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12-5 ツヴァイザーの勇者とアバロンのウィザード

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【 ローレシア国 領域 】

物陰から兵Aがリーザロッテと仲間たちを見て言う
「あの後方に居る2人が アバロン3番隊隊長ヘクターの娘だ」
兵Bが言う
「うむ… だが、娘たちと共に行動しているあの者らは?なぜツヴァイザーの兵が アバロンの娘たちを護衛している?」
兵Cが言う
「むぅ… 分からん だがアバロンの兵ではないと言う事は こちらにとっては好都合だ 娘さえ捕えてしまえば アバロンのヘクターも ローレシアへの手出しは出来ぬ!これで我らの勝利は得られたも同然との事!よしっ 捕らえろ!」
リーザロッテとニーナたちの前に 兵らが現れ剣を向けて言う
「大人しく武器を捨て 投降せよ!」
「言う通りにするならば 危害は加えん!」
リーザロッテと仲間たちが驚き リーザロッテが言う
「盗賊!?…たったの3人で 私たちに敵うと思ってっ?」
レイトが兵たちの剣を見て 気付いて言う
「いえ 盗賊ではありません!あの剣の柄にある馬の紋章っ 恐らく奴らは ローレシアの兵であるかと!」
兵たちが衝撃を受け 各々が剣の柄にある紋章を隠す ヴェインが槍を構えて言う
「では ローレシアが リーザ様を捕らえようとっ!?」
ロイが銃を構える その後ろでシャルロッテがモバイルPCを操作しながら言う
「ソルベキアの件を気付かれて 宝玉を取り返しに来たと言う可能性もあります」
リーザロッテがニーナたちへ言う
「どちらにしろ あなた方は下がって居なさい この者たちは 私たちが相手をするわ!」
ミーナがニーナの手を引いて下がる 兵たちが合図を送り合う 戦闘が開始される 兵Aと兵Bがレイトとヴェインへ攻撃を仕掛ける 兵Cがニーナとミーナを捕らえに向かう ロイが兵Cの動きへ照準を向けていた状態から違和感に気付いて発砲を止める 兵Cがリーザロッテの横を抜ける リーザロッテが自身の横をすり抜けた兵Cを返り見て言う
「どう言う事っ!?…っ!ニーナ!!ミーナ!!」
リーザロッテが槍を手に兵へ向かう ロイが照準の先の状況に舌打ちをする レイトが振り返って叫ぶ
「リーザ様!!」
ロイが即座にレイトの援護を行い 兵Aの剣がロイの銃弾に弾かれる レイトがリーザロッテの下へ向かう 兵Cが後ろを振り返り リーザロッテの槍をと自身の剣を交え 瞬時に気付き剣を振り上げる リーザロッテが振り払われる ニーナとミーナが叫ぶ
「「リーザっ!?」」
リーザロッテが地に倒れる レイトが向かうより早く 兵Cがリーザロッテへ剣を振り上げる ニーナとミーナが息を飲み 宝玉の入った袋を握り締めて叫ぶ
「「お願い!誰か助けて!!」」
リーザロッテへ振るわれていた兵Cの剣が弾かれる 剣を手放した兵Cが地へ腰を打つ リーザロッテが呆気に取られ 自分を助けた相手を見上げて言う
「あ、あなたはっ!?」
ミーナが驚いて叫ぶ
「お父さん!?」
レイトがリーザロッテに手を貸しつつ驚いて言う
「ではっ  あなたが!アバロン3番隊 隊長のヘクター殿!?」
ニーナが疑問して言う
「うん?ミーナ?お父さんが どうかしたの?」
ミーナが驚いて言う 
「ど、『どうかしたの』って!?今 目の前にお父さんがっ!」
ヘクターが兵Cと後方に構える兵Aと兵Bへ大剣を構える 兵たちが焦って言う
「あれがアバロンのヘクター!?」
「何と言う事だ!我々の策が読まれ 既にアバロンからヘクターが来ていたというのか!」
「…と言う事は!?ツヴァイザーの兵どもは 我らの目眩しだったと言う事か!?」
ヴェインが驚いて言う
「何!?では 貴様らの狙いは!」
兵たちがハッとして焦る ロイが銃を向け直して言う
「…アバロン3番隊 隊長ヘクターの娘たちの方 だったと言う事か」
兵たちが後退って言う
「ヘクターが相手では 我々では敵わない」
「クッ… ここは一先ず撤退だ!」
兵たちが逃避する リーザロッテが兵たちの逃避を確認した後 ヘクターへ向き直って言う
「貴方がアバロンのヘクター隊長ね?貴方の娘たちを危険に晒してしまった事へ対して謝罪をするわ でも、そばに居らしたのでしたら 何故今まで姿を…?」
皆がヘクターを見る ニーナが疑問してミーナへ言う
「ねぇ ミーナ?リーザは誰と お話をしているの?」
リーザロッテが苦笑して言う
「ニーナ、今ここに 貴方方の お父様がいらっしゃるのよ?」
ミーナが疑問して言う
「どうしたのニーナ?いつもなら、私より早く お父さんの事に気付くのに」
ニーナが顔を左右に振って言う
「ううん?お父さんは居ないの リーザは魔力とお話をしているの」
シャルロッテがモバイルPCを操作していて言う
「ニーナちゃんが言っている事は本当です!そこに 人は 居ません!」
皆が驚きヘクターへ向く ヘクターがニーナとミーナへ向いて微笑むと ゆっくりと消えていく 皆が驚く ニーナが首を傾げる ヴェインがシャルロッテへ向いて言う
「どう言う事だっ?ニーナは 魔力があると言っていたがっ?」
シャルロッテがモバイルPCを操作していて言う
「詳しくは分かりませんでした ただ とても強い魔力が ヘクター隊長の姿を作っていたとしか…っ」
リーザロッテが言う
「あなた方は 魔法が使えて?」
ミーナが顔を横に振って言う
「私たちが使えるのは 魔法アイテムを使っての 移動魔法だけで…」
レイトが言う
「では、とっさの事態に 魔法アイテムを使用して あのヘクター殿を作り上げたのでは?」
ミーナが魔法アイテムの数を数えて言う
「…いえ?持っていた数は変わっていないから 魔法アイテムは使っていません 魔法アイテム無しでは…」
ニーナが笑顔で言う
「ミーナ!きっとお兄さんが渡してくれた お守りが助けてくれたの!」
皆がニーナへ向く ミーナが苦笑して言う
「ニーナ… 今はお守りの事は…」
ミーナの言葉を制して ニーナが言う
「ううん!この袋に入ってる宝石が熱くなってるの!この宝石が力を使った証拠じゃないかな?」
ミーナが袋の外側から宝石に触れて言う
「ほんとだ!?魔法アイテムを使った時と 同じ感じだね!」
ニーナが笑顔で頷いて言う
「ローレシアに捕まっちゃいそうな時に使ったの!お兄さんとのお約束ちゃんと守ったの!…でもアバロンに帰して ってお願いしなかったから 怒られちゃうかな?」
ミーナが呆気に取られた後、苦笑して言う
「お兄さんは 私たちがローレシアに捕まらない様にって それをニーナに貸してくれたんだから きっと怒らないよ?」
ニーナが微笑む シャルロッテがモバイルPCを操作していて衝撃を受けて言う
「そ!?そそそ!!その袋の中からっ 宝玉と同じ反…!」
リーザロッテが怒って叫ぶ
「ローレシアの勇者だけでなく!!ローレシアの兵までもが 私たちに危害を加えようと言うのでしてよ!!今すぐローレシアへ向かって 真相を白状させて差し上げてよ!!」
リーザロッテが先行する ニーナとミーナが顔を見合わせてから続く ヴェインとロイが顔を見合わせ ヴェインが言う
「ローレシアの勇者も兵も… 元々リーザ様へ危害を加えた訳では無いのだが…」
ロイが言う
「…もはやローレシアの悪事であれば 自分への関係がどうであっても 良いのだろう」
レイトが入って言う
「世界に関わる事であれ、ニーナ殿方へ対した事であれ 全てをご自身の事として捕らえる!…リーザ様はお優しい方なのだ」
ロイとヴェインが呆れる レイトがリーザロッテに続く ヴェインとロイが続く シャルロッテがモバイルPCから顔を上げ ハッとして慌てて追い駆けて言う
「ハッ!まままっ 待って下さいです~っ!?」

【 アバロン国 3番隊訓練所 】

ヘクターが3番隊隊員らと剣の稽古をしている ウィザードがそれを眺めていた状態から 隣のプログラマーへ向いて言う
「もうすぐ世界大戦が開戦されると言うが オライオンやニーナたちは アバロンへ戻らないのか?」
プログラマーが答える
『世界大戦と銘打っているだけで 実際にはアバロンとローレシア・ソルベキアとの戦いだ ソルベキアのロボット兵には苦戦を強いられる可能性はあるが 今更ローレシアに怯える必要は無い』
ウィザードが問う
「それはオライオンたちが戻る必要も ニーナたちに危険が及ぶ事も 無いと言う事か?」
プログラマーが答える
『オライオンらに関しては問題は無いが ニーナたちがローレシアに捕まるような事があっては困るな』
ウィザードが少し驚いて言う
「なら、何故ヘクターは娘たちを連れ戻しに行かない?こんな所で3番隊の隊員たちを虐めている位なら さっさと連れ戻しに行くべきだ」
プログラマーが言う
『ヘクターの動向は 現在ローレシア、ソルベキアの両国が目を光らせている 従って 世界大戦が決定された今 ヘクターがアバロンを離れる事になれば その両国がアバロンへ奇襲を掛ける可能性がある』
ウィザードが納得してヘクターへ視線を向けて言う
「それでこの数日 ヘクターはその怒りを3番隊隊員らに 向けているのだな?」
プログラマーが言う
『ヴィクトール国王はニーナへ宝玉を渡している 恐らく彼女らの身は守られる だが、宝玉の扱いを知らない彼女たちが それをそうと知らぬままに持たされ 使いこなせるかどうかに関しては 確証が持てない』
ウィザードが問う
「それもヘクターは知っているのか?」
プログラマーが間を置いて言う
『…伝えてはいない 現状でも通常精神状態からの誤差が著しい ヘクターへのこれ以上の負荷は 私のプログラムに悪影響を与える』
ウィザードが沈黙する プログラマーが沈黙の間に疑問してウィザードへ向く ウィザードが浮き上がって言う
「では、私が迎えに行く」
プログラマーが衝撃を受け焦って言う
『え!?いや… 待てっ!?お前が単独で ローレシアへ向かうなど!』
ウィザードが視線を向けないまま言う
「私はヘクターの兄だ 弟の娘たちが危険に晒されると知って 黙っている事など出来ない!」
プログラマーが焦りながら言う
『そ、そうだった!私とした事が…っ 肉体の99%を取り除かれても 今だこいつはアバロンの民の精神が』
ウィザードがプログラマーへ向いて言う
「私であるなら!ローレシアへ向かい 無事 ニーナたちを助け出す事が出来る!…そんな気がする!!」
プログラマーが衝撃を受けて言う
『そのアバロンの民の精神を剥き出しにするんじゃない!!』

【 アバロン城 】

ヴィクトール14世が朗読している
「アバロン暦983年、スプローニ国とツヴァイザー国を討ち取ったアバロンは 東の大陸にベネテクト国を建国 当時アバロンの…」
ヴィクトール14世が視線を横へ向け 苦笑して言う
「あの… バーネット様?…バーネット様?」
ヴィクトール14世の隣の椅子に座って 居眠りをしていたバーネットがハッと起きて言う
「…ん?あぁ、すまねぇ …また寝ちまった」
バーネットが眠気を覚ます ヴィクトール14世が苦笑する バーネットが苦笑を返して言う
「どうも俺は 自分で本を読むのは問題ねぇんだが 人に読んで聞かされると すぐに眠くなっちまってな?」
ヴィクトール14世が微笑んで言う
「それはもしや バーネット様が幼少の頃 就寝前にお母上に ご本を読んで頂いたから なんて事では?」
バーネットが呆気に取られてから苦笑して言う
「ベネテクト国では 王妃を国へ迎え入れる事はしねぇんだ 国王は民を愛する者 そしてアバロンを守るためにも 有事の際に人質に取られる事のねぇ様に 1人の王と1人の王子のみで 国を賄うんだ」
ヴィクトール14世が驚いて言う
「そう…なのですか 何と言うか…」
ヴィクトール14世が言葉を失う バーネットが軽く笑って言う
「でもって俺が 本を読まれて眠くなるってぇのは あのシュレイザー国のチョッポクルスの野郎が 昔 クソ長げぇ~話を読んで聞かせやがったせいでよ?今でもその時の後遺症が残ってやがるって訳だ」
ヴィクトール14世が苦笑して言う
「先日仰られていた シュレイザー国の歴代国王の日記 と言うものですね?」
バーネットが苦笑して言う
「ただのガキ用の童話だぁ ネズミの国だの竜の国だの…」
ヴィクトール14世が微笑んで言う
「それでも各国の国印と照らし合せる事が出来ると言う事は やはり正しい歴史書であると思っても 良いのでは無いでしょうか?」
バーネットが軽く笑って言う
「まぁ… そうかもしれねぇ 俺としちゃ赤いトカゲの国の奴らが 最終的に落ちぶれて町になっちまうってオチが面白くてよ?後は竜の国の奴らが その竜に脅されて国の宝を奪われてよ?…まぁ馬の国の奴らと一緒に その竜を追い出しちまうってぇのは 気に入らなかったが…」
ヴィクトール14世が考えて言う
「馬の国印はローレシア… そして 竜の国印はデネシア… その… 追い出された竜は 結局どうなったのです?」
バーネットが不意を突かれ一瞬呆気に取られた後 悩んで言う
「あぁ… どうなったっけなぁ…?」
バーネットがしばらく考える ヴィクトール14世が軽く笑って言う
「きっと眠ってらしたのでしょうね?バーネット様は 本を読まれると ものの数秒で居眠りをされてしまうので」
バーネットが衝撃を受け 苦笑して言う
「あ、ああ… ま、まぁそうだったのかもな?…って うるせぇええ!てめぇえは んな事より さっさとアバロンの歴史を覚えやがれ!」
ヴィクトール14世が驚き 慌てて机へ戻る

【 ローレシア城 玉座の間 】

ローレシア国王キルビーグの前で リーザロッテが言う
「私たちが確認した この情報が史実だとすれば ローレシア国は長きに渡り全世界の国々を騙し 各国の宝である宝玉を借り入れていた事になります キルビーグ陛下 どうかローレシア国の勇者のお話 その真実を私たちにお聞かせ下さい!」
キルビーグが表情を険しくする リーザロッテと仲間たちが僅かに身構える ニーナとミーナが怯える キルビーグが言う
「ツヴァイザー国、王女リーザロッテ殿 貴女はこのローレシアが世界の国々へ嘘偽りを申し 各国の宝玉を奪いその力を私利私欲の為に使おうとしていると… その様に申すのか?」
リーザロッテが一歩前へ踏み出して言う
「そうでは無いと仰るのでしたら!真実を公にするべきです!魔王の正体と 結界の真実を!そして、このローレシアが宝玉を集め 何を行っているのかを!」
キルビーグが目を細めて言う
「…ツヴァイザーの者が 一体どこで知りえたのか… ツヴァイザー… ベネテクトか…?いや…?」
キルビーグがリーザロッテを見る リーザロッテがキルビーグの剣幕へ強い視線を向ける キルビーグが軽く息を吐いて言う
「分かった ツヴァイザー国、王女リーザロッテ殿 そなたらへ 真実を伝えよう」
リーザロッテと仲間たちが一瞬驚いた後 表情を和らげて皆が顔を見合わせる キルビーグが人知れず笑みを浮かべる

【 アバロン国 3番隊訓練所 】

隊員たちを全て伸したヘクターが周囲を見渡して言う
「あれ?デス…?おーい デスー?2人とも 何処行ったんだー?」

【 ローレシア国 城下町 】

ウィザードが城へ向かっている プログラマーがローブを纏ったホログラムで現れて言う
『おい!待て!私はニーナとミーナがローレシア城へ 入城したと言っただけだっ!現状 私と同じく姿を見られるだけで 国際問題にもなりかねない お前が乗り込んで行く理由は 今の所 何1つ無い!』
ウィザードが言う
「ローレシアの城の中は お前の力で見る事が出来ないとお前は言った それではヘクターが探している勇者と言う者どもと同じになる」
プログラマーが呆気に取られて言う
『…では お前は?現在行方不明の2代目勇者ザッツロードらと同じく ローレシア城へ向かったニーナたちも その様にされるとっ!?お前は自身の身に残された その1%の脳で そこまでを考えていたと言うのか?』
ウィザードが間を置いて首を傾げて言う
「…そうかもしれない?」
プログラマーが転びそうになる 

ローレシア城内 地下機械室

機械音と共に部屋の中央に宝玉が現れる リーザロッテと仲間たちが宝玉へ顔を向け リーザロッテが言う
「この宝玉は?」
ニーナとミーナが周囲を見渡していて ミーナが足元の魔方陣を見て言う
「これって…?国境で見た 移動魔方陣に似てるような…?」
機械の操作を行っていたキルビーグが 中央の宝玉の下へやって来て 宝玉を手に取って言う
「これは このローレシア国の宝玉だ さて… どこから話すべきか?」
キルビーグが言いながら出入口の扉へ向かって行く リーザロッテたちが疑問してキルビーグの動向を見つめる

ローレシア城 城門前

門兵の2人が疑問して こちらへ向かって来る 違和感のある人影を見る

プログラマーが言う
『ならば お前が向かうのではなく ヴィクトール国王へ相談を…っ!いや!?そもそも お前の『かもしれない』程度の憶測で ローレシアの王との対話など出来よう筈が無い その上、お前の事だ ここまで乗り込んで来たと言う事は 端から対話など求めていないのだろう!?お前の行おうとしている事はただ1つ!今 ここでローレシアへ 襲撃などを行ってはっ!』
ウィザードが門前へ到着する 門兵の2人がウィザードの姿に衝撃を受け怯えて言う
「な、なんだっ!?この者は!?ひ… 人なのかっ!?まさか 魔物っ!?」
「何と言う 禍々しい魔力だっ!?まるで 悪魔力…っ!?」
プログラマーが言う
『その様な事をしては!世界大戦が始まる前に 決着が付いてしまう!!』
ウィザードが言う
「望むところだ!あれこれ考えて対策を練るなど アバロンの民の戦い方ではない!正々堂々と 正面から 破壊する!!」
プログラマーが衝撃を受けて焦って言う
『破壊はするなーっ!』
門兵の2人が怯える

ローレシア城 地下機械室

リーザロッテが扉を叩いて言う
「ちょっとっ!?これはどう言う事でして!?」
リーザロッテと仲間たちが閉ざされた扉を前に困惑している 宝玉の外された装置から黒い霧が立ち込める ヴェインが気付いて言う
「何だ!?あの黒い霧は!?」
皆がヴェインの示す装置を見る レイトとロイが顔を見合わせ頷き 閉められている扉を開こうとするがビクともしない ロイが扉を見て言う
「…鍵穴の類が見当たらない そして この扉の重厚さから見ても 初めから閉じ込めるために作られている扉であると思われる」
リーザロッテが言う
「閉じ込める?ではここは 監獄と言う事!?」
ロイが言う
「…もしくは処刑場」
黒い霧が立ち込める 皆が苦しみ始める ヴェインが言う
「キルビーグ国王は 真実を話すつもりはなかったと言う事かっ」
ロイが言う
「…真実を教える位なら 口を封じる… どうやら ローレシアの勇者の真実とは 俺たちが思っていた以上の事だったようだな」
レイトが扉へ体当たりをして言う
「ここを開けて下さいっ キルビーグ陛下!どうか…っ 姫様だけでもっ!」
リーザロッテが言う
「レイト…っ」

扉の外

キルビーグが扉の前で言う
「以前 父上が試された際に失敗となったのは バーネット殿が所持していた 十分な聖魔力が蓄えられた宝玉が原因だった しかし 今はもう どこの国にも そのような宝玉は存在しない… 対する悪魔力は以前の頃とは比べ物にならぬ程に蓄えられている …彼ら全員を転送しても余るほどにな?」

扉の中

ミーナがニーナの手を握って言う
「ニーナ…」
ニーナが言う
「ミーナ!お父さんに助けて貰おう!?またお守りの宝石にお願いをすれば良いの!」
ミーナがハッとして ニーナの持つ宝玉の袋を見る

ローレシア城門前

門兵の2人が意を決して 互いの持つ槍を交差させて言う
「現在我が城は警戒態勢を敷いている為 ここを通すことは出来ぬ!」
「急用とあるのであれば 相応の…っ」
門兵たちの前に居るウィザードの横で プログラマーがハッとして言う
『宝玉の反応がっ これは… アバロンの宝玉だ!』
ウィザードがプログラマーへ向いて言う
「では、その宝玉の下に ニーナとミーナが居ると言う事だな!?」
門兵の2人が疑問して顔を見合わせる プログラマーが言う
『この波長は間違いなく アバロンの宝玉 そして その聖魔力を誘発している この2つの魔力は 私の持つニーナとミーナの魔力データと一致する…っ すぐに場所の確認を…!』
ウィザードが気付いて言う
「その確認は不要だ!あちらの方向に 私の嫌いな感じがする!」
ウィザードがローレシア城内へ飛び込む 門兵の2人が驚いて叫ぶ
「し、侵入者!?」
「黒いローブの魔力者が 城内へ侵入した!直ちに!」
プログラマーが呆れて言う
『そうだった… まったく、ペースが乱される あいつとは頼まれても相棒には なりたくない』
プログラマーがホログラムを消す 門兵の片方が ホログラムの消えた瞬間を見て衝撃を受けて辺りを見渡す

ローレシア城 地下機械室内

室内が黒い霧に覆われている 床にある移動魔方陣が起動して淡い光を発する レイトが扉を開こうとしていた手の力を失い床へ倒れる ヴェインがレイトを見てから視線を後方へ向ける 皆が床に伏せていてリーザロッテが移動魔方陣の光に気付いて言う
「この… 光は…?」
シャルロッテが意識を失いかける ロイがシャルロッテの様子に気付き 自身の身体でシャルロッテの身を庇い周囲から迫り来る悪魔力の霧へ顔を向ける ニーナとミーナが2人で宝玉の入った袋を握り締めて 必死に願うが何も起こらない ニーナが言う
「ミーナ!?お父さんは 出て来てくれた!?」
ミーナが顔を横に振って言う
「ダメ!出て来てくれない!やっぱり アバロンへ帰るようにって お願いした方がいいのか(も)!?」
扉が大破する 皆が驚き 伏せていた顔を上げる リーザロッテが言う
「今度は何…っ?」
皆の視線の先 瓦礫と爆煙の中に 一際、黒い影が現れる ヴェインが言う
「何かは分かりませんが この感じ…っ 先ほどまで立ち込めていた 黒い霧と同じ肌感覚… いや、それ以上の!?」
皆が黒い影の纏う邪悪なオーラを感じて思わず息を飲む その中で1人だけ ニーナが顔を上げて言う
「デスさん!」
ニーナの言葉に皆が驚き顔を向ける 爆煙で見えなかった姿が露わになり始め 黒い影が言う
「おお!ニーナ!ミーナ!お前たちも ここに居たのか!」
ミーナが驚いて言う
「デスさん!?」
ニーナがミーナへ向いて言う
「ミーナ!今回はウィザードのデスさんが 出て来てくれたの!」
ミーナが衝撃を受けて言う
「え!?えっと…!?『出て来てくれた』のかなぁ?」
ミーナが宝玉の入った袋を見る ヴェインが身を起こして言う
「何にしても助かった… あっ!?」
ヴェインが大破している扉を見て 慌てて扉へ最後まで挑んでいたレイトへ視線を向ける レイトが伏せていた状態から顔を上げ 周囲を見渡してから叫んで向かう
「姫様っ!?」
ヴェインがホッと息を吐く そのヴェインの横を抜け レイトの向かった先でリーザロッテが顔を上げて言う
「レイト… 一体 何がどうなったのでして?」
レイトがリーザロッテの手を取って立ち上がらせる リーザロッテが自分の横に居るニーナとミーナを見てから その正面に居るウィザードを見る ロイがウィザードの姿を見て言う
「…透き通る身体に赤い瞳… 悪魔力を用いる膨大な魔力… その上で アバロンのヘクターの娘を助けに来た」
シャルロッテがロイの腕の中で目を覚まして言う
「それは ガルバディアの…?」
扉の外に倒れていたキルビーグが身を起こして言う
「ク…ッ ガルバディアのウィザードだとっ!?何故 貴様が この時に!?間もなく大戦が行われると言う この時を前にして ローレシアへ現れる事が出来る!?」
ウィザードが言う
「何時であろうと 何処であろうと 私はニーナとミーナを助けに向かう事が出来る それは私が ガルバディアのウィザードである以前に ニーナとミーナの叔父であるからだ」
リーザロッテが驚いて言う
「え!?ガルバディアのウィザードが ニーナとミーナの叔父ですって!?」
リーザロッテたちが顔を見合わせる プログラマーがホログラムを現して言う
『その件に関しては それ以上の事を伝える訳には行かない …そして、お前たちも余計な事には これ以上足を踏み入れない事だ』
ウィザードが疑問して言う
「それ以上 何かあったのか?」
プログラマーが軽く溜め息を付いて言う
『お前に話してもきっと理解は出来ない その悪魔力が詰め込まれている体に ようやく残されている1%の脳で分かるほど 簡単な話ではないのだ』
リーザロッテたちが驚く ウィザードが間を置いて言う
「うん そうだな?きっと分からないのだろう そんな気がする」
プログラマーが言う
『そんな事より ニーナ、ミーナ お前たちを迎えに来た 現状 これだけであるのなら問題は無い ツヴァイザーの王女らもついでだ 全員早々に…』
キルビーグが言う
「まさか 逃げられると思っているのか?」
皆がキルビーグを見る プログラマーが言う
『そちらこそ このウィザードを知っているとあれば 無駄なことは行うな 彼女たちを迎えに来ただけだと言う こちらの主張を受け入れ 素直に この場から逃げだすとあれば 我々はその貴方を追いはしない』
ウィザードが閃いて言う
「おお そうだった!ニーナとミーナの迎えのついでに ヘクターが探しているローレシアの勇者らの居場所を 聞こうと思っていた事を忘れていた!」
プログラマーが衝撃を受けて言う
『お前も 今は これ以上 余計なことを思い出すな!』
ウィザードが言う
「王冠を頭に乗せていると言う事は お前がこの国の王だな?逃がすわけにはいかない」
ウィザードがキルビーグへ向く プログラマーが言う
『やめろっ 今ここで これ以上の事を行うのは ヘクターやアバロンへの影響が…っ 今後 どの様に響くかが算出出来ない!』
ウィザードがキルビーグへ手を向けて言う
「その心配は不要だ 何とかなる …そんな気がする!」
ウィザードが魔力を放つ プログラマーが慌てて言う
『そんな気がする程度で!?待てっ!やめろー-!!』
轟音が轟く リーザロッテが言う
「キ、キルビーグ陛下っ!?」
皆が呆気に取られつ キルビーグのいた場所を見る ウィザードが気付いて言う
「おお?話を聞き出さなければ ならなかったのに どうやら 私は奴を 破壊してしまったらしい」
プログラマーが慌てて言う
『お前っ!!よりによって ローレシアの国王をっ!!』
皆が爆煙が立ち込める中を見て ヴェインが言う
「ロ、ローレシアの王が…」
レイトが言う
「こ、これは… 国王の暗殺?我々は今 その現場を目撃してしまったと言う事か…っ?」
シャルロッテが言う
「た、たたたっ 大変ですぅ…っ 国王の暗殺は 平和条約の協定で 第一級犯罪として…っ」
ロイが銃を手に言う
「…その事実を隠ぺいするために 口封じを行うという可能性もあるが …相手はガルバディアのウィザードか」
シャルロッテが自身の近くで装てんされた銃の音に衝撃を受けてロイへ向く キルビーグの声が聞こえる
「なるほど これが世界一と謡われた ガルバディアのウィザードの魔力か」
皆が驚き 再びキルビーグのいた場所を見る 強い光を放つ宝玉を手に キルビーグが周囲に結界を張っている 皆が呆気に取られ プログラマーがホッと息を吐いて言う
『相手が敵とはいえ 最上級魔力者であったことを 感謝する日が来るとは…』
キルビーグが言う
「確かに1人の魔力者として見れば恐ろしい魔力量だが 宝玉を用いるとあれば その差は無きも等しい… いや?」
キルビーグが宝玉へ魔力を送る 宝玉が強い光を放つ 皆が眩しがる中 ウィザードが表情を苦しめる キルビーグが言う
「この場所を知られたからには お前たちを逃がす訳には行かぬ そして 転送も不可能とあれば… お前たちは全員 この場で消えてもらう!」
キルビーグが宝玉を用いて攻撃魔法を放つ ウィザードが皆の前でマジックバリアを放つ 皆が衝撃に身を固くして リーザロッテが言う
「こ、これが魔力者同士の戦いと言うものでしてっ!?」
シャルロッテがモバイルPCを抱えながら言う
「す、すべての数値が振り切れて 計測不能です~~っ」
レイトがリーザロッテを庇いながら言う
「この状態では 逃げ出す事も叶いません あのガルバディアのウィザードと言うものに 頼る他にないものかと…っ」
プログラマーが言う
『いや 暫定値ではあるが 彼らの魔力を計測した結果 ウィザードは宝玉を持つキルビーグ国王には 勝てない』
皆が驚きリーザロッテが言う
「何ですってっ!?」
ヴェインが言う
「では 世界一の魔力者は ガルバディアのウィザードではなく 本当は…」
プログラマーが言う
『私が取り留めてやる義理はないが そちらは変わりない ただ それを現実に立証した場合 ウィザードの命が終わってしまう』
レイトが言う
「それはっ!?」
リーザロッテが言う
「どう言う事でしてっ!?そもそも そちらの現実の立証は 今 目の前で起きている事でしてよ!?」
プログラマーが周囲にプログラムを現しながら言う
『そうだ このままでは キルビーグ国王が持つ宝玉にある聖魔力が尽きる頃 ウィザードの身体にある悪魔力も尽きる しかし奴の悪魔力は それ自体が奴 自身の命を繋ぎ留める生命線でもある』
レイトが言う
「では そうなる前に ウィザードの魔法を止めさせなければっ」
ヴェインが言う
「しかし こちらが止めても キルビーグ国王は止めはしない そうとなれば…っ」
プログラマーが言う
『こうなってしまった以上 どちらかの魔力が尽きるまで 奴らを止める事は出来ない ニーナ、ミーナお前たちは移動魔法の準備を行え 今の内に お前たちだけでこの場から脱出する』
ニーナとミーナが言う
「え…?」「でも…」
リーザロッテが言う
「ニーナ、ミーナ レイトたちをお願い …私は残るわ!」
レイトが言う
「リーザ様っ!?」
リーザロッテが言う
「私はツヴァイザーの王女として 恩人の彼を置いては行けなくてよっ!」
レイトが言う
「それでしたら 私がっ!」
リーザロッテが言う
「レイト 貴方たちは行って頂戴 そして 真実をっ!キルビーグ国王の行いと ツヴァイザーの王女が殺されたと伝えるの!王族が関われば いくら相手が国王でも 追及を逃れられないわ!」
レイトが言う
「例え 真実を明るみにしようとも 姫様のお命を失わせるわけには参りませんっ どうか お考え直しをっ!…リーザ様っ!」
ニーナが宝玉の袋を握りしめて言う
「ど、どうしよう?ミーナ…っ?」
ミーナが困って言う
「う… うん…」
ニーナの持つ宝玉の入った袋が光っている プログラマーが反応して言う
『こちらに宝玉の反応が2つ?…ニーナの持つ宝玉の外に?』
プログラマーがリーザロッテを見る リーザロッテの持つ宝玉が光を発している プログラマーが言う
『リーザロッテ王女!お前も宝玉を持って居るのか!?』
リーザロッテが反応して言う
「え、ええ?持っていてよ?」
リーザロッテが宝玉を取り出す プログラマーが一度キルビーグを見てから言う
『…よしっ ならば 成功確率は… 78%!』
皆がプログラマーを見る プログラマーが言う
『持久戦では敵わない だが こちらには魔力の元となる物自体の数が多い 瞬間的に放たれる 複数の魔力による勢いで キルビーグ国王を少しでも怯ませる事が出来れば… その隙に全員で脱出することが可能だ』
ロイが言う
「…一時的に隙を作り 逃げだすと言う事か?」
リーザロッテが言う
「しかし そちらの隙を作る方法と言うのは?私たちの中に 攻撃魔法を出来る魔力者は居なくてよ?今 魔法を放っている彼に この宝玉を渡すだなんて事が出来て?」
プログラマーが言う
『単純に宝玉を手渡す様な事は出来ない 従って リーザロッテ王女、宝玉の魔力を 私の合図と共にウィザードへ送れ』
リーザロッテが衝撃を受け 慌てて言う
「わ、私は 宝玉を使えなくってよっ!?」
プログラマーが言う
『攻撃魔法を放てと言っている訳ではない 魔力を送るだけで良い 方法は簡単だ 強く願えば良い それだけだ』
シャルロッテがハッとして言う
「で、でででではっ ニーナちゃんとミーナちゃんもっ やった方が良いと思いますぅ!」
プログラマーが振り返って言う
『もちろんだ ニーナ、ミーナ お前たちも その袋にある宝石へ強く願え 良いな?』
ニーナとミーナが頷いて言う
「「うん!分かった」の」
レイトが言う
「待て、確かウィザードの魔力は悪魔力なのだろう!?宝玉の力は聖魔力 その力を送って使わせるなど 可能なのか!?」
プログラマーが言う
『直接使わせる訳では無い 奴が聖魔力を嫌う その性質を利用するのだ 詳細は見れば分かる さあ!ウィザードへ魔力を送れ!』
リーザロッテが宝玉を手に強く願う ニーナとミーナが宝玉の入った袋を握って強く願う 2つの宝玉が強く光り 聖魔力の白い光りがウィザードへ向かう プログラマーが叫ぶ
『さあ!ウィザードよ!その聖魔力を キルビーグへ叩き込め!』
ウィザードが衝撃を受けて叫ぶ
「私は その言い方が嫌いだ!そして その魔力も嫌いだー!!」
ウィザードが送られてきた聖魔力をキルビーグへ反射させる キルビーグが驚き 向かってきた聖魔力の塊に弾かれて言う
「ぐぅっ!?」
プログラマーが叫ぶ
『今だ!逃げろ!』
皆が逃げ出す

ローレシア国 移動魔方陣

皆が移動魔法陣まで辿り着く シャルロッテがモバイルPCを操作して言う
「だ、だだだダメです!もうローレシアの移動魔法陣は 他国への通路を閉ざしてしまっています!」
リーザロッテが驚いて言う
「ではっ!?どうしたらよろしくてっ!?」
プログラマーが言う
『ローレシアの国境には お前たちの情報が伝わってしまっている 陸路を行く事は難しい ローレシアから出るには 海から逃れるしか無い!』
シャルロッテが手を上げて言う
「ははははいっ!わ、私 偽造乗船券を 取得出来ますぅ!」
レイトが言う
「では ローレシアの港がある ヴィルトンへ向かうという事だな!?」
プログラマーが言う
『ローレシア国内の移動魔法は制限されていない お前たちの中で過去ヴィルトンへ向かった事のある者は居るか?』
ミーナが言う
「私たち ヴィルトンには行きました!移動魔法が使えます!」
リーザロッテが笑顔で言う
「助かったわ!私たちも一緒に送って貰えるかしら!?」
ニーナが笑顔で言う
「もちろんなのー!皆でいっぺんにヴィルトンまで飛んで行くのー!」


【 港町ヴィルトン 】

リーザロッテたちがヴィルトンの移動魔法陣へ到着する 皆の前にプログラマーのホログラムが現れて言う
『間もなくローレシアから他国へ向かう 最後の船が出港する 時間が無い 急げ!』
リーザロッテたちが頷き 港の方を向く ニーナが気付いて振り返って言う
「デスさん!」
ウィザードが地に倒れる ニーナが駆け寄って声を掛ける 皆が驚く プログラマーが周囲のホログラムモニターを元に言う
『生命に問題は無い 今は意識を保つだけの魔力が足りていないだけだ しばらくすれば回復する』
レイトとヴェインがウィザードの両肩を支えて持ち上げる リーザロッテが言う
「では、このまま船へ向かいましょう!彼も船で休ませたら良いわ!」
皆が港へ向かおうとする プログラマーが言う
『いや、海上は悪魔力が少ない 休ませるのなら この陸上が良い そいつはこれからの世界大戦で アバロンの力とならねばならない 回復の遅まる海上で悠長に休んでいては間に合わない』
ヴェインが焦って言う
「しかしっ 今は早くローレシアを脱出せねば!我々もこのウィザードも 再びローレシアに捕らえられてしまう!」
プログラマーが言う
『そのウィザードは お前たちとは違い 例え移動魔法が封鎖されようとも 空を行きローレシアから逃げる事が出来る 今すぐ船で逃げ出さねばならないのは お前たちだけだ』
レイトが言う
「では、何とかして 彼を匿ってくれる者を探し出し… いや?時間が無いのだ 大金を使って匿わせるしか」
プログラマーが言う
『その心配は無い そいつは そこへ入れて置け』
プログラマーが何かを指差す 皆が衝撃を受ける プログラマーが言う
『急げ、お前たちが 間に合わなくなるぞ』

船が出港する リーザロッテたちが離れていく港を見ている ニーナが言う
「デスさん… 大丈夫かな?」
ミーナが苦笑して言う
「プログラマーのデスさんが いざとなったらカモフラージュするって言ってたから きっと大丈夫だよ」
ニーナが笑顔で言う
「うん!そうだね!プログラマーのデスさんは いつもウィザードのデスさんの事を悪く言うけど 本当はとっても大好きなのー」
ミーナが驚いて言う
「え!?そうだったの!?」
ニーナが笑顔で言う
「うん!」
リーザロッテがニーナたちの会話に軽く微笑む レイトが言う
「我らツヴァイザーは 今度の大戦ではローレシアへ味方し スプローニと共に アバロンの友好国 ベネテクトを攻撃するそうです」
リーザロッテが表情を落として言う
「そう… アバロンはガルバディアの2大勢力を得て ベネテクトと共に世界を支配する… 私はずっと 幼い頃からそうと教わってきたわ アバロンは己の私利私欲の為に ガルバディアの力を奪い取ったのだと… でも」
レイトが微笑して言う
「そのガルバディアの2大勢力は とてもアバロンに無理強いをされている様子は ありませんでしたね?」
リーザロッテが苦笑して言う
「ええ、今回の旅で 私が知っていた事は どれもこれも覆されて 本当に驚く事ばかりだったわ」
レイトが微笑んで言う
「その中に置かれましても リーザ様は何事にも怖気る事無く …我らツヴァイザーの姫の強さと優しさを 私は改めて思い知る事が出来ました」
リーザロッテが一瞬呆気に取られた後 笑顔で答える
「当然よ!私には レイトやヴェインやロイやシャル!ローレシアの勇者顔負けの 頼りになる仲間たちが付いているのですから!」
レイトが呆気に取られた後 軽く笑って言う
「はい、我らツヴァイザーの勇者様は ローレシアの勇者に勝るとも劣りません」
リーザロッテとレイトが笑う

【 アバロン城 玉座の間 】

玉座に座るヴィクトールとレリアン ヴィクトールの前に家臣たちが立って居て言う
「ヴィクトール陛下!ついにツヴァイザーとスプローニから ベネテクトへ宣戦布告がなされました!」
「陛下!既にヘクター率いるアバロン3番隊が ベネテクトへ到着しております!」
「なんとっ!?陛下!?アバロン3番隊を 今アバロンから離してしまう事はっ!」
ヴィクトールが真剣な表情で言う
「ローレシアとソルベキアの偵察兵は ヘクターにウィザードとプログラマーが付いて居ない事を確認している この状態であれば 彼らガルバディアの2大勢力が ベネテクトへ向かったヘクター率いる3番隊から離れ このアバロンを守っていると考えるはずだ」
家臣Cが呆気に取られた後 驚いて言う
「なるほど!わざとローレシアとソルベキアの偵察兵に 彼ら2人がヘクターへ同行して居ない事を見せ知らせ その動向をかく乱させると言う事ですな!?」
ヴィクトールが自信に満ちた笑みを見せて言う
「そう言う事だ」
家臣たちが尊敬の眼差しでヴィクトールを見る ヴィクトールが一瞬、間を置いた後に言う
「…だが本当に 彼ら2人は何処へ行ってしまったのだろう?」
ヴィクトールが首を傾げる 家臣たちが衝撃を受けた後 詰め寄って叫ぶ
「ヴィクトール陛下!?まさかーっ!!」
「我らアバロンも 彼ら2人の動向を把握していないと 申されるのですか!?」
ヴィクトールが照れながら言う
「そうなんだよ ヘクターも分からないと言うんだ 早く帰って来てくれると良いのだけど?」
家臣たちが声を合わせて叫ぶ
「「「陛下ーっ!!」」」
家臣Cが焦って言い寄る
「それでは!!やはり今アバロン3番隊をアバロンから離してしまってはっ!!」

玉座の間の外で ヴィクトール14世が玉座の間へ顔を向け驚いた表情を見せる バーネットがそれを確認し ヴィクトール14世へ剣を振るう ヴィクトール14世が即座に剣を抜き バーネットの剣を弾き上げ 切っ先を向ける ヴィクトール14世が軽く笑って言う
「ウィザードもプログラマーも アバロンへ戻って来てくれます …私は彼らを信じます!」
バーネットが呆気に取られた後 笑んで言う
「ハッ!…それで良い その何の根拠もねぇ確信が、てめぇらアバロンの民の力なんだよ!」
ヴィクトール14世が笑顔で言う
「はい!」
ヴィクトール14世が剣を収める バーネットが苦笑した後 弾かれた剣を拾いに行く ヴィクトール14世のもとにレリアンが歩いて来て言う
「ヴィクトール、お話があります 私と一緒にいらして下さい」
バーネットが顔を向け視線を強める ヴィクトール14世が一瞬驚いた後 表情を渋らせて言う
「申し訳有りません母上、私としては 母上のお言葉に従いたいのですが…」
レリアンが表情を険しくして言う
「剣も持てぬ女1人の私に恐れ 同行を拒否すると言うのですか?」
ヴィクトール14世が俯き 視線を泳がせながら言う
「い、いえ そんな… 私はっ …母上を 恐ろしく思う等と 言う事は…」
バーネットがヴィクトール14世の近くへ行って言う
「いーや 恐ろしいぜぇ?デネシアの王女様には 気を付けねぇとなぁ?」
ヴィクトール14世が驚いて バーネットへ顔を向ける レリアンがバーネットへ向き直り 視線を強めて言う
「確かに 私はデネシアの王女でありましたが 今はこのアバロンの王妃… そして、ヴィクトールの母です それなのに、アバロンの王子であり 我が子でもある ヴィクトールを この私がどうにかしてしまう等と 貴方は仰るのですか?」
バーネットが苦笑して言う
「過去にはアバロンの王女であり てめぇの娘であるメイデを使って ベネテクトの国と王位を奪おうとしやがったじゃねぇか?今更 てめぇの息子であるヴィクトールを利用しねぇなんざ言いやがった所で まったく説得力がねぇんだよ?」
ヴィクトール14世が俯く レリアンが表情を険しくして言う
「では、私が本当にアバロンの王妃となったと言う証拠を 貴方にお見せしましょう 貴方で構いません 私と共にいらして下さい」
レリアンが先行する バーネットが表情を険しくして続こうとする ヴィクトール14世が慌てて言う
「バーネット様っ 父上は バーネット様にも 母上に気を付ける様にと!」
バーネットが振り返って言う
「はっはー それこそ『剣も持てねぇ女1人』相手に 俺を舐めんじゃねぇって伝えとけ!いや、それよかぁ てめぇも気を付けろよ?」
バーネットが立ち去る ヴィクトール14世が引き止める様に伸ばしていた手を戻し 困った表情をして玉座の間へ顔を向けて言う
「ち、父上に…っ」
ヴィクトール14世が玉座の間へ向かおうとする 

玉座の間 ヴィクトールが家臣から話を聞いて言う
「分かった、もし 彼らが戻る前にソルベキアやローレシアが動いた時には すぐに知らせてくれ ウィザードとプログラマー どちらかが戻るまでの間は 私が相手をして時間を稼ぐ」
家臣Aが焦って言う
「しかし!ヴィクトール陛下!そのどちらかが 万が一戻らなかった時には ヴィクトール陛下お1人では!」
ヴィクトールが頷いて言う
「ああ、いまだヘクターの娘たちはアバロンへ戻らない 彼女らに預けたアバロンの宝玉が戻らなければ 私は宝玉を用いてソルベキアのロボット兵を倒す事は出来ない」
家臣Bが焦って言う
「陛下の御身に何かあっては この大戦を乗り切る事は出来ません!折角このアバロンに2人の王が戻ったというのに バーネット様だけが残ってもヴィクトール陛下が戦えなくなってしまっては!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「バーネットの身に何かあっては 僕は戦えなくなってしまうけれど 彼の場合は大丈夫なんじゃないかな?」
家臣たちが怒って言う
「「「陛下ーっ!!」」」
家臣Aが言う
「このアバロンの第一国王は貴方様ですぞ!」
家臣Bが言う
「アバロンの国王があの様に口の悪い王では 民への示しが付きませぬ!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「え?バーネットの口の悪さは 民には受けると思うんだけど?」
家臣Cが慌てて言う
「バーネット様が正式にアバロンの第二国王となられるかどうかは まだご本人への意思確認も行っておりませんですし 万が一受け入れて頂けるとしても その任命には第一国王であるヴィクトール陛下からの 正式な戴冠がありませぬと アバロンは一度追い出した 第二国王を受け入れる事は罷りなりません!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「誰が第二国王を追い出したりしたんだい?ちょっとベネテクトに出張して来るって事にしておいたら そんな面倒な手筈は取らなくても良かったのに?」

ヴィクトール14世が表情を困らせて言う
「父上は宝玉の力が無くても ソルベキアのロボット兵に立ち向かわれるおつもりなんだ… バーネット様もデネシアの王女である母上が何か策を持っていると分かっていながらも僕を庇って… 2人とも とてもお強くいらっしゃるのに 僕は… 母上が怖かった…っ」
ヴィクトール14世が俯いて言う
「仲間を信じる力は分かったけれど 僕では父上たちのような 心の強さは持て無い せっかくバーネット様に認めて頂いたというのに」
ヴィクトール14世が顔を上げて言う
「とにかく、今は父上に知らせないとっ アバロンの第二国王になられるバーネット様に もしもの事があったら 父上は世界を統一しようという今のお力を 失われてしまうかもしれない」
ヴィクトール14世が歩き始める アバロン兵が走って来て言う
「ヴィクトール王子!」
ヴィクトール14世が驚いて振り向いて言う
「え!?私に何か!?」
兵が跪いて言う
「大変ですヴィクトール王子!レリアン王妃様が バーネット様を人質に取り ヴィクトール王子を連れてくる様にと!」
ヴィクトール14世が驚いて言う
「何だってっ!?すぐに父上へ!!」
兵が慌てて言う
「いえ!陛下には知らせず 王子だけを連れて来る様にと」
ヴィクトール14世が一瞬驚き 気を取り直して言う
「わ、分かった、バーネット様に もしもの事があっては…」
兵が立ち上がる ヴィクトール14世が一瞬考えて言う
「…違う、バーネット様を捕らえたのなら そのまま父上を脅迫すれば良いんだ それに、バーネット様は十分 母上に警戒なされていた …だからっ!」
ヴィクトール14世が剣を抜き 兵へ向けて言う
「お前!アバロンの兵では無いな!アバロン兵は今 全ての兵が城外の警戒に当たっているんだ!城内に配備された衛兵以外の者が 私への伝達に来る筈が無い!」
兵が表情を変えて言う
「ほう?アバロンの王子は 弱虫王子と聞いたが 頭の方はキレるらしい だが…」
兵が剣に手を掛ける ヴィクトール14世が剣を構え直す ヴィクトール14世の後方から別の兵が現れ ヴィクトール14世に強打を与え気絶させる 兵がにやりと笑って言う
「念の為にと 2人掛かりで捕えに来ていた事までは 気が付けなかった様だな?」
兵たちがヴィクトール14世を連れ去って行く

アバロン城地下道 レリアンが先行する バーネットがそれに続いて言う
「おい?どこに連れて行こうってんだ?何を見せる気だか知らねぇが こっちだって暇じゃ…」
バーネットが立ち止まる レリアンが振り返って言う
「どうなさいました?もう すぐそこです それともデネシアの王女である私の事が恐ろしくなって 怖気付いてしまわれましたか?」
バーネットがハッとして言う
「そうかっ デネシアとは国王同士の友好条約を結んでいるっ 国としてデネシアの兵を拒否する事は出来ても 王女の護衛兵まで止める事は出来ねぇっ クソッ!」
バーネットが来た道を戻って走りながら言う
「俺をヴィクトールから離して その間に あいつを捕らえちまおうって事かよ!」
バーネットの前に兵が現れる バーネットが立ち止まり剣を抜く ヴィクトール14世へ剣を向けた兵が現れる バーネットが言う
「ヴィクトール!!」
兵が言う
「ヴィクトール王子を殺されたく無ければ 大人しく降参する事だ」
兵が言いながらヴィクトール14世の首に近付けた剣を見せる レリアンが来て言う
「ベネテクトの王は その王位を失っても アバロンの親友なのですね?アバロンの王だけでなく 王子にまで 常に気を掛けていらっしゃるので とても手を焼きました」
バーネットがレリアンへ視線を向ける レリアンが軽く笑って言う
「さぁ?貴方の親友、アバロンの王の大切な息子を 目の前で殺されたく無ければ その剣を捨て 私の命に従いなさい」
バーネットが苦笑して言う
「そのアバロンの王の大切な息子は てめぇの大切な息子じゃぁねぇんだな?…ハッ!剣も持てねぇ女1人が これほど恐ろしいもんだったとは 思わなかったぜ?」
バーネットが剣を捨てる それを見たレリアンが苦笑して言う
「女は 剣を持てぬ代わりに 剣を持つ者を扱うのですよ」

ヴィクトールが玉座の間から顔を出して言う
「あれ?バーネット?ヴィクトール?」
ヴィクトールが考えながら言う
「うーん… このタイミングで 先にデネシアを落としても ローレシアとの戦いに 問題はないかな?」
レリアンが慌ててやって来て言う
「ヴィクトール陛下!大変です!王子が!王子がローレシアに捕まってしまいましたっ!」
ヴィクトールが軽く笑って言う
「そうか、レリアン それは困ったね?」
レリアンが驚いて言う
「こ、『困ったね』ではありません!ヴィクトール陛下!!直ぐに兵を集め ローレシアへ!!」
ヴィクトールが頷いて言う
「うん、その前に デネシアの新国王ルーゼック殿と お話をすると良いよ?」
レリアンが驚いて言う
「え!?な、何故 お兄様と!?」
レリアンが呆気に取られる ヴィクトールが笑顔で待つ レリアンが慌てて通信機を取り出し デネシアへ繋ぐ 通信機が着信すると同時に 通信機のモニターにヘクターの どアップが映って言う
『よー!王妃様ー!デネシアの兄ちゃんと話がしたいのかー!?』
レリアンが驚いて言う
「あっ!貴方は!?アバロン3番隊のヘクター隊長!?なぜ貴方がデネシアに!?ベネテクトへ向かったと!!」
モニターの中でヘクターがニヤニヤ笑う ヴィクトールが言う
「それは君に対しての情報かく乱だったのさ レリアン、いい加減 アバロンにちょっかいを出すのは止めて貰えないかな?じゃないと」
通信機のモニターの中に ヘクターがルーゼックへ剣を向けている姿が映っている レリアンが慌てて言う
「お、お兄様っ!!」
通信機のモニターの中で ヘクターがルーゼックへ悪戯に剣を近付ける レリアンが慌てて言う
「きゃぁー!!や、やめなさい!!ヘクター隊長!!王妃命令ですっ!!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「アバロンはデネシアを とっくに制圧していたのだよ?これでもう ヴィクトールとバーネットを人質にして置く必要は無くなったね?すぐに、彼らを開放して貰えるかい?もし、これでも返してくれ無いと言うなら 君の兄君に バーネット1世様と 同様の拷問を与えて 虐めて 殺しちゃうよ?」
ヴィクトールがレリアンへ笑顔を向ける レリアンが衝撃を受けて言う
「わ、分かりました!私たちの負けですわ!!キーッ 悔しいぃ!!」
ヴィクトールが通信機に向かって言う
「と、言う訳で 無事、解決したよヘクター デネシアの国王様は 一応、私の義理の兄上にもなる訳だから 丁重に頼むよ?」
通信機の中でヘクターが言う
『あー?そうなのかー 何だよ 残念だったなー 折角バーネット1世様の仇が討てるって事でよー?皆自慢の大剣を持って来て 拷問の準備は ばっちりだったんだけどなー?』
通信機のモニターの中で 3番隊の隊員たちが笑顔で剣を見せる ヴィクトールが苦笑して言う
「そうか?それじゃ… 折角だし 少し位なら?」
レリアンが衝撃を受けて叫ぶ
「少しもダメですーっ!!」

通信を切ったレリアンがホッと息を吐く ヴィクトールが苦笑して言う
「デネシアが小さな国であり ローレシアの助力を得なければ 成り立たない国であったとしても 何故君達はそれほどまでに ローレシアへ忠義を尽くすんだい?」
レリアンがヴィクトールへ向く ヴィクトールが続けて言う
「デネシアを落とす事は 私の父上の頃だって可能だったんだ しかし、君たちとローレシアとの繋がりが ずっと分からなかった… 故に 下手に手出しが出来なかったんだ 今回は私の勝手で それらの事を解明しないままに デネシアを落としてしまったが これで本当に良かったのかと …今でも私には分からないんだ」
レリアンが苦笑して言う
「それなら尚更 私にはヴィクトール陛下の そちらの考察を伝えるべきでは ないのではありませんか?」
ヴィクトールが微笑んで言う
「君の兄君への思いは本物だった それが分かって私は安心したんだ デネシアの王女も本当は 1人の優しい女性だと言う事が分かってね?」
レリアンが驚いて言葉を失う ヴィクトールが苦笑する レリアンが苦笑して言う
「私だって… メイデをベネテクト攻略に使われると 聞かされた時には とても辛かったのですよ?それでも それがデネシアの王女としての責務だと割り切って… しかし、貴方のお父様に助けられたと聞いた時には 本気でデネシアの王女を捨て アバロンの王妃になりたいと…」
ヴィクトールが微笑んで言う
「君は間違いなく アバロンの王妃だよ レリアン」
レリアンが驚き ヴィクトールの顔を見上げて微笑む 間を置いて ヴィクトールが言う
「所で、アバロンの王妃は無事に取り戻したのだから 次はアバロンの王子と第二国王を取り戻させて貰えないかな?」
レリアンが衝撃を受けて叫ぶ
「ほ、本当はそちらが 本命だったのでは ありません事っ!?」
ヴィクトールが呆気に取られてから 笑顔で言う
「え?心外だなぁー?僕は どれも全部助けて 全部守りたいと思ってるだけなんだけど?」
レリアンが膨れっ面で通信機を操作しながら早口に言う
「アバロンの王子に関しては分かりますがっ あのベネテクトの元国王を アバロンの第二国王にすると言うのは 私はやっぱり気に入りませんわっ!?いつかヴィクトール陛下を差し置いて このアバロンの全権を手中に収める事だって あの者であるなら可能な気がするのですっ!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「バーネットが第二国王の王位に就いていられるのは 僕がアバロンの第一国王に就いている間だけだから 彼がアバロンの全権を手中に収める事は 実質不可能だよ?」
レリアンが通信機の着信を待ちながら言う
「例え 現状がそうであられましても あのベネテクトの王はずる賢いですから 私はヴィクトール陛下が軽く騙されてしまうのではないかと 心配なんですっ!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「うん、そうだね?僕なら彼に軽く騙されてしまいそうだ!」
レリアンが衝撃を受けて叫ぶ
「否定してくださいましーっ!」
ヴィクトールが軽く笑って言う
「でも、そうならないために 第一国王と第二国王の任期が同じで 更にその王位の変更は 例え第一国王の身に何か有ったとしても 許されない事になっているらしいよ?それも初代の頃の王妃様がお決めになった事だとか やっぱりアバロン初代の王妃様もレリアンと同じ考えだったって事だね?」
レリアンが顔を背けて怒って言う
「当たり前です!アバロン歴代の王妃は 全てデネシアの…」
ヴィクトールが疑問する レリアンが呆気に取られ ヴィクトールへ向いて言う
「そうですわ… アバロン歴代の王妃は全てデネシアの王女です それでも、デネシアはアバロンの友好国であっても 決してローレシアへの忠義を欠かない取り決めがあるのです その割に、デネシアからローレシアへ王女が嫁ぐ事も その逆も今までにありませんでした」
ヴィクトールが言う
「え?そうなのかい?それではどうして?デネシアは自国の王女やその子供まで使って アバロンを落とし、ローレシアを帝国へ伸し上げようなどと?」
レリアンが表情を困らせて言う
「そ、それは… 分かりません」
ヴィクトールが疑問する レリアンが焦って言う
「ほ、本当に分からないのです!私はずっとお父様やお母様から アバロンを騙しローレシアをデネシアの手で帝国へと その様に言われて育ちっ」
ヴィクトールがハッとして言う
「ああ、いや、レリアンを疑うつもりは無いよ それよりも 通信が繋がらないのは?それは…」
レリアンがハッとして通信機を確認して言う
「そ、そうでしたわ どうして…?いつもなら直ぐに繋がると言うのに」

【 ローレシア城 地下牢 】

キルビーグが苦笑して言う
「バーネット2世… 折角我が父がローレシア帝国の皇帝の地位をくれてやろうとしたものを 多額の融資だけを受け取り そのままアバロンへ逃げ込んでしまうとは どこまでも卑怯な男だ」
牢屋の中 バーネットが両手を縛られ吊るされている バーネットが苦笑して言う
「ハッ!旧世界だ新世界だぁなんて 訳の分からねぇ事抜かしやがってっ んなモンがあって堪るかってんだ!例えあったとしても 俺が受け持つのは ベネテクトの王だけだ!んな訳の分からねぇ世界のローレシア帝国の皇帝なんざ 殺されたってやりたかねぇえんだよ!」
キルビーグが苦笑して言う
「そうか… やはり歴史を忘れた裏切り者たちに 旧世界の民を任せよう等とした 父上が間違っておられたのだ」
キルビーグが兵へ向いて言う
「この者を口の利けぬ程度にまで痛めつけろ だが決して殺すな この者にはまだ アバロンを落とす為に役立って貰わねばならない」
拷問兵がバーネットの前に立って言う
「久し振りだな?バーネット王子?おっと、バーネット国王 でもってバーネット元国王だったな?」
拷問兵が笑う バーネットが拷問兵を見下ろして言う
「はっはー やっぱりてめぇは デネシアじゃぁなく ローレシアの兵だったんだなぁ?可笑しいと思ってたぜぇ てめぇは頭に来ると 直ぐに言いやがる『ローレシアに忠誠を誓え』ってなぁ?」
拷問兵がニヤリと笑って言う
「当然だ、俺は忠実なるローレシア国 第1部隊長 例えデネシアの兵を真似ていようとも この魂は常にローレシアにあるのだ!」
拷問兵がバーネットへ鞭打つ

拷問兵がバーネットの様子を確認して言う
「ふん、こんなものか?本当なら、前回のデネシアでの借りもあるからな?その命で返してもらいたい所だったが 我が王の命では仕方がない そのままアバロンの王がお前たちを救い出そうと来るまでは 生きていろよ?」
拷問兵が立ち去る ヴィクトール14世が震えながら言う
「バ、バーネット様…」
バーネットがヴィクトール14世へ視線を向けて言う
「よぉ… ようやく お目覚めかぁ…?」
ヴィクトール14世が泣きながら言う
「すみません… バーネット様 私が…っ 奴らに… 捕まった せいで…っ」
バーネットが苦笑して言う
「はっ… そうでもねぇよ… 俺はぁ ローレシアから多額の融資を巻き上げていたんだぁ いつか捕まるってぇ事くらいは覚悟してた …からな?」
バーネットが手枷のされている手を動かし 手枷から逃れて地に落ちる ヴィクトール14世が驚いて目を丸くする バーネットが手の調子を確認して言う
「こんな事もあるかと思って このローレシア城に関しては ちょいと詳しい」
ヴィクトール14世が驚いたまま言う
「く、詳しい…とは?」
バーネットが苦笑して言う
「はっはー まさかてめぇまで一緒に とっ捕まってるとは 想定外だったがなぁ?」

【 アバロン城 玉座の間 】

ヴィクトールのもとに家臣らが駆け寄って来て 家臣Aが言う
「ヴィクトール陛下!デネシア城にあった ローレシアの資料を押収致しました!急いで解析をさせます!」
ヴィクトールが言う
「今から解析を始めたのでは間に合わない!私が直接ルーゼック国王と話をする!ヘクターたちはまだ戻らないのか!?」
家臣Bが答える
「アバロン3番隊はルーゼック国王を拘束し 現在はデネシアとアバロンの国境付近におり アバロンへの帰還には早くとも後 半日は掛かるものと…っ」
ヴィクトールが問う
「ベネテクトとツヴァイザー、スプローニの開戦はどうなった!?」
家臣Cが答える
「ベネテクトは ツヴァイザー、スプローニの部隊を押し止め これを撃退したとの事です ツヴァイザーとスプローニの両国からは 既に敗戦の狼煙が上げられております」
ヴィクトールが言う
「ウィザードとプログラマーは戻ったのか!?」
家臣Aが答える
「彼らの帰還は確認されておりません」
ヴィクトールが考える レリアンが心配して見守る 伝達の兵が現れて言う
「申し上げます!ヴィクトール陛下!ヘクターの娘たちが アバロンへ戻りました!」
ヴィクトールが顔を上げ微笑んで言う
「間に合ったか!」
ヴィクトールが立ち上って向かう レリアンが疑問して声を上げる
「ヴィクトール陛下!?どちらへ!?」
ヴィクトールが振り返って言う
「レリアン、私はしばらく離れる 後を頼む」
レリアンが驚く ヴィクトールが立ち去る レリアンが呆気に取られている所へ 家臣たちが駆け寄って口々に言う
「レリアン王妃様!ツヴァイザーとスプローニから 今大戦の敗戦に対する 保障と条約の取り決めを確認したいと連絡が!返答は如何致しましょう!?」
「それよりも レリアン王妃様!シュレイザー国から今大戦における アバロンとシュレイザーの友好の確認を取りたいと連絡が!」
「いえ、その前に レリアン王妃様!ベネテクト国のベーネット殿から 過去バーネット様へ送られたローレシアからの融資の詳細が!」
レリアンが慌てて言う
「え!?ええっ!?そ、そんなに沢山 一度に言われても 私はっ!?ヴィクトール陛下!ヴィクトール陛下ーっ!?」

【 ローレシア城 地下牢 】

バーネットが針金を使い鉄格子の扉の鍵を操作しながら言う
「この旧式の施錠が使われている牢ってぇ事は ここはローレシア城の最下部にある旧地下牢だ… 脱出するのには 一番時間がかかっちまうが 最近は使われる事のねぇ牢獄だから その分警備と補修がなってねぇ」
牢屋の鍵が外れる ヴィクトール14世が呆気に取られる バーネットが扉を開け 周囲を確認して言う
「…とは言え 今は俺とお前をぶち込んでんだ あんまり気ぃ抜いてっと 見付かっちまうからなぁ?油断するんじゃねぇぞ?」
バーネットが先行する ヴィクトール14世が慌てて追う

【 ヴィルトン港町 】

薄暗い空間で ウィザードが目を開ける プログラマーの声がする
『ウィザードの意識の覚醒を確認 同時に悪魔力22%の蓄積を確認 私の計算によると お前の意識の覚醒には 20%の悪魔力蓄積であっても十分な筈 …この時間の無い時に 二度寝でもしていたのか?』
ウィザードが瞬きをした後 不機嫌な目で言う
「私はその言葉の使い方が嫌いだ そして お前の声も嫌いだ」
プログラマーが苛立ち  間を置いた後言う
『っ… お前の残された1%の脳には 生命維持を司る部分と その他、少量の知能と感覚を司る箇所が残されている その中に置いて不快要素を感じる部位は 最も深い場所にある為 お前の脳にはその部分が残されているのだろう』
ウィザードが瞬きをして言う
「私は難しい話が嫌いだ そして 難しい話をする  お前の顔も嫌いだ」
プログラマーが間を置いて言う
『っ… そうだな お前をその様な体にしたのは 我らガルバディアの民 そしてガルバディアの民は皆 同じ顔であり同じ声だ お前の体から人の部分を取り除いて行った ガルバディアの研究者たちも 私と同じ姿 そして 同じ声だった お前が私を嫌う理由は十分に分かっている』
ウィザードが瞬きをして 間を置いて言う
「…夢を見ていた いつも見せられていた映像 生まれて間も無い私をガルバディアへ連れて来る アバロンの民 私とヘクターの父」
プログラマーが苦笑して言う
『お前がその夢を見ている間に 私はウィザード研究の詳細を確認していた お前の言うその映像は 実際にお前たちの父親が ガルバディアへお前を連れて来た時の物だ ウィザードの研究は長期に渡り行われて来た しかし、数千と言う実験の結果 成功したのはお前1人』
ウィザードが視線を強めて言う
「ガルバディアは 数千もの命を 下らない研究のために破壊したのだな」
プログラマーが言う
『そうだな… だが、お前以外は全てガルバディアの民だった 彼らは生き延びる事を望まない 故に 誰1人生き残る事も出来なかったのだろう… そして ウィザード研究の最後の実験体となったのが お前だ 研究者たちはアバロンの民の生命力に関するデータを入手し そこから編み出した方法をお前に使用した それが先ほど お前が夢に見たという映像だ』
ウィザードが怒って言う
「例え生き延びる事を望まないガルバディアの民であろうと 全て同じ命だ それを大切にしないガルバディアの民は 私は嫌いだ」
プログラマーが苦笑して言う
『嫌いな事ばかり覚えているお前が その映像の事を覚えているのは不思議な事だ 今もウィザード研究がなされていたのなら とても重大なデータになっただろう …それとも?お前は お前をガルバディアへ送った お前とヘクターの父親である ラインツ元傭兵隊長の事も …嫌いなのか?』
ウィザードが瞬きをして考える プログラマーが苦笑して言う
『…そうだな 嫌いである筈だ お前はそのせいで 悪魔力が体に定着するまでの 十数年の年月を苦しみ そして、悪魔力の魔物化現象により お前の目は お前を苦しめた研究者たちの瞳と同じ色になった …その お前の目を見るたびに 私は 自分がガルバディアの民である事を思い知らされる』
ウィザードが瞬きをしてから言う
「お前は私の目が嫌いなのか?」
プログラマーが苦笑して言う
『…そうだな お前を苦しめたガルバディアの民である 自分が嫌いになる』
ウィザードが視線を強めて言う
「私は 命を粗末にするガルバディアの民は嫌いだ だが 私は ”お前を”嫌いだと思った事は 一度も無い!」
プログラマーがホログラムを現して振り返り 驚いた様子で言う
『…え?今… 何と?』
ウィザードが勢い良く立ち上がって叫ぶ
「そして 私は 私とヘクターの父の事を 嫌いだと思った事も無い!だが 私は ゴミ箱の中は嫌いだっ!!」
ウィザードが頭の上にゴミ箱の蓋を乗せ ゴミ箱の中に浮いている

【 ローレシア城 地下牢 】

バーネットとヴィクトール14世が地下通路を行く バーネットが曲がり角の手前で立ち止まり確認して言う
「ここまで来れば 後は空調用の格子をぶっ壊して その先へ飛び込めば そのまま、城の掘りへ飛び込めるってぇ寸法だ」
ヴィクトール14世が一瞬考えた後に言う
「し、しかしバーネット様 確かローレシアの城は 平地特有の深掘り構造にて造られているはずです そして 最下部にあると言われたあの牢屋から ここまで登ってきた段数を考えると ここから掘りの水面までの高さは…っ」
バーネットが身を隠して言う
「へぇ?まぁまぁな考察じゃねぇか?てめぇは、ヴィクトールよりも 状況判断の能力は長けてるのかもなぁ?あいつの場合は とりあえずやってみるってぇ 考えだからよぉ?」
ヴィクトール14世が焦って言う
「ぼ、僕はっ 父上と違って臆病なのでっ あ、頭でばかり 考えてしまうのですっ」
バーネットが苦笑して言う
「はっはー んな事ねぇよ あいつだって昔はいっつも 親父のヴィクトール12世様の後ろに隠れててよぉ?俺以外の奴とは口も利けねぇ位 臆病な奴だったぜぇ?」
ヴィクトール14世が驚いて言う
「え…?ち、父上が?」
バーネットが微笑して言う
「ああ、今じゃぁ考えられねぇだろ?まぁ、てめぇも似た様なもんなんだろうぜ?あいつも言ってたじゃねぇか、素質があっても表に出すのが苦手なんだってよ?だから その対処法も同じだ てめぇはてめぇの力を 自分自身を信じれば 良いんだろ?」
ヴィクトール14世が視線を落として言う
「僕はまだ… 自分自身を信じて 力を使う事は…」
バーネットがヴィクトール14世へ向いて言う
「ならもう1つの方だ アバロンやてめぇの父親 ヴィクトール13世の為に てめぇはここから逃げ出して アバロンとローレシアの戦いの支障となる てめぇってぇ人質を助け出さなけりゃならねぇ」
ヴィクトール14世がバーネットを見上げ 一度視線を逸らしてから 再び戻して言う
「は、はい!」
バーネットが軽く笑んで言う
「よし、それじゃ 準備は良いな?」
ヴィクトール14世が頷く バーネットが通路の先を確認してから 再び身を隠して言う
「この通路の右側には あのデネシアの兵に化けていた ローレシアの兵が居やがる 俺が奴の気を引き付ける その間に てめぇはこの通路の左の突き当たりにある 空調用の格子を蹴破って そのまま外へ飛び込め」
ヴィクトール14世が驚いて言う
「し、しかし それでは!?バーネット様がっ!」
バーネットが苦笑して言う
「はっはー てめぇがさっき言っただろう?このローレシア城は平地特有の深掘り構造の城だぁ ここから掘りの水面までの高さは とんでもねぇ高さになる それを飛び込むんだぜ?無傷のてめぇでも下手打ちゃあ 一発であの世行きだ 精々気を付けろよぉ?」
ヴィクトール14世が驚いて言う
「そ、それでは…っ バーネット様は初めから…っ」
バーネットが苦笑し 一度息を飲んで言う
「俺はこれ以上行けねぇ… てめぇだけは 何が何でも生き延びて ヴィクトールの下へ戻ってやれ あいつは泣き虫だからよ 誰かが支えてやらねぇと 泣いてばっか居やがるからなぁ?」
ヴィクトール14世が驚いたまま言葉を失う バーネットがヴィクトール14世を見つめて言う
「てめぇだけが頼りだぜ?良いな?必ず戻って あいつを支えてやってくれ」
ヴィクトール14世が苦しそうに頷く バーネットが苦笑して頷いて言う
「行くぜっ!」

バーネットが飛び出して行く ローレシア兵が振り返り叫ぶ
「貴様っ!?何故 貴様がここに!?」
バーネットがローレシア兵に殴り掛かって言う
「てめぇらが寝ぼけている間に 脱走して来たからに 決まってんだろ!」
ローレシア兵がバーネットに殴り飛ばされ 床に背を打ち付ける バーネットが振り返って叫ぶ
「行け!!早くっ!!」
ヴィクトール14世がハッとして言う
「はいっ!」
ヴィクトール14世が左の通路の先へ走る バーネットがそれを確認して逆方向へ走る ローレシア兵が立ち上がり ヴィクトール14世とバーネットを見て叫ぶ
「脱獄だーっ!!アバロンの王子とバーネット2世が脱獄したーっ!!」
ヴィクトール14世が通路の突き当たりの格子を蹴破る その先を見たヴィクトール14世が 驚いて立ち止まる ローレシア兵の声に呼ばれた 別の兵がヴィクトール14世を追って来る ヴィクトール14世が自分へ向かってっ来る ローレシア兵の後方 遠くに バーネットの姿を見て言う
「バーネット様っ… ぼ、僕が… 父上をっ!」
ヴィクトール14世が外へ向き直り一度強く目を瞑った後 ローレシア兵の手がギリギリ届く前に 掘りへ向かって飛ぶ バーネットがヴィクトール14世の脱出を確認し微笑した後 ローレシア兵の攻撃を回避して逃げ出す やがて行き止まりに到達し振り返る ローレシア兵が立ち塞がりニヤリと笑う バーネットが舌打ちした後 ローレシア兵へ殴り掛かる ローレシア兵がバーネットの攻撃を回避し バーネットの無防備な背を強打する
「うっ…!」
バーネットが一度うめき声を上げて倒れる

【 アバロン城 】

ヴィクトールが玉座の間に戻って来る レリアンが気付き顔を上げて叫ぶ
「ヴィクトール陛下!ローレシアから!宣戦布告が!!」
ヴィクトールがレリアンへ向いて言う
「ああ、問題ない アバロンの宝玉が戻った 例えローレシアがソルベキアのロボット兵を使おうとも ウィザードやプログラマーが間に合わなくとも何とかなる」
レリアンが叫ぶ
「しかし陛下!ローレシアは王子と バーネット殿を人質に取ったと!」
ヴィクトールが言う
「ヴィクトールはアバロンの王子だ 国同士の戦いに置いて 敵の手に落ちてしまう事は 王子たる者の力量が無いと言う事になる アバロンとローレシアの戦いに置いて 人質としての効力は無い」
レリアンと家臣たちが驚く ヴィクトールが強い視線で言う
「そして、バーネットはローレシアの国王 キルビーグと国王の友好条約を交している 例え現在バーネットに王位が与えられていない状態にあっても これを不意にする事は 国王による友好条約を無効化する事になる キルビーグはバーネットを殺せない」
ヴィクトールが向き直って言う
「しかし、アバロンの王である この私から それら愛する者たちを奪おうとするローレシアを 私はこれ以上許しては置けない!直ちに兵を揃えよっ!!我らアバロンは ローレシアを攻略するっ!!」

【 ローレシア国 】

バーネットに回復魔法が掛けられている バーネットがゆっくりと目を開く バーネットの目に屋外の地面が映る バーネットがハッとする バーネットの体が十字架に貼り付けられている バーネットが自身の状態に気付く その横で拷問兵がにやりと笑っていう
「どうだ?父親と同様に 貼り付けにされた気分は?違うと言えば 場所はデネシアではなく ローレシアだ そして 観客も お前ひとりだった過去とは違い 大勢居る」
バーネットが驚き顔を上げる バーネットの目にヴィクトール率いるアバロン部隊が映る ヴィクトールがバーネットの意識が戻った事に気付き一瞬動揺を見せ奥歯を噛み締める キルビーグがその様子を確認して軽く笑んだ後に言う
「よくぞ来てくれた アバロンの王 ヴィクトール13世殿 本日は貴殿の親友である ベネテクトの前王 バーネット2世・ベネテクトを 我らローレシアを騙した罪人として処刑する この者は過去、我らローレシアの前王イシュラーンとの友好条約の条件を不意にし ローレシアからの融資を奪うだけで取り決めた約束を果たさなかった」
ヴィクトールが前に出て言う
「友好条約の条件は 実現可能な範囲のものを約束とする 貴公らローレシアからの提示は その範囲にあらず 民衆の理解を逸脱する約束は 条約の無効を意味する!よって我らアバロンは バーネット2世・ベネテクトの釈放を求め かの者が受け取ったローレシアからの融資を代行し返納する」
キルビーグが表情を歪ませて言う
「我らローレシアの前王は 既にこの世を去っている 貴殿からの返納は この世を去った者へは届けられない 従って 約束の撤回は叶わない!」
ヴィクトールが微笑して言う
「ベネテクトの前王であったバーネット2世・ベネテクトは ローレシアの前王イシュラーン殿と 条約の取り決めを行った だが その条約の相手とされた者はイシュラーン殿ではあらず!その相手は ローレシア国の王 とされている そして、ローレシア国の現王キルビーグ殿 貴公はこの世に存在している!」
キルビーグが驚き言葉を失う ヴィクトールが叫ぶ
「直ちにバーネット2世・ベネテクトを釈放せよ ローレシアの王キルビーグ!さもなくば 我らアバロンは 我らの友人を無罪の上 十字架へ架した 悪しき王として 貴公と貴公の国を攻撃する!」
アバロン兵たちが剣を構える キルビーグが一瞬怯むが改めて威勢を張って言う
「我らローレシアは 貴殿らアバロンの王子を保護している!その我らを攻撃すると申すのであれば!貴殿らの王子が その命を失う事となるぞ!」
ヴィクトールが一瞬怯む キルビーグが叫ぶ
「ヴィクトール13世!アバロンの王子の保護を代償に 先の条約は解消された!だが この男の命と引き換えだ!アバロンの宝玉を渡せ!」
ヴィクトールが言う
「貴公らローレシアが宝玉を集める理由を答えよ!我らアバロンは貴公らの悪戯を聞き及んでいる!その上で この様な悪行を続ける貴公らに 宝玉を渡す訳には行かない!」
キルビーグが叫ぶ
「歴史を忘れたお前たちに 今更何を言っても無駄であると言う事は分かっているのだ!再び我らローレシアが帝国となるその時まで 大人しく我らの作りし勇者伝説を信じておれ!それが出来ぬと申すのなら 現実を持って制するのみ!」
ヴィクトールがハッとする 拷問兵がにやりと笑って言う
「最初からこうすれば良かったのになぁ?待たされた分 たっぷり楽しませてもらうぜ?」
キルビーグがにやりと笑い ヴィクトールへ向いて言う
「兵を動かし この者を救おうというのならやるが良い!その代わりアバロンの王子への保護は失われる事となる!アバロンは友情と慈愛の国 では 貴殿は?どちらを受け持つ王なのか?貴殿に従えし兵らが 我らと共にそれを確かめてくれる!」
ヴィクトールが宝玉を握り締め言葉を飲む ヴィクトール14世の声が響く
「父上!私は無事です!バーネット様を!」
ヴィクトールとキルビーグが振り向きヴィクトール14世を確認する アバロン兵がヴィクトール14世の保護へ向かう ヴィクトールがキルビーグへ向き直る キルビーグが後退る バーネットが笑って言う
「はっはー 残念だったなぁ?キルビーグ!」
キルビーグがバーネットへ向いて言う
「クッ… まだだ!まだこちらには 貴様と言う人質が居る!」
バーネットが口角を上げて言う
「ハッ!俺はアバロンの第二国王だ 敵国に捕まって第一国王の手を煩わせるなんざ 情けねぇ事をするつもりはねぇ!」
キルビーグが言う
「例え貴様が そのつもりであっても アバロンの王は貴様を見捨てる事は出来ぬはず!」
キルビーグが拷問兵へ命じる
「やれ!この者を使い アバロンの王から宝玉を奪い取れ!」
拷問兵が剣を構える ヴィクトールが叫ぶ
「止めろーっ!!」
拷問兵がバーネットに急所を外して剣を突き刺す ヴィクトールが目を見開く バーネットが軽く笑って言う
「おいっ ヴィクトール てめぇはアバロンの第一国王だろ?国の有事に 第二国王を人質に取られた位で 怖気付いてんじゃねぇ!」
ヴィクトールが言葉を失う キルビーグが怒って言う
「かまわん!殺さぬ程度に続けろ!!」
ヴィクトールが息を飲む 拷問兵が次々に剣を突き刺す キルビーグがヴィクトールへ言う
「さあ!宝玉を渡せ!さっさと渡さねば この拷問兵が痺れを切らせ バーネット2世も 父親同様 殺される事となるぞ!」
バーネットが笑って言う
「はっはー 上等だぜぇ!バーネット1世同様に アバロンの役に立てるんなら 俺は何の文句もねぇえ!どうしたぁ!?忠実なるローレシアの元第1部隊 隊長さんよぉ!?ローレシアに利用され続ける事しか出来ねぇ 哀れなデネシア気触れが!やれるもんなら やってみやがれぇえ!」
拷問兵が怒って言う
「父親同様に俺を侮辱する貴様を!これ以上生かしてはおけん!今すぐ貴様も あの憎きバーネット1世の後を 追わせてくれる!!」
拷問兵が剣をバーネットの顔へ向け構える キルビーグが焦って言う
「馬鹿者っ!人質を殺しては意味がない!貴様は先の失態を繰り返すつもりか!!」
拷問兵が怒って言う
「あの男のせいで 俺はローレシアの全てを失った!あの男の息子である こいつを殺せるのなら思い残す事はない!!」
拷問兵がバーネットへ剣を放つ ヴィクトールが宝玉を強く握り叫ぶ
「止めろーっ!!」
宝玉が強く光り バーネットの体に宝玉の光りが纏う 皆が驚く バーネットの姿が消え 黒いドラゴンが現れる 拷問兵の剣がドラゴンの体にぶつかり折れる ドラゴンが空に飛び上がると共にドラゴンの体に刺さっていた剣が全て抜け落ちる 皆が呆気に取られる ヴィクトールがハッとして 剣を引抜いて叫ぶ
「我らアバロンの王子を不法に捕らえ 更に第二国王を傷つけた 我らの敵 ローレシアへ!反撃ーっ!」
アバロン兵が攻撃を開始する

キルビーグが慌てて 魔法を放って姿を消す アバロン兵とローレシア兵の戦いが始まる ローレシア城から砲撃と魔力攻撃が開始される ドラゴンが飛び上がり ローレシア城に備え付けられている大砲を破壊し 魔力使いたちへ炎を放つ ヴィクトールが部隊を率いて先行し 微笑して叫ぶ
「バーネット!君なんだろう!?私は城内へ向かう!城外の部隊へ援護を頼む!」
ドラゴンが降格を上げ バーネットの声が笑って言う
「おう!なんだ分かんねぇが お前らが蟻んこみてぇに見えるぜ!?ローレシア城も犬小屋みてぇだ!このまま全部ぶっ壊してやるぜ!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「それはもう少し待ってくれ 大事な生き証人だ 僕が捕まえに行く!君は 先行部隊の援護を!」
ローレシア城の正門が閉じられる アバロン先行部隊が門を攻撃する ドラゴンが門を蹴破って破壊する ヴィクトールが叫ぶ
「玉座への通路を確保しろ!ローレシア国王 キルビーグを捕らえよっ!!」
アバロン部隊が突入する ヴィクトールがドラゴンを見上げて言う
「後は我々に任せてくれ!バーネット!」
ヴィクトールの上空でドラゴンの姿のバーネットが言う
「だなぁ?この図体じゃ流石に入れそうにねぇ」
ヴィクトールが苦笑して言う
「君を助けたいと強く願い それが叶ったのは良かったけど… 君がそのままずっとドラゴンの姿では 由緒正しいアバロン城も ベネテクト城同様に一度全てを破壊し 大規模に作り直さねばならないね?」
ドラゴンの姿のバーネットが言う
「ドラゴン?俺は今 ドラゴンの姿になってるってぇのか!?」
ヴィクトールが微笑して言う
「例え姿は変わっても 君が生きていてくれた事が何よりだよ バーネット」
ドラゴンの姿のバーネットが苦笑して言う
「そらぁ まぁ… そーかもしれねぇが… やっぱり俺は 人の姿の方が良いぜ…」
ドラゴンの体が白く光り バーネットが落下して言う
「のわっ!?うおーっ!」
バーネットが地面に落ちる ヴィクトールが驚き慌てて駆け寄って言う
「わーっ!バーネット!!大丈夫かい!?バーネット!?バーネット!」
バーネットが打ちつけた頭を擦りながら言う
「イテテ… あ、ああ、大丈夫だ心配ねぇよ アバロン第一国王のくせに 騒ぐんじゃねぇ!」
ヴィクトールが呆気に取られた後 微笑んで言う
「バーネット、君は アバロンの… その歴史を知っていたんだね?」
バーネットが視線を逸らして言う
「あぁ~ 忘れてた… けど、あいつが言いやがったから思い出したんだ 『アバロン第一国王の父上が 第二国王のバーネット様を必ず助けます 信じて下さい』だってよ?」
ヴィクトールが呆気に取られてから微笑んで言う
「うん、ヴィクトールの言った通り 僕は 第二国王の君を助けたよ バーネット?」
バーネットが一瞬呆気に取られた後 怒って言う
「遅っせ~んだよ!後一歩で 死ぬ所だったじゃねぇえかぁあ!」
ヴィクトールが照れて言う
「ごめんバーネット、僕は宝玉の使い方が 良く分かってなくて?それでも無意識に 君をドラゴンの姿に出来たのは 我ながら凄いと思うのだけど?」
ヴィクトールが笑顔になる バーネットが怒って言う
「知るかぁあ!お陰で俺は また城暮らしが出来なくなる所だったじゃねぇえかぁあ!?アバロン第二国王の癖に ドラゴンで野ざらしにされるかと思ったぜ!!」
ヴィクトールが表情を渋らせて言う
「心外だなぁ?もし君が元の姿に戻れなかったら 僕はちゃんと城が出来るまでの間 雨風を凌げる程度のものをあつらえさせるつもりだったよ?」
バーネットが衝撃を受けて言う
「その程度かよっ!?…って んな事言ってる場合じゃねぇ!」
ヴィクトールが笑顔で気を取り戻して言う
「うん、ヴィクトールも君も 無事取り戻したし 次は…」
2人がローレシア城内へ向き直る

【 アバロン城 玉座の間 】

レリアンと家臣たちのもとに ヘクターがルーゼックを連れて来る ヘクターがレリアンたちを見て言う
「あー そっか?ヴィクトールはローレシアに行っちまってんだよな?俺らも行った方が良いか?」
レリアンが言う
「ローレシアの戦いは既に幕を下ろしました 我らアバロンの圧勝に終ったそうです」
ルーゼックが驚く ヘクターが笑顔で言う
「お!そっか!まぁそーだよな?今更 ローレシアなんて 屁でもねーってもんだぜ!」
レリアンがルーゼックへ冷たい視線を向けて言う
「ローレシアはアバロンに敗北致しました お兄様、様々な策を仕掛けて来たお父様も 引退されました もうこれ以上 デネシアがローレシアに仕える必要はありません これを機に デネシアは今後はアバロンと共に」
ルーゼックが怒って言う
「黙れっ!裏切り者のデネシア王女がっ!貴様がアバロンに寝返る事ぐらい 最初から分かり切っていた事なのだっ!」
ヘクターが振り返り怒って言う
「んだと!?てめー!俺たちのアバロンの王妃様に文句があるんなら 俺が相手をしてやるぜ!」
ヘクターが剣を抜いて構える ルーゼックがヘクターへ怒りの視線を向ける レリアンが制して言う
「お待ちなさい ヘクター隊長」
ヘクターがレリアンへ向いて言う
「なんでだよ!分からず屋の兄貴は 一発殴ってやった方が良いぜ!?」
レリアンが苦笑して言う
「歴代のデネシア王女は 皆アバロンへ嫁ぎ そしてデネシアを裏切っていた事は史実なのです この者が言っている事は 間違いではありません」
ヘクターが表情を困らせるが 間を置いて改めて怒って言う
「そーかもしれねーけど!せっかく妹が兄貴を庇ってやろうって言うんだぜ!?素直に受け取れってーんだ この頑固兄貴っ!」
ルーゼックがヘクターへ向いて言う
「黙れっ!無礼者っ!裏切り者に庇われる位なら 極刑にでもされた方がマシだっ!ローレシアが落とされたと知った以上 我らデネシアが 無様に生き延びる事など許されぬっ!」
レリアンが反応して言う
「お兄様、どうか デネシアとローレシアの繋がりを 私にお話下さい デネシアの王はこのアバロンの友人であった バーネット1世・ベネテクトを無罪の上で処刑した重罪人となっております 従って 極刑を望まれるのでしたら かの者と同じ刑に処されてしまいます どの様な目に会うかは御存知の筈です」
ヘクターが口角を上げて言う
「その極刑にあいてーんなら 今すぐにでも俺が執行してやるぜ?さっさと喋っちまえってーんだよ!」
ヘクターが剣を向ける ルーゼックが表情を怒らせる 伝達の兵が現れ敬礼する レリアンが向いて言う
「他国への漏洩に問題のない伝達でしたら 伝えなさい」
伝達の兵が再び敬礼して言う
「はっ!今 世界大戦の黒幕とされた シュレイザー国のチョッポクルス国王が アバロンへの亡命を求めております かの国からは既に敗戦の狼煙が掲げられております」
レリアンがヘクターへ言う
「分かりました、アバロンはかの者の亡命を受け入れます ヘクター隊長 聞いての通りです 直ちにシュレイザー国へ向かい 亡命者の保護に当たりなさい」
ヘクターが気軽に言う
「んー… 分かった けどよ?レリアンも 兄ちゃんだからって油断するなよ?」
レリアンが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「そうですね、忠告を受け取ります」
ヘクターが軽く笑い 玉座の間から出て行く

城門外

ヘクターがアバロン城から出て来る ヘクターの横にプログラマーがホログラムを表して言う
『シュレイザー国はヴェルアロンスライツァーが1人で乗り込み 制圧してしまったらしい』
ヘクターが一瞬驚いた後言う
「ヴェルが?ああ… そっか?確かヴェルの愛しの姫さんが捕まってた国がシュレイザーだったよな?」
プログラマーが言う
『シュレイザー城にはスプローニ国とツヴァイザー国の部隊も配備されていた …シュレイザー国の部隊は役に立たないからな 一番の難所となったのがアンネローゼ女王の捕らえられていた シュレイザー城 最深部の幽閉室前だったそうだ』
ヘクターが疑問して言う
「あ?シュレイザーに他国から応援が来てたんなら 一番の難所はそんな奥じゃなくて 玉座の手前とかだろ?」
プログラマーが言う
『配備命令では確かに玉座とその手前に重点が置かれていた しかし、その命に従わず敵兵の目標を的確に捕らえ 自らの考察で行動した一兵士が居た』
ヘクターが衝撃を受け 呆れて言う
「あー… それってもしかして」

回想

シュレイザー国 最深部 幽閉部屋前

ヴェルアロンスライツァーが剣を下げて言う
「貴殿とは戦う謂れはない ここはシュレイザー国 貴殿は貴殿のへ国へ戻り その国を守るべきだ」
ロキが銃を両手に持っていて言う
「…俺は一兵士に過ぎない スプローニと同盟を結ぶシュレイザーの死守を命じられた以上 俺はスプローニの為に その命を遂行する」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「その貴殿の国が守る様 命じたシュレイザー国は 既に我が手により制圧された 残された一兵士である貴殿は シュレイザー国の敗戦を受け入れ祖国へ戻るべきだ」
ロキが言う
「…卿の目的が果たされるまでは シュレイザー国は制圧された事にはならない そして俺は卿の目的がこの部屋に幽閉されている ツヴァイザーの女王である事を知っている」
ロキが銃を構えて言う
「…俺を倒し ここを切り抜ける事が出来ぬ限り 卿の目的は果たされない スプローニは同盟国を守り通した事になる」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「私は 貴殿の命を奪いたくはない しかし…」
ヴェルアロンスライツァーが剣を構える

回想終了 

ヘクターが額を押さえて言う
「あちゃー …ったく あの2人らしいってー言えば それまでだけどよ?何でもう少し だらけて考えられねーんだろーな?」
プログラマーが苦笑して言う
『ロキは恐らく 本気でヴェルアロンスライツァーを止める気は無かった 実力の90%以上を使い 戦ったヴェルアロンスライツァーに対し ロキはその実力の70%にも満たない戦いを行い ロキはヴェルアロンスライツァーに倒された …とは言え 身動きの取られない程度に 痛め付けられただけで命に別状はない 安心しろ』
ヘクターが苦笑して言う
「元々 心配なんかしちゃいねぇけどさ?それならロキは しばらく戦えねーんじゃねーか?」
プログラマーが苦笑して言う
『彼は現在 スプローニ国内で治療を受けている シュレイザー国での任務が終了した後に …からかいにでも行くか?』
ヘクターが笑って言う
「おう!ヴェルの奴も連れてってやろうぜ?」
プログラマーが衝撃を受けて言う
『いや… それは止めて置け』
ヘクターが軽く言う
「所で、もう1人のデスはどうしたんだ?お前らが2人で居なくなるなんて… まぁ心配はしなかったけどよ?俺も驚いたぜ?」
プログラマーが微笑して言う
『ウィザードは現在 ヴィルトンの港町にあるゴミ箱から 順調にアバロンへ向かっている ローレシアとの大戦が終了し 時間に余裕が出来た事もあり 陸路を使用して戻るとの事だ』
ヘクターが疑問して言う
「あ?ヴィルトンのゴミ箱からって?」

【 ローレシア国 領域 】

道中 アバロンへ向かうヴィクトールたちの下にウィザードが現れる ヴィクトールが一瞬驚いた後軽く微笑んで言う
「おや?誰かと思えばデスじゃないか?こんな所で会うなんて 一体 どこへ行ってたんだい?ちょっと元気が無いみたいだけど?」
ウィザードがヴィクトールへ向いて言う
「ヴィルトンのゴミ箱の中で眠っていた」
ヴィクトールが衝撃を受けて問う
「え?ゴミ箱の…?」
バーネットが軽く笑って言う
「はっはー アバロンのウィザードはゴミ箱で寝るのかぁ?そいつに比べれば まぁ俺の地下室暮らしの方が マシだったかもな?」
ウィザードが疑問して言う
「『アバロンのウィザード』とは?私はガルバディアのウィザードだが?」
ヴィクトールが少し真剣な表情で言う
「実は、ソルベキアはロボット兵の他に ウィザードの研究も行っていたらしいんだ それが成功したのかどうかまでは 分かっていないのだが その件で ガルバディアに連絡を取った所 ガルバディアはウィザードの研究を全て抹消したと そして、君の事も正式に アバロンへ譲渡したいと ガルバディア国王が進言してくれたんだ」
ウィザードが首を傾げて言う
「『進言』とは?ガルバディアは いつからアバロンの配下になったのだ?」
バーネットが口角を上げて言う
「正式にはまだなっちゃいねぇ… だが、もうすぐだぜ?アバロン帝国様の誕生がなぁ?」
ウィザードがヴィクトールへ向く ヴィクトールが軽く微笑んで言う
「デス、もうすぐ今世界大戦の最後の戦い アバロンとソルベキアの対戦が行われる 君には『アバロンのウィザード』として 力を貸してもらいたいのだけど 頼めるだろうか?」
ウィザードが瞬きをして考えた後言う
「私はアバロンの民だ その私が アバロンと他国との戦いに アバロンのウィザードとして参加するのは 当然の事 それなのにお前は 私に力を『貸せ』と命令しない そんなお前は私は嫌いだ」
ヴィクトールとバーネットが驚き顔を見合わせた後 軽く笑い ヴィクトールが言う
「うん、では、命令だ 我らアバロンのウィザード 次のソルベキア戦に お前の力を貸せ」
ウィザードが笑顔で言う
「良いだろう、貸してやる」
バーネットが衝撃を受けて叫ぶ
「何で命令受けといて てめぇえがお高けぇえんだよ!この間抜けウィザード!!」
ウィザードが衝撃を受けて叫ぶ
「私を『間抜けウィザード』と呼んで良いのは お前だけだ!」
バーネットが一瞬疑問した後叫ぶ
「あぁ?だ… だぁあから!そー言う所が 間抜けだっつってんだ!この間抜けウィザードがぁああ!!」
ヴィクトールが呆気に取られた後に笑う

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