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1-11 ローゼント国への福音
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【 カイッズ城 玉座の間 】
アシルが驚いて叫ぶ
「なんだとっ!?それは一体どういう意味だ!?」
玉座に座るファリオルが面倒臭そうな顔をする アシルが一歩踏み出して言う
「お前たちは俺を!天上の神々が遣わした 神の使いだと言っていたではないか!?何時如何なる時も 貴様らは この俺を歓迎すると!だから俺は そんなお前たちへ力を貸してやろうと!」
ファリオルがため息を吐いてから言う
「貴方が我々へ力を貸すではなく 貴方が 我々から力を 借りる の間違いでは?」
アシルが驚いて言う
「何っ!?」
ファリオルが言う
「我らカイッズが 貴方を歓迎すると言ったのは 貴方がスプローニの王子であったからだ アシル殿」
アシルが表情をしかめる ファリオルが苦笑して言う
「スプローニの王位を剥奪され 挙句 国を追われた貴方になど もはや 何の価値もありはしない 王位の無い貴方など… そうだな 言うなれば天を追われた 堕天使か?」
アシルが呆気に取られた後慌てて言う
「堕天使?ま、待て!俺は確かに スプローニの王位は失った だが、俺は!」
ファリオルが言う
「堕天使は不幸の象徴だ どうか 早々に 神々に愛されし このカイッズの国から 立ち去って頂きたい」
フォリオルがカイッズ兵を見る アシルが困惑した後 慌てて言う
「おいっ!待てと言っているだろ!俺は スプローニでもソルベキアでもなく お前たちカイッズへ!」
カイッズ兵がフォリオルへ耳打ちする フォリオルが言う
「む?聖女殿の来国は 明日ではなかったか?」
カイッズ兵が言う
「はい、しかし 聖女様のご希望で一日早めて欲しいと… 街中の歓迎準備もほぼ済んでおりましたので …一応 予定日でお願いしたいとは申し伝えたのですが」
フォリオルが表情をしかめて言う
「ええいっ どうせあの野蛮娘が こちらの事情などお構い無しに勝手をするのだろう…っ 構わん!何か不手際があっても 予定日前だったからだと言い抜けろ!」
カイッズ兵が返事をして立ち去る
「はっ!」
フォリオルがアシルへ向き直り言う
「うん?まだ居たのか?」
アシルが言う
「フォリオル国王!聞け!俺は!」
フォリオルが言う
「アシル殿 生憎 こちらは忙しい 急な来客もある さぁ お引取り願おう」
アシルの両脇にカイッズ兵が現れる アシルが叫ぶ
「後悔するぞ!俺はこの力を 貴様らに貸してやろうとしていたのに!…要らんと言うなら この力は 俺の愛するツヴァイザーへ渡してくれる!良いのか!?止めるなら今の内だぞっ!?」
アシルがカイッズ兵に連れられて行く フォリオルが溜息を吐いて言う
「ふんっ 何が愛するツヴァイザーだ そのツヴァイザーの女王こそ 悔しいが 今この国の力を牛耳っている あの野蛮聖女殿だ」
カイッズ城 門前
アシルが衛兵2人に両脇を抑えられカイッズ城から追い出される アシルが表情を怒らせ衛兵たちの腕を払って言う
「ふんっ 折角 この俺が最小国カイッズへ目を掛けてやったと言うのに!…うん?」
アシルが城下町の賑わいに疑問して言う
「なんだ?確かに今日の城下は カイッズにしては珍しい賑わいを帯びていたが 何やら催しでも…?」
アシルの後方城に備えられた大砲が 祝いの空砲を撃ち鳴らす アシルが驚いて振り返ると カイッズ国城下町の入り口で大きな歓声が上がる アシルが疑問する
城下町 王城通り
リーザロッテが観衆の中で高笑いして言う
「オーホッホッホッホッ!出迎えは要らないと伝えた筈でしたのに こんなに可愛らしい道を作って 待っていて下さったなんて!一体どなたの発案でして!?」
巨人族Aが笑顔で言う
「聖女様がいらっしゃるって聞いて 皆で 町中の女性から案を聞いて回ったんでさぁ!」
巨人族Bが笑顔で言う
「けど おらたちには細けー飾り付けはできねぇーから カイッズの後住民族の人たちに ほとんど作ってもらったんでさぁ!」
周囲に居るカイッズの民たちが笑顔で居る リーザロッテが周囲を見渡してから微笑して言う
「では、巨人族の皆が思案して カイッズの女性が提案して 皆で作って下さったのでしてね!宗教的な事柄や飾りしかなかったカイッズに 素晴らしい風景でしてよ!きっと 天上の神々も 貴方方の一人立ちを喜んで下さっている事でしてよー!オーホッホッホッホッ!」
巨人族やカイッズの民が嬉しそうに笑い合って言う
「聖女様がそう言って下さるなら 天上の神々様も喜んで下さってまさー!」「ああ!俺たちの一人立ちを 喜んで下さってまさー!」
アシルが遠くで驚いて言う
「あれは!ツヴァイザーの眠り姫!?どういう事だ!?いったい何時目を覚ました!?誰が覚まさせたっ!?」
リーザロッテが何やら話して嬉しそうに笑っている アシルが言う
「クッ!ここからでは何を言っているのか聞こえん!」
アシルがリーザロッテを目指して走って行く
リーザロッテが微笑んで周囲を見渡す カイッズ部隊隊長がやって来て言う
「聖女様!遠路遥々 お疲れ様でございました!」
リーザロッテがカイッズ部隊長を見て言う
「いいえ!こちらこそ 予定を早めてしまった事へ 申し訳なく思っていましてよ!フォリオル国王は 明日の方が宜しかったのでしてね?今日はお会いできないと言うのなら 私は構わなくってよ!」
カイッズ部隊長が言う
「いえ!滅相もございません!フォリオル陛下は カイッズ城にて 聖女様をお待ちするとの 言伝を携えて参りました!」
リーザロッテが微笑んで言う
「そう!では 折角時間を作って下さったのでしょうから 早々に向かって差し上げないと!」
巨人族とカイッズの民が残念がって言う
「聖女様ー」「聖女様 もう行ってしまうんですかい!?」「聖女様ー!」
リーザロッテが群集へ向かって言おうとする
「心配はなくってよ皆!私は…!」
リーザロッテの言葉の途中で アシルが人垣を押し退けて現れて言う
「リーザロッテ王女っ!」
リーザロッテが疑問して言葉を止めてアシルを見る 皆の視線がアシルへ向く アシルがリーザロッテへ言う
「リーザロッテ王女 長き眠りから 何時の間に目覚めていたのか!?…いや!一体誰が 貴女を目覚めさせたのか!?」
リーザロッテが疑問する 周囲の人々が疑問して顔を見合わせる リーザロッテが一瞬呆気に取られてから微笑んで言う
「ええ!確かに私は長い眠りに着いていてよ!しかし それはもう 1年以上前までの話でしてよ!」
アシルが呆気に取られて言う
「い、1年!?…そうか 俺が ツヴァイザーにて不当に捕らえられ 更にスプローニで不当な憲法に掛けられ 1年間の幽閉を受けていたあの間に…っ」
リーザロッテが疑問して小首を傾げた後 あっと気付いて言う
「あっ 貴方 そのコートは!貴方はスプローニの方でしてね!?」
アシルがはっとして自分のコートを見て慌てて言う
「うっ いや、これはもう…っ」
リーザロッテは聞いておらず 笑顔で言う
「丁度良くってよ!まさか このカイッズでスプローニの兵と会えるだなんて!今日は嬉しい驚きが沢山でしてねー!」
アシルが驚き慌てて言う
「な!?いやっ!待てっ 俺はもうスプローニには…っ!い、いや そもそも 俺は兵ではっ!」
リーザロッテが聞かずに言う
「貴方も あのロキ国王やロイと同じでしてよね!?スプローニの兵は いつでも自分の国を守ろうと 国へ帰る事ばかり考えているのですもの!きっと私が急ぐより 貴方の方が早くスプローニへ帰り着くはずでしてよ!だったら ロキ国王へ伝えて下さって!?」
アシルが慌てて言う
「だから!俺は…っ!」
リーザロッテが聞かずに言う
「何処よりもシンプルなメッセージと品だったけれど 何処よりも早く 素敵なメッセージと品でしてよ!カイッズを先にした事で当初の予定日には遅れてしまうけれど 急いで貴方方のスプローニへ向かう事に変わりはなくってよ!ロキ国王へ伝えて下さって!?早ければ明後日の午後にでも到着する予定でしてよー!オーホッホッホッ!」
アシルが疑問して言う
「眠り姫がスプローニへ?… そもそも この騒ぎは一体…?」
アシルが辺りを見渡してから改めて言う
「いや、そうではない 聞いてくれ 眠り姫!いや、リーザロッテ王女」
リーザロッテが疑問してアシルを見る アシルが言う
「俺は スプローニの兵ではなく スプローニの王子…」
上空から声が聞こえる
「リーザー!」
リーザロッテへ向かってドラゴンが飛んで来る ドラゴンの背にレリアンが乗っている リーザロッテがレリアンの声に顔を上げ喜んで言う
「レリアン!来て下さったのね!」
アシルが驚いて逃げる アシルの居た場所にレリアンを乗せたドラゴンが降り立ち レリアンが言う
「勿論よ!私の相棒であるリーザロッテの 大切な日とあれば 相棒の私が当然花を添えるべきだわ!」
リーザロッテが笑顔になる アシルが物陰から覗く レリアンが言う
「それで!?今日の主役 お披露目となる 貴女の子は!?」
アシルが呆気に取られて言う
「眠り姫の子だと!?まさかっ!?」
リーザロッテが抱えていたローブを開いて 喜んで言う
「ええ!この子が私とレイトの子!ツヴァイザーの新王女でしてよー!オーホッホッホッ!」
アシルが衝撃を受け叫ぶ
「眠り姫とレイトの子っ!?ツヴァイザーの新王女だとーっ!?」
アシルの周囲にいた人々が疑問してアシルを見る リーザロッテとレリアンたちは聞こえずに喜び合っている アシルが頭を抱えて叫ぶ
「何と言う事だっ!俺がたった1年間の謹慎を食らっている間に 何年も眠っていた眠り姫が目覚め 挙句に子まで産んでいたとはーっ!」
アシルが怒って言う
「相手は一体誰だ!?誰が俺の眠り姫を目覚めさせ!子まで産ませやがった!?…と、待て 確か姫は 私とレイトの子と…っ レイト?この世界中に そんな名の王子など…」
アシルがはっとして思い出して言う
「あいつかーーっ!?」
アシルの脳裏に 眠りに着いているリーザロッテと 兵士部屋で眠りに着いているレイトを指差すツヴァイザー兵が思い出される アシルが言う
「姫と共に 同じく眠りに着いたままとなった ツヴァイザーの一兵士!あいつが!?あいつがーーっ!!」
アシルが怒っている 周囲の人々が顔を見合わせた後 アシルを無視してリーザロッテたちの方を向いて喜ぶ
リーザロッテがレリアンへ言う
「レリアン!私は出来る限り急いでスプローニへ向かって この子をロキ国王へもお見せして差し上げたいの!力を貸して頂けて!?」
レリアンが力強く笑んで言う
「ええ!もちろん!その為に来たのですから 私も竜族の皆も 貴女の喜びを共に喜び この力も共に使うと決めているのよ!」
ドラゴンがひと鳴きする リーザロッテが嬉しそうに言う
「レリアン!皆!」
レリアンが微笑して言う
「さぁ!竜族の皆が 早く貴女と新しい私たちの仲間を 自慢の背に乗せたいと言っているわ!」
ドラゴンたちが上空から飛来する リーザロッテが微笑んで言う
「ええ!私も久しぶりに 早く皆の背に乗って 大空を舞いたくってよ!」
赤ん坊が嬉しそうに手を上げて笑う リーザロッテが一瞬呆気に取られた後 喜んで言う
「この子も乗りたいと喜んでいるわ!こうなったら フォリオル国王へご挨拶している場合では無くってね!」
リーザロッテが周囲を見て言う
「カイッズの皆!私は今日 貴方方へこの子を見せに来たのでしてよ!貴方方の王フォリオル殿にはご挨拶出来ないけれど 貴方方へ私の初娘をお披露目出来て 私は満足でしてよー!」
周囲の人々が喝采を上げる リーザロッテがドラゴンへ向かい ドラゴンがリーザロッテと赤ん坊を背に乗せる ドラゴンが翼を広げてひと鳴きする リーザロッテがはたと気付いて アシルへ向いて言う
「あ、そうだわ!先ほどの!そちらのスプローニ兵の方!」
アシルが気付き 怒って向き直って言う
「だからっ!俺はスプローニの“兵”ではっ!」
リーザロッテが聞かずに言う
「折角お願いを聞いて頂けたのに 今回は ドラゴンたちの力を借りる私たちの方が 貴方より早く 貴方の愛するスプローニ国へ到着してしまいましてよ!ですから 先ほどのお願いは忘れて下さって宜しくってよー!オーホッホッホッホッ!」
アシルが怒って言う
「うるさいっ!頼みを聞いた覚えはないし 叶えてやれるはずもなかったが!今更 忘れられるかっ!」
レリアンがアシルに気付いて言う
「あら?あの方は…」
リーザロッテが喜んで言う
「そう!分かったわ!でしたら!これから向かうスプローニで また貴方にお会い出来る事を 楽しみにしていて差し上げてよー!オーホッホッホッホッ!」
アシルが悔しそうに言う
「どんなに急ごうとも ドラゴンで向かう貴様と会えるかっ!」
リーザロッテがカイッズの皆へ向いて言う
「カイッズの皆!私はいつでもこのカイッズへ来て差し上げてよ!貴方方も是非 ツヴァイザーへ遊びにいらして頂戴!」
カイッズの皆が喜んで手を振って口々に言う
「聖女様ー!」「また来てくだせぇー聖女様ー!」「俺たちも聖女様と王女様にお会いしに行きますー!」
リーザロッテがアシルへ向いて言う
「では、お先に!」
アシルが怒って叫ぶ
「黙れーっ!」
レリアンとリーザロッテが高笑いと共に飛んで行く
「オーホッホッホッホッ!」
アシルが怒りを押し殺した後 肩を落として脱力する 周りが賑わっている
【 上空 】
レリアンが言う
「リーザ 先程の方」
リーザロッテが疑問して言う
「先程の?」
レリアンが言う
「ええ、カイッズの町で 貴方が声を掛けていた スプローニの」
リーザロッテが少し考えてから思い出して言う
「ええ、あのスプローニ兵の!」
レリアンが言う
「あの方、スプローニの元王子アシル殿でしたね?カイッズと由縁の無い スプローニの元王子が カイッズの城下で一体何をされていたのでしょう…?」
リーザロッテが疑問して言う
「スプローニのアシル王子?スプローニの王子様って… 確か私と20歳近く歳の離れた… そう言われて見れば スプローニの方は歳の割りに若く見られがちでしてね?あの方もそう考えれば 丁度その辺りの歳だったのかもしれなくてだわ」
リーザロッテが考える レリアンが言う
「私はアシル王子の顔を知っています あの方で間違いないでしょう その彼へ 貴方は頼みごとをしていたようだけれど?」
リーザロッテが呆気に取られた後 微笑して言う
「ええ!でしたら!結果的には 良かったのでしてね!」
レリアンが疑問して言う
「良かった?」
リーザロッテが言う
「私は知らなかったとは言え スプローニの王子様へ伝言をお願いしてしまう所でしたのよ!それが レリアンと竜族の皆が来て下さったお陰で 私たちの方が早く到着すると分かり お願いを取り消す事が出来たわ!お陰で 私たちのツヴァイザーで無礼を行おうとしたと言う かのスプローニ王子へ この私がお願い事を致さずに済みましたの!」
レリアンが呆気に取られて言う
「アシル王子がツヴァイザーで無礼を?」
リーザロッテが振り向いて言う
「ええ!何でも 私がガルバディア国王の力で眠りに着いている間に ツヴァイザーへ現れ 眠っている私へ何らかの無礼を行おうとしたと」
レリアンが驚いて言う
「眠っている貴方へ!?」
リーザロッテが微笑んで言う
「もちろん!優秀勇敢なるツヴァイザーの兵士たちが守ってくれたお陰で 私は無事で居られましてよ!?でも!万が一その時私を守って下さる 優秀勇敢なるツヴァイザーの兵士たちが居なかったらと思うと… きっと私は この命を奪われていた事でしてよ!」
レリアンが首を傾げて言う
「命を!?…いえ、確か スプローニの王子は 以前から ツヴァイザーと同盟を築こうとしていた と聞いていたのだけれど その彼が 貴女の命を狙っていたと?」
リーザロッテが言う
「私は眠っていたのだから詳しい事は分からなくてよ?でも、ツヴァイザーの皆が 大慌てで彼を抑え 国から追い出したのだと言うのだから きっとそうに違いなくってよ!?」
リーザロッテがプンッと怒る レリアンが納得できない様子を見せながらも言う
「眠りについていた王女の命を狙ったとあっては 国外追放所ではないと思うけれど…」
リーザロッテが笑顔で言う
「さ!そんな事より 今向かうのは ロキ国王の納める 新生スプローニ国!旧スプローニ国の王子様の事なんて もうどうでも良くってよー!オーホッホッホッホッ!」
リーザロッテがドラゴンを駆る レリアンが呆気に取られた後苦笑して言う
「まぁ… それもそうかもしれないわね」
レリアンがリーザロッテを追ってドラゴンを駆る
【 スプローニ城 王の部屋 】
ロキが目を瞑り握っている手に意識を集中する 手の中から光があふれ ロキの足に踏まれている犬のベルグルが光を纏い人の姿になる 光が収まるとロキが目を開いてベルグルを見る ベルグルが立ち上がり体の調子を確認した後 笑顔で言う
「ロキ隊長!有難うございますッス!」
ロキが間を置いてから言う
「…何故 断った?」
ベルグルが疑問して言う
「へ?」
ベルグルが考えた後ひらめいて言う
「ああ!それはもちろん!ロキ隊長の体調が心配だったからッス!でもロキ隊長が俺を踏みつけて 無理やり人の姿にするって事は もう十分元気だって事ッスね!良かったッス!俺安心したッスよー!」
ベルグルの脳裏に 吠える犬のベルグルを踏みつけ無理やり宝玉の光を向けるロキの姿が思い出される 扉の先から兵士の声が聞こえる
「ロキ陛下!ツヴァイザーのリーザロッテ女王と思われる ドラゴンの集団を確認したと 第3監視塔から連絡が入りました!スプローニへのご到着はおよそ26分後との事です!」
ロキが顔を向けて言う
「…分かった 丁重に迎える様 伝えてくれ」
兵士が返事をする
「はっ!」
ロキが一息吐いて宝玉の欠片をコートの内ポケットへしまい 歩き出そうとして立ち止まり 振り返らずに言う
「…それで?」
ベルグルが疑問して言う
「え?それでって…?何ッスか?ロキ隊長?」
ロキが言う
「…何故卿は あいつに… ヴェルに人の姿へしてもらう事を 断った?」
ベルグルが呆気に取られつつ思い出しハッとして困って言う
「あぁ… あれは… その~…」
ロキが腕組みをして言う
「…奴とて 事情はさて置き 遠路ここまで足を運んで来たんだ… 卿の声とて聞きたくもあっただろう 一言二言でも 言葉を交わしたいと …なのに 何故 卿はそれを断った?」
ロキが顔を向ける ベルグルが驚いている状態から表情を困らせ視線を落として言う
「そう…だったッスか ヴェルアロンスライツァー副隊長も俺と話を…?俺… 俺、チョーうれしいッス!今度ヴェルアロンスライツァー副隊長に会った時には ちゃんと謝って いっぱいいっぱい話をするッス!」
ベルグルが笑顔になる ロキが向き直って言う
「…それで?」
ベルグルが驚いて言う
「え?あ… その… あの時は…」
ロキがベルグルの顔を覗き込む ベルグルが汗を掻きつつ視線を泳がせて考えて言う
「えっと… あの時… 俺…」
ベルグルの脳裏に ヴェルアロンスライツァーが自分を人にしようとする姿と その後ろのベッドにしんどそうにしているロキの姿を思い出す ベルグルが考える ロキが疑問する ベルグルが言う
「…分からないッス」
ロキが表情をしかめて言う
「…分からない だと?」
ベルグルが慌てて言う
「お、俺!確かに人の姿になりたいって思ったッス!ヴェルアロンスライツァー副隊長とも やっぱり話をしたかったッス!けどっ けど…っ 分からないッス 俺っ 何でか分からなかったッスけどっ あの時っ …ヴェルアロンスライツァー副隊長に 人の姿にしてもらうのは いけないって 俺 そう思ったッス!」
ベルグルが強く言い切る ロキが呆気に取られた後 間を置いて言う
「…ベルグル」
ベルグルがロキを見上げる ロキが大喜びで言う
「良く言った!ベルグル!…いや!ベルグル第二国王!それでこそ 卿は このスプローニの第二国王だ!」
ベルグルが呆気に取られて言う
「へ?」
ロキが力強く言う
「卿は このスプローニの先住民族の王として!スプローニ国新憲法四万六千八百八十九条一項!正規の相棒以外における 先住民族の人化を禁ず!違反者は 第六級拷問刑に処する!の法を守り 己の欲に流される事無く ヴェルの奴を 違反者とする事から救ったのだな!良いぞ!それでこそ このスプローニの先住民族!そして 友好国ローゼントの王配 ヴェルの仲間だ!」
ベルグルが呆気に取られて言う
「う?う?…え~と… ロキ隊長?俺は そんな 難しい事は分からな…」
ロキが力強く頷いて向きを変えて言う
「俺は知らなかった!卿がそこまで成長していたとは…っ 何も変わった素振りを見せる事の無いまま 卿はそこまで…っ」
ロキがぐっと力を込め目を瞑り俯く ベルグルが呆れの汗を掻きつつ言う
「あ、あの… ロキ隊長?」
ロキが目を開き 気を取り直して言う
「…それはそうと、スプローニ国新憲法四万六千八百八十九条一項には 補足を施さねばならんな 正規の相棒が許可を与えた場合のみ 例外とする と」
ベルグルが呆れて言う
「えっとぉ~ ロキ隊長?その補足は とっても良いと思うッスけど やっぱり俺は…」
ロキが目を閉じて身を翻して言う
「…いや、分かっている 皆まで言うな 卿がそこまで気を引き締めていたのなら 第一国王である俺も 腹を括り スプローニの王として生きる事を 肝に銘じよう …とは言え まさか卿に遅れを取るとはな?俺はもっと早くに …そうだな 彼らよりずっと早くに 巣立たねばならなかったのだな?」
ロキが窓際へ移動する ベルグルが疑問してロキを目で追いながら言う
「へ?巣立つ?ロキ隊長は人ッスよ?巣立つって言うのは確か… ロキ隊長?」
ロキが窓を開け 身を乗り出す ベルグルが驚き慌てて叫んでロキへ向かう
「ロキ隊長!?まさか!またッス!ロキ隊長!駄目ッスよ!ロキ隊長は人ッス!鳥とは違って 空は飛べないッスよ!ロキ隊長ー!」
ロキが窓枠へ足を掛ける ベルグルが慌てて向かう間に体が光り 犬の姿になってロキの服を後ろから噛んで 自分の方へ力一杯引き込む ロキが驚き慌てて言う
「なっ!?何をっ!?のわっ!?」
ベルグルとロキが後ろに倒れる ベルグルが床に倒れるとその上にロキが倒れそうになるが はっとして床へ手を着いて身を横へ逸らして受身を取り床に倒れて言う
「… つぅ~」
ベルグルが身を起こしてロキを覗き込んで吠える
「わんっ!?」『ロキ隊長!?』
ロキが片手を押さえつつ身を起こして怒って言う
「このっ 馬鹿犬がっ!何をする!?」
ベルグルが言葉を受け痛そうな表情をして悲鳴を上げる
「キャンッ!」
ロキが立ち上がりながら言う
「窓の外にでも落ちたら どうするつもりだ!?卿も俺も あいつらとは違って 空を飛ぶ事は出来んのだぞっ!?」
ベルグルが表情を困らせロキを見上げて言う
『だ、だってロキ隊長がッスね… う?…『あいつらとは違って』?』
ベルグルが不思議そうに首をかしげる ロキが怒らせていた表情を和らげ軽く苦笑して ベルグルを抱え上げる ベルグルが驚く ロキが言う
「じっとしていろ」
ベルグルが呆気に取られたままロキを見ていると ロキが窓枠に片足を掛け ベルグルと共に身を乗り出して 窓のすぐ外にある木の枝にある鳥の巣を見せる ベルグルが驚く ロキが言う
「…俺が スプローニの王となり この部屋に住み始めた頃に 彼らもココへやって来て 卵を温め始めた …雨の日も強い風の日も …そして、先日雛が生まれたんだ」
ベルグルが呆気に取られて聞きながら見ている ロキが言う
「…あの雛たちが巣立つ頃には 俺も 銃使いとしての人生に区切りを付け 国王として生きようと その為にも …あいつと 最後の戦いをしようと思っていた」
ベルグルがはっとしてロキを振り返る ロキが苦笑して言う
「…特別な戦いとなるはずだった 俺の最後の スプローニ兵としての戦いに …だが、そんな悠長に考えて居て良い訳がなかった 俺はもう とっくにスプローニの王となっていたんだ 一兵士として戦うなどと 甘い事を願っているべきでは無かった …頭では分かっていたのに …俺の心は …魂は そこまで至ってはいなかったんだ」
ベルグルが瞬きをしてロキを呼ぶ
『ロキ隊長…』
ロキがベルグルの頭に軽く自分の顔を乗せ 苦笑して言う
「ほとほと… 往生際の悪い奴だな 卿の飼い主は?」
ベルグルが頬を赤らめて思う
『ロ、ロキ隊長…っ』
ベルグルが慌てて顔を左右に強く振って ロキへ振り返って吠える
「ワンッ!」『そんな事ないッス!』
ロキが驚く ベルグルが表情を困らせて吠える
「わう~うぅわうっわう~~っ!」『ロキ隊長は 何時だって凄い人ッスよ!カッコイイ人ッス!俺は!何時だってそんなロキ隊長の事!えっと…っ えっと~…っ』
ベルグルが悩む ロキが呆気に取られた後 軽く微笑して鳥たちを眺めた後 言う
「だが、卿のお陰で ようやく決心がついた 往生際の悪い俺にはやはり心残りがあるが それはいずれ… 別の形で晴らせば良い 今ならそう思える 俺は… あの雛たちの巣立ちを 今までとは違う思いで 見守れるだろう」
ベルグルが呆気に取られロキを見る 鳥たちを見守る優しいながらも強い力を帯びたロキの表情に ベルグルが尊敬のまなざしでロキを見て微笑む ロキが微笑してベルグルを見て言う
「だから… いいか?ベル」
ベルグルが一瞬呆気に取られ疑問する ロキが言う
「あの親鳥は勿論 雛たちも… 絶対に」
ベルグルが真剣にロキを見る ロキが言う
「食うなよ?」
ベルグルが衝撃を受け 怒って吠える
「ワンッ!」『食べないッス!』
ロキが表情を困らせて言う
「噛み付くのも駄目だ」
ベルグルが怒って吠える
「ワンッ!」『噛み付かないッス!』
ロキが言う
「…後は 吠えて脅かすのも 無論 悪戯に舐めたりするのも駄目だ」
ベルグルが怒って吠える
「ワンッ!」『しないッス!』
ロキが考えながら言う
「…それから …そうだな 諸卿 犬たちがやりそうな事と言ったら…」
ベルグルが怒って吠える
「ワウッ!ワワンッ!ワン!ワンッ!」『俺はそんな風に 鳥たちをいじめたりはしないッス!酷いッスよー!ロキ隊長ー!』
ロキとベルグルの和やかな後姿がある
【 ソルベキア城 玉座の間 】
ザッツロードが喜んで言う
「オライオン!」
オライオンが呆気に取られて言う
「…あ?」
ザッツロードがオライオンの下へ駆け向かい手を取って言う
「よく来てくれたね!会えて嬉しいよ!あ… えっと ガライナ殿に用だったのかな?」
オライオンが呆気に取られて言う
「ああ… いや ガライナ… と言うより …えっと」
オライオンがザッツロードに掴まれている手を見る ザッツロードがはっとして手を離して苦笑して言う
「あ ごめん… いや、失礼しました オライオン王子 僕は夢の世界で 貴方とも共に 世界の為に戦っていたんです …と言っても あの世界に居た貴方は ヘクター国王の意識が作り上げていた情報だったと聞きましたが」
オライオンが呆気に取られた後苦笑して言う
「…夢の世界 か …いや、良いぜ オライオンで その王子って呼ばれるのは やっぱり好きになれねぇんだよ」
ザッツロードが苦笑して言う
「それじゃ オライオンと呼ばせてもらうよ ありがとう」
オライオンが表情をゆがめて言う
「ありがとうって 大げさだな?」
ザッツロードが苦笑して頭を掻きながら言う
「あは… 大げさ かな?夢の世界では 君に嫌われていたものだから つい…ね」
オライオンが疑問して言う
「嫌われていた?俺が?…あんたを嫌っていたのか?確か 夢の世界のあんたは 世界を救う勇者様 だったんだろ?世界のために戦ってるって そんな奴を 俺は嫌いになんかならねーぜ?」
ザッツロードが表情を困らせて言う
「うん… そう 世界を救う勇者様 だった… けど、最初から与えられていた 勇者様と言う地位を持っていても 僕は何も分からなくて… 結局 何も出来なかったんだ …だから そんな頼りない勇者だった僕は 夢の世界の君に 愛想を尽かされてしまっていたんだよ 後ロスラグ…いや ベルグル殿にも」
オライオンが呆気に取られて言う
「…何も分からなくて 何も出来なかった?」
ザッツロードが頷いて言う
「うん、僕がローレシアの勇者だと言うことは あの世界に浸透してはいたのだけど 僕自身は 何の情報も知らなかったから 世界中を旅して 情報を集めはしたけど… その情報が足りなかったりしたせいで 失敗する事も多くてね 結局 ヘクターやヴィクトール様の方が よっぽど僕より 世界を救う力になった 本当の勇者様になったんだ…」
オライオンが疑問して言う
「…何も知らないんなら 失敗するのは当然だろ?親父やヴィクトール様は ガルバディアの民の相棒なんだ その夢の世界で色々出来るのは当然なんじゃねーのかな?」
ザッツロードが驚き呆気に取られてオライオンを見て言う
「…え?」
オライオンが表情を困らせて言う
「俺だって 王子にされたと思ったら いきなり親父が眠りに着いちまって… ラインツの祖父ちゃんも 王位をすっぽかして消えちまうし 間抜け大剣使いのレクターが代理国王になるから 王子の俺がしっかり支えろとか 急に言われて… それで やろうとは思ったけど あの間抜け大剣使いのレクターは ほんっとに 何考えてっか分かんねーし 俺だって…」
ザッツロードが呆気に取られている オライオンがはっとして言葉を止め 表情を困らせ視線を逸らして言う
「…だから その …お前が 急に勇者にされても 何も出来ねーって言うのは… 分かるぜ…?」
ザッツロードが呆気に取られた状態から微笑して言う
「オライオン… ありがとう」
オライオンが表情を困らせて言う
「うん?…だから!ありがとうって言うなよ!?オライオンで良いし 変な敬語もいらねぇってのが アバロン流だ!」
ザッツロードが苦笑して言う
「いや、そうじゃなくて …僕の事 理解してくれて」
オライオンが呆気に取られる ザッツロードが微笑して言う
「僕にも 分かるよ 急に王子にされてしまったオライオンの気持ち… 君がアバロンを守りたいと思っていても 何をしたら良いのか分からなくて 周りの期待にも答えたいのに 上手く行かなかったりしているんじゃないかな?僕は あの夢の世界でそんな感じだったから… あ、今も同じ…だけど?はは…」
ザッツロードが苦笑する オライオンが呆気に取られた後苦笑して言う
「…なんだ 同じじゃねーか?」
ザッツロードが困り苦笑で言う
「うん 夢の世界でも現実世界でも 駄目だなぁ… 僕って」
オライオンが呆気に取られてから苦笑して言う
「そうじゃねー ”同じだ”って言ったんだ」
ザッツロードが疑問して言う
「え?」
オライオンが親指で自分とザッツロードを示して言う
「俺と お前が だよ」
ザッツロードが呆気に取られた後微笑んで言う
「オライオン… うん!そうだね!同じだ!」
オライオンが笑んで言う
「へへ… 来て良かったぜ バッツに 会って来いって言われた時には 正直気が進まなかったけど …お前とは 仲良くなれそうだ よろしくな?ザッツロード」
ザッツロードが微笑んで言う
「こちらこそ …あ、僕の事は ザッツで良いよ 仲間や親しい人にはそう呼ばれているんだ」
オライオンが軽く頷いて言う
「分かった それじゃぁ ザッツ!何か… 俺に手伝える事があったら いつでも言えよ?…それから、ソルベキアになんか居たら 息も詰まるだろ?いつでもアバロンに遊びに来いよな!?」
オライオンが出口へ向きつつザッツロードを見る ザッツロードが呆気に取られた後 喜んで頷いて言う
「うん!ありがとう オライオン!ソルベキアでの任務がひと段落した際には 君を訪ねにアバロンへ行かせてもらうよ!」
オライオンが軽く笑って言う
「おう!待ってるぜ!」
オライオンが立ち去る ザッツロードが笑顔から微笑して言う
「嬉しいな… あんなに嫌われていたオライオンから アバロンへの招待をもらえるだなんて… この現実世界こそ まるで夢みたいだ」
ザッツロードがオライオンの後姿を見送る
【 アバロン城 玉座の間 】
レクターが笑顔で言う
「皆、良く集まってくれた 約束の今日 この日この時間通りに 皆がちゃんと集まってくれるとは 正直思ってねーで居たんだが… 私は嬉しい!」
ガイが表情を困らせつつ言う
「確かに この日の約束を取り次いだのは 半年以上前と 幾分期間は広くあったが…」
ヴァッガスが言う
「一度皆で決めたんだ!約束を守るのは 仲間として当然だろ?」
ロドウが苦笑笑顔で言う
「でも、ヴァッガスは 危うくスプローニ国に捕まって この日の集まりに来られないかもしれなかったんでしょ?スプローニの第二国王様に助けてもらったから 大丈夫だったんだって 僕のお友達が教えてくれたよ?」
ヴァッガスが衝撃を受ける メテーリが驚き ヴァッガスに詰め寄って叫ぶ
「ちょっと!ヴァッガス!?貴方はスプローニじゃなくて ツヴァイザー担当だったでしょ!?なのに何でスプローニなのよ!?おまけに捕まりそうになったって!?一体何したのよ!?」
ヴァッガスが困り慌てて言う
「ちょっちょっと待てって!俺は別にっ!ってーか 大体何でシュレイザー担当のロドウが スプローニの事まで知ってるんだよ!?それから俺は そんな大した事をしたって訳じゃねーんだぞ!?」
ロドウが笑顔で言う
「何でも スプローニの王様の犬を勝手に人の姿にしてしまったとか それが スプローニの法律ではいけない事だったんだよね?そもそも スプローニの犬は大切な国民だから 飼い主以外の人が 人の姿にするのは違法なんだって!」
メテーリが呆気に取られる ヴァッガスが慌てて怒って言う
「その法律だって!あの時スプローニの第一国王がイキナリ作って それで法律違反だとか言うんだぜ!?オカシイだろ!?…それはそうと ロドウ!?何でお前がそんなに詳しいんだよ!?」
ロドウが笑顔で言う
「シュレイザーの新しい友達に聞いたんだよ 彼らは情報収集が趣味だから!どんな小さな隙間にでも入り込んで 後住民族の人たちの話を一杯集めるんだ!それでツヴァイザー担当のヴァッガスが スプローニに現れたって聞いた時から 僕、ヴァッガスの事で何かあったら教えて欲しいって 頼んでおいたんだ!」
ヴァッガスが怒って言う
「余計な事頼むんじゃねーって!」
ロドウが困り笑顔で言う
「え?そうかなぁ?だって今回の事だって もし本当にヴァッガスが捕まっちゃってたら 僕がガイや皆に伝えて 助けてあげないといけなかったじゃない?」
メテーリが呆れて言う
「そうよ!馬鹿ヴァッガス!ロドウに感謝しなさいよ!」
ヴァッガスが困り怒って言う
「捕まってねーんだから いーじゃねぇーか!?」
ガイが言う
「それはそうと ヴァッガス 貴殿は何故 ツヴァイザーを離れ スプローニへ向かったのか?何か スプローニで思わしくない事でも見受けられたのか?」
ヴァッガスが困りつつ言う
「あぁ~… まぁ なんっつーか ちょっと気になってよ…?」
ガイが疑問して言う
「気になった?それは…?」
ガイの言葉の途中でレクターが苦笑笑顔で言う
「ガイ、ヴァッガス すまねーがその前に」
ガイたちがレクターへ向く レクターが言う
「元々依頼してあった お前たちの担当国の情報を 教えてもらえねーか?こっちも予定通りの時間に情報を送信しねーと ガルバディアの短気な代理国王様が シリウス国王と同じ様に 私を苛めるかもしれねーんだ …ちょっと興味がなくもねーんだが やっぱり 私は 自分が苛められるのは好きになれねー …そんな気がする!」
レクターが笑顔になる ガイたちが呆気に取られ顔を見合わせる
【 ガルバディア城 】
バーネットが目を瞑ってプログラムを行っている ピピッと音が鳴り別のプログラムが入り込んで来る バーネットが疑問して言う
「…うん?あぁ そぉか 今日は奴らからの報告を 確認する日でやがったか… 忙し過ぎてすっかり忘れてやがったぜぇ」
バーネットが目を開くと周囲のプログラムが消える バーネットがふうっと溜息を吐いて玉座へ身を静める ヴィクトールが振り返り心配そうにやって来て言う
「バーネット… 疲れてるんじゃない?無理は良くないよ…」
バーネットが目頭を押さえつつ言う
「あぁ… 正直 疲れるぜぇ… とは言え 今だけはちょいと無理をしなけりゃぁならねぇ時でやがる…」
ヴィクトールが表情を困らせて言う
「この前の カネ何とかを元のプラントへ帰したのが そんなに大変な事になっちゃったの?」
バーネットが言う
「あぁ… 奴を帰すってぇ事より 第6プラントの管理者へ接触した その事の方が面倒を引き起こしてやがる 結界情報をちょいといじった修正が こんなに大変でやがるとはな」
ヴィクトールが疑問して言う
「結界情報…?」
バーネットが言う
「カネダタマジ 奴をただ おっ帰すだけだったなら 良かったんだが… ペテルギウスの奴に もう一人のシノザキカエデってぇ奴の事を確認する予定だった …だからぁ わざわざこっちが防壁を弱めて会話をしてやったんだが 結局そいつの事も分からなかった上に 弱めた防壁からこっちの結界情報を見られっちまった… たくっ お陰で 急いで全体的な結界情報を 変更してやらなけりゃぁならねぇ 苦手だってぇのに…」
ヴィクトールが表情を困らせて言う
「そう… 大変だね バーネット… なのに僕は…」
バーネットが一瞬呆気に取られヴィクトールを見る ヴィクトールが表情を困らせている バーネットが苦笑して言う
「ハッ!馬鹿 てめぇが落ち込みやがってどぉすんだよ!?」
ヴィクトールが困り言う
「うん… だって… 僕は 何も出来なくて 君を助けて上げられないのだもの 僕も… バッツスクロイツやデスたちの様に プログラムが出来たら」
バーネットが言う
「何言ってやがる!?てめぇは俺の猫だろぉ?」
ヴィクトールが疑問して言う
「え?」
バーネットが悪笑んでヴィクトールを見て言う
「猫がプログラムなんざやりやがったら それこそ 恐っかねぇじゃねぇかぁ?」
ヴィクトールが呆気に取られる バーネットが微笑して言う
「シリウス国王の猫と同じだ てめぇも 俺のそばに居れば それだけで十分 力になってやがる 何も出来なくなんざねぇんだよ」
ヴィクトールが呆気に取られてバーネットを見つめる バーネットがはっとして視線を逸らして頬を赤く染めて言う
「だっだだっ だからぁっ! …てめぇは変わりなく そこら辺でにゃーにゃー言ってやがれってぇんだぁっ!余計な心配なんざしやがるんじゃねぇよぉっ 馬鹿野郎ぉ…」
ヴィクトールが呆気に取られて瞬きした後苦笑して思わず笑う
「ふ… ふふふっ…」
バーネットが怒って言う
「わっ 笑いやがるんじゃねぇよ!このクソ忙しい時にっ!てめぇも 同じ緊張感を… いやっ!んなもんは持たなくて良いがぁ… とにかく!黙ってにゃーにゃー言ってやがれってぇんだ!」
バーネットがそっぽを向く ヴィクトールが呆気に取られて言う
「黙ってにゃーにゃーって…?ふふっ」
ヴィクトールが笑顔で言う
「にゃーい!バーネット お仕事頑張ってにゃー!」
ヴィクトールがバーネットにじゃれる バーネットが恥ずかしがって怒って言う
「なぁあ!?ちょっ おいっやめっ やめやがれっ!」
ヴィクトールが笑顔でじゃれ付く バーネットが殴って踏み付ける ヴィクトールが笑顔で苦笑する
【 ローゼント城 沐浴室の前 】
ヴェルアロンスライツァーが跪き頭を下げて言う
「アンネローゼ様 ヴェルアロンスライツァー 只今戻りました」
室内
沐浴中のアンネローゼがはっとしてからホッと肩の力を抜き微笑む
室外
アンネローゼの静かな声が聞こえる
「ヴェルアロンスライツァー お待ちしていました」
ヴェルアロンスライツァーが頭をさらに下げて言う
「はっ!お許しを頂きましたとは言え アンネローゼ様をお守りするべき剣である私が 2日もお傍を離れるとは 真に申し訳ありません」
室内
アンネローゼの体を女中が拭いている アンネローゼが微笑して扉へ顔を向けて言う
「いいえ 正確には1日と半日です スプローニから このローゼントへ戻るには 本来であるなら 最低でも3日はかかる所 良く急ぎ戻ってくれました」
室外
ヴェルアロンスライツァーが僅かに微笑する 沐浴室の中からアンネローゼの声が届く
「…とは言え 今回は その短いとされる1日と半日も 私にはとても長くに感じました 貴方の戻りを 今か今かと待っていたのです …丁度 スプローニからのロキ国王を待っていた 貴方と同じですね?」
ヴェルアロンスライツァーが疑問して顔を上げると同時に 扉が開きアンネローゼが現れる ヴェルアロンスライツァーがはっとして改めて頭を下げる アンネローゼが微笑する
アンネローゼの部屋
アンネローゼが椅子に腰を下ろす ヴェルアロンスライツァーが数歩先の床に跪き頭を下げている アンネローゼが苦笑し女中たちへ手で合図をして下がらせる 女中たちが礼をして立ち去ると アンネローゼが言う
「ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが返事をする
「はっ」
アンネローゼが言う
「…ロキ国王のお加減は如何でしたか?」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「はっ!病状は ただの夏風邪と言った所 宝玉を使おうとした際に 急に力を奪われた為 一時的に意識を失うに至ったと… 医師の診断によりましても 心配はなく 数日休みを取れば 問題ないとの事 当人も 多少熱に伏せてはおりましたが あの様子であれば 翌日にも何事も無かったかの様に 銃を撃ち鳴らしていると思われます… 彼はその様な男ですので」
ヴェルアロンスライツァーが頭を下げたまま我知らず微笑する アンネローゼが間を置いて苦笑してから言う
「…そうですか それは安心しました 夢の世界で ずっとロキ殿と行動を共にして来た貴方が そう仰るのでしたら もう案ずる必要は無い様ですね?」
ヴェルアロンスライツァーが笑んで答える
「はっ!」
アンネローゼが苦笑してから言う
「…所で ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが礼を深くする アンネローゼが言う
「丁度貴方が向かわれていた頃 そのスプローニへ ツヴァイザーのリーザロッテが お邪魔をするという予定でしたが… 今ここに居られる程に急ぎ スプローニを後にしたのでは 接触する事は無かったでしょうか?」
ヴェルアロンスライツァーが軽く驚き 顔を上げて言う
「リーザロッテ女王が スプローニへ?」
アンネローゼが微笑して言う
「はい 我が娘リーザロッテが先日出産を終えた事は ご存知ですね?このローゼントからも 貴方からも 多くの祝いの品を贈って頂きました」
ヴェルアロンスライツァーが頭を下げて言う
「はっ!しかと覚えております!アンネローゼ様の御息女であらされる リーザロッテ女王様の御祝い事!このヴェルアロンスライツァー 我が事以上の喜びと心得 僭越ながら ローゼントの王配として 祝福の品を添えさせて頂きました!」
アンネローゼが微笑して言う
「リーザは一番に このローゼントへ その礼を兼ねての披露目へ参りたいと連絡を遣して来ましたが… 私の独断で 他国を優先させることに致しました 彼女はその際 ローゼントの次に向かうつもりであった スプローニへ伺うと言っていたのです …ですので もし その通りにスプローニへ向かったのでしたら 貴方とも遭遇していたかと」
ヴェルアロンスライツァーが話の途中で意外そうな表情で上げていた顔を はっとさせ 頭を下げて言う
「…はっ …残念ながら リーザロッテ女王様とは お会いするに至りませんでした …しかしリーザロッテ女王様が このローゼントの次に選ばれていたのが スプローニであったとは?ご尊母であらされる アンネローゼ様に次いで 向かうとなれば」
アンネローゼが微笑して言う
「そうとあれば 今の世で 多くの力を持つ国… アバロンやローレシア そして …いえ ツヴァイザーの隣国であり 本当の力を持つ国と言えば やはり ベネテクトを優先するべきでしょうね それなら他の 3大国家とされた国々には 隣国であったが故のと 言い訳も立ちましょう …しかし、彼女は それらの事は考えず 独自の考えによって 優先する国を決めたようです そして、その一番とされた国が スプローニであった事は 意外であったとは言え貴方にとっても… 喜ばしい事でしょう?」
アンネローゼが苦笑する ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られた後 微笑して言う
「はい リーザロッテ女王様は アンネローゼ様同様に 博識聡明なる世界の勇者様であらされます そのリーザロッテ女王様に他国を置いて優先して頂けたとあれば スプローニの王ロキも きっと 光栄に思う事でしょう」
アンネローゼが微笑した後 間を置いてくすくす笑い出す ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られ困り苦笑をして言う
「あ… アンネローゼ様?私は… 何か… 可笑しな事を 申し上げましたでしょうか…?」
アンネローゼが笑いを収めて言う
「ふふふ… いえ、ごめんなさい 何も可笑しな事はありません ただ ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが頭を下げて言う
「はっ!」
アンネローゼが微笑して言う
「貴方は… 本当に 心の奥底から 他者の喜びを 我が事の様に喜び 更には、誇らしくまで思う事が出来るのですね それは 貴方の名がそうさせているのか… それとも ヴェルアロンスライツァーと言う名を与えられた あなた自身が持ち合わせた 心なのでしょうか…?どちらにしても 素敵な事だと私は思います」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られた後慌てて礼をして言う
「は…?はっ!アンネローゼ様より お褒めのお言葉を頂き このヴェルアロンスライツァー 光栄の至り!」
アンネローゼが微笑んで言う
「…しかし、もし その喜びが 本当に貴方自身の身に降り注ぐものであったなら 貴方もきっと他者を喜ぶ それ以上の喜びを 貴方自身が得て下さる事でしょう ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが疑問してアンネローゼを見ている アンネローゼが微笑して言う
「実は…!」
ヴェルアロンスライツァーが驚き目を見開く
【 スプローニ城 ロキの部屋 】
ロキが片手で額を抑えつつベッドに腰を下ろし 疲れた表情で溜息を吐いて言う
「はぁ…」
ベルグルが疑問して言う
「ロキ隊長?疲れてるッスか?やっぱり病み上がりだったからッスか?けど、今日は一日玉座でゆっくりしてたッス ロキ隊長はそんなに疲れるほど 動いてなんかいないッスよ?」
ロキが顔にかかる手の指の隙間からベルグルを見て言う
「…卿は あのキンキン声の高笑いに 疲れはしなかったのか?…人の姿をしていても 嗅覚は勿論 犬の聴覚は健在なのだろう?」
ベルグルが笑顔で言う
「そおッスね!俺は人の姿であっても やっぱり犬ッスから 匂いも音も 後住民族の人たちより いっぱい分かるッスよ!だから…」
ベルグルの脳裏に回想が流れる
回想
玉座の間
玉座に座っているロキへ 入り口の衛兵から声が届く
『ツヴァイザー国女王 リーザロッテ様が ロキ陛下へ』
言葉の途中で リーザロッテの高笑いが響く
『オーホッホッホッホッ!』
ロキが衝撃を受ける ベルグルが笑顔になって言う
『リーザロッテ女王様と レリアン王妃様も居るッス!それから… この匂いは初めて…』
ベルグルが空間の匂いを嗅ぐ リーザロッテが現れ槍で床を突いてから言う
『ええ!その通りでしてよ!ベルグル第二国王!本日参りましたのは 私だけではなくってよ!私の優秀勇敢なる相棒 デネシア王国元女王 レリアンと!そして!』
リーザロッテが片手に抱えているローブを開いて言う
『先日お祝いを頂いた 私の初娘 ツヴァイザーの新たなる王女も一緒に お邪魔させて頂きましてよー!オーホッホッホッホッ!』
赤ん坊が楽しそうに両手を挙げる ロキが表情を引き攣らせつつ言う
『… ああ… 諸卿の来国を 歓迎す…』
リーザロッテが聞いておらずに言う
『とは言え 私も!まさか 私のお礼周りに レリアンや竜族の皆が協力して下さるとは 思いも致しませんでしたの!ですから 予定していた人数を遥かに超えてしまいましてよ!まずは、その事へ対してのお詫びを!』
ロキが言う
『…いや、問題ない 我々も』
リーザロッテが言葉を制して言う
『それでも!スプローニの方々は 私と共に来てくれた その者たちへ対しても 丁重なお持て成しを頂きましたの ですから やはりそちらを先に お礼をいたしましてよ!』
ロキが表情を引き攣らせつつ 間を置いて言う
『… ああ… 礼には及ばない… 確かに デネシアは 俺たちスプローニにとっては 少々厄介な相手では有るが 今回は 貴女とツヴァイザーの 祝福事であると…』
リーザロッテが聞いておらずに言う
『あ!それより先に 主旨を述べるべきでしてね!?ロキ国王!この度は 私の可愛い初娘へ 素敵なメッセージとお祝いの品を頂き とても感謝致しましてよ!私はそれらに心打たれ!このスプローニを第1のお礼周りの国へと決めて差し上げましたの!』
ロキが迷惑そうな表情で言う
『…そうか では スプローニとしても その事へ対して礼を』
リーザロッテが言う
『でも、早速スプローニへ向かおうと馬車を出した途端… ふとこの子が生まれる直前にあったツヴァイザーの危機を救ってくれた カイッズの皆の事が頭に過ぎりましたのよ!巨人族の皆も カイッズ兵の皆も 力及ばぬ相手に命がけで向かい 私たちを守ってくださったわ!…そんな訳で!当初の予定を急変して ついつい カイッズを先に致してしまったの!』
ロキが呆れつつ言う
『…そうか だが俺も… 少々訳有って準備が遅れた だから気にしなくて…』
リーザロッテが聞いておらずに言う
『とは言え そのお陰で!結果として レリアンや竜族の皆とも会えたのでしたから!あの選択は正しかったのでしてね!竜族の皆のお陰で 時間もそれほど掛からなかったですし!だから』
ロキが表情を引き攣らせて言う
『…だから?』
リーザロッテが高々に言う
『私はスプローニへの到着が 当初よりだいぶ遅れた事へ対しては 微塵も詫びる気持ちは無くってよー!?オーホッホッホッホッ!』
ロキが衝撃を受け怒って言う
『ねぇのかよっ!?』
リーザロッテが聞いておらず高笑いを止めて言う
『さて、ここからが本題でしてよ!ロキ国王!スプローニは元々ツヴァイザーの一部隊名であり こちらの大陸へ移り住んだ頃 ツヴァイザーから分離した その部隊と一部の人々によって作られた国である事はご存知でして?』
ロキが視線を強めて言う
『…それが?』
リーザロッテが微笑してロキへ歩みを進める ロキの前方両脇に控えていたスプローニ衛兵2人が気を入れ 上着の内に備えている銃へ手を伸ばす ロキが言う
『…警戒は解け 友好国ツヴァイザーの女王が 生まれて間もない我が子を腕に 他国の王へ 危害を与える事など 無いだろう』
スプローニ衛兵2人が動きを止め 一度ロキへ視線を向けた後 元の位置へ戻る リーザロッテがそこを抜けまっすぐにロキの前まで向かい立ち止まる ロキが視線を向ける リーザロッテが微笑して 槍を左脇に居るスプローニ衛兵へ預ける様に向ける スプローニ衛兵が一瞬驚いた後上着の内へ入れていた手を抜いてそれを受け取る リーザロッテが両手で赤ん坊を抱いて微笑して言う
『ツヴァイザーの古いしきたりにありましてよ ツヴァイザーの国で生を受けた女子は 生後間もなく 一番の力を持った部隊長の腕に抱かれると 以後戦いの道具によって その命が絶たれる事は無いのだ…と』
ロキが驚きリーザロッテを見る リーザロッテが微笑してロキを見て言う
『長きに渡り 決別してしまっていたツヴァイザーの最強部隊 スプローニ部隊の隊長が ツヴァイザーの女王へ信頼の証を返納して下さった この事へ対し 私もツヴァイザーの女王として そして、この子も ツヴァイザーの新たな王女として 貴方方のお気持ちを 受け入れる所存でしてよ!』
ロキが目を細めて言う
『…確かに 古きツヴァイザーの紋章が入った あの盾は返した 俺たちスプローニ国が ツヴァイザーへ向けていた規制も全て解除した …だが それらは 俺たちのスプローニ国を ツヴァイザーの一部とするなどと言う訳では 決してない …俺たちは 俺たちの国で生きる その為に 貴女とも対等に向き合うと言う意思を 表したまでだ』
リーザロッテが笑んで言う
『ええ!勿論 承知していてよ!私はもちろん!今のツヴァイザーの民たちの中に スプローニをツヴァイザーの一部だと思っている者はいらっしゃらなくてよ!』
ロキが言う
『…ならば 俺が貴女の娘を抱く理由は無い …所定の謁見位置まで下がれ』
リーザロッテが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
『私は言った筈でしてよ?ツヴァイザーの女王である私と 王女であるこの子で 貴方方の好意を受け入れる所存であると』
ロキが視線を強める リーザロッテが笑顔で言う
『それとも!華奢な女である私の声は 勇猛なるスプローニ部隊長の耳までは 届かなかったのかしらっ!?オーホッホッホッホッ!』
ロキが頭を抑えつつ怒って言う
『うるさいっ!頭痛の抜け切らん頭に響くほど 十分に聞こえているっ!』
リーザロッテが高笑いを収めて言う
『ロキ国王?私もただ 貴方にのみ好意を強要するつもりは なくってよ?このスプローニ国には たくさんの憲法と共に 古くからの決まり事も多くてね?その中から 私は一番素敵だと思う憲法を見つけて来て差し上げましたの』
ロキが疑問する リーザロッテが高々と言う
『スプローニ国憲法!1286条22項!スプローニ国国王より与えられし名は!その者の生涯に掛けての任務責務と心得え 真っ当に精進するべし!また!その法を犯し者は 第3級実刑に処する!』
ロキと玉座の間に居る全ての者が驚く リーザロッテが言い放つと共に向けていた人差し指をロキへ向けたまま言う
『第3級実刑とは即ち 公開処刑の事でしてね?従って 自らこの法律を実行なさろうとする方は稀ではなくって?だって 大切な生まれて間もない我が子に 自国の王からとは言え こんな難しい生涯責務を頂くだなんて 論外ですもの!…でも それ程のものであるからこそ この憲法は 今の私たちには相応しいものでしてよ!』
ロキが驚いて言う
『…今の俺たちに?…まさか!?』
リーザロッテが赤ん坊をロキへ差し出して言う
『ロキ国王!私の大切な初娘に 素敵な名前を与えて下さって?私は 今日この日のために この子の名前を決めずに居ましたの もう10日になりましてよ?これ以上名前の無いままでは この子も可愛そうでしてよ!』
ロキが呆気に取られている リーザロッテが微笑して差し出している手をもう一度向けて言う
『さぁ!女の細腕に苦労を掛けるだなんて スプローニの隊長… いえ スプローニの王は そんなに非情な方でして?』
ロキが目を細める リーザロッテが僅かに表情を苦しめ 一瞬の後表情をしかめて腕を下ろし掛ける ロキがリーザロッテの腕ごと抱き抑えて言う
『…メル』
リーザロッテが驚いて横のロキへ向く ロキが正面を向いたまま言う
『…メルティーナロッテ』(自らの考えと意思を持つ者)
リーザロッテが驚きの表情のまま止まる ロキがリーザロッテの身を片手で起こす もう片方の手にメルティーナロッテが抱かれている リーザロッテが呆気に取られる ロキが両手でメルティーナロッテを抱いて言う
『…メルティーナは スプローニの言葉 …ロッテは諸卿ツヴァイザーにおいて 意思を持つ者と言う意味なのだろう?…この子が 両国の友好を表すと言うのなら 相応しい筈だ』
ロキがメルティーナロッテをリーザロッテへ向ける メルティーナロッテがロキへ両手を向けて喜ぶ ロキが呆気に取られる リーザロッテが微笑み言う
『メルティーナロッテね!素敵な名前!早速メルも喜んでいましてよー!オーホッホッホッホッ!』
メルティーナロッテが楽しそうに笑う ロキが呆気に取られた状態から苦笑して言う
『…貴女も母親に似そうだな?』
メルティーナロッテが嬉しそうに笑う ロキが苦笑する ベルグルが呆気に取られた状態から 大いに喜んで笑顔になる
回想終了
ベルグルが笑顔で言う
「リーザロッテ女王様も!メルティーナロッテも!とーっても嬉しそうに笑ってたッス!だから そんな2人の声をいーぱい聞けて 俺もチョー嬉しかったッスよー!ロキ隊長ー!」
ロキが疲れた様子で言う
「…喜びの声であっても あの声を多く聞いて嬉しいとは …俺にはやはり耐え切れん …だが あのリーザロッテ女王には驚かされた まさか スプローニの法と流儀を得て その上で我が子である ツヴァイザーの王女へスプローニ国憲法一千二百八十六条二十二項を与えて欲しいなどと言って来るとは」
ベルグルが首を傾げて言う
「う?けど!先にツヴァイザーへ友好の品を贈ったのは ロキ隊長ッスよね!?リーザロッテ女王様は そのお礼に来たッスよ?ロキ隊長は… 最初からこうなるって分かっていたんじゃないッスか?それで あのツヴァイザーの盾を返したんじゃ…?」
ロキが言う
「…強い友好の証になる とまでは思っていた通りだった だが それ以上のものになるとまでは」
ベルグルが笑顔で言う
「きっとリーザロッテ女王様も とーっても嬉しかったんッスよ!これで スプローニとツヴァイザーは チョー仲良しになるッス!」
ロキが苦笑して言う
「…仲良しになる…か」
ベルグルが疑問して言う
「違うんッスか?」
ロキが言う
「…俺たちスプローニの魔法銃使いへ 力を与える魔力者は ローレシアの魔力者だ そして現在 ローレシアの魔力者は デネシアの魔力者に遅れを取り始めている このままローゼント経由の義理で送られる ローレシアの魔力者を使う状態では スプローニの魔法銃使いたちは いずれ デネシア、ベネテクトの魔法傭兵部隊に手も足も出なくなってしまうだろう …だから俺は」
ベルグルが驚いて言う
「まさか!ローレシアの皆を捨てて!デネシアの魔力者をスプローニへ呼ぶんッスか!?ロキ隊長!」
ベルグルが困り怒る ロキが苦笑して言う
「…落ち着け そんな事は考えていない そもそも …現状のこの世界は平和そのものなのだ 常に戦いの中にあった あの夢の世界とは違う」
ベルグルが困って言う
「なら… どう言う事ッスか!?俺にも分かるように 説明して欲しいッス!」
ロキが困り苦笑して言う
「…現状では念の為にと言った所だが ローレシアより力を持つかもしれんデネシアとガルバディアの協力体制 その両国と友好が深い国はベネテクトだが… あのツヴァイザーの女王リーザロッテの相棒だと 高々に言われているのは」
ベルグルが呆気に取られて言う
「デネシアの元女王様でヴィクトール陛下のお妃様!レリアン王妃様ッス!」
ロキが苦笑する ベルグルが言う
「それじゃ!リーザロッテ女王様が レリアン王妃様の相棒だから ロキ隊長は ツヴァイザーと友好を結んだって事ッスか!?」
ロキが微笑して言う
「…そう言う事だ 友好を利用して 他国の脅威に備える …平和な世界においての 実に平和的な策 だろ?」
ベルグルが呆気に取られた後視線をめぐらせて困って考えて言う
「う… うう~?うぇ~と… そ、そうッスね 平和な世界に 平和な方法で… 平和ッスよ…ね?けどぉ~…」
ベルグルが困って言う
「…何だか …卑怯と言うか …なんか~ あんまりカッコ良くないッス…」
ロキが苦笑して言う
「…フッ そうだな…」
ベルグルが困り苦笑する ロキが溜息を吐いて言う
「…今日はもう休む …あの声に疲れた 以後ツヴァイザーとの交渉には リーザロッテ女王ではなく レイト王配をよこす様に頼むとしよう」
ロキが立ち上がり移動する ベルグルが笑顔で言う
「俺は!元気なリーザロッテ女王様は 嫌いじゃないッスよ!?ロキ隊長も!…もう少しは元気な方が良いんじゃないッスか?スプローニの皆もきっと!」
ロキがコートを脱ぎながら軽く振り向いて言う
「…やめてくれ 俺には合わん」
ベルグルが疑問して言う
「そうッスかぁ?けどロキ隊長だって たまに元気になるッスよ?俺は良いと思うッスけど!でも ヴェルアロンスライツァー副隊長にッスね!ロキ隊長が元気になって 悪い言葉を使っちゃう時には注意してくれって 頼まれたッス!だから俺は やっぱり 注意するッスけど!けどッスね!」
ロキが言う
「ベルグル …もう良い 卿の言葉も あのリーザロッテ女王と同等に騒がしい 今日は休ませろ 俺は…」
部屋の通信機が鳴る ロキとベルグルが一瞬驚き通信機を見て ロキが嫌そうに言う
「…まったく」
ベルグルが不思議そうに言う
「こんな時間に誰ッスかね?」
ロキが言う
「王の部屋に 直接通信が繋がるのは スプローニの友好国のみだ そして、この礼儀知らずな時間と考えれば 卿とて分かるだろう」
ベルグルが嬉しそうに言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長ッスか!?」
ロキが不満そうな表情で通信機の前に立って言う
「ふんっ!奴であるなどと!俺は確信して居ないぞ!?ただ このスプローニの友好国は 現在 ローゼントかローレシア そして今日を持って ツヴァイザーが加わった訳だが!ローレシアは勿論!ツヴァイザーとて今日の今夜に無礼を行ったりはしないだろう!?そうとなれば!」
ベルグルが笑顔で言う
「やーぱり!ヴェルアロンスライツァー副隊長ッスー!」
ロキが通信機を着信させつつ嫌そうに言う
「ツヴァイザーと友好を繋いだと聞いてっ わざわざこんな時間に連絡して来たのかっ!?ヴェルア…っ!?」
通信モニターにアンネローゼがドアップに映って叫ぶ
『ヴェルアロンスライツァーの相棒であられる!スプローニのロキ国王殿ーっ!?』
ロキが驚きに呆気に取られて言う
「…なっ?」
通信モニターにアンネローゼが涙ぐみながらに怒って映って叫ぶ
『どうかっ!このヴェルアロンスライツァーの心境を理解して!その上で説得をして頂けましてっ!?不本意ですが!実の妻である私より 相棒の貴方の方が きっとお上手でいらっしゃる事でしてよーっ!?』
ロキが表情を引きつらせて呆気に取られる ベルグルがぽかーんとした後 喜んで言う
「やっぱり凄いッス!カッコイイッスよ ロキ隊長!匂いでも音でも分からない 通信の相手を当てちゃったッス!何でローゼントからの通信でも 相手がヴェルアロンスライツァー副隊長じゃないって事が 分かったんッスか!?ロキ隊長!?」
ロキが呆気に取られた状態から困惑の表情で何とか言う
「…まさか …あのリーザロッテ女王のキンキン声の元凶が アンネローゼ女王だったとは …血は争えんな」
ロキの耳がうるさそうに強調される アンネローゼがロキの言葉を聴かずに言う
『ちょっと!?私の声が 聞こえていらして!?聞こえていらしてね!?』
ロキが呆れて言う
「…あ、ああ 十分に…」
アンネローゼが怒って言う
『では!この分らず屋な ヴェルアロンスライツァーを 宜しくお願いしますわ!ロキ国王!ふんっ』
アンネローゼがぷいっと振り返り 扉を開け部屋を出て 扉を叩き閉めて去って行く ロキがその様子をモニターで眺めつつ呆れ 間を置いて言う
「…… …で?」
ベルグルが疑問する ロキの視線の先 モニターの下隅にヴェルアロンスライツァーが跪いて 小さく映っている
ロキが言う
「…懐妊?…アンネローゼ女王が?…つまり その子は…」
ベルグルが一瞬呆気に取られた後 喜んで言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長!おめでとうございますッスー!」
ロキが からかう様に笑んで言う
「…フッ 王を守る剣として?愛しのアンネローゼ様の王配となってさえ 常に跪き頭を下げている卿が …結局やる事は やっていたのだなぁ?くく…っ」
ロキが笑みを堪える 通信モニターに移るヴェルアロンスライツァーが衝撃を受け 僅かに頬を染めつつ困り怒って言う
『わっ 私とてっ!我が王である アンネローゼ様に!その様な無礼を働く事に な、なろうとは…っ 無論!微塵も思ってなど居なかったのだっ!し、しかし…っ』
ロキが悪笑んで言う
「…ふん?別に良いだろう?公に 正式に 結婚した男女が 今更何を言ってやがる?」
ヴェルアロンスライツァーが怒って叫ぶ
『ロキーっ!貴殿と言う男は!国王となってまで その物言いは何たる事かーっ!言葉の乱れは 風紀の乱れ!修正致すようにと!私は常日頃から幾度も貴殿へ注意勧告をっ!』
ロキが気を取り直し 苦笑して言う
「…どうせ “アンネローゼ様からの御命令” だったのだろう?…だが 王とは言え女性であるアンネローゼ殿へ その様な命令を口にさせたとは …卿の方が よっぽど無礼で問題であると 俺は思うがな?」
ヴェルアロンスライツァーが表情を困らせて言う
『うっ!そ… それは…』
ロキが気を取り直して言う
「…それで?過ぎた事は良いとして あの様子は何事だ?愛しのアンネローゼ様のご命令なら 火の中水の中 それこそ何でもする卿が 一体何を…?」
ヴェルアロンスライツァーが表情を落とす ベルグルが疑問して怒って言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長!?折角アンネローゼ様のお腹に ヴェルアロンスライツァー副隊長の赤ちゃんが宿ったッスのに 嬉しくないんッスか!?こんな時は!やっぱりあのリーザロッテ女王様みたいに いーっぱい 喜んでッスね!…って う?ロキ隊長まで?」
ベルグルが疑問してモニターのヴェルアロンスライツァーとロキを見比べる ロキが思案から間を置いて言う
「…なるほど アンネローゼ殿は 俺よりも年上だ 正確な年齢までは聞き及んでいないが」
ヴェルアロンスライツァーが表情を落とし言う
『ああ… アンネローゼ様は 先日46度目の御祝いを行った所だ …故に私には どうしても』
ロキが目を細めて言う
「…高齢出産 卿は アンネローゼ殿の身を案じ 出産を反対したのだな?」
ベルグルが驚く ヴェルアロンスライツァーが目を閉じて俯く
回想
アンネローゼが怒って言う
『一体どういう事ですっ!?ヴェルアロンスライツァー!』
ヴェルアロンスライツァーが更に頭を下げて言う
『はっ 申し訳ございません…』
アンネローゼが怒って言う
『謝罪の言葉を聞きたいのでは ありませんっ!私は…っ!』
アンネローゼが表情を悲しませヴェルアロンスライツァーを見下ろして言う
『貴方も… 貴方と私の子が宿った この事を… きっと大いに喜んで下さるものだと思って…っ 私は何時この喜びを貴方へ伝えようかと 日々胸を躍らせていましたのに!なのにっ!貴方と言う方はっ!』
ヴェルアロンスライツァーが下げている頭を更に下げて言う
『…申し訳ございません アンネローゼ様 しかしながら… 失礼つかまつれば アンネローゼ様は 恩年46歳と…』
アンネローゼが怒って言う
『それは私自身が十分に分かっております!出産適齢期などは とうに過ぎておりますわっ!しかし!私は何としても この子を!』
アンネローゼが自分の腹に手を当てる ヴェルアロンスライツァーが頭を下げて叫ぶ
『アンネローゼ様!どうかっ!どうか アンネローゼ様は アンネローゼ様の御身を 御自愛下さいませっ このヴェルアロンスライツァー 一生の頼みにございますっ!』
アンネローゼが驚きに目を見開いた後泣き出しそうになるのを必死に堪えて言う
『そこまで… 言うのでしたら…っ』
ヴェルアロンスライツァーがはっとして安堵の表情で顔を上げる アンネローゼが怒って言う
『私はこの事を 貴方の 大好きな スプローニのロキ国王に 言いつけますわっ!』
ヴェルアロンスライツァーが衝撃を受け 慌てて言う
『え!?ア、アンネローゼ様っ!?わ、私がロキを だっ大好きとは…!?い、いえ!そんな事より アンネローゼ様っ!ロキは スプローニの王でございますっ ローゼントの …い、いえ!私どもの私事を 他国の王にっ!?それも この時間ではっ!』
ヴェルアロンスライツァーが一度時計を見てアンネローゼを見る アンネローゼが通信機を操作しながら言う
『知りませんわっ!もうっ!こんな理不尽な事がありましてっ!?』
ヴェルアロンスライツァーが止めようと近寄って来て言う
『アンネローゼ様っ』
アンネローゼが通信機の操作を終え ヴェルアロンスライツァーへ振り返って叫ぶ
『お黙りなさいっ!ヴェルアロンスライツァー!』
ヴェルアロンスライツァーが瞬時に下がり跪いて頭を下げて言う
『ははーっ!』
アンネローゼが通信機へ向く 通信が繋がりモニターにロキが映り ロキが言う
『…ザーと友好を繋いだと聞いてっ わざわざこんな時間に連絡して来たのかっ!?ヴェルア…っ!?』
アンネローゼが怒って言う
『ヴェルアロンスライツァーの相棒であられる!スプローニのロキ国王殿ーっ!?』
ヴェルアロンスライツァーが下げている表情を困らせる
回想終了
ヴェルアロンスライツァーが通信モニターにしがみ付いて言う
『ロキ!このヴェルアロンスライツァー 一生の頼みだ!どうか アンネローゼ様に 御出産をお止めになる様 説得してくれっ!』
ロキが呆れて言う
「…俺はそのアンネローゼ殿に 卿の心境を理解した上で 卿を説得する様にと 頼まれたのだが?」
ヴェルアロンスライツァーが言う
『私の心境を理解した上で アンネローゼ様を説得してくれっ!ロキ!』
ロキが溜息を吐いて言う
「はぁ…」
ヴェルアロンスライツァーが困り果てて言う
『ロキっ!貴殿は 相棒である私の頼みを 聞いてはくれぬのか!?』
ロキが言う
「…卿は何時 相棒である 俺の頼みを聞いたんだ?」
ヴェルアロンスライツァーが衝撃を受け困って言う
『うっ… そ、それは…』
ロキが言う
「…まぁ それは良い 俺が言いたいのは 卿はそれだけ 人の事を聞かず考えず 自分勝手であると言う事だ」
ヴェルアロンスライツァーが心外そうに言う
『私が自分勝手?』
ロキが言う
「…知らなかったのか?ヴェルアロンスライツァー …卿はその名の通り 王を守る事しか考えていない」
ヴェルアロンスライツァーが表情を困らせて言う
『無論っ!そもそも このヴェルアロンスライツァーの名とて 元々は貴殿らのスプローニの法に基づき 与えられしもの!私はその名の通り 王を守り 戦う事を 生涯の責務と全うしているのだ!』
ロキが言う
「…卿が守っているのは その王の 身だけだ」
ヴェルアロンスライツァーが驚き呆気に取られる ロキが言う
「…体さえ無事なら 他は どうでも良いのだろう?…だがそれでは 真に その者を守りきると言う事にはならん …人を守るには 心と体 場合によっては それ以上のものを守らねばならんものだ」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られている ロキが言う
「…更に、卿が守らねばならんのは 王 …王とは ただの器では許されない 己の意思と志 そして その国に住む全ての者を守り 導かねばならん …卿が守るべき対象は それら全てだ」
ベルグルが呆気に取られて見つめる ヴェルアロンスライツァーが視線を落とす ロキが微笑して言う
「…だが ヴェルアロンスライツァーの名を持つ卿であっても やはり それら全ては無理だろう?だから 卿は今まで通り アンネローゼ殿だけを守れば良い それでも ひとつ付け加えるべきなのは」
ヴェルアロンスライツァーが正面を向いて言う
『心… アンネローゼ様の意思と志』
ロキが笑む ヴェルアロンスライツァーが視線を落として言う
『…確かに 私は今まで アンネローゼ様の御心にまで 目を向ける事は出来ていなかった …故に 私はいつも アンネローゼ様の御意思 …御命令を求めていたのだ』
ヴェルアロンスライツァーの脳裏に 過去の出来事が思い出される
バズーカ砲を持った女が苦笑してからアンネローゼへ言う
『なら、バシッと命令してやりな?そうでもしないと、その騎士様は アンタの傍から意地でも離れないんだろ?』
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーへ向く ヴェルアロンスライツァーが苦しそうに立ち上がろうとする アンネローゼが苦笑して言う
『ヴェルアロンスライツァー これは命令です 治療を受け 万全の状態で 戻って来なさい』
ヴェルアロンスライツァーが表情を落として言う
『私はどんな些細な事も… 自身の身の治療でさえ 何もかもを アンネローゼ様へ一任してしまっていた… 私は まったくヴェルアロンスライツァーの責務を遂行してなどは いなかったのだな…』
ロキが苦笑して言う
「…全くとは …そこまで否定する事はないだろう?卿が傍にいて 身の警護をする事であっても」
ヴェルアロンスライツァーが怒り手で台を叩き モニターに詰め寄って言う
『それだけでは足りんのだ!ヴェルアロンスライツァーたるもの!我が王の 身も心も!お守り致さねばならぬっ!』
ロキが苦笑して言う
「…相変わらず単純な奴だ」
ヴェルアロンスライツァーが聞いておらずに身を乗り出して叫ぶ
『ロキ!どうしたら!?…どうしたら私は ヴェルアロンスライツァーとしての責務をまっとう出来るのだ!?このヴェルアロンスライツァー 一生の頼みだ!教えてくれっ!』
ロキが衝撃を受け怒って言う
「卿の一生の頼みは 一体何度あるんだっ!?この唐変木が!」
ヴェルアロンスライツァーが困って言う
『頼む… ロキ この唐変木には 思案する頭もないのだ…』
ロキが立ち上がり慌てて叫ぶ
「唐変木は否定しろっ!」
ロキが腰を下ろし溜息を吐いて言う
「…まったく…っ」
ヴェルアロンスライツァーがモニター越しに困り見つめている ベルグルが心配そうに双方を交互に見る
【 ローゼント城 アンネローゼの部屋 】
ヴェルアロンスライツァーが通信モニターの前で視線を落している 通信機からロキの声が届く
『…女は …賢く、強い』
ヴェルアロンスライツァーが一瞬呆気に取られモニターへ顔を向ける 通信モニターのロキが視線を逸らしながら言う
『…俺の 母親が言っていた言葉だ …だから 甘く見るな と』
ヴェルアロンスライツァーが表情を困らせて言う
「わ… 私は アンネローゼ様を甘く見た事など!」
ロキが言う
『…そういう意味ではない』
ヴェルアロンスライツァーが疑問する ロキが言う
『…卿が アンネローゼ殿の 身や心も守ろうと言うのなら 彼女の真意を問うだけで 良いのではないか?』
ヴェルアロンスライツァーが言う
「真意?…それはっ!聞かずとも分かる!アンネローゼ様は 御出産を望まれている!」
ロキが言う
『…アンネローゼ殿は 俺に言った ヴェルアロンスライツァーの心境を理解して 説得をしろと つまり… 彼女自身は 卿の心境が理解出来ていないと』
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られる ロキが言う
『…高齢出産である事を自覚していたのなら アンネローゼ殿の身を一番に考える卿の反対も 理解出来ていた筈だ だが、それ以上の何かを 彼女は感じていたのだろう?…だから 俺に連絡した …卿の何かを俺に引き出させようと』
ヴェルアロンスライツァーがはっとして視線を落とし 真剣に考える
【 スプローニ城 王の部屋 】
ロキが言う
「…卿の真意を伝えろ …その上で アンネローゼ殿が選んだ決断を 卿は …支えるべきではないのか?ヴェルアロンスライツァー …その名に 従うのならな?」
ヴェルアロンスライツァーが一度目を閉じ ロキへ向いて言う
『…ロキ 有難う 我が相棒 …貴殿は やはり 私の最高の相棒だ』
ロキが苦笑する ヴェルアロンスライツァーが言う
『一晩じっくり考え 明日アンネローゼ様へお伝えする』
ロキが頷く ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
『では …また報告する 夜分遅くに 失敬した お休み ロキ …それから ベルグル』
ベルグルが衝撃を受け慌てて言う
「う?…あっ!お!お休みなさいッス!ヴェルアロンスライツァー副隊長!」
ヴェルアロンスライツァーが軽く笑った後通信を切る ベルグルが嬉しそうな様子で切れた通信モニターを見た後ロキへ向く ロキが静止した後 深く溜息を吐いてベッドに倒れ言う
「はぁー… …寝る」
ベルグルが呆気に取られた後嬉しそうに言う
「ロキ隊長も!お休みなさいッス!」
ロキが眠る ベルグルが衝撃を受け 慌てて駆け寄って言う
「…って ロキ隊長!ちゃんと布団に入って寝ないと また風邪を引いちゃうッスよ!ロキ隊長!?」
ロキが寝息を立てて眠っている
【 エドの町 団子屋店先 】
フォーリエルが宇治金時を食べて言う
「あーん… うん…うん …美味い!」
フォーリエルが顔を向けて嬉しそうに言う
「テス!これ良いぜ!すぐ!すぐ店に出すべきだ!」
テスクローネが微笑して言う
「うん 今年は例年より残暑が残るみたいだから 氷菓子の需要がまだまだあると思う けど、一応残暑だからね 真夏とは少し変えてて ここへこれをを乗せようかと思うんだ どうかな?」
フォーリエルが疑問していると 宇治金時にバニラアイスが添えられる フォーリエルが不思議そうに言う
「この…白いのは?」
テスクローネが微笑して言う
「これはソルベキアで古くから食べられている バニラアイスと言うデザートの一種なんだ ソルベキアではバニラの香りで作られているのだけど エドの町では なじみが無い だから 牛乳の香りのままの方が食べやすいと思う」
テスクローネがフォーリエルを見て微笑む フォーリエルが不思議そうに見てから一口食べ 喜んで言う
「美味いっ!これ… ああー!これだけでも良いし こっちと一緒もっ んぐんぐ…」
フォーリエルが宇治金時を食べる テスクローネが微笑する フォーリエルが全て食べ終えて言う
「あー 美味かった!テス!これ 何て名前にするんだ!?」
テスクローネが軽く笑って言う
「うん… 色々考えはしたんだけど 余りぱっとする名前が浮かばないんだ 氷に抹茶をかけ 小豆とミルクアイスをのせるから… 抹茶あんアイス…かな?」
フォーリエルが表情を悩ませて言う
「う~ん… それじゃぁ 抹茶と小豆の味がするアイスみたいだぜ?」
テスクローネが表情を困らせて言う
「なるほど 言われてみればそうだ それじゃぁ… 抹茶あんアイス氷…?」
フォーリエルが苦笑して言う
「間違ってねーけど …何も名前で材料を全部 説明しなくても良いだろ?もっと…そうだな これを食うと感じる事とか!」
団子屋通り
アシルがイライラしながら歩いて来て独り言を言う
「くそっ!ソルベキアへ行くと言うから選んでやったというのにっ エドの町で一晩泊まるなどとは聞いてなかったっ この町の酒は 米酒ばかりで 俺の口には合わんと言うのにっ!」
アシルが周囲を見渡し テスクローネの団子屋を目に留めて言う
「…うん?団子屋… 確か エド町にある団子屋に ガルバディア級のプログラマーが居ると …ならばっ ソルベキアへの移動プログラムを実行させて!…うん?」
アシルがテスクローネの団子屋へ近づいた所で立ち止まり周囲を見渡し表情をゆがませる アシルの視線の先 団子屋の看板がたくさん見える アシルがガクッと頭を垂れて言う
「…こんなに沢山 …これでは どれがそのプログラマーが居る団子屋なのか 分からんっ!くそっ …団子屋というのは 恐らく隠れ蓑であろうとまでは 考えていたが エドの町において これほど良い隠れ蓑であったとは …無理だ」
アシルがあきらめて言う
「…この量の中を探すぐらいなら 一晩待った方がマシだ …ほとほと ツイてない」
アシルがフォーリエルたちの前を通る フォーリエルが思い付いて言う
「抹茶金時!」
テスクローネがひそかにアシルを見ていて はっとしてフォーリエルへ向いて言う
「…えっ?」
フォーリエルがテスクローネへ向いて嬉しそうに言う
「この小豆と牛乳アイスは絶妙だぜ!どっちも甘いのに この2つの味が合わさった時は すげー美味くなる!この瞬間こそ 黄金の瞬間 金の時だ!って事で 抹茶金時!…どうだ!? 」
テスクローネが呆気に取られた後 笑い出す
「…ぷっ くすくす…っ」
フォーリエルが困り怒って言う
「あ!俺は真剣に言ってんだぞ!?テス!」
テスクローネが軽く笑って言う
「あっはは…っ いや、分かっているよ ただ、フォーリエルは 本当に感性が豊かだな…と 思って はははっ」
フォーリエルがテスクローネに詰め寄って言う
「お前こそ 分かってねーんだよ!この金時の瞬間がっ!」
テスクローネが軽く笑って言う
「はははっ 分かった 分かったよ」
フォーリエルが怒って言う
「嘘付け!」
テスクローネが苦笑して言う
「いや、そうじゃなくて この氷の名前だ 抹茶金時で決まりだ 流石に今すぐは材料が揃わないから 明日から出す事にしよう のぼりを作らないと…」
フォーリエルが張り切って言う
「よし!なら!俺がひとっ走り マサキん家へ行って来るぜ!明日の朝までに作ってくれって!」
テスクローネが表情を困らせて言う
「いくらマサキ殿でも 今からで明日は難しいのでは…?」
フォーリエルが笑顔で言う
「大丈夫だ!任せとけって!あいつにはちょっと貸しがあるんでね~?」
テスクローネが苦笑して言う
「そう… でも、余り無理は言わないで良いからな?フォーリエルは少し強引だから…」
フォーリエルが体を向かわせつつ言う
「心配するなって!それじゃ!詳細は向こうから連絡する!」
フォーリエルが走り去って行く テスクローネが見送っている アシルがテスクローネの店の前を通過した先で独り言を言う
「何がっ金時だっ!クソッ!俺のそんな時は…っ」
アシルの脳裏に リーザロッテが眠りに着いていて その姿を見て衝撃を受け悩むアシルの姿が映る アシルがリーザロッテへキスをしようとして ツヴァイザー兵たちに取り押さえられ追い出される アシルが視線を強めて言う
「ツヴァイザーの眠り姫… 俺が… 俺が目覚めさせる筈だったのにーーっ!くそぉおおーー!」
アシルが近場にあった箱を蹴り飛ばす 箱が奥へ押し込まれるとその上に積み重なっていた多くの箱や空きドラム缶が振って来て激しい音が周囲に鳴り響く 人々が驚き集まって来る アシルが顔を出し 怒って叫ぶ
「ちくしょうがぁああっ!」
周囲の人々が顔を見合わせる テスクローネが遠くで見ていて言う
「…スプローニ国 元王子アシル …うん?この反応は…?」
テスクローネの周囲にプログラムが現れる 遠くからフォーリエルが走って来て叫ぶ
「テスー!大変だーっ!」
フォーリエルがテスクローネの横に来て息を切らせる テスクローネが僅かに驚いて言う
「フォーリエル?どうしたんだ?」
フォーリエルが息を整えながら言う
「はぁっはぁ… お、俺 すっかり忘れちまってたっ!」
テスクローネが疑問して言う
「忘れて?何を?」
フォーリエルが一度深く息を吐いた後表情を困らせてテスクローネを見て言う
「昨日よ!?アバロンに 皆で集まるって日だったよな?俺たちも行かなきゃいけなかっただろ?」
テスクローネが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「あぁ、ははっ 大丈夫だ 私の方から 直接バーネット陛下へ報告をしておいた エドの町に 別大陸の刺客などは 見受けられないとね?昨日フォーリエルにも確認しただろ?」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「…あぁ?…そう言えば?そっかぁ… アバロンで皆と会うって事も 俺、楽しみにしてたんだけどなぁ…」
テスクローネが微笑して言う
「大丈夫 皆 アバロンで報告を終えた後は 現在ペリーテ殿とヴィルシュが収監されている ローゼントへ向かう事になっているんだ しかし、ローゼントは今ソルベキアの件で 警戒態勢だから 皆はこのエドの町へ宿泊する この新作も 実はその為のモノだったんだ」
テスクローネが笑顔になる フォーリエルが呆気に取られた後笑んで言う
「なら 皆に会えるんだな!?」
テスクローネが言う
「ああ、それに ここへ集まるのは アバロンへ集まるメンバーだけじゃない 特にフォーリエルはアバロンへ行く以上に 嬉しい再会になるんじゃないかな?」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「アバロンへ行く以上に?…そっか!何だか分からねーけど そいつは楽しみだぜ!」
フォーリエルが笑顔になる フォーリエルの後方からマサキがやって来て言う
「フォーリエル!酷いじゃないかぁ!呼び出すだけ呼び出して 僕を置いて行っちゃうだなんてー」
フォーリエルが振り返り苦笑して言う
「あぁ 悪ぃ悪ぃ」
テスクローネが苦笑して マサキを迎える
【 ガルバディア城 玉座の間 】
ヴィクトールが顔を出して言う
「バーネットー?」
バーネットが玉座にだらけ 放心している ヴィクトールが困り汗を掻いてから表情を困らせて言う
「バ… バーネット?えっとぉ~ ぼ、僕のご主人様は どうしちゃったのかにゃ~?」
ヴィクトールが恐る恐る近づいてバーネットの顔を覗き込む バーネットが一瞬間を置いた後 瞬時にヴィクトールの首を絞め怒って言う
「ぬぁああ~~っ!くそぉおお!ちくしょうがぁああ!」
ヴィクトールが困り苦しんで言う
「バーネット く、苦しいにゃぁ~~ いぢめないでぇ~」
バーネットが手を離して落ち込む ヴィクトールが苦笑して首を押さえつつ言う
「バーネット…?どうしたの?そんなに… 落ち込んじゃって…」
バーネットがヴィクトールへ顔を向けて言う
「…そう見えやがるかぁ?」
ヴィクトールが言う
「うん… とっても…」
バーネットが落ち込んで言う
「あぁ… 大当たりだぁ」
ヴィクトールが心配そうに言う
「もしかして… バーネットが一生懸命やっていた あの 結界の何とかって言う プログラムだったりして…?」
バーネットがムッとして言う
「てめぇは…」
バーネットの鞭の音が鳴り響く バーネットがヴィクトールを踏み付け鞭を振り上げて叫ぶ
「んな所に!アバロンの力を使いやがるんじゃねぇええ!減っちまうじゃねぇえか!?馬鹿野郎がぁああ!!」
ヴィクトールが困り泣きながら言う
「嫌ぁあ~ バーネット 濡れ衣だよぉ~ だから お願い ちょっとだけだよ!?いくらバーネットが相手でも 僕、激しいのは駄目…っ」
バーネットが恥焦る バーネットの鞭の音が鳴り響く
バーネットが玉座に座っていて鞭を収納しながら言う
「いつも言ってやがるだろぉ 人に勘違いされるような言葉を使うんじゃねぇ…」
ヴィクトールが苦笑顔で尻をさすりながら言う
「結界のプログラム… 失敗しちゃったの?折角 アバロンの皆から 良い報告が聞けたのに バーネット… 僕たちのせい?僕たちが カネダ何とかを帰すために」
バーネットが一息吐いて言う
「そぉじゃねぇよ… 心配しやがるな ハッ!相変わらず てめぇのアバロンの力は 中途半端でやがるなぁ?」
バーネットが悪微笑してヴィクトールを見る ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 涙目になってぐずる バーネットがはっとして 慌てて言う
「…だっ!ま、待てっ!悪かった!今のは 俺が言い過ぎやがった!」
ヴィクトールが涙をぬぐいながら言う
「ぐずっ… それじゃ?」
バーネットが落ち込み苦笑して言う
「それがよぉ… ハッ!情けねぇ話だぜぇ 俺が丸2日 掛かりっきりでやっても さっぱりまったく終わりが見えやがらなかった 膨大な結界プログラムを あっさり… あっさりだ 俺がちょいと居眠りしてやがった間に すっかり 終わらせっちまいやがった… はは… まぁ お陰で 安心も出来やがったがなぁ?」
ヴィクトールが驚き言う
「え?終わらせたって… 一体誰が?」
ヴィクトールが疑問する バーネットが苦笑して言う
「シリウス国王の奴が 俺にこの場を任せて 姿を消しちまった時には 本気で俺に 第二プラントの管理者の地位を 押し付けやがったのかと思ったが… ココまで力の差がありやがるんなら その心配はねぇ!可能性はまったくのゼロだぜぇ」
ヴィクトールが呆気に取られてから少し考えて言う
「それじゃ… バーネットが居眠りしていた間に シリウス国王が プログラムをやってくれたの?」
バーネットが微笑して言う
「ああ… シリウス国王だぁ …ただ、同じシリウスでも もう一人の方でやがるがなぁ?」
ヴィクトールが言う
「もう一人?」
【 旧世界 ガルバディア城 】
シリウスBが目を開く 薄暗い玉座の間 シリウスBが玉座に座っている
闇夜の中にあるガルバディア城の周囲に機械兵たちの光が大量に現れる
【 新世界 ガルバディア城 玉座の間 】
バーネットが言う
「元々 この第二プラントの結界は 向こうのシリウスが担当してやがった だが 旧大陸の処理を一手に引き受けるってぇんで 新旧両大陸を守る結界は こっちで管理する事になりやがった が… それでも やっぱり確認してやがったんだな… まったく 大した奴だぜぇ」
ヴィクトールが言う
「けど、それじゃ 旧大陸の方は大丈夫なのかな?バーネットがあんなに苦労していた処理を 手伝っちゃったりしてたら 向こうは大変な事になっちゃってたりして…?」
バーネットが表情を歪めて言う
「んあ?それは…」
バーネットが考える ヴィクトールが見つめる バーネットが困る ヴィクトールが苦笑して言う
「連絡… してみたら?」
バーネットが衝撃を受け 困って言う
「連絡って てめぇ… んな簡単に」
ガイの声が届く
「是非 お願いしたい!」
ヴィクトールとバーネットが向く 入り口からガイ、ヴァッガス、ロドウ、メテーリが現れ ヴァッガスが言う
「あっちのシリウスB様と連絡が取れるんなら!頼むぜ!?」
ロドウが笑顔で言う
「シリウスB様… お元気なのかなぁ?」
ヴァッガスが苦笑して言う
「まぁ あのシリウスB様が 元気ってぇのも想像付かねぇけどな?」
ロドウが軽く笑って言う
「あははっ そうだね けど…」
ヴァッガスが頷きバーネットへ向いて言う
「ああ!シリウスB様は俺たちの仲間だからな!出来るんだったら 一声でも 一目でも 確認してぇってもんだぜ!」
ガイが頷く バーネットが苦笑して言う
「おいおい シリウスBは 闇の王なんだぜぇ?そうほいほいと 名を呼びやがるんじゃねぇよ?」
メテーリが言う
「そうよ きっとシリウスB様本人だって そう言うでしょ?」
ロドウとヴァッガスが一瞬呆気に取られた後顔を見合わせて苦笑する ガイが微笑してバーネットへ言う
「とは言え われらの神 われらの王である シリウスB様との連絡が 可能であると言うのなら 是非 お願いしたい」
ガイたちがバーネットへ向く バーネットが一瞬間を置いてから言う
「駄目だ」
ガイが苦笑する ロドウが残念そうに表情を落とす ヴァッガスが怒って言う
「っんでだよ!?ケチだな!?」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「ケ、ケチだぁ!?」
ヴァッガスが腕組みをして言う
「ケチだからケチって言ったんだ 間違ってるかよ?」
バーネットが鞭で床を叩き振りかざして言う
「んだと!?てめぇえ!このガルバディアの代理国王である俺様に向かって!ケチとは何だぁあ!」
ヴァッガスが立ち向かって言う
「何処の王だろうが ケチはケチだ!ドケチの国王!…あ 代理国王!」
バーネットが怒って言う
「るせー!いちいち言い直しやがるんじゃねぇえ!畜生がぁああ!」
ヴィクトールがバーネットを抑えて言う
「まぁまぁ バーネット」
ガイがヴァッガスを抑え戻して言う
「ヴァッガス 貴殿も少々言葉をつつしめ 代理とは言え 相手は このガルバディアの代理国王殿だ」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「てめぇも!代理代理言いやがるんじゃねぇええ!俺はベネテクトの第二国王なんだよぉおお!」
ロドウが疑問して言う
「え?ベネテクトの代理国王?」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「違げぇええ!そこは間違いやがるんじゃねぇえ チビ助がぁああ!」
ロドウが泣きながら怒って言う
「あー!酷いっ!僕だって シリウス様のお力を借りれば!巨人族と同じ位 大きくなれるんだよ!」
ロドウがブラッククリスタルを握る メテーリが呆れてロドウを抑えて言う
「はいはい… ちょっとぉ?全然話が進まないじゃない?」
ヴィクトールがバーネットを玉座に静めて言う
「そうだよバーネット これから皆でエドの町へ行くんでしょ?移動プログラムだって作らなきゃいけないって 言って… あれ?言ってなかったっけ?」
ヴィクトールが疑問する バーネットが溜息をついて言う
「…あぁ、言っちゃいねぇが 間違ってもいねぇ …とは言え そいつは わざわざ俺が作る必要はねぇんだ」
ヴィクトールが疑問する バーネットが悪笑んで言う
「そう言う面倒癖ぇ事は 全部 こいつに用意させてありやがるからなぁ?はっはー!」
バーネットが言い終えると共に ホログラムモニターが現れバッツスクロイツが映って言う
『相変わらずっ 超 人使い酷いんですけどー!この人ー!』
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 笑顔で言う
「やあ!久しぶりだね!ルパーん13世!」
バッツスクロイツが衝撃を受け叫ぶ
『そのニックネーム忘れてくんないー!?ヴィクトールっちー!』
バーネットが言う
「おい、んな事より 移動プログラムは出来てやがるだろぉなぁ?クロイ何とか」
バッツスクロイツが怒って言う
『だから!もう!いい加減 夢の世界のニックネームは終了してったら!シリウスっちー!』
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「てめぇえこそ!今そのニックネームで 俺を呼びやがるんじゃねぇ!連中に誤解されやがるじゃねぇか!」
ガイたちが呆気に取られ メテーリがヴァッガスへ向く ヴァッガスがさぁ?と手の平を上げて見せる ヴィクトールが言う
「移動プログラムが アバロンで作られているのなら 皆でアバロンへ行った方が良いのかな?…あ、僕の事はユダって呼ばないでね?」
バーネットが腕組みをしてぷいっと顔を背ける バッツスクロイツが言う
『ノンノン!プログラムは ガルバディアから移動出来るようにしてあるから 問題ナッシングー!…てー それよりも?例のお方の方だけど?本当に良いのかなぁ?バーネっち?』
ヴィクトールが疑問して言う
「例のお方って?」
ヴィクトールがバーネットへ向く バーネットが言う
「ああ、構わねぇ これ以上閉じ込めておいたって 何も変わりやがらねぇだろうからな 残りの人生を 楽しませてやりてぇじゃねぇか …何しろ 一番の関係者である レクターの野郎が許すってぇんだ なら 俺たちが止める理由はねぇよ」
ヴィクトールが疑問してバッツスクロイツへ向く バッツスクロイツが言う
『う~ん… そんなモンなのかなー…?俺っちとしては やっぱちょーっとは リスキーだと思うんですけど?一度は洗脳されちゃったんだし?ホントに良いのかなー?フリーにしちゃって?』
バーネットが言う
「奴は もう一度二度 使おうと思えば使える状態にありやがったんだ それでも使われなかった… なら 使えねぇのか 使う理由がねぇのか …どちらにしても 完全にフリーって訳でもねぇ こっちもそこまで能天気じゃ ありやがらねぇよ?」
バッツスクロイツが呆気に取られて言う
『え?そうなの?じゃぁ バーネっちがこれからも監視するーって事?』
バーネットが言う
「俺じゃねぇ… が、俺よりもっと優秀な奴だ 心配ねぇ… それよりバッツスクロイツ」
バッツスクロイツが疑問して言う
『ん?』
バーネットが怒りの炎を上げながら言う
「これ以上 俺を待たせやがったら…っ!?」
バーネットが鞭を引く バッツスクロイツがおびえながら言う
『きゃー 暴力反対ー!後ちょっとで周囲安定処理が終わるから もうちょっとだけ待ってて!プリーズ~!』
ヴィクトールがバーネットへ言う
「バーネット 僕も皆と一緒に エドの町へ行くんだよね?」
バーネットがヴィクトールへ向いて言う
「んあ?…別に 今回は てめぇが行く必要はありやがらねぇよ あいつらが居やがるんだぁ 現地での物理的処理は 奴らに任せれば問題ねぇ 何か有れば てめぇは俺と一緒に このガルバディアから情報だけで 向かいやがれば良いだろう?」
ヴィクトールが驚き言う
「え!?僕… エドの町に 行かないの…?」
バーネットが疑問して言う
「あぁ?…何だぁ?てめぇが 行かなけりゃならねぇ理由でも 有りやがったのかぁ?」
ヴィクトールが泣きそうな表情で言う
「僕… 折角 現実世界で テス殿の世界一の団子を 食べられると思ったのにぃ~~っ!」
ヴィクトールが涙を流す バーネットが衝撃を受ける バッツスクロイツが言う
『ハァ~イ お待たせー!では エブリワン!?ゴーレッツゴー エドシティー!』
ガイたちの周囲に移動プログラムが発生する ガイたちが移動プログラムへ目を向ける バーネットが怒って言う
「ええい!人前で泣きやがるんじゃねぇえっつってんだろぉ!このっ!泣き虫ヴィクトールがぁあ!んなに 団子が食いたけりゃ てめぇも飛ばされやがれってぇえんだぁあ!」
バーネットがヴィクトールを蹴り飛ばす バーネットの蹴りに強化プログラムが施され ヴィクトールがガイたちの下へ吹っ飛んで行く
「にゃっ!?」
ヴィクトールが悲鳴を上げつつ 移動プログラムの中に落ち ガイたちが驚くと同時に 移動プログラムが実行され皆が消える バーネットが腕組みをして顔を背けて言う
「ふんっ!」
バッツスクロイツが苦笑する
【 エドの町 団子屋店先 】
テスクローネが言う
「ようこそ エドの町へ ガイ隊長並びに 多国籍部隊の皆さん …と バーネット陛下のお猫様」
テスクローネが苦笑する 周囲にガイたちが可笑しな体勢で倒れている フォーリエルが呆気に取られている テスクローネがプログラムを見ながら言う
「どうやら 移動プログラムの途中で 予定外の転送物が増えたお陰で 少々… 着地の方へ その影響が現れてしまった様子ですね?」
フォーリエルがテスクローネへ向いて言う
「予定外の転送物?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「やあ!世界一の団子屋のテス殿!僕はヴィクトール13世!またの名を バーネットの猫!君の団子を食べる為 遥々ガルバディアから 蹴飛ばされて来たよ!」
テスクローネが苦笑して言う
「なるほど… そうでしたか …ふふっ それは光栄です その節は 大変お世話になりました …ユダ様」
ヴィクトールが衝撃を受ける テスクローネが悪笑む
【 ローゼント城 玉座の間 】
ヴェルアロンスライツァーが玉座で居眠りしている そのヴェルアロンスライツァーに毛布を掛けアンネローゼが微笑む エレーナが言う
「きっと 昨夜は一睡もなされずに お考えでいらしたのでしょう」
アンネローゼが苦笑して言う
「ええ きっとそうなのでしょうね… ヴェルアロンスライツァーが私の言葉に 異議を唱える事など 今まで一度もなかったから… でも」
エレーナが苦笑する アンネローゼが苦笑を返してから ヴェルアロンスライツァーを見て言う
「言われて見れば… 今まで 一度も聞いた事がありませんでした 彼のお母様の事」
回想
家臣が紙資料を手に言う
『ヴェルアロンスライツァー殿下のご尊母 アイネフラーソワ様はヴェルアロンスライツァー殿下を45歳の折 高齢出産にてお産みになられ… 残念ながら その時の大量出血が原因で お命を落とされたそうです そして、ヴェルアロンスライツァー殿下のご尊父 ヴェルアロンゲデルフフォルライツァー様は その事に深く心を痛め 結果 生まれたばかりのヴェルアロンスライツァー殿下は アイネフラーソワ様の御親族の方へ 養子に出されたと言う事です』
アンネローゼが驚き視線を落として言う
『そう…だったのですか…』
エレーナが表情を悲しめて言う
『殿下は 姫様のお体の安全を一番に考えられますので きっと姫様が御自分のお母様と同じ境遇になられるのではないかと ご心配なされたのでしょう』
アンネローゼが苦笑して言う
『そうね… 彼の事だから 手放しに喜ぶ事は無いと 思ってはいたけれど そんな理由まであったとは… しかし、私は』
家臣が言う
『アイネフラーソワ様は 高齢出産に加え初産であったとの事です 更に 当時のローゼントは 出産における看護医療なども 他国に大きく後れを取っており その一件を切欠に ハリッグ前国王陛下は 出産における医療の強化を行いました』
エレーナがアンネローゼを見て言う
『近年のローゼントにおいて 出産における母体の安全は 大きく向上しました… 全ては ヴェルアロンスライツァー殿下のご尊母 アイネフラーソワ様と ハリッグ陛下のお陰ですね』
アンネローゼが微笑して言う
『ええ、そして 私は それらの医療と共に 初産でもありません 彼のご両親の事実はあろうとも これらの事をしっかり伝えれば ヴェルアロンスライツァーも考えを変えてくれるかもしれません』
家臣が言う
『では、今一度 殿下へご説得を?』
アンネローゼが言う
『無論です 彼からの了承なくして 国民への伝達は許しません』
家臣が言う
『しかし これ以上は… 既に 城下ではアンネローゼ様のお体の変化に 気付いている者も多くおります』
エレーナが言う
『姫様 余り時間を掛けてしまっては… 万が一の事になりましても 間に合わなくなってしまいますよ?』
アンネローゼが言う
『…十分に安定してからと思っていたけれど やはり もう少し早くに伝えるべきでしたね 分かりました では 本日中にでも もう一度』
伝達兵が言う
『ヴェルアロンスライツァー殿下の御入室です!』
皆が入り口へ目を向ける ヴェルアロンスライツァーが入って来ると 家臣とエレーナが道を開け脇へ控える ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼの前に跪き頭を下げる アンネローゼが苦笑して言葉を待つ ヴェルアロンスライツァーが沈黙する アンネローゼが一瞬疑問した後 苦笑して言い掛ける
『…?お早う御座います ヴェルア…』
ヴェルアロンスライツァーが言葉を制して言う
『アンネローゼ様!どうか… どうか、お聞かせ下さいっ』
アンネローゼが一瞬驚き微笑して言う
『…はい、…何を でしょう?』
ヴェルアロンスライツァーが言う
『…アンネローゼ様の御志 …アンネローゼ様のお気持ちを …どうか 不甲斐ない このヴェルアロンスライツァーへ アンネローゼ様のお言葉にて お聞かせ下さい』
アンネローゼが一瞬呆気に取られた後 気を取り直して言う
『…そうですか 分かりました ヴェルアロンスライツァー』
ヴェルアロンスライツァーが礼を深くする アンネローゼが言う
『私は…』
回想終了
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見る ヴェルアロンスライツァーが寝息を立てながら 夢を見ている
夢の中
アンネローゼが言う
『…私は この子を生む事で このローゼントへ正式な後継者を残そうと思います』
ヴェルアロンスライツァーが驚いて顔を上げる アンネローゼが微笑して言う
『私の娘 リーザロッテは ツヴァイザーの女王として ツヴァイザー国を収める事となりました …貴方も耳にしましたか?あの子は… いえ、彼女は ツヴァイザーと長きに渡り 友好の絶たれていた スプローニ国との友好和平を 築いたそうです 彼女はもう 正真正銘 立派な王です』
ヴェルアロンスライツァーが驚きの表情で言う
『ツヴァイザーと スプローニが… っ!』
ヴェルアロンスライツァーがはっとして 慌てて頭を下げて言う
『はっ!…リーザロッテ女王様は 真素晴らしき女王陛下であらされます 流石は 我が王アンネローゼ様の御息女ならではの御活躍かとっ』
アンネローゼが微笑して言う
『…私以上の活躍です 私は』
ヴェルアロンスライツァーが驚き顔を上げる アンネローゼが苦笑して言う
『私は… このローゼントへの優秀な後継者となる筈だった彼女を ツヴァイザーへ残してしまいました 更には そのリーザロッテが立派なツヴァイザーの後継者を得たと言うのに… ローゼントの民も 私に気遣って口にしませんが 皆 このローゼントの未来を案じている事でしょう』
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られていて 表情を落として言う
『…アンネローゼ様 では』
アンネローゼが苦笑して言う
『ヴェルアロンスライツァー この子は今 私以上に このローゼントに必要な者なのです …分かって …頂けましたか?』
ヴェルアロンスライツァーが視線を下げる アンネローゼが苦笑する ヴェルアロンスライツァーが言う
『…分かりました アンネローゼ様』
アンネローゼがホッとする ヴェルアロンスライツァーが顔を上げて言う
『でしたら 私は!例え このローゼントに楯突いてでも!アンネローゼ様をお守り致します!昨日同様!ご出産には断固反対すると共に!アンネローゼ様の御身と共に その御心を傷つけよう者は このヴェルアロンスライツァーが全力にて!』
ヴェルアロンスライツァーが立ち上がり剣に手を掛ける アンネローゼが驚き 周囲の者が驚き慌てる アンネローゼが慌てて言う
『それではっ 貴方がローゼントをっ …いえ、待って下さいっ ヴェル… ヴェルアロンスライツァーっ!』
ヴェルアロンスライツァーが瞬時に跪いて返事をする
『はっ!』
つかの間の沈黙 アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見る ヴェルアロンスライツァーが真っ直ぐにアンネローゼを見る アンネローゼが苦笑して言う
『今のは …嘘です』
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られて言う
『…は?』
アンネローゼが苦笑して恥ずかしそうに言う
『ごめんなさい リーザの事も… ローゼントのためと言うのも… も、勿論っ 大切な事では有りますが!…ただ …ただ私は … … …欲しいのです』
ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
『…欲しい …とは?』
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見て微笑して言う
『…貴方との 子が』
ヴェルアロンスライツァーが驚く アンネローゼが腹に手を当てて言う
『この子は 貴方と私の子です 私の愛する 貴方との…』
ヴェルアロンスライツァーが顔を赤らめ 慌てて顔を下げる アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見て言う
『だから 私は この子が私のお腹に宿ったと聞いた時 …とても嬉しかった そして 貴方にも …同じ様に 喜んでもらえると』
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られている アンネローゼが苦笑して言う
『しかし、貴方はやはり ヴェルアロンスライツァーの その名を持つ方… そうですよね 貴方は 私やこの子より ”貴方の王である”私を…』
ヴェルアロンスライツァーが驚き目を見開く 脳裏にロキの言葉が蘇る
『…卿が守っているのは その王の 身だけだ…体さえ無事なら 他は どうでも良いのだろう?…だがそれでは 真に その者を守りきると言う事にはならん』
『…人を守るには 心と体 場合によっては それ以上のものを守らねばならんものだ …だが ヴェルアロンスライツァーの名を持つ卿にも その全ては無理だろう?だから 卿は今まで通り アンネローゼ殿だけを守れば良い それでも ひとつ付け加えるべきなのは』
ヴェルアロンスライツァーが下を向いたまま呟く
『心… アンネローゼ様の 意思と志…』
アンネローゼが疑問して言う
『え?何ですか?ヴェルアロンスライツァー?』
ヴェルアロンスライツァーが顔を上げ真剣に言う
『アンネローゼ様 …最後に一つだけ このヴェルアロンスライツァーに お聞かせ下さい』
アンネローゼが一瞬呆気に取られた後 微笑して静かに頷く ヴェルアロンスライツァーが言う
『御出産経験をお持ちの アンネローゼ様であらされても 今回の御出産には 相応のリスクが有ると言う事を ご存知であられると… それでも …ご自身の御身へ危険が及ぶと ご承知の上 …その上でのっ』
アンネローゼが強い意思を持って頷いて言う
『はい』
ヴェルアロンスライツァーが僅かに驚く 脳裏にロキの言葉が蘇る
『…女は …賢く、強い』
『…俺の 母親が言っていた言葉だ …だから 甘く見るな と』
ヴェルアロンスライツァーが一度視線を落とした後苦笑して言う
『…本当に その通りだな』
アンネローゼが疑問して言う
『…ヴェルアロンスライツァー?』
ヴェルアロンスライツァーが一度アンネローゼを見てから言う
『はっ!このヴェルアロンスライツァー アンネローゼ様のご意思と志 しかと伺いました!よって 私はっ』
アンネローゼが息を飲む ヴェルアロンスライツァーが頭を下げて言う
『アンネローゼ様を信じ!及ばずながらも… その ご意思と志を お支え出来る様!全力にて 邁進致す所存にございます!』
アンネローゼが表情をほころばせ 喜んで言う
『ヴェルアロンスライツァーっ!?それではっ!』
ヴェルアロンスライツァーが顔を上げる アンネローゼがヴェルアロンスライツァーに抱き付く ヴェルアロンスライツァーが驚き慌てるが 自身とアンネローゼの身が揺らぐと瞬時にアンネローゼを抱き止め 表情を辱しめつつ慌てて言う
『ア、アンネローゼ様っ』
アンネローゼがホッとして言う
『良かった…っ』
ヴェルアロンスライツァーが驚き視線を落とし僅かに困る 後にはっとして周囲へ視線を向けると 家臣が慌てて顔を逸らし エレーナが微笑む ヴェルアロンスライツァーが慌てて言う
『ア、アアア アンネローゼ様っ こ、この様な 公の場にて アンネローゼ様がっ わ、私めを抱擁致しまするのはっ アンネローゼ様の御名誉に…っ』
ヴェルアロンスライツァーが慌ててアンネローゼの身に回していた腕を退かし アタフタする アンネローゼが笑顔になって ヴェルアロンスライツァーの顔を見て言う
『心配には及びません ヴェルアロンスライツァー 貴方は… このローゼントの王配 私の愛する夫なのですから』
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーにキスをする ヴェルアロンスライツァーが驚き 失神する アンネローゼが呆気に取られてから慌てて呼ぶ
『ヴェ、ヴェルアロンスライツァー!?ヴェルアロンスライツァー!』
エレーナと家臣が呆気に取られる アンネローゼがエレーナへ向いて言う
『エレーナ!?どうしましょう!?ヴェルアロンスライツァーがっ!』
エレーナと家臣が顔を見合わせ笑い始める アンネローゼが困って言う
『エレーナ!?ファリスンも!?2人とも 笑っていないで 何とかなさいっ!』
ヴェルアロンスライツァーが失神している
夢の中 終了
ヴェルアロンスライツァーが寝言を言う
「…アンネ ローゼ 様…」
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見て苦笑して言う
「もう… 困ったお父様ね?貴方のお父様は…」
アンネローゼが腹をかるく撫でる エレーナが笑顔で見守っている 家臣が出入り口から入って来て言う
「アンネローゼ女王陛下 ローゼントの民、並びに 各国へも公式に 陛下のご懐妊を表明致しました 後日 正式に陛下からのお言葉にて 伝えるとも」
アンネローゼが微笑して言う
「ええ、その時は 殿下にも 隣に控えて頂きます」
皆がヴェルアロンスライツァーを見る ヴェルアロンスライツァーが表情をゆがませ寝言を言う
「うん… ロキ… 貴殿の 言う通りであった…」
アンネローゼが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
「うふ…っ そうでした ロキ国王へは 私からご報告とお礼を伝えましょうか?…あ、先日の無礼も謝罪いたしませんと」
アンネローゼが苦笑する
城下町
町中が賑わっている オライオンが周囲を見渡しながら疑問して言う
「あ~?…何だ?昨日出た時は こんなに賑わってなんか …どっちかっつったら ソルベキアとの事にピリピリしてたってのに?」
オライオンが首を傾げてから 一瞬間を置いて言う
「…ま、良いか 今度こそヴェルと会えっかな~?」
オライオンが城を目指して歩いて行く
城下町 門前
門兵たちが疑問して目を凝らす 周囲に移動プログラムが発生して ガイ、ヴァッガス、ロドウ、ヴィクトールが現れる ヴィクトールが笑顔で言う
「流石!ガルバディアの元祖プログラマー!団子屋になっても プログラムの精度はばっちりだね!こんな上品な移動プログラム 僕初めてだよ!てへっ」
ヴィクトールが嬉しそうに頬を赤らめる バーネットがホログラムで現れて言う
『おいっ!この能天気ヴィクトールがぁ!余計な事 言ってやがるんじゃねぇ!でもって 早く城へ向かいやがれ!オライオンの奴が先行しちまってる!』
ガイが一歩前へ出て言う
「では急がねば 我々の役目は オライオン王子が ペリーテ殿へ何らかの事を行わぬ様 見張る事」
メテーリが通信機を手に言う
「だったら!今すぐローゼントの王様に連絡して オライオン王子を止めたら良いんじゃない!?」
ヴァッガスが焦る ヴィクトールが微笑して言う
「大丈夫だよ オライオンはそんなに焦って ペリーテに会うつもりはない筈だ …どっちかっていったら 会いたいけど会いたくない… そんなジレンマの中で 何となく代わりに ヴェルアロンスライツァーに会っちゃったり…とか?そんな感じじゃないかな?…僕そんな気がするよ?」
ヴァッガスが表情をゆがめて言う
「何となく代わりにってよ…?ヴェルアロンスライツァーっつったら この国の王配だろ?何となくなんて 会える相手かよ?」
ホログラムのバーネットが腕組みをして横目にプログラムを見る ヴィクトールが笑顔で言う
「大丈夫 大丈夫!さ、行こう!?」
ヴィクトールが歩き始める ガイたちが顔を見合わせた後慌ててヴィクトールへ続く バーネットが数字の羅列の中に現れた情報に一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
『…ハッ!相変わらず どうでも良い事には 良く働きやがる』
バーネットがホログラムを消す
玉座の間
オライオンが微笑して言う
「聞いたぜ!ヴェルアロンスライツァー王配!アンネローゼ女王と 子供が出来たんだってな!?おめでとう!」
アンネローゼが微笑む ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「ああ ありがとう オライオン王子 貴殿からそう言ってもらえると まるで ヘクターから祝いの言葉を受けている様だ」
オライオンが一瞬驚き視線を逸らす ヴェルアロンスライツァーが気付き疑問して言う
「うん?…すまない …その後も 彼の情報は入っていないのか?」
オライオンが苦笑して言う
「…ああ、デスやガルバディア関係の人たちや バッツも探してくれてるんだけど 相変わらず… ガルバディアの王も 今は代理のバーネット国王になっちまってるし」
オライオンが視線を落とす ヴェルアロンスライツァーが表情を落として言う
「そうか…」
オライオンが沈黙する ヴェルアロンスライツァーが気を取り直して言う
「しかし、ヘクターには 相棒のデスが付いているのだろう?」
オライオンがヴェルアロンスライツァーを見る ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「それならば きっと 彼らは無事だ 例え時間が掛かろうとも 彼らは …必ず戻ってくる」
オライオンが呆気に取られる ヴェルアロンスライツァーが言う
「それまで 貴殿も大変であろうが 己に課せられた使命と期待に報いる様 出来る事を精一杯に邁進すると良いだろう オライオン王子 もし、それに 何らかの力添えが出来ようものなら このヴェルアロンスライツァーは いつでも貴殿に協力する事を約束する ローゼントの王配としてだけではなく …貴殿の仲間として」
オライオンが呆気に取られて言う
「…え?」
ヴェルアロンスライツァーが疑問した後 気付き苦笑して言う
「ああ、すまない 貴殿は あの夢の世界に存在していたのだが あれは貴殿自身の意識ではなかったとの事であったな …それでも 貴殿と我らは あの世界にて共に戦っていた 故に この現実へ目覚めた今になっても 貴殿の事は 大切な仲間の一人だと意識してしまうのだ」
オライオンが苦笑して言う
「そっか… 有難う ヴェルアロンスライツァー王配… いや!ヴェル!俺も…っ やっぱ 夢の世界に行きたかったぜ」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「フッ… 貴殿があの世界へ送られなかったというのは きっと 貴殿がそれを経験する必要が無い程の 力を持ち合わせていたという事なのだろう 貴殿の噂は 夢の世界へ導かれる以前から 聞き及んでいた あの最強の大剣使いヘクターを 越えるのではと言われていた 魔法剣の使い手 アバロンのオライオン」
オライオンが表情を困らせて言う
「あぁ~… そう言えば そんな風に言われてたっけ…」
ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
「うん?何か異なるのか?」
オライオンが苦笑して言う
「今の俺は… もう 魔法剣は 使えねーから…」
ヴェルアロンスライツァーが気付く 伝達兵が言う
「申し上げます!ガルバディア付属 ヴィクトール13世殿 他 旧大陸 多国籍部隊 隊長、副隊長を名乗る面々が ヴェルアロンスライツァー殿下へ謁見を求めております 共に…」
メテーリが言う
「ちょっと!もう良いから 中を見せなさいよ!オライオン王子が居るかどうか それを確認したいだけなんだから!」
ヴァッガスが言う
「それよか先に オライオンが居るかどうかって聞けば良いだけだろ!?」
ロドウが言う
「それより オライオンは何処かって聞いたら良いんじゃないかな?それか ここに来た?って」
ガイが言う
「ふむ… いや、門兵はその存在を確認していた という事は…」
ヴィクトールが言う
「そんな事より!重要なところが抜けてるよ!?確かに僕はガルバディア付属だけど!ちゃんとバーネットの猫って!そこを付け加えてくれなきゃ!」
衛兵と彼らが押し合う ヴェルアロンスライツァーとオライオンが見ていて オライオンが呆れて言う
「な… なんだ?あれ…?」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られる アンネローゼが軽く笑う
【 エドの町 団子屋 店先 】
フォーリエルが宇治金時を食べながら言う
「今頃 皆 ローゼントで別大陸からの刺客と 最後の会談でもしてんのかな~」
テスクローネが団子を焼きながら苦笑している フォーリエルが残念そうに言う
「はぁ~ やっぱ俺も行きたかったなぁ… テスだって 別大陸の刺客がどんな奴だったか 気にならねぇのか?」
テスクローネが団子を焼きながら言う
「ペリーテ殿とヴィルシュのデータなら得てあるから 大体分かるよ… わざわざ会いに行く必要は無いかな?」
フォーリエルが不満そうに言う
「俺はプログラムの数字より 実物に会いてーのっ」
テスクローネが微笑して言う
「プログラムより実物か… なら」
フォーリエルが疑問してテスクローネを見る テスクローネが団子焼き作業を終え タスキを外しながら表へ出て来て言う
「やっぱり苦労した甲斐があった フォーリエル 私は こちらの新大陸へ移ってから どうしても君に 会わせたい人が居たんだ」
フォーリエルが疑問して言う
「あ?俺に会わせたいって… どういう意味だ?こっちへ移ってからって…」
テスクローネが言う
「とは言え 彼はこの大陸で大変な事をしてしまっていたからね それこそ最初は面会の許可すら 難しかったんだけど でも… ついに信頼を得る事に成功した」
テスクローネが微笑する テスクローネの後ろへ人影が近づいて来る フォーリエルが呆気に取られ目を見開いて言う
「う… 嘘…だろ?何で!?一体!?」
フォーリエルが テスクローネの横に居るレジエルの顔を見て叫ぶ
「今まで何処に居たんだよっ!親父っ!!」
レジエルがフォーリエルを見る フォーリエルがレジエルに掴み掛かって言う
「親父が帰って来なくなってから!お袋がどれだけ苦労したか!お袋は!…親父が帰ってくるって ずっと信じてたんだっ!それなのにあんたはっ!」
フォーリエルがレジエルの服を掴んだままうなだれる レジエルがフォーリエルの手に触れる フォーリエルがはっとしてその手を見る レジエルがゆっくり言う
「…君は …何処の子 …かな?」
フォーリエルが呆気に取られ 驚いて顔を上げる レジエルが優しく微笑んで言う
「ああ… お母さんと… はぐれてしまったのだね?」
フォーリエルが驚きに目を見開く レジエルがフォーリエルの頭を撫でて言う
「…それじゃ おじさんが 一緒に探してあげよう 大丈夫 おじさんはね?探し物が得意なんだ」
フォーリエルが呆気に取られつつ言う
「な… 何を…言って…っ」
テスクローネが表情を悲しめて言う
「フォーリエル お父さんは… 記憶を封じられてしまっているんだ 恐らく… シリウス国王と敵対する 何処かのプラント管理者に それで… その者に操られ 彼は レジエル・ソーシュエルは この大陸の 前アバロン国王 ラインツ殿の后 ユイラ王妃を 殺害した」
フォーリエルが驚いて言う
「なっ!?」
テスクローネが言う
「レジエル殿は その場で取り押さえられ 今までの10年間 ずっとアバロンの地下牢に捕らえられていたんだ その間 ガルバディアのプログラマーたちが 彼の記憶にかけられている プログラムを解こうとしたらしいけど 残念ながら…」
フォーリエルが表情を悲しめて言う
「そんな…」
テスクローネが表情を落として言う
「私も出来る限りの事をしてみたけれど… ごめん フォーリエル」
フォーリエルがレジエルを見上げて言う
「それじゃ… 何もかも 全部 思い出せなくなっちまったのかよ!?何で…っ 普通の!ただの武器屋だったアンタが!そんなプラント管理者となんか!?一体何処で会ったんだ!?何でそんな奴と!?」
フォーリエルの目から涙が溢れて来る レジエルが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「…おやおや?どうしたんだい?…何処か 怪我でもしているのかな?よし 大丈夫だ おじさんは とっておきの薬を持っているんだよ え~と…」
レジエルが自分の衣服のポケットを探りながら言う
「あれ…?何処だったかな?うん?…う~ん」
フォーリエルが苦笑して言う
「…相変わらず 忘れっぽいでやんの いっつもそうやって 旅立ちの前に何か忘れて 帰って来てから見つけてたじゃんか… それでも 見つけた時は あって良かったって… 置き忘れて行っちまったくせに…」
レジエルが探り終えて言う
「うん~ どうやら 何処かへ置き忘れてしまったらしい ははは… ごめんな僕 おじさん薬を何処かへ忘れてしまったみたいだ 特別な特効薬だったんだけれどなぁ?」
フォーリエルが言う
「…知ってるよ アバロンの秘薬だろ?どんな切り傷も一瞬で治しちまうって… 凄く貴重だから 大切にするって… だから いっつもあんた 家に置き忘れて行ったじゃないか …そうやって いっつも 色々忘れて行って… 今度は 俺の事まで忘れちまって… もう… 見つけられねーじゃんかっ」
レジエルが一瞬呆気に取られてから笑って言う
「うん?…はっはっは 心配ない 必ず見つけられる」
フォーリエルが驚いてレジエルを見る レジエルが微笑して言う
「何かを 思い出せないほどの場所へ 置き忘れるという事は それだけ それが大切で それだけ 安全な場所に置いたという証拠だ 心配しなくても いつか必ず思い出せるし 見つけ出せないほどの場所に置かれているのだから 誰かに奪われる事も決してない」
レジエルが表情を困らせて言う
「…まぁ ちょっと必要な時に思い出せなかったり 使えなかったりする事はあるんだが …それだけの事だ 失う事は決してない!だから 安心したまえ君!君の大切なものもきっと!…うん?何の話をしていたのだったかな?う~ん…?」
フォーリエルが呆気に取られた後笑い出す
「…は …はは …ははははっ」
レジエルが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「うん…?ああ、もう笑っているのか?良かった良かった そうそう 子供は笑顔が一番だ」
フォーリエルが笑う
「あっははははははっ!」
レジエルが微笑んで言う
「うんうん!何か良い事があったのかな?それは良かったなぁ?僕?」
フォーリエルが悲しそうに笑い止んで言う
「ああっ!ホントに… 良かったぜ あんたが… 間違いなく あんたが… 生きてたんだもんな?生きてたんだ… 何も 思い出せなくっても… 親父は 生きてた… はははっ あははははっ!」
レジエルが笑顔でフォーリエルの頭を撫でて言う
「ああ 良かった良かった… うん?おや?…何を… 話していたのだったかな?…君は…」
フォーリエルが言う
「レジエル・フォーリエル あんたの息子さ… どうせ覚えてねーんだろ?」
レジエルが疑問して言う
「レジエル・フォーリエル… ふむ… 何処かで聞いたような… なんだか 自分に 深く関係するような…」
フォーリエルが言う
「親父!?」
レジエルが笑顔で言う
「ああ!そうか!分かったぞ それは 私の名前だ きっとそうだ 何故なら とても 聞き覚えがある」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「そうじゃ… ねぇよ あんたの名前は!レジエル・ソーシュエルだ!フォーリエルは あんたの息子の名前で!俺の!」
レジエルが言う
「レジエル・ソーシュエル…?フォーリエルは… フォーリエル!?」
レジエルが一瞬目を見開き 瞳の色が一瞬赤く染まる テスクローネがはっとする レジエルが一瞬の後瞬きをしてフォーリエルを見下ろして言う
「うん…?君は… 何処の子かな?」
フォーリエルが目を見開く レジエルが考えながら言う
「うん… 私は… 誰だったか?ここは…?」
フォーリエルが涙目を細め微笑して レジエルの服を握り締める テスクローネが見つめる
【 スプローニ城 王の部屋 】
通信モニターのレクターが笑顔で言う
『これで この大陸から 別大陸の奴は 皆居なくなった!…うん?…いけねぇいけねぇ うちの情報部の 部長を除くのを忘れてた』
レクターが苦笑する ロキが言う
「…問題ない バッツスクロイツに関しては 俺も承知している この大陸で 俺たちと共に戦う 仲間である と…」
レクターが微笑して言う
『ああ!そう言って貰えると助かる!例の夢の世界を経験してねー人には 説明が難しいんだが 逆に その世界を見て来た奴らは 皆あいつを擁護してくれる!だから…』
ロキが疑問する レクターが笑顔で言う
『私もやっとあいつを信頼する事が出来てきた!これからは 毎日見張りをする事もやめようと思う!これで私も 変なバグが飛んじまう事が減って助かる!』
ロキが突っ込みを入れる
「てめぇが信用して いやがらなかったのかっ!」
レクターが照れてから 気を取り直して言う
『それはそうと 認識されていた別大陸の刺客は居なくなったが ずっと探してる認識されていない方の 別大陸の刺客は 未だに見つかってねー』
ロキが一息吐いて言う
「…ああ …連絡した通り スプローニでも探してはいるが」
レクターが言う
『でもって その情報元の…』
ロキが目を閉じて言う
「…俺の方には 何の連絡も来てはいない 今も 何処に居るのかさえ分からん」
レクターが苦笑して言う
『そうなのか… それは残念だ』
ロキが目を開いて言う
「…だが恐らく 何らかの情報を見つけたとしても 俺の方へ連絡を寄越すとは思えん むしろ 卿の方へ… アバロンへ連絡を寄越すと思われる …スプローニの民でありながら」
レクターが笑顔を困らせて言う
『うん?…ああ、実は それなんだが』
回想
エリルドワリーが表情をしかめて言う
『… こ…』
レクターが笑顔で居る エリルドワリーが指差して叫ぶ
『こんな すっとぼけた男が!アバロンの代理国王だってぇえ!?』
スファルツが苦笑する エリルドワリーが言う
『アバロンってのはっ!世界を統べるとさえ言われた 3大国家の頂点にして ガルバディアに選ばれし 戦士の国!そのアバロンのっ 代理とは言え 国王が!こんなっ!こんなぁああ!』
エリルドワリーがレクターの胸倉を掴み上げて叫ぶ
『納得できないんだよーっ!』
スファルツが苦笑して言う
『ミセス・エリルドワリー どうか 落ち着いて下さいっ 相手は …一応 この国の代理国王殿ですので…』
レクターが義手に引き上げられつつ苦笑して言う
『あ… ああ、私自身も 本当は代理であっても アバロンの王様をやるつもりは ねーつもりだったんだが…』
エリルドワリーがレクターに顔を近づけて言う
『だが?』
レクターが笑顔で言う
『気付いたら 何となく そうなっちまってたんだ 私も驚いた!はは… ぎゅっ!?』
エリルドワリーがレクターの首を絞めながら言う
『なら… 次に気付いた時には 別のまともな奴が 代理国王に代わっちまってるかも しれないねぇ?』
スファルツが慌ててエリルドワリーの義手を押さえて言う
『ミ、ミセス・エリルドワリー!いけませんっ お気持ちは分かりますがっ 彼は 間違っても アバロンの代理国王殿ですのでっ!』
エリルドワリーが言う
『ああ… 間違ってるんだよっ!』
スファルツが慌てている レクターが苦笑笑顔で言う
『く… 苦しい ん だな… は… はは… は… …』
レクターが笑顔のまま 意識を失ったように頭が傾く スファルツが慌てて言う
『レクター代理国王殿っ!』
回想終了
レクターが苦笑笑顔で言う
『…と言う訳で きっとエリルドワリーは 何かを見つけても 私には教えてくれねー!…そんな気がする!』
ロキが表情を呆れさせつつ言う
「…言われて見れば 誰よりもふざけた事を嫌う性格の持ち主だった」
ロキが頭を抱え表情を困らせて言う
「…とは言え 代理ではあるが アバロンの王を締め上げたとは …これが噂の 間抜け大剣使いレクターでなかったら スプローニは今頃どの様な賠償を掛けられていたか想像も」
レクターが笑顔で言う
『今 私を呼んだか?』
ロキが衝撃を受け 慌てて否定して言う
「い、いやっ!気のせいだろうっ!?」
レクターが笑顔で言う
『そうか なら良いんだが… それじゃ!ローゼントへ捕らえていた2人は居なくなったが これからも 残りのお客… 刺客を見つける様 お互いに用心して 何か見つけた時には連絡をするって事で よろしく頼む!』
ロキが一瞬呆気に取られた後気を取り直して言う
「…あ、ああ 分かった 用心を続け 何か分かれば連絡をする」
レクターが笑顔で消える ロキが間を置いてから考える
「…ふん…」
ベルグルが顔を出し言う
「ロキ隊長?どうかしたッスか?アバロンのレクター代理国王様と仲良く話が出来て 嬉しくないんッスか?」
ロキが言う
「…フッ どうだかな 俺としては 何故奴が このスプローニへ通信をして来たのか …ローゼントに捕らえていた奴らの釈放など わざわざ代理とは言え 国王が連絡をする必要も無い …そして、本気でエリルドワリーの情報が欲しい と言う様子もなかった」
ベルグルが首を傾げて言う
「う?なら 素直に ロキ隊長と話がしたかっただけなんじゃないッスか?レクター代理国王様も言ってたッス!よろしく頼むって あれは 協力して頑張ろうって意味ッス!」
ロキが視線を強めて言う
「…本当にそれだけの事か?アバロンが… 3大国家の頂点とも言えるアバロンの代理国王が 3大国家にも入らない… 更には 同盟国所か友好国でもない このスプローニへ… 一体何の目論見が」
ベルグルが不満そうに言う
「ロキ隊長?…今日のロキ隊長は あんまりカッコ良くないッス レクター代理国王様は お互いに用心して 連絡し合おうって言ってたッスよ!?あの言葉は 嘘じゃ無かったッス!俺には分かるッスよ!」
ロキが驚きベルグルを見る ベルグルが表情を困らせ怒っている ロキが呆気に取られた後苦笑し表情を和らげて言う
「…そうか 分かった …卿を信じよう」
ベルグルが驚き呆気に取られて言う
「へ?」
ロキが苦笑して言う
「…国王として スプローニを守らなければと 力が入り過ぎていたのかもしれん …夢の世界では帝国にまでなっていた あのアバロン …だが、現実世界では」
ベルグルが笑顔で言う
「現実世界でも 皆仲間ッス!だって皆 同じプラントに生きてるッスよ?そりゃ… ソルベキアはちょっと意地悪ッスけど… きっと赤トカゲたちとだって 仲良く出来るッス!」
ロキが呆気に取られてから苦笑して言う
「…フッ 大したものだな卿は 諸卿 犬たちは」
ベルグルが疑問して言う
「う?俺たちが…ッスか?う~?え~と…」
ロキが軽く笑ってから席を立って言う
「…寝る」
ベルグルが笑顔で言う
「はいッス!」
ロキが上着を脱ぎながら歩く ベルグルが言う
「あ!ロキ隊長!今日はちゃんとベッドに入って寝るッスよ!また毛布を掛けないで寝てたら 今度は噛み付いてでも起こしちゃうッスから!」
ロキがコートを掛ける手を止め表情をしかめて言う
「…ああ 叩こうが噛み付こうが 起こしてくれてかまわん また 添い寝などされては…」
ロキが顔を引きつらせ ハッとしてベルグルへ振り返って言う
「それから!人の姿で居るときには 噛み付くな!?殴れ!良いな!?」
ベルグルが不満そうに言う
「え?俺は… ロキ隊長を殴ったりなんかしたくないッス それに、噛み付くのだって本当は嫌ッスよ!?だから ちゃんとベッドに入って寝てほしいッス!」
ロキが衝撃を受け視線を逸らして 小声で言う
「…チッ 馬鹿犬に説教をされる日が 来るとは」
ベルグルが呆れて言う
「小声で言っても ばっちり聞こえてるッスよ?」
ロキが不満そうに言う
「…分かっている …それより 卿は何時まで俺の部屋に居るつもりだ?さっさと 自分の部屋へ戻れ!シッシッ!」
ベルグルが衝撃を受け言う
「あー!酷いッス!ロキ隊長!俺をまるで犬みたいに 追い払ってるッス!」
ロキが叫ぶ
「卿は犬だろう!」
ベルグルが思い出して言う
「あ、そうだったッス 俺とした事がッスね!」
ロキが間を置いて溜息を吐く ベルグルが心配そうに言う
「…ロキ隊長?」
ロキが言う
「…何でもない ただ …何と言うか」
ロキが銃ホルダーから銃を取り外そうと手に持ち ふと両手に持った銃を見て目を止める ベルグルが心配そうに見て言う
「ロキ隊長…」
ロキが一度目を閉じ 銃をサイドテーブルへ置き 間を置いてベルグルを見る ベルグルが衝撃を受け慌てて言う
「あ!は、はいッス!分かりましたッス!俺は自分の小屋 …じゃなかったッス!部屋に行くッスよ!」
ベルグルがぎこちなく部屋を後にしようとすると 通信機が鳴り ベルグルが通信機を見る ロキがやって来て言う
「あいつが… アンネローゼ殿の件で 報告をすると言っていた …既に懐妊が公にされた以上 わざわざ報告などしてくれなくても 分かっているのだがな …卿も… 聞いて行け」
ベルグルが一瞬呆気に取られた後笑顔で言う
「はいッス!」
ベルグルがロキの横に来る ロキが不満そうに通信機を着信させ言う
「…別に わざわざ報告などしてくれずとも」
通信モニターにヴェルアロンスライツァーがドアップに映り叫ぶ
『ロキーーッ!!』
ロキが呆気に取られる ベルグルが笑顔で言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長!改めて おめでとうございますッス!スプローニにも 伝わってるッスよー!」
ロキが苦笑して言う
「…フッ そうだな …やはり俺からも 改めて祝福を…」
ヴェルアロンスライツァーが困り顔で叫ぶ
『どおしてくれるのだっ!?ロキ!貴殿の助言を元に その様にしたら その様になってしまった!しかしっ!私はやはりっ その様になるのはっ!』
ロキが怒って言う
「ちょっと待て!途中までは分からなくも無いが …やっぱり分からんっ!主語は略さず話せ!」
ヴェルアロンスライツァーがモニターを見る ロキが溜息を吐いて言う
「…つまり 俺の助言を元に 卿の思いを伝え 結果 アンネローゼ殿の出産を認め 支える事となった …しかし、卿は結局 アンネローゼ殿の身が心配なのだな?」
ヴェルアロンスライツァーが表情を困らせながら頷く ベルグルが汗を掻き言う
「流石 ロキ隊長ッス やっぱり凄いッス…」
ロキが腕組みをして言う
「…で?」
ヴェルアロンスライツァーが疑問してロキを見て言う
『で… と言うのは』
ロキがすぅっと息を吸ってから叫ぶ
「それを… 俺のせいにしやがるってぇえのかぁあ!?てめぇえはぁああ!?」
ベルグルと通信モニターのヴェルアロンスライツァーが驚きに呆気に取られる ロキが怒って言う
「ここまで来たら いい加減 貴様も腹括って全うしやがれ!フンッ!」
通信モニターのヴェルアロンスライツァーが驚き呆気に取られている ロキが通信機の電源へ手を伸ばす ヴェルアロンスライツァーが慌てて言う
『あっ』
ロキが通信機を切り 言う
「…寝る」
ベルグルが呆気に取られた後 表情を輝かせて言う
「カッコイイッス!ロキ隊長!やっぱ ロキ隊長は 後住民族の人としても!男としても カッコイイッスよー!…でも」
ロキがベッドの毛布の上で寝ている ベルグルが困り怒って叫ぶ
「やっぱり ちゃんとベッドに入って 寝てくださいッスー!ロキ隊長ー!」
ロキが寝息を立てている
【 ローゼント城 ヴェルアロンスライツァーの部屋 】
ヴェルアロンスライツァーが切れた通信モニターの前でうなだれていて言う
「うぅ… 見放されてしまった… 一体どうしたら良いのだ… 腹を括れと言われても… 全うしろと言われても… 私には やはり…」
ドアがノックされ アンネローゼの声が届く
「ヴェルアロンスライツァー?まだ… 起きておられますか?」
ヴェルアロンスライツァーが衝撃を受け慌てて扉へ向かいながら叫ぶ
「アンネローゼ様っ!?た、只今お開け致します!」
ヴェルアロンスライツァーが扉を開けると アンネローゼが微笑して言う
「ごめんなさい 休んでいましたか?」
ヴェルアロンスライツァーが傅いて言う
「いえっ!たった今まで ロキへ通信を…っ」
ヴェルアロンスライツァーがハッとして言葉に困る アンネローゼが一瞬疑問した後苦笑して言う
「スプローニのロキ国王へ… そうでした 私からも お礼を伝えなければいけませんでしたね ロキ国王のお陰で 貴方が… 私を… 信じてくれたのですから」
ヴェルアロンスライツァーが驚きアンネローゼを見上げて言う
「ア、アンネローゼ様っ!私は!私は決して アンネローゼ様を 信じていなかったと言う訳ではっ!」
アンネローゼが微笑して言う
「ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが慌てて礼をして言う
「はっ!」
アンネローゼが静かに言う
「貴方の… ご両親の事は 伺いました ごめんなさい… 貴方に黙って 貴方の事を調べさせてしまって」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼを見上げている状態でハッとして言う
「い、いえっ!私めの事など なんなりとっ」
アンネローゼが言う
「貴方は お母様の事もあって 今回の私の出産を強く反対していた …にも拘らず 私を信じてくれました ありがとうございます ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが驚きアンネローゼを見つめる アンネローゼが微笑して言う
「私は この子の為にも 貴方の為にも そして、私自身の為に 必ず出産を成功させます ヴェルアロンスライツァー これからも 私を信じ 支えて下さいね?」
アンネローゼが美しく微笑む ヴェルアロンスライツァーが見惚れた後ハッとして慌てて頭を下げて叫ぶ
「は… ははーっ!このヴェルアロンスライツァー!アンネローゼ様を心より信じ どの様な茨の道も 共に歩むと誓っております!」
アンネローゼが軽く笑って言う
「うふっ ええ、心強いです ヴェルアロンスライツァー きっと 貴方に負けないような 強い子を産んで見せます」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られて言う
「わ…私に負けぬ強い子?で、ではっ!?お、お子様は 男の子であらされるのですか?」
アンネローゼが可笑しそうに笑って言う
「ふふふっ ヴェルアロンスライツァー?この子は貴方と私の子ですよ?お子様と言ってしまうのはどうでしょう?明日は正式に民へ伝えるのですから 気を付けて下さいね?」
ヴェルアロンスライツァーが慌てて言う
「は、はい!し、失礼致しましたっ!つ、つい…っ」
アンネローゼが微笑んで言う
「それから 子供の性別は まだ分かっていません ですが …リーザの時とは違い 毎日とても元気にお腹を蹴っているのです 男の子でも女の子でも 元気な子である事は間違いないでしょう」
ヴェルアロンスライツァーが衝撃を受け言う
「ア、アンネローゼ様のお腹を 蹴るとは…っ!」
ヴェルアロンスライツァーが怒っている アンネローゼが苦笑して言う
「ヴェルアロンスライツァー?間違っても 生まれてきた子に怒らないで下さいね?蹴るといっても 何も攻撃ではありません 元気に動いている証拠ですから」
ヴェルアロンスライツァーが返事をする
「は… は…っ」
アンネローゼが軽く笑ってから言う
「ふふ… では また明日」
ヴェルアロンスライツァーが改めて言う
「はっ!お休みなさいませ!アンネローゼ様!」
アンネローゼが数歩離れてから立ち止まり振り返って言う
「…たまには 一緒に床へ入りますか?ヴェルア…」
ヴェルアロンスライツァーが困り焦っている アンネローゼが苦笑して言う
「…いえ、昨夜は良く眠られなかったのでしたね?では 今夜はゆっくり休んで下さい 私と一緒では 貴方は一睡も出来ませんものね?」
ヴェルアロンスライツァーが頭を下げて言う
「も、申し訳ありません…っ お心遣いを有難く頂戴いたします」
アンネローゼが苦笑してから立ち去る ヴェルアロンスライツァーが間を置いて顔を上げふぅっと息を吐く
アシルが驚いて叫ぶ
「なんだとっ!?それは一体どういう意味だ!?」
玉座に座るファリオルが面倒臭そうな顔をする アシルが一歩踏み出して言う
「お前たちは俺を!天上の神々が遣わした 神の使いだと言っていたではないか!?何時如何なる時も 貴様らは この俺を歓迎すると!だから俺は そんなお前たちへ力を貸してやろうと!」
ファリオルがため息を吐いてから言う
「貴方が我々へ力を貸すではなく 貴方が 我々から力を 借りる の間違いでは?」
アシルが驚いて言う
「何っ!?」
ファリオルが言う
「我らカイッズが 貴方を歓迎すると言ったのは 貴方がスプローニの王子であったからだ アシル殿」
アシルが表情をしかめる ファリオルが苦笑して言う
「スプローニの王位を剥奪され 挙句 国を追われた貴方になど もはや 何の価値もありはしない 王位の無い貴方など… そうだな 言うなれば天を追われた 堕天使か?」
アシルが呆気に取られた後慌てて言う
「堕天使?ま、待て!俺は確かに スプローニの王位は失った だが、俺は!」
ファリオルが言う
「堕天使は不幸の象徴だ どうか 早々に 神々に愛されし このカイッズの国から 立ち去って頂きたい」
フォリオルがカイッズ兵を見る アシルが困惑した後 慌てて言う
「おいっ!待てと言っているだろ!俺は スプローニでもソルベキアでもなく お前たちカイッズへ!」
カイッズ兵がフォリオルへ耳打ちする フォリオルが言う
「む?聖女殿の来国は 明日ではなかったか?」
カイッズ兵が言う
「はい、しかし 聖女様のご希望で一日早めて欲しいと… 街中の歓迎準備もほぼ済んでおりましたので …一応 予定日でお願いしたいとは申し伝えたのですが」
フォリオルが表情をしかめて言う
「ええいっ どうせあの野蛮娘が こちらの事情などお構い無しに勝手をするのだろう…っ 構わん!何か不手際があっても 予定日前だったからだと言い抜けろ!」
カイッズ兵が返事をして立ち去る
「はっ!」
フォリオルがアシルへ向き直り言う
「うん?まだ居たのか?」
アシルが言う
「フォリオル国王!聞け!俺は!」
フォリオルが言う
「アシル殿 生憎 こちらは忙しい 急な来客もある さぁ お引取り願おう」
アシルの両脇にカイッズ兵が現れる アシルが叫ぶ
「後悔するぞ!俺はこの力を 貴様らに貸してやろうとしていたのに!…要らんと言うなら この力は 俺の愛するツヴァイザーへ渡してくれる!良いのか!?止めるなら今の内だぞっ!?」
アシルがカイッズ兵に連れられて行く フォリオルが溜息を吐いて言う
「ふんっ 何が愛するツヴァイザーだ そのツヴァイザーの女王こそ 悔しいが 今この国の力を牛耳っている あの野蛮聖女殿だ」
カイッズ城 門前
アシルが衛兵2人に両脇を抑えられカイッズ城から追い出される アシルが表情を怒らせ衛兵たちの腕を払って言う
「ふんっ 折角 この俺が最小国カイッズへ目を掛けてやったと言うのに!…うん?」
アシルが城下町の賑わいに疑問して言う
「なんだ?確かに今日の城下は カイッズにしては珍しい賑わいを帯びていたが 何やら催しでも…?」
アシルの後方城に備えられた大砲が 祝いの空砲を撃ち鳴らす アシルが驚いて振り返ると カイッズ国城下町の入り口で大きな歓声が上がる アシルが疑問する
城下町 王城通り
リーザロッテが観衆の中で高笑いして言う
「オーホッホッホッホッ!出迎えは要らないと伝えた筈でしたのに こんなに可愛らしい道を作って 待っていて下さったなんて!一体どなたの発案でして!?」
巨人族Aが笑顔で言う
「聖女様がいらっしゃるって聞いて 皆で 町中の女性から案を聞いて回ったんでさぁ!」
巨人族Bが笑顔で言う
「けど おらたちには細けー飾り付けはできねぇーから カイッズの後住民族の人たちに ほとんど作ってもらったんでさぁ!」
周囲に居るカイッズの民たちが笑顔で居る リーザロッテが周囲を見渡してから微笑して言う
「では、巨人族の皆が思案して カイッズの女性が提案して 皆で作って下さったのでしてね!宗教的な事柄や飾りしかなかったカイッズに 素晴らしい風景でしてよ!きっと 天上の神々も 貴方方の一人立ちを喜んで下さっている事でしてよー!オーホッホッホッホッ!」
巨人族やカイッズの民が嬉しそうに笑い合って言う
「聖女様がそう言って下さるなら 天上の神々様も喜んで下さってまさー!」「ああ!俺たちの一人立ちを 喜んで下さってまさー!」
アシルが遠くで驚いて言う
「あれは!ツヴァイザーの眠り姫!?どういう事だ!?いったい何時目を覚ました!?誰が覚まさせたっ!?」
リーザロッテが何やら話して嬉しそうに笑っている アシルが言う
「クッ!ここからでは何を言っているのか聞こえん!」
アシルがリーザロッテを目指して走って行く
リーザロッテが微笑んで周囲を見渡す カイッズ部隊隊長がやって来て言う
「聖女様!遠路遥々 お疲れ様でございました!」
リーザロッテがカイッズ部隊長を見て言う
「いいえ!こちらこそ 予定を早めてしまった事へ 申し訳なく思っていましてよ!フォリオル国王は 明日の方が宜しかったのでしてね?今日はお会いできないと言うのなら 私は構わなくってよ!」
カイッズ部隊長が言う
「いえ!滅相もございません!フォリオル陛下は カイッズ城にて 聖女様をお待ちするとの 言伝を携えて参りました!」
リーザロッテが微笑んで言う
「そう!では 折角時間を作って下さったのでしょうから 早々に向かって差し上げないと!」
巨人族とカイッズの民が残念がって言う
「聖女様ー」「聖女様 もう行ってしまうんですかい!?」「聖女様ー!」
リーザロッテが群集へ向かって言おうとする
「心配はなくってよ皆!私は…!」
リーザロッテの言葉の途中で アシルが人垣を押し退けて現れて言う
「リーザロッテ王女っ!」
リーザロッテが疑問して言葉を止めてアシルを見る 皆の視線がアシルへ向く アシルがリーザロッテへ言う
「リーザロッテ王女 長き眠りから 何時の間に目覚めていたのか!?…いや!一体誰が 貴女を目覚めさせたのか!?」
リーザロッテが疑問する 周囲の人々が疑問して顔を見合わせる リーザロッテが一瞬呆気に取られてから微笑んで言う
「ええ!確かに私は長い眠りに着いていてよ!しかし それはもう 1年以上前までの話でしてよ!」
アシルが呆気に取られて言う
「い、1年!?…そうか 俺が ツヴァイザーにて不当に捕らえられ 更にスプローニで不当な憲法に掛けられ 1年間の幽閉を受けていたあの間に…っ」
リーザロッテが疑問して小首を傾げた後 あっと気付いて言う
「あっ 貴方 そのコートは!貴方はスプローニの方でしてね!?」
アシルがはっとして自分のコートを見て慌てて言う
「うっ いや、これはもう…っ」
リーザロッテは聞いておらず 笑顔で言う
「丁度良くってよ!まさか このカイッズでスプローニの兵と会えるだなんて!今日は嬉しい驚きが沢山でしてねー!」
アシルが驚き慌てて言う
「な!?いやっ!待てっ 俺はもうスプローニには…っ!い、いや そもそも 俺は兵ではっ!」
リーザロッテが聞かずに言う
「貴方も あのロキ国王やロイと同じでしてよね!?スプローニの兵は いつでも自分の国を守ろうと 国へ帰る事ばかり考えているのですもの!きっと私が急ぐより 貴方の方が早くスプローニへ帰り着くはずでしてよ!だったら ロキ国王へ伝えて下さって!?」
アシルが慌てて言う
「だから!俺は…っ!」
リーザロッテが聞かずに言う
「何処よりもシンプルなメッセージと品だったけれど 何処よりも早く 素敵なメッセージと品でしてよ!カイッズを先にした事で当初の予定日には遅れてしまうけれど 急いで貴方方のスプローニへ向かう事に変わりはなくってよ!ロキ国王へ伝えて下さって!?早ければ明後日の午後にでも到着する予定でしてよー!オーホッホッホッ!」
アシルが疑問して言う
「眠り姫がスプローニへ?… そもそも この騒ぎは一体…?」
アシルが辺りを見渡してから改めて言う
「いや、そうではない 聞いてくれ 眠り姫!いや、リーザロッテ王女」
リーザロッテが疑問してアシルを見る アシルが言う
「俺は スプローニの兵ではなく スプローニの王子…」
上空から声が聞こえる
「リーザー!」
リーザロッテへ向かってドラゴンが飛んで来る ドラゴンの背にレリアンが乗っている リーザロッテがレリアンの声に顔を上げ喜んで言う
「レリアン!来て下さったのね!」
アシルが驚いて逃げる アシルの居た場所にレリアンを乗せたドラゴンが降り立ち レリアンが言う
「勿論よ!私の相棒であるリーザロッテの 大切な日とあれば 相棒の私が当然花を添えるべきだわ!」
リーザロッテが笑顔になる アシルが物陰から覗く レリアンが言う
「それで!?今日の主役 お披露目となる 貴女の子は!?」
アシルが呆気に取られて言う
「眠り姫の子だと!?まさかっ!?」
リーザロッテが抱えていたローブを開いて 喜んで言う
「ええ!この子が私とレイトの子!ツヴァイザーの新王女でしてよー!オーホッホッホッ!」
アシルが衝撃を受け叫ぶ
「眠り姫とレイトの子っ!?ツヴァイザーの新王女だとーっ!?」
アシルの周囲にいた人々が疑問してアシルを見る リーザロッテとレリアンたちは聞こえずに喜び合っている アシルが頭を抱えて叫ぶ
「何と言う事だっ!俺がたった1年間の謹慎を食らっている間に 何年も眠っていた眠り姫が目覚め 挙句に子まで産んでいたとはーっ!」
アシルが怒って言う
「相手は一体誰だ!?誰が俺の眠り姫を目覚めさせ!子まで産ませやがった!?…と、待て 確か姫は 私とレイトの子と…っ レイト?この世界中に そんな名の王子など…」
アシルがはっとして思い出して言う
「あいつかーーっ!?」
アシルの脳裏に 眠りに着いているリーザロッテと 兵士部屋で眠りに着いているレイトを指差すツヴァイザー兵が思い出される アシルが言う
「姫と共に 同じく眠りに着いたままとなった ツヴァイザーの一兵士!あいつが!?あいつがーーっ!!」
アシルが怒っている 周囲の人々が顔を見合わせた後 アシルを無視してリーザロッテたちの方を向いて喜ぶ
リーザロッテがレリアンへ言う
「レリアン!私は出来る限り急いでスプローニへ向かって この子をロキ国王へもお見せして差し上げたいの!力を貸して頂けて!?」
レリアンが力強く笑んで言う
「ええ!もちろん!その為に来たのですから 私も竜族の皆も 貴女の喜びを共に喜び この力も共に使うと決めているのよ!」
ドラゴンがひと鳴きする リーザロッテが嬉しそうに言う
「レリアン!皆!」
レリアンが微笑して言う
「さぁ!竜族の皆が 早く貴女と新しい私たちの仲間を 自慢の背に乗せたいと言っているわ!」
ドラゴンたちが上空から飛来する リーザロッテが微笑んで言う
「ええ!私も久しぶりに 早く皆の背に乗って 大空を舞いたくってよ!」
赤ん坊が嬉しそうに手を上げて笑う リーザロッテが一瞬呆気に取られた後 喜んで言う
「この子も乗りたいと喜んでいるわ!こうなったら フォリオル国王へご挨拶している場合では無くってね!」
リーザロッテが周囲を見て言う
「カイッズの皆!私は今日 貴方方へこの子を見せに来たのでしてよ!貴方方の王フォリオル殿にはご挨拶出来ないけれど 貴方方へ私の初娘をお披露目出来て 私は満足でしてよー!」
周囲の人々が喝采を上げる リーザロッテがドラゴンへ向かい ドラゴンがリーザロッテと赤ん坊を背に乗せる ドラゴンが翼を広げてひと鳴きする リーザロッテがはたと気付いて アシルへ向いて言う
「あ、そうだわ!先ほどの!そちらのスプローニ兵の方!」
アシルが気付き 怒って向き直って言う
「だからっ!俺はスプローニの“兵”ではっ!」
リーザロッテが聞かずに言う
「折角お願いを聞いて頂けたのに 今回は ドラゴンたちの力を借りる私たちの方が 貴方より早く 貴方の愛するスプローニ国へ到着してしまいましてよ!ですから 先ほどのお願いは忘れて下さって宜しくってよー!オーホッホッホッホッ!」
アシルが怒って言う
「うるさいっ!頼みを聞いた覚えはないし 叶えてやれるはずもなかったが!今更 忘れられるかっ!」
レリアンがアシルに気付いて言う
「あら?あの方は…」
リーザロッテが喜んで言う
「そう!分かったわ!でしたら!これから向かうスプローニで また貴方にお会い出来る事を 楽しみにしていて差し上げてよー!オーホッホッホッホッ!」
アシルが悔しそうに言う
「どんなに急ごうとも ドラゴンで向かう貴様と会えるかっ!」
リーザロッテがカイッズの皆へ向いて言う
「カイッズの皆!私はいつでもこのカイッズへ来て差し上げてよ!貴方方も是非 ツヴァイザーへ遊びにいらして頂戴!」
カイッズの皆が喜んで手を振って口々に言う
「聖女様ー!」「また来てくだせぇー聖女様ー!」「俺たちも聖女様と王女様にお会いしに行きますー!」
リーザロッテがアシルへ向いて言う
「では、お先に!」
アシルが怒って叫ぶ
「黙れーっ!」
レリアンとリーザロッテが高笑いと共に飛んで行く
「オーホッホッホッホッ!」
アシルが怒りを押し殺した後 肩を落として脱力する 周りが賑わっている
【 上空 】
レリアンが言う
「リーザ 先程の方」
リーザロッテが疑問して言う
「先程の?」
レリアンが言う
「ええ、カイッズの町で 貴方が声を掛けていた スプローニの」
リーザロッテが少し考えてから思い出して言う
「ええ、あのスプローニ兵の!」
レリアンが言う
「あの方、スプローニの元王子アシル殿でしたね?カイッズと由縁の無い スプローニの元王子が カイッズの城下で一体何をされていたのでしょう…?」
リーザロッテが疑問して言う
「スプローニのアシル王子?スプローニの王子様って… 確か私と20歳近く歳の離れた… そう言われて見れば スプローニの方は歳の割りに若く見られがちでしてね?あの方もそう考えれば 丁度その辺りの歳だったのかもしれなくてだわ」
リーザロッテが考える レリアンが言う
「私はアシル王子の顔を知っています あの方で間違いないでしょう その彼へ 貴方は頼みごとをしていたようだけれど?」
リーザロッテが呆気に取られた後 微笑して言う
「ええ!でしたら!結果的には 良かったのでしてね!」
レリアンが疑問して言う
「良かった?」
リーザロッテが言う
「私は知らなかったとは言え スプローニの王子様へ伝言をお願いしてしまう所でしたのよ!それが レリアンと竜族の皆が来て下さったお陰で 私たちの方が早く到着すると分かり お願いを取り消す事が出来たわ!お陰で 私たちのツヴァイザーで無礼を行おうとしたと言う かのスプローニ王子へ この私がお願い事を致さずに済みましたの!」
レリアンが呆気に取られて言う
「アシル王子がツヴァイザーで無礼を?」
リーザロッテが振り向いて言う
「ええ!何でも 私がガルバディア国王の力で眠りに着いている間に ツヴァイザーへ現れ 眠っている私へ何らかの無礼を行おうとしたと」
レリアンが驚いて言う
「眠っている貴方へ!?」
リーザロッテが微笑んで言う
「もちろん!優秀勇敢なるツヴァイザーの兵士たちが守ってくれたお陰で 私は無事で居られましてよ!?でも!万が一その時私を守って下さる 優秀勇敢なるツヴァイザーの兵士たちが居なかったらと思うと… きっと私は この命を奪われていた事でしてよ!」
レリアンが首を傾げて言う
「命を!?…いえ、確か スプローニの王子は 以前から ツヴァイザーと同盟を築こうとしていた と聞いていたのだけれど その彼が 貴女の命を狙っていたと?」
リーザロッテが言う
「私は眠っていたのだから詳しい事は分からなくてよ?でも、ツヴァイザーの皆が 大慌てで彼を抑え 国から追い出したのだと言うのだから きっとそうに違いなくってよ!?」
リーザロッテがプンッと怒る レリアンが納得できない様子を見せながらも言う
「眠りについていた王女の命を狙ったとあっては 国外追放所ではないと思うけれど…」
リーザロッテが笑顔で言う
「さ!そんな事より 今向かうのは ロキ国王の納める 新生スプローニ国!旧スプローニ国の王子様の事なんて もうどうでも良くってよー!オーホッホッホッホッ!」
リーザロッテがドラゴンを駆る レリアンが呆気に取られた後苦笑して言う
「まぁ… それもそうかもしれないわね」
レリアンがリーザロッテを追ってドラゴンを駆る
【 スプローニ城 王の部屋 】
ロキが目を瞑り握っている手に意識を集中する 手の中から光があふれ ロキの足に踏まれている犬のベルグルが光を纏い人の姿になる 光が収まるとロキが目を開いてベルグルを見る ベルグルが立ち上がり体の調子を確認した後 笑顔で言う
「ロキ隊長!有難うございますッス!」
ロキが間を置いてから言う
「…何故 断った?」
ベルグルが疑問して言う
「へ?」
ベルグルが考えた後ひらめいて言う
「ああ!それはもちろん!ロキ隊長の体調が心配だったからッス!でもロキ隊長が俺を踏みつけて 無理やり人の姿にするって事は もう十分元気だって事ッスね!良かったッス!俺安心したッスよー!」
ベルグルの脳裏に 吠える犬のベルグルを踏みつけ無理やり宝玉の光を向けるロキの姿が思い出される 扉の先から兵士の声が聞こえる
「ロキ陛下!ツヴァイザーのリーザロッテ女王と思われる ドラゴンの集団を確認したと 第3監視塔から連絡が入りました!スプローニへのご到着はおよそ26分後との事です!」
ロキが顔を向けて言う
「…分かった 丁重に迎える様 伝えてくれ」
兵士が返事をする
「はっ!」
ロキが一息吐いて宝玉の欠片をコートの内ポケットへしまい 歩き出そうとして立ち止まり 振り返らずに言う
「…それで?」
ベルグルが疑問して言う
「え?それでって…?何ッスか?ロキ隊長?」
ロキが言う
「…何故卿は あいつに… ヴェルに人の姿へしてもらう事を 断った?」
ベルグルが呆気に取られつつ思い出しハッとして困って言う
「あぁ… あれは… その~…」
ロキが腕組みをして言う
「…奴とて 事情はさて置き 遠路ここまで足を運んで来たんだ… 卿の声とて聞きたくもあっただろう 一言二言でも 言葉を交わしたいと …なのに 何故 卿はそれを断った?」
ロキが顔を向ける ベルグルが驚いている状態から表情を困らせ視線を落として言う
「そう…だったッスか ヴェルアロンスライツァー副隊長も俺と話を…?俺… 俺、チョーうれしいッス!今度ヴェルアロンスライツァー副隊長に会った時には ちゃんと謝って いっぱいいっぱい話をするッス!」
ベルグルが笑顔になる ロキが向き直って言う
「…それで?」
ベルグルが驚いて言う
「え?あ… その… あの時は…」
ロキがベルグルの顔を覗き込む ベルグルが汗を掻きつつ視線を泳がせて考えて言う
「えっと… あの時… 俺…」
ベルグルの脳裏に ヴェルアロンスライツァーが自分を人にしようとする姿と その後ろのベッドにしんどそうにしているロキの姿を思い出す ベルグルが考える ロキが疑問する ベルグルが言う
「…分からないッス」
ロキが表情をしかめて言う
「…分からない だと?」
ベルグルが慌てて言う
「お、俺!確かに人の姿になりたいって思ったッス!ヴェルアロンスライツァー副隊長とも やっぱり話をしたかったッス!けどっ けど…っ 分からないッス 俺っ 何でか分からなかったッスけどっ あの時っ …ヴェルアロンスライツァー副隊長に 人の姿にしてもらうのは いけないって 俺 そう思ったッス!」
ベルグルが強く言い切る ロキが呆気に取られた後 間を置いて言う
「…ベルグル」
ベルグルがロキを見上げる ロキが大喜びで言う
「良く言った!ベルグル!…いや!ベルグル第二国王!それでこそ 卿は このスプローニの第二国王だ!」
ベルグルが呆気に取られて言う
「へ?」
ロキが力強く言う
「卿は このスプローニの先住民族の王として!スプローニ国新憲法四万六千八百八十九条一項!正規の相棒以外における 先住民族の人化を禁ず!違反者は 第六級拷問刑に処する!の法を守り 己の欲に流される事無く ヴェルの奴を 違反者とする事から救ったのだな!良いぞ!それでこそ このスプローニの先住民族!そして 友好国ローゼントの王配 ヴェルの仲間だ!」
ベルグルが呆気に取られて言う
「う?う?…え~と… ロキ隊長?俺は そんな 難しい事は分からな…」
ロキが力強く頷いて向きを変えて言う
「俺は知らなかった!卿がそこまで成長していたとは…っ 何も変わった素振りを見せる事の無いまま 卿はそこまで…っ」
ロキがぐっと力を込め目を瞑り俯く ベルグルが呆れの汗を掻きつつ言う
「あ、あの… ロキ隊長?」
ロキが目を開き 気を取り直して言う
「…それはそうと、スプローニ国新憲法四万六千八百八十九条一項には 補足を施さねばならんな 正規の相棒が許可を与えた場合のみ 例外とする と」
ベルグルが呆れて言う
「えっとぉ~ ロキ隊長?その補足は とっても良いと思うッスけど やっぱり俺は…」
ロキが目を閉じて身を翻して言う
「…いや、分かっている 皆まで言うな 卿がそこまで気を引き締めていたのなら 第一国王である俺も 腹を括り スプローニの王として生きる事を 肝に銘じよう …とは言え まさか卿に遅れを取るとはな?俺はもっと早くに …そうだな 彼らよりずっと早くに 巣立たねばならなかったのだな?」
ロキが窓際へ移動する ベルグルが疑問してロキを目で追いながら言う
「へ?巣立つ?ロキ隊長は人ッスよ?巣立つって言うのは確か… ロキ隊長?」
ロキが窓を開け 身を乗り出す ベルグルが驚き慌てて叫んでロキへ向かう
「ロキ隊長!?まさか!またッス!ロキ隊長!駄目ッスよ!ロキ隊長は人ッス!鳥とは違って 空は飛べないッスよ!ロキ隊長ー!」
ロキが窓枠へ足を掛ける ベルグルが慌てて向かう間に体が光り 犬の姿になってロキの服を後ろから噛んで 自分の方へ力一杯引き込む ロキが驚き慌てて言う
「なっ!?何をっ!?のわっ!?」
ベルグルとロキが後ろに倒れる ベルグルが床に倒れるとその上にロキが倒れそうになるが はっとして床へ手を着いて身を横へ逸らして受身を取り床に倒れて言う
「… つぅ~」
ベルグルが身を起こしてロキを覗き込んで吠える
「わんっ!?」『ロキ隊長!?』
ロキが片手を押さえつつ身を起こして怒って言う
「このっ 馬鹿犬がっ!何をする!?」
ベルグルが言葉を受け痛そうな表情をして悲鳴を上げる
「キャンッ!」
ロキが立ち上がりながら言う
「窓の外にでも落ちたら どうするつもりだ!?卿も俺も あいつらとは違って 空を飛ぶ事は出来んのだぞっ!?」
ベルグルが表情を困らせロキを見上げて言う
『だ、だってロキ隊長がッスね… う?…『あいつらとは違って』?』
ベルグルが不思議そうに首をかしげる ロキが怒らせていた表情を和らげ軽く苦笑して ベルグルを抱え上げる ベルグルが驚く ロキが言う
「じっとしていろ」
ベルグルが呆気に取られたままロキを見ていると ロキが窓枠に片足を掛け ベルグルと共に身を乗り出して 窓のすぐ外にある木の枝にある鳥の巣を見せる ベルグルが驚く ロキが言う
「…俺が スプローニの王となり この部屋に住み始めた頃に 彼らもココへやって来て 卵を温め始めた …雨の日も強い風の日も …そして、先日雛が生まれたんだ」
ベルグルが呆気に取られて聞きながら見ている ロキが言う
「…あの雛たちが巣立つ頃には 俺も 銃使いとしての人生に区切りを付け 国王として生きようと その為にも …あいつと 最後の戦いをしようと思っていた」
ベルグルがはっとしてロキを振り返る ロキが苦笑して言う
「…特別な戦いとなるはずだった 俺の最後の スプローニ兵としての戦いに …だが、そんな悠長に考えて居て良い訳がなかった 俺はもう とっくにスプローニの王となっていたんだ 一兵士として戦うなどと 甘い事を願っているべきでは無かった …頭では分かっていたのに …俺の心は …魂は そこまで至ってはいなかったんだ」
ベルグルが瞬きをしてロキを呼ぶ
『ロキ隊長…』
ロキがベルグルの頭に軽く自分の顔を乗せ 苦笑して言う
「ほとほと… 往生際の悪い奴だな 卿の飼い主は?」
ベルグルが頬を赤らめて思う
『ロ、ロキ隊長…っ』
ベルグルが慌てて顔を左右に強く振って ロキへ振り返って吠える
「ワンッ!」『そんな事ないッス!』
ロキが驚く ベルグルが表情を困らせて吠える
「わう~うぅわうっわう~~っ!」『ロキ隊長は 何時だって凄い人ッスよ!カッコイイ人ッス!俺は!何時だってそんなロキ隊長の事!えっと…っ えっと~…っ』
ベルグルが悩む ロキが呆気に取られた後 軽く微笑して鳥たちを眺めた後 言う
「だが、卿のお陰で ようやく決心がついた 往生際の悪い俺にはやはり心残りがあるが それはいずれ… 別の形で晴らせば良い 今ならそう思える 俺は… あの雛たちの巣立ちを 今までとは違う思いで 見守れるだろう」
ベルグルが呆気に取られロキを見る 鳥たちを見守る優しいながらも強い力を帯びたロキの表情に ベルグルが尊敬のまなざしでロキを見て微笑む ロキが微笑してベルグルを見て言う
「だから… いいか?ベル」
ベルグルが一瞬呆気に取られ疑問する ロキが言う
「あの親鳥は勿論 雛たちも… 絶対に」
ベルグルが真剣にロキを見る ロキが言う
「食うなよ?」
ベルグルが衝撃を受け 怒って吠える
「ワンッ!」『食べないッス!』
ロキが表情を困らせて言う
「噛み付くのも駄目だ」
ベルグルが怒って吠える
「ワンッ!」『噛み付かないッス!』
ロキが言う
「…後は 吠えて脅かすのも 無論 悪戯に舐めたりするのも駄目だ」
ベルグルが怒って吠える
「ワンッ!」『しないッス!』
ロキが考えながら言う
「…それから …そうだな 諸卿 犬たちがやりそうな事と言ったら…」
ベルグルが怒って吠える
「ワウッ!ワワンッ!ワン!ワンッ!」『俺はそんな風に 鳥たちをいじめたりはしないッス!酷いッスよー!ロキ隊長ー!』
ロキとベルグルの和やかな後姿がある
【 ソルベキア城 玉座の間 】
ザッツロードが喜んで言う
「オライオン!」
オライオンが呆気に取られて言う
「…あ?」
ザッツロードがオライオンの下へ駆け向かい手を取って言う
「よく来てくれたね!会えて嬉しいよ!あ… えっと ガライナ殿に用だったのかな?」
オライオンが呆気に取られて言う
「ああ… いや ガライナ… と言うより …えっと」
オライオンがザッツロードに掴まれている手を見る ザッツロードがはっとして手を離して苦笑して言う
「あ ごめん… いや、失礼しました オライオン王子 僕は夢の世界で 貴方とも共に 世界の為に戦っていたんです …と言っても あの世界に居た貴方は ヘクター国王の意識が作り上げていた情報だったと聞きましたが」
オライオンが呆気に取られた後苦笑して言う
「…夢の世界 か …いや、良いぜ オライオンで その王子って呼ばれるのは やっぱり好きになれねぇんだよ」
ザッツロードが苦笑して言う
「それじゃ オライオンと呼ばせてもらうよ ありがとう」
オライオンが表情をゆがめて言う
「ありがとうって 大げさだな?」
ザッツロードが苦笑して頭を掻きながら言う
「あは… 大げさ かな?夢の世界では 君に嫌われていたものだから つい…ね」
オライオンが疑問して言う
「嫌われていた?俺が?…あんたを嫌っていたのか?確か 夢の世界のあんたは 世界を救う勇者様 だったんだろ?世界のために戦ってるって そんな奴を 俺は嫌いになんかならねーぜ?」
ザッツロードが表情を困らせて言う
「うん… そう 世界を救う勇者様 だった… けど、最初から与えられていた 勇者様と言う地位を持っていても 僕は何も分からなくて… 結局 何も出来なかったんだ …だから そんな頼りない勇者だった僕は 夢の世界の君に 愛想を尽かされてしまっていたんだよ 後ロスラグ…いや ベルグル殿にも」
オライオンが呆気に取られて言う
「…何も分からなくて 何も出来なかった?」
ザッツロードが頷いて言う
「うん、僕がローレシアの勇者だと言うことは あの世界に浸透してはいたのだけど 僕自身は 何の情報も知らなかったから 世界中を旅して 情報を集めはしたけど… その情報が足りなかったりしたせいで 失敗する事も多くてね 結局 ヘクターやヴィクトール様の方が よっぽど僕より 世界を救う力になった 本当の勇者様になったんだ…」
オライオンが疑問して言う
「…何も知らないんなら 失敗するのは当然だろ?親父やヴィクトール様は ガルバディアの民の相棒なんだ その夢の世界で色々出来るのは当然なんじゃねーのかな?」
ザッツロードが驚き呆気に取られてオライオンを見て言う
「…え?」
オライオンが表情を困らせて言う
「俺だって 王子にされたと思ったら いきなり親父が眠りに着いちまって… ラインツの祖父ちゃんも 王位をすっぽかして消えちまうし 間抜け大剣使いのレクターが代理国王になるから 王子の俺がしっかり支えろとか 急に言われて… それで やろうとは思ったけど あの間抜け大剣使いのレクターは ほんっとに 何考えてっか分かんねーし 俺だって…」
ザッツロードが呆気に取られている オライオンがはっとして言葉を止め 表情を困らせ視線を逸らして言う
「…だから その …お前が 急に勇者にされても 何も出来ねーって言うのは… 分かるぜ…?」
ザッツロードが呆気に取られた状態から微笑して言う
「オライオン… ありがとう」
オライオンが表情を困らせて言う
「うん?…だから!ありがとうって言うなよ!?オライオンで良いし 変な敬語もいらねぇってのが アバロン流だ!」
ザッツロードが苦笑して言う
「いや、そうじゃなくて …僕の事 理解してくれて」
オライオンが呆気に取られる ザッツロードが微笑して言う
「僕にも 分かるよ 急に王子にされてしまったオライオンの気持ち… 君がアバロンを守りたいと思っていても 何をしたら良いのか分からなくて 周りの期待にも答えたいのに 上手く行かなかったりしているんじゃないかな?僕は あの夢の世界でそんな感じだったから… あ、今も同じ…だけど?はは…」
ザッツロードが苦笑する オライオンが呆気に取られた後苦笑して言う
「…なんだ 同じじゃねーか?」
ザッツロードが困り苦笑で言う
「うん 夢の世界でも現実世界でも 駄目だなぁ… 僕って」
オライオンが呆気に取られてから苦笑して言う
「そうじゃねー ”同じだ”って言ったんだ」
ザッツロードが疑問して言う
「え?」
オライオンが親指で自分とザッツロードを示して言う
「俺と お前が だよ」
ザッツロードが呆気に取られた後微笑んで言う
「オライオン… うん!そうだね!同じだ!」
オライオンが笑んで言う
「へへ… 来て良かったぜ バッツに 会って来いって言われた時には 正直気が進まなかったけど …お前とは 仲良くなれそうだ よろしくな?ザッツロード」
ザッツロードが微笑んで言う
「こちらこそ …あ、僕の事は ザッツで良いよ 仲間や親しい人にはそう呼ばれているんだ」
オライオンが軽く頷いて言う
「分かった それじゃぁ ザッツ!何か… 俺に手伝える事があったら いつでも言えよ?…それから、ソルベキアになんか居たら 息も詰まるだろ?いつでもアバロンに遊びに来いよな!?」
オライオンが出口へ向きつつザッツロードを見る ザッツロードが呆気に取られた後 喜んで頷いて言う
「うん!ありがとう オライオン!ソルベキアでの任務がひと段落した際には 君を訪ねにアバロンへ行かせてもらうよ!」
オライオンが軽く笑って言う
「おう!待ってるぜ!」
オライオンが立ち去る ザッツロードが笑顔から微笑して言う
「嬉しいな… あんなに嫌われていたオライオンから アバロンへの招待をもらえるだなんて… この現実世界こそ まるで夢みたいだ」
ザッツロードがオライオンの後姿を見送る
【 アバロン城 玉座の間 】
レクターが笑顔で言う
「皆、良く集まってくれた 約束の今日 この日この時間通りに 皆がちゃんと集まってくれるとは 正直思ってねーで居たんだが… 私は嬉しい!」
ガイが表情を困らせつつ言う
「確かに この日の約束を取り次いだのは 半年以上前と 幾分期間は広くあったが…」
ヴァッガスが言う
「一度皆で決めたんだ!約束を守るのは 仲間として当然だろ?」
ロドウが苦笑笑顔で言う
「でも、ヴァッガスは 危うくスプローニ国に捕まって この日の集まりに来られないかもしれなかったんでしょ?スプローニの第二国王様に助けてもらったから 大丈夫だったんだって 僕のお友達が教えてくれたよ?」
ヴァッガスが衝撃を受ける メテーリが驚き ヴァッガスに詰め寄って叫ぶ
「ちょっと!ヴァッガス!?貴方はスプローニじゃなくて ツヴァイザー担当だったでしょ!?なのに何でスプローニなのよ!?おまけに捕まりそうになったって!?一体何したのよ!?」
ヴァッガスが困り慌てて言う
「ちょっちょっと待てって!俺は別にっ!ってーか 大体何でシュレイザー担当のロドウが スプローニの事まで知ってるんだよ!?それから俺は そんな大した事をしたって訳じゃねーんだぞ!?」
ロドウが笑顔で言う
「何でも スプローニの王様の犬を勝手に人の姿にしてしまったとか それが スプローニの法律ではいけない事だったんだよね?そもそも スプローニの犬は大切な国民だから 飼い主以外の人が 人の姿にするのは違法なんだって!」
メテーリが呆気に取られる ヴァッガスが慌てて怒って言う
「その法律だって!あの時スプローニの第一国王がイキナリ作って それで法律違反だとか言うんだぜ!?オカシイだろ!?…それはそうと ロドウ!?何でお前がそんなに詳しいんだよ!?」
ロドウが笑顔で言う
「シュレイザーの新しい友達に聞いたんだよ 彼らは情報収集が趣味だから!どんな小さな隙間にでも入り込んで 後住民族の人たちの話を一杯集めるんだ!それでツヴァイザー担当のヴァッガスが スプローニに現れたって聞いた時から 僕、ヴァッガスの事で何かあったら教えて欲しいって 頼んでおいたんだ!」
ヴァッガスが怒って言う
「余計な事頼むんじゃねーって!」
ロドウが困り笑顔で言う
「え?そうかなぁ?だって今回の事だって もし本当にヴァッガスが捕まっちゃってたら 僕がガイや皆に伝えて 助けてあげないといけなかったじゃない?」
メテーリが呆れて言う
「そうよ!馬鹿ヴァッガス!ロドウに感謝しなさいよ!」
ヴァッガスが困り怒って言う
「捕まってねーんだから いーじゃねぇーか!?」
ガイが言う
「それはそうと ヴァッガス 貴殿は何故 ツヴァイザーを離れ スプローニへ向かったのか?何か スプローニで思わしくない事でも見受けられたのか?」
ヴァッガスが困りつつ言う
「あぁ~… まぁ なんっつーか ちょっと気になってよ…?」
ガイが疑問して言う
「気になった?それは…?」
ガイの言葉の途中でレクターが苦笑笑顔で言う
「ガイ、ヴァッガス すまねーがその前に」
ガイたちがレクターへ向く レクターが言う
「元々依頼してあった お前たちの担当国の情報を 教えてもらえねーか?こっちも予定通りの時間に情報を送信しねーと ガルバディアの短気な代理国王様が シリウス国王と同じ様に 私を苛めるかもしれねーんだ …ちょっと興味がなくもねーんだが やっぱり 私は 自分が苛められるのは好きになれねー …そんな気がする!」
レクターが笑顔になる ガイたちが呆気に取られ顔を見合わせる
【 ガルバディア城 】
バーネットが目を瞑ってプログラムを行っている ピピッと音が鳴り別のプログラムが入り込んで来る バーネットが疑問して言う
「…うん?あぁ そぉか 今日は奴らからの報告を 確認する日でやがったか… 忙し過ぎてすっかり忘れてやがったぜぇ」
バーネットが目を開くと周囲のプログラムが消える バーネットがふうっと溜息を吐いて玉座へ身を静める ヴィクトールが振り返り心配そうにやって来て言う
「バーネット… 疲れてるんじゃない?無理は良くないよ…」
バーネットが目頭を押さえつつ言う
「あぁ… 正直 疲れるぜぇ… とは言え 今だけはちょいと無理をしなけりゃぁならねぇ時でやがる…」
ヴィクトールが表情を困らせて言う
「この前の カネ何とかを元のプラントへ帰したのが そんなに大変な事になっちゃったの?」
バーネットが言う
「あぁ… 奴を帰すってぇ事より 第6プラントの管理者へ接触した その事の方が面倒を引き起こしてやがる 結界情報をちょいといじった修正が こんなに大変でやがるとはな」
ヴィクトールが疑問して言う
「結界情報…?」
バーネットが言う
「カネダタマジ 奴をただ おっ帰すだけだったなら 良かったんだが… ペテルギウスの奴に もう一人のシノザキカエデってぇ奴の事を確認する予定だった …だからぁ わざわざこっちが防壁を弱めて会話をしてやったんだが 結局そいつの事も分からなかった上に 弱めた防壁からこっちの結界情報を見られっちまった… たくっ お陰で 急いで全体的な結界情報を 変更してやらなけりゃぁならねぇ 苦手だってぇのに…」
ヴィクトールが表情を困らせて言う
「そう… 大変だね バーネット… なのに僕は…」
バーネットが一瞬呆気に取られヴィクトールを見る ヴィクトールが表情を困らせている バーネットが苦笑して言う
「ハッ!馬鹿 てめぇが落ち込みやがってどぉすんだよ!?」
ヴィクトールが困り言う
「うん… だって… 僕は 何も出来なくて 君を助けて上げられないのだもの 僕も… バッツスクロイツやデスたちの様に プログラムが出来たら」
バーネットが言う
「何言ってやがる!?てめぇは俺の猫だろぉ?」
ヴィクトールが疑問して言う
「え?」
バーネットが悪笑んでヴィクトールを見て言う
「猫がプログラムなんざやりやがったら それこそ 恐っかねぇじゃねぇかぁ?」
ヴィクトールが呆気に取られる バーネットが微笑して言う
「シリウス国王の猫と同じだ てめぇも 俺のそばに居れば それだけで十分 力になってやがる 何も出来なくなんざねぇんだよ」
ヴィクトールが呆気に取られてバーネットを見つめる バーネットがはっとして視線を逸らして頬を赤く染めて言う
「だっだだっ だからぁっ! …てめぇは変わりなく そこら辺でにゃーにゃー言ってやがれってぇんだぁっ!余計な心配なんざしやがるんじゃねぇよぉっ 馬鹿野郎ぉ…」
ヴィクトールが呆気に取られて瞬きした後苦笑して思わず笑う
「ふ… ふふふっ…」
バーネットが怒って言う
「わっ 笑いやがるんじゃねぇよ!このクソ忙しい時にっ!てめぇも 同じ緊張感を… いやっ!んなもんは持たなくて良いがぁ… とにかく!黙ってにゃーにゃー言ってやがれってぇんだ!」
バーネットがそっぽを向く ヴィクトールが呆気に取られて言う
「黙ってにゃーにゃーって…?ふふっ」
ヴィクトールが笑顔で言う
「にゃーい!バーネット お仕事頑張ってにゃー!」
ヴィクトールがバーネットにじゃれる バーネットが恥ずかしがって怒って言う
「なぁあ!?ちょっ おいっやめっ やめやがれっ!」
ヴィクトールが笑顔でじゃれ付く バーネットが殴って踏み付ける ヴィクトールが笑顔で苦笑する
【 ローゼント城 沐浴室の前 】
ヴェルアロンスライツァーが跪き頭を下げて言う
「アンネローゼ様 ヴェルアロンスライツァー 只今戻りました」
室内
沐浴中のアンネローゼがはっとしてからホッと肩の力を抜き微笑む
室外
アンネローゼの静かな声が聞こえる
「ヴェルアロンスライツァー お待ちしていました」
ヴェルアロンスライツァーが頭をさらに下げて言う
「はっ!お許しを頂きましたとは言え アンネローゼ様をお守りするべき剣である私が 2日もお傍を離れるとは 真に申し訳ありません」
室内
アンネローゼの体を女中が拭いている アンネローゼが微笑して扉へ顔を向けて言う
「いいえ 正確には1日と半日です スプローニから このローゼントへ戻るには 本来であるなら 最低でも3日はかかる所 良く急ぎ戻ってくれました」
室外
ヴェルアロンスライツァーが僅かに微笑する 沐浴室の中からアンネローゼの声が届く
「…とは言え 今回は その短いとされる1日と半日も 私にはとても長くに感じました 貴方の戻りを 今か今かと待っていたのです …丁度 スプローニからのロキ国王を待っていた 貴方と同じですね?」
ヴェルアロンスライツァーが疑問して顔を上げると同時に 扉が開きアンネローゼが現れる ヴェルアロンスライツァーがはっとして改めて頭を下げる アンネローゼが微笑する
アンネローゼの部屋
アンネローゼが椅子に腰を下ろす ヴェルアロンスライツァーが数歩先の床に跪き頭を下げている アンネローゼが苦笑し女中たちへ手で合図をして下がらせる 女中たちが礼をして立ち去ると アンネローゼが言う
「ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが返事をする
「はっ」
アンネローゼが言う
「…ロキ国王のお加減は如何でしたか?」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「はっ!病状は ただの夏風邪と言った所 宝玉を使おうとした際に 急に力を奪われた為 一時的に意識を失うに至ったと… 医師の診断によりましても 心配はなく 数日休みを取れば 問題ないとの事 当人も 多少熱に伏せてはおりましたが あの様子であれば 翌日にも何事も無かったかの様に 銃を撃ち鳴らしていると思われます… 彼はその様な男ですので」
ヴェルアロンスライツァーが頭を下げたまま我知らず微笑する アンネローゼが間を置いて苦笑してから言う
「…そうですか それは安心しました 夢の世界で ずっとロキ殿と行動を共にして来た貴方が そう仰るのでしたら もう案ずる必要は無い様ですね?」
ヴェルアロンスライツァーが笑んで答える
「はっ!」
アンネローゼが苦笑してから言う
「…所で ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが礼を深くする アンネローゼが言う
「丁度貴方が向かわれていた頃 そのスプローニへ ツヴァイザーのリーザロッテが お邪魔をするという予定でしたが… 今ここに居られる程に急ぎ スプローニを後にしたのでは 接触する事は無かったでしょうか?」
ヴェルアロンスライツァーが軽く驚き 顔を上げて言う
「リーザロッテ女王が スプローニへ?」
アンネローゼが微笑して言う
「はい 我が娘リーザロッテが先日出産を終えた事は ご存知ですね?このローゼントからも 貴方からも 多くの祝いの品を贈って頂きました」
ヴェルアロンスライツァーが頭を下げて言う
「はっ!しかと覚えております!アンネローゼ様の御息女であらされる リーザロッテ女王様の御祝い事!このヴェルアロンスライツァー 我が事以上の喜びと心得 僭越ながら ローゼントの王配として 祝福の品を添えさせて頂きました!」
アンネローゼが微笑して言う
「リーザは一番に このローゼントへ その礼を兼ねての披露目へ参りたいと連絡を遣して来ましたが… 私の独断で 他国を優先させることに致しました 彼女はその際 ローゼントの次に向かうつもりであった スプローニへ伺うと言っていたのです …ですので もし その通りにスプローニへ向かったのでしたら 貴方とも遭遇していたかと」
ヴェルアロンスライツァーが話の途中で意外そうな表情で上げていた顔を はっとさせ 頭を下げて言う
「…はっ …残念ながら リーザロッテ女王様とは お会いするに至りませんでした …しかしリーザロッテ女王様が このローゼントの次に選ばれていたのが スプローニであったとは?ご尊母であらされる アンネローゼ様に次いで 向かうとなれば」
アンネローゼが微笑して言う
「そうとあれば 今の世で 多くの力を持つ国… アバロンやローレシア そして …いえ ツヴァイザーの隣国であり 本当の力を持つ国と言えば やはり ベネテクトを優先するべきでしょうね それなら他の 3大国家とされた国々には 隣国であったが故のと 言い訳も立ちましょう …しかし、彼女は それらの事は考えず 独自の考えによって 優先する国を決めたようです そして、その一番とされた国が スプローニであった事は 意外であったとは言え貴方にとっても… 喜ばしい事でしょう?」
アンネローゼが苦笑する ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られた後 微笑して言う
「はい リーザロッテ女王様は アンネローゼ様同様に 博識聡明なる世界の勇者様であらされます そのリーザロッテ女王様に他国を置いて優先して頂けたとあれば スプローニの王ロキも きっと 光栄に思う事でしょう」
アンネローゼが微笑した後 間を置いてくすくす笑い出す ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られ困り苦笑をして言う
「あ… アンネローゼ様?私は… 何か… 可笑しな事を 申し上げましたでしょうか…?」
アンネローゼが笑いを収めて言う
「ふふふ… いえ、ごめんなさい 何も可笑しな事はありません ただ ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが頭を下げて言う
「はっ!」
アンネローゼが微笑して言う
「貴方は… 本当に 心の奥底から 他者の喜びを 我が事の様に喜び 更には、誇らしくまで思う事が出来るのですね それは 貴方の名がそうさせているのか… それとも ヴェルアロンスライツァーと言う名を与えられた あなた自身が持ち合わせた 心なのでしょうか…?どちらにしても 素敵な事だと私は思います」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られた後慌てて礼をして言う
「は…?はっ!アンネローゼ様より お褒めのお言葉を頂き このヴェルアロンスライツァー 光栄の至り!」
アンネローゼが微笑んで言う
「…しかし、もし その喜びが 本当に貴方自身の身に降り注ぐものであったなら 貴方もきっと他者を喜ぶ それ以上の喜びを 貴方自身が得て下さる事でしょう ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが疑問してアンネローゼを見ている アンネローゼが微笑して言う
「実は…!」
ヴェルアロンスライツァーが驚き目を見開く
【 スプローニ城 ロキの部屋 】
ロキが片手で額を抑えつつベッドに腰を下ろし 疲れた表情で溜息を吐いて言う
「はぁ…」
ベルグルが疑問して言う
「ロキ隊長?疲れてるッスか?やっぱり病み上がりだったからッスか?けど、今日は一日玉座でゆっくりしてたッス ロキ隊長はそんなに疲れるほど 動いてなんかいないッスよ?」
ロキが顔にかかる手の指の隙間からベルグルを見て言う
「…卿は あのキンキン声の高笑いに 疲れはしなかったのか?…人の姿をしていても 嗅覚は勿論 犬の聴覚は健在なのだろう?」
ベルグルが笑顔で言う
「そおッスね!俺は人の姿であっても やっぱり犬ッスから 匂いも音も 後住民族の人たちより いっぱい分かるッスよ!だから…」
ベルグルの脳裏に回想が流れる
回想
玉座の間
玉座に座っているロキへ 入り口の衛兵から声が届く
『ツヴァイザー国女王 リーザロッテ様が ロキ陛下へ』
言葉の途中で リーザロッテの高笑いが響く
『オーホッホッホッホッ!』
ロキが衝撃を受ける ベルグルが笑顔になって言う
『リーザロッテ女王様と レリアン王妃様も居るッス!それから… この匂いは初めて…』
ベルグルが空間の匂いを嗅ぐ リーザロッテが現れ槍で床を突いてから言う
『ええ!その通りでしてよ!ベルグル第二国王!本日参りましたのは 私だけではなくってよ!私の優秀勇敢なる相棒 デネシア王国元女王 レリアンと!そして!』
リーザロッテが片手に抱えているローブを開いて言う
『先日お祝いを頂いた 私の初娘 ツヴァイザーの新たなる王女も一緒に お邪魔させて頂きましてよー!オーホッホッホッホッ!』
赤ん坊が楽しそうに両手を挙げる ロキが表情を引き攣らせつつ言う
『… ああ… 諸卿の来国を 歓迎す…』
リーザロッテが聞いておらずに言う
『とは言え 私も!まさか 私のお礼周りに レリアンや竜族の皆が協力して下さるとは 思いも致しませんでしたの!ですから 予定していた人数を遥かに超えてしまいましてよ!まずは、その事へ対してのお詫びを!』
ロキが言う
『…いや、問題ない 我々も』
リーザロッテが言葉を制して言う
『それでも!スプローニの方々は 私と共に来てくれた その者たちへ対しても 丁重なお持て成しを頂きましたの ですから やはりそちらを先に お礼をいたしましてよ!』
ロキが表情を引き攣らせつつ 間を置いて言う
『… ああ… 礼には及ばない… 確かに デネシアは 俺たちスプローニにとっては 少々厄介な相手では有るが 今回は 貴女とツヴァイザーの 祝福事であると…』
リーザロッテが聞いておらずに言う
『あ!それより先に 主旨を述べるべきでしてね!?ロキ国王!この度は 私の可愛い初娘へ 素敵なメッセージとお祝いの品を頂き とても感謝致しましてよ!私はそれらに心打たれ!このスプローニを第1のお礼周りの国へと決めて差し上げましたの!』
ロキが迷惑そうな表情で言う
『…そうか では スプローニとしても その事へ対して礼を』
リーザロッテが言う
『でも、早速スプローニへ向かおうと馬車を出した途端… ふとこの子が生まれる直前にあったツヴァイザーの危機を救ってくれた カイッズの皆の事が頭に過ぎりましたのよ!巨人族の皆も カイッズ兵の皆も 力及ばぬ相手に命がけで向かい 私たちを守ってくださったわ!…そんな訳で!当初の予定を急変して ついつい カイッズを先に致してしまったの!』
ロキが呆れつつ言う
『…そうか だが俺も… 少々訳有って準備が遅れた だから気にしなくて…』
リーザロッテが聞いておらずに言う
『とは言え そのお陰で!結果として レリアンや竜族の皆とも会えたのでしたから!あの選択は正しかったのでしてね!竜族の皆のお陰で 時間もそれほど掛からなかったですし!だから』
ロキが表情を引き攣らせて言う
『…だから?』
リーザロッテが高々に言う
『私はスプローニへの到着が 当初よりだいぶ遅れた事へ対しては 微塵も詫びる気持ちは無くってよー!?オーホッホッホッホッ!』
ロキが衝撃を受け怒って言う
『ねぇのかよっ!?』
リーザロッテが聞いておらず高笑いを止めて言う
『さて、ここからが本題でしてよ!ロキ国王!スプローニは元々ツヴァイザーの一部隊名であり こちらの大陸へ移り住んだ頃 ツヴァイザーから分離した その部隊と一部の人々によって作られた国である事はご存知でして?』
ロキが視線を強めて言う
『…それが?』
リーザロッテが微笑してロキへ歩みを進める ロキの前方両脇に控えていたスプローニ衛兵2人が気を入れ 上着の内に備えている銃へ手を伸ばす ロキが言う
『…警戒は解け 友好国ツヴァイザーの女王が 生まれて間もない我が子を腕に 他国の王へ 危害を与える事など 無いだろう』
スプローニ衛兵2人が動きを止め 一度ロキへ視線を向けた後 元の位置へ戻る リーザロッテがそこを抜けまっすぐにロキの前まで向かい立ち止まる ロキが視線を向ける リーザロッテが微笑して 槍を左脇に居るスプローニ衛兵へ預ける様に向ける スプローニ衛兵が一瞬驚いた後上着の内へ入れていた手を抜いてそれを受け取る リーザロッテが両手で赤ん坊を抱いて微笑して言う
『ツヴァイザーの古いしきたりにありましてよ ツヴァイザーの国で生を受けた女子は 生後間もなく 一番の力を持った部隊長の腕に抱かれると 以後戦いの道具によって その命が絶たれる事は無いのだ…と』
ロキが驚きリーザロッテを見る リーザロッテが微笑してロキを見て言う
『長きに渡り 決別してしまっていたツヴァイザーの最強部隊 スプローニ部隊の隊長が ツヴァイザーの女王へ信頼の証を返納して下さった この事へ対し 私もツヴァイザーの女王として そして、この子も ツヴァイザーの新たな王女として 貴方方のお気持ちを 受け入れる所存でしてよ!』
ロキが目を細めて言う
『…確かに 古きツヴァイザーの紋章が入った あの盾は返した 俺たちスプローニ国が ツヴァイザーへ向けていた規制も全て解除した …だが それらは 俺たちのスプローニ国を ツヴァイザーの一部とするなどと言う訳では 決してない …俺たちは 俺たちの国で生きる その為に 貴女とも対等に向き合うと言う意思を 表したまでだ』
リーザロッテが笑んで言う
『ええ!勿論 承知していてよ!私はもちろん!今のツヴァイザーの民たちの中に スプローニをツヴァイザーの一部だと思っている者はいらっしゃらなくてよ!』
ロキが言う
『…ならば 俺が貴女の娘を抱く理由は無い …所定の謁見位置まで下がれ』
リーザロッテが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
『私は言った筈でしてよ?ツヴァイザーの女王である私と 王女であるこの子で 貴方方の好意を受け入れる所存であると』
ロキが視線を強める リーザロッテが笑顔で言う
『それとも!華奢な女である私の声は 勇猛なるスプローニ部隊長の耳までは 届かなかったのかしらっ!?オーホッホッホッホッ!』
ロキが頭を抑えつつ怒って言う
『うるさいっ!頭痛の抜け切らん頭に響くほど 十分に聞こえているっ!』
リーザロッテが高笑いを収めて言う
『ロキ国王?私もただ 貴方にのみ好意を強要するつもりは なくってよ?このスプローニ国には たくさんの憲法と共に 古くからの決まり事も多くてね?その中から 私は一番素敵だと思う憲法を見つけて来て差し上げましたの』
ロキが疑問する リーザロッテが高々と言う
『スプローニ国憲法!1286条22項!スプローニ国国王より与えられし名は!その者の生涯に掛けての任務責務と心得え 真っ当に精進するべし!また!その法を犯し者は 第3級実刑に処する!』
ロキと玉座の間に居る全ての者が驚く リーザロッテが言い放つと共に向けていた人差し指をロキへ向けたまま言う
『第3級実刑とは即ち 公開処刑の事でしてね?従って 自らこの法律を実行なさろうとする方は稀ではなくって?だって 大切な生まれて間もない我が子に 自国の王からとは言え こんな難しい生涯責務を頂くだなんて 論外ですもの!…でも それ程のものであるからこそ この憲法は 今の私たちには相応しいものでしてよ!』
ロキが驚いて言う
『…今の俺たちに?…まさか!?』
リーザロッテが赤ん坊をロキへ差し出して言う
『ロキ国王!私の大切な初娘に 素敵な名前を与えて下さって?私は 今日この日のために この子の名前を決めずに居ましたの もう10日になりましてよ?これ以上名前の無いままでは この子も可愛そうでしてよ!』
ロキが呆気に取られている リーザロッテが微笑して差し出している手をもう一度向けて言う
『さぁ!女の細腕に苦労を掛けるだなんて スプローニの隊長… いえ スプローニの王は そんなに非情な方でして?』
ロキが目を細める リーザロッテが僅かに表情を苦しめ 一瞬の後表情をしかめて腕を下ろし掛ける ロキがリーザロッテの腕ごと抱き抑えて言う
『…メル』
リーザロッテが驚いて横のロキへ向く ロキが正面を向いたまま言う
『…メルティーナロッテ』(自らの考えと意思を持つ者)
リーザロッテが驚きの表情のまま止まる ロキがリーザロッテの身を片手で起こす もう片方の手にメルティーナロッテが抱かれている リーザロッテが呆気に取られる ロキが両手でメルティーナロッテを抱いて言う
『…メルティーナは スプローニの言葉 …ロッテは諸卿ツヴァイザーにおいて 意思を持つ者と言う意味なのだろう?…この子が 両国の友好を表すと言うのなら 相応しい筈だ』
ロキがメルティーナロッテをリーザロッテへ向ける メルティーナロッテがロキへ両手を向けて喜ぶ ロキが呆気に取られる リーザロッテが微笑み言う
『メルティーナロッテね!素敵な名前!早速メルも喜んでいましてよー!オーホッホッホッホッ!』
メルティーナロッテが楽しそうに笑う ロキが呆気に取られた状態から苦笑して言う
『…貴女も母親に似そうだな?』
メルティーナロッテが嬉しそうに笑う ロキが苦笑する ベルグルが呆気に取られた状態から 大いに喜んで笑顔になる
回想終了
ベルグルが笑顔で言う
「リーザロッテ女王様も!メルティーナロッテも!とーっても嬉しそうに笑ってたッス!だから そんな2人の声をいーぱい聞けて 俺もチョー嬉しかったッスよー!ロキ隊長ー!」
ロキが疲れた様子で言う
「…喜びの声であっても あの声を多く聞いて嬉しいとは …俺にはやはり耐え切れん …だが あのリーザロッテ女王には驚かされた まさか スプローニの法と流儀を得て その上で我が子である ツヴァイザーの王女へスプローニ国憲法一千二百八十六条二十二項を与えて欲しいなどと言って来るとは」
ベルグルが首を傾げて言う
「う?けど!先にツヴァイザーへ友好の品を贈ったのは ロキ隊長ッスよね!?リーザロッテ女王様は そのお礼に来たッスよ?ロキ隊長は… 最初からこうなるって分かっていたんじゃないッスか?それで あのツヴァイザーの盾を返したんじゃ…?」
ロキが言う
「…強い友好の証になる とまでは思っていた通りだった だが それ以上のものになるとまでは」
ベルグルが笑顔で言う
「きっとリーザロッテ女王様も とーっても嬉しかったんッスよ!これで スプローニとツヴァイザーは チョー仲良しになるッス!」
ロキが苦笑して言う
「…仲良しになる…か」
ベルグルが疑問して言う
「違うんッスか?」
ロキが言う
「…俺たちスプローニの魔法銃使いへ 力を与える魔力者は ローレシアの魔力者だ そして現在 ローレシアの魔力者は デネシアの魔力者に遅れを取り始めている このままローゼント経由の義理で送られる ローレシアの魔力者を使う状態では スプローニの魔法銃使いたちは いずれ デネシア、ベネテクトの魔法傭兵部隊に手も足も出なくなってしまうだろう …だから俺は」
ベルグルが驚いて言う
「まさか!ローレシアの皆を捨てて!デネシアの魔力者をスプローニへ呼ぶんッスか!?ロキ隊長!」
ベルグルが困り怒る ロキが苦笑して言う
「…落ち着け そんな事は考えていない そもそも …現状のこの世界は平和そのものなのだ 常に戦いの中にあった あの夢の世界とは違う」
ベルグルが困って言う
「なら… どう言う事ッスか!?俺にも分かるように 説明して欲しいッス!」
ロキが困り苦笑して言う
「…現状では念の為にと言った所だが ローレシアより力を持つかもしれんデネシアとガルバディアの協力体制 その両国と友好が深い国はベネテクトだが… あのツヴァイザーの女王リーザロッテの相棒だと 高々に言われているのは」
ベルグルが呆気に取られて言う
「デネシアの元女王様でヴィクトール陛下のお妃様!レリアン王妃様ッス!」
ロキが苦笑する ベルグルが言う
「それじゃ!リーザロッテ女王様が レリアン王妃様の相棒だから ロキ隊長は ツヴァイザーと友好を結んだって事ッスか!?」
ロキが微笑して言う
「…そう言う事だ 友好を利用して 他国の脅威に備える …平和な世界においての 実に平和的な策 だろ?」
ベルグルが呆気に取られた後視線をめぐらせて困って考えて言う
「う… うう~?うぇ~と… そ、そうッスね 平和な世界に 平和な方法で… 平和ッスよ…ね?けどぉ~…」
ベルグルが困って言う
「…何だか …卑怯と言うか …なんか~ あんまりカッコ良くないッス…」
ロキが苦笑して言う
「…フッ そうだな…」
ベルグルが困り苦笑する ロキが溜息を吐いて言う
「…今日はもう休む …あの声に疲れた 以後ツヴァイザーとの交渉には リーザロッテ女王ではなく レイト王配をよこす様に頼むとしよう」
ロキが立ち上がり移動する ベルグルが笑顔で言う
「俺は!元気なリーザロッテ女王様は 嫌いじゃないッスよ!?ロキ隊長も!…もう少しは元気な方が良いんじゃないッスか?スプローニの皆もきっと!」
ロキがコートを脱ぎながら軽く振り向いて言う
「…やめてくれ 俺には合わん」
ベルグルが疑問して言う
「そうッスかぁ?けどロキ隊長だって たまに元気になるッスよ?俺は良いと思うッスけど!でも ヴェルアロンスライツァー副隊長にッスね!ロキ隊長が元気になって 悪い言葉を使っちゃう時には注意してくれって 頼まれたッス!だから俺は やっぱり 注意するッスけど!けどッスね!」
ロキが言う
「ベルグル …もう良い 卿の言葉も あのリーザロッテ女王と同等に騒がしい 今日は休ませろ 俺は…」
部屋の通信機が鳴る ロキとベルグルが一瞬驚き通信機を見て ロキが嫌そうに言う
「…まったく」
ベルグルが不思議そうに言う
「こんな時間に誰ッスかね?」
ロキが言う
「王の部屋に 直接通信が繋がるのは スプローニの友好国のみだ そして、この礼儀知らずな時間と考えれば 卿とて分かるだろう」
ベルグルが嬉しそうに言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長ッスか!?」
ロキが不満そうな表情で通信機の前に立って言う
「ふんっ!奴であるなどと!俺は確信して居ないぞ!?ただ このスプローニの友好国は 現在 ローゼントかローレシア そして今日を持って ツヴァイザーが加わった訳だが!ローレシアは勿論!ツヴァイザーとて今日の今夜に無礼を行ったりはしないだろう!?そうとなれば!」
ベルグルが笑顔で言う
「やーぱり!ヴェルアロンスライツァー副隊長ッスー!」
ロキが通信機を着信させつつ嫌そうに言う
「ツヴァイザーと友好を繋いだと聞いてっ わざわざこんな時間に連絡して来たのかっ!?ヴェルア…っ!?」
通信モニターにアンネローゼがドアップに映って叫ぶ
『ヴェルアロンスライツァーの相棒であられる!スプローニのロキ国王殿ーっ!?』
ロキが驚きに呆気に取られて言う
「…なっ?」
通信モニターにアンネローゼが涙ぐみながらに怒って映って叫ぶ
『どうかっ!このヴェルアロンスライツァーの心境を理解して!その上で説得をして頂けましてっ!?不本意ですが!実の妻である私より 相棒の貴方の方が きっとお上手でいらっしゃる事でしてよーっ!?』
ロキが表情を引きつらせて呆気に取られる ベルグルがぽかーんとした後 喜んで言う
「やっぱり凄いッス!カッコイイッスよ ロキ隊長!匂いでも音でも分からない 通信の相手を当てちゃったッス!何でローゼントからの通信でも 相手がヴェルアロンスライツァー副隊長じゃないって事が 分かったんッスか!?ロキ隊長!?」
ロキが呆気に取られた状態から困惑の表情で何とか言う
「…まさか …あのリーザロッテ女王のキンキン声の元凶が アンネローゼ女王だったとは …血は争えんな」
ロキの耳がうるさそうに強調される アンネローゼがロキの言葉を聴かずに言う
『ちょっと!?私の声が 聞こえていらして!?聞こえていらしてね!?』
ロキが呆れて言う
「…あ、ああ 十分に…」
アンネローゼが怒って言う
『では!この分らず屋な ヴェルアロンスライツァーを 宜しくお願いしますわ!ロキ国王!ふんっ』
アンネローゼがぷいっと振り返り 扉を開け部屋を出て 扉を叩き閉めて去って行く ロキがその様子をモニターで眺めつつ呆れ 間を置いて言う
「…… …で?」
ベルグルが疑問する ロキの視線の先 モニターの下隅にヴェルアロンスライツァーが跪いて 小さく映っている
ロキが言う
「…懐妊?…アンネローゼ女王が?…つまり その子は…」
ベルグルが一瞬呆気に取られた後 喜んで言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長!おめでとうございますッスー!」
ロキが からかう様に笑んで言う
「…フッ 王を守る剣として?愛しのアンネローゼ様の王配となってさえ 常に跪き頭を下げている卿が …結局やる事は やっていたのだなぁ?くく…っ」
ロキが笑みを堪える 通信モニターに移るヴェルアロンスライツァーが衝撃を受け 僅かに頬を染めつつ困り怒って言う
『わっ 私とてっ!我が王である アンネローゼ様に!その様な無礼を働く事に な、なろうとは…っ 無論!微塵も思ってなど居なかったのだっ!し、しかし…っ』
ロキが悪笑んで言う
「…ふん?別に良いだろう?公に 正式に 結婚した男女が 今更何を言ってやがる?」
ヴェルアロンスライツァーが怒って叫ぶ
『ロキーっ!貴殿と言う男は!国王となってまで その物言いは何たる事かーっ!言葉の乱れは 風紀の乱れ!修正致すようにと!私は常日頃から幾度も貴殿へ注意勧告をっ!』
ロキが気を取り直し 苦笑して言う
「…どうせ “アンネローゼ様からの御命令” だったのだろう?…だが 王とは言え女性であるアンネローゼ殿へ その様な命令を口にさせたとは …卿の方が よっぽど無礼で問題であると 俺は思うがな?」
ヴェルアロンスライツァーが表情を困らせて言う
『うっ!そ… それは…』
ロキが気を取り直して言う
「…それで?過ぎた事は良いとして あの様子は何事だ?愛しのアンネローゼ様のご命令なら 火の中水の中 それこそ何でもする卿が 一体何を…?」
ヴェルアロンスライツァーが表情を落とす ベルグルが疑問して怒って言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長!?折角アンネローゼ様のお腹に ヴェルアロンスライツァー副隊長の赤ちゃんが宿ったッスのに 嬉しくないんッスか!?こんな時は!やっぱりあのリーザロッテ女王様みたいに いーっぱい 喜んでッスね!…って う?ロキ隊長まで?」
ベルグルが疑問してモニターのヴェルアロンスライツァーとロキを見比べる ロキが思案から間を置いて言う
「…なるほど アンネローゼ殿は 俺よりも年上だ 正確な年齢までは聞き及んでいないが」
ヴェルアロンスライツァーが表情を落とし言う
『ああ… アンネローゼ様は 先日46度目の御祝いを行った所だ …故に私には どうしても』
ロキが目を細めて言う
「…高齢出産 卿は アンネローゼ殿の身を案じ 出産を反対したのだな?」
ベルグルが驚く ヴェルアロンスライツァーが目を閉じて俯く
回想
アンネローゼが怒って言う
『一体どういう事ですっ!?ヴェルアロンスライツァー!』
ヴェルアロンスライツァーが更に頭を下げて言う
『はっ 申し訳ございません…』
アンネローゼが怒って言う
『謝罪の言葉を聞きたいのでは ありませんっ!私は…っ!』
アンネローゼが表情を悲しませヴェルアロンスライツァーを見下ろして言う
『貴方も… 貴方と私の子が宿った この事を… きっと大いに喜んで下さるものだと思って…っ 私は何時この喜びを貴方へ伝えようかと 日々胸を躍らせていましたのに!なのにっ!貴方と言う方はっ!』
ヴェルアロンスライツァーが下げている頭を更に下げて言う
『…申し訳ございません アンネローゼ様 しかしながら… 失礼つかまつれば アンネローゼ様は 恩年46歳と…』
アンネローゼが怒って言う
『それは私自身が十分に分かっております!出産適齢期などは とうに過ぎておりますわっ!しかし!私は何としても この子を!』
アンネローゼが自分の腹に手を当てる ヴェルアロンスライツァーが頭を下げて叫ぶ
『アンネローゼ様!どうかっ!どうか アンネローゼ様は アンネローゼ様の御身を 御自愛下さいませっ このヴェルアロンスライツァー 一生の頼みにございますっ!』
アンネローゼが驚きに目を見開いた後泣き出しそうになるのを必死に堪えて言う
『そこまで… 言うのでしたら…っ』
ヴェルアロンスライツァーがはっとして安堵の表情で顔を上げる アンネローゼが怒って言う
『私はこの事を 貴方の 大好きな スプローニのロキ国王に 言いつけますわっ!』
ヴェルアロンスライツァーが衝撃を受け 慌てて言う
『え!?ア、アンネローゼ様っ!?わ、私がロキを だっ大好きとは…!?い、いえ!そんな事より アンネローゼ様っ!ロキは スプローニの王でございますっ ローゼントの …い、いえ!私どもの私事を 他国の王にっ!?それも この時間ではっ!』
ヴェルアロンスライツァーが一度時計を見てアンネローゼを見る アンネローゼが通信機を操作しながら言う
『知りませんわっ!もうっ!こんな理不尽な事がありましてっ!?』
ヴェルアロンスライツァーが止めようと近寄って来て言う
『アンネローゼ様っ』
アンネローゼが通信機の操作を終え ヴェルアロンスライツァーへ振り返って叫ぶ
『お黙りなさいっ!ヴェルアロンスライツァー!』
ヴェルアロンスライツァーが瞬時に下がり跪いて頭を下げて言う
『ははーっ!』
アンネローゼが通信機へ向く 通信が繋がりモニターにロキが映り ロキが言う
『…ザーと友好を繋いだと聞いてっ わざわざこんな時間に連絡して来たのかっ!?ヴェルア…っ!?』
アンネローゼが怒って言う
『ヴェルアロンスライツァーの相棒であられる!スプローニのロキ国王殿ーっ!?』
ヴェルアロンスライツァーが下げている表情を困らせる
回想終了
ヴェルアロンスライツァーが通信モニターにしがみ付いて言う
『ロキ!このヴェルアロンスライツァー 一生の頼みだ!どうか アンネローゼ様に 御出産をお止めになる様 説得してくれっ!』
ロキが呆れて言う
「…俺はそのアンネローゼ殿に 卿の心境を理解した上で 卿を説得する様にと 頼まれたのだが?」
ヴェルアロンスライツァーが言う
『私の心境を理解した上で アンネローゼ様を説得してくれっ!ロキ!』
ロキが溜息を吐いて言う
「はぁ…」
ヴェルアロンスライツァーが困り果てて言う
『ロキっ!貴殿は 相棒である私の頼みを 聞いてはくれぬのか!?』
ロキが言う
「…卿は何時 相棒である 俺の頼みを聞いたんだ?」
ヴェルアロンスライツァーが衝撃を受け困って言う
『うっ… そ、それは…』
ロキが言う
「…まぁ それは良い 俺が言いたいのは 卿はそれだけ 人の事を聞かず考えず 自分勝手であると言う事だ」
ヴェルアロンスライツァーが心外そうに言う
『私が自分勝手?』
ロキが言う
「…知らなかったのか?ヴェルアロンスライツァー …卿はその名の通り 王を守る事しか考えていない」
ヴェルアロンスライツァーが表情を困らせて言う
『無論っ!そもそも このヴェルアロンスライツァーの名とて 元々は貴殿らのスプローニの法に基づき 与えられしもの!私はその名の通り 王を守り 戦う事を 生涯の責務と全うしているのだ!』
ロキが言う
「…卿が守っているのは その王の 身だけだ」
ヴェルアロンスライツァーが驚き呆気に取られる ロキが言う
「…体さえ無事なら 他は どうでも良いのだろう?…だがそれでは 真に その者を守りきると言う事にはならん …人を守るには 心と体 場合によっては それ以上のものを守らねばならんものだ」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られている ロキが言う
「…更に、卿が守らねばならんのは 王 …王とは ただの器では許されない 己の意思と志 そして その国に住む全ての者を守り 導かねばならん …卿が守るべき対象は それら全てだ」
ベルグルが呆気に取られて見つめる ヴェルアロンスライツァーが視線を落とす ロキが微笑して言う
「…だが ヴェルアロンスライツァーの名を持つ卿であっても やはり それら全ては無理だろう?だから 卿は今まで通り アンネローゼ殿だけを守れば良い それでも ひとつ付け加えるべきなのは」
ヴェルアロンスライツァーが正面を向いて言う
『心… アンネローゼ様の意思と志』
ロキが笑む ヴェルアロンスライツァーが視線を落として言う
『…確かに 私は今まで アンネローゼ様の御心にまで 目を向ける事は出来ていなかった …故に 私はいつも アンネローゼ様の御意思 …御命令を求めていたのだ』
ヴェルアロンスライツァーの脳裏に 過去の出来事が思い出される
バズーカ砲を持った女が苦笑してからアンネローゼへ言う
『なら、バシッと命令してやりな?そうでもしないと、その騎士様は アンタの傍から意地でも離れないんだろ?』
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーへ向く ヴェルアロンスライツァーが苦しそうに立ち上がろうとする アンネローゼが苦笑して言う
『ヴェルアロンスライツァー これは命令です 治療を受け 万全の状態で 戻って来なさい』
ヴェルアロンスライツァーが表情を落として言う
『私はどんな些細な事も… 自身の身の治療でさえ 何もかもを アンネローゼ様へ一任してしまっていた… 私は まったくヴェルアロンスライツァーの責務を遂行してなどは いなかったのだな…』
ロキが苦笑して言う
「…全くとは …そこまで否定する事はないだろう?卿が傍にいて 身の警護をする事であっても」
ヴェルアロンスライツァーが怒り手で台を叩き モニターに詰め寄って言う
『それだけでは足りんのだ!ヴェルアロンスライツァーたるもの!我が王の 身も心も!お守り致さねばならぬっ!』
ロキが苦笑して言う
「…相変わらず単純な奴だ」
ヴェルアロンスライツァーが聞いておらずに身を乗り出して叫ぶ
『ロキ!どうしたら!?…どうしたら私は ヴェルアロンスライツァーとしての責務をまっとう出来るのだ!?このヴェルアロンスライツァー 一生の頼みだ!教えてくれっ!』
ロキが衝撃を受け怒って言う
「卿の一生の頼みは 一体何度あるんだっ!?この唐変木が!」
ヴェルアロンスライツァーが困って言う
『頼む… ロキ この唐変木には 思案する頭もないのだ…』
ロキが立ち上がり慌てて叫ぶ
「唐変木は否定しろっ!」
ロキが腰を下ろし溜息を吐いて言う
「…まったく…っ」
ヴェルアロンスライツァーがモニター越しに困り見つめている ベルグルが心配そうに双方を交互に見る
【 ローゼント城 アンネローゼの部屋 】
ヴェルアロンスライツァーが通信モニターの前で視線を落している 通信機からロキの声が届く
『…女は …賢く、強い』
ヴェルアロンスライツァーが一瞬呆気に取られモニターへ顔を向ける 通信モニターのロキが視線を逸らしながら言う
『…俺の 母親が言っていた言葉だ …だから 甘く見るな と』
ヴェルアロンスライツァーが表情を困らせて言う
「わ… 私は アンネローゼ様を甘く見た事など!」
ロキが言う
『…そういう意味ではない』
ヴェルアロンスライツァーが疑問する ロキが言う
『…卿が アンネローゼ殿の 身や心も守ろうと言うのなら 彼女の真意を問うだけで 良いのではないか?』
ヴェルアロンスライツァーが言う
「真意?…それはっ!聞かずとも分かる!アンネローゼ様は 御出産を望まれている!」
ロキが言う
『…アンネローゼ殿は 俺に言った ヴェルアロンスライツァーの心境を理解して 説得をしろと つまり… 彼女自身は 卿の心境が理解出来ていないと』
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られる ロキが言う
『…高齢出産である事を自覚していたのなら アンネローゼ殿の身を一番に考える卿の反対も 理解出来ていた筈だ だが、それ以上の何かを 彼女は感じていたのだろう?…だから 俺に連絡した …卿の何かを俺に引き出させようと』
ヴェルアロンスライツァーがはっとして視線を落とし 真剣に考える
【 スプローニ城 王の部屋 】
ロキが言う
「…卿の真意を伝えろ …その上で アンネローゼ殿が選んだ決断を 卿は …支えるべきではないのか?ヴェルアロンスライツァー …その名に 従うのならな?」
ヴェルアロンスライツァーが一度目を閉じ ロキへ向いて言う
『…ロキ 有難う 我が相棒 …貴殿は やはり 私の最高の相棒だ』
ロキが苦笑する ヴェルアロンスライツァーが言う
『一晩じっくり考え 明日アンネローゼ様へお伝えする』
ロキが頷く ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
『では …また報告する 夜分遅くに 失敬した お休み ロキ …それから ベルグル』
ベルグルが衝撃を受け慌てて言う
「う?…あっ!お!お休みなさいッス!ヴェルアロンスライツァー副隊長!」
ヴェルアロンスライツァーが軽く笑った後通信を切る ベルグルが嬉しそうな様子で切れた通信モニターを見た後ロキへ向く ロキが静止した後 深く溜息を吐いてベッドに倒れ言う
「はぁー… …寝る」
ベルグルが呆気に取られた後嬉しそうに言う
「ロキ隊長も!お休みなさいッス!」
ロキが眠る ベルグルが衝撃を受け 慌てて駆け寄って言う
「…って ロキ隊長!ちゃんと布団に入って寝ないと また風邪を引いちゃうッスよ!ロキ隊長!?」
ロキが寝息を立てて眠っている
【 エドの町 団子屋店先 】
フォーリエルが宇治金時を食べて言う
「あーん… うん…うん …美味い!」
フォーリエルが顔を向けて嬉しそうに言う
「テス!これ良いぜ!すぐ!すぐ店に出すべきだ!」
テスクローネが微笑して言う
「うん 今年は例年より残暑が残るみたいだから 氷菓子の需要がまだまだあると思う けど、一応残暑だからね 真夏とは少し変えてて ここへこれをを乗せようかと思うんだ どうかな?」
フォーリエルが疑問していると 宇治金時にバニラアイスが添えられる フォーリエルが不思議そうに言う
「この…白いのは?」
テスクローネが微笑して言う
「これはソルベキアで古くから食べられている バニラアイスと言うデザートの一種なんだ ソルベキアではバニラの香りで作られているのだけど エドの町では なじみが無い だから 牛乳の香りのままの方が食べやすいと思う」
テスクローネがフォーリエルを見て微笑む フォーリエルが不思議そうに見てから一口食べ 喜んで言う
「美味いっ!これ… ああー!これだけでも良いし こっちと一緒もっ んぐんぐ…」
フォーリエルが宇治金時を食べる テスクローネが微笑する フォーリエルが全て食べ終えて言う
「あー 美味かった!テス!これ 何て名前にするんだ!?」
テスクローネが軽く笑って言う
「うん… 色々考えはしたんだけど 余りぱっとする名前が浮かばないんだ 氷に抹茶をかけ 小豆とミルクアイスをのせるから… 抹茶あんアイス…かな?」
フォーリエルが表情を悩ませて言う
「う~ん… それじゃぁ 抹茶と小豆の味がするアイスみたいだぜ?」
テスクローネが表情を困らせて言う
「なるほど 言われてみればそうだ それじゃぁ… 抹茶あんアイス氷…?」
フォーリエルが苦笑して言う
「間違ってねーけど …何も名前で材料を全部 説明しなくても良いだろ?もっと…そうだな これを食うと感じる事とか!」
団子屋通り
アシルがイライラしながら歩いて来て独り言を言う
「くそっ!ソルベキアへ行くと言うから選んでやったというのにっ エドの町で一晩泊まるなどとは聞いてなかったっ この町の酒は 米酒ばかりで 俺の口には合わんと言うのにっ!」
アシルが周囲を見渡し テスクローネの団子屋を目に留めて言う
「…うん?団子屋… 確か エド町にある団子屋に ガルバディア級のプログラマーが居ると …ならばっ ソルベキアへの移動プログラムを実行させて!…うん?」
アシルがテスクローネの団子屋へ近づいた所で立ち止まり周囲を見渡し表情をゆがませる アシルの視線の先 団子屋の看板がたくさん見える アシルがガクッと頭を垂れて言う
「…こんなに沢山 …これでは どれがそのプログラマーが居る団子屋なのか 分からんっ!くそっ …団子屋というのは 恐らく隠れ蓑であろうとまでは 考えていたが エドの町において これほど良い隠れ蓑であったとは …無理だ」
アシルがあきらめて言う
「…この量の中を探すぐらいなら 一晩待った方がマシだ …ほとほと ツイてない」
アシルがフォーリエルたちの前を通る フォーリエルが思い付いて言う
「抹茶金時!」
テスクローネがひそかにアシルを見ていて はっとしてフォーリエルへ向いて言う
「…えっ?」
フォーリエルがテスクローネへ向いて嬉しそうに言う
「この小豆と牛乳アイスは絶妙だぜ!どっちも甘いのに この2つの味が合わさった時は すげー美味くなる!この瞬間こそ 黄金の瞬間 金の時だ!って事で 抹茶金時!…どうだ!? 」
テスクローネが呆気に取られた後 笑い出す
「…ぷっ くすくす…っ」
フォーリエルが困り怒って言う
「あ!俺は真剣に言ってんだぞ!?テス!」
テスクローネが軽く笑って言う
「あっはは…っ いや、分かっているよ ただ、フォーリエルは 本当に感性が豊かだな…と 思って はははっ」
フォーリエルがテスクローネに詰め寄って言う
「お前こそ 分かってねーんだよ!この金時の瞬間がっ!」
テスクローネが軽く笑って言う
「はははっ 分かった 分かったよ」
フォーリエルが怒って言う
「嘘付け!」
テスクローネが苦笑して言う
「いや、そうじゃなくて この氷の名前だ 抹茶金時で決まりだ 流石に今すぐは材料が揃わないから 明日から出す事にしよう のぼりを作らないと…」
フォーリエルが張り切って言う
「よし!なら!俺がひとっ走り マサキん家へ行って来るぜ!明日の朝までに作ってくれって!」
テスクローネが表情を困らせて言う
「いくらマサキ殿でも 今からで明日は難しいのでは…?」
フォーリエルが笑顔で言う
「大丈夫だ!任せとけって!あいつにはちょっと貸しがあるんでね~?」
テスクローネが苦笑して言う
「そう… でも、余り無理は言わないで良いからな?フォーリエルは少し強引だから…」
フォーリエルが体を向かわせつつ言う
「心配するなって!それじゃ!詳細は向こうから連絡する!」
フォーリエルが走り去って行く テスクローネが見送っている アシルがテスクローネの店の前を通過した先で独り言を言う
「何がっ金時だっ!クソッ!俺のそんな時は…っ」
アシルの脳裏に リーザロッテが眠りに着いていて その姿を見て衝撃を受け悩むアシルの姿が映る アシルがリーザロッテへキスをしようとして ツヴァイザー兵たちに取り押さえられ追い出される アシルが視線を強めて言う
「ツヴァイザーの眠り姫… 俺が… 俺が目覚めさせる筈だったのにーーっ!くそぉおおーー!」
アシルが近場にあった箱を蹴り飛ばす 箱が奥へ押し込まれるとその上に積み重なっていた多くの箱や空きドラム缶が振って来て激しい音が周囲に鳴り響く 人々が驚き集まって来る アシルが顔を出し 怒って叫ぶ
「ちくしょうがぁああっ!」
周囲の人々が顔を見合わせる テスクローネが遠くで見ていて言う
「…スプローニ国 元王子アシル …うん?この反応は…?」
テスクローネの周囲にプログラムが現れる 遠くからフォーリエルが走って来て叫ぶ
「テスー!大変だーっ!」
フォーリエルがテスクローネの横に来て息を切らせる テスクローネが僅かに驚いて言う
「フォーリエル?どうしたんだ?」
フォーリエルが息を整えながら言う
「はぁっはぁ… お、俺 すっかり忘れちまってたっ!」
テスクローネが疑問して言う
「忘れて?何を?」
フォーリエルが一度深く息を吐いた後表情を困らせてテスクローネを見て言う
「昨日よ!?アバロンに 皆で集まるって日だったよな?俺たちも行かなきゃいけなかっただろ?」
テスクローネが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「あぁ、ははっ 大丈夫だ 私の方から 直接バーネット陛下へ報告をしておいた エドの町に 別大陸の刺客などは 見受けられないとね?昨日フォーリエルにも確認しただろ?」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「…あぁ?…そう言えば?そっかぁ… アバロンで皆と会うって事も 俺、楽しみにしてたんだけどなぁ…」
テスクローネが微笑して言う
「大丈夫 皆 アバロンで報告を終えた後は 現在ペリーテ殿とヴィルシュが収監されている ローゼントへ向かう事になっているんだ しかし、ローゼントは今ソルベキアの件で 警戒態勢だから 皆はこのエドの町へ宿泊する この新作も 実はその為のモノだったんだ」
テスクローネが笑顔になる フォーリエルが呆気に取られた後笑んで言う
「なら 皆に会えるんだな!?」
テスクローネが言う
「ああ、それに ここへ集まるのは アバロンへ集まるメンバーだけじゃない 特にフォーリエルはアバロンへ行く以上に 嬉しい再会になるんじゃないかな?」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「アバロンへ行く以上に?…そっか!何だか分からねーけど そいつは楽しみだぜ!」
フォーリエルが笑顔になる フォーリエルの後方からマサキがやって来て言う
「フォーリエル!酷いじゃないかぁ!呼び出すだけ呼び出して 僕を置いて行っちゃうだなんてー」
フォーリエルが振り返り苦笑して言う
「あぁ 悪ぃ悪ぃ」
テスクローネが苦笑して マサキを迎える
【 ガルバディア城 玉座の間 】
ヴィクトールが顔を出して言う
「バーネットー?」
バーネットが玉座にだらけ 放心している ヴィクトールが困り汗を掻いてから表情を困らせて言う
「バ… バーネット?えっとぉ~ ぼ、僕のご主人様は どうしちゃったのかにゃ~?」
ヴィクトールが恐る恐る近づいてバーネットの顔を覗き込む バーネットが一瞬間を置いた後 瞬時にヴィクトールの首を絞め怒って言う
「ぬぁああ~~っ!くそぉおお!ちくしょうがぁああ!」
ヴィクトールが困り苦しんで言う
「バーネット く、苦しいにゃぁ~~ いぢめないでぇ~」
バーネットが手を離して落ち込む ヴィクトールが苦笑して首を押さえつつ言う
「バーネット…?どうしたの?そんなに… 落ち込んじゃって…」
バーネットがヴィクトールへ顔を向けて言う
「…そう見えやがるかぁ?」
ヴィクトールが言う
「うん… とっても…」
バーネットが落ち込んで言う
「あぁ… 大当たりだぁ」
ヴィクトールが心配そうに言う
「もしかして… バーネットが一生懸命やっていた あの 結界の何とかって言う プログラムだったりして…?」
バーネットがムッとして言う
「てめぇは…」
バーネットの鞭の音が鳴り響く バーネットがヴィクトールを踏み付け鞭を振り上げて叫ぶ
「んな所に!アバロンの力を使いやがるんじゃねぇええ!減っちまうじゃねぇえか!?馬鹿野郎がぁああ!!」
ヴィクトールが困り泣きながら言う
「嫌ぁあ~ バーネット 濡れ衣だよぉ~ だから お願い ちょっとだけだよ!?いくらバーネットが相手でも 僕、激しいのは駄目…っ」
バーネットが恥焦る バーネットの鞭の音が鳴り響く
バーネットが玉座に座っていて鞭を収納しながら言う
「いつも言ってやがるだろぉ 人に勘違いされるような言葉を使うんじゃねぇ…」
ヴィクトールが苦笑顔で尻をさすりながら言う
「結界のプログラム… 失敗しちゃったの?折角 アバロンの皆から 良い報告が聞けたのに バーネット… 僕たちのせい?僕たちが カネダ何とかを帰すために」
バーネットが一息吐いて言う
「そぉじゃねぇよ… 心配しやがるな ハッ!相変わらず てめぇのアバロンの力は 中途半端でやがるなぁ?」
バーネットが悪微笑してヴィクトールを見る ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 涙目になってぐずる バーネットがはっとして 慌てて言う
「…だっ!ま、待てっ!悪かった!今のは 俺が言い過ぎやがった!」
ヴィクトールが涙をぬぐいながら言う
「ぐずっ… それじゃ?」
バーネットが落ち込み苦笑して言う
「それがよぉ… ハッ!情けねぇ話だぜぇ 俺が丸2日 掛かりっきりでやっても さっぱりまったく終わりが見えやがらなかった 膨大な結界プログラムを あっさり… あっさりだ 俺がちょいと居眠りしてやがった間に すっかり 終わらせっちまいやがった… はは… まぁ お陰で 安心も出来やがったがなぁ?」
ヴィクトールが驚き言う
「え?終わらせたって… 一体誰が?」
ヴィクトールが疑問する バーネットが苦笑して言う
「シリウス国王の奴が 俺にこの場を任せて 姿を消しちまった時には 本気で俺に 第二プラントの管理者の地位を 押し付けやがったのかと思ったが… ココまで力の差がありやがるんなら その心配はねぇ!可能性はまったくのゼロだぜぇ」
ヴィクトールが呆気に取られてから少し考えて言う
「それじゃ… バーネットが居眠りしていた間に シリウス国王が プログラムをやってくれたの?」
バーネットが微笑して言う
「ああ… シリウス国王だぁ …ただ、同じシリウスでも もう一人の方でやがるがなぁ?」
ヴィクトールが言う
「もう一人?」
【 旧世界 ガルバディア城 】
シリウスBが目を開く 薄暗い玉座の間 シリウスBが玉座に座っている
闇夜の中にあるガルバディア城の周囲に機械兵たちの光が大量に現れる
【 新世界 ガルバディア城 玉座の間 】
バーネットが言う
「元々 この第二プラントの結界は 向こうのシリウスが担当してやがった だが 旧大陸の処理を一手に引き受けるってぇんで 新旧両大陸を守る結界は こっちで管理する事になりやがった が… それでも やっぱり確認してやがったんだな… まったく 大した奴だぜぇ」
ヴィクトールが言う
「けど、それじゃ 旧大陸の方は大丈夫なのかな?バーネットがあんなに苦労していた処理を 手伝っちゃったりしてたら 向こうは大変な事になっちゃってたりして…?」
バーネットが表情を歪めて言う
「んあ?それは…」
バーネットが考える ヴィクトールが見つめる バーネットが困る ヴィクトールが苦笑して言う
「連絡… してみたら?」
バーネットが衝撃を受け 困って言う
「連絡って てめぇ… んな簡単に」
ガイの声が届く
「是非 お願いしたい!」
ヴィクトールとバーネットが向く 入り口からガイ、ヴァッガス、ロドウ、メテーリが現れ ヴァッガスが言う
「あっちのシリウスB様と連絡が取れるんなら!頼むぜ!?」
ロドウが笑顔で言う
「シリウスB様… お元気なのかなぁ?」
ヴァッガスが苦笑して言う
「まぁ あのシリウスB様が 元気ってぇのも想像付かねぇけどな?」
ロドウが軽く笑って言う
「あははっ そうだね けど…」
ヴァッガスが頷きバーネットへ向いて言う
「ああ!シリウスB様は俺たちの仲間だからな!出来るんだったら 一声でも 一目でも 確認してぇってもんだぜ!」
ガイが頷く バーネットが苦笑して言う
「おいおい シリウスBは 闇の王なんだぜぇ?そうほいほいと 名を呼びやがるんじゃねぇよ?」
メテーリが言う
「そうよ きっとシリウスB様本人だって そう言うでしょ?」
ロドウとヴァッガスが一瞬呆気に取られた後顔を見合わせて苦笑する ガイが微笑してバーネットへ言う
「とは言え われらの神 われらの王である シリウスB様との連絡が 可能であると言うのなら 是非 お願いしたい」
ガイたちがバーネットへ向く バーネットが一瞬間を置いてから言う
「駄目だ」
ガイが苦笑する ロドウが残念そうに表情を落とす ヴァッガスが怒って言う
「っんでだよ!?ケチだな!?」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「ケ、ケチだぁ!?」
ヴァッガスが腕組みをして言う
「ケチだからケチって言ったんだ 間違ってるかよ?」
バーネットが鞭で床を叩き振りかざして言う
「んだと!?てめぇえ!このガルバディアの代理国王である俺様に向かって!ケチとは何だぁあ!」
ヴァッガスが立ち向かって言う
「何処の王だろうが ケチはケチだ!ドケチの国王!…あ 代理国王!」
バーネットが怒って言う
「るせー!いちいち言い直しやがるんじゃねぇえ!畜生がぁああ!」
ヴィクトールがバーネットを抑えて言う
「まぁまぁ バーネット」
ガイがヴァッガスを抑え戻して言う
「ヴァッガス 貴殿も少々言葉をつつしめ 代理とは言え 相手は このガルバディアの代理国王殿だ」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「てめぇも!代理代理言いやがるんじゃねぇええ!俺はベネテクトの第二国王なんだよぉおお!」
ロドウが疑問して言う
「え?ベネテクトの代理国王?」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「違げぇええ!そこは間違いやがるんじゃねぇえ チビ助がぁああ!」
ロドウが泣きながら怒って言う
「あー!酷いっ!僕だって シリウス様のお力を借りれば!巨人族と同じ位 大きくなれるんだよ!」
ロドウがブラッククリスタルを握る メテーリが呆れてロドウを抑えて言う
「はいはい… ちょっとぉ?全然話が進まないじゃない?」
ヴィクトールがバーネットを玉座に静めて言う
「そうだよバーネット これから皆でエドの町へ行くんでしょ?移動プログラムだって作らなきゃいけないって 言って… あれ?言ってなかったっけ?」
ヴィクトールが疑問する バーネットが溜息をついて言う
「…あぁ、言っちゃいねぇが 間違ってもいねぇ …とは言え そいつは わざわざ俺が作る必要はねぇんだ」
ヴィクトールが疑問する バーネットが悪笑んで言う
「そう言う面倒癖ぇ事は 全部 こいつに用意させてありやがるからなぁ?はっはー!」
バーネットが言い終えると共に ホログラムモニターが現れバッツスクロイツが映って言う
『相変わらずっ 超 人使い酷いんですけどー!この人ー!』
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 笑顔で言う
「やあ!久しぶりだね!ルパーん13世!」
バッツスクロイツが衝撃を受け叫ぶ
『そのニックネーム忘れてくんないー!?ヴィクトールっちー!』
バーネットが言う
「おい、んな事より 移動プログラムは出来てやがるだろぉなぁ?クロイ何とか」
バッツスクロイツが怒って言う
『だから!もう!いい加減 夢の世界のニックネームは終了してったら!シリウスっちー!』
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「てめぇえこそ!今そのニックネームで 俺を呼びやがるんじゃねぇ!連中に誤解されやがるじゃねぇか!」
ガイたちが呆気に取られ メテーリがヴァッガスへ向く ヴァッガスがさぁ?と手の平を上げて見せる ヴィクトールが言う
「移動プログラムが アバロンで作られているのなら 皆でアバロンへ行った方が良いのかな?…あ、僕の事はユダって呼ばないでね?」
バーネットが腕組みをしてぷいっと顔を背ける バッツスクロイツが言う
『ノンノン!プログラムは ガルバディアから移動出来るようにしてあるから 問題ナッシングー!…てー それよりも?例のお方の方だけど?本当に良いのかなぁ?バーネっち?』
ヴィクトールが疑問して言う
「例のお方って?」
ヴィクトールがバーネットへ向く バーネットが言う
「ああ、構わねぇ これ以上閉じ込めておいたって 何も変わりやがらねぇだろうからな 残りの人生を 楽しませてやりてぇじゃねぇか …何しろ 一番の関係者である レクターの野郎が許すってぇんだ なら 俺たちが止める理由はねぇよ」
ヴィクトールが疑問してバッツスクロイツへ向く バッツスクロイツが言う
『う~ん… そんなモンなのかなー…?俺っちとしては やっぱちょーっとは リスキーだと思うんですけど?一度は洗脳されちゃったんだし?ホントに良いのかなー?フリーにしちゃって?』
バーネットが言う
「奴は もう一度二度 使おうと思えば使える状態にありやがったんだ それでも使われなかった… なら 使えねぇのか 使う理由がねぇのか …どちらにしても 完全にフリーって訳でもねぇ こっちもそこまで能天気じゃ ありやがらねぇよ?」
バッツスクロイツが呆気に取られて言う
『え?そうなの?じゃぁ バーネっちがこれからも監視するーって事?』
バーネットが言う
「俺じゃねぇ… が、俺よりもっと優秀な奴だ 心配ねぇ… それよりバッツスクロイツ」
バッツスクロイツが疑問して言う
『ん?』
バーネットが怒りの炎を上げながら言う
「これ以上 俺を待たせやがったら…っ!?」
バーネットが鞭を引く バッツスクロイツがおびえながら言う
『きゃー 暴力反対ー!後ちょっとで周囲安定処理が終わるから もうちょっとだけ待ってて!プリーズ~!』
ヴィクトールがバーネットへ言う
「バーネット 僕も皆と一緒に エドの町へ行くんだよね?」
バーネットがヴィクトールへ向いて言う
「んあ?…別に 今回は てめぇが行く必要はありやがらねぇよ あいつらが居やがるんだぁ 現地での物理的処理は 奴らに任せれば問題ねぇ 何か有れば てめぇは俺と一緒に このガルバディアから情報だけで 向かいやがれば良いだろう?」
ヴィクトールが驚き言う
「え!?僕… エドの町に 行かないの…?」
バーネットが疑問して言う
「あぁ?…何だぁ?てめぇが 行かなけりゃならねぇ理由でも 有りやがったのかぁ?」
ヴィクトールが泣きそうな表情で言う
「僕… 折角 現実世界で テス殿の世界一の団子を 食べられると思ったのにぃ~~っ!」
ヴィクトールが涙を流す バーネットが衝撃を受ける バッツスクロイツが言う
『ハァ~イ お待たせー!では エブリワン!?ゴーレッツゴー エドシティー!』
ガイたちの周囲に移動プログラムが発生する ガイたちが移動プログラムへ目を向ける バーネットが怒って言う
「ええい!人前で泣きやがるんじゃねぇえっつってんだろぉ!このっ!泣き虫ヴィクトールがぁあ!んなに 団子が食いたけりゃ てめぇも飛ばされやがれってぇえんだぁあ!」
バーネットがヴィクトールを蹴り飛ばす バーネットの蹴りに強化プログラムが施され ヴィクトールがガイたちの下へ吹っ飛んで行く
「にゃっ!?」
ヴィクトールが悲鳴を上げつつ 移動プログラムの中に落ち ガイたちが驚くと同時に 移動プログラムが実行され皆が消える バーネットが腕組みをして顔を背けて言う
「ふんっ!」
バッツスクロイツが苦笑する
【 エドの町 団子屋店先 】
テスクローネが言う
「ようこそ エドの町へ ガイ隊長並びに 多国籍部隊の皆さん …と バーネット陛下のお猫様」
テスクローネが苦笑する 周囲にガイたちが可笑しな体勢で倒れている フォーリエルが呆気に取られている テスクローネがプログラムを見ながら言う
「どうやら 移動プログラムの途中で 予定外の転送物が増えたお陰で 少々… 着地の方へ その影響が現れてしまった様子ですね?」
フォーリエルがテスクローネへ向いて言う
「予定外の転送物?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「やあ!世界一の団子屋のテス殿!僕はヴィクトール13世!またの名を バーネットの猫!君の団子を食べる為 遥々ガルバディアから 蹴飛ばされて来たよ!」
テスクローネが苦笑して言う
「なるほど… そうでしたか …ふふっ それは光栄です その節は 大変お世話になりました …ユダ様」
ヴィクトールが衝撃を受ける テスクローネが悪笑む
【 ローゼント城 玉座の間 】
ヴェルアロンスライツァーが玉座で居眠りしている そのヴェルアロンスライツァーに毛布を掛けアンネローゼが微笑む エレーナが言う
「きっと 昨夜は一睡もなされずに お考えでいらしたのでしょう」
アンネローゼが苦笑して言う
「ええ きっとそうなのでしょうね… ヴェルアロンスライツァーが私の言葉に 異議を唱える事など 今まで一度もなかったから… でも」
エレーナが苦笑する アンネローゼが苦笑を返してから ヴェルアロンスライツァーを見て言う
「言われて見れば… 今まで 一度も聞いた事がありませんでした 彼のお母様の事」
回想
家臣が紙資料を手に言う
『ヴェルアロンスライツァー殿下のご尊母 アイネフラーソワ様はヴェルアロンスライツァー殿下を45歳の折 高齢出産にてお産みになられ… 残念ながら その時の大量出血が原因で お命を落とされたそうです そして、ヴェルアロンスライツァー殿下のご尊父 ヴェルアロンゲデルフフォルライツァー様は その事に深く心を痛め 結果 生まれたばかりのヴェルアロンスライツァー殿下は アイネフラーソワ様の御親族の方へ 養子に出されたと言う事です』
アンネローゼが驚き視線を落として言う
『そう…だったのですか…』
エレーナが表情を悲しめて言う
『殿下は 姫様のお体の安全を一番に考えられますので きっと姫様が御自分のお母様と同じ境遇になられるのではないかと ご心配なされたのでしょう』
アンネローゼが苦笑して言う
『そうね… 彼の事だから 手放しに喜ぶ事は無いと 思ってはいたけれど そんな理由まであったとは… しかし、私は』
家臣が言う
『アイネフラーソワ様は 高齢出産に加え初産であったとの事です 更に 当時のローゼントは 出産における看護医療なども 他国に大きく後れを取っており その一件を切欠に ハリッグ前国王陛下は 出産における医療の強化を行いました』
エレーナがアンネローゼを見て言う
『近年のローゼントにおいて 出産における母体の安全は 大きく向上しました… 全ては ヴェルアロンスライツァー殿下のご尊母 アイネフラーソワ様と ハリッグ陛下のお陰ですね』
アンネローゼが微笑して言う
『ええ、そして 私は それらの医療と共に 初産でもありません 彼のご両親の事実はあろうとも これらの事をしっかり伝えれば ヴェルアロンスライツァーも考えを変えてくれるかもしれません』
家臣が言う
『では、今一度 殿下へご説得を?』
アンネローゼが言う
『無論です 彼からの了承なくして 国民への伝達は許しません』
家臣が言う
『しかし これ以上は… 既に 城下ではアンネローゼ様のお体の変化に 気付いている者も多くおります』
エレーナが言う
『姫様 余り時間を掛けてしまっては… 万が一の事になりましても 間に合わなくなってしまいますよ?』
アンネローゼが言う
『…十分に安定してからと思っていたけれど やはり もう少し早くに伝えるべきでしたね 分かりました では 本日中にでも もう一度』
伝達兵が言う
『ヴェルアロンスライツァー殿下の御入室です!』
皆が入り口へ目を向ける ヴェルアロンスライツァーが入って来ると 家臣とエレーナが道を開け脇へ控える ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼの前に跪き頭を下げる アンネローゼが苦笑して言葉を待つ ヴェルアロンスライツァーが沈黙する アンネローゼが一瞬疑問した後 苦笑して言い掛ける
『…?お早う御座います ヴェルア…』
ヴェルアロンスライツァーが言葉を制して言う
『アンネローゼ様!どうか… どうか、お聞かせ下さいっ』
アンネローゼが一瞬驚き微笑して言う
『…はい、…何を でしょう?』
ヴェルアロンスライツァーが言う
『…アンネローゼ様の御志 …アンネローゼ様のお気持ちを …どうか 不甲斐ない このヴェルアロンスライツァーへ アンネローゼ様のお言葉にて お聞かせ下さい』
アンネローゼが一瞬呆気に取られた後 気を取り直して言う
『…そうですか 分かりました ヴェルアロンスライツァー』
ヴェルアロンスライツァーが礼を深くする アンネローゼが言う
『私は…』
回想終了
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見る ヴェルアロンスライツァーが寝息を立てながら 夢を見ている
夢の中
アンネローゼが言う
『…私は この子を生む事で このローゼントへ正式な後継者を残そうと思います』
ヴェルアロンスライツァーが驚いて顔を上げる アンネローゼが微笑して言う
『私の娘 リーザロッテは ツヴァイザーの女王として ツヴァイザー国を収める事となりました …貴方も耳にしましたか?あの子は… いえ、彼女は ツヴァイザーと長きに渡り 友好の絶たれていた スプローニ国との友好和平を 築いたそうです 彼女はもう 正真正銘 立派な王です』
ヴェルアロンスライツァーが驚きの表情で言う
『ツヴァイザーと スプローニが… っ!』
ヴェルアロンスライツァーがはっとして 慌てて頭を下げて言う
『はっ!…リーザロッテ女王様は 真素晴らしき女王陛下であらされます 流石は 我が王アンネローゼ様の御息女ならではの御活躍かとっ』
アンネローゼが微笑して言う
『…私以上の活躍です 私は』
ヴェルアロンスライツァーが驚き顔を上げる アンネローゼが苦笑して言う
『私は… このローゼントへの優秀な後継者となる筈だった彼女を ツヴァイザーへ残してしまいました 更には そのリーザロッテが立派なツヴァイザーの後継者を得たと言うのに… ローゼントの民も 私に気遣って口にしませんが 皆 このローゼントの未来を案じている事でしょう』
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られていて 表情を落として言う
『…アンネローゼ様 では』
アンネローゼが苦笑して言う
『ヴェルアロンスライツァー この子は今 私以上に このローゼントに必要な者なのです …分かって …頂けましたか?』
ヴェルアロンスライツァーが視線を下げる アンネローゼが苦笑する ヴェルアロンスライツァーが言う
『…分かりました アンネローゼ様』
アンネローゼがホッとする ヴェルアロンスライツァーが顔を上げて言う
『でしたら 私は!例え このローゼントに楯突いてでも!アンネローゼ様をお守り致します!昨日同様!ご出産には断固反対すると共に!アンネローゼ様の御身と共に その御心を傷つけよう者は このヴェルアロンスライツァーが全力にて!』
ヴェルアロンスライツァーが立ち上がり剣に手を掛ける アンネローゼが驚き 周囲の者が驚き慌てる アンネローゼが慌てて言う
『それではっ 貴方がローゼントをっ …いえ、待って下さいっ ヴェル… ヴェルアロンスライツァーっ!』
ヴェルアロンスライツァーが瞬時に跪いて返事をする
『はっ!』
つかの間の沈黙 アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見る ヴェルアロンスライツァーが真っ直ぐにアンネローゼを見る アンネローゼが苦笑して言う
『今のは …嘘です』
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られて言う
『…は?』
アンネローゼが苦笑して恥ずかしそうに言う
『ごめんなさい リーザの事も… ローゼントのためと言うのも… も、勿論っ 大切な事では有りますが!…ただ …ただ私は … … …欲しいのです』
ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
『…欲しい …とは?』
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見て微笑して言う
『…貴方との 子が』
ヴェルアロンスライツァーが驚く アンネローゼが腹に手を当てて言う
『この子は 貴方と私の子です 私の愛する 貴方との…』
ヴェルアロンスライツァーが顔を赤らめ 慌てて顔を下げる アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見て言う
『だから 私は この子が私のお腹に宿ったと聞いた時 …とても嬉しかった そして 貴方にも …同じ様に 喜んでもらえると』
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られている アンネローゼが苦笑して言う
『しかし、貴方はやはり ヴェルアロンスライツァーの その名を持つ方… そうですよね 貴方は 私やこの子より ”貴方の王である”私を…』
ヴェルアロンスライツァーが驚き目を見開く 脳裏にロキの言葉が蘇る
『…卿が守っているのは その王の 身だけだ…体さえ無事なら 他は どうでも良いのだろう?…だがそれでは 真に その者を守りきると言う事にはならん』
『…人を守るには 心と体 場合によっては それ以上のものを守らねばならんものだ …だが ヴェルアロンスライツァーの名を持つ卿にも その全ては無理だろう?だから 卿は今まで通り アンネローゼ殿だけを守れば良い それでも ひとつ付け加えるべきなのは』
ヴェルアロンスライツァーが下を向いたまま呟く
『心… アンネローゼ様の 意思と志…』
アンネローゼが疑問して言う
『え?何ですか?ヴェルアロンスライツァー?』
ヴェルアロンスライツァーが顔を上げ真剣に言う
『アンネローゼ様 …最後に一つだけ このヴェルアロンスライツァーに お聞かせ下さい』
アンネローゼが一瞬呆気に取られた後 微笑して静かに頷く ヴェルアロンスライツァーが言う
『御出産経験をお持ちの アンネローゼ様であらされても 今回の御出産には 相応のリスクが有ると言う事を ご存知であられると… それでも …ご自身の御身へ危険が及ぶと ご承知の上 …その上でのっ』
アンネローゼが強い意思を持って頷いて言う
『はい』
ヴェルアロンスライツァーが僅かに驚く 脳裏にロキの言葉が蘇る
『…女は …賢く、強い』
『…俺の 母親が言っていた言葉だ …だから 甘く見るな と』
ヴェルアロンスライツァーが一度視線を落とした後苦笑して言う
『…本当に その通りだな』
アンネローゼが疑問して言う
『…ヴェルアロンスライツァー?』
ヴェルアロンスライツァーが一度アンネローゼを見てから言う
『はっ!このヴェルアロンスライツァー アンネローゼ様のご意思と志 しかと伺いました!よって 私はっ』
アンネローゼが息を飲む ヴェルアロンスライツァーが頭を下げて言う
『アンネローゼ様を信じ!及ばずながらも… その ご意思と志を お支え出来る様!全力にて 邁進致す所存にございます!』
アンネローゼが表情をほころばせ 喜んで言う
『ヴェルアロンスライツァーっ!?それではっ!』
ヴェルアロンスライツァーが顔を上げる アンネローゼがヴェルアロンスライツァーに抱き付く ヴェルアロンスライツァーが驚き慌てるが 自身とアンネローゼの身が揺らぐと瞬時にアンネローゼを抱き止め 表情を辱しめつつ慌てて言う
『ア、アンネローゼ様っ』
アンネローゼがホッとして言う
『良かった…っ』
ヴェルアロンスライツァーが驚き視線を落とし僅かに困る 後にはっとして周囲へ視線を向けると 家臣が慌てて顔を逸らし エレーナが微笑む ヴェルアロンスライツァーが慌てて言う
『ア、アアア アンネローゼ様っ こ、この様な 公の場にて アンネローゼ様がっ わ、私めを抱擁致しまするのはっ アンネローゼ様の御名誉に…っ』
ヴェルアロンスライツァーが慌ててアンネローゼの身に回していた腕を退かし アタフタする アンネローゼが笑顔になって ヴェルアロンスライツァーの顔を見て言う
『心配には及びません ヴェルアロンスライツァー 貴方は… このローゼントの王配 私の愛する夫なのですから』
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーにキスをする ヴェルアロンスライツァーが驚き 失神する アンネローゼが呆気に取られてから慌てて呼ぶ
『ヴェ、ヴェルアロンスライツァー!?ヴェルアロンスライツァー!』
エレーナと家臣が呆気に取られる アンネローゼがエレーナへ向いて言う
『エレーナ!?どうしましょう!?ヴェルアロンスライツァーがっ!』
エレーナと家臣が顔を見合わせ笑い始める アンネローゼが困って言う
『エレーナ!?ファリスンも!?2人とも 笑っていないで 何とかなさいっ!』
ヴェルアロンスライツァーが失神している
夢の中 終了
ヴェルアロンスライツァーが寝言を言う
「…アンネ ローゼ 様…」
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見て苦笑して言う
「もう… 困ったお父様ね?貴方のお父様は…」
アンネローゼが腹をかるく撫でる エレーナが笑顔で見守っている 家臣が出入り口から入って来て言う
「アンネローゼ女王陛下 ローゼントの民、並びに 各国へも公式に 陛下のご懐妊を表明致しました 後日 正式に陛下からのお言葉にて 伝えるとも」
アンネローゼが微笑して言う
「ええ、その時は 殿下にも 隣に控えて頂きます」
皆がヴェルアロンスライツァーを見る ヴェルアロンスライツァーが表情をゆがませ寝言を言う
「うん… ロキ… 貴殿の 言う通りであった…」
アンネローゼが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
「うふ…っ そうでした ロキ国王へは 私からご報告とお礼を伝えましょうか?…あ、先日の無礼も謝罪いたしませんと」
アンネローゼが苦笑する
城下町
町中が賑わっている オライオンが周囲を見渡しながら疑問して言う
「あ~?…何だ?昨日出た時は こんなに賑わってなんか …どっちかっつったら ソルベキアとの事にピリピリしてたってのに?」
オライオンが首を傾げてから 一瞬間を置いて言う
「…ま、良いか 今度こそヴェルと会えっかな~?」
オライオンが城を目指して歩いて行く
城下町 門前
門兵たちが疑問して目を凝らす 周囲に移動プログラムが発生して ガイ、ヴァッガス、ロドウ、ヴィクトールが現れる ヴィクトールが笑顔で言う
「流石!ガルバディアの元祖プログラマー!団子屋になっても プログラムの精度はばっちりだね!こんな上品な移動プログラム 僕初めてだよ!てへっ」
ヴィクトールが嬉しそうに頬を赤らめる バーネットがホログラムで現れて言う
『おいっ!この能天気ヴィクトールがぁ!余計な事 言ってやがるんじゃねぇ!でもって 早く城へ向かいやがれ!オライオンの奴が先行しちまってる!』
ガイが一歩前へ出て言う
「では急がねば 我々の役目は オライオン王子が ペリーテ殿へ何らかの事を行わぬ様 見張る事」
メテーリが通信機を手に言う
「だったら!今すぐローゼントの王様に連絡して オライオン王子を止めたら良いんじゃない!?」
ヴァッガスが焦る ヴィクトールが微笑して言う
「大丈夫だよ オライオンはそんなに焦って ペリーテに会うつもりはない筈だ …どっちかっていったら 会いたいけど会いたくない… そんなジレンマの中で 何となく代わりに ヴェルアロンスライツァーに会っちゃったり…とか?そんな感じじゃないかな?…僕そんな気がするよ?」
ヴァッガスが表情をゆがめて言う
「何となく代わりにってよ…?ヴェルアロンスライツァーっつったら この国の王配だろ?何となくなんて 会える相手かよ?」
ホログラムのバーネットが腕組みをして横目にプログラムを見る ヴィクトールが笑顔で言う
「大丈夫 大丈夫!さ、行こう!?」
ヴィクトールが歩き始める ガイたちが顔を見合わせた後慌ててヴィクトールへ続く バーネットが数字の羅列の中に現れた情報に一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
『…ハッ!相変わらず どうでも良い事には 良く働きやがる』
バーネットがホログラムを消す
玉座の間
オライオンが微笑して言う
「聞いたぜ!ヴェルアロンスライツァー王配!アンネローゼ女王と 子供が出来たんだってな!?おめでとう!」
アンネローゼが微笑む ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「ああ ありがとう オライオン王子 貴殿からそう言ってもらえると まるで ヘクターから祝いの言葉を受けている様だ」
オライオンが一瞬驚き視線を逸らす ヴェルアロンスライツァーが気付き疑問して言う
「うん?…すまない …その後も 彼の情報は入っていないのか?」
オライオンが苦笑して言う
「…ああ、デスやガルバディア関係の人たちや バッツも探してくれてるんだけど 相変わらず… ガルバディアの王も 今は代理のバーネット国王になっちまってるし」
オライオンが視線を落とす ヴェルアロンスライツァーが表情を落として言う
「そうか…」
オライオンが沈黙する ヴェルアロンスライツァーが気を取り直して言う
「しかし、ヘクターには 相棒のデスが付いているのだろう?」
オライオンがヴェルアロンスライツァーを見る ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「それならば きっと 彼らは無事だ 例え時間が掛かろうとも 彼らは …必ず戻ってくる」
オライオンが呆気に取られる ヴェルアロンスライツァーが言う
「それまで 貴殿も大変であろうが 己に課せられた使命と期待に報いる様 出来る事を精一杯に邁進すると良いだろう オライオン王子 もし、それに 何らかの力添えが出来ようものなら このヴェルアロンスライツァーは いつでも貴殿に協力する事を約束する ローゼントの王配としてだけではなく …貴殿の仲間として」
オライオンが呆気に取られて言う
「…え?」
ヴェルアロンスライツァーが疑問した後 気付き苦笑して言う
「ああ、すまない 貴殿は あの夢の世界に存在していたのだが あれは貴殿自身の意識ではなかったとの事であったな …それでも 貴殿と我らは あの世界にて共に戦っていた 故に この現実へ目覚めた今になっても 貴殿の事は 大切な仲間の一人だと意識してしまうのだ」
オライオンが苦笑して言う
「そっか… 有難う ヴェルアロンスライツァー王配… いや!ヴェル!俺も…っ やっぱ 夢の世界に行きたかったぜ」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「フッ… 貴殿があの世界へ送られなかったというのは きっと 貴殿がそれを経験する必要が無い程の 力を持ち合わせていたという事なのだろう 貴殿の噂は 夢の世界へ導かれる以前から 聞き及んでいた あの最強の大剣使いヘクターを 越えるのではと言われていた 魔法剣の使い手 アバロンのオライオン」
オライオンが表情を困らせて言う
「あぁ~… そう言えば そんな風に言われてたっけ…」
ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
「うん?何か異なるのか?」
オライオンが苦笑して言う
「今の俺は… もう 魔法剣は 使えねーから…」
ヴェルアロンスライツァーが気付く 伝達兵が言う
「申し上げます!ガルバディア付属 ヴィクトール13世殿 他 旧大陸 多国籍部隊 隊長、副隊長を名乗る面々が ヴェルアロンスライツァー殿下へ謁見を求めております 共に…」
メテーリが言う
「ちょっと!もう良いから 中を見せなさいよ!オライオン王子が居るかどうか それを確認したいだけなんだから!」
ヴァッガスが言う
「それよか先に オライオンが居るかどうかって聞けば良いだけだろ!?」
ロドウが言う
「それより オライオンは何処かって聞いたら良いんじゃないかな?それか ここに来た?って」
ガイが言う
「ふむ… いや、門兵はその存在を確認していた という事は…」
ヴィクトールが言う
「そんな事より!重要なところが抜けてるよ!?確かに僕はガルバディア付属だけど!ちゃんとバーネットの猫って!そこを付け加えてくれなきゃ!」
衛兵と彼らが押し合う ヴェルアロンスライツァーとオライオンが見ていて オライオンが呆れて言う
「な… なんだ?あれ…?」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られる アンネローゼが軽く笑う
【 エドの町 団子屋 店先 】
フォーリエルが宇治金時を食べながら言う
「今頃 皆 ローゼントで別大陸からの刺客と 最後の会談でもしてんのかな~」
テスクローネが団子を焼きながら苦笑している フォーリエルが残念そうに言う
「はぁ~ やっぱ俺も行きたかったなぁ… テスだって 別大陸の刺客がどんな奴だったか 気にならねぇのか?」
テスクローネが団子を焼きながら言う
「ペリーテ殿とヴィルシュのデータなら得てあるから 大体分かるよ… わざわざ会いに行く必要は無いかな?」
フォーリエルが不満そうに言う
「俺はプログラムの数字より 実物に会いてーのっ」
テスクローネが微笑して言う
「プログラムより実物か… なら」
フォーリエルが疑問してテスクローネを見る テスクローネが団子焼き作業を終え タスキを外しながら表へ出て来て言う
「やっぱり苦労した甲斐があった フォーリエル 私は こちらの新大陸へ移ってから どうしても君に 会わせたい人が居たんだ」
フォーリエルが疑問して言う
「あ?俺に会わせたいって… どういう意味だ?こっちへ移ってからって…」
テスクローネが言う
「とは言え 彼はこの大陸で大変な事をしてしまっていたからね それこそ最初は面会の許可すら 難しかったんだけど でも… ついに信頼を得る事に成功した」
テスクローネが微笑する テスクローネの後ろへ人影が近づいて来る フォーリエルが呆気に取られ目を見開いて言う
「う… 嘘…だろ?何で!?一体!?」
フォーリエルが テスクローネの横に居るレジエルの顔を見て叫ぶ
「今まで何処に居たんだよっ!親父っ!!」
レジエルがフォーリエルを見る フォーリエルがレジエルに掴み掛かって言う
「親父が帰って来なくなってから!お袋がどれだけ苦労したか!お袋は!…親父が帰ってくるって ずっと信じてたんだっ!それなのにあんたはっ!」
フォーリエルがレジエルの服を掴んだままうなだれる レジエルがフォーリエルの手に触れる フォーリエルがはっとしてその手を見る レジエルがゆっくり言う
「…君は …何処の子 …かな?」
フォーリエルが呆気に取られ 驚いて顔を上げる レジエルが優しく微笑んで言う
「ああ… お母さんと… はぐれてしまったのだね?」
フォーリエルが驚きに目を見開く レジエルがフォーリエルの頭を撫でて言う
「…それじゃ おじさんが 一緒に探してあげよう 大丈夫 おじさんはね?探し物が得意なんだ」
フォーリエルが呆気に取られつつ言う
「な… 何を…言って…っ」
テスクローネが表情を悲しめて言う
「フォーリエル お父さんは… 記憶を封じられてしまっているんだ 恐らく… シリウス国王と敵対する 何処かのプラント管理者に それで… その者に操られ 彼は レジエル・ソーシュエルは この大陸の 前アバロン国王 ラインツ殿の后 ユイラ王妃を 殺害した」
フォーリエルが驚いて言う
「なっ!?」
テスクローネが言う
「レジエル殿は その場で取り押さえられ 今までの10年間 ずっとアバロンの地下牢に捕らえられていたんだ その間 ガルバディアのプログラマーたちが 彼の記憶にかけられている プログラムを解こうとしたらしいけど 残念ながら…」
フォーリエルが表情を悲しめて言う
「そんな…」
テスクローネが表情を落として言う
「私も出来る限りの事をしてみたけれど… ごめん フォーリエル」
フォーリエルがレジエルを見上げて言う
「それじゃ… 何もかも 全部 思い出せなくなっちまったのかよ!?何で…っ 普通の!ただの武器屋だったアンタが!そんなプラント管理者となんか!?一体何処で会ったんだ!?何でそんな奴と!?」
フォーリエルの目から涙が溢れて来る レジエルが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「…おやおや?どうしたんだい?…何処か 怪我でもしているのかな?よし 大丈夫だ おじさんは とっておきの薬を持っているんだよ え~と…」
レジエルが自分の衣服のポケットを探りながら言う
「あれ…?何処だったかな?うん?…う~ん」
フォーリエルが苦笑して言う
「…相変わらず 忘れっぽいでやんの いっつもそうやって 旅立ちの前に何か忘れて 帰って来てから見つけてたじゃんか… それでも 見つけた時は あって良かったって… 置き忘れて行っちまったくせに…」
レジエルが探り終えて言う
「うん~ どうやら 何処かへ置き忘れてしまったらしい ははは… ごめんな僕 おじさん薬を何処かへ忘れてしまったみたいだ 特別な特効薬だったんだけれどなぁ?」
フォーリエルが言う
「…知ってるよ アバロンの秘薬だろ?どんな切り傷も一瞬で治しちまうって… 凄く貴重だから 大切にするって… だから いっつもあんた 家に置き忘れて行ったじゃないか …そうやって いっつも 色々忘れて行って… 今度は 俺の事まで忘れちまって… もう… 見つけられねーじゃんかっ」
レジエルが一瞬呆気に取られてから笑って言う
「うん?…はっはっは 心配ない 必ず見つけられる」
フォーリエルが驚いてレジエルを見る レジエルが微笑して言う
「何かを 思い出せないほどの場所へ 置き忘れるという事は それだけ それが大切で それだけ 安全な場所に置いたという証拠だ 心配しなくても いつか必ず思い出せるし 見つけ出せないほどの場所に置かれているのだから 誰かに奪われる事も決してない」
レジエルが表情を困らせて言う
「…まぁ ちょっと必要な時に思い出せなかったり 使えなかったりする事はあるんだが …それだけの事だ 失う事は決してない!だから 安心したまえ君!君の大切なものもきっと!…うん?何の話をしていたのだったかな?う~ん…?」
フォーリエルが呆気に取られた後笑い出す
「…は …はは …ははははっ」
レジエルが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「うん…?ああ、もう笑っているのか?良かった良かった そうそう 子供は笑顔が一番だ」
フォーリエルが笑う
「あっははははははっ!」
レジエルが微笑んで言う
「うんうん!何か良い事があったのかな?それは良かったなぁ?僕?」
フォーリエルが悲しそうに笑い止んで言う
「ああっ!ホントに… 良かったぜ あんたが… 間違いなく あんたが… 生きてたんだもんな?生きてたんだ… 何も 思い出せなくっても… 親父は 生きてた… はははっ あははははっ!」
レジエルが笑顔でフォーリエルの頭を撫でて言う
「ああ 良かった良かった… うん?おや?…何を… 話していたのだったかな?…君は…」
フォーリエルが言う
「レジエル・フォーリエル あんたの息子さ… どうせ覚えてねーんだろ?」
レジエルが疑問して言う
「レジエル・フォーリエル… ふむ… 何処かで聞いたような… なんだか 自分に 深く関係するような…」
フォーリエルが言う
「親父!?」
レジエルが笑顔で言う
「ああ!そうか!分かったぞ それは 私の名前だ きっとそうだ 何故なら とても 聞き覚えがある」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「そうじゃ… ねぇよ あんたの名前は!レジエル・ソーシュエルだ!フォーリエルは あんたの息子の名前で!俺の!」
レジエルが言う
「レジエル・ソーシュエル…?フォーリエルは… フォーリエル!?」
レジエルが一瞬目を見開き 瞳の色が一瞬赤く染まる テスクローネがはっとする レジエルが一瞬の後瞬きをしてフォーリエルを見下ろして言う
「うん…?君は… 何処の子かな?」
フォーリエルが目を見開く レジエルが考えながら言う
「うん… 私は… 誰だったか?ここは…?」
フォーリエルが涙目を細め微笑して レジエルの服を握り締める テスクローネが見つめる
【 スプローニ城 王の部屋 】
通信モニターのレクターが笑顔で言う
『これで この大陸から 別大陸の奴は 皆居なくなった!…うん?…いけねぇいけねぇ うちの情報部の 部長を除くのを忘れてた』
レクターが苦笑する ロキが言う
「…問題ない バッツスクロイツに関しては 俺も承知している この大陸で 俺たちと共に戦う 仲間である と…」
レクターが微笑して言う
『ああ!そう言って貰えると助かる!例の夢の世界を経験してねー人には 説明が難しいんだが 逆に その世界を見て来た奴らは 皆あいつを擁護してくれる!だから…』
ロキが疑問する レクターが笑顔で言う
『私もやっとあいつを信頼する事が出来てきた!これからは 毎日見張りをする事もやめようと思う!これで私も 変なバグが飛んじまう事が減って助かる!』
ロキが突っ込みを入れる
「てめぇが信用して いやがらなかったのかっ!」
レクターが照れてから 気を取り直して言う
『それはそうと 認識されていた別大陸の刺客は居なくなったが ずっと探してる認識されていない方の 別大陸の刺客は 未だに見つかってねー』
ロキが一息吐いて言う
「…ああ …連絡した通り スプローニでも探してはいるが」
レクターが言う
『でもって その情報元の…』
ロキが目を閉じて言う
「…俺の方には 何の連絡も来てはいない 今も 何処に居るのかさえ分からん」
レクターが苦笑して言う
『そうなのか… それは残念だ』
ロキが目を開いて言う
「…だが恐らく 何らかの情報を見つけたとしても 俺の方へ連絡を寄越すとは思えん むしろ 卿の方へ… アバロンへ連絡を寄越すと思われる …スプローニの民でありながら」
レクターが笑顔を困らせて言う
『うん?…ああ、実は それなんだが』
回想
エリルドワリーが表情をしかめて言う
『… こ…』
レクターが笑顔で居る エリルドワリーが指差して叫ぶ
『こんな すっとぼけた男が!アバロンの代理国王だってぇえ!?』
スファルツが苦笑する エリルドワリーが言う
『アバロンってのはっ!世界を統べるとさえ言われた 3大国家の頂点にして ガルバディアに選ばれし 戦士の国!そのアバロンのっ 代理とは言え 国王が!こんなっ!こんなぁああ!』
エリルドワリーがレクターの胸倉を掴み上げて叫ぶ
『納得できないんだよーっ!』
スファルツが苦笑して言う
『ミセス・エリルドワリー どうか 落ち着いて下さいっ 相手は …一応 この国の代理国王殿ですので…』
レクターが義手に引き上げられつつ苦笑して言う
『あ… ああ、私自身も 本当は代理であっても アバロンの王様をやるつもりは ねーつもりだったんだが…』
エリルドワリーがレクターに顔を近づけて言う
『だが?』
レクターが笑顔で言う
『気付いたら 何となく そうなっちまってたんだ 私も驚いた!はは… ぎゅっ!?』
エリルドワリーがレクターの首を絞めながら言う
『なら… 次に気付いた時には 別のまともな奴が 代理国王に代わっちまってるかも しれないねぇ?』
スファルツが慌ててエリルドワリーの義手を押さえて言う
『ミ、ミセス・エリルドワリー!いけませんっ お気持ちは分かりますがっ 彼は 間違っても アバロンの代理国王殿ですのでっ!』
エリルドワリーが言う
『ああ… 間違ってるんだよっ!』
スファルツが慌てている レクターが苦笑笑顔で言う
『く… 苦しい ん だな… は… はは… は… …』
レクターが笑顔のまま 意識を失ったように頭が傾く スファルツが慌てて言う
『レクター代理国王殿っ!』
回想終了
レクターが苦笑笑顔で言う
『…と言う訳で きっとエリルドワリーは 何かを見つけても 私には教えてくれねー!…そんな気がする!』
ロキが表情を呆れさせつつ言う
「…言われて見れば 誰よりもふざけた事を嫌う性格の持ち主だった」
ロキが頭を抱え表情を困らせて言う
「…とは言え 代理ではあるが アバロンの王を締め上げたとは …これが噂の 間抜け大剣使いレクターでなかったら スプローニは今頃どの様な賠償を掛けられていたか想像も」
レクターが笑顔で言う
『今 私を呼んだか?』
ロキが衝撃を受け 慌てて否定して言う
「い、いやっ!気のせいだろうっ!?」
レクターが笑顔で言う
『そうか なら良いんだが… それじゃ!ローゼントへ捕らえていた2人は居なくなったが これからも 残りのお客… 刺客を見つける様 お互いに用心して 何か見つけた時には連絡をするって事で よろしく頼む!』
ロキが一瞬呆気に取られた後気を取り直して言う
「…あ、ああ 分かった 用心を続け 何か分かれば連絡をする」
レクターが笑顔で消える ロキが間を置いてから考える
「…ふん…」
ベルグルが顔を出し言う
「ロキ隊長?どうかしたッスか?アバロンのレクター代理国王様と仲良く話が出来て 嬉しくないんッスか?」
ロキが言う
「…フッ どうだかな 俺としては 何故奴が このスプローニへ通信をして来たのか …ローゼントに捕らえていた奴らの釈放など わざわざ代理とは言え 国王が連絡をする必要も無い …そして、本気でエリルドワリーの情報が欲しい と言う様子もなかった」
ベルグルが首を傾げて言う
「う?なら 素直に ロキ隊長と話がしたかっただけなんじゃないッスか?レクター代理国王様も言ってたッス!よろしく頼むって あれは 協力して頑張ろうって意味ッス!」
ロキが視線を強めて言う
「…本当にそれだけの事か?アバロンが… 3大国家の頂点とも言えるアバロンの代理国王が 3大国家にも入らない… 更には 同盟国所か友好国でもない このスプローニへ… 一体何の目論見が」
ベルグルが不満そうに言う
「ロキ隊長?…今日のロキ隊長は あんまりカッコ良くないッス レクター代理国王様は お互いに用心して 連絡し合おうって言ってたッスよ!?あの言葉は 嘘じゃ無かったッス!俺には分かるッスよ!」
ロキが驚きベルグルを見る ベルグルが表情を困らせ怒っている ロキが呆気に取られた後苦笑し表情を和らげて言う
「…そうか 分かった …卿を信じよう」
ベルグルが驚き呆気に取られて言う
「へ?」
ロキが苦笑して言う
「…国王として スプローニを守らなければと 力が入り過ぎていたのかもしれん …夢の世界では帝国にまでなっていた あのアバロン …だが、現実世界では」
ベルグルが笑顔で言う
「現実世界でも 皆仲間ッス!だって皆 同じプラントに生きてるッスよ?そりゃ… ソルベキアはちょっと意地悪ッスけど… きっと赤トカゲたちとだって 仲良く出来るッス!」
ロキが呆気に取られてから苦笑して言う
「…フッ 大したものだな卿は 諸卿 犬たちは」
ベルグルが疑問して言う
「う?俺たちが…ッスか?う~?え~と…」
ロキが軽く笑ってから席を立って言う
「…寝る」
ベルグルが笑顔で言う
「はいッス!」
ロキが上着を脱ぎながら歩く ベルグルが言う
「あ!ロキ隊長!今日はちゃんとベッドに入って寝るッスよ!また毛布を掛けないで寝てたら 今度は噛み付いてでも起こしちゃうッスから!」
ロキがコートを掛ける手を止め表情をしかめて言う
「…ああ 叩こうが噛み付こうが 起こしてくれてかまわん また 添い寝などされては…」
ロキが顔を引きつらせ ハッとしてベルグルへ振り返って言う
「それから!人の姿で居るときには 噛み付くな!?殴れ!良いな!?」
ベルグルが不満そうに言う
「え?俺は… ロキ隊長を殴ったりなんかしたくないッス それに、噛み付くのだって本当は嫌ッスよ!?だから ちゃんとベッドに入って寝てほしいッス!」
ロキが衝撃を受け視線を逸らして 小声で言う
「…チッ 馬鹿犬に説教をされる日が 来るとは」
ベルグルが呆れて言う
「小声で言っても ばっちり聞こえてるッスよ?」
ロキが不満そうに言う
「…分かっている …それより 卿は何時まで俺の部屋に居るつもりだ?さっさと 自分の部屋へ戻れ!シッシッ!」
ベルグルが衝撃を受け言う
「あー!酷いッス!ロキ隊長!俺をまるで犬みたいに 追い払ってるッス!」
ロキが叫ぶ
「卿は犬だろう!」
ベルグルが思い出して言う
「あ、そうだったッス 俺とした事がッスね!」
ロキが間を置いて溜息を吐く ベルグルが心配そうに言う
「…ロキ隊長?」
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「はいッス!」
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「…別に わざわざ報告などしてくれずとも」
通信モニターにヴェルアロンスライツァーがドアップに映り叫ぶ
『ロキーーッ!!』
ロキが呆気に取られる ベルグルが笑顔で言う
「ヴェルアロンスライツァー副隊長!改めて おめでとうございますッス!スプローニにも 伝わってるッスよー!」
ロキが苦笑して言う
「…フッ そうだな …やはり俺からも 改めて祝福を…」
ヴェルアロンスライツァーが困り顔で叫ぶ
『どおしてくれるのだっ!?ロキ!貴殿の助言を元に その様にしたら その様になってしまった!しかしっ!私はやはりっ その様になるのはっ!』
ロキが怒って言う
「ちょっと待て!途中までは分からなくも無いが …やっぱり分からんっ!主語は略さず話せ!」
ヴェルアロンスライツァーがモニターを見る ロキが溜息を吐いて言う
「…つまり 俺の助言を元に 卿の思いを伝え 結果 アンネローゼ殿の出産を認め 支える事となった …しかし、卿は結局 アンネローゼ殿の身が心配なのだな?」
ヴェルアロンスライツァーが表情を困らせながら頷く ベルグルが汗を掻き言う
「流石 ロキ隊長ッス やっぱり凄いッス…」
ロキが腕組みをして言う
「…で?」
ヴェルアロンスライツァーが疑問してロキを見て言う
『で… と言うのは』
ロキがすぅっと息を吸ってから叫ぶ
「それを… 俺のせいにしやがるってぇえのかぁあ!?てめぇえはぁああ!?」
ベルグルと通信モニターのヴェルアロンスライツァーが驚きに呆気に取られる ロキが怒って言う
「ここまで来たら いい加減 貴様も腹括って全うしやがれ!フンッ!」
通信モニターのヴェルアロンスライツァーが驚き呆気に取られている ロキが通信機の電源へ手を伸ばす ヴェルアロンスライツァーが慌てて言う
『あっ』
ロキが通信機を切り 言う
「…寝る」
ベルグルが呆気に取られた後 表情を輝かせて言う
「カッコイイッス!ロキ隊長!やっぱ ロキ隊長は 後住民族の人としても!男としても カッコイイッスよー!…でも」
ロキがベッドの毛布の上で寝ている ベルグルが困り怒って叫ぶ
「やっぱり ちゃんとベッドに入って 寝てくださいッスー!ロキ隊長ー!」
ロキが寝息を立てている
【 ローゼント城 ヴェルアロンスライツァーの部屋 】
ヴェルアロンスライツァーが切れた通信モニターの前でうなだれていて言う
「うぅ… 見放されてしまった… 一体どうしたら良いのだ… 腹を括れと言われても… 全うしろと言われても… 私には やはり…」
ドアがノックされ アンネローゼの声が届く
「ヴェルアロンスライツァー?まだ… 起きておられますか?」
ヴェルアロンスライツァーが衝撃を受け慌てて扉へ向かいながら叫ぶ
「アンネローゼ様っ!?た、只今お開け致します!」
ヴェルアロンスライツァーが扉を開けると アンネローゼが微笑して言う
「ごめんなさい 休んでいましたか?」
ヴェルアロンスライツァーが傅いて言う
「いえっ!たった今まで ロキへ通信を…っ」
ヴェルアロンスライツァーがハッとして言葉に困る アンネローゼが一瞬疑問した後苦笑して言う
「スプローニのロキ国王へ… そうでした 私からも お礼を伝えなければいけませんでしたね ロキ国王のお陰で 貴方が… 私を… 信じてくれたのですから」
ヴェルアロンスライツァーが驚きアンネローゼを見上げて言う
「ア、アンネローゼ様っ!私は!私は決して アンネローゼ様を 信じていなかったと言う訳ではっ!」
アンネローゼが微笑して言う
「ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが慌てて礼をして言う
「はっ!」
アンネローゼが静かに言う
「貴方の… ご両親の事は 伺いました ごめんなさい… 貴方に黙って 貴方の事を調べさせてしまって」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼを見上げている状態でハッとして言う
「い、いえっ!私めの事など なんなりとっ」
アンネローゼが言う
「貴方は お母様の事もあって 今回の私の出産を強く反対していた …にも拘らず 私を信じてくれました ありがとうございます ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが驚きアンネローゼを見つめる アンネローゼが微笑して言う
「私は この子の為にも 貴方の為にも そして、私自身の為に 必ず出産を成功させます ヴェルアロンスライツァー これからも 私を信じ 支えて下さいね?」
アンネローゼが美しく微笑む ヴェルアロンスライツァーが見惚れた後ハッとして慌てて頭を下げて叫ぶ
「は… ははーっ!このヴェルアロンスライツァー!アンネローゼ様を心より信じ どの様な茨の道も 共に歩むと誓っております!」
アンネローゼが軽く笑って言う
「うふっ ええ、心強いです ヴェルアロンスライツァー きっと 貴方に負けないような 強い子を産んで見せます」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られて言う
「わ…私に負けぬ強い子?で、ではっ!?お、お子様は 男の子であらされるのですか?」
アンネローゼが可笑しそうに笑って言う
「ふふふっ ヴェルアロンスライツァー?この子は貴方と私の子ですよ?お子様と言ってしまうのはどうでしょう?明日は正式に民へ伝えるのですから 気を付けて下さいね?」
ヴェルアロンスライツァーが慌てて言う
「は、はい!し、失礼致しましたっ!つ、つい…っ」
アンネローゼが微笑んで言う
「それから 子供の性別は まだ分かっていません ですが …リーザの時とは違い 毎日とても元気にお腹を蹴っているのです 男の子でも女の子でも 元気な子である事は間違いないでしょう」
ヴェルアロンスライツァーが衝撃を受け言う
「ア、アンネローゼ様のお腹を 蹴るとは…っ!」
ヴェルアロンスライツァーが怒っている アンネローゼが苦笑して言う
「ヴェルアロンスライツァー?間違っても 生まれてきた子に怒らないで下さいね?蹴るといっても 何も攻撃ではありません 元気に動いている証拠ですから」
ヴェルアロンスライツァーが返事をする
「は… は…っ」
アンネローゼが軽く笑ってから言う
「ふふ… では また明日」
ヴェルアロンスライツァーが改めて言う
「はっ!お休みなさいませ!アンネローゼ様!」
アンネローゼが数歩離れてから立ち止まり振り返って言う
「…たまには 一緒に床へ入りますか?ヴェルア…」
ヴェルアロンスライツァーが困り焦っている アンネローゼが苦笑して言う
「…いえ、昨夜は良く眠られなかったのでしたね?では 今夜はゆっくり休んで下さい 私と一緒では 貴方は一睡も出来ませんものね?」
ヴェルアロンスライツァーが頭を下げて言う
「も、申し訳ありません…っ お心遣いを有難く頂戴いたします」
アンネローゼが苦笑してから立ち去る ヴェルアロンスライツァーが間を置いて顔を上げふぅっと息を吐く
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