漫画の様にスラスラ読める小説をめざしたらネームになった物語の1つ。クライツオブハーツ

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1-8 勇猛な女海賊

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ウィルシュが苦笑してから言う
「俺を恨まないでくれよ?恨むんならアンタを守れなかった そこの騎士様にしてくれよな?」
ウィルシュが剣を構える アンネローゼが覚悟を決める ウィルシュの後ろに這いつくばっているヴェルアロンスライツァーが必死に顔を上げて言う
「アンネローゼ様っ!」
ウィルシュが間合いを詰める ヴェルアロンスライツァーが必死に立ち上がろうとする
「ぐぬぁああっ!」
ヴェルアロンスライツァーの体にプログラムの羅列が光り シュライツがプログラムを強化しながら言う
「プポー!ピポポポー!」
シュライツがプログラムをジャンジャン放つ ヴェルアロンスライツァーの体がプログラムに押さえ付けられヴェルアロンスライツァーが苦し紛れに言う
「アンネローゼ様っ!お逃げ下さいっ!アンネローゼ様!」
アンネローゼの後方に居る ローゼント兵たちが叫ぶ
「アンネローゼ様ー!」「姫様ーっ!」
ウィルシュがアンネローゼをキッと見て言う
「せめて 苦しまねー様に 一撃で決めてやるよ」
アンネローゼが無言で見詰める ウィルシュが剣を掲げる ヴェルアロンスライツァーが目を見開き叫ぶ
「やめろぉおおーーっ!」
女の声が届く
「お嬢、伏せな」
アンネローゼが一瞬驚いた後身を屈める ウィルシュの後方からバズーカ砲が放たれ ウィルシュの背中に直撃する ウィルシュが目を見開いて言う
「がはっ!」
ヴィルシュがアンネローゼの屈めた背の上を吹っ飛ばされ地に胸を打ち付けてスライドして止まる アンネローゼが驚いて振り返って見詰めている所に バズーカ砲を所持した女が現れバズーカ砲を肩へ担ぎ上げて言う
「へぇ… こいつを食らって生きてるだなんて 驚いたねぇ?」
アンネローゼがバズーカ砲を所持した女へ向いて言う
「あ、貴女は…?」
バズーカ砲を所持した女がアンネローゼの言葉を無視してウィルシュの横に屈んで見る ウィルシュが苦しそうに言う
「が… はっ がぁ…っ」
アンネローゼが来てバズーカ砲を所持した女の横から見る バズーカ砲を所持した女が気付いて言う
「こいつのお陰かい 大した装甲じゃないか」
ウィルシュの背にある防具装甲がめり込んでいる アンネローゼが表情を困らせて言う
「しかし、今は その装甲が 彼の胸を圧迫してしまっています このままでは…っ」
アンネローゼがバズーカ砲を所持した女を見る バズーカ砲を所持した女がバズーカ砲を背に回してから右手をウィルシュの装甲へ伸ばし 装甲を引っ張ろうとするとウィルシュの体が引き上がり掛ける アンネローゼがあっと何か言おうとすると バズーカ砲を所持した女が片足でウィルシュの腰を乱暴に押さえ付けた後 装甲を怪力でひっぺ返す 装甲が音を立てて外れる アンネローゼが呆気に取られている ウィルシュが呼吸を取り戻して咽ながら荒い息をする
「はっ はぁ はぁはぁ ごほっごほっ…」
バズーカ砲を所持した女が体勢を直すとアンネローゼがホッとして苦笑する バズーカ砲を所持した女が言う
「それで?」
アンネローゼが疑問して言う
「え?」
バズーカ砲を所持した女がバズーカ砲をウィルシュの後頭部に押し付けて言う
「改めて こいつをぶっ殺すかい?」
アンネローゼが驚いて言う
「えぇえーーっ!?」
シュライツが慌ててやって来て叫ぶ
「プポー!ピポポポー!プー!」
バズーカ砲を所持した女がうるさそうに言う
「ポーポーうるさいねぇ 羽付きは黙ってな!焼き鳥にしちまうよ!?」
シュライツが衝撃を受け アンネローゼの背に隠れて言う
「ピポー!ピポプポー!」
アンネローゼが呆気に取られた後慌てて言う
「あっ お、お待ちになって下さいっ!焼き鳥もぶっ殺すのも いけませんっ」
バズーカ砲を所持した女が苦笑した後 アンネローゼへ向いて言う
「なら …ひっ捕らえるかい?お姫様?」
アンネローゼが苦笑して言う
「…はい」
バズーカ砲を所持した女が周りを見渡して言う
「ほらっ!お国の兵隊さん 何してるんだいっ!アンタらのお姫様が こいつを捕らえろって言ってるんだよ!ぼさっとしない!」
ローゼント兵たちがはっとして 返事をして集まって来る バズーカ砲を所持した女がタバコに火を付けて吹かす アンネローゼが気を取り直して言う
「本当に助かりました 貴女はこの国の… いえ、この世界の救世主です」
バズーカ砲を所持した女が苦笑してから言う
「ははっ …やめなよ そんな言葉 アタシには似合わないね」
アンネローゼが微笑して言う
「そんな事はありません 貴女の攻撃はこの子の力をも超え あのウィルシュと言う強力な剣士を一撃で倒したのです 我らローゼントとローレシアの 魔法剣士部隊を超える 貴方の力は 今この世界の危機を乗り越える 十分なものとなり得るでしょう まさに救世主です」
ウィルシュがローゼント兵に連行される シュライツが顔を向けてウィルシュを視線で追う バズーカ砲を所持した女が苦笑して改めて言う
「その羽付きの力は 一見魔法に見えるけど そうじゃなくてプログラムなんだってさ だから 魔法剣士たちの力じゃなくて あいつの力で何とかなった… アタシはただ そのプログラムが外れて無防備になった奴の背中を 撃ち倒してやっただけだよ?」
アンネローゼが驚いて言う
「あ… あいつ と仰るのは?」
バズーカ砲を所持した女が片手の親指で後方を示す アンネローゼが視線を向けると ヴェルアロンスライツァーが身を起き上がらせて言う
「かたじけない… スファルツ卿」
スファルツが微笑して言う
「いえ このプログラムは ただ痛みを抑えるだけの 応急処置ですので どうぞ お早めに 治療をお受けになって下さい」
アンネローゼが驚いて言う
「貴方は… ソルベキアのスファルツ卿ですね」
スファルツとヴェルアロンスライツァーが近くへ来て スファルツが微笑して言う
「これはこれは ローゼントのアンネローゼ女王陛下に 名を知られているとは 光栄ですね」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼの下に跪いて言う
「アンネローゼ様… 申し開きの言葉もありません 私がお傍に居りながら…」
アンネローゼが微笑して言う
「ヴェルアロンスライツァー 貴方は良く戦ってくれました スファルツ卿の仰る通り 貴方は治療を受けて来て下さい」
ヴェルアロンスライツァーが顔を上げて言う
「いえ、そのスファルツ卿より頂きました 応急処置にて十分 ご心配には及びません」
アンネローゼが心配そうに言う
「…しかし」
バズーカ砲を所持した女がヴェルアロンスライツァーの横腹を蹴り上げる ヴェルアロンスライツァーが驚きと痛みに悲鳴を上げて倒れる
「ぐぉっ!」
アンネローゼが慌てて言う
「きゃぁっ ヴェルアロンスライツァーっ!?」
アンネローゼがバズーカ砲を所持した女へ顔を向ける バズーカ砲を所持した女がイラッとしている様子で言う
「治療を受けて来いって言ってるんだよ!面倒臭い男だねぇ それとも 応急処置でも立てないほど 痛め付けられたいのかい?」
バズーカ砲を所持した女がヴェルアロンスライツァーへバズーカ砲を向ける アンネローゼが慌てて言う
「や、やめて下さいっ!ヴェルアロンスライツァーが死んでしまいますっ!」
バズーカ砲を所持した女が苦笑してからアンネローゼへ言う
「なら、バシッと命令してやりな?そうでもしないと、その騎士様は アンタの傍から意地でも離れないんだろ?」
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーへ向く ヴェルアロンスライツァーが苦しそうに立ち上がろうとする アンネローゼが苦笑して言う
「ヴェルアロンスライツァー これは命令です 治療を受け 万全の状態で 戻って来なさい」
ヴェルアロンスライツァーが一瞬驚いた後 表情を困らせバズーカ砲を所持した女を見る バズーカ砲を所持した女が言う
「女のアタシの足に蹴られて 立ち上がれない様な状態じゃ 万全とは程遠いねぇ?」
ヴェルアロンスライツァーが一度顔を下げ悔やんでから アンネローゼへ向いて言う
「…分かりました アンネローゼ様 どうか お気を付けて」
アンネローゼが微笑して頷く ヴェルアロンスライツァーが立ち上がるとローゼント兵たちが駆け寄って来る ヴェルアロンスライツァーが言う
「私は良い 私の代わりに アンネローゼ様の警護に付いてくれ」
ローゼント兵が返事をして アンネローゼの近くへ立つ アンネローゼが頷いてから 改めてバズーカ砲を所持した女へ向く バズーカ砲を所持した女が新しいタバコに火を付けている アンネローゼが言う
「あの… 私はローゼントの女王 アンネローゼと申しますが」
バズーカ砲を所持した女がタバコの煙を吐き出して言う
「知ってるよ さっきの騎士様やら 周りの兵隊さん おまけに このスファルツまで 何度もアンタをそう呼んでるじゃないか」
アンネローゼが苦笑する バズーカ砲を所持した女が顔を向けて言う
「ついでと言っちゃ難だけど そのアンタがシュレイザーに監禁された時 さっきの騎士様…アンタの旦那が駆け付けただろ?あの時の戦いに アタシもちょいと手を貸したんだよ まぁ、厳密に言えば アタシの息子が陰ながら手を貸す だなんて言うもんだから アタシはオマケのオマケって所だったけどね」
アンネローゼが僅かに驚いて言う
「あの時の戦いに?…では 貴女は」
ガイが上空から降りて来る アンネローゼや他の者が驚く ガイが言う
「唐突な訪問にて失敬する 貴方様は ソルベキアの天才ハッカー スファルツ卿であらされると お見受けする」
スファルツが反応して言う
「はい、いかにも 私が ソルベキアの侯爵スファルツですが 貴方は… 旧大陸 シリウスBの兵であられる ガイ殿」
ガイが一瞬驚く バズーカ砲を所持した女が反応し アンネローゼが驚いて言う
「シリウスBの!?シリウスBは アバロンの ラインツ元国王に刺され 重傷を負ったと伺いました その兵が この新世界にて 一体誰の命で動いているのです?」
ガイが苦笑して言う
「…ふっ 我が王は闇の王 …と言うのに 随分と公に知られている様子」
アンネローゼが言う
「私はこのローゼントの女王です それらの事は アバロンの王 ヘクター殿から先日伺ったまで 決して公にはされておりません」
バズーカ砲を所持した女が言う
「へぇ~?そうなのかい?アタシはてっきり そのヘクター国王が 公に発信したんだと思ったんだけどねぇ?何せ 唯の一庶民である アタシの通信機にわざわざ連絡してくれるんだから 驚いたよ」
バズーカ砲を所持した女がタバコを吹かす アンネローゼが驚いて言う
「え…え…?で、ではっ まさか!」
バズーカ砲を所持した女が疑問して言う
「うん?」
アンネローゼが言う
「ヘクター国王の通信機が故障し 何処の誰とも分からない 強気な女性に通信してしまったと!その強気な女性というのがっ!?」
バズーカ砲を所持した女が不満そうに言う
「強気な女性、強気な女性って 失礼だねぇ アタシがそれほど強情な女だって 言いたいのかい?」
アンネローゼがはっとして困って言う
「し、失礼致しましたっ」
バズーカ砲を所持した女がタバコを吹かして言う
「まぁ、良いけどさ 旦那にもしょっちゅう 女気が無いって言われてたからね」
スファルツが苦笑して言う
「でしたら もう少々なりとも おしとやかに… 丁度、アンネローゼ女王陛下がいらっしゃるのですから お見習いになられては…?」
一瞬の後 スファルツが苦笑顔でバズーカ砲を所持した女の右腕に襟首を捕まれ吊り上げられている バズーカ砲を所持した女が他方を向いてタバコを吹かして言う
「なんか 言ったかい?」
スファルツが苦笑して言う
「あっはは… いえいえ 滅相もありません ミセス・エリルドワリー」
ガイがスファルツを見て言う
「スファルツ卿 私は我が王の命により 貴方をお迎えに参った どうか ガルバディアへ」
スファルツが言う
「ええ、私もそのつもりで ローゼントまで参りました ソルベキアの移動魔法陣は ソルベキアの権限を取り戻したガライナに封じられてしまいましたので こちらのローゼントの移動魔法陣の使用許可を頂き ガルバディアへ転送して頂こうと思いまして」
エリルドワリーが腕組みをして言う
「アンタがここからガルバディアへ行くって言うなら アンタの護衛はここまでだね アタシはアバロンへ ヘクター国王に会いに行くよ リジルたちの企みを伝えなきゃならないからね」
ガイが驚いて言う
「何故、貴女がリジルの名を!?不躾だが貴女は何者か?」
アンネローゼが言う
「エリルドワリー その姓を思い出しました 私をシュレイザーから救出する あの時の戦いで ヴェルアロンスライツァーに加勢して下さった スプローニの銃使い そちらのお方の姓がエリルドワリー様でした」
エリルドワリーが言う
「ああ、その姓を持ったアタシの旦那が あの時の攻略を考えて 実際に銃を持って戦ったのが アタシの息子 …と、オマケのアタシだ」
アンネローゼが表情を困らせて言う
「そうでしたか… 重ね重ね失礼しました 私は過去のそちらの戦いに置いてのお礼と 今回のお礼も致しませんと ミセス・エリルドワリー」
エリルドワリーが苦笑して言う
「良いって 済んだ事だよ どっちもね?それに あの時の戦いも その礼を受け取るべきなのは アタシじゃなくて旦那の方だった 生憎 もう遅いけどねぇ…」
アンネローゼが疑問して言う
「遅い…とは?」
ガイが言う
「失敬、話の途中で申し訳ないが リジルの事も承知していると言うのであれば 是非とも 貴女にもガルバディアへ 我が王の下へご同行頂きたい エリルドワリー夫人」
エリルドワリーが呆気に取られた後 大笑いして言う
「あっははははっ 夫人かい!そいつは止めてくれよ なんだかこそばゆいよ」
ガイが呆気に取られた後苦笑して言う
「…では、こちらの大陸の言葉を用いて 慣れないが ミセス・エリルドワリーとすれば良いだろうか?我々の大陸では 他人であっても姓では呼ばず 個人名で呼ぶものだが」
エリルドワリーが一瞬嫌な顔をして視線を逸らす スファルツが軽く笑って言う
「ふふ…っ ミセス・エリルドワリーは 名を明かしては下さらないのですよ ですから 私も ずっと 姓でお呼びしております」
ガイとアンネローゼが疑問して顔を見合わせる エリルドワリーが嫌そうに言う
「ああっ んなのは どうでも良いじゃないかい!アンタ、そこの コウモリ男のガイ」
ガイが衝撃を受け言う
「こ…蝙蝠男…」
エリルドワリーが言う
「急ぎだ 急ぎだって 言ってなかったかい?アンタの王が待ってるんだろ?だったら さっさとこの気取り男を連れて行きな!アタシにも用があるって言うなら アバロンでヘクター国王に会った後なら ガルバディアへ行ってやるよ!」
ガイが言う
「でしたら 初めからガルバディアへ アバロンにヘクター国王殿は居られない」
皆が疑問する

【 ガルバディア城 玉座の間 】

シリウスBが言う
「お前の記憶は 封じられている訳ではない お前は 思い出さない様にしているだけだ」
バッツスクロイツが疑問して言う
「俺が思い出さない様に?…そーんな訳ないってー 俺っちは基本ノーシークレットだし こうして目を閉じればー?超鮮明に?直ぐにでも マイメモリーを思い出せるんだぜ?あのローンルーズの平和ボケーした日々がさー?なぁ?デス?」
バッツスクロイツがアンドロイドのデスを見る アンドロイドのデスが見詰めている バッツスクロイツが苦笑してからシリウスBを見て目を閉じる

回想

バッツスクロイツが白衣を着てアンドロイドファクトリーを歩いている 後方に部下が数人付いている バッツスクロイツが言う
『それで?このアンドロイドの症状は?データチェックには何も引っかかってないんだろ?』
部下が答える
『はい、身体機能、AI、共に正常です』
バッツスクロイツがアンドロイドの横に立って言う
『じゃ、どこがおかしいって?』
バッツスクロイツが そこに置かれたカルテを見る

シリウスBがバッツスクロイツの周囲に広がるプログラムを見ている バッツスクロイツが苦笑して言う
「そ、これが俺のいつもの日課ーって感じで?ローンルーズの皆はさぁ~ アンドロイドを道具としてしか見てないんだぜ?酷いだろ?だからさぁ~」

バッツスクロイツの自宅

アンドロイドのデスが部屋の掃除をしている バッツスクロイツが帰って来る バッツスクロイツの不機嫌な帰宅の挨拶 アンドロイドのデスが時間を確認する バッツスクロイツが部屋に入って来てイライラしながら上着を脱ぎ捨ててソファへドサッと腰を下ろす アンドロイドのデスが掃除の手を休めバッツスクロイツの上着を拾ってクローゼットへ向かう バッツスクロイツが片手で額を押さえ呻きながらソファの背にもたれて天上を見上げ愚痴を始める
『まったく!どいつもコイツも~!アンドロイドを何だと思ってるんだ!?自分の脳ミソん中まで分かるとでも思ってんのかってーのっ』
バッツスクロイツの元へ アンドロイドのデスがコーヒーカップを持ってくる バッツスクロイツがそれを受け取り、中身を確認せずに口へ運びゴクゴクと音を立てて飲んだ後、カップを片手に地面を見据え 間を置いて言う
『………ん?』
バッツスクロイツが顔を上げ いつもとの違いに気付く カップの中身がコーヒーだった事に驚き呆気に取られて言う
『デス…お前…』
バッツスクロイツがアンドロイドのデスを見上げる アンドロイドのデスは何もせずにバッツスクロイツの前に居る バッツスクロイツがアンドロイドのデスを見た後 微笑して言う
『はは… 何百回言ったって記憶しなくって、何~の改良も してないのに… 何で変わったんだ?お前…』
バッツスクロイツがカップをアンドロイドのデスに返す アンドロイドのデスがカップの返却へ行く  バッツスクロイツが1つ息を吐く 

バッツスクロイツが言う
「あ、そうそう!この日だけは 特別だったんだよな!デスがコーヒー持って来てさぁ~!?俺感動しちゃったよ!アンドロイドの奇跡だぜ!?…って言っても デスはローンルーズのアンドロイドじゃ なかった訳だけど… けど、俺は ずっとデスは親父が作った ローンルーズのアンドロイド試作機だと思ってたもんだから」
シリウスBが言う
「彼はシリウスが作り上げた ガルバディアの民であり ガルバディアの騎士だ お前の父親が作り上げたものではない …だが お前が その様に勘違いしていたのも頷ける」
シリウスBがアンドロイドのデスを見て言う
「彼はシリウスによって送り込まれた密偵であった だが、その彼をお前の父親が 事実を知った上で受け入れ 自分のアンドロイドであると正式に登録していたとの事だ お前の子守を兼ねた家政婦アンドロイドとしてな この事は 彼のメモリーに記録されていた」
バッツスクロイツが驚いて言う
「父さんが?正式にって… そんな なんで?父さんは デスのデータを盗んだりなんかは絶対にしてないんだぜ!これは 俺が断言できる!俺はデスのデータを少しだけど解析した!父さんのアンドロイドとはまったく違うんだ!だから!」
シリウスBが微笑して言う
「お前の父親が 彼を受け入れた目的は アンドロイドのデータ取りとしてでも お前の子守をさせる事でも無かった それは…」

バッツスクロイツが言う
『…父さんが初めてアンドロイドを開発した時は 皆すっごい喜んで… ただ 人と同じ様に立って、歩いただけでも 大喜びしたって話だ、それなのに…』
アンドロイドのデスが振り返る バッツスクロイツがデスを見て言う 
『いつの間にかアンドロイドは…』
携帯が鳴る バッツスクロイツが一瞬驚いた後言う
『と あれ?珍しい その父さんからだ』
バッツスクロイツが携帯を軽く叩いてから 正面を見て言う
『ヤッホー!久しぶりじゃーん パパー?』
バッツスクロイツの正面にホログラムのモニターが現れ バッツスクロイツの父親が映り言う
『バッツ!良かった 今何処に… 家か!デスも居るな!』
バッツスクロイツの横にアンドロイドのデスが来る バッツスクロイツが呆気に取られた後言う
『…どうかしたの 父さん?なんか アンドロイドのトラブルでも?あ!もしかして 俺がバックレタ後 ファクトリーでなんかあっちゃったっ!?だとしたら 俺っちのせいー!?…って けど 何でデスが関係しちゃう?』
バッツスクロイツが疑問してアンドロイドのデスを見る アンドロイドのデスがモニターを見詰める バッツスクロイツの父親が言う
『デス!残念ながら 来るべき時が来てしまった ログウェルン城内は全て浄化された 提出したアンドロイド案への回答も無いまま サベーランスから帝国軍が動き出したと言う情報が…っ!』
外で爆発音が響く バッツスクロイツが驚いて言う
『な、何だ!?モニター起動!外部情報を映せ!』
バッツスクロイツの言葉にモニターが表れ街の様子が映る 人々が逃げ惑う中催眠弾が大量に放たれ 煙の中人々が倒れ ガスマスクを付けた帝国軍が機関銃を小脇に現れる
バッツスクロイツが驚いて言う
『帝国軍じゃないか!?何で住民に!?』
家の玄関が打撃される バッツスクロイツが驚く アンドロイドのデスが一度玄関の方を見てから バッツスクロイツの父親を見る バッツスクロイツの父親が言う
『デス!息子を…っ バッツを頼む!』
バッツスクロイツの母親が映像に映って言う
『バッツ…っ』
バッツスクロイツが驚いて言う
『母さん!?』
バッツスクロイツの両親の後方が爆撃され 帝国軍が現れる バッツスクロイツが驚く バッツスクロイツの母親が言う
『バッツ!…生きてっ』
バッツスクロイツの両親が映る映像が乱れる バッツスクロイツが叫ぶ
『父さん!母さん!』
家の玄関が破壊される バッツスクロイツが振り返って言う
『嘘だろっ!?対テロ対策の 超特化防壁だぜ!?帝国軍のマスターボムだって防ぐ壁を!?』
爆煙が収まった所に ウィルシュが剣を振り下ろした状態で居て 顔を上げ剣を肩に担いで言う
『後は… 任せて良いんだよな?』
帝国軍が返事をして入って来て バッツスクロイツを囲う バッツスクロイツが驚いて言う
『何だよ!?あんたら!?帝国軍は 何をするつもりなんだ!?』
アンドロイドのデスがバッツスクロイツを後ろから両腕で包む バッツスクロイツが驚いて振り返ると バッツスクロイツの目にプログラムが見える バッツスクロイツが驚いて言う
『な…何?これっ!?』
帝国軍の兵が催眠弾を撃つ バッツスクロイツが目を見開く 周囲のプログラムが実行される

上空

バッツスクロイツがアンドロイドのデスに後ろから両腕で包まれた状態で現れる 街中が煙に巻かれ 切れ間切れ間に人々が倒れて居て 帝国軍が人々を車に積み運んでいる バッツスクロイツが目を丸くして言う
『…そんな 皆 …帝国の ヒューマンパーツにっ!?…っ!』
バッツスクロイツがはっとして顔を向ける 視線の先 大きなファクトリーがある バッツスクロイツが目を見開き涙がこぼれる バッツスクロイツが言う
『父さん… 母さん… 皆… こんなの…っ 嘘… だよな…?嘘だぁあーーーっ!』
バッツスクロイツが意識を失う

バッツスクロイツの家の中

バッツスクロイツとアンドロイドのデスが消えた事に 帝国軍の兵たちが驚き周囲を見渡している 背を向けて立ち止まって居たウィルシュが言う
『…さっきのは 移動プログラム… ペリーテを送った時と同じ 大掛かりな… 大陸移動の』
ウィルシュが振り返って言う
『誰が…?何処へ送ったんだ?』
ウィルシュがバッツスクロイツとアンドロイドのデスが消えた場所を見つめる

旧世界 ガルバディア城

シリウスBが目を開く シリウスBの前にバッツスクロイツを抱き抱えたアンドロイドのデスが現れる シリウスBが目を細めて言う
『713年前に作られた シリウスの移動プログラム… 何の間違いかと 興味本位で受信した結果 旧型のベネテクトナイトが現れるとは 興味深い』
シリウスBが微笑する アンドロイドのデスがプログラムを発生させる シリウスBが僅かに首を傾げ目を細める アンドロイドのデスがプログラムを終える シリウスBが目を閉じて言う
『情報の提供と引き換えに その者の保護か 残念ながら その情報を欲しているのは お前にそれを命じたシリウスだ 私は シリウスの影シリウスB お前の王ではない』
アンドロイドのデスがシリウスBを見詰める シリウスBが一瞬間を置いた後微笑して言う
『フッ… 流石は 数百年の時を見続けた者 私の言葉に微塵の揺ぎも無しか… だが、言葉に偽りは無い お前からの情報を伝えるべき相手は 私ではなく シリウスだ… その者の保護が出来るのも』
アンドロイドのデスが僅かにバッツスクロイツを抱く手を強める バッツスクロイツがうつろな目でアンドロイドのデスを見上げている シリウスBが言う
『人を守る事は 容易ではない 身を守るだけでは…  その者は今 全てを失った 家族も仲間も… 住む場所も 彼にとっては己の世界を失ったに等しい …だが、それでも お前と言う力が残された』
アンドロイドのデスが疑問する シリウスBが笑んで言う
『シリウスからの依頼を持ち帰ったお前へ… いや、お前たち2人へ 私からも依頼がある それを請け負うと言うのなら 私がお前たちの身だけは 確実に守ってやろう どうする?…愚問だったな』
アンドロイドのデスが見詰める シリウスBが言う
『内容は簡単だ お前たちの王シリウスが 今行っている事を調べて来る事 新大陸に送った民の中から 有力な者を選考し 彼らに帝国を作らせようというのか…?私との連絡を断ち 呼び掛けにも応じない今 少々強引だが お前たちを 奴らの下へ送り込む』
シリウスBが発生させたプログラムを アンドロイドのデスへ送る アンドロイドのデスがプログラムを見てから シリウスBへ向く シリウスBが言う
『奴らが予定通り力を蓄えているのであれば 旧タイプの機械兵程度は処理が出来る筈 奴らと共に向かい 捕虜として捕まる事で 新世界に居るシリウスと接触を図れ』

回想終了

シリウスBが言う
「…思い出したか?」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「そう…だった そっかぁ… 俺、デスとあんたに助けてもらったんだ…」
バッツスクロイツがアンドロイドのデスを見上げる アンドロイドのデスがバッツスクロイツを見下ろす バッツスクロイツが表情を困らせて言う
「それで 俺は助かったけど… 俺たちがローンルーズから逃げた後 皆は?…やっぱ 帝国軍に …あれ?帝国軍?」
シリウスBが微笑して言う
「そうだ この第二プラントに “帝国軍” と言うものは存在しない 旧大陸における帝国であった 旧ローレシア帝国が有していたものでさえ ローレシア部隊と言う」
バッツスクロイツが慌てて言う
「け、けどっ!今俺が思い出した記憶にだって 帝国軍が!ローンルーズの皆を襲って!」
シリウスBが目を伏せて言う
「お前がこの世に生を受けた時点で この第2プラントに存在した ローンルーズ国は滅亡していた」
バッツスクロイツが言う
「だから!新世界に!新大陸に作られた ローンルーズが!」
シリウスBが目を細めて言う
「こちらの大陸に ローンルーズは存在しない 新大陸最北端にある国が このガルバディアだ」
バッツスクロイツが驚く シリウスBが言う
「お前が存在したのは シリウスが収めるこの第2プラントの西 リジルと言う名の管理者が納める 第5プラントなのだ」
バッツスクロイツが呆気に取られる シリウスBが言う
「そして、そこの騎士は シリウスが第5プラントへ送り込んだ偵察だった しかし、第5プラントの状況を知った彼は 独自の判断でそこに留まったとの事 …もっとも、シリウスは 本気で第5プラントの偵察を行わせるつもりは無かったものと推測される 恐らく 己の兵を送り込み 何らかの情報を持ち帰らせる事で それ以前に受けたリジルへの仕返しをしてやろうとでも考えていたのだろう」
バッツスクロイツがアンドロイドのデスを見る アンドロイドのデスが無言で居る シリウスBが言う
「とは言え お前は王からの命であった 情報を持ち帰還すると言う指示を完了させる事無く 他の契約を執行した お前の行動は 裏切りと言える… 覚悟は出来ているのだろうな?」
シリウスBがアンドロイドのデスを見る アンドロイドのデスが微動だにしないで居る バッツスクロイツが慌てて言う
「ちょ、ちょっと待ってよ!デスは俺を助けてくれたんだ!そ、そりゃ~命令違反は 裏切り…とも言えるけど?けどっ 結果的に情報は持ち帰ったんだし!?あ!それに!ほら?俺って言うサンプルも!持って帰ったんだよ?時間の方は… ま、まぁ?ちょっち掛かっちゃった~かもしれない… けどさっ!?そ、そこの所は 何とか穏便に~って事で!」
バッツスクロイツがシリウスBへ向いて言う
「お願いだよ!デスを助けて!俺からデスを… 俺の家族をこれ以上奪わないで!」
シリウスBがバッツスクロイツを見る バッツスクロイツが強い視線でシリウスBを見つめる シリウスBが一瞬間を置いた後苦笑して言う
「…フッ その様子なら 第5プラントでの真実を思い出した事による 精神ダメージは 切り抜けたようだな?」
バッツスクロイツが呆気に取られて言う
「へ?」
シリウスBが微笑して言う
「バッツスクロイツ 先ほど思い起こした事こそが お前が現実世界で目にした真実だ お前は多くのものを失いながらも 今ここに お前が家族とした者と共に 存在している これらの現実を受け入れるか?」
バッツスクロイツが一瞬呆気に取られた後視線を落として考える 脳裏に両親の姿が思い出される バッツスクロイツが言う
「あれは 嘘じゃ… 無かった そうだ 皆は… 父さんも母さんも…」
バッツスクロイツが全てを思い出して言う
「ログヴェルンの皆は!帝国のっ 第5プラントの管理者 リジルの機械部品にされちゃったんだっ!リジルを崇拝する 帝国軍に捕まってっ!畜生っ」
バッツスクロイツが悔やむ シリウスBが言う
「リジルは民をさらい 何をしていた?機械部品にされる…とは?」
バッツスクロイツがシリウスBへ向いて言う
「帝国は 軍事ロボットを作ってるんだ その性能は この世界の機械兵を越えてる… 多分 今のガルバディアの騎士たちと同じ位 でも ガルバディアの騎士たちと違って 奴らは完全に機械で作られてるから 単純に戦闘力として計算すれば」
シリウスBが言う
「機械鎧を装備しているにしても ガルバディアの騎士は 生身の人だ 性能が同クラスであると言うのなら 本体を機械で作られている剛性からして そちらの軍事ロボットは 単純にガルバディアの騎士を超える」
バッツスクロイツが表情を険しくして言う
「おまけに あいつらの性能 戦闘能力だけじゃなくて認識能力だって 同一意識で作られたガルバディアの騎士たちを超えるんだ!何でだと思うっ!?」
シリウスBが目を細めて言う
「…ヒューマンパーツ 脳核を移植しているのか」
バッツスクロイツが悔しそうに言う
「そうだよ!しかもっ ご丁寧に小脳と大脳の一部だけを取り出すなんて 細かい作業を一体一体やって 元の人の意識を極限まで削り取るんだっ!それで!…結果として 最高の性能を持ったAIと それを搭載した軍事ロボットが出来上がる!」
シリウスBが無言で見詰める バッツスクロイツが息を飲み悔しそうに言う
「父さんはっ そんな事を止めさせたいってっ 人と同じ事が出来るアンドロイドを作れば 帝国はヒューマンパーツを使わない様になるはずだって… だからっ 最高のアンドロイドを作ろうとしてた…でもっ」
バッツスクロイツが頭を抱え悔しそうに泣く アンドロイドのデスがバッツスクロイツの肩に優しく手を乗せる バッツスクロイツが一瞬の後アンドロイドのデスに抱き付く アンドロイドのデスがバッツスクロイツの肩を抱く バッツスクロイツがハッとして顔を上げ アンドロイドのデスを見上げた後 慌ててシリウスBへ向き直って言う
「デスをっ!俺の相棒に 罰を与えるのっ!?頼むよ!見逃して!デスは ガルバディアの騎士だとしても 俺にとっては 最後の家族なんだ!」
シリウスBがバッツスクロイツを見る バッツスクロイツがアンドロイドのデスを背に庇って両手を広げる シリウスBが微笑して言う
「相棒となるだけではなく 家族とまでなったか… そこまで昇進した ガルバディアの民を見るのは初めてだ」
バッツスクロイツがシリウスBを見る シリウスBが言う
「その騎士は お前に相棒と認められた時点で ガルバディアの騎士では無くなった そして、その事実は 彼の王であったシリウスが既に黙認している」
バッツスクロイツが疑問して言う
「…え?それって どう言う」
シリウスBが微笑して言う
「ガルバディアの騎士ではなくなった彼に シリウスや私が罰を与える事は無い よって… 彼はこれからも お前と共にあるだろう」
バッツスクロイツが呆気に取られた後 ゆっくり表情を和らげて言う
「それじゃ さっきデスに 覚悟しろって言ったのは!?」
シリウスBが言う
「お前の意思を確認していた バッツスクロイツ… 第5プラントの民である お前が 第2プラントの 我らの仲間となるのか その是非を…」
バッツスクロイツが言う
「覚悟をするのは デスじゃなくて 俺の方って事ね… それならそうって 最初から聞いてくれよな?」
シリウスBが言う
「私は疑り深いんだ お前を信用する 確固たる理由が欲しかった」
バッツスクロイツが意を決して言う
「俺はずっとログヴェルンの街で アンドロイドを道具として使う奴らの事を 悪く言って来たけど それなんかよりずっと 人を道具としてしか考えない帝国の方が嫌いだった!その帝国を支配している リジルと戦うんなら 俺は 皆の仇… 父さんや母さんの仇を討ちたい!デスと一緒に!」
バッツスクロイツがアンドロイドのデスを見上げる アンドロイドのデスが静かに頷く シリウスBが目を閉じて頷いてから言う
「その騎士が持ち帰った情報… 共に お前から得られる情報は 我らの大きな力となる バッツスクロイツ お前の参戦を歓迎する」
バッツスクロイツが笑む 後に あっと気付いて言う
「あ、歓迎してくれるのは嬉しいけどさ?今後は変に勘ぐったりするのはなしーって事で OKかな?俺っちあんま そー言う尋問染みた事されるのってー?夢の世界のヴィクトールっちやバーネっちにされたーので 懲りちゃってるんだよね?だからさ?今後はお互い ノーインクイションで フレンドリーに行こうよ?んね?」
バッツスクロイツが悪戯っぽくウィンクする シリウスBが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「…フッ そうか …良いだろう」
バッツスクロイツが一瞬驚いた後喜んで言う
「えー!?マジでー!?超意外ーって感じ!?もう1人のシリウス様はさ?俺っちが言ったのと同時に ビリビリビリーッって!?超シビレさせた上で 踏みつけて言うんだよ!?『我にその様な口を叩くのは 何処の不躾者かのぉ?少々仕置きが必要な様じゃ』とかぁ!?それで 俺っち人には言えない あーんな事や ああーーんな事されちゃってー!」
バッツスクロイツがわざとらしく泣く シリウスBが頭を支えて言う
「…やめろ 言ってくれるな 見たくも無い記憶が思い出される」
バッツスクロイツが勢い良くシリウスBの手を取って嬉しそうに言う
「けどけどっ!?こっちのシリウス様は 超話の分かる ナイスなシリウス様じゃない!?ん?あれ?…えっと 確かさっき シリウス…Bって言ってた?」
シリウスBが苦笑して言う
「ああ… 私はシリウスB だが 私の存在は」
バッツスクロイツがシリウスBの言葉を制して言う
「オッケーッ!んじゃ シリウスBっちね!」
シリウスBが衝撃を受け言う
「シリウスBっち…っ!?…いや、私の名は 公に呼ばれる訳には」
バッツスクロイツが考えながら言う
「え~?公には駄目なの?それじゃ~ モノホンのシリウスBがシークレットなら 何っちが良いかな?この際ワントリック入れて シリウスCとかDとか!?思い切ってシリウスXなんてどーおー!?」
バッツスクロイツが満足そうに笑む シリウスBが溜息を吐いて呆れて言う
「…もう良い 好きにしろ」
バッツスクロイツが大喜びしている

【 ローゼント城 地下牢 】

シュライツが牢屋の中で騒いでいる
「プポー!ピュロプポポ!ピポプポー!」
アンネローゼが表情を困らせて右隣を見る アンネローゼの右側に居る守衛が言う
「この状態で話を聞くと言うのは やはり難しいかと…」
アンネローゼが苦笑して隣の牢屋を見る ウィルシュが目を瞑っている 守衛が牢の中に居るウィルシュを見ながら言う
「彼は 我々からの言葉に まったく口を開きません」
アンネローゼが表情を困らせた後左隣を向く アンネローゼの左側に居る大臣が言う
「陛下からのご連絡として アバロンのレクター王兄殿下へは 既に シュライツ殿をこのローゼントへ幽閉したとお伝えいたしました そうしました所」
アンネローゼが言う
「レクター殿は何と?」
大臣が手元資料を再確認して言う
「『今すぐに私がお伺いする』…と」
アンネローゼが呆気に取られて言う
「今すぐ?レクター殿は 現在ヘクター国王の代わりに アバロンを収めて居られる筈 そのレクター殿が 今、アバロンを離れられると?」
シュライツの檻の前にレクターが居る アンネローゼがふと気付き振り返ってレクターに驚いて言う
「レクター殿っ!?」
大臣が驚いて言う
「ほわっ!?い、一体何処から!?何時の間にっ!?」
シュライツが気付き喜んで言う
「プポォ?ピポー!プピポ プピポプポピ!」
レクターが笑顔のまま顔をアンネローゼへ向けて言う
『アンネローゼ女王 私の馬鹿息子シュライツが 馬鹿迷惑を掛けちまって 本当に申し訳ねー』
レクターが表情を困らせる アンネローゼが呆気に取られた状態から苦笑して言う
「はい、とても大きな被害を受けましたので そちらに関しましては後日 相応の賠償をアバロンへ請求させて頂きます」
レクターが苦笑して言う
『ああ、アンネローゼ女王は 意外とはっきり言ってくれて 驚いたが悪くねーんだ 気が済むだけ請求してくれ アバロンではなく 私が全力で応じる』
アンネローゼが軽く苦笑した後言う
「それはそうと 私がレクター殿へご連絡をしたのは シュライツ殿の収監と共に 彼への対処についてなのです …彼の魔力は ローレシア製の魔封じの鎖でも 押さえ切れない様子 やはりミセス・エリルドワリーも仰っていたプログラムの力なのでしょう 今は何か仰っていらっしゃるだけの様なので良いのですが 今度何時 どの様な大きな力を使われるかと 気が気ではないのです」
レクターが笑顔で言う
『ああ、さっき そこの大臣殿から通信で聞いた それで急いで来たんだ』
アンネローゼが疑問しつつ言う
「では、何か良い対処方法が あられるのでしょうか?」
レクターが言う
『ああ、実はこんな事もあるんじゃねーかと思って 私はずっと調べてたんだ それで 結果として私自身が 見たくも触れたくもねー物が見付かっちまったんだが しょうがねーから見て持って来た』
アンネローゼが疑問して言う
「レクター殿が調べ…?あ、いえ その持って来られたとおっしゃるのは?」
アンネローゼがレクターの顔を覗き込む レクターが牢屋の扉の前に立ち 周囲にプログラムを現すと 扉のカギが外れ開く アンネローゼと守衛が僅かに驚く シュライツが一瞬疑問した後 レクターが入って来ると喜んで前に行って言う
「ピポー!プポピポ!」
レクターが笑顔で間を置いてから シュライツを殴り付ける シュライツが悲鳴を上げて地に叩き付けられる
「ピッ!」
アンネローゼが驚いて言う
「レクター殿っ!」
シュライツが顔を上げ頬を押さえ泣きながら言う
「ピュポォ~ッ!?」
レクターが笑顔のまま言う
『シュライツ お前の力は オライオンと一緒の時以外は 使っちゃいけねーって 父ちゃんは そう教えただろう?だから ずっと探していた お前の相棒と久しぶりに会えたからって その嬉しさの勢いで羽目を外しちまっても やっぱり使っちゃいけねーんだ』
シュライツが表情を困らせて言う
「ピュポ~…」
レクターが言う
『お前は本当は良い奴だけど ちょっとだけ 勢い任せに馬鹿をやっちまう所がある だから 父ちゃんは  これをお前の為に持って来たんだ こいつを付けてれば お前がまた相棒にそそのかされちまっても もう心配はねー』
シュライツが疑問して言う
「ピ?」
レクターが片手の平にプログラムを発生させシュライツの顔の前に向ける シュライツが疑問して見詰める プログラムが実行され光ると シュライツの顔に仮面が付けられている シュライツが首を傾げて言う
「ピュロポ?」
アンネローゼが見詰めて言う
「レクター殿… そちらの仮面は?」
レクターが笑顔で困りながら言う
『私がずっと 自分の力を抑えるために探してたものなんだ けど、よく考えたら こいつにも使えるって気付いた こいつを付けてれば シュライツはプログラムの力を使えねー シュライツの力は私と同じプログラム… だから この仮面の効力は 私が保障する 安心してくれ アンネローゼ女王』
アンネローゼが微笑して言う
「分かりました 感謝いたします レクター殿」
レクターが笑顔で頷いて言う
『うん、それじゃ 私はこれで』
レクターがプログラムになって消える アンネローゼが呆気に取られてから言う
「アバロンのレクター王兄… やはり 強力な力を隠していると言うのは 事実の様ですね」

【 アバロン城 玉座の間 】

レクターが玉座に座っていて言う
「よし、実体をアバロンに安定させた状態で 出張先でもしっかり意識を持って行動出来た これなら これからもアバロンに居ながら 同時に色んな所へ出張して… うん?」

【 ローレシア城 玉座の間 】

ルーゼックが怒りを押し殺しつつ言う
「~~~っ ええぇいっ!レクター!いい加減にせよ!先ほどからずっと 黙りこくって見詰めおってからに!」
ルーゼックの前に笑顔のレクターが居る ルーゼックが言う
「大体 用があるならさっさと申さぬか!そして 用があらぬのなら…っ!」
ルーゼックが怒って言う
「さっさと私の前から消えぬか!この馬鹿者ぉお!」

【 アバロン城 玉座の間 】

レクターが苦笑して言う
「いけねぇいけねぇ どっかにバグが飛んじまってるらしい 何処に飛んじまってたかは分からねぇが まぁ 今回は心配ねぇ!…そんな気がする!」
レクターが笑顔になり周囲のプログラムを消すと 首をかしげて言う
「けど、これからは用心しねーと どっかの ロストヒューマンに ハックされちまうかもしれねー そんな気もする!」
レクターが1人で照れている

【 ローレシア城 玉座の間 】

ルーゼックが怒っていると 目の前からレクターの姿が消える ルーゼックが呆気に取られる キルビーグが苦笑して言う
「おお、消えてしまった レクター殿は 一体何の用があったのか なぁ?ルーゼック?」
ルーゼックが腕を組んで一息吐いて言う
「知らぬわ!ずっと見詰めたあげくに 何も言わずに消えおるとは!まったく!」
キルビーグが苦笑して言う
「だが、もしかすれば 何やら用事があったのかもしれん 改めてこちらから連絡を入れ 確認した方が良いだろうか?」
ルーゼックが不満そうに目を閉じて顎を上げて言う
「要らぬわっ!重要な事であるなら むしろ 向こうが改めて連絡しよれと申すのだ!」
キルビーグが苦笑して言う
「まぁ 確かにそれはあるが… お前も だいぶアバロンの様子を気に掛けておっただろう?ルーゼック この際 この事を理由に 連絡を送ってみると申すのも良いのではないか?」
ルーゼックが衝撃を受けバツの悪そうに顔を背けて言う
「な、何を申すかっ 馬鹿者っ わ、私はただ…っ」
キルビーグが苦笑して言う
「義理とは言え お前の弟にあたるヘクター国王も去る事ながら ベネテクトだかガルバディアだかアバロンだか もはや分からぬが ヴィクトール13世とも連絡が付かぬと お前はずっと嘆いておったではあらぬか?通信機に当り散らす位なら いい加減 レクター殿へ問い掛けてはどうか?」
ルーゼックが表情を顰めて言う
「ぬぅう… あのレクターへ通信を送るというのは…」
ルーゼックが悩んでいる キルビーグが苦笑する

【 旧世界 ガルバディア城 門前 】

機械兵Gに乗ったリゲルが叫ぶ
「食らえぇえ ロブホース・ロケットパーンチ!」
機械兵Gがロケットパンチを飛ばす シリウスAが閉じていた目を開くと周囲にプログラムが発生して ロケットパンチを防ぐ リゲルが驚いて言う
「なにぃ!?ロブホースの強化ロケットパンチを 防いだだとっ!?」
シリウスAが苦笑して言う
「機械的な装置へ わざわざ我の得意なデジタル装置を組み込む事で 強化としてしまうとは… 愚かじゃのう?リジルとの関わりで お前は我に対するデチューンを行ってしまった訳じゃ」
シリウスAが微笑すると ロケットパンチの出力が止まり落下する リゲルが呆気に取られ 振り返って叫ぶ
「リジル!」
リジルが舌打ちをして言う
「チィッ… 何故 こうなった…!?」
リジルの視線の先 ヴィクトールが機械鎧をフル装備した状態で大剣を向けて叫ぶ
「ツーマンセルを崩すな!敵は我々より力と速度に秀でている!真っ向からの攻防は避け 2人掛りで隙を突け!」
ガルバディアの騎士たちがヴィクトールの言葉を聞いて相方と頷き合い 機械兵へ向かい両脇に分かれる 機械兵が困惑する リジルが悔しそうに言う
「こんな事なら 私の兵たちを連れ込んで置くべきだった ここのロボットどもを使い回したのでは 例え1個体の力で勝ろうとも 戦略を打つ事は出来ない クソッ!…新大陸とやらからの援軍はまだかっ!?」

【 新世界 ガルバディア城 玉座の間 】

シリウスBが目を開いて言う
「リジルの策は ソルベキアの民を使ってのものだったか… ソルベキアは元々 シリウスが一番目を掛けていた者たちであったというのに… 皮肉だな」
スファルツが苦笑して言う
「彼らは シリウス様からお目を掛けて頂いていた事を とても誇りに思い 又、その力を高める事へ励んでおりました …しかし、シリウス様が他の国を… ローレシアへもお力を与え お目を掛け始めた事に焦り 嫉妬し 結果 このような事態へと」
シリウスBが沈黙する スファルツが顔を上げて言う
「それでもっ ソルベキアは完全に リジルへ同調している訳ではありませんっ 我らもまた この第2プラントに生きる者です!ガライナ国王とて きっと このプラントを守ろうと」
シリウスBが苦笑して頷き言う
「シリウスは 自分の民を皆 信じると言っていた 私から見れば 相変わらず甘いと言いたい所だが シリウスはそのガライナという者とて 許し、信じるだろう」
スファルツが呆気に取られた後 苦笑して微笑して言う
「では、只今 そのシリウスA様のお体に入られている シリウスB様も ガライナをお許し下される …と言う事で 宜しいでしょうか?」
スファルツが微笑む シリウスBが僅かに視線を強めて言う
「む…っ ソルベキアの覗き魔 スファルツ・レイロルト・クラウザー 我らの状況をハックしたか」
スファルツが衝撃を受けて言う
「シリウスB様 どうかその言い方は 止めて頂きたいのですがっ?」
シリウスBが目を閉じて言う
「まぁ良い 私も暇ではない 言いたい事があるのなら 簡潔に言え」
スファルツが苦笑顔で言う
「私にとっては宜しく無いのですが… 仕方がありません でしたら 簡潔に申します どうか 彼への対処は なるべくお優しく ご配慮頂きたいと言う事でして」
シリウスBが疑問して言う
「…彼?」
スファルツが笑顔で取り出した手にかぶせたハンカチを取る シリウスBが目を見開く スファルツの手に虫かごがあり その中に赤トカゲが入っていてピーと鳴く シリウスBが僅かに驚く

【 海上 】

リジューネが溜息を吐いて手すりに凭れ遠くを見て苦笑する カイザが笑顔でやって来て言う
「いやぁ~ やっぱ海は良いね~!もう二度とお城の牢屋になんか 入ってたまるかってーの!」
リジューネが振り返って言う
「牢屋はともかくとして… 私はやはり あの城へ 旧ローレシア帝国へと 戻りたいものだ…」
カイザが疑問して言う
「旧ローレシア帝国?」
リジューネが呆気に取られてから苦笑して言う
「いや、すまない 貴公へ言っても分からぬ話であった 忘れてくれ」
カイザが苦笑した後微笑んで言う
「もし どっかに連れて行って欲しいって事ならよ?いつでも言ってくれよな!なんたってアンタは このフェリペウス号を守ってくれた 勇者様だ!」
リジューネが呆気に取られて言う
「私が…勇者?」
カイザが喜んで言う
「ああ!勇者様!それとも英雄様か!?俺にとっては あのバーネットの旦那やヴィクトールの旦那を越える 本物の英雄様さー あははははー!」
リジューネが呆気に取られて言う
「バーネット様… か…」
リジューネが空を見上げる

回想

リジューネがソルベキアの街へ入って来て周囲を見渡して言う
『ここがソルベキア… フッ やはり 私には合わないな ベハイムなら きっと この様な機械尽くしの町を好むのだろうが』
リジューネが目を伏せ身を翻した所で止まり言う
『とは言え 折角ここまで来たからには この国の王へ挨拶を… 確か このソルベキアの王は …はっ!』
リジューネが慌てて言う
『し、しまった!私とした事がっ …このソルベキアの王こそ シリウス様の御子息 バーネット1世様であられる!すぐさま ご挨拶へ参らねばっ!』

スファルツ邸

ベハイムが言う
『残念ながら このソルベキアの救世主と思われていた バーネット1世様は… ガルバディアへ御退散してしまわれた との事です』
リジューネが疑問して言う
『退散だと?どう言う事だ?一体何故?』
スファルツが装置を手に取り 歩いて持って来ながら言う
『私も先ほどソルベキア城内の情報を ハッキングして知りえた事なのですが どうやら バーネット1世様のお相方 ヴィクトール12世様が敵の攻撃に倒れ その回復の為ガルバディアへ向かった…と言うのが 私の見解です』
リジューネが言う
『…では バーネット1世様に お怪我はあられないのだな?』
スファルツがリジューネへ装置を渡す リジューネが気付きスファルツから装置を受け取り装置を見る ベハイムが言う
『恐らくは …ですが、そのバーネット1世様がソルベキアから離れたのを良い事に 今まで何処に隠れていたのか ソルベキアの前王 ガライナが舞い戻り 旧世界との繋がりを絶つ為に閉じられていた 移動魔法陣を開いてしまったのです』
リジューネが驚いて言う
『移動魔法陣を!?そのガライナと言う前王は このソルベキアの前王なのだろう!?何故 自分の国へその様な事を!?ソルベキアの王と言う地位へ戻ったのなら尚更 自分の国を危険に晒すなど』
ベハイムがリジューネの言葉と視線に苦笑して スファルツへ視線を向ける スファルツが苦笑して言う
『生憎 ガライナ国王の真意は解りかねます かの王は以前より 行動が理解の範囲を逸脱していると言いますか… それでも 少なくとも御自分が 高い地位に着くという事を目指して居られる事は変わりないので ソルベキアに不利な事を行うとは思えないのですが』
リジューネが言う
『だが!現に 奴が呼び入れた機械兵は このソルベキアの民を襲っていた!民を危険に会わせる国王など!』
リジューネが怒りを露にする ベハイムとスファルツが同じ様な表情で困る リジューネが2人を見て疑問して言う
『…と クラウザー 今更だがそちらの方は?大体 つい先日ソルベキアへ入ったお前が これだけ立派な屋敷に…』
リジューネが不思議そうに見て言う
『…しかも ソルベキアの民と言うのは 住んでいた土地さえ違っても これ程似通っているものなのだろうか?…お前たちの姿は まるで』
ベハイムとスファルツが声を合わせて言う
『『実は私どもは』』
リジューネがはっとして言う
『ちがーうっ!私とした事がっ!今はその様な悠長な事を言っている場合ではない!このソルベキアが!シリウス様の御子息 バーネット様の国が!』
スファルツとベハイムが苦笑して スファルツがベハイムへ向いて言う
『お前の言う通り 民と神を愛し とても心優しく 力強く そして、ちょっとおっちょこちょいさん …な 女帝様の様だな?』
ベハイムが笑顔で言う
『はい、曾お爺様』
リジューネが悔しがって言う
『…クッ!シリウス様のお膝元まで この新世界まで来たというのにっ!私はっ 私にはやはり …何も出来ないのかっ!?』
スファルツが壁のモニターに気付いて言う
『おや?これは…?』
ベハイムとリジューネが顔を向け ベハイムが言う
『どうかなされたのです?』
スファルツが壁の操作盤を操作しながら言う
『ドックに入っていた カイザ殿の海賊船が… 緊急入港に引き続き 突貫の緊急修理をしたかと思いきや 間もなく出向するご様子です これ程に急いで 一体どちらへ向かわれるのか…』
リジューネが疑問して言う
『海賊船?』
ベハイムがスファルツの隣で操作盤を操作を行って言う
『曾お爺様 どうやら その海賊船には ソルベキアの兵士複数名と ガライナ国王!? …更に この識別はっ』
スファルツが言う
『ガライナ国王が海賊船に?…しかし、その海賊船の船長 カイザ殿は 現在も地下牢に居られる となれば船長は別に用意するのでしょう ソルベキア製の戦艦とは異なる船に 別の船長…恐らくはソルベキアの者となると… 理由は …ふむ、このデータからして 船の速度ですか』
リジューネが怒りを爆発させて叫ぶ
『自国を!己の民を 機械兵の脅威に会わせて置きながらっ!自分は速度の速い船で 逃げ出そうと言うのかっ!?何たる事!私が直接向かって 懲らしめてくれる!クラウザー!そのガライナと言う王が乗った船は 今何処に居るのだ!?』
ベハイムとスファルツが苦笑して避けつつ ベハイムが言う
『え、…ええと 船はドックにありますが 間もなく出港致します所ですので… 残念ながら今からでは間に合わないかと』
リジューネが手を振り払って言う
『逃して堪るか!奴はこのソルベキアへ… いや、この世界へ機械兵を迎え入れた張本人っ この世界の為にも何としても捕らえねばならない!』
リジューネがベハイムへ向き直って言う
『船へ間に合わぬのなら 行き先は何処だっ!?』
スファルツが操作盤を操作しながら言う
『ふむ… おかしいですね 明確な目的地の設定がなされていません 唯一示されているのは方位のみ 南方と… 』
リジューネがはっとして言う
『南方!?この国はこの大陸に置いての最南端であろう!?…うん?では まさか…?旧世界へっ!?』
ベハイムが言う
『しかし 旧世界へ向かおうとも そこへ到る この世界の南の果てには…』
スファルツが頷いて言う
『ええ、我らの神 ロストヒューマンによる 封印が施されている』
リジューネが怒って言う
『…ガライナは あろう事か シリウス様の封印をも傷付けようというのか!?もはや 許せーんっ!』
リジューネがローテーブルを叩くと ローテーブルが割れる ベハイムとスファルツが驚く リジューネが叫ぶ
『何としても!今すぐ ガライナを止めるのだ!』
スファルツとベハイムが呆気に取られる ベハイムが苦笑して言う
『そうは申しましても ガライナが乗り込んだ海賊船は 間もなく出港してしまいます 先ほども申しましたが これからでは間に合いません それに、万が一間に合いましても どの様に説得を そもそも説得の効く相手ではありませんと…』
リジューネが踏み出して言う
『私が行く!何としても私が船へ乗り込み シリウス様に逆らう不届き者を 成敗してくれる!クラウザー!スファルツ卿!どの様な手段でも構わん!ガライナの船へ乗り込む術を探し出せ!』

崖の上

ベハイムが言う
『チャンスは一度限りです』
ベハイムが崖の下にある洞窟を指差して言う
『ドックを出る船は皆 あの場所から海へ出ます』
リジューネが言う
『分かった あの洞窟から出て来た船へ ここから飛び乗るのだな』
スファルツが表情を困らせて言う
『と、仰られても この場所から海面までは ざっと600フィートはあります… 本当に向かわれるのですか?』
リジューネが振り返って言う
『無論だ 何を躊躇う必要があると言う?』
スファルツが苦笑して言う
『普通は戸惑うと思われますよ?600フィートもの高さがある崖から 船と言う小さな的へ飛び降りるのですから…』
リジューネが微笑して言う
『その高さを恐れる必要はあるまい?貴公がこれを貸してくれたではないか そして 十分な説明をしてくれた これがあれば 落下による衝撃で死ぬことは無いとな?』
リジューネが笑顔になる スファルツが慌てて言う
『それはそうですがっ 十分な説明と仰って頂いたのですから 掻い摘んでその部分だけを強調なさいませんで しっかり着地までの10メートル手前で 開放レバーを引き 左右のバランスを取って 船へ着地なさるのですよ!?本当に覚えていらっしゃいますか!?』
リジューネが表情を困らせて言う
『生憎 私はそういった細かい事は苦手だ 最も重要な 衝撃緩和が成されると言う事だけで良い』
スファルツが焦って言う
『しかしっ 船と申します 小さな的へ着地致しますには 必要な手順でございますのでっ しっかりご理解を』
リジューネが背負っているパラシュートの紐を確認しながら言う
『これを引けば開くのだったか?』
スファルツが怒って言う
『そちらは左右のバランサーですっ!』
ベハイムが苦笑の表情で正しい開放レバーを手渡す リジューネが苦笑して言う
『ああ、こちらだったか それにしても 重要な紐が3択では困る 他はいらん』
リジューネが2本のバランサーを切り落とす スファルツが悲鳴を上げて言う
『あーっ!何をなさるのですか!?これでは どうやって目的の場所への移動を行うおつもりで!』
ベハイムがモバイルPCを操作しながら言う
『リジューネ陛下 間もなく ガライナの乗った船が現れます』
リジューネが振り返って言う
『来るか!』
スファルツが怒って言う
『どうなさるのです!?新たなパラシュートを取りに戻っている暇は 今度こそございません!』
リジューネが笑んで言う
『心配ない 貴公から説明を聞いて 私は確信したのだ ”これなら行ける” と』
スファルツが呆気に取られる リジューネが岸壁に足を掛ける スファルツが焦って言う
『ですから 左右のバランサーを欠いた状態で どうやってっ!?』
リジューネが洞窟の出入り口を見詰め一瞬目を光らせて言う
『目標の10メートルも手前から ゆっくり降下するのでは 奴らの格好の的となってしまうだろう… 従って』
洞窟の出入り口に船首が見える リジューネが言う
『衝突ギリギリで開き 減速して 突っ込む!』
リジューネが飛び降りる スファルツが衝撃を受け慌てて岸壁へ駆け寄り叫ぶ
『そんな 無謀ですっ!リジューネ殿っ!リジューネ殿ーっ!』
スファルツが崖の下を覗き込む 横にベハイムが居る

フェリペウス号 操舵室

ガライナが言う
『旧大陸とやらへは どの位で到着する?』
ソルベキア艦長が言う
『部下らが確認いたしました 世界の果て と言われてまいりました その断崖までの時間なら確認済みなのですが その先は分かりかねます しかしながら大よそ… うん?』
ガライナが振り返って言う
『大よそでも良い どの位 …?』
ソルベキア艦長が目を丸くして慌てて逃げ出す ガライナが疑問して言う
『なんだ?どうし…』
ガライナの後方ガラスの外からリジューネが突っ込んで来る ガライナが驚いて叫ぶ
『のわぁあーっ!?』
ガラス窓を蹴破りリジューネが乱入してくる ガライナが逃げようとするが リジューネが捕まえて剣を向けて言う
『貴様がガライナか!?私には分かる!…何となくだが そんな気がするのだ!』
ガライナが困り怒って言う
『何だお前はっ!?何となくなどで 私に襲い掛かって来るとは なんと言う馬鹿な恐れ知らずだ!衛兵何をやっている!?衛兵!』
衛兵たちが銃を向けた状態で困る リジューネがにやりと笑って言う
『やはり 貴様であったな 衛兵が動けぬと言う事が 何よりの証拠!』
ガライナが悔しそうに言う
『ええいっ 貴様は何者だ!?一体何処の回し者… さては 海賊か!この船を取り戻しに着たのだな!野蛮な女海賊が!』
リジューネが呆気に取られて言う
『私が海賊…?野蛮な!?野蛮な女海賊だと!?おのれ!何たる無礼者か!?』
リジューネとガライナがいがみ合う 備え付けのモニターにベハイムの映像が現れて 苦笑表情で言う
『リジューネ陛下 どうか 本題をお忘れなく』
リジューネがはっとして言う
『そ、そうであった 私とした事が…』
ガライナが疑問して言う
『リジューネ?陛下だと?』
リジューネがガライナの胸倉を掴んで凄んで言う
『民を見捨てっ!我らの神 シリウス様の結界を傷付けようとは!申し開きがあるというのなら 聞いてくれる!』
ガライナが悲鳴を上げぐっと目を瞑ると一瞬の後 赤トカゲに変わり リジューネが驚いて言う
『なっ!?』
トカゲのガライナが地へ落ちると一度振り返る リジューネが呆気に取られる モニターのベハイムが呆気に取られていると それを押し退けスファルツが叫ぶ
『リジューネ殿!そのトカゲです!ガライナの正体は 赤トカゲなのです!』
リジューネが驚いた後叫ぶ
『ま、待てぇえーーっ!』
トカゲのガライナが慌てて逃げて行く リジューネが追い駆ける

回想終了

【 ガルバディア城 玉座の間 】

トカゲのガライナが悔しそうに鳴く
「ぐぎぎぎ…っ」 『くそぉ… 船の中でさえなければ 逃げおおせたものを…』
シリウスBがプログラムを終えて言う
「…よし、これで会話が出来るだろう さて、何から聞き出してやるべきか…?」
ガライナが悔しそうに言う
「何を問おうが無駄だ!私は何も吐かんぞ!」
シリウスBが一瞬疑問した後 微笑して言う
「ほう…?そうか?だが 心配するな 直ぐに話したくなるだろう …お前自らな?」
ガライナが疑問する

【 海上 】

カイザが言う
「リジューネの姐さん そろそろ島に着くんだが 姐さんは早く陸へ戻りたいんだろ?だったら 俺の相方が 丁度今 陸へ向け島から出港するってーんだが 少し待たせようか?」
リジューネが一息吐いてから振り返って言う
「いや、心遣いには感謝するが この船旅と言うのも 心地良く感じる様になってきた所だ 貴公に迷惑でなければ もう少しこの船旅を続けたいのだが」
カイザが一瞬呆気に取られた後喜んで言う
「おおー!?気に入った!?気に入ってくれちゃった!?やっぱ 分かる人には分かるんだなー!波の音!潮風の香り!この船旅のロマンがさー!あはーははははっ!」
リジューネが呆気に取られた後苦笑して言う
「ああ… 悪くない」
カイザが立ち去りながら言う
「なら このフェリペウス号でゆっくりしちゃってちょうだい!スカルの奴には 出港しちゃって良いって 言っとくからなー!あははははーははー!」
リジューネが微笑して見送った後 再び遠くを見て風を感じてから言う
「波の音、潮風の香り …この船に身を委ねていると 色々な事を忘れられる様だ… このまま私も 彼らの仲間… 野蛮な女海賊にでもなろうか?…フフ」

【 ガルバディア城 玉座の間 】

赤トカゲのガライナが泣きながら笑って言う
「あひゃひゃひゃひゃっ!ひはっひはっ や、やめへくれぇえ~~っ!」
シリウスBがニヤニヤしながら猫ジャラシで 貼り付け状態のガライナの腹をくすぐって言う
「ふっ 止めて欲しいか?うん?ここか?ココが一番 利くのだな?」
シリウスBが周囲にプログラムを発生させつつ ニヤニヤしてくすぐる ガライナが泣き叫ぶ
「やめっ!やめてっ!言います!何でも言います!だから そ、そこだけはっ!ぎゃはははははは~~っ!」
スファルツが呆れつつ言う
「シリウスA様の苛めも苦しいですが… シリウスB様の苛めも 同等に苦しそうですね… プログラムで相手の急所を調べ上げ そこを突き続けるなど…」
ガライナが泣き叫ぶ
「言うって!言うって言ってるんだからっ や!やめてぇええ~~!」
シリウスBがニヤニヤして言う
「まぁ そう簡単に言うな もう少しぐらいは耐えて見せろ …うん?ココか 次はココだな?」
ガライナが叫ぶ
「ああぁああ~~ だ、誰か!神様!?悪魔様!?何でも良い! た、助けてぇええ~~っ!ぎゃははははあ~~!」
スファルツが汗をかいて言う
「…まるで魔王ですね?」

【 小島 】

カイザが荷物を持ち上げようと力んでいる
「ぬぉ… のぉおおお~~~っ!」
カイザが荷物を持ち上げようと頑張るが少し持ち上がりかけるが駄目 カイザが荷物を諦め立ち上がって言う
「ふえぇ~… スカルの奴っ いくら急いでたからって 食料と水を一つにまとめちまったら 持ち上がらねーって言うのっ!まったく!…しょうがない 誰か呼んで来るか?いや、船から箱持って来て ここでバラして…」
リジューネが横を通り掛り気付いて言う
「うん?まだ 積荷があったのか?」
カイザが表情を困らせて言う
「ああ これが最後なんだが スカルの奴が…」
リジューネが言う
「よし、では こちらは私が運んでおこう」
リジューネが荷物を持ち上げる カイザが衝撃を受け言う
「ぬあっ!?」
リジューネがカイザへ向いて言う
「カイザ、ロンシェ殿が 出港の前に先月の燃料代金を払えと言っていたぞ?こういう事は 早め早めに支払うのが良い 私が言うのもなんだが 海賊同士の繋がりに安堵するだけではなく 貴公自身で信頼を繋ごうとする気持ちを示す事も 時には重要なものだ」
リジューネが荷物を持って立ち去る カイザが呆気に取られた後 バツの悪そうに言う
「げっ!?この島にロンシェが居たのか…っあいつの船が岸壁に見えねーと思って安心してたら… ま、まぁ 支払いはまた今度でも…」
カイザが苦笑しながら船へ向かおうとしてリジューネが見える リジューネが桟橋を渡り終え 船員に荷物を渡す 船員が驚き慌てて倒れそうになる リジューネが疑問して手を貸す 船員が息を吐く カイザが呆気に取られて見ている リジューネが船員に何か言うと船員が指で示す リジューネが荷物をそちらへ持って行く カイザが苦笑して言う
「海賊の繋がりだけじゃなく 俺自身からの気持ち…ね そーだな?またインデンの時みてーに どっかの国へなんか売られっちまっても困るもんな…?よしっ!」
カイザが島の洞窟へ向かって行く

【 旧世界 ガルバディア城 門前 】

リゲルが表情を歪ませ横を向いて叫ぶ
「リジル!何をしている!?何時まで雑魚にかまっているつもりだ!?早くこちらの援護に!」
リジルが正面を見下ろして言う
「ク… やはり駄目かっ!?」
リジルの視線の先 ヴィクトールとガルバディアの騎士たちが優勢に機械兵たちと戦っている リゲルの声が響く
「これ以上 俺1人ではシリウスを抑え切れん!そっちはもう放っておけ!奴を倒す事が優先だろう!」
リジルが視線を強めた後移動プログラムを発生させ消える ヴィクトールがふと気付いて言う
「うん?…機械兵の動きが」
ヴィクトールが先ほどまでリジルの居た場所を見て言う
「あいつが居ない… それで 機械兵の動きが明らかに鈍ったんだ …よしっ!」
ヴィクトールがガルバディアの騎士たちへ言う
「ガルバディアの騎士たちよ!機械兵らは指揮官を失った!ここで一気に叩み込むぞ!」
ガルバディアの騎士たちが士気を高める

シリウスAがバリアプログラムの内側で顔を上げる 視線の先 リゲルの機械兵Gの横にリジルが現れる リゲルが横目に言う
「やっと来たか!遅いぞっ」
リジルが目を細めて言う
「お前のポンコツロボットでは 歯が立たなかったか」
リゲルが機械兵Gで振り返って怒る
「ポンコツロボットではない!ロブホープマックス2000だ!」
リジルが呆れて言う
「…2000?何が2kなのだ?まぁ良い 私が強化してやった お前の力任せな攻撃装置であっても シリウスのプログラムに阻まれ届かないと言うのならば やる事は一つだ 分かっているな?リゲル!」
リゲルが一瞬呆気に取られてから慌てて言う
「ま、まてっ!その前に お前のプログラムでシリウスのバリアプログラムを何とかしろ!あのバリアさえなくなれば 後はこのロブホープマックス20000の強力ロケットパンチで!」
リジルが視線を強めて言う
「私の能力で シリウスのプログラムは越えられん あの作戦を決行する 良いな!?リゲル!…それから 機体名の桁数が一つ増えているぞ?」
リゲルが悔しそうに言う
「クッ… 分かった」
シリウスAが疑問して言う
「何じゃ 何やら策でもありよる様じゃのぉ?」
ヴィクトール11世が抜刀した剣先を下げた状態でシリウスAの横に居て シリウスAを見る リゲルとリジルがシリウスAを見て リジルが言う
「シリウス!覚悟は良いか!?いくらお前であろうとも 私が全力を持って強化する リゲルのポンコツロボットの力を抑える事は 容易ではあるまい!?」
リゲルが怒って言う
「ポンコツは付けるな!」
シリウスAが視線を強める リジルが笑んで言う
「行くぞ!」
リジルが周囲にプログラムを発生させる 機械兵Gが両手を握りシリウスAへ向ける シリウスAが視線を強め静かに言う
「リジルが我を凌ぐプログラムを作るとは思えぬが リゲルも居るのじゃ 油断は出来ぬ 我も…義体であるしのぉ ヴィクトール、」
シリウスAがヴィクトール11世を見て言う
「我の傍を離れるではないぞ 奴らがどの様な攻撃を行おうとも 我のバリアプログラムの中に居れば 安全じゃ」
ヴィクトール11世がリジルを見詰めている シリウスAが疑問して言う
「む?…ヴィクトール これっ 聞いて居るのか?ヴィクトールっ」
ヴィクトール11世がシリウスAへ向き頷いて言う
「あ、うん、聞いてるよ シリウス 僕はもう シリウスの傍を離れないもん 何があっても傍に居るよ」
シリウスAが苦笑して言う
「ふむ… 本当に聞いて居ったのかは怪しいが まぁ それなら良いのじゃ では、こちらは応戦体勢に入るかのぉ まずは奴らの力を確認じゃ 不本意じゃが 念を入れ 我も全力を持って防戦してやるのじゃ」
シリウスAが視線を強めて 周囲にプログラムを発生させる リジルがその様子を見て僅かに微笑して言う
「…よしっ」
リジルがシリウスAを指差し叫ぶ
「やれ!ポンコツロブホープ!」
リゲルが怒って叫びつつ機械兵Gを動かす
「ポンコツは付けるなぁあーーっ!!」
機械兵Gが両手のロケットパンチをシリウスAへ放つ シリウスAが視線を強める ロケットパンチがシリウスAの前でバリアプログラムに押さえられる 周囲のプログラムが激しく動く リゲルが叫ぶ
「やれー!ロブホープマックス6000 ロケットパンチよ!シリウスを打ち倒し お前の力を見せ付けてやれー!」
ロケットパンチが変形して更に強力にブーストアップしてシリウスAのバリアプログラムを押し込む シリウスAが強い視線で見つめる中ふと疑問して思う
『…うん?変じゃ 確かに攻撃は強化されておる じゃが… この強化プログラムはリアルタイム入力ではあらぬ 既存のプログラムを実行するのなら リジルがやって来るまで使わずにおった その意味は…?』
シリウスAが視線を動かそうとする ヴィクトール11世が叫ぶ
「シリウスっ!」
シリウスAがハッとする シリウスAの脳裏に バーネット1世を庇ったヴィクトール12世の姿が思い出される シリウスAが驚いて言う
「しまったっ!」
シリウスAが視線を向けた先 リジルが悪笑んで居る シリウスAの視界がスローモーションの世界を映す リジルの手から放たれた白銀の弓矢が シリウスAへ向かう ヴィクトール11世がシリウスAを突き飛ばすように現れる シリウスAが驚く ヴィクトール11世が悲鳴を上げる
「ギャンっ!」
シリウスAとヴィクトール11世が横っ飛びに吹っ飛んで2人が地面に滑り込む シリウスAが頬を砂埃に汚しつつ急いで顔を上げ 慌てて言う
「ヴィクトールっ!!」
ヴィクトール11世が痛そうな表情で顔を上げ シリウスAへ怯えた様子で言う
「シリウス… 痛い… 痛いよぉ…」
シリウスAの手がヴィクトール11世の攻撃を受けた横腹を押さえている

リジルが呆気に取られた様子で言う
「ばかな… また?…またも防がれたと言うのかっ!?」
両手を失った機械兵Gがリジルへ向いて リゲルが言う
「リジル!貴様は何をやっている!折角俺が ロブホースマックス3000を犠牲にしてまで シリウスの隙を作ってやったと言うのに!貴様の弓を射る目は 節穴か!?」
リジルが困惑したまま視線を落として言う
「あ… 有り得ん 白銀の矢が… 私の白銀の矢は シリウスを射る為のもの それが… 一度ならず二度までもっ 新人類ごときに 見抜かれたっ!」
リジルがシリウスAへ視線を向ける

シリウスAがヴィクトール11世の傷へ当てた手へプログラムを発生させている ヴィクトール11世がシリウスAの胸に顔を埋めたまま苦しそうな息遣いで言う
「シリウス… 僕 …死んじゃうの?僕も… 12世 みたいに…」
シリウスAが額に汗を滲ませつつヴィクトール11世の顔へ視線を向け微笑して言う
「案ずるではない ヴィクトール お前は大丈夫じゃ お前の傷は 12世ほどではあらぬ それに、お前の身は 12世とは違い Bの力で強化されておるのじゃ これなら」
ヴィクトール11世の傷がゆっくりふさがって行く ヴィクトール11世が表情を和らげ疑問して顔を上げ傷のあった場所を見てから驚いて言う
「ん…?うん?あれ?痛くない 痛くないよ!シリウス!」
ヴィクトール11世が嬉しそうにシリウスAを見る シリウスAがホッとした後微笑して頷いて言う
「うむ、もう大丈夫じゃ」
ヴィクトール11世が喜んで言う
「わーい 良かった!ありがとう!シリウ…」
ヴィクトール11世が言葉の途中でシリウスAの腕に抱きしめられる ヴィクトール11世が目を驚かせる シリウスAが心底良かったと思っている様子でヴィクトール11世を抱き締めていて言う
「ああ… 本当に良かった… 良かったのじゃ もう後少しでも 我が気付けずに居ったら… ヴィクトール12世と我が息子バーネット1世 あの2人が我に気付かせてくれよったのじゃ…」
シリウスAがヴィクトール11世を抱き締める腕に力を込め ヴィクトール11世の頭を撫でながら言う
「そして 何よりリジルの… いや、アウグスタのプログラムを凌いだ お前の力が勝ったのじゃ お前は… お前たちは本当に…」
シリウスAがヴィクトール11世の頭を撫で続ける ヴィクトール11世が疑問した後 苦笑して言う
「シリウス そんなに撫でたら 嬉しいけど ちょっと耳が痛いよ」
シリウスAがはっとしてヴィクトール11世の猫耳を見る ヴィクトール11世の猫耳がピクピク動く シリウスAが苦笑して言う
「ああ、そうじゃった 忘れておった 許すのじゃ ヴィクトール」
ヴィクトール11世が嬉しそうに照れて頷く
「うん!」

リゲルがリジルへ怒って言う
「だからっ!あんな姑息な手を使わずに!俺とお前の2人で 文字どおり全力で攻撃するべきであったのだっ!お前の弓矢は 錆でもついてるんじゃないのか!?お前は武器防具の手入れなどは 行わないだろうからなぁ!?」
リジルが困惑の表情から戻り 慌てて言う
「ば、馬鹿が!私の白銀の矢は プログラムであって 弓や矢が実在する訳ではない!…と、そんな事より こうなったら仕方が無い!お前の言う通り 今度こそ我ら2人の力でシリウスを倒すぞ!先ほどの奴のプログラムを見て分かった!奴の力は 我ら2人であれば 越えられる!」
リジルが言い切ってから機械兵Gを見て疑問して 顔を横へ向け 地に落ちているロケットパンチを見てから衝撃を受け慌てて言う
「お、おいっ!何をしているんだお前は!?早くその手を修復しろ!」
リゲルが衝撃を受け 慌てて言う
「発射後に第二形態へと変形したロケットパンチは 修復不可能だ!」
リジルが衝撃を受け怒って言う
「何だと!?馬鹿が!そんな状態でどうやって戦うつもりだ!?」
リゲルが怒って言う
「お前がこの作戦を 最後の手段とすると あらかじめ言っていたから 俺はロケットパンチの威力を少しでも上げる様にとっ!」
シリウスAが表情を険しくしてリジルたちを見て言う
「遊びはここまでだ リジル リゲル」
リジルとリゲルがはっとしてシリウスAを見る シリウスAが2人を見る目を強くして言う
「お前たちは 私の民を… 私の愛する者たちを傷付けた 例えそれが お前たちにとっての たかが新人類であろうとも 私には… 到底許されん!」
シリウスAの脳裏に ウィルシュに倒された国兵 ヴィクトール12世 ヴィクトール12世の死に叫ぶバーネット1世 白銀の矢を受けたヴィクトール11世の姿が思い出され シリウスAの閉じていた目が強く開かれる 瞬時に シリウスAの周囲に大量のプログラムが発生して 周囲の空気が舞い上がる リジルとリゲルが驚き リゲルがリジルへ向いて慌てて言う
「お、おいっ!本当に このロブホープが健全であったなら 俺とお前で あのシリウスを!?」
リジルが顔を向けず驚きの表情のまま言う
「い、いや 無理だっ!先ほどとは違うっ これが シリウスの本当の力か!?」
ヴィクトール11世が驚いて見上げている シリウスAがリジルとリゲルへ手を振り払って叫ぶ
「食らえぇえっ!」
リジルが叫ぶ
「リゲル!逃げるぞっ!」
リゲルが脱出ボタンを押す リゲルが機械兵Gから放出され 周囲に移動プログラムが発生する リゲルの移動プログラムが2、3度破裂してリゲルが機械兵Gの肩に落ちる リゲルが叫ぶ
「移動プログラムがっ 動かん!」
リジルが焦ってバリアプログラムを発生させる リジルのバリアプログラムがリジルとリゲルを守るが次々にヒビが入る リゲルがリジルへ振り向く リジルが焦って言う
「私のっ バリアではっ!」
リゲルが焦って小型機械のスイッチを何度も押す その度に周囲に移動プログラムが発生するが プログラムが消去される シリウスAが笑んで言う
「終わりだ!」
リジルが目を見開き悲鳴を上げる
「ひぃっ!」
リゲルが怯えて目を閉じ小型機械のスイッチを押し続ける シリウスAの攻撃プログラムがリジルとリゲルに襲い掛かる リジルとリゲルが覚悟を決めた瞬間 シリウスAが目を見開いて言う
「うっ!?」
シリウスAの体が弾かれた様に反り返る 一瞬の後 シリウスAが吐血してゆっくり後ろに倒れる ヴィクトール11世が慌てて叫ぶ
「シリウスっ!?」
シリウスAの体がヴィクトール11世の両腕の上に落ちる リジルとリゲルの周囲にあった移動プログラムが実行され シリウスAの攻撃プログラムが当たる直前に移動して消える
 
【 小島 】

カイザが苦笑して言う
「なるほど 通りで お前のロンディウス号が見えねぇと思ったら」
ロンシェが寂しそうに苦笑して言う
「ああ… しかしそれでも 乗組員は私を含め 全員を助ける事が出来た… ロンディウス号は 最後まで我々を守ってくれたんだ」
カイザが困り苦笑して言う
「あの海域じゃぁなぁ~… 正直 引き上げる事は難しい 深海は2千とも3千とも言われてる」
ロンシェが乾いた笑いをして言う
「ああ… はは… 分かってる 分かってはいたが 知らず知らずの内に悪足掻きをして 浸水保管処理をしていたんだ お陰で 仲間たちが私を助けに来るまで 自分の脱出なんか考えもしてなくってな… と まぁ、そんな訳で」
ロンシェが気を取り直し苦笑して言う
「自分たちの命まで危ないってぇのに 土壇場でアタシを助けに来てくれた あの馬鹿な仲間たちに 少しでも金を渡してやりたいんだ けど ここに置いておいたお宝だけじゃ足りねぇと 困っていた所 丁度お前さんが来たって言うじゃないか?ツケツケにツケていた お前さんへの貸しを返してもらえれば あいつらへもたっぷり今までの礼を渡してやれる」
カイザが苦笑してから金を取り出してロンシェへ手渡す ロンシェが驚いて言う
「ん?え?お前が… いや、待てカイザ お前に貸していたのは4ヶ月分で」
カイザが次々にロンシェの手に金を置いて言う
「ああ、それで これが今月分 こっちが来月分 んでもって これが再来月分だ」
ロンシェが困って言う
「お、おい カイザ 何を考えてるんだ?アタシは今月限りで」
カイザが言う
「来月の分もその先の分も預けとく だから …海賊辞めるとか 言うなよな?」
ロンシェが驚いてカイザを見る カイザが微笑して言う
「確かに ロンディウス号は沈んじまったかもしれねぇ… けど!お前も仲間たちも助かったんだ だったら もう一度… いや!二度でも三度でも 海に出ようってもがくのが 海の男!…じゃ無かった 海の女だろ!?ロンシェ!」
カイザがロンシェの肩を力強く叩く ロンシェが呆気に取られて言う
「…カイザ」
カイザがニッと笑んでから背を向けて言う
「お前は 俺たちヴィルトン海賊団の 自慢の女海賊なんだ 陸になんか上げちまうのはもったいねぇ …だから またな!次回は海の上で会おうや!?」
カイザが立ち去る ロンシェが呆気に取られた後苦笑して言う
「ふふ… なんだよ こんな時だけ 自棄にカッコイイ事してくれるじゃないか 止めてくれよ…」
ロンシェが見えなくなったカイザの去った道を見て言う
「惚れちまうじゃないか」

カイザが洞窟から出て来て一息吐いた後一瞬間を置いて頭を抑えて言う
「ああーーっどーーすっかなー!?思わず 有り金全部渡しちまったーーっ!燃料と食料は調達したから良いが これからどーーしよーー!?」
カイザが腕組みして考えブツブツ言う
「これからのんびり穴場探しをしようとか思ってたのが これじゃ 直ぐにでも行動を起こさなけりゃ 次の入港料も払えねぇーっ とは言え そんな直ぐに穴場なんて見つからないしー!?これはやっぱり 一か八かもう一度シュレイザーにっ!…いや、駄目だ駄目だ 今度こそシュレイザーの艦隊に囲まれたら 緊急脱出のあの技は一度見せちまってるし…っ」
遠くからリジューネが走って来て叫ぶ
「カイザー!」
カイザが疑問して顔を向けて言う
「うん?リジューネの姐さん どうかし… のわっ!」
カイザが言い掛けていると リジューネがカイザの腕を掴み カイザを引っ張って元来た道を走りながら言う
「直ぐに船を出すのだ カイザ!我らの神が 大変なのだ!」
カイザが驚きつつ疑問して言う
「な、なにっ!?我らの神って… ポセイドンとか何かか!?」
リジューネが怒って言う
「何がポセイドンだ!?いかにお前が海賊であろうとも 今はそんな 神話の話などしている場合ではあらぬのだっ!」
カイザが困惑して言う
「だって 他に神様なんて 知らねーしっ!」
リジューネが驚き 振り返って怒って叫ぶ
「何を申すか!馬鹿者ーーっ!」
カイザがうるさそうに耳を塞いで目を強く瞑る

フェリペウス号 甲板

フェリペウス号にカイザの声が響く
「えぇええーーっ!?」
リジューネが素手で碇を引き上げながら言う
「先ほど シリウスB殿から 連絡があったのだ!我らは直ちに シリウス様をお迎えに上がらねばならぬっ!」

回想

リジューネが荷物を床に降ろして言う
「よしっ ここなら 通行の妨げにもならぬだろう …後は」
リジューネが振り返り歩き始めようとすると頭の中にシリウスAの声がする
『リジューネ… リジューネ・デネシア 私の声が聞こえるか?』
リジューネが気付き疑問して言う
「うん?今のは…?」
リジューネが周囲を見渡す シリウスAの声が響く
『リジューネ・デネシア 唐突だが 再び お前の手を借りたい』
リジューネが視線を強め言う
「…シリウスB殿か」
シリウスAの声が一瞬驚いてから言う
『…っ …映像も無く 音声も異なると言うのに 何故 私であると?』
リジューネが真剣な表情で言う
「私をフルネームで呼ぶ者は 世界広しと言えど 貴公のみだ!」

【 ガルバディア城 】

シリウスBが呆れる シリウスBの前にあるホログラムモニターに映る リジューネが言う
『それで?』

【 フェリペウス号 】

リジューネが正面を見据えている シリウスAの声が響く
『旧大陸… いや、お前の認識で言う所の 旧世界に置いて 異世界の王リジル、リゲルと交戦していた お前たちの神 シリウスが…』

回想終了

リジューネが手を振りかざして叫ぶ
「我らの神 シリウス様は!我らを守る為 旧世界へと渡り!異世界の王らとの戦いにて傷付かれた!よって!我らは大至急 この大陸の南の果てを越えたその先 旧世界に居られるシリウス様を お迎えに向かうのだ!」
カイザが衝撃を受けて叫ぶ
「なにぃいーーっ!?あの 南の果てを越えるだぁああーー!?」
リジューネが指差して叫ぶ
「さあ!行けー フェリペウス号!全速前進ーーっ!!」
カイザが叫ぶ
「待てっつーのっ!」
リジューネが向き直って怒って言う
「何だ!?カイザ!シリウス様が お待ちであられるのだぞ!一刻も待ってなどおれん!」
カイザが真剣に言う
「あの南の果てを越えるなんて出来る訳がねぇえ!それこそ 空でも飛べなけりゃ!あの底知れねー滝に飲み込まれちまうんだぜ!?」
リジューネが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「フッ なんだ そんな事は心配無い 何故なら…」
カイザが息を飲んで言う
「何故 なら…?」
リジューネが力強く言う
「きっと何とかなるっ!何となく そんな気がするのだ!」
カイザが叫ぶ
「どんだけーーっ!?」
リジューネが叫ぶ
「さあ!今度こそ行くぞ!全速ぜんし…っ」
カイザが制して言う
「無理だってーーのっ!絶対無理!有り得ねぇっ!行かねーよ!何があっても あんな場所には2度と行かねぇええ!!」
リジューネが振り返り一瞬表情を怒らせてカイザを見る カイザがリジューネを正面から見据えて言う
「この世の南の果ては!俺がこの目で実際に確認したんだ!あの潮の急激な流れからだって分かる!あの滝は本物だ!大量の海水があの滝に流れ落ちてるんだ 一歩間違えば この船の強力なスクリューでだって 取り返しが付かなくなっちまう!だから 行かねぇ!仲間の為にも この船の為にも!俺は何があろうと ぜってーに…っ!」
リジューネがカイザの話に呆気に取られ表情を落とした後 カイザの言葉が途中で止まった事に疑問してカイザを見る カイザが言葉の途中で呆気に取られている リジューネが疑問して言う
「…どうした?カイザ …うん?」
リジューネがカイザの視線を追って自分の後ろを向く 船の先端に白い翼が広がり 天使が舞い降りる リジューネが驚いて言う
「あれは…!?」
カイザが呆気に取られたまま言う
「天 使… 様…」
天使がゆっくり振り返りカイザを見てから 再び視線を戻し 遥か彼方を指差す

晴天の碧空にカイザの声が響く
「野郎どもーーっ!出 港ーーだぁああーーーっ!」
フェリペウス号が激しい水しぶきを上げ突き進んでいる リジューネが呆気に取られて見上げている リジューネの視線の先 カイザが船の先端に立ち 遥か彼方を指差していて叫ぶ
「全速前進ーーっ!方位 ド南方ーー!世界の果てまで 突っ切れぇえーーー!」
リジューネが呆気に取られて言う
「一体… どうなっているのだ…?」
リジューネがふと気付いて後方上空を見上げる リジューネの視線の先 ブリッジの屋根の上に天使が居る リジューネがはっとして振り返ると 天使が消えている リジューネが疑問して二三度瞬いて目をこすってから 再び見て 疑問して首を傾げる

【 旧世界 ガルバディア城 門前 】

ヴィクトール11世が慌てて呼ぶ
「シリウス!どうしちゃったの!?ねぇ シリウス!?」
ヴィクトール11世の腕の中で シリウスAが目を見開いたまま痙攣を起こしている ヴィクトール11世が心配して言う
「シリウスっ!?」
ヴィクトール11世の頭の中にシリウスAの声がする
『ヴィクトール 案ずるな 我は無事じゃ』
ヴィクトール11世が驚いて疑問して言う
「え?…シリウス?」
ヴィクトール11世が不思議そうにシリウスAを見る シリウスAは変わらず痙攣を起こしている ヴィクトール11世が疑問して瞬きをする シリウスAの声がする
『我とした事が 怒りに乱され 少々力を使い過ぎた様じゃ 義体が我の力に耐え切れず 全身のトランスミッターが破損してしもうた』
ヴィクトール11世が呆気に取られていた状態から心配して言う
「それじゃ、体は壊れちゃったけど シリウスは大丈夫なんだね?」
シリウスAが言う
『うむ、そうじゃ …とは言え 我の意識を置いておる この義体が完全に停止してしまっては 我とて無事では済まぬのじゃ …よって 義体の生体維持を優先させる為 我はしばらく義体と共に時を止める …そこで ヴィクトール』
ヴィクトール11世が呆気に取られた状態から戻って言う
「何!?シリウス!?」
ヴィクトール11世がシリウスAを見る シリウスAは焦点の合わない状態で痙攣している シリウスAの声がする
『我の意識を置いておる この義体を Bの元へ …新大陸のガルバディアへ 連れ帰って欲しいのじゃ』
ヴィクトール11世が真剣に頷いて言う
「うん!分かったよ シリウス!僕 必ずシリウスを シリウスBの所へ連れて行くよ!」
シリウスAの声が苦笑して言う
『うむ 良い子じゃヴィクトール …頭を撫でてやれぬのが残念じゃが 無事元の身に戻った後には たっぷり可愛がってやるのじゃ』
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!」
ヴィクトールがやって来て言う
「祖父上、機械兵らは 全て退治致しました 異世界の王たちは… ん?祖父上!?そちらはっ!」
ヴィクトールが驚いてヴィクトール11世の腕に抱かれているシリウスAを見る ヴィクトール11世がヴィクトールを見て言う
「大丈夫だよヴィクトール シリウスの体はボロボロになっちゃったけど シリウスは無事だから!」
ヴィクトールが疑問して慌てて言う
「そ、それは …どう言う事なのか分かりませんが 結論として シリウス国王はご無事なのですね!?」
ヴィクトール11世が笑顔で頷いて言う
「うん!」
シリウスAの声がする
『…じゃが この義体は瀕死の状態じゃ 如何に生体維持を行おうにも そう長くは持たぬ』
ヴィクトール11世が驚いて言う
「ええぇえーっ!そ、それは大変じゃないっ!どうしよう!?ヴィクトール!?」
ヴィクトール11世が泣きそうな表情でヴィクトールを見る ヴィクトールが困って言う
「え?え、ええっと…?」
シリウスAの声がする
『既に Bへ連絡を送ってある きっと Bが助けてくれる筈じゃ …ヴィクトール 後は頼んだのじゃ』
ヴィクトール11世が慌ててシリウスAへ叫ぶ
「シリウス!?」
シリウスAがゆっくり目を閉じて意識を失う ヴィクトール11世が慌てて叫ぶ
「わーっ!シリウスーーっ!」
ヴィクトール11世が慌てふためいている手前でヴィクトールが通信機に向かって言う
「シリウスB殿!良かった!通信が通じて」
通信モニターのシリウスBが言う
『リジルらの存在が消えた事を確認し 結界の範囲を調整した …これにより 通信程度なら繋ぐ事が可能になった訳だが 残念ながら お前たちの移動をプログラムで行ってやる事は難しい』
ヴィクトールが一瞬驚いて言う
「え!?…では どうやって!?」
通信モニターのシリウスBが言う
『プログラムでは無理だが 物理的な移動は可能だ …従って お前も見知っている船を そちらへと向かわせた』
ヴィクトールが疑問して言う
「船?私が見知っている…とは?私は生まれてこの方 船には一度も乗った事が」
通信モニターのシリウスBが苦笑して言う
『現実には無くとも 夢の世界にて お前は その船に乗った事がある …お前は お前の意識が記憶していない 夢の世界の情報をも バーネット2世より与えられているのだろう?』
ヴィクトールが呆気に取られた後はっとして言う
「…と、言う事は あの船!海賊カイザの!?」
通信モニターのシリウスBが微笑する ヴィクトールが苦笑する シリウスBが言う
『かの船は 既にお前たちを迎えにと向かっている お前たちも その大陸の最北端に位置する港 ローンルーズの港まで向かえ 船はその港へ向かう筈だ』
ヴィクトールが頷いて言う
「はい!…と、しかし シリウスB殿 カイザはこの旧大陸の事を知らないのでは?それなのに いくら最北端とは言え 初めて訪れるこの大陸の そのローンルーズの港へは 確実に向かえるのでしょうか?」
シリウスBが言う
『その為に この大陸出身の者も 乗船させてある 彼女もその港を実際に訪れた事は無いだろうが 少なくとも 地図上のものとして記憶している 問題は無いだろう』
ヴィクトールが微笑して言う
「なるほど… 分かりました!」
通信モニターのシリウスBが頷く ヴィクトールが言う
「シリウスB殿」
通信モニターのシリウスBが疑問する ヴィクトールが言う
「我々の導きを 有難うございます!」
通信モニターのシリウスBが一瞬呆気に取られた後微笑して頷いて言う
『ローンルーズまでの道中には 少ないとは言え 魔物や機械兵が存在する 今のお前たちの敵ではない とは言え 油断はするな』
ヴィクトールが頷いて言う
「はい!」
通信モニターのシリウスBが微笑して消える ヴィクトールが振り返って言う
「と、言う事ですので 祖父上」
ヴィクトールの振り返った先 ヴィクトール11世がシリウスAを抱きしめて泣き叫んで言う
「わぁーーん シリウスぅうう やっぱり 寂しいよぉおおーー」
周囲に居るガルバディアの騎士たちが不思議そうに皆で顔を見合わせている ヴィクトールが言う
「祖父上」

ヴィクトール11世が頭にたんこぶを作っていて シリウスAを抱いたまま泣きながら歩いて言う
「わーーん ヴィクトールが ぶったぁーーっ」
ヴィクトールが皆を先導して歩いて言う
「我らはこれより 北方 ローンルーズ国の港へと向かう!道中 魔物や機械兵の襲来に 警戒を緩めるな!」
ガルバディアの騎士たちが頷く 皆が歩いて行く ヴィクトール11世が泣きながら歩いている 近くのガルバディアの騎士たちが顔を見合わせ 皆でヴィクトール11世の頭を撫でる

【 南の果て 】

カイザが正面を見据えて怯えを堪えている 横にリジューネがやって来て言う
「あれが世界の果て… シリウス様の結界か」
フェリペウス号の先 海が巨大な滝となって落ちている リジューネがカイザを見て言う
「カイザ シリウス様はあの先だ!」
カイザがガタガタ震えながらリジューネへ向いて言う
「あ、あああああああ ああっ わ、分かってるぜ!?俺にはっ な、なんったて 天使様の お、おおおおおお お導きが…っ」
リジューネが疑問した後 気を取り直して言う
「では 前進だ!」
カイザが舵を握る手に力を入れるが震えていて動かない リジューネがカイザを見て言う
「カイザ!」
カイザが強く目を閉じる リジューネが更に呼ぼうとして止め船の先を見る カイザの震える手の上に白い羽が落ちる カイザが驚き目を開いて羽の落ちた手を見る 周囲に羽はなくなっている カイザが呆気に取られた後はっとして船の先を見て 目を見開く カイザの視線の先天使が微笑して 船の先へと飛んで行く カイザが呆気にとられて言う
「天使様… はは 分かったよ もうビビらねぇ!」
カイザが舵を握り直し強い視線で叫ぶ
「進路 変更無し!全速前進!」
海賊たちが叫ぶ
「全速前進!」
カイザが歯を食いしばって言う
「いっけぇええーー!」
リジューネが視線を強める フェリペウス号が速度を上げて滝へ向かい フェリペウス号が海面のある場所を越える カイザとリジューネが息を飲む 海賊たちが怯える 音が消え フェリペウス号が直下に落ちる感覚に襲われる 海賊が叫ぶ
「お、落ちるぞぉおーー」「のわぁああーーーっ!」
カイザがはっとして言う
「…っ!違う!高波を越えた!総員!着水への振動に備えろ!」
海賊たちが驚きつつ周囲に捕まる 一瞬の後 フェリペウス号の船底が海面に落ちる フェリペウス号の後ろに波の山が去って行く ブリッジの計器類が一回転した後正常に動く リジューネが不思議そうに見る カイザが言う
「計器類正常!よーそろー!」
リジューネが見詰める カイザが笑んでリジューネへ向いて言う
「さぁ 未開の海へ出たぜ?リジューネの姐さん 俺たちの向かうべき港はどこだい?」
リジューネが呆気に取られた後 慌てて言う
「あ、ああ そうだったっ 私が過去に見ていた 地図上だけの話なのだが…」
フェリペウス号が海を行く

ヴィクトールが笑顔で言う
「お~いし~い!こんな味のないご飯が こんなに美味しいだなんて!機械鎧で戦うと 本当に体力を使うんだね!」
カイザが不満そうな表情で言う
「せめて その不味いって言葉は外してくれない?仕入れたばかりの 俺らの3週間分の食料を ぜーんぶ食い尽くしてくれちゃってさ!」
カイザが指差した先 ガルバディアの騎士たちが食料にガッついている ヴィクトールが苦笑して言う
「良いじゃない?皆いっぱい戦って お腹が空いてるんだよ …皆ー?」
ヴィクトールが呼ぶとガルバディアの騎士たちが顔を向ける ヴィクトールが笑顔で言う
「足りなかったら そこの鍋にあるシチューも 全部もらって良いってー!」
カイザが焦って言う
「それは俺らのーーっ!」

寝室

ヴィクトール11世が見下ろして言う
「シリウス… また 僕の頭を撫でたり… ちょ、ちょっとなら いぢめても良いからっ だから… だから…」
ヴィクトール11世の視線の先 ベッドにシリウスAが横たえられている ヴィクトール11世が悲しそうな表情で言う
「早く… 声を聞かせて 僕を呼んでよ… シリウス… ねぇ シリウス…」
シリウスAは目を閉じて眠っている様に動かない ヴィクトール11世が表情を落とす 

扉の外 

リジューネが聞こえていた声に表情を悲しめ ノックしようとしていた手をどうするか迷い 間を置いた後

扉の内

ノックの音が響き ヴィクトール11世がはっとして涙を拭って返事を返す
「ど、どうぞ?」
時間を掛けゆっくりと扉が開かれ リジューネが現れて言う
「あ… その、シ、シリウス様に…っ 例え意識はあられずとも 一言ご挨拶を… いや、違う 本当は… その… ひ、一目だけ でも…」
リジューネが表情を困らせた後 慌てて言う
「いやっ!こんな時にっ 不敬であった!また 後日改めてっ!」
ヴィクトール11世が呆気に取られていた後 苦笑して言う
「あ!僕!トイレ!」
リジューネが驚いて言う
「え?」
ヴィクトール11世がわざとらしく慌ててリジューネの前に来て言う
「僕 おしっこして来るから!リジューネ女帝は 僕の代わりに シリウスを見てて!」
リジューネが驚いて慌てて言う
「え!?い、いや!その程度の間ならっ シリウス様は とても体裁をお気になされる お方であると エレンソルシュラ女王の日記に…っ」
ヴィクトール11世がリジューネを押しのけ扉の外へ行って笑顔で言う
「シリウスはね?とっても寂しがり屋なんだよ!本当はきっと僕よりも!だから 目を覚ました時 ちゃんと見えるくらい 傍に居てあげてね!絶対だよっ!?」
ヴィクトール11世が急いで去って行く リジューネが追いかける様に手を伸ばして言う
「あっ!ヴィクトール殿っ!」
ヴィクトール11世が走り去って行く リジューネが伸ばした手を困らせ 顔を室内へ向ける ベッドの横に椅子が置かれている リジューネが視線を泳がせた後 扉を閉め 室内に入って行く ベッドの近くへ行くと シリウスAの顔が厚手の布団に阻まれて見えない リジューネがしばらく考えた後意を決して一歩踏み出して覗き込もうとする 後一歩で見えるという所で 船が止まり大きな波を受けて船体が大きく傾く リジューネが体勢を崩し掛け驚いて言う
「っと…っ!?」

ブリッジ

カイザがブリッジへ入って来て言う
「どうした!?何で船を止めた!?」
舵を取っていた海賊が振り返って言う
「カイザ やっぱ俺には出来ねぇよ 一度この目で見てるとは言っても お前の舵で連れて行かれたのと 自分で舵を向けるのは違う だから… やっぱり ここはお前に頼むぜ!」
海賊がカイザの肩を叩く カイザが呆気に取られた後苦笑して言う
「なんだ、それでか …おう!お前らのキャプテン このカイザ様に任せなさい!」
海賊が呆気に取られた後苦笑して言う
「ああ!これからも頼りにしてるぜ!?キャプテン!」
カイザと海賊が笑んで 拳をつき合わせ 場所を入れ替わる カイザが舵を握って言う
「よし!進行再開!方位変更なし!」
フェリペウス号のスクリューが再始動する

寝室

リジューネが周囲を見ながら言う
「再び動き始めた …特に問題では無かったのか」
リジューネがベッドへ顔を向け 気付いて言う
「あ…っ」
シリウスAの顔が横へ向いていて 覗き込む事が出来なくなっている リジューネが呆気に取られた後苦笑して言う
「…フッ やはり 寝顔を覗き見るなど 失礼であったな」
リジューネが椅子に座り一息吐いてからドアを一度見て言う
「…遅いな ヴィクトール殿」
ドアの外 ヴィクトール11世が不満そうな表情で小声で言う
「もおっ 折角時間をあげたのにっ」
ヴィクトール11世が猫耳を立て尻尾を揺らしてうずうずしている

ブリッジ

カイザが正面を見据えて言う
「に、二回目なんだ…っ この前と お、同じ様にっ …同じ、様に 行きゃ~… 良いんだからっ べ、別に!俺はっ!び、ビビってなんかっ!…ゴクッ」
カイザがガタガタ震える ヴィクトールが首を傾げて言う
「どうしたの?カイザ あの滝の先が 僕らの大陸なんでしょ?だったら さっさと行こう!僕 早く…」
ヴィクトールが後ろを向いて恥ずかしそうに言う
「バーネットに会いたいなぁ~ なんてっ?えへへっ」
カイザがヴィクトールを見て呆れる ヴィクトールが独り言を言う
「あ、別に 変な意味じゃないよ?僕は 相棒としてっ バーネットの顔を見て この戦いの終了に ホッとしたいなーって それだけなんだからっ!でも、きっとバーネット 怒るだろうな~ 相変わらずてめぇは誤解を招く言い方をするなーとか?けど 知ってるよ きっとバーネットも 僕の事心配して… もしかしたら 僕と同じ様に 早く会いたいなーなんて 思ってくれてたりなんかしちゃったりして~?えへへっ」
カイザが言う
「…俺は旦那の その能天気な性格が羨ましいわ」
ヴィクトールが振り返って言う
「え?今 何か言った?」
カイザが目を閉じて言う
「いんや、俺にも 旦那みてーな能天気な… いや、お強い心があったらなぁ~?なんてよ!」
ヴィクトールが疑問した後 微笑して言う
「お強い心なら 誰にだってあるよ カイザ 君にだって 心の支えになる人がいるだろう?」
カイザが表情を困らせて言う
「心の支えねぇ… まぁ 海賊の仲間だったら 他の船の奴だって 何人か居るが…」
ヴィクトールが笑顔で言う
「なら、それで良いじゃない?その仲間に会いたいって 思うでしょ?」
カイザが溜息をついて言う
「そら 会いてーっちゃ 会いてーけどぉ!?あの滝へ向かって 叫んで行ける様な間柄じゃねー訳よ?分かる?」
ヴィクトールが疑問して言う
「え?分かんない 僕は叫んで行けるもの バーネットー!…って」
カイザが呆れて言う
「ああ… そうだろうな 旦那なら…」
ヴィクトールが笑顔になる カイザが顔を上げて言う
「…なんて 言ってる場合じゃねぇか ここまで来た以上 戻るっきゃねーんだし この際 …しょうがねぇから スカルの名前でも使わせてもらうしか…」
カイザがスカルの顔を思い出し 表情を顰めて言う
「い、いや やっぱ名前を叫ぶ必要はねぇ~わ 今後 この事を思い出す度に それも思い出されっちまうだろうし…」
カイザが舵を握って正面を見据える 滝が激しく落ちている カイザが恐れを必死に抑える ヴィクトールがうずうずしてカイザを見ている カイザが意を決して叫ぼうと息を吸う
「―っ」
ヴィクトールが叫ぶ
「バーネットォーーー!!」
カイザが衝撃を受け 怒って言う
「ちょっとぉおーーっ!?折角 人が気合を入れようてぇー時に 何勝手にそっちが 叫んじゃってるのーっ!?」
ヴィクトールが不満そうに言う
「だぁってぇ~」
カイザが怒って言う
「だっても あさっても ないのっ!俺はこんな時こそ 俺の天使様に 縋ろうとしたってぇのにっ!」
ヴィクトールが疑問して言う
「天使様?」
カイザが衝撃を受ける ヴィクトールが不思議そうに言う
「君の天使様って… あの旧世界の戦士 ガイ?」
カイザが慌てて叫ぶ
「違ーーっ!止めてくれる!?アレは間違え!俺にはれっきとした天使様が!そら…男ではあるけど?ちゃんと白い翼を付けた 天使様が導いてくれちゃうんだから!」
カイザがヴィクトールの方を向いて怒っていると 白い光りが船の前方から放たれる カイザとヴィクトールが気付き 顔を向けると カイザがはっとして言う
「天使様?…天使様だ!ほら!見ろよ!ヴィクトールの旦那!俺の天使様が!俺からの呼びかけに お導きの光りだ!」
ヴィクトールが首を傾げて言う
「え?君 何時 天使様に呼びかけたの?」
カイザが衝撃を受ける ヴィクトールが不満そうに言う
「駄目だよ?呼ぶときはちゃんと呼ばないと?」
カイザが怒って言う
「良いのっ!俺と天使様は そー言う関係なの!」
ヴィクトールが驚きに目を丸くする カイザが慌てて言う
「い、いやっ違う!ちょっと言葉が悪く」
ヴィクトールが言う
「そんな事より早く行こう?のんびりしてたら 折角の天使様も 待ちくたびれちゃうんじゃない?」
カイザが怒って言う
「アンタが言うなぁーっ!」
カイザが舵を握り直して言う
「はぁ… ったく 夢でも現実でも やっぱりこの旦那とは仲良く出来ねーわ」
ヴィクトールが言う
「はーやくー」
カイザが怒りを押し殺し 無視して言う
「よし ありがとよ 天使様!今すぐ行くぜ!」
カイザが光りを見詰めると 光りが答える様に強まる カイザが笑んで頷き 言う
「フェリペウス号 全速前進!」
フェリペウス号が力強く進み光りに導かれる様に海の端へ突っ切り 船全体が宙に浮く カイザが一度目を閉じて神経を集中させてから目を開いて言う
「総員!着水の衝撃に備えろ!」
カイザの声が伝通管を抜け 海賊たちが聞いて各々身近な物に捕まる リジューネが視線を強め近くの手すりに捕まる ヴィクトール11世がシリウスAを抱きしめる 一瞬の無重力の後 船の下に海が現れ 船が着水する 激しい水しぶきと共に フェリペウス号が落ち着き 静かな海を進む

皆が力を抜き周囲を見渡す カイザが微笑して言う
「よっしゃぁ!無事戻ってきたぜ!天使さ… あら?」
カイザが表情を歪ませる ヴィクトールが前方を見て言う
「うん?どうし… あ!」
カイザとヴィクトールの視線の先 光りが消えていくと共にそこへ ホログラムの三つ編みの金髪がなびく ヴィクトールが表情を喜ばせて叫ぶ
「バーネット!」
ホログラムのバーネットが怒りを爆発させて叫ぶ
『おっせぇええんだよ!このっ変態タコ野郎がぁああ!』
カイザが衝撃を受け叫ぶ
「なーっ!?変態タコ野郎って もしかして俺ーっ!?いや!んな事より!天使様は!?なんったって バーネットの旦那が そこに浮いちゃってるのよ!?居るべき人が違うんですけどー!?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「バーネット!僕にとっては居るべき人だったよ!会いたかった!僕 誰よりも君に すっごく会いたかったんだよー!バーネットー!」
バーネットが衝撃を受け頬を染めつつ怒って言う
『ばっ!だ、だから てめぇえは!あいっかわらず 人が聞いたら誤解する様な事をっ!』
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 笑顔で笑って言う
「ふふふっ やっぱりね?バーネットはそういうと思ったよ!もぅ… 素直じゃないんだから!バーネットは!」
バーネットが衝撃を受け 鞭を握り締めつつも バツの悪そうな顔で腕組みをしてそっぽを向く ヴィクトールが疑問して言う
「あれ?ホログラムでも いつもみたいに 僕を踏み付けてくると思ったのに?」
ヴィクトールが首を傾げる バーネットが逸らした顔を引きつらせる カイザががっかりして言う
「あの~… 一応聞いて置くんですけど そこに どう言う仕組みか分からねーが バーネットの旦那が居るってぇ事は 俺の天使様は… いらっしゃらなかった…?」
バーネットが疑問して言う
『あぁ?てめぇの天使様だぁ?それこそ良く分からねぇが ここには俺のホログラムの他には 誰も居やがらなかったし 変な電波なんかもなかったぜぇ?』
カイザが納得行かない様子でいる ヴィクトールがカイザを見てから バーネットへ言う
「もしかして、あの白い光りは バーネットが僕たちを呼んでくれてたの?」
バーネットが言う
『あん?白い光り?おうよ!直ぐそこの結界の向こうっ側まで 来てやがるてぇのに のろのろしてやがるから ちょいと急かしてやったんだぁ 良い感じでやがっただろぉ?』
ヴィクトールが笑顔で言う
「うん!すっごく 良かったよ!あの光りが無かったら きっと今もこっちへは来れて無かったもの!ね?カイザ?」
カイザががっかりする ヴィクトールが不思議そうに見た後 バーネットへ向き直って言う
「でも どうしてバーネットが?」
ヴィクトールの問いに バーネットが向き直り 姿を消すと ヴィクトールがブリッジ内へ顔を向ける その先にバーネットのホログラムが現れて 咳払いをしてから取り繕って言う
『うん…っ あー… まぁ てめぇ… いや、てめぇらを待ってやがるのは 何も俺だけじゃねぇしな… ほらよ?この船には あいつが乗ってやがるだろぉ?』
ヴィクトールが言う
「あいつ?あいつって…?」
ブリッジの扉が開き ヴィクトール11世がシリウスAを毛布に包んで抱いて現れて言う
「ほら やっぱり!バーネット2世が居た!」
リジューネが続いて現れて言う
「む?では あちらが…」
ヴィクトールが疑問して言う
「祖父上?」
ヴィクトール11世が傍に来て言う
「彼の声が聞こえたから 急いで来たんだ」
リジューネが言う
「ヴィクトール殿の耳は 猫並の聴覚との事 私も驚かされた」
ヴィクトール11世がローブから見えている尻尾を悪戯っぽく動かす ヴィクトールだけが気付いている バーネットがヴィクトール11世の腕に抱かれているシリウスAを見て言う
『シリウス国王の奴は 相変わらずスカしてやがるが 実際はちょいと切羽詰った状態でやがったらしい… と、まぁ そんな訳で 俺がついでに迎えに来てやったんだぁ』
ヴィクトール11世が頷いて言う
「うん、有難う バーネット2世 助かるよ」
バーネットが一瞬驚き 頬を染め視線を逸らして言う
『お、おう…』
ヴィクトールが呆気に取られた後 苦笑して言う
「そっか… なんだ うん、それで こんな場所に わざわざ君が待っている必要があったんだね?バーネット?」
バーネットが一瞬衝撃を受けた後 視線を逸らして言う
『お、おうよ!そう言うこった』
ヴィクトールが苦笑した後 気を取り直して言う
「うん!それなら バーネット シリウス国王と祖父上の2人を 急いでガルバディアへ連れて行ってあげて!君の移動プログラムで!」
バーネットが一瞬呆気に取られる ヴィクトール11世が頷いて言う
「うん!何だか変な様子だけど 僕はシリウスの事が心配だから 少しでも早く シリウスBの所へ連れて行きたいんだ お願いするよ!バーネット2世!」
バーネットがヴィクトール11世の勢いに押されつつ視線を逸らして言う
『あ?ああ… いや~ それはもう 焦る必要は…』
ヴィクトールが疑問して言う
「バーネット?どうしたの?シリウス国王を急いで連れて行かなくちゃいけないから 君がわざわざ迎えに来ていたのでしょ!?なら 急がないと!」
バーネットが慌てて言う
『あ!?おう!よし… ならぁ てめぇも一緒だ!ヴィクトール!』
ヴィクトールが驚いて言う
「え?僕も?…でも、僕は ガルバディアの騎士たちと一緒に居ないと」
バーネットが慌てて言う
『んなら もう面倒臭ぇえ!あいつらも一緒だぁっ 全員まとめて ガルバディアへ送ってやる!』
ヴィクトールが驚いて言う
「えぇ!?騎士たちも含めて!?そんなに大勢 移動させられるのかい?バーネット?」
バーネットが取り繕って言う
『う…えっと… ちょっとキツイかぁ…?いや!?あ、あったりめぇえだろっ!?俺はっ …あのガルバディア国王の子孫だぜぇ!?そんくれぇ… よ、余裕だぁ!』
ヴィクトールが呆気に取られた後微笑して言う
「凄いよバーネット… えへっ 流石 僕のご主人様…っ!…なんちゃってっ」
ヴィクトールが背を向けて恥ずかしがる バーネットが真っ赤な顔で怒って言う
『その言い方は 止めやがれぇええ!』

【 ガルバディア城 城門前 】

ヴィクトールとヴィクトール11世 ガルバディアの騎士たちが物凄いスピードでふっ飛んで来る ヴィクトールがはっと真剣な表情で身を翻して着地してスライドする 城門前でギリギリ止まると その城門に ヴィクトール11世がシリウスAを抱きかかえたまま猫の様に体をくねらせて城門に両足で着地してから 地面へ降りる ガルバディアの騎士たちが周囲の壁に突っ込む 砂埃が舞う中 扉が数字の羅列になって消え バーネットが現れて言う
「よし、無事 戻りやがったな?」
ヴィクトールが顔を上げ笑顔で言う
「うん!ただいま!バーネット!」
バーネットが苦笑して言う
「…おう」
ヴィクトール11世の猫耳がぴくりと動き ヴィクトール11世が急いで走り去って行く ヴィクトールとバーネットが視線で追った後 ヴィクトールが言う
「祖父上…」
ヴィクトールが1人頷き ヴィクトール11世を追って走り出す バーネットが慌てて言う
「あ!おいっ!だから!急ぐ必要は… チィッ」
バーネットが周囲で力を合わせて仲間を壁から抜いたりしているガルバディアの騎士たちへ言う
「おいっ てめぇらも 全員引っこ抜きやがったら 玉座の間へ来やがれ!」
ガルバディアの騎士たちが頷く バーネットがプログラムで消える

玉座の間 門前

ヴィクトール11世が叫ぶ
「シリウスB!聞こえる!?僕だよ!ここを開けて!」
ヴィクトールが追い掛けて来て ヴィクトール11世と閉じられた扉を見て疑問する バーネットが移動プログラムで現れて言う
「おいっ 言ってやがるだろ!?そう焦りやがらなくても シリウス国王の意識はもう とっくに」
ヴィクトール11世の腕に抱かれてる シリウスAが光に覆われ銀色の砂になってこぼれる ヴィクトールが衝撃を受け 悲鳴を上げて言う
「わー!シリウス国王がっ!祖父上!」
ヴィクトールがヴィクトール11世を見て はっとして 疑問して言う
「… 祖父上?」
ヴィクトール11世は真剣に扉を見つめている バーネットが言う
「あぁ?なんだぁ?そう言やぁ なんでここの扉が閉じられてやがる?」
ヴィクトールがバーネットへ向いて慌てて言う
「それより バーネット!シリウス国王の体が!」
バーネットが言う
「ああ、そっちは心配しやがるな シリウス国王の意識は てめぇらが あの結界を越えた瞬間から シリウスBの奴が転送させてやがった 出来れば上出来な義体も保護したかったって話だったが… まぁ そっちはしょうがねぇ」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「なんだ… そうだったんだ?良かった… 祖父上 聞きましたか?シリウス国王はご無事だと …祖父上?」
ヴィクトール11世が視線を強める

玉座の間

ガイが床に叩きつけられる ヴァッガスが床に這っていて言う
「ガイっ… 畜生… これが…」
ヴァッガスが向いた先 床までめり込んだ大剣が引き抜かれる ヴァッガスが言う
「アバロンの 大剣使い… ヘクター国王っ」
ヘクターが大剣を肩に担ぎ 軽く笑んで言う
「へっへ~… 久しぶりに 気合の入った戦いが出来たぜ!」
ヘクターが笑む 玉座に座ったシリウスBが視線を強めて言う
「アバロンの王 ヘクター… 今まで 何処に居た?そして この行いは」
玉座の間に ヴァッガス、ガイ、ロドウが倒れており メテーリがロドウに回復魔法を施しながらシリウスBを見る シリウスBがヘクターへ強い視線を向けて言う
「私へ対する挑発か?そうだと言うのなら 例えシリウスの民であっても 容赦はせんぞ」
シリウスBの周囲に大量のプログラムが発生する ヘクターが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「おっと… 今の俺にそれはキツイんだ だから そろそろ撤退するからよ?そいつは勘弁してくれよ シリウス国王?」
シリウスBが視線を強める ヘクターが一瞬疑問して首を傾げて言う
「…あ?あんた… シリウス国王じゃないのか?何となくだけっど… そんな気がするぜ?」
シリウスBが言う
「気付いていなかったのか?…お前はアバロンの民においても その力が最も強いとされていた者」
ヘクターが困り苦笑で頭をかきながら言う
「ああ… 今はちょっと 上手く力が出ねーんだよ… やっぱ 心配事があっと 駄目なんだよな 俺は」
シリウスBが無言で居る ヘクターが軽く息を吐いて言う
「だから そろそろ撤退するぜ!じゃあな!」
ヘクターがシリウスBに背を向けて歩みを始めようとして立ち止まって言う
「…と、いけねぇ」
ヘクターがシリウスBへ向き直って言う
「本命を忘れてた!俺は こいつらと戦う為だけに 来たわけじゃねーんだよ 伝言を任されててさ?シリウス国王宛てなんだけど …あんたでも大丈夫 だろ?」
シリウスBが言う
「…聞こう」
ヘクターがニッと笑んだ後 肩に担いでいた大剣をシリウスBへ向けると周囲にプログラムが発生してヘクターの青い瞳が赤くなり言う
「…シリウス お前の作り上げた力はその程度か?これでは 過去のお前を遥かに下回る 俺との約束を忘れたわけでは有るまいな?俺は… お前を ずっと待っている」
シリウスBが視線を強める ヘクターの周囲のプログラムが消えると瞳の色が戻り ヘクターが微笑して大剣を鞘へ収める ヘクターの周囲に移動プログラムが発生してヘクターが消える ヘクターの居た場所の後方にある扉にプログラムが発生して消えると ヴィクトール11世を先頭に ヴィクトール、バーネット ガルバディアの騎士たちが居て 一瞬驚き周囲を見渡し シリウスBを見て ヴィクトールが言う
「シリウスB!?」
バーネットが一歩入り ガイたちを見て言う
「こいつは… 一体何がありやがった!?」
皆がシリウスBを見る シリウスBが目を閉じていて 軽く息を吐き ゆっくり目を開いて言う
「…奴の言葉は 誰からのものだ?シリウス」
皆が一瞬驚いて周囲を見渡す シリウスBが言う
「我にも分からぬ …同じこの身のメモリーを共有しておるのじゃ お前にもそれが分かりよるじゃろう?B?」
皆が驚きシリウスBを見る シリウスBが目を細めて言う
「…それは そうではあるが」
シリウスBが苦笑して言う
「とは言え やはり 1つの身に2つの意識が入っては 双方の検索意識に競合が起きよるのぉ?B?」
シリウスBが衝撃を受け慌てて言う
「だったら!何故 セントラルコンピュータの中で 大人しく待っていなかった!?わざわざ 同じ身体に同居して来るとは!これでは プログラム能力も落ちる!何より…」
シリウスBが苦しそうにもがきながら言う
「意識がきつくって たまらんっ」
シリウスBが苦笑笑顔で言う
「折角の機会なのじゃから 良いではあらぬか?B たまには こう 仲良く1つの身に入ると言うのも」
シリウスBが怒って言う
「良い訳がないだろっ!」
皆が後頭部に汗を掻き ヴィクトールが疑問して言う
「え…?何…?」
バーネットが呆れて言う
「1つの体の中に シリウスAとシリウスB 2人の意識が入ってやがる… しかも 何の意味も無く 無駄にだ」
ヴィクトール11世が真剣な表情で一歩前に立ち入る ヴィクトールとバーネットが一瞬驚きヴィクトール11世を見る ヴィクトール11世が視線を強めて言う
「…し」
ヴィクトールとバーネットが疑問してヴィクトールが言う
「…し?」
ヴィクトール11世が駆け出して叫ぶ
「シリウスーーっ!」
シリウスBが驚き目を丸くする ヴィクトール11世がシリウスBへ抱きついて 泣きながら喜んで叫ぶ
「シリウス!シリウス!良かった!良かったよぉ~!シリウスゥ~!」
シリウスBが呆気に取られた後微笑し 更に微笑んで言う
「良い子じゃヴィクトール 我の意識を しっかり この大陸へ運んでくれよったのぉ?流石は 我の猫なのじゃ」
シリウスBがヴィクトール11世の頭を撫でる ヴィクトール11世が笑顔で頷いて言う
「うん!」
ヴィクトール11世がシリウスBの体に頬擦りする シリウスBが笑顔でヴィクトール11世を撫でた後 表情を困らせ 笑顔になり 表情を困らせる ヴァッガスがガイの横に来て言う
「なんか… 大変な事になってねーか?」
メテーリに回復魔法をかけられているガイが苦笑して言う
「うむ… だが やはり 我らの王も 間違いなく あのお体に居られる事が 見て取られる 故に… 心配はない… だろう?」
ロドウが苦笑して言う
「うん そうだね!」
ヴァッガスが表情を困らせて言う
「…そうかぁ?俺には… 逆に心配に見えるぜ?」
ヴァッガスたちの視線の先 シリウスBが 笑顔になったり 嫌がったりを交互に繰り返す ヴィクトール11世が笑顔で頭を撫でられて居る

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