上 下
12 / 61

12-3 沢山の喜びと 喜びの代償

しおりを挟む
【 アバロン城 】

ヴィクトール12世が椅子に座り窓の外を眺めて居る 窓の外に天使が現れるヴィクトール12世が気付き 軽く腰を浮かせて窓を開ける 天使が室内に入ってヴィクトール12世へ身振り手振りで事を伝える ヴィクトール12世が柔らかな表情で眺める 天使が少し長い説明を終えて疲れる ヴィクトール12世が微笑んで言う
「…そうか、ベネテクト国は 何とか持ち堪えたか」
天使が衝撃を受け 怒って身振り手振りを再開する ヴィクトール12世が微笑んで言う
「私はもう ローレシアの悪戯など どうでも良いのだよ ローレシアが宝玉を集めて その島へ魔力を送っていようがいまいが… もう全て終ってしまった 今はただ 彼が守ってくれたこのアバロンと 彼の残したベネテクト国 そして それを引き継いだバーネット2世殿が 無事で居てくれれば それで良い」
天使が首を傾げ 何かを伝える ヴィクトール12世が微笑んで頷き言う
「ああ、もちろん 我が息子の事も大切に思っていよ 私と同じ過ちを繰り返している事も分かっている だが… それを修正するのは 今の私には難しい…」
天使が頬を膨れさせる ヴィクトール12世が寂しそうに微笑む 扉がノックされヴィクトールの声がする
「父上、宜しいでしょうか?」
天使が衝撃を受けて焦る ヴィクトール12世が軽く笑って言う
「シュライツ、お前にはとても助けて貰った ただの一度 声を掛け励ましただけの事で お前は多いにその時の恩を返してくれた ありがとう、これからは自由に生きると良い」
ヴィクトール12世が窓を開ける 天使が外へ向かい一度振り返ってから逃げていく 扉が開かれヴィクトールが入って来て言う
「父上?また… 正体不明の生物とお話を?」
窓の外で天使が怒っている ヴィクトール12世が窓を閉めながら軽く笑って言う
「はっはっは… ああ お前たちにはその様に見えるのかもしれないが 私には… まるで天使の様に見える」
ヴィクトールが苦笑して言う
「私は幼い頃に一度見た記憶しか有りませんが 赤い瞳がとても… 恐ろしく ひと目見た瞬間に 城の外まで逃げ出した記憶が…」
ヴィクトールが身を抱えて震える ヴィクトール12世が軽く笑って言う
「彼もガルバディアの実験体だ お前がガルバディアから奪ったウィザードと同じ… 瞳の色も同じだが 何故お前はウィザードを恐れないのだ?」
ヴィクトールが首を傾げて考えて言う
「恐らく 幼少時の私は 全体を見る余裕が無く その瞳だけを見つめてしまった為かと… それから父上、ウィザードは『奪った』のでは無く 拝借したのです」
ヴィクトール12世が軽く笑って言う
「同じ事であろう」
ヴィクトールが首を傾げて言う
「そうだっけ?」
ヴィクトール12世が軽く微笑んで言う
「それで、私に何か用なのか?私はもう… 何の役にも立てぬぞ?」
ヴィクトールが微笑んで言う
「御冗談を、デネシア城攻略の際は 現役時代のアバロン国王のお力を 存分に振るわれていたではありませんか?」
ヴィクトール12世が苦しそうに微笑んで言う
「ああ… もしかしたらデネシア国の発表は嘘で 本当は… 彼が生きて居てくれるのではないかと 僅かな望みを信じたが故だ、その希望も 彼の息子 バーネット2世の口から 真実を告げられ潰えてしまった…」
ヴィクトールが一度視線を落としてから言う
「父上、その… バーネット1世様の命を奪った デネシアの元友好国であるローレシアが 勇者を選出し 各国の宝玉を集め 悪魔力の元凶である魔王を倒すべく旅を行っています しかし、その一方では ローレシアのそれは ただの名目であり、実際には各国の宝玉を奪い 宝玉の力を持って 世界を統一するつもりなのではないか と言う見解も ここへ来て出て参りました」
ヴィクトールがヴィクトール12世へ顔を向ける ヴィクトール12世は窓の外を見ている ヴィクトールが続ける
「私はデネシア国から妃を向かえるに当たり その頃から後者の考えを持っていました 故に あえてデネシア国からの妃を向かえ受ける事で デネシア国及びローレシアの動向を確認しようと」
ヴィクトールがヴィクトール12世を見つめて言う
「もちろん、ためらいは有りました 我がアバロン国の友人の命を奪った デネシア国と友好条約を交す事への しかし、バーネット2世は私など 及ばない程の知性の持ち主です 彼ならば 私の考えなど通り越し理解してくれるものと 信じ…」
ヴィクトールが視線を落として言う
「しかし、彼はそれ以降私との連絡を一切受け付けては くれなくなってしまいました… 父上、私は… 間違っていたのでしょうか…?」
ヴィクトール12世が目を閉じ一度下を向いてから 正面を見据えて言う
「ヴィクトール、お前達は一国の王だ 故に 己の私情に流される事は許されない お前も、彼も判っている しかし、そうであっても 受け入れるのに苦しい事もある バーネット2世は目の前で 父親を殺害されたのだ その苦しみは私にもお前にも解りかねる」
ヴィクトールが落としていた視線を上げヴィクトール12世を見る ヴィクトール12世が微笑んで言う
「だが、彼はあのバーネット1世の息子だ 必ずや その苦しみを乗り越え 再びアバロンに… お前に力を貸してくれる 何も心配する事は無い ヴィクトール お前は 我らアバロンとベネテクトの友情を信じ そして、彼を信じ続けろ」
ヴィクトール12世が再び窓の外へ視線を向ける ヴィクトールが涙を堪えて目を閉じてから 再びヴィクトール12世を見て言う
「分かりました、父上っ 私は 彼と、我らアバロンとベネテクトの友情を 信じます!」
窓の外を眺めているヴィクトール12世が悲しそうに微笑む

【 ベネテクト城 】

バーネットがベッドに横たわっていて 体中に包帯が巻かれた状態で眠っている

夢の中

バーネット1世がモフュルスへ言う
「モフュルスっ!何してやがるっ!?さっさと城を ぶっ壊せっ!!」
モフュルスが困った顔でバーネット1世へ言う
「しかし、バーネット陛下…」
バーネット1世が手を払って叫ぶ
「うるせぇえ!!やりやがれぇえっ!!責任は 全て俺が持つ!!」
ベネテクト城が大量の爆薬の破壊音と共に爆破される その瓦礫が全てベネテクト城の北側へ落ち バーネットとバーネット1世が見守る中崩れ去る バーネットが泣いて叫ぶ
「ちくしょぉおお!!アバロンなんか!!親友でも 何でもねぇええ!!」

獄中

バーネット1世がデネシアの拷問官に鞭打たれ 牢の床に突き飛ばされる バーネットが駆け寄る 檻が閉められる バーネットが声を掛ける
「親父っ!大丈夫かっ!?…ちくしょぉ あいつら!他国の国王に対する条約を知らねぇえのか!?」
バーネット1世が咳込みながら身を起こし壁に寄り掛かる バーネットが横に行って言う
「親父!アバロンはまだなのか!?何でさっさと助けに来ねぇえんだよ!?」
バーネット1世が軽く笑って言う
「はっは… そう急ぐんじゃねぇよ… 国ってぇのは そう速く動くもんじゃねぇ… デカけりゃデカイほど な… だから、 うちみてぇな小せぇ国が必要なんだ…」
バーネットが一瞬間を置いてから言う
「けどっ!早くしねぇと 親父が殺されちまうっ… アバロンはデカくても 友情と慈愛の国なんだから こんな時ぐらい さっさと動いて 親父を助けに来るべきだっ!」
バーネット1世が上を向いて笑ってから言う
「…っはは …そうだなぁ ヴィクトールの奴が来やがったら… 遅せぇ~んだよ… てぇ…一言言って やらぁなぁ?…ゲッホゲホッ!」

現在

バーネットが天上を見つめて涙を流している

【 アバロン城 】

ヘクターが玉座の間で両手を頭の後ろに回して周囲を見渡している そこに甲冑姿のヴィクトールがやって来て言う
「待たせてすまない、ヘクター」
ヘクターがヴィクトールへ向いて言う
「ああ 待ちくたびれたぜ?って 言いてートコだけど 実は俺もさっき来たトコなんだ 誰かさんと違って大恋愛結婚だとよぉ?朝、家を出るまでに時間が掛かっちまうんだよなー?」
ヘクターが言い終ると共に照れながら笑う ヴィクトールが苦笑して言う
「ふふっ それは羨ましいな?だが、普段はそうでも構わないが 有事の際は一番に飛び出して来て貰え無いと困るぞ?ヘクター、君は我がアバロン国最強部隊の隊長なのだから」
ヘクターが笑んで言う
「当ったり前だっ!何しろこのアバロンには 俺の愛する世界一の嫁さんと 世界一のプログラマーの相棒と 世界一のウィザードの兄貴に加え もう2人 世界一の大剣使いになる息子が生まれるんだ!俺はその全部と 仲間の皆が住む このアバロンを守らなきゃなんねー!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「双子の息子だと言う事が分かっているのはともかく、世界一の大剣使いになれるかどうかは 生まれてからずっと後じゃないと 分からないじゃないか?」
ヘクターが笑顔で言う
「なれるに決まってるだろ!?俺の息子だぜ!?2人揃って世界一の相棒で 世界一の大剣使いになる!」
ヴィクトールが微笑して言う
「君とデスの姿を見て どちらかがプログラマーになりたい等と言ったら どうするんだい?」
ヘクターが一瞬呆気に取られてから表情を悩ませて言う
「え?片方がプログラマーに…? …?」
ヘクターが首を傾げるヴィクトールが苦笑して言う
「さぁ、それは生まれてからのお楽しみだ 今はベネテクト国へ急がなければ …ほら、行くぞ!ヘクター」
ヴィクトールが去る ヘクターがハッとして後に続く アバロン城から出て行く2頭の馬 ヴィクトールとヘクターがベネテクト国へ向かう

【 ベネテクト城 】

バーネットが包帯の減った状態でベッドに寝転んでいる 扉がノックされ モフュルスが入室して言う
「バーネット様、少し動ける様でしたら ベネテクト城の再建作業状況を 確認して頂けませんでしょうか?」
バーネットがモフュルスに背を向けて言う
「モフュルス、扉はしっかり閉めやがれ 騒音がうるさくて 眠れやしねぇ」
モフュルスが顔を向けた先 扉は薄く開いている モフュルスが扉へ手を掛け 全開にする 騒音が増す バーネットが怒って飛び起きて言う
「閉めろっつてんだろぉお!!何開けてやがるんだ てめぇええはぁああ!?」
バーネットの身体に痛みが走り表情を歪ませる モフュルスが軽く笑って言う
「それだけ回復なされたのでしたら もう起きられても 宜しいかと思われますが?」
バーネットが再びベッドに横になって言う
「ハッ!起きて何しろってぇんだ?ベネテクト国内の支援は十分だろ 魔物の量も確認した 現状維持で問題ねぇ」
モフュルスが微笑して言う
「ベネテクト国内の支援につきましては 変わらず良くご確認されていらっしゃいますが 折角アバロンからの支援を得て 再開されたベネテクト城の作業状況の確認は まだ一度もなされていらっしゃらない御様子ですので」
バーネットが表情を渋らせて言う
「知らねぇよ… ベネテクト国に有るってぇだけで 実質アバロン国のメイデ王女の城だろぉが…」
モフュルスが苦笑して言う
「そうですね… しかし そのメイデ王女が戴冠される お年になるまでの間は バーネッ…」
バーネットが勢い良く起き上がり モフュルスの言葉を制して言う
「うるせぇええ!!んな城になんざ 入りやがって堪るかぁあっ!!」
バーネットが再びベッドへ倒れて言う
「クソがっ… あの裏に有るアバロンへの道さえなけりゃぁ 意地でも別の場所へ移させたってぇえのに…」
モフュルスが表情を落として言う
「バーネット様… ヴィクトール殿はきっと 本気で御自分の娘を ベネテクト国の女王にするおつもりは ないのだと思われます 恐らく機を見てバーネット様へ」
バーネットが目を瞑って言う
「そうかもしれねぇ… いや、そうだろう アイツの事だ… けど 俺は… 自分の手で このベネテクト国を守りたかった」
モフュルスがバーネットへ顔を向ける バーネットが軽く笑って言う
「…へっ これもまた下らねぇプライドだな?分かった 確認に行く」
バーネットが起き上がる モフュルスが微笑んで言う
「悪魔力排除協定の本拠地となったアバロンから 全国へ当て 祠へ結界を張る様 達しが出されております 宝玉を用いて行わねばならないとの事 バーネット様、病み上がりのお体では 少々酷かもしれませんが これはベネテクト国に住む民にとっても必要な事ですので」
バーネットが少し驚いてから 怒ってモフュルスへ叫ぶ
「てめぇええ!!モフュルス!!何でそぉお言う事を さっさと言わねぇええ!?」
モフュルスが一度驚いてから 苦笑して言う
「申し訳有りません、ただ この結界を張る作業には とても体力と精神力を必要とする為 バーネット様のお身体が 回復されてからの方が宜しいかと 恐らくまだ…」
モフュルスの言葉を聞き終える事もなく バーネットは急いで宝玉を持って部屋を出て行く モフュルスが呼び止めようとするが バーネットは走り去る 

バーネットが宝玉を手に地下室からの階段を駆け上がって来て その勢いのままに建設作業中の城の裏へ走って向かう 途中で速度が落ち、歩き始める やがて立ち止まり 城壁を背に座り込む 息を切らせながら空を見上げる 者の数秒 息を整えてから強く目を閉じて立ち上がり 身体の痛みに堪えながら歩き進む

宝玉の祠 

バーネットが息を切らせつつ 何とか辿り着き 祭壇の前まで行く 祭壇の前で手にしている宝玉を確認してから それを祭壇へ向け 目を閉じて強く念じる 宝玉が白く光り 祭壇の周囲を取り囲む しかし 宝玉と祭壇の光は徐々に弱まり やがて消えてしまう バーネットが地に膝を着き 続けて両手を着く 宝玉が地を転がる バーネットが息を切らして言う
「…はぁ はぁ …ち くしょ う はぁ はぁ…」

バーネットの部屋

バーネットが息を切らせつつ戻って来る モフュルスが慌てて駆け寄って言う
「そのお体では まだ 無理で御座います もう2、3日安静になさって 回復を待たれるか もしくは…」
モフュルスが言葉を区切る バーネットが机に手を付き 椅子に腰掛けてから言う
「どこでも良い、ローレシア領域の魔力者でも 連れて来て張らせろ こいつを使わせて…」
バーネットが宝玉を机に置く モフュルスが表情を渋らせて言う
「ローレシア領域の魔力者を他国へ招き 宝玉を使用しての大掛かりな結界を張るとなりますと 事前にローレシア国王へ取り次がねばなりません」
バーネットが一瞬、間を置いて言う
「…なら連絡する 通信を繋げ」
モフュルスが少し驚いて言う
「よ、よろしいのですか?ローレシア国のイシュラーン国王は 当時デネシア国を使い…っ」
バーネットが顔を横に振って言う
「ああ、分かってる デネシアを操って親父を殺させた張本人だ…っ だが、ベネテクト国の民を守る為なら 俺が野郎に頭下げようが何しようが 親父だって許してくれる筈だ」
モフュルスが一瞬、間を置いてから頷き 通信機を操作する バーネットが机に突っ伏して息を整える

【 ベネテクト領域 】

ベネテクト国へ入ったヴィクトールとヘクター ヘクターがベネテクト城を見上げて言う
「なぁ?ヴィクトール!?折角なんだし バーネットに 挨拶するのが先でも良いんじゃねーか?」
ヴィクトールがベネテクト城を見上げてから ヘクターへ向いて言う
「モフュルス殿の話では バーネットはまだ回復していないらしい それに…」
ヴィクトールが言葉を止める ヘクターが馬を近づけて問う
「それに 何だよ?」
ヴィクトールが間を置いてから視線を落として言う
「彼とは… まだ通信が繋がらないんだ」
ヘクターが反応して一度視線を離してから 再びヴィクトールへ向けて言う
「かんけーねぇだろ!?直接会って話す方が よっぽど解決になるっ!なぁ!行こうぜ!?」
ヴィクトールが落としていた視線を上げ 苦笑してヘクターへ向いて言う
「先に結界を張ろう、話をするのは その後で… ベネテクト国の民を守るためでもある!バーネットも喜ぶよ!」
ヘクターが首を傾げて言う
「はぁ?そんなもんかぁー?俺なら最初に行くけどなぁ?お前だって昔なら先に行ってただろ?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「うん、昔なら 真っ先に向かって… きっと一緒に行っていた筈さ …けど、今はお互い国王なんだ まずは国と民を守らなければ」
ヘクターが悩む表情で言う
「う~ん まぁ俺には国王様のお偉い仕事なんて分からねーけどよぉ?折角アバロンの王とベネテクトの王なんだから それこそ 力を合わせて一緒に …の方が良い気がするけどなぁ?」
ヘクターが悩む ヴィクトールがヘクターを見て苦笑する

【 ベネテクト城 】

バーネットが机に突っ伏したまま居る モフュルスが通信を終えて言う
「バーネット様、イシュラーン国王は現在ソルベキア国へ出向いてしまっている為 夕刻まで連絡は行えないとの事です」
バーネットが顔を上げて言う
「ハッ!こっちが珍しく頭下げてやろうってぇ時に …まぁ もしかしたら てめぇの国の事位ぇ てめぇで賄いやがれって 親父からの指示かもな?」
バーネットが伏せていた身を上げて言う
「夕刻だったら 明日でも良い 1日休んで… もう一度試す」
モフュルスが苦渋の表情で言う
「バーネット様、余りご無理をなさらずに… 一度アバロンへ連絡を入れては如何でしょうか?ヴィクトール陛下も 今は悪魔力対処協定の活動で お忙しいかと思われますが 少しでもお時間が有れば バーネット様に代わり 祠への結界を 執り行って下さるかもしれません」
バーネットが壁に在るバーネット1世の肖像画を見て言う
「アバロンの王女が戴冠出来る年になるまで 後15年だぁ… もしかしたら国の名前も変わっちまうかも知れねぇ せめて… このベネテクト国がベネテクト王家の名前である間ぐれぇは 俺がやりてぇんだよ… 少なくても俺の指示でやらせてぇ… なぁ モフュルス… 俺はベネテクト国王として… 失格なのかぁ?」
モフュルスが少し考えてから言う
「祠の悪魔力に関しましては バーネット様が身を持ってご確認された事でも有りますので なるべく早く処理をした方が良いかと思われますが… 後1日2日ほどなら差ほど大きな違いは 現れないかもしれません 多少はあったとしても その程度なら… きっとベネテクトの民も ベネテクト国王のわがままを 聞き入れて下さるのではないでしょうか?」
バーネットが苦笑して言う
「っはは… 流石バーネット1世が愛した国だ 王が愛した分 民も返してくれる… 俺は この国の王の座を下ろされたって やっぱり この国の民を愛するぜ…」

【 ベネテクト国 宝玉の祠 】

ヴィクトールが宝玉を使い 祠に結界を張っている 間もなくして結界が張り終わる ヴィクトールが息を吐いて言う
「よし、成功だ」
ヴィクトールの後ろで 両手を頭の後ろに組んで 暇そうに待っていたヘクターが軽く笑って言う
「お?終ったのか?なら、早速バーネットの見舞いに行こうぜ?」
ヴィクトールが振り返りヘクターへ顔を向けて言う
「うん… そうしたいけど 次はアバロンの祠へ向かい 結界を張らなければ」
ヘクターが衝撃を受け 驚いて言う
「あぁあ!?アバロンの祠へは まだやってねーのかよっ!?」
ヴィクトールが苦笑して照れながら言う
「実はやろうとしたのだけど… 上手く行かなくて?宝玉は魔力のない者でも魔法を使える 便利な道具ではあるけれど やはり魔法を使わない者が それを行おうとすると それを行おうと思う意志の強さが 問題になってしまうらしいんだ」
ヘクターが疑問して一瞬考えてから慌てて言う
「て、てー事はっ!?アバロンの祠には 結界が張れなかったのに ベネテクトの祠には張れたって…?そりゃぁどー言う事だよ!?アバロンの王様よっ!?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「あはは… どうも集中して長時間 同じ事をしていると バーネットの事が気になっちゃって?」
ヘクターが衝撃を受けてから 大剣を引抜きヴィクトールへ向けて言う
「いちアバロンの民として許せねぇーっ!お前ーっ!今すぐヴィクトール14世に王位を継承させろっ!!」
ヴィクトールが考えながら言う
「たぶん1歳で国王は難しいと思うけれど…?」
ヘクターが叫ぶ
「頼むから!まず 否定してくれーっ!!」

【 ベネテクト城 地下 】

バーネットが机に身を伏せたまま眠っている モフュルスが毛布を掛けて苦笑してから 部屋を出て行こうとした所へ通信が入る 一瞬立ち止まるが そのまま部屋を出て室外で着信している 間もなくモフュルスが部屋に飛び戻って来て 慌ててバーネットを起こして言う
「バーネット様!!大変でございます!!バーネット様!!」
バーネットが寝苦しそうな顔でモフュルスへ向く モフュルスが慌てたまま言う
「アバロンが!!ソルベキアの襲撃を受けました!!」
バーネットが目を見開き飛び起きて叫ぶ
「んだとぉ!?状況はっ!?」
モフュルスが一瞬ためらう バーネットがハッとして 勢いのままに立ち上がっていた身体を椅子に静めながら言う
「…てぇ、俺が慌てる必要なんざ ねぇだろ?…大体、アバロンとソルベキアの一騎打ちなら 釣りがくらぁ それに、万が一援護が必要なら それはデネシアの役目だ」
バーネットが息を吐き机に肘を突いて頭を抱える モフュルスが焦りながら言う
「そ、それがっ!バーネット様!!」
バーネットがモフュルスへ視線を向ける

バーネットが地下からの階段を駆け上がり 外へ出て 祠へ向かう道を見る そこにアバロンの馬が2頭待たされている バーネットが目を見開き片手に持つ宝玉を握り締めて 祠へと走る 

バーネットが祠へ辿り着き 勢いのままに中へ入ろうとする その祠の中から ヴィクトールとヘクターが現れる バーネットが足を止め目を見開く ヴィクトールも足を止めて息を飲む 後ろを歩いていたヘクターが疑問してから ヴィクトールの前に居るバーネットに気付き微笑んで言う
「よう!バーネット!なんだ お前 元気そうじゃねーか?折角 代わりに祠の結界とか言うヤツをやったのによ?無駄足だったな?ヴィクトール?」
ヘクターがヴィクトールへ顔を向ける ヴィクトールが硬直から解かれ軽く笑って言う
「あ… はは…?そ、そうみたいだね?…バーネット?勝手にしてしまって ごめん… モフュルス殿がバーネットの回復は まだだと言うものだから… 僕が代わりに結界を張りに来たんだ」
ヴィクトールがバーネットへ笑顔を向ける バーネットが驚いた表情のままヴィクトールを見ていた視線を その後ろの結界へ向け更に驚く ヴィクトールがバーネットの視線の先を一度確認してから バーネットへ顔を向ける バーネットが同様にヴィクトールへ視線を戻して言う
「てめぇが… 結界を張ったのか…?ベネテクトを守る 結界を…」
ヴィクトールが微笑んで言う
「うん!これでベネテクトの民は 安心だね?バーネット?」
バーネットが間を置いて言う
「…てんじゃねぇ」
ヴィクトールが一瞬驚き 再び微笑んで言う
「え?何?バーネット?」
バーネットがヴィクトールへ向いて 怒って叫ぶ
「勝手な事っ!してやがるんじゃねぇええ!!」
ヴィクトールが驚いて一歩後退る 驚いたヘクターが無理に笑って言う
「お、おい?怒る事ねーだろ?そりゃー 勝手に人んち入って 何かするってーのは良くねーかもしれねーけど… ヴィクトールだって友好国のベネテクトが心配で」
ヘクターが言いながらバーネットへ近づく バーネットがヘクターへ向いて言う
「心配だとぉおっ!?俺には!?バーネット2世・ベネテクトには!!この国を任せられねぇえ って言うのかぁあ!?」
ヴィクトールが驚き一歩近づいて言う
「ち、違う!バーネット、僕はっ 君を信じて…っ」
バーネットがヴィクトールへ向いて叫ぶ
「信じてるだぁあ!?ハッ!その結果がこれかぁあ!?てめぇえは!俺の事なんざ信じちゃいねぇえんだっ!!だから勝手に来て 勝手な事してやがんだろっ!?」
ヘクターが怒って言う
「おいっ!何言ってんだお前!魔物化の影響は消えたんじゃねぇのかよ!?折角ヴィクトールが苦労して お前の王位を取り留めてやったってーのに!」
ヴィクトールが慌ててヘクターへ言う
「ヘクター!それは…っ!」
バーネットが衝撃を受け 怒って叫ぶ
「うるせぇええ!!何が王位だ!?15年間 アバロンの王女の… あのデネシアの王女のガキの為の城を作って アバロンへの道を守れって言ってるだけじゃねぇえか!?それでも俺は!!最後まで この国の民を!俺の手で守りたかったんだよ!!」
ヴィクトールが驚いた表情のまま言葉を失う バーネットがヴィクトールへ叫ぶ
「それなのに てめぇえは!俺に このベネテクトの民を守る事さえさせやがらねぇえ!!王位だあ!?自国の民も守れねぇえ 国王なんざ 王でも何でもねぇんだよ!!」
ヴィクトールがぐっと涙を堪えて言う
「バーネット… 僕は…っ」
バーネットが片手に握った宝玉を強く握り締めて言う
「てめぇえは!!アバロンの王だろ!!ベネテクトの王を信じて アバロンを守るのが てめぇえのやる事じゃねぇえのか!?俺を信じる事も出来ねぇえで!こんな所に居やがるから!アバロンがソルベキアに襲撃されたりなんかしやがるんだ!!」
ヴィクトールとヘクターが驚く バーネットが怒って宝玉を握り締めて叫ぶ
「てめぇえらは!!さっさとアバロンへ帰りやがれぇえっ!!2度と俺の国へ来るんじゃねぇええ!!」
バーネットの持つ宝玉が強く光り ヴィクトールとヘクターが飛ばされる

【 アバロン城 】

ヴィクトールとヘクターが アバロン城入り口付近に猛スピードで飛ばされて来る 着地は出来ず地面に叩き付けられる ヘクターが悲鳴を上げて言う
「グ…ッ!い…っ 痛ってー… こんな乱暴な移動魔法は 初めて…」
ヘクターが打ちつけた腕を押さえながら身を起こすが 周囲の戦火に呆気に取られる そこへプログラマーが走って来て ヘクターの前で立ち止まり上体を折り息を切らせて言う
「はぁ はぁ… ヘクター 戻ったか… まさか移動魔法で戻るとは 想定外では… あったが 問題は 無い すぐに… ソルベキアの 兵を…っ」
ヘクターが呆気に取られたままプログラマーへ顔を向けていた状態から 事態を理解し頷いて言う
「お、おうっ!アバロンの部隊配置はどうなってんだ!?3番隊はっ!?」
ヘクターが立ち上がる プログラマーがモバイルPCを操作しながら言う
「現状の部隊配置は 作戦6になっている 1番隊がアバロン城を、2番隊が城下町を 3番隊は城下の門前だが お前が居なかった為 現在は4番隊と合同で最前線に配置されている ウィザードが現在 ロボット兵の相手を行う最前線の部隊の者へ 魔力の供給を行い大剣に魔力を与えた状態で戦わせている ヘクター、お前は私がサポートをする お前は…」
ヘクターがプログラマーの言葉を制して言う
「分かった!俺はお前と2人で 城下まで入り込んじまった ソルベキア部隊の一掃だな!!超特急のサポートを頼むぜ!?デス!」
プログラマーが頷いて言う
「処理速度は前回より6%上がっている 驚くなよ?ヘクター!」
ヘクターがニッと笑って言う
「お前こそ!俺の対応っぷりに 驚かせてやるぜ!」
ヘクターとプログラマーが笑みを合わせる ヘクターがハッと気付いてヴィクトールを探して言う
「あ、そうだ!ヴィクトールは!?おいっ!ヴィクトール!何処だ!?無事かー!?」
ヘクターが周囲を見渡す ヴィクトールが壁を背に地に座り込んでいる ヘクターが見つけ駆け付けて言う
「おい!大丈夫か!?ヴィクトール!」
ヴィクトールが呆気に取られた表情で視線を泳がせてから ヘクターへ顔を向けて涙声で言う
「ヘクター… 僕は… どうしたら…?」
ヘクターが驚き表情を渋らせてから 頭を振って気を取り戻して言う
「ヴィクトール!!しっかりしろよっ!!お前はアバロンの王だろっ!?バーネットも言ってたじゃねぇーかっ!?ベネテクトの王を信じて アバロンを守れって!!」
ヴィクトールが声を震わせて言う
「でも… でも… 僕は…っ 彼から…」
ヘクターが苦しそうに怒って言う
「バカ野郎!!ヴィクトール!お前、バーネットを信じられねーのかよ!?そんなんじゃ 相棒にはなれねーんだよっ!!」
ヴィクトールが驚きヘクターを見る ヘクターの後ろからプログラマーが言う
「ヘクター!城下へ乱入したソルベキア兵の数が定数に達した これ以上の時間の浪費は 私のプログラムに悪影響を与える」
ヘクターが後ろのデスへ頷いてから もう一度ヴィクトールへ向いて言う
「ヴィクトール、悪いが俺は行くぜ!俺には守らなきゃならねーもんが一杯有るんだ!お前たちの面倒まで見てられねー!お前もアバロンの民だろっ!?友情を信じられねー様じゃ アバロンの王所か アバロンの民でさえ居られねーぞ!!」
プログラマーが走り始める ヘクターが後を追いすぐに追い付いてプログラマーを担ぐと プログラム加速で駆け抜けて行く

【 ベネテクト城 】

地下室に居るバーネットとモフュルス モフュルスが報告をしている
「先日アバロンを襲ったソルベキアは アバロンより以前にローゼントを襲撃し、ローゼントから他国への通信を遮断した状態でアバロンを襲撃 その後は通信の遮断などは無く ツヴァイザー、シュレイザーを襲ったとの事です アバロンはソルベキアの襲撃を何とか退け ローゼントとツヴァイザーはソルベキアへ多額の融資を行う事で合意 シュレイザーは何らかの条約を交しての合意を持って 収められたと言う事です」
バーネットが紙資料を眺めながら言う
「シュレイザーの何らかの条約ってぇのは きっとあのチョッポクルスが上手い事言いやがったんだろ それは良いとして、アバロン以外は もう単独で勝てねぇくらいソルベキアは力を付けて来てやがる そこへ来て カイッツが無視されるのはこっちも無視して 問題はローレシアとデネシアが襲われなかったってぇえ事だ」
モフュルスが資料から顔を上げて言う
「そちらはアバロンに居られる 元ガルバディアのプログラマーが提唱している 悪魔力の量と関係しているのでは無いでしょうか?その2カ国に加え…」
バーネットが目を閉じて言う
「あぁ ベネテクトとスプローニは祠への結界を間に合わせたから 悪魔力が少なかったてぇんだろ?俺もそう思う ローレシアとデネシアが祠に結界を張ってるかどぉか 何て事は分からねぇが 大陸西部には魔物がほとんど居ねぇんだ 悪魔力なんざ測定しなくたって 少ねぇ事は分かる …だが問題はそこじゃねぇ」
モフュルスがバーネットへ向いて問う
「と、申されますと?」
バーネットが椅子の背に凭れて言う
「ソルベキアはローレシアと友好条約を交しているが デネシアは現在そのどちらとも条約を交してねぇ 交しているのはアバロンだ だからソルベキアは ローレシアを襲わねぇ理由は有っても デネシアを襲わねぇ理由はねぇ それでも連中はそれをしなかった 理由は明確だ デネシアはまだローレシアと繋がってやがるんだ だからソルベキアはローレシアとの繋がりのあるデネシアを攻撃しなかった」
モフュルスが首を傾げて言う
「デネシアが襲われなかったのは ロボット兵の動力源である悪魔力が 少なかったからではないかと?」
バーネットが口角を上げて言う
「それが分かったのは 各国の停戦条約が公にされてから ずっと後の話だ きっとソルベキアだってアバロンに悪魔力の測定プログラムを作れる様な 優秀なプログラマーが居るなんて事は知らなかったんだ」
モフュルスがバーネットの話に聞き入る バーネットが少し視線を向けて言う
「アバロンを一時的にとは言え 身動きの取れねぇ状態にまで落としたんなら ロボット兵を使わなくったって落とせるようなデネシアは楽に潰せた筈だ デネシアがローレシアの策でアバロンに付いているフリをしている間は ソルベキアは少なくともデネシアを動けねぇ程度に攻撃するか もしくは条約を持って制すべきだった だがそのどちらも無かった これは…」
モフュルスが真剣な表情で問う
「これは?」
バーネットが目を閉じて言う
「こいつは ぶっ飛んだ憶測になっちまうが ローレシアとソルベキアの友好に 亀裂が生じている前兆じゃねぇかと俺は思う ソルベキアは馬鹿強ぇえ力を手に入れた 今この世界に増加している悪魔力を使って動くロボット兵だ そいつがあれば もうローレシアにヘコヘコする必要なんざねぇ ソルベキアは単独でだって世界を手中に収める事が出来やがる」
モフュルスが驚いて言う
「ソルベキアが世界を!?この世界で3大国家にすら数えられていなかった あのソルベキアが…!?」
バーネットが強い視線で言う
「今回のソルベキアによるロボット兵の奇襲攻撃は ソルベキアのロボット兵の力をローレシアと世界に見せ付ける為ものだったんだ これでソルベキアがローレシアより遥かに強ぇ力を持った事が世界中に知れただろう ローレシアとソルベキアの友好なんざ もうガタガタなのかもしれねぇ そんなローレシアはデネシアの言い訳すら 作ってやる余裕もなかったんだ」
モフュルスが言う
「ソルベキアは今までローレシアに頼る事で 抑えられている部分もある様に見えました ここへ来て それらが両方無くなってしまっては」
バーネットが立ち上がって言う
「今のままじゃ ソルベキアが世界を手に入れて帝国となるのが先か 世界が悪魔力の脅威に滅ぶのが先か そのどっちかになっちまう きっと前者が先になる どっちが良いかなんて選ぶ気はねぇ どっちも最悪だ!」
バーネットが部屋の出口へ向かう モフュルスが呼び止めて言う
「バーネット様!どちらへ!?」
バーネットが扉の前で言う
「ローレシアは力を失いつつある そうとなれば デネシアはアバロンを選ぶ ソルベキアに加えてデネシアまで失ったローレシアを落とすなんざ アバロンなら楽勝だ ローレシアさえ落とせば アバロンはソルベキアを脅威としている他国と手を組み それら全国の指揮を執ってソルベキアと戦える そっちは あいつに任せて置けば良い デネシアが本気でアバロンに付くんなら そのアバロンの王女にベネテクト国だってくれてやる」
モフュルスが言う
「しかしっ バーネット様!このベネテクト国の王が 本当にアバロンのメイデ王女となってしまってはっ バーネット様が」
バーネットが言う
「俺は全てを失ったってベネテクトの民を愛するんだ その民の為に 俺のやれる事は… この世界から悪魔力を消し去る事」
モフュルスが言葉を失う バーネットが扉を開けて言う
「悪魔力にはローレシアが関係してやがる 宝玉や勇者の話を全て吐かせてやるぜ ソルベキアや世界に見捨てられ始めている今なら あのローレシアだって余裕はねぇ 俺が国王で居られるのは後15年だ その間に調べ上げなけりゃ ならねぇ事が山ほどありやがる」

【 アバロン国 】

復興作業中のアバロンの城下町 ヘクターの家で プログラマーが椅子に座り テーブルに置いたモバイルPCを使い とても早いタイピング音を鳴らしている その奥のキッチンで妊婦のタニアが食器洗いをしている しばらくタイピングをしていたプログラマーが ふぅと一息吐く テーブルにコーヒーが置かれる プログラマーがコーヒーに気付き その差出人であるタニアへ顔を向けて言う
「ありがとう」
タニアが微笑んで言う
「どういたしまして」
プログラマーがコーヒーをすする タニアが苦笑して言う
「デス?あまり根を詰め過ぎるのはどうかしら?世界一のプログラマーさんが お忙しいのは分かるけれど 余り無理をすると体を壊しちゃうわよ?」
プログラマーがコーヒーを置いて言う
「確かに体は疲れるが 私のプログラム作成速度は 私が生まれ以前に比べ 76.85%低下してしまった それを補う事は 現状では不可能ではあるが 残りの時間も少ない 可能な限り急ぐ必要がある」
プログラマーがタイピングを再開する タニアが少し首を傾げて問う
「デスの言う『生まれる前』というのは 貴方がガルバディアの機械の中に入っていた頃の事だと言うのは聞いたけれど その『残りの時間』って言うのは どう言う事?」
プログラマーが顔を向けないまま答える
「『残りの時間』は 私の『命の尽きる時』までの時間だ 既に全体の94.33%を経過している 80%を経過した以上 いつコロッと逝くか 推測しかねる」
タニアが一瞬、呆気に取られてから プログラマーの顔を覗き込んで問う
「『命の尽きる時』?デス… 貴方… …本当はとっても お爺さんなの?」
プログラマーが軽く衝撃を受け タイピングを止めてから 顔をタニアへ向けて言う
「私のデータによると 『お爺さん』と言われる言葉で表すものは 肉体年齢が60年前後を経過した動物 主に人に使用する言葉だ 私の身体は1年と半年ほど前に生まれたばかりではあるが この身体が完成してから経過した年数は20年ほどだ よって私は現在、青年の部類に分類される」
タニアが瞬きをしながらプログラマーの話を聞いてから 人差し指を口元に当てて考える プログラマーがタイピングを再開する タニアが微笑んで言う
「デス?それなら心配ないわ?貴方はきっと後4、50年は コロッと逝かないで いられると思うから!」
プログラマーが無表情にタイピングをしながら言う
「それはこの世界に生きる 通常の人の寿命だ 私はガルバディアの民 ガルバディアの民は 全てガルバディア国王1人の複製である為 その遺伝子プログラムに 異常をきたしている よって平均的なガルバディアの民の命は 20年前後と言う事になる 昔はもっと長く生きられたらしいが プログラムの劣化が進み 徐々に短くなってしまった」
タニアが目を丸くして驚いている プログラマーが変わらず続ける
「私が生まれる前までに確認していた 『残りの時間』は約2年であったが 後に行った肉体への負荷の高いプログラムや 生まれてからのストレスや疲労で 恐らくその時間は縮小されていると思われる このソルベキアの機械では もはや正確な測定は不可能ではあるが 推測程度の計算によると…」
タニアが慌てて止める
「ダメーッ!」
プログラマーがタイピングを止めてタニアへ顔を向ける タニアが表情を哀しくして言う
「そんな計算必要ないわっ デス?ヘクターが いつも言ってるでしょ?『世界一の大剣使いと世界一のプログラマーの俺たちに不可能は無いんだ』って そんな『残りの時間』なんて それこそ2人の力で 乗り越えちゃったら良いの!」
プログラマーがきょとんとした表情で聞いてから タイピングを再開させて言う
「ヘクターの言う『不可能は無い』と言うのは 私の作るプログラムの120%の成功を意味している よって、私の『残りの時間』に120%の上昇率を加えたとしても その時間は…」
タニアがテーブルを叩く プログラマーが目だけで驚きタイピングを止めてタニアへ向く タニアが怒って言う
「計算しちゃダメ!プログラムが無ければ その可能性は120%を越えて きっと無限になるわ!」
プログラマーがタニアへ向いていた目を瞬きさせてから タイピングを再開させて言う
「妊婦への精神的ストレスによる 早産の可能性は 通常精神時に比べ…」
タニアが衝撃を受け 慌てて言う
「その計算もダメー!」
プログラマーがタイピングを止めてタニアへ顔を向けた後 再び視線を正面へ戻してタイピングを再開させながら言う
「精神的ストレス0.5%追加を確認 これを合わせると…」
タニアが衝撃を受けて言う
「もぉーっ!」

【 ローレシア城 】

門前に居る2人の門番の下へ 黒服の男が向かって来る 門番の兵たちが互いの槍を交差させ道を塞いで言う
「我らがローレシア城へ何用かっ!?」
行く道を閉ざされた黒服の男が顔を上げ 門番の2人を交互に見てから言う
「俺はベネテクト国 国王バーネット2世・ベネテクトだ ローレシア国王イシュラーン殿に話がある」
兵たちが驚き バーネットの乗って来た馬を見てから兵Aが言う
「…確認をして参りますので お待ち下さい」
もう片方の兵Bが驚く
「っ!?」 
兵Aが小声で言う
「もしかしたら本物かもしれないだろ?」
兵Bが小声で返す
「馬鹿言えっ!国王が護衛も付けずに 他国へ来るものか!」
兵Aが小声で言う
「だが、容姿はベネテクト国の国王と合ってるし?」
兵Bが小声で怒って言う
「『金髪で三つ編み髪の男』ぐらい どこにでも居るだろう!」
兵Aが一度バーネットの姿を確認してから 再び兵Bへ向いて言う
「『国王らしくない』って所も合ってる」
兵Bが反応して バーネットをまじまじと見てから言う
「…確かに」
バーネットが呆れて言う
「おい、聞こえてんぞ?」
兵たちが焦り 兵Aが逃げる様に確認へ向かう 残された兵Bが衝撃を受け平静を装って1人で道を塞ぐ 間もなく兵Aがフォリオッドを連れて来る フォリオッドがバーネットへ微笑を向けて言う
「これはこれは ベネテクト国のバーネット国王陛下、兵らが失礼をいたしました」
城のバルコニーにザッツロードが居て眼下を見下ろしている バーネットが腕組みをしながら言う 
「『国王らしくない』国王で悪かったな?ローレシア国では 他国の王の説明に面白い言葉を使うもんだ 是非 俺以外の王の説明も聞かせて貰いたいもんだぜ」
バーネットの言葉に兵たちが焦る フォリオッドが兵たちを交互に睨み付ける 兵たちが目を逸らす フォリオッドが咳払いをひとつして言う
「兵がその様な事を?それは大変失礼を… しかしながら、ローレシア国では その様な事は言いません きっと下級の兵どもが使っている説明なのでしょう 後ほど修正をさせて置きますので」
バーネットが軽く笑って言う
「会ったことの無い他国の王の説明を 下級の兵たちがどうやって作るんだろうなぁ?まぁ良いけどよ?」
更なる追求にフォリオッドがバーネットを城内へ招き入れる事で誤魔化す

城内へ入って間もなくフォリオッドが立ち止まり問う
「ところで… バーネット国王 本日はこのローレシア国に何の御用でしょうか?私の知る限り 本日貴方様と我が王とは お約束などは 取り留めて居ないと思うのですが?」
バーネットが微笑して言う
「ああ、約束はしてない ただちょいと聞きてぇ事があって来ただけだ すぐに終る」
フォリオッドが微笑して言う
「左様でございましたか… では、突然と言う事もありますので 我が王へ確認を取って参ります どうか今しばらくこちらでお待ち下さい」
バーネットが進もうとしながら言う
「一言で済むんだ」
フォリオッドがバーネットの前を身を挺して止め もう一度言う
「すぐに戻りますので、どうかお待ちを?」
フォリオッドの言葉に バーネットが仕方なく足を止める フォリオッドが頷いて奥へ向かう 程なくしてフォリオッドが戻って来る バーネットがフォリオッドの姿を確認し 気を取り直して進もうとする フォリオッドが進路を塞ぐ バーネットが疑問して言う
「あん?」
フォリオッドが変わらぬ微笑で言う
「残念ですが 本日我が国王は お忙しいとの事 申し訳有りませんが お引き取り下さい」
バーネットが表情をしかめて言う
「おい、本気で言ってんのか?俺は!」
バーネットが自分を差して言おうとする言葉へ フォリオッドが先んじて言う
「はい、ベネテクト国のバーネット2世国王様 申し訳有りません どうか、またの機会に」
バーネットが沈黙する フォリオッドが出口へ向け手を示す バーネットが仕方なく向かおうとするが 思い付いて足を止める フォリオッドが下げていた顔を上げバーネットを見る バーネットがニッと笑って言う
「なら王子に会わせてくれ 帰って来てるんだろ?勇者ザッツロード様がよ?」
バーネットの言葉にフォリオッドが戸惑いを隠しながら言おうとする
「で、では 確認を…」
バーネットが言う
「確認は必要ねぇ!一国の国王が てめぇんトコの第二王子に会いてぇって言ってんだ!そいつを断る事なんざ 出来ねぇだろっ!?」
バーネットが言い切ってフォリオッドの横をすり抜けて叫ぶ
「王子はどこだ!?ザッツロード王子!!」
バーネットが叫びながら歩く フォリオッドが慌てて同行する

進もうとする道をいくつか制止されながらも やがてローレシア城の書物庫へたどり着く 入り口に王子の護衛が立っている 慌てふためくフォリオッドを引き連れながら現れたバーネットに 護衛の兵が戸惑っていると やって来たバーネットが護衛兵の前に立って強い視線を向ける 護衛兵が思わず目を逸らす 

道を切り開いたバーネットが書物庫の中を見渡す 上品なテーブルに山積みの本があり その隣でザッツロードが調べ物をしている バーネットが軽く笑い 開きっぱなしのドアを軽くノックして言う
「よう、勇者様?それとも ザッツロード王子 の方が良いのか?」
ザッツロードがバーネットへ顔を向けて驚いて言う
「え?あ、バーネット陛下」
バーネットがザッツロードのもとへ向かう
(中略)
バーネットの問いに ザッツロードが気づいた様子で言う
「あ、すみません… 確かに そう言われてみれば」
バーネットがザッツロードが言葉を待っている間に 護衛兵がバーネットを呼ぶ
「バーネット陛下!」
バーネットとザッツロードが顔を向けると 護衛兵がバーネットへ言う
「イシュラーン陛下がお会いになりたいとの事です」
バーネットが一瞬間を置いてから答える
「…そうか、分かった」
バーネットが立ち上がり 出入り口へ向かいながらザッツロードへ言う
「もう少し聞きたかったが しょうがねぇ、またな?」
バーネットが軽く手を上げて立ち去る ザッツロードは返事をして敬礼する 

玉座の間 伝達の兵が声を上げる
「ベネテクト国国王バーネット2世様を お連れしました」
バーネットが兵の横を抜け先へ進み出る ローレシア国王イシュラーンが来国への挨拶をする
「バーネット国王、我がローレシア城への遠来 歓迎する」
バーネットが言う
「突然の訪問に貴重な時間を割いてい頂いた事へ感謝する …が、常に謁見が許される国だと 歌っている割には 随分と手間を食わされたぜぇ?」
バーネットが言葉と同様に途中から礼節を解き 片手を腰に当て首を傾げて見せる イシュラーンが言葉を返す
「今は魔王との戦いの最中… 少々神経質になっている部分があるのだ 了承頂きたい」
バーネットが軽く笑って言う
「へぇ?そぉか?俺はその世界の東の端にあるベネテクトから 西の端にあるこのローレシアまで 1人で、馬に乗って来たんだがなぁ?」
イシュラーンが無言で居る バーネットが続ける
「俺はてっきり 『ベネテクト国の王となんざ』と話す気はねぇのかと思ったぜぇ?」
イシュラーンがふと笑って言う
「っふっふ… そんな事は無い そうだな?私は ベネテクト国は我が国の元友好国であった デネシア国と同程度の国だと思っておる」
バーネットが口角を上げて言う
「ハッ!デネシアなんざよかぁ 領土はデケェし 性格だって良いぜ?」
イシュラーンが笑んで言う
「態度が大きく 威勢が良いのは 確かな様だな?」
バーネットがイシュラーンの反論に軽く笑って見せてから 気を改めて問う
「…さて、今は互いに忙しい身だろうしな?さっそくだが、用件を言わせて貰う」
イシュラーンの表情が強張る それを確認しながらもバーネットは続ける
「俺は先日、不覚にも 今噂の悪魔力って奴を食らって 危うく魔物の類になり掛けた 幸な事に偶然やって来た知り合いどものお陰で 助かった訳だが…」
イシュラーンが軽く笑って言う
「それは良かった」
バーネットが笑んで言う
「ああ、良かったぜぇ?3日間動けねぇぐらいボコボコにされたけどな?ハッ!…まぁそれは良いとしてだ、その代わりと言ってはなんだが 悪魔力を世界にばら撒いている犯人が… まぁそいつが『魔王』だって言うならなぁ?その『魔王の正体』がな?分かったかも知れねぇ」
イシュラーンが軽く笑って言う
「…魔王の正体だと?」
バーネットが軽く笑って言う
「ああ、なんなら今ここで言うかぁ?昔、宝玉を保管していたとか言う あの祠には祭壇が有る その祭壇には悪魔力が吹き出す穴が有った おまけに その中にはどっかの国の 不思議な機械があってぇ そいつが…」
周囲のローレシア兵が思わず聞き耳を立てている イシュラーンが慌てた様子で声を上げる
「待たれよ!バーネット殿っ!」
バーネットが顔を向けて微笑する イシュラーンが言う
「そなたに見せたいものがある」

イシュラーンがバーネットを先導し、城の地下 機械室へと連れて行く 通路を進んだ先大きな扉を開けイシュラーンが室内へ入って行く バーネットもそれに続く 

ローレシア城 地下機械室

室内は薄暗く 周囲は機械の計器類で埋め尽くされている バーネットが周囲を見渡しているとイシュラーンが言う
「デネシア国から そなたが救い出されたと聞いて驚いた『ベネテクト国のバーネットは処刑した』と聞いていたからな」
バーネットが腕組みをして答える
「ああ、親父は殺されたぜ」
イシュラーンが機械を操作しながら言う
「バーネット1世の事だったのだな、私はてっきり2人とも処刑したのかと思っていた」
バーネットが軽く笑って言う
「ハッ!たかがデネシア国の一個部隊の行進を阻害しただけで 一国の国王が殺されたってだけでも信じ難い話だ」
イシュラーンが振り返って言う
「バーネット殿 バーネット1世殿は… そなたのお父上は…」
バーネットが言葉を制して言う
「親父には悪いが 今は、生きている者の命が掛かってる これ以上 昔の話なんざしてる暇はねぇんだ」
イシュラーンが沈黙する バーネットが続ける
「さっきの話の続きだ、祭壇に有る悪魔力の吹き出す穴に取り付けられていたソルベキアの機械 あいつはなんだ?ローレシアが関係してるって事は分かってんだぜ?」
イシュラーンが軽く笑って言う
「…何の事か?」
バーネットがムッとして言う
「とぼけるんじゃねぇ!よくも百何十年もの昔から ローレシアの勇者話なんざ伝承させやがったもんだぜ!ローレシアの勇者が 悪魔力をばら撒く魔王を倒すなんざ 大嘘だ!おまけに ザッツロード王子の言っていた『ローレシアに宝玉はねぇ』って話 そして、魔王退治を目標に掲げているはずの ローレシア国王である あんた自身の そのすっとぼけた態度で確信が持てたぜ!」
イシュラーンが苦笑して言う
「バーネット殿…」
バーネットがレイピアを抜いて叫ぶ
「うるせぇえ!…答えろ、ローレシアの勇者話の真実を!」
沈黙の間 答えないイシュラーンへ バーネットが言う
「言えねぇのか?そうだよなぁ?魔王を倒したと言われている 勇者の末裔が 実は魔王本人だなんてな?ローレシアの勇者話は 一体何処までが作り話なんだ?そもそも魔王なんざ居なかったんじゃねぇのか?だとしたら、あの祭壇の悪魔力の原因は何だ?てめぇえらは 宝玉を集めて 何をしてやがる!?」
バーネットの言葉に イシュラーンはただじっと自分に向けられている 赤い刃のレイピアを見つめる やがて1つため息を吐いて言う
「分かった、バーネット王子…いや、バーネット王 すっかりたくましくなられた」
バーネットが軽く笑って言う
「俺はあんたに会ったのは 今日が初めてだ」
イシュラーンが苦笑して言う
「いや、私は会った事がある、まだそなたが赤子の頃だがな 覚えていないのも無理は無い」
イシュラーンが一歩バーネットへ近づく バーネットがレイピアを構え直す イシュラーンが苦笑して言う
「ベネテクト王家の毒が塗られたレッドレイピア その毒は5日の間 傷つけられた者を苦しめるのだそうだな?」
バーネットが軽く笑って言う
「味わいたくねぇなら答える事だ、その5日の間に特製の解毒剤を使わなけりゃ 苦しみの末に死ぬ事になる」
イシュラーンが言う
「バーネット王、そなたを信頼し全てを伝えよう」
イシュラーンが背を向け部屋の奥へ向かう バーネットもそれに続く イシュラーンが奥にある機械を操作する イシュラーンの少し後方に居たバーネットの横で機械が動き そこに1つの宝玉があらわれる バーネットが言う
「これは?」
イシュラーンがバーネットの前へ戻って来て言う
「ローレシア国の宝玉だ、王子にはこの存在を隠していた」
バーネットがイシュラーンへ向いて問う
「何故だ?」
イシュラーンが苦笑して言う
「持たせる理由が無かったからだ、いや、むしろこれを渡す訳には行かなかった これは各国の魔力穴からこのローレシアへ集められる 聖魔力を操作するのに使わなければならない」
バーネットが問う
「魔力穴?…あの祭壇に有る 悪魔力の排出されている穴の事か?」
イシュラーンが答える
「そうだ あの祭壇に備えられている物だ だが魔力が噴出する穴だ 悪魔力ではなく、魔力だ その魔力の中には聖と悪 両方が含まれている そして、宝玉は聖魔力だけを吸収する」
イシュラーンが宝玉を装置から取り外して言う
「魔力はこの世界中に溢れている したがって この様に魔力穴から離していても 宝玉には聖魔力が集まる」
バーネットは黙って話を聞いている イシュラーンは微笑して続ける
「魔力穴から噴出する魔力は そのまま この世界に充満する 今までもそうであった様に ただ… その魔力穴に細工をして 聖魔力だけを別の場所に移したとしたら?」
バーネットがハッとして言う
「あのソルベキアの機械は 悪魔力ではなく聖魔力を抜き取ってやがったのか!?」
イシュラーンが微笑して言う
「魔力穴から噴出する魔力から 聖魔力だけを取り除けば 残るのは悪魔力 したがって  最初にそなたが言っていた悪魔力が噴出する穴と言うのは 間違えでは無い訳だな?はっは… なかなか面白い」
バーネットが表情をしかめて言う
「何が言いてぇんだ?まどろっこしく言わずに ハッキリしてくれ」
バーネットがレイピアを向ける イシュラーンが微笑んで言う
「うむ、ではこれで最後だ」
イシュラーンが頷き部屋の出入り口へ向かって歩きながら言う
「わが国と協力関係にあるソルベキアが解決策を生み出してくれた 残った悪魔力を有効的に使う機械を開発したとの事だ、この世界を一つにした後には そなたのもとへも送られるだろう バーネット王それまでの間… 彼らを頼んだぞ?」
イシュラーンはそこまで言うと部屋の外へ向かう バーネットが追って向かい言う
「おいっ!待ちやがれ!意味の分かんねぇえ事だけ 抜かしやがるんじゃねぇえ!」
イシュラーンが扉の前で再び立ち止まる バーネットがイシュラーンの後ろでレイピアを突き向ける イシュラーンが振り返って言う
「バーネット2世、まさかあのバーネット1世の息子に… いや、これが正解なのかも知れんな?」
イシュラーンがニヤリと笑い 扉の外へ出て扉に手を掛ける バーネットがハッとした目前で扉が閉まる バーネットが言う
「なっ!?おい!?どういうつもりだ!?」
扉の向こうにイシュラーンが居る気配がする バーネットが扉を叩きながら叫ぶ
「おい!!イシュラーン!!」
バーネットが叫びながら一段と強く扉を叩いた時 周囲の異変に気付いて言う
「っ!?なんだ?」
薄暗い部屋の中に 黒い霧が漂う バーネットがハッとして言う
「こいつは!?悪魔力か!!クソッ!!」
バーネットが再び扉を叩くが 重い扉はびくともしない 他に出口を探すが地下であるがゆえに窓も他の出入り口も無い 次第に悪魔力がその量を増しバーネットの身に影響が出始める バーネットが目を見開いて言う 
「うっ!?」
バーネットの心臓が高鳴り眩暈が起きる 周囲の機械が作動を始める 部屋の床に書かれた魔法陣が光る 大量の悪魔力の影響でバーネットが床に倒れる 周囲の機械が機械音を増し 魔法陣の光がバーネットの身を包む バーネットが周囲と自身の状態に言う
「…俺を 魔物にする気…か?」
意識が薄れる中 バーネットは持っていた宝玉を握り締める

扉の外に居るイシュラーン 室内で何かが弾ける音がする 

扉が開かれ イシュラーンが手にした宝玉を室内へかざす 宝玉から強い光が放たれ 周囲の悪魔力の霧が消える それを確認して室内へ進み入り 辺りを見渡す そこにバーネットの姿はない イシュラーンがそれを確認して微笑する 室内へ進み入り 祭壇に宝玉を置き 機械操作盤のもとへ行き操作を開始する 扉の外から キルビーグがやって来て言う
「父上、明日の旧世界との通信にて 父上が旧世界へ向かわれた後 私は可能な限り聖魔力を抽出し 旧世界へ送ります どうかそれで」
イシュラーンが機械を操作しながら言う
「いや、本来なら私が旧世界へ向かい 新たな旧世界の王となり 今も残されている旧世界の民たちを支える予定であったが それは… 別の王に譲った」
キルビーグが驚いて言う
「別の王に!?それは どう言う事です!?旧世界は我らローレシアの帝国です!その旧世界の王の座を 別の王にとは!?」
イシュラーンが機械の操作を止めて言う
「確かに旧世界においてローレシアは帝国であった だが、今 そこに残り戦い続ける彼らへ送らねばならない聖魔力は まったく足りていない その策を練らずして私は 旧世界へ向かう事は出来ない それに」
イシュラーンが間を置いて言う
「継承したのは あのベネテクト国バーネット1世の息子だ 民を支える力は きっと今の私よりも強い かの国は慈愛の国 古きアバロンの片割れだ」
キルビーグが問う
「…では 明日の通信時に 現ベネテクト国国王バーネット2世殿を 旧世界へ?」
イシュラーンが微笑して言う
「いや、少々問題があって早まってしまった 先ほど悪魔力を使い旧世界へ転送したのだ 転送先は何処になるか見当が付かない 従って今すぐ彼を捜索し こちらから聖魔力を供給して彼の周囲へ結界を張る 明日の連絡でそれを旧世界の民たちへ伝え バーネット殿と合流させるつもりだ」
キルビーグが焦って言う
「それは!バーネット殿も合意の上での策でしょうか?その様な危険や手間を侵すよりも 明日の転送を待った方が宜しかったのでは?」
イシュラーンが機械の操作を再開させながら言う
「アバロンが各国へ 宝玉を奉っていた祠へ結界を張る理由を再度提唱してしまった 前回は免れたが 祭壇に隠されている魔力穴に気付かれるのは もはや時間の問題だ そして もしそうとなれば やがては魔力穴に取り付けられている機械により このローレシアへ聖魔力が送られている事も各国に知られてしまう 我らがこの世界の支配を手に入れる前に その事を知られては 各国との信頼が今度こそ奪われる もはや時間の猶予がないのだ」
キルビーグが間を置いて問う
「しかし父上、あのベネテクト国の王へ旧世界の事を伝えたのでしたら その内容は全てアバロンにも伝わっているのではないでしょうか?アバロンは現在 我々にとって一番の」
イシュラーンが軽く笑って言う
「いや 現在バーネット殿へ伝えてあるのは 我らがこの新世界で行っている事のみ 後は今後の通信と旧世界の民たちから 伝え聞く事になる」
キルビーグが焦って言う
「父上?それではバーネット殿は 旧世界の事を何も知る事無く 旧世界へ送られた と言う事でしょうか?」
イシュラーンが笑って言う
「はっはっはっ そう言う事になるな 後に私が旧世界へ向かい 再び会う時には 大いに怒られるだろう しかし 実際に旧世界の民と会い 言葉を交した後になら 全てを信じ 我らの力となってくれるやもしれん 400年の時を経て 忘れ去られた歴史を 今の者たちに言葉だけで伝えるのには限界がある 何も知らぬ者たちに 我らはこの世界の後住民族である などと言っても誰も信じてはくれぬだろう?」
キルビーグが納得して言葉を失う イシュラーンが機械の操作を続けていると 通信機が着信する イシュラーンが通信機を操作して言う
「どうした?フォリオッド?」
通信機のフォリオッドが言う
『大変です陛下!ソルベキアがロボット兵で 魔王の島を攻撃すると』
イシュラーンが驚いて立ち上がって言う
「何だとっ!?そんな事をしては!島にある旧世界との道が!」
イシュラーンが苦悩してから言う
「よし、フォリオッド すぐにソルベキアのスファルツ卿と繋げ」
イシュラーンが場所を譲り キルビーグへ向いて言う
「キルビーグ お前はバーネット殿の探索を頼む」
キルビーグが返答して 機械操作を代わって行い その後ろでイシュラーンが通信機に言う
「スファルツ卿、問題が起きた ソルベキア国王が」
通信機のスファルツが言う
『はい、存じております ガライナ国王へは 私から…』
キルビーグが機械操作をしている後ろで イシュラーンが会話を終え通信を切り キルビーグへ言う
「どうした?まだ見付からんのか?」
キルビーグが操作を止めて言う
「父上、旧世界へは この24時間 新世界からの転送は 何1つ確認されていません」
イシュラーンが驚いて言う
「何だとっ?そんな筈は無いっ 確かに転送プログラムを実行した バーネット殿の姿も無くなっていた」
キルビーグが操作を再開し イシュラーンがモニターを見る 間を置いて キルビーグが言う
「父上!このプログラムの実行時に 強い聖魔力の反応が!」
キルビーグが確認作業を再開させる 通信機が着信する イシュラーンが戸惑いながらも着信して言う
「スファルツ卿 どうであったか!?」
スファルツが答える
『はい、何とか停止させました しかし、その代りに各国へ配信された 宝玉の祠へ結界を張らせる行為を 停止させる様にと』
イシュラーンが表情を渋らせて言う
「今の我々に世界を動かす力は無い 故に その代償を決行させる事は難しい」
スファルツが言う
『陛下、私に1つ案が』
イシュラーンがスファルツへ視線を向ける スファルツが続ける
『今すぐに あの島の魔王退治を遂行するのです!それを理由に各国の宝玉を回収してしまえば 祠へ結界を張る事は不可能となります』
イシュラーンが一瞬驚いてから間を置いて言う
「…なるほど、確かに 今ならまだ各国の信頼を得て 宝玉を回収する事が可能かもしれん 分かった その様にしよう スファルツ卿、そちらは頼む」
スファルツが返事をして通信を切る

イシュラーンが地下からの階段を昇った所に ザッツロードが来て言う
「あ、父上」
イシュラーンが自身の近くへ来たザッツロードを見下ろす ザッツロードがイシュラーンを見上げて言う
「あの、父上 バーネット陛下は?」
ザッツロードの問いに イシュラーンは一瞬間を置いてから言う
「…バーネット殿はベネテクト国へ帰られた 何か用があったのか?」
イシュラーンの問いに ザッツロードは残念そうに俯いてから言う
「そうでしたか… いえ、お話の途中でしたもので しかし、お帰りになられたのでしたら」
イシュラーンは頷いて立ち去る 残されたザッツローも残念そうな顔をしつつ その場を立ち去る

【 ソイッド村 】

ソイッド村の移動魔法陣が光り 1人の女魔術師が現れ 村へ向かう道を歩く 上空に移動魔法失敗時の破裂音が聞こえる 女魔術師が顔を上げて言う
「あら?こんなど下手な 移動魔法を使う魔術師なんて 村に居たかしら?」
破裂音が止め処なく響き 魔術師に近付いて来る 女魔術師が呆れ顔から徐々にその表情を焦らせた頃 猛スピードで何かが吹っ飛んで向かって来る 女魔術師が悲鳴を上げて逃げる
「きゃぁーーっ!!」
女魔術師が逃げた場所 移動魔方陣の近くにある崖の壁に何かが激突する 女魔術師が戻って来て 壁にめり込んでいる人物に気付いて言う
「ちょ、ちょっと?」
人物が地面に落ちる 女魔術師が衝撃を受け 恐る恐る近付いて言う
「な…何?人?…い、生きてる?」
女魔術師が人物の近くにしゃがんで その人物バーネットの様子を見る 

バーネットが地面に寝かされた状態で回復魔法を掛けられている バーネットが目を覚ます その目に女魔術師の姿が見える 女魔術師が軽く微笑んで言う
「どお?」
バーネットが起き上がり 女魔術師へ向いて言う
「ここはぁ?てめぇはぁ?」
女魔術師が一瞬呆気に取られてから 苦笑して言う
「ここはソイッド村の移動魔法陣の近く、私はそのソイッド村の魔術師だけど 普通、自分から名乗るモノじゃない?助けて貰っといてー?」
バーネットが一瞬呆気に取られた後 軽く笑って言う
「はっはー そぉだな?悪い悪い 何しろこっちは… って あぁああ!?ソイッド村だぁああ!?」
バーネットが言葉の途中から驚いて叫ぶ 女魔術師が少し驚いてから言う
「そうよ?貴方何処から飛んできたの?すごいど下手な移動魔法だったみたいだけど?」
バーネットが衝撃を受けてから言う
「あぁあ!?飛んできたぁだぁ!?俺はぁー?…そ、そうだ!!あのローレシアの イシュラーンの野郎がぁあ!!」
バーネットが飛び起きて周囲を見渡してから疑問して考える
「なんで… ローレシア城に居た俺が ソイッド村に居るんだ?」
女魔術師が呆れて立ち上がって言う
「なに?貴方ローレシアの人?…ローレシアに金髪の人なんて居たかしら?」
バーネットが衝撃を受けて怒って言う
「俺がローレシアの民だぁあ!?ざけんじゃねぇえ!!俺はぁあ!ベネテクト国の国王バーネット2世・ベネテクトだぁあ!!」
女魔術師が一度怯み後退るが 一瞬、間を置いて 怒って言う
「ベネテクト国って何処よー!?そんな聞いた事もない国の国王とか言ってー!何ー!?貴方、良い年して王様ごっこでもしてるつもりー!?」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「んだと!?てめぇええ!!聞いた事もねぇえだとぉお!?確かにベネテクト国は小せぇえがぁあ!!何処の誰だって知ってる筈だぁああ!!」
女魔術師が一瞬、怯むが 改めて怒って言う
「知らないって言ってるでしょー!?私は世界中の国の名前を知ってるわ!一番小さいカイッズ国だって知ってるし!この村から一番遠い ツヴァイザーだって知ってるわ!!」
バーネットが衝撃を受けてから 再び怒って言う
「だぁああ!?てめぇええ!!カイッズとツヴァイザーを知っててベネテクトを知らねぇえとは どぉおお言う事だぁああ!?この尼ぁああ!!」
バーネットと女魔術師がいがみ合う そこにソイッド村の村人Aが現れて言う
「あれ?テイねーちゃん 何やってんの?」
テイが気付いて村人Aへ顔を向ける バーネットが遅れて顔を向ける テイがバーネットを指差し 村人Aへ言う
「ちょっと聞いて!この変な王様男!」
バーネットが衝撃を受け怒りの視線を向ける テイが村人Aへ続ける
「自分はベネテクト国とか言う所の王様だって言うのよー?」
村人Aが考える バーネットがテイへ言う
「ベネテクト国『とか』って言うんじゃねぇええ!!ベネテクトはぁああ!!アバロンの友好国だぞぉおお!!それを知らねぇえ奴なんざ…っ!」
村人Aがひらめいて言う
「あー、思い出した この前出来た 新しい国だよね?アバロンの隣に出来た その国の名前が ベネテクト国になったって聞いたよ?」
バーネットとテイが衝撃を受ける 村人Aが笑顔で言う
「お兄ちゃんがそのベネテクト国の王様なの?…あれ?でも確か もっとオッチャンだって聞いたけど?」
テイと村人Aがバーネットの顔を見る バーネットが疑問して言う
「はぁ?」

【 ローレシア城 】

玉座の間 玉座に座るイシュラーンのもとへ キルビーグが焦って走って来て言う
「父上!バーネット殿の居場所が判明致しました!」
イシュラーンが少し驚いて言う
「キルビーグ、どうした?処理の方法は分かっているであろう?位置を検索し聖魔力を…」
キルビーグが顔を横に振って言う
「バーネット殿は旧世界へは行って居ません!彼が所持していた宝玉の保管場所であった!」

【 119年前 ソイッド村 】

バーネットの悲鳴が響く
「なにぃいい!?ローレシア暦1032年だとぉおお!?」
村人達が呆気に取られてバーネットを見ている バーネットがテイに言う
「おいぃい!!てめぇええ!!否定しやがれぇええ!!今はぁああベネテクト暦119年!!ローレシア暦で言えば1151年なはずだぁああ!!」
バーネットが地面を見つめて言う
「見事にベネテクト国建国の119年前の世界に 飛ばされちまっただとぉおお!?」
バーネットがテイに詰め寄って叫ぶ
「若干っ 嬉しいが!困る!!」
テイが呆れて言う
「嬉しいのか困るのかハッキリしなさいよ?」
村長がやって来て微笑んで言う
「まぁまぁ、安心なされ?きっと失敗した移動魔法で 頭を打たれた衝撃のせいで 少々可笑しくなっただけじゃろう?」
バーネットが怒って言う
「安心出来るかぁああ!!」
テイが微笑んで言う
「なんだー」
バーネットが振り返って言う
「納得すんじゃねぇええ!!」
バーネットが気を取り直して言う
「俺はぁ!こんな所でベネテクト国の建国を祝ってる場合じゃねぇえんだよ!さっさと戻って 色々と調べなきゃならねぇえんだ!ソルベキアが帝国になっちまうかもしれねぇえ!悪魔力に世界が滅ぼされちまうかもしれねぇえ!俺の国の民が!ソルベキアだの悪魔力だのに ぶっ殺されちまうかもしれねぇえんだ!!」
村人達が顔を見合わせ 村長が言う
「貴方が本当に未来から来られた方であるのなら 一体どうやって来なさったのか?魔法で来なさったのか?」
バーネットが村長へ向いて言う
「良く分からねぇ… だが ローレシア城の地下にある 機械のある部屋に連れて行かれて…」
バーネットが思い返しながら言う
「悪魔力の霧にやられそうになって… そう言えば?床には何か魔法陣みてぇのがあったな?あれは… 移動魔法陣みてぇな… それで意識が遠くなった時に もしかしたらと思って 宝玉へ意識を向けようとしたんだが 途中で…」
バーネットが言いながら宝玉を確認する 宝玉が光りを失っている それを見たバーネットが叫ぶ
「あぁああ!?ほ、宝玉の魔力がぁあ!!」
村長がバーネットの手を見て言う
「それはっ …そうか!宝玉の魔力を最大限に引き出して 移動魔法を使うのであれば… 時空までを越えての移動も 不可能では無いかも知れん そして、そうとあれば 同じ方法で彼を元の時代へ戻す事も…」
テイが驚いて村長へ言う
「まさか!?未来の移動魔法陣へ 彼を送ると言うの!?」
村長が頷いて言う
「宝玉の聖魔力に加え、我ら魔術師の力を合わせて この時代と未来の時代の移動魔法陣の空間を共鳴させる事が出来れば 時空さえも越えられるやもしれん」
テイが言う
「でも、この時代の移動魔法陣へ魔力を送る事は出来ても 彼の居た119年後の未来の移動魔法陣へ魔力を送る人は居ないわ!?それでは共鳴にはならない!」
村長がテイの言葉に頷いて悩む テイが肩の力を抜く バーネットが言う
「なら、その119年後の未来の この村へ宛て 手紙を書くってぇえのは?」
村長とテイが驚くバーネットが言う
「この時代が過去なら 未来へ手紙を残す事なんざ簡単だろぉ?」
テイが焦って言う
「それはそうだけどっ!?未来の人が その手紙を信じて 決行してくれるかどうかなんて 分からないじゃない!?」
バーネットが軽く笑って言う
「だったら、信じられる様に 未来の予言でも書いておくか?」
テイが呆気に取られる バーネットが軽く笑って言う
「だが問題はもう一つある、宝玉の力がなくなっちまったんだ これじゃぁ その移動方法は出来ねぇだろ?」
村長とテイが顔を見合わせてから 村長が軽く笑って言う
「宝玉ならこの村にもある その宝玉と交換すれば良い」
テイが驚く
「しかし、村長!宝玉は争いの元になるから 封印しようと」
村長が微笑んで言う
「中身が無くなっている方が 万が一誰かに見付かっても 安心だ これは我々にとっても都合が良い きっと宝玉の精霊様のお導きだ その証拠に」
村長がバーネットの持つ宝玉を見て言う
「その宝玉は このソイッド村の宝玉だ、どう言う理由かは知らぬが 119年後にはベネテクト国の王の手にあるらしい」
バーネットが言う
「この宝玉は 城にあった宝の地図で… ん?だがベネテクトの宝玉は あの隠し扉にあったんだ じゃぁ ソイッド村の宝玉があった あの宝の地図は誰が?…て、まさか!?」
バーネットが両手で頭を抱えて叫ぶ
「あの適当な宝の地図はぁあ!!俺がぁああ!?」
バーネットが苦悩する

バーネットが移動魔法陣の中に立つ テイが来て言う
「もし未来の世界へ手紙が渡らなければ 貴方は何処へ飛んでいくか 分からないのよ?そんな危険な事 本当にやるつもり?」
バーネットが軽く笑って言う
「この時代には ちゃぁんとベネテクト国の王が居るんだ 俺が戻るべきベネテクト国は この時代にはねぇんだよ」
テイが心配そうに見てから言う
「それじゃ、移動魔法のやり方は分かったわね?宝玉の精霊様に語りかけるのよ?自分を未来のソイッド村の魔法陣へ送って下さいって」
バーネットが苦笑して言う
「ああ、テイ てめぇえには世話になったな 助かったぜ」
テイが苦笑して言う
「119年後の子孫に宛てて 私も手紙を書いて置くから」
バーネットが笑う テイが微笑する

魔術師たちが移動魔法陣へ魔力を送る バーネットが交換した宝玉を握り締め 意識を集中させる 周囲に移動魔法失敗の騒音が鳴り響く 目を閉じている魔術師達が呆れの汗を掻き始める やがてテイが目を開けて叫ぶ
「ちょっと!こっちも大変なんだから早くしなさいよ!」
バーネットがテイに顔を向けて言う
「うるせぇえ!!やってるっ!!宝玉の精霊様が 言う事を聞きやがらねぇんだよ!!」
テイが衝撃を受けてから叫ぶ
「そんな態度じゃ精霊様だって力を貸して下さらないのよ!!馬鹿ー!!」
バーネットが衝撃を受けてから叫ぶ
「なぁあ!?て、てめぇええ!!一国の王に向かって馬鹿とはなんだぁあ!!てめぇえの方こそ王に対する態度がなってねぇえだろ!!」
テイが怒って言う
「貴方こそー!!この時代の王様じゃ無いんだから さっさと自分の時代に帰りなさいよーっ!!」
バーネットが衝撃を受け 宝玉を握り締めて言う
「うるせぇええ!!俺だって帰りてぇえんだ!!おらぁああ!!宝玉ぅうう!!ぶっ壊されたくなかったら 俺を元の時代へ飛ばしてみやがれぇええ!!」
宝玉が強い光りを放つ バーネットが驚き咄嗟に両手で身を防御する 爆発音と共にバーネットが消える 宝玉が地に転がっている 周囲に居た魔術師達が驚き心配する テイが呆気に取られてから心配気に視線を落とし宝玉へ目を向ける

【 ソイッド村 】

魔術師たちが魔法陣に向かって魔力を送っている そこへ鳴り響く移動魔法失敗時の破裂音 その激しさに目を閉じている魔力者たちが呆れの汗を掻き始める そこへ大音量と共に バーネットがぶっ飛んで来る 過去の時と同様に崖の壁へ突っ込む 魔力者たちが驚き 皆で恐る恐る壁にめり込んだバーネットを確認する バーネットが地面に崩れ落ちる ミラが駆け寄って来て 俯いているバーネットの顔を覗き込む様にして言う
「ちょっと!?貴方、大丈夫!?」
バーネットが顔を下げたまま問う
「今はぁ… 何年だぁ…?」
ミラが疑問して言う
「え?何年って…?」
バーネットがミラに詰め寄って叫ぶ
「今は何年だって聞いてんだぁああ!!このぉおお …って!?おめぇはっ!?」
ミラが驚いて言う
「バーネット陛下っ!?」

ミラがバーネットの前に立って言う
「私の家には119年前の先祖から 受け継いできた手紙があったんです その手紙には もう1つの手紙を今日現れる予定の人に渡して欲しいって」
ミラが言いながらバーネットへ手紙を渡す バーネットがそれを受け取ると ミラが言う
「私、もう行かないと 皆が魔王と戦っているんです」
バーネットが驚いて言う
「魔王と!?ちょっと待て!魔王なんざ んなものはっ!?」
ミラが答える
「カイザと言う海賊が見つけた結界の島に 魔王が居ると ローレシア国が発表したんです ザッツたちが向かっていて…っ でも、私はこの手紙の約束を守りたくて 残っていたんです だから急がないと」
ミラが移動魔法の詠唱を行う バーネットが言う
「ローレシアが発表しただと!?それじゃ 何の確証も!?おい!待てっ!!」
バーネットが止める前で ミラが移動魔法の詠唱を終えて飛んで行く バーネットがそれを目で追った後 ローレシア城の方へ視線を向け表情を顰めた後 改めて渡された手紙を開封して読む

『未来のベネテクト国の王様へ 貴方に頼まれた適当な地図は 約束通り私たちの時代のベネテクト国の王様に渡しておきました 119年後に必要だなんて、普通なら信じられない話を信じてくれる 貴方に良く似た 王様らしくない王様でした それから貴方が使った宝玉は 村長の指示でこの村の祭壇の近くに隠しておく事になりました 村長曰く やはり宝玉の精霊様がこの村に留まりたかったのではないかと しかし、貴方なら もう一度あの宝玉の精霊様に力を貸して貰えるかもしれません …あ!だからって、あまり精霊様に失礼な態度は取らない様に!…追伸 私達の時代のベネテクト国の王様から伝言です 『もしベネテクト国を潰しやがったら てめぇを ぶっ殺す!!』 だそうです それでは精霊様と共に御先祖様の霊にも 気を付けて』
バーネットの後方に ベネテクト国 歴代国王2人が怒りに満ちている姿が浮かぶ バーネットがゾッとする 周囲に魔術師が居る バーネットが魔術師を1人締め上げて叫ぶ
「お、おいっ!この村の祭壇ってぇえのは何処だぁあ!?国は潰れっちまうかもしれねぇが 民だけは守らねぇえと 俺が御先祖様に ぶっ殺されちまうっ!!」

バーネットがソイッド村の祭壇を探りまくっている 長老がそれを見守っている バーネットが頭を抱えて言う
「何処だ!?何処だ!?『祭壇の近く』って それだけじゃ…っ!」
長老が微笑んで言う
「もし、貴方様が本当に 約束の古い手紙を書かれた方であるなら 一度はその宝玉に触れ その力を使ったと言う事になる… じゃったら その宝玉の精霊様に語りかければ きっとお返事をして下さるじゃろう」
バーネットが 長老へ振り返って言う
「宝玉の精霊様に 語り掛けるだぁ?」
バーネットが周囲を見渡してから 間を置いて叫ぶ
「おぉおおい!!119年前に俺と会った宝玉ぅうう!!さっさと返事しねぇええと この祭壇ごと てめぇええも ぶっ壊すぞぉおお!!」
バーネットの側面の壁が爆発してバーネットが吹っ飛ぶ 長老が一瞬驚いた後に笑って言う
「ふぉっふぉっふぉ 流石は宝玉の精霊様じゃ 119年も経たれても 貴方様を覚えておられた」
バーネットが長老に向かって勢い良く起き上がり 長老の視線を追って壁にある宝玉に気付く

バーネットが村の外に立ち ローレシア城方面へ視線を向けて言う
「悪魔力の元は魔力穴から聖魔力を抜き取った結果だったんだ そうとなりゃぁ魔王なんてモンは端ッから居ねぇはず …だったら 勇者様は何と戦おうって言うんだ?」
バーネットが宝玉を見て ミラが言った言葉を思い出す
『カイザと言う海賊が見つけた結界の島に 魔王が居ると ローレシア国が発表したんです もうザッツたちが向かっていて… でも、私はこの手紙の約束を守りたくて 残っていたんです だから急がないと』
バーネットがミラの言葉を考えて言う
「カイザと言う海賊が見つけた結界の島に魔王… カイザ? …まさか!あいつか!?」
バーネットが宝玉を握り締めて叫ぶ
「おぉおい!!宝玉ぅうう!!ぶっ壊されたくなかったら 俺をカイザのもとまで 飛ばしてみやがれぇええ!!」
宝玉が光バーネットが飛んで行く

【 海賊船フェリペウス号 】

カイザが船の舵を頬杖代わりにして レーダーを見て言う
「あの島が魔王の島ね~?でも ま、勇者様たちがあの島の結界を解いてくれたら~?魔王は勇者様たちにお任せして… その隙に 俺らがお宝を頂いて…!」
カイザが首を傾げて言う
「なんて 流石に無理だよなぁ~?魔王が居るって事は 悪魔力も一杯なんだろうし 下手に近づいてあの時のダンナみたいに 魔物化 …ん?」
カイザが言い掛けた所に遠くから何かが凄い勢いで飛んでくる カイザが目を丸くして焦る バーネットが移動魔法でぶっ飛んで来て カイザのすぐ近くの船の壁に激突し その中の部屋まで突っ込んでいく カイザが怯えて身体を逸らして中を確認する バーネットが勢い良く立ち上がり カイザの前まで来る カイザがバーネットの顔を見て叫ぶ
「ひーっ!!で、出たぁ~~!!」
カイザが逃げ出そうとする バーネットがすかさず鞭を振るってカイザの足を取る カイザが転んで振り返る バーネットが近付き凄んで言う
「てめぇえ… 何んで逃げるんだぁ…?」
カイザが怯て叫ぶ
「ひえ~ お、お助けを…っ!」
カイザがふと気付き振り返って問う
「って?…あら?今日のダンナは 魔物化してね~の?」
バーネットが一瞬、間を置いてから叫ぶ
「てめぇええ!!俺がしょっちゅう魔物化してるみてぇえな 言い方するんじゃねぇええ!!」
カイザがバーネットを指差して言う
「ある意味 してるっつーのっ!」
バーネットが鞭で床を打って言う
「んだとぉおお!?」
カイザが慌てて言う
「ひ~~っ!魔王より悪魔力より 俺はダンナが一番こえ~~よ!」
バーネットがハッとして言う
「あっ そうだったぜ!おいっ!てめぇえ!」
バーネットがカイザの襟首を掴んで 怒りに満ちて言う
「てめぇええが 魔王の島を見つけたってぇええのは 本当なのかぁああ!?」
カイザが怯えながら言う
「頼むから 普通に質問してくれー!」

話を聞き終えたバーネットが言う
「んじゃぁ、見つけたのはてめぇだけど てめぇに場所を知らせたのはその天使様で、おまけに その島の事をヴィクトールの奴が知っていて 一度確認はしたが分からなかったものを 急にローレシアが魔王の居場所だと断言した… ってぇ事か?」
カイザが軽く頷いて言う
「あぁ、大体そんな感じだ それで 今日は勇者様たちが あの島の魔王を退治してくれるって言うじゃね~の?だから俺たちは そのドサクサに紛れてお宝を頂戴しようかな~ って来たんだが… やっぱヤバそうだから止めたーって 引き返してたトコに ダンナが突っ込んで来た訳 …て事で」
カイザがバーネットの破壊した船の壁を指差して言う
「そこの修理代!払ってくれよなっ!?ダンナも『金持ちの王様』なんだろ!?」
バーネットが考える姿で言う
「その天使様ってぇのは良く分からねぇが 何でヴィクトールの奴が知ってやがったんだ?あいつが知ってるって事は その島に魔王が居やがるってぇは事実なのか…?」
カイザがバーネットへ顔を向け 破損箇所を指差しながら言う
「それは良いから 修ー理代っ!何でこう 王様ってやつらは人の話を聞かねーのっ!?」
バーネットがカイザへ顔を向けて言う
「るせぇええ!聞いてるっ!俺は『金持ちの王様』なんかじゃねぇえ!」
カイザが衝撃を受けて言う
「そこじゃなくって!別の所を聞いてくれーっ!」
バーネットが一息吐いて言う
「…ふん、まぁ良い とりあえず 俺もその島へ連れてけ、俺も自分の目で確認する」
カイザが衝撃を受けてから言う
「だから人の話を聞けって!『ヤバそうだから止めた』って言っただろーっ!?」
バーネットが床へ腰を下ろして言う
「着いたら起こせよ?時代まで超えて 色んな所に突っ込んだせいで 流石に疲れたぜぇ…」
カイザが怒って言う
「だから行かねーって!」

海上を行く船 カイザが舵を頬杖代わりにしている 横目で後方を確認する バーネットが壁に寄り掛かって寝っている それを見てカイザが言う
「『行かねー』って言ったのに 何で熟睡出来るんだ?…俺って優し~よなぁ~?」
カイザが計器を操作していると通信が入る 気付いたカイザがモニターを確認し 軽く笑ってから 通信を繋いで言う
「よぉ~ 勇者様~生きてたかー!」
モニターの中のラーニャとミラが声を合わせる 
『『カイザ!!』』
続いてザッツロードが通信機に向かって言う
『カイザ!君が居てくれて助かったよ!』
カイザがニヤリと笑って言う
「そうだろ~?まぁ、このイカレタ海上を行けるのは この海賊カイザ様以外 だ れ も 居ないだろーなーぁ? あーははははは!」
カイザが大笑いする その後ろでバーネットが目を覚まし顔を上げながら前方で大笑いしているカイザを見る 通信機からザッツロードの声が届く
『カイザ!その『海賊カイザ様』に頼みがあるんだ!今すぐ結界の洞窟へ 僕達を助けに来て欲しい!』
続けてラーニャとミラの声が聞こえる
『お願い!』
『あなただけが頼りよ!』
バーネットが立ち上がってカイザに近づく カイザが身体を逸らしながら叫ぶ
「だはあーははははっ 良いね~ 勇者様と仲間の可愛い子ちゃんに 「お願い!あなただけが頼りよ!」だってよー!」
通信機からザッツロードの声がする
『カイザ!来てくれるのかい!?』
カイザが再び通信機へ顔を近づる バーネットが通信機のモニターを覗こうとするが カイザが邪魔で見えない カイザが通信機へ言う
「う~ん…実は今~ お前達のひじょーに近くに居る」
通信機からラーニャとミラの声が重なって聞こえる
『『カイザァ!!』』
バーネットが聞き覚えのある声だと思い考える その前でカイザがう~んと悩む姿で言う
「でもなぁ?その辺すげー時化ってんだよなぁ… 危ないから止めちゃおっかな?」
通信機からラーニャとミラの声が続いて聞こえる
『え!?』『ちょっと!?』
バーネットが分かった様子でカイザに近づき 通信機からカイザを退かそうとする カイザが通信機に近寄って言う
「1人たりねぇ~だろ?ほらっ!…お前たちの中に居る 一番の美人さんがよ?」
バーネットがちょっと驚き 再び首を傾げて考える 通信機から戸惑いのレーミアの声が聞こえる
『え?わ、私?』
バーネットが再び通信機のモニターを見ようとする カイザが通信機に近寄って言う
「おーい ちょっとぉ… 聞こえてるぞー?」
バーネットが位置を変えて通信機のモニターを確認しようとする カイザが通信機にかじりついて言う
「…堅ぇ…もっと カワユく!」
バーネットが疑問して 苛立った様子でカイザの肩に手を置く 通信機からレーミヤの声が響く
『お…お願いっカイザ…!』
バーネットが衝撃を受けてカイザへ視線を向ける カイザが叫ぶ
「おおおーーー!!!」
カイザが通信機に張り付いてモニターを覗き込む レーミヤの声が通信機から漏れる
『いやぁっ!』
バーネットが衝撃を受け カイザの頭を掴んで言う
「いい加減にっ!」
通信機から引き離されたカイザが通信機ごと後ろに倒れる バーネットが驚いて言う
「あぁああ!」
バーネットが慌てて通信機を取り戻しモニターを見る 画面がちらつく バーネットがカイザへ向く カイザが満面の笑みで立ち上がりながら言う
「ダンナ!聞いたか!?あの美人さんに「お願いっカイザ!」だってよーー!?」
バーネットが怒って言う
「知るかぁあ!誰と話してやがるんだ!?てめぇええはぁあ!」
カイザがキョトンとして言う
「え?誰って?勇者様御一行」
バーネットが衝撃を受けて叫ぶ
「もっとっ 重要な事を 話しやがれってんだぁあ!!この変態野郎ぉおお!!」
バーネットがカイザを殴る カイザが殴られた頭を擦って言う
「痛って~っ 別に焦る事ないだろ~?これから話したら良いだろーがさ?おーい 勇者様…あら?」
バーネットとカイザが見ている前で通信機のモニターが消灯する 2人の後頭部に汗が落ちる バーネットがカイザの襟首を掴んで叫ぶ
「消えたじゃねぇええか!?このタコ野郎がぁああ!!」
カイザが焦って言う
「タコーー!?俺がタコだってーのー!?」
バーネットが怒って言う
「てめぇええが 通信機にタコみてぇええに へばり付いてるやがるから 俺が確認出来なかったんだぁああ!!」
カイザが苦笑して頭を掻く バーネットが怒りを収めてから言う
「…でぇ?勇者様は何だと?てめぇーは何を『お願いカイザ』されてやがったんだよ?」
カイザが呆気に取られてから 視線を斜め上へ向けて言う
「あ~… そう言やぁ なんかヤバそうな雰囲気だったよぉなぁ~?」
バーネットが一瞬呆気に取られてから 怒って言う
「だったら急げ!!このタコ助がぁああ!!」
バーネットが鞭で床を叩く カイザが怯えて計器を操作しながら言う
「ハイハイハイ!分かりましたよー!女王様ー!!」
バーネットがが衝撃を受けて叫ぶ
「誰が女王様だ このドスケベタコ野郎がぁああ!!」

フェリペウス号が結界の島の見える場所までやって来る

バーネットが島を見て言う
「なっ なんだありゃ!島中 悪魔力の霧に覆われてやがる!」
カイザが焦って言う
「えーーっ!?そ、それはヤバイ所じゃ ねーじゃねーの!?」
バーネットが宝玉を見てからカイザへ言う
「心配ねぇ こっちには宝玉があるんだ いざとなったら こいつで俺が この船にソコソコ強力なバリアを張ってやる このまま あの島へ突っ込め!」
バーネットが言葉と共に島を指差す カイザが表情をしかめて言う
「う…うーん、ま、まぁ そう言う事なら…?」

船が島に近付く バーネットが島に居るドラゴンを見上げて言う
「あいつが魔王だってぇえのか!?」
カイザが甲板へ走って行き 島に居るザッツロードたちへ叫ぶ
「おーい!!これ以上行けねぇー!泳いで来やがれー!」
バーネットがザッツロードたちを見る カイザが再び舵を取りに向かおうとしてザッツロードたちへ顔を向けて立ち止まって言う
「お、おい~? 何モタモタしてんのー!?」
バーネットがザッツロードたちの様子を見て言う
「何か問題があって 来られねぇって感じだな?」
カイザが一度バーネットへ視線を向けてから再びザッツロードたちへ向く バーネットが近くへ向かいザッツロードたちの様子を伺う ヘクターの叫び声が届く
「しかたねーだろっ!!宝玉がねぇーんじゃ 打つ手なしなんだよ!!」
カイザとバーネットが一瞬驚き 二人でバーネットの手にある宝玉を見る 次に顔を見合わせてから バーネットが口角を上げてザッツロードたちへ叫ぶ
「その宝玉のお届けだー!受け取りやがれぇーー!!」
バーネットが言うと共に 宝玉を鞭でヘクターへ目掛けて飛ばす カイザの頬を掠めた宝玉がヘクターのもとへ届く 一瞬遅れてカイザが振り返り バーネットへ叫ぶ
「か、かかかか掠ったーー!!死ぬかと思ったじゃねーのっ!ダ、ダンナぁーーー!!」
カイザがバーネットへ涙目で訴える バーネットが苦笑して言う
「はっはー 悪い悪い?」

バーネットの宝玉を受け取ったザッツロードたちが船へ向かっている カイザがザッツロードたちへ向かって叫ぶ
「おおーーい!早くしろーー!こっちが持たねぇー!」
カイザが言い終えると共に ブリッジへ戻る ザッツロードたちが仲間たちを気遣いながら船に向かって来る バーネットが軽く笑ってから ドラゴンを見上げる ドラゴンが近付いて来る バーネットが舌打ちをして カイザのもとへ向かい カイザが計器を操作している所に バーネットが来て言う
「おいっ!あのドラゴンが来て 船をぶっ壊すかもしれねぇえじゃねぇえか!?何でこっちも大砲とか ぶっ放なさねぇええんだ!?」
カイザが苦笑して言う
「へへへ~ 実は港から出る時に 全部ソルベキア艦隊に 使っちまったもんで」
バーネットが衝撃を受けてから叫ぶ
「出る時に使っちまったって!?それじゃ これから どぉおおするつもりなんだ!?てめぇええはぁああ!?」
カイザが笑って誤魔化す

ザッツロードたちが網に掴まっているのを確かめ カイザが船員たちへ向けて叫ぶ
「取り舵いっぱーい!!全速前進!!いそげぇーー!!」
船が向きを変え 動き始める 皆が振り返って島を見る 強い光りを放つ宝玉に黒い霧が抑えられている その中をドラゴンの影がもがきザッツロードたちへ向かって来る ヘクターが声を上げる
「あいつ!まさか島から出られるのか!?」
ヘクターの隣で網にしがみ付いているプログラマーのデスが答える
「結界がある限り あの魔王が外へ出る事はない」
ザッツロードが船の上へ顔を向けて叫ぶ
「カイザ!急いでくれ!!」
カイザが叫ぶ
「やってるよ!俺たちだってこんな所には 一秒だって居たくねぇー!」
船の速度が上がる 網にしがみ付いているのが苦しくなる カイザが叫ぶ
「お前ら!自力で上がって来い 今はそっちに動力使ってる余裕がねーんだ!」
カイザの声を受け ザッツロードたちが網を登り始める 魔法使いたちに続きヴェルアロンスライツァー、ロキが登りザッツロードがヘクターに手を貸して言う
「ヘクター、大丈夫かい!?」
ザッツロードの言葉にウィザードを抱えているヘクターが見上げて言う
「おうっ!何とかなる デス!引っ付いてるか!?」
プログラマーのデスが言う
「なんとか な…」
ヘクターが自分の後ろに続くプログラマーのデスを見下ろす プログラマーのデスが見上げて返事をする ヘクターが頷いて網を登る 皆が網を上り終えて船の後方から島へ目を向ける 浜辺まで来たドラゴンが船を目掛けて炎を吐き出す 黒い炎が悪魔力を纏い 船の後方へ届く カイザが声を上げる
「ああーー!!俺の船に何しやがる!!」
ザッツロードと魔力者たちがいっせいにマジックバリアを張る 船に向かっていたドラゴンの黒い炎が弾かれる ヘクターが声を上げる
「よっしゃぁあ!」
炎を弾かれたドラゴンがその手を振りかざす ヘクターが叫ぶ
「やべぇえ!みんな伏せろ!!」
ヘクターの声にマジックバリアを張っていたザッツロードと魔力使いたちの行動が遅れる ラーニャが声を上げる
「うそっ!?」
ラーニャをヴェルアロンスライツァーが庇い ミラをロキが庇い レーミヤをカイザが庇い 


さて
修正プログラムを
始動させる
対応は 当然 お前に任せる

ヘクター


ヘクターがプログラマーのデスを庇う 皆が伏せると ドラゴンの手がギリギリ船の後方 伏せたヘクターたちの頭上を過ぎる ザッツロードが思わず閉じていた目を開く 同時にヘクターの声が響く
「ザッツッ!!」
ドラゴンの手にザッツロードが握られている 再びドラゴンが空いている手を船へ向ける ヘクターが大剣を抜いて船から飛び出して叫ぶ
「この野郎ぉ!!」
ザッツロードが叫ぶ
「ヘクター!来てはいけない!」
プログラマーのデスが叫んで手を伸ばす  
「駄目だヘクター!!間に合わない!!」
プログラマーのデスの手は届かず ヘクターが船から離れる ラーニャとミラが同時に叫ぶ
「「ヘクター!!」」
ラーニャとミラの横にバーネットが走って来ると共に ヒュッと鞭の音が響く ドラゴンへ目掛け飛び掛っていたヘクターの体に鞭が巻き付き その鞭に引かれ ヘクターの身体が船へ引き戻され 甲板に叩き付けられる 甲板に身体を打ち付け声を詰まらせながらも 無理やり立ち上がり向かおうとする そのヘクターの身体をヴェルアロンスライツァーとロキが2人掛りで押さえ付ける ヘクターが声を上げて暴れる
「離せええ!!」
しかし 2人に両腕を押さえられ ヘクターは動けずに叫ぶ
「離せ!離せっつてんだ!ちくしょぉおお!!ザッツーー!!」
ヘクターの声が響く中 スピードを増した船が 島が遠ざかって行く 


島が見えなくなると暴れていたヘクターが力を失う ロキとヴェルアロンスライツァーがヘクターを押さえていた力を緩める ヘクターが仲間たちへ向き直って叫ぶ
「なんでだよ!?なんで助けようとしねぇえんだ!?お前らだって 仲間だろっ!?」
そこへバーネットが現れて言う
「いい加減落ち着きやがれ ヘクター!」
皆がバーネットへ向く ラーニャが驚いて言う
「バ、バーネット陛下!?」
皆の視線を受けながら バーネットが言う
「あいつを助けたかったのは てめぇえだけじゃねぇ 皆助けたかったに決まってんだろ?」
ヘクターが一瞬驚いてから 顔を向け バーネットへ掴みかかって言う
「ならっ 何で戻らねーんだよ!?今すぐ!!」
バーネットがヘクターを殴り付ける ヘクターが後方の床へ叩き付けられる ラーニャとミラが一瞬すくみあがる バーネットが一歩前へ出て叫ぶ
「馬鹿野郎ぉ!いつまでも勢いだけで 吠えてやがるんじゃねぇえ!」
ヘクターが上体を起こしてバーネットへ強い視線を向ける バーネットがヘクターを見下ろして言う
「今のまま戻ったって あいつを助ける所か 船ごとぶっ潰されて 皆やられっちまうだろうが!?あいつを助けるなら 一度戻って 何らかの策を編み出すしかねぇ あの島の状況だって大陸に居る奴らへ伝えなけりゃならねぇ 今ここで 俺ら全員が あのでけぇドラゴンに やられっちまう訳には いかねぇんだよっ」
ヘクターが悔しそうに視線を落とす バーネットが床に横たえられているウィザードのもとへ向かう それを見ていた ラーニャ、ミラ、セーリアが顔を見合わせてから ウィザードのもとへ向かい回復魔法を施す ヘクターがその様子を横目に見てから立ち上がる ロキとヴェルアロンスライツァーがヘクターを見つめる ヘクターが苦笑して言う
「悪い… そうだよな?皆だって… ザッツを助けたかったんだよな…?」
ロキとヴェルアロンスライツァーの2人が息を吐き ヴェルアロンスライツァーが言う
「当然だ、ヘクター」
ロキが少し視線をそらして言う
「…卿を押さえていたお陰で 銃弾を浪費せずに済んだ」
ヘクターとヴェルアロンスライツァーがロキへ顔を向けてから苦笑を合わせる

船が航海を続ける

ブリッジでカイザが船の舵をとっている その横でバーネットが通信機を操作している 通信機は繋がらない バーネットがイライラして言う
「だぁああ!!まだかぁああ!?まだ大陸の何処にも届かねぇええのかぁああ!?このポンコツ野郎ぉがああ!!」
カイザが呆れてバーネットへ向いて言う
「だ~から、大陸と通信が繋がる範囲に近づくのは もう半日位経ってからじゃ無いと 無理だってぇ~」
バーネットがカイザを無視して通信機をいじる カイザが溜め息を付いて言う
「さっき一瞬でもダンナを見直した俺を 誰か慰めて欲しいぜ…」
バーネットが通信機を操作しながらイライラして言う
「半日なんざ待てるかぁ!あんな大量の悪魔力が結界の範囲外に出ちまってたんだぞぉ!あれが全部大陸に行ったらどぉなるか 分かったもんじゃねぇえっ きっと大量の動物が魔物化しちまう さっさと各国の警備を最上位まで上げて… いや、それじゃぁあダメだ どっかいっぺんに あの霧がまとまっちまうってぇ可能性も ありやがるかもしれねぇ そうとなったら…っ」
カイザが少し真剣な表情でバーネットへ視線を向ける 通信機を操作していたバーネットが一瞬間を置いてから 痺れを切らし 通信機を両手で掴んで叫ぶ
「おらぁああ!!通信機ぃい!!さっさと繋がらねぇええと てめぇえも ぶっ壊すぞぉおお!!」
カイザが驚く バーネットが通信機を担ぎ上げる カイザが慌てて止めて言う
「だーーっ!やめろー-!海上通信機は すげー高けぇえんだぞー!」
バーネットがカイザへ顔を向けて叫ぶ
「うるせぇええ!!きっと通信機の精霊様が ビビって力を貸してくれる!!」
カイザが泣きながら言う
「通信機の精霊様なんて 聞いた事ねぇってー!」

半日後の夕方 

船の甲板から大陸が薄っすら見える 床に壊れた通信機がある カイザが泣いている ヘクターと仲間たちが カイザを見てから顔を見合わせて首を傾げる その後ろでバーネットが自分の通信機へ言う
「モフュルス、どうだ?俺が居ねぇ間に…」
ヘクターが皆に向かって問う
「魔王を倒すには やっぱり宝玉が必要だ 今回使っちまった奴はもう使えねーし どうする?」
ラーニャが言う
「バーネット陛下が持ってきてくれた宝玉は 私たちが持って来られなかった ガルバディアの宝玉でしょ?だとしたらもう使える宝玉は何処にも無いのよ?」
ミラが考える姿で言う
「そうよね… 大陸にある宝玉は 全て使ってしまった事になるわ」
ヴェルアロンスライツァーがヘクターへ向いて言う
「魔王を倒す事は もはや不可能と言う事になる」
ロキがヴェルアロンスライツァーへ言う
「…その上 バーネット陛下から受け取った宝玉で あの島に結界を張っておける期間も問題だ」
プログラマーが言う
「ザッツロードが あのドラゴンの手から逃れる事が出来たとして 島に残してきた宝玉のそばに居れば ドラゴンからの攻撃を受ける事は無い 悪魔力の影響を受けた者は あの宝玉のそばには近付けないからな」
ヘクターが顔を上げて皆に言う
「一度アバロンに戻って ヴィクトールに相談しようぜ?結界の期間は大体10年位あるんだろ?」
ヘクターがプログラマーへ顔を向ける プログラマーが頷いて言う
「ああ、10年は持つ それに 新しいプログラムを作成し、改良を続けて行けば もっと期間を延ばす事も可能だ」
皆が安堵してラーニャが言う
「もぉ~ それ早く言ってよ?私、てっきり 絶対10年しか持たないのかと思ったぁー」
皆の視線がプログラマーへ向く プログラマーが言う
「確かに 10年の期間を延ばす その方法はあるが 問題もある」
ヴェルアロンスライツァーが問う
「その問題とは?」
プログラマーがヴェルアロンスライツァーへ向き言おとするが ヘクターが制して言う
「待った、その話はもう良い デスが方法があるって言った時は 出来るって事だ だから、一先ず結界の方は安心だぜ」
プログラマーがヘクターを見上げ言い掛ける ヘクターが先行して言う
「それよりザッツを助け出す方法だ、いくら島に残した宝玉の近くに居れば安心だって言っても 水も食料もねぇんだから 早く助けに行かねーと死んじまうだろっ?」
ヴェルアロンスライツァーがひらめいて言う
「うん?彼を助け出すだけならば 魔王と戦う必要は無いのでは なかろうか?」
ロキが続けて言う
「…奴の隙を伺い ザッツを助け出すと言う事か?」
ラーニャが笑顔で言う
「そうよ!魔王は結界の中に またずーっと封じておいて、宝玉の力が戻った頃に その時の勇者様たちに倒して貰うって事で!」
ミラが言う
「私たちがやるべき事は ザッツの救出ね?」
ラーニャが頷いて言う
「そうそう!後、未来の勇者様たちのために ちゃんと魔王の島の場所や 魔王との戦い方とかを 残しておく事!」
レーミヤが苦笑して言う
「そうね それはとても大切だわ 私たちが今回の旅で得られた 唯一の事だものね?」
ヘクターが笑顔で言う
「よし!そうと決まれば ザッツを助け出す方法だ!あのドラゴンが居る限り 正面から船で向かう事はできねー 移動魔法が使えねーんだから 船を壊されたら俺たちも帰れなくなっちまうもんな?」
通信機の修理を行っていたカイザが振り返って言う
「ちょっとー!縁起でもねー事も 言わねーでくれる!?」
皆の視線が一度カイザへ向く ヴェルアロンスライツァーが言う
「ヘクターの言う 島の正面 あの場所以外の島の外周は どうなっているのだろうか?」
ロキが続けて言う
「…魔王の気を引いておくと言う事であれば 他の入島経路があれば最良ではある」
プログラマーが言う
「いや、たとえ有ったとしても あの島は全体に悪魔力の霧が発生していた 宝玉が無い状態で入島する事は危険だ 入るとしたらヘクターの言う正面の あの宝玉のある周囲にしか我々は近づけない」
プログラマーの言葉に 通信機の修理をするカイザが薄笑いで言う
「どっかの王様みて~に 魔物化しちまっても 俺はもぉ~関わらせね~でくれー?」
通信を続けているバーネットが振り返って言う
「あん?今、俺を呼んだか?」
カイザが慌てて顔を横に振る バーネットが通信に戻る ヘクターたちが首を傾げてから話し合いへ戻ろうとする バーネットが声を荒げて言う
「あぁあ!?そらぁあ どう言う事だっ!?」
ヘクターたちがバーネットへ顔を向ける バーネットが叫ぶ
「馬鹿野郎ぉおお!!モフュルス!!そう言う事は 先に言えって いつも言ってるだろぉおお!!」
ヘクターたちが驚き顔を見合わせる バーネットが通信機へ指示を送った後 すぐに通信を切る ヘクターが声を掛ける
「おい、バーネット 何かあったのか!?」
バーネットが振り返って言う
「大陸の方で悪魔力が大量に発生してやがる!お陰で魔物も大量に増加して 各国はその対処に追われてる!」
ヘクターたちが驚く バーネットがヘクターの仲間たちへ言う
「おい!てめぇらが使っていた宝玉は何処だ!?時間がねぇ!うちの宝玉じゃ無くても良いから 一個返しやがれ!」
バーネットが手を出して急かす ラーニャがハッとして宝玉を取り出して言う
「あ、これ、ベネテクト国の宝玉」
バーネットが受け取る ヘクターが言う
「おい、どうするつもりだよ!?その宝玉の力はもう」
バーネットが宝玉を見てから言う
「別にこいつで悪魔力を どうこうしようって気はねぇ だが今は緊急事態だ!」
バーネットが言い終えると共に 船の最前へ向かって走りながら叫ぶ
「おぉおい!!宝玉ぅうう!!ぶっ壊されたくなかったら 俺をベネテクト国へ ぶっ飛ばしてみやがれぇええ!!」
宝玉が強く光り バーネットが飛んで行く ヘクターの仲間たちが呆気に取られる ラーニャが間を置いて言う
「…え?呪文の詠唱も無しに?」
ミラが続けて言う
「い、移動魔法よね?今の…」
レーミヤが苦笑したまま言う
「呪文を詠唱せずに 魔法を使えるだなんて… やっぱり 宝玉の保管を任されている国王様は 凄いのね…?」
ヘクターが首を傾げて言う
「あ?さっきのが 呪文じゃねーのか?」
ラーニャ、ミラ、レーミヤが衝撃を受け ヘクターへ詰め寄って言う
「あんなので魔法が使えたら 世界中の人が魔法使いになれるわよ!」
「あんな言葉で精霊様が お力を貸して下さるなんて ありえないわ!」
「魔法は呪文だけではなく 精神統一だって必要なのよ!?」
ヘクターが苦笑しながら一歩後ずさる ロキがヘクターの前に行って言う
「ヘクター …先ほどのバーネット陛下の言葉が事実であるのなら …俺はスプローニ国へ戻らねばならない」
ヘクターが視線を下げる ラーニャが驚いてロキの横に来て言う
「ま、待ってよ!スプローニ国を守る兵は ロキ以外だって一杯居るでしょ!?」
ミラが続けて言う
「そうよ、スプローニ国を守る銃使いはたくさん居ても 私たちの仲間の銃使いは貴方だけなのだから」
レーミヤがロキを見る ロキがヴェルアロンスライツァーへ横目で視線を送る ヴェルアロンスライツァーが下げていた視線を上げて言う
「すまない 私も行かねばならない」
ラーニャとミラが驚き ラーニャが言う
「そんな!どうして!?ザッツは私たちの仲間じゃない!?私たちしか助け出せないのよ!?」
ミラが言う
「そうよ、私たちが助けなければ ザッツは… ヘクター!貴方も2人を止めて!」
皆の視線がヘクターへ向く ヘクターが顔を上げて言う
「俺はザッツもアバロンも両方守りてぇ だからっ」
ヘクターがレーミヤの前に立って言う
「レーミヤ!頼む!俺とデスを 今すぐアバロンへ飛ばしてくれ!」
ラーニャがヘクターへ詰め寄って言う
「ちょっと!ヘクター!どういうつもり!?ヘクターまで自分の国を優先するって事!?」
ヘクターがラーニャへ向き直って言う
「そうじゃねぇーよ!両方守る!その為には どっちも急いで守らなきゃならねーんだ!」
レーミヤが頷いて言う
「そうね 私たちもバーネット陛下みたいに すぐに飛んで行かないと」
ミラが心配そうに言う
「でも、今 皆がばらばらに 離れてしまっては…」
ヘクターがミラへ向いて言う
「俺も ロキも ヴェルも ザッツの事を助けたい気持ちは同じだ!だったら 今離れたって大丈夫だ!すぐに皆で集まって 皆でザッツを助けに行ける!」
プログラマーが言う
「何もせずに この場所で策を練るよりも 今可能な事を行いながら考えれば良い そして連絡を取り合い 決まり次第 皆でザッツロードの救出へ向かう」
ヘクターがプログラマーの言葉を肯定して皆へ頷いて見せる 皆が顔を見合わせて頷き ラーニャが言う
「そ… そっか、そうだよね!?」
ミラが頷いて言う
「離れていたって 皆 仲間なのよ」
皆が微笑む 魔力者の3人がヘクターとプログラマー、ロキ、ヴェルアロンスライツァーを各国へ移動魔法で飛ばす ラーニャがミラとセーリアへ向いて言う
「私たちも一度離れて考える?」
ミラが頷いて言う
「ええ、宝玉に代わる強い 聖魔力の手がかりを探してみるわ」
レーミヤが頷いて言う
「連絡の取り合いを 忘れずにね?」
3人が微笑み頷いてから 船から飛んで行く 通信機の修理を終えたカイザが一息吐いて顔を上げて言う
「ふぅ~ よし!これで何とか通信が… あら?みんな…?一体何処へ行ったんだー?」
カイザが疑問して周囲を見渡す

【 アバロン国 】

ヘクターとプログラマーが戦火の舞い上がるアバロン城に辿り着く ヘクターが表情をしかめ着地と共にプログラマーを担いで走り出す

玉座の間

ヴィクトールの前で家臣たちが資料をてに説明する
「陛下!各国からアバロンへ支援要請が入っております!」
「しかし陛下!アバロン周囲の魔物の量は増え続けております これからも増える事を考えると アバロン部隊を他国に送る事は至難です」
「カイッズ国からはアバロン国への国民の受け入れ要請が入っております!如何致しましょう!?」
ヴィクトールが険しい表情で考えて言う
「要請のあった国の戦況を再度確認!防衛が不可能と判断された国へはアバロン8番隊から下位の部隊を順次向かわせろ!カイッズ国へは非戦闘住民のみの受け入れを許可!ローレシアの魔王討伐はどうなっている!?」
家臣A、Cが指示をを受けてその場から立ち去る 家臣Bが資料を探し ヴィクトールの問いに答える
「ローレシアとは依然連絡が繋がらない状態が続いており 現在も…」
家臣Bが答えていると 伝達の兵が敬礼して言う
「申し上げます!デネシア国より緊急の支援要請が入りました!」
家臣Bが言葉を止めて一度兵へ振り向いてから ヴィクトールへ焦って言う
「陛下!デネシア国には現在 レリアン妃殿下とメイデ王女様が御在城されております!直ちにアバロン上位部隊を向かわせるべきです!」 
家臣Bの言葉を聞き ヴィクトールが考え間を置いて言う
「デネシア国へは… アバロン7番隊を向かわせろ!」
家臣Bが驚いて言う
「陛下!?7番隊では単独で王妃様方をお守りする事が叶いません 最低でも5番隊以上の上位部隊でなければ!」
家臣Bが言っている途中で 別の伝達の兵が走って来て言う
「申し上げます!ベネテクト国バーネット2世国王より 支援要請が入りました!」
ヴィクトールがハッとして言う
「直ちにアバロン5番隊を向かわせろ!同時に、ベネテクト国の最新の戦況報告を!」
家臣Bが即座に叫ぶ
「お待ち下さい ヴィクトール陛下!!この各国の緊急時に デネシア国に7番隊を向かわせた上で ベネテクト国に5番隊を送る事は 今後のデネシア国との友好問題に発展…!」
ヴィクトールが大臣Bの言葉を制して言う
「こちらからの援助を断り続けていた彼が連絡を入れてきたんだ ベネテクト国の戦況はデネシア国よりも酷い 6番隊より下位の部隊では彼の力にはなれない!直ちに5番隊をベネテクトへ!7番隊をデネシアへ送れ!」
ヴィクトールが言うと共に家臣Aが走って来て言う
「陛下!大変でございます!ソルベキアのロボット兵がアバロンに!!」
その場に居る者が皆驚き 家臣Aに顔を向け 続けてヴィクトールへ無言で問う ヴィクトールが怒りを押し殺して叫ぶ
「デネシア及びベネテクトへの支援を取り消す!直ちに各国への部隊支援を停止し!全部隊をアバロンの防衛に当てろ!」
ヴィクトールが玉座の肘掛を殴り 俯いて言う
「最後の切っ掛けすら 失うのか…っ」

【 ベネテクト国 】

バーネットが焦りの表情で城の外で戦火の上がる自国の町を見下ろしている モフュルスが走って来て言う
「バーネット様!全ての町や村から支援要請が入っております!しかし 既にベネテクト国の部隊や傭兵は全て投入されており これ以上の防衛は不可能です!」
バーネットがモフュルスへ向いて言う
「アバロンからの支援部隊はどうした!?もうとっくにベネテクト領域の町に辿り着いても良い時間だ!国境近郊の町からも連絡は入ってねぇえのか!?」
モフュルスが答える
「国境近郊の町からアバロン部隊の到着を知らせる連絡は入っておりません 最新の通信連絡でも現状はベネテクト部隊のみでの交戦を強いられ 引き続き支援を待つと!」
バーネットが再び町を見下ろしながら苦渋の表情で考える モフュルスの通信機が鳴り モフュルスが通信内容に驚いて言う
「バーネット様!アバロンにソルベキアのロボット兵が現れたそうです!」
バーネットが驚いて振り返り言う
「クッソッ!ソルベキアの連中が!魔物の襲撃に便乗しやがったなぁあ!!」
モフュルスが言う
「バーネット様!アバロンは魔物の相手だけでなくソルベキアの相手もしなければなりません 恐らくそれ故に ベネテクトへ部隊を送る事もままならないものと思われます そして現在アバロンの王妃及び王女がデネシアに在城中だと言う情報も確認されております アバロンはそちらへも兵を送らねばならぬ事態かと」
再びモフュルスの通信機が着信する モフュルスが通信をしている間にバーネットが考え 町へ視線を向ける モフュルスが通信を終えて言う
「バーネット様!もう村の防衛は不可能です 下々の町の防衛も突破されつつあるとの事 このままではベネテクトの民らがっ!」
バーネットが気付いて言う
「…違う、ソルベキアが魔物に便乗したんじゃねぇ …逆だっ!!」
モフュルスが驚いて問う
「バーネット様!?バーネット様、ベネテクト部隊へは どの様に連絡を!?」
バーネットがモフュルスへ向いて言う
「ベネテクト国内の全ての村と下位の町の防衛を停止、住民、部隊兵及び傭兵の全てを ベネテクト国内の3つの町に集結させ 何としてもその町を死守させろ!」
バーネットが言い終えると共に城の裏へ向けて走る モフュルスが驚き一度呼ぶが 直ぐに通信を開始する

バーネットが城の裏から北へ向かう道を見る その先にデネシア兵が現れる それを確認しているバーネットのもとへモフュルスが現れて言う
「バーネット様!」
バーネットが薄っすら笑って言う
「デネシアごときが… ベネテクトとアバロンの友情を舐めんじゃねぇっ」
モフュルスがバーネットへ向く バーネットがモフュルスへ向いて言う
「モフュルス!今すぐベネテクト城に爆薬を仕掛けろ!」
モフュルスが驚いて言う
「バーネット様!それは出来ません ベネテクト城の所有者は現在アバロンのメイデ王女 そして、その母方であるレリアン王妃の所有となっております!これを勝手に破壊などしては バーネット様がアバロンへの反逆者として囚われてしまいます!」
バーネットがにやりと笑って言う
「あぁ、分かってる… 分かっててやりやがったんだよ あのデネシアがなぁ?だが、こっちだって負けちゃられねぇ」
モフュルスが問う様にバーネットへ視線を向ける バーネットが笑んで言う
「魔力穴から聖魔力を抜き取れば残るのは悪魔力だ なら めい一杯聖魔力を引抜けば きっと同じだけ悪魔力が増えるんだろう?魔物を増やす事なんざ簡単な事なんだ ソルベキアはついにローレシアとの立場を逆転させやがった この悪魔力の増加は ソルベキアの仕出かした全世界を巻き込んでの アバロンへの攻撃だ そこにデネシアも乗っかって来やがった!」
モフュルスが問う
「ソルベキアが魔物とロボット兵の両方を使い アバロンを落とそうとしている所へ デネシアがどうしようと!?」
バーネットが続ける
「俺がこの城を破壊せず デネシア兵にアバロンへの流入を許せば デネシアはソルベキアと共にアバロンを落とすんだ そして、この城の保守を任されている俺が この城をぶっ壊してそれを阻止すれば 俺はこの城を勝手に破壊した アバロン王妃への反逆者と見なされる …どっちにしてもデネシア兵はアバロンを守りに来ていたと言い張れる訳だからなぁ 俺がアバロンを守る為だったと言った所で9年前と同じだ いや、今回はアバロン王妃への反逆罪も加わわるんだ おまけに 先の脅迫未遂もある ヴィクトールでも今回は俺を庇い切れねぇ」

【 アバロン国 】

ヴィクトールのもとに伝達の兵が来て言う
「申し上げます!偵察部隊より ベネテクト国北方ガルバディア領地内に デネシア部隊が確認されました!」
ヴィクトールがハッと顔を上げる 家臣Aが言う
「ヴィクトール陛下!デネシアの部隊がガルバディアからベネテクトへ向け 進行するとは!これはまさに9年前と同じでは」
ヴィクトールが言う
「そんな…っ それでは デネシアはこの魔物の襲撃に便乗するソルベキアの襲撃までを見越して レリアンとメイデを事前に このアバロンから避難させていたと言うのか!?」
家臣Bが焦って言う
「9年前も デネシアはあの奇襲未遂の前に アバロンに嫁がせていた王妃をデネシアへ避難させていました 今回も きっと同じです!」
ヴィクトールが家臣Bへ向き直って言う
「しかし、あの時は 我々の敵はローレシアとソルベキアだった だから今回もローレシアとソルベキアへは常に目を向けていたのだ ローレシアに動きは無かった そのローレシアの代わりにソルベキアは魔物を使ったと言うのか!?」
家臣Cが驚いて言う
「まさか!?ソルベキアはロボット兵だけでなく 魔物まで操る事が出来ると!?」
ヴィクトールが問う
「現在のソルベキア国の戦況は!?彼らも魔物と交戦を行っていると?」
兵が敬礼して答える
「はっ!現在もソルベキア国は魔物との交戦を行っている事が確認されております!」
ヴィクトールが視線を落とし考える 家臣Aが近くへ来て言う
「ヴィクトール陛下!今回はベネテクト国の助力は期待出来ません!今すぐアバロン部隊をアバロンとベネテクトを結ぶあの道へ配備するべきです!」
家臣Bが驚いて言う
「ベネテクト国への援助部隊を断った上 アバロン国防衛のためにベネテクトとの国境へ兵を向かわせては アバロンとベネテクトの友好条約に…!」
家臣Cが割って入って言う
「それを言っては この非常事態に友好国でもあり王妃様の故郷である デネシアの兵へアバロン兵を配備したとあっては デネシアとの友好条約に…!」
ヴィクトールが頭を抱えて言う
「それらの心配は無い!問題は!アバロンを守ってくれるバーネットを 僕が庇えない事だ!彼は… ベネテクトは、今回もきっとアバロンに手を貸してくれる!だが、今回も アバロンの王は ベネテクトの王を守る術が無いんだ!」

【 ベネテクト国 】

バーネットがベネテクト領域へ向かって来るデネシア兵を見下ろして言う
「はっはー ついに潮時だぜぇ よしっ モフュルス!!今すぐベネテクト城を破壊して アバロンへの道を塞げっ!!」
モフュルスが言う
「しかし!アバロンへ連絡を行わずバーネット様がそちらを決行してしまっては 全責任がバーネット様に!今からでもヴィクトール陛下へ連絡を取り次ぎ お2人の合意を持って執り行ったとあれば 少なくともバーネット様への極刑は免れます!」
バーネットが微笑して言う
「今回のソルベキアの奇襲を退けたって ソルベキアは同じ手を使って来る可能性がある アバロンは今 デネシアとの繋がりを切る訳にはいかねぇ ソルベキアを潰すには デネシアとの繋がりを逆手に取って 仕掛けるしかねぇえんだ ベネテクトの民を守れるのはアバロンだ そして今、そのアバロンを守れるのは ベネテクトの王である俺だけなんだよ」
モフュルスがバーネットの言葉を聞いて言う
「しかし、バーネット様…」
バーネットが手を払って叫ぶ
「うるせぇえ!!やりやがれぇえっ!!責任は 全て俺が持つ!!」
城が大音量の爆発音と共に破壊される その瓦礫が全てベネテクト城の北側へ落ち バーネットとモフュルスが見守る中ベネテクト城は崩れ去る

【 アバロン城 】

伝達の兵が走って来て言う
「申し上げます!ベネテクト国にて たった今ベネテクト城が バーネット2世の命により破壊されました!」
家臣らたちが驚きヴィクトールへ向く ヴィクトールが俯き強く目を瞑って言う
「すまない バーネット…」

【 デネシア国 】

デネシア国王ローゼックの下に伝達の兵が現れて言う
「申し上げます!ベネテクト国にて たった今ベネテクト城がバーネット2世の命により破壊されました!これによりベネテクト領域からアバロン城へ向かっていた デネシア国第8部隊は壊滅 生存者は確認されていないとの事です!」
ローゼックが口角を上げて言う
「引き続き生存者の捜索を続けろ」
伝達の兵が返事をして去って行く ローゼックが隣に居るレリアンへ言う
「どうだレリアン?私の言った通りであっただろう?」
レリアンが軽く笑って言う
「うふ… そうですね お父様の予想通りでした アバロンの王とベネテクトの王の友情… 私には やはり理解は難しい様です」
ローゼックが軽く笑って言う
「私も9年前まではお前と同じであった 例え友好国であっても 他国であるアバロンに対しベネテクトの王が 全てを投げ打つ事が出来るとは理解し難いものであった」
レリアンが苦笑して言う
「後はアバロンとソルベキアの戦いが終わった後に 恐らく勝ち残るであろうアバロンの王を服従させるために デネシアはそのベネテクトの王を捕らえるのですね?」
ローゼックが言う
「ベネテクトの王は捕らえた所で どのような拷問を与えても 我々やローレシアに服従させる事が出来ないと言う事は 既に分かっている」
レリアンが首を傾けて言う
「では どうやってアバロンの王を服従させるおつもりで?」
ローゼックが笑んで言う
「友情と慈愛の国アバロン… その友情は崩せ無いとなれば 次を壊すまでだ」
レリアンが言う
「友情では無く 慈愛を…と言う事でしょうか?」
ローゼックが笑いながら言う
「フッフッフ… 簡単な事だアバロンの王とて人の子 親が子を思わない筈が無い」

【 アバロン国 】

戦火の煙が残る城下の町中 アバロンの民が復興作業を行っている

【 アバロン城 玉座の間 】

俯いているヴィクトールへ衛兵の声が届く
「レリアン王妃殿下の御帰城です!」
家臣たちが見守る中 レリアンが足早にヴィクトールの前へやって来て言う
「ヴィクトール陛下!ベネテクト国の王が私の城を破壊したと言うのは事実でしょうか!?その上 その城の破壊行為により私の祖国デネシア国から このアバロンへ向かっていた部隊が全滅したと!」
家臣たちが顔を見合わせてからヴィクトールへ向く ヴィクトールが顔を上げて言う
「その様な事はどうでも良い…」
家臣たちとレリアンが驚いてヴィクトールを見る ヴィクトールが続ける
「ベネテクト国の王は ベネテクト城の破壊行為により デネシア国から緊急避難を行っていた我が娘… メイデを殺害したっ」
レリアンが驚いて言う
「そ、そんな…っ! メイデは私より早くアバロンへ避難をしたと…っ そんな… そんな…っ!」
ヴィクトールが立ち上がり声を上げる
「直ちにベネテクト国へ兵を向かわせろ!バーネット2世・ベネテクトを捕らえよ!」
兵が敬礼し立ち去る レリアンが泣き崩れる ヴィクトールが家臣たちへ言う
「デネシア国へ通信を繋げ!」
家臣たちが通信を繋ぐ 間もなく通信が繋がりローゼックがモニターへ映し出される ローゼックが言う
『ヴィクトール殿、連絡は伺った』
レリアンが泣きながらローゼックへ顔を向け人知れず合図を行う ローゼックが僅かに反応する ヴィクトールが強い視線で言う
「かの者は直ちに捕らえ 私の剣にて処刑致したいと存じます どうかメイデと共に犠牲となったデネシア国の部隊員らの弔いをも この私に一任して頂きたく存じます」
ローゼックが頷いて言う
『分かった、ヴィクトール殿 今回の件は貴殿へ一任する どうかメイデと共に失われたデネシア国部隊員らの無念を晴らして貰いたい』
ヴィクトールが敬礼し 通信が切られる ヴィクトールが今も泣いているレリアンのもとへ行って言う
「レリアン、後の事は私に任せ 部屋で休め」
レリアンが立ち上がり ヴィクトールへ向いて言う
「はい… ヴィクトール陛下 どうか… メイデの無念を…」
ヴィクトールが頷く 家臣Aが付き添いレリアンが立ち去る ヴィクトールが玉座へ戻ると 間を置いてふぅと息を吐く そこへ軽い拍手と共にヴィクトール12世が現れて言う
「はっはっは… 大した演技だったな?ヴィクトール?」
ヴィクトールが苦笑して ヴィクトール12世へ顔を向けて言う
「父上、例え嘘でも バーネットを捕らえろ等と言うのは もう2度と御免です」
ヴィクトール12世と共に 家臣Bが笑顔でメイデを抱いて来る 家臣Bが言う
「デネシアは王女だけでなく その子供まで利用してアバロンの王を服従させようとするとは… いやはや、恐ろしい限りですなぁ?」
ヴィクトールが溜め息混じりに言う
「父上の手により 事前に救い出されて居なければ 今頃、この子は本当に命を失っていたんだ… あのデネシアが これほど恐ろしい国だったとは」
家臣Cが言う
「恐ろしいと言えば 先ほどのヴィクトール陛下の名演技も 十分に恐ろしかったですぞ?」
皆が笑うヴィクトールが苦笑する ヴィクトール12世が言う
「さて、後は正式にデネシアの王から お前宛の委任状が届けば安心だ それまではお前と同等に 名演技を見せてくれたレリアン殿には 子を失った母としての演技を続けて頂く事になるが… デネシアも早々に事を進めたい筈 時を待たずして委任状は届けられるだろう レリアン殿も自分が幽閉されている事にすら 気付く間も無いほどにな?」
皆が安堵する ヴィクトール12世が頷き立ち去ろうとする ヴィクトールが呼び止めて言う
「父上、あの… 今回のデネシアの策には 一体どの様にして気付かれたのでしょうか?」
ヴィクトール12世が立ち止まって言う
「ああ… 我らアバロンの古い友人が 再び知らせてくれたのだよ」
ヴィクトール12世が立ち去る ヴィクトールが呆気に取られ 分からない様子で考えて言う
「アバロンの古い友人… あの正体不明生物の事だろうか?」
家臣たちが疑問する

ヴィクトール12世の部屋

ヴィクトール12世が自室へ戻り 扉を閉めつつ言う
「好きに生きよと申したのに お前は本当に恩に厚い奴だ… だが、お陰でアバロンは 再び大切な友を失う事態を免れた 残された私も アバロンとベネテクトの役に… 少しは立つ事が出来た様だしな?」
ヴィクトール12世が窓辺の椅子に座っている天使のもとへ向かい 話を続ける
「お前には感謝のしようも無い 古きアバロンの友、ガルバディアの民 …うん?どうした?シュライツ」
ヴィクトール12世が 天使の顔を覗き込む

【 アバロン城下町 ヘクターの家 】

ヘクターがリビングで椅子に座って居てあくびをする タニアが笑顔で言う
「昨日はアバロンに戻るなり 大変だったわね?ヘクター」
ヘクターが両手を頭の後ろに組んで軽く笑って言う
「ああ、デスのプログラムも半年以上昔のものだったから 結構キツかったけど 古い方の機械が残ってて本当に助かったぜ」
タニアが微笑む ヘクターが微笑んだ後言う
「あ?そういやー デスの奴 まだ起きて来ないのか?」
ヘクターが言いながら扉の向こうを覗く素振りを見せる タニアがその様子を見てから言う
「お疲れなのかもしれないわね?魔王との戦いに向けて 一杯プログラムを作っていたみたいだから」
ヘクターが椅子から立ち上がって言う
「疲れてるって言っても 俺たちはまだ ザッツを助けに行かなきゃいけねーし 早速作戦を練らねーと!」
ヘクターが向かいながら振り返って言う
「ちょっくら 叩き起こして来るぜ」
タニアが苦笑して言う
「デスは見た目に合わず『お爺さん』なんだから 優しくしてあげないとダメよ?」
ヘクターが首を傾げて言う
「あ?デスが『お爺さん』?」
ヘクターが疑問しながら部屋を出て行く タニアが寂しそうに微笑む

ドアをノックしてヘクターが声を掛ける
「おーい デスー?」
間を置いてドアが開く ヘクターが顔を向けた先 ベッドに寝ているプログラマーが ゆっくりとヘクターへ顔を向ける ヘクターが軽く笑ってから部屋に入り言う
「なんだ、起きてるじゃねーか?」
ヘクターがベッドの横に立つ プログラマーがヘクターを見上げて言う
「昨夜の通信で カイザがヴィルトンの港に入ると言っていた 恐らく正午過ぎには入港するだろう ウィザードの迎えに行け」
ヘクターが呆気に取られた後 軽く笑って言う
「おう、正午過ぎだな?分かった」
プログラマーが頷いて言う
「魔法による回復は既に限界だ 後はガルバディアへ連れて行く他に無い」
ヘクターが首を傾げて言う
「そっか… うん、けどお前も一緒に行くんだし そんなの今説明しなくても良いぜ?正午過ぎになるなら 今はザッツの救出について 策を練らねーと?」
プログラマーが言う
「私は… 行けそうに無い すまない…」
ヘクターが疑問して言う
「あ?ヴィルトンにか?…ああ、そっか?それより ここでプログラムを作っておいてくれるって事か?確かに半年前のプログラムだと 俺も…」
プログラマーが軽く笑って言う
「プログラムも 作れそうに無い…」
ヘクターが疑問した後 軽く笑って言う
「そうなのか?んー?なら取り合えず朝飯でも食えよ!?俺もちょっと腹減ったし 何か食うかなー?」
ヘクターが出入り口へ向き 歩き始める プログラマーが呼び止めて言う
「ヘクター 少し… そばに居て貰えないか…?」
ヘクターが疑問して立ち止まり 振り返って言う
「ん?何だよ?そばに居るんなら 向こうで…?」
ヘクターが言い掛けた時 出入り口に居たタニアが驚き 手で口を押さえて声を押し殺す ヘクターがタニアの様子に驚いて問う
「タニア!?どうかしたのかっ?」
ヘクターがタニアへ近付く タニアが両手で顔を覆う ヘクターが呆気に取られ タニアの肩に手を置いて顔を覗き込む

話を聞いたヘクターがプログラマーへ振り向いて怒って叫ぶ
「何だよそれっ!デス!お前っ!何で俺に言わなかったんだよっ!?」
プログラマーが軽く笑って言う
「言ってしまうと 魔王との戦いに置いて お前の精神状態が 基準を下回ってしまう可能性があった …だから言わない様にと 伝えていた」
ヘクターがタニアへ顔を向ける タニアが涙を流しながら言う
「ごめんなさい、ヘクター… 私は伝えた方が良いって 言ったのだけど…」
ヘクターが焦った表情でプログラマーへ詰め寄って言う
「それで!?お前を助ける プログラムは!?」
タニアが驚く ヘクターの前でプログラマーが軽く笑って言う
「私を助ける?ああ… 考えた事が無かったな…」
ヘクターが衝撃を受け 慌てて言う
「ばっ!?何で考えねーんだよっ!?何よりも 一番 大切じゃねーかっ!!」
プログラマーが薄く笑って言う
「そのプログラムを使っている ガルバディア国王が それを悔やんでいる… 故に 我々ガルバディアの民は 延命を求めないのだ」
ヘクターが呆気に取られる プログラマーが言う
「今までの私には その意味が分からなかった だが、ヘクター お前と共に生きる事で 少し分かった気がする」
ヘクターが疑問してプログラマーの目を見る プログラマーがヘクターの目を見つめて言う
「共に生き共に戦う… お前の相棒になれた事を 心から感謝している そして、ヘクター… 私はお前の相棒のまま この命を終えられる事を 嬉しく思う …永遠の時があっては 得られない喜びだ」
ヘクターが怒って言う
「お前はっ それで幸せかもしれねーけどっ!残される俺はどーなるんだよ!?お前が居なけりゃ 俺は戦えねーじゃねーか!?お前…っ 俺の相棒なら!俺を置いて行くんじゃねぇーよ!!それに…!そうだぜ!?ザッツはどうなる!?お前が居なけりゃ 結界のプログラムだって!!」
プログラマーが苦笑して言う
「お前の相棒の座は ウィザードに譲る ガルバディアへ連れて行き 治療をさせれば きっと回復する 彼はガルバディアの実験体である前に アバロンの民 お前の兄でもある 私の様に お前を置いて行く事も その逆も無いだろう …結界のプログラムについては 昨日私の使っていた機械を ガルバディアへ ザッツの事は… お前たちへ任せる」
ヘクターが物言いたげにプログラマーへ視線を向ける プログラマーが軽く笑って言う
「…少し疲れた やはり 言葉を喋るのは 大変だな…」
ヘクターの後ろに居るタニアが泣く ヘクターが視線を下げ強く目を閉じてから目を開いて叫ぶ
「やっぱり駄目だーっ!!」
プログラマーとタニアが驚きヘクターへ顔を向ける ヘクターがプログラマーを担ぎ上げて走り出す 部屋に残されたタニアが驚きの表情のまま ヘクターの出て行った出入り口へ向く

ヘクターがプログラマーを抱いて走りながら言う
「せっかくお前を あの機械の中から助け出して!せっかく治療して!せっかく身動き出来る様にして!せっかく喋れる様にして!せっかく… 折角!世界一の大剣使いと 世界一のプログラマー 世界一の相棒になれったってーのに!お前の我がままを受け入れてやれるほど 俺は優しくねーんだっ!!」
プログラマーが驚いた表情のまま言う
「へ、ヘクター!?私を どうするつもりだ!?」

ヘクターがアバロンの移動魔法陣のもとへ走って来る 移動魔法を受け持っている係りの者に叫ぶ
「今すぐ俺たちをガルバディアへ飛ばしてくれ!」

【 ガルバディア国 】

ガルバディアの移動魔法陣に到着したヘクターが プログラマーを抱いたままガルバディア城へ向かって走る

【 ガルバディア城 玉座の間 】 

ヘクターが玉座の前に膝を着く 息を切らせながらプログラマーへ顔を向ける プログラマーが薄っすら目を開く ヘクターが苦笑して言う
「良かった、間に合ったぜ…?」
プログラマーが辛そうに苦笑する ヘクターが玉座へ顔を向けて言う
「俺は!アバロン国3番隊隊長ヘクターだ!ガルバディア国王!あんたに頼みがある!」
ヘクターの声が周囲に響く 間を置いて ヘクターの前にガルバディア国王のホログラムが現れ ヘクターとプログラマーを見る ヘクターが言う
「こいつは俺の相棒で このガルバディアの民だ 頼む!こいつを助けてくれ!」
ガルバディア国王が薄く笑って言う
『お前たちの事は 知っている アバロンの民 ヘクター そのガルバディアの民は お前の相棒で居られた事を喜び その喜びと共に命の時を終えるのだ これほど幸福なガルバディアの民は 今までに確認して居ない この国の王として お前に頼む ヘクター その民の命を 今のままで 終えさせてやる事を』
ヘクターが一瞬きょとんとした後 笑んで言う
「何言ってるんだ?それなら これから先 もっと喜ばせてやれば良いだろ?デスもあんたも!」
ガルバディア国王が驚く ヘクターが2人へ笑みを見せ プログラマーへ向いて言う
「あったりめーだろ!?俺たちは世界一の大剣使いと世界一のプログラマーなんだ!欲しけりゃいくらだって 嬉しい事を作れば良い!まずは こっちのデスを助けて ウィザードのデスも助けて ザッツも助けて 皆で世界を助けて!今度は 世界一の喜びを手に入れるんだ!簡単だろ?」
ガルバディア国王とプログラマーが呆気に取られた後笑い出す ヘクターが疑問して首を傾げ軽く笑って言う
「なんだよ?何がそんなに可笑しいんだ?」
ガルバディア国王が微笑と共に言う
『やはりアバロンの民は面白い そのどの様な事でも疑いなく信じられる 強い想いが 我らにはいつも可笑しく そして、羨ましくもあった』
ヘクターが疑問して考えて気付き 笑顔で言う
「いやぁ~ 照れるぜ!」
プログラマーが衝撃を受けて呆れて言う
「ヘクター…」
ヘクターがプログラマーを見下ろして疑問する
「ん?」
ガルバディア国王が言う
『お前が本気で そのガルバディアの民を生かしたいと願うのなら その願い、叶えてやっても良い』
ヘクターがハッとしてガルバディア国王へ向き 安堵の笑みを見せる ガルバディア国王が続けて言う
『だが、代わりに 我らは新たな命の提供を求める お前の相棒を助けたければ 我らガルバディアへ そちらを差し出す事だ』
プログラマーが驚く ヘクターが疑問する
「あ?新たな命?」
プログラマーが言う
「ヘクター 私の事は 諦めろ」
ヘクターが驚き プログラマーへ向いて言う
「なんでだよ!?ガルバディア国王は出来るって 言ってるじゃねーか!?」
ヘクターがガルバディア国王を見る ガルバディア国王が笑む プログラマーがヘクターの腕を掴んで言う
「ヘクターっ ガルバディア国王は お前とタニアの子供を 渡せと言っているんだ」
ヘクターが驚いて言う
「え…?」
ガルバディア国王が微笑して言う
『アバロンの民よ お前たちは過去 我らガルバディアを裏切った これも同じ事だ お前は… アバロンの民は ガルバディアの民を捨て 己を取る』
ヘクターがしばらく呆気に取られた後 ガルバディア国王へ向いて言う
「よし!分かった!それじゃ 早速デスを頼むぜ!」
ガルバディア国王とプログラマーが驚く ヘクターが立ち上がり ガルバディア国王へ言う
「子供はまだ生まれてねーからよ?先にデスを助けねーと!急いでくれよ!早くしねぇと 今にもコロッと逝っちまいそうな感じだ」
ガルバディア国王がヘクターを見つめた後言う
『…良いだろう こちらへ運べ』
ヘクターが微笑み頷く ガルバディア国王が先行し ヘクターがプログラマーを抱いたまま付いて行く

プログラマーの身体が機械の中に寝かされる ヘクターが手を離して言う
「なんだよ… またホログラムになっちまうのか…?」
プログラマーが苦笑する ガルバディア国王が言う
『それは仕方が無い この肉体は仮死状態にして 保存する事となる』
ヘクターがガルバディア国王へ向き疑問する ガルバディア国王がプログラマーへ向いて言う
『生命維持プログラムを起動させてからは お前の思考は全て外部装置へ転送される』
ガルバディア国王が言い終えると共に 機械の中に液体が満たされて行く ヘクターがプログラマーへ顔を向ける プログラマーがヘクターへ向く ヘクターが微笑んで言う
「せっかく動ける様にして 喋れるようになったのにな?」
プログラマーが苦笑して言う
「それらは… しばらく休息する」
ヘクターが軽く笑いプログラマーの手を離す 液体が満たされ装置が閉まる ガルバディア国王が視線を周囲の機械へ向ける 周囲の機械が始動する ヘクターが周囲の機械を見渡している ヘクターの後ろにホログラムが現れる ヘクターがハッとして振り返る ホログラムは無表情で居る ヘクターが微笑んで言う
「よう!世界一の相棒!」
ホログラムが軽く笑って言う
『ガルバディアの民は 皆同じ顔をしている 何故私であると 確証したのだ?』
ガルバディア国王がヘクターへ向く ヘクターが呆気に取られた表情から 微笑して言う
「何故って… お前が、お前だから!だぜ?」
ヘクターが笑顔を見せる プログラマーとガルバディア国王が呆れの汗を流す

ヘクターがプログラマーのホログラムと共にガルバディア城から去って行く

ヘクターが隣に浮いて見える ホログラムのプログラマーへ軽く顔を向けて言う
「そろそろ正午過ぎか?なら次は ウィザードのデスを迎えに行かねーとだな?」
プログラマーが軽く笑って言う
『そうだな』
プログラマーが間を置いて言う
『ヘクター 私は… そちらに同行出来る事を 今 嬉しく思う』
ヘクターが笑顔で言う
「だろー?これからだって嬉しい事が 一杯あるぜ!?」
プログラマーが一瞬呆気に取られてから微笑む

ガルバディア国王がヘクターたちを見ている その横にガルバディアの民Aのホログラムが現れて言う
『あのアバロンの民は 本当に自分の子である 新たな命を 我々へ差し出すのでしょうか?』
ガルバディアの民Bのホログラムが現れて言う
『偽りであるのなら 『相棒』と銘打っている あのガルバディアの民の生命維持プログラムを 止めてやるまで』
2人のホログラムがガルバディア国王へ向く ガルバディア国王が見えなくなったヘクターたちへ視線を向けたまま言う
『アバロンの民… 再び我らガルバディアの友となるのか まずはあの者でデータを採取する』
ガルバディア国王がガルバディアの民たちへ向いて言う
『ウィザード研究者らのデータを解析しておけ』

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-

星井柚乃(旧名:星里有乃)
ファンタジー
 旧タイトル『美少女ハーレムRPGの勇者に異世界転生したけど俺、女アレルギーなんだよね。』『アースプラネットクロニクル』  高校生の結崎イクトは、人気スマホRPG『蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-』のハーレム勇者として異世界転生してしまう。だが、イクトは女アレルギーという呪われし体質だ。しかも、与えられたチートスキルは女にモテまくる『モテチート』だった。 * 挿絵も作者本人が描いております。 * 2019年12月15日、作品完結しました。ありがとうございました。2019年12月22日時点で完結後のシークレットストーリーも更新済みです。 * 2019年12月22日投稿の同シリーズ後日談短編『元ハーレム勇者のおっさんですがSSランクなのにギルドから追放されました〜運命はオレを美少女ハーレムから解放してくれないようです〜』が最終話後の話とも取れますが、双方独立作品になるようにしたいと思っています。興味のある方は、投稿済みのそちらの作品もご覧になってください。最終話の展開でこのシリーズはラストと捉えていただいてもいいですし、読者様の好みで判断していただだけるようにする予定です。  この作品は小説家になろうにも投稿しております。カクヨムには第一部のみ投稿済みです。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

スキルが全てを決める世界で、俺のスキルがビームだった件。ダークファンタジー世界をビームでぶち抜く。

あけちともあき
ファンタジー
スキルがすべてを決める世界。 意味不明なスキル、ビームを持って生まれたオービターは、居所なしとして村を追放された。 都会で成り上がろうと旅立つオービターは、世界から迫害されるという魔女に出会う。 この魔女がとても可愛く、オービターは彼女が好きになってしまう。 「好きです!!」 「いきなり告白するのはどうなの? でも君、すごい才能を持ってるわね!」 彼女に教えを受け、スキル:ビームの真価に目覚めるオービター。 それは、あらゆる行動をビームに変えてしまう最強のスキルだったのだ。 このまま二人でスローな生活もいいかなと思った矢先、魔女狩りが襲いかかる。 「魔女は世界を破壊するのだ! 生かしてはおけぬ!! そこをどけ小僧!!」 「俺の純情と下心を邪魔するのか! 許せねえ!! ぶっ倒す!!」 魔法がビームに、剣がビームに、石を投げたらそれもビームに。 棒を握って振り回したら、戦場をビームが薙ぎ払う。 「わははははは! 人が! ゴミのようだ!」 村を襲う盗賊団を薙ぎ払い、大発生したモンスターの群れを薙ぎ払い、空から落ちてくる隕石を撃ち落とす。 やがて、世界から集まる、世界の敵と目された仲間たち。 オービターの下心から始まった冒険は、世界を巻き込んでいくことになるのである。 これは、一人の男が世界を変える、愛と勇気の物語……!

処理中です...