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12-6 集まる情報

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【 アバロン帝国 移動魔法陣 】

セーリアがバッツスクロイツとアンドロイドのデスを連れて アバロン帝国移動魔法陣へ到着する バッツスクロイツがアバロン城を見上げて言う
「へぇー?あれがこの前の世界大戦ーってやつで 大勝利を収めて帝国になった アバロン帝国ねー?」
セーリアが微笑んで言う
「ええ、今このアバロン帝国は2人の皇帝陛下が収めているの そして、悪魔力の脅威から世界を救うため その活動を本格的に始動した所なのよ?」
バッツスクロイツが一瞬呆気に取られ首を傾げて言う
「え?2人の皇帝陛下って…?皇帝陛下とー 皇后陛下ーってー事?」
セーリアが一瞬呆気に取られた後、微笑して言う
「アバロンには王国時代からヴィクトール国王様とレリアン王妃様がいらしたのだけど そこへ第ニの国王様として バーネット第ニ国王様が入られたの だから、正式に言ったら3人で治めている国と言う事になるのかしら?」
バッツスクロイツが疑問して言う
「第ニ国王…?第ニ王子様ーとかなら?聞くけど?」
セーリアが苦笑して言う
「そうね、ただ このアバロンと言う国は 友情と慈愛の国と呼ばれていて その友情を受け持つ王様と 慈愛を受け持つ王様が1人ずつ居らしたのですって?それでも… あのバーネット陛下が 慈愛の王様だって事に 最初は驚いてしまって?」
セーリアがくすくすと笑う バッツスクロイツが呆気に取られていた状態から笑んで言う
「へぇ~ 友情の王様と慈愛の王様かー 友情の王様はー?きっとー 凄い正義感に溢れたヒーローって感じで!慈愛の王様はー… うーん?どうせなら 慈愛の女王様の方が良いようなー気がするんだけど?でも、きっと凄く優しそうな王様なんだろうな?」
バッツスクロイツが笑顔を見せる セーリアが呆気に取られた後、苦笑して言う
「そ… そうね?きっと… 本当は凄くお優しい方なのだと思うわ?」 
セーリアが笑いながら先行する バッツスクロイツが疑問しながらも期待に笑んで続く

【 アバロン城 玉座の間 】

ヴィクトールが歴代シュレイザー国王の日記を険しい表情で読んでいる ヴィクトールの前でチョッポクルスが笑顔で日記を朗読する
「そこでチョッポクルスたちは~~ 夕食のチーズを 温める事を~~ 思い付いた~~!」
ヴィクトールの隣に居るバーネットが日記を読みながら 盛大にくしゃみをする
「へえっくしょいっ!」
ヴィクトールが振り向いて言う
「風邪かい?バーネット」
バーネットが口元を拭いながら言う
「ん?…いやぁ んな事ねぇんだが?」
チョッポクルスが怒って言う
「か、かかった~~ か、かかったぞ~~バカーネッ…」
バーネットがチョッポクルスを踏みつけて言う
「るせえ!大体てめぇえ!?この日記はなんなんだぁあ!?読み辛ぇ以前に 余計な話が多すぎるんだよぉおお!!」
チョッポクルスが怒って言う
「よ、余計というでない~~ そ、それでは~~ よ、余の日々の公務が よ、余計である様ではないか~~!?」
バーネットが怒って言う
「しかも 余計な話以上に余計な事しやがってぇえ!世界中のチーズを集めるために 世界一の艦隊を作ろうなんて 間違ってる以前の問題だぁあ!!それもソルベキアと共同で 軍艦を作っちまうなんて 何考えてやがるんだぁあ てめぇえはぁあ!!」
チョッポクルスが言う
「よ、良いでは~~ な、ないか~~? ぐ、軍艦は~~ か、かっこいいんじゃぞ~~?」
ヴィクトールが息を吐いて言う
「お陰で、その時作られた軍艦の技術が ソルベキアのロボット兵の外装を強化する技術に使われ… その上にシュレイザーは ロボット兵の技術進歩へ 巨額の資金援助を行ったとある… それにしても、3日間の出来事を読むのに 3冊も読む事になるなんて… これではチョッポクルス殿の先代の日記に辿り着くまでに何十年掛かる事か」
バーネットが衝撃を受けてから言う
「てめぇえが あのソルベキアのロボット兵を 作り出させやがったのかぁああ!?」
チョッポクルスが怯えながら言う
「ち、違うわ~~ よ、余は~~ ちょ、ちょこっと ロ、ロボット兵って か、かっこいいの~~?と、 お、思ってのぉ~~?そ、それで~~ ちょ、ちょこっと し、資金援助を…」
バーネットが鞭を振り上げて言う
「てめぇええは 一生 地下客室で 全世界の怒りを受けやがれぇええ!!」
伝令兵が敬礼して言う
「申し上げます!勇者ザッツロード殿のお仲間、セーリア殿がお戻りになりました!」
ヴィクトールが顔を上げて言う
「通せ」
セーリアとバッツスクロイツとアンドロイドのデスの3人が現れる 3人が正面のヴィクトールへ顔を向け 次に チョッポクルスを踏みつけ鞭を振るい上げているバーネットを見て衝撃を受ける ヴィクトールが言う
「セーリア殿、そちらの方々は?」
セーリアがハッとして 苦笑しながら言う
「は、はい… 祠の祭壇に取り付けられている 機械を解析する事が出来ると思われる 機械に詳しい方で バッツスクロイツと仰る方です…」
バッツスクロイツが苦笑しつつ セーリアに耳打ちして問う
「な、なぁセーリアちゃん?やっぱりあの正面の王様が慈愛の王様 バーネット第二皇帝で… その隣の… 何か踏み付けて 鞭持ってるのは… 何?」
セーリアが衝撃を受け焦る ヴィクトールが疑問して言う
「どうかしたのか?」
セーリアが焦って言う
「あ、いえっ!?あの…っ バッツスクロイツは ちょっと世間の事に あまり詳しく無い様で…っ その…っ ヴィクトール皇帝陛下の お顔とお名前を知らないそうなのでっ ちょっと私、外で一度 彼に説明をっ!」
ヴィクトールとバーネットが一瞬呆気に取られてから微笑して ヴィクトールが言う
「ああ、アバロンの国名は有名ではあるが 他国の者には私の顔や名前が知られていない事もある 気にしなくて良い バッツスクロイツ殿 我らの国へ良く来てくれた 私がこのアバロン帝国第一皇帝ヴィクトール13世だ」
バッツスクロイツが一瞬驚いた後 改めてヴィクトールを見て言う
「あれ?そーなんだー?あっはは、俺 てっきりアンタが 慈愛の王様なのかなーって思っちゃって!」
セーリアが衝撃を受け焦る ヴィクトールが微笑して言う
「その慈愛の王であるのが こちらのアバロン帝国第二皇帝バーネット2世だ」
ヴィクトールがバーネットを手で示す バッツスクロイツが衝撃を受ける バーネットがチョッポクルスを踏み付け鞭を振り上げたまま 顔を向けて言う
「あん?俺が慈愛の王様じゃぁ 気に入らねぇってぇえ ツラだなぁ?」
バーネットが床へ鞭を叩きつける バッツスクロイツが衝撃を受ける セーリアが苦笑する

チョッポクルスが兵に連れ出されて行く ヴィクトールとバーネットの前にバッツスクロイツたちが立ち ヴィクトールがセーリアへ言う
「彼には 祠の祭壇に取り付けられている 機械の解析を行う事への説明と承諾は 終えているのだろうか?」
セーリアが言う
「私も詳しい事が分からなかったので 彼には機械の解析を行って欲しいと言う事をお願いしました その承諾は得ています」
バーネットが言う
「俺が知っているのはベネテクトにあった祠の祭壇に有った物だ あいつらにはわざわざ知らせなかったが その祭壇には悪魔力と聖魔力両方が混ざった 魔力が吹き出す穴が有ってよ?その穴にソルベキアの国印が入った機械が取り付けられてんだ 他国の祠に同様の物があるのかまでは知らねぇから 余計な情報にならねぇ様に伝えなかった」
ヴィクトールが苦笑して言う
「確かに、偏見を持って調査を行わないという事には なるかもしれないが 予備知識として知らせておいても良かったのではないだろうか?」
バーネットが苦笑して言う
「ちょっと調べりゃ分かる事だ それくれぇの事も気付けねぇ様じゃ 役に立たねぇって事だよ だが、機械の解析に関しては んな事言ってる場合じゃぁねぇからな?おい、祠の調査をやってる連中から連絡は来てるのか?」
家臣Aが現れて言う
「祠の調査を行っていると言う オライオン殿から連絡が入っております 既にローゼント国とシュレイザー国を終え 現在地はスプローニ国だと言う事です」
ヴィクトールが微笑して言う
「そのルートで調査を行っていると言う事は 恐らく次の目的地はベネテクトになるだろう ベネテクトの祠に関しては バーネットの言う様に既に機械が取り付けられている事が確認済みだ その機械の解析を行って頂きたいのだが バッツスクロイツ殿 可能だろうか?」
バッツスクロイツが考えて言う
「ん~と その前に その機械ってー言うのは 何系?」
ヴィクトールとバーネットが衝撃を受け疑問する バッツスクロイツが続けて問う
「ベネテクトの国は知ってるんだけどー そのー 祠とか 祭壇とか?良く分からないんだよねー?機械が付いてるって事は ファクトリーか何処かなの?それとも個人所有のパソコンとか 業者のオフコンだったりー?あ、警備システムの何かトラブルだったりとか?それとも もっと個人的に移動マシーンのコンピュータがトラブったーとかー それともどっかのカンパニーでテレポートシステムのトラブルとか?アンドロイド系のトラブルだったら得意ーって感じだけど?」
ヴィクトールとバーネットが呆気に取られつつ顔を見合わせ ヴィクトールが若干の焦りと共に問う
「き、協力を求めておいて失礼だが バッツスクロイツ殿 貴公の祖国は何処だろうか?」
バーネットが疑問しながら言う
「ガルバディア…の民じゃねぇよなぁ?ソルベキアにこんな感じの奴が 居るなんざ聞いた事もねぇし…」
バッツスクロイツが溜め息と共に言う
「あーそれ、こっちに来てから チョー聞かれまくってるーって感じでさー?しかもー?誰に言っても知らないーの一点張りーで 俺も超ブルー入るから もう言うの止めてんだよねー?」
ヴィクトールがセーリアへ向いて問う
「セーリア殿の友人と言う事になるのだろうか?」
セーリアが苦笑したまま言う
「い、いえ 私たちも彼と行動を共にしたのは 数日の間だけなのですが 彼の言葉はとても難しく 私たちには理解が出来ない事が多くて… あっ それでもっ 彼自身は信用の置ける方であるとっ!」
セーリアが慌てる ヴィクトールが呆気に取られながら 再びバッツスクロイツへ向いて言う
「うん… ではバッツスクロイツ殿 私は貴公の言葉を 可能な限り理解出来るよう 勤めるつもりだ まずは是非、貴公の祖国の名を教えて貰えないだろうか?」
バッツスクロイツが言う
「まぁー ここまで来たんだし?国の名前言いたく無いから止めるーなんて 言えないーって感じだよね?俺は、ローンルーズって国 …って言うか?世界の名前だと思ってたんだけど?こっちにも世界がある訳だし こう言う時ってー?国って事にしといた方が良いのかなー?なーんて?」
ヴィクトールが間を置いて言う
「ローンルーズ?…世界の名前?こっちにも… 世界が…?」
ヴィクトールがバーネットへ向く バーネットが呆れている バッツスクロイツが溜め息を吐いて言う
「もー良い、やっぱ 言うんじゃなかったー」
ヴィクトールが一度考えてから言う
「では、ローンルーズ国のバッツスクロイツ殿 我々もベネテクト国の祠にある 機械の種類と言うのは 分かりかねるのだが 貴公はどのような機械でも 解析が可能なのだろうか?」
皆が驚き ヴィクトールへ向く バッツスクロイツが笑顔で言う
「え!?何!?んじゃ!?俺の言葉 信じてくれるって事っ!?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「貴公の言葉は確かに 私にも分かりかねる部分が多い だが 貴公は今 我々に疑われる事を承知の上で その不安を拭い 伝えてくれた言葉だ 私は貴公を信じる」
セーリアとバーネットが驚き顔を見合わせる バッツスクロイツが泣きそうになりながらも喜び ヴィクトールの近くへ駆け寄って正面で言う
「マジでっ!?チョーありがと!!あんたやっぱり慈愛と友情の王様だよー!今からでも良いって!そこの女王様から慈愛のサブタイトルも貰っときなってー!」
ヴィクトールが呆気に取られる バーネットが驚いたままハッとして 鞭を振り上げて言う
「おいっ!てめぇええ!!誰が『女王様』だぁああ!!」
バッツスクロイツが悲鳴を上げ ヴィクトールの陰に隠れて叫ぶ
「だからー!そー言うプレイを SM系女王様プレイって 言うじゃないー!?」
バーネットが再び怒って言う
「その訳分かんねぇ 何とか系はどぉおでも良いが 俺を『女王様』って 言うんじゃねぇええ!!」
バーネットが鞭を床へ叩き付ける バッツスクロイツが怯えて言う
「チョー怖えぇえんだけど!何でこの人に 慈愛のサブタイトル付いてる訳ー!?ねー!ちょっと教えてよ ヴィクトールっちー!?」
セーリアとバーネットが衝撃を受ける ヴィクトールが苦笑しながら言う
「う、うん… その前に… 貴公について 出来ればもう少し色々と 詳しく教えて貰えると 嬉しいのだが?」

改めてバッツスクロイツが言う
「俺が思うに、こっちの世界は 俺たちの住む世界の『南側の世界』なんだと思うんだ」
ヴィクトールが問う
「『南側の世界』…それでは貴公の住む世界が 我々の住む世界の『北側の世界』と言うことになる」
バッツスクロイツが微笑して言う
「そうそう!俺も小さい頃に聞いた話でさ?単なるおとぎ話だと思ってたんだけど 俺たちの世界にはこんな話が残されているんだ」
バッツスクロイツが軽く咳払いをして改めて言う
「『この世界の南の果て、ワールドエンドマウンテンを越えた先には 9つの王国と9つのパワーストーンが残されている しかし、かの先にある 9つの国と9つのパワーストーンは 時の果て 過去の過ちの元に散り行くであろう 我々人類は 過去の過ちと罪、新たなる罪 3つの大罪から逃れる事で 生き延びる』」
ヴィクトールとバーネットが呆気に取られ 互いに顔を見合わせ バーネットが言う
「南の果てに『世界の終わりの山』がある そらぁつまり」
ヴィクトールが言う
「こちらの世界から考えれば 北の果てに有る『世界の終りの山』 あのガルバディアの北にある高山の事か」
バーネットが言う
「『おとぎ話』ってぇ位だから そんだけ古い話ってぇ事だろ?それなら 話に出てきた王国の数も こっちの過去の王国の数とも合ってやがるってぇ事だ… はっはー 確かに面白れぇ話かも知れねぇが そんな事ぐれぇ ちょいと過去の歴史を知ってる奴なら すぐに作れっちまうホラ話だ」
バッツスクロイツが怒って言う
「ならいーもん!あんたが信じてくれなくったってー!俺には慈愛と友情の王様がついてるんだからー ねー?ヴィクトールっちー?」
バッツスクロイツがヴィクトールのそばへ行って 悪戯っぽく笑う ヴィクトールが苦笑する バーネットが怒って言う
「るせぇえ!勝手に慈愛も持ってくんじゃねぇえ!それからその ヴィクトールっち ってぇえのは何だ!?てめぇえは王族に対する礼儀がなってねぇええんだよ!」
バッツスクロイツが怒って言う
「いーじゃん!俺こっちの世界の人じゃないしー?『過去の過ちの元に散り行く世界』なんてー?危ないから 早くエスケープした方が良いと思うしー?」
バーネットが怒って鞭を振るって言う
「んだとぉおお!?大体その話が本当なら!てめぇえらは 過去の過ちである2大罪からエスケープしやがった上に こっちの世界からもエスケープしやがって!更に逃げ出すつもりってぇえのは 何処まで逃げりゃぁあ気が済むんだ てめぇえらはぁああ!!」
ヴィクトールが言う
「それでは、貴公の住む国が 我々から見て北側の世界に ローンルーズ国があるとして」
バーネットが衝撃を受けてヴィクトールへ向く バッツスクロイツが勝利の微笑と共にヴィクトールへ向く ヴィクトールが続ける
「貴公はその北側の世界から どの様にしてこちらの世界へやって来たのだろうか?あの高山を人の力で越える等と言う事は考えられない だが、何らかの方法があり 貴公らは自由にこちらの世界と北側の世界との 行き来が可能だと言う事なのか?」
バーネットが怒りを抑えて玉座へ戻る バッツスクロイツが軽く首を傾げて言う
「いやー 俺もあんま分んないんだけどー?うちの旧研究室で、見た事の無い宝石ーを見つけてさ?そこに旧式のCITCがあったから なんでこんな所ーにあるんかなー?なーんて?確認しようと思ったら CITCの空間転送システムの機能が生きてたーみたいで? しかも、後で調べて分かったんだけど この宝石には凄い多量の電子が蓄電されてて そのせいで空間転送システムのプログラムが実行されちゃったみたいなんだ でも、普段は蓄電される事はあっても 勝手に放電される事は無いはずなんだけど… 何であの時、勝手に放電されちゃったのかなぁ?」
バッツスクロイツが言いながら 宝玉を取り出す ヴィクトールとバーネットが驚き ヴィクトールが言う
「それはっ!」
バーネットが続けて言う
「宝玉じゃねぇえか!?何で てめぇえが持ってやがる!?一体どこの国のっ!?」
バーネットがセーリアへ向く セーリアが驚いた状態から バーネットの視線に気付いて言う
「あっ 私たちの預かっているベネテクトの宝玉は 今ザッツが持っています」
バッツスクロイツが呆気に取られている ヴィクトールが考えて言う
「現在各国から貸し出された宝玉の所有者は全て把握している あの魔王の島にある2つの宝玉を含め 全9つの宝玉の行方は…」
バーネットとヴィクトールがハッとして バーネットが言う
「『9つのパワーストーン』…?」
ヴィクトールとバーネットが顔を見合わせる バッツスクロイツが疑問して言う
「え?何?これ宝玉って言うの?」
ヴィクトールが言う
「あの魔王の島に 2代目勇者らが使用した宝玉の他に それ以前に使用されたもう1つの宝玉がある事は 各国の国王にすら伝えていない事だ バッツスクロイツが嘘の話を造るにしても 過去の王国の数とは違い その1つの宝玉の存在を知っている可能性は限りなく低い」
バーネットが言う
「だが、あのヘクターの娘たちに口止めしてる位じゃ 例の竜族の話から それらしきものがあるんじゃねぇか?ぐらいの憶測は出来やがるだろう?」
ヴィクトールがバーネットへ向く バーネットが苦笑して言う
「わーかった、完全に信じる訳には行かねぇが そこまで手の込んだ嘘話作ってまで俺たちにつけ入って見物しようなんざ 物好きな奴も居ねぇだろ あのソルベキアからの密偵だったなら 分からねぇでもねぇが もう少しマシな嘘を吐くってもんだ」
ヴィクトールが微笑んで言う
「では、祠の機械の解析は 彼に頼む事にしよう」
バーネットが立ち上がって言う
「好きにしろよ 俺はまた他国へ行って 歴史に関するものを探して来る あの無駄に余計な話が大量で 読んで知る度に頭に来て カスチョッポクルスに当たりたくなる 歴代シュレイザー国国王の日記なんざ読む位なら 次のスプローニ国の書物庫にでも篭ってる方が よっぽどマシだぜ」
ヴィクトールが苦笑して言う
「うん、では あの日記の解析は アバロンの鑑識に回しておくよ スプローニの書物庫はそれほど大きくは無いらしいが なるべく早く戻って来てくれよ?」
バーネットが歩きながら言う
「ああ、問題ねぇよ あの位の量なら 数日で読み終わる」
ヴィクトールが微笑して言う
「では、バッツスクロイツ セーリア殿と共に ベネテクトの祠へ向かい そこで調査を行っている者たちと合流してくれ」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「オーケー、あの女王様にも信じてもらえるように バッチリ解析してきちゃうーってね?」
ヴィクトールが微笑して言う
「バーネットは貴公の事を最初から信じていたのだよ ただ、他に出来る者が居ない 機械の解析を行う人物として 貴公の身柄を確認していただけなのだ 明確な確証は得られなかったが ソルベキアの密偵では無いと判断された以上 我々の捜査をかく乱する者では無いと結論が成された」
バッツスクロイツが呆気に取られた後 微笑して言う
「それじゃ、ヴィクトールっちは ホントは俺を疑ってたーって事?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「私個人としては信じたいと思っていたが 我が国には いまだ敵対する国がある事も事実なのだ」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「それがさっき言ってた ソルベキアって国?あのロボット兵って奴を作ったのも その国なんだろ?」
ヴィクトールが言う
「そして、貴公に解析を依頼する機械も その国の物になる」
バッツスクロイツが頷いて言う
「なるほど?それじゃ 尚更 俺を疑わなきゃいけなかったーって訳ね?了ー解!それじゃ、俺もその疑いを払拭する為に 頑張ってきますかー!」
ヴィクトールが微笑して言う
「バッツスクロイツ、貴公の活躍を期待している」
バッツスクロイツが微笑して頷き 玉座の間を出て行く セーリアが続く

【 ソルベキア国 】

リーザロッテ、シャルロッテ、ラナ、ヴェルアロンスライツァー、ヘクター、プログラマーの6人がソルベキア城を見上げている リーザロッテが言う
「ヴィクトール皇帝陛下からの御命令は 各国の祠の祭壇へ取り付けられた機械を造ったソルベキアを 調査しなさいって事だったけど… 具体的には どの様に調査をしたら良いかしら?」
プログラマーが答える
『祭壇に取り付けられた その機械に関する情報と その機械を使いソルベキアが何を行っていた、また行う事が出来るのか と言う事になる どちらもソルベキアが国の事業として行っていた事だ その詳細を知るにはソルベキア城へ向かい ソルベキア国王に問う事になる しかし』
ラナが言う
「素直に教えてくれる訳無いわよね?ソルベキアはアバロンに 本当は今も敵対しているんでしょ?」
リーザロッテが言う
「素直に教えてもらえないのでしたら 別の手段を考えなくてはいけないわね?」
シャルロッテが言う
「ソ、ソソソソルベキアの国家事業などはっ ソルベキア城地下にある セントラルコンピュータにっ 全て記録されていますぅ!」
リーザロッテが言う
「なら、そこへ向かって シャルがその記録を調べれば良いのではなくて?シャルならソルベキアの民なのだし 疑われる事もないのでしょ?」
シャルロッテが衝撃を受け 慌てて言う
「セ、セセセセントラルコンピュータにっ アクセスが許されるソルベキアの民は ごく僅かなソルベキア国王の身辺の者だけでっ わ、私がアクセスするなんて不可能ですぅ」
ヘクターがプログラマーへ言う
「なら お前が?」
プログラマーがヘクターへ向いて言う
『出来るものなら とっくにやっている』
ヴェルアロンスライツァーが言う
「アバロンが帝国となり 全国の指揮権を有したとしても 他国の極秘情報を強制的に提出させる事は不可能だ 例え、我々がヴィクトール皇帝陛下の命を受け 参じたと進言しても その情報源への接触の許可は降りないだろう」
ヘクターが言う
「なら さっき言ってた『ごく僅かなソルベキア国王の身辺の者』って言う奴に頼むとか?そいつらが誰なのかは分かるのか?」
プログラマーが言う
『その限られた人物の名は 数名ほど分かっている だが、その人物らに 協力を依頼する事は難しい 唯一可能性があるとしたら その中の1名』
皆が注目する プログラマーがヘクターへ向いて言う
『お前も以前に接触し 更に世話になった人物だ』
皆の視線がヘクターへ向く ヘクターが一瞬呆気に取られた後 少し考え思い出して言う
「ああ!あの人か!えっとー?そうだ、スファルツ卿さん!」
シャルロッテが衝撃を受ける リーザロッテが言う
「スファルツ卿さん?卿と言う事は ソルベキア国の上層部の人物と言う事ね?」
ヘクターが疑問する プログラマーが言う
『かの者は ソルベキア国候爵 スファルツ・レイロルト・クラウザー そこに居るシャルロッテの父親だ』
皆が衝撃を受け シャルロッテへ向く シャルロッテが焦って モバイルPCで顔を隠す ヘクターが軽く笑って言う
「なんだー!あの人 お前の父ちゃんだったのか!俺、昔し世話になったんだぜ?」
シャルロッテが慌てて言う
「は、ははは はい!知ってますっ その時にっ 父も 初めてガルバディアのプログラマーの存在を確認したと!」
プログラマーが衝撃を受けて言う
『そうか あの時既に 私のアクセス回路データを盗まれていたのかっ だからローレシア城やソルベキアの重要施設への 私へのプロテクトが異常に高く…っ』
プログラマーが怒る シャルロッテが焦って口を塞ぐ リーザロッテが言う
「何にしても、このままソルベキア城を見上げていても 情報は得られないわ シャル、お父様へお願い出来ないかしら?」
ヘクター以外の皆が衝撃を受ける ラナが言う
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?今は それよりも!?ソルベキアの上層部に属する人の娘が 貴方の仲間に居たって事の方が問題じゃない!」
シャルロッテが困る リーザロッテがラナへ怒って言う
「シャルは私たちの仲間よ!そのシャルを疑うと仰るのなら 私を疑うのと同じだわ!」
ヴェルアロンスライツァーが考えて言う
「アバロンの兵であるヘクターの相棒の情報を得て アバロンの敵であったローレシアとソルベキアを守っていた と言う事は… 現在 我々が協力を依頼しても かの者はそれに応じる事は ないのではなかろうか?」
ラナが言う
「当然よ!それどころか こっちの情報がシャルロッテから ソルベキアに伝わってる可能性だってあるのよ!?」
プログラマーが言う
『今の所その心配は不要だ シャルロッテに関しては 私が常に監視している』
リーザロッテがプログラマーへ向いて怒って言う
「何ですってっ!?」
シャルロッテが苦笑して言う
「は、はは はい… そのっ 私はっ 構いません… ソルベキアの民である私を アバロンの方が監視するのは と、当然ですぅ…」
ヘクターが軽く笑って言う
「デスはアバロンじゃなくて ガルバディアの民だけどな?」
シャルロッテが慌てて言う
「あ、ああ あ、そ、そうでしたっ ごめんなさいっ!」
ヘクターが言う
「じゃ、そうと決まったら行こうぜ?俺、またソルベキアの外の空気吸ってると ぶっ倒れそうな気がするからよー?」
ヘクターが先行する プログラマーが続く 皆が驚き ラナが言う
「い、行くってどこへ!?」
ヘクターが顔だけを向けて言う
「だから、頼みに行くんだろー?ついでに昔の礼も言っとかねーと 折角だし、リーザも仲間なら シャルの父ちゃんに一言ぐらい 挨拶しとけよ?」
皆が呆気に取られた後 シャルロッテが慌てて追いかけて言う
「ま、ままっ 待って下さいーっ!?」
残った者たちが顔を見合わせ リーザロッテとヴェルアロンスライツァーが歩き出し ラナが困ってから続く

スファルツの屋敷前に到着したヘクターたち 到着すると共に門が開きスファルツが現れ ヘクターへ微笑して言う
「お久し振りです、アバロン帝国3番隊隊長ヘクター殿 そして」
プログラマーが姿を表して言う
『わざわざの出迎え感謝する スファルツ卿』
スファルツが微笑して言う
「とんでもございません、ガルバディアの貴重な技術を 改めて拝見させて頂き 光栄です ガルバディアのプログラマー殿」
リーザロッテが進み出て言う
「初めまして、ソルベキア国侯爵スファルツ卿 ソルベキアは他国と違い 姓を先に記すのだったわね 忘れていたわ」
スファルツが軽く笑って言う
「はい、先日は 我が娘シャルロッテの捜索に 手を焼かれたそうで こちらから連絡を入れず 失礼致しました ツヴァイザー国リーザロッテ王女」
ヘクターが首を傾げて言う
「なんだー?俺たちが来るって 知ってたのか?」
プログラマーが言う
『お前たちがスファルツ卿へ協力を求めると決めた時点で 彼から我々へ対する ハッキングへのプロテクトを解除した それとは別に シャルロッテのモバイルPCから送信され続けていた 位置情報送信プログラムも 私からの挨拶と共に 送信抑制プログラムを解除してやった』
シャルロッテが衝撃を受け 慌ててモバイルPCを操作しながら言う
「え!?わ、私っ そんなプログラムなんてっ!」
プログラマーが言う
『お前が作った物ではない あのプログラムの組み方は ローレシア城やソルベキアの重要施設に置いて 私へのプロテクトを作った者と 同じだったからな』
スファルツが微笑して言う
「流石ですね、あれでも十分に 気付かれる事の無い様 形式を変えて組んだのですが」
プログラマーが微笑して言う
『私をあまり甘く見てくれるな 初めてローレシアの2代目勇者ザッツロード6世と接触した当時から お前の目障りなハッキングには気付いていた だが、それがお前であると特定するまでに時間が掛かったのは 私の失態ではあったがな?』
スファルツが軽く笑って言う
「ソルベキアのプログラマーは数万人 対するガルバディアのプログラマーは 貴方を含めても数えるほどです 私が先に貴方を特定出来るのは当然でした しかし、特定して間もなく ガルバディアから貴方の存在が消えてしまったのには驚きましたよ 一生を機械の中で過ごすガルバディアのプログラマーである貴方が どちらかへ御出張でしたか?」
ヘクターが微笑して言う
「おう、俺と一緒に 世界を救う旅に出てたんだぜ!な?」
プログラマーが微笑して言う
『そう言う事だ』
スファルツが微笑して言う
「そうでしたか、それはさぞ お忙しかったのでしょう 私も貴方との遊びが楽しめなくて 残念ではありましたが 御出張を終えガルバディアへ戻られたのですし 再び私のお相手をして頂けると光栄なのですが?」
プログラマーが軽く笑って言う
『既にしているとは思うが?それでも足りないと言うのであれば これから我々の行う遊びにも 参加してみないか?相手はお前の国 ソルベキア国だ スリルもあって楽しめるだろう?』
スファルツとプログラマーが笑いを合わせる リーザロッテが仲間たちへ向いて小声で怒って言う
「ちょ、ちょっと!?誰か!あの2人が何を話しているのか 私に説明なさい!?」
シャルロッテが怯えて言う
「あ、ああっ あんなに楽しそうなっ お父様を見たのはっ は、初めてですぅ~」
ヘクターが首を傾げて言う
「ん~?なんか、今日のデスは やけに機嫌が良いな?でも、まぁ 楽しそうで何よりだぜ!」
ヘクターが笑顔になる リーザロッテたちが衝撃を受け呆れる

リーザロッテたちがスファルツの屋敷の一室でお茶を飲みつつ話をしている スファルツが言う
「なるほど… ソルベキア城のセントラルコンピュータへのアクセスですか それは難しいご相談ですね?」
リーザロッテが言う
「貴方方ソルベキアの方に お願いするのも甚だしい話ではあるけれど 貴方の娘であるシャルロッテも 私たちと共に世界を守ろうと戦っているのでしてよ?そのシャルの父親である貴方であるなら 分かって下さるのではなくて?」
シャルロッテが言い辛そうに言う
「お、お父様っ わ、私っ アバロンはっ 本当に世界を守る為に 各国からの了承を得て 帝国になったのだと お、思いますっ その… ソルベキアのやり方では 世界を救う事は出来ないとっ」
スファルツが軽く笑って言う
「ソルベキアは世界を救おう等とは 考えていないのだよ」
皆が驚く ラナが言う
「それでは!やっぱりソルベキアは ただ世界を支配したいだけだと言うの!?」
スファルツが微笑して言う
「我らソルベキアの王は 人が嫌いなのです ですから世界を救う事より 人を支配する事を考えておられる様です」
ヴェルアロンスライツァーが疑問する
「人が嫌いであるから 人を支配する… それだけを 求めていると?」
スファルツが苦笑して言う
「もっとも、それでは 自分たちも生き残れませんので そのための方法もお考えだとか?しかし、今は今しか使えない力を利用し 常に力を有する人を 先に支配してしまおうとお考えのご様子です」
リーザロッテが怒りを抑えて問う
「では、貴方も ソルベキア国王と 同じお考えなの?もうすぐ悪魔力がこの世界を覆って 全ての命が魔物化してしまうかも しれないと言うのに!」
皆がスファルツへ視線を向ける スファルツが間を置いて微笑して言う
「そうですね、私の友人である ガルバディアのプログラマー殿が あの島の結界の期限を教えて下さるまでは 私もソルベキア国王のお考えが正しいと思っておりました しかし、アバロンから正式に その期限の情報が各国の王へ配信され それを信じないソルベキア国王と 私との考えには 誤差が生じ始めております」
シャルロッテが表情を明るめて言う
「お、おお お父様っ それではっ!?」
スファルツが微笑んで言う
「今回ばかりは 私も貴方方と共に アバロンへ手を貸しましょう」
皆が微笑む

スファルツがモニターにソルベキア城の見取り図を表示させて言う
「私と言えど ソルベキアの情報中枢である セントラルコンピュータへ 自由にアクセスする事は許されておりません その為 今回は非常事態につき セントラルコンピュータのシステムを防御すると言う口実の下 その場所へ向かい 逆に情報を引き出そうと思います この事を行うには皆様のお力を お貸し頂かねばなりません」
ヘクターが軽く微笑して言う
「もちろん!手伝うぜ!俺たちに不可能はねーからさ!何だって言ってくれよ?」
スファルツが微笑して言う
「それは頼もしいですね?では私の作った 世界一のプログラマーを捕らえるプログラムも 解除はしないままに」
プログラマーが姿を表して叫ぶ
『貴様は 手を貸す気が有るのなら!余計な手間を掛けさせるな!』
スファルツが微笑して言う
「冗談ですよ 貴方には一番手伝って頂かねばなりません 何しろ相手は このソルベキア国が建国される以前からの膨大な情報です その中から貴方方が求められている1つの機械の情報を探し出すのは 我々ソルベキアのプログラマーが1人2人では とても手に負えません ここは1つ世界一の演算スピードを有しておられる 貴方様のお力に頼る他ありませんので」
プログラマーがぷいっと顔を背ける スファルツが軽く笑う リーザロッテが問う
「では、その機械の情報を調べに行くのは 彼と、貴方とシャルと言う事になるのかしら?だとしたら 私たちは何を手伝ったらよろしくて?」
スファルツが微笑して言う
「実は、ここ最近 ソルベキアは 機械燃料を強奪しにやって来る 凶悪な強盗団の被害に悩まされております そこで貴方方には その賊らの筆頭となって頂き ソルベキアの情報を盗み出し それを使って脅迫をし掛けるフリを行って頂きたいのです」
皆が驚く スファルツが微笑して言う
「作戦は彼らと同じく 深夜に決行するのが好ましいでしょう それまでの間に 私も彼ら強盗団が使用する ハッキングの手口に似せたものを製作しておきます 彼らにはソルベキアのハッカーが仲間にいる事が確認されておりますので シャルロッテは皆様と共に行かせる事が好ましいと思います」
ヘクターが言う
「なら、ソルベキア城の地下へ行くのは あんたとデスって事か?」
スファルツが微笑して言う
「そう言う事になります 御安心を 皆様を裏切り 私が彼を捕らえるような事は 致しませんので」
プログラマーが軽蔑して言う
『心配は不要だ、私はお前を信じて隙を見せる様な事は決して無い お前が作った ホログラムから発信もとへ攻撃を行うプログラムも既に解析させてもらった』
スファルツが笑顔で言う
「ではその新作2号機を 早速 試させていただく事も 考えておきますね?」
プログラマーが衝撃を受け怒る スファルツが笑顔のままでいる 皆が呆れる

深夜

盗賊団に似せた服装のリーザロッテたちが ソルベキア城の近くに集まり リーザロッテが言う
「ツヴァイザーの勇者にして王女の私が 盗賊団になるだなんて…っ」
リーザロッテが頬を赤らめ怒る ラナが言う
「あら?割と似合ってるじゃない?流石 勇者の真似をする王女様には どんな衣装もお似合いなのね?」
リーザロッテが怒って言う
「何ですってぇーっ!」
ヘクターが小声で怒って言う
「おいっ まだスファルツ卿さんから連絡が来てねーんだから 騒いじゃダメだろー?騒ぐのは… 城に正面から突入する時だぜ!?」
ヘクターが笑顔になる 皆が呆れの汗を流す ヴェルアロンスライツァーが言う
「いくら城の生態識別のプログラムを止めていても 目立つ行動を行うのは推奨しかねる 我々の正体が悟られてしまっては 作戦も何も無くなるのだ」
リーザロッテが落ち着いて言う
「そうね、正々堂々と正面から行くのは アバロン式なのでしょ?なら 今回はそれこそ こっそりと 裏口から回らなければいけないのではなくって?」
ヘクターが衝撃を受ける シャルロッテがモバイルPCを操作しながら言う
「はい、既に進入ルートは検索してあります 後はお父様からの通信を待って… あ!来ました!作戦け けけけっ決行ですぅ!」
シャルロッテがモバイルPCから顔を出して ソルベキア城を指差す 皆がソルベキア城を見る

スファルツの屋敷

スファルツが機械を操作している モニターに映り掛けるリーザロッテたちの姿が 何も無い映像に切り替わる スファルツが言う
「彼らの姿が防犯システムに残らない様 捕獲システムを解除すると共に 上書きプログラムを実行しておきます これなら後日確認しようにも 完全にデータは消滅しているので この時の映像を利用し 私が皆様を脅すような真似は出来ません …ので、私のプログラムを監視するのは そろそろ止めて頂け無いでしょうか?」
スファルツが後ろを振り返る プログラマーのホログラムがぷいと顔を逸らす

ソルベキア城

ヘクターとヴェルアロンスライツァーが扉を壊し 皆が内部へ進入する シャルロッテがモバイルPCを操作しながら言う
「ここから私がセントラルコンピュータへハッキングを開始します 無事ハッキングが終ったら セントラルコンピュータの保持を担当している ランドフ大臣のもとへ向かって 現在ソルベキアに保管されている機械燃料を 全てヴィルトンの港町へ送る事を脅迫します」
ヘクターが疑問して言う
「けど、その脅迫は 本当はどーでも良いんだろ?」
リーザロッテが言う
「そうではあっても 本気に見せなければ意味が無くってよ?」
ラナが言う
「でも、本当に その機械燃料がヴィルトンの港町へ送られてしまったらどうなるのかしら?」
リーザロッテが困って言う
「そ、それは…」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「ヴィルトンの港町へ送られるのであれば あの港に停泊している 多くの船の燃料として 有効的に使われるのではないだろうか?」
ヘクターが気付いて言う
「お?んなら カイザの奴も喜びそうだな?」
ヴェルアロンスライツァーが軽く微笑して言う
「彼には過去 何度も手を貸してもらっている その恩を返す事にもなるだろう」
ラナが言う
「でも、私たちがソルベキアを襲撃した事は 伝えてはいけないのだから 私たちからのお礼だって事が 分からないじゃない?」
リーザロッテが言う
「船の燃料になるのなら 少なくとも迷惑にはならないのでしょ?例えそれが、私たちからのものだと分からなくても 恩を返す事が出来れば 宜しいのではなくて?」
ヘクターが微笑して言う
「そうだな!あいつら船の燃料が高くなっちまって 困ってるって言ってたから 迷惑にはぜってーならねーよ!」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「ソルベキアにとっては 壮大な迷惑となるのだがな?」
ヘクターが呆気に取られた後笑う シャルロッテがモバイルPCの操作を終えながら言う
「出来ました!それでは早速 ランドフ大臣のもとへ!こ、こここっ こっちですぅ~!」
シャルロッテがモバイルPCから顔を上げ指差す 皆が頷き 走り出す

ソルベキア城内

ランドフが通信機の音に眠い目を擦りながら起き上がり 通信機を着信させて言う
「このような夜更けに何の用だ…?」
通信機にエンジニアが映り言う
『夜分遅くに失礼致します!ランドフ大臣!先ほどセントラルコンピュータへのハッキングを確認致しました!』
ランドフが驚いて言う
「何っ!またあの賊どもか!?機械燃料を奪いに 毎度毎度生意気な!最新防壁プログラムはどうした!?」
エンジニアが言う
『そ、それが 実行しておりますが あまり役に立っておりません!このままでは 数分の内に最重要データまで到達してしまいます!』
ランドフが表情を顰めて言う
「く…っ仕方が無い!スファルツを呼び出し 防壁プログラムを構築させろ!すぐに私も行く!」
エンジニアが返事をして通信を切る ランドフがベッドから出て歩き出すと 部屋の扉が蹴破られ ヘクターとヴェルアロンスライツァーが武器を向け入って来る ランドフが驚く リーザロッテが皆の前に立って言う
「ランドフ大臣!命が惜しければ ソルベキアにある全ての機械燃料を 今すぐヴィルトンの港町へ送りなさい!」
ランドフが一瞬驚いた後怒って言う
「なるほど ちまちまと盗むのでは飽き足らず 全ての燃料を奪いに来たと言う事かっ!」
ラナが前に出て言う
「さあ!どうしたの!送らないというのなら…っ」
ラナが魔力を終結する ランドフが焦って言う
「わ、分かった!言う通りにする!」
ヘクターとヴェルアロンスライツァーが横目に微笑し合う ランドフが言う
「だが、ここでは その手配が出来ない 手配処理が出来る場所へ向かう お、お前たちも付いて来るが良い」
皆が一瞬呆気に取られた後 リーザロッテが微笑して言う
「もちろんよ!貴方をここから逃がす事も 手配処理を逃れさせる事も させる訳にはいかなくてよ!?」
ヘクターが疑問して言う
「俺たちは強盗団の真似なんだから どっちも逃れさせても良いんじゃなかったか?」
ヴェルアロンスライツァーとシャルロッテが苦笑する

スファルツの屋敷

スファルツが通信機のモニターに映るエンジニアに言う
「分かりました、直ちに向かい 防壁プログラムを構築し 盗賊団のハッカーから セントラルコンピュータのデータを守りましょう」
通信機のモニターに映るエンジニアが言う
『夜分遅くに申し訳ございません 緊急事態につき どうか、よろしくお願い致します!』
通信機のモニターが消える スファルツが微笑して言う
「では、我々も向かいましょう …それとも?今は相棒様の下に 行ってらっしゃるのですか?」
プログラマーがホログラムを表して言う
『私の存在を確認出来なくなったとでも言うのか?』
スファルツが微笑して言う
「今回だけは 私は貴方のお仲間なのです わざわざ貴方の見え辛い電波を確認する そちらの必要もございませんでしょう?」
プログラマーが衝撃を受け怒って言う
『私を電波扱いするなっ』

ソルベキア城 城門前

自動馬車辿り着く スファルツが少し焦った様子を見せながら門兵らの敬礼を受け ソルベキア城の地下へ向かう 

セントラルコンピュータ入り口

スファルツが小走りにやって来ると 門兵たちが扉を開く スファルツが軽く頷きシステム制御盤へ向かう 門兵たちが室内へ入ったスファルツの様子を見てから扉を閉める スファルツがそれを確認してから操作を開始して言う
「では、私が擬似防壁プログラムを構築します その間に」
プログラマーが音声だけで言う
『既に進入ルートは確保した 私の検索履歴を隠蔽する作業も同時に行ってくれ こちらは全てのプログラムを停止して 全力で検索を行う』
スファルツが一瞬驚いてから 微笑して言う
「そんなに私を信用されて宜しいのですか?ガルバディアのプログラマー殿?」
スファルツが機械操作を続ける

ソルベキア城内 通路

ランドフが先を歩き その後ろにリーザロッテたちが続いて歩いて行くと やがて 広い空間へ辿り着く リーザロッテたちが周囲を見渡して不審がる ランドフが壁にある機械制御盤へ向かう リーザロッテが疑問して言う
「機械燃料の手配を行うのに… こんな所へ来なくては いけなくって?」
ヘクターが周囲を見渡しながら言う
「随分広い所だなー?3番隊の部隊練習所と同じぐら…」
ヴェルアロンスライツァーが慌ててヘクターを殴って言葉を制す ヘクターが殴られた頭を押さえ ヴェルアロンスライツァーへ怒りの視線を向ける ランドフが機械操作を行うと やって来た通路からの入り口の扉が閉まる 皆が驚きリーザロッテが怒って言う
「ちょっと!?どういうおつもり!?」
ランドフが振り返り 笑みを見せて言う
「ハッハッハ!馬鹿な盗賊団だ こんな場所まで素直についてくるとは」
壁が開き ロボット兵が現れる 皆が驚く ランドフが言う
「飛んで火に入るナントヤラだ 戦闘力確認に丁度良い フェリペゴーランド1号機の力を思い知れ!さあ!フェリペゴーランド1号機!憎き盗賊団を始末せよ!」
ヘクターとヴェルアロンスライツァーが武器を構え ヘクターが表情をしかめて言う
「チィッ 俺はデスのプログラム以外で あれと戦うのは苦手なんだ おいヴェル!ここは お前に頼むぜ!!」
ヴェルアロンスライツァーが一瞬驚き怒って言う
「我らの名を呼ぶなっ」
リーザロッテがシャルロッテとラナへ言う
「シャル!あのボウボウ頭にプログラムのサポートを!そして貴方!貴方はヴェルア何とかに魔法の援護よ!」
シャルロッテが慌てて返事をしてモバイルPCを操作する ラナが怒って言う
「あんたも戦いなさいよ!」
ラナが詠唱を開始する リーザロッテが怒って言う
「私は勇者なんだから 指示を送れば良いのよ!」
ラナが魔術詠唱を失敗させて怒って言う
「どんな勇者よっ!?」

セントラルコンピュータ室

スファルツが額に汗を浮かべながらタイピングを続け モニターを確認して言う
「流石32.84エクサフラップスの演算スピードは驚異的だ… 彼の形跡を追って検索履歴を消去するだけでも 今の私には限界に近い この状態で彼の発信元へ攻撃を行う事など不可能だ それが分かっていたから 彼は私の前であっても全てのプログラムを停止し 検索を実行出来ると言う事か?しかし、例え我が娘がリーザロッテ王女らと共に向かっているとは言え 私が娘や彼女らを裏切り 彼へ攻撃する事だって可能だ… やはり 彼は私を信用して?」
モニターに新たな情報が表示される スファルツが驚いて言う
「何っ!?彼女らが!?」

ソルベキア城内 通路

爆風の吹き荒れる通路中をリーザロッテたちが走る 後方からフェリペゴーランド2、3、4号機が追いかけて来る ヘクターが叫ぶ
「ちくしょー!デスが居れば!あんな奴らの10や20!屁でもねぇってーのに!!」
シャルロッテが慌てて言う
「ご、ごごごごめんなさいっ!わ、私のプログラムをっ ヘクターさんはっ う、受け取ってくれないのでっ!」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「すまない、私も 魔力を使っての攻撃は 上手く行かないと言う事が 良く分かった」
ラナが言う
「それでも あのロボット兵を1体倒せたのはすごいわよ!そっちのボウボウ頭なんて ちっとも役に立たなかったじゃない!」
ヘクターが衝撃を受け怒って言う
「俺はっ!デスのプログラム以外のサポートじゃ戦わねぇえって 決めてんだよー!」
リーザロッテが怒って言う
「そんな事を言っているから!シャルのプログラムを受け取れなくってよ!!」
リーザロッテたちの進行方向で爆発が起きる リーザロッテたちが驚いて慌てて立ち止まる 正面からフェリペゴーランド5号機が現れる 通路の両側を塞がれ 皆が背を向け合って集まる ヘクターがフェリペゴーランド5号機へ剣を向けて言う
「仕方ねぇ… こっちの一体をぶっ壊して逃げるしかっ …おい、そこのプログラマー!俺にプログラムのサポートを!ヴェル!お前はそっちの3体を押し止めといてくれ!」
ヴェルアロンスライツァーが3体へ剣を構える ラナが詠唱を開始する シャルロッテが返事をしてモバイルPCのタイピングを開始する リーザロッテが怒って言う
「ちょっとっ!?私の勇者の仕事を 横取りしないで頂戴っ!」

セントラルコンピュータ室

スファルツが機械操作をしている モニターに次々情報が出され 最後の情報にスファルツが焦って言う
「なにっ!?彼女らが負けてしまっただとっ!?何故だ!?リーザロッテ王女らには 自他共に認める世界一の大剣使いヘクターと 大陸東部で最強と言われたスプローニ国第二部隊副隊長であるヴェルアロンスライツァーまで付いて居ると言うのに その彼らへサポートが出来る者が居れば 現存するフェリペゴーランド5体の全てを相手にしたって問題ない筈っ!?…だがセントラルコンピュータに未確認情報を記録する事は無い 彼らの敗北 これは紛れも無い真実だ このままでは 彼女らの正体が暴かれてしまう!」
スファルツが周囲を見渡しながら叫ぶ
「デス!デス!聞こえますか!?作戦は中止です!すぐに戻って下さい!」
スファルツがモニターを見上げて言う
「駄目だ 音声認識プログラムも解除して 検索を行っているんだ 今すぐ作戦を停止して 彼らを助けに行かなければならないと言うのに…っ どうしたらっ!?」
スファルツが視線を泳がせた後 モニターを見上げて間を置いて言う
「…うん?いや、おかしい 確かにソルベキア国建国前からの情報量が膨大だとは言え セントラルコンピュータが作られ情報の記録がなされたのは それほど過去の話では無い 32.84エクサフラップスの演算スピードを持ってすれば たった一つの機械の情報などとっくに見つけ出し その情報を取り出す事だって…?」
スファルツが衝撃を受け怒って叫ぶ
「あっ!あのガルバディアの民!!」
スファルツが機械を操作しながら怒って言う
「ソルベキアの民である私に 必死に検索履歴を消させておきながら!自分はとっくに機械の情報を入手し ソルベキアの機密情報を 調べ上げているのですねぇええ!?」
スファルツがポケットから小型機械を取り出し スイッチを入れて 更に機械の操作を行って言う
「そんな小汚く 無防備な貴方に プレゼントですっ」

【 ガルバディア城 】

暗い室内 周囲にある機械の一部が一瞬火花を散らし小さく破裂する 周囲の機械が慌しく修復に動く

【 ソルベキア城 セントラルコンピュータ室 】

スファルツの横に プログラマーが乱れるホログラムを現して言う
『おいっ!貴様!無防備な私に 攻撃を仕掛けるとは 卑怯だぞ!!』
スファルツが勢い良く振り返って言う
「貴方に言われたく 有りませんっ!」

ソルベキア城内 通路

ヘクターとヴェルアロンスライツァーが倒れている リーザロッテとラナとシャルロッテが焦り3人で身を寄せている所へ ランドフが歩いて来て言う
「うん…?思ったほど良い情報は得られなかったな?剣士に魔法使いやプログラマーまで居るのだから もう少し良い情報が得られると思ったのだが… もしや?」
リーザロッテたちが焦る ランドフがニヤリと笑って言う
「このフェリペゴーランドたちの戦闘能力は 既存のロボット兵を遥かに上回ってしまったという事か!?」
ランドフが笑う ヘクターが悔しがって言う
「ちくしょ… あんな弱っちいのに 負けたなんて…っ」
ランドフが言う
「よし、フェリペゴーランド こいつらを捕らえ 地下牢へ捕らえておけ その間に私がこいつらの生態識別情報を確認しておく」
ランドフが立ち去る フェリペゴーランドたちが命令受信のランプを光らせ ヘクターたちを掴もうとする ヘクターが気付いて言う
「うん?デス!?終ったのか!?」
プログラマーの声だけがする
『ソルベキアの最新ロボット兵か… しかし、各箇所の装甲を強化しただけで パワーもスタミナも既存のまま… この程度の者を相手に何をやっているんだ お前たちは?』
言い終えると共に プログラマーがホログラムを現す その隣にロキの姿が現れる リーザロッテが驚いて言う
「貴方は!?スプローニの第二部隊長のっ!?」
リーザロッテが慌てて口を押さえる ヴェルアロンスライツァーが振り返り驚いて言う
「ロキ!?何故 貴殿が!?」
プログラマーが軽く笑って言う
『戦いを開始してから気付かれ 混乱されては意味が無いからな 先に言っておく これは 私の作ったロキのプログラムだ だが、慣れない魔力者のサポートを受けて戦うよりは 今のお前の力になるだろう』
フェリペゴーランドたちが プログラマーとロキのプログラムを確認する プログラマーがその様子へ言う
『そして、このロボット兵らが記録している情報は スファルツ卿が遮断している 気にせず戦え』
ヘクターとヴェルアロンスライツァーが立ち上がり武器を構える ヴェルアロンスライツァーの後方でロキのプログラムが銃を構える プログラマーがサポートプログラムを開始し、ヘクターの剣に数字の羅列が発生する ヘクターが笑んで言う
「よし!形勢逆転だ!今度こそ ぶっ倒してやるぜ!!」
ヘクターとヴェルアロンスライツァーが フェリぺゴーランドへ向かって行く

【 ベネテクト国 】

祠周囲で オライオン、シュライツ、ヴェイン、ロイ、ロスラグ、ベーネットが魔物を倒している オライオンがシュライツの魔法を剣に受け取り 魔法剣で攻撃すると一撃で魔物が倒される ヴェインとロイがそれを見てヴェインが言う
「あれがアバロンの魔法剣士と言われた力か」
ロイがヴェインの横に来て言う
「…通常の攻撃に加え 魔力による攻撃威力の上昇 2つの力を足す事で それ以上の力となるらしい」
ベーネットが横に来て言う
「それであちらは2人でありながらも 我々3人と同等の戦力を有する事が可能なのだね?」
ヴェインがすまなそうな表情で言う
「ベーネット陛下、突然押し掛け 更に手伝いまでをさせてしまい 申し訳有りません」
ベーネットが優しく微笑んで言う
「いや、こちらこそ 祠の結界が破られてしまってから 急増する魔物に手を焼いていた所なのだ 君達の助力に感謝している」
ヴェインとロイが顔を見合わせ ロイが視線を逸らして言う
「…あのバーネット第二皇帝の息子とは思え…」
ベーネットが微笑んだまま ロイへ向いて言う
「私の父がどうかしたのかな?」
ロイが衝撃を受け 焦って顔を左右へ振る ヴェインが呆気に取られながら ロスラグへ向いて言う
「それにしても もう一人 …ただのバカだと思っていた あの男が あれほどの戦力を持っていた …と言う事にも驚いたな?」
3人がロスラグへ向く ロスラグが長剣を構えて言う
「哀れな貴殿を救うため このヴェルアロンロキスライグ 全力で参る!」
ロスラグが長剣による攻撃で魔物を倒す 遠くから現れた魔物に気付き顔を向け 銃を構えて言う
「…卿の存在は 既に確認していた」
ロスラグが銃を発砲し魔物を倒す 更に突然草むらから飛び出してきた魔物の攻撃をかわして 左腕に付けられた機械を操作してから 長剣に銃を発砲し長剣に炎を纏わせ 構えて言う
「お前の事は匂いでとーっくに分かってたッス!でもって 隠れて襲い掛かって来るなんて 卑怯ッスよ!そー言うのは 良くないッスー!」
ロスラグが怒りのままに炎の剣を振い 一撃で魔物を倒す ロスラグの様子を眺めていた3人が呆気に取られ ベーネットが首を傾げて言う
「あれも… 複数の力を足し それ以上の力を得ている …のであろうか?」
ヴェインとロイが呆気に取られる

魔物の退治が終了し 皆が構えを解除する そこへセーリアとバッツスクロイツとアンドロイドのデスがやって来る オライオンが気付き 振り返って言う
「お!あんたは ローレシアの勇者の仲間の!」
皆が向く セーリアが微笑して言う
「遅くなって ごめんなさい 機械の解析を出来る方を連れて来たわ」
バッツスクロイツが皆の前に立つ ロスラグがハッとして叫ぶ
「バッツ!バッツじゃないッスかー!?」
バッツスクロイツが一瞬呆気に取られた後 ロスラグへ向いて笑顔で言う
「ロスっち!?こんな所で会うなんてー!」
2人が駆け寄る 皆が呆気に取られる ベーネットがアンドロイドのデスを見て衝撃を受け まじまじと見る

バッツスクロイツが祠の中でCITCを確認している ロスラグが隣で見ている 祠の外でヴェインとロイが祠の中を見ている ベーネットがアンドロイドのデスを眺め考えている セーリアがその様子に気付いて言う
「ベーネット陛下?何か… このロボット兵に気になる事でも?」
セーリアの問いに ベーネットが顔を向けて言う
「あ、ああ… 少し思い当たる事があってね?」
ヴェインとロキがベーネットの声に振り返り ヴェインが問う
「このロボット兵はソルベキアのロボット兵では無いのだろうか?あのバッツスクロイツと言うものは機械に詳しいらしいから 俺は、奴がソルベキアのロボット兵を改良して 小さくしたのかと思っていたのだが?」
皆がベーネットへ問いの視線を向ける ベーネットがそれに気付き 軽く微笑んで言う
「うん… 実は先日、私の父がベネテクトを訪れ 歴史に関する資料を探していたんだ もっともこのベネテクト城は過去数回 大規模に破壊されてきた為に そういった資料もごく僅かにしか残されておらず 結局 父は何も得る事はなく 次の目的地へと向かったのだが …しかし、その後 私が確認した場所に アバロンから借り出されていた本が1冊残されており その本に…」
ベーネットの言葉の途中で 祠の中から声が上がり ベーネットの言葉が遮られる 祠の中でバッツスクロイツが叫ぶ
「あー!チョー良い所で 遂にバッテリー切れたって感じー!」
ロスラグが叫ぶ
「あー!それチョー良く分かるッスー!俺もしょっちゅう ここぞって所で チャージが切れるッスよー!」
バッツスクロイツがロスラグへ向いて言う
「だよね!だよねー!ここぞーって所でさー!」
ロスラグがバッツスクロイツへ向いて言う
「そーなんッスよ!後一撃でーって所で切れるッスー!」
祠の外で ベーネットたちが呆気に取られている ベーネットが言う
「何か… あったのだろうか?」
ヴェインが首を傾げて言う
「やはり俺は あいつが強いと言う事は 認めたく無い…」

【 竜族の村 】

長老の前にバーネットが居る バーネットが言う
「そうか… そんじゃぁ 俺が昔ぶっ殺しちまった あのドラゴンは この村の竜族だったって事か」
バーネットが視線を落とす 長老が悲し気に微笑んで言う
「それでも 彼は悪魔力から救って頂きとても感謝していたのでしょう 我ら竜族の力を譲ったと言う事は 彼は貴方様の事を信じたと言う事です 我らの力は他の者よりも大きく危険を伴う その力を譲るという事は とても珍しく 未だかつて無かった事です」
バーネットが苦笑して言う
「なら、俺は何が何でも この世界から悪魔力を消し去ってやらねぇとな?」
長老が苦笑して言う
「宝玉の力が弱まってしまっていては 我々の力で結界を作る事は出来ません 今度ばかりは貴方様とアバロン帝国のお力に 頼るしか無い様です」
バーネットが微笑して言う
「おうっ 任せとけよ!あいつに貰った竜族の力と アバロンと この世界に住む全ての民の力で 俺たちは世界を救ってやるぜ!」
長老が微笑んで言う
「我々に出来る事がありましたら 何時でもお声を掛けてください アバロン帝国第二皇帝バーネット陛下」
バーネットが笑顔を向ける

バーネットが竜族の村の結界を出て 一度振り返ってから 改めて自分の手にある宝玉を眺めて言う
「宝玉の聖魔力を感じた時に 村の皆で結界を弱めるってぇ 話は本当だったな 念のためにと 借りて来といて正解だったぜ」
バーネットの通信機が鳴る バーネットが気付き通信相手を確認して苦笑して着信して 言葉を言おうとするが それを制してヴィクトールが叫ぶ
『バーネットーーっ!!』
バーネットが一瞬驚き 呆れ顔になる 通信機のヴィクトールが涙目で叫ぶ
『バーネット!どうしてたの!?全然通信が繋がらなくって!!僕が何十回掛けたと思ってるのーっ!?』
バーネットが怒って言う
「うるせぇええ!!何十回も掛けやがってんじゃねぇええ!!竜族の村に行くから 通信は繋がらないかもしれねぇえって… あぁ 言うの忘れてたぁ」
バーネットが苦笑する ヴィクトールが怒って言う
『酷いよバーネット!!こっちは勇者たちが帰って来て!色々情報が増えたけどーっ 分からない事も一杯でー!!とにかく早く帰って来てーーっ!!』
バーネットが通信を切り溜め息を付いて言う
「はぁ… やれやれ、これじゃぁ のんびり歩いて帰る訳にも行かねぇか?でも まぁ… たまには使っとかねぇと 宝玉の精霊様にも 忘れられちまうかもな?」
バーネットが宝玉を握り締めて叫ぶ
「おらぁああ!!宝玉ぅうう!!ぶっ壊されたくなかったら 俺をアバロンへぶっ飛ばしてみやがれぇええ!!」
バーネットがアバロンへ飛んで行く

【 アバロン城 城門前 】

バーネットがぶっ飛んで来て スライドしながら着地する 門兵たちが驚き呆気に取られている バーネットが何事もなかった様に城内へ向かう 門兵たちが慌てて声を合わせて言う
「「お、お帰りなさいませ!バーネット第二皇帝陛下!」」
バーネットが普通に返事をする
「おう、ご苦労さん」
バーネットが立ち去る 門兵たちが再び驚きを取り戻し バーネットの立ち去った後を見守る

玉座の間

ヴィクトールとバーネットが話し合っている ヴィクトールが言う
「リーザロッテ王女らとザッツロード王子らが持ち帰った 祠と祭壇の情報を合わせた上で デネシアとローゼントとツヴァイザー この3国に確認をさせた所 忘れられていた祠の存在が確認されたとの連絡が入ったんだ この3つの祠は過去 悪魔力の噴出を抑えるための結界を 張られる事もなかったらしい」
バーネットが息を吐いて言う
「それじゃ、他国の祠に結界を張ったところで 悪魔力が弱まる事はあっても 消えねぇ訳だよな?」
ヴィクトールが苦笑した後言う
「うん そうだろうね?…それと、ザッツロード王子らが ローレシア城で入手した情報の中の『北の国』と『先住民族』なのだけど…」
バーネットが軽く笑って言う
「『北の国』か… ならやっぱり?」
ヴィクトールが微笑んで言う
「うん、彼、バッツスクロイツの言っていた事は 本当なのかもしれない」
バーネットが苦笑して言う
「そのバッツスクロイツに依頼した あの機械の解析は終ったのか?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「それが、途中で… えっと なんて言ってたっけ?何か、解析に使う機械の燃料が切れてしまったとかで 全ては確認が出来なかったらしいのだけど 分かった範囲を知らせると言っていたよ そろそろ戻るはずだから バーネット、君も彼らの話を…」
バーネットが立ち上がる ヴィクトールが衝撃を受ける バーネットが振り向いて言う
「なら俺も 残りの国へ行って 『北の国』と『先住民族』の確認をして来る その2つに限って探せば もっと早く済ませられるはずだ 後は頼んだぜ?」
バーネットが立ち去っていく ヴィクトールが驚き慌てて言う
「ちょっ!?ちょっと待って!バーネット!君も一緒に話をっ!僕1人じゃバッツスクロイツの話が分からないよ!君が教えてくれなければ あの時『ワールドエンドマウンテン』の意味だって分からなかったんだからっ!それに『エスケープ』って何っ!?」
バーネットが軽く笑って言う
「どっちもてめぇん所の書物庫の本に書いてあったモンだ 『エスケープ』ってのは『とんずら』するって事だよ」
ヴィクトールが衝撃を受けた後叫ぶ
「ならバーネットも エスケープしないでーっ!」
バーネットが立ち去る

【 ローゼント国 書物庫 】

バーネットが書物庫の本を読み漁っている 通信機が鳴る バーネットが通信機を取り出し着信すると同時に モニターに映ったヴィクトールが叫ぶ
『バーネットーー!!『CITC』って知ってるぅ!?それから『空間転送システム』とか『センコン』とか!もー嫌だよー!バッツスクロイツが何を言ってるかー!?ギリギリ分かるけどー!』
バーネットがうるさそうに聞いてから言う
「あー、『ギリギリ分かる』なら問題ねぇ、いつも通り何とかしろ」
バーネットが本のページをめくる 通信機からヴィクトールが怒って言う
『酷いよバーネット!僕の事助けてくれないのー!?2人でやるって言ったのにー!慈愛の王様はー 今も長期出張中なんですかー!?』
バーネットが怒って言う
「るせぇええ!泣き言ほざく為に 通信して来やがっのか てめぇえはぁあ!?」
ヴィクトールが膨れっ面で言う
『ぶぅー…違うけどっ …あの祠の魔力穴に付けられていた機械の名前は バッツスクロイツの世界ではCITCって言うらしいんだ、それで、ベネテクトの祠を確認したバッツスクロイツが あの魔力穴には2つのCITCが…』

バーネットが通信機へ言う
「その為にも  各国の王を招集か… 分かった、それじゃ一応 俺もアバロンに戻ってみるぜ こっちの調べもほとんど終った所だ 各国の王が集まるまでには戻れるだろうぜ だが、アバロンの第一皇帝はてめぇえなんだから てめぇえが出席すりゃぁ 十分だろ?俺はそういった 堅苦しい場は合わねぇからよ?」
ヴィクトールが怒って言う
『えーっ!酷いよバーネット!やっぱり それじゃ…!』
バーネットがヴィクトールの言葉の途中で通信を切る 軽く笑って 再び本に戻る 書物庫の扉がノックされ ローゼント国王が現れて言う
「忙しい所 邪魔だろうか?」
バーネットが苦笑して言う
「いや、丁度 少しアンタへ話を聞きてぇと 思ってた所だ」
ローゼント国王が微笑して言う
「私もこれから ヴィクトール皇帝陛下の召集へ向かう為 その前に貴方様へ 少々話をと思い参らせて貰った」
ローゼント国王がバーネットの近くへ向かう バーネットが微笑して言う
「先に訊いても良いか?」
ローゼント国王が微笑して言う
「もちろんだ バーネット第二皇帝陛下」
バーネットが苦笑した後言う
「このローゼントはソルベキアにもっとも近い国ではあるが 国同士の仲は他国同様 ソルベキアの行いを良しとしねぇって考えの筈だ 当然その事は向こうだって知ってる だが、和平条約や友好条約すら交されてねぇ割に ソルベキアはこの国を本気で襲う事はしねぇ… それは何故だ?こんな目と鼻の先ほどの距離にあり 尚且つソルベキアの作るロボット兵にとって重要な鉄の産出量が何処よりも高い国を 奴らが手に入れようとしねぇなんざ どう考えたって不自然だ」
ローゼント国王が微笑して言う
「私からの問いにも その問いは丁度良い」
バーネットが疑問する ローゼント国王が言う
「このローゼント国には1つの言い伝えがある『北の地に2人の王が留まる時 世界は聖なる世界へ導かれる 南の果てに2人の王が留まる時 世界は闇の世界へ導かれる』」
バーネットが言う
「このローゼントから北の地で しかも2人の王って言えばアバロンだ だが南の果てってぇのは?」
ローゼント国王が言う
「ソルベキアはこの言い伝えの根拠を探している 北の地の2人の王に関しては 私もソルベキアもやはり アバロンの友情と慈愛の王を示していると思っている しかし、ソルベキアとは違い、私は南の果てがソルベキアであるとは 思えないのだ」
バーネットが軽く頷いて言う
「だろうなぁ?北の地がアバロンだとすれば 南の果てと言い表すからには このローゼントから アバロンまでの それ以上の距離を示す筈だ」
ローゼント国王が言う
「ソルベキアがこのローゼントを襲わない理由の一つが その言い伝えの根拠を聞き出す為 そして、この本」
ローゼント国王が一冊の本をバーネットへ差し出す バーネットが受け取りながら言う
「こいつは?」
バーネットが本を軽く読む ローゼント国王が微笑して言う
「その本はこのローゼントの歴代の王たちが隠し持っていたもの 今からおよそ300年ほど前のローゼントの王が書いたと言う 何らかの理由により長きに渡り隠し持つ事を義務付けられていたのだが その余りの長さ故に 理由はもはや定かでは無い だが、私は 今こそ 北の地に留まる2人の王に これを渡すのが正しいと思い 託させて貰う事にした」
バーネットが本の内容に呆気に取られて言う
「先住民族… カイッズとソルベキアに!?」
ローゼント国王が軽く頷いて言う
「そう、そしてカイッズ国については このローゼントから北の地までの間にあると記され ソルベキアはこのローゼントから程無く南の地と記されている そちらも踏まえるとあれば尚更に あの言い伝えにある闇の王は ソルベキアよりもっと南の位置に存在するのだろう だが我らはそれをソルベキアには あえて伝えないで居る」
バーネットが軽く笑って言う
「ああ、分かった 貴重な資料の提供を感謝するぜ 残念な事に 北の地の2人の王の片方だと思われる俺にも 南の果てに関しては分からねぇ だが、ソルベキアも闇の王も 俺にとっては気に入らねぇ存在だ 俺もこの本にある南の果てに関する情報を 奴らへ伝える事はしねぇ 約束するぜ」
ローゼント国王が微笑して頷く

【 アバロン帝国 祠 】

バッツスクロイツが祭壇の前で プログラマーのモバイルPC改 を使用してCITCの解析を行っている バッツスクロイツがタイピングしている ウィザードがそれを見物しながら言う
「お前の姿は懐かしい感じだ」
バッツスクロイツがウィザードを見上げて言う
「えー?懐かしいーって?俺はー あんたに会ったのは 今回の解析作業で初めてーだけど?」
ウィザードが言う
「お前にその機械を与えた プログラマーのデスは 昔その機械を使用し 今のお前の様に 操作を行っていた」
バッツスクロイツがモバイルPCへ視線を向けたまま微笑して言う
「あのホログラムの人ね?あの技術凄いよなー?発信元はあのガルバディア城なんだろ?あの場所からどの場所へ情報飛ばしてもー まったくタイムラグや他の障害からの影響とか受けてないーって感じで けど面白いよなー あれだけのプログラムやら解析やら出来るのに このCITCへの毛嫌いっぷりは何なんだろう?あの人ならー?普通にー?むしろ 俺より良い感じにー?この解析が出来ると思うんだけどー?それで?あの人が この機械使って操作してたって事は あの人たまには ホログラムじゃなくって あんた達と お茶でもするんだ?」
バッツスクロイツがウィザードへ視線を向ける ウィザードが言う
「あのデスは もう外には出られない 従って お茶は飲めない その機械を使う事も出来ない …だから お前に与えたのだ」
バッツスクロイツが一瞬驚き 疑問して言う
「出られないーって… 何処から?お茶は飲めないって なんで?」

説明を聞き終えたバッツスクロイツが 考えながら言う
「国民がたったの数人で 全てガルバディア国王の複製… あのガルバディア城って そんな所だったのか… 通りで人っ気が無いって言うか… 寂しい感じがしたんだよねー」
バッツスクロイツがモバイルPCの処理待ちをしている やがて情報が表示される バッツスクロイツが情報を見て 表情を険しくして言う
「って… もしかして?そのガルバディアが滅んじゃった原因… これなのか?」

【 アバロン城 地下客室 】

バーネットが牢屋の檻の前でチョッポクルスへ問う
「てめぇなら知ってるんじゃねぇのか?この『先住民族』ってぇ奴を!」
チョッポクルスが困って視線を泳がせる バーネットが首を傾げて 一冊の本を見せて言う
「このローゼントに残されていた一冊の本には あの巨人族が先住民族だってぇ事が書かれている だが、その巨人族が居たのは 今のデネシアではなく カイッズ国だと… てめぇらシュレイザーの歴代の王は 歴史にはバカ詳しいじゃねぇえか?だったら 『先住民族』が巨人族なのか 竜族なのか …もしくは過去カイッズ国に居た奴らなのか どれかくれぇ分かりやがらねぇのかよ?」
チョッポクルスがオロオロする バーネットが疑問して言う
「おい?何とか言ってみろよ?いつものてめぇなら 余計な事ばっかり言いやがるくせに なんったって今日は…」
バーネットが言っている途中で 伝達の兵が現れて言う
「バーネット第二皇帝陛下、全国王会議が始まりました」
バーネットが振り返って言う
「ああ、分かった …とりあえず 話だけでも聞いとくかぁ」
バーネットが立ち去ろうとする 間を置いて振り返り 少し考えてから 衛兵へ言う
「おい、このカスチョッポクルスの入ってる檻を開けろ」
衛兵が驚いて言う
「え!?しかし 今会議には 各国の国王が集められており シュレイザー国のアンネローゼ女王も 既に御到着されておりますが?」
バーネットが答える
「今回の国王会議は この世界の歴史に関する事になる だったら 長い間その世界の全てを見て来た シュレイザー国 歴代の王の1人であるこいつも 何かの役に立つかもしれねぇ」
チョッポクルスの入っている檻の扉が開けられる チョッポクルスが出て来てバーネットの下へ来て言う
「ぜ、全国王会議~~じゃと?よ、余は~~ そ、そんな堅苦しいのは~~ き、嫌いじゃ~~」
バーネットが軽く笑って言う
「はっはー 別に出席しろっつってんじゃねぇよ、俺と一緒に外で聞いてりゃ良い …まぁ もしヴィクトールの奴に呼ばれでもしたら てめぇえだけは 行く事になるがなぁ?」
バーネットが歩き出す チョッポクルスが衝撃を受け 焦って言う
「い、嫌じゃぞ~~?ぜ、絶対に~~ よ、余1人では~~ は、入らんからの~~!?」
チョッポクルスがバーネットの後を追う

大会議室 前

バーネットが扉の前へやって来る 衛兵らが敬礼し扉に手を掛ける バーネットが言う
「いや、開けるな ここで良い」
バーネットが扉の横の壁に背を付けて腕組みをする 衛兵らが顔を見合わせた後 警備姿勢へ戻る チョッポクルスがやって来て 衛兵らとバーネットを見た後 バーネットの隣に立つ 衛兵らが顔を見合わせ疑問する 

【 ガルバディア国 祠 】

バッツスクロイツが祭壇の前でモバイルPCを操作して言う
「やっぱりそうだ、北方の国ほど 聖魔力を取り出して残る悪魔力が 多く発生してる… それにこの数値 悪魔力による魔物化現象の調査で計算されている 動物の魔物化が起こる量を遥かに超えちゃってるし やっぱり この大量の悪魔力が ガルバディア国を滅ぼした原因なんだ!」
バッツスクロイツの横にホログラムが現れる バッツスクロイツが顔を上げて言う
「ん?あれー?あんたも来たんだー?珍しーじゃん?いつもはー?この祠の中にだってー?入りたがらないーのに?」
バッツスクロイツがモバイルPCを操作しながら言う
「あ、そう言えばさ?この前ソルベキアに行った時に このモバイルPCのスペック最新の奴に変えといたぜ?勝手に変えちゃって良いかなー?ってちょーっと気になったけどー まぁヴァージョンアップだから?ドンマイかなーって」
バッツスクロイツがモバイルPCの操作を続ける ホログラムが軽く笑って言う
『そうか、それなら あいつも文句はないだろう だが一応 私から伝えておいてやる』
バッツスクロイツが操作の途中で疑問し ハッと気付いて言う
「あ!ごめーん もしかしてー?別の人だった?ガルバディアの人って みーんな同じ顔ーしてるんだろ?ガルバディア国王様と 同じーって?」
ホログラムが微笑して言う
『そうだ  そして、私がそのガルバディア国王だ』
バッツスクロイツが驚いてから笑顔で言う
「マジでー!?俺バッツスクロイツ!よろしくー!」
ガルバディア国王が一瞬呆気に取られた後 軽く笑って言う
『なるほど、やはりお前も 変わらない様だな ローンルーズの民』
バッツスクロイツが呆気に取られて言う
「え?あんたは ローンルーズの事を知ってるの?」
ガルバディア国王が言う
『私は300年を越える時を過ごしている お前たちの事も 勿論記憶している だが… それら過去の記憶は 他のガルバディアの民には見せていない そして、近づく事も』
バッツスクロイツが疑問して言う
「そんなの勿体無いー なんでー?折角ー?皆で知識を共有ー出来るんだから?歴史的ーな事は共有した方が ぜったい特になるーって思うけど?」
ガルバディア国王が視線を逸らし目を閉じて言う
『人の恨みや憎しみは 時を越えても 簡単には消す事が出来ない それが数多く強いものであれば尚更に… 私の記憶を共有した民は 復讐にのみ生きてしまう …彼ら、ガルバディアの民たちの命は短い その短い時を 私はその様な事に 使って欲しくはないのだ』
バッツスクロイツが一瞬驚いた後 真剣な表情でモバイルPCのモニターを見て言う
「じゃぁ… この事も やっぱり言わない方が良いって事?」
ガルバディア国王がバッツスクロイツへ視線を向けて言う
『今から216年前 我らガルバディアは 魔力穴からの最後の聖魔力の抽出を行った 必要な聖魔力の量には及ばなかったが それを補う為にも各国で助け合う事を条件に 私は無理を押して魔力穴から聖魔力を引き出した だが、その反動であふれ出した悪魔力の影響は 人々の予想を遥かに超えたものだった 影響が強く現れた大陸北部に近い国々は もはや助け合う所ではなかったのだ それでも…』
ガルバディア国王が視線を逸らして言う
『例えそう分かってはいても ずっと仲間であると信じていた者たちから 裏切られたと言う思いは 消す事が出来なかった』
バッツスクロイツが問う
「それでー… 国を閉ざしちゃったの?」
ガルバディア国王がバッツスクロイツへ向いて苦笑して言う
『我がガルバディアは もう助からないと分かった 宝玉やCITCは元々我らが編み出したもの その結果起きた事態だ 全世界を巻き込んでのな… 私は民と共に滅ぶ事を選んだ だが、裏切りを許せず 残された力で他の国への復讐を求める民も居た 私はそんな彼らと自分を止めるために 国を閉ざしたのだ』
バッツスクロイツが微笑して言う
「つまり、あんたは 頭では滅ぶべきだと考えていながら 心では復讐をしたいって思ってた訳ね?」
ガルバディア国王が口角を上げて言う
『私の複製の中には 心を持たない者も多かった ただ与えられた知識のみを行う者たちは とても優秀ではあったが それ以上にはなれない… だが、バッツスクロイツ 知っているか?例え心を持たずして生まれようとも その生命の中に 心を生まれさせる事が出来ると言う事を』
バッツスクロイツが呆気に取られる ガルバディア国王が続ける
『新たに生まれた心は 平和を願う事もあれば 復讐を求める事もある 過去を知らぬまま 再びアバロンの民と共に 戦い助け合った彼は その前者となった やはり、私の知る歴史は 彼らには知らせない事が好ましい』
バッツスクロイツが考えてから言う
「うーん… それってさ、ガルバディアの民が仲間であったはずなのに… その自分たちを助けてくれなかった国… アバロンを恨んでるって事だろ?でもさ?元を正せば 悪魔力が無ければ そんな事自体が起こらなかった訳で 今は その悪魔力をどうにかしようって 皆で力を合わせようとしているんだ それはー… ある意味 皆がガルバディアの仇討ちをしてくれる って言うのと同じじゃない?」
ガルバディア国王が視線を逸らす バッツスクロイツが微笑して言う
「その敵討ちをするには これらのデータが必要なんだ!こんな時こそ 思いきって 過去の恨みやなんかを吹き飛ばしてさ?全部さらけ出して… なんならついでに怒っちゃえば良いじゃん?きっと皆だってアンタたちの事を分かってくれる あのアバロンの友情の王様なら きっとアンタの怒りも受け止めてくれるよ!いつまでも国を閉ざして居ないでさ?元凶だった悪魔力を倒す為に 一緒に戦おうよ!」
ガルバディア国王が苦笑して言う
『やはり知識で分かったとしても そう簡単には割り切れぬものだ 私はこの手で大切な民たちの命を奪った 魔物と化してしまった彼らを 終わらせるために… もはや私には 復讐等と言う事を行う力さえ 残っては居ない バッツスクロイツ、その情報をどうするかは お前に委ねる』
ガルバディア国王がホログラムを消す バッツスクロイツが微笑して言う
「待っててよ!きっと皆が あんた達の仇討ちを してくれるからさ!」

祠の外に出たバッツスクロイツを ウィザードとプログラマーが出迎える プログラマーが言う
『これで全てのCITCの確認が終った 我ら以外は既にアバロン城へ戻っている』
バッツスクロイツが微笑して言う
「分かった それじゃぁ… と、その前に ねぇ?デスっち アンタはガルバディアの歴史を知らないーって言ってたじゃん?でも、もしその歴史を知れるとしたら?やっぱり 知りたいーって思うよね?」
プログラマーが言う
『ガルバディアのそれであれ、他の国の物であれ プログラマーにとっての情報は何よりも価値がある …だが、ガルバディア国王は 我らガルバディアの民へ ガルバディアのそれらを見せようとはしない』
バッツスクロイツが苦笑して言う
「それじゃぁさ?それがーもし?見れちゃったら?見ちゃ駄目ーって言われてても 見れちゃうー …その状態だったとしたら?デスっちはー… 見ちゃう?」
プログラマーが一瞬呆気に取られてから 微笑して言う
『ガルバディア国王は誰よりも優秀なプログラマーだった だが、復讐すら出来ぬほどに衰弱した彼を 相棒と共に戦い続ける事を選んだ私が 超えるのは造作のない事だった』
バッツスクロイツが驚いて言う
「え!?それじゃ!?」
プログラマーが苦笑して言う
『だが、私には 我らの父であるガルバディア国王の 彼の苦しみを救う方法が見つけられない その方法があるのかすら…』
バッツスクロイツが笑顔で言う
「きっとアンタがさ!一緒に戦えば良いんだよ!皆と一緒に!悪魔力と!」
プログラマーが微笑して言う
『そうだな、最初に こちらの世界の我々を裏切り 逃げ出した国の お前と共に戦う事が出来れば 全て解決するのかもしれない』
バッツスクロイツが衝撃を受け慌てて言う
「それはー!すっごい悪いーって思ってるし?きっとガルバディア国王様ーも?あえて目を瞑っててくれたー所なんだからー!?今 ここで掘り返す必要ないーって思うんですけど!?」
プログラマーが笑う ウィザードが首を傾げる

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