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1-6 奪われた相棒
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【 ローレシア城 玉座の間 】
デス1stがハッとして言う
「このプログラムは…?旧世界への移動プログラムか!?まずいっ!」
デス1stが思わず身を逸らしてガルバディアへの接続を切る 一度息を吐いてから顔を横に向け 慌てて言う
「2nd!そのプログラムには干渉するな!シリウス国王の反撃プログラムが!」
皆が驚き デス2ndへ向く デス2ndが自分への忠告に顔を向けるのと同時に 激しい雷撃に感電して叫ぶ
「うあぁあああっ!」
デス1stが叫ぶ
「2nd!」
デス2ndが目を開いたまま倒れる ヘクターが突然の出来事に顔を向けて驚いた状態から慌てて駆け向かって言う
「デスっ!?」
ヘクターがデス2ndへ手を向ける デス1stがあわてて言う
「触れるなっ ヘクター!」
ヘクターがデス2ndへ向けていた手を止めて デス1stへ向く デス1stが言う
「今 触れては その帯電を お前が受け取ってしまうっ」
ヘクターがデス2ndを見る デス2ndは感電して息が出来ずヘクターへ視線を向ける ヘクターが言う
「なら!俺が受け取って デスを助けてやる!」
デス1stが慌てて言う
「そんな事をしては お前がっ!?」
ヘクターがデス2ndの肩を掴む デス2ndの帯電がヘクターへ流れ込み ヘクターが叫ぶ
「ああぁあっ!」
デス1stが慌ててやって来て言う
「ヘクターっ!」
ヘクターが歯を食いしばって耐え抜いてからデス2ndの顔を見て言う
「デス!しっかりしろよ!?デス!」
デス1stが呆気に取られて言う
「シ… シリウス国王の雷撃を… 緩和させた…っ!?」
ヘクターが呼ぶ
「デス!」
デス1stがハッとしてデス2ndの横へ膝を着き周囲にプログラムを発生させる デス2ndが苦しがっている状態から意識を失う ヘクターがデス1stへ向いて言う
「デスっ!?どうなんだっ!?」
デス1stがヘクターへ向いて言う
「2ndの意識にプロテクトを掛けた …だが これだけでは そう長くは持たない この体の生命機能が完全停止した時点で 2ndの意識も消滅してしまう」
ヘクターが言う
「なら どうしたら良いっ!?どうしたらっ!?…そうだ!回復魔法を!?」
ヘクターが振り返る 玉座に居るキルビーグへ皆の視線が向かう デス1stがヘクターへ向いて言う
「いや、深層細胞が破壊されているこの状態では 回復魔法では助からない 2ndの体を細胞組織から再構成させる装置が必要だ …だが、それはガルバディアにしかない」
ヘクターがデス2ndの体を抱き上げて言う
「なら急いでガルバディアへ行くぞ!デス!ガルバディアへ移動プログラムだ!」
デス1stがヘクターの顔を見上げて言う
「だが シリウス国王が旧世界へ向かってしまった今 ガルバディアの城門は封印されている」
ヘクターが一瞬驚いた後 気を取り直して言う
「だとしても!こっちのデスを助けるには ガルバディア城に入るしかねーんだろ!?だったら 急いでガルバディアへ行くんだ!デス!早く移動プログラムをやってくれ!」
デス1stが表情を困らせて言う
「しかし…っ」
ヘクターがデス1stへ向く デス1stが言う
「…分かった」
【 スプローニ国 城下町 】
ヴェルアロンスライツァーが城から出て来て気付き言う
「…うん?あの者は?」
ヴェルアロンスライツァーが向かい 立ち止まって言う
「もし、不躾だが 貴女はアバロンの方であろうか?」
ヴェルアロンスライツァーの視線の先 リジューネが振り返り一瞬呆気に取られた後 視線を逸らして言う
「あ …ああ 確かに 貴公の言う通りではあるが 私はやはり ローレシアを愛して居る この想いに偽りは無い 従って 貴公の問いには否定をさせてもらいたい」
ヴェルアロンスライツァーがリジューネの返答に疑問してから 苦笑して言う
「そうであるのか だが、その気持ち 今なら私にも分かる… 私も いかにスプローニへ深く関する者になろうとも やはり、アンネローゼ様を愛している この想いに偽りは無い」
リジューネが気付いて言う
「スプローニに関する者?アンネローゼ様… と言うのは 確か?この世界のローゼントの女王であったな 貴公の姿は紛れも無く ローゼントの騎士であろう?スプローニへ関する者というのは分かりかねるが 故郷のローゼントを想い その国の王を愛すると言うのは 正しいのではないか?」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「いや、私は例えアンネローゼ様が何処の国へ向かわれ様とも アンネローゼ様を愛しているのだ アンネローゼ様がローゼントの女王である事は 関係ない 例え… 女王で在らずとも」
リジューネが呆気に取られた後 軽く笑って言う
「ふふ…っ それはつまり?1人の男として アンネローゼという名の女性を 愛しているという事だろう?貴公はなかなか 面白い男だな?あっはははははっ!」
リジューネが笑う ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られた後 微笑して言う
「…そうか私は …名に囚われていたのは 私の方であったのか」
ヴェルアロンスライツァーが微笑する リジューネが笑いを収めて言う
「名に囚われていた…か 私は… 私もやはり フォーリエルの言う通り 自身の地位に 囚われているだけ …なのかもしれんな」
ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
「地位?」
リジューネがヴェルアロンスライツァーへ向き直って言う
「いや、何でもない 気にしないでくれ」
ヴェルアロンスライツァーが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「フォーリエル と言ったか?彼ならば 移動プログラムと言うもので 先ほど何処かへと飛んで行ってしまった様だが?」
リジューネが呆気に取られて言う
「何処かへ?移動プログラムか では テスクローネと共にローレシアへ戻ったのかも知れんな 私がここで手を拱いている間に用事を済ませ 帰ってしまったか… その点私は 例え自分の想いのままに動いてみても 結局 何一つ上手く行かん… シリウス様の間近まで来たと言うのに 門前払いを受け スプローニ城へ入れずに居た などと言ったら 今度は愛想さえも尽かされてしまうだろう …言い訳作りの寄り道でもしてから戻るか」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「スプローニ城へ用があったのか?今なら国王のロキも 手が空いていると思われるが?」
リジューネが苦笑して言う
「いや、もう良いのだ 私の用は終わった 貴公も用が済んだのなら ローゼントの騎士としてでも 1人の男としてでも 愛する女性の下へ帰られるべきだろう」
リジューネが苦笑した後ヴェルアロンスライツァーに背を向け立ち去る ヴェルアロンスライツァーが呼び止めようとするが 遠ざかって行くリジューネの背に諦めて言う
「フォーリエル殿とテスクローネ殿のご友人 であったのだろうか?だとしたら 彼女は旧世界の民…?旧世界のアバロンには 女性の大剣使いも居るものなのだな?名を聞いて置きたかったが 残念だ」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して移動魔法陣へ向かう
【 ガルバディア城 城門前 】
ヘクターが城門を叩きながら言う
「開け!開けよーっ!」
デス1stが後方で地に横たえられているデス2ndへプログラムを行いながら顔を上げ ヘクターへ言う
「ヘクター やはり城門のプログラムは完全に沈黙している この状態ではお前や私であっても 開く事は出来ない」
ヘクターが悔やみつつデス1stへ振り返ってからその前に居るデス2ndを見る デス2ndはプログラムの数字の羅列の中で意識を失ったままでいる ヘクターが言う
「俺やお前でも開けられねーって それじゃ 誰なら開けられるんだ?」
デス1stが言う
「ガルバディア城は この世界の要だ シリウス国王が居ない状態では 誰一人入る事は出来ない」
ヘクターが表情を困らせて言う
「誰も入れねーって ガルバディアは一応国だろ?それなのに 王が居ねー時は入れねーなんて そんなのは国じゃねーだろ!?」
ヘクターが視線を落として考える 吹雪が通る ヘクターが気付いて言う
「…うん?それじゃ 王が外出する時は 民は皆この極寒の中に追い出されるのか?」
デス1stが一瞬呆気に取られてから改めて言う
「え?…い、いや そんな事は無い そもそもガルバディア城に住めるのは ガルバディアの民だけだ 彼らは皆シリウス国王に仕える僕 その彼らがシリウス国王に害を成す事等在り得ない 故に 彼らは城の中に留まる事が許されていた」
ヘクターが言う
「つまり、追い出されるわけじゃなくて この扉が開かないだけって事か …なら、デス アバロンからガルバディアに入る あの道はどうなってんだ?」
デス1stが呆気に取られて言う
「え?ああ、あの道は 元々ガルバディアの猫である ヴィクトールたちが通る道であり 私でも開く事が可能であったが しかし、ガルバディアの城門が封じられた際は どちらかと言うとアバロンの味方とされる 我らガルバディアの第二王子では 開かれない設定となっていたが… そうか それなら」
ヘクターが慌てて言う
「それなら ヴィクトールだっ!あいつを探して 開けてもらえば良いだろ!?」
デス1stが表情を困らせつつプログラムを足して言う
「ああ それは… 確かに そうだが 彼らが 2ndの為に あの道を開いてくれるかどうか…」
ヘクターが怒って言う
「開けてくれるに決まってんだろっ!?ヴィクトールは 俺たちの仲間だ!」
【 ベネテクト城 玉座の間 】
ベーネットが言う
「残念ながら 同じヴィクトールの名を持つ者であっても あのアバロンとガルバディアを繋ぐ通路を開く事が出来るヴィクトールは… このヴィクトールではありません」
ベーネットが表情を困らせる ヴィクトール14世が表情を困らせて言う
「うん、申し訳ない ヘクター国王 私はベネテクトからアバロンへ通じる散歩道を開く事は出来るけど アバロンとガルバディアを繋ぐ道を開く事は出来ないんだ 私の滞在先はガルバディアではなく このベネテクトなものだから」
ベーネットが言う
「現状あの扉を開く事の出来るヴィクトールは 11世様ではないかな?」
ヘクターが言う
「ならヴィクトール11世様を探すんだ デス!」
ヘクターがデス1stへ向く デス1stがプログラムを発生させながら苦戦している ヘクターが言う
「どうした!?デス 急げ!」
デス1stが一度悔やんでから顔を横に振って言う
「駄目だ 見つけ出せない ヴィクトール11世の生態情報が何処にも無い もしかしたら シリウス国王と共に 旧世界へ向かったのかもしれん」
ヘクターが驚き困る ベーネットが考えながら言う
「もしくは 我々の力では見つからない程に 厳重に封じられているのかもしれません シリウス国王は 最悪この世界が異世界の王に奪われる事も 視野に入れていたと言う話ですから」
ヘクターが驚いて言う
「この世界が異世界の王に奪われる だって!?」
ベーネットが言う
「ええ… そうです お陰で 現在バーネット1世を始めとする この世界のそうそうたるプログラマーが それこそ必死にこの世界を守るプログラムを行っています が、…どうやら 余り捗々(はかばか)しくは無いらしいです」
ベーネットが苦笑する ヘクターが衝撃を受け慌てて言う
「捗々しくねぇってっ!?なんでそんな状態で お前はのんびりしていられるんだよ!?それこそ プログラムを出来るお前や 俺の相棒のデスだって手伝うべきだろ!?…あ!あぁあーっ そ、それじゃ デスを助ける事が出来なくなっちまうかもしれねーっ!駄目だ!デス!お前は手伝いに行くな!デスを助ける方が先だぜ!?」
デス1stとベーネットが呆気に取られた後苦笑して後に笑う ヘクターが衝撃を受け驚いて言う
「なっ!?何笑ってるんだよ!お前ら!?」
ベーネットが微笑して言う
「落ち着いて下さいヘクター国王 こんな時こそ 各々が出来る事を行うべきです」
ヘクターが言う
「お、各々が出来る事って…」
ベーネットが言う
「ヘクター国王やデス1st様は デス2nd様の回復を求めておられるのでしょう?でしたら 御二方はそちらに専念しませんと そして、私は… こう見えましても 私の父バーネット2世や祖父のバーネット1世が現在行えない この世界における均衡の見張りを行っております 今はどちらかと言えば ベネテクトの王というより ガルバディアの代理国王とでも申しましょうか…?」
ヘクターが呆気に取られる ベーネットが苦笑して言う
「いえ、少し言葉が過ぎましたね 3代目の私ごときが ガルバディア国王の代理だ等とは 恐れ多い事です」
ヘクターが困って言う
「けど ベーネットは自分のやる事が出来るから良いけどよ こっちは今 ガルバディア城に入る方法が無くって 困り果てちまってるんだ 各々でって言っても 俺が出来る事は 今何も出来ねーんだぜ!?くそ… どうしたら良いんだ?こんな時 夢の中だったら…」
ヘクターが言い掛けた時 ヴィクトールが泣きながら歩いて来て言う
「えぇ~ん 酷いよ バーネット…」
皆が疑問してヴィクトールへ向く ベーネットが驚いて言う
「ヴィクトール様 一体どうされたのです?父上と共に ガルバディアへ飛ばされやがったのでは?」
ヘクターとデスが驚いてヘクターが言う
「ガルバディアへ!?ヴィクトール!お前 ガルバディアに居たのかっ!?」
ヴィクトールがベーネットに続きヘクターを見てから涙をすすって言う
「うぅっ… あ… ヘクター… 何でベネテクトに…?…まぁ 良いや 僕は…」
ヘクターがヴィクトールへ掴み掛かって言う
「おいっ!ヴィクトール!どうなんだ!?お前ガルバディア城の中に居たのかよ!?どうやって入った!?いや、どうやって出て来たんだ!?お前は出入り出来るのかよ!?」
ヴィクトールが言う
「ぐすんっ… 何?僕は今ガルバディアから追い出されちゃったんだよ バーネットが… 『今はてめぇに構ってる暇はねぇんだ』って… 僕はただ… 傍に居させてって言っただけなのに」
デス1stがハッとして言う
「ガルバディアから追い出された!?そうかっ!ガルバディアは今 城門を封じてはいるが システムは止まっていない シリウス国王は居らずとも その玉座を守る者が!玉座にはバーネット2世が居るのか!」
【 エドの町 小川の辺 】
フォーリエルが遠くを見ていた状態から振り返る 視線の先で テスクローネが川辺の石に腰掛け目を閉じて周囲にプログラムを現している フォーリエルがその様子に苦笑する ヴィクトール12世がやって来て言う
「うん?貴公らは この様な場所に飛ばされていたのか?」
フォーリエルが振り返って言う
「あ?あんたは確か…?あの口の悪い王様の相棒の… ヴィクトール11世様の…?」
ヴィクトール12世が苦笑して言う
「ああ、見た目は私の方が老けているが これでも私はヴィクトール11世の後世である12世だよ それはそうと?ガルバディアでもソルベキアでも ローレシアでさえない この機械離れしたエドの町にてプログラムを行うのは不便ではないのか?」
フォーリエルが軽く笑んで言う
「俺もそう思ったんだけど テスが言うには ガルバディアの力って言うのは本来 何処で使っても 変わらないモンなんだってよ?それより重要な事は プログラマーの心境だってさ」
ヴィクトール12世が疑問して言う
「心境?」
フォーリエルが言う
「ああ、ガルバディアの民は 大昔から心が脆いらしい まぁ、このテスも 今まで俺が何度自殺を止めさせたか 分かんねーしな?ははっ!」
ヴィクトール12世が呆気に取られてテスクローネを見る テスクローネは無表情にプログラムを続けている フォーリエルが苦笑して言う
「こいつらはすげー力を持ってるけど それだけじゃ駄目なんだ 俺もこの場所に飛ばされて 不思議に思ってたんだけど このエドの町は 俺たちが旧世界で居た ローレシア帝国の一角に似てて この小川も俺たちが子供の頃一緒に遊んだ場所にすげー似てる …テスが言うには シリウス国王がテスの力を最大限に発揮できる テスの好きな場所へ 飛ばしてくれたんだって?」
ヴィクトール12世が微笑して言う
「そうだったのか… まぁ 我々はシリウス国王からの移動プログラムは受けることなく ソルベキアに留まっておった訳だが」
フォーリエルが首を傾げて言う
「んー?移動プログラムは受けなかったって言っても ヴィクトール12世様は あの口の悪いプログラマーの相棒なんだろ?」
ヴィクトール12世が苦笑して言う
「“口の悪いプログラマー”ではなく 彼はバーネット1世 ソルベキアの第一国王だよ ついでに言うと一応 私もソルベキアの第二国王であるが」
フォーリエルが言う
「ならヴィクトール12世様?そのバーネット1世様から離れちゃ駄目じゃねーか?今は一番大変な時なんだぜ?傍に居て 助けてやらねーと!」
ヴィクトール12世が呆気に取られてから苦笑して言う
「うむ… そうしたい気持ちは山々なのだが 生憎、私はプログラムなどは まったく分からんのでな 傍におっても何も助けられないのだよ」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「あ?」
フォーリエルが大げさに溜息を吐いてから言う
「はぁーーっ!分かってねーなー!」
ヴィクトール12世が疑問する フォーリエルが圧し掛かる様に言う
「良いか!?何もしなくても “傍に居る” って事が助けなんだよ!傍に居て あいつらがやる事を認めてやるんだっ あいつらは強い力を使えるけど それに疑問しちまう 自分がやってる事が正しいのかとか 何でこんな事やってんだーとかよ!?そんな時 傍に居て認めてやれば良いんだ それがまた あいつらの力になるんだぜ!?」
ヴィクトール12世が呆気に取られて言葉に押されている テスクローネが目を開き息を切らして言う
「…はぁ…はぁ… 駄目だ やはり我々だけで シリウス様の力を補うだなんて」
フォーリエルが振り返り 気合を入れて言う
「テス!何言ってんだ!今この世界は お前たちに掛かってるんだぜ!?お前らが諦めたら 俺らは皆やられっちまうじゃねーか!最後の最後まで諦めるんじゃねーよ!」
テスクローネが呆気に取られてから苦笑して言う
「あ…ああ、それは 確かにそうだけど…」
フォーリエルが言う
「それに!俺はまだ!お前から金を返してもらってねーぞ!?」
テスクローネが呆気に取られて言う
「え?金…?」
フォーリエルが言う
「そうだぜ!団子屋を開店する為に貸した金だ!お前 団子屋を絶対に成功させて いつか倍返しにして返してくれるって 約束したじゃねーか!?」
テスクローネが呆気に取られて瞬きをした後 噴出して言う
「ぷっ… あっはは… そうだった 君への借金を返さないといけなかったな それに フォーリエルが世界一の大剣使いになるのを この目で見届けないと」
フォーリエルが笑んで言う
「そうだぜ!?俺はお前の団子がねーと 気合が入らねーんだから 新世界を守るプログラムなんか ちゃっちゃと終わらせて 早くまた作ってくれよな!?」
テスクローネが微笑して言う
「うん… そうだな?…とは言え」
テスクローネが周囲にプログラムを現して言う
「シリウス様が算出された 我々の力の統計が まったくと言って良いほど数値に届いていない… シリウス様直系のご子息であられる バーネット様方は一体どうされたのだろう?このままでは どんなに私1人が頑張ろうと 正直難しい …フォーリエル?」
テスクローネがフォーリエルへ向いて言う
「私は大丈夫だから 他の2人の様子を見て来てもらえないだろうか?」
フォーリエルが腕組みをして 顔をぷいっとそむけて言う
「嫌だっ!」
テスクローネとヴィクトール12世が呆気に取られる フォーリエルが言う
「その二人にだって ちゃんと相棒が居るんだろ!?そっちは そいつらに任せる!俺はお前の相棒だぜ!テス!」
テスクローネが呆気に取られてから微笑して言う
「…うん そうだな 分かったよ それじゃ 彼らが力を取り戻すまで 何とか私がフォローしよう」
フォーリエルが言う
「おう!丁度ここに その片方が居るしよ!すぐ帰らせれば 良いだけだぜ!」
テスクローネが今更のごとく ヴィクトール12世に気付き あっと声を上げて驚いて言う
「え?あっ ヴィクトール様!?」
ヴィクトール12世が苦笑する テスクローネが一度苦笑した後 わざとらしく怒って言う
「この大切な時に お相方のバーネット1世様から離れて 何をしていらっしゃるのですっ!?」
ヴィクトール12世が呆気に取られた後 苦笑して言う
「ああ、すまなかった …では お詫びに 私がもう1人のプログラマーである バーネット2世の様子を確認して…」
フォーリエルとテスクローネが声を合わせて言う
「「それは良いから 直ぐに相棒の所に戻って下さい!」」
ヴィクトール12世が驚いた後 軽く笑って言う
「う、うむ 分かった では… そうさせてもらおう?」
ヴィクトール12世が苦笑して立ち去りながら 独り言を言う
「…とは言え 私の相棒のバーネットは 心が脆いだなどとは思えぬのだがなぁ…?それこそ 盛り沢山の剣で刺しても壊れぬ 強靭な心の持ち主であるのだから …あぁ、あれは夢の世界の話ではあったが… しかし、痛みはやはり感じたであろうし…」
フォーリエルとテスクローネが顔を見合わせ微笑する
【 ガルバディア城 通路 】
アバロンからガルバディアへの散歩道を ヴィクトール、デス1st、意識のないデス2ndを抱いたヘクターが歩いて来る ヴィクトールがふてくされて言う
「バーネットが言ったんだよ!?『今は この世界を守らなけりゃならねぇ 大事な時なんだ てめぇの相手はしてられねぇ プログラムが出来ねぇてめぇは ベネテクトにでも帰りやがれ』 ってぇ~?僕は確かにプログラムは出来ないけど でも もしプログラムをやってる無防備なバーネットを 誰かが襲おうとした時には 僕が守ってあげられるって でも それさえも 『ガルバディアなら 心配はねぇんだ』って~!」
ヴィクトールが後方へ向けていた顔を戻し歩きながら泣く ヘクターが怒って言う
「プログラムが出来ねーだろうが!身の危険を守る必要がないだろうが!相棒なら傍に居るのが当然だろ!?バーネットの奴!何言ってんだ!?」
デス1stが言う
「いや、バーネット国王の言った それらの言葉は 恐らくフェイクだ」
ヴィクトールが疑問して言う
「え?フェイク?」
ヘクターがデス1stへ向く デス1stが言う
「ああ、バーネット国王本人も 分かっている筈だ 自身の力を最大限に使用するには 相棒の支えが必要であると だが シリウス国王直系のロストヒューマンである彼らが 全力でプログラムを行うとなると…」
玉座の間
ヴィクトールが通路を抜けて城玉座の間に辿り着く 玉座に座っていたバーネットが目を開き衝撃を受け慌てて言う
「ヴィクトールっ!?ばっ!あんだけ言ってやったのに 何で戻って来やがったっ!?」
後方へ振り返りつつ歩いていたヴィクトールが バーネットの声に振り返って言う
「あ、バーネット 実は …え?」
ヴィクトールの驚いた視線の先 ガルバディアの力をフルに使用して 見た目の変わったバーネットが驚いている バーネットがハッとして慌てて顔を逸らして怒って言う
「み、見やがるんじゃねぇえっ!馬鹿野郎っ!俺は…っ」
バーネットが強く目を閉じて悔しそうに俯く デス1stが苦笑して言う
「バーネット国王は あのシリウス国王の子息 シリウス国王は 大いに人目を気にする王だ 特に 自分の大切な相棒である猫には ガルバディアの力をフルに使う際の その姿を見せたくはなかったのだろう」
ヴィクトールが呆気に取られて一度デス1stを見てから 再びバーネットへ視線を向ける バーネットが同じくデス1stを見てからヴィクトールへ視線を向け ハッとして顔を背ける ヴィクトールが呆気に取られていた状態から苦笑して歩き始める
【 ソルベキア城 玉座の間 】
バーネット1世が 驚き焦って困りながら言う
「だっ!?て、てめぇえ!だから!言ってやったじゃねぇえかぁあ!?プログラムも出来ねぇてめぇが ここになんざ居やがったって…!」
ヴィクトール12世が一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「ああ、私はここに居ても何も出来ないが それでも 君の傍で 君を支えさせてくれないか?バーネット?」
バーネット1世が一瞬言葉に押されてから言う
「う…っ!そ、それはっ… 確かに 支えには なりやがるが…」
バーネット1世がヴィクトール12世から顔を逸らす ヴィクトール12世が気付き微笑して言う
「それに、バーネット?私は 君のその姿も たまには見せてもらいたい 君は見せたがらないが 君が必死に戦っている時の その姿は 私はとても美しいと思うのだよ」
バーネット1世が衝撃を受け驚いて言う
「なっ!?」
バーネット1世が ガルバディアの力をフルに使用して 見た目が変わった状態で居る ヴィクトール12世がバーネット1世の近くへ来て姿を確認してから微笑んで言う
「まるでおとぎ話に出て来る」
【 ガルバディア城 玉座の間 】
ヴィクトールが笑顔で言う
「妖精みたいだね!バーネット!」
バーネットが呆気に取られて言葉をこぼす
「…あぁ?妖精…?」
ヴィクトールが微笑んで言う
「うん!いつものバーネットも良いけど どちらの姿であっても 僕は やっぱり 君は世界一の美人だと思うよ?バーネット?」
バーネットが驚き呆気に取られた後 苦笑して言う
「…ハッ!馬鹿野郎 見え透いた世辞を言いやがって…」
ヴィクトールが不満そうに言う
「え?心外だなぁ 僕はバーネットに 例え お世辞であっても嘘なんて言わないよ?ルビーみたいな綺麗な瞳に 透き通る体だなんて まるで おとぎ話に出て来る 妖精そのものじゃない?」
バーネットが表情を困らせる ヴィクトールが笑顔を向ける バーネットが苦笑して言う
「はっは… 本気で思ってやがるんなら てめぇにはホトホト呆れるが そのてめぇの相棒である俺は …助かるぜ」
ヴィクトールが疑問して考えた後照れる バーネットが呆れる バーネットが玉座に偉そうに腰掛け直して言う
「よし、なら精々てめぇは 俺の傍で てめぇの妖精様を見守ってやがれ!」
ヴィクトールが嬉しそうに言う
「うん!」
バーネットが苦笑して言う
「…でぇ?てめぇらは何の用だぁ?それこそ 今 こっちは てめぇらなんぞに構ってやれる暇は これっぽっちも有りやがらねぇぜ?」
バーネットが頬杖をついて視線を向ける 周囲にプログラムが大量に現れる ヘクターが言う
「バーネット デスを助けるために 力を貸してくれっ」
バーネットがヘクターの抱えるデス2ndを見る デス1stが言う
「彼はシリウス国王が旧世界へ向かった際に実行させた 攻撃プログラムを受けてしまった 一時的に脳核の保護を行っているが 現状のままでは 彼の肉体と共に意識が破壊されてしまう」
バーネットが言う
「そう言う事か… けど こっちは見ての通り 何をしようにも お前らへ手を貸してやれる余裕は全くねぇぜ?」
ヘクターがデス1stへ向く デス1stが言う
「その心配は不要だ 現状の我々が必要としているのは 代理ガルバディア国王殿の力ではなく このガルバディア城にある 設備だ」
バーネットが言う
「あん?設備?そうか… なら勝手に使いやがれ だが、一庶民のてめぇらが使えやがる設備は この玉座の間より外だ」
バーネットが視線を向けた先 玉座の間までの通路が開かれる ヘクターが振り返り向かおうとする デス1stが言う
「いや、そう言う事であるなら バーネット2世代理国王殿の力を貸してもらいたい 2ndを助けるのに必要な設備は ガルバディア国王たち ロストヒューマンの体を回復させる事が出来る 最高位の生態回復装置だ」
ヘクターが疑問して言う
「ロストヒューマン?」
バーネットが顔をしかめて言う
「何でてめぇが その装置の存在を知ってやがる?」
デス1stが言う
「例え情報のみの世界であろうとも 私は一度 このガルバディアの王を演じた… その際に知った情報だ それらの事は私が情報のままに消される際 共に消えるものとして 処理がなされずにいたが 私は再び生きるに至った 故に それらの情報も私の知識として残った」
バーネットがデス1stを見詰める デス1stがバーネットを見詰め返す ヘクターとヴィクトールが顔を見合わせた後 ヘクターが一歩踏み出してバーネットへ言う
「何だか分からねーけど バーネット?その機械がねーとデスが!俺のもう1人の相棒が助けられねーんだ!お前の力が必要だって事なら 頼む!」
バーネットがヘクターを見る ヴィクトールがバーネットへ向いて言う
「バーネット、僕からも頼むよ ヘクターのお陰で 僕はこうして 君の傍に戻れたのだし デスは僕たちの仲間だ」
バーネットがヴィクトールを横目に見てから表情を渋らせて言う
「俺だって出来る事ならそうさせてやりてぇが… 今あの装置は シリウス国王の奴が凍結しちまってる」
ヘクターたちが驚く バーネットがヘクターへ向いて言う
「シリウス国王の奴は 連れ帰る予定の旧世界のシリウスBを あの機械で回復させやがるつもりなんだろうぜ 既にその設定がなされてやがるからなぁ」
ヴィクトールが表情を困らせて言う
「そんなっ それじゃ!?」
ヘクターがデス1stを見る デス1stが表情を困らせて言う
「…シリウス国王の凍結を解く事は不可能だ これでは …手の施しようが無い」
ヘクターが息を飲む ヴィクトールがそれを見てバーネットへ向いて言う
「どうにかならないの!?バーネット!」
バーネットがヴィクトールへ視線を向けて言う
「んな事を言いやがっても こっちは… うっ!」
バーネットの周囲に大量のプログラムが発生する ヴィクトールが焦って言う
「バーネット!?」
バーネットが言う
「ヘクターッ 借りを作っちまった所済まねぇが こっちは今 一庶民の相手なんざ してやれねぇんだっ!異世界の王どもが 総攻撃を仕掛けてやがるっ!俺は こっちに専念させてもらうぜ!」
バーネットが玉座に体を静めて集中する ヴィクトールがバーネットへ声を掛けそうになるが言葉を飲んでヘクターへ向く ヴィクトールの視線の先 デス1stがヘクターへ向く ヘクターが抱えているデス2ndの顔を見詰めて言う
「ちくしょう…っ このままじゃっ」
デス1stが表情を困らせヘクターを見る ヘクターの通信機が鳴る デス1stが気付きヘクターを見るが ヘクターは無反応 デス1stが困りながらも言う
「ヘクター 通信を… 恐らく相手は」
ヘクターの通信機が勝手に着信して ヘクターの前にホログラムモニターが表示され レクターが苦笑顔で言う
『ヘクター、アバロンの王であるお前が 連絡も無しに勝手にローレシアから ベネテクトへ行って更にガルバディアまで出張しちまうのは しょっちゅう精神が飛んじまう私が言うのもなんだが 余り良くねーんじゃねーかと私は思う ついでに この大変な時に代理も置かずに 長期間国を空けちまうのも 良くはねーのだ そんな気が… うん?』
ヘクターが無反応で居る ホログラムモニターのレクターが疑問する デス1stが言う
「すまない、レクター王兄 ヘクターをベネテクトやガルバディアへ向かわせたのは私だ ついでに 長期間の離国を指摘しなかった事も ヘクターを補佐する私の不注意だった」
ホログラムモニターのレクターが不思議そうにデス1stへ向いて首を傾げてから ハッとして 真剣な表情で慌てて言う
『デス1st!気を付けろっ!』
デス1stが驚き呆気に取られて言う
「…えっ?」
ヘクターの周囲から音と光が消える
ヘクターが驚き周囲を見る 声が聞こえる
『お前の頼み 叶えてやろうか?』
ヘクターが弾かれたように顔を上げて言う
「俺の頼みっ!?デスを助けられるのか!?」
声が聞こえる
『新人類の身を生かすも殺すも 俺らにとっちゃ造作もない と言っても タダでやってやるつもりも無い やるからには こっちの頼みも聞いてもらうが?』
ヘクターが言う
「あんたは誰だ?ひょっとして 今バーネットや皆が戦ってる “異世界の王”とか言う連中か?」
声が聞こえる
『ああ そうかもな?だとしたらどうする?』
ガルバディア城 玉座の間
レクターとのホログラムモニターにオライオンが映り 慌てた様子で叫ぶ
『レクター!シュライツが!』
ホログラムモニターのオライオンとその前に居るデス1stが互いに驚き呆気に取られてから デス1stが気を取り直して言う
「オライオン?何かあったのか!?シュライツがどうした!?」
ホログラムモニターのオライオンが慌てて言う
『あ!?なんでっ親父の通信機に!?俺はレクターに通信してるのによっ!?』
デス1stが言う
「あいつの事だ 我々との通信状態にあった為 接続ミスでもやらかしたのだろう …それより 用件はなんだ?レクターへ頼む様な事なら 私の方が万全だ その様子では ただ事ではないのだろう?レクターの接続ミスは お前にとっては好都合だったな?」
デス1stが苦笑する オライオンが呆気に取られた後表情を困らせて言う
『いや… そうでもねーよ』
デス1stが衝撃を受け慌てて言う
「そ、それはどう言う意味だ!?オライオン!私は現在進行形でヘクターの役には立てていないが!?それは相手がシリウス国王や異世界の王…っ 遥か格上の彼らが相手であるからであり断じて私の力不足と言う訳ではないのであってっ!?」
ホログラムモニターのオライオンが通信機を操作してから表情を困らせて言う
『あれ?何だよ!?切る事も出来ねーって どうなってんだ!?』
デス1stが衝撃を受け慌てて言う
「切ろうとするなっ!そこまで私を信用出来ないのか!?」
ホログラムモニターのオライオンが改めて言う
『別にデスを信用してねー訳じゃねーよ ただ、今はレクターの力が必要なんだっ』
デス1stが疑問して言う
「レクターの力?」
ホログラムモニターのオライオンが悲しそうな表情で言う
『シュライツが… 俺を… 俺たちを裏切ったんだっ!』
デス1stが呆気に取られて言う
「な…っ?裏切っただと?どう言う事だ!?」
【 ソルベキア国 近郊 】
オライオンが地に両膝を着き脱力している 周囲にアバロン3番隊隊員たちが倒れている
【 ガルバディア城 玉座の間 】
デス1stが呆気に取られて目を瞬かせて言う
「オライオン… お前たちアバロン3番隊は ソルベキアのヴィクトール12世先々代アバロン王を 密かに警護する任務についていた筈 シュライツが裏切ったと言うのは…?」
デス1stの言葉の途中でヘクターが顔を上げる デス1stが気付いて言う
「ヘクター?」
ヘクターがデス2ndを抱き立ち上がる デス1stが言う
「ヘクター?どうした?どうするつもりだ!?」
ヘクターが顔を向けないままデス1stへ言う
「デス、俺は… こいつを助ける お前は… オライオンを助けてやってくれ」
デス1stが疑問して言う
「え?私がオライオンを?待て、ヘクター 一体どう言う意味だ?それに2ndを救うには ガルバディアの生態回復装置を使用しなければ 不可能なのだぞ!?」
ヘクターが苦笑して言う
「その装置はシリウス国王に止められちまってるんだろ?おまけに そいつを使う予約まで入っちまってるんじゃ …きっとまた 間に合わなくなっちまう」
デス1stが言う
「間に合わなく…?」
ヘクターが苦笑して言う
「ああ、あれは 夢の中の… そのまた夢の中だったのかもしれねーけど 機械が使えるまで待ってたら 間に合わなくなっちまうんだ だから」
ヘクターが正面を見据えて言う
「どんな手を使ってでも 必ず 助けてやる 絶対に失わねぇ!」
デス1stが疑問して言う
「ヘクター?」
デス1stがハッとすると ヘクターの周囲にプログラムが発生する デス1stが目を丸くすると同時にプログラムが実行されヘクターとデス2ndが消える デス1stが驚いて叫ぶ
「ヘクターーッ!!」
バーネットが悔しそうに目を開いて言う
「クソッ!やられた!何だったんだ 今のは!?リジルでもリゲルでもねぇ あの2人以外にも この第二プラントを狙ってやがる奴が 居やがるって言うのか!?」
ヴィクトールがデス1stを見た後バーネットを見て言う
「バーネット ヘクターが…」
バーネットが言う
「今の移動プログラムは デスや俺のもんじゃねぇ 俺らの知る他の奴らのでも… あの識別コードは 俺たちの知らねぇ奴のモンだった おまけに 後一歩踏み込んで調べてたら 危うく 俺まで 強烈な反撃プログラムを食らっちまう所だった」
バーネットがデス1stへ向いて言う
「ハッ!流石、ガルバディア国王を演じた事までありやがる 第二王子殿は 端っから 危険なプログラムには触れやがらなかったんだなぁ?はっはー!」
デス1stが言う
「うご… けなかった…」
バーネットとヴィクトールが疑問して バーネットが言う
「あぁ…?」
ホログラムモニターにレクターが映って言う
『デス1st、ヘクター 無事か?ヘクター?…行っちまったのか』
デス1stが呆然と立ち尽す
【 ? 】
ヘクターの周囲の移動プログラムが消える ヘクターがそれを見てから視線を上げる 声が聞こえる
「よう?素直に従ってくれるとは思わなかったぜ?罠か何かだとは思わなかったのか?」
ヘクターが声の相手へ顔を向けて言う
「俺の相棒を助けてくれるんだろ?だったら何でもやる だから頼む」
相手がヘクターを見下ろし笑みを深める
【 旧世界 ガルバディア城 機械室 】
シリウスAが振り返り微笑して言う
「うむ、やはり我の思った通り お前には長い髪が良く似合うのじゃ 美しいのぉ B?」
シリウスBがムッとして言う
「生憎、私は美しい等と言われて 喜ぶ男では無い 故に 何度言われようと 髪は伸ばさんと言った筈だ」
シリウスBがぷいっと顔を背けると共に 長い髪がバッサリと切り落とされる シリウスAが衝撃を受けて叫ぶ
「あーーっ!」
シリウスAが座り込み切り落とされた髪に触れながら シリウスBを見上げ怒って言う
「何をするのじゃ!B!折角我が 手塩に掛けて作り上げた 最高傑作の美しい髪を~~っ!」
シリウスBが顔を背けたまま怒って言う
「ふんっ!」
玉座の間
シリウスBとシリウスAが玉座の間へ歩いて来ながら シリウスBが言う
「そもそも私は 義体と言うモノ自体が気に入らん プログラムの能力も落ちると言うのに 大体、作り物の体に 何の価値があると言う?」
シリウスAが言う
「確かに プログラムの能力は落ちるが 義体であれば どの様な致命傷を受けようとも 本体はまったく傷付かぬのじゃぞ?まぁ 多少死に掛けるがのぉ?何より 時代のニーズに合わせて 民に愛される 最も美しい姿に変える事が出来るのじゃ これほど良いモノはあらぬじゃろう?」
シリウスBがシリウスAへ向いて言う
「本体が傷付かずとも その間に本体を盗まれた奴が 良く言う… おまけに 民の前に姿を現す事の無い私には まったく意味のない話だ」
シリウスAが呆気に取られた後微笑して言う
「あれは、盗まれたのではなく 守られたの間違いだったのじゃ それに いずれはお前も 民たちの前に悠々と姿を表す事が出来る様になるのじゃぞ?今から義体に慣れて置くと良いのじゃ」
シリウスAが笑顔になる シリウスBが怒って言う
「俺は例え民の前に出る事になろうとも 作り物の姿で現れるなどと 姑息な真似をするつもりはないっ!」
玉座に座っているルシフェルが汗だくの状態で顔を向けて言う
「父上… 申し訳ありません 父上から世界を守るプログラムを任されたと言うのに…っ 俺の力不足で…」
シリウスBがルシフェルへ向き 苦笑して言う
「いや、お前は良くやってくれた シリウスが来るまでの時を 稼ぐ事が出来たのだからな」
ルシフェルがシリウスBの言葉に俯く シリウスAが悪微笑して言う
「とは言え 出来る事なら Bの本体を回復させるまでの時を稼げたのなら もっと被害は少なくて済むのじゃがのぉ?」
ルシフェルがシリウスAに怒りの視線を向ける シリウスBがシリウスAに向いて言う
「言ってくれるなシリウス ルシフェルは成長促進プログラムを使用し 急きょ用意した者なのだ 世界を守る既存のプログラムを渡したとは言え それを進化させ リジルやリゲルの攻撃を防ぎ切る事等 不可能だ」
シリウスAが微笑して言う
「成長促進プログラムを使用しようが こやつはお前の息子じゃろう?お前の力の半分程度は持っておらねば 話にならぬ それとも ガルバディアの王ともあるお前が 自分の分身に近い子孫を作り上げる程度の事に 失敗でもしおったのか?B?」
ルシフェルが怒って言う
「黙れっ!俺を貶すのは構わないが 父上を侮辱するな!お前こそ!この城のそもそもの持ち主の癖に!遠隔プログラムで 父上のお体を回復させる事が出来ずに 義体になんか入れやがって!父上はお前と違って 機械の体なんか好まれねぇんだよ!」
シリウスAが悪笑んで言う
「機械の体とは 無礼な小僧じゃ ミクロシステム細胞で作り上げた この義体は生体を越える 完璧な生命体なのじゃぞ?…もっとも 義体同士ではもちろん 新たな生命は 宿せぬがのぉ?」
ルシフェルが怒って言う
「そんなモンは アンドロイドと同じだっ」
シリウスAがムッとして言う
「我の義体を アンドロイドごときと一緒にするとは どこまでも無礼な奴なのじゃ 我が躾直してやるのじゃ!」
シリウスBが言う
「止めろ お前たち 今はそんな事を言い争っている暇は無い …ルシフェル、この地に残っているシリウスの民は 今城に居る者で全てか?」
ルシフェルが言う
「…はい、父上 今 メテーリが ラーニャとラインツを呼びに行ってます」
シリウスAが疑問して言う
「何?ラインツじゃと?」
ルシフェルがシリウスAを睨み付ける シリウスBが少し驚いた様子でシリウスAを見た後 別の方向を向いて言う
「奴がどうやってこちらへやって来たのか その件も 後ほど確認しよう」
シリウスBの視線の先 メテーリが走って来て振り返って言う
「ラーニャ!急いで!」
ラーニャが走って来て 振り返って呼ぶ
「ラインツ様!」
ラインツがゆっくり現れ ラーニャを見た後 視線を別へ向ける ラインツの視線の先 シリウスAが驚いて言う
「ラインツ…っ」
ラーニャがラインツの手を取りに戻り 手を引いて言う
「ラインツ様!ほらっ!急いで!」
ラインツがラーニャを見る ラーニャがラインツの手を引いて走る ラインツがつられて走る 引かれていない手に 大剣を握っている シリウスAが目を細める
皆が玉座の周囲に集まる 皆の周りに移動プログラムが発生するが シリウスBが表情を顰めて言う
「…くっ 駄目だ やはり義体では 位置設定プログラムの構築が…」
シリウスAが言う
「そこはロジックを簡略化するのじゃ 義体のプログラム能力は本体の46.83% 正確さを求めるより情報量による修正を施すのじゃ まぁ 今回は時間もあらぬ事じゃし 我が行おうかのぉ?」
シリウスAが一瞬本気を出す 瞬時に周囲の移動プログラムが変化して 皆が消える その場所にリゲルとリジルが現れ リゲルが言う
「なにっ!?馬鹿な 今 この瞬間まで シリウスがこの場所に居た筈だ!」
リジルが周囲を見てから言う
「プログラムによる幻影 フェイクであったのか… それとも?」
リゲルが振り向いて言う
「移動プログラムを行ったのなら 俺が転送した 追尾プログラムを紛れ込ませた筈 だが、」
リゲルの手の上に小さな光りが落ちて来る リジルが見て言う
「どんな高性能な探査システムを使用しても見出せない 追尾プログラムの存在に気付き 回避した」
リゲルが怒って言う
「不可能だ!この追尾プログラムを見出すなど それこそ 我らがアウグスタ程の力が無ければ 叶わん!」
リジルが振り返って言う
「…我らが敵とするシリウスは よもや そのアウグスタを凌ぐ程の存在なのかも知れん」
リゲルが驚き視線を泳がせる
【 新世界 ガルバディア城 玉座の間 】
シリウスAたちが転送されて来る シリウスAが微笑して言う
「うむ、間に合ったのぉ」
シリウスBが微笑して言う
「流石は ロストヒューマンの神 アウグスタに次ぐと言われたほどのプログラマー 一瞬にしてあれだけのプログラムを構築するとは」
シリウスAがシリウスBへ向いて言う
「今回は特別じゃ お前が使用しておったモノを使い回した故に 間に合ったのじゃ やはり 我らは最高のパートナーじゃのぉ B?」
シリウスBが衝撃を受け 怒りを抑えて言う
「そう思うのなら… いい加減私をBと呼ぶのは止めろ!」
シリウスAが苦笑して言う
「とは言え B、あの範囲設定は随分と細かかったのぉ?我はどんなに暇な時でも たかが移動プログラムに あれほど細かく転送メンバーの詳細を設定する事などはあらぬのじゃ あれではまるで 生体情報の算出でも行うかの様じゃ」
シリウスBがバツの悪そうな様子で視線を逸らして言う
「まぁ…なんと言うか だなぁ… たかが移動プログラムであっても ある程度細かくしなければ… 例えばアバロンの大猫… いや、大男を転送するつもりが 間違って ローレシアの女魔法使いを 転送させてしまう様な事でもあっては 困るだろう?」
シリウスAが疑問して首を傾げる メテーリがシリウスBを見る シリウスAが気を切り替えて言う
「所で、我の相棒を務めた事もあるラインツが 何故 我の知らぬ間に あちらの土地に居ったのか… を、確認しようと思ったのじゃが その前に」
シリウスAが玉座の方を見て言う
「何よりも何処よりも重要な このガルバディアの玉座を任せた あのバーネット2ndの奴は 何処へ行きおったのじゃ?ひっ捕らえて 厳重に仕置きをしてやるのじゃ」
皆が玉座の方を見る 空の玉座がある
【 アバロン城 玉座の間 】
バーネットが腕組みをして振り返って言う
「そのてめぇに良く似た大剣使いの奴が シュライツと手を組んで たった二人で傭兵隊を壊滅させやがったって言いやがるのか?」
オライオンが傷心の表情で言う
「ああ…傭兵隊は あいつらが2人で… けど、俺は…」
回想
オライオンが通信を切って振り返って言う
『皆!今色んな所で ガルバディアのプログラマーが頑張ってるらしい!って事は あのソルベキアに居る ヴィクトール12世様の相棒 バーネット1世様も頑張ってる筈だ なら!俺たちに出来る事は ここで その二人を守る事だぜ!』
傭兵隊の皆が声を合わせて言う
『おー!』
皆が笑んでいる オライオンが軽く笑う
『へへ…っ』
シュライツが楽しそうに笑顔で皆の様子をまねていた状態から ふと気付いて振り返る オライオンがその様子に気付いて言う
『うん?どうした?シュライツ?』
シュライツが奇声を上げる
『キュピポプー ピュロピポ!』
オライオンが疑問して言う
『あぁ?』
シュライツが嬉しそうに奇声を上げて飛んで行く
『ピュロピポー!』
オライオンが驚いて言う
『あ!?おいっ!シュライツ!?』
オライオンが追いかけて向かう
オライオンがハッと立ち止まる オライオンが追って向かおうとしていた先から シュライツと共にウィルシュがやって来て言う
『ふーん…?あいつか?ペリーテ?』
シュライツがヴィルシュの横で嬉しそうに奇声を上げる
『ピュピポプ!』
ウィルシュが不満そうな表情をする オライオンが疑問して言う
『お前は?シュライツ そいつは誰だ?何で お前がそんなに…?』
ウィルシュが両手を腰に置いて言う
『いや!似てねーぜ!あいつより 俺の方が 100倍カッコイイ!』
オライオンが衝撃を受け慌てて言う
『おいっ!何の話か分かんねーが お前ムカつくぜ!おい!シュライツ!こっちに来い!』
シュライツが嬉しそうに奇声を上げる
『ピュロピポー!』
ウィルシュとオライオンが声を合わせて叫ぶ
『『似てねぇえーっ!』』
ヴィルシュが気を取り直して笑んで言う
『まぁいいや これでやっと俺の相棒を取り戻せた リジル様からの指令を実行する時って奴だぜ』
オライオンが疑問して言う
『あ?お前の相棒って?…シュライツは俺の相棒だぜ!?おい!シュライツ!いつまでもそいつの傍にいねーで 早くこっちに戻って来いって!』
ウィルシュが苦笑して言う
『なんだよ まだ分からねーのか?こいつは シュライツなんて 名前じゃねー 俺の相棒 ペリーテだ』
オライオンが呆気に取られる シュライツが首を傾げて言う
『ポピ?ピュロピポ?』
ウィルシュが言う
『似てねーよ シュライツとペリーテじゃ 一文字もあってねーだろ?』
シュライツがウィルシュに言う
『ポピポプー』
ウィルシュがオライオンに向き直って言う
『さて、』
オライオンが視線を向ける ウィルシュが手を振りかざすと巨大剣が現れる オライオンが驚いて言う
『な、なんだ!?あのデカイ剣は!?』
ウィルシュが巨大剣を手に取り軽く振りかざして構える オライオンが呆気に取られる ウィルシュがオライオンを見て言う
『アバロン3番隊… この第二プラントで有力な部隊の一つだな 早速 排除させてもらうぜ』
オライオンが驚いて言う
『え!?』
シュライツがウィルシュへ向いて言う
『プポピ!ピポピポピ!』
ウィルシュがシュライツへ視線を向けてからオライオンを見て言う
『ふーん?お前 結構強いのか?ペリーテが世話になったみたいだしな!それじゃ お前だけ 俺と一対一でやろうじゃねーか?他の連中は 後でチャッチャと片付ける』
オライオンが呆気に取られてシュライツを見る シュライツが楽しそうにオライオンへ言う
『ピポピピ!ピッ!』
オライオンがシュライツを見てからウィルシュを見て 気を引き締め大剣を抜いて言う
『なんだか分からねーが 一騎打ちで戦うって言うなら 容赦はしねーぞ!』
オライオンが大剣を構えて言う
『俺は アバロン3番隊隊長 オライオン!』
ウィルシュが一瞬呆気に取られてからニッと笑んで言う
『俺は ログウェルン ファーストクラスター ウィルシュ』
オライオンとウィルシュが構える シュライツがウィルシュから離れ嬉しそうに言う
『ピュロピポー!』
回想終了
オライオンが俯く バーネットが言う
「で、そのウィルシュとか言う デカイ剣を使う野郎に てめぇは負けちまいやがったって訳かぁ」
オライオンが言う
「ああ… 面目ねぇ… けど、あんなデカイ剣を軽々と振り回して 俺の大剣じゃ太刀打ち出来なかった… ちくしょぉ…」
バーネットが苦笑して言う
「ハッ!大剣を越える大剣が相手だってぇのに 力任せに戦いやがったんだろぉ?ったく… だから 大剣使いの躾には 俺らベネテクトのレイピアが有効だってぇんだ きっと 相手をするのが てめぇじゃなく 俺の馬鹿猫だったなら その野郎には負けなかっただろうぜ?」
バーネットが視線を向ける オライオンがバーネットの視線の先へ同じく視線を向ける 2人の視線の先 ヴィクトールがデス1stへ向いている デス1stの周囲に現れているいくつものプログラムがエラーを起こし デス1stが膝を折って両手を地に付いて言う
「はぁ…はぁ… 駄目だ あの瞬間 ヘクターを転送させた移動プログラムは やはり確認出来ない… ガルバディア城で実行されたと言うのに プログラム履歴にも使用コードが記録されていない… これでは 使用者はもちろん転送先も 何一つ…」
ヴィクトールが屈んでデス1stへ心配そうに言う
「デス、余り無理をしては駄目だよ ヘクターは言ってたじゃない?デスを必ず助けるって それに、君には オライオンを頼むって」
デス1stがヴィクトールへ視線を向け 次に逸らして言う
「しかしっ プログラムを扱う何者かが2ndを餌に ヘクターをっ!ヘクターはアバロンの単細胞だ プログラムを使うズル賢い者に コロッと騙されてしまったのかもしれない!だとしたら 意識の無い2ndではなく 私がっ!私がヘクターを助けなければ!」
ヴィクトールが言う
「でも、ヘクターが選んだ事だよ?だから きっと… 大丈夫だよ!デス!僕、何となくそんな気がするよ!」
ヴィクトールが笑顔になる デス1stが衝撃を受け怒って言う
「アバロンの力が最も低い 歴代の出来損ないアバロンの民に言われても まったく安心は出来ないっ!」
ヴィクトールが衝撃を受けて叫ぶ
「あー!酷いよデスーっ!僕らは確かに出来損ないアバロンの民ヴィクトールだけどっ!アバロンの力はちゃんとあるものっ!まったく無い訳じゃないんだよーっ!?」
ヴィクトールが泣く そのヴィクトールの頭を押さえ付けてバーネットが現れて言う
「確かに この歴代ヴィクトールのアバロンの力は軟弱だが てめぇの相棒 ヘクターの力は上等なもんだろぉ?そのヘクターが選んだ方法だってぇなら てめぇは相棒として 信じるべきなんじゃねぇのかぁ?違うかぁ?」
デス1stが表情を困らせ言う
「それは…」
ヴィクトールが苦笑して言う
「デス、ヘクターを信じようよ?ね?」
デス1stが悔やみつつ言う
「…ああ、分かった 私は ヘクターを …信じる」
ヴィクトールとバーネットが微笑して顔を見合わせる
アバロン城 通路
ヴィクトールとバーネットが歩いている ヴィクトールが微笑して言う
「デスにまで僕のアバロンの力を否定されちゃって ちょっとショックだったけど… でも ヘクターを信じてくれるって事で 良かったね!バーネット!」
バーネットが言う
「ああ、このやべぇ時に デス1stまで使い物にならなくなっちまったら この世界の力が激減しちまう アバロン傭兵隊がぶっ潰されちまった今 オライオンとデス1stの2人は 何とか使えるようにしてやらねぇとな」
ヴィクトールが表情を困らせて言う
「傭兵隊の皆は 辛うじて命を取り留めたらしいけど 皆かなりの重傷で 部隊に復帰するのは時間が掛かるだろうって 命が助かったのは良かったけど… アバロン最強部隊が壊滅させられたって言うのは 皆もショックだろうね 彼らを攻撃した ログウェルン ファーストクラスター ウィルシュ って者は… 何者なんだろう?もしかして 彼が異世界の王?」
バーネットが言う
「いや、そいつが言ってやがっただろぉ?『リジル様の指令を実行する時』ってよぉ?」
ヴィクトールが言う
「そう言えば… そのリジル様と言うのは?」
バーネットが言う
「ああ、そいつこそ シリウス国王が敵として認識してやがる 異世界の王の1人だぁ でもって、そのリジルの指示で動いてやがる ウィルシュってぇ奴は…」
ヴィクトールが言う
「彼はリジルの兵」
バーネットが言う
「だろうなぁ?」
ヴィクトールが言う
「なら そのリジルの兵である ウィルシュの相棒だって言われた シュライツは?彼は レクターの息子だったのでは?」
バーネットが立ち止まり言う
「ああ… その件なんだがぁ…」
ヴィクトールが立ち止まり バーネットを見て疑問する レクターがやって来て言う
「バーネット第二国王 私の息子シュライツが 迷惑を掛けちまって申し訳ねー 傭兵隊の皆にも 今謝って来た けど…」
レクターが苦笑笑顔で言う
「皆話も出来ねぇほどに重傷の上 麻酔で爆睡中だったから 多分私の謝罪の声は聞こえてなかった!そんな気がする!」
バーネットが怒って言う
「そーいうのは 謝って来たとは言わねーんだよ!この間抜け大剣使いがぁああ!」
レクターが照れる ヴィクトールが言う
「レクター やっぱりシュライツは君の息子で間違いないのだよね?それなら どうして…?」
レクターが困って言う
「ああ、それは…」
バーネットが周囲にプログラムを現して言う
「俺の確認した限り てめぇの子供は ヘクターの家族から得た 養女のニーナだけだ いつの間にやら現れやがった シュライツは 一体何処でどうやって得て来やがったぁ?そもそも ガルバディアの遺伝子を組み込まれたてめぇじゃ 子孫を作りやがる事は出来ねぇ 何処かの誰かから得やがったんなら アバロンへ申請しなけりゃななかった …だと言うのにてめぇは…」
レクターが表情を困らせて言う
「ああ、まったくその通りなんだが 実は シュライツは… ある日たまたま アバロンの城下町で見つけた 正体不明のプログラマーだったんだ!」
バーネットが衝撃を受けて言う
「なぁあ!?」
レクターが言う
「プログラムのやり方や プログラム言語の違いから 多分異世界の奴だと思ったんだが 1人で言葉も分からず困ってたから 声を掛けて保護をして ついでに ヘクターに負けない様に 私の息子にしちまった!」
バーネットが怒って叫ぶ
「どー言う事だ てめぇええ!!何で んな怪しくって危ねぇえ奴を匿って 今まで黙ってやがったんだぁああ!?」
レクターが笑顔で言う
「ああ!もし アバロンやガルバディアへ教えちまったら シュライツはガルバディアにとっ捕まっちまって 私も シリウス国王に 大喜びで仕置きをされちまうと思って 黙ってた!」
バーネットが怒りを押し殺す ヴィクトールが呆気に取られて目を瞬かせる
玉座の間
デス1stがオライオンの前に来て周囲にプログラムを発生させて言う
「傭兵隊は壊滅させられたとは言え お前が回復プログラムで復帰出来る程度であったのは 不幸中の幸いだった」
オライオンが顔を上げデス1stを見て言う
「けど、俺は相棒を失っちまって… デスも親父が居ねーんじゃ…」
デス1stが言う
「確かに お前の相棒であったシュライツは お前から離れ そして私も… だが 我々は 立ち止まっている訳には行かない」
オライオンが反応する デス1stが苦笑して言う
「バーネットに 渇を入れられたからな ヘクターの事は気になる しかし、直接あいつをサポートする事は出来ずとも 今の私に唯一出来る事は あいつが戻って来た時 戻るべき国を民を そして お前を守る事だ」
オライオンが呆気に取られる デス1stが微笑して言う
「ヘクターに お前を頼むと言われた 私はこれより お前の相棒として 戦う」
オライオンの周囲にプログラムが纏い オライオンが自分の体に得た力に驚く
【 ソルベキア城 玉座の間 】
バーネット1世が言う
「ああ、分かってやがるぜぇ… 奴らがてめぇを狙うんだったら 先ずはその周囲からぶっ潰しに掛かる筈だぁ 奴らはこっちの情報を既にいくつか得てやがるんだろぉ?オライオン率いる アバロン3番隊の存在を知ってやがった訳だからなぁ?そうとなれば てめぇの子孫である この俺の事だって 遅かれ早かれ いずれはバレっちまう」
バーネット1世の前にある シリウスAのホログラムが言う
『いずれは ではあらぬ お前の事は 既にバレておるじゃろう その上でアバロン3番隊を壊滅させおった ウィルシュという名の剣士は デス・プロイテの息子とされておった あのシュライツの仲間… 元よりの相棒であったと言う事じゃ ならば こちらの情報は シュライツより全てが 伝わっておるじゃろう』
バーネット1世が不満そうに言う
「ハッ!あの出来損ないガルバディアの民レクターに 三等級プロイテの位を与えやがったのかぁ?俺としては 気に入らねぇ… おまけに 当人だって喜ばねぇだろうぜぇ?」
シリウスAのホログラムがほくそ笑んで言う
『奴が気に入ろうが気に入らのうが関係あらぬ 奴はプロイテの値に相応しいのじゃ』
バーネット1世が怒って言う
「何処が相応しいってぇえんだぁあ!?奴がシュライツを匿ってやがったお陰で この世界の情報がリークしちまってるんだろうがぁあ!?」
シリウスAが微笑して言う
『それが こちらにとっても 好都合であったとしたら どうじゃ?』
バーネット1世が呆気に取られて言う
「なぁっ…!?」
シリウスAが悪微笑して言う
『お前さえ 微塵もそうは思わぬじゃろう?じゃが、これは事実じゃ もし、デス・プロイテが これを計算の上で行ったのであれば 奴の位は プロイテ所かグローテさえも優に超えよるのぉ』
バーネット1世が言葉を失う シリウスAが苦笑して言う
『とは言え 流石に あの出来損ないプログラマーに そこまでの計算は出来ぬじゃろう 恐らく 奴に残されておるアバロンの力が 悪戯をしおった 今の所は そう考えておる』
バーネット1世が少し真剣に言う
「事はこの世界の 存亡に関わる事でありやがったんだぜぇ?んな軽視していて良いのかよ?」
シリウスAが微笑して言う
『お前こそ このシリウスの子孫であるなら リジルやリゲルの手先が多少入り込んだ程度の事で 怯えるではない 我は… そんな情けないお前の 猫が可愛そうじゃ』
バーネット1世が衝撃を受け 慌てて言う
「てめぇこそ 情けねぇ俺の哀れみを 俺の猫になんざ掛けやがってねぇで もっと 視野を広げやがれ!」
シリウスAが笑顔で言う
『うむ、そうじゃな!我もそろそろ 我の猫と遊びとうなった お前の相手は終わりじゃ 敵は遅かれ早かれ お前の命を狙って現れるじゃろう 精々用心しておれ まぁ どうしても自分の身も守れぬと申すのであれば 助けを請うて来るが良いのじゃ?丸3日の仕置きと引き換えに 我自らがお前を助けてやろうぞ?』
バーネット1世が衝撃を受け慌てて言う
「じょ、冗談じゃねぇえ!丸3日もてめぇに 仕置きなんざされやがるんなら 俺は奴らにぶっ殺される事を選ぶぜぇ!」
シリウスAがにやりと笑んで言う
『そうか?残念じゃ 暇が出来たら お前が喜んで我へ助けを求めて来てくれるよう 躾直してやろうかのぉ?』
シリウスAが笑む バーネット1世が怒って叫ぶ
「んな 躾なんざ 食らいやがって たまるかぁああ!」
バーネット1世が怒って手を振り払うと シリウスAのホログラムが消える バーネット1世が溜息を吐いて玉座へ凭れ掛かって言う
「ったく… あの変態国王がぁ 300年経ってもちっとも変わらねぇ…」
バーネット1世が気を取り直して言う
「…っと その変態国王に助けを請わねぇ為にも 万全に万全をきしておかねぇとな… おいっ!バッツスクロイツ!」
バーネット1世が声を上げ 返答を待つ 城内はしんと静まる バーネット1世が疑問して言う
「あん?…おいっ!聞こえねぇえのかぁあ!?バッツスクロイツ!おいっ!鈍臭ぇバッツスクロイツがぁあ!」
再びしんと静まる バーネット1世が呆気に取られ首を傾げて周囲を見てから言う
「…あぁ?そう言やぁ ヴィクトールの奴も何処行きやがったぁ?ヴィクトール!おいっ!ヴィクトール!」
三度しんと静まる バーネット1世が驚き叫ぶ
「ヴィクトール!?ヴィクトーール!!」
バーネット1世が戸惑う 一瞬の間の後 足音が近づいて来て ヴィクトール12世が現れて微笑して言う
「すまない バーネット 通信機の充電が切れてしまってな 急いで戻ったのだが 私に何か急用だろうか?」
バーネット1世が呆気に取られた後 はっとして視線を逸らして言う
「んあ!?あ、ああ… えっと… いや、別に てめぇに用があるってぇ訳じゃ ねぇんだが…」
ヴィクトール12世がバーネット1世の横に来て微笑む バーネット1世がバツの悪そうに顔を背けている ヴィクトール12世が言う
「そうか では、私の方から連絡をしよう ソルベキアに留まらせていた ガルバディアの騎士たちの下に 先ほどシュレイザーを守っていた 騎士たちが合流したよ これで 君を守るガルバディアの騎士は 99人 私も含めれば100人の戦士が君を守るのだ これなら安心だろう?バーネット?」
バーネット1世が呆気に取られた後 視線を逸らして言う
「べ、別に 俺様は何も 心配なんざ…っ!…うん?99人?」
バーネット1世がヴィクトール12世へ向き直って言う
「ガルバディアの騎士が 全部で99人ってぇのはどう言う事だぁ?ソルベキアに在住させてやがった50人に シュレイザーからの50人を合わせて 丁度100人だろうがぁ?」
ヴィクトール12世が苦笑して言う
「うむ、私もそのつもりで居たのだが シュレイザーからやって来た彼らを見て ふと気になって数えた所49人しか居なかったのだよ 予定外であった為 3度ほど数え直しておったもので 少々時間が掛かってしまったのだが やはり新たに加わった騎士は 49人で間違い無い様なのだ それから…」
バーネット1世が首を傾げた状態で疑問して言う
「あん?まだ何かありやがるのかぁ?」
ヴィクトール12世が言う
「ああ、その騎士の不足を確認しようと バッツスクロイツの下へ行ってみたのだが 部屋に居らなくてな?代わりに こんな物が残されていたよ」
ヴィクトール12世が言ってバーネット1世へ手紙を渡す バーネット1世が受け取って広げる
『バーネっちパパ!プリーズヘルプミー!まぢ助けてぇえー!俺っち シリウス様ーに 拉致られちゃいましたーって感じー!?早く助けてくれないとー!きっと 人には言えない あーんな事や 超あーんな事ーされちゃってー!?俺っちお婿に 行けなくなっちゃ…っ!』
バーネット1世が途中で手紙を丸める ヴィクトール12世が首を傾げて言う
「今までに見た事も無い言語なのだが 流石の君でも読めなかっただろうか?バーネット?」
バーネット1世が言う
「いや、読めたぜ バッツスクロイツの奴は… しばらくヴァ~カンスに行って来るから 探さないでくれってよ!?まぁ… もしかしたら… 二度と会えねぇかもしれねぇな?」
ヴィクトール12世が驚いて言う
「二度と!?そうか… それは残念だ 彼は君にとって大分お気に入りの玩具であった様だから… 私は 君が悲しむ姿を見たくないのだよ バーネット」
バーネット1世が 清々しい顔で言う
「いや、良いんだぜ!…確かにちょいと寂しくなっちまうが 俺も大人らしく あいつの幸せを ガルバディアから遠く離れた この安全なソルベキアの地で 願ってやるんだ!」
ヴィクトール12世が疑問して言う
「うん?そうなのか?君がそう言うのなら構わないが…」
ヴィクトール12世が笑顔で言う
「ガルバディアから離れた このソルベキアからと言うと まるでバッツスクロイツは 今 ガルバディアに居るかのようだね?バーネット?」
バーネット1世が衝撃を受けた後 笑って言う
「そ、そうかぁ?まぁ… もしかしやがったら 居るかも知れねぇが まぁ 良いじゃねぇか?なぁ?は… はは… ははははっはー!」
ヴィクトール12世が疑問した後 笑顔で言う
「そうか、うん 君がそういうのなら きっと良いのだろう」
2人が笑う
【 ガルバディア城 機械室 】
バッツスクロイツがアンドロイドのデスの機械鎧に触れる シリウスAがゆっくり振り向いて言う
「鎧ではなく 本人に触れてやってはどうじゃ?あやつも 数百年振りに外気に触れ その感触に懐かしんでおった そこへ最愛のお前に触れてもらえれば もっと喜ぶじゃろう 数百年ぶりの人肌であるとのぉ?」
バッツスクロイツが衝撃を受け 慌てて言う
「う!?そっ!?その…っ お、俺っちはー そのぉー?デスはガルバディアの騎士ーであっても?やっぱり 俺っちにとっては アンドロイドだーって言う そー言う思いーみたいのが?あったりなんかしちゃったりなんかしてー!?い、いや、別にー?それは?デスの事を人として認めないーって訳じゃ 無いーって感じで?俺っちとしてはー そ、そのぉ…」
バッツスクロイツが視線を落として困る シリウスAが微笑して言う
「ふむ、分かっておるわ 我は神とまで言われた者じゃ お前の気持ちなど お前以上に分かっておる お前はあのデス・シュローゼを ただのアンドロイドではなく 特別な存在として見ておるのじゃ 故に 我の作った 399体のガルバディアの騎士たちと同じ身であると想像される あやつの姿を見たくあらぬのじゃろう?」
バッツスクロイツが呆気に取られた後 苦笑して言う
「う…うん… そう…かも…?」
シリウスAが首を傾げた後苦笑して言う
「ついでに言っておくが あやつは確かに数百年前に作られおった者じゃが その肉体は 機械鎧の中で時を止めておったのじゃ 間違っても… 腐敗したゾンビの様な姿などはしておらぬからのぉ?」
バッツスクロイツが衝撃を受けた後喜んで言う
「マジでーっ!?超良かったー!実は俺っちそれ ベリー心配してたんだわー そっかー 時間止められてたんだー!?けど、意識はそのままに身体の時間を止めて?数百年ーとかー?マジありえないシステムなんですけど!?さーすが この世界の神様!?シリウスっちー だーよねー!?」
シリウスAが呆気に取られた後微笑する 一瞬のブラックアウト バッツスクロイツの悲鳴が響く
「ノォーーっ!」
バッツスクロイツが雷鳴の鞭で縛られ シリウスAに踏まれている シリウスAが言う
「今 我の事を何と呼びおったかのぉ?バッツスクロイツ?まさか この我を…」
バッツスクロイツが慌てて言う
「言ってません!言ってませーんー!超マックス美しい シリウス様ーって 呼びましたー!」
シリウスAが笑顔で言う
「そうか 世界最美のシリウス様か それなら良いのじゃ 良く分かっておるのぉ バッツスクロイツ?」
ヴィクトール11世が慌てて言う
「あー!駄目だよシリウス!シリウスが縛って踏みつけて良いのは 僕だけだよぉーー シリウスーー!」
シリウスAが鞭をしまいながら言う
「我が侭を言うではない ヴィクトール 今はこの世界を守る特別な時 故に我は 嫌でもお前以外を こうして躾けてやらねばならぬのじゃ お前は我の猫として こんな時ばかりは 少々我慢をするのじゃ 良いな?」
ヴィクトール11世が不満顔で涙をすすって言う
「うぅ… 分かった… 僕、我慢するよ シリウス…」
シリウスAが微笑して言う
「うむ、良い子じゃ ヴィクトール 流石は我の猫なのじゃ!」
シリウスAがヴィクトール11世の頭を撫でる ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!」
シリウスAの足元でバッツスクロイツが泣きながら叫ぶ
「こんな時ーだからこそ そこんとこ我慢してくれないでくれて 良いですからーって 感じーっ!?」
バッツスクロイツたちの後方 扉の奥 装置の中にアンドロイドのデスが寝かされていて 視線を向けて瞬きをしている
デス1stがハッとして言う
「このプログラムは…?旧世界への移動プログラムか!?まずいっ!」
デス1stが思わず身を逸らしてガルバディアへの接続を切る 一度息を吐いてから顔を横に向け 慌てて言う
「2nd!そのプログラムには干渉するな!シリウス国王の反撃プログラムが!」
皆が驚き デス2ndへ向く デス2ndが自分への忠告に顔を向けるのと同時に 激しい雷撃に感電して叫ぶ
「うあぁあああっ!」
デス1stが叫ぶ
「2nd!」
デス2ndが目を開いたまま倒れる ヘクターが突然の出来事に顔を向けて驚いた状態から慌てて駆け向かって言う
「デスっ!?」
ヘクターがデス2ndへ手を向ける デス1stがあわてて言う
「触れるなっ ヘクター!」
ヘクターがデス2ndへ向けていた手を止めて デス1stへ向く デス1stが言う
「今 触れては その帯電を お前が受け取ってしまうっ」
ヘクターがデス2ndを見る デス2ndは感電して息が出来ずヘクターへ視線を向ける ヘクターが言う
「なら!俺が受け取って デスを助けてやる!」
デス1stが慌てて言う
「そんな事をしては お前がっ!?」
ヘクターがデス2ndの肩を掴む デス2ndの帯電がヘクターへ流れ込み ヘクターが叫ぶ
「ああぁあっ!」
デス1stが慌ててやって来て言う
「ヘクターっ!」
ヘクターが歯を食いしばって耐え抜いてからデス2ndの顔を見て言う
「デス!しっかりしろよ!?デス!」
デス1stが呆気に取られて言う
「シ… シリウス国王の雷撃を… 緩和させた…っ!?」
ヘクターが呼ぶ
「デス!」
デス1stがハッとしてデス2ndの横へ膝を着き周囲にプログラムを発生させる デス2ndが苦しがっている状態から意識を失う ヘクターがデス1stへ向いて言う
「デスっ!?どうなんだっ!?」
デス1stがヘクターへ向いて言う
「2ndの意識にプロテクトを掛けた …だが これだけでは そう長くは持たない この体の生命機能が完全停止した時点で 2ndの意識も消滅してしまう」
ヘクターが言う
「なら どうしたら良いっ!?どうしたらっ!?…そうだ!回復魔法を!?」
ヘクターが振り返る 玉座に居るキルビーグへ皆の視線が向かう デス1stがヘクターへ向いて言う
「いや、深層細胞が破壊されているこの状態では 回復魔法では助からない 2ndの体を細胞組織から再構成させる装置が必要だ …だが、それはガルバディアにしかない」
ヘクターがデス2ndの体を抱き上げて言う
「なら急いでガルバディアへ行くぞ!デス!ガルバディアへ移動プログラムだ!」
デス1stがヘクターの顔を見上げて言う
「だが シリウス国王が旧世界へ向かってしまった今 ガルバディアの城門は封印されている」
ヘクターが一瞬驚いた後 気を取り直して言う
「だとしても!こっちのデスを助けるには ガルバディア城に入るしかねーんだろ!?だったら 急いでガルバディアへ行くんだ!デス!早く移動プログラムをやってくれ!」
デス1stが表情を困らせて言う
「しかし…っ」
ヘクターがデス1stへ向く デス1stが言う
「…分かった」
【 スプローニ国 城下町 】
ヴェルアロンスライツァーが城から出て来て気付き言う
「…うん?あの者は?」
ヴェルアロンスライツァーが向かい 立ち止まって言う
「もし、不躾だが 貴女はアバロンの方であろうか?」
ヴェルアロンスライツァーの視線の先 リジューネが振り返り一瞬呆気に取られた後 視線を逸らして言う
「あ …ああ 確かに 貴公の言う通りではあるが 私はやはり ローレシアを愛して居る この想いに偽りは無い 従って 貴公の問いには否定をさせてもらいたい」
ヴェルアロンスライツァーがリジューネの返答に疑問してから 苦笑して言う
「そうであるのか だが、その気持ち 今なら私にも分かる… 私も いかにスプローニへ深く関する者になろうとも やはり、アンネローゼ様を愛している この想いに偽りは無い」
リジューネが気付いて言う
「スプローニに関する者?アンネローゼ様… と言うのは 確か?この世界のローゼントの女王であったな 貴公の姿は紛れも無く ローゼントの騎士であろう?スプローニへ関する者というのは分かりかねるが 故郷のローゼントを想い その国の王を愛すると言うのは 正しいのではないか?」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「いや、私は例えアンネローゼ様が何処の国へ向かわれ様とも アンネローゼ様を愛しているのだ アンネローゼ様がローゼントの女王である事は 関係ない 例え… 女王で在らずとも」
リジューネが呆気に取られた後 軽く笑って言う
「ふふ…っ それはつまり?1人の男として アンネローゼという名の女性を 愛しているという事だろう?貴公はなかなか 面白い男だな?あっはははははっ!」
リジューネが笑う ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られた後 微笑して言う
「…そうか私は …名に囚われていたのは 私の方であったのか」
ヴェルアロンスライツァーが微笑する リジューネが笑いを収めて言う
「名に囚われていた…か 私は… 私もやはり フォーリエルの言う通り 自身の地位に 囚われているだけ …なのかもしれんな」
ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
「地位?」
リジューネがヴェルアロンスライツァーへ向き直って言う
「いや、何でもない 気にしないでくれ」
ヴェルアロンスライツァーが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「フォーリエル と言ったか?彼ならば 移動プログラムと言うもので 先ほど何処かへと飛んで行ってしまった様だが?」
リジューネが呆気に取られて言う
「何処かへ?移動プログラムか では テスクローネと共にローレシアへ戻ったのかも知れんな 私がここで手を拱いている間に用事を済ませ 帰ってしまったか… その点私は 例え自分の想いのままに動いてみても 結局 何一つ上手く行かん… シリウス様の間近まで来たと言うのに 門前払いを受け スプローニ城へ入れずに居た などと言ったら 今度は愛想さえも尽かされてしまうだろう …言い訳作りの寄り道でもしてから戻るか」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「スプローニ城へ用があったのか?今なら国王のロキも 手が空いていると思われるが?」
リジューネが苦笑して言う
「いや、もう良いのだ 私の用は終わった 貴公も用が済んだのなら ローゼントの騎士としてでも 1人の男としてでも 愛する女性の下へ帰られるべきだろう」
リジューネが苦笑した後ヴェルアロンスライツァーに背を向け立ち去る ヴェルアロンスライツァーが呼び止めようとするが 遠ざかって行くリジューネの背に諦めて言う
「フォーリエル殿とテスクローネ殿のご友人 であったのだろうか?だとしたら 彼女は旧世界の民…?旧世界のアバロンには 女性の大剣使いも居るものなのだな?名を聞いて置きたかったが 残念だ」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して移動魔法陣へ向かう
【 ガルバディア城 城門前 】
ヘクターが城門を叩きながら言う
「開け!開けよーっ!」
デス1stが後方で地に横たえられているデス2ndへプログラムを行いながら顔を上げ ヘクターへ言う
「ヘクター やはり城門のプログラムは完全に沈黙している この状態ではお前や私であっても 開く事は出来ない」
ヘクターが悔やみつつデス1stへ振り返ってからその前に居るデス2ndを見る デス2ndはプログラムの数字の羅列の中で意識を失ったままでいる ヘクターが言う
「俺やお前でも開けられねーって それじゃ 誰なら開けられるんだ?」
デス1stが言う
「ガルバディア城は この世界の要だ シリウス国王が居ない状態では 誰一人入る事は出来ない」
ヘクターが表情を困らせて言う
「誰も入れねーって ガルバディアは一応国だろ?それなのに 王が居ねー時は入れねーなんて そんなのは国じゃねーだろ!?」
ヘクターが視線を落として考える 吹雪が通る ヘクターが気付いて言う
「…うん?それじゃ 王が外出する時は 民は皆この極寒の中に追い出されるのか?」
デス1stが一瞬呆気に取られてから改めて言う
「え?…い、いや そんな事は無い そもそもガルバディア城に住めるのは ガルバディアの民だけだ 彼らは皆シリウス国王に仕える僕 その彼らがシリウス国王に害を成す事等在り得ない 故に 彼らは城の中に留まる事が許されていた」
ヘクターが言う
「つまり、追い出されるわけじゃなくて この扉が開かないだけって事か …なら、デス アバロンからガルバディアに入る あの道はどうなってんだ?」
デス1stが呆気に取られて言う
「え?ああ、あの道は 元々ガルバディアの猫である ヴィクトールたちが通る道であり 私でも開く事が可能であったが しかし、ガルバディアの城門が封じられた際は どちらかと言うとアバロンの味方とされる 我らガルバディアの第二王子では 開かれない設定となっていたが… そうか それなら」
ヘクターが慌てて言う
「それなら ヴィクトールだっ!あいつを探して 開けてもらえば良いだろ!?」
デス1stが表情を困らせつつプログラムを足して言う
「ああ それは… 確かに そうだが 彼らが 2ndの為に あの道を開いてくれるかどうか…」
ヘクターが怒って言う
「開けてくれるに決まってんだろっ!?ヴィクトールは 俺たちの仲間だ!」
【 ベネテクト城 玉座の間 】
ベーネットが言う
「残念ながら 同じヴィクトールの名を持つ者であっても あのアバロンとガルバディアを繋ぐ通路を開く事が出来るヴィクトールは… このヴィクトールではありません」
ベーネットが表情を困らせる ヴィクトール14世が表情を困らせて言う
「うん、申し訳ない ヘクター国王 私はベネテクトからアバロンへ通じる散歩道を開く事は出来るけど アバロンとガルバディアを繋ぐ道を開く事は出来ないんだ 私の滞在先はガルバディアではなく このベネテクトなものだから」
ベーネットが言う
「現状あの扉を開く事の出来るヴィクトールは 11世様ではないかな?」
ヘクターが言う
「ならヴィクトール11世様を探すんだ デス!」
ヘクターがデス1stへ向く デス1stがプログラムを発生させながら苦戦している ヘクターが言う
「どうした!?デス 急げ!」
デス1stが一度悔やんでから顔を横に振って言う
「駄目だ 見つけ出せない ヴィクトール11世の生態情報が何処にも無い もしかしたら シリウス国王と共に 旧世界へ向かったのかもしれん」
ヘクターが驚き困る ベーネットが考えながら言う
「もしくは 我々の力では見つからない程に 厳重に封じられているのかもしれません シリウス国王は 最悪この世界が異世界の王に奪われる事も 視野に入れていたと言う話ですから」
ヘクターが驚いて言う
「この世界が異世界の王に奪われる だって!?」
ベーネットが言う
「ええ… そうです お陰で 現在バーネット1世を始めとする この世界のそうそうたるプログラマーが それこそ必死にこの世界を守るプログラムを行っています が、…どうやら 余り捗々(はかばか)しくは無いらしいです」
ベーネットが苦笑する ヘクターが衝撃を受け慌てて言う
「捗々しくねぇってっ!?なんでそんな状態で お前はのんびりしていられるんだよ!?それこそ プログラムを出来るお前や 俺の相棒のデスだって手伝うべきだろ!?…あ!あぁあーっ そ、それじゃ デスを助ける事が出来なくなっちまうかもしれねーっ!駄目だ!デス!お前は手伝いに行くな!デスを助ける方が先だぜ!?」
デス1stとベーネットが呆気に取られた後苦笑して後に笑う ヘクターが衝撃を受け驚いて言う
「なっ!?何笑ってるんだよ!お前ら!?」
ベーネットが微笑して言う
「落ち着いて下さいヘクター国王 こんな時こそ 各々が出来る事を行うべきです」
ヘクターが言う
「お、各々が出来る事って…」
ベーネットが言う
「ヘクター国王やデス1st様は デス2nd様の回復を求めておられるのでしょう?でしたら 御二方はそちらに専念しませんと そして、私は… こう見えましても 私の父バーネット2世や祖父のバーネット1世が現在行えない この世界における均衡の見張りを行っております 今はどちらかと言えば ベネテクトの王というより ガルバディアの代理国王とでも申しましょうか…?」
ヘクターが呆気に取られる ベーネットが苦笑して言う
「いえ、少し言葉が過ぎましたね 3代目の私ごときが ガルバディア国王の代理だ等とは 恐れ多い事です」
ヘクターが困って言う
「けど ベーネットは自分のやる事が出来るから良いけどよ こっちは今 ガルバディア城に入る方法が無くって 困り果てちまってるんだ 各々でって言っても 俺が出来る事は 今何も出来ねーんだぜ!?くそ… どうしたら良いんだ?こんな時 夢の中だったら…」
ヘクターが言い掛けた時 ヴィクトールが泣きながら歩いて来て言う
「えぇ~ん 酷いよ バーネット…」
皆が疑問してヴィクトールへ向く ベーネットが驚いて言う
「ヴィクトール様 一体どうされたのです?父上と共に ガルバディアへ飛ばされやがったのでは?」
ヘクターとデスが驚いてヘクターが言う
「ガルバディアへ!?ヴィクトール!お前 ガルバディアに居たのかっ!?」
ヴィクトールがベーネットに続きヘクターを見てから涙をすすって言う
「うぅっ… あ… ヘクター… 何でベネテクトに…?…まぁ 良いや 僕は…」
ヘクターがヴィクトールへ掴み掛かって言う
「おいっ!ヴィクトール!どうなんだ!?お前ガルバディア城の中に居たのかよ!?どうやって入った!?いや、どうやって出て来たんだ!?お前は出入り出来るのかよ!?」
ヴィクトールが言う
「ぐすんっ… 何?僕は今ガルバディアから追い出されちゃったんだよ バーネットが… 『今はてめぇに構ってる暇はねぇんだ』って… 僕はただ… 傍に居させてって言っただけなのに」
デス1stがハッとして言う
「ガルバディアから追い出された!?そうかっ!ガルバディアは今 城門を封じてはいるが システムは止まっていない シリウス国王は居らずとも その玉座を守る者が!玉座にはバーネット2世が居るのか!」
【 エドの町 小川の辺 】
フォーリエルが遠くを見ていた状態から振り返る 視線の先で テスクローネが川辺の石に腰掛け目を閉じて周囲にプログラムを現している フォーリエルがその様子に苦笑する ヴィクトール12世がやって来て言う
「うん?貴公らは この様な場所に飛ばされていたのか?」
フォーリエルが振り返って言う
「あ?あんたは確か…?あの口の悪い王様の相棒の… ヴィクトール11世様の…?」
ヴィクトール12世が苦笑して言う
「ああ、見た目は私の方が老けているが これでも私はヴィクトール11世の後世である12世だよ それはそうと?ガルバディアでもソルベキアでも ローレシアでさえない この機械離れしたエドの町にてプログラムを行うのは不便ではないのか?」
フォーリエルが軽く笑んで言う
「俺もそう思ったんだけど テスが言うには ガルバディアの力って言うのは本来 何処で使っても 変わらないモンなんだってよ?それより重要な事は プログラマーの心境だってさ」
ヴィクトール12世が疑問して言う
「心境?」
フォーリエルが言う
「ああ、ガルバディアの民は 大昔から心が脆いらしい まぁ、このテスも 今まで俺が何度自殺を止めさせたか 分かんねーしな?ははっ!」
ヴィクトール12世が呆気に取られてテスクローネを見る テスクローネは無表情にプログラムを続けている フォーリエルが苦笑して言う
「こいつらはすげー力を持ってるけど それだけじゃ駄目なんだ 俺もこの場所に飛ばされて 不思議に思ってたんだけど このエドの町は 俺たちが旧世界で居た ローレシア帝国の一角に似てて この小川も俺たちが子供の頃一緒に遊んだ場所にすげー似てる …テスが言うには シリウス国王がテスの力を最大限に発揮できる テスの好きな場所へ 飛ばしてくれたんだって?」
ヴィクトール12世が微笑して言う
「そうだったのか… まぁ 我々はシリウス国王からの移動プログラムは受けることなく ソルベキアに留まっておった訳だが」
フォーリエルが首を傾げて言う
「んー?移動プログラムは受けなかったって言っても ヴィクトール12世様は あの口の悪いプログラマーの相棒なんだろ?」
ヴィクトール12世が苦笑して言う
「“口の悪いプログラマー”ではなく 彼はバーネット1世 ソルベキアの第一国王だよ ついでに言うと一応 私もソルベキアの第二国王であるが」
フォーリエルが言う
「ならヴィクトール12世様?そのバーネット1世様から離れちゃ駄目じゃねーか?今は一番大変な時なんだぜ?傍に居て 助けてやらねーと!」
ヴィクトール12世が呆気に取られてから苦笑して言う
「うむ… そうしたい気持ちは山々なのだが 生憎、私はプログラムなどは まったく分からんのでな 傍におっても何も助けられないのだよ」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「あ?」
フォーリエルが大げさに溜息を吐いてから言う
「はぁーーっ!分かってねーなー!」
ヴィクトール12世が疑問する フォーリエルが圧し掛かる様に言う
「良いか!?何もしなくても “傍に居る” って事が助けなんだよ!傍に居て あいつらがやる事を認めてやるんだっ あいつらは強い力を使えるけど それに疑問しちまう 自分がやってる事が正しいのかとか 何でこんな事やってんだーとかよ!?そんな時 傍に居て認めてやれば良いんだ それがまた あいつらの力になるんだぜ!?」
ヴィクトール12世が呆気に取られて言葉に押されている テスクローネが目を開き息を切らして言う
「…はぁ…はぁ… 駄目だ やはり我々だけで シリウス様の力を補うだなんて」
フォーリエルが振り返り 気合を入れて言う
「テス!何言ってんだ!今この世界は お前たちに掛かってるんだぜ!?お前らが諦めたら 俺らは皆やられっちまうじゃねーか!最後の最後まで諦めるんじゃねーよ!」
テスクローネが呆気に取られてから苦笑して言う
「あ…ああ、それは 確かにそうだけど…」
フォーリエルが言う
「それに!俺はまだ!お前から金を返してもらってねーぞ!?」
テスクローネが呆気に取られて言う
「え?金…?」
フォーリエルが言う
「そうだぜ!団子屋を開店する為に貸した金だ!お前 団子屋を絶対に成功させて いつか倍返しにして返してくれるって 約束したじゃねーか!?」
テスクローネが呆気に取られて瞬きをした後 噴出して言う
「ぷっ… あっはは… そうだった 君への借金を返さないといけなかったな それに フォーリエルが世界一の大剣使いになるのを この目で見届けないと」
フォーリエルが笑んで言う
「そうだぜ!?俺はお前の団子がねーと 気合が入らねーんだから 新世界を守るプログラムなんか ちゃっちゃと終わらせて 早くまた作ってくれよな!?」
テスクローネが微笑して言う
「うん… そうだな?…とは言え」
テスクローネが周囲にプログラムを現して言う
「シリウス様が算出された 我々の力の統計が まったくと言って良いほど数値に届いていない… シリウス様直系のご子息であられる バーネット様方は一体どうされたのだろう?このままでは どんなに私1人が頑張ろうと 正直難しい …フォーリエル?」
テスクローネがフォーリエルへ向いて言う
「私は大丈夫だから 他の2人の様子を見て来てもらえないだろうか?」
フォーリエルが腕組みをして 顔をぷいっとそむけて言う
「嫌だっ!」
テスクローネとヴィクトール12世が呆気に取られる フォーリエルが言う
「その二人にだって ちゃんと相棒が居るんだろ!?そっちは そいつらに任せる!俺はお前の相棒だぜ!テス!」
テスクローネが呆気に取られてから微笑して言う
「…うん そうだな 分かったよ それじゃ 彼らが力を取り戻すまで 何とか私がフォローしよう」
フォーリエルが言う
「おう!丁度ここに その片方が居るしよ!すぐ帰らせれば 良いだけだぜ!」
テスクローネが今更のごとく ヴィクトール12世に気付き あっと声を上げて驚いて言う
「え?あっ ヴィクトール様!?」
ヴィクトール12世が苦笑する テスクローネが一度苦笑した後 わざとらしく怒って言う
「この大切な時に お相方のバーネット1世様から離れて 何をしていらっしゃるのですっ!?」
ヴィクトール12世が呆気に取られた後 苦笑して言う
「ああ、すまなかった …では お詫びに 私がもう1人のプログラマーである バーネット2世の様子を確認して…」
フォーリエルとテスクローネが声を合わせて言う
「「それは良いから 直ぐに相棒の所に戻って下さい!」」
ヴィクトール12世が驚いた後 軽く笑って言う
「う、うむ 分かった では… そうさせてもらおう?」
ヴィクトール12世が苦笑して立ち去りながら 独り言を言う
「…とは言え 私の相棒のバーネットは 心が脆いだなどとは思えぬのだがなぁ…?それこそ 盛り沢山の剣で刺しても壊れぬ 強靭な心の持ち主であるのだから …あぁ、あれは夢の世界の話ではあったが… しかし、痛みはやはり感じたであろうし…」
フォーリエルとテスクローネが顔を見合わせ微笑する
【 ガルバディア城 通路 】
アバロンからガルバディアへの散歩道を ヴィクトール、デス1st、意識のないデス2ndを抱いたヘクターが歩いて来る ヴィクトールがふてくされて言う
「バーネットが言ったんだよ!?『今は この世界を守らなけりゃならねぇ 大事な時なんだ てめぇの相手はしてられねぇ プログラムが出来ねぇてめぇは ベネテクトにでも帰りやがれ』 ってぇ~?僕は確かにプログラムは出来ないけど でも もしプログラムをやってる無防備なバーネットを 誰かが襲おうとした時には 僕が守ってあげられるって でも それさえも 『ガルバディアなら 心配はねぇんだ』って~!」
ヴィクトールが後方へ向けていた顔を戻し歩きながら泣く ヘクターが怒って言う
「プログラムが出来ねーだろうが!身の危険を守る必要がないだろうが!相棒なら傍に居るのが当然だろ!?バーネットの奴!何言ってんだ!?」
デス1stが言う
「いや、バーネット国王の言った それらの言葉は 恐らくフェイクだ」
ヴィクトールが疑問して言う
「え?フェイク?」
ヘクターがデス1stへ向く デス1stが言う
「ああ、バーネット国王本人も 分かっている筈だ 自身の力を最大限に使用するには 相棒の支えが必要であると だが シリウス国王直系のロストヒューマンである彼らが 全力でプログラムを行うとなると…」
玉座の間
ヴィクトールが通路を抜けて城玉座の間に辿り着く 玉座に座っていたバーネットが目を開き衝撃を受け慌てて言う
「ヴィクトールっ!?ばっ!あんだけ言ってやったのに 何で戻って来やがったっ!?」
後方へ振り返りつつ歩いていたヴィクトールが バーネットの声に振り返って言う
「あ、バーネット 実は …え?」
ヴィクトールの驚いた視線の先 ガルバディアの力をフルに使用して 見た目の変わったバーネットが驚いている バーネットがハッとして慌てて顔を逸らして怒って言う
「み、見やがるんじゃねぇえっ!馬鹿野郎っ!俺は…っ」
バーネットが強く目を閉じて悔しそうに俯く デス1stが苦笑して言う
「バーネット国王は あのシリウス国王の子息 シリウス国王は 大いに人目を気にする王だ 特に 自分の大切な相棒である猫には ガルバディアの力をフルに使う際の その姿を見せたくはなかったのだろう」
ヴィクトールが呆気に取られて一度デス1stを見てから 再びバーネットへ視線を向ける バーネットが同じくデス1stを見てからヴィクトールへ視線を向け ハッとして顔を背ける ヴィクトールが呆気に取られていた状態から苦笑して歩き始める
【 ソルベキア城 玉座の間 】
バーネット1世が 驚き焦って困りながら言う
「だっ!?て、てめぇえ!だから!言ってやったじゃねぇえかぁあ!?プログラムも出来ねぇてめぇが ここになんざ居やがったって…!」
ヴィクトール12世が一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「ああ、私はここに居ても何も出来ないが それでも 君の傍で 君を支えさせてくれないか?バーネット?」
バーネット1世が一瞬言葉に押されてから言う
「う…っ!そ、それはっ… 確かに 支えには なりやがるが…」
バーネット1世がヴィクトール12世から顔を逸らす ヴィクトール12世が気付き微笑して言う
「それに、バーネット?私は 君のその姿も たまには見せてもらいたい 君は見せたがらないが 君が必死に戦っている時の その姿は 私はとても美しいと思うのだよ」
バーネット1世が衝撃を受け驚いて言う
「なっ!?」
バーネット1世が ガルバディアの力をフルに使用して 見た目が変わった状態で居る ヴィクトール12世がバーネット1世の近くへ来て姿を確認してから微笑んで言う
「まるでおとぎ話に出て来る」
【 ガルバディア城 玉座の間 】
ヴィクトールが笑顔で言う
「妖精みたいだね!バーネット!」
バーネットが呆気に取られて言葉をこぼす
「…あぁ?妖精…?」
ヴィクトールが微笑んで言う
「うん!いつものバーネットも良いけど どちらの姿であっても 僕は やっぱり 君は世界一の美人だと思うよ?バーネット?」
バーネットが驚き呆気に取られた後 苦笑して言う
「…ハッ!馬鹿野郎 見え透いた世辞を言いやがって…」
ヴィクトールが不満そうに言う
「え?心外だなぁ 僕はバーネットに 例え お世辞であっても嘘なんて言わないよ?ルビーみたいな綺麗な瞳に 透き通る体だなんて まるで おとぎ話に出て来る 妖精そのものじゃない?」
バーネットが表情を困らせる ヴィクトールが笑顔を向ける バーネットが苦笑して言う
「はっは… 本気で思ってやがるんなら てめぇにはホトホト呆れるが そのてめぇの相棒である俺は …助かるぜ」
ヴィクトールが疑問して考えた後照れる バーネットが呆れる バーネットが玉座に偉そうに腰掛け直して言う
「よし、なら精々てめぇは 俺の傍で てめぇの妖精様を見守ってやがれ!」
ヴィクトールが嬉しそうに言う
「うん!」
バーネットが苦笑して言う
「…でぇ?てめぇらは何の用だぁ?それこそ 今 こっちは てめぇらなんぞに構ってやれる暇は これっぽっちも有りやがらねぇぜ?」
バーネットが頬杖をついて視線を向ける 周囲にプログラムが大量に現れる ヘクターが言う
「バーネット デスを助けるために 力を貸してくれっ」
バーネットがヘクターの抱えるデス2ndを見る デス1stが言う
「彼はシリウス国王が旧世界へ向かった際に実行させた 攻撃プログラムを受けてしまった 一時的に脳核の保護を行っているが 現状のままでは 彼の肉体と共に意識が破壊されてしまう」
バーネットが言う
「そう言う事か… けど こっちは見ての通り 何をしようにも お前らへ手を貸してやれる余裕は全くねぇぜ?」
ヘクターがデス1stへ向く デス1stが言う
「その心配は不要だ 現状の我々が必要としているのは 代理ガルバディア国王殿の力ではなく このガルバディア城にある 設備だ」
バーネットが言う
「あん?設備?そうか… なら勝手に使いやがれ だが、一庶民のてめぇらが使えやがる設備は この玉座の間より外だ」
バーネットが視線を向けた先 玉座の間までの通路が開かれる ヘクターが振り返り向かおうとする デス1stが言う
「いや、そう言う事であるなら バーネット2世代理国王殿の力を貸してもらいたい 2ndを助けるのに必要な設備は ガルバディア国王たち ロストヒューマンの体を回復させる事が出来る 最高位の生態回復装置だ」
ヘクターが疑問して言う
「ロストヒューマン?」
バーネットが顔をしかめて言う
「何でてめぇが その装置の存在を知ってやがる?」
デス1stが言う
「例え情報のみの世界であろうとも 私は一度 このガルバディアの王を演じた… その際に知った情報だ それらの事は私が情報のままに消される際 共に消えるものとして 処理がなされずにいたが 私は再び生きるに至った 故に それらの情報も私の知識として残った」
バーネットがデス1stを見詰める デス1stがバーネットを見詰め返す ヘクターとヴィクトールが顔を見合わせた後 ヘクターが一歩踏み出してバーネットへ言う
「何だか分からねーけど バーネット?その機械がねーとデスが!俺のもう1人の相棒が助けられねーんだ!お前の力が必要だって事なら 頼む!」
バーネットがヘクターを見る ヴィクトールがバーネットへ向いて言う
「バーネット、僕からも頼むよ ヘクターのお陰で 僕はこうして 君の傍に戻れたのだし デスは僕たちの仲間だ」
バーネットがヴィクトールを横目に見てから表情を渋らせて言う
「俺だって出来る事ならそうさせてやりてぇが… 今あの装置は シリウス国王の奴が凍結しちまってる」
ヘクターたちが驚く バーネットがヘクターへ向いて言う
「シリウス国王の奴は 連れ帰る予定の旧世界のシリウスBを あの機械で回復させやがるつもりなんだろうぜ 既にその設定がなされてやがるからなぁ」
ヴィクトールが表情を困らせて言う
「そんなっ それじゃ!?」
ヘクターがデス1stを見る デス1stが表情を困らせて言う
「…シリウス国王の凍結を解く事は不可能だ これでは …手の施しようが無い」
ヘクターが息を飲む ヴィクトールがそれを見てバーネットへ向いて言う
「どうにかならないの!?バーネット!」
バーネットがヴィクトールへ視線を向けて言う
「んな事を言いやがっても こっちは… うっ!」
バーネットの周囲に大量のプログラムが発生する ヴィクトールが焦って言う
「バーネット!?」
バーネットが言う
「ヘクターッ 借りを作っちまった所済まねぇが こっちは今 一庶民の相手なんざ してやれねぇんだっ!異世界の王どもが 総攻撃を仕掛けてやがるっ!俺は こっちに専念させてもらうぜ!」
バーネットが玉座に体を静めて集中する ヴィクトールがバーネットへ声を掛けそうになるが言葉を飲んでヘクターへ向く ヴィクトールの視線の先 デス1stがヘクターへ向く ヘクターが抱えているデス2ndの顔を見詰めて言う
「ちくしょう…っ このままじゃっ」
デス1stが表情を困らせヘクターを見る ヘクターの通信機が鳴る デス1stが気付きヘクターを見るが ヘクターは無反応 デス1stが困りながらも言う
「ヘクター 通信を… 恐らく相手は」
ヘクターの通信機が勝手に着信して ヘクターの前にホログラムモニターが表示され レクターが苦笑顔で言う
『ヘクター、アバロンの王であるお前が 連絡も無しに勝手にローレシアから ベネテクトへ行って更にガルバディアまで出張しちまうのは しょっちゅう精神が飛んじまう私が言うのもなんだが 余り良くねーんじゃねーかと私は思う ついでに この大変な時に代理も置かずに 長期間国を空けちまうのも 良くはねーのだ そんな気が… うん?』
ヘクターが無反応で居る ホログラムモニターのレクターが疑問する デス1stが言う
「すまない、レクター王兄 ヘクターをベネテクトやガルバディアへ向かわせたのは私だ ついでに 長期間の離国を指摘しなかった事も ヘクターを補佐する私の不注意だった」
ホログラムモニターのレクターが不思議そうにデス1stへ向いて首を傾げてから ハッとして 真剣な表情で慌てて言う
『デス1st!気を付けろっ!』
デス1stが驚き呆気に取られて言う
「…えっ?」
ヘクターの周囲から音と光が消える
ヘクターが驚き周囲を見る 声が聞こえる
『お前の頼み 叶えてやろうか?』
ヘクターが弾かれたように顔を上げて言う
「俺の頼みっ!?デスを助けられるのか!?」
声が聞こえる
『新人類の身を生かすも殺すも 俺らにとっちゃ造作もない と言っても タダでやってやるつもりも無い やるからには こっちの頼みも聞いてもらうが?』
ヘクターが言う
「あんたは誰だ?ひょっとして 今バーネットや皆が戦ってる “異世界の王”とか言う連中か?」
声が聞こえる
『ああ そうかもな?だとしたらどうする?』
ガルバディア城 玉座の間
レクターとのホログラムモニターにオライオンが映り 慌てた様子で叫ぶ
『レクター!シュライツが!』
ホログラムモニターのオライオンとその前に居るデス1stが互いに驚き呆気に取られてから デス1stが気を取り直して言う
「オライオン?何かあったのか!?シュライツがどうした!?」
ホログラムモニターのオライオンが慌てて言う
『あ!?なんでっ親父の通信機に!?俺はレクターに通信してるのによっ!?』
デス1stが言う
「あいつの事だ 我々との通信状態にあった為 接続ミスでもやらかしたのだろう …それより 用件はなんだ?レクターへ頼む様な事なら 私の方が万全だ その様子では ただ事ではないのだろう?レクターの接続ミスは お前にとっては好都合だったな?」
デス1stが苦笑する オライオンが呆気に取られた後表情を困らせて言う
『いや… そうでもねーよ』
デス1stが衝撃を受け慌てて言う
「そ、それはどう言う意味だ!?オライオン!私は現在進行形でヘクターの役には立てていないが!?それは相手がシリウス国王や異世界の王…っ 遥か格上の彼らが相手であるからであり断じて私の力不足と言う訳ではないのであってっ!?」
ホログラムモニターのオライオンが通信機を操作してから表情を困らせて言う
『あれ?何だよ!?切る事も出来ねーって どうなってんだ!?』
デス1stが衝撃を受け慌てて言う
「切ろうとするなっ!そこまで私を信用出来ないのか!?」
ホログラムモニターのオライオンが改めて言う
『別にデスを信用してねー訳じゃねーよ ただ、今はレクターの力が必要なんだっ』
デス1stが疑問して言う
「レクターの力?」
ホログラムモニターのオライオンが悲しそうな表情で言う
『シュライツが… 俺を… 俺たちを裏切ったんだっ!』
デス1stが呆気に取られて言う
「な…っ?裏切っただと?どう言う事だ!?」
【 ソルベキア国 近郊 】
オライオンが地に両膝を着き脱力している 周囲にアバロン3番隊隊員たちが倒れている
【 ガルバディア城 玉座の間 】
デス1stが呆気に取られて目を瞬かせて言う
「オライオン… お前たちアバロン3番隊は ソルベキアのヴィクトール12世先々代アバロン王を 密かに警護する任務についていた筈 シュライツが裏切ったと言うのは…?」
デス1stの言葉の途中でヘクターが顔を上げる デス1stが気付いて言う
「ヘクター?」
ヘクターがデス2ndを抱き立ち上がる デス1stが言う
「ヘクター?どうした?どうするつもりだ!?」
ヘクターが顔を向けないままデス1stへ言う
「デス、俺は… こいつを助ける お前は… オライオンを助けてやってくれ」
デス1stが疑問して言う
「え?私がオライオンを?待て、ヘクター 一体どう言う意味だ?それに2ndを救うには ガルバディアの生態回復装置を使用しなければ 不可能なのだぞ!?」
ヘクターが苦笑して言う
「その装置はシリウス国王に止められちまってるんだろ?おまけに そいつを使う予約まで入っちまってるんじゃ …きっとまた 間に合わなくなっちまう」
デス1stが言う
「間に合わなく…?」
ヘクターが苦笑して言う
「ああ、あれは 夢の中の… そのまた夢の中だったのかもしれねーけど 機械が使えるまで待ってたら 間に合わなくなっちまうんだ だから」
ヘクターが正面を見据えて言う
「どんな手を使ってでも 必ず 助けてやる 絶対に失わねぇ!」
デス1stが疑問して言う
「ヘクター?」
デス1stがハッとすると ヘクターの周囲にプログラムが発生する デス1stが目を丸くすると同時にプログラムが実行されヘクターとデス2ndが消える デス1stが驚いて叫ぶ
「ヘクターーッ!!」
バーネットが悔しそうに目を開いて言う
「クソッ!やられた!何だったんだ 今のは!?リジルでもリゲルでもねぇ あの2人以外にも この第二プラントを狙ってやがる奴が 居やがるって言うのか!?」
ヴィクトールがデス1stを見た後バーネットを見て言う
「バーネット ヘクターが…」
バーネットが言う
「今の移動プログラムは デスや俺のもんじゃねぇ 俺らの知る他の奴らのでも… あの識別コードは 俺たちの知らねぇ奴のモンだった おまけに 後一歩踏み込んで調べてたら 危うく 俺まで 強烈な反撃プログラムを食らっちまう所だった」
バーネットがデス1stへ向いて言う
「ハッ!流石、ガルバディア国王を演じた事までありやがる 第二王子殿は 端っから 危険なプログラムには触れやがらなかったんだなぁ?はっはー!」
デス1stが言う
「うご… けなかった…」
バーネットとヴィクトールが疑問して バーネットが言う
「あぁ…?」
ホログラムモニターにレクターが映って言う
『デス1st、ヘクター 無事か?ヘクター?…行っちまったのか』
デス1stが呆然と立ち尽す
【 ? 】
ヘクターの周囲の移動プログラムが消える ヘクターがそれを見てから視線を上げる 声が聞こえる
「よう?素直に従ってくれるとは思わなかったぜ?罠か何かだとは思わなかったのか?」
ヘクターが声の相手へ顔を向けて言う
「俺の相棒を助けてくれるんだろ?だったら何でもやる だから頼む」
相手がヘクターを見下ろし笑みを深める
【 旧世界 ガルバディア城 機械室 】
シリウスAが振り返り微笑して言う
「うむ、やはり我の思った通り お前には長い髪が良く似合うのじゃ 美しいのぉ B?」
シリウスBがムッとして言う
「生憎、私は美しい等と言われて 喜ぶ男では無い 故に 何度言われようと 髪は伸ばさんと言った筈だ」
シリウスBがぷいっと顔を背けると共に 長い髪がバッサリと切り落とされる シリウスAが衝撃を受けて叫ぶ
「あーーっ!」
シリウスAが座り込み切り落とされた髪に触れながら シリウスBを見上げ怒って言う
「何をするのじゃ!B!折角我が 手塩に掛けて作り上げた 最高傑作の美しい髪を~~っ!」
シリウスBが顔を背けたまま怒って言う
「ふんっ!」
玉座の間
シリウスBとシリウスAが玉座の間へ歩いて来ながら シリウスBが言う
「そもそも私は 義体と言うモノ自体が気に入らん プログラムの能力も落ちると言うのに 大体、作り物の体に 何の価値があると言う?」
シリウスAが言う
「確かに プログラムの能力は落ちるが 義体であれば どの様な致命傷を受けようとも 本体はまったく傷付かぬのじゃぞ?まぁ 多少死に掛けるがのぉ?何より 時代のニーズに合わせて 民に愛される 最も美しい姿に変える事が出来るのじゃ これほど良いモノはあらぬじゃろう?」
シリウスBがシリウスAへ向いて言う
「本体が傷付かずとも その間に本体を盗まれた奴が 良く言う… おまけに 民の前に姿を現す事の無い私には まったく意味のない話だ」
シリウスAが呆気に取られた後微笑して言う
「あれは、盗まれたのではなく 守られたの間違いだったのじゃ それに いずれはお前も 民たちの前に悠々と姿を表す事が出来る様になるのじゃぞ?今から義体に慣れて置くと良いのじゃ」
シリウスAが笑顔になる シリウスBが怒って言う
「俺は例え民の前に出る事になろうとも 作り物の姿で現れるなどと 姑息な真似をするつもりはないっ!」
玉座に座っているルシフェルが汗だくの状態で顔を向けて言う
「父上… 申し訳ありません 父上から世界を守るプログラムを任されたと言うのに…っ 俺の力不足で…」
シリウスBがルシフェルへ向き 苦笑して言う
「いや、お前は良くやってくれた シリウスが来るまでの時を 稼ぐ事が出来たのだからな」
ルシフェルがシリウスBの言葉に俯く シリウスAが悪微笑して言う
「とは言え 出来る事なら Bの本体を回復させるまでの時を稼げたのなら もっと被害は少なくて済むのじゃがのぉ?」
ルシフェルがシリウスAに怒りの視線を向ける シリウスBがシリウスAに向いて言う
「言ってくれるなシリウス ルシフェルは成長促進プログラムを使用し 急きょ用意した者なのだ 世界を守る既存のプログラムを渡したとは言え それを進化させ リジルやリゲルの攻撃を防ぎ切る事等 不可能だ」
シリウスAが微笑して言う
「成長促進プログラムを使用しようが こやつはお前の息子じゃろう?お前の力の半分程度は持っておらねば 話にならぬ それとも ガルバディアの王ともあるお前が 自分の分身に近い子孫を作り上げる程度の事に 失敗でもしおったのか?B?」
ルシフェルが怒って言う
「黙れっ!俺を貶すのは構わないが 父上を侮辱するな!お前こそ!この城のそもそもの持ち主の癖に!遠隔プログラムで 父上のお体を回復させる事が出来ずに 義体になんか入れやがって!父上はお前と違って 機械の体なんか好まれねぇんだよ!」
シリウスAが悪笑んで言う
「機械の体とは 無礼な小僧じゃ ミクロシステム細胞で作り上げた この義体は生体を越える 完璧な生命体なのじゃぞ?…もっとも 義体同士ではもちろん 新たな生命は 宿せぬがのぉ?」
ルシフェルが怒って言う
「そんなモンは アンドロイドと同じだっ」
シリウスAがムッとして言う
「我の義体を アンドロイドごときと一緒にするとは どこまでも無礼な奴なのじゃ 我が躾直してやるのじゃ!」
シリウスBが言う
「止めろ お前たち 今はそんな事を言い争っている暇は無い …ルシフェル、この地に残っているシリウスの民は 今城に居る者で全てか?」
ルシフェルが言う
「…はい、父上 今 メテーリが ラーニャとラインツを呼びに行ってます」
シリウスAが疑問して言う
「何?ラインツじゃと?」
ルシフェルがシリウスAを睨み付ける シリウスBが少し驚いた様子でシリウスAを見た後 別の方向を向いて言う
「奴がどうやってこちらへやって来たのか その件も 後ほど確認しよう」
シリウスBの視線の先 メテーリが走って来て振り返って言う
「ラーニャ!急いで!」
ラーニャが走って来て 振り返って呼ぶ
「ラインツ様!」
ラインツがゆっくり現れ ラーニャを見た後 視線を別へ向ける ラインツの視線の先 シリウスAが驚いて言う
「ラインツ…っ」
ラーニャがラインツの手を取りに戻り 手を引いて言う
「ラインツ様!ほらっ!急いで!」
ラインツがラーニャを見る ラーニャがラインツの手を引いて走る ラインツがつられて走る 引かれていない手に 大剣を握っている シリウスAが目を細める
皆が玉座の周囲に集まる 皆の周りに移動プログラムが発生するが シリウスBが表情を顰めて言う
「…くっ 駄目だ やはり義体では 位置設定プログラムの構築が…」
シリウスAが言う
「そこはロジックを簡略化するのじゃ 義体のプログラム能力は本体の46.83% 正確さを求めるより情報量による修正を施すのじゃ まぁ 今回は時間もあらぬ事じゃし 我が行おうかのぉ?」
シリウスAが一瞬本気を出す 瞬時に周囲の移動プログラムが変化して 皆が消える その場所にリゲルとリジルが現れ リゲルが言う
「なにっ!?馬鹿な 今 この瞬間まで シリウスがこの場所に居た筈だ!」
リジルが周囲を見てから言う
「プログラムによる幻影 フェイクであったのか… それとも?」
リゲルが振り向いて言う
「移動プログラムを行ったのなら 俺が転送した 追尾プログラムを紛れ込ませた筈 だが、」
リゲルの手の上に小さな光りが落ちて来る リジルが見て言う
「どんな高性能な探査システムを使用しても見出せない 追尾プログラムの存在に気付き 回避した」
リゲルが怒って言う
「不可能だ!この追尾プログラムを見出すなど それこそ 我らがアウグスタ程の力が無ければ 叶わん!」
リジルが振り返って言う
「…我らが敵とするシリウスは よもや そのアウグスタを凌ぐ程の存在なのかも知れん」
リゲルが驚き視線を泳がせる
【 新世界 ガルバディア城 玉座の間 】
シリウスAたちが転送されて来る シリウスAが微笑して言う
「うむ、間に合ったのぉ」
シリウスBが微笑して言う
「流石は ロストヒューマンの神 アウグスタに次ぐと言われたほどのプログラマー 一瞬にしてあれだけのプログラムを構築するとは」
シリウスAがシリウスBへ向いて言う
「今回は特別じゃ お前が使用しておったモノを使い回した故に 間に合ったのじゃ やはり 我らは最高のパートナーじゃのぉ B?」
シリウスBが衝撃を受け 怒りを抑えて言う
「そう思うのなら… いい加減私をBと呼ぶのは止めろ!」
シリウスAが苦笑して言う
「とは言え B、あの範囲設定は随分と細かかったのぉ?我はどんなに暇な時でも たかが移動プログラムに あれほど細かく転送メンバーの詳細を設定する事などはあらぬのじゃ あれではまるで 生体情報の算出でも行うかの様じゃ」
シリウスBがバツの悪そうな様子で視線を逸らして言う
「まぁ…なんと言うか だなぁ… たかが移動プログラムであっても ある程度細かくしなければ… 例えばアバロンの大猫… いや、大男を転送するつもりが 間違って ローレシアの女魔法使いを 転送させてしまう様な事でもあっては 困るだろう?」
シリウスAが疑問して首を傾げる メテーリがシリウスBを見る シリウスAが気を切り替えて言う
「所で、我の相棒を務めた事もあるラインツが 何故 我の知らぬ間に あちらの土地に居ったのか… を、確認しようと思ったのじゃが その前に」
シリウスAが玉座の方を見て言う
「何よりも何処よりも重要な このガルバディアの玉座を任せた あのバーネット2ndの奴は 何処へ行きおったのじゃ?ひっ捕らえて 厳重に仕置きをしてやるのじゃ」
皆が玉座の方を見る 空の玉座がある
【 アバロン城 玉座の間 】
バーネットが腕組みをして振り返って言う
「そのてめぇに良く似た大剣使いの奴が シュライツと手を組んで たった二人で傭兵隊を壊滅させやがったって言いやがるのか?」
オライオンが傷心の表情で言う
「ああ…傭兵隊は あいつらが2人で… けど、俺は…」
回想
オライオンが通信を切って振り返って言う
『皆!今色んな所で ガルバディアのプログラマーが頑張ってるらしい!って事は あのソルベキアに居る ヴィクトール12世様の相棒 バーネット1世様も頑張ってる筈だ なら!俺たちに出来る事は ここで その二人を守る事だぜ!』
傭兵隊の皆が声を合わせて言う
『おー!』
皆が笑んでいる オライオンが軽く笑う
『へへ…っ』
シュライツが楽しそうに笑顔で皆の様子をまねていた状態から ふと気付いて振り返る オライオンがその様子に気付いて言う
『うん?どうした?シュライツ?』
シュライツが奇声を上げる
『キュピポプー ピュロピポ!』
オライオンが疑問して言う
『あぁ?』
シュライツが嬉しそうに奇声を上げて飛んで行く
『ピュロピポー!』
オライオンが驚いて言う
『あ!?おいっ!シュライツ!?』
オライオンが追いかけて向かう
オライオンがハッと立ち止まる オライオンが追って向かおうとしていた先から シュライツと共にウィルシュがやって来て言う
『ふーん…?あいつか?ペリーテ?』
シュライツがヴィルシュの横で嬉しそうに奇声を上げる
『ピュピポプ!』
ウィルシュが不満そうな表情をする オライオンが疑問して言う
『お前は?シュライツ そいつは誰だ?何で お前がそんなに…?』
ウィルシュが両手を腰に置いて言う
『いや!似てねーぜ!あいつより 俺の方が 100倍カッコイイ!』
オライオンが衝撃を受け慌てて言う
『おいっ!何の話か分かんねーが お前ムカつくぜ!おい!シュライツ!こっちに来い!』
シュライツが嬉しそうに奇声を上げる
『ピュロピポー!』
ウィルシュとオライオンが声を合わせて叫ぶ
『『似てねぇえーっ!』』
ヴィルシュが気を取り直して笑んで言う
『まぁいいや これでやっと俺の相棒を取り戻せた リジル様からの指令を実行する時って奴だぜ』
オライオンが疑問して言う
『あ?お前の相棒って?…シュライツは俺の相棒だぜ!?おい!シュライツ!いつまでもそいつの傍にいねーで 早くこっちに戻って来いって!』
ウィルシュが苦笑して言う
『なんだよ まだ分からねーのか?こいつは シュライツなんて 名前じゃねー 俺の相棒 ペリーテだ』
オライオンが呆気に取られる シュライツが首を傾げて言う
『ポピ?ピュロピポ?』
ウィルシュが言う
『似てねーよ シュライツとペリーテじゃ 一文字もあってねーだろ?』
シュライツがウィルシュに言う
『ポピポプー』
ウィルシュがオライオンに向き直って言う
『さて、』
オライオンが視線を向ける ウィルシュが手を振りかざすと巨大剣が現れる オライオンが驚いて言う
『な、なんだ!?あのデカイ剣は!?』
ウィルシュが巨大剣を手に取り軽く振りかざして構える オライオンが呆気に取られる ウィルシュがオライオンを見て言う
『アバロン3番隊… この第二プラントで有力な部隊の一つだな 早速 排除させてもらうぜ』
オライオンが驚いて言う
『え!?』
シュライツがウィルシュへ向いて言う
『プポピ!ピポピポピ!』
ウィルシュがシュライツへ視線を向けてからオライオンを見て言う
『ふーん?お前 結構強いのか?ペリーテが世話になったみたいだしな!それじゃ お前だけ 俺と一対一でやろうじゃねーか?他の連中は 後でチャッチャと片付ける』
オライオンが呆気に取られてシュライツを見る シュライツが楽しそうにオライオンへ言う
『ピポピピ!ピッ!』
オライオンがシュライツを見てからウィルシュを見て 気を引き締め大剣を抜いて言う
『なんだか分からねーが 一騎打ちで戦うって言うなら 容赦はしねーぞ!』
オライオンが大剣を構えて言う
『俺は アバロン3番隊隊長 オライオン!』
ウィルシュが一瞬呆気に取られてからニッと笑んで言う
『俺は ログウェルン ファーストクラスター ウィルシュ』
オライオンとウィルシュが構える シュライツがウィルシュから離れ嬉しそうに言う
『ピュロピポー!』
回想終了
オライオンが俯く バーネットが言う
「で、そのウィルシュとか言う デカイ剣を使う野郎に てめぇは負けちまいやがったって訳かぁ」
オライオンが言う
「ああ… 面目ねぇ… けど、あんなデカイ剣を軽々と振り回して 俺の大剣じゃ太刀打ち出来なかった… ちくしょぉ…」
バーネットが苦笑して言う
「ハッ!大剣を越える大剣が相手だってぇのに 力任せに戦いやがったんだろぉ?ったく… だから 大剣使いの躾には 俺らベネテクトのレイピアが有効だってぇんだ きっと 相手をするのが てめぇじゃなく 俺の馬鹿猫だったなら その野郎には負けなかっただろうぜ?」
バーネットが視線を向ける オライオンがバーネットの視線の先へ同じく視線を向ける 2人の視線の先 ヴィクトールがデス1stへ向いている デス1stの周囲に現れているいくつものプログラムがエラーを起こし デス1stが膝を折って両手を地に付いて言う
「はぁ…はぁ… 駄目だ あの瞬間 ヘクターを転送させた移動プログラムは やはり確認出来ない… ガルバディア城で実行されたと言うのに プログラム履歴にも使用コードが記録されていない… これでは 使用者はもちろん転送先も 何一つ…」
ヴィクトールが屈んでデス1stへ心配そうに言う
「デス、余り無理をしては駄目だよ ヘクターは言ってたじゃない?デスを必ず助けるって それに、君には オライオンを頼むって」
デス1stがヴィクトールへ視線を向け 次に逸らして言う
「しかしっ プログラムを扱う何者かが2ndを餌に ヘクターをっ!ヘクターはアバロンの単細胞だ プログラムを使うズル賢い者に コロッと騙されてしまったのかもしれない!だとしたら 意識の無い2ndではなく 私がっ!私がヘクターを助けなければ!」
ヴィクトールが言う
「でも、ヘクターが選んだ事だよ?だから きっと… 大丈夫だよ!デス!僕、何となくそんな気がするよ!」
ヴィクトールが笑顔になる デス1stが衝撃を受け怒って言う
「アバロンの力が最も低い 歴代の出来損ないアバロンの民に言われても まったく安心は出来ないっ!」
ヴィクトールが衝撃を受けて叫ぶ
「あー!酷いよデスーっ!僕らは確かに出来損ないアバロンの民ヴィクトールだけどっ!アバロンの力はちゃんとあるものっ!まったく無い訳じゃないんだよーっ!?」
ヴィクトールが泣く そのヴィクトールの頭を押さえ付けてバーネットが現れて言う
「確かに この歴代ヴィクトールのアバロンの力は軟弱だが てめぇの相棒 ヘクターの力は上等なもんだろぉ?そのヘクターが選んだ方法だってぇなら てめぇは相棒として 信じるべきなんじゃねぇのかぁ?違うかぁ?」
デス1stが表情を困らせ言う
「それは…」
ヴィクトールが苦笑して言う
「デス、ヘクターを信じようよ?ね?」
デス1stが悔やみつつ言う
「…ああ、分かった 私は ヘクターを …信じる」
ヴィクトールとバーネットが微笑して顔を見合わせる
アバロン城 通路
ヴィクトールとバーネットが歩いている ヴィクトールが微笑して言う
「デスにまで僕のアバロンの力を否定されちゃって ちょっとショックだったけど… でも ヘクターを信じてくれるって事で 良かったね!バーネット!」
バーネットが言う
「ああ、このやべぇ時に デス1stまで使い物にならなくなっちまったら この世界の力が激減しちまう アバロン傭兵隊がぶっ潰されちまった今 オライオンとデス1stの2人は 何とか使えるようにしてやらねぇとな」
ヴィクトールが表情を困らせて言う
「傭兵隊の皆は 辛うじて命を取り留めたらしいけど 皆かなりの重傷で 部隊に復帰するのは時間が掛かるだろうって 命が助かったのは良かったけど… アバロン最強部隊が壊滅させられたって言うのは 皆もショックだろうね 彼らを攻撃した ログウェルン ファーストクラスター ウィルシュ って者は… 何者なんだろう?もしかして 彼が異世界の王?」
バーネットが言う
「いや、そいつが言ってやがっただろぉ?『リジル様の指令を実行する時』ってよぉ?」
ヴィクトールが言う
「そう言えば… そのリジル様と言うのは?」
バーネットが言う
「ああ、そいつこそ シリウス国王が敵として認識してやがる 異世界の王の1人だぁ でもって、そのリジルの指示で動いてやがる ウィルシュってぇ奴は…」
ヴィクトールが言う
「彼はリジルの兵」
バーネットが言う
「だろうなぁ?」
ヴィクトールが言う
「なら そのリジルの兵である ウィルシュの相棒だって言われた シュライツは?彼は レクターの息子だったのでは?」
バーネットが立ち止まり言う
「ああ… その件なんだがぁ…」
ヴィクトールが立ち止まり バーネットを見て疑問する レクターがやって来て言う
「バーネット第二国王 私の息子シュライツが 迷惑を掛けちまって申し訳ねー 傭兵隊の皆にも 今謝って来た けど…」
レクターが苦笑笑顔で言う
「皆話も出来ねぇほどに重傷の上 麻酔で爆睡中だったから 多分私の謝罪の声は聞こえてなかった!そんな気がする!」
バーネットが怒って言う
「そーいうのは 謝って来たとは言わねーんだよ!この間抜け大剣使いがぁああ!」
レクターが照れる ヴィクトールが言う
「レクター やっぱりシュライツは君の息子で間違いないのだよね?それなら どうして…?」
レクターが困って言う
「ああ、それは…」
バーネットが周囲にプログラムを現して言う
「俺の確認した限り てめぇの子供は ヘクターの家族から得た 養女のニーナだけだ いつの間にやら現れやがった シュライツは 一体何処でどうやって得て来やがったぁ?そもそも ガルバディアの遺伝子を組み込まれたてめぇじゃ 子孫を作りやがる事は出来ねぇ 何処かの誰かから得やがったんなら アバロンへ申請しなけりゃななかった …だと言うのにてめぇは…」
レクターが表情を困らせて言う
「ああ、まったくその通りなんだが 実は シュライツは… ある日たまたま アバロンの城下町で見つけた 正体不明のプログラマーだったんだ!」
バーネットが衝撃を受けて言う
「なぁあ!?」
レクターが言う
「プログラムのやり方や プログラム言語の違いから 多分異世界の奴だと思ったんだが 1人で言葉も分からず困ってたから 声を掛けて保護をして ついでに ヘクターに負けない様に 私の息子にしちまった!」
バーネットが怒って叫ぶ
「どー言う事だ てめぇええ!!何で んな怪しくって危ねぇえ奴を匿って 今まで黙ってやがったんだぁああ!?」
レクターが笑顔で言う
「ああ!もし アバロンやガルバディアへ教えちまったら シュライツはガルバディアにとっ捕まっちまって 私も シリウス国王に 大喜びで仕置きをされちまうと思って 黙ってた!」
バーネットが怒りを押し殺す ヴィクトールが呆気に取られて目を瞬かせる
玉座の間
デス1stがオライオンの前に来て周囲にプログラムを発生させて言う
「傭兵隊は壊滅させられたとは言え お前が回復プログラムで復帰出来る程度であったのは 不幸中の幸いだった」
オライオンが顔を上げデス1stを見て言う
「けど、俺は相棒を失っちまって… デスも親父が居ねーんじゃ…」
デス1stが言う
「確かに お前の相棒であったシュライツは お前から離れ そして私も… だが 我々は 立ち止まっている訳には行かない」
オライオンが反応する デス1stが苦笑して言う
「バーネットに 渇を入れられたからな ヘクターの事は気になる しかし、直接あいつをサポートする事は出来ずとも 今の私に唯一出来る事は あいつが戻って来た時 戻るべき国を民を そして お前を守る事だ」
オライオンが呆気に取られる デス1stが微笑して言う
「ヘクターに お前を頼むと言われた 私はこれより お前の相棒として 戦う」
オライオンの周囲にプログラムが纏い オライオンが自分の体に得た力に驚く
【 ソルベキア城 玉座の間 】
バーネット1世が言う
「ああ、分かってやがるぜぇ… 奴らがてめぇを狙うんだったら 先ずはその周囲からぶっ潰しに掛かる筈だぁ 奴らはこっちの情報を既にいくつか得てやがるんだろぉ?オライオン率いる アバロン3番隊の存在を知ってやがった訳だからなぁ?そうとなれば てめぇの子孫である この俺の事だって 遅かれ早かれ いずれはバレっちまう」
バーネット1世の前にある シリウスAのホログラムが言う
『いずれは ではあらぬ お前の事は 既にバレておるじゃろう その上でアバロン3番隊を壊滅させおった ウィルシュという名の剣士は デス・プロイテの息子とされておった あのシュライツの仲間… 元よりの相棒であったと言う事じゃ ならば こちらの情報は シュライツより全てが 伝わっておるじゃろう』
バーネット1世が不満そうに言う
「ハッ!あの出来損ないガルバディアの民レクターに 三等級プロイテの位を与えやがったのかぁ?俺としては 気に入らねぇ… おまけに 当人だって喜ばねぇだろうぜぇ?」
シリウスAのホログラムがほくそ笑んで言う
『奴が気に入ろうが気に入らのうが関係あらぬ 奴はプロイテの値に相応しいのじゃ』
バーネット1世が怒って言う
「何処が相応しいってぇえんだぁあ!?奴がシュライツを匿ってやがったお陰で この世界の情報がリークしちまってるんだろうがぁあ!?」
シリウスAが微笑して言う
『それが こちらにとっても 好都合であったとしたら どうじゃ?』
バーネット1世が呆気に取られて言う
「なぁっ…!?」
シリウスAが悪微笑して言う
『お前さえ 微塵もそうは思わぬじゃろう?じゃが、これは事実じゃ もし、デス・プロイテが これを計算の上で行ったのであれば 奴の位は プロイテ所かグローテさえも優に超えよるのぉ』
バーネット1世が言葉を失う シリウスAが苦笑して言う
『とは言え 流石に あの出来損ないプログラマーに そこまでの計算は出来ぬじゃろう 恐らく 奴に残されておるアバロンの力が 悪戯をしおった 今の所は そう考えておる』
バーネット1世が少し真剣に言う
「事はこの世界の 存亡に関わる事でありやがったんだぜぇ?んな軽視していて良いのかよ?」
シリウスAが微笑して言う
『お前こそ このシリウスの子孫であるなら リジルやリゲルの手先が多少入り込んだ程度の事で 怯えるではない 我は… そんな情けないお前の 猫が可愛そうじゃ』
バーネット1世が衝撃を受け 慌てて言う
「てめぇこそ 情けねぇ俺の哀れみを 俺の猫になんざ掛けやがってねぇで もっと 視野を広げやがれ!」
シリウスAが笑顔で言う
『うむ、そうじゃな!我もそろそろ 我の猫と遊びとうなった お前の相手は終わりじゃ 敵は遅かれ早かれ お前の命を狙って現れるじゃろう 精々用心しておれ まぁ どうしても自分の身も守れぬと申すのであれば 助けを請うて来るが良いのじゃ?丸3日の仕置きと引き換えに 我自らがお前を助けてやろうぞ?』
バーネット1世が衝撃を受け慌てて言う
「じょ、冗談じゃねぇえ!丸3日もてめぇに 仕置きなんざされやがるんなら 俺は奴らにぶっ殺される事を選ぶぜぇ!」
シリウスAがにやりと笑んで言う
『そうか?残念じゃ 暇が出来たら お前が喜んで我へ助けを求めて来てくれるよう 躾直してやろうかのぉ?』
シリウスAが笑む バーネット1世が怒って叫ぶ
「んな 躾なんざ 食らいやがって たまるかぁああ!」
バーネット1世が怒って手を振り払うと シリウスAのホログラムが消える バーネット1世が溜息を吐いて玉座へ凭れ掛かって言う
「ったく… あの変態国王がぁ 300年経ってもちっとも変わらねぇ…」
バーネット1世が気を取り直して言う
「…っと その変態国王に助けを請わねぇ為にも 万全に万全をきしておかねぇとな… おいっ!バッツスクロイツ!」
バーネット1世が声を上げ 返答を待つ 城内はしんと静まる バーネット1世が疑問して言う
「あん?…おいっ!聞こえねぇえのかぁあ!?バッツスクロイツ!おいっ!鈍臭ぇバッツスクロイツがぁあ!」
再びしんと静まる バーネット1世が呆気に取られ首を傾げて周囲を見てから言う
「…あぁ?そう言やぁ ヴィクトールの奴も何処行きやがったぁ?ヴィクトール!おいっ!ヴィクトール!」
三度しんと静まる バーネット1世が驚き叫ぶ
「ヴィクトール!?ヴィクトーール!!」
バーネット1世が戸惑う 一瞬の間の後 足音が近づいて来て ヴィクトール12世が現れて微笑して言う
「すまない バーネット 通信機の充電が切れてしまってな 急いで戻ったのだが 私に何か急用だろうか?」
バーネット1世が呆気に取られた後 はっとして視線を逸らして言う
「んあ!?あ、ああ… えっと… いや、別に てめぇに用があるってぇ訳じゃ ねぇんだが…」
ヴィクトール12世がバーネット1世の横に来て微笑む バーネット1世がバツの悪そうに顔を背けている ヴィクトール12世が言う
「そうか では、私の方から連絡をしよう ソルベキアに留まらせていた ガルバディアの騎士たちの下に 先ほどシュレイザーを守っていた 騎士たちが合流したよ これで 君を守るガルバディアの騎士は 99人 私も含めれば100人の戦士が君を守るのだ これなら安心だろう?バーネット?」
バーネット1世が呆気に取られた後 視線を逸らして言う
「べ、別に 俺様は何も 心配なんざ…っ!…うん?99人?」
バーネット1世がヴィクトール12世へ向き直って言う
「ガルバディアの騎士が 全部で99人ってぇのはどう言う事だぁ?ソルベキアに在住させてやがった50人に シュレイザーからの50人を合わせて 丁度100人だろうがぁ?」
ヴィクトール12世が苦笑して言う
「うむ、私もそのつもりで居たのだが シュレイザーからやって来た彼らを見て ふと気になって数えた所49人しか居なかったのだよ 予定外であった為 3度ほど数え直しておったもので 少々時間が掛かってしまったのだが やはり新たに加わった騎士は 49人で間違い無い様なのだ それから…」
バーネット1世が首を傾げた状態で疑問して言う
「あん?まだ何かありやがるのかぁ?」
ヴィクトール12世が言う
「ああ、その騎士の不足を確認しようと バッツスクロイツの下へ行ってみたのだが 部屋に居らなくてな?代わりに こんな物が残されていたよ」
ヴィクトール12世が言ってバーネット1世へ手紙を渡す バーネット1世が受け取って広げる
『バーネっちパパ!プリーズヘルプミー!まぢ助けてぇえー!俺っち シリウス様ーに 拉致られちゃいましたーって感じー!?早く助けてくれないとー!きっと 人には言えない あーんな事や 超あーんな事ーされちゃってー!?俺っちお婿に 行けなくなっちゃ…っ!』
バーネット1世が途中で手紙を丸める ヴィクトール12世が首を傾げて言う
「今までに見た事も無い言語なのだが 流石の君でも読めなかっただろうか?バーネット?」
バーネット1世が言う
「いや、読めたぜ バッツスクロイツの奴は… しばらくヴァ~カンスに行って来るから 探さないでくれってよ!?まぁ… もしかしたら… 二度と会えねぇかもしれねぇな?」
ヴィクトール12世が驚いて言う
「二度と!?そうか… それは残念だ 彼は君にとって大分お気に入りの玩具であった様だから… 私は 君が悲しむ姿を見たくないのだよ バーネット」
バーネット1世が 清々しい顔で言う
「いや、良いんだぜ!…確かにちょいと寂しくなっちまうが 俺も大人らしく あいつの幸せを ガルバディアから遠く離れた この安全なソルベキアの地で 願ってやるんだ!」
ヴィクトール12世が疑問して言う
「うん?そうなのか?君がそう言うのなら構わないが…」
ヴィクトール12世が笑顔で言う
「ガルバディアから離れた このソルベキアからと言うと まるでバッツスクロイツは 今 ガルバディアに居るかのようだね?バーネット?」
バーネット1世が衝撃を受けた後 笑って言う
「そ、そうかぁ?まぁ… もしかしやがったら 居るかも知れねぇが まぁ 良いじゃねぇか?なぁ?は… はは… ははははっはー!」
ヴィクトール12世が疑問した後 笑顔で言う
「そうか、うん 君がそういうのなら きっと良いのだろう」
2人が笑う
【 ガルバディア城 機械室 】
バッツスクロイツがアンドロイドのデスの機械鎧に触れる シリウスAがゆっくり振り向いて言う
「鎧ではなく 本人に触れてやってはどうじゃ?あやつも 数百年振りに外気に触れ その感触に懐かしんでおった そこへ最愛のお前に触れてもらえれば もっと喜ぶじゃろう 数百年ぶりの人肌であるとのぉ?」
バッツスクロイツが衝撃を受け 慌てて言う
「う!?そっ!?その…っ お、俺っちはー そのぉー?デスはガルバディアの騎士ーであっても?やっぱり 俺っちにとっては アンドロイドだーって言う そー言う思いーみたいのが?あったりなんかしちゃったりなんかしてー!?い、いや、別にー?それは?デスの事を人として認めないーって訳じゃ 無いーって感じで?俺っちとしてはー そ、そのぉ…」
バッツスクロイツが視線を落として困る シリウスAが微笑して言う
「ふむ、分かっておるわ 我は神とまで言われた者じゃ お前の気持ちなど お前以上に分かっておる お前はあのデス・シュローゼを ただのアンドロイドではなく 特別な存在として見ておるのじゃ 故に 我の作った 399体のガルバディアの騎士たちと同じ身であると想像される あやつの姿を見たくあらぬのじゃろう?」
バッツスクロイツが呆気に取られた後 苦笑して言う
「う…うん… そう…かも…?」
シリウスAが首を傾げた後苦笑して言う
「ついでに言っておくが あやつは確かに数百年前に作られおった者じゃが その肉体は 機械鎧の中で時を止めておったのじゃ 間違っても… 腐敗したゾンビの様な姿などはしておらぬからのぉ?」
バッツスクロイツが衝撃を受けた後喜んで言う
「マジでーっ!?超良かったー!実は俺っちそれ ベリー心配してたんだわー そっかー 時間止められてたんだー!?けど、意識はそのままに身体の時間を止めて?数百年ーとかー?マジありえないシステムなんですけど!?さーすが この世界の神様!?シリウスっちー だーよねー!?」
シリウスAが呆気に取られた後微笑する 一瞬のブラックアウト バッツスクロイツの悲鳴が響く
「ノォーーっ!」
バッツスクロイツが雷鳴の鞭で縛られ シリウスAに踏まれている シリウスAが言う
「今 我の事を何と呼びおったかのぉ?バッツスクロイツ?まさか この我を…」
バッツスクロイツが慌てて言う
「言ってません!言ってませーんー!超マックス美しい シリウス様ーって 呼びましたー!」
シリウスAが笑顔で言う
「そうか 世界最美のシリウス様か それなら良いのじゃ 良く分かっておるのぉ バッツスクロイツ?」
ヴィクトール11世が慌てて言う
「あー!駄目だよシリウス!シリウスが縛って踏みつけて良いのは 僕だけだよぉーー シリウスーー!」
シリウスAが鞭をしまいながら言う
「我が侭を言うではない ヴィクトール 今はこの世界を守る特別な時 故に我は 嫌でもお前以外を こうして躾けてやらねばならぬのじゃ お前は我の猫として こんな時ばかりは 少々我慢をするのじゃ 良いな?」
ヴィクトール11世が不満顔で涙をすすって言う
「うぅ… 分かった… 僕、我慢するよ シリウス…」
シリウスAが微笑して言う
「うむ、良い子じゃ ヴィクトール 流石は我の猫なのじゃ!」
シリウスAがヴィクトール11世の頭を撫でる ヴィクトール11世が笑顔で言う
「うん!」
シリウスAの足元でバッツスクロイツが泣きながら叫ぶ
「こんな時ーだからこそ そこんとこ我慢してくれないでくれて 良いですからーって 感じーっ!?」
バッツスクロイツたちの後方 扉の奥 装置の中にアンドロイドのデスが寝かされていて 視線を向けて瞬きをしている
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