ…』
ヴァッガスが言う
『無理やり口を割らしたりは しなかったのか?』
ヴェルアロンスライツァーがヴァッガスへ向いて言う
『彼の力は図りかねん 共に もう一人の刺客とされた シュライツ殿… いや、ペリーテという名のプログラマーも 力を封じてあるとは言え…』
ヴァッガスが苦笑して言う
『つまり、怖ぇ~から 手出しが出来ねぇんだな?』
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
『彼らは別大陸の兵 事を荒立てれば その反動は我らローゼントだけでは留まらない …故に 荒事は致さぬ様にと アバロン ローレシアとの話し合いで 決められた事なのだ』
オライオンがヴェルアロンスライツァーへ向いて言う
『確認したのは その2国だけなのか?』
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
『ローレシアは我らの同盟国 そして、アバロンは3大国家の一つにして ガルバディアの同盟国であるからな その2国の意見が重なれば 我らはそうする他に無い』
オライオンが疑問して言う
『スプローニへは確認しねーのかよ?』
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
『スプローニは… ローゼントの友好国では有るが 同盟国ではない』
ヴェルアロンスライツァーが視線を前へ戻す オライオンが言う
『相棒の国だろ?』
ヴェルアロンスライツァーが視線を向けないまま言う
『うむ、紛う事無く 私の相棒ロキの国であるが …それは私個人の話だ ローゼントとの関係にはあらず』
オライオンが表情を落とし考える
『相棒より… 国かよ…』
ヴェルアロンスライツァーが立ち止まる 皆が立ち止まり檻の中を見る 皆の視線の先ウェルシュが後ろ手に縛られ床に座り目を瞑っている ヴェルアロンスライツァーが看守に目配せをすると 看守が牢の鍵を解除する 鍵が音を立てて開かれる 衛兵が言う
『出ろ』
看守の言葉にウェルシュが目を開き立ち上がる 看守がウェルシュの手械を外すと ウェルシュが伸びをしてから両腕をさすり ヴェルアロンスライツァーに続きオライオンを見て笑みを向ける オライオンがハッとして目を逸らす オライオンの反応にヴェルシュが苦笑してから 看守の促しに従って牢を出る 隣の牢の鍵が開かれる音がする 皆が視線を向ける シュライツが喜びの声と共に檻から飛び出して来る
『ピュポー!』
皆がシュライツへ視線を向ける シュライツが皆を見てからオライオンを見て笑顔を向ける オライオンがハッとしてから視線を強めフンッと顔を逸らす シュライツが疑問して首を傾げてからオライオンの近くへ向かおうとして ふと気付き振り返って喜んで言う
『ピュロポー!』
皆が疑問してシュライツの視線の先を見る オライオンが驚いて言う
『レクター!?それに…っ』
皆の視線の先にホログラムのレクターが笑顔で居て シュライツの顔へ手を翳す シュライツの顔に付けられていた仮面が外れる シュライツが疑問して首を傾げてから 喜んで言いながら向かう
『ピ?…ピュポ?ポピュポー!』
シュライツの向かった先 ローゼックとニーナが居て ニーナが笑顔で両手をシュライツへ向けて言う
『お兄ちゃん!ずっと会えなくて ニーナとっても寂しかったのー!』
シュライツとニーナが笑顔で再開を喜び合う 2人の後ろでローゼックが腕組みをしてむっとしている オライオンが慌てて言う
『ニーナとローゼックの祖父ちゃんまで!?何でっ!?』
ローゼックが視線をオライオンへ向けて言う
『む!?…わ、私自身はっ …シュライツの裏切り者なんぞには 会いたくなど 微塵も思いはせなんでおったのだぞ!?だが…』
ニーナがオライオンへ顔を向けて言う
『オライオンのお兄ちゃんも居たのー!オライオンのお兄ちゃんも お久しぶりなのー!』
オライオンが表情を困らせる レクターのホログラムが笑顔で言う
『シュライツを第5プラントへ帰しちまったら 流石にもう 移動プログラムでちょいちょい会いに行くって事も出来ねーんだ だから その前に会わせてやろうと思って連れて来た!ついでにローゼックのとっつあんに関しては』
ローゼックが怒って言う
『私自身はっ!シュライツなんぞどうでも良いのだ!ただ ニーナを一人で行かせる等言語道断っ!であるからにしてっ!』
ニーナが笑顔で言う
『ローゼックお祖父ちゃんも シュライツお兄ちゃんを心配して 孫が減っちゃうのは寂しいって落ち込んじゃってたの!だから 一緒に来てってお願いしたのー!』
ローゼックが慌てて叫ぶ
『ニーナッ それは言わぬと 先程約束をっ!』
ニーナが笑顔で照れる オライオンが唇をかみ締めて顔を逸らす シュライツが喜んでローゼックにじゃれる ローゼックが恥ずかしがって嫌がって言う
『こ、こらっ!シュライツ!止めぬかっ 男子たるもの人前で抱きつくべからず と いつもっ!』
ニーナとレクターが笑顔で居る オライオンが拳を握り締める ウィルシュが静かに言う
『…ペリーテ そろそろ行くぜ』
オライオンがハッと拳を揺るがす シュライツが反応して振り返り レクター、ローゼック、ニーナへ向きながら ウィルシュの方へ移動する ローゼックが表情を悲しませる 皆が ウィルシュとシュライツへ向く ウィルシュが皆を見た後 レクターを見て言う
『俺たちを 帰してくれるんだろ?』
レクターが笑顔で言う
『ああ!実に残念だが 私の息子シュライツも お前と一緒に元のプラントへ帰す事になっちまった』
ウィルシュが苦笑して言う
『…良いのかよ?こっちの情報を大量に持ってる ペリーテまで帰しちまって』
レクターが笑顔で言う
『シュライツが選んだ事だ お前と一緒に帰ると』
オライオンが驚いてレクターを見る レクターが変わらず言う
『ずっと探していた相棒と再会出来たんだ 一緒に帰りたいと思うのは当然だと 私はそう思う だから シリウス国王に頼んだら 別にかまわねーって言われた!』
皆が驚き ガイが言う
『シリウスA殿が…!?』
ヴァッガスが不満そうに言う
『相変わらず 分からねぇ奴だぜ』
メテーリが心配そうに言う
『情報を持っているって 分かってながら 帰しちゃうだなんて』
ロドウが笑顔で言う
『もしかしたら 逆に偵察機械でも 組み込まれていたりして』
ガイとヴァッガスが驚く レクターが笑顔で言う
『元のプラントまでぶっ飛ばすプログラムは 私がシリウス国王から預かってる… けど、私は下手糞で ちょっと失敗するかもしれねー だから …気をつけてくれ』
シュライツが嬉しそうに了承して言う
『ピュルポー!』
ウィルシュが不満そうに言う
『どう気を付けろって言うんだよ?』
レクターが笑顔で言う
『それじゃ そんな危険なプログラムを 実行する』
レクターが笑顔のまま周囲にプログラムを発生させる ウィルシュとシュライツの周囲に数字の羅列が纏わる 皆が見つめる オライオンがシュライツへ視線を向ける シュライツが周囲のプログラムを見てからオライオンを見る オライオンとシュライツの視線が合い オライオンがハッとして視線を逸らす シュライツが喜んで言う
『ピュピポロー!』
オライオンが視線を逸らした状態のまま表情をしかめる シュライツが嬉しそうに言う
『ピュピポピ!ピュロピュピポ!ポロピュピポパポプポ』
オライオンが視線を逸らしたまま居る シュライツが疑問した後 不満そうに言う
『ピュルポプポー!』
オライオンが目を瞑る シュライツが焦って言う
『ピュピポピポ!ピ!ポピポポー!』
メテーリが表情を困らせて言う
『ねぇ…?あれ、何て言ってるの?』
ロドウが苦笑顔で言う
『さぁ…?』
ヴァッガスが呆れて言う
『あれ、言葉なのか?』
シュライツが強く言う
『ピュピポロー!』
オライオンは変わらない シュライツが残念そうな表情で黙る ウィルシュが言う
『…あいつは お前を 俺に取られたって思ってるんだ んな事言ったって 今は火に油だぜ ペリーテ』
シュライツが泣きながら言う
『ピュポ~~~ッ』
ウィルシュがオライオンへ向いて言う
『おい お前がどれだけ ペリーテの言葉を理解してるんだか知らねぇが 俺からも お前に言う事がある』
オライオンが反応してウィルシュへ向く ウィルシュがオライオンを見て言う
『…ペリーテ ツ ヴァリス アフタローゼ』
オライオンが呆気に取られる ウィルシュが微笑して言う
『感謝するって言ったんだ それから』
シュライツが笑顔で叫ぶ
『ピュルポロー!』
オライオンが驚く プログラムが実行される オライオンが思わず一歩踏み出して言う
『あっ…』
ウィルシュとシュライツが消える オライオンが息を飲んで言う
『…何が』

回想終了

オライオンが目を細めて言う
「大好き… だよ…」
オライオンの脳裏に シュライツが好物を次々に口に運びながら笑顔で言う姿が思い出される
『ピュルポロー!』
オライオンが苦笑して言う
「…いっつもあんな風に 好きな物食って 喜んでたっけ… 俺が… 最初にあいつの言葉で 理解した言葉だ… けど」

オライオンの脳裏にシュライツが色々しゃべっている姿が思い出される レクターが笑顔で聞いている オライオンが表情を困らせる 

オライオンが溜息を吐いて言う
「結局 他の言葉はさっぱり分からなかった いつもアバロン式に 適当に解釈して それでも… 良いと思って …俺の相棒だと思ってたのにっ」
オライオンが強く目を瞑る オライオンの脳裏に思い出される

ウィルシュがオライオンへ向いて言う
『おい お前がどれだけ ペリーテの言葉を理解してるんだか知らねぇが 俺からもお前に言う事がある』

オライオンが言う
「…あいつは 全部 理解出来てんだろうな」
オライオンの脳裏に浮かぶ

ウィルシュがオライオンを見て言う
『…ペリーテ ツ ヴァリス アフタローゼ』
オライオンが呆気に取られる ウィルシュが微笑して言う
『感謝するって言ったんだ それから』

オライオンが体勢を変え 縮こまって言う
「…もう どうでも良い」

【 ガルバディア城 玉座の間 】

ホログラムモニターに シュライツが映っている

シュライツが喜んで言う
『ピュピポロー!』
シュライツが嬉しそうに言う
『ピュピポピ!ピュロピュピポ!ポロピュピポパポプポ』
シュライツが疑問した後 不満そうに言う
『ピュルポプポー!』
シュライツが焦って言う
『ピュピポピポ!ピ!ポピポポー!』

ヴィクトールが顔を出し首を傾げて言う
「ねぇ バーネット?シュライツは 何て言っているの?」
ヴィクトールが振り返る その先にバーネットが玉座に膝を立て頬杖を突いて見ていて言う
「あぁ?ああ… 大体がオライオンへの感謝の言葉だ 『オライオン 一杯遊んでくれて有難う 楽しかった 美味しかった アバロンの料理は毎日食べたい ウィルシュもきっと好きになる』」
ヴィクトールが笑顔で言う
「ふふふっ シュライツらしいね 彼が別プラントからの刺客だなんて… 僕には今でも信じられないよ」
バーネットが不満そうに言う
「ハッ!…奴自身だって んな気はありやがらねぇんだろうぜ?そんな奴だったから… レクターやオライオンを信用させ ずっと仲間面していられやがった」
ヴィクトールが表情を悲しませて言う
「…それなら」
バーネットが言う
「だがっ!…奴の身には 探査プログラムが仕込まれてやがった …お陰で 奴が見たもの 聞いたこと …その全てが筒抜けよぉ」
ヴィクトールが驚く バーネットが苦笑して言う
「ハッハーッ!してやられたって奴だなぁ?」
ヴィクトールが一度視線を落とした後 バーネットへ苦笑を向けて言う
「けどっ!それならっ …シュライツは 彼自身は無実だよね?彼はただ… 別プラントの その管理者に使われてしまっていた それだけなんだからっ」
バーネットが呆気に取られる ヴィクトールが表情を悲しませながらも訴えるように見つめている バーネットが苦笑して言う
「あぁ…?…ハッ …まぁ そうかもな…?」
ヴィクトールが表情を和らげ 間を置いてからモニターへ向く モニターには先程の続きが流れている

ウィルシュが言う
『…あいつは お前を俺に 取られたって思ってるんだ んな事言ったって 今は火に油だぜ ペリーテ』
シュライツが泣きながら言う
『ピュポ~~~ッ』

ヴィクトールが苦笑する

ウィルシュがオライオンへ向いて言う
『おい お前がどれだけ ペリーテの言葉を理解してるんだか知らねぇが 俺からもお前に言う事がある』

ヴィクトールが疑問して見つめる

【 アバロン城 玉座の間 】

ニーナが言う
「お父さん?ローゼックのお祖父ちゃんは いつアバロンに帰って来るの?ニーナだけ お父さんの移動プログラムで帰って来ちゃって 良かったの?」
レクターが笑顔で言う
「ああ、大丈夫だ ローゼックのとっつぁんは ハリッグ国王と お預けになっている決闘を 終わらせてーんだって 残ったんだ」
ニーナが驚いて言う
「決闘!?お祖父ちゃん…」
ニーナが笑顔で言う
「相変わらず元気で良かったのー!そろそろコロッと逝くかもなんて言ってたから ニーナとっても心配してたのー!」
レクターが苦笑顔で言う
「ああ!ローゼックのとっつぁんは 先日ローレシアの占い師に 死期が近いって言われて ショックで落ち込んでいた!本人は占いなんて信じないと言ってたが 内心はビクビクのガタガタだったのだ!だから そんな時は剣でも振ってスッキリすれば 嫌な気分も晴れると思って 私も今回の決闘に賛成した!」
ニーナが一度笑顔になってから 心配して言う
「お祖父ちゃん… 元気になって ちゃんと… 帰って来るよね?お父さん?」
レクターが一瞬呆気に取られ疑問した後 苦笑して言う
「うん?…ああ、決闘が終わったり 終わらなくっても止めるんだったら すぐ連絡すると言っていた きっと明日か明後日には連絡が来るだろう 心配は要らない ニーナもそれまで 寂しいだろうが… ニーナ?」
ニーナが心配そうに視線を下げている レクターが呆気に取られてニーナを見つめ 間を置いて言いかける
「ニーナ…?」
レクターの通信機が鳴る レクターが驚く ニーナがはっとして言う
「お祖父ちゃんっ!?」
レクターが相手を確認し残念そうに苦笑して言う
「いや 別の …ちょっと口の悪い代理国王様からだ」
レクターの通信機が勝手に着信して バーネットが怒って言う
『おらぁあ!誰が 口の悪い代理国王様だぁあ!?この野郎ぉお!』
レクターが苦笑顔になる ニーナが残念そうに微笑する バーネットが言う
『それはそうと てめぇに ちょいと聞きてぇ事があるんだが…』
ニーナが顔を上げ微笑して言う
「それじゃ 私はお家に帰るのー お父さんも早く帰って来て欲しいのー ね?」
レクターが笑顔で言う
「ああ!なるべく早く帰る ラザイヤに今夜の夕食も いつも通り 楽しみにしていると伝えてくれ!」
ニーナが笑顔で言う
「うん!伝えるのー!」
ニーナが楽しそうに立ち去る バーネットのホログラムが現れ 玉座にだらけた様子で言う
『よぉ… てめぇは ローゼントで別大陸の野郎どもをおっ返す際 そばに居やがったよなぁ?』
レクターが言う
「ああ!すぐ目の前に居た!…と言っても 私自身は電波だけで 実際に居たのは ヴェルアロンスライツァー王配と シリウスBの兵とオライオンとニーナと」
立ち去ろうとしていたニーナが反応して立ち止まり振り向く レクターが言う
「それから ローゼックのとっつぁんだ!ついでにローゼックのとっつぁんは 今もローゼントに居る 他の シリウスBの兵とオライオンは 今頃隣の エドの町で 温泉にでも入りながら今後の事でも話し合ってるかもしれねー …私も行けば良かった!」
レクターが笑顔で照れる バーネットが言う
『んな事ぁどぉでも良い それよか… 俺の猫が どうしても気になって 眠れそうにねぇってぇから…』
バーネットが頬を少し染め視線を逸らして言い辛そうにする ヴィクトールが笑顔で顔を出して言う
『うん!今日はお昼寝の時に二度寝をしちゃって!だから この時間になってもちっとも眠くならないんだ!てへっ』
ヴィクトールが照れる レクターが笑顔で言う
「ああ、心配しなくても ガルバディア国王や代理国王が 自分の猫に甘いって事は 結構有名な話だ だから気にしなくて良い!」
バーネットが咳払いをして気を取り直して言う
『ううんっ …あぁ …それで、だ そのー ローゼントで奴らを見送った時に ウィルシュの奴が オライオンに 奴らの言葉で言いやがっただろぉ?“ペリーテが世話になった”って』
レクターが笑顔で言う
「ああ、厳密に言えば “ペリーテを感謝する” だが 大体はそんな感じだ!」
バーネットが言う
『その言葉以外に… 何か言ってやがったかぁ?』
レクターが疑問して言う
「その言葉以外…?」
レクターが考える バーネットが言う
『ああ、感謝する の後だぁ… 音声データもありやがらねぇし 俺もリアルタイムで聞いていたが 聞こえやがらなかった』
レクターが言う
「私もリアルタイムに ホログラムも現して聞いていたが…」
ヴィクトールが不満そうに言う
『え~?言ってたったらぁ~』
バーネットがむっとして言う
『おらぁ!?やっぱり言ってやがらねぇってぇえ!』
ニーナが笑顔で言う
「言ってたのー!」
皆がニーナへ向く レクターが言う
「ニーナ」
ニーナがやって来て ホログラムへ向いて言う
「別大陸の刺客さん お兄ちゃんに言ってたの!」
レクターが呆気に取られる バーネットがホログラムを近づけて言う
『な、なんって言ってやがった?』
ニーナが笑顔で言う
「ペリーテ ツ ヴァリス …アフタローゼ!なのー!」
バーネットが呆気に取られる ヴィクトールが一瞬間を置いてから笑顔で言う
『ほら バーネット!』
レクターが呆気に取られた状態から微笑し笑顔で言う
「ニーナ 教えてくれて ありがとう 人の言った事をちゃんと覚えている ニーナは良い子だぞー!」
レクターがニーナの頭を撫でる ニーナが笑顔で居る バーネットが苦笑して言う
『ケッ なんでぇ… それだけかよっ』
レクターとバーネットが苦笑する ヴィクトールが双方を交互に見ながら言う
『えー?なになにー?僕にも教えてよ~』
バーネットが言う
『まぁ… こっち流に言やぁ …仲間ってぇ所かぁ?』
レクターが笑顔で言う
「ああ、オライオンはシュライツのもう一人の相棒なんだ だから…」
レクターが得意げに言う
「やっぱりシュライツも あのウィルシュも 皆 私たちの仲間なのだ!そんな気が…」
バーネットのホログラムがレクターを踏み付けて言う
『るせぇええ この間抜け大剣使いがぁあ!いくら間抜けやがっても 別大陸の刺客を 仲間扱いしやがるんじゃねぇええ!』
レクターが苦笑して言う
「相変わらず ガルバディアの王様は 代理であっても こういうプレイが大好きなんだなー」
バーネットが衝撃を受ける ニーナが笑顔で言う
「ん?プレイ? …何か分からないけど 何だかとっても楽しそうなのー!」
ヴィクトールが笑顔で見ている レクターが苦笑顔で踏まれている

【 ローゼント城 バルコニー 】

晴天の中 バルコニーに立つアンネローゼとヴェルアロンスライツァー バルコニー前に集まった民衆が歓声を上げている アンネローゼとヴェルアロンスライツァーが顔を見合わせ微笑み合い 民衆へ視線を戻して 懐妊発表を終える 民衆の喝采 アンネローゼが喜びと安堵に気持ちを抑えきれず ヴェルアロンスライツァーの頬へキスをする ヴェルアロンスライツァーが驚く 観衆がわっと喝采を上げる ヴェルアロンスライツァーが倒れそうになる アンネローゼが慌てる 観衆が笑う

【 ソルベキア城 玉座の間 】

伝達兵が言う
「ガライナ陛下!連れて参りました!」
玉座に座っているガライナが怒って言う
「遅いぞ!さっさと入れろ!」
伝達兵が返事をする
「はっ!」
伝達兵の返事と共に ソルベキア兵2人がアシルの両脇を支え引き擦り込んで来る ガライナが玉座を立ち アシルの前へ行って言う
「アシル殿 お待ちしていた!」
アシルが泥酔した様子で何とか顔を上げて言う
「あぁ~… お待ちしていたぁ~?ケッ… ならぁ… さっさと そっちっから 迎えに来いってんだよ~… ヒックッ!」
ガライナが顔をしかめ言う
「う…っ 何と酒臭い…っ」
ソルベキア兵が言う
「ローゼントの酒場で飲んだくれ 所持金も無く捕らえられようとしていた所を発見し 連れて参りました」
ガライナが慌ててソルベキア兵を見て言う
「何っ!?ローゼントに勘付かれては おるまいなっ!?」
ソルベキア兵が笑んで言う
「はっ!とっさに友人であると騙し 代金を立て替える事で 事無きを終えました」
ガライナが笑んで言う
「よしっ 良くやった!お前を上層兵へ昇格させる!」
ソルベキア兵が驚き喜んで言う
「はっ!有難うございます!」
ガライナがアシルへ向いて言う
「アシル殿!貴殿がリゲル様より賜った力は何処にある!?この大陸の連中を欺く為 我々が囮となり奴らの目を引き付けている間に 貴殿が受け取っておる筈だ!何故すぐに私の下へ持って来なかった!?」
アシルが酔いに頭を揺らしながら言う
「ははぁ~ ははは~… な~にが お披露目だぁ~… な~にが 懐妊発表だぁ~?…どいつも こいつも 皆して 金時しやがってぇ~… ヒックッ!」
ガライナが一瞬疑問した後 表情を怒らせ 急かして言う
「ええいっ!力は何処だと聞いている!アシル殿!リゲル様は 貴殿へデータを預けたと…っ!」
アシルがだらけた顔を上げて言う
「でぇ~た…?でぇ~た なんて知らねぇ… 俺は… 俺はっ 俺を必要だと言ったっ …奴らを 信じてやったのに… くっそ… 力さえあれば… 眠り姫だって 俺の手に…」
ガライナが苛立ちながら言う
「データを知らないだと!?そんな筈は無い!貴様は受け取っている筈だ!リゲル様の力を!データの内容など分からずとも良い!それが込められた… CDーROM… いや!DVD-ROMか!?貴様は持っているだろう!?分からぬか!?データを記憶した 円盤型のキラキラする板だ!」
アシルが言う
「でーたでーた うるせぇ奴だなぁ~ オマケに 訳分からねぇ言葉ばっか… キラキラの板なんて 俺は持ってねぇ~んだよ ははー!」
ガライナが驚いて言う
「持っていない…?馬鹿なっ!酒に飲んだくれ 何処かへ落としたのか!?代金代わりにでも渡してしまったのか!?馬鹿者が!!」
アシルがむっとして 怒って両脇の兵士を振り払って叫ぶ
「うるせぇええ!馬鹿者だぁ!?親父もてめぇえも 俺をっ!…俺を馬鹿者扱いしやがる!俺だって… 俺だってな!くそぉおお!!」
アシルが酒筒を取り出して飲もうとする アシルが疑問する アシルが酒筒を逆さまにして数回揺するが一滴も酒は落ちてこない 代わりに数回目にキラキラと輝く棒が落ちて来て床に転がる ガライナが驚いてそれを見る アシルが首を傾げ 酒筒を覗き込んでから放り投げて叫ぶ
「ぬあぁああ!おらぁあ!そこのトカゲ野郎ぉお!酒だ酒!酒を持って来い!…結局誰も俺の味方になんか なってくれなかった… だからぁあ!仕方なくお前の所に来てやったんだぞ!さあ!約束通り 俺を第二国王にして ソルベキアで世界を!」
ガライナが屈んでキラキラと輝く棒を見るとニヤリと笑み 立ち上がって叫ぶ
「よし!リゲル様のお力は手に入った!直ぐに作戦を開始する!製作した モブロモーツガイアを起動させろ!これを解析させ 組み込むのだ!」
ソルベキア兵が返事をして ガライナからキラキラと輝く棒を受け取って立ち去る
「はっ!直ちに!」
ガライナが玉座へ向かう アシルを抑えているソルベキア兵が言う
「ガライナ陛下 この者は?」
ガライナが足を止め顔を向けると苦笑して言う
「クッ リゲル様のお力さえ手に入れば そんな酒臭い男に用など無い」

地下牢

地下牢の中へアシルが突き飛ばされる 続いて鉄格子の閉まる音が響く アシルが振り返り 柵に掴みかかって叫ぶ
「おいっ!どお言う事だぁ!?俺はっ!」
ソルベキア兵が牢の鍵を閉じる ガライナが苦笑して言う
「とは言え… どう言う経緯でリゲル様から あの記憶装置を受け取ったのかを確認をしておきたい… それから リゲル様と言うお方がどの様な方であったのかも… いや、それらなどよりも」
ソルベキア兵が 檻から離れる ガライナが笑んで言う
「あの力の事を知るお前を 自由にさせるわけにはいかぬからな?そこでゆっくりと 酔いを醒ますが良いだろう アシル殿?…はっはっはっはっは!」
ガライナが立ち去る 兵たちが付いて行く アシルが目を丸くしてから慌てて叫ぶ
「おいっ!馬鹿な真似は止めろ!俺はスプローニの王子だぞ!他国の王子に対し この様な無礼が許されると 思っているのかぁああ!?」
ガライナの声が届く
「元…王子の間違えだろう?ラグヴェルス前スプローニ国王が 貴様へ王位を譲らなかった理由が よ~く分かったわ …はっはっはっはっは!」
アシルが目を見開き 悔しそうに表情をしかめた後 俯いて咽び泣き 檻に捕まりながら力なく崩れる

【 ローゼント城 バルコニー下 】

群衆が掃けたバルコニーの下 まばらに人々が残っている その片隅に ローゼックが腕組みをして居る ハリッグがやって来て言う
「まさか この歳になって 再び孫の誕生を祝えるとは 思いもしなかった」
ローゼックが一度視線を向けてから 視線を戻し苦笑して言う
「ふんっ …国王の座を退いたとて 相応の品を用意せねば 格好が付かぬぞ?おまけに 贈呈相手は 紛うことなく このローゼントの正当なる王位継承者となろうからな?隠居暮らしにうつつを抜かしておる 今の貴様で大丈夫なのか?」
ハリッグがローゼックの隣に立ち笑みを抑えて言う
「ふっふ… そうだな 初孫の時には 十分な品を用意出来る地位に居りながら… 送る事は出来なかった… 愛する娘は ツヴァイザーのろくでなし王子に 奪われてしまったからな… だが、今回はそうではない」
ハリッグがバルコニーを見上げる その視界に 先程まであった アンネローゼとヴェルアロンスライツァーの喜ばしい姿が映る ハリッグが目を細めて言う
「アンネは 今度こそ 真に愛する者と… このローゼントの騎士と結ばれ 子を得たのだ… そして、その子が ローゼントの時期国王となる」
ハリッグが嬉しそうに目を閉じる ローゼックが振り返り苦笑して言う
「貴様が果たせなかった事を 娘が見事に成し遂げて見せたという事だな?」
ハリッグがゆっくり目を開き微笑して言う
「ああ… 私の時とは違い アンネもヴェルアロンスライツァーも 共に愛し合っている 私と…アイネの時とは違ってな…」
ローゼックがぷいっと顔を逸らしあざけ笑って言う
「ラグヴェルスから奪い取っておきながら 結局 貴様は アイネフラーソワの心までは奪えなんだったな!しかも、そのアイネフラーソワが 貴様の片腕とまでした 側近の兵に心を寄せ そして生まれた あのヴェルアロンスライツァー」
ハリッグが苦笑する ローゼックがハリッグへ向いて言う
「貴様は奴を受け入れ 娘との結婚を許した上 その2人から生まれる子を 今度は喜ぶのか?ふはははっ!どこまでも皮肉な話よ」
ハリッグが含み笑んでから言う
「…まぁ 病に倒れた折 自分の一番嫌いなアバロンへ送られ 子をこしらえてみたら その娘が アバロンの王妃となった 貴殿とは… 良い勝負だと思って居るよ」
ローゼックが衝撃を受け 腕組みをしてぷいと体ごと逸らし慌てて言う
「だ、誰の事を 言って居るのか?私には 皆目検討も…」
ハリッグが軽く笑う
「はっはっは…」
ローゼックがばつの悪そうにうなる
「~~っ」
ローゼックが気を取り直して言う
「…で?」
ハリッグが柔らかな微笑をたたえたまま言う
「うん?」
ローゼックが一息吐いてから言う
「…貴様は 先の戦いの折 一時とは言え 自分の勝手な行動で ローゼントへ危機を忍ばせた …その責任を取り 王位を退く際に 受け取るべき財産を 全て返上したと聞いたが」
ハリッグが微笑して言う
「ああ… 私の代で作ってしまった スプローニとの溝を埋めたにしては 安いものだ あの戦いの折 ローレシアから送られていた魔法使いたちを 私の独断でスプローニへの支援にしてしまったのだからな あのまま 貴殿が助けに来てくれなければ ローゼントは本当に危険な状態であった その節は 貴殿にも迷惑を掛けたな」
ローゼックが間を置いて言う
「ふんっ …迷惑ついでに ローゼントの居心地が悪いのであれば ローレシアでもアバロンでも… 私の屋敷に休みに来れば良い …アバロンなら 食事も良いぞ?」
ハリッグが一瞬呆気に取られる ローゼックが頬を赤らめ顔を逸らす ハリッグが軽く笑って言う
「ああ… では アンネの出産が無事終わり 一度この手に孫を抱かせてもらえたら 少し羽を伸ばしに行かせてもらうかな?」
ローゼックが笑んで言う
「もっとも 一度でも孫を目にしたら 多少居心地の悪いローゼントであろうとも 離れられぬ様にもなろうものだが?フッ!」
ハリッグが苦笑する

【 スプローニ城 玉座の間 】

玉座にロキが座っていて 大臣らと話している ロキが言う
「…そうか …では仕方が無い 後で 俺から連絡を入れておく」
大臣が言う
「はい、よろしくお願い致します」
大臣が下がる ロキが紙書類を見ながら一息吐く 伝達兵が言い掛ける
「…ベルグル第二国王の お戻り…」
ベルグルが呼びながら走り入って来る
「ロキ隊長ー!」
ベルグルが息を切らせてロキの横に立つ ロキが迷惑そうに言う
「…何だ 騒々しい …せめて門兵の伝達が終わるまで 入室を…」
ベルグルが大喜びでロキの言葉を制して言う
「ごめんなさいッス!ロキ隊長!俺 チョー嬉しくってッスね!あんまりゆっくり出来ない感じッスー!あ、それにッスね 俺ちょっと思うッスけど スプローニの後住民族の人は 他の国の後住民族の人より ちょっと話すのが 遅い気がするッスよ!あ、でも、別に ゆーっくり喋ってるって訳じゃなくってッスね!何って言うか ちょっと話し出す前に 間があるって言うッスかねー!」
ロキがむっとしつつも間を置いて言う
「…それで?…用件は何だっ?」
ベルグルがはっとして慌てて言う
「あー!そうだったッス!忘れちゃう所だったッスよ!こんなに嬉しい事なのにッスね!思わず忘れちゃう所だったッス!」
ロキが怒りを押し殺している ベルグルが満面の喜びを湛えて言う
「ロキ隊長!今度は 何を贈るッスか!?」
ロキが疑問して言う
「…贈る?贈るとは?…一体何のは…?」
ベルグルが大喜びでロキの言葉を制して言う
「やっぱ!今回も 貰った方がびっくりしちゃうような チョー!凄い物を贈るッスかー!?ロキ隊長!?」
ロキが表情を困らせつつ言う
「…今回も?…一体何のは…」
ベルグルが大喜びでロキの言葉を制して言う
「そおッスよねー!やーっぱ!今回だって ロキ隊長は 相手を驚かしちゃうような すっごい物を贈るッスー!だって 何て言ったって 今回は 前回よりも もっとすっごい嬉しい事ッスから!」
ロキが疑問して言う
「…今回は?…前回よりも? …その前回とは …そもそも 今回の方ですら一体何を示し…」
ベルグルが大喜びでロキの言葉を制して言う
「あー!でも 今回は前回と違って その すっごい物を スプローニは持ってはいないッスか!?だとしたら… 一体何を贈るッスかー!ロキ隊長!?俺今いきなりチョー心配になって来たッスよー!ロキ隊長ー!」
ベルグルが慌てる ロキが溜息を吐いて言う
「…嬉しいのか 心配なのか …とりあえず、卿はまず 落ち着き それから順を追って…」
ベルグルがはっと気付きロキの言葉を制して言う
「あー!けど ロキ隊長は凄いっすから やっぱ それでも とっくに チョー凄い贈り物を決めて 用意しているんッスよね!?チョー凄いッス!やっぱロキ隊長は!いつも凄くて カッコイイ…!」
ロキがすうっと息を吸い 怒って叫ぶ
「黙れっ!馬鹿犬ーっ!」
ベルグルが驚いて悲鳴を上げる
「キャンッ!?」
ロキが玉座に身を静めて言う
「…で?卿は 俺に 何を問いたいのだ?」
ベルグルが呆気に取られて目を瞬かせた後言う
「う…?えっと… 何を問いたい?ああ!それはッスね!」
ベルグルが笑顔で言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長とアンネローゼ女王様への 出産お祝いの品ッス!」
ロキが不満そうに言う
「…そうならそうと 卿はまず 主文を先に述べる事を覚えろ …仮にも卿は このスプローニの第二国王 人の言葉を操る先住民族の代表でもある そうであるからには…」
ベルグルが呆気に取られる ロキが横目に見つつ 一息吐いて言う
「ふぅ… …喜びを前面に押し出せる事は 諸卿 犬たちの特権ではあるが …まずは その喜びの元を いち早く相手へ伝え それから …共に喜ぶべきではないのか?」
ベルグルが表情をほころばせ 笑顔になって言う
「そおッスね!俺だけで先に喜んでばっかりじゃ 駄目ッスよね!分かったッス!でもって 御免なさいッスロキ隊長!これからは俺 チョー気を付けるッス!」
ロキが苦笑する 遠目に見ていた衛兵らが顔を見合わせ微笑する ロキが気を取り直して言う
「…で、出産祝いの品だったか?」
ベルグルが笑顔で言う
「はいッス!何を贈るんッスか!?俺にも教えて欲しいッス!俺も贈り物を知って 喜びを共にしたいッスよ!」
ロキが苦笑して言う
「…フ、そうだな …それに 卿にも関係のある事だ 前もって知らせ 準備させておくべきだな?」
ベルグルが疑問して言う
「う?俺にも関係が…?」
ロキがベルグルを見て言う
「…それと …祝いの品は 一国に一つでなければならない などと言う事もない 増して 今回の相手は 俺の相棒であると共に 卿にとっても関係の深い相手だ 俺が贈るのはもちろんだが …卿からも 奴の仲間 …部下として そして、このスプローニの第二国王として 単身卿の名の下に 祝いの品を贈ってはどうだ?」
ベルグルが一瞬考えてから 驚いて言う
「…え?え?…えーーっ!?お、俺が!?俺が 俺の名前で ヴェルアロンスライツァー副隊長に お祝いの品をッスかーっ!?」
ロキが苦笑して言う
「…驚く事は無いだろう 卿は …それだけの者となったのだ いつまでも …俺の飼い犬ではない」
ベルグルが感動しながら言う
「…お、俺が …そ、そんなに凄い 犬になれたなんて …か、感動ッス!俺凄いッス!俺…っ 俺チョーびっくりッスよー!ロキ隊長ー!」
ベルグルが喜びで大泣きする ロキが呆れて言う
「…分かったから やはり卿は まず、落ち着け」
ベルグルが気合を入れて言う
「はいッス!それじゃ!俺、頑張るッス!俺の名前で ヴェルアロンスライツァー副隊長に喜んでもらえるような物を贈るッスよー!」
ロキが苦笑して言う
「…ああ、品が決まったら 一応 俺にも知らせろ」
ベルグルが喜んで言う
「はいッス!」
ベルグルが急いで向かおうとして止まる ロキが疑問して言う
「… …どうした?」
ベルグルが振り返り 照れながら言う
「う~… けど やっぱ いきなりは ちょっと難しいッス… そ、それに!出産は 早ければ再来月だって聞いたッスよ!?今から俺一人で考えてたら きっと間に合わなくなっちゃうッス!」
ロキが苦笑して言う
「…そうだな 確かに 今回は少し急であったかもしれん」
ベルグルが駆け寄って来て言う
「ロキ隊長!俺 これからもっと頑張る様にするッス!だから 今回だけは… 今回だけ ロキ隊長に助けて欲しいッス!ロキ隊長!」
ロキが言う
「…ふん …助けると言ってもな?」
ベルグルが慌てて言う
「お願いしますッス!ロキ隊長!何か… あ!そおッス!俺、一番聞きたかった事を忘れてたッスよ!ロキ隊長!ロキ隊長は 何を贈るんッスか!?さっき 俺 聞きそびれちゃったッスよ!」
ロキが言う
「…ああ、それなら 言ったはずだ 卿に関係があり 用意させたいと」
ベルグルが疑問して言う
「う?俺にも関係して用意… それは、俺が俺の名前で ヴェルアロンスライツァー副隊長にお祝いの品を贈るって事じゃ」
ロキが言う
「…その事も含まれるが …俺の祝いの品にも卿は関係する …と、言ったつもりだったのだが?」
ベルグルが困惑して言う
「う…?え~っと… ロキ隊長!やっぱ俺には ロキ隊長の言葉は時々ちょっと 難しいッス!もっと簡単に教えて欲しいッス!お願いしますッス!」
ロキが悪微笑して言う
「フッ… 良いだろう ではここはあえて言葉にして教えてやる …このスプローニから 友好国ローゼントへ スプローニの王が贈る品ともなれば それは国を代表する品であるべきだ そして、このスプローニが世界に先立つ物とは… それ即ち!我ら後住民族と 諸卿 先住民族との絆だ!」
ベルグルが喜びに表情を明るくする ロキがベルグルを見て強く笑んで言う
「卿もそう思うだろう?」
ベルグルが喜んで言う
「思うッス!それチョー思うッスよー!ロキ隊長!」
ロキが力強く言う
「そうとなれば!この俺が 奴らへ贈るものは必然!“夫婦喧嘩は 何とかも食わん” とも言うからな!先日の様な夫婦喧嘩が起こらぬ様 この俺からの 心からの祝いの品だ!」
ベルグルが喜んで言う
「凄いッス!なんか難しいッスけど!“夫婦喧嘩は 犬も食わん”… …う?犬も食わん?」
ベルグルが疑問する ロキがベルグルの両肩を両手で叩いて言う
「…と、言う事だ ベル」
ベルグルが呆気に取られてロキへ言う
「…は …はいッス?」
ロキが言う
「…俺から奴への祝いの品は このスプローニ原産 先住民族の 仔犬だ」
ベルグルが呆気に取られて目を瞬かせる ロキが微笑して言う
「…どうせ 飼い主が見つからず 途方に暮れているのだろう?一匹… いや、二匹位贈ってやれば丁度良い …おまけに スプローニ国第二国王の血統付ともなれば 例え相手が何処のミックスだろうと 様になる …だろう?」
ベルグルが呆気に取られて言う
「え… えっとぉ… ロキ隊長?」
ロキが体勢を戻し 清々しく言う
「…向こうの出産が この時期であって良かった 数ヶ月前には 諸卿犬どもが 丁度 サカっていたからな 毎晩やかましかったが お陰で 奴らへ 程良い品が用意出来たと言う訳だ」
ベルグルが汗をかいて言う
「…あの~ ロキ隊長?俺が言うのもなんッスけど …ロキ隊長も 主文がちょっと お留守みたいッスよ? …やっぱ俺も 先にそこを聞いて 喜びを共に… って言うか 今回は 安心したいって 気持ちなんッスけど…?」
ロキが不満そうに腕組みをして言う
「…何を言っている 卿がどこぞのメス犬とこしらえた仔犬を 引き取ってやろうと言っているんだ …とは言え 一応は面子を確認しておくべきだな?よし、ベル 俺を 卿の仔犬どもの所へ案内しろ …今すぐっ」
ベルグルが頭を抱えて叫ぶ
「や、やっぱりッスか!?やっぱり そう言う事ッスかー!?ロキ隊長ー!?」
ロキが不満そうに言う
「…どうした?早く案内をしろ …まぁ どうしてもと言うのなら 奴らへ贈る分の他 1匹2匹なら俺が引き取ってやらなくも…」
ベルグルが慌てて言う
「待ってくださいッス!ロキ隊長!ちょっと、最初から 落ち着いて話しましょうッス!」
ロキが言う
「…時間が惜しい 俺も今や忙しい身の上だ 話なら 仔犬たちの前で聞こう …それとも まだメス犬の腹の中か?近所の犬どもは もう生んでいるが… 先住民族の犬は遅いのか?」
ベルグルが慌てて言う
「だから 待って下さいッス!ロキ隊長!…そ、そんなんじゃ!たまには 俺だって言っちゃうッスよ!?ロキ隊長!だ、…だだだ、 だ、黙っ!」
ロキが言う
「言いたい事があるのなら 早く言え」
ベルグルが衝撃を受けて叫ぶ
「隙が無いッスー!」

玉座に座ったロキが言う
「…何っ!?卿の子供はいないだと!?」
ベルグルが困って言う
「そおッスよー!俺は!そこら辺のメス犬と 子供を作ったりはしないッス!付き合うんだったら ちゃんと 心に決めたメス犬と 一生共にするつもりで 結婚するッス!」
ロキが間を置いて言う
「…犬の世界にも 結婚と言う概念があるのか?」
ベルグルが汗を掻いて言う
「…い、いや それは 無いッスけど…」
ベルグルが気を取り直して言う
「で、でも!だからって言って!サカる度に そこら辺のメス犬と 子供を作っちゃったりはっ!…う~ お、俺はっ!少なくとも 俺はしないッス!」
ベルグルが気合を入れてロキへ言った状態で止まっている ロキが普通に考えて言う
「…そうなのか」
ベルグルがロキを見る ロキが考えながら言う
「…では …奴への祝いの品は …どうするかな?今更考え直すとなると…」
ベルグルが衝撃を受けて叫ぶ
「えー!?ほ、本気で 俺の子供をヴェルアロンスライツァー副隊長たちへの お祝いの品として贈っちゃうつもりだったッスかー!?ロキ隊長ー!?」
ロキが不満そうに言う
「…そうだと言っただろう?…あれだけ毎晩わんわんとサカっておきながら …まさか 子をこしらえていなかったとは …計算外だった」
ベルグルが衝撃を受けて叫ぶ
「どんな計算ッスか!本気で考えていたッスか!?…確かにちょっと サカってたかもしれないッスけどっ 俺はちゃんと堪えて!」
ロキがポンッと手を叩き 思いついて言う
「…よし、ではベル 今から作れ 丁度先程 城の前に メス犬がうろついて…」
ベルグルが怒って言う
「ロキ隊長!いくらロキ隊長でも!それ以上言ったら 俺本気で怒るッスよ!噛み付いちゃうかもしれないッスよ!う~ う~っ …酷いッスよー!ロキ隊長ー!」
ベルグルの声が響く

【 ローゼント城 ハリッグの部屋 】

ローゼックが怒りながら言う
「であるからにして!良いか!?ハリッグ!?明日こそはっ!明日こそ私は 貴様との勝負に決着を付けてくれるのだっ!こうして夕食を共にするのも 今宵で終わりぞっ!?」
ハリッグが微笑んで言う
「はっはっは ああ… 毎夜その言葉を聞きながらも こうして夕食を共に出来る事を 私も嬉しく思っておるよ」
ローゼックがばつの悪そうに席に座り直しフォークに刺していた肉を食べる ハリッグが苦笑しながらステーキを切る ローゼックが不満そうに言う
「む~… 折角の良い肉であるのに まったく下処理がされておらぬ …貴様らへ送るは ローレシアの魔法使いどもだけでなく デネシアのコショウもつけくわえてやらねば」
ハリッグが軽く笑って言う
「はっはっは… あのデネシアの不信王とされた ローゼック・デネシアが これほど心優しい者であったとはな… やはり 人の噂など その程度のものであったか…」
ローゼックが口に沢山の物を詰め込んだ状態で言う
「何か申したか?」
ハリッグが苦笑して言う
「いや…」
ローゼックが丸呑みしてから言う
「んぐっ… 所で?元を正せば 貴様がスプローニとのいざこざを起こしたのは スプローニのラグヴェルスが 人畜非情な行いを行って居ると言う噂を聞いたのが始まりであったと… 当時に風の噂で聞いたのだが?…あれは何処までが真の話であったのか?…過ぎた話ではあるが こうして時間を共に出来るのであれば 良い機会だ 貴様の口から直接確認したい」
ハリッグが一瞬呆気に取られた後 笑って言う
「はっはっはっ なるほど 不信王とはこの事であったか!」
ローゼックが衝撃を受け怒って言う
「誰が不信王であるか!?無礼者っ!」
ハリッグが手を止めて言う
「…そういえば あの時もソルベキアが関係していたな 我らローゼントはソルベキアの隣国 故に 彼らの動きには常に目を光らせていた 何時の日か  かの国が 悪しき機械を世に放つのではないかと… と、そこに 我が相棒にして 当時のスプローニの王であった ラグヴェルスが関わっていると言われれば 心を乱されるのも当然であろう?」
ローゼックが不満そうに言う
「ラグヴェルスがソルベキアと…?…ふんっ 確かに?その様に聞けば 脳天まで怒りが浸透しよろうものではあるが… それだけの事よ すぐにでもスプローニへ向かい 正面から問いただせばよい」
ハリッグが苦笑して言う
「ああ… そうしたのだ それで あいつの気に触ってしまった 貴殿も私と同じよな?ローゼック殿…」
ローゼックが呆気に取られる

回想

スプローニ城玉座の間 伝達兵が言う
『…ローゼント国国王 ハリッグ様のご来城です!』
若いラグヴェルスが顔を上げる 若いハリッグが甲冑姿で足音を響かせて入って来る 後ろにヴェルアロンゲデルフフォルライツァーが続く ラグヴェルスが視線を強める ハリッグがラグヴェルスの前に立ち止まり強い視線でラグヴェルスを見る ラグヴェルスが間を置いて言う
『…諸卿の来国を …歓迎する』
ハリッグが表情を渋らせつつ言う
『ラグヴェルス 私は 良からぬ噂に心を乱され それを払拭せんと 今 貴殿の前へ馳せ参じた』
ラグヴェルスが僅かに表情をしかめて言う
『…俺が 卿へ不利益を被らせるような事を 行おうとでも?』
ハリッグが言う
『このスプローニが シュレイザーを経由し ソルベキアと繋がっているとっ ソルベキアの技術を 得ようとしているなどと言う噂を耳にしたのだ!』
ラグヴェルスが視線を強める ハリッグが一歩踏み出して言う
『その様な事は決して無いと!断じて無いと!そう言ってくれ ラグヴェルス!貴殿が… スプローニが!ソルベキアなどと 繋がろう筈が無い!』
ラグヴェルスが目を閉じて間を置いて言う
『…俺は ソルベキアの技術を得ようとしている …としたら なんだ?』
ハリッグが驚く ラグヴェルスがハリッグを強く見据えて言う
『…だが、卿の言葉を一部否定するなら ソルベキアの技術を得ようとしているのは …俺自身だ …スプローニは 関係ない』
ハリッグが怒って叫ぶ
『馬鹿を申すな!貴殿はこのスプローニの王!その貴殿が得ようと言うのなら それは スプローニが求めているも同じ!いや…っ』
ハリッグが悔しそうに怒ってから叫ぶ
『貴殿は私の相棒ではなかったのか!?その貴殿がっ …寄りにも寄って ソルベキアの力を求めるなど…っ!貴殿は この私を裏切るのか!?何故だ!?ラグヴェルスっ!』
ラグヴェルスが黙る アイネフラーソワが姿を現して言う
『違いますっ 陛下は… ラグヴェルス陛下は!』
ラグヴェルスがアイネフラーソワへ視線を向けて言う
『アイネっ …貴女は黙っていろ』
ハリッグがアイネフラーソワを見る ラグヴェルスが言う
『…スプローニは関係有らずとも …俺が ソルベキアの力を求め シュレイザーを経由し 話を進めている事は事実だ その事に 偽りは無い』
ハリッグが俯いた状態で表情を悔しめて言う
『…見損なったぞ ラグヴェルス』
アイネフラーソワが何か言いたげに踏み出すが留まる ラグヴェルスがハリッグを見る ハリッグが表情を怒らせて言う
『貴殿らは 例え銃と言う機械に頼ろうともっ!その魂は ソルベキアとは異なるものだと信じていた!だがっ ついに貴殿らも ソルベキアと同じく 人知を超える機械の力にすがって生きる事を選んだか!そこまでして 力が欲しいのかっ!』
ラグヴェルスが視線を強める 周囲のスプローニ衛兵たちが殺気立つ ヴェルアロンゲデルフフォルライツァーが剣に手を添え小声で言う
『陛下…っ』
ラグヴェルスが言う
『…俺を何と言おうと構わん だが スプローニの兵を』
ハリッグが叫ぶ
『スプローニの王は!王で有ると共に 最高位の部隊長!隊長がそうとあれば 隊員の兵士たちも皆同じぞ!貴殿ら銃使いは皆っ!』
ラグヴェルスが叫ぶ
『黙れっ!』
ハリッグが驚きラグヴェルスを見る ラグヴェルスがハリッグを見つめて言う
『…消えろ』
皆が驚く アイネフラーソワが慌てて言う
『ラグヴェルス陛下っ』
ラグヴェルスが立ち上がって叫ぶ
『その者たちを スプローニの地より追い出せ!今すぐにっ!』
スプローニ衛兵たちがハリッグの周囲に集まる ヴェルアロンゲデルフフォルライツァーがハリッグの前に立ち剣を抜こうとする ハリッグがヴェルアロンゲデルフフォルライツァーの肩へ手を置く ヴェルアロンゲデルフフォルライツァーが止まる ハリッグがラグヴェルスと周囲の兵を見て言う
『見送りは不要っ 我らだけで 失礼させてもらう!』
ハリッグが立ち去る ヴェルアロンゲデルフフォルライツァーが警戒しながら続く アイネフラーソワが見つめた後ラグヴェルスを見る ラグヴェルスがハリッグを見つめている

回想終了

ハリッグが静かに言う
「その数日後だった… スプローニが シュレイザーを介しソルベキアの奇襲を受け 窮地に立たされていると偵察兵から報告を受けたのだ」
ローゼックが手酌でワインを注ぎながら言う
「ああ その件なら私も聞いておる 貴様らローゼントの騎士と ローレシアの魔法使いどもによる 初の共同実戦であったと… その一戦を機に 魔法剣と言うものが表向きに 世に知られるようになったのだ… それまでは 私とイシュラーンとの専売特許であったと申すのに…」
ローゼックが注いだワインを一気飲みして ぷはっと息を吐く ハリッグが苦笑して言う
「相棒に黙って 魔法剣と言う力を手に入れようとしていたのは… 私の方であったのだな …そうでありながら 私は ラグヴェルスを罵ってしまった そんな私に 彼は…相変わらず 何も言いはしなかった」
ハリッグが手にしていたグラスのワインを見る ハリッグがワイングラスを揺らし ゆれるワインを眺めながら言う
「最初で最後と思っていたあの亀裂が… まさか、その後に起きる 最大の亀裂への始まりであったとは…」
ハリッグがワイングラスを止め 目を瞑ってから 顔を上げローゼックへ向いて言う
「互いに心底信頼しているというのに 何故 すれ違ってしまうのだろうか… なぁ?ローゼック殿…?」
ローゼックがテーブルに伏して寝ている ハリッグが呆気に取られてから苦笑して言う
「何にしても 今はもう すべてが丸く収まった 国王の座を明け渡した今 地位も財産も失おうと… 私には 最高の相棒と…」
ハリッグがローゼックを見て苦笑して言う
「最高の友人が居る」
ローゼックが寝言を言う
「う~ん…であるからにして… 貴様らはまた…」
ハリッグが微笑む

【 スプローニ城 王の部屋 】

通信機の前にロキが居て言う
「…では 全ての国を巡り終えた今後も スプローニへは戻らないのか?」
通信モニターに映るエリルドワリーがタバコを吹かして言う
『フー… 戻らないよ 戻るとしても アタシが戻るのはシュレイザーだ …あの国はアタシらがしっかり見てやら無いと しょうがないからねぇ…』
ロキが間を置いて言う
「…それで 一応聞いておくが 別大陸の刺客は…」
エリルドワリーが言う
『見つかってないよ 見つかってたら… とっくにアンタへ連絡してるだろう?』
ロキが呆気に取られて言う
「…俺へ?」
エリルドワリーがタバコを吹かして言う
『フー… 当たり前だろ?アンタはスプローニの王様になったんじゃないか だったら… あの間の抜けたアバロンの代理国王へ報告するよりは よっぽどましだよ』
ロキの脳裏にレクターの笑顔が浮かぶ ロキが苦笑して言う
「…なるほど やはり 貴女にあの性格は」
エリルドワリーが言う
『そういえば ロキ』
ロキが疑問して通信モニターを見る エリルドワリーがどうでも良さそうに言う
『刺客には関係ないけど うちの元王子様の話を聞いたよ』
ロキが言う
「…うちの元王子 …アシル元王子の事か」
エリルドワリーがタバコを消しながら言う
『ツヴァイザーへ向かう為に わざわざベリオルから 船でヴィルトンへ渡って そこから陸路を進んで行ったんだって… ベリオルの馬車屋が言ってた 何たってそんな遠回りなルートを選んだんだか 王子様の考える事は分からないってね』
ロキが言う
「…ああ それなら見当が付く アシル元王子は約13ヶ月前 ツヴァイザーで起こした不祥事の為 現在スプローニとツヴァイザーの国境に通過禁止令が出されている その遠回りなルートは それ故のものであると」
エリルドワリーが言う
『問題は そこまでして 何をしに向かったのか… 半ば国を追い出されたって元王子様が 所持金も大して無かったって話だよ』
ロキが考えながら言う
「…ツヴァイザーは 現在でこそ スプローニとの同盟の契りを交わしているが …それはアシル元王子が国を追われた ずっと後の事 …俺は同盟を結ぶ事に関して 誰かへ話した事も無かった」
エリルドワリーが言う
『元とは言え スプローニの王子だった男だ また何処かで不祥事でも起こしたら 今度はアンタの責任だよ ちゃんと見張っときな』
ロキが言う
「…確かに そうだな …確認をさせる」
エリルドワリーが言う
『…それじゃ』
ロキが言う
「…たまには」
エリルドワリーが通信を切ろうとしていた手を止める ロキが言う
「…家へ帰って来たらどうだ?…母さん」
エリルドワリーが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
『…そうだね』
エリルドワリーが悪笑んで言う
『可愛い息子が ママーお願い帰って来てー!って泣いて頼むのなら 帰ってやっても良いよぉ?ロキ?』
ロキが衝撃を受け怒って叫ぶ
「帰らなくて 結構だ!」
エリルドワリーが笑って言う
『あっはっはっ シュレイザーへ戻る前に 一度立ち寄るつもりだよ じゃあね?頑張りな!』
通信が切れる ロキが溜息を吐き 間を置いて周囲を見てから疑問して言う
「…うん?…ベル?」
ロキが周囲を見渡してから言う
「…今夜は 来ないのか …あいつが居ないとずいぶん …静かだな」
ロキが沈黙する

【 嵐の海峡 】

小さな帆船が波に翻弄されている 金田が必死にオールでバランスを取って海図とコンパスを見て言う
「ここだっ 北緯187 経緯82 第8艦隊の消失場所付近 ここで俺たちの第七艦隊は… いや、寺沢丸はここで 襲撃されたっ」
金田が周囲を見渡し はっとして言う
「そういえば… あの時 空から…」
金田が慌てて空を見上げる 嵐の空 異変は無い 金田が目を細め視線を遠くへ戻して言う
「それで… 俺たちは海に落ちて… 船の側面を見た だから 流されたのは北方のはずだ …よしっ!」
金田がモーターを動かしオールで舵を取って進む

【 ガルバディア城 寝室 】

豪華なベッドの上 バーネットが三つ編みを解いた状態で静かに眠っている 別室 ヴィクトールが毛布を抱いて寝ていて寝言を言う
「う~ん… バーネットも一緒に…」

【 嵐の海峡 】

金田が驚きに目を見開いて言う
「これが… 世界の縁…っ」
金田の帆船の前 巨大な滝が流れ落ちている 金田が困惑しながら言う
「あの時… 俺はこの滝に落ちたのか?それで… 別の あの人たちの大陸に…?」
金田の脳裏にカイザ、スカル、ヴィクトール、バーネットの姿が思い出される 金田が視線を落とし考えながら言う
「…自分でも信じられねぇけど …こっちには もう、俺の居場所は無いんだ …ザキだって…」
金田の脳裏に篠崎の姿が移る 金田が視線を強めて言う
「こうなれば イチカバチかだぜっ …頼むよ 神様 …親父っ!」
金田がモーターを再起動させ オールを動かし叫ぶ
「いっけぇえーーっ!」
金田の帆船が大滝に吸い込まれて行く

【 ガルバディア城 寝室 】

バーネットが僅かにうなされ体勢を変えながら言う
「う~ん…」
一瞬の静寂の後 一斉にエラー警告音が鳴り響き周囲にプログラムが発生する バーネットが驚き飛び起きて叫ぶ
「のわぁあ!?な、なんだぁあ!?」

別室

静かな空間 ヴィクトールがふと覚醒して言う
「…ん?…バーネット?」
ヴィクトールが身を起こし周囲を見ながら疑問する

バーネットの寝室内

エラー警告音が鳴り続けている ノックの音が僅かに聞こえヴィクトールの声が届く
「…バーネット?…起きてる?…僕 何だか目が覚めちゃって …バーネット?」
一瞬の後扉が僅かに開かれ ヴィクトールが驚き 扉を開放して叫ぶ
「わあ!?な、なになにっ!?この騒ぎは!?バーネット!?」
ヴィクトールの向けた視線の先 バーネットが目を閉じて周囲にプログラムを発生させていて 何かに気付くと 目を開き表情をしかめて言う
「クッ!馬鹿野郎がぁっ!」
ヴィクトールが一歩踏み出して言う
「バーネット!?」
バーネットがヴィクトールへ視線を向け言う
「ちょいと行って来る ここからじゃ …自信がねぇ!」
ヴィクトールが一瞬驚き慌てて駆け寄ろうとして言う
「バーネット!待ってっ!」
バーネットが数字の羅列と共に消える ヴィクトールが向かった先 ベッドには誰もいない いつの間にか周囲の騒ぎが静まっている ヴィクトールが突っ立ったまま表情を悲しめて言う
「バーネット…」

【 海中 】

帆船が海中に引き込まれていく 金田が強い流れに沈んで行く 金田が苦しそうに堪えていた息を吐き出し 気泡が上がっていくのを見ながら表情を苦しめて思う
『畜生… 俺… このまま 死んじまうのか…っ?』
金田が強く目を瞑る その目に光が当たる 金田が疑問して目を開く 光に一筋の線が入る 金田が呆気に取られる

海面が裂かれ 2つの滝が出来る その間の空間に金田が浮いている 金田が驚いて目を見開いて言う
「う、浮いてっ!?海が!?えっ!?えぇええっ!?」
金田が驚き息を飲んでからハッとして視線を向ける 視線の先 光の中に長い金髪がなびく 金田が呆気にとられたまま見上げる 金田の視線の先 バーネットが金田を見下ろしていて 手をかざす 金田の体が浮き上がる 金田が呆気に取られたまま言う
「神… 様…?」
バーネットが苦笑して言う
「ふぅ… 危ねぇ所だったぜ」
金田がバーネットへ手を伸ばす バーネットが気付き苦笑する 2人が数字の羅列に覆われ消える 割れていた海が戻って 夜の海の静けさを取り戻す 

【 ガルバディア城 玉座の間 】

ヴィクトールが空の玉座を前に表情を落としている その後方に 金田が現れ床に這って咳き込む
「ゲホッゲホッ!…ハァ…ハァ」
ヴィクトールが驚き 振り返って 金田を見て呆気に取られて言う
「君は…っ カネダ何とか!?」
ヴィクトールが向かおうとする 玉座の方からバーネットの声がする
「…あれっだけ苦労して おっ返してやったってぇのに なんったって また 流されて来やがったぁ?…たくっ」
ヴィクトールが振り返り喜んで言う
「バーネット!」
バーネットが三つ編みを編み終え軽く髪を掻き揚げて言う
「それとも何かぁ?…まさかぁ てめぇ自身の意思で来やがったとでも 言いやがったら…」
金田がヴィクトールとバーネットを確認してから 信じられない様子で言う
「やった… 夢じゃなかった 本当に… 本当にっ この人たちの世界がっ!」
バーネットが視線を強める ヴィクトールがバーネットを見てから金田を見て言う
「君… 君の意思でこっちに来たの?だとしたら やっぱりあの大滝を超えて来たんだよね?」
金田が笑んで言う
「ああ!あのでかい滝に 思い切って突っ込んで来たんだ!いやぁ~ マジで死ぬかと思っ…」
バーネットが怒りに息を飲んでから叫ぶ
「馬鹿野郎ぉおお!」
ヴィクトールと金田が驚き ヴィクトールが呆気に取られてから困惑して言う
「バーネ…」
バーネットが真剣な表情で言う
「…あの大滝はなぁあ!?ただのホログラムなんかじゃねぇ!…別大陸の民が 間違っても他の大陸へ行っちまう事がねぇ様に …正規のライセンスがねぇ奴は ぶっ殺される様に作られてやがるんだよっ!それをっ!」
金田が呆気に取られた後 表情を困らせて言う
「…けど …俺だって」
金田が俯く ヴィクトールが心配そうに金田とバーネットを見た後 苦笑して金田へ言う
「バーネットは 君の事を心配して怒っているんだよ?君が 自身の命を危険に晒した事へ… 彼はもっと君に 君の命を大切にして欲しいと願っているんだ」
金田が呆気に取られヴィクトールを見上げる ヴィクトールが微笑する 金田が呆気に取られたまま瞬きをし 次にバーネットを見る バーネットが不満そうに顔を背けて言う
「…ケッ …そぉ言う事でぇ」
金田が呆気に取られたまま言う
「は… は、はは あはっ …そっか そうだよな …流石 神様だ」
ヴィクトールとバーネットが驚き 顔を見合わせてからヴィクトールが金田へ言う
「君 どうしてバーネットが ガルバディア国王の… 神様の代理だって知っているの?」
金田が疑問して言う
「え?ガルバディア…国王?」
ヴィクトールが疑問して言う
「…えっと さっき君が “神様” と言ったのは そういう意味だったんじゃ?」
金田が疑問して言う
「は?いや… 俺が言ったのは あの海に溺れ掛けた俺を 海を割って助けてくれた… あんな事が出来るのは 神様かモーゼ位だろ!?」
ヴィクトールとバーネットが衝撃を受け ヴィクトールが困り疑問して言う
「モーゼ…って?」
金田が疑問して言う
「え?知らないか?モーゼの十戒って奴 海が真っ二つに割れるんだぜ?杖かなんか掲げると?…って言っても 俺が見たのは映画だけど」
ヴィクトールがさっぱり分からず疑問して言う
「…モーゼのジュッカイ?エイガ?」
金田が疑問する バーネットが呆れて言う
「…いや、もう良い どうせそいつの大陸の話でやがるんだろぉ?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「うん!そうだね バッツスクロイツの話も よく分からない事ばかりだし!」
バーネットが言う
「それよか聞かせろ …なんでまた こっちに来やがった?何が… てめぇを あの大滝へ突っ込ませやがった?」
金田が一瞬呆気に取られた後表情を落とす ヴィクトールが言う
「そうだよね?あの大滝へ突っ込むには 相当の理由がないと… それこそ 大好きな人の名前を叫びながらじゃないと 突っ込めない程だものね?」
金田が視線を悲しめて言う
「大好きな人か…」
ヴィクトールが金田を見る 金田が苦笑して言う
「大好きな人所か… 友達も 仲間も… 家族まで…っ 皆… 皆がっ 俺を!忘れちまったんだ!」
ヴィクトールとバーネットが驚く ヴィクトールが疑問して言う
「忘れたって…?」
金田が言う
「忘れちまった!…いや、消されたんだ!俺の存在を!俺とザキが存在したって言う事 それ自体を!」
ヴィクトールが呆気に取られる 金田が言う
「俺は… あんた達と別れたあの後 気が付いたら海軍の医療施設に居たんだ」

回想

金田がハッと目を覚まし身を起こしながら言う
『ここはっ!?』
金田が周囲を見渡し 呆気に取られて言う
『医務室だ 海軍の… それじゃっ!?』

金田が言う
「最初はそれで 全て戻ったって… ザキだって… あいつもきっと居るはずだって 全部夢だったんじゃないかとすら 思ったんだ けどっ」

金田が吉本へ言う
『吉本!』
吉本が疑問して振り返る 金田が走り寄って言う
『吉本!良かった…っ お前も無事だったんだな!?』
吉本が疑問して言う
『…え?無事だったって…?』
金田が苦笑して言う
『ああっ いや、良いんだ!それより お前 ザキを知らないか!?』
吉本が怪訝そうな表情で言う
『ザキ?』
金田が苦笑して言う
『ああ…っ ほら、居ただろ?うちの一等航海士の!篠崎だ!篠崎楓!ほら!女みたいな名前だって 皆で勘違いしてさぁ!?』
吉本が困って言う
『あのよぉ… お前 人違いでもしてるんじゃないか?…ってぇか 確かに俺は吉本だけど…?』
金田が疑問して言う
『はぁ?人違い?』
吉本が言う
『お前も… その制服は うちの第七艦隊か …けど、俺はお前の事なんて知らないし 今まで会った事も話した事もないだろう?…それとも 何処かで会って話したか?お前みたいな奴と会ってたら… 俺忘れねーと思うんだけどなぁ?』
金田が呆気に取られた後苦笑して言う
『はぁ?…お前こそ 何言ってんだよ?俺だよ俺!?たった数日会わなかっただけで 忘れちまったって言うのか!?金田だよ 金田玉児!』
吉本が言う
『金田…玉児…?』
金田が言う
『いっつも タマ タマ って カネ玉ってからかってたじゃねーか!?忘れるわけ無いだろ!?』
吉本が困惑して黙る 金田が表情を困らせて言う
『…吉本?』
吉本が半身を逸らして言う
『…悪いけど …本当に知らねーよ きっと人違いだろ?じゃぁ…』
金田が驚き慌てて言う
『待てよ!吉本!』
吉本が逃げるように足早に歩く 金田が追いかけて言う
『おいっ 何の冗談だよ!?いい加減にしろよな!?』
吉本が無視して歩く 金田が一瞬怒ろうとしてからはっとして言う
『お前っ …いや、それなら良い!けど、これだけは教えろよ!ザキは何処だ!?自分の船の航海士の事だ!何処にいるかぐらい 知ってるだろっ!?』
吉本が表情を困らせ足を速める 金田が服を引っ張って止まらせて叫ぶ
『おいっ!答えろよっ!』
吉本が一瞬間を置いてから表情を困らせて叫ぶ
『だからっ!知らないって言ってるだろ!?お前の事も!その篠崎だかザキだかって奴も!航海士が誰かだって 知らねーよ!』
金田が驚き呆気に取られて言う
『…なっ?』
吉本が立ち去る 金田が呆然と立尽す

金田が言う
「吉本が嘘を言っている様子は無かったし… 何より 航海士の名前を知らないなんて そんな事ありえない だから 俺は第七艦隊の出航記録を確認した そしたら」

金田が驚きに目を見開いて言う
『…そんなっ』
金田の視線の先 出航記録の航海士欄が空欄になっている 金田が慌てて艦長欄を見る金田が呆気に取られる 艦長欄には大山徳佐と書かれている 金田が慌てて立ち上がって駆け出す

金田が叫ぶ
『徳佐艦長!』
大山が一瞬驚き立ち止まってから振り返り 驚きに目を見開く 金田がすぐ近くまで来て立ち止まり叫ぶ
『徳佐艦長!良かった!あのっ 教えて下さい!何で 航海士欄が 空欄にっ!?』
大山が呆気に取られてから苦笑して言う
『ああ… はは… いや、すまない 君はとても 私の友人だった男に似ていたものだから つい驚いてしまった』
金田が一瞬呆気に取られた後強い視線で言う
『親父の 金田銀二と似てるんですよね!俺です!その銀二の息子 金田玉児です!』
大山が呆気に取られて言う
『銀二の息子…?』
金田が言う
『はい!徳佐艦長の!第七艦隊の艦隊員です!下っ端ですが 徳佐艦長に渡した乗船者名簿にも名前を書きました!それで…っ』
金田がはっとする 大山が考えながら言う
『銀二には… 3人の娘が居るとは聞いていたが 男の子は…結局授からなかったんじゃなかったかな?5年前 彼が行方不明になる前までその話をしていたから 間違いないだろう 君は…どう見ても 17,8歳と言った所だ』
金田が驚きに目を丸くする 大山が首を傾げて言う
『それとも…?』
金田がはっとして慌てて言う
『徳佐艦長!ザキは…!?楓は無事ですか!?今何処に!?』
大山が呆気に取られて言う
『楓…?』
金田が詰め寄って言う
『篠崎楓です!本名は大山楓!貴方の息子の!』
大山が呆気に取られた後笑い出して言う
『はっはっはっは… 君はなかなか 面白い子だな』
金田が焦って言う
『徳佐艦長!』
大山が苦笑して言う
『確かに 私には息子が4人ほど居るが その中に 楓という名前の者は居ないよ …それに 楓というのは 通常女子の名前ではないのかな?しかし、中々良い響きだ 楓…か もし私に娘が授かっていたのなら その様な名前も…』
金田が驚きに目を見開いている 大山が気付いて言う
『…うん?君… 大丈夫かね?』
金田が2、3歩後づさりをした後逃げるように駆け出す 大山が呼び止める様な仕草で言う
『お、おい?君!?』

金田が言う
「仲間や徳佐艦長だけじゃなかった… 俺のねぇちゃんたちも… お袋まで!…俺をっ」

回想終了

金田がつらそうな表情で俯いている ヴィクトールが心配そうに見つめた後 バーネットへ向いて言う
「友人や家族までが 彼の事を忘れてしまうだなんて そんな事が…?」
バーネットが言う
「…言うまでもねぇ そいつは ロストヒューマンの仕業だ」
金田が驚いて言う
「ロスト ヒューマン…?」
バーネットが体勢を変え考えながら言う
「…問題は それを どのロストヒューマンがやりやがったかってぇ話だぁ… てめぇん所の あのペテルギウスが んな面倒臭ぇ事なんざしやがるとは思えねぇ… だが、他の奴だとしたら 誰か一体何の目的で…」
ヴィクトールが不思議そうに眺める 金田が言う
「それならっ アンタもそのロストヒューマンって奴なのか!?だったら 俺の事を!」
バーネットが言う
「生憎だが 俺はそいつらの出来損ないだぁ 人の記憶を操作する… ましてやてめぇを知る 一国の全ての奴の分なんざ 出来ねぇ」
金田が落ち込む ヴィクトールがそれを見てからバーネットへ言う
「バーネット?バーネットは出来なくても シリウス国王なら 出来るよね?」
金田がヴィクトールを期待の眼差しで見てからバーネットを見る バーネットが言う
「ああ… だろうなぁ …だが、生憎 そのシリウス国王とは 連絡が付かねぇ 当人も しばらくそうなるだろうってぇ 言い残して行きやがったからなぁ」
ヴィクトールが残念そうに言う
「そう… ごめんね カネ?」
金田が衝撃を受け慌てて言う
「か、カネって…」
ヴィクトールが首を傾げて言う
「え?駄目?」
金田が苦笑して言う
「ああ… いや、構わねーけど あ!それと!」
ヴィクトールが疑問する 金田が言う
「俺らの記憶を戻す事は出来なくても!ザキを探す事は!?出来損ないとか言っても アンタのあの力なら!ザキを探す事だって出来るんじゃ!?」
ヴィクトールがバーネットを見る バーネットが落ち着いて言う
「そいつも出来ねぇな… 前回てめぇが言った時点で 可能な限りこの大陸内は確認したが見付からなかった」
ヴィクトールが表情を悲しめて金田を見る 金田が表情を落とす バーネットが言う
「…でぇ?てめぇはどうする」
金田が疑問して言う
「え?」
バーネットが言う
「ここでてめぇが選べる道は3つだぁ 1つ 例えてめぇの事は忘れられて様が 元の大陸へ帰る 2つ この大陸で俺たちの監視の下暮らす 3つ…」
金田とヴィクトールが見つめる バーネットが言う
「…またあの大滝を超え 今度は ここでも、てめぇの土地でもねぇ 別の大陸へ向かって …てめぇの言う そのシノザキカエデって野郎を探す」
金田がはっとして言う
「ザキを…?…そっか 俺達が生きてきた元の大陸があって ここにあんた達の大陸があるなら 他にも 別の大陸が!ザキはそこに!?」
金田が意を決して言う
「なら!俺が選ぶ道は一つだ!その三番目の!」
バーネットが言う
「だ・がっ!…その大陸の管理者は てめぇを助けては してくれやがらねぇだろうぜぇ?それ所か とっ捕まって 体の良い実験体にされちまうか…?今度こそてめぇの命の保障はねぇ それこそ本物の神様の奇跡でもなけりゃぁ ただ、生きて戻る事すら難しいんだぜぇ?」
金田が呆気に取られる ヴィクトールが心配して言う
「カネ…」
金田が目を閉じた状態から間を置いて バーネットを見て言う
「…俺は 一度は …いや、2度も死に掛けた あの大滝で …それに 元の大陸に帰ったって 俺の存在が消されてるんじゃ あんなんじゃ…っ だったら 俺は… 行く!」
ヴィクトールが表情を落としたまま少し驚いて止めようとする 金田が言う
「もしかしたら!そこにザキが居るかもしれないっ  それで!もしかしたら …唯一 俺の事を覚えていてくれる奴なんだ!俺だって!あいつからすれば あいつを覚えている唯一の!」
ヴィクトールが心配して言う
「でもっ!他の大陸の管理者が 助けてくれないんじゃ 神様の奇跡を願うだなんて無茶だよ!管理者の助力がなければっ 今回だって君はっ!…それに!別大陸の管理者は リジルやリゲル… そして、君の所だってっ …僕には 別大陸の管理者は 良い人だとは思えないっ!」
バーネットが呆気に取られた後苦笑して言う
「ハッ…だなぁ?だからぁ シリウス国王は そんな奴らを統括する アウグスタに楯突こうなんざしてやがった訳だ」
ヴィクトールがバーネットを見た後金田へ向いて言う
「ね?分かったかい?君の… 元の大陸の居心地が悪いのなら この大陸に住めば良いよ!?僕は君を知った… これからもっと仲良くなって 知り合えば良いじゃない?あのカイザやスカルだって!きっと同じ海の男である 君と 仲良くなるんじゃないかな!?」
金田が間を置いてから苦笑して言う
「…有難うな 騎士の兄ちゃん …けど、やっぱり俺には出来ねーよ …それに もしかしたら ザキは 俺の助けを待っているかもしれない」
ヴィクトールが困惑する 金田が言う
「俺はあの時 ザキの手を離しちまった… あいつが泳げないって知ってたのに… 絶対 助けてやるって思ってたのにっ」
金田が自分の手を見つめた後手を握り締める ヴィクトールが表情を落とす バーネットが言う
「ならぁ…」
金田とヴィクトールがバーネットを見る バーネットが言う
「明日の朝まで 頭冷やして もう一度良く考えやがれ …それでも考えが変わねぇってぇなら 他の大陸へと向かう その場所まで 送り届けてやらぁ」
ヴィクトールが驚いて言う
「バーネット!?」
バーネットの周囲に一瞬プログラムが発生する 金田たちの後方玉座の間の入り口にプログラムが発生する バーネットが言う
「後ろの通路を 客室へ繋いでやったぜ そこで休みやがれ」
金田が振り返り一瞬呆気に取られた後 苦笑してバーネットへ向いて言う
「有難う 幽霊さん… いや、代理の神様」
金田が微笑する バーネットが苦笑する 金田が歩いて行く 金田が通路に入るとプログラムが発生して金田が消える ヴィクトールがそれを見送ってからバーネットへ向いて慌てて言う
「バーネット!?本気なの!?」
ヴィクトールがバーネットの近くへ行って言う
「彼を別の大陸へ向かわせるだなんて!バーネットは彼を助けたかったんじゃないの!?それなのにっ」
バーネットが軽く息を吐いて言う
「奴がそれを望むってぇなら しょうがねぇだろう?」
ヴィクトールが言う
「でもっ!」
バーネットが言う
「代理の神様だろうが それこそ本物の神様だろうが …あいつの意志を 押さえつけるなんざ許されねぇ …そいつをしちまったら てめぇが嫌う 別大陸の管理者どもと 同類じゃねぇかぁ?」
ヴィクトールが呆気に取られ 表情を落として言う
「それは…っ そうだけど…」
バーネットが言う
「奴は 奴の仲間を探して助けてぇって言ってやがるんだぁ… いつものてめぇなら それこそ 応援しやがるんじゃねぇのかぁ?ヴィクトール」
ヴィクトールが表情を困らせて言う
「…うん」
バーネットが苦笑して言う
「ならぁ …信じてやれよ?あいつを …じゃねぇと ハッ!てめぇの貧弱なアバロンの力が 発揮されやがらねぇじゃねぇかぁ?」
ヴィクトールが呆気に取られた後苦笑して言う
「…うん、そうだね バーネットは 彼を信じているんだ …分かった 僕も… 彼を 信じる!」
バーネットが苦笑する ヴィクトールが苦笑する 間を置いて ヴィクトールが衝撃を受け 慌てて言う
「ん?あれ?あ!酷いよ バーネット!僕のアバロンの力は 貧弱じゃないよ!?ちょっと弱いだけだもんっ!」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「るせぇえ!その ちょっと弱ぇってぇのが 貧弱だって言ってやがるんだろうがぁ!?」
ヴィクトールが怒って言う
「えー!?酷いよバーネット!弱いのと貧弱なのは 違うのー!」
バーネットが叫ぶ
「うるせぇええ!」

【 ソルベキア城 地下牢 】

檻が閉められる音が響く ザッツロードが牢内へ突き飛ばされた様子で入れられ 慌てて振り返って叫ぶ
「何をする!?私はこの国の!」
ソルベキア兵が言う
「邪魔者…」
ソルベキア兵が笑む ザッツロードがむっとして言う
「例え そうであろうとも 私が居なければ セントラルコンピュータは動きません そして!この様な扱いをされればっ!」
ソルベキア兵が言う
「はっはっは… そのお前は どうやってセントラルコンピュータの封を解除しているのか 本当は知らんのだろう?」
ザッツロードが一瞬呆気に取られた後気を取り直して言う
「…しかし!」
ソルベキア兵が言う
「お前がローレシアへ連絡を行い ローレシアがお前の言葉を聴いて解を解く …これが ソルベキアの鍵といわれたお前の 正体だった という訳だ はははっ 実に滑稽だな?ザッツロード補佐官殿?」
ザッツロードが驚く ソルベキア兵が笑んで言う
「それとも?お前自身が 何かを行っているとでも言うのか?」
ザッツロードが言葉に詰まる ソルベキア兵が笑って言う
「あーははははっ まったく大した補佐官殿 いや 鍵殿だな?どちらにしろ お前はただのお飾りだったと言う訳だ!従って いずれまた セントラルコンピュータを使用せねばならん時まで ここで大人しくして居ろ とのガライナ陛下の命だ ついでに次の時も また ローレシアへの連絡を頼むともなぁ?」
ザッツロードが呆気に取られる ソルベキア兵が言う
「もっとも わざわざお前が言わずとも こちらからローレシアへ 命じれば良いだけか?ザッツロード王子を殺されたくなければ セントラルコンピュータの封を解けとな?」
ソルベキア兵が笑って去って行く ザッツロードが視線を落として言う
「…なんて事だ 僕は 人質に …ローレシアへの人質にされてしまった」
ザッツロードが牢の近く 壁際へ座り込み表情を落として言う
「…僕自身でも何かをやらなければと思って 頑張ったつもりなのに 結局こうなってしまって …駄目だなぁ やっぱり僕は 夢の世界でも… 現実世界でも結局…」
ザッツロードがうずくまって悔し涙を堪える 牢屋の奥からアシルの声が届く
「…おい うるせぇ… めそめそ泣きやがって」
ザッツロードが呆気に取られて驚き顔を向ける アシルが寝転んだ状態で顔を向ける ザッツロードが呆気に取られつつ言う
「僕以外にも 居たのか…?」
アシルが不満そうに言う
「居たら悪ぃか?こっちが先客だろ?」
ザッツロードが一瞬驚いた後苦笑して言う
「あ… いえ、すみません そういう意味ではなくて 他にも空いている牢があるのに… と言う意味で」
アシルがだるそうに言う
「ケッ… てめぇも俺も 殺しちゃいけねぇ客だって事だろうよ」
ザッツロードが呆気に取られてから他の牢を見て言う
「…なるほど それで」
ザッツロードの目に 他の牢の中の囚人たちの姿が映る ザッツロードが一度表情を悲しめてからそれらから目を離し アシルへ向いて言う
「あ、申し遅れました 私はザッツロード… ザッツロード7世です ローレシアの」
アシルが言う
「第二王子… だろ?…知ってる」
ザッツロードが意外そうに驚いた後言う
「え…?あ、そうでしたか 兄王子の事を知っている方は多いのですが」
アシルが目を閉じて言う
「キルビーグ2世 そっちも知ってる… 会った事もあるからなぁ 有望視されてるって割には スカした奴だったが …まぁ 魔法使いの国には あんなのがお似合いなのか」
ザッツロードが驚いて言う
「兄と会った事が?その、失礼ですが 貴方は…?」
ザッツロードがアシルの服を見て言う
「そのコートはスプローニの… 貴方はスプローニの銃使いですね?しかし、ローレシアの魔法使いがスプローニ兵と合同で戦い始めたのは最近で 貴方は…?」
アシルがいやそうに言う
「ガタガタうるせぇ こっちは 酒もねぇのに 長話なんかする気になんねぇんだよ!」
ザッツロードが一瞬驚いてから苦笑して言う
「ああ…っ す、すみません 僕の悪い癖で」
アシルが息を吐いてザッツロードへ背を向ける ザッツロードが言う
「あ、あの… それで 貴方は?…貴方のお名前は?」
ザッツロードがアシルの背を見つめるが アシルは目を閉じる

【 スプローニ城 玉座の間 】

大臣が紙資料を手に言う
「では、こちらの件に関しては 私どもの方で手配を致します」
ロキが言う
「…ああ …手間を掛けてすまんが 頼む」
大臣が微笑して立ち去ろうとして思い出して言う
「あ、そうでした」
ロキが紙資料へ向けていた視線を戻して言う
「…うん?」
大臣が向き直って言う
「未確認情報では有るのですが 有力な情報元から アシル元王子の その後の足取りが確認されました」
ロキが言う
「…聞いておこう」
大臣が言う
「アシル元王子は スプローニを出た後 ロキ陛下が確認を取られましたように ベリオルの街からヴィルトンの港へ そちらからローレシア、アバロンを経て ベネテクトからツヴァイザーへ向かおうとしました …が、ベネテクトからツヴァイザーへの検問にて行く手を阻まれ その後はカイッズへ向かい 更には エドの町へ そして ローゼントへ渡った後 ソルベキアへ連れ去られたとの情報です」
ロキが視線を強めて言う
「…連れ去られた?」
大臣が言う
「はい、その辺りの確認を現在取っているのですが 詳しい情報は入っておりません ただ、ローゼントからソルベキアへ向かう際 アシル元王子が両脇をソルベキア兵に固められソルベキアの馬車へ 入れられていたと言う事でして…」
ロキが考えながら言う
「…両脇を固められ か… 強要されたと見るか 介抱されていた と見るか」
大臣が表情を困らせて言う
「はい、エドの町やローゼントにて アシル元王子を見た者は皆一様に 泥酔していた様子であったと言いますので 現在情報確認に時間を有しております」
ロキが表情を渋らせて言う
「…どちらにしろ 相手はソルベキア …厄介な事になりそうだな」
大臣が表情を渋らせて言う
「はい…」
ロキが頷いてから大臣へ言う
「…分かった また何か情報が入り次第 すぐに俺へ伝えてくれ …油断ならん」
大臣が礼をして言う
「かしこまりました ロキ陛下」
大臣が立ち去る ロキが考える

【 ソルベキア城 地下牢 】

ザッツロードが蹲っている 食事が滑り込まされ声が届く
「夕飯だ」
ザッツロードがはっと顔を上げソルベキア兵を見て言う
「あ、あの… 一つ聞きたい事が」
看守が牢の奥へ向けていた顔をザッツロードへ向ける ザッツロードが言う
「私の現状は 既にローレシアへ伝えられているのでしょうか?」
看守が少し考えてから言う
「…ふん まぁ 今のお前に教えても問題はないか… お前の現状は ローレシアへは伝えられていない ソルベキア国内でも知るものは少ない 何故なら お前があのスファルツ卿と親しい事も ガライナ陛下はご存知だからな …従って スファルツ卿の助けを当てにしても無駄だぞ?」
ザッツロードが苦笑して言う
「そうですか 僕の事はローレシアへは… 有難うございます 安心しました」
看守が疑問して言う
「うん?安心しただと?…スファルツ卿の助けも当てに出来ないと聞いて 何故そう言う?」
ザッツロードが慌てて言う
「ああっ そうですね それは… まぁ残念では有りますが あはっ」
看守が疑問する ザッツロードが苦笑して言う
「私が… ローレシアへ迷惑を掛ける事は もうしたくはないので… 知らされていないと聞いて 安心したんです」
看守が納得してから牢の奥へ向いて言う
「ふむ… …おいっ!起きているのだろう!?夜の分だ!」
看守がペットボトルの水と薬をアシルへ向けて投げる ペットボトルがアシルの背中に当たりアシルが一瞬顔をしかめ視線を看守へ向ける 看守が言う
「さぁ!その薬を こちらへ見える様に飲め!」
ザッツロードが呆気に取られてやり取りを見る 看守が言う
「眠っているフリをしても無駄だ!早く飲め!アシル!」
ザッツロードがシチューを口へ運ぼうとしていた手を止め呆気に取られて言う
「…アシル?」
ザッツロードがアシルへ向く アシルが不満そうに看守へ顔を向ける 看守が苦笑して言う
「ふっ…分かっている これだろう?」
看守が内ポケットから小酒瓶を取り出す アシルが鼻であしらって言う
「同じ手に掛かるとでも思ってやがるのか?ケッ!馬鹿にしやがるな」
看守が苦笑して言う
「はは… そうは思っていない この酒一つで 2度薬を飲ませられたなら十分だ 悪いがそれほど高い物ではないからな?」
アシルが看守を見てから苦笑して言う
「今なら安酒でもかまわねぇぜ?」
アシルが身を起こし看守を見る 看守が微笑して酒瓶を檻の中へ差し出す アシルが微笑して立ち上がり酒瓶へ手を伸ばす 看守が酒瓶を引っ込めて言う
「おっと 薬が先だ」
アシルがムッとして看守を怪しんで見る 看守が苦笑して言う
「酒だけ奪われ 薬は飲まないと言われては 俺はまた酒を買いに行かねばならんだろう?生憎 ソルベキアの店は夜は開いていないんだ そうなったら 俺は朝までここに泊り込む事になってしまう」
アシルが怪しんで見続けている 看守が表情を困らせて言う
「分かってくれ お前がその薬を飲むのを確認するまで 俺は帰宅を許されんのだ 大切な他国の王子殿に栄養失調で死なれたら 俺は処刑される」
アシルが笑んで言う
「ふんっ 大切な他国の王子殿は そこのローレシアの第二王子殿だろう?…俺は 元王子だ」
看守が苦笑して言う
「第二王子殿も元王子殿も同じだ このソルベキアにとって 大切な鍵だからな?」
ザッツロードが呆気に取られて言う
「彼も…鍵?」
アシルが言う
「お前と一緒にしやがるな 片やセントラルコンピュータを牛耳るソルベキアの鍵 片や… ソルベキアの力に関するかもしれねぇ 訳のワカンネェ鍵 と言いてぇ所だろうが… 端っから 俺は鍵なんかじゃねぇ… だから さっさと殺しやがれ こんな所に閉じ込められて 酒も飲めねぇんじゃ 生きてる意味もねぇ」
看守が笑んで言う
「それはガライナ陛下がお決めになる 訳が分からずとも ソルベキアの力に関する 何らかの鍵になるやもしれんお前を 死なせる訳にはいかんのだ」
アシルが言う
「チィ…ッ だから 何度も言ってんだろぉ!?俺は力を運んだだけで 他には何も知らんと!知ってたとしても 全部酒で吹っ飛んじまったぁ!」
看守が言う
「だからこそ… お前の酒を抜いているんだ そこへ こいつを持って来たことがバレれば俺もまずい だから 早くしてくれ」
看守が周囲を警戒する アシルが一瞬呆気に取られ看守と同じく周囲を見てから看守を見る 看守が酒瓶を上着に隠している アシルが少し考えてから言う
「…なるほど なら」
アシルが薬を取りに戻る ザッツロードが見ている アシルが薬を拾い上げ 外袋を外して薬を手にして看守を見る 看守が見ている アシルが不満そうな表情をした後舌打ちをしてから 薬を口へ放り込み飲み込んで見せる  看守が言う
「水を飲んで見せろ 最低でも200ミリ その瓶の3分の1だ」
アシルが不満そうに言う
「酒を飲む前に 水を飲めってぇのか?」
看守が周囲を見渡す アシルが舌打ちをしてからペットボトルを開け言われた通りに飲んでみせ言う
「これで良いだろう?」
アシルが看守へ近づき手を伸ばす 看守がニヤリと笑んで後方へ下がる アシルが呆気に取られて言う
「…あん?」
看守が笑って言う
「あははははっ!同じ手には掛からないとか 言って置きながら なんと馬鹿な王子殿だぁ!?」
アシルが呆気に取られる 看守が笑んで言う
「おっと 元 王子殿だったかぁ?」
アシルがムッとして檻に掴みかかって叫ぶ
「てめぇええ!」
看守が酒瓶を弄んで言う
「これで次も使えるなぁ?安く上がって本当に助かるぜぇ?それじゃ また明日なぁ?元王子殿?あははははっ!」
看守が立ち去る アシルが怒って叫ぶ
「てめぇええ!覚えてろぉおお!もう二度と飲んでやらねぇえからなぁああ!」
ザッツロードが呆気に取られて見ている アシルがムッとしてザッツロードへ強い視線を向けて言う
「んだぁあ!?」
ザッツロードがぽかーんと言う
「スプローニの民にしては 長身で深緑色の髪で… アルコール中毒」
アシルが衝撃を受け怒って言う
「るせぇえ!誰がアル中だぁあ!?」
ザッツロードがアシルの顔を見て言う
「…言われて見れば 確かに ラグヴェルス前スプローニ国王様に 何処となく似ている …では やはり 貴方はっ」
アシルが反応して顔を逸らして言う
「チィッ…」

【 ソルベキア城下町 スファルツ邸 】

スファルツが操作盤を操作してモニターを見上げて表情を落とす ドアがノックされ べハイムが入って来て言う
「祖父上 どうやら本当に この屋敷は」
スファルツが溜息を吐いて振り返り苦笑して言う
「ええ… 隔離されてしまいましたね」
べハイムが言う
「ソルベキア以外のシステムを使用出来ないかと 有線以外の無線ラインも確認したのですが」
スファルツがモニターを見上げて言う
「私の方でも行いました 通信も唯の音声通信ですら掻き消されます」
べハイムが言う
「ソルベキアは祖父上の行動を抑制し 何かを行うつもりでしょうか?」
スファルツが苦笑して言う
「そうですね… そうかもしれませんし もしかすれば 私をソルベキアの裏切り者として 見放したのかもしれません どちらにしろ 正直 ここまで完全に情報隔離をされるとは… これでは ただの趣味でプログラムを作成し お友達と遊ぶ事すら出来ませんよ」
べハイムが苦笑して言う
「アバロンのデス殿との競争ですね?2nd殿が居られなくなってからは 彼が祖父上の新たな遊び相手になって下されたと」
スファルツが苦笑して言う
「ええ、同じデス殿でも 2nd殿とは異なり 彼はとても真っ向から勝負を仕向ける… とても、アバロンの相棒殿らしいプログラムを お作りになられるお方で… それこそ一挙手一投足に油断ならない このスリルが堪らなかったと言いますのに…っ」
スファルツが嬉しそうに身震いをさせる べハイムが一瞬呆れた後 苦笑して言う
「…何にしても 今はどのようなプログラムも そのデス殿へ送り伝える事も出来ないと… それは同時にあちらから祖父上へ送られる情報も止められる… うん?」
べハイムが考える スファルツが疑問する べハイムが言う
「…と、言う事は 祖父上?デス殿は祖父上からの攻撃プログラムが来ない事を いぶかしまれるのでは?」
スファルツが呆気に取られて言う
「え…?」
べハイムが向き直って言う
「そうはならないでしょうか?祖父上は… それこそ毎日昼夜を問わずデス殿を覗き見て 隙を伺っておられたでは有りませんか?デス殿は勿論そんな祖父上の ストーキング行為には気付かれて居られた筈」
スファルツが衝撃を受け怒って言う
「ス、ストーキング!?べハイム!なんとハシタナイ言葉をっ!お祖父ちゃんはお前を その様な子に育てた覚えはありませんっ!べハイム!今すぐそこにお座りなさい!」
べハイムが無視して考えながら言う
「…そうとなれば あのガルバディアのベネテクト… いえ、ガルバディアの王子殿であるデス殿の事です 祖父上との通信が繋がらない その原因を突き止めようと きっと神の力… ガルバディアの力をフルに使い…」
スファルツが怒って言う
「べハイム!聞いているのですか!?まずはそこへお座りなさい!お話はそれからです!」

【 アバロン城 玉座の間 】

デスが目を開くと周囲にプログラムが大量に発生する 玉座に座ったレクターが笑顔で顔を向けている レクターの前に立っていたオライオンが 第二国王の玉座に座って作業をしているデスを見てからレクターへ向いて言う
「レクター?デスはどうしたんだ?」
レクターが笑顔でオライオンを見て言う
「ああ、何でも 友達からの攻撃が来なくて 寂しくなっちまったから その原因を 本人ではなく その周囲を調べ上げる事で 確認しようとしているらしい」
オライオンが疑問して言う
「はぁ?…何だよそれ?友達が攻撃してこねー原因が知りてーんなら 直接本人に聞けば良いだろ?…てか、大体なんで友達が攻撃して来るんだよ?」
オライオンがデスを見てから 改めて考えて言う
「…いや、それより 端からデスに攻撃するって …そんな命知らずな友達プログラマーなんて居たのか?」
ジークライトがやって来ながら言う
「元々は2nd第二国王の友達だった奴で 2人はプログラムで攻撃し合って 互いの力を高め合っていたらしいぜ?けど、2nd第二国王は居なくなっちまったから 今は代わりにデスが相手をしてるんだって」
オライオンが振り返り一瞬呆気に取られた後 ジークライトが隣にやって来て微笑する オライオンはムッとしてプイッと顔をそらす ジークライトが疑問した後 気付いて言う
「あっ そか …ここはアバロン城の中だもんな えっと… オライオン王子 それから レクター代理陛下 …んと… お話中の所 失礼し」
レクターが笑顔で言う
「いや、城の中でも 普通でかまわねー ヘクターもきっとそう言う …そんな気がする!」
レクターがジークライトへ笑顔を向ける ジークライトが一瞬呆気に取られた後笑んで言う
「へぇ… 流石アバロンの王様と代理王様!庶民的で太っ腹だぜ!」
レクターが笑顔で言う
「そうか!そう言って貰えると 私も!…きっとヘクターも嬉しい!そんな気がする!…しかし」
レクターが自分の腹を擦りながら苦笑笑顔で言う
「そんなに私の腹は出てきただろうか?やっぱりラザイヤの飯が美味すぎるのが問題なのか… それとも 大剣使いを引退しちまったせいか…」
ジークライトが呆れて言う
「あ… いや、そう言う意味じゃ」
デスが視線を強めて言う
「…原因はそれか」
レクターが衝撃を受ける オライオンがはっとして言い掛ける
「何か…」
ジークライトがオライオンの言葉を掻き消してデスに近づいて言う
「デス!何か分かったのか!?」
オライオンが呆気に取られる デスが状況に気付きジークライトを見上げて言う
「ジーク… 来ていたのか 練習マニュアルはどうした?」
ジークライトが表情を困らせ頭を掻きながら言う
「ああ… 勿論一通りやった …んだけどよ…」
デスが苦笑して言う
「私の事なら心配は不要であると伝えただろう?むしろ 危険があるのだとすれば スファルツの方だ 奴の通信履歴が昨日のものから一切が外部へ発信されていない これはすなわち 奴の通信が全て断絶されている事を意味している 従って私はただ… その原因を」
ジークライトが表情を困らせ詰め寄って言う
「けどっ!そのっ …デスの友達をそんな風にしてるって奴の事を デスが調べてるって分かったら そいつは 今度 デスを攻撃して来るかもしれねーじゃねーか!?そんな事になったら!」
デスが苦笑して言う
「ジーク… 例えそうなったとしても 私の力は分かっているだろう?その何者かに 私が負けるなどと言う事は」
ジークライトが表情を悲しめて怒って言う
「それはそうだけどっ!けどっ!もしもって事がっ… そんな時 プログラムで戦う奴が相手じゃ 俺はデスを守れねーんだ!そんな奴とはっ… 俺は やっぱり デスに 関わって欲しくなくて…」
ジークライトが肩の力を落とす デスが呆気に取られた後苦笑してジークライトの頭を撫でて言う
「相変わらずの心配性だな?ジーク」
ジークライトが顔を向けて泣きそうな表情で言う
「相棒を心配したら 駄目なのかよっ!?」
オライオンが驚く デスが苦笑した後顔を横へ振って言う
「…いや、そんな事はない お前の思いは理解している」
ジークライトが表情を和らげて言う
「それなら…」
デスが言う
「…しかし、スファルツは私と共に 2ndの大切な友人だ その彼に何かあったとなれば 私は放っては置けない」
ジークライトが驚き表情を強める デスがジークライトを見て微笑して言う
「だが、今度は お前も共に来てくれるか?ジーク」
ジークライトが呆気に取られて言う
「…え?」
デスが言う
「私一人ではなく お前も… 我ら2人が共に戦うのであれば 不可能はない」
オライオンが反応する ジークライトが表情を困らせて言う
「け、けど…っ 俺はプログラムなんて」
デスが立ち上がる ジークライトが疑問すると デスがジークライトへ向き直って言う
「これから ソルベキアへ向かう」
皆が驚く デスがレクターへ向いて言う
「直接スファルツの邸宅へ向かい 周囲の状況を確認したい お前は」
デスがジークライトへ向いて微笑して言う
「私を守ってくれるのだろう?ソルベキアには 既にソルベキア製ロボット兵の存在も確認されている その町の中を探るとなれば 奴らの襲撃は必須 そして、油断をしていれば 例え私のサポートを受けていたとしても」
ジークライトが拳を手の平で受け止め 気合を入れて言う
「そー言う事なら任せてくれ!遂に実践だな!?ワクワクして来た!」
デスが苦笑して言う
「フッ… ついさっきまで 泣き出しそうな顔をしていた奴が」
ジークライトが嬉しそうに笑んでいる デスがレクターへ向いて言う
「…と、言う事だ レクター」
レクターが落ち込んで言う
「ああ…分かった どんなに美味くともラザイヤの飯は少し控えめにする 大剣使いは引退したが 訓練はもっと…」
デスが疑問して言う
「…は?何を言っている?」
レクターが落ち込み苦笑顔を向けて言う
「私の腹が 太っ腹になってしまった理由は それであると さっきお前が…」
ジークライトが呆れる デスが不満そうに言う
「何の話だ?私はそんな話に口を出した覚えはない …と、それより」
レクターが笑顔で言う
「なんだ!そうだったのか 通りで 出てもいない腹を肯定されたと… いや!分かった!ソルベキアから お前たちの事を何か言われたら… うん!」
レクターがひらめいて言う
「うちの新人大剣使いの 3番隊入隊試験を行わせてもらっていると!」
デスが衝撃を受け呆れて言う
「…何処の国に 自国の入隊試験を 他国の実践で行う国があると言うのだ?そんな厄介な国は… と、そうではない 私がスファルツ卿の家へ遊びに行った所 たまたま ロボット兵の襲撃を受け 致し方なく応戦した とでも」
レクターが照れながら言う
「ああ!そうか!そうだな!たまたまなら しょうがねー それなら 何とか誤魔化せる!きっとそれで大丈夫だ!…そんな気がする!」
レクターが嬉しそうにしている デスが一歩踏み出して言う
「では 行くぞ ジーク …自宅への連絡は?」
ジークライトが笑んで言う
「大丈夫だ 1日2日位戻らなくったって うちは大して驚かねーから」
デスが苦笑して言う
「…そうであっても 本当に良いのか?他国へ向かうのだぞ?」
ジークライトが笑顔で言う
「そうは言っても、デスの移動プログラムなら ひょいっと行って ひょいっと戻れるじゃねーか?アバロン領地内の どっかの町へ向かうより全然早いぜ?」
デスが言う
「…まぁ 確かにそうではあるが」
ジークライトが苦笑して言う
「逆に連絡するほうが驚かれるって さ!早く行こうぜ!?2人のデスの友達の その何とか卿って奴も 早く助けてやらねーと!」
デスが呆気に取られた後笑い出して言う
「ぷっ… はは… 何とか卿か?まるであいつの様だ ますますお前は ヘクターに似ている」
ジークライトが一瞬驚いた後嬉しそうに言う
「お?良ーし!また一つ 俺がヘクター陛下に似てる所発見だな!?」
デスが笑って言う
「ああ、これで 4つ目だ」
デスとジークライトが玉座の間を後にする オライオンが振り返るが 2人は見向く事もなく楽しそうに去って行く オライオンが視線を落とす レクターが苦笑する

【 ガルバディア城 客室 】

金田がベッドの中で目を覚ます 身を起こして周囲を見渡した後 正面を見据えた後意を決して言う
「…よしっ」
金田がベッドから出ようとすると、プログラムが発生してテーブルの上に朝食が現れる 金田が呆気に取られた後 近づいて顔を近づけ不思議そうに言う
「…このテーブル やっぱり 下から料理が出る仕組みでも あんのかなぁ?」
金田がテーブルの下を覗き込む

玉座の間

アバロン直通散歩道が開かれる ヴィクトールが嬉しそうに歩いて来ると 玉座に座っているバーネットに気付き喜んで駆け寄りながら言う
「あ!バーネット!お早う!バーネット!今日もアバロンの朝食は美味しかったよ!?」
バーネットがだるそうに髪を掻き揚げつつ言う
「…あいっかわらず てめぇは… 今日のアバロンの朝食じゃぁなくて アバロンの飯は何でも美味いんだろぉが?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「うん!まぁそうなんだけどね?それでも 一回一回の食事に感謝しなくちゃ!だから 今日の朝食も 美味しかったの!」
バーネットが苦笑する
「ハッ… なるほどねぇ?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「うん!…あ、でもね バーネット?食事は好きな人と取ると もっともっと美味しくなるんだよ?だから」
バーネットがプログラムに気付き 視線を出入り口へ向ける ヴィクトールが話し続けている
「今度はね?その一回一回の食事に バーネットも!」
バーネットが正面を向いて言う
「…よう?どうだぁ?朝飯は美味かったかぁ?」
ヴィクトールが疑問してバーネットの視線の先を見ながら言う
「え?」
金田が歩いて来て言う
「…ん?朝飯…?ああ とっても美味かったよ その点 昨日の夜食は ちょっと味気なかったけど」
金田が近くに来て立ち止まる バーネットが苦笑して言う
「ハッ まぁ そう言いやがるなぁ 普段客なんざ来やがらねぇ このガルバディアに、突然の来客だったんだぁ 用意出来やがったのは このガルバディアで唯一 固形食物を必要とした 非常食の猫の餌なんだよ」
金田が衝撃を受け 表情をしかめて言う
「ね、猫の餌!?…客に猫の餌を出したってぇのか …そりゃ 遭難に近い状態だったから 空腹で何でも食えたけど …だからって 普通 人に猫の…っ」
金田がはっと気付き疑問して言う
「…て、待てよ?猫の餌にしては ちゃんとフォークとナイフの付いた …あれはどう見ても人の食事だった」
ヴィクトールが泣き怒って言う
「酷いよ バーネット!いくら深夜だったからって!僕の非常食を出しちゃったの!?それじゃ!もし急に!本当の非常の時が来ちゃったらどうするのさー!?僕らアバロンの民は お腹が空いてたら戦えないのー!」
バーネットが怒って言う
「るせぇええ!この食いしん坊ヴィクトールがぁあ!…心配しやがらなくとも 新しい非常食を個数増量で追加してやったぜ!畜生がぁ!」
ヴィクトールが呆気に取られた後笑顔で喜んでバーネットにじゃれ付きながら言う
「なんだ… わーい そうなんだ!嬉しい!流石僕のご主人様にゃー!」
バーネットが恥ずかし焦って言う
「ば、馬鹿野郎っ 今は客人の前だってぇえのにっ てめぇは TPOをわきまえやがれってぇんだぁ!」
金田が呆れている

【 アバロン城 情報部 】

ミーナが扉を開けて言う
「ごめんなさーい!バッツさん!やっぱり全国の天候チェックまでは間に合わなくてっ デスさんも昨日から出張中なものだからっ!…あ、あれ?」
ミーナが呆気に取られる ミーナの視線の先 ニーナが振り返り微笑んで言う
「あ、ミーナ!お早うなのー!」
ミーナが呆気に取られたまま部屋へ入って来て言う
「ニーナ?…どうしてニーナがここに?それに…」
ミーナが周囲を見渡しながら言う
「バッツさんや アンドロイドのデスさんは?」
ニーナが笑顔で言う
「ニーナが来た時には バッツさんもアンドロイドさんのデスさんも居なかったのー でも 多分少し前まではいたと思うの ちょっとだけど 2人が居た匂いがするのー」
ニーナが空気中の匂いを嗅ぐ ミーナが呆気に取られた後苦笑して言う
「ニーナ 教えてくれるのは有り難いけど そうやって空気の匂いを嗅ぐのは禁止 犬か何かじゃないんだから」
ニーナが気付き照れ笑いして言う
「えへ… それじゃ 禁止なのー ニーナはワンちゃん大好きだけど ミーナが駄目って言う事はしたくないのー」
ミーナが微笑んで言う
「うん、ニーナは可愛いんだから ワンちゃんの真似は禁止ね?」
ニーナが嬉しそうに言う
「分かったのー」
ミーナが周囲を見渡しながら言う
「けど… 困ったなぁ バッツさん何処に行っちゃったんだろう?アバロン情報部は バッツさんが居ないと何も出来ないのに…」
ニーナが思い出して言う
「あ、そうなの!」
ミーナが疑問して言う
「え?」
ニーナがメモを向けて言う
「この紙からもバッツさんの匂いがしたの ここに置いてあったの ミーナ この紙に何か書いてある?」
ミーナがニーナからメモを受け取りながら言う
「何かの資料じゃないのかな?えっと…」
ミーナがメモを見て衝撃を受ける ニーナが笑顔で首を傾げる

玉座の間

ミーナがニーナの手を引きながら駆け込んで来て言う
「レクター叔父さん!大変ー!」
玉座に笑顔で座っているレクターがミーナへ向いて言う
「うん?どうしたんだ?ミーナ?」
ミーナがレクターへメモを見せて言う
「バッツさんが!」
レクターが首を傾げてメモを受け取って読む
『プリーズ!誰かヘルプミー!俺っち ガルバディアの代理国王様 こと バーネっちの女王様~?に 拉致されちゃいました~!?しかも 折角アバロン情報部~ カッコ 部員2名の キャプテン様~?を預けられてー超安泰ー?とか思ってたのにー!?どっかに誰かをすっ飛ばすから 一緒に手伝って ついでに飛ばされちまいやがれーとかって?そんなのってーありですか~?まじで?これってスーパーデンジャラ―…』
レクターが笑顔でメモを折りたたむ ニーナが首を傾げて言う
「お父さん?ミーナが困ってるの… バッツさんは どうかしちゃったの?」
レクターが笑顔で言う
「いや どうって事ねー バッツスクロイツは…」
レクターが笑顔で満足そうに言う
「神様に選ばれて 楽園へ旅立ったんだ!もしかしたら もう二度と会えねーかもしれねーけど… ニーナもバッツスクロイツの幸福を 一緒に喜んだら良いんだ そんな気が」
ニーナが笑顔で言う
「バッツさん凄いのー!おめでとうございますなのー!」
ミーナが怒って言う
「良い訳ないじゃない!バッツさんはうちの情報部のキャプテンなんだから!勝手に楽園に連れ去られちゃうのは禁止ー!」

【 フェリペウス号 ブリッジ 】

カイザが不満そうに舵へ凭れて居て言う
「…そりゃぁよ~?燃料代はきっちり払ってくれるから そいつは良いとして…」
カイザが窓の外へ向かって叫ぶ
「俺たちは バーネットの旦那の パシリじゃないんですけどー!?」

甲板

ヴィクトールが言う
「それじゃ カネ… 本当に気を付けてね?それから …何があっても 君には ここに 君の事を覚えている僕らが居る 君は決して一人じゃないんだ 君に何か有れば 僕は …僕らは 君を助けるよ!必ず!…君は 僕らの大切な友達だもの!」
金田がヴィクトールを見上げ呆気に取られた状態から微笑して言う
「騎士の兄ちゃん…」
ヴィクトールが苦笑して言う
「ヴィクトールだよ ヴィクトール13世 僕の名前 忘れないでね?カネ?」
金田が苦笑して言う
「金田玉児だ カネって呼んでくれるのも良いけど 本名のほうも覚えておいてくれよな?」
ヴィクトールが微笑して言う
「うん!任せておいて?僕はこう見えても 人の名前を覚えるのは得意なんだ」
金田が苦笑する ヴィクトールが微笑んで言う
「それに 君には」
ヴィクトールが手を払って言う
「優秀勇敢なる 彼ら が同行するんだ!鬼に金棒まで付けたよ!これで絶対大丈夫!安心して相棒を探しておいで!」
ヴィクトールの示した先 バッツスクロイツが泣いて言う
「別大陸のお友達ーの お手伝いーをするために?イキナリ 俺っちたちを 別大陸ーへ 超ぶっ飛ばしちゃうーだなんて~!?まじ 超 有り得ないんですけどー!?」
バッツスクロイツの隣にアンドロイドのデス 少し離れて レビ、チッピィ、ブレードが居て レビが銃倉をセットする バーネットのホログラムが腕組みをしていてニヤリと悪笑んでいる ブレードがアンドロイドのデスを見る バーネットがブレードの様子に気付き笑んで言う
『…ん?はっはー!そいつはなぁ?てめぇの大先輩 初代ガルバディアの騎士様だぁ 最近はちょいと錆び付いちまってるかもしれねぇが 奴はてめぇの何百倍もの時を見てやがる それだけ学べる事も多いだろうぜ?』
ブレードがバーネットを見てからアンドロイドのデスを見て頷く レビが言う
「…行き先は 第5プラント 管理者は 以前の戦いを起こした リジル」
バーネットが言う
『おうよ …でもってぇ そのプラントってぇのは』
バッツスクロイツが視線を強める バーネットが言う
『そのバッツスクロイツの 故郷でもありやがる …おいっ 鈍臭ぇバッツスクロイツ 分かってやがるだろぉなぁ!?』
バッツスクロイツが俯いている バーネットが勘ぐって言う
『今回の任務は… カネダタマジの相棒を捜索するって事だぁ 間違っても…』
バッツスクロイツが拳を握り締める バーネットが静かに言う
『…てめぇの両親や仲間の仇討ちを しようとなんざ 考えやがるんじゃねぇぞ?』
バッツスクロイツが唇をかみ締めた後 ぱっと作り笑顔で バーネットへ振り返って言う
「…そ~んな事ぉ?考えやがるー訳 超ナーシング!相手はプラントの管理者様ー 超神様ー?なのよ?俺っちみたいな超一般人~?が仇討ちーなーんて 出来る訳ナッシングー!」
バーネットが不満そうに言う
『ハッ!…分ってやがるんなら良いが まぁ てめぇには 賢い相棒が付いて居やがる 万が一にも てめぇが勢い付きやがる様な事が有りやがったとしても そいつが冷静に止めてくれやがるだろぉぜ?』
アンドロイドのデスがバーネットを見てからバッツスクロイツを見る バッツスクロイツがアンドロイドのデスを見上げ苦笑して言う
「…うん、お前が 止めてくれるよな?」
アンドロイドのデスがバッツスクロイツを見つめる バッツスクロイツが苦笑してバーネットを見る レビが言う
「…俺たちは?」
バーネットがレビへ向いて言う
『行き先の第5プラント… バッツスクロイツの記憶から 奴らのプラントで動くのに 一番不釣合いにならねぇメンバーを厳選してやったつもりだぁ 奴らの世界には 銃はありやがるが 剣やその類の武器ってぇのはねぇんだ そこへ オライオンやらコイツやらを 送り込んだら 目立っちまうだろぉ?』
バーネットがヴィクトールを示す ヴィクトールが苦笑して言う
「うん、それでも もしバーネットが行くと言うのなら 僕は目立つこの剣を置いてでも バーネットに付いて行くよ?バーネット?」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
『なっ!?てめぇはっ!腐ってもアバロンの大剣使いでやがるだろぉがぁ!?簡単に剣を置くなんて言いやがるんじゃねぇえ!馬鹿野郎ぉお!』
ヴィクトールが衝撃を受け怒って言う
「あー!酷いよバーネット!僕はアバロンの大剣使いで 大剣使いとしてのプライドもしっかりあるけれど!?それらも何を置いたって バーネットの猫である事を選ぶんだよ!?なのに!バーネットはそんな僕を褒めてはくれないのー!?酷いなー!酷いにゃー!僕泣いちゃうにゃー!」
ヴィクトールが大泣きする バーネットが慌てて言う
『ぬぁあ!?ま、待て!分った!俺が悪かったぁ!だから 人前で泣きやがるんじゃねぇえ!ついでに 人前でにゃーにゃーも言いやがるんじゃねぇよっ!馬鹿猫がぁ!』
ヴィクトールが笑顔になって照れる バーネットがほっと一安心する レビが呆気に取られている チッピィが弓矢を握りながら怯えて言う
「ね、ねねねねね ねぇっ!?レ、レビィっ!?ぼ、僕はっ 銃使いじゃないし ガルバディアの騎士たちとも似てないのね!?そ、そんな ぼ、僕が そ、そこのっ プラントになんて行っちゃったら… と、とってもっ め、目立っちゃうのね!?見つかっちゃうのね!?」
レビがチッピィへ向いて言う
「…卿は ここへ残れ」
チッピィが衝撃を受け驚いて言う
「えっ!?」
レビが半身を逸らして言う
「…第5プラントへは ブレードと共に行く」
チッピィが驚きに目を見開きブレードへ向く ブレードが頷く チッピィが表情を困らせ慌てて言う
「で、でもっ!僕もっ 僕だって レビの相棒なのね!それなのにっ ブレードが行くのにね!?僕が 行かないのはっ…」
レビが無意識に義手へ触れて言う
「…卿は先住民族だ 後住民族のイザコザに 卿を巻き込む事は スプローニ国憲法365条19項へも抵触する よって …卿はこの船で陸へ戻れ …もし、道中 あの海賊どもに 襲われる様な事になったら 陸へたどり着くまで ねずみに戻り隠れていろ」
カイザが後ろに居て言う
「あの~聞こえてるんですけどぉ?」
レビが汗を掻く カイザがバーネットのホログラムへ向いて言う
「それはそうと バーネットの旦那?燃料代を払ってくれるのは良いが… それと別に 報酬の方を支払ってくれる 旦那の息子?あのベーネットの王様ねぇ?ベネテクトの人々には ベネテクト王家始まって以来の温厚な王様だって話だが…」

カイザの脳裏で ベーネットが微笑しながらカイザの手に軽く一握り分の財宝を乗せる カイザが表情を困惑させてベーネットを見る ベーネットが恐ろしい形相で凄む カイザが石化する ベーネットの後ろでヴィクトール14世が疑問して首を傾げる

カイザが怯えて叫ぶ
「あの王様!すげードケチで すげー怖ぇえんだけどっ!?何!?あの微笑の仮面に隠された 恐ろしい悪魔は!?」
カイザが思い出した記憶に全身を震わせる バーネットが笑顔で喜んで言う
『はっはー!流石は親父のしごきを受けてやがっただけの事は ありやがるなぁ!?まぁ 俺はその間 夢の世界で大活躍してやがったから 親父がどんな風に3世の奴を鍛えやがったのかは 知らねぇんだがぁ?』
カイザが泣いている レビが眺めている チッピィが表情を困らせている バーネットがアンドロイドのデスを見て言う
『…さて 結界プログラムの調整は済んだぜ 移動プログラムの調整はてめぇに任せる これで2度目 往復分を考えりゃ3度目だろぉ?問題はねぇよな?』
アンドロイドのデスがバーネットへ向いて頷く バーネットがヴィクトールへ合図を送る ヴィクトールが頷きチッピィの手を引き 皆から離れて言う
「皆!十分に気を付けて!それから 必ず 無事に帰って来るんだよ!もし 何か問題が有れば 例えリジルに気付かれようとも こちらへ連絡をするんだ!良いね!?」
金田とバッツスクロイツが微笑して顔を見合わせた後ヴィクトールへ頷く ヴィクトールが微笑して頷く レビがチッピィを見た後目を閉じて無意識に義手を握る チッピィがハッとする アンドロイドのデスが移動プログラムを発生させる 転送組みの周囲に移動プログラムが纏る ヴィクトールが一度バーネットを見てから ピンとひらめき移動組みへ向けて大手を振って言う
「いってらっしゃーい!」
バッツスクロイツが気付き笑んで 大手を振って答えて言う
「いってきま~す!」
チッピィが一度強く目を閉じた後意を決してレビへ向かって走り言う
「レビ!やっぱり僕も!僕も 一緒に行くのねー!」
レビが驚く ヴィクトールが驚き慌てて手を伸ばす
「あっ!」
移動プログラムが強い光を発する チッピィが怯えて強く目を閉じてレビへ向かって手を伸ばしジャンプする レビがチッピィへ向かおうとする ブレードが気付きレビの片腕を掴む レビが驚き慌てて義手をチッピィへ向け伸ばす 移動プログラムが実行される 転送組みとチッピィが消える ヴィクトールが呆気に取られる バーネットが一息吐いて言う
『…よし、今回は あのシリウス国王の奴の 移動プログラムを完全コピーしてやったからな 結界プログラムのフォローも上出来だぜ これなら… うん?どうかしやがったか?ヴィクトール』
ヴィクトールが呆気に取られている カイザが呆気に取られて言う
「…あらら?…大丈夫だったのかねぇ?あの びくびく弓使いさんはよぉ?」
ヴィクトールが心配して言う
「…うん」
バーネットが疑問して言う
『あぁ?』
ヴィクトールが苦笑して言う
「…うん!大丈夫!」
バーネットとカイザが疑問してヴィクトールを見る ヴィクトールが笑顔で言う
「大丈夫だよ!僕のアバロンの力が そう言うんだ!だから 大丈夫!えへっ」
カイザが疑問して言う
「旦那のアバロンの力…?」
バーネットが首を傾げて言う
『…何かありやがったのかぁ?』

【 第5プラント バッツスクロイツの家 地下室 】

暗闇に強い光 移動プログラムが発生すると 移動組みが現れる バッツスクロイツが一歩踏み出し周囲を見渡して言う
「…ここは」
アンドロイドのデスがプログラムを発生させると電気が灯く 周囲の機械が見えるようになる バッツスクロイツがハッとして言う
「地下ラボだ!うちのっ!父さんのっ!」
バッツスクロイツが興奮して周囲を見て言う
「間違いない… 戻って… 戻って来たんだ…っ」
レビが焦って周囲を見渡し その視線がブレードを捕らえて言う
「ブレードっ あいつはっ!?」
ブレードがレビを見た後視線をレビの義手へ向ける レビが呆気に取られ自分の義手の手を見る レビの脳裏に恐ろしさに目を瞑りながら必死に手を伸ばすチッピィの姿が思い出される レビが何も掴んでいない義手を見て 視線を怯えさせる バッツスクロイツが近くの機械を操作して言う
「…うん、ここのシステムは生き残ってる 多分上の機械は使えないだろうから ここのシステムを使って まずは プラントの現状を確認しよう …デス バックアップ 頼む」
アンドロイドのデスが頷く 金田が周囲を見て バッツスクロイツへ向いて言う
「…ここは、アンタの知ってる場所なのか?」
バッツスクロイツがコンピュータを操作しながら笑んで言う
「知ってるーも何も?ここは 俺っちの家だもん 実家よ?…帰って来たんだ… 本当に…っ」
バッツスクロイツが嬉しさを抑えきれない様子でコンピュータの操作を続ける 金田が呆気に取られて言う
「そうなのか へぇ…?」
金田が何ともいえない様子で周囲を見てから レビの様子に気付き疑問して近付きながら言う
「…ん?どうかしたのかい?えっと…銃使いさんだっけ?そう言えば ちゃんと自己紹介してないよな?あの船の甲板で初対面で イキナリここに飛ばされちゃって… えっと 銃使いの兄さん…?」
金田が疑問してレビの顔を覗き込む レビがハッとして義手の袖を見る 義手のある袖から一匹のねずみが怯えながら顔を出す レビが呆気に取られる 金田が気付き衝撃を受け慌てて言う
「なーっ!ね!ねねねねねねねっ ねずみーっ!!」
金田がねずみを指差している レビが呆気に取られつつねずみを目の前に近づけて言う
「… …チッピィ …卿か?」
ねずみがレビへ向いてチュウチュウ鳴く レビがホッと胸を撫で下ろす 金田が泡を吹いて倒れる レビとブレードが疑問する バッツスクロイツが思い出して振り返って言う
「あ、そうそうー!バーネっちから これ 少ないけど食料だって!中身はまだ確認してないんだ 悪いけど 暇なら内容確認ーしといてくれる?ついでにー?人数分でディストロビューションの方もよろしくー!…って そちらの方 どうしちゃった?もしかして 移動プログラム酔いー みたいなー?」
バッツスクロイツが金田を見下ろす
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