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【 外伝 】異世界からの侵略と

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【 ローレシア帝国 玉座の間 】

リジューネが駆け込んで来て言う
「何があった!?」
大臣Aが言う
「リジューネ陛下!多国籍部隊が機械兵を…っ!」
リジューネが言う
「それは聞いた!私が聞きたいのはその方法だ!機械兵を殲滅する事などが!?大体 テスクローネの話によれば 機械兵は他の大陸から ローレシアのCITC制御装置を狙って来ると!それを殲滅するなど 不可能だ!」
大臣Bが言う
「しかし、見張りの兵より ローレシア帝国を襲う機械兵の数は 過去の数と同等にまで減少したとの報告が入っております」
大臣Aが言う
「機械を用いての確認に置きましても 昨日までローレシアを目指す様に動いていた世界中の機械兵の動きが 今日になり過去の状態と同様になった との情報も確認されております」
大臣BがAへ向いて言う
「機械兵の数が以前と同等であると言うのであれば 機械兵と戦う事が出来るようになった 多国籍部隊が 奴らを殲滅させたと言うのにも頷けるな」
リジューネが言う
「問題は 何故 機械兵の増加が止まったのかと言う事だ 機械兵たちのエネルギー源ともなるそれを制御するCITC制御装置が このローレシアにあるだけでなく 奴らと同等の力を持つ多国籍部隊が現れた… 機械兵は自分たちの存在を脅かすかも知れぬ 多国籍部隊の力を潰す為にも ローレシアへ総攻撃を企てる筈 それが何故!?」
衛兵が言う
「申し上げます!リジューネ陛下へ 今回の多国籍部隊の行動に関し 謁見を希望する者が!」
皆が振り返る 誰かがやって来る

【 多国籍部隊兵舎 フォーリエルの部屋 】

テスクローネが周囲にプログラムを発生させている テスクローネの脳裏 電脳世界にホログラムのテスクローネが居て言う
『世界中の機械兵から CITC制御装置の在り処に関するデータを抹消し ローレシア大陸への機械兵の流入を止めた… 流石は神のお力… すばらしくも 恐ろしいものですね』
テスクローネが微笑すると その前にシリウスBのホログラムが現れて言う
『この世界の機械兵どもは 一定期間を置いて情報を並列化する その瞬間にCITCに関するデータへウィルスを送り込み 制御装置の情報を消去させた… ローレシア大陸への流入に関しては 私が手を加える事も無く 一部の機械兵がエネルギーの無い地域として その大陸の情報を取り入れ並列化した 結果 奴らは悪魔力の薄いローレシア大陸へは 近づかなくなったと言うだけだ』
テスクローネが苦笑して言う
『そのエネルギーの無い大陸の情報と言うのも シリウス様がお作りになられたのでは?現実には ローレシア大陸南部には 中和し切れなかった悪魔力が 所々停滞しています 更に、ローレシアが今のまま 結界と言う名の機械兵に対するバリアを張り続ける以上 それに応じた悪魔力も発生する… 事実、ローレシア帝国の周囲では 機械兵が動けるだけの悪魔力が既に存在しているのです いずれは 今回の中和作業も効力を失ってしまうでしょう』
シリウスBが苦笑して言う
『テスクローネ… デス・グローテ ベネテクト特級プログラマーの子孫 上等な解析だ』
テスクローネが微笑して言う
『ありがとうございます フォルクゴッド』
シリウスBが苦笑して言う
『奴は この世界には存在しない』
テスクローネが言う
『我らの神は 既に貴方へと変わっていますよ?』
シリウスBが目を閉じる テスクローネが微笑して言う
『いずれこの世界の人々は皆 貴方の前に跪くでしょう 自分たちの神である 貴方の前に』
シリウスBが言う
『それは 許されぬ事だ』
テスクローネが言う
『それを決めるのは この世界の人々です』
シリウスBが苦笑してホログラムを消そうとする テスクローネが言う
『あ、所で…』
シリウスBが疑問して顔を向ける テスクローネが微笑して言う
『フォーリエルへ 彼の力は 私のしがないサポートプログラムで 十分であるとおっしゃられたそうで?折角のお言葉ではありますが 私程度の力では フォーリエルに機械兵と戦えるだけの力を 与えてあげる事は出来ません 彼は とても強い男です シリウス様のお力添えを頂ければ きっと』
シリウスBがテスクローネへ向き直って言う
『奴には既に お前と言う相棒が付いている ガルバディアのベネテクトが相棒とした者へ 他の者がプログラムを与えるなど愚弄だ 奴を相棒と認めたのなら お前が最後までサポートしろ』
テスクローネが呆気に取られて言う
『私が… しかしっ』
シリウスBが言う
『奴はアバロンの民ではない しかし、ガルバディアのベネテクトである お前が認めた剣士だ そして、奴の力は お前のプログラムと相性も良い 奴の中に アバロンの力に近いものがあるのか それとも… それと、デス・グローテ』
テスクローネが疑問する シリウスBが悪戯っぽく笑んで言う
『お前たちの情報は 少々 使わせてもらっている 悪く思うな』
テスクローネが疑問する シリウスBがホログラムを消す

フォーリエルがテスクローネの顔を覗き込んで言う
「…ス?テス?おーい テ~~ス~~?」
テスクローネが疑問し プログラムを消してフォーリエルへ振り向く フォーリエルが苦笑して言う
「お、良かった 目開けたまま気絶しちまってるのかと思ったぜ」
テスクローネがフォーリエルへ向いて苦笑して言う
「ああ、大丈夫だ ガルバディアのシリウスB様と お会いしていたんだ」
フォーリエルが言う
「シリウス様と?」
テスクローネが微笑して言う
「うん、プログラムの中でね」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「へぇ すげぇな?」
テスクローネが軽く笑って言う
「…とは言っても やっている事は 通信機を使用してのものと さほど変わらない 強いて言えば もう少し 実際に会って話しているのと 近い感覚だけれど」
フォーリエルが苦笑して言う
「ははっ んじゃ シリウス様のすげぇ姿が見られただろ?」
テスクローネが苦笑して言う
「あれがフォーリエルたちの言っていた 『すげぇ姿』 か… だとしたら ちょっとショックかな」
フォーリエルが首を傾げて言う
「あぁ?何でテスがショックなんだよ?」
テスクローネが言う
「あれは肉体の組織を可能な限り電子的に無抵抗な状態にする事で ガルバディアのシステムを 最も有効に使用するための技術なんだ 全身の組織をあそこまで抵抗の低い状態へ変化させる事は とても高度な技術を必要とする それに加え 神経細胞に埋め込まれているマイクロトランスミッターも もっと精度の高いもの… 恐らくミクロトランスミッターに変えられているんだろうな 肉眼でもその起動を確認できるなんて 電子抵抗の無さを改めて確認させられている気分だ」
フォーリエルが難しい話に音を上げそうな顔で言う
「あ~…それで?何でそれがショックなんだ?俺はガルバディアの技術の凄さなら 十分分かってるつもりだぜ?」
テスクローネが苦笑して言う
「ああ、つまり フォーリエルたちの目に見えているシリウス様の姿は 私の体と同じだからって事さ もっとも私の場合は 最外部の皮膚組織がオリジナルである分 見た目には トランスミッターの起動は確認出来ないけれどね?」
フォーリエルが呆気に取られて言う
「え?…つまり テスの体もあんななのかよ?」
フォーリエルがテスクローネの手を見る テスクローネが苦笑して言う
「うん… この皮膚の下には あのシリウス様と同じシステムが組まれている」
テスクローネが自分の手を見る

【 ガルバディア城 玉座の間 】

シリウスBが自分の手を見てから正面を向いて言う
「機械兵は退散した お前たちは それ以上の力を得る必要は無い 後は… 新世界からの連絡を待て 奴らの作戦は 大詰めを迎えている 余計な力を得て お前たちまで 『化け物』になりたくはあるまい?」
シリウスBの前に多国籍部隊隊員らが居て言う
「シリウス様!俺たちは 俺たちの世界を救いたいんだ!」
「そうだ!俺たちは 新世界に行きたいんじゃない!」
「お願いしますシリウス様!俺たちに ヴァッガス副隊長と同じだけの力を!俺たち一人一人が ヴァッガス副隊長と同じ位の力を持てば この世界を救う事だってきっと出来ます!」
皆が口々にシリウスBへ嘆願する シリウスBが一度目を伏せてから言う
「ヴァッガスは お前たちには見せまいとしているが 既に…」

【 多国籍部隊宿舎 食堂 】

ガイ、ヴァッガス、ロドウ、メテーリが食事を取っている ガイが上品に食べ、ロドウが笑顔で食べ メテーリがすまし顔で食べている ヴァッガスは目の前の数点の肉料理を見て困っている メテーリが気付いて言う
「ヴァッガス?どうかしたの?」
メテーリの言葉に皆がヴァッガスを見てヴァッガスが衝撃を受け慌てて言う
「え!?あ… どうかって?俺はっ 別に…っ」
ロドウが気付いて言う
「あれ?ほんとだ ヴァッガス お腹でも痛いの?」
ガイがヴァッガスの手付かずの料理を見て言う
「うむ… 折角の機械兵殲滅を祝う料理に 手を付けぬとは もしや ガルバディアへ向かった隊員らの事を 待つつもりであるのか?」
ヴァッガスがロドウとガイの言葉にあたふたした後言う
「え!?えっと、あ、ああっ まぁ~ そんな感じだぜ!俺の事は気にしねぇで 皆は食ってくれよ!な!?」
メテーリが呆れて言う
「ロドウとガイの言う通り お腹が痛くて ガルバディアへ向かった皆の帰りを待ってる訳?」
ヴァッガスが焦って言う
「あ!?あー… おうっ!そうだぜ!」
ヴァッガスが笑む メテーリが呆れる ロドウとガイが疑問して顔を見合わせる ヴァッガスが苦笑しながら視線を逸らし 目の前の料理を見てから表情を困らせ 意を決して料理を食べ始める ガイたちが疑問し顔を見合わせた後苦笑して食事に戻る

【 ガルバディア城 玉座の間 】

シリウスBが言う
「彼は 動物の肉を食せぬ体… いや 心というべきか 通常の魔物であれば 自分と同種族以外の 生物を食す事が出来る しかし、人であったヴァッガスは 人かその他の動物と言う見分けしか出来ない その心に 魔物の遺伝子情報が強く影響をもたらし 今や彼は動物の肉を食する事の出来ない身となっている そして 代わりに…」
多国籍部隊隊員らが驚き言葉を失う シリウスBが微笑して言う
「とは言うもの 奴はまだ 仲間と共に過ごす事で その身の影響を最小限に抑えていられている だが、人の身は 動物性の栄養素を欠いた状態で 生き続ける事は困難だ 奴が 仲間から離れ 己の心に負けた時は…」
多国籍部隊隊員らが唾を飲み込み言う
「まさか…っ ヴァッガス副隊長が… 人を…っ!?」
シリウスBが目を伏せて言う
「彼の身をその様にしてしまったのは私だ 従って その責任は負う ヴァッガス1人の遺伝子情報の解析と改良は さほど時間をかけずに行える 彼が苦しむ時は 残り僅か… しかし、お前たち全員となると 話は別だ 時間も掛かり お前たちもその時を待つ事は難しいだろう」
多国籍部隊隊員らが顔を見合わせる シリウスBが言う
「分かったのなら 大人しく お前たちが守ったローレシア帝国にて 新世界からの連絡を待て 新世界の王 お前たちの神シリウスは 必ずお前たちを助けるだろう」
多国籍部隊隊員らが顔を見合わせる シリウスBの移動プログラムが多国籍部隊隊員らの周囲に現れ 彼らの姿が消える シリウスBが一つ溜息を吐いて言う
「… それにしても 奴らは何のためらいも無く 私の前に現れてくれる 私は闇の王であると言うのに」
シリウスBが苦笑する

【 多国籍部隊宿舎 】

ヴァッガスが苦しそうにトイレで口を押さえて居る

食事の片づけをしているメテーリとロドウ メテーリが言う
「ヴァッガス 急に飛び出して行ったけど どうしたんだろう?」
ロドウが苦笑して言う
「凄い勢いで食べてたから 何か喉にでも詰まらせちゃったのかな?」
メテーリが呆れ顔で言う
「まーったく 相変わらず落ち着きが無いんだから」
ロドウが微笑する

ガイが通路を歩いていると ヴァッガスがトイレから出て来る ガイが気付き声を掛ける
「ヴァッガス、ガルバディアへ向かっていた隊員らが戻った シリウス様は彼らに力を与えては下さらなかったそうだ 貴殿の言う通りであったな?」
ヴァッガスが言う
「ん?ああ… だろうな」
ガイが苦笑して言う
「私は彼らの熱意であれば シリウス様も了承を下さると思ったのだが 私の考えは甘かった様だ それとも シリウス様はやはり 新世界の… シリウスA様の事を思っておられるのだろうか?」
ヴァッガスが疑問して言う
「あぁ?シリウスA…?ああ、俺たちの… 元々の神様の方か …さぁ どうだろうな?俺には神様たちの考えなんて分かんねぇよ」
ガイが意外そうに言う
「うん?そうであったか」
ヴァッガスが苦笑して言う
「当ったりめぇだろ?」
ガイが苦笑して言う
「私はてっきり 貴殿がシリウス様のそのお気持ちを推し測り 今回の隊員らの希望を叶えない事を予測したのだと思ったのだが… では何故?我々より力を与えられている  貴殿にのみ 何か分かる事でもあったのであろうか?」
ヴァッガスが視線を逸らして言う
「ああ… まぁ… 色々な …あ、ほらよ?言葉だって 最初は話せなくなっちまったし!」
ガイが表情を困らせつつ微笑して言う
「うむ、その事は隊員らも了承済みであったのだが?」
ヴァッガスが慌てて言う
「あ、ああああっ んなら 分かんねぇ!何も… 分かんねぇよ!」
ガイが呆気に取られてから苦笑して言う
「ふっ…そうか では これからの多国籍部隊の在り方について 新たに話し合おうと思う 貴殿もミーティングルームへ来てくれ 戻った隊員らが既に集合している」
ヴァッガスが言う
「おうっ 分かった じゃ先な!」
ヴァッガスが軽く手を上げて立ち去る ガイが見送ってから立ち去る

【 多国籍部隊 ミーティングルーム 】

多国籍部隊隊員らの先頭にフォーリエル 前にテスクローネ 横にヴァッガスが居る ガイとロドウ、メテーリがやって来ると 皆が向き ヴァッガスが言う
「ガイ このフォーリエルのダチのテスクローネが 今回のローレシア防衛戦に シリウス様が手を貸してくれたんだって言うんだ」
ガイたちがヴァッガスの近くへ来て ガイがテスクローネを向いて言う
「シリウス様が?」
テスクローネが微笑して言う
「ええ、皆さんもお気付きであったかと ローレシアへ集まる機械兵の数が減り 新たにやって来る他大陸の機械兵の姿も無くなった事に」
メテーリが思い返す様子で言う
「そう言えば~」
ロドウが微笑して言う
「遠距離攻撃を得意とする 東大陸の機械兵が居なくなってくれたお陰で だいぶ戦いやすくなったよね?」
テスクローネが言う
「シリウス様は機械兵たちのデータから CITC制御装置の在り処に関する情報を消去し 更に、このローレシア大陸には 機械兵のエネルギーである悪魔力は存在しないと言う 偽データを送り込んで下さいました 結果 世界中から押し寄せようとしていた機械兵の動きが無くなり 元々ローレシア大陸に存在していた機械兵も あえて帝国へ向かうと言う事が無くなったと言う訳です」
ヴァッガスが苦笑して言う
「相変わらず 俺らの闇の王様は 人知れねぇ所でやってくれるぜ」
ガイが苦笑する ロドウがメモ帳に書きながら言う
「でも、今回はテスクローネさんのお陰で 皆にも知ってもらえたね?今回は僕も堂々と日記に書けて嬉しいよ!」
テスクローネがロドウへ苦笑して言う
「いえ… 折角シリウス様が人知れず行った事ですので 後のシュレイザーの歴史書へ 書き記してしまうのはどうかと…」
ヴァッガスがガイへ向いて言う
「そんな、シリウス様だが この世界を自分たちの手で救いてー って言うこいつらには ローレシアで大人しく待ってる様に言ったらしい」
メテーリが言う
「大人しく待つって 新世界からの連絡を?」
ガイが考える ロドウが残念そうに言う
「折角僕らでも この世界を救おうって 各国へ結界を張ったりもしたのにね?」
ヴァッガスが周囲を見渡して言う
「ああ… そう言やぁ その作戦立案者であった あの人は何処行ったんだぁ?…あぁ 人じゃなくて猫だったかぁ?」
ガイが気付いて言う
「ヴィクトール様であるのなら リジューネ陛下と」
リジューネがやって来て言う
「話は聞かせてもらった ガイ隊長 そして テスクローネ殿」
皆が驚いて振り返り ガイが言う
「リジューネ陛下っ!?」
ヴィクトール11世が笑顔で現れて言う
「説明するのも面倒だから 連れて来ちゃった!えへっ!」
メテーリが驚いて言う
「面倒だからってっ!普通 国王様を連れて来ちゃうっ!?」
リジューネが近くへ来て 多国籍部隊隊員らへ向いて言う
「まずは 機械兵殲滅を行った 多国籍部隊隊員諸君 このローレシア帝国に生きる全ての者を代表して …礼を言う」
皆が驚く ヴィクトール11世が笑顔で見守る リジューネが言う
「貴殿らの働きは 人々は勿論 帝国へ結界を張る事に使用する エネルギーの消費を抑える事にも貢献する」
テスクローネが気付き言う
「帝国へ結界を張る事に使用するエネルギーの消費を抑えるとは?先日まで結界周囲に居た機械兵を殲滅したとは言え このローレシア大陸には未だ残っている魔物や機械兵は居ます 奴らがいつ帝国に攻撃を仕掛けてくるかは分かりません その状態で結界を解除してしまってはっ」
リジューネがテスクローネへ向いて微笑して言う
「我らもその事は分かっている テスクローネ殿  よって、結界を完全に解除する事はしない だが、いつ襲って来るか または来ないかも分からぬ機械兵を警戒し 今のまま結界を維持して 無駄に悪魔力を増やしてしまう事は得策ではない そこで、」
リジューネが多国籍部隊員へ向いて言う
「我らは 結界の範囲を最小限にする事で これに対処しようと思う」
テスクローネが言う
「結界の範囲を最小限… つまり ローレシア城のみを守る範囲とするのですね?」
リジューネが言う
「そうだ、結界は一度解除してしまうと その再起動には長いチャージ時間を必要としてしまう これでは 機械兵の奇襲に対応出来ない 従って 最小限の結界を維持する事で 有事の際の民の避難先として また、ローレシア城に在る 転送装置を含む多くの機械を守る為の 最小限の結界となる」
ヴァッガスが言う
「民や機械を結界の中で守るってぇのは分かったが 肝心の機械兵の襲撃にはどう対処するんだ?折角みんなの畑や家が無事だったってぇのに それが全部ぶっつぶされちまったんじゃ」
リジューネがヴァッガスへ向いて言う
「そこで、私はここへ 諸君の前へとやって来たのだ」
ヴァッガスが疑問する リジューネが隊員らへ向いて言う
「今後 ローレシア部隊は 遠い過去に使用していた ローレシア帝国の城壁を復旧し その見張り台の機能を復活させる 城壁に在る全ての見張り台へ兵を置き 機械兵の襲来に備えると共に その確認がなされた時には 即座に人々の避難を誘導し 更に」
フォーリエルが言う
「機械兵と唯一互角に戦える 多国籍部隊に防衛の依頼をする」
リジューネがフォーリエルへ視線を向け微笑して頷いてから言う
「このローレシア帝国を守るため 力を貸して欲しい ローレシアの王として 諸君に頼む この通りだ」
リジューネが隊員らへ頭を下げる 皆が驚く リジューネが頭を下げたまま眼を閉じて居る ガイが苦笑して言う
「リジューネ陛下 お顔を上げて下さい 我ら多国籍部隊は 皆このローレシア帝国に生きる者 この地を守るため 力を貸すのは当然の事 …そうであろう?皆!」
多国籍部隊隊員らが顔を見合わせた後口々に言う
「勿論だぜ!」「俺らがローレシアを守るんだ!」「堅苦しいのは無しだぜ!」「おうよ!当然だー!」
リジューネが皆の言動にホッとして微笑して言う
「…ありがとう」
ヴァッガスが驚きロドウとメテーリへ向く メテーリが呆気に取られながらヴァッガスの視線に合わせ ロドウが笑顔になり3人で苦笑する フォーリエルが苦笑してテスクローネへ向く テスクローネが微笑して頷く ヴィクトール11世が笑顔で居る

翌日 

良い天気の中 ローレシア帝国の結界が最小限 ローレシア城のみを覆う 人々や兵が城壁の修復作業を行っており 見張り台や復旧中の見張り台の下の場所で 兵が見張りに付いている 数人の多国籍隊員らが見回りをしている 見張りの兵と軽く挨拶をする 農作業をする人々 楽しそうに遊ぶ子供たち ヴィクトール11世が高い場所でそれらを見て微笑し うとうとと日向ぼっこをしていて うっかり落ちそうになる

【 ローレシア城 玉座の間 】

大臣らがリジューネへ報告している
「城壁の復旧作業は人々の協力もあり 予定を上回る速度で進行しております」
「先日の夜に引き続き 今朝方も機械兵の襲来がありましたが 民の避難をさせるまでも無く巡回中の多国籍部隊兵が 始末したとの報告が入っております」
リジューネが言う
「新世界からの連絡は… 聞くまでも無いか 多国籍部隊へ連絡を取り 機械兵との戦闘状況を確認し 今後も同様の始末が可能であるのなら 民への避難指示の具合を調整したいと伝えろ それから 戦闘報酬についても」
大臣Bが返事をして立ち去る 大臣Aがリジューネへ向いて言う
「報酬と申しますとリジューネ陛下 現在も新世界からの連絡を待ち続けて居ります ソルベキアの研究者たちへの報酬なのですが」
リジューネが顔を向ける 大臣Aが言う
「彼らに支払っております報酬額は 他の者への額を遥かに超えております 現状 新世界からの連絡をただ待つだけの彼らに その報酬を支払い続ける事は ローレシアとて少々痛手にございます 先の人員削減に続き もう少々人数を減らしますか 報酬額を下げるなどしてみては如何かと」
リジューネが言う
「ソルベキアの研究者らへ支払っている報酬のその多くは 秘密保持が目的とされている… が、先の削減で 多くの口止め料を支払ったものの やはり 情報漏えいは防ぐ事が出来なかったな」
大臣Aが表情を困らせて言う
「はい…」
リジューネが考えながら言う
「とは言え 新世界との通信に 彼らの力が必要である事も否めんか… よし、報酬の削減を伝え 自主的な撤退を促せ 彼らの多くはローレシアからの報酬で生活している 差ほどの人員削減にはならぬだろう 万が一彼らに連帯感などがあったのだとしたら その時は 1人でも残ってくれそうな者が居る」
大臣Aが表情を驚かせて言う
「その様な者が ソルベキアの民に?」
リジューネが微笑して言う
「うむ… 所で、その奴は最近どうしている?」
大臣Aが言う
「奴… と言いますと?」
リジューネが言う
「ベハイム・フロッツ・クラウザーだ 何でも転送装置の能力改良への 糸口を見つけたとか言っていたが?」
大臣Aが思い出した様に言って手元の資料を探る
「ああ、はい ベハイム殿は~ 先日から転送装置の改良をと 転送室に居られるようですが 余り思わしい報告を頂いては居りません ローレシアの最重要機密情報の提供を 求める連絡が入っておりますが」
リジューネが溜息を吐いて言う
「ハッ… またか?」
大臣Aが資料から顔を上げて言う
「先のザッツロード王子捜索時における リジューネ陛下からのお言葉を受け 私めから それは出来ないとお伝えしておきましたが」
リジューネが言う
「それで良い 私の見解は変わらぬ これからも要求があった時には お前からその様に返答しておけ」
大臣Aが言う
「かしこまりました」
リジューネが一息吐いて言う
「新世界から 我らを転送させるための連絡が来た時は きっとシリウス様もお力添えを下さる あの転送装置の能力を 向上出来るのであれば シリウス様がその時にご指示を下さる筈だ 今ソルベキアの者に下手に触らせ 壊されでもしては堪らん」

転送室

ベハイムが操作盤を操作してから溜息を吐く ザッツロード6世がやって来て言う
「クラウザー殿 どうですか?」
ベハイムが振り返り表情を落として言う
「申し訳ありません ザッツロード王子… 王子や皆様にお力添えを頂いて置きながら」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「はは… そう気を落とさないで下さいクラウザー殿 それから、我々に出来る事があれば またいつでも言って下さい」
ベハイムが苦笑して言う
「ありがとうございます」
ザッツロード6世がモニターのプログラムを見ながら言う
「私は 夢の世界でこの転送装置の操作を習いました …とは言っても 転送作業をするための機械操作であって 装置その物がどの様な仕組みになっているかなど 考えも及ばなかったのですが」
ベハイムが微笑して言う
「その夢の世界と言う 意識のみの世界においても この転送装置は変わらず この姿であったのですか?」
ザッツロード6世が頷いて言う
「はい、この辺りを操作して 転送先の座標と人数 重量などを入力して」
ザッツロード6世が操作盤を指差す ベハイムがそれらの言動に感心して言う
「なるほど… 夢の世界と言うものは シリウス様がお作りになられた情報世界 その世界に存在した転送装置は きっと遠い過去 シリウス様ご本人がガルバディアの民に造らせた この転送装置の情報 そのものであったのでしょう」
ザッツロード6世が呆気に取られた後言う
「そうか あの世界はシリウス様が… ガルバディア国王が創った世界 だとしたら そこに存在したものも全て ガルバディア国王の知る物だったのかもしれない…」
ベハイムが苦笑して言う
「私もその世界に行く事が出来ていたら… もっと多くの情報を知り もっと多くの事が出来たでしょうに… 私がガルバディアのプログラムさえも 解析出来る程に力を得ていたら… そうすれば この転送装置の能力を向上させる事も出来たのでしょうね」
ザッツロード6世が言う
「ソイッド村にあった転送装置もガルバディアのものなのですよね?この転送装置もガルバディアの… それなのに 何故ソイッド村のものは解析が可能で こちらの物は」
ベハイムが言う
「ソイッド村にあったものは 転送する者が限られており 尚且つその操作は あの転送装置を作り上げた ご本人にしか出来ぬよう システムが組まれておりました それ自体が防衛となり わざわざ別のプログラムによる防壁を張る必要も無かったのでしょう しかし、こちらの物は転送する者の限りなども無く 尚且つローレシアへ使用権が与えられている分 システムプログラムそのものの防衛が 強固になされていたのです 当然と言えば当然ですが 軽率でした…」
ザッツロード6世が言う
「転送する者を限る…と言うと つまり、あのソイッド村の転送装置は ソイッド族のみしか 転送出来ない装置であったと言う事ですか?」
ベハイムが言う
「そういう事になります 厳密に言えば 細かい設定があり ソイッド族ではない者でも転送を可能としている様ですが 大筋はそれで間違いありません」
ザッツロード6世が首をかしげて言う
「それで… 装置を作った本人にしか 操作が出来ないと言う事は ガルバディア国王 …新世界のシリウス様にしか 操作は出来ないと?」
ベハイムが考えながら言う
「いえ あの転送装置は 恐らく 新世界に居られるシリウス様がお作りになられたものでは あられないかと思われるのです」
ザッツロード6世が驚いて言う
「え?では、ガルバディア国王以外に 転送装置を作れる者が… それは もしやっ!?この世界の!?」
ベハイムが苦笑して言う
「ええ、そう思います この世界のガルバディアに居られると言う もうお一方のシリウス様」
ザッツロード6世が考えながら言う
「シリウスBは ソイッド族たちにとっては 新世界のシリウス様を置いて 自分たちの神と慕っている者だ そうとなれば シリウスBがソイッド村に転送装置を作り 旧世界のソイッド村から新世界へ転送したと言う事も」
ベハイムが言う
「折角ソイッド村の転送装置を解析し 良いデータが取れたと言うのに それを組み込めないとは… 心苦しい限りです これを組み込む事が出来れば 一度の転送人数を数十倍にする事も可能であると言うのに …今のままでは 新世界へ向かう事が出来るのは このローレシア帝国に生きる者の半数にも満たない いや、それ以下になるかもしれません エネルギーの蓄積が無い状態で 転送を行うのでは 最悪数百名にまで落ちるとも」
ザッツロード6世が驚く ベハイムが俯いて言う
「これほどの大事であると言うのに リジューネ陛下は未だ ガルバディアのプログラムを解析するその情報を 私へ与えては下さらない… やはり 私への信頼が持てないと言う事なのでしょうね」
ザッツロード6世がベハイムへ向いて言う
「リジューネ陛下が そのガルバディアのプログラムを解析する情報を持っていると?」
ベハイムが言う
「はい、ローレシアの王が持つローレシアの最重要機密事項が記されている 外部保存装置に ガルバディアのプログラムをソルベキアのプログラムへ変更する事が出来る システムが組まれているそうなのです ガルバディアにもしもの事があった時の為にと シリウス様が残されたそうです」
ザッツロード6世が言う
「ガルバディアにもしもの事があった時 …ガルバディアは滅亡し その王も新世界へ向かってしまった リジューネ陛下は何故それを渡してくれないのです?」
ベハイムが苦笑して言う
「この世界のガルバディアは滅亡しましたが 新世界へ向かったシリウス様が ご健在である事は変わりません 故に、リジューネ陛下は この世界のガルバディアが滅んだ事を 受け入れるおつもりは無いのです」
ザッツロード6世が驚いて言う
「そんなっ!シリウス様はご健在であっても 新世界からこの旧世界へ力を与える事は出来ません!それなのにっ」
ベハイムが苦笑する ザッツロード6世が考えて言う
「…もし、このまま転送を行うとしたら やはり、そのための聖魔力をCITCで抽出する事になる そして、エネルギーを利用するのがローレシアである以上 ローレシアの魔力穴からの抽出量が一番多くなる」
ベハイムが言う
「新世界から連絡が入り 転送を行うとすれば 出力を最大に上げて 一度限りの転送となるでしょう その後 この場所を守る術はありません ですから、どうにかして その一度限りの転送人数を 上げなければならないのです」
ザッツロード6世が意を決して言う
「クラウザー殿、私が直接 その外部記録装置という物をお借り出来る様 リジューネ陛下へお願いして来ます!」
ベハイムが表情を困らせて言う
「え…?は… はぁ…」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「駄目だと言うのなら 宝玉の時みたいに 少々、お借りして来ます… あ、出来れば その代用品になる様な物… なんて 無いですよね?」
ザッツロード6世が軽く笑って頭を掻く ベハイムが呆気に取られた後苦笑して言う
「残念ながら あれ程旧式で大きな外部記録装置は 骨董品のコレクターでも持ち合わせては居ないでしょう」
ザッツロード6世が焦って言う
「そんなに… 大きな物なんですか?」
ベハイムが言う
「見た目は古びた本の様な形をしています 電子本とも言われ 大きさは辞書ほどもあるとか… もっとも ガルバディアの技術で その様な大きさになった訳では 無いでしょうけれどね」
ザッツロード6世が考えて歩きながら言う
「辞書の様な本か…」
ベハイムが苦笑して言う
「ザッツロード王子、念の為申しますが」
ザッツロード6世が振り返る ベハイムが表情を引きつらせて言う
「通常の辞書などでは とても誤魔化し切れません 私もこれ以上 リジューネ陛下からの信頼を 失いたくもありませんので」
ザッツロード6世が笑顔で言う
「大丈夫ですよ クラウザー殿 リジューネ陛下はアバロンの民です 余り細かい事は気になされないでしょう」
ザッツロード6世が部屋を出て行く クラウザーが汗を掻く

王の間

リジューネが盛大なくしゃみをする
「はぁあーーっくしょんっ!」
リジューネがハッとして誰も居ない部屋で取り繕って言う
「い、いかん つい…」
リジューネが盛大に鼻をかんでから言う
「特に寒くもないのにくしゃみとは… まさか誰かが私の噂でも?…まぁ ローレシアの王ともなれば 噂の一つや二つ位 いつでもされているものだろう」
リジューネが一息吐いて目の前の電子本を閉じる 電子本の鍵が勝手に閉まる リジューネが微笑して言う
「再び私が声を掛ける時まで このローレシアの大切な情報を お守り下さい シリウス様…」
リジューネが本を机にしまってから ふと思い出して言う
「うん?そう言えば テスクローネに錠を外させた エレンソルシュラ女王の日記は…」
リジューネが首を傾げ 机の中や周囲を見てから考え ハッとして立ち上がる
「しまったーっ!私とした事がっ!」
リジューネが王の間を飛び出して行く 衛兵が呆気に取られて見ている

絵画の間

ザッツロード6世が絵を見上げて言う
「これが全て同一人物の シリウス様…」
ザッツロード6世が様々なシリウスAの絵を見て言う
「まるで別人 こんなに変わっても 皆同じ1人の人物であるなんて事が…?あ、いけない 絵を見せてもらうのも程々にして リジューネ陛下を探さないと」

絵画の間 扉前 

衛兵2人が顔を見合わせて言う
「ザッツロード王子なら… 良いんだよな?」
「一応 ローレシアの王族には許されるって言うんだから 良いんじゃないか?ちょっとだけだって言ってたし」

室内

ザッツロード6世が衛兵らの会話が聞こえ苦笑して言う
「リジューネ陛下… ここに居ないとしたら どこに」
ザッツロード6世が部屋を出ようとする 衛兵らが話している
「けど、ザッツロード王子は 新世界ローレシアの王子だから… やっぱ駄目だったか?」
「え!?そ…そっか?じゃあ 見せなかった事に!?」
ザッツロード6世が苦笑して視線を下げ向かおうとしてふと気付いて言う
「あれ?何だろう?」
ザッツロード6世がエレンソルシュラ女王の日記に気付き手に取り 首を傾げながら開く 開いた瞬間に電子画面が現れザッツロード6世が驚いて言う
「わあっ!?」
同時に扉の外から衛兵の声が響く
「リジューネ陛下!?」
「い、如何なされましたっ!?」
ザッツロード6世が咄嗟にエレンソルシュラ女王の日記を隠す リジューネが入って来て言う
「ザッツロード王子!?」
ザッツロード6世が驚いて言う
「は、はいっ!?」
リジューネがハッと冷静を装って言う
「あ… いや… ここで 何をしている?」
ザッツロード6世が焦って言う
「え?あ、は、はい その…っ シ、シリウス様の絵を…っ」
ザッツロード6世が絵画を指差す リジューネが示された方向を見てから咳払いをして言う
「う…うんっ そ、そうであったか…」
ザッツロード6世がリジューネを見て言う
「あ、あの、それでは 私は これでっ!え、絵を見せて頂きまして ありがとうございましたっ!」
リジューネが戸惑って言う
「う、うむ…」
ザッツロード6世が部屋から出て行く リジューネが見送った後考える様子で言う
「私とした事が 少々取り乱したか…?…ええいっ ザッツロード王子は ローレシアの王子!シリウス様の絵を見る事は… 許される者だ …うむ 不愉快ではあるが 仕方が無い さて、それよりも」
リジューネが周囲を見渡す

転送室

ベハイムが言う
「これは…」
ザッツロード6世が言う
「あ、あれ?違いましたか?電子本って」
ベハイムが言う
「ええ、電子本であることは間違いありませんが どうやらこれは 別の物の様ですね」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「ああ… そうだったんですか そっかぁ… そうですよね?いくら何でも ローレシアの最重要機密情報が 絵画の間に忘れられているなんて事」
ベハイムが苦笑して言う
「ええ、そうでしょうね いくら細かい事を気になさらないアバロンの方でも そこまでの事は無いと思いますよ …しかし 折角ですので」
ベハイムが電子本の解析をする ザッツロード6世が苦笑して言う
「思わず隠してしまったとは言え 早くお返ししないと… 今度こそ捕らえられてしまうかな…?はは…」
ベハイムが驚いて言う
「こ、これは…っ」
ザッツロード6世がベハイムへ向いて言う
「どうかしましたか?クラウザー殿」
ベハイムが険しい表情で言う
「これをご覧下さい ザッツロード王子」
ザッツロード6世が疑問して示された部分を見て言う
「え…?これは」

城内 通路

リジューネが表情を困らせ考えながら歩いて言う
「絵画の間には無かった… 清掃の者が回収したのか?いや… まさかな… では 別の所に?あの時… 玉座の間に持って行っただろうか?」
ザッツロード6世とベハイムがやって来て ザッツロード6世が言う
「リジューネ陛下」
リジューネが顔を上げ気付いて言う
「ザッツロード王子… そ、それはっ!」
ザッツロード6世がエレンソルシュラ女王の日記を差し出して言う
「先ほどは 急に声を掛けられ 思わず持ち出してしまいました 申し訳ありません」
リジューネがエレンソルシュラ女王の日記を奪うように受け取って言う
「ザッツロード王子!貴殿と言う者はっ!宝玉に続きっ!」
ザッツロード6世が言う
「はい、重ね重ね申し訳ないと思っています しかし、リジューネ陛下」
リジューネがザッツロード6世を睨み付ける ザッツロード6世が真っ向から受け止めて言う
「その日記に書かれている “別世界への転送” …リジューネ陛下は それを試そうとは 思われないのですか?」
リジューネが疑問して言う
「別世界への転送?」

転送室

ベハイムが電子本を開きリジューネへ差し出して言う
「ここです」
リジューネが電子本を覗き込む ベハイムが言う
「エレンソルシェラ女王は シリウス様にとても愛され 美しい世界へ招待されたと書かれています その場所には多くの動物が居り 人工物も人も居らず 争いの無い平和な世界であったと」
ザッツロード6世が言う
「シリウス様は エレンソルシェラ女王を連れて行く ずっと以前からその世界へ行っていたのでしょう その証拠に シリウス様の猫と呼ばれる シリウス様が移動時に腰掛けている大きなライオンは その世界からの贈り物だと シリウス様がエレンソルシェラ王女に説明した事も書かれています」
リジューネが2人の説明を聞いてから日記を読む

ローレシア暦1288年、春の月、9の日
 本日は、私 エレンソルシェラがローレシアの王となって10年目の記念式 しかし、祝いの式典にも拘らず どの祝辞にも 他国との争いに勝利しようなどの言葉が入り 胸が痛む 我がローレシアはシリウス様の愛する国として知られている 故に 神の怒りを恐れる各国が この国を襲撃する事は無い それでも皆 自分の国をローレシアの同盟国とすることで その力を得ようと考えているのだ …人々は何故 争うのか

 私は憂鬱な式典を何とか切り抜けると いつもの様に ローレシア最下部の部屋へと向かい シリウス様へ助けを求めた シリウス様は直ぐに私の声に答え 私を別世界へ導いて下された 緑が生い茂り美しい自然が何処までも続く 私たちの世界と同じ地形でありながら 別の世界… 私が私たちの世界で言う所の ローレシア運河の畔へ向かうと そこにシリウス様の猫 ヴィクトール様がいつもと同じく日向ぼっこをされていた  私は先ほどまでの胸の苦しみが嘘の様に溶けるのを感じつつ 足早に向かいそこに居られるであろうシリウス様をお呼びした しかし、そこにシリウス様は居られず 振り返ったヴィクトール様が のんびりと欠伸をされた 私は肩を落としつつも 言葉が通じぬ事も忘れ ヴィクトール様へ思わず声を掛けていた 「シリウス様は?貴方のご主人様はどちらにいらっしゃるの?」すると ヴィクトール様はゆっくり起き上がり 微笑んで仰った「お前の目の前に居る」

 私がそのお言葉とお声に驚いていると 目の前でヴィクトール様がシリウス様へと変わり 呆気に取られる私を見て楽しそうに笑われた 本日は私がローレシア王となった10周年 それを祝っての余興であられたと そして、当のヴィクトール様はと言うと 今は久方ぶりの故郷の世界 その世界の故郷へと戻り仲間たちと会っているのだとか… 私は心底驚き 共に 意外なシリウス様の遊び心に胸が温かくなり 久方振りに心より声を出して笑ってしまう そして私は まるで私と同じくして笑われる シリウス様のお声を耳にする事が出来た

リジューネが日記から顔を上げて言う
「エレンソルシェラ女王は この頃から新世界へ向かっていたと!?」
ザッツロード6世が言う
「しかも、エレンソルシェラ王女は その世界との行き来がいつでも可能であったと書かれています 特にこの頃は 毎日の様に別世界へ向かっては こちらへと戻っています」
ベハイムが言う
「更に 興味深いのが その移動に使用した装置 この装置は 現在もこのローレシアの地下に在り そして…」
ザッツロード6世が言う
「その装置の使用には 聖魔力も悪魔力も 必要としないのです!」
リジューネが驚いて言う
「何だとっ!?」
ベハイムが言う
「先ほど私とザッツロード王子が確認して参りました ローレシア王家の紋章による封印がなされていましたが それは ザッツロード王子の生態識別で難なく開き 装置の解析も可能でした」
ザッツロード6世が言う
「クラウザー殿が解析を行い出された結果を聞き 私は思い出したのです 新世界ローレシアにも 同じ場所 ローレシア城の地下深くに 同じくローレシア王家の紋章による封印がなされた部屋がある事を」
リジューネが驚く

城内 最下部の部屋

ザッツロード6世が手をかざすと ローレシア王家の紋章がかかれた扉が開く ザッツロード6世が入り リジューネが周囲を警戒しながら入り ベハイムが続く

部屋の明かりがつき リジューネが正面の移動魔法陣を見て言う
「これは…移動魔法陣か?」
ベハイムが言う
「はい、一見 通常の移動魔法陣の様ですが この移動魔法陣の下には 通常のそれとは違う仕掛けがなされています」
リジューネがベハイムへ向く ベハイムが移動魔法陣の中央部分からデータを取り出し モバイルPCへ転送して解析しながら言う
「通常の移動魔法陣は 各国に繋がれた移動ルートの情報が流れており 利用者がその中の一つを選択し 移動する事になります しかし、この移動魔法陣に繋がれているルートはたったの一つ これは ガルバディア製ではありますが 元々は ローンルーズの民が使用していた ワープロードと呼ばれるシステムなのです」
ザッツロード6世が言う
「そのローンルーズの民が使うワープロードと言うのは 殆どエネルギーを使用する事が無いので 我々ローレシアの民がその身に蓄積する事の出来る魔力程度でも 自分自身を転送させる事が出来るそうです ですから もし、これが 今でも使えるのであれば!」
リジューネが言う
「ローレシアの民は 全てこの転送装置で新世界へ向かわせ その他の民については 今までの予定通り転送室にある物を使う… それにより ローレシア帝国に住むものの内 半数程度しか転送は不可能であると言われていたそれを 補う事が出来る…か だが、しかし それでも今は」
ザッツロード6世が言う
「機械兵ファクトリーのエネルギーを失い 数百名しか転送出来ない」
リジューネが目を伏せる ザッツロード6世が言う
「…リジューネ陛下 ローレシアの最重要機密情報を クラウザー殿へ託して下さい」
リジューネがザッツロード6世へ向く ザッツロード6世が言う
「その代わり 私がこの装置の確認を行います」
リジューネが驚いて言う
「なっ!?」
ザッツロード6世が言う
「この装置を使えるのは 残念ながらローレシアの民だけです リジューネ陛下はアバロンの民 この装置を試したくとも 出来ません」
リジューネが視線を逸らす ザッツロード6世が言う
「何百年も使われていなかった この装置を使用する事は危険が伴います 他のローレシアの者に試させる事も出来ない 到着した先が 本当に新世界であるかの確認を行うためにも 私が行くのが妥当であると言えます」
リジューネがザッツロード6世を見て言う
「危険が伴うと分かっておりながら…っ 王子、貴殿には 同じくローレシアの民である仲間たちが」
ザッツロード6世が微笑して言う
「はい、もちろん彼女たちに 試させる事は出来ません ローレシアの王子として …仲間としても」
リジューネとザッツロード6世が見詰め合う ザッツロード6世が強い意志を持ってリジューネを見る リジューネが目を伏せ悔しそうに言う
「私が… ローレシアの民であったなら…っ」
リジューネが拳を握り締める ザッツロード6世が苦笑する

転送室

ベハイムが操作盤を操作しプログラムを入力している リジューネが腕組みをしながらそれを見て言う
「…王子は …いつ戻るのだろうか?」
ベハイムが操作をしながら言う
「ザッツロード王子が新世界へたどり着き その場所を確認し 新世界ローレシアのイシュラーン陛下とお話され 可能であれば新世界のガルバディアにて シリウス様とお話する… 新世界の作戦が どの程度進行しているのかの確認なども含めれば 2日3日は掛かってしまわれるかと…」
リジューネがベハイムへ向いて言う
「新世界からの通信は それ程エネルギーを使用せずに行えると言っていたな?そのエネルギーとは… 新世界へ無事到着した事を伝えるのには 使えぬほどの量となるのだろうか?」
ベハイムが操作を続けながら言う
「正直、新世界からの通信に使用するエネルギー量は 私には判りかねます ただ、こちらから送るのにあれ程の苦労を強いられるものを 新世界からでは難無く 直ぐにつなぐ事が出来た… と言う ザッツロード王子のお言葉から 推し測ったに過ぎません」
リジューネが考えて言う
「…では、実際は多くのエネルギーを必要とする事なのかもしれんな そうでなければ 直ぐに連絡を寄越すだろう」
ベハイムが苦笑して作業の手を止め リジューネへ向いて言う
「そうでしょうか?ザッツロード王子は ローレシアの民特有の なんと言いますか… 少々おっとりされた所がありますので 2~3日程度なら わざわざ通信を送る事を なさらないと言う事も考えられますが」
リジューネが衝撃を受け 困惑して言う
「そ、そうなのかっ!?う… うむ… そう言われてみれば 確かにおっとり… と言うか 鈍臭そうな…」
ベハイムが苦笑する リジューネがハッとして言う
「ええいっ!分かっている!私はアバロンの民であるから!せっかちで落ち着きが無いのだ!ふんっ!」
リジューネが怒って部屋を出て行く ベハイムが苦笑して言う
「いえ、その様な事は… 少々あるかもしれませんが リジューネ陛下 どちらへ?」
リジューネが振り返って言う
「ここに居ても 私に出来る事はあらぬ!作業が終了し次第 報告に参れ!」
ベハイムが言う
「あ、はい、それは勿論致しますが このローレシアの最重要機密情報の方は…?私が不要な解析を行わぬ様 見張られると仰られたのでは ありませんでしたでしょうか?」
リジューネが衝撃を受け 悩んだ末に言う
「そ、そうだった… ええいっ!お、お前に預けてくれる!クラウザー!」
ベハイムが呆気に取られて言う
「え…?私に…?」
リジューネが振り返って言う
「良いか!?絶対に ガルバディアのプログラムを解析する その情報以外を閲覧するではないぞ!?そこに書かれた最重要機密情報の何らかが流出した その時には!」
ベハイムが呆気に取られた状態から微笑して言う
「…はい、私の命を持ってでも 償わせて頂きます」
リジューネが一瞬驚き僅かに顔をベハイムへ向けて言う
「う、うむ… それだけの覚悟があると言うのなら 良いだろう」
ベハイムが微笑して言う
「ご信頼を頂き 有難うございます リジューネ陛下」
リジューネが表情を困らせつつ言う
「う… うむっ」
リジューネが部屋を出て行く ベハイムが軽く笑んだ後 再び操作に戻る すぐ横に電子本が置かれている

玉座の間

リジューネがやって来ると 大臣らが眠そうに欠伸をしていて慌てて取り繕って言う
「こ、これはリジューネ陛下」
「お見苦しい所を 申し訳ありませんっ」
リジューネが苦笑して言う
「いや、遅くまでご苦労 報告を聞こう」
大臣らが返事をして報告を行う

転送室

ベハイムが操作盤で操作をしていて 手を止め一息吐いて言う
「ふぅ… これで粗方の改善データは組み込めました 思っていたよりプログラムの構成方法に違いがありましたが それでも転送する者の安全を一番とする このサポートプログラムが 全てのプログラムの先頭に置かれている事が 共通であったのは助かりましたね これが違っていては 更に2日は掛かったでしょう」
ベハイムが微笑してモニターを見てから 横にある電子本を見て言う
「最重要機密情報の書かれた外部記録装置 リジューネ陛下も普段使われるのだろうか?そうであるなら 可能な限り早くお返ししなければ 折角の信頼も お待たせして 私まで鈍臭いと思われてしまっては大変です リジューネ陛下は 少々せっかちさんですからね… ふふふっ …では、もう一頑張りっ」
ベハイムが操作を再開させる

最下部の部屋

移動魔法陣が怪しく光り 人影が現れる

転送室

ベハイムが作業を続けている 転送室の外 扉の前に人影が立つ

ベハイムの耳に扉の開く音が聞こえる ベハイムが気付き苦笑して振り返りながら言う
「お早いお戻りですね リジューネ陛下 やはりこの外部記録装置を私に預ける事はご心配で… ザッツロード王子!?」
ベハイムの視線の先 ザッツロード6世が立っている ベハイムが一瞬呆気に取られた後 微笑して席を立ち ザッツロード6世の近くへ行って言う
「王子!良くぞお戻りに!」
ザッツロード6世がベハイムへ向く ベハイムが苦笑して言う
「心配しておりました リジューネ陛下も とてもご心配されておられましたよ?新世界より、王子からの通信は 入らないのかと」
ザッツロード6世が部屋の中を見て転送装置に目を止めて言う
「あの… 機械…」
ベハイムが一瞬呆気に取られてから ザッツロード6世の視線の先を確認して微笑して言う
「はい、ザッツロード王子が リジューネ陛下をご説得下されたお陰で ローレシアの最重要機密情報が書かれた電子本を 私に預けて下さいました お陰で あの転送装置の改良の作業は 順調に行えております 後、少々掛かりますが 明日一日もあれば… いえ、確認作業は電子本が無くとも可能ですので 今日中にも電子本の方はリジューネ陛下へお返し出来るかと」
ザッツロード6世が転送装置へ向かう ベハイムが苦笑して言う
「…と、申しましても もう遅い時間ですね 電子本は明日の朝一番にでも お返しするべきでしょうか?」
ザッツロード6世が転送装置の前でモニターを見上げ 横に置かれている電子本へ視線を向け目を細めた後 手を伸ばす その手がベハイムの手に捕まれ ザッツロード6世が驚いて顔を上げる ベハイムが手を離して言う
「っと、一庶民の私が王子殿下へ手を掛けてしまい 申し訳ありませんでした しかし、ザッツロード王子 この電子本はこの装置の表面に接触させて居なければ プログラムの解析を行えないのです それに 一度離してしまいますと 再び設定をやり直さなければなりませんでして 少々お時間も掛かってしまいますので もうしばらくお待ち下さい 作業が終わりましたら王子にも… とは言いましても この電子本を読む事が許されているのはリジューネ陛下お1人 例えローレシアの王子であられても内容を確認する事は… と、それよりも」
ベハイムが微笑して言う
「ザッツロード王子、リジューネ陛下は あの地下にあります転送装置が 使用可能であるのかと言う事はもちろんですが きっと王子の身を案じておられたのだと思います ですので、ここは一つ 玉座の間へ向かい リジューネ陛下へご無事なお姿をお見せ下さい 王子が今から向かうのでしたら やはり私も、もう少し作業を終え次第 この電子本を持ち 参上致しますので」
ベハイムが微笑んでザッツロード6世の顔を覗き込む ザッツロード6世は顔を向けない ベハイムが首を傾げて言う
「ザッツロード王子?」
ベハイムが疑問してザッツロード6世を見つめる 後に ハッとして自分の手を見て 先ほどザッツロード6世の手を掴んだ時の事を思い出し 驚きの表情でザッツロード6世を見る

玉座の間

大臣Aが表情を困らせて言う
「それから… まことに申し上げ辛いのですが リジューネ陛下」
リジューネがふと何かを感じ周囲を見渡す 大臣Aがリジューネへ言う
「報酬を削減いたしました ソルベキアの研究者らは 驚きました事に全員が契約解除の申し立てを… どうやら彼らにも 意外な事に連帯感と言うものがありました様で」
リジューネが視線を下げそわそわしている 大臣Bが疑問して言う
「リジューネ陛下?如何なされました?」
大臣Aが疑問してリジューネを見る リジューネが視線を向けないまま言う
「うむ… 何か… 何と言うか 胸騒ぎがするのだ」
大臣Aが首を傾げ 大臣Bと顔を見合わせた後 手元の資料を見て言う
「それから、リジューネ陛下 その、ソルベキアの研究者らが 集団で契約解除を申し立てたのは ただの連帯感などではなく もしや、何らかの意図があっての」
リジューネが立ち上がる 大臣Aが驚いて言う
「のぉ!?リ、リジューネ陛下?どうか お怒りを静めて下さいませ!?もしやでありまして そうと決まった訳では!ソルベキアの研究者らも 急に職を失うとあってはやはり」
リジューネが大臣Aへ向いて言う
「すまん、今はその事を考えては居られん」
大臣Aが疑問する 大臣Bが言う
「胸騒ぎと申しますと リジューネ陛下 もしや機械兵の奇襲攻撃では?」
リジューネが考えて言う
「…いや、機械兵の奇襲に気付く時であっても こんなに… こんなに不安になるなんて事は…」
大臣らが顔を見合わせ大臣Bが言う
「不安…?リジューネ陛下の口から その様なお言葉を聞きましたのは 私も初めての… いえ、2度目ですかな?あれは… そう、先代ローレシア王であられた ハリヤーグ皇帝陛下が 突然お亡くなりになられた時…」
リジューネがハッと顔を上げる 大臣Bがハッとして言う
「ややっ 不謹慎な事をっ 申し訳ありません リジューネ陛下」
リジューネが慌てて走り出して叫ぶ
「大臣!ここは任せる!」
大臣らが驚いて見送る

転送室

リジューネが飛び込んで来て叫ぶ
「クラウザー!転送装置は!?電子本は無事か!?」
リジューネが立ち止まり目を見開いて叫ぶ
「クラウザーッ!?」
リジューネの視線の先 後姿のザッツロード6世の前に ベハイムが血を流して倒れている リジューネが駆け寄って言う
「クラウザー!大丈夫か!?しっかりしろ!」
ベハイムが苦しそうに目を開き リジューネを見た後 リジューネの背後へ視線を向けて言う
「リジューネ 陛下… う、後 ろ…っ」
リジューネが振り返り ザッツロード6世を見上げて言う
「ザッツロード王子!?戻っていたか!何があった!?誰がっ!クラウザーを!?」
ベハイムが咳込みながら言う
「リジューネ陛下っ その… その者は ザッツロード王子ではっ ありませんっ…!」
リジューネが驚いて呆気に取られる ベハイムが手の感触を思い出して言う
「そ れは…っ き、機械っ」
リジューネが驚く ザッツロード6世がリジューネへ剣を振り上げる 

激しい金属音

リジューネが目の前でザッツロード6世の剣を大剣で受け止めている ザッツロード6世が無表情に力を込めると リジューネが一瞬力負けしそうになって言う
「クッ… ザッツロード王子に…っ ローレシアの民の剣に これ程の力があるなどっ 有り得んっ!」
リジューネがザッツロード6世の剣を振り払い ザッツロード6世が体制を崩す リジューネが大剣を振り上げて叫ぶ
「ザッツロード王子の偽者めっ!覚悟ーっ!」
リジューネの大剣がザッツロード6世の身を切り裂く 切り裂かれた部分に機械が見え ショートが起きた後ザッツロード6世がそのままの体制で後方へ倒れる リジューネが剣を振り下ろした状態でそれを確認した後 ベハイムへ向き直り言う
「クラウザー!」
ベハイムが苦しそうに苦笑して言う
「お見…事です」
リジューネがベハイムの傷を確認し表情を顰め 部屋の外へ声を掛ける
「衛兵!誰かっ!」
リジューネがベハイムの腕に守られている電子本を見て言う
「これ程の傷を受けながらも 電子本を…」
ベハイムが苦笑して言う
「これは… ローレシアの… リジューネ 陛下との…」
ベハイムが意識を失う リジューネがハッとして言う
「クラウザー!」
衛兵が現れて言う
「リジューネ陛下!如何なされました!?」
リジューネが振り返って言う
「直ぐに医者を手配しろ!急患だ!ソルベキアの者が 剣で斬り付けられた!」
衛兵が言う
「はっ!伝えてまいります!」
衛兵が走り去る リジューネがベハイムを抱き上げて言う
「クラウザー!しばしの辛抱だ!必ず…っ お前を死なせはせぬ!」
リジューネが部屋の外まで行くと 衛兵たちが現れリジューネの腕からベハイムを受け取る 衛兵らが言いながら走って行く
「第二医務室だ!医者が待機している」 「回復魔法の魔法使いも呼んだか!?」
リジューネがそれを見送った後振り返る 視線の先ザッツロード6世が倒れている リジューネが近づいて言う
「ロボット兵とは違う… 見た目はザッツロード6世そのもの… 一体何処から」
リジューネがザッツロード6世の傷跡を見てから顔を見る ザッツロード6世は無表情に倒れている リジューネが表情を顰め再び傷跡を見て言う
「…不気味な だが、これだけ破損していれば 再び動く事も無いか …機械は生物と違い 治癒能力などは無いのだからな」
リジューネが息を吐き苦笑して立ち上がり 部屋から出ようとする 扉の前まで来て立ち止まり言う
「…しかし、未だ胸騒ぎは消えぬ …クラウザーの様態が 気になっているだけだろうか?」
リジューネが胸を押さえつつ出て行こうとする その後ろにザッツロード6世が立っている リジューネが気付き振り返る ザッツロード6世が剣を振り上げる リジューネが目を見開いて心の中で思う
『馬鹿なっ!?』
リジューネの指が剣へ向かおうとするが 思う
『駄目だっ 間に合わないっ!』
ザッツロード6世がリジューネへ剣を振り下ろす リジューネが強く目を瞑り思う
『シリウス様っ!!』
激しい金属音 リジューネが目を開き正面を見る ザッツロード6世の前にシリウスBが居り バリアプログラムがザッツロード6世の剣を防いでいる リジューネが驚いて言う
「お前はっ!!」
シリウスBがザッツロード6世を見て言う
「…アンドロイド」
リジューネが疑問して言う
「ア、アンド ロイ…?」
シリウスBが言う
「貴様の王は誰だ リゲルか?…いや、リジルだな?」
リジューネがシリウスBを見る シリウスBが目を細めて言う
「どちらにしろ 私の国へ無断で入り込み あまつさえ 民へ手を出すとは… 許さんっ!」
シリウスBが視線を強めると共に バリアプログラムが攻撃プログラムへ変わり ザッツロード6世が弾き飛ばされる リジューネが驚き見ている シリウスBが手をかざして言う
「不快な機械を送り込んでくれたものだ 自己再生能力を持つ AIミクロウィルス それがどれほど世界にとって 脅威であるのか 承知の上で 送り込んだのだとしたら」
シリウスBの体が光り大量のプログラムが一瞬周囲を覆った後 ザッツロード6世が一瞬で粉みじんに弾ける リジューネが驚きに声を上げる
「なっ!?」
リジューネが見つめる中 粉みじんになった銀色の砂が消えて行く シリウスBが僅かに視線を強めて言う
「奴は何処から送り込まれた?」
リジューネがシリウスBを見る シリウスBが周囲にプログラムを発生させた後言う
「ローレシア城… 地下…」
シリウスBが振り返る リジューネが驚いて身をビクつかせる シリウスBはリジューネを見ないまま歩き出す リジューネが呆気に取られたままシリウスBを目で追いふと足元を見る シリウスBが裸足のまま冷たい床を歩いて行く リジューネがそれを見つめた後ハッとして慌てて追いかけ シリウスBの後ろに続いて慌てて言う
「き、貴様 何処から現れ…っ 何をしに…っ な、何故 私を 助けた!?」
シリウスBが顔を向けないまま言う
「私の移動プログラムは お前たちの移動魔法とは格が違う 僅かでも隙間さえあれば 一瞬で 何処へでも現れる事も可能だ そして、私は 私の国を… この世界を脅かす存在を確認し ここへ来た お前を助けたのは…」
シリウスBが立ち止まる リジューネが続いて立ち止まり疑問する シリウスBが周囲にプログラムを発生させて言う
「これは… 異空間ワープロード!?…まずいっ!」
シリウスBが周囲にプログラムを発生させ 宙に浮き速い速度で 地下最下部への道を進む リジューネが全力で追いかけて言う
「おいっ!?何だ!?どうしたのだ!?」
シリウスBが周囲にプログラムを発生させながら険しい表情で言う
「過去にあいつの作ったワープロードがハックされている!このままでは先ほどのアンドロイドが次々と送り込まれる!再生能力と共にAIミクロウィルスを持ち合わせるアンドロイドは いくらでも姿を変える!お前たちでは気付く事が出来ない!」
リジューネが驚いて言う
「そ、そんな物が 次々と送り込まれなどしてはっ!」
衛兵がシリウスBとリジューネに気付き 顔を見合わせてから慌てて武器へ手を掛ける リジューネが気付いて叫ぶ
「その者は客人だ!道を開けよ!」
衛兵らが慌てて 敬礼して言う
「は… はっ!失礼致し…」
衛兵らがギリギリ避けた間をシリウスBがすり抜け リジューネが追い駆ける 衛兵らが振り返り疑問して顔を見合わせる

長い階段を下り終え シリウスBとリジューネがローレシア王家の紋章が書かれた門の前に辿り着く リジューネが息を切らせながらシリウスBへ言う
「はぁ…はぁ… この門は ローレシア王家の者が… 私では 開けられぬのだ」
シリウスBが手をかざして言う
「問題ない これも あいつが作った物だ」
リジューネがシリウスBへ向く シリウスBの手の前にプログラムが発生し門に纏わると 一瞬間を置いて門が開かれる シリウスBとリジューネが目を向けると 移動魔法陣にザッツロード6世が現れる リジューネが言う
「ザッツロード…」
シリウスBが容赦なく手をかざし 一瞬でザッツロード6世を粉みじんに破裂させる リジューネが呆気に取られる シリウスBが室内へ入り 移動魔法陣の前でプログラムを発生させながら言う
「ワープロードを閉鎖する 解除キーはお前だ リジューネ・デネシア」
リジューネが驚いて言う
「閉鎖っ!?ま、待て!まだ ザッツロード王子が!」
シリウスBが言う
「奴は 戻れない」
リジューネが驚いてシリウスBを見る シリウスBのプログラムが移動魔法陣を覆い実行され 移動魔法陣が光を失う リジューネが呆気に取られる 周囲が静まり返る リジューネが近くへ来て 移動魔法陣を見て言う
「…ザッツロード王子は」
シリウスBが言う
「あのアンドロイドは ザッツロード6世の生態情報を得ていた 奴は 敵の手に落ちた」
リジューネが驚いてシリウスBを見る シリウスBが視線を向けないまま視線を強めて言う
「…我らの民を 奪い 利用した …もはや、戦いは 免れん」
リジューネが言う
「…戦い?」

医務室

ベハイムが目を覚ます リジューネが微笑して言う
「気が付いたか」
ベハイムが瞬きして言う
「リジューネ陛 下…?」
リジューネがゆっくり頷く ベハイムが呆気に取られ周囲を見て言う
「リジューネ陛下が… 何故?ここは…」
リジューネが苦笑して言う
「ここはローレシア城の第二医務室だ …無事で何よりだった」
ベハイムが呆気に取られたままリジューネを見上げる リジューネが微笑して窓の外を見て言う
「美しいな… 我々の世界 我々の国… 青い空 自然の緑と 人々と… 彼らの住む家や 田畑…」
ベハイムが不思議そうにリジューネの横顔を見る リジューネが表情を悲しめて言う
「この世界は 十分に美しい だと言うのに…」
ベハイムが言う
「リジューネ陛下… 何を 悲しまれておられるのです…?」
リジューネが目を伏せて苦笑してから言う
「お前は エレンソルシェラ女王の日記を 全て読んだのか?」
ベハイムが衝撃を受け 困って言う
「あっ… それは その…っ あ、あの日記に 関しましてはっ 電子ロックも解除されておりましてっ!そ、それにっ!リ、リジューネ陛下からは何もっ!…うぐっ!」
ベハイムが傷口を押さえて蹲る リジューネが呆気に取られた後苦笑して言う
「無理をするな ベハイム 私は お前を責めるつもりは無い 傷に触る 安静にしていろ」
リジューネがベハイムの肩に手を置いて毛布を掛け直す ベハイムが表情を困らせて言う
「申し訳ありません… あ、ありがとうございます… ……? リ、リジューネ陛下?先ほど」
リジューネが苦笑して言う
「ソルベキアの者は皆 姓を先に記すものだとばかり思っていたが お前は 我らと同様に 名を先に記していたのだな 先ほど知った」
リジューネが医療カルテを指差して笑む ベハイムが呆気に取られた後微笑する

城内 通路

リジューネが通路を歩いている

回想

ベハイムの横リジューネが真剣な表情で言う
『エレンソルシェラ女王は 各国が争いを行っていた この世界を悲観し 毎日の様に新世界へと向かっていた しかし、ある時 シリウス様より しばらくの間 新世界へ向かう事を取り止めるようにと命じられた』
ベハイムが言う
『はい… 彼女が新世界へ向かっている間は 常にシリウス様が見守られておられました しかし、その頃のシリウス様は エレンソルシェラ女王に構っている余裕が無くなられてしまわれた …私の知る情報が正しければ 丁度その頃と言うのは ガルバディアのベネテクトたちが相棒国としていたアバロンへ シュレイザーとスプローニの同盟国が戦力を増し 争いを行っていた頃であると』
リジューネが頷いて言う
『うむ… だが、エレンソルシェラ女王は シリウス様との約束を破り 一人で新世界へ向かっていた 最初は数日置きだったが やがては… そして』
ベハイムが言う
『日記は ローレシア暦1290年、冬の月、最後の日で終わっている その日もエレンソルシェラ女王は 新世界へ向かい 戻って日記を記しておられた しかし 彼女の命日は その翌日などではなく それから一年後 それまで人々に愛されていたエレンソルシェラ女王は 一変して 人々を苦しめる悪しき女王へ やがては シリウス様にも見放され そのシリウス様を相棒とした アバロンの王によって 討ち取られてしまう』
リジューネが言う
『だが、エレンソルシェラ女王は 埋葬した墓から蘇り 自分を殺めた そのアバロンの王を討ち取ったと言う』
ベハイムが驚いて言う
『それはっ 真の歴史でございますか!?我らが知る歴史に その様な事はっ』
リジューネが言う
『当然だ 死んだはずのローレシアの女王が蘇り アバロンの王を殺したなど… そんな事が 人々に信じられるはずも無く また、その様な話が広がっては 人々を混乱に貶めてしまう …しかし、これは事実なのだ その証拠に』
リジューネが一度話を切る ベハイムが見つめる リジューネが言う
『殺されたアバロン王の王弟であったラクセルは シリウス様のお力を得て兄王を殺めた敵を討ち このローレシアの王となった… それが 私の先祖なのだ』
ベハイムが呆気に取られる リジューネが言う
『私も この話は信じられずに居た だが、これで全ての辻褄が合った 人々に愛されていたエレンソルシェラ女王が一変した… それは エレンソルシェラ女王の皮を被った アンドロイドであったからだ』
リジューネが視線を強めて言う
『証拠はもう一つある その者が本当にエレンソルシェラ女王 その人であったなら どんなに意表を突こうとも ローレシアの民である彼女の力で アバロンの王を倒す事などは出来ない 奴が再生能力の在るアンドロイドであったから 墓から蘇る事も 最強の剣士の国 アバロンの王すらも手にかける事が出来たのだ』
ベハイムが呆気に取られる リジューネがベハイムを見て言う
『ベハイム、私を信じてくれるか?』
リジューネがベハイムを見つめる ベハイムが呆気に取られている状態から微笑して言う
『リジューネ陛下 例え 新世界にソルベキアがあろうとも 我らがその世界へ向かう事になろうとも… 私の仕えるお方は 貴方だけです』
リジューネが微笑して頷き説明し始める
『実は昨夜… お前が倒れてから 私は…』

回想終了

リジューネが玉座の間に現れる ラーニャ、ミラ、レーミヤが居り ラーニャが大臣らへ怒って言う
「分からないってどう言う事よ!?ザッツはローレシア城に行くって言ってたんだから!」
レーミヤが言う
「与えられている部屋にも居ませんでした リジューネ陛下もいらっしゃらないのでしたら もしかしたら 2人でどこかへ向かったのでは?」
ラーニャが驚いて言う
「え!?2人で!?ちょっと!それどう言う事!?大体そのリジューネ陛下だって 何処に行ったのよ!?」
大臣Bが困って言う
「どうか落ち着いて下され ザッツロード王子とは 本当に先日からお会いしておりません そして、リジューネ陛下は何処かと申されましても… あ、リジューネ陛下!」
ラーニャたちが驚き振り返り リジューネを確認すると駆け寄って来て ラーニャが言う
「リジューネ陛下!ザッツは!?ザッツと一緒じゃなかったの!?」
リジューネが視線を落として考える ラーニャとミラが顔を見合わせるリジューネが言う
「ザッツロード王子は…」
ラーニャが泣きそうな表情でリジューネを見上げる リジューネがラーニャの様子に胸を痛め一度目を閉じてから言う
「…王子には ガルバディアへ向かってもらった」
ラーニャたちが驚き ミラが言う
「ガルバディアへ?ザッツ1人で?」
リジューネが言う
「ザッツロード王子は 貴女たちとは違い 機械兵殲滅の手助けは出来ぬ 故に ガルバディアのシリウスB殿との橋渡し役として 向かってもらった 急な事であった為 貴女たちへは 私を通じて伝える事になってしまったが… しばらくの間 ザッツロード王子は戻っては来られぬ その間 貴女たちにはこれまで通り 多国籍部隊の支援を頼みたい」
ラーニャたちが呆気に取られる リジューネがラーニャたちの間を抜け玉座へ向かう ラーニャが言う
「そんな… 私たちに何も言わずに ガルバディアへ行っちゃうだなんて」
レーミヤが苦笑して言う
「急ぎだったと言うのなら もしかしたら ガルバディアから連絡をするつもりだったのかしら?」
ミラが言う
「ガルバディアからは通信が繋がらないって この前行った時 ヴァッガスが確かめたじゃない?」
レーミヤが表情を困らせて言う
「うーん… そうね…忘れていたのかしら?でも シリウスB様がお力を貸して下されば… この前とは違って 橋渡し役として向かったと言うのだから」
ラーニャが怒って言う
「もうっ!馬鹿ザッツなんだから!私、ちょっと行って来る!」
ミラとレーミヤが驚く リジューネが遠くで顔を上げる ラーニャが振り返って言う
「多国籍部隊の皆への支援だったら 少しの間くらい ミラとレーミヤで何とかなるでしょ!?私が行って また1人で勝手な事しない様にって 叱り付けてやるんだから!」
ラーニャが出口へ向かう リジューネが言う
「ラーニャ殿!王子とシリウスB殿の邪魔立ては致すな!」
ラーニャが振り返って言う
「邪魔だって言われたって構わないわ!私に… 仲間である私たちに何も言わず 遠くへ行っちゃうだなんて!…絶対許さない!」
ラーニャが走り去る リジューネが慌てて言う
「待て!ラーニャ殿!」
リジューネが向かおうと腰を浮かせた所へ 伝達の兵が言う
「多国籍部隊 ガイ隊長とヴァッガス副隊長です!」
ガイとヴァッガスが自分たちの間を走り去っていったラーニャを振り返りつつ現れ ヴァッガスが言う
「あぁ?ラーニャの奴 何泣いてんだぁ?」
ガイが言う
「ふむ… リジューネ陛下に 虐められでもしたのだろうか?」
リジューネが衝撃を受けて叫ぶ
「私は虐めなど 致さぬわっ!馬鹿者っ!」
ガイとヴァッガスが驚いて振り向く

【 ローレシア城 城門外 】

ラーニャが走って出て来ると 立ち止まり対人移動魔法を詠唱する 魔力が周囲に集まる 詠唱を終えラーニャが言う
「ザッツの元へ!」
周囲に集まっていた魔力が一度固まった後 消えてしまう ラーニャが疑問し周囲を見た後言う
「…え?何よ 私をザッツの所まで飛ばしてったら!」
周囲は静まり返る ラーニャが怒って言う
「なら!ガルバディア!シリウスBよ!」
ラーニャが再び対人移動魔法を詠唱する 魔力が周囲に集まる 詠唱を終えラーニャが言う
「ガルバディア シリウスBの元へ!」
周囲に集まっていた魔力が一度固まった後 消えてしまう ラーニャが疑問し周囲を見た後 怒って言う
「何よ!?どうなってるの!?対人移動魔法が!…もう!それなら!」
ラーニャが走り去る

【 ローレシア帝国 移動魔法陣 】

ラーニャが息を切らせてやって来て 移動魔法陣の中へ立って言う
「はぁ…はぁ… これで… はぁ 直接ガルバディアへ…」
ラーニャが息を整えて周囲の魔力を集める ラーニャが疑問して言う
「…え?どう言う事?移動魔法陣が…」
ヴィクトール11世が見張り台で昼寝しており 気付く様に目を覚ましてラーニャを見下ろして言う
「…んニャ?はれ?あの子… よっ!」
ヴィクトール11世が見張り台から飛び降り ラーニャの元へ歩いて行って言う
「えーっと… ミーニャちゃん!だったよね?」
ラーニャがヴィクトール11世へ向いて言う
「ラーニャよ!…それより ヴィクトール様!大変よ!移動魔法陣が!」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「ああ、ラーニャちゃんだったか てへっ!ごめん ごめん …うん?移動魔法陣が大変?大丈夫!今は何があっても 移動魔法陣は動かない!シリウスBがしっかり止めてるからね!これで安心だよね?あははははっ!」
ラーニャが呆気に取られた後怒って言う
「全然大丈夫じゃない!今すぐガルバディアへ行かなきゃいけないのに!対人移動魔法も 移動魔法陣も使えないだなんて!」
ヴィクトール11世が疑問して言う
「え?ガルバディアに行くのかい?何で?シリウスBは闇の王様なんだから あんまり頻繁に行くと きっと照れちゃうよ?」
ヴィクトール11世が照れて笑顔になる ラーニャが呆気に取られた後怒って言う
「こっちは真剣なのよ!馬鹿ぁあ!」
ヴィクトール11世が衝撃を受け 大泣きしながら叫ぶ
「あー!ひどいよっ!僕にはちゃんと 馬鹿猫って言ってくれなきゃ!僕泣いちゃうよーーっ!?」
ラーニャが衝撃を受け怒って言う
「もう泣いてるじゃない!泣きたいのはこっちなのにっ …馬鹿ぁーっ!」
ラーニャが怒りながら泣いている

【 ローレシア城 玉座の間 】

リジューネが言う
「以上が 私がシリウスB殿から聞いた話だ 正直な所 余りの規模の大きさに 想像も付かないのだが… あのアンドロイドと言う 恐るべき兵器を目の当たりにした私は その話を信じるに至った」
ガイが言う
「シリウスB様が わざわざ御自分が不利になるような話を リジューネ陛下にするとは思えない… 増してやその様な内容の話ともなれば」
ヴァッガスが言う
「信じねぇ訳にも行かねぇな…」
リジューネが言う
「シリウスB殿は 早急に新世界のシリウス様と連絡を取り 戦いに備えたいと申していた しかし、現状 新世界にて 力を弱められたシリウス様と 連絡を取る事は難しいとの事だ だが、その代わり ガルバディアにある転送装置にて 条件はあるが 今すぐにでも 新世界へ向かう事が可能であると言う」
ヴァッガスが驚き ガイが視線を強めて言う
「その条件とは?」
リジューネが言う
「その条件は 悪魔力を使用しなければならないと言うもの この世界に溢れる悪魔力を使い転送を行う」
ヴァッガスが驚いて言う
「悪魔力を使う事なんて… 出来るのか!?」
リジューネが頷いてから言う
「だが、使用するエネルギーが悪魔力で在る以上 転送を行う際 その者は悪魔力に晒される事になる」
ヴァッガスが言う
「その悪魔力ってぇのは どの程度の濃度なんだ?悪魔力に耐性のある俺たちだって 高濃度の悪魔力の中には 長い事居られねぇんだ」
リジューネが言う
「私がシリウスB殿から話を聞いた時点では 貴殿らであってもその悪魔力には耐えられないというものであった しかし、それに対応するための方法を考えておくとも同時に言っていた そこで」
ガイが頷いて言う
「シリウス様であるなら きっとその方法も既に得られておられる筈 我々が向かい確認してまいりましょう」
リジューネが頷く ヴァッガスがガイへ向いて言う
「けどよ、移動魔法陣や移動魔法そのものだって 今は止められちまってるんだろ?ガルバディアまで歩いて行くのか?」
ガイがヴァッガスへ苦笑で答える ヴァッガスが表情を歪めて言う
「え゛…」
リジューネが軽く笑って言う
「案ずるな シリウスB殿は 我らローレシアと同盟を組んだのだ そうであろう?シリウスB殿?」
リジューネが周囲を軽く見ながら呼ぶ シリウスBのホログラムが現れて言う
『同盟か… ならば私を ガルバディアの王として 認めたと言う事か?リジューネ・デネシア』
ガイとヴァッガスが驚き ガイが言う
「シリウス様…」
リジューネが表情を顰めて言う
「ム… それは… では、シリウス様がこの世界へ戻られるまでの間の 仮のガルバディア王として 認める」
シリウスBが苦笑して言う
『フ…ッ 良いだろう 元々私は この国の王ではない お前の言う通り 仮の王だ』
リジューネが若干不満そうに言う
「…随分簡単に認めるのだな」
ヴァッガスがシリウスBへ向いて言う
「シリウス様!新世界へ俺たちを送る事が出来るのか!?早く新世界の連中と手を組まなきゃ やべぇえんだろ!?」
シリウスBがヴァッガスへ向いて言う
『確かに 早いに越した事は無い が、奴は… シリウスは自分と共に 新世界へ向かった民と 力を得て この世界へ戻るつもりで居た …しかし、奴は力を得る所か 弱めるに至った どの様な経緯があったかは分かりかねるが 奴が力を取り戻す事は無論 奴の民がどれほどの力を得ているのか それが何よりも重要だ』
ガイとヴァッガスが話を聞いている リジューネが言う
「それはそうかもしれぬが まずはシリウス様との連絡を取る事の方が重要ではないのか?ガイ隊長らを新世界へ向かわせ シリウス様と話をして戻ると言うのでは?」
シリウスBが言う
『奴は 己の民に甘過ぎる ただ向かい話をする程度では 奴らの力は測れん そこで』
ガイ、ヴァッガス、リジューネが注目する シリウスBが悪っぽく笑んで言う
『お前たちを新世界へ送ると共に この世界の 機械兵どもを送り込む』
ガイ、ヴァッガス、リジューネが驚いて ガイが言う
「なっ!?」
ヴァッガスが言う
「機械兵を新世界へ!?」
リジューネがシリウスBのホログラムへ怒って言う
「何を言うのか!?シリウスB!その様な事をしてしまっては シリウス様の居られる新世界が!」
シリウスBが目を細めて言う
『過去、この世界に置いて 数体の機械兵の暴走に対しては アバロンの大剣使いとベネテクト ローレシアの魔力者やローゼント、スプローニの戦士たちが対応出来ていた その者たちが向かった新世界に置いて 私が送り込む程度の機械兵に手を焼かされる様では これからの戦いに置いて話にならん』
ヴァッガスが言う
「け、けどよ ザッツロード王子の話じゃ 新世界ってぇのは 魔物も居ねぇ 平和な世界だって そんな世界じゃ そこに住む奴らの力だって 弱まっちまってるんじゃねぇのか?」
ガイが言う
「いや、そうとは限らないかもしれん ヴァッガスもザッツロード王子やお仲間の力を確認した筈だ 彼らは 新世界のシリウス様のお力添えにより 新世界の民でありながら 力を有していた」
ヴァッガスが言う
「けどよぉ ザッツも言ってたが 夢の世界とかって 意識だけの世界に連れてかれたのは 各国の代表たちだけだったってよ?だとしたら、他の連中は…」
シリウスBが言う
『何であろうと 私の決定は変わらん 機械兵を送り込み 新世界の力を確認する …先の奇襲を回避した 恐らく 奴らは 私の存在に気付いてしまった そうとなれば 時間が無い』
シリウスBが視線を強める ガイたちが僅かに驚き真剣な表情になる

【 ローレシア帝国~ガルバディア国 道中 】

ヴィクトール11世が表情を困らせて言う
「ねぇ~ミーニャちゃん やっぱり帰ろうよ?何があったか知らないけど もう直ぐお昼の時間だし~」
ラーニャが歩きながら怒って言う
「ミーニャじゃないって言ったでしょっ!?…とにかく、私は帰らないから!ガルバディアへ行って ザッツに… シリウスBにも文句言ってやらなきゃ!」
ヴィクトール11世が首を傾げて言う
「ザッツ?…シリウスBに文句言うって何で?ねぇ?シーニャちゃん?」
ラーニャが衝撃を受け怒って言う
「シーニャって誰よ!?…何でって 決まってるじゃない!?勝手に移動魔法を止めちゃったり ザッツを連れて行ったり 連絡もさせないのよ!?」
ヴィクトール11世が首を傾げて言う
「移動魔法を止めたのはしょうがないよ~ 移動魔法陣は異空間ワープロードにもなっちゃうって言うし これからはシリウスBがちゃんと管理するんだって …今までも一応管理はしてたんだけど 僕たちが利用するようになったら いちいち確認してられないってね?それよりターニャちゃん ローレシアに帰ろうよぉ?僕お腹空いちゃった~」
ラーニャが勢い良く振り返って怒って言う
「ターニャでもないわよ!もう良いから ヴィクトール様はローレシアに帰れば良いじゃない!私はガルバディアに行くの!」
ヴィクトール11世が一瞬押されるが困って言う
「ローレシア大陸の機械兵は 減りはしたけどまったく居なくなった訳じゃないんだよ?もしレーニャちゃんがその機械兵に襲われでもしたら 僕は…」
ラーニャが怒って言う
「レーニャでも無い!」
ラーニャが怒って進む ヴィクトール11世が驚いてから慌てて追い駆けて言う
「それじゃ ケーニャちゃん!?キーニャちゃん!?とりあえず帰ろうよ~?ローレシアには 美味しくないけどご飯が待ってるよぉ~?ヨーニャちゃん?ねぇ?リーニャちゃ~ん」
ラーニャが怒って言う
「なんでヨとリの間抜かすのよっ!?」
ラーニャとヴィクトール11世が歩いて行く

【 ガルバディア城 玉座の間 】

シリウスBが閉じていた目を開いて言う
「私は 新世界の戦力を確認する為に お前たちを送り込む と、言うのに…」
シリウスBが顔を向けて言う
「何故お前が来た?ヴィクトール11世はどうした?」
ロドウの隣メテーリが言う
「あの人みたいな猫なら 日向ぼっこに行ったまま戻って来ないのよ 仕方ないから私が代わりに来たの これって感謝される所だと思うんだけど?」
ガイとヴァッガスが呆れる ロドウが苦笑の笑顔のまま言う
「僕は止めたんだけどね?僕がシリウス様の力で転送される瞬間に 飛び付いて来られちゃって 僕もびっくりしたよ」
ヴァッガスがガイへ耳打ちする
「なぁ?これってよ…?もしかして シリウス様がミスったって事…」
シリウスBが咳払いをしてヴァッガスが衝撃を受ける シリウスBが言う
「う、うんっ …急ぎであったとは言え やはり生態識別を使用せず 重量だけで転送を決行したのはまずかったか…」
メテーリが衝撃を受け怒って言う
「ちょっと!それどー言う意味よ!?私とあの大男の猫が 同じ重さだって言うの!?」
シリウスBがプログラムを発生させつつ言う
「ヴィクトール11世が居ないのでは仕方が無い 時間も惜しい ならば今回はお前でも良いだろう お前たちは 新世界のガルバディア、スプローニ、ローゼントの近辺へ転送させる 共に転送させる機械兵どもは 新世界の民を奪い去ろうとするだろう しかし、案ずる事は無い 新世界の者たちに処理をさせろ 万が一にも奴らの力が及ばず 機械兵どもが民を連れ去ろうとも心配は不要だ 奴らのAIには民をこの世界へ引き込むという事が トップオーダーとなっている 命の保障は存在する」
ガイ、ヴァッガス、ロドウ、メテーリが頷き メテーリが言う
「ガイたちも 新世界の民と戦うのよね?新世界の民が どれだけ強いかを 確かめるんでしょ!?」
シリウスBがガイたちを見る ヴァッガスが笑んで言う
「よし!一丁 俺らも世界の為に 気合入れて 悪役を気取ってやるか!シリウス様みたいによ!?」
シリウスBがプログラムを作りつつ衝撃を受け言う
「私の様に…?」
メテーリがロドウを見上げて言う
「それじゃ、ロドウも気合入れて 悪役を演じなさいよ?」
ロドウが困って言う
「え~… ぼ、僕は悪役なんて… どうしたら良いのか…」
ガイが微笑して言う
「そう、深く考える必要は無い 異世界から現れ 民を攻撃する それはそのまま 彼らにとっては悪人となるだろう 深く考えずに …強いて言えば 余り言葉を発しない方が良いかもしれんな?シリウス様の様に」
シリウスBが衝撃を受ける ロドウが苦笑して言う
「そうだね!あんまり喋らない方が悪役っぽいかも それに、喋っちゃうと 皆の力を確認しに来たんだよ なんて言っちゃいそうだもの」
ヴァッガスが言う
「けどよ?機械兵どもの相手は その国とかの部隊にやらせるとして 俺らは折角なら その国で一番強い奴の力を確かめた方が良いんじゃねーか?この世界の俺らだって 機械兵と戦える俺らみてーのも居れば ローレシア部隊みてぇに 魔物とギリギリって連中だって居るんだ」
ガイが考えながら言う
「ふむ… 確かにそうだな」
ロドウが困って言う
「それだとやっぱり この国で一番強い人を教えて下さい って聞かないと分からないと思うんだけど」
メテーリが言う
「その言い方だから駄目なのよー そこはガツンと!この国で一番強い奴!出て来て勝負しろー!って言わなきゃ」
ガイが苦笑して言う
「それでは道場破りだな」
ヴァッガスが言う
「戦ってれば その内強ぇ奴が出てくるんじゃねぇか?俺らの力が強いって分かれば その国の奴らだって 強い奴に依頼するだろ?」
ガイがひらめいて言う
「そうだっ 我らの力を 解放して見せたら どうだろうか?」
ヴァッガス、ロドウ、メテーリがガイへ向く ヴァッガスが疑問する
「あぁ?」
ガイが言う
「我らの力を最大限に発揮させれば 少々人間離れした姿になる そうすれば」
ロドウが笑顔で言う
「そうしたら どんな人でもびっくりして 化け物が出たーって!それこそ弱い人は逃げちゃうし 強い人は戦おうとするかもね!あのリジューネ陛下が ガルバディアに来た時みたいに!」
シリウスBが衝撃を受ける ヴァッガスがひらめいて言う
「ああ!そいつは 名案だな!名付けて 化け物大作戦!その作戦で行こうぜ!?」
ガイが頷いて言う
「うむ、名案だな では 化け物大作戦 決行だ!」
ガイたちが はしゃぐ シリウスBが怒って言う
「ええいっ!私の前で化け物化け物と言うなっ!そして、プログラムは不完全だが もう行ってしまえっ!」
ガイたちが驚いて言う
「「「えぇええーーっ!?」」」「シ、シリウス様っ!」
シリウスBが怒って言う
「その代わり 何が何でも生きて戻って来い!万が一にも命の危険を感じたなら 私に助けを請え!絶対だっ!」
ガイたちが驚き呆気に取られ 姿が消える

【 ローレシア城 玉座の間 】

ミラ、レーミヤがリジューネから説明を受ける リジューネが言う
「ラーニャ殿には… すまなかったと思っている 落ち着いた頃に もう一度改めて 私から説明しよう」
ミラ、レーミヤが表情を悲しめ顔を見合わせてから レーミヤが言う
「大丈夫です リジューネ陛下 お気遣いを頂いて ラーニャも光栄だと思いますが ああ見えて 彼女はとても強い子です」
ミラが頷いて言う
「私が伝えるわ こういう事は 面と向かって はっきり伝えた方が良いのよ ラーニャの場合はね」
リジューネが呆気に取られてから微笑して言う
「ふ…っ そうか どうやら私は 貴女たちの事を甘く見ていた様だ 流石は 新世界のシリウス様に 選ばれた勇者と仲間たちだな」
ミラとレーミヤがリジューネへ向いて微笑する

【 ガルバディア城 メモリウムルーム 】

テスクローネが目を閉じている その前に小さな気泡がいくつか湧き上がり フォーリエルが心配そうにポッドの中のテスクローネを見ている

玉座の間

シリウスBが目を閉じ周囲に多くのプログラムを発生させている シリウスBが何かに気付き目を閉じたまま表情を強める

【 ローレシア城 玉座の間 】
 
リジューネが目を細める ザッツロード7世が言う
「新世界の作戦は もう間もなく終了します 新世界のガルバディア国王 シリウス様が 我々へ力を貸して下さると仰りました 新世界の各国の代表は 数日後に皆目を覚まし 現実世界にて 話し合いの場を持つと言う事です」
リジューネが一度落ち着いてから言う
「ザッツロード7世殿 新世界からの吉報を携えて来てくれた事に関しては礼を言う だが、残念ながら こちらから貴殿へ伝えられる事は 余り思わしいものではない」
ザッツロード7世がリジューネを見る リジューネが言う
「そして、その内の一つ 新世界と我々とで 長年待ち望んでいた転送の件だが 貴殿らは易々と5人で新世界からやって来てくれたが こちらから 新世界へ転送を行うのは 容易な事ではない 我々の力で新世界へ転送を行う事が出来るのは 最大出力を使おうとも 一度に100人余り… そして、残念ながら その100人を転送する事は 残る数千の人々を…」
リジューネが悔しそうに視線を変え言葉に詰まる ザッツロード7世の隣で 奇抜な服装の青年ががニッと口角を上げ言いながら現れる
「はいは~~い その為~に?超天才の俺っち バッツスクロイツ~~が?3代目勇者様御一行に ご同行~?しちゃいましたー!」
リジューネが呆気に取られてから ザッツロード7世へ怪訝そうな顔で言う
「ザッツロード7世殿 そちらの… いかにも頭の軽そうな 軟派男は何者か?」
バッツスクロイツが衝撃を受け ザッツロード7世へ向いてリジューネを指差して言う
「ちょっ!ちょっと 聞いた 今の!超~酷くない~!?この超天才の俺っち~に向かって?いかにも頭の軽そうな~とかって!?しかも?何~でデネシア王家の人って 俺っちが軟派男だって 決め付ける訳!?超失礼って感じ?マジで!」
ザッツロード7世が苦笑する リジューネが不満そうに見ている

【 ガルバディア城 メモリウムルーム 】

テスクローネがプログラムを見て思う
『このデータは… 何故こんな所に…っ!?』
テスクローネが目を開く ポッドの水が引きふたが開く フォーリエルがハッと振り返り言う
「テスっ!」
テスクローネがポッドから出ようとする フォーリエルが手を貸して言う
「テス!?大丈夫なのか!?どっかっ!?何か!調子悪くなっちまったとか!?」
テスクローネが少し疲れた様子で苦笑して言う
「大丈夫だフォーリエル そんなに心配しなくても… ああ、そう それより」
テスクローネがポッドから出て フォーリエルを見て改めて言う
「フォーリエル、君の お父上の事なのだが」
フォーリエルが疑問して言う
「俺の親父…?」

玉座の間

テスクローネがシリウスBへ向いて言う
「フォーリエルの父 レジエル殿は 一介の武器商人などではなく とても剣術に優れた方であったそうです その彼が 私の父から 私の封じられていた ベネテクトの機械の話を知り 危険を承知の上で その解除キーになる アバロンの大剣を捜し求めていたと言います 僅かに力の残された 宝玉のかけらを用いて結界を張り 機械兵だけではなく魔物さえも居る この世界の中を1人で旅していた… そんな危険を冒していた者ともなれば シリウス様は やはりご存知であられたのですよね?」
シリウスBが言う
「確かに、レジエル・ソーシュエルの事は確認していた だが、彼は 宝玉の欠片だけではなく 機械兵の存在を確認する事の出来る GPSシステムをも所持していたのだ よって 私が直接手を貸し 彼の身を守った事は一度も無い」
フォーリエルが言う
「けど、親父の事を知ってたって事は やっぱりまた 生態識別何とかとか 色んなデータとか取ってたんっすよね?」
テスクローネが付け加える
「生態識別は勿論ですが サポートや擬似映像プログラムなども行える レジエル殿の固体情報の解析を?」
シリウスBが首を傾げて言う
「…いや?確かに 彼の事は確認していたが 彼の位置情報に関してはGPSシステムの電波を確認していた為 わざわざ生態情報を採取せずとも 居場所の特定は行えた 従って 彼に関しては 名とGPSシステムの識別コード それ以外は一切の解析を行って居ない」
フォーリエルがテスクローネを見る テスクローネが考える シリウスBが疑問して言う
「…何故その様な事を聞く?」
テスクローネが言う
「レジエル殿は 解除キーとなるローレシア王の大剣を探し当て 私の育ての父へ託した後 姿を消しています 私は シリウス様がレジエル殿を新世界へ向かわせたからではないかと 思っていたのですが」
シリウスBが視線を強めて言う
「私が…?…先ほども言ったが 私は彼に関し その動向を確認していたのみに過ぎない」
フォーリエルがテスクローネを見る シリウスBが言う
「…それで 何故 私がその者を新世界へ送ったと?」
テスクローネが周囲にプログラムを発生させて言う
「これをご覧下さい」
シリウスBがテスクローネへ向くと テスクローネの周囲のプログラムがシリウスBへ向かう シリウスBが言う
「これは…」
テスクローネが言う
「ガルバディアの転送装置の履歴データです そこには600年前の転送記録と共に 今からたった15年前 転送作業が行われたと言う履歴が残されています」
シリウスBが驚いて言う
「何!?馬鹿な… ガルバディアの転送装置は シリウスが己を転送する際に封印を施し その封印は 例え私であっても簡単には解除は出来ない 何故ならその解除キーはアバロンの民なのだ この世界に残るアバロンの民は ローレシアの王のみ かの者については 私が常に確認をしている」
テスクローネが言う
「しかし、私の確認した記憶装置には確かに転送の記憶がありました どうか 今一度確認を コードは…」
シリウスBが周囲にプログラムを発生させる

フォーリエルが首を傾げて言う
「テス?シリウス様も… 2人ともどうしちまったんだ?」
シリウスBが1人で考える テスクローネがフォーリエルへ振り向きながら言う
「今、15年前の映像を確認していたんだ ローレシアの前王 ハリヤーグ陛下ともう1人の人物が… っ!」
テスクローネが言葉の途中でフォーリエルを見て呆気に取られる フォーリエルが一瞬疑問しながら言う
「ん?ハリヤーグ陛下ともう1人が?」
テスクローネがシリウスBへ向いて言う
「シリウス様っ 先ほどの!あの 転送された人物は このフォーリエルと とても似ていたと思われませんか!?」
シリウスBがテスクローネとフォーリエルへ向き言う
「…ああ 私もそう思う 映像の2人 1人はハリヤーグ前ローレシア王 そしてもう1人こそ レジエル・ソーシュエルなのだろう」
フォーリエルが呆気に取られる シリウスBが視線を落として言う
「灯台下暗しか… 私の居るこのガルバディア城で あの様な事が…っ 一体誰の差し金だ …リジルやリゲル程度に出来うる筈が無い 私に気付かれる事無く この城の装置を利用するとは…」
テスクローネが言う
「映像データの中に 転送装置が封印を解かれる その一瞬 それまでに存在しなかった色識別データがありました とても鮮明な 鮮やかな色 赤のデータが」
シリウスBが一瞬驚いて言う
「赤?…まさか…な…」
テスクローネが疑問して言う
「シリウス様?」
テスクローネとフォーリエルが顔を見合わせる シリウスBが一息吐いて言う
「…いや、今はそれよりも 新世界との ガイたちの行動がどうなるのか そちらの方が問題だ テスクローネ、万が一 機械兵どもが新世界の民を捕らえる事があった時には」
テスクローネが頷いて言う
「はい、新世界のローレシアより 南の果てにあります小島へ運ばせ 作戦成功の時まで 眠っていて頂きます」
シリウスBが言う
「あの島には 遥か昔 私が設置した宝玉が今も残されている 機械兵どもはあの島の結界の中へ入り 民を洞窟へ運んだ頃には 体内に蓄積されたエネルギーを使い果たすだろう」
テスクローネが頷く フォーリエルが難しそうに首を傾げる テスクローネが苦笑して言う
「それにしても シリウス様」
シリウスBが疑問してテスクローネへ向く テスクローネが微笑して言う
「新世界で行われている作戦 夢の世界へ 私とフォーリエルの情報を送り込み シリウスA様のご子息を手に掛けようとは… 少々やり過ぎではありませんか?あれでは 新世界の人々が 本気でシリウス様の事を 闇の王だと思ってしまいますよ?」
シリウスBが苦笑して言う
「人を強くする力は 怒りや憎しみ… そして、復讐心 急を有すのだ 仕方もあるまい?そして、必要とあらば 私は闇の王を演じきるつもりだ… もっとも 私は元々闇の王 今更、演じるも何も無いがな?…クックック」
シリウスBが悪っぽく笑う テスクローネとフォーリエルが汗を掻き テスクローネが言う
「怖い…」
フォーリエルが言う
「流石 本物の闇の王様だぜ…」


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