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11-5 世界の終わりと始まり
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翌日
ザッツロードたちが部隊を指揮し、自身らもスプローニ城下町の外へ出る ザッツロードの後方でロスラグが周囲の匂いを嗅いで言う
「…ん?…雨が降るッス」
ザッツロードがロスラグの言葉に振り返り 周囲の空を見上げて問う
「雨?…こんなに良い天気なのに?」
ザッツロードの問いにロスラグがもう一度周囲の匂いを嗅いで言う
「こっちに吹いて来る風に雨の匂いがするッスよ 多分 もうちょっとしたら降って来るッス」
ロスラグの隣に居るロキが銃の確認をしながら言う
「…ベル、もうちょっとではなく もう少し正確な時間は分からないのか?」
ロスラグが再度周囲の匂いを嗅いで確認する ザッツロードが疑問して振り返り ロキへ問う
「ロキ?今の『ベル』って言うのは?」
ザッツロードの問いにロキが顔を向けて答える
「…ベルは …コレの名の一部だ」
ロキの言葉にザッツロードが驚いて声を上げる
「え!?ロスラグの名前の一部!?」
ザッツロードの驚きの声に仲間たちが顔を向ける ロスラグが匂いを嗅ぎ終えて報告しようとする その前にロキがザッツロードへ答える
「…ああ、コレの本当の名はベルグ…」
ロスラグが慌てて言う
「あー!!ロキ隊長!言わないって約束ッス!!最初の二文字で呼ぶって約束ッスよー!!」
ロキが軽く笑う ザッツロードがロスラグへ向いて言う
「え?良いじゃないか 教えてくれたって?」
ロスラグがザッツロードへ向いて叫ぶ
「嫌ッス!ヘボ勇者には 絶対教えたく無いッス!」
ザッツロードが苦笑する
雷雲が立ち込める 遠くに魔物の群れが現れる ザッツロードが剣を構える 隣でロスラグが武器を構えて言う
「なーんで俺がヘボ勇者と組むんッスかー!ロキ隊長と組みたかったッスー!」
ザッツロードが顔を向けずに答える
「ヴェルが居ない分 君の剣が必要なんだ 我慢してくれ」
ザッツロードの言葉にロスラグが表情を明るめて言う
「え!?俺がヴェルアロンスライツァー副隊長の代わりッスか!?そー言う事は早く言って欲しいッス!」
ロスラグが言いながら嬉しそうに気合を入れて剣を構える
戦闘が開始され 次第に雨が降り出し強く降る ロスラグが気合を入れて先行する ザッツロードが苦笑しながらそれに続く
戦闘の最中 ザッツロードの通信機が着信する ザッツロードが気付きつつも無視して戦闘を続ける しばらくして 通信が勝手に繋がりバーネットの叫び声がする
『おらぁああ!!てめぇええ!!いつまで待たせんだ この野郎がぁああ!!』
ザッツロードが驚いて通信機を取り出して言う
「バ、バーネット陛下っ!すみませんっ!今戦闘中なので!またっ!」
ザッツロードが通信機を切ろうとする バーネットが慌てて言う
『ぬぁあ!?おいっ!待ちやがれ!!』
バーネットの言葉にザッツロードが周囲を確認して 通信機を持ち直す バーネットが叫ぶ
『今すぐ戦闘中止だ!!総員 町の中へ避難しやがれ!!』
ザッツロードが疑問して声を発する
「え?一体!?」
ザッツロードへ魔物の攻撃が襲い来る ソニヤが叫ぶ
「ザッツ!危ないっ!!」
ザッツロードがハッとして慌てて剣で魔物の攻撃を防ぐ 通信機を忘れて攻撃へ移り魔物を倒してから周囲を見渡し 通信機を拾う 通信機のモニターでは バッツスクロイツを押し除けバーネットが叫ぶ
『早くしろっ!!過ぎ去ったと思われてた 悪魔力の霧が スプローニへ戻って来ちまうんだ!町には宝玉の結界を張らせた!お前らも全員 今すぐ避難しやがれ!!』
ザッツロードが驚きつつも状況を把握し 周囲へ叫ぶ
「みんなー!!作戦中止だ!!全軍 今すぐ町へ撤収!!急げー!!」
ザッツロードの言葉を聞いた仲間たちが驚きつつも 状況を理解して周囲の兵士たちと共に撤収を開始する ザッツロードが同じ言葉を繰り返しながら走る
全軍の撤退を確認したザッツロードが町へ向かう 町の前で仲間たちが待っている ザッツロードが問う
「皆!担当の各部隊の撤収は 確認したかい!?」
仲間たちが頷く ソニヤがザッツロードへ問う
「ザッツ!一体どうしたのよ!?急に!?」
ザッツロードがソニヤへ向いて言う
「バーネット陛下から連絡が来たんだ 悪魔力の霧が スプローニへ戻って来てしまうと」
皆が驚く ラナが言う
「ここに居たら私たちも危険だわ!早く町の…!」
言葉の途中でロキが叫ぶ
「ベル!…ベル!?どこだ!?」
ロキの声にザッツロードが驚いてロキへ顔を向けて言う
「ロキ!?ロスラグが居ないのかい!?」
ザッツロードの言葉に皆が周囲を確認する ロキがザッツロードへ向いて叫ぶ
「奴は何処だ!?お前と一緒では無かったのか!?」
ザッツロードが一瞬呆気に取られてから 気を取り直して言う
「ご、ごめんっ 僕は バーネット陛下からの連絡を伝えるために 奔走していて…」
ザッツロードの言葉の途中でロキが町を出て行く ザッツロードが叫ぶ
「ロキ!」
ザッツロードが慌ててロキを追う ソニヤが驚き言う
「ザッツ!!」
ザッツロードを追おうとしたソニヤをラナが押さえて言う
「駄目よっ!危険だわ!!」
ソニヤがラナを振り返って叫ぶ
「でも!?ザッツやロキやロスラグがっ!」
リーザロッテが来て言う
「落ち着きなさい、ザッツロ-ド王子は宝玉を持っているわ 悪魔力に対抗する結界を張る事が出来てよ!」
リーザロッテの言葉にソニヤが力を抜く ラナが押さえていた手を離す 皆がザッツロードの向かった先へ視線を向ける
ザッツロードが名を呼びながら森の中へ入る
「ロキ!ロスラグ!どこだー!?」
ザッツロードが周囲を見渡していると 遠くで銃声が聞こえる ザッツロードがハッと顔を上げ 銃声がした方へと走る 向かった先でロキがロスラグに肩を貸して歩いているのを見付け呼ぶ
「ロキ!ロスラグ!」
ロキが顔を上げザッツロードを呼ぶ
「ザッツ!」
ザッツロードが2人の下へ向かい走る ロスラグが顔を上げる その目がうつろになっている ザッツロードが走って来るのを見て ロスラグがハッとしてロキから離れる ロキが驚いて振り返り ロスラグを呼ぶ
「ベル!?」
ザッツロードが2人の様子に疑問しつつも走り続ける ロスラグがロキへ顔を向ける ロキがロスラグを見ている ロスラグがザッツロードへ顔を向ける ザッツロードが駆け向かって来る ロスラグがロキとザッツロードを交互に見ながら後退り ザッツロードへ銃を向ける ザッツロードが驚き足を止める ロスラグが悲鳴を上げて叫ぶ
「く、来るなッスー!!」
ロスラグがザッツロードへ銃を放つ ロキが叫ぶ
「ベル!!」
一発の銃声 ザッツロードが目を見開く ロスラグの前に見えたロキが地に倒れる ザッツロードが叫ぶ
「ロキーーッ!!」
ロスラグが呆気に取られたまま ゆっくりと視線を下へ向ける ザッツロードが辿り着き地へ膝を着いて ロキを抱き起こし慌てて呼ぶ
「ロキ!ロキ!?しっかりするんだ!!」
ロスラグが力なく両膝を付く ザッツロードがロスラグを見る ロスラグがうつろな目でロキを見て ゆっくりと声を出す
「ロ…キ…隊…長…?」
ザッツロードがハッとして周囲を見る 黒い霧が辺りを覆っている ザッツロードが宝玉を取り出し魔力を送る 宝玉が白い光を発し 周囲に半円形の結界が張られる ロスラグが宝玉の光を眩しがり 自身の体を掴むように苦しがって言う
「うっ!うぅう~っ!」
ロスラグの体から黒い霧が抜ける ロスラグが苦しそうに息をしてから ロキへ顔を向け 目を丸くし ロキの被弾した箇所へ視線を向けてから ロキの顔を見て言う
「ロ、ロキ隊長…!?」
ロキが閉じていた目を開きロスラグを見る ロスラグが呆気に取られている ロキがホッと息を吐き ロスラグへ手を向けて言う
「ベル… 良かった… お前は… 間に 合 った…」
ロスラグが目に涙を浮かべて ロキの手を取って言う
「ロキ隊長!?俺が?やったッスか…?俺が?俺の銃でっ!?」
ロキがロスラグの言葉に軽く苦笑する ロスラグが焦ってザッツロードへ向いて叫ぶ
「ザッツ!何してるッスか!?早くロキ隊長に!回復魔法ッス!!」
ザッツロードが苦渋の表情で言う
「ロスラグ… 僕は今 結界を張るのに魔力を使ってしまっているんだ 回復魔法は… 使えない」
ロスラグが驚き怒って言う
「な、なら!?結界を止めて回復魔法を使うッスよ!!ロキ隊長が死んじゃうッス!!」
ザッツロードが顔を横に振る ロスラグが驚いて叫ぶ
「何で!?何でやらないッスかっ!?結界なんて要らないッス!!魔物になったって ロキ隊長が無事なら 構わないッス!!」
ロスラグが大粒の涙を流す ザッツロードが俯き顔を横に振って言う
「出来ない… ロスラグ それは出来ないよ」
ロスラグが泣きながら叫ぶ
「何でッスか!?分からないッス!!大切な人を守れるなら!!俺は魔物でも何でも良いッスよ!!」
ロスラグの頬にロキが手を添える ロスラグが驚いてロキへ視線を向ける ロキが軽く笑って言う
「この ままで… 良い…」
ロスラグが涙をこぼしながら言う
「だめッス!!良く無いッス!!このままじゃ 霧が無くなる前に ロキ隊長がっ!!」
ロキが苦笑して言う
「それで… 良い…」
ザッツロードが苦しげに目を閉じる ロスラグが顔を横に振って言う
「嫌… 嫌ッス!俺はっ 俺は そんなの嫌ッスよっ!?ロキ隊長っ!ロキ隊長!!」
ロキが微笑み ロスラグの頭に手を置いて言う
「ベル… ベルグル… 俺は お前の 名は 良いと 思う 隠す 必 要は… 無い」
ロスラグが目を丸くして驚く ザッツロードが2人を見る ロキがロスラグの頭を撫でて言う
「この… 雨が 止ん だら… あいつ にも… 伝えに 行け… ベル… 約 束 だ… 」
言い終えると共に ロキの目が閉じられ ロスラグの頭を撫でていた手が落ちる ロスラグが目を見開く ザッツロードが息を飲む ロスラグが叫ぶ
「うわあぁあああーーー!!!」
ロスラグがロキの服を掴んで強く揺すって叫ぶ
「ロキ隊長!!ロキ隊長!!嫌ッス!!嫌ッスよ!!一緒にっ!!一緒に伝えに行くッス!!俺だけじゃ 絶対 絶対 行かないッスよー!!!」
ザッツロードが宝玉を持たない手を握り締める
霧が薄れる ザッツロードが周囲を見渡しロスラグへ言う
「ロスラグ、悪魔力の霧が薄くなった これなら魔物化の心配は無い筈だ また霧が濃くなる前に 町へ戻ろう」
ザッツロードが立ち上がり宝玉をしまう ロキの体に抱き付いていたロスラグが顔を上げる ザッツロードが苦笑を見せ ロキの身体を担ごうと手を伸ばす ロスラグが叫ぶ
「触るなっ!!」
ザッツロードが驚き手を引く ロスラグが怒りの表情でザッツロードを見上げて言う
「ロキ隊長を 助けてくれなかった… 俺はっ …お前なんか大っ嫌いだ!!」
ザッツロードが驚き 表情を哀しくする ロスラグがロキの身体を担いで立ち上がり 町へ向かう ザッツロードがそれに続く
町の門前
ザッツロードの仲間たちがザッツロードを待っている ソニヤが指差して声を上げる
「ちょ、ちょっと!?あれ!!」
リーザロッテがソニヤの示す方へ向く ロスラグがロキを担ぎ その後ろからザッツロードが続いて町へ向かっている レイトとヴェインが駆け出す ロイが一歩前へ踏み出した足を止め呆気に取られている
ロスラグの前にレイトとヴェインが辿り着く ロスラグが立ち止まり息を切らしながら言う
「レイト、ヴェイン… ちょっと… 手を貸して 欲しいッス…」
レイトとヴェインが一度顔を見合わせてから ロスラグへ向いて頷き 2人がロキの身体を受け取る ロスラグが崩れ 地に両手を着く ザッツロードが手を出そうとして思い止まる レイトとヴェインが顔を見合わせてからザッツロードへ向き レイトが問う
「ザッツ、一体何が…?」
ロスラグが顔を上げないまま言う
「はぁ… はぁ… そいつには 絶対 触らせないで 欲しい ッス…」
ロスラグの言葉にレイトとヴェインが驚き ザッツロードへ顔を向ける ザッツロードが2人の視線を受け苦渋の表情で俯く レイトとヴェインが顔を見合わせ疑問する
宿の部屋に皆が集まっている
ロスラグは居ない ザッツロードが皆に説明を終えている ソニヤが泣いている ラナが涙を堪えている セーリアがソニヤの肩に手を置き ソニヤがセーリアに抱きつく リーザロッテが俯いている シャルロッテが声を殺して泣いている レイトとヴェインが肩を落とし顔を見合わせた後 ロイへ視線を向ける ロイは沈黙している ザッツロードが言う
「アバロンから連絡が来た 魔物の群れが再びスプローニ城の近くへ集まり始めているらしい 明日の朝には各部隊を召集し 再び戦闘に備える …皆 今日は疲れていると思うから 早く休んで明日に備えよう」
ロイがザッツロードへ言う
「…ロキの担当していた部隊は 誰が引き継ぐ?明日の朝 召集を掛けるのなら 今の内に決めて置くのが得策だ」
ロイの言葉に皆が顔を上げ ロイへ視線を向ける ザッツロードが間を置いて答える
「…そう だね?えっと…」
ザッツロードが考える前に ロイが再び言う
「…それと、ロキの部下だったロスラグはどうなる?奴も使えなくなるのなら 我々の配置も大きく変わるだろう」
レイトとヴェインが顔を見合わせ レイトが言う
「私が思うに ロスラグは…」
ヴェインが続きを言う
「あいつは戦えないだろう 自身の銃で… ロキを殺めてしまったのだ 先ほども嘆いていた もう2度と銃は撃てないと」
皆が俯く ザッツロードが言う
「うん… それに 僕とはもう 一緒に戦っては くれないんじゃないかな…?」
リーザロッテが溜め息を吐いて言う
「貴方の判断は間違っていなくてよ?悪魔力が強い状況で 聖魔力の回復魔法を使っても その効果は薄く その間に 実体の小さなロスラグが 魔物化してしまう可能性が高いのでしょう?」
ザッツロードが頷いて言う
「それでもきっと ロスラグは 僕にやって欲しかったんだと思う」
ザッツロードが俯く ロイが言う
「…では、ロキの部隊は俺が引き継ぐ」
ロイが言い終えると部屋から出て行く ザッツロードが呼ぶ
「ロイ…」
ザッツロードが呼びとめようとしていた手を下ろす リーザロッテが言う
「ロイは… ロキに憧れてスプローニの部隊に志願したそうよ 貴方たちと合流して そのロキと一緒に戦えたって言うのに」
ザッツロードがリーザロッテへ向いて言う
「え?そうだったんだ…?ちっともそんな様子 見せなかったから」
レイトが軽く息を吐いて言う
「それでも十分 我々と居た頃より 気分が良かった様に私には見えていた 恐らく今も きっと我々には分からないほど 当人はロキを失った事を 嘆いている筈だ」
シャルロッテが涙を拭いながら言う
「ロイは… いつもロキさんを見てました 一緒に戦うようになってからは 今までよりたくさん 訓練もしてましたし…」
ザッツロードが苦笑して言う
「仲間を失うのは… 辛いね」
ザッツロードがオライオンへ視線を向ける オライオンは黙って窓の外を見ている シュライツがザッツロードの視線に気付き顔を向ける 間を置いて再びオライオンへ向ける 窓の外では雨が降り続けている
翌日 雨は止み、ザッツロードたちが集まる 部隊への連絡を済ませ 各々が配置へ付く ザッツロードが周囲を見渡す 皆 平静を装っている ザッツロードが一度俯くが 気を取り直して戦場へ向かう
防衛戦は楽に終る
ザッツロードたちが玉座の間にてスプローニ国王の前に跪いている スプローニ国王がザッツロードたちへ礼を述べる ザッツロードが敬礼して言う
「それでは 私どもはアバロン帝国へ帰還致します」
スプローニ国王が頷いて言う
「諸卿の助力に感謝する」
ザッツロードが敬礼して立ち去る 仲間たちがそれに続く
ザッツロードたちがスプローニ国の墓地へ行く 広い墓地にある墓石の1つにロスラグが凭(もた)れている ザッツロードが表情を哀しめ 皆に言う
「僕は行けない… 皆、僕の分も ロキにお礼を言っておいて欲しい」
皆が軽く息を吐き ソニヤが頷いて言う
「うん、ザッツの分も伝えとく」
ザッツロードが苦笑して言う
「よろしく」
ザッツロードが見守る先 仲間たちがロスラグの下へ行く
皆が墓石の前で立ち止まり顔を見合わせる ソニヤがロスラグへ声を掛ける
「ロスラグ」
ロスラグが閉じていた目を開いて言う
「…皆が 戦ってる音が 聞こえてたッス… でも、俺は…行けなかったッス… ごめんなさいッス… ロキ隊長も… きっと 行けって 言ってたッス ごめんなさいッス…」
ソニヤが苦笑して顔を横に振って言う
「良いよ 魔物の数も そんなに多くなかったし」
ラナが微笑んで言う
「貴方は ロキを守っていたのでしょ?」
ロスラグが言う
「前日の夜 ロキ隊長に お願いしたんッス… 今度、俺が先住民族の姿になったら 頭を撫でて欲しいって ロキ隊長は 嫌だって言ったッス… 昔飼っていた犬が そうした後に居なくなっちゃったからって でも、俺は居なくならないから そうして欲しいって頼んだッス ロキ隊長は… 最期に約束守ってくれたッス 俺は… 犬の姿じゃなかったスけど」
ソニヤとラナが顔を見合わせ苦笑する ロスラグが笑って言う
「だから 今度は俺が約束を守るッス!ロキ隊長が俺にしてくれたら 俺は一生ロキ隊長を守るって言ったッス!ロキ隊長はやっぱり嫌だって言ってたッス けど 俺はそうしたいからそうするッス!…俺は言う事聞かない悪い犬ッスね?きっと 正直なロキ隊長に また怒られちゃうッス」
リーザロッテらが顔を見合わせ苦笑する セーリアが一歩近づき言う
「私たち これからアバロンへ帰るの その前にロキにお礼を言いに来たのよ ロスラグ、ザッツもロキにお礼を言いたがっていたわ?」
ソニヤとラナが驚いてセーリアへ顔を向ける ロスラグが間を置いて言う
「…分かってるッス あいつは… …悪く無いんッス あいつは… …あいつこそ!いっぱいっいっぱい!ロキ隊長にお礼を言わなきゃいけないッス!!」
ロスラグが途中から顔を上げて叫ぶ ソニヤとラナが驚く セーリアが苦笑して言う
「それじゃ、ザッツを呼んでも良いわね?」
ザッツロードがロキの墓石の前に立つ ロスラグが顔を背ける ザッツロードが一度ロスラグへ視線を向けてから正面を向いて言う
「ロキ スプローニ国は守られたよ これからも いつでも僕らが手を貸すから 安心してくれ …それから 今まで… ありがとう」
ザッツロードが言い終えると 皆がそれぞれの礼を見せる ザッツロードが敬礼する 間を置いて皆が退散する ザッツロードがロスラグへ言う
「ロスラグ…」
ロスラグは顔を背けたまま動かない ザッツロードが一度俯き 再びロスラグへ向いて言う
「ロキを… 守ってあげてくれ」
ザッツロードの言葉にロスラグが言う
「…ヘボ勇者になんか 言われなくったって 分かってるッス ロキ隊長は… ずっと 俺が守るッス…」
ザッツロードが苦笑して頷き もう一度ロキの墓石を見た後に敬礼して立ち去る ロスラグが皆へ一度視線を向けた後 ロキの墓石に再び凭れ 犬の姿に変わり墓石に寄り添う
【 アバロン城 】
報告を終えたザッツロード 玉座に座るヴィクトールが言う
「…そうか、尊い仲間の命が失われてしまった事は とても残念だ 貴公らも 辛い心境で 良くぞスプローニ国を守り抜いてくれた」
ザッツロードたちが一度力を失うが 気を取り戻してザッツロードが言う
「彼の分も、残された我々で 何としても悪魔力の脅威を止めなければならないと思います ヴィクトール陛下 どうか、次のご指示を我々へ!」
ザッツロードの言葉にヴィクトールが一度頷き言う
「貴公らの活躍のお陰で ローレシアの王キルビーグ殿が我々を信頼し ローレシア国の歴史、旧世界の情報を与えてくれた」
ザッツロードたちが顔を上げる ヴィクトールが続ける
「貴公らも知っての通り、我々後住民族の故郷 旧世界においては 現在も我々の同族が過去の過ちである悪魔力の脅威と戦っている ローレシア国は新世界に移り住んだ我らが 故郷である旧世界と そこに残る人々を忘れ行く中 唯一その存在を忘れず かの地に残る彼らを救わんとしていた」
ヴィクトールの話を聞き ザッツロードが表情を険しくする ヴィクトールがザッツロードへ視線を向けて言う
「歴代ローレシアの王は 旧世界に残された人々と連絡を取り合い 現在も旧世界の悪魔力とその力に制御を支配されている 旧世界の機械兵を 排除しようとしている 従って 我がアバロン帝国は かの地に留まり 戦い続けている旧世界の民を ローレシア国と共に支援する事を決定した」
皆が驚く ザッツロードがヴィクトールへ問う
「ヴィクトール皇帝陛下!それではっ」
ザッツロードの言葉に ヴィクトールが頷き 皆へ視線を向けて言う
「ただし、こちらの新世界においても 悪魔力の脅威は依然続いている 従って貴公らには旧世界及び新世界 それら双方への支援及び援護をしてもらう」
ヴィクトールの言葉に仲間たちが顔を見合わせる ヴィクトールがリーザロッテへ視線を向けて言う
「リーザロッテ王女」
名を呼ばれたリーザロッテが驚いて返事をする
「は、はい!ヴィクトール皇帝陛下!」
ヴィクトールが続けて言う
「貴女には新世界の勇者として 現在この世界に蔓延っている悪魔力の脅威と戦う為の 全指揮権を与える」
皆が驚く リーザロッテが目を丸くして言葉を失う ヴィクトールがザッツロードへ視線を移して言う
「そして、ザッツロード7世 貴公は 旧世界の民を支え続けてきたローレシアの王として 旧世界を救う勇者となって貰いたい」
ザッツロードがヴィクトールの言葉に疑問して ヴィクトールを見上げて問う
「恐れながら、ヴィクトール皇帝陛下 私がローレシアの王とは?ローレシア国には、私の前に第一王子である キルビーグ2世がおります 従って ローレシアの王には 兄王子である 彼が…」
ザッツロードの言葉に ヴィクトールが顔を横に振ってから言う
「ザッツロード王子、言い辛い事だが ローレシア国 第一王子キルビーグ2世殿は ソルベキアに幽閉された」
ザッツロードが驚く
「兄上がっ!?」
ヴィクトールが言う
「そして、偵察兵からの情報によると その扱いは酷く ローレシア国へ対する反逆と見なされた」
ザッツロードが呆気に取られる ヴィクトールが続ける
「ソルベキアからは キルビーグ2世王子の釈放に ローレシア国に存在する旧世界との接触に使われる機材、及びローレシア国の保有する宝玉の受け渡しを要求して来た これに対し、ローレシア国キルビーグ王は 要求の一切を拒否し、キルビーグ2世王子からその王位を剥奪、自身の王位も アバロン帝国へ謙譲した」
ザッツロードと仲間たちが驚き言葉を失う ヴィクトールが皆を見渡しザッツロードへ言う
「よって、ローレシア国第二王子ザッツロード7世 我がアバロン帝国は 貴公をローレシア国の新たなる王へと任命する!」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが驚いた表情のまま言葉を漏らす
「ぼ… 僕が ローレシアの… 王…!?」
ソニヤ、ラナ、セーリアが驚く ヴィクトールが続けて言う
「無論、我がアバロン帝国は 貴公の兄 キルビーグ2世の救出に全力を上げる事を約束する 貴公は我らを信じ、貴公の任をまっとうして貰いたい」
ザッツロードが唇を噛み締め敬礼して言う
「アバロン帝国ヴィクトール皇帝陛下、ザッツロード7世 ローレシア国の国王、及び旧世界の救援の任 謹んでお受け致します」
ヴィクトールが頷いて言う
「ローレシア国 新国王ザッツロード7世、貴公の活躍を 引き続き 期待している」
皆が静まり返る 伝令の兵が現れ敬礼する ヴィクトールが顔を向けると兵が言う
「申し上げます!ガルバディア国へ向かわれた バッツスクロイツ殿より ヴィクトール皇帝陛下へ 通信連絡が入っておりますっ」
皆が兵へ顔を向ける ヴィクトールが言う
「ガルバディアへはバーネット第二皇帝も同行している筈だ 連絡は彼からでは無いのか?」
兵が再び声を張って言う
「はっ!通信連絡はバッツスクロイツ殿より承っておりますっ」
ヴィクトールが少し考えてから言う
「そうか、分かった ここへ繋いでくれ」
ヴィクトールの言葉を受け兵が通信機を操作する ヴィクトールがザッツロードらへ顔を向けて言う
「ガルバディアへは バッツスクロツとバーネット第二皇帝、そしてアバロン3番隊元隊長ヘクターを 旧世界にて使用可能なロボット兵の立案の為 向かわせていた」
ヴィクトールの言葉にオライオンが声を上げる
「親父が!?親父は もう戦わねーって!?」
オライオンの言葉にヴィクトールが頷いて言う
「ああ、しかし ヘクターは予てからガルバディア国王と面識があり、更に 結界の島で犠牲となったガルバディア国のプログラマーの相棒でもあった 従って本人の希望もあり ガルバディア城の案内役として同行して貰ったのだ」
ヴィクトールの言葉にオライオンの隣に居るシュライツが嬉しそうな奇声を発する 兵が報告する
「ヴィクトール皇帝陛下、通信を繋ぎます」
兵の報告にヴィクトールが頷き了承する 兵が通信を繋ぐ ザッツロードたちが ヴィクトールへ向けられている通信機の両脇から顔を覗かせ通信モニターへ注目する 通信が繋がりモニターにバッツスクロイツがドアップで映り叫ぶ
『ちょっとぉおーー!!まだぁ!?早く繋いでくれってば~~!』
ザッツロードが驚き皆が呆れる ザッツロードたちの後方でヴィクトールが苦笑する バッツスクロイツがモニター越しにザッツロードたちを確認して言う
『お!よぉー皆 帰ってたのかー!あ~… あの件は本っ当~~に すまん!ゴメン!報告聞いたよ… ロキの事は俺の責任でもある…』
バッツスクロイツが落ち込み俯く ザッツロードが一瞬表情を曇らせるが気を取り直して言う
「ロキの事は 誰のせいでも無いよ ロスラグが僕を許してくれたんだ きっとロキだって 誰にも責任を押し付けたりはしないと思う」
ザッツロードの言葉にバッツスクロイツが苦笑して言う
『うん、そーだよな?あいつは クールなナイスガイだったし きっと誰かを恨んだりーとか カッコ悪い事はしないよな!?』
バッツスクロイツが笑顔になり ザッツロードが微笑んで頷き言う
「僕もそう思うよ …所で、バッツ?ヴィクトール陛下に連絡だったんじゃ?」
バッツスクロイツが一瞬呆気に取られてから ハッとして再び焦って言う
『そ~~なんだよ!ちょっと!ヴィクトールっちに代わってくんない?!』
バッツスクロイツの言動にザッツロードたちが苦笑する ヴィクトールが言う
「バッツスクロイツ、声は聞こえている 何事だ?バーネット第二皇帝はどうした?」
ヴィクトールの声にバッツスクロイツが通信機へ身を乗り出して言う
『その!バーネっちとヘクターのアホが ガルバディア国王の前で喧嘩しちゃっててー もぉ全っ然!話が進まないんだよ~~!』
バッツスクロイツの言葉にザッツロードたちが驚きソニヤが言う
「バーネット陛下とヘクターが!?」
ラナが呆れて言う
「他国の国王様の御前で…」
ザッツロードがヴィクトールを振り返る ヴィクトールが片手で額を押さえ息を吐く ザッツロードが苦笑してモニターへ視線を戻す バッツスクロイツが通信機を向け モニターにバッツスクロイツの後方の様子を映す
ガルバディア城玉座の間 ガルバディア国王が玉座の前にホログラムで立つ その前で ヘクターが両手を握り締めファイティングポーズでいる それと向き合い バーネットが鞭を持ってヘクターを指差し叫んでいる
「てめぇええ!この脳筋アホヘクター!!新旧両世界の民を守ろうってぇえ この時に なぁああにを自分勝手な事抜かしてやがるんだ!?てめぇえはぁああ!?」
バーネットの言葉を受けたヘクターが 片手でバーネットを指差して言い返す
「うるせー!バカーネット!てめーらこそ 新旧世界の前に 両国の友好を死守しろって言うんだ!お陰で俺は毎日!泣き虫ヴィクトールの相手をさせられてたんだぞ!!」
アバロン帝国玉座の間 モニターを見ていたザッツロードたちが苦笑して ゆっくりヴィクトールへ振り返ろうとする 赤面したヴィクトールが怒りを抑えながら声を張る
「バーネット第二皇帝、及び元3番隊隊長ヘクター、状況説明を願いたい!」
ザッツロードたちがヴィクトールへ向き掛けていた顔を急いで元へ戻す モニターの中の2人が通信機へ顔を向け ヘクターが言う
『おー?噂をすれば その泣き虫ヴィクトールじゃねーか!』
ヘクターの言葉にザッツロードたちが苦笑する ヴィクトールが拳を握り堪える モニターの中のバーネットが鞭を床に叩き付けてヘクターへ叫ぶ
『おい!!アホヘクター!!ガキ共が居る所で その呼び方するんじゃねぇえよ!!ヴィクトールが泣いたらどぉおすんだ!?ちっとは考えろ!この脳筋アホヘクターがぁあ!!』
ザッツロードたちが思わず吹き出す ヴィクトールが咳払いをして再び言う
「バーネット第二皇帝!状況説明を!ガルバディア国への ロボット兵製作依頼は受託されたのか!?」
ヴィクトールの声にバーネットが肩の力を抜いて言う
『おう ガルバディア国王曰く、バッツスクロイツの知識を共有し、尚且つソルベキアの物資協力がありゃー可能だって話だ …だってぇえのにっ!!この脳筋アホヘクターが!!』
言い終えると共にヘクターを指差す 指差されたヘクターが再び両手を握り締めて叫ぶ
『うるせぇーー!んないつでも良い事は後にしろってゆーんだ!!こっちは 時間制限があんだよ!!』
ヘクターの言葉にバーネットが怒って鞭を振るって言う
『ざけんなぁあ!自己満カス野郎ぉおお!!』『んだと!?このドS野郎ー!!』
ヘクターがバーネットの鞭を避けて殴りかかる 2人が殴り合いの喧嘩になる モニターの中のバッツスクロイツが頭を抱える ザッツロードたちが呆気に取られヴィクトールへ振り返る ヴィクトールが溜め息を吐いて言う
「バッツクロイス、バーネットが言っていたロボット兵製作は可能だと言う話は本当か?」
ヴィクトールの声にバッツスクロイツが振り向いて言う
『バーネっちの言ってた通り、ソルベキアの協力が必要になるけど それを無しにしても 倍ぐらいの時間があれば作れるって話ー』
バッツスクロイツの言葉を聞いたヴィクトールが頷く オライオンがバッツスクロイツへ問う
「所で、親父が言ってた時間制限がなんとかってーのは?」
オライオンの言葉にバッツスクロイツが考える様子で言う
『えーっと… それはー…』
バッツスクロイツが考えているとモニターの前にガルバディア国王のホログラフが映り言う
『ヘクターは 彼の兄でありながら 過去、我がガルバディア国にて その身を変えられた ウィザードの回復を希望している』
ガルバディア国王の言葉にザッツロードと仲間たちとヴィクトールが反応し ヴィクトールが問う
「彼は… そのウィザードは 先代勇者らと共に結界の島にて魔王と戦い その際受けたダメージのまま 意識が戻らないと聞いていたが その回復が可能なのか?」
皆の視線がガルバディア国王へ向けられる ガルバディア国王が一息置いて言う
『…残念だが、確実に可能とは言い切られない ウィザードの研究を行っていた者たちは 16年ほど前に皆死に絶えてしまった 従って、回復を行うのであれば今の我々が 彼らの残した資料を元に行う事となる』
ザッツロード達が肩を落とす バッツスクロイツが言葉を足す
『その調べる作業だとかー なんだとかーで?実際に行うまでには しばらく時間がかかるしー 成功するかもー分かーんない、オマケに そのウィザードさんの命がいつまで持つかーも分からないんだ、バーネっちは 腹くくって男らしく諦めろってさ?その間にも旧世界の状況は悪化するし、ソルベキアの助力を得られなければー?時間もかかるしー?』
バッツスクロイツの言葉を後方で聞いていたヘクターが叫ぶ
『諦めてなんか堪るか!!プログラマーのデスは助けられなかったんだ!!ウィザードのデスだけは ぜってぇーに助ける!!』
バーネットが怒って言う
『だから自己満だっつってんだ!!てめぇえ1人の自己満で!!全世界の民の命を 奪うつもりかっ!?馬鹿野郎ぉおお!!』
2人が喧嘩を再開する バッツスクロイツがモニターへ向き直って言う
『なぁー ヴィクトールっち?俺ら どうしたら良いー?』
バッツスクロイツの言葉に ガルバディア国王もモニターへ視線を向ける ヴィクトールが沈黙する ザッツロードが視線を落として考える オライオンが立ち上がって言う
「俺が行って来る」
オライオンの言葉に皆が驚き顔を向ける オライオンがヴィクトールへ向いて言う
「ヴィクトール陛下 親父が馬鹿言って すんません 俺が行って 黙らせてきます」
ヴィクトールが問う
「オライオン… 貴公も父であるヘクターの苦悩を つね日頃から見知っていた筈だ それでも行けるのか?」
ヴィクトールの視線にオライオンが一度視線を外し俯く シュライツがオライオンの顔を覗き込む オライオンがシュライツを見上げ 微笑んでから ヴィクトールへ向き直って言う
「親父がずっと苦しんでたのは知ってるし 俺もプログラマーのデスの最期を見た ウィザードのデスを親父がずっと守ってきた事も知ってる …けど、だからこそ 俺が行きます!」
ヴィクトールがオライオンを見つめる ザッツロードたちも見つめる シュライツがオライオンと共に奇声を発して肯定の意思を伝える オライオンがシュライツを見てから言う
「こいつも一緒に説得するって!」
オライオンの言葉をシュライツが肯定して顔を縦に振って見せる ヴィクトールが一度苦笑してから微笑んで言う
「分かった、オライオン 貴公へ任せる」
オライオンが返事をする
「はい!ヴィクトール陛下!」
オライオンに続いてシュライツが喜んで奇声を発する ヴィクトールがモニターへ視線を戻して言う
「バッツスクロイツ、聞いての通りだ ヘクターの息子であるオライオンが説得に向かってくれる それまで待って居てくれ」
バッツスクロイツが首を傾げながら言う
『俺は良いけどさー?バーネっちが持つかの方が心配だぜー?なぁ?デスっち?』
バッツスクロイツが言いながらガルバディア国王へ視線を送る ガルバディア国王が一度苦笑してから言う
『そうだな、彼らの戦闘能力をデータ化すると その能力差は歴然だ 元とは言えアバロンの大剣使いの戦闘値は 昔と代わらず 今も他国の者に比べ 突角秀でている』
話しているガルバディア国王の周囲にデータモニターのホログラフがいくつも浮き上がる ソニヤが思わず言葉を漏らす
「デ…デスっちって…」
ラナが考えながら言う
「同じガルバディアの民だから やっぱりガルバディア国王の名前もデスなのね…」
レイトが表情を引きつらせながら言う
「それよりも他国の国王にまで あの奇妙な呼び方をするとは…」
ヴェインが目を閉じて言う
「バッツスクロイツ… 何処までも我を通す男だ…」
リーザロッテが呆れた様子で言う
「あら?アバロン帝国の2大皇帝を あの呼び方でしているのだから、今更 国王程度には当然なのではなくって?」
セーリアが苦笑しながら言う
「そ、それもそうね…?皇帝陛下を気軽に呼んで 一国の王様へ敬意を表しては それこそ問題かもしれないわね?」
オライオンが出口へ顔を向けて言う
「とにかく、俺が行って 親父をぶっ飛ばすから それまでバーネット第二皇帝陛下には頑張って貰わねーと」
ヴィクトールがオライオンへ向けて言う
「なるべく急いでくれ、オライオン」
オライオンが振り返って言う
「はい!俺が遅れてバーネット第二皇帝陛下がボコボコにされちまったら ヴィクトール皇帝陛下に俺がぶっ飛ばされそうだし!」
ヴィクトールが苦笑する ザッツロードたちが同じく苦笑して顔を見合わせる ザッツロードがオライオンへ言う
「うん、それも大変だけど、ヴィクトール皇帝陛下に 泣かれちゃっても困るしね?」
ザッツロードとオライオンを除く皆がビクッと驚き焦る 後方でヴィクトールが赤面して怒っている ザッツロードは気付かず微笑んでいる オライオンも気付かず笑って言う
「そうだな!親父に続いて 俺までヴィクトール皇帝陛下を泣かせたら 親子揃って縛り首かもな?」
ヴィクトールが我慢の限界を超え 若干涙目で叫ぶ
「今すぐ そうなりたくなければ さっさと行けーっ!!」
皆が驚き硬直する オライオンが慌てて言って走り出す
「はい!はい!今すぐ行ってきまーす!!」
ヴィクトールが拳を振るわせ怒っている ザッツロードの仲間たちが呆れている ザッツロードがきょとんと首を傾げる
改めてザッツロードがヴィクトールの前に跪いている 仲間たちが後ろで苦笑している ヴィクトールが少し頬を赤くしている状態から気を取り直して言う
「それで、貴公らへの任務だが」
ザッツロードが返事をする
「はい!」
皆が呆れている ヴィクトールが皆へ視線を向ける 皆が焦って標準状態に戻る ヴィクトールが言う
「まず、貴公らには2手に分かれて貰う」
皆が少し驚き ソニヤとリーザロッテが顔を見合わせる ヴィクトールが続ける
「新世界を受け持つ勇者であるリーザロッテ王女は 直ちにローゼント国へ向かい ローゼント国の部隊、及び今作戦に置いての協力国であるシュレイザー国の部隊と共に ソルベキア国攻略の任に就いて貰う」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが身を乗り出して言う
「ヴィクトール皇帝陛下!ソルベキアには私の兄が!」
ヴィクトールが頷き言う
「そうだ、そして旧世界を受け持つ勇者ザッツロード 貴公はローレシア国へ向かい 旧世界を救う為の行動を開始してもらう」
ザッツロードが焦って言う
「お言葉ですがヴィクトール皇帝陛下!私はっ」
ザッツロードの言葉を制してヴィクトールが言う
「異論は認めない!ザッツロード王!」
ザッツロードが衝撃を受け 乗り出していた身を引く ヴィクトールが続ける
「ザッツロード、貴公は王となったのだ 国王たるもの私情に流され 任務を放棄するなどと言う事は決して許されない 貴公はローレシア国の新たなる王として 常に新世界のローレシアと旧世界の民を救う事を第一に考えるのだ」
ザッツロードが俯き唇を噛む ヴィクトールがそれを見下ろしたまま言う
「ソルベキアへは貴公の仲間であり 共に戦ってきたリーザロッテ王女とその仲間たちが 貴公らに恩のあるシュレイザー国の騎士と共に行く、貴公はリーザロッテ王女らの力を 信頼出来ないと言うのか?」
ザッツロードが苦渋の表情で後方のリーザロッテらへ視線を向ける リーザロッテが力強く一歩前へ出て言う
「ザッツロード王子!いえ、ザッツロード王!今更 私たちの事を信頼出来無いなどとは言わせなくってよ!」
ソニヤがラナへ耳打ちする
「ザッツが王様になったって言うのに平気で言い張れる所がリーザらしいわよね?」
リーザロッテが怒りの視線をソニヤへ向ける ソニヤが焦る ラナが呆れる ザッツロードが一度強く目を瞑ってから ヴィクトールへ顔を向けて言う
「分かりました リーザロッテ王女たちを信じ 私はローレシアへ向かいます!」
ザッツロードの言葉にヴィクトールが微笑み頷く ヴィクトールが立ち上がって言う
「リーザロッテ王女らは直ちにローゼント国へ、ザッツロード王らは準備の整い次第 アバロン城 門前へ集合せよ!」
ヴィクトールの言葉にザッツロードたちが返事をする
「「はい!」」
アバロン城門前 準備を済ませたザッツロードたちが待機している ソニヤがザッツロードへ言う
「ザッツ!どお?王様になっちゃった気分は?」
ソニヤの言葉に ザッツロードが苦笑して答える
「あ… はは… いや?まったく実感無いよ」
ザッツロードの返答にソニヤが笑う ラナが呆れて言う
「それはそうよね 戴冠式だって無いのだし」
ザッツロードが微笑してラナへ言う
「まぁ、今はこんな時だからね 落ち着いたら もう少し実感も出ると思うんだけど」
セーリアが微笑みながら言う
「でも、落ち着いてしまったら 私たちも今みたいに気軽にザッツとお話は 出来なくなってしまうのでしょうね?」
ソニヤが少し驚いて言う
「あ、そっかー?でも、何だか想像付かないなぁ ザッツの前に跪いて ザッツロード陛下~なんて 言うのかなぁ?」
ソニヤが言い終えると共に思わず笑い出す ザッツロードが苦笑して言う
「え?酷いなぁ それ位言ってくれても…?」
ザッツロードと皆が笑う そこへヴィクトールがやって来る 気が付いたソニヤが驚いて名を呼ぶ
「え?!ヴィクトール陛下!?」
その言葉に皆が振り返り 続いて現れたキルビーグにザッツロードが声を上げる
「父上!?」
呼ばれた二人が微笑んで ヴィクトールが言う
「待たせてしまった様だな?」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが驚いて問う
「え?ま、待たせたとは…!?」
ザッツロードの言葉にヴィクトールに続いてやって来た キルビーグが言う
「ローレシアへは我々も同行する」
キルビーグの言葉にザッツロードとソニヤが声を合わせる
「「えぇええ?!」」
ザッツロードたちの反応に2人が笑って ヴィクトールが言う
「そんなに驚く事は無いだろう?それにローレシアにある 旧世界に関するそれらの機械はキルビーグ殿にしか 操作が出来ないのだ」
ラナが首を傾げて問う
「それは どう言う事?」
キルビーグが答える
「旧世界に関連する機械を動かすには宝玉の聖魔力が必要になる お前達も知って居るかも知れないが 宝玉には各々特性がある それを利用し ソルベキアに悪用される事の無い様 ローレシアの宝玉で無ければ動かぬよう仕組んでおいた」
キルビーグに続きヴィクトールが言う
「そして、そのローレシアの宝玉を利用するには キルビーグ殿に機械を操作して貰わねばならない」
ソニヤが思い出しながら言う
「そういえば 前にレイトが機械を操作すると宝玉が現れて~とか言ってた様な」
ザッツロードが軽く微笑み言う
「分かりました、僕らで御2人を護衛致します」
ザッツロードの言葉に仲間たちが頷く ヴィクトールとキルビーグが顔を見合わせ キルビーグが笑って言う
「まだまだお前達に護衛して貰わなければならないほど 落ちぶれては居ない」
キルビーグの言葉にザッツロード達が驚き顔を見合わせる ヴィクトールが微笑して言う
「キルビーグ殿、きっと彼らには言葉で言っても伝わらない 実力で示さねば」
言い終えると共にヴィクトールが素早く剣を引き抜きザッツロードの首下へ構える ザッツロードが驚いて尻餅を着く 仲間たちが呆気に取られる ヴィクトールとキルビーグが笑う
セーリアが移動魔法の準備をして皆の前に立つが ヴィクトールとキルビーグを見てから恥ずかしそうに言う
「な、なんだか緊張してしまうわ 王族の方々をお連れするなんて」
ソニヤとラナが顔を合わせて笑う ザッツロードが苦笑して言う
「セーリアの移動魔法は僕が保障するよ」
ラナが少し呆れて言う
「そうよ、それに今までだって ずっとザッツロード王子をお連れしてたじゃない?」
セーリアがラナへ向いて焦って言う
「そ、それはそうだけど 今日はヴィクトール皇帝陛下とキルビーグ元国王陛下にザッツロード新国王陛下よ?」
セーリアが胸に手を当てて落ち着かせようとする ラナが苦笑して言う
「そうね、確かにザッツ1人ならまだしも 皇帝陛下と元国王陛下は重いわよね」
ザッツロードが苦笑する ヴィクトールがあっと思い出して言う
「ああ、それなら 私はもうアバロン帝国の皇帝では無くなったのだよ」
ヴィクトールの言葉にザッツロードたちが驚く
「「「「えぇええ!?」」」」
ヴィクトールが苦笑しながら言う
「従って、名前の後に『皇帝陛下』とは付けなくて良い 気軽にヴィクトールと呼んでくれ」
ヴィクトールが笑顔を向ける ザッツロード達が『無理だ』と思う キルビーグが苦笑している キルビーグが気を取り戻して言う
「さて、あまりのんびりもしていられない ヴィクトール殿のお陰で 気も軽くなっただろう?移動魔法を頼もう」
セーリアが慌てて返事をして魔法詠唱に入る ソニヤが軽く笑って言う
「気持ちが軽くなり過ぎて ソイッド村まで飛ばされちゃったりして?」
ラナが苦笑して言う
「それなら良いけど、変なところに落ちて 元皇帝陛下と元国王陛下にお怪我でもさせたら やっぱり大変よ」
ヴィクトールが微笑んで言う
「その時は皆でキルビーグ殿を援護してくれ、私は 少々乱暴な移動魔法に慣れている 上空5メートルから落下をさせられても 対処可能だ」
ヴィクトールの言葉に皆が驚く
「「「えぇええ!?」」」
キルビーグが頭を抱えて言う
「確かに あの移動魔法に慣れてしまえば 上空5メートルも問題ないかもな」
ソニヤがヴィクトールへ叫ぶ
「どんな ど下手な移動魔法よっ!!?」
ソニヤの声に驚くセーリア 移動魔法失敗の破裂音と共に ザッツロード達がローレシア方面へ飛んで行く
【 ローレシア国 】
目的地のローレシア城より手前の荒野上空に ザッツロードたちが魔法破裂音と共に到達して落下する ザッツロードと仲間たちが悲鳴を上げる中 ヴィクトールとキルビーグが華麗に宙を舞い着地 ヴィクトールが落下して来たセーリアを抱き止め キルビーグがラナを抱き止め ザッツロードとソニヤが地面に落下する セーリアとラナが自分を受け止めた相手に 恥ずかしそうに礼を言う ヴィクトールとキルビーグが微笑して答える その横でザッツロードが頭をさすり ソニヤが打ちつけた尻をさすった後 立ち上がってザッツロードへ怒る
「ちょっと!ザッツ!何で私を抱き止めてくれない訳!?」
ザッツロードが苦笑しながら答える
「ご、ごめん」
ヴィクトールとキルビーグが苦笑する ソニヤが振り返って怒る
「そっちの2人も!!なんで私じゃないのよ!?」
ヴィクトールとキルビーグが呆気に取られた後笑う ラナが呆れ セーリアが苦笑する
ザッツロードが周囲を見渡し ローレシア城を見つけて言う
「少し手前ではありますが もう一度移動魔法を使うほどでは無いと思います」
ザッツロードの言葉にヴィクトールとキルビーグが頷く セーリアが慌てて謝る
「も、申し訳有りませんっ」
ヴィクトールとキルビーグが微笑んで ヴィクトールが言う
「いや、この位 大した距離では無い」
キルビーグが言う
「ああ、城はすぐそこだ 気にしなくて良い」
ザッツロード達がローレシア城へ向かう 程なくして魔物が現れる ザッツロードが驚いて言う
「な、なんだ!?あの魔物は!」
今までに見た事の無い魔物の姿に ザッツロードたちが顔を見合わせヴィクトールとキルビーグも顔を見合わせ 顔を横に振る ヴィクトールが剣を引き抜いて構えながら言う
「今までに確認されていない魔物だ、気を付けろ!」
キルビーグが構え 隣にザッツロードが構え 魔力使いたちが後方に構える 間もなく魔物が魔法詠唱を開始する ソニヤが声を上げる
「え、詠唱魔法を使う気!?」
ヴィクトールがキルビーグへ視線を向けて問う
「キルビーグ殿!?」
キルビーグが魔物へ視線を向けたまま答える
「ローレシアでも その様な魔物は確認されてはいない!来るぞ!」
ザッツロードが言うと共に駆け出す
「行きます!」
ザッツロードたちと魔物との戦いが終わる ザッツロードたちが各々に魔物の遺体を前に考える ヴィクトールが言う
「魔法を使用する魔物は存在するが 詠唱魔法を使うとは…」
ソニヤがラナへ視線を向けて言う
「私が相手をした方は 魔術師が使う詠唱を行っていたわ」
ラナが同様にソニヤへ顔を向けて言う
「こっちは魔法使いの詠唱魔法だった」
セーリアが苦渋の表情で言う
「私たちと同じ種類の魔法を使うだなんて… 気味が悪いわね」
ザッツロードがキルビーグへ向いて言う
「父上、もしかしたら 我々が居ない間にローレシア領域に発生した 新種の魔物なのかもしれません 城へ向かい確認をした方が」
キルビーグが頷いて言う
「うむ、その可能性もある、城へ急ごう」
【 ローレシア城 】
ローレシア城へ到着したザッツロードたち フォリオッド大臣が皆を出迎える
「キルビーグ陛下!よくぞ御無事で!!」
フォリオッドが駆け寄って来る キルビーグが苦笑して言う
「フォリオッド、先だって連絡をしておいたであろう?私は王位をアバロン帝国へ謙譲したのだ そして、」
キルビーグが言いながらフォリオッドへザッツロードを示して言う
「このザッツロード7世が ローレシア国の新たな王へと任命された」
フォリオッドが驚いてザッツロードへ顔を向ける ザッツロードが苦笑して言う
「そう言う事なんだ、フォリオッドこれからも よろしく頼むよ」
ザッツロードの言葉にフォリオッドが喜んで言う
「もちろんで御座います!ザッツロード王子…!ああっ いやいや失礼 ザッツロード国王陛下!」
フォリオッドが敬礼する ザッツロードが微笑む キルビーグが言う
「それで、フォリオッド 留守の間 何か問題は無かったか?」
キルビーグの言葉に 後ろでヴィクトールが苦笑する それに気付いたキルビーグが軽く笑って言う
「おっと、いかんな?ザッツロード、これはお前の台詞だ」
キルビーグの言葉にザッツロードが一瞬驚いてから 微笑んで言う
「はい、父上」
フォリオッドが微笑んで言う
「アバロン帝国の方々が 場内を色々とお調べになっていた事以外は特に… ああ、そう言えば?」
フォリオッドがザッツロードへ顔を向けて言う
「2人の女性が 勇者ザッツロード様はどちらかと お見えになられました」
ザッツロードが首を傾げて言う
「2人の女性?名前は?」
フォリオッドが顔を横に振って言う
「お名前は名乗られませんでした しかしお見受けした所 魔力使いの装いの方でした 事前にザッツロード陛下がシュレイザー国の援護に向かっている事を伺っておりましたので その旨をお伝えしました」
フォリオッドの言葉にザッツロードが首を傾げて言う
「そうか… シュレイザー国では特に その様な者とは会わなかったが」
ソニヤが言う
「すれ違いになっちゃったのかな?あの時は結構忙しくて 私たちもすぐに スプローニ国へ移動しちゃったし」
ラナが続けて言う
「用があるなら追い掛けて来るかもしれないわね?」
ザッツロードがしばらく考える キルビーグが問う
「それとは別に、フォリオッド ローレシア周囲で詠唱魔法を使う魔物と遭遇したのだが その様な魔物が確認されているか?」
キルビーグの言葉にフォリオッドが驚いて言う
「詠唱魔法を使用する魔物ですか!?いえ、その様な魔物の話は 聞き及んでおりません」
キルビーグが頷いて言う
「そうか、分かった もし確認がされたら 詳しい情報と連絡を」
フォリオッドが敬礼して返事をする
「はっ 畏まりました」
地下の機械室へ向かう 道中 ザッツロードが言う
「あの魔物… 城の方でも確認はされていなかったと言うし 一体何だったのだろう」
ソニヤがザッツロードへ向いて言う
「お城でも確認されていなくて、もう現れないのなら… 良いんじゃない?」
ラナがソニヤへ言う
「確認されていないからこそ 詳しく調べる必要があるんじゃない!?」
ソニヤが視線を逸らして言う
「でもぉ~ 出来ればもう関わりたく無いなぁ やっぱり同じ種類の魔法を使う魔物なんて 気持ち悪いじゃない?」
ヴィクトールが考えながら魔力使いたちへ問う
「魔法の詠唱というのは 魔物が覚えられる様な物なのだろうか?」
ヴィクトールの問いにソニヤとラナが考えソニヤが答える
「ちゃんとした魔法にしようと思えば難しいけど ある意味適当にやっても 何か起きるって言うのはあるわよね?」
ラナがソニヤの言葉に答えて言う
「でも、あの魔物たちは 適当に唱えている様子は無かったわ 放たれた魔法だって十分強い物だったし」
ヴィクトールが再び考えながら言う
「では 正式な魔法を使えるほどの 知能を持った魔物であるのか もしくは…」
ザッツロードがヴィクトールへ向いて問う
「もしくは…?」
ヴィクトールが皆の視線に気付いて 顔を左右に振ってから言う
「いや… そうでは無い事を祈る」
皆が疑問して顔を見合わせる キルビーグが言う
「人体の魔物化は まだ確認されては居ない そして、そうならない為にも 悪魔力の脅威を一刻も早く 無くさなければならないのだ …さぁ、ここだ」
キルビーグが部屋を示す 皆がそちらへ視線を向ける
過去に破壊された扉は直されている その扉を開きキルビーグが入る ヴィクトールが続きザッツロードたちも入る 部屋に入るとキルビーグが制御装置の下へ向かう ヴィクトールが周囲を確認しながらキルビーグへ続く キルビーグが機械を操作し モニターにデータが流れる ザッツロードたちもそれを見ながら キルビーグの下へ向かう しばらくキルビーグが機械を操作し 送られてきたデータを見ている ヴィクトールがそれらを眺めつつ キルビーグへ問う
「これはプログラマーが使用する プログラムの一種だろうか?」
ヴィクトールの問いにキルビーグが思い出したように振り返って言う
「ああ、申し訳無い 先に伝えておくべきだった このデータはただの文章だ、一応簡単にはその内容が分からぬ様に 細工はしてあるが 大した物では無い 文章の途中にある記号を幾つか外しながら読むのだ、文章は古いローレシア言語で送られている」
キルビーグの言葉に皆がモニターを見て首を傾げる ザッツロードが言う
「あ… 本当だ、私も古いローレシア言語に 詳しくは無いですが 所々読め無い箇所がある程度で 後は理解できます」
ザッツロードの仲間たちが顔を見合わせ ソニヤが言う
「今は大陸の言語は統一されちゃってるし、ローレシア言語ってだけでも分からないのに 古い物だなんて さっぱり分からないわよ」
ラナが頷いて言う
「ローレシアの言語は特殊だし、古い物は文字自体が 今と違うものね?」
ヴィクトールが続いて言う
「私もあいにく分かりかねる、キルビーグ殿 手数だが翻訳を頼む」
キルビーグが頷いて言う
「ああ、勿論だ ザッツロード、お前が何処まで理解しているかも気になる 先に皆へ説明を」
キルビーグの言葉にザッツロードが返事をしてモニターへ目を向けて言う
「はい、…えっと、悪魔力の発生源を 全て付き止めた しかし、我々の存在出来る空間は非常に限られて来ている 今は持てる力でその空間を維持し 新たなる聖魔力の供給を待つ」
キルビーグが頷いて言う
「うむ、それで問題ない」
ザッツロードが続けて言う
「ただ、その上下にある文字が分かりません」
ザッツロードの言葉にキルビーグが言う
「あれば数字を表している 上にあるのが この文章を送信した日時 下にあるのがこの文章に対する 返答を受ける日時だ」
ヴィクトールが問う
「『返答を受ける日時』とは?あらかじめその様な日時を 指定しておかなければならないと 言う事だろうか?」
キルビーグが頷いて言う
「旧世界の正しい位置へ何かを送るには 悪魔力を退ける強い聖魔力と 相手側にもそれを受け取るための聖魔力の発信が必要になる」
ソニヤが表情を渋らせて言う
「なんだか大変そう~ それじゃ、向こうから送る時も こっちは決めた日に受信を待っていなければいけないのね?」
ソニヤの言葉にキルビーグが答える
「そうだな、ただ 場所を特定せずに送るとあれば 聖魔力は使わず 更には 悪魔力を使用して送る事さえ可能だ」
セーリアが考えて言う
「正しい場所へ送る時には強い聖魔力で 何処でも良い場合は悪魔力を利用できるのね」
キルビーグが頷いて言う
「そして、この文章が送られてきたのは3ヶ月前、この文章に対する返答を送る期日は過ぎ 次の文章が送られて来ている」
皆がモニターに注目する ザッツロードが読み始める
「…予てより開発していた悪魔力中和装置が完成した この機械の能力を最大限に使用するには 今の聖魔力の量では不十分である 聖魔力の供給を再び待つ」
ザッツロードが読み終えると キルビーグが頷き 次のデータを映す 再びザッツロードが読む
「連絡が途絶えたまま 残りの聖魔力が定量を迎えてしまった 我々は開発した悪魔力中和装置を何としても使用したい 例えこの世界を救う事が出来ずとも 新世界を救う事は可能である 旧世界の存亡を繋ぐ最後の切り札を そちらの新世界へ送る 万が一新世界において 今までと同等の聖魔力の供給が不可能な状態であるなら そちらへ送った…」
ザッツロードが読んでいる途中でヴィクトールの通信機が鳴る 皆が驚く ヴィクトールが通信機を取り出し 皆に詫びてから繋ぐ
「失礼 …どうした?」
通信機のモニターにヴィクトール14世が映り言う
『申し訳有りません 父上、緊急事態のため 取り急ぎ連絡致します』
皆の視線が強まる ヴィクトールが答える
「何事だ!?」
ヴィクトール14世が言う
『ソルベキア国がロボット兵をガルバディア国へ送り 無差別攻撃を開始 現在アバロン国3番4番隊と交戦中です!』
皆が驚きヴィクトールが言う
「何故ソルベキアが ガルバディアを!?」
ヴィクトール14世が答える
『原因は不明です!ベネテクト国及びシュレイザー国スプローニ国の部隊も 援護に向かっているとの事 現在両アバロン部隊は ガルバディア国王らの支援を受け、雷の剣を有した状態で 元アバロン国3番隊隊長ヘクターと バーネット様が指揮を執り応戦しております!』
ザッツロードが言う
「ヴィクトール陛下!我々も援護に!!」
ヴィクトールが通信へ答える
「ガルバディア国の戦況 及び他国の状況を確認 残りの部隊でアバロンの警戒を強化 変化が有り次第報告しろ」
ヴィクトール14世が返事をして通信が切られる ザッツロードがヴィクトールの下へ駆け寄って言う
「ヴィクトール陛下!」
ヴィクトールがザッツロードへ視線を向けて言う
「落ち着け、ザッツロード王 ガルバディアにはヘクターとバーネットがおり、現在はそこへオライオンらも向かっている 更に他国の部隊も援護に向かっているのだ ガルバディア国王らが支援をしているのなら 魔法剣でしか攻撃の効かないロボット兵へも 部隊兵らの攻撃は有効だ」
ザッツロードが一歩下がりながら言う
「しかし…」
キルビーグが言う
「ヴィクトール殿の仰る通りだ、ザッツロード 各々には各々の役目がある 今の我らの役目は旧世界への支援だ」
ヴィクトールが頷いて言う
「彼らを信じ、我らは我らの役目を行うのだ ザッツロード王 さぁ、先ほどの続きを」
ザッツロードが一度視線を落としてから 再びモニターへ向き直って読む
「…万が一新世界で今までと同等の聖魔力の供給が不可能であるなら そちらへ送った 私の仲間と接触し 預け持たせてある 悪魔力を聖魔力へ変換する宝玉を使用し それを送って欲しい」
ソニヤとラナが驚いて声を上げる
「私の仲間!?」
ラナが言う
「旧世界から人をこちらへ送ったと言うの!?」
ヴィクトールがキルビーグへ問う
「キルビーグ殿、旧世界から人を こちらへ送る事は現在も可能なのか?」
キルビーグが頷いて言う
「ああ、可能だ だが、現在旧世界からこちらへ向かうには 多くの聖魔力が必要だ 従って全ての旧世界の民を こちらの新世界へ送るには 現在有している聖魔力の量ではとても足りない、…それに 彼らもそれは望んでいない事だ」
ザッツロードたちが顔を見合わせ納得する ヴィクトールが続けて問う
「では、次にあった悪魔力を聖魔力へ変換する宝玉とは!?」
キルビーグが機械を操作しながら答える
「こちらの世界から宝玉の情報を送り 旧世界で研究されていた物だ 強い魔力者の協力が必要になるが 悪魔力を聖魔力へ変換する事が出来る宝玉だという」
ザッツロードが驚いて言う
「それは凄いっ 悪魔力を聖魔力へ変換出来るのなら 旧世界はもちろん、新世界をも救う事が可能なのでは?!」
キルビーグが顔を横に振る
「確かに素晴らしい物ではあるが 旧世界において開発に成功した数はたったの10個 そして その宝玉に蓄積された聖魔力は 旧世界を悪魔力から救う 悪魔力中和装置を起動させれば 全ての力を消耗してしまう」
ヴィクトールが言う
「しかし、それらを使用する事によって 少なくとも旧世界の悪魔力は中和されるのだろう 旧世界の民は自らの任を全うした事になる ならば我らも、新世界の悪魔力は 我らが責任を持って処理をするべきだ」
キルビーグが頷いて言う
「ああ、彼らは実に良くやってくれた 新世界へ逃げ出した我らに代わり 旧世界を救う まさに彼らこそ勇者だと言えよう」
ヴィクトールが軽く笑って言う
「新世界の勇者も 負けては居られないな?」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが苦笑する ソニヤが割って入って言う
「あら?新世界の勇者はリーザたちでしょ?私たちは旧世界担当の勇者と仲間たちだもの!」
ラナが続けて言う
「ええ、私たちは私たちの任を 貫かなきゃいけないわ」
2人が声を合わせて言う
「「ね!?勇者ザッツロード!」」
ザッツロードが呆気に取られ問う
「…え?」
ソニヤとラナが顔を見合わせ ソニヤが言う
「だ~か~らっ!!」
ラナが続ける
「私たちは 旧世界から送ったって言う この人の仲間を探さないと!」
ザッツロードがあっと声を上げ言う
「あ、ああ… そうか」
ソニヤとラナが溜め息を付く セーリアが苦笑している ザッツロードが慌てて言う
「ご、ごめん…っ」
ヴィクトールとキルビーグが顔を見合わせ笑う ザッツロードが2人に気付いて苦笑して頭を掻く
ザッツロードがキルビーグへ問う
「それで、父上 この文章にある『私の仲間』と言うのは?」
ソニヤが首を傾げて言う
「それだけじゃ分からないわよね?」
ラナが言う
「過去にそれと分かる連絡を送っているんじゃないの?」
皆の視線の先キルビーグがモニターを見て言う
「恐らくこの者が仲間と称す者は 魔力使いの女性だと思われる」
キルビーグの言葉に皆が驚きソニヤが叫ぶ
「それじゃ!?」
ラナが続ける
「さっきフォリオッド大臣が言っていた!」
ソニヤとラナが顔を見合わせて叫ぶ
「「そうよっ!!」」
2人がザッツロードへ顔を向ける ザッツロードが苦笑するセーリアが苦笑しながら言う
「今は何処にいらっしゃるのかしら?」
ソニヤが言う
「向こうはザッツを追ってくるんだし 私たちが追ったらいつまで経っても会えないんじゃない?」
ラナが問う
「それか私たちが急いで追って 追い付くか…」
キルビーグが言う
「ローレシアを再び訪れた場合は お前達へ連絡し、彼女らをここへ留めておこう」
ヴィクトールが頷いて言う
「アバロンへも私から伝えておく」
ザッツロードが言う
「では我々は 可能な限り急いで追いかけてみます」
キルビーグが頷いて言う
「分かった ヴィクトール殿、貴殿には 現在、旧世界を脅かしている旧世界の機械兵の資料をお渡したい 例え旧世界の悪魔力を全て中和しても 既に洗脳された奴等は動き続ける筈だ」
ヴィクトールが言う
「それは助かる 対機械兵の開発において 貴重な資料となるだろう」
【 シュレイザー国 】
ザッツロードたちがシュレイザー国の移動魔方陣に現れ ソニヤが周囲を見渡しながら言う
「それで~?どうやって探すの?」
ラナが言う
「ローレシアではフォリオッド大臣へ接触したって事は他の国でも同じ様にしてるんじゃない?」
セーリアが微笑んで言う
「それじゃ、お城に行くのね?」
ソニヤが笑顔で言う
「お城に行くんだったら ヴェルにも会えるんじゃない!?」
ソニヤの笑顔にザッツロードが苦笑して答える
「うん、そうだね 連絡は行ってると思うけど ロキの事も… 僕から一言言って置きたいし」
ソニヤが表情を落として言う
「あ~… そう ね…」
ザッツロードたちは城へ向かい、シュレイザー国の大臣と会話をする ザッツロードが驚いて言う
「アンネローゼ女王陛下が ローゼント国へ!?」
ザッツロードたちが驚く 大臣が頷いて言う
「はい、アンネローゼ女王陛下は元々ローゼント国のご出身、今回の戦いは ソルベキア国とローゼント国との歴史の節目になるのでは無いかと 御自分の目で確かめて置きたいとの事です それと、これを機に今まで他国に頼りきりだったシュレイザー国のあり方を変えて行きたいと」
ラナが驚いたまま言う
「シュレイザー国は戦いを行わない国ってイメージがあるから その国の女王様が直接赴くだけでも きっと大きく変わるでしょうね」
ソニヤが大臣へ問う
「アンネローゼ女王様がローゼントへ向かったって事は やっぱりヴェルも… ああ、ヴェルアロンスライツァーも一緒に行ったの?」
大臣がソニヤへ向いて微笑んで言う
「はい、私もヴェルアロンスライツァー殿が一緒だと言う事で こうして安心してアンネローゼ女王陛下の留守を預かっておられます …そ、そうでなかったらっ!?」
大臣がネズミの様にオロオロする ザッツロードたちが苦笑する ザッツロードが気を取り直して言う
「あ、あの それとは別に お伺いしたい事があるのですが」
大臣がハッと気を取り直して ザッツロードへ向いて問う
「はい!我がシュレイザー国をお守り頂いた 勇者ザッツロード様からのお伺いとの事でしたら 私は国中の者から情報をかき集めてまいります!」
大臣の笑顔に ザッツロードが軽く笑って言う
「あ、いや、その… シュレイザー国に 私を探して尋ねて来た者は 居ませんでしたでしょうか?恐らく魔力使いの女性だと?」
ザッツロードの言葉に大臣が少し考えてから言う
「…ええ!おりました!」
ソニヤとラナが大臣に詰め寄って問う
「「ホント!?」」
大臣が驚いてオロオロ怯える ザッツロードとレーミアが苦笑してザッツロードが問う
「それは いつ頃でしょうか?」
大臣がザッツロードへ向き直り答える
「はい、あのシュレイザー国の大戦が終了して 皆様がスプローニ国へ向かわれた翌日でした すぐに向かわれていたので てっきりお会いしているものかと… ご連絡致しませんで申し訳有りませんでした」
大臣が深々と頭を下げる ザッツロードが慌てて両手を自分の前で横に振りながら言う
「あ、いえ 良いんです」
大臣と別れたザッツロードたち ソニヤが問う
「シュレイザー国での戦いが終わって すぐスプローニ国へ向かったなら 私たちと会ってても おかしく無いのに?」
ラナが考えながら言う
「魔力使いであっても 一度も行った事の無い町や国へは 移動魔法が使えないわ」
ザッツロードが気付いて言う
「そうか… ここからスプローニ国へ 歩いて向かうと大分掛かるね?」
セーリアが言う
「そう考えたら あちらがスプローニ国へ辿り着いた頃には きっと私たちはアバロンに居たのでしょうね?」
ソニヤが首を傾げて言う
「ええっと…?それじゃ スプローニ国から歩いてアバロンへ向かったと考えたら~?」
ラナがソニヤへ言う
「最初にローレシアを訪れたのなら アバロンを経由してシュレイザーまで来ていた可能性もあるのじゃない?だとしたら」
セーリアが考えながら言う
「色々考えると やっぱり1つ1つ追って行くのが確実かも知れ無いわね?」
ザッツロードが頷いて言う
「そうだね、確実な方法で辿って行けば アバロンやローレシアでは足止めをして置いてくれるはずだから」
皆が頷き セーリアの移動魔法でスプローニ国へ向かう
【 スプローニ国 】
スプローニ国の大臣の前でソニヤとラナが叫ぶ
「「えぇええ!?」」
大臣が両手で頭の上を押さえながら うるさそうに目を瞑る ザッツロードも呆気に取られながら言葉を溢す
「き… 来て無い?」
セーリアが口に手を当て驚いている 大臣が頭上から手を離しながら言う
「は、はい その様な方はいらしておりません、もし その様な方が訪れておりましたら 我々は即座にザッツロード陛下やアバロン帝国の方へ ご連絡致します」
皆が顔を見合わせ ソニヤが問う
「どうしよう?これじゃ追えないわ」
ザッツロードが考える ラナが言う
「もしかしたら、お城には来ないで 門兵に聞いただけだったとか…?」
ラナの言葉にザッツロードが言う
「そうだね、もしかしたら急いで僕らを追うために 城まで訪れずに兵や誰かに聞いたと言う可能性も…」
ザッツロードたちの様子に 大臣が言う
「人探しと言う事でしたら 城下町の門兵に確認するのが確実だと思われます」
ザッツロードたちは城下町の門兵2人に問う ソニヤとラナが叫ぶ
「「えぇええ!?」」
門兵Aが両手で頭の上を押さえ 門兵Bが両手で耳を塞いで うるさそうに目を瞑る ザッツロードが呆気に取られながら言葉を溢す
「き… 来て無い?」
セーリアが口に手を当て驚いている 門兵らが手を離しながら言う
「は、はい その様な方は いらしておりません」
「もし その様な方が訪れておりましたら 我々は即座にザッツロード陛下やアバロン帝国の方へ…」
ソニヤが言葉の途中でザッツロードへ身を乗り出して言う
「ど、どうしよう!?ザッツ!?」
問われたザッツロードも視線を落として悩む 門兵2人が顔を見合わせ言う
「もしかしたら 皆様に御支援頂いた あの大戦の後にあった 騒ぎに巻き込まれてしまったのかもしれません」
門兵の言葉にザッツロードたちが一度顔を見合わせ ザッツロードが問う
「その騒ぎとは?」
門兵が答える
「あの大戦のすぐ後に とても強力な魔力を持った魔物が2匹 町へ無差別攻撃をしたのです」
皆が驚く ザッツロードが話を急かす
「そ、それで!?町は大丈夫だったのですか!?」
門兵Aが頷いて答える
「町には丁度 あの大戦を終えた他国の兵が多く残っており 彼らの力を得て何とか追い払う事に成功しました とは言え あれほどの魔力を持った魔物が居るとは…」
門兵Bが続けて言う
「おぞましい事に、その魔物たちは 人の使う魔法と同じ種類の魔法 を使って来るのです」
門兵の言葉にザッツロードたちが驚き ザッツロードが言う
「まさかっ!?」
ソニヤが門兵Bへ詰め寄って言う
「その『人の使う魔法と同じ種類の魔法』って!詠唱魔法の事!?」
門兵たちが驚いて答える
「あ、ああ、そうなんだ、呪文を詠唱して 人と同じ魔法を使うんだ」
「それも とても強力な魔法で 多くの者が負傷した」
ザッツロードたちが顔を見合わせ ザッツロードが問う
「その魔物について もっと詳しい事は分かりますか?」
門兵Aが頷いて言う
「先日アバロン帝国へ提出しました 我々では討ち取る事が出来なかった為 周辺の国へも警戒を強めるよう連絡を入れたのです」
門兵Bが言う
「諸卿も この周辺を歩くつもりなら 十分気を付ける事だ」
ザッツロードたちが顔を見合わせ頷き合う
門兵らへ礼を言い その場を離れたザッツロードたち ソニヤがザッツロードへ問う
「ねえ、どうする?この周囲に あの魔物が居るかもしれないって」
ラナが言う
「あら?もう会いたくなかったんじゃ無いの?」
ソニヤが顔をしかめて言う
「そ、それは~ そうだけど…」
セーリアが言う
「詳しい事をアバロン帝国へ提出したって言っていたから もしかしたらアバロンへは 他の国からも 連絡が入っていたりするのではないかしら?」
ザッツロードが考えながら言う
「そうだね、それに僕たちはスプローニ国からアバロンへ向かった もし旧世界の人が 誰かに僕らの動向を聞いていたら アバロンへ向かっているはずだ」
【 アバロン帝国 】
玉座の間 玉座の前で待つザッツロードたち そこへヴィクトール14世が現れ玉座へ座る 皆が呆気に取られて驚き ザッツロードが一度敬礼してから顔を上げて言う
「あ… あの…」
ザッツロードが戸惑っているとヴィクトール14世が微笑んで言う
「ザッツロード王、私も父から帝位を譲られ このアバロン帝国の皇帝となったのだ 貴公らの任や悪魔力に関する事は 一通り聞き及んでいる」
ザッツロードが慌てて再度敬礼する ヴィクトール14世が軽く笑って言う
「畏まる必要は無い、私もヴィクトール13世同様 貴公らと共に悪魔力と戦う仲間だ」
ザッツロードが顔を上げて言う
「はい、有難う御座います ヴィクトール14世皇帝陛下」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷き言う
「それで、貴公らがアバロンを訪れたという事は 何か進展があったと言う事だろうか?ヴィクトール13世からの連絡では 貴公らは旧世界からの使者を探していると聞き及んでいたが?」
ザッツロードが頷いて言う
「はい、我々はその者を追ってシュレイザー国からスプローニ国へ向かいました、しかし、スプローニ国にて その者の情報が途絶えてしまいました」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷き言う
「そうか、今の所このアバロンに その者たちは来て居ない」
ザッツロードたちが驚く ヴィクトール14世が続けて言う
「そして、キルビーグ殿からの連絡では ローレシア国へも再度現れては居ないとの事だ」
ザッツロードの仲間たちが顔を見合わせる ザッツロードが視線を落として言う
「そうですか…」
ヴィクトール14世が言う
「私の方からツヴァイザー国とベネテクト国へ連絡を行い 貴公を捜し求める者があった場合は アバロンやローレシア同様 足止めと連絡を行う様伝えてある キルビーグ殿よりデネシア国及びカイッツ国へも同様の連絡を 行っている それらの国へ現れた際は 私かキルビーグ殿より 即座に貴公らへ伝わるだろう」
ザッツロードが呆気に取られながらも ハッとして言う
「で、では我々は残りの国へ…っ ローゼント国 ソルベキア国 ガルバディア国へ…」
ヴィクトール14世が顔を横に振って言う
「ローゼント国 及び ソルベキア国へは現在ヴィクトール13世が向かっており、彼の口から伝わっているはずだ、そしてガルバディア国へはバッツスクロイツ殿へ伝えてある… ただ、こちらは現在混戦中だ 人探しの余裕は無いと思われる」
ザッツロードが言う
「ヴィクトール13世こう…元皇帝陛下は 現在ローゼント国 及び ソルベキア国へ?」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が軽く笑い答える
「うん、ヴィクトール13世はローゼント国へ向かい リーザロッテ王女らと合流しソルベキア国攻略に参加するとの事だ」
ザッツロードが考えてから言う
「ヴィクトール14世皇帝陛下、ソルベキア国での戦況は伝わっていますか?」
ヴィクトール14世が答える
「ソルベキアは機械技術に秀でた国である為 今作戦中は極力無線連絡を行わぬようにしている 何か急用であるのなら使いの者を向かわせるが?」
ヴィクトール14世の言葉に慌ててザッツロードが否定する
「あっ!い、いえ…っ ただ、もし援護が必要であるなら… ソルベキアには現在 私の兄が幽閉されているのです 国王たる者 私情を用いてはいけないと ヴィクトール13世元皇帝陛下にお叱りを頂いたのですが 申し訳有りません…」
ザッツロードが視線を落とす ヴィクトール14世が少し間を置いてから言う
「今作戦は元々ソルベキア国攻略にあったが それが困難とされた場合でも 貴公の兄君キルビーグ2世殿を救出する事は 最優先とされている」
ザッツロードが驚き顔を上げる ヴィクトール14世が微笑んで言う
「これは機密事項だ 貴公らにも伝える事無く 作戦を遂行したいと言っていた ソルベキアへの情報漏洩を避けるためにな …だが貴公の兄君を心配するその気持ちに 私は心打たれ伝えてしまった」
ヴィクトール14世が苦笑する ザッツロードが微笑んで礼を言う
「有難う御座います ヴィクトール14世皇帝陛下 お陰で安堵出来ました」
ヴィクトール14世も微笑を返して言う
「うん、それで良い、だが もし…」
ヴィクトール14世が言葉を止めるザッツロードが注目する ヴィクトール14世が口角を上げて言う
「私が機密情報漏洩罪に問われ 私の指導官であるバーネット様にお叱りを受ける事になってしまったら 代役を引き受けてくれるかい?」
ザッツロードが慌て声を上げる
「え?…えぇええ!?」
ヴィクトール14世が笑って言う
「ふふ、冗談だ」
ザッツロードがホッと胸を撫で下ろす 後方で仲間たちが呆れている ザッツロードが言う
「それと、ヴィクトール14世皇帝陛下、それらの話とは別に 我々はスプローニ国にて 気になる情報を聞きました」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が首を傾げて問う
「その情報とは?」
ザッツロードが答える
「はい、既にそのスプローニ国からアバロン帝国へ 情報が提出されているとの話ですが スプローニ国にて詠唱魔法を使用する魔物が現れたと 恐らくこの魔物と同じものと我々は一度 ローレシア国にて遭遇しております その際ヴィクトール13世元皇帝陛下もいらしたので この話もアバロン帝国へ伝わっていると思うのですが」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷いて答える
「ああ、双方とも聞き及んでいる 私の方でも調査を行わせているが 今の所その2つ以外の情報は無い」
ザッツロードが気を落として言う
「そうですか…」
ヴィクトール14世がザッツロードへ言う
「何か新しい情報が入った場合は知らせよう そして、貴公らの援護が必要な時も連絡を入れる それまでは独自に 旧世界からの使者を捜し求めてくれ」
ザッツロードが顔を上げて言う
「はい、ヴィクトール14世皇帝陛下 有難うございます」
ヴィクトール14世が頷く ザッツロードが敬礼し玉座の間を後にする
玉座の間を後にしたザッツロードたち 通路を歩きながらソニヤが言う
「旧世界からの使者を独自に探せって言ったって スプローニ国に向かったって事以外 情報が無いのにどうやって探すの?」
ラナが考えながら言う
「シュレイザー国では確認されているけど、その時から随分時間が経ってしまっているし」
セーリアが困った表情で言う
「どこかの国へ立ち寄ってくれれば 今ならアバロンかローレシアに連絡が来るのだけど」
ザッツロードも悩みながら言う
「うん… こんな時 例えばヴィクトール陛下だったら どうするのだろう…?」
ザッツロードの仲間たちが ザッツロードへ視線を向けて苦笑する ソニヤが言う
「ザッツてば、ローレシアでもヴィクトール陛下って呼んでたわよね?」
ソニヤの言葉にザッツロードが疑問して言う
「え?」
ラナとセーリアが苦笑して セーリアが言う
「ヴィクトール13世はもう皇帝陛下では無いのだから ヴィクトール陛下とお呼びするのは ちょっとどうなのかしら?」
ザッツロードがあっと驚き 苦笑して言う
「ああ… そうだったね えっとそれじゃ… ヴィクトール…元皇帝陛下」
ザッツロード以外の者が笑う ザッツロードが苦笑して言う
「きゅ、急にはやっぱり難しいよ あ!ほら、皆だって 僕の事をザッツロード陛下って言うのは難しいだろ?」
ソニヤが苦笑して言う
「え~?それじゃー 呼んであげるよ~?ザッツロード陛下!」
セーリアが苦笑しながら言う
「ええ、ザッツロード陛下!」
ラナが呆れて言う
「それで?ザッツロード陛下、これから如何なさいます?」
ザッツロードが後退って言う
「や、やっぱりザッツで良いよっ それでっ えっと?ど… どうしようか?」
ザッツロード以外が溜め息を吐き ソニヤが言う
「やっぱりザッツに ザッツロード陛下は まだ早いみたいね」
ソニヤの言葉にザッツロードがショックを受けて言う
「う… ご、ごめん」
セーリアが慌ててフォローする
「ま、まぁ?今はこんな時なのだし 仕方が無いわ ね?ほら、今はザッツロード陛下より 勇者ザッツロードなのだから!」
ラナが呆れながら言う
「それはそうとして 本当にどうするの?例えば その ヴィクトール…元皇帝陛下だったら?」
ラナが頬を赤らめる 皆が苦笑する ザッツロードが考えて言う
「うん… ヴィクトール元皇帝陛下なら…」
ザッツロードたちが考える バッツスクロイツの声が響く
「だーから!そんなのいくら俺っちでも無理だって!大体 そんなの 不可能だってばー!」
ザッツロードたちが驚き 声の聞こえた上の階へ顔を向ける バッツスクロイツが通路を走って逃げている 鞭が伸びて来てバッツスクロイツが捕まる バーネットが続いて現れて言う
「うるせぇええ!無理でも不可能でも 作りやがれってんだぁあ!!」
バーネットがバッツスクロイツを締め上げている バッツスクロイツがもがいてワザとらしく言う
「きゃぁー やめてー 誰か ヘルプミーー!って お?あれ?お前らー?」
バッツスクロイツがザッツロードたちに気付いて視線を下の階へ下ろす バーネットがそれに気付いてバッツスクロイツの視線の先を追いながら疑問の声を上げる
「あん?」
ザッツロードたちが上の階に居るバーネットたちを見上げて ザッツロードが言う
「バ、バーネット第二皇帝陛下!?何故アバロンに!?ガルバディアで アバロン部隊の指揮を執っていらしたのでは!?」
バーネットがバッツスクロイツを手放して答える
「ああ、オライオンの奴が来やがったから 代わってやったんだぁ でもって 親父の説得は任せろとか抜かしやがたしなぁ?しょーがねーから 全部任せて俺はこっちに戻って来てやったんだ!」
バッツスクロイツが笑いを抑えて言う
「ぷぷーっ とかなんとか言っちゃってー?本当はバーネっち アホヘクターにボコボコにされたせいで 体力尽きちゃっててさ?フラフラだったのに~?」
バッツスクロイツの言葉にバーネットが焦り赤面して叫ぶ
「ぬなぁ!?て、てめぇえええ!!」
バーネットが鞭を振り上げて叫ぶ
「余計ぇえな事抜かしてねぇえで!さっさとプログラムを作りやがれぇええ!!」
バッツスクロイツが焦って逃げながら叫ぶ
「だからっ そんな無茶なプログラムは 作れ無いってー」
バーネットが追いかけながら叫ぶ
「無茶でも何でも作れっつってんだ!!信じれば何でも出来るんだろうがぁああ!!」
バッツスクロイツが逃げながら言い返す
「それは 先にプログラムがあっての話でー!」
バーネットが追いかけながら言う
「ならプログラムも 出来ると信じて作りやがれぇええ!!」
バッツスクロイツがバーネットに締め上げられながら言う
「んなムチャクチャなー!」
ザッツロードたちが呆気に取られソニヤが言う
「ヴィクトール元皇帝陛下だったら…」
ラナも首を傾げて言う
「もしかしてバーネット第二皇帝陛下に頼ったりも… するのかしら?」
セーリアが微笑んで言う
「お2人は最高の相棒ですものね?」
ザッツロードが苦笑しながら言う
「そ、そうだね 僕の相棒には… 遠慮しようかと… 思うけど」
バッツスクロイツの研究室 バッツスクロイツが機械を操作しながら言う
「バーネっちってばさ?ザッツたちが旧世界からの使者を探してるって聞いて 俺にその使者を見つけるプログラムを作れーとか言うんだぜー?本当はー?そんなの無理だってー分かってるくせにー」
バーネットがバッツスクロイツに背を向ける位置にあるソファに身を沈め凭れながら言う
「直接見付けるのは不可能でも 旧世界から来るってぇ~んだぁ… ちっとは 新世界に居る俺らとは違う 何かが あるかもしれねぇだろがぁ?」
バッツスクロイツがバーネットへ振り返って言う
「だから!その『何か』を見つけて来て貰えないと 無理だって!」
バーネットが振り返って叫ぶ
「るせぇえ!知るかぁあ!!てめぇえで探して来やがれぇえ!!」
ザッツロードたちが呆気に取られる バッツスクロイツが機械へ向き直り バーネットが再びソファに身を静めて言う
「…ってぇ訳で、今回はてめぇらの支援になるプログラムや何かは用意してやれねぇ… 悪ぃな?この鈍くせぇバッツスクロイツが役に立たなくてよぉ?」
バッツスクロイツが勢い良く振り返って叫ぶ
「俺ー!?俺っちのせいー!?」
バーネットが溜め息を吐く バッツスクロイツが再び機械へ向いて肩を落とす ザッツロードが言う
「あ、いえ… 有難う御座います バーネット第二皇帝陛下 僕たちの為に」
バーネットがザッツロードへ向いて言う
「別にてめぇえらの為じゃねぇよ 礼はいらねぇ …ああ、それと 俺はもうアバロン帝国の第二皇帝じゃねぇから…」
ザッツロードが言葉の途中で微笑んで言う
「分かりました バーネット!」
バーネットが驚いて叫ぶ
「おいっ てめぇ!?やけに割り切りが 早ぇえだろがぁああ!?」
ザッツロードの仲間たちが苦笑する
ザッツロードが間を置いて言う
「あの… バーネット…元第二皇帝陛下?」
バーネットが視線を合わせないまま言う
「バーネットで良い …で?」
ザッツロードが苦笑して言う
「旧世界からの使者の情報が途切れてしまって… どこかの国へ訪れた際は連絡が入るよう ヴィクトール14世皇帝陛下や私の父が 手はずを整えてくれているのですが」
バーネットが軽く笑って言う
「それまで のんびり昼寝してる訳には行かねぇよなぁ?」
ザッツロードが苦笑して言う
「はい、ヴィクトール14世皇帝陛下にも 独自に探すよう仰せつかいました ただ、正直何処を探したら良いのか見当が付かなくて」
バーネットが視線を合わせず答える
「だな?こっちも… この鈍くせぇバッツスクロツが…」
言葉の途中でバッツスクロイツが振り返って言う
「またー!?また俺っちのせいー!?」
バーネットが軽く笑ってソファへ身を静める バッツスクロイツが機械に向き直り 言い掛けると気付いて言う
「まったく 信じられねえー …って あらー?バーネっち?その鈍くせぇ俺が 見つけたけどー?」
バッツスクロイツの言葉にバーネットが立ち上がり バッツスクロイツの横へ行ってモニターを見て問う
「どぉだ?」
ザッツロードと仲間たちが顔を見合わせ ザッツロードがバーネットの後ろへ行く バッツスクロイツが機械を操作しながら言う
「うん… やっぱこれっぽい ほら?最初にローレシアに向かって 次にシュレイザー国へ行って スプローニ国へ向かってる」
バッツスクロイツの言葉にザッツロードが驚き バッツスクロイツの下へ行き問う
「ローレシアからシュレイザーに行ったとは まさか!?」
バッツスクロイツが機械の操作をする ザッツロードがバーネットへ視線を向ける バーネットが答える
「何の手がかりも無しじゃぁ、直接その旧世界からの使者とやらを 見つける事は出来ねぇ ってぇ事は分かってたからな?仕方ねぇから今あるプログラムを使って 過去の魔物の様子を確かめさせてたんだ」
バッツスクロイツが顔を向けないまま答える
「聞いた?今の?酷くねー?直接見つけられないのは 分かってたって… そのくせ気に入らない事があると それを理由に俺を虐めるんだぜー?この人ー?」
バッツスクロイツの言葉にザッツロードが苦笑してからバーネットへ問う
「過去の魔物の様子とは?」
バーネットが続ける
「旧世界から送られて来た奴ってぇのは 魔力使いなんだろ?つまり戦えねぇ人間じゃぁねぇんなら 移動する間に魔物をぶっ倒す事になる と、そんな今は、どこの国にも悪魔力の影響が薄くなる半年後まで なるべく移動を控えるように言ってあるんだ そうとなりゃぁ?」
バーネットの説明を聞き ザッツロードが驚いて言う
「し、しかし 世界中の人間の移動となると!?」
ザッツロードの言葉にバッツスクロイツが顔を向けないまま言う
「だろー?普通そう思うってー しかもー?いつの時代も外出禁止を守らない人って 居るからサー?各国の部隊移動履歴や個人に雇われた傭兵らの移動データで 倒された魔物のデータを選別したって その旧世界からの使者さんと出会える可能性 チョー低いってのー?」
続けてバーネットが言う
「だとしても、ローレシアとシュレイザーで確認された日付けだけは分かってんだ、その2つを加えりゃかなり狭められる」
ザッツロードがバッツスクロイツへ視線を向ける バッツスクロイツが苦笑して言う
「それで、結果が出て選別されたのが ざっと18人 昨日の話だぜ?」
ザッツロードと仲間たちが驚く ソニヤが言う
「18人!?それなら」
ラナが溜め息を吐いて言う
「でも、その中から1人を探している間に 残りの17人はまた何処かへ向かってしまって 時間が経過すれば するほど候補に上がる人が増えるんじゃない?」
バッツスクロイツが頷いて言う
「ラナちゃんの言う通りー …でも、誰かさんは諦め悪くって?ガルバディアでヘクターにボコられて ボロボロの癖に その1日の間に17人の確認に成功ー」
ザッツロードたちが驚き ザッツロードが言う
「す、凄い… 世界中に居る17人を1日で確認するなんて」
ザッツロードがバーネットへ顔を向ける バーネットがモニターへ視線を向けたまま答える
「ヴィクトールから宝玉を預かってたお陰だ、俺はあれがねぇと移動魔法が使えねぇからよぉ」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「そのせいでまたアザが増えたんじゃねーの?バーネっちの移動魔法は とんでもない勢いでぶっ飛ぶからー」
バーネットがバッツスクロイツへ向いて怒鳴る
「うるせぇ!宝玉の力が強過んだよぉ!!」
ザッツロードたちが苦笑する ソニヤが言う
「ヴィクトール元皇帝陛下が言ってた 乱暴な移動魔法って」
ラナが呆れながら言う
「バーネット元第二皇帝陛下の使う 移動魔法の事だったみたいね」
バーネットが言う
「だが、何処を探しても最後の1人の確認が出来なかった」
ザッツロードたちがバーネットへ視線を向ける バッツスクロイツが言う
「その1人をー 俺っちが追跡ー!」
ザッツロードたちが驚く モニターにローレシア領域の地図が映し出される 皆が地図に注目する 地図に印が出る ソニヤが叫ぶ
「ここに居るって事!?」
ザッツロードたちが驚く バーネットが言う
「そう焦るな、おいっ こいつはいつの情報だ?」
バッツが答える
「うん、これは3~4日前」
セーリアが言う
「3~4日前って事は 私たちが丁度ローレシア城へ向かった頃ね?」
ソニヤが溜め息を吐いて言う
「なによ もぉ~ 私たちがシュレイザーへ向かった時には とっくにローレシア領域に戻ってたんじゃない!」
ザッツロードが言う
「しかし、ローレシア城には居なかった 旧世界からの使者は ローレシアの城ではなく 他の町や村へ向かったのかもしれない」
バッツスクロイツが首を傾げて言う
「んで、旧世界の使者さんは 3~4日前にはローレシアへ戻ってたんだから そろそろ町や村を尋ね終えて もーいっかいローレシア城へ立ち寄ったりするんじゃ無いか?そうしたらザッツの父ちゃんから連絡が来るんだろ?」
バッツスクロイツが言い終えると同時にザッツロードの通信機が着信する 皆が驚く ザッツロードが慌てて通信機を取り出し通信する
「はい こちらザッツロードと」
言い掛けた所で相手が喋る
『私よ!ザッツロード王子!…じゃなかった ザッツロード王!』
ザッツロードがハッとして言う
「リーザロッテ王女!兄は!?キルビーグ2世は発見されましたか!?」
皆がモニターに注目する リーザロッテが微笑んで言う
『ええ!無事救出したわ!』
皆が安堵する リーザロッテが言う
『ただ、まだ戦いは続いているの 通信は控えるように言われているから 切るわ!』
ザッツロードが慌てて言う
「リーザロッテ王女!あのっ 連絡を有難う御座いました!」
リーザロッテが一瞬驚き微笑んでから言う
『そのお礼ならヴィクトール前皇帝陛下に言って頂戴!貴方が『お兄様の事で気を散らしているかもしれないから』って 連絡をする様に言って下さったのよ!』
通信機の後ろでヴィクトールの声が聞こえる
『リーザロッテ王女、私は『彼らを後押しするために伝えろ』と』
ザッツロードたちが苦笑する リーザロッテが一度後ろを振り返ってから 再び通信モニターへ向き直って言う
『とにかく、そう言う事だから 貴方たちも頑張りなさい!』
リーザロッテの言葉にザッツロードが返答する
「はい!そちらも気を付けて!」
通信が切られる ザッツロードが微笑する バーネットが笑んで言う
「こっちも負けてらんねぇなぁ?」
ザッツロードが通信機をしまいバーネットへ向き直って言う
「はい、バーネット元第二皇帝陛下とバッツのお陰で 旧世界からの使者の居場所が ローレシア領域まで狭められました、僕らも今すぐ向かってみます!」
ザッツロードの仲間たちが顔を見合わせ頷きザッツロードへ向く バーネットがバッツスクロイツへ向いて言う
「おい、悪魔力の霧の確認も 忘れるんじゃねぇぞ?」
バッツスクロイツがため息混じりに返答する
「へいへ~い また固まったら連絡するー バーネっちもあんまりぶっ飛び過ぎ無い様にー」
バーネットが出口へ向かう ザッツロードがバーネットへ問う
「バーネット元第二皇帝陛下も どちらかへ?」
バーネットが振り返って言う
「バーネットで良いっつってんだろ!どこに行くかって?ローレシア領域へ行くんだろーがぁ?」
ザッツロードが思わず疑問の言葉を声に出す
「え…?」
仲間たちも驚いてソニヤが言う
「もしかして 私たちと一緒に?」
バーネットが振り向いて言う
「あん?俺と一緒じゃ行けねぇってぇえのか?あぁあ!?」
バーネットがザッツロードの顔を覗き込む ザッツロードが慌てて言う
「い、いいいいえっ!ぼ、僕は何もっ!!」
セーリアが苦笑しながら言う
「でも… お怪我をなされているのでは?」
バーネットが軽く笑って言う
「ソルベキアではロボット兵やらと戦ってるんだぜ?ガルバディアでもな?こんな時に ゆっくり休んでなんか居られるかってんだっ」
バーネットが部屋から出て行きながら言う
「おら!早くしろ!今度旧世界からの使者に逃げられたら 追えねぇぞ!?」
ザッツロードたちがハッとして急いで部屋を出て行く ザッツロードが部屋を出る前にバッツスクロイツへ言う
「バッツも 本当に有難う!」
バッツスクロイツが笑顔で答える
「はいはーい!旧世界からのレディたちに宜しくなー?」
ザッツロードが微笑み 頷いて仲間たちを追う
アバロン城の外へ出たザッツロードたち セーリアが移動魔法の詠唱を行おうとする ザッツロードがバーネットへ問う
「バーネット…元」
ザッツロードが言い掛ける バーネットが振り向く ザッツロードが焦るバーネットが言う
「その後に何も付けんじゃねぇって言ってんだろ!」
バーネットに指差され ザッツロードが焦りつつ返事をする
「は、はい!」
一度深呼吸して再び言い直す
「バーネットも 移動魔法が使えるのですね?」
ザッツロードの葛藤に仲間たちが軽く微笑む 問われたバーネットが軽く笑って言う
「ああ、昔ソイッドの魔術師に教わったんだ、俺みてぇな魔力の欠片もねぇ奴でも 宝玉の精霊様の力を借りりゃ出来るってよ?けど、最近じゃ魔法アイテムなんてのもあるから 器量の良い奴なら その魔法アイテムの魔力だけでも 移動魔法が使えるらしい」
ソニヤが思い出して言う
「その『器量の良い奴』って もしかして ベーネット陛下の事だったりして!」
ソニヤの言葉にバーネットが軽く笑って言う
「まぁそう言う事だ、あいつに移動魔法を教えたのは俺だしな!」
ラナが問う
「その教えたバーネット…っは 魔法アイテムでは使えないの?」
バーネットが苦笑しながら言う
「ああ なんでかなぁ…?なんっつーかよぉ… 最初に宝玉の精霊様に何だ~ とか教わっちまったせいか 魔法アイテムだと その精霊様と話せねぇんだよなぁ?」
ラナが表情を明るめて言う
「バーネット!貴方 魔術師の素質があるんじゃないの!?」
ソニヤが呆れて言う
「移動魔法だけしか使えない魔術師じゃ 意味無いんじゃな~い?」
ソニヤの言葉にラナが怒る バーネットが軽く笑って言う
「ハッ!それに、移動の度に宝玉を使っちまう訳にはいかねぇからな?俺がこいつで移動魔法使うのは 悪魔力に関する事でどぉしてもって時ぐれぇだ …て事で 今回はてめぇらに同行すんだよ?」
ザッツロードが問う
「本当はローレシア城に… 父上に御用があるのですね?」
バーネットが口角を上げて言う
「まぁ、そう言うこった」
セーリアの移動魔法詠唱が終り ザッツロードたちがローレシア領域へ飛ぶ
【 ローレシア国 】
ローレシアの移動魔方陣へ無事到着したザッツロードたち ラナが言う
「セーリア、今日はザッツロード国王陛下とバーネット元第二皇帝陛下が一緒だったのに 移動魔法は大成功だったわね?」
セーリアがラナに焦って怒り言う
「あ、あれはっ ソニヤが大きな声を出したからっ!」
ソニヤが照れたように笑う ザッツロードが周囲を見渡しながら言う
「旧世界からの使者は ローレシア領域に戻ったのなら この移動魔法陣に戻ったのだろうから ローレシア城以外に一番近いのはキャリトールの町かテキスツの町になるかな?」
ソニヤがザッツロードと同様に周囲を見渡してから言う
「ねぇザッツ、どっちでも良いから 行くなら早くしようよ? またあの変な魔物が出たら嫌だし」
ソニヤの言葉にザッツロードが苦笑する バーネットが問う
「その『変な魔物』ってぇのは 例の詠唱魔法を使う魔物って奴の事かぁ?」
ザッツロードがバーネットへ向いて頷いて言う
「はい、そこの森の中で遭遇したんです」
ザッツロードが森を指差す バーネットがそちらへ向いて少し考えてから向かう ソニヤが驚いて言う
「え!?ちょっ!?ちょっと バーネット!まさか行くって言うの!?」
バーネットが振り返って言う
「その魔物の情報は お前らからのとスプローニ国からの その2つしかねぇんだ、今は色んな所の戦いだの何だので 確認作業にも行かせられねぇし …腐っちまう前に確認しておいた方が良いだろ?」
ソニヤが叫ぶ
「いやぁー!!私、絶対そんなの嫌っ!!」
ザッツロードが苦笑して言う
「ソニヤたちはここで待ってなよ?バーネットと僕で行ってくるから」
ソニヤがラナとセーリアへ顔を向ける 2人が顔を見合わせて表情を歪ませる ザッツロードが苦笑して言う
「すぐに戻るよ、待っていてくれ」
ザッツロードが言い終えると共にバーネットの後を追う
バーネットが魔物の遺体の横にしゃがんで見ている ザッツロードが向かうと バーネットが振り向いて問う
「こいつらか?」
ザッツロードが魔物へ向いて頷いて言う
「はい」
ザッツロードが返事をするとバーネットがナイフを取り出し魔物を切る ザッツロードが驚いて問う
「え!?か、解剖するんですか!?」
ザッツロードの言葉にバーネットが顔を向けないまま答える
「解剖とまではいかねぇが 魔物ってぇのは 野生の動物なんかが悪魔力に侵された時 自分が想像する一番嫌いな相手の姿に変わっちまうらしい っと言ってもあくまで想像だからなぁ 外見だけがその姿になるってぇだけで 中身は変わらねぇ だから猫みてぇな魔物の正体が その猫に襲われる側の ネズミだったりしてな?」
ザッツロードが感心しながら言う
「そうだったんですか… 僕はその魔物にどんな攻撃が有効か?等の事ばかり学ぼうとしていて 魔物の正体がその様な事になっていたとは 考えた事もありませんでした…」
バーネットが軽く笑って言う
「言っても、俺は動物の専門家じゃねぇから 中身見てこれは犬だ狼だなんて細けぇ差は分からねぇ だから大した事は確認できねぇと思うんだが…」
バーネットが話の途中で言動を止める ザッツロードが気付いて問う
「バーネット?どうかしましたか?」
バーネットが困惑して立ち上がる ザッツロードが近くへ来て問う
「バーネット?一体…?」
バーネットが通信機を取り出しバッツスクロイツを呼び出す 呼び出されたバッツスクロイツが不思議そうに問う
『やっほー?こちらバッツスクロイツー バーネっち?どうしたー?忘れ物ー?』
バーネットが真剣な表情で問う
「バッツスクロイツ、今すぐ確認しろ 現在までのローレシア領域への 悪魔力濃度は?」
バッツスクロイツがバーネットの真剣さに気付いて 自身も真剣な表情になり機械を操作して言う
『ローレシア領域は結界の島の悪魔力を中和した日から今日までの間 平均プラス50%前後 警戒レベルは4のまま』
バーネットが続けて問う
「なら、全世界で人が魔物化する可能性のある 警戒レベルに達した シュレイザーとスプローニその2国から 魔法使いの失踪は報告されているか?」
ザッツロードが驚き バッツスクロイツが再び機械を操作して答える
『スプローニにおいての失踪者は無し シュレイザー国の失踪者に魔法使いは居ない』
バーネットが続けて問う
「そうか… ローレシア国内の魔法使いについての詳細は分かるか?」
バッツスクロイツが首を傾げて言う
『ローレシアは最近まで情報を渡さなかったお陰で まだそこまで詳しいデータは解析されて無いんだ 直接キルビーグ殿に聞いた方が早くて確実だと思う 繋ごうか?』
バーネットが一瞬間を置いてから言う
「いや、俺が直接する ヴィクトールからの連絡は?」
バッツスクロイツが即答する
『無し!』
バーネットが魔物の遺体を切りながら言う
「分かった、入り次第 俺へ繋げ」
バッツスクロイツが軽く微笑んで言う
『りょーかい!』
バッツスクロイツとの通信を切ったバーネットが 続けてキルビーグへ繋ぐ ザッツロードが近づいて問う
「バーネット陛下、一体何が?」
ザッツロードが言うと共に通信が繋がり バーネットがキルビーグへ言う
「キルビーグ殿、突然の連絡失礼する 単刀直入だが ローレシア領域にある魔法使いの町において 魔法使いの失踪者の確認は得られるだろうか?」
キルビーグが一瞬驚き 気を取り直して言う
『…あ、ああ 可能だ ただあの町には一言で魔法使いと言っても その能力差によって分けられている それら全てを合わせてとなると 少々時間が掛かるが』
キルビーグの言葉にバーネットが魔物から指輪を取り出して言う
「だったら その能力差ってのは こいつで分かるか?」
バーネットが指輪を通信機に近づけて見せる ザッツロードがそれを見て驚く 通信機のモニターでキルビーグが頷いて言う
『それは最上級魔法使いの指輪だ 確認させよう すぐに分かるはずだ』
キルビーグが言って通信を切ろうとする バーネットが何かに気付いて言う
「おっと… キルビーグ殿、やっぱり良い」
キルビーグとザッツロードが疑問する バーネットがザッツロードへ静かに問う
「ザッツロード、旧世界からの使者って奴らは 悪魔力を聖魔力へ変換する宝玉を 持ってやがるって言ってたな?」
ザッツロードが答える
「は、はい そうですが?それが 何か!?」
バーネットが魔物から 宝玉が入りそうな袋を取り出し それを見ながら立ち上がる ザッツロードがバーネットの手にしている物を見ながら問う
「それは?」
通信機のモニター越しに キルビーグがバーネットの手に持つ物を見て言う
『バーネット殿!まさか!それはっ』
【 ローレシア城 】
ローレシア城地下機械室 ザッツロードたちが居て そこへキルビーグが現れ言う
「何と言う事か… バーネット殿、やはり あの魔物の正体は… 彼女らであった」
キルビーグの言葉にバーネットが視線を逸らして舌打ちする バーネットを見ていたザッツロードがキルビーグへ問う
「父上、一体どう言う…!?」
ザッツロードの問いにキルビーグが向き直って言う
「ザッツ、我々が退治した あの魔物の正体こそ 旧世界からの使者だ」
ザッツロードたちが驚く ソニヤが思わず言う
「そ、そんなっ」
ラナが視線を落として言う
「私たちが…?」
セーリアが言葉を失って後退る ザッツロードが硬直したまま言う
「僕らが… 旧世界からの使者を…!」
間を置いたバーネットが顔を上げて言う
「なるほど、いくら各国からの連絡を待っても現れねぇ訳だ… あの姿じゃぁ国を尋ねる所か 人に会った時点であぁなるしかねぇからな」
ザッツロードが顔を上げバーネットへ言う
「しかし!我々と接触していたにも関わらず 救うどころか 僕らの手でっ」
バーネットがザッツロードへ向き直って言う
「今の所、完全に魔物化した生物を 元の姿に戻す方法は見付かってねぇんだ ああなっちまった以上 奴らが旧世界からの使者だって事が 分からなかったとは言え お前らがした事は 間違って無かった」
ザッツロードが何かを言おうとするが言葉が出ない バーネットがキルビーグへ向いて言う
「それで、キルビーグ殿 奴らが持っていたあの宝玉は?」
バーネットの言葉にキルビーグが頷いて言う
「ああ、もう一体の魔物の遺体からも5つ バーネット殿が先に手に入れられた5つと合わせて10になる 旧世界からの連絡にあった通りだ」
ザッツロードがキルビーグへ向いて問う
「父上、あれからまた旧世界からの連絡はあったのですか?」
キルビーグが頷いて機械へ向かいながら言う
「ああ、悪魔力を聖魔力へ変換する あの宝玉を発動させる方法が 詳しく送られて来た 旧世界の使者である彼女らへも 伝えてあるが念のためと… まさか、この連絡が役立ってしまうとはな」
キルビーグが言い終えると共に モニターにメッセージを映し出す ザッツロードが読む
「こちらから送った旧世界の宝玉を起動させるには 強い魔力者の協力が必要になる 詳しくは彼女らに伝えてあるが いまだ接触されていないとの事 先にその方法を伝えておく 1つの宝玉の起動に必要な魔力の量は 最上級魔力者5名以上の調整された魔力 58000を有する」
ザッツロードの言葉に ラナが驚いて叫ぶ
「58000ですって!?」
ソニヤが続けて言う
「それを10個なんて!ローレシアの3つの町や村を合わせても 最上級魔力者は13人しか居ないのよ?!」
セーリアが皆を落ち着かせようと言う
「でも、不可能では無いわ、時間は掛かってしまうかもしれないけれど それでもその13人が何日も掛ければ」
セーリアの言葉にキルビーグが言う
「残念だが その時間の猶予がないのだ」
皆の視線がキルビーグへ向く キルビーグが機械を操作してモニターのメッセージを変える ザッツロードが読む
「どうか、可能な限り急いで欲しい こちらの現状は連絡してある通り 悪魔力中和装置を使用するに当たり その聖魔力量はもはや限界に達している 次の連絡は送る事が出来るか定かでは無い もし次の期日までに こちらからの連絡が無かった場合は 我々が最終手段を決行したと判断して欲しい 世代を超えての支援 旧世界の民は皆 親愛なるローレシア帝国皇帝へ感謝している」
ザッツロードがキルビーグへ向いて問う
「父上!最終手段とは 以前の連絡にあった」
キルビーグが頷いて言う
「ああ、そうだ 旧世界に残る聖魔力を使用し 悪魔力中和装置を起動させる そうなれば現在 旧世界の民を守っている 聖魔力の結界が失われ 民たちは先に魔物化している 旧世界の悪鬼にその命を奪われてしまうだろう」
バーネットが言う
「その次の連絡ってぇのは 具体的にいつなんだ?」
バーネットの言葉にキルビーグが答える
「…1週間後だ」
皆が驚く バーネットが言う
「時間がねぇ、おいっ!今すぐ旧世界の宝玉を 魔力者の町や村へ持って行きやがれ!」
バーネットが言うと共に 旧世界の宝玉が入った袋をソニヤへ押し付ける ソニヤが受け取りながら言う
「で、でもっ1週間なんて短い期間じゃ全部出来るかどうか!」
バーネットが言う
「『出来るかどうか』じゃねぇ!やるんだ!!魔力者の奴らに全て話せ!きっとやり遂げてくれる!」
ソニヤが驚いて言葉を失う バーネットがキルビーグへ向き直って言う
「おいっもう1つの方は何処だ!?」
キルビーグが驚き言う
「あ、ああ、解剖と確認を任せておいた 大臣のフォリオッドが受け取っている筈だ」
バーネットがザッツロードへ顔を向ける ザッツロードがハッとして言う
「はいっ!すぐにフォリオッドから受け取り 魔力者の下へ!」
ザッツロードたちが走って機械室を出て行く 走りながらソニヤがザッツロードへ言う
「ザッツ!私先にキャリトールへ行って 魔法使いの皆に話して 力を貸してもらうわ!」
ザッツロードが頷いて言う
「うん、頼む!僕らもフォリオッドから宝玉を受け取って ソイッド村やテキスツの町へ向かう!」
ラナとセーリアが頷く ソニヤが頷き 城の出口でソニヤが外へ向かいザッツロードたちが逆方向へ向かう ラナがザッツロードへ問う
「ザッツ!フォリオッド殿は何処に!?」
ザッツロードが振り向いて言う
「解剖と確認を行っていると言っていたから 生物研究室に居るはずだ」
ザッツロードたちが研究室への通路に入る 研究室の外に人が倒れている ザッツロードたちが驚き 皆で顔を見合わせた後 ラナとセーリアが倒れている者に回復魔法を掛ける ザッツロードが部屋の中を確認する 部屋の中が荒らされていて もう1人倒れている ザッツロードが駆け付けて問う
「プリムス!しっかりしろ!何があった!?」
ザッツロードがプリムスに手を触れる プリムスが苦しそうに目を開いて言う
「ザッツ ロード王子… 申し訳 無い… フォ、フォリオッドです 奴は… ソルベキアの…」
ザッツロードが驚き声を上げる
「フォリオッドが!?」
プリムスがザッツロードの腕を掴んで言う
「奴が!旧世界の宝玉をっ!」
駆け付けたラナとセーリアが驚き顔を見合わせる ザッツロードが驚きの声を上げる
「何だって!?」
フォリオッドが苦しそうに言う
「ソルベキアは… ロボット兵を使い この世界を手に入れる気です ザッツロード王子… ザッツロード王… どうか 奴らから… この世界を お救い下さい…」
プリムスが息絶える ザッツロードがハッとして一度俯いてから立ち上がり言う
「フォリオッドを追わなければ!」
ラナが言う
「追うって!?」
ザッツロードが言う
「フォリオッドはソルベキアの密偵だったんだ それなら宝玉を持って向かう先は」
セーリアが続ける
「ソルベキアへ!?しかし、今ソルベキアではリーザたちとの交戦が行われているのでしょ!?」
ザッツロードが言う
「うん、それでも他に行く先は無い筈だ ソルベキアは今や他国との交流の一切を失っている リーザロッテ王女やヴィクトール様と連絡を取って」
ラナが言う
「でも連絡は」
ザッツロードが考えてから言う
「まずはバーネットと父上へ伝えよう!フォリオッドがソルベキアの密偵だったなら 旧世界の事やローレシアの情報がソルベキアへ伝わってしまっている筈だ」
機械室へ戻ったザッツロードたち バーネットとキルビーグへ伝え終える バーネットが他方を向いて言う
「くそっ!この時間のねぇ時に!!」
キルビーグが頭を抱えて言う
「まさかフォリオッドが…」
ザッツロードが言う
「僕らがソルベキアへ向かって フォリオッドを探し出します!」
バーネットが言う
「待て、ソルベキアにはヴィクトールとリーザロッテらが居るんだ そっちはあいつらに任せて お前らは先に行ったソニヤと合流するべきだ」
ザッツロードがバーネットへ言う
「しかしっ!」
バーネットが通信機を取り出し繋ぐ ラナが問う
「バーネット、通信は!」
通信が繋がる バーネットが言う
「ヴィクトール、そっちはどうだ?こっちはちょいと厄介な事になった」
通信の中のヴィクトールが言う
『バーネット、すまない こちらも問題だ、リーザロッテ王女が ソルベキアに捕まってしまった!』
ザッツロードたちが驚く バーネットが間を置いて言う
「分かった、そっちはてめぇらで何とかしやがれ 援護には一切行かねぇ」
ヴィクトールが頷いて言う
『分かった 君たちをあてには一切しない』
ザッツロードたちが驚き ザッツロードがバーネットへ言う
「そんな!こんな時こそ力を合わせなければ!!」
バーネットが通信を切って言う
「分かってる、焦るな おい、そっちの魔力使いの2人」
ラナとセーリアがバーネットへ向く バーネットが2人へ向いて言う
「お前らは先に行ったソニヤから 旧世界の宝玉を受け取り 他の魔力者の町や村でその宝玉の起動をやっといてくれ」
ラナとセーリアが顔を見合わせてからバーネットへ頷いて言う
「分かったわ!」「そうします!」
バーネットが頷きザッツロードへ向いて言う
「てめぇは俺と一緒に ソルベキアへ援護に行く!」
ザッツロードたちが驚く ラナが言う
「バーネット、さっきヴィクトール元陛下に 援護には行かないと」
バーネットが軽く笑って言う
「ありゃー情報漏洩防止策だ ヴィクトールには伝わってる」
ザッツロードたちが顔を見合わせ表情を明るめる バーネットがキルビーグへ向いて言う
「おい、キルビーグ てめぇも旧世界の民へ 通信を送り続けとけ!ギリギリまで待ってろってな!」
キルビーグが驚き苦笑して言う
「しかし、次の通信受信の期日以外に 彼らがこちらからの通信を 確認するかどうか…」
バーネットが続けて言う
「んなのは関係ねぇ!てめぇは旧世界を支えてきた ローレシア帝国の皇帝だろ!?あいつらだって覚悟決めた時には 親愛なるローレシア帝国の お前からの連絡を確認する筈だ!」
バーネットの言葉に驚いたキルビーグが微笑んで言う
「分かった、連絡を送ろう」
ザッツロードたちが呆気に取られる バーネットが振り返って叫ぶ
「何モタモタしてやがる!?てめぇえらぁあ!一発喰らわねぇと 動けねぇのかぁああ!!」
バーネットが言い終えると共に床へ鞭を振るう ザッツロードたちがすくみ上がり ラナとセーリアが慌てて走り言う
「ザ、ザッツ!そっちは任せたわ!」「こちらもなるべく 急いでもらうから!」
ザッツロードが呆気に取られたまま2人を見送る バーネットがザッツロードへ向いて言う
「てめぇえもボケッと見てんじゃねぇえ!さっさと行くぞ!!」
ザッツロードが怯えながら言う
「は、はいー!」
バーネットに続いて ザッツロードが出口へ向かって走り始める キルビーグが呆気に取られていた状態から微笑して言う
「もっと早く 彼らを信じるべきであったな…」
ローレシア城の外へ出たザッツロードとバーネット 目の前でラナとセーリアの移動魔法が発動して2人が飛んで行く バーネットがザッツロードへ向いて言う
「俺らはソルベキアだ!だが移動魔法陣は使えねぇ 直接 ヴィクトールの所へ飛ばせ!」
言われたザッツロードが間を置いて言う
「…え?」
バーネットが一瞬間を置いて怒って言う
「『え?』じゃねぇだろ!?さっさと飛ばせっつってんだよ!!」
バーネットの怒りにザッツロードが怯えつつ言う
「あの…っ バーネット 僕は その… 対人移動魔法は 使えませんが?」
バーネットが一瞬呆気に取られた後 再び怒る
「んだとぉおお!?このボンクラ勇者ぁああ!!」
バーネットが鞭を床に叩きつける ザッツロードが怯えながら謝る
「す、すみませんっ!!」
バーネットが溜め息を吐いてから 宝玉を取り出して言う
「仕方がねぇ なるべく使いたがなかったが 緊急事態だ」
バーネットが宝玉を片手に持って意識を集中させる ザッツロードが気付いて言う
「えぇええ!?バ、バーネットの移動魔法で!?」
バーネットが振り向いて叫ぶ
「うるせぇええ!!地の果てまで飛ばされたくなかったら 俺の気を散らすんじゃねぇええ!!」
ザッツロードが再び謝る
「す、すみませんっ どうか 落ち着いてお願いしますっ!?」
バーネットが再び宝玉へ意識を集中して怒鳴る
「おらぁああ!宝玉ぅうう!!ぶっ壊されたくなかったら 俺をヴィクトールのもとまで ぶっ飛ばしてみやがれぇええ!!」
ザッツロードが驚く
「えぇええ!?」
ザッツロードとバーネットの体が宝玉の光に包まれ飛ばされる
【 ソルベキア国 】
ザッツロードとバーネットが猛スピードでヴィクトールの後方に辿り着く バーネットが地面にスライドしながら着地 ザッツロードがその先の物置まで突っ込む ヴィクトールが振り返って言う
「来たか バーネット!」
ヴィクトールの率いている部隊の者たちが目を丸くしている バーネットが上体を上げながら返事をする
「おう、待たせたな あのボンクラ勇者が のろまでよ?」
ヴィクトールが一度ザッツロードへ顔を向ける ザッツロードが突っ込んだ物置からヴィクトールの率いていた部隊の者に助けられつつ バーネットとヴィクトールの方へと顔を向ける ヴィクトールがバーネットへ顔を向け直して言う
「うん、問題ない 所で、そちらで起きた厄介事とは?」
話を聞き終えたヴィクトールが視線を落として言う
「そうか… 我々が遭遇したあの魔物が 旧世界からの使者だったとは …その上 旧世界の宝玉の半分がソルベキアの手に」
バーネットが頷いて言う
「ああ、おまけにそっちじゃリーザロッテ王女が ソルベキアに捕まったって?あいつの仲間も一緒に捕まったのか?」
ヴィクトールが顔を横に振って言う
「いや、仲間たちは無事だ それとキルビーグ2世殿も」
ザッツロードがハッとして言う
「兄が!?ヴィクトール様 それはどう言う事で!?」
ヴィクトールがザッツロードへ向いて言う
「リーザロッテ王女は ソルベキア城からの脱出の際、貴公の兄君を庇い ソルベキアの兵に捕まってしまったのだ」
ザッツロードが驚く バーネットがヴィクトールへ向いて言う
「てめぇは一緒じゃなかったのか?」
ヴィクトールが一度視線を落としてから言う
「ああ、リーザロッテ王女らへは一度後退させ 怪我を負われていたキルビーグ2世殿を こちらの陣営へ運ばせていたんだ 途中でロボット兵との戦いに巻き込まれ キルビーグ2世殿が敵兵に捕まり リーザロッテ王女が自ら その身代わりとなったらしい」
ザッツロードがヴィクトールの下へ近づき問う
「ヴィクトール様、レイトたちは今どこに!?」
ヴィクトールが間を置いて言う
「リーザロッテ王女の仲間たちは アンネローゼ女王と共に リーザロッテ王女の救出に向かう為 既に配置に付いている」
ヴィクトールの言葉にザッツロードとバーネットが驚く ザッツロードが問う
「アンネローゼ女王陛下が!?」
ヴィクトールが頷いて言う
「アンネローゼ女王にはヴェルアロンスライツァーが付いている そこへ、そのヴェルアロンスライツァーの過去仲間でもあった レイトたちが共に向かうのだ 私は彼らを信じリーザロッテ王女の救出を任せる そして、その間に我らは ソルベキア城へ進行する」
ザッツロードが驚き視線を落として考える バーネットがヴィクトールへ言う
「よし、なら俺も同行する フォリオッドとやらもソルベキア城に居やがるだろぉからなぁ?」
ヴィクトールが頷いて言う
「ああ、宝玉は恐らくソルベキアの王ガライナへ渡されているだろう 彼を討ち旧世界の宝玉を取り戻すと共に 現在ガルバディア国へ送られているロボット兵を撤退させねば」
バーネットがザッツロードへ向いて言う
「おい、聞いてたか?てめぇも付いて来いよ?」
ザッツロードがバーネットを見上げ返事に戸惑う ヴィクトールがザッツロードへ向いて言う
「ザッツロード王、我々の策に不満があるのなら 独自に考え行動してくれて構わない」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが驚き顔を向ける バーネットが軽く笑って言う
「あぁ、そう言えばそうだったな?へっ!まぁ 嫌なら勝手にしろってこった …ああ、ヴィクトール こいつは返しとくぜ」
バーネットが言いながらヴィクトールへ宝玉を渡す ザッツロードがヴィクトールへ向き直って言う
「私も共に行きます、リーザロッテ王女の事は レイトやアンネローゼ女王陛下を …私も信じます!」
ザッツロードの言葉にバーネットとヴィクトールが一度顔を見合わせ微笑んで ヴィクトールが言う
「うん、共に信じ、共に戦おう!」
ヴィクトールの指揮のもと、ヴィクトール、バーネット、ザッツロードが先行して部隊を率いてソルベキア城へ特攻する 戦闘中バーネットが笑いながらヴィクトールへ叫ぶ
「旧世界の宝玉を取り返すだの ソルベキアを落とすだの あるくせに 正面から攻め込むだなんて 何考えてやがるんだてめぇえは!?」
ヴィクトールが笑みながら答える
「これがアバロン式だ!正々堂々と正面から 勝負する!!」
ザッツロードが驚く
「えぇええ!?ヴィクトール様が!?そんな作戦を!?」
ヴィクトールが敵兵を攻撃しながらザッツロードへ問う
「私がその様な策を立てるとは 心外か?ザッツロード王!」
ザッツロードがヴィクトールへ向いて言う
「はい!ヴィクトール様は 常に冷静に物事を分析し 最小限で最良の戦略をお考えになるものかと… どちらかというと この策はバーネットの方が似合っている気が!」
バーネットがザッツロードへ向いて怒る
「てめぇ!そりゃどーいう意味だっ!?大体これのどこが策なんだ!?ただ突っ込んでるだけだろがぁあ!?」
ヴィクトールが笑って言う
「今までは 一応アバロン帝国の皇帝だったからな?あまり自分らしくは行けなかったんだ ヴィクトール14世に譲ったお陰で やっと気が楽になったのだよ!」
ヴィクトールが笑顔で敵を討つ ザッツロードが呆気に取られて言う
「と、とても意外です… しかし 今のヴィクトール様の方が 何と言うか アバロンの方らしい気がします!」
ザッツロードが笑顔で言い切る ヴィクトールが笑って言う
「あっはは そうか、そう言って貰えるのは光栄だな!ついでに そのヴィクトール『様』と言うのも止めて貰えると嬉しいのだが?バーネットはバーネットと呼んでいるじゃないか?」
ザッツロードが少し考え 照れながら言う
「あー… バーネットは比較的呼びやすかったんです あははっ」
ヴィクトールがそれを聞いて同様に言う
「ああ、それはそうかもしれないな?あはは!」
バーネットが2人へ怒って言う
「おい!てめぇえらぁあ!一発ずつ殴らせやがれぇえ!!」
バーネットがザッツロードの代わりに敵兵を殴り付ける
城内を玉座の間へ向かい進行する 途中でリーザロッテ王女らと合流する ザッツロードが声を掛ける
「リーザロッテ王女!御無事でしたか!?」
リーザロッテがザッツロードへ振り向いて言う
「もちろんよ!私には優秀で勇敢な仲間たちと お母様が付いているのですから!」
リーザロッテが言い終えると共に アンネローゼとヴェルアロンスライツァーが現れる ザッツロードがヴェルアロンスライツァーを見て言う
「ヴェル!君が居てくれるなら安心だ!」
ヴェルアロンスライツァーがザッツロードへ顔を向けて言う
「ザッツ!ソルベキア国王には気を付けろ!奴の言葉を信じるな!」
ヴェルアロンスライツァーの言葉にザッツロードが驚きヴェルアロンスライツァーへ向き言う
「え!?それはどういう!?」
ヴィクトールが叫ぶ
「ザッツロード!前を!!」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが慌てて正面へ向き直る ソルベキア兵がザッツロードへ攻撃してくる ザッツロードが慌てて向き直るが間に合わない バーネットがその敵を討ち ザッツロードへ向いて叫ぶ
「ボケッとしてんじゃねぇええ!このボンクラ勇者ぁああ!!」
ザッツロードが慌てて謝る
「す、すみませんーっ!」
ザッツロードたちが玉座の間へ辿り着く 玉座にソルベキア国王ガライナが座っている その横にフォリオッドが控えている ヴィクトールが皆の前に進み出て ガライナへ剣を向けて言う
「ソルベキア国国王ガライナ殿 降伏されよ!貴公に逃れる道は無い!」
ガライナが微笑み言う
「アバロン帝国 前皇帝ヴィクトール13世殿 帝位を息子殿へ譲られ お早い引退をなさるのかと思いきや まさか… 自ら先陣を切ってこのソルベキアへ 討ち入って来られるとは いやはや恐れ入りました」
ヴィクトールが軽く笑い 向けていた剣を払ってから言う
「御冗談を とても我らに恐れをなしている様子には見えない ソルベキアの赤トカゲには 気を付けねばならないからな?」
ガライナが笑って言う
「はっはっは… その様な者は とうにこのソルベキアからは消え去っております 我が国はこの大陸一の科学技術を有する国 いつまでもその様な昔話に 付き合ってはおれません」
バーネットが言う
「残念だが この大陸一の科学技術を持つのはガルバディアだ てめぇらじゃねぇよ」
バーネットの言葉にガライナが口角を上げて言う
「いいや、そうなるのだ もうすぐな?ガルバディア国…とうに滅んだ たった3人の複製の国民しか持たぬ国が いまだ国と名乗っているだけでも片腹痛い」
ガライナの言葉にザッツロードが焦り言う
「もうすぐだって!?」
ヴィクトールがザッツロードへ視線を向けて言う
「ザッツロード、奴の言葉に惑わされてはいけない」
ザッツロードがヴィクトールへ顔を向ける ヴィクトールがガライナへ視線を戻して言う
「ガルバディアには我が国の部隊の他に 志を共にする3国からも部隊が出動し 貴公らのロボット兵部隊を殲滅せんとしている 貴公のソルベキア国がこの戦いで 世界一の冠を有する事は 決して無い!」
ガライナが表情を険しくする ヴィクトールが続けて言う
「そして、我らアバロンの友であるガルバディアの民を貶(けな)した貴様を …私は断じて許さん!」
ヴィクトールが言い終えると共に表情を険しく再び剣を向ける ガライナが立ち上がり言う
「ならばその怒りを見せてみよ ヴィクトール13世 貴殿のその力で このロボット兵が倒せるのならな?」
ガライナが言うと共に 最新のロボット兵が現れる ガライナが言う
「さあ!フェリペゴーランド6号機!憎きアバロン帝国 前皇帝ヴィクトール13世を打ち倒せ!!」
ガライナが言うと共に フェリペゴーランド6号機がヴィクトールへ武器を向ける ヴィクトールが剣を構えて言う
「バーネット、ザッツロード 貴公らはフォリオッドを!」
ザッツロードが焦って言う
「し、しかし相手はロボット兵です!僕らが力を合わせねば!」
バーネットがザッツロードへ言う
「行くぞ!ザッツロード!モタモタしてんじゃねぇえ!」
バーネットが言い放ちフォリオッドの下へ向かう ザッツロードが迷ってからバーネットへ続く バーネットとザッツロードが向かってくる事に気付いたガライナがフォリオッドへ言う
「フェリペゴーランド7号機を使用しろ」
ガライナの言葉にフォリオッドが返事をして 玉座の後方の壁を開いて逃げて行く バーネットがガライナに一度視線を向けてから横をすり抜けフォリオッドを追う ザッツロードが一度後ろを振り返りヴィクトールを見てから バーネットに続く
フォリオッドが通路を抜け 広い空間へ逃げ込む ザッツロードたちが追いかけて入る ザッツロードたちが来たのを確認してから フォリオッドが振り返って言う
「ザッツロード王子、…いや、ザッツロード王とお呼びした方が良いのですかな?」
フォリオッドの言葉にザッツロードが一歩前へ出て言う
「フォリオッド 僕は ずっとお前を信じていたのに」
フォリオッドが笑って言う
「ええ、存じておりますとも 私もずっと貴方様を敬愛しておりましたよ?ソルベキアの民である私を信用して下さる 愚かなローレシアの王子様を」
フォリオッドの言葉にザッツロードが奥歯を噛み締めて怒りを堪える バーネットが前に出てレイピアを向けて言う
「その愚かなローレシアの元王子様に息の根を止められたくなかったら 大人しく てめぇが盗んで行った 旧世界の宝玉を返すんだな」
ザッツロードがバーネットへ視線を向ける バーネットがザッツロードへ視線を向けて言う
「あの野郎の言葉に惑わされるな てめぇの仲間が言ってただろう?」
ザッツロードが驚いてフォリオッドへ向き直る バーネットが言う
「てめぇのその姿は紛れも無く ローレシアの民の姿だ それでもソルベキアの民ってぇ事は てめぇがソルベキアの赤トカゲだな?」
ザッツロードが驚く フォリオッドが笑って言う
「はっはっは!その通りだバーネット元アバロン帝国第二皇帝 貴様の様に言動に似付かわず 頭の切れる後住民族は まるで我らの同族の様だと思わんか?」
バーネットがレイピアを振り払い 吐き捨てる様に言う
「ハッ!見た目だけしか誤魔化せねぇ てめぇらトカゲと一緒にするんじゃねぇ!」
ザッツロードがフォリオッドへ向いて言う
「ヴェルはソルベキア国王の言葉に気を付けろと言っていた… では フォリオッドが!?」
フォリオッドがにやりと笑って言う
「そうだ、ザッツロード王 私がこのソルベキアの王ガライナ7世だ」
ザッツロードが驚く バーネットが再びレイピアを構えて言う
「てめぇが先住民族だろうが ソルベキアの王だろうが どうでも良い こっちは時間がねぇんだ さっさと旧世界の宝玉を返しやがれ!」
ザッツロードも剣を構えて言う
「フォリオッド、例え偽りであったとしても 僕は お前を傷付けたく無い 旧世界の宝玉を返すんだ!」
フォリオッドが微笑んで言う
「有難う御座います ザッツロード王 貴方のお気持ちに 心打たれてしまいました お礼に、貴方方へも このロボット兵を差し上げましょう」
フォリオッドが言うと共に壁のスイッチを操作する フェリペゴーランド7号機が起動する フォリオッドが叫ぶ
「さあ!フェリペゴーランド7号機!憎きローレシア国 新国王ザッツロード7世を 抹殺せよ!」
フェリペゴーランド7号機とザッツロード、バーネットの戦いが開始される
ザッツロードが魔法剣を使わずに戦っているとバーネットが言う
「おい!ザッツロード!宝玉の力を使いやがれ!」
バーネットの言葉にザッツロードが宝玉を取り出し 魔力を送ると宝玉の白い光りがザッツロードの持つ剣へ伝わる ザッツロードが片手に宝玉を持ちロボット兵と戦う バーネットが援護する 後に ヴィクトールが合流する ヴィクトールが叫ぶ
「バーネット!君はこの宝玉を使ってくれ!」
ヴィクトールがバーネットへ宝玉を投げ渡す バーネットが宝玉を握り締めて言う
「おい!宝玉!ぶっ壊されたくなかったら 俺の剣に力を貸しやがれ!!」
バーネットが叫ぶと 宝玉が光り バーネットのレイピアに白い光りが伝わる ヴィクトールがバーネット隣に立ち剣を構える バーネットが振り向いて言う
「てめぇはどぉするつもりだ?」
ヴィクトールがバーネットへ視線を向けて言う
「私の剣には 我らアバロンの相棒が力を貸してくれる!」
ヴィクトールが言うと共に大剣を掲げると大剣に雷が纏わる ヴィクトールの後ろにガルバディア国王のホログラムが現れて言う
『ガルバディアは お前達のお陰で救われた 私もお前たちに力を貸そう』
ザッツロードがガルバディア国王の言葉に表情を明るめる ヴィクトールとバーネットがザッツロードへ向いてヴィクトールが言う
「ザッツロード、次は我々の番だ!」
バーネットが続いて言う
「はっはー 負けてらんねぇぞ!?」
ザッツロードが頷いて言う
「はい!我々で奴を倒し 旧世界の宝玉を取り返しましょう!」
ザッツロードがフェリペゴーランド7号機へ突進する バーネットとヴィクトールが続く
フェリペゴーランド7号機が沈黙する ザッツロードたちが顔を見合わせ微笑んでから フォリオッドへ顔を向ける フォリオッドが悔しそうに後退る ザッツロードが一度俯いてから再び顔を上げ フォリオッドの下へ向かう ヴィクトールとバーネットが後に続く 背に壁を付けたフォリオッドへ ザッツロードが剣を向けて言う
「これで終りだフォリオッド… いや、ソルベキア国国王ガライナ7世、大人しく旧世界の宝玉を渡せ さもなくば!」
ザッツロードが剣を近づける フォリオッドが一度その切っ先に視線を向けてからザッツロードへ視線を向けて言う
「…分かった 私の負けだ ザッツロード王」
フォリオッドの言葉にザッツロードが笑んで少し力を抜く フォリオッドが横目でそれを見る 次の瞬間ザッツロードの両脇からヴィクトールとバーネットがフォリオッドへ剣を向けてヴィクトールが言う
「油断するな!ザッツロード!」
続いてバーネットが言う
「赤トカゲの言葉を信じるんじゃねぇえ!」
ザッツロードとフォリオッドが驚く ザッツロードが返事をして剣を構え直す
「は、はい!」
フォリオッドが慌てて言う
「ま、待て!本当だ 宝玉は返す」
フォリオッドの言葉にザッツロードが剣を近づける フォリオッドが慌てて言う
「そ、そこだっ 機械を操作すれば 宝玉が隠されている壁が開く」
ザッツロードたちが少し剣を引き フォリオッドが機械を操作する 近くの壁が開き 旧世界の宝玉が現れる ザッツロードたちが旧世界の宝玉へ目を向ける フォリオッドが赤トカゲに変身して逃げて行く ザッツロードたちがハッと驚く ヴィクトールが微笑んで言う
「我々であれを追うのは難しい それより今は旧世界の宝玉を手に入れる事が先決だ」
言いながらヴィクトールが剣を鞘へ戻す バーネットが軽く微笑み剣を鞘へ戻しながら言う
「だな、おいボンクラ勇者、早くそいつをお前の仲間の下へ持って行ってやれ 半分盗まれたままじゃ心配で 宝玉の起動に気合が入らねぇだろ?」
ザッツロードが微笑んで言う
「はい!すぐに持って行きます」
ヴィクトールとバーネットが頷く ザッツロードたちが部屋の出入り口へ向かう ヴィクトールが言う
「アバロンへ連絡を入れよう ガルバディアへ向かった部隊がどうなったかも気になる」
バーネットが言う
「通信はやべぇんじゃねぇのか?」
バーネットの言葉にガルバディア国王が言う
『お前達の通信は私が防御する 漏洩の心配は不要だ』
バーネットがヴィクトールへ向いて言う
「へぇ?さすがはアバロンの相棒だな?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「アバロンの相棒ではあるが 残念ながら私の相棒では 無くなってしまったらしい」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが首を傾げて言う
「え?先ほどはサポートをなさっていましたが?」
ガルバディア国王が微笑して言う
『あれは前回の借りを返しただけだ、現在のアバロンの王はヴィクトール14世 私の相棒はアバロンの王であるべきだ』
ガルバディア国王の言葉にヴィクトールが苦笑し バーネットとザッツロードが呆気に取られる ザッツロードがヴィクトールとバーネットを見て言う
「しかし、ヴィクトール様にはバーネットが居るので 他に相棒は不要かもしれませんね?」
ザッツロードの笑顔の前で2人が顔を見合わせる ガルバディア国王が軽く笑って言う
『うむ、私もそう思う バーネット殿の先日のガルバディアでの格闘は 相棒への熱意を感じずには おられなかった』
皆の視線が一度ガルバディア国王へ向いてから バーネットへ向く バーネットが赤面してガルバディア国王へ言う
「ばっ!?馬鹿言ってんじゃねぇえ!俺は全世界の民を救うためにだなっ!だいたい相棒への熱意とか言うんじゃねぇ!気持ち悪いぃだろがっ!!」
ザッツロードが苦笑する バーネットがザッツロードへ向き直って叫ぶ
「てめぇえも!だいたい何でヴィクトールが様で 俺が呼び捨てなんだ!?あぁあ!?」
ザッツロードが笑う ヴィクトールが苦笑して言う
「私も呼び捨てにして 貰いたいのだがな?」
ザッツロードがヴィクトールへ向き直って苦笑して言う
「ヴィクトール様を呼び捨てにするのは もう少し慣れてからではないと ちょっと難しいです」
バーネットが腕組みをして そっぽを向きながら言う
「ヴィクトールが呼び捨てになる頃には 俺はどんな扱いにされてるか 分かったもんじゃねぇぜ」
ザッツロードたちが笑う ヴィクトールが気を取り直して言う
「それでは相棒のバーネット様、アバロンへ戻ろうか?」
ヴィクトールの言葉に バーネットが驚いて慌てて叫ぶ
「てめぇに様呼びされる位なら ボンクラ勇者に馬鹿にされた方が まだマシだ!!」
ザッツロードとヴィクトールが笑い ヴィクトールがザッツロードへ問う
「ザッツロードは このままローレシアへ向かうのだな?」
ヴィクトールの問いに ザッツロードが頷いて言う
「はい、旧世界の宝玉が全て起動したら ヴィクトール様へお知らせします」
バーネットが振り返って言う
「お知らせするのは アバロン帝国皇帝のヴィクトール14世の方だろ?俺らは今や、てめぇらと同じ 対悪魔力戦における一兵卒だぁ」
バーネットの言葉にヴィクトールが頷いて続ける
「ああ、バーネットの言う通りだ ザッツロード、帝位は譲ったが、我々はこれからも共に悪魔力と戦う兵であり 同じ仲間だ」
ガルバディア国王がザッツロードへ向いて言う
『お前達が旧世界の宝玉を無事起動させ 旧世界の悪魔力が中和されれば 次に必要になるのが我らガルバディア国が受け持つ 新たなロボット兵 …私もこれからは国王所では無いほどに 忙しくなるのかもな』
ザッツロードが微笑む バーネットが言う
「ああ、皇帝だの第二皇帝だのじゃなくなったってのに 今まで以上に忙しくなるのかもしれねぇ」
ヴィクトールとバーネットが苦笑する ガルバディア国王が頷いて言う
『では、私はガルバディアへ戻らせて貰う 通信類は安心して使うと良い』
ヴィクトールが頷いて言う
「ガルバディア国王 支援を感謝する」
ガルバディア国王が微笑んで言う
『私の相棒はアバロンの王だが お前たちにも多少は力をかしてやろう 用があれば呼べ』
言い終えると共に ガルバディア国王がホログラムを消す ザッツロードたちが微笑む ヴィクトールが言う
「さぁ、我々も急がねば」
ヴィクトールの言葉にザッツロードとバーネットが頷く
玉座の間に戻ったザッツロードたち ソルベキア国王ガライナ6世がアバロン兵に捕らえられている アバロン兵が言う
「ヴィクトール様、城内のソルベキア兵は全て捕らえました 我々はこの者をアバロン帝国へ連行致します」
ヴィクトールが頷いて言う
「分かった、我々もすぐに戻る」
ヴィクトールの言葉にアバロン兵らが敬礼して去って行く ザッツロードがヴィクトールの倒した フェリペゴーランド6号機へ視線を向けてから ヴィクトールへ言う
「ヴィクトール様お1人で ロボット兵を倒すとは… やはり アバロンの大剣使いは凄いですね」
ザッツロードの言葉にヴィクトールが一度ロボット兵を見てから言う
「ああ、もっとも宝玉の力があっての話だがな?」
バーネットが苦笑しながら言う
「だとしてもアバロンの民の怪力は 泣き虫ヴィクトールでも大したもんだがなぁ?」
バーネットの言葉にヴィクトールが勢い良く振り返って怒る
「バーネット!君までっ!!」
バーネットが笑う ザッツロードが隠れて苦笑する ヴィクトールが涙目で振り返って怒る
ヴィクトールが2人から視線を外し玉座の間の出口へ向かう バーネットとザッツロードが後に続く ヴィクトールが出口から中へ入る赤トカげに気付く ヴィクトールが振り返り赤トカゲを目で追う 赤トカゲがフェリペゴーランド6号機の中へ入りこむ フェリペゴーランド6号機の目が光る ヴィクトールが目を見開く フェリペゴーランド6号機が顔を上げザッツロードを確認し 片腕をザッツロードへ向ける ヴィクトールが叫ぶ
「避けろ!ザッツロード!!」
ヴィクトールの言葉にザッツロードとバーネットがフェリペゴーランド6号機へ向く フェリペゴーランド6号機の片腕がザッツロードへ目掛けて飛ぶ フェリペゴーランド6号機の片腕がザッツロードの左腕とその腕に持っていた旧世界の宝玉を砕く ザッツロードが悲鳴を上げる
「うあぁああ!!」
ヴィクトールとバーネットが同時に呼ぶ
「「ザッツロード!!」」
ヴィクトールがザッツロードへ向かう バーネットがフェリペゴーランド6号機へ向く フェリペゴーランド6号機がもう片方の腕を ヴィクトールへ向ける バーネットがヴィクトールへ向き 走りながら叫ぶ
「ヴィクトールっ!!」
ヴィクトールがバーネットの声でフェリペゴーランド6号機へ向き 目を見開く バーネットがヴィクトールを突き飛ばす ヴィクトールが床に倒れる バーネットがフェリペゴーランド6号機の片腕を身に受け 壁に身体を打ち付けられる ヴィクトールが床に手を突き顔を上げて叫ぶ
「バーネット!!」
ザッツロードが左腕を押さえながら床に腰を落とす その横でバーネットが床に崩れ落ちる ヴィクトールがバーネットの下に駆け付ける ヴィクトールがバーネットを抱き起こして叫ぶ
「バーネット!目を開けてくれ!!バーネット!!」
ザッツロードが辛そうな表情で 砕かれた左腕に回復魔法を掛けながら ヴィクトールとバーネットへ視線を向ける ヴィクトールが何度もバーネットを呼ぶ バーネットがようやく目を開いてヴィクトールを見る ヴィクトールがぼろぼろ涙を零しながらバーネットを見下ろして言う
「バーネット…っ!何で…っ!?」
バーネットが苦笑して言う
「ば…か やろ… 泣く んじゃ… ね ぇ… っ!」
バーネットが言い終えると共に口から血を吐きだす ヴィクトールが叫ぶ
「嫌だっ バーネット!君がっ 君が 一緒に居てくれないなら!! バーネット! 僕はっ 泣かずになんか いられないよっ!!」
ヴィクトールが顔を横に振って バーネットへ視線を戻す バーネットが笑って言う
「は…はは… そ だな… 俺 が い…て やら ねぇ …と …て めぇは … すぐ …泣 き やが… るか ら 」
ヴィクトールがぼろぼろと涙を流しながら言う
「そうだよっ バーネット… 君が 一緒に居て 僕を 守ってくれるって言ったから… 僕はっ」
回復を終えたザッツロードが立ち上がり ヴィクトールと反対側に膝を付き バーネットの負傷を確認し目を見開く ヴィクトールが叫ぶ
「バーネット!お願いだ!死なないで!!君が居なくなってしまったら!」
バーネットが笑う ヴィクトールが泣きながら笑って続ける
「バーネット… 言ったじゃないか?一緒に… 世界を救うって …もう 僕と 話をしなくなる事なんか ないって! もう 2度と!! 僕の話を 無視したりしないって!!もう2度と!!…君との事で 僕を泣かせないってっ!! 言ったじゃないかっ!?それ なのに…っ」
ヴィクトールが苦しそうに涙を流す バーネットが微笑んで言う
「あ あ… 一緒に居て やる… 一緒に… 世界を… 守 る… いつ だっ て… 話 して やる …無視 なんて して やらねぇ … もう… 泣かせねぇ…よ ヴィ クトー …ル… だ…から …泣く ん じゃ…ねぇ …よ…」
ヴィクトールが泣き続ける バーネットが苦笑して言う
「…俺 は すぐ…戻る 少し 休ん だら…また… お前の傍 へ 行って… やる から… それ まで… 先に…行って ろよ …たく … お前は… 相 変わ ら…ず 泣き… 虫 …だ な…」
バーネットが眠る様に息を引き取る ヴィクトールが目を見開いて言う
「バーネット…?バーネット?嫌だ 起きて… 起きてよ!!バーネット!!バーネットーーっ!!」
ヴィクトールがバーネットの身体を揺すって呼ぶ ザッツロードが歯を食いしばり俯く ヴィクトールがバーネットの身にしがみ付いて泣き続ける
ザッツロードが静かにヴィクトールへ言う
「ヴィクトール様、そろそろアバロンへ戻りましょう?バーネット様も一緒に」
ザッツロードがヴィクトールの顔を覗き込む ヴィクトールは顔を上げず泣き続けている ザッツロードが一度視線を外してからヴィクトールの手に触れて言う
「ヴィクトール様、ヴィクトール前皇帝陛下!しっかりして下さい、バーネット元第二皇帝陛下も これではヴィクトール様が心配で…」
ヴィクトールは顔を上げない ザッツロードが息を吐き 旧世界の宝玉を確認して息を飲み言う
「ほ、宝玉が!!」
ザッツロードが袋から旧世界の宝玉を取り出して見る 1つの宝玉が割れ、1つの宝玉にヒビが入っている その2つを手に取り ザッツロードが焦ってヴィクトールへ言う
「ヴィクトール様!!旧世界の宝玉が!!」
ザッツロードの言葉にヴィクトールが顔を上げザッツロードの手に持つ宝玉へ視線を送ってから 再びバーネットへ視線を向けて言う
「…バーネット やっぱり… 君が 居な ければ…」
ザッツロードが驚き 宝玉を持つ手を下げてヴィクトールへ問う
「ヴィクトール様?」
ヴィクトールがバーネットの頬に手を触れて言う
「もう… どうでも 良い…」
ザッツロードが驚き ヴィクトールの肩を掴み 引き上げて言う
「しっかりして下さい!ヴィクトール様!!貴方はアバロン帝国のヴィクトール13世です!!バーネットの為にも!我々と一緒に世界を救うんです!!」
ザッツロードがヴィクトールの顔を見る ヴィクトールがザッツロードの顔を見上げたまま涙を流して言う
「知らないよ 勝手にしてくれ… 世界が救われたって… そこに…… … … … 何が あると言うんだ…?」
ザッツロードが驚き手を離す ヴィクトールがそのまま床に座りこみ 俯いて涙を流す ザッツロードが床に転がる旧世界の宝玉を見て言う
「僕は… 皆の所へ 行かなきゃ」
ザッツロードが床に転がる宝玉を拾い 袋に入れて出口へ向かい 一度立ち止まり ヴィクトールへ振り向いて言う
「ヴィクトール様、僕は 旧世界の宝玉を仲間の下へ届けます 貴方は… バーネットと共に アバロンへ戻って下さい」
言い終えると共にザッツロードが玉座の間を出て行く
ソルベキア城を出たザッツロード 移動魔法を使いローレシアへ向かう
【 ローレシア国 】
ローレシアの移動魔法陣へ辿り着いたザッツロード 独り言を言う
「旧世界の宝玉が壊れてしまった… 父上に 報告しないと…」
ザッツロードが1人 ローレシア城を目指す
ローレシア城へ到着したザッツロード 入り口を入り 1階ホールから玉座の間を見上げ フォリオッドの事を思い出す 一度目を閉じ 思い出を払ったザッツロードが地下へ向かう 地下の機械室へ向かうザッツロード 入り口の扉をノックして声を掛ける
「父上!ザッツロードです!」
間もなくキルビーグの声が返って来る
「ザッツ?どうしたのだ?」
ザッツロードが扉を開き中へ入る キルビーグが疑問して向き直っていた状態から ザッツロードの手に持たれている袋に気付き微笑んで言う
「旧世界の宝玉を取り戻したのだな!?」
キルビーグの微笑に ザッツロードが苦笑を返して言う
「はい 取り戻しました… しかし 申し訳有りません…」
ザッツロードが言いながら 壊れた宝玉を取り出して見せる キルビーグが驚く ザッツロードが言う
「これでは…旧世界を救う事が…っ」
ザッツロードが言いながら唇を噛み締める キルビーグが考え顔を上げて言う
「諦めるのはまだ早い!ザッツロード!」
ザッツロードが顔を上げてキルビーグを見る キルビーグが言う
「ガルバディアなら この旧世界の宝玉を直せるやも知れぬ!無事な宝玉を魔力使いらへ託し、お前はガルバディアを頼れ」
ザッツロードが表情を明るめて言う
「はい!父上!」
ザッツロードが走って機械室を後にする
【 キャリトールの町 】
町へ到着したザッツロードがソニヤを探す 町の一角にて 最上級魔力者5人による旧世界の宝玉の起動が行われている ソニヤは5人には加わらずに居る ザッツロードがソニヤを見つけて駆け付けて呼ぶ
「ソニヤ!」
ソニヤが自分を呼ぶ声に顔を向け ザッツロードの姿と彼の持つ旧世界の宝玉が入った袋に気付き 表情を明るめて言う
「ザッツ!ソルベキアから宝玉を取り返したのね!?」
ザッツロードが頷いて言う
「うん!ただ、2つ程傷付けてしまったんだ だから僕はそれをガルバディアへ持って行き 修復して貰う」
ザッツロードの言葉にソニヤが一瞬表情を強張らせる ザッツロードが旧世界の宝玉を3つ手渡して言う
「無事な方の3つを渡しておくから… ソニヤ、今の所宝玉はいくつ終えているんだ?」
ザッツロードの言葉にソニヤが視線を落として言う
「今の所… キャリトールでは2つよ」
ソニヤの言葉にザッツロードが驚いて言う
「え!?2つ!?そんな…後4日しか無いのに」
ソニヤが宝玉の起動を行っている魔法使いたちへ視線を向けて言う
「1つの宝玉を起動させるのに 5人の魔力使いがその5人分の魔力を調整して 宝玉に送らないといけないの とても精神を集中させる作業だから どうしても時間が掛かってしまうのよ」
ザッツロードが少し考えてからソニヤへ問う
「ラナやセーリアたちは?」
ソニヤが答える
「2人はテキスツに居るわ 向こうはさっき2つ目の宝玉の起動を開始したって」
ザッツロードが考えながら言う
「両方を合わせても3日で3つ… これでは… 間に合わないかもしれない」
ザッツロードの言葉に ソニヤが一瞬間を置いてからザッツロードの背を叩いて言う
「何言ってるのよ!こういう時こそ!出来るって信じて頑張らなきゃダメだって!バーネットに言われたじゃない!?」
ザッツロードが驚きソニヤへ顔を向ける ソニヤが微笑んで言う
「そーでしょ?じゃないと、またあの鞭に脅かされるじゃない?ヴィクトール様も バーネットを止めてはくれないんだから~」
ソニヤが笑う ザッツロードが一瞬困った後 笑顔で言う
「う、うん、そうだね こんな時こそ頑張らないと」
ソニヤが頷いて言う
「そうよ!それじゃ、私この3つの内1つを テキスツへ持って行くから!ザッツも、急いで残りの2つを ガルバディアで修理して貰ってきて!」
ソニヤの言葉にザッツロードが微笑して頷き言う
「分かった、そっちは頼むよ ラナとセーリアにも 応援をしておいてくれ 僕もガルバディアで 宝玉を直して貰ったら すぐに戻るから」
ザッツロードの言葉にソニヤが頷き ザッツロードがキャリトールの町を後にする
【 ガルバディア国 】
ザッツロードがガルバディア国の移動魔法陣に到着し 独り言を言う
「ソニヤに バーネットとヴィクトール様の事… 言えなかったな… けど、今は 僕が頑張らないとっ」
ザッツロードが顔を上げ ガルバディア城へ向かう
ガルバディア城の門を抜け 玉座の下へ向かう
ザッツロードが玉座の間に入ると 玉座の前にガルバディア国王のホログラムが現れる ザッツロードが足を止め跪いて敬礼する ガルバディア国王がザッツロードを見て言う
『ローレシア国国王ザッツロード7世 ソルベキアでの会話以来 束の間だが 私に何用か?』
ザッツロードが顔を上げ ガルバディア国王へ言う
「ガルバディア国王 どうか我々に力を お貸し下さい」
ザッツロードが壊れた旧世界の宝玉2つを袋から取り出し 両手で支えガルバディア国王へ向ける ガルバディア国王が目を細める ホログラムが消え ザッツロードの目前に現れる ザッツロードはそのままの姿で待つ ガルバディア国王が宝玉に片手をかざし 周囲にモニターのホログラムがいくつも現れる 束の間の後 ガルバディア国王がかざしていた手を戻し ザッツロードへ視線を向けて言う
『修復は可能だ』
ガルバディア国王の言葉にザッツロードが表情を明るめ顔を上げて言う
「それではっ!」
ガルバディア国王が表情を変えずに言う
『しかし、お前のその依頼 私は引き受けかねる』
ザッツロードが驚いて言う
「そんな!?何故ですっ!?」
ガルバディア国王が答える
『私は現在 別の作業を行っている 仮に、お前の依頼を取り行うのであれは その後になる』
ザッツロードが立ち上がって言う
「ガルバディア国王、聞いて下さい!この旧世界の宝玉は4日後には 魔力者たちの協力を得て全ての宝玉の起動を終えた状態で 旧世界に送らなければいけないのです!そうしなければ 旧世界で長きに渡り悪魔力と戦い続けてきた人々が その尊い命を奪われる事になるのです!」
ザッツロードの言葉に ガルバディア国王が間を置いて答える
『話は分かった だが、私にも 果たさなければならぬ約束があるのだ それを不意にして お前の依頼を優先する事は 私には難しい』
ザッツロードが詰め寄って言う
「約束!?旧世界に残る多くの人々を救う事以上に 大切な約束とは何ですか!?教えてください!ガルバディア国王!!」
ザッツロードの言葉に ガルバディア国王が間を置いて答える
『それは、アバロンの大剣使い ヘクターとの約束だ』
ザッツロードが疑問して言う
「…え?ヘクターとの?」
ガルバディア国王が言う
『そうだ、お前も知っているであろう 先日ヘクターは ウィザードの回復を私に求め そして、バーネットは旧世界で使用するための ロボット兵の開発を私に求めた』
ザッツロードが慌てて言う
「しかし、ガルバディア国王、貴方はソルベキアにおいての会話で ロボット兵の開発をすると言っていたではありませんか!?」
ガルバディア国王が頷いて言う
『そうだ、私はロボット兵の開発を優先すると約束した その代わり、ヘクターの依頼であるウィザードの回復をも引き受ける為 そのウィザードへは生命維持のプログラムを掛ける事にしたのだ これでロボット兵の開発が終了した後でも ウィザードの回復をする事が可能になる』
ザッツロードが落ち着いて問う
「では、現在行っている作業と言うのは そのウィザードへの?」
ガルバディア国王が頷いて言う
『ウィザードへの生命維持プログラムの製作だ 元は現在生き残っている我ら3人のガルバディアの民へ掛けられたプログラムだが それをウィザードへ施すための 修正を施しながら製作を行っている これを終えた後になら お前の依頼をとり行う事が出来る しかし…』
ガルバディア国王が言葉を切る ザッツロードが問う
「しかし?」
ガルバディア国王が言う
『お前の依頼である その宝玉の修理には 本来であるなら4日以上を有する、現在行われている ウィザードへの生命維持プログラムを終了させてからでは 確実に間に合わない よって お前の依頼は受けかねる』
ザッツロードが再び力を入れて言う
「ガルバディア国王 ウィザードへのプログラム製作を停止して、私の依頼に今すぐ取り掛かって下さい!」
ザッツロードの言葉にガルバディア国王が少し驚き言う
『…ザッツロード王、ヘクターは我らのガルバディア国と私を含めた3人の民を ソルベキアのロボット兵らから守ってくれたのだ 私は彼へのその恩を無下にする事は』
ザッツロードがガルバディア国王に詰め寄って言う
「ガルバディア国王!貴方は間違っている!ヘクターは確かに貴方たちを守ったかもしれない!しかし、この旧世界の宝玉を 今 修理しなければ!期日までに旧世界へ送らなければ!旧世界の人々は救えないんだ!貴方は一国王として まずは、より多くの人々を救う事を 考えるべきです!!」
ザッツロードの言葉に ガルバディア国王が間を置いて返答する
『…なるほど 流石は旧ローレシア帝国の皇帝と言った所か 私とは違い 新世界の一国だけではなく 旧世界をも含めた 多くの民を救う使命を背負っているのだな』
ザッツロードが肩の力を抜いて言う
「ガルバディア国王、貴方の力は 今は宝玉の修理に使うべきだ、ヘクターの依頼にはその後でも」
ガルバディア国王が間を置いて言う
『あのウィザードの生命は かなり衰弱している 今まで保っていたのが奇跡的だと言えるまでに その奇跡が万が一にも お前の依頼で潰えた場合 ヘクターはきっと私やお前を許さないだろう それでも構わないのか?』
ガルバディア国王の言葉にザッツロードが強い視線で言う
「その時は 全ての責任を私が!彼の怒りを全て私が受けます!」
ガルバディア国王が間を置いてから ザッツロードへ言う
『…分かった 宝玉をこちらへ運んでくれ』
言い終えると共に ガルバディア国王が道を示し先行する ザッツロードがそれに続く
小型の機械アームが無数に備えられた 機械に埋め尽くされた部屋へ連れて行かれる ガルバディア国王がその部屋にある作業台を示して言う
『そこへ』
ザッツロードがガルバディア国王の示す先へ 2つの宝玉を置く 間もなく数本の機械アームがその宝玉を確認する様に降りて来て動く ザッツロードがそれを眺めているとガルバディア国王が言う
『では、私は宝玉の修理に専念する 損傷の少ない方は2日もあれば修理が終るだろう 先に一方でも必要とあるのなら 連絡を行うが?』
ザッツロードがガルバディア国王へ向いて言う
「はい、1つでも修理が終了したら 連絡をお願いします」
ガルバディア国王が頷いて言う
『分かった そうしよう …もし』
部屋を出ようとしていたザッツロードが振り返り問う
「もし?」
ザッツロードが疑問し ガルバディア国王を見つめる ガルバディア国王が間を置いて視線を落として言う
『お前にそれまでの間、時間があるのなら アバロンへ向かい ヘクターへ この事を伝えて欲しい そして、私が謝っていたと…』
ザッツロードが軽く笑って言う
「ガルバディア国王 貴方は不思議な方ですね」
ガルバディア国王がザッツロードへ向く ザッツロードが続ける
「国王でありながら 他国の1人の兵にそれほど深く謝罪するなんて… それに、とても 恩や約束を大切にされている」
ザッツロードの言葉に ガルバディア国王が視線を強くして言う
『国王にあるましく無いと笑うか ザッツロード …それも良かろう だが己の地位や名誉に溺れ忘れるな 例え、国王であろうと皇帝であろうと 所詮は ただ1人の人間なのだ』
ガルバディア国王がホログラムを消す ザッツロードがあっと声を上げる 隣の作業台では変わらず 機械アームが動いている 周囲を見渡してから肩を落として部屋を後にする
【 アバロン帝国 】
ザッツロードがアバロン帝国の移動魔法陣へ現れ 独り言を言う
「ヴィクトール14世皇帝陛下へ連絡しておこう リーザロッテ王女らも きっと心配しているだろうし」
アバロン城下町を歩くザッツロード ヘクターの家の前で立ち止まり言う
「ガルバディア国王からの言伝を伝えた方が良いかな?でも… 取り合えず ヴィクトール14世皇帝陛下へ 先に報告してからにしよう」
アバロン城 玉座の間 ヴィクトール14世の前にザッツロードが跪いて敬礼している ヴィクトール14世が言う
「ザッツロード王、貴公の父君キルビーグ殿より話は聞いている 破損した旧世界の宝玉の修理は可能なのか?」
ザッツロードが微笑して言う
「はい、ガルバディア国王陛下が現在修理を行って下されてます 損傷の少ない方は2日後に もう片方も 何とか間に合うものだと思われます 他の宝玉は 現在魔力使いの者が その起動作業を行ってます こちらも… きっと間に合うものだと」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷いて言う
「そうか、では、どちらも間に合わせる事が出来ると信じよう」
ザッツロードが強く返事をする
「はいっ!」
ザッツロードの返事にヴィクトール14世が頷いて言う
「現在こちらではバッツスクロイツが確認した 濃度の高い悪魔力の被害を受けた国への援護活動を続けている 前回シュレイザー国やスプローニ国で起きたものと同様だ ザッツロード王もし貴公に 少しでも時間があるのなら 先に援護に向かっているリーザロッテ女王らに 手を貸してやって欲しい」
ザッツロードが驚いて言う
「リーザロッテ『女王』?」
ザッツロードの疑問に ヴィクトール14世が微笑んで言う
「リーザロッテ殿は 先日のソルベキア国での功績を評価され ツヴァイザー国にて その王位を引き継いだとの事だ」
ザッツロードが笑顔を見せる ヴィクトール14世が軽く笑って言う
「貴公からも祝福を送ると良いだろう」
ザッツロードが微笑んで言う
「はい、そうします!」
ヴィクトール14世が頷いて言う
「うん、リーザロッテ女王は現在ローゼント国の警備に付いている バッツスクロイツの情報によれば 本日の夜か、明日の朝にも 魔物の群れがローゼントの城下町へ現れる可能性があるとの事 今回はカイッツ国への警備も同時に行っているため 兵の数が少ない 貴公が向かってくれるのであれば その兵らにとっても 心強き事となるだろう」
ザッツロードが頷いて言う
「はい、ではこれより私は ローゼント国への援護へ向かいます!」
ヴィクトール14世が頷いて言う
「よろしく頼む ザッツロード王」
ザッツロードが敬礼しようとして身を止め 再びヴィクトール14世へ向いて言う
「あ、あの… ヴィクトール14世皇帝陛下」
ヴィクトール14世が微笑み問う
「どうかしたか?ザッツロード王」
ザッツロードが間を置いてから問う
「ヴィクトール13世様は… 如何なさっておられますか?」
ザッツロードの問いに ヴィクトール14世が僅かに驚き視線を逸らす しばらく間を置いて言う
「ヴィクトール13世は… 現在このアバロン城にて幽閉している」
ザッツロードが驚いて声を漏らす
「ゆ…幽閉…?」
ヴィクトール14世が目を瞑り息を吐いてから 再びザッツロードへ視線を向けて言う
「ヴィクトール13世は ソルベキア国攻略の際に 瞑(めい)された バーネット前アバロン帝国第二皇帝の死を いまだ乗り越えられずにいる あの日ソルベキアで保護されてから この2日の間 食事も睡眠も取られずにいる様子 私としても何とかしたいと 思ってはいるのだが…」
ザッツロードが間を置いて言う
「私は、バーネット元第二皇帝陛下が崩御された際 すぐ傍におりました ヴィクトール13世様は とても嘆いておられ」
ヴィクトール14世がザッツロードへ向いていう
「彼は現在、完全に戦意を失っている だが、我々の戦いはまだ終わってはいない ザッツロード王、どうか我が父ヴィクトール13世の分まで その力を存分に奮ってもらいたい」
ザッツロードが顔を上げ 力強く頷いて言う
「分かりました、ヴィクトール14世皇帝陛下!」
ヴィクトール14世が微笑んで言う
「うん、期待している」
ザッツロードがアバロン城を出ると 意思を固め移動魔法を詠唱する
【 ローゼント国 】
ザッツロードはローゼント国の移動魔法陣へ現れ ローゼント国城下町へ向かう 城下町へ辿り着いたザッツロードがリーザロッテを探す 町の宿でリーザロッテらと合流 これまでの事を話す 話を聞いたリーザロッテが視線を落として言う
「そう… ロキに続いて バーネットが…」
皆も視線を落とす レイトが言う
「きっとヴィクトール13世殿は 嘆かれているだろう」
レイトの言葉に ザッツロードが言う
「そうなんだ、アバロンでヴィクトール14世から伺った話では 今も その悲しみを乗り越えられていないと」
ヴェインが言う
「心の支えであった者を失い その悲しみから立ち直るのは 容易な事では無い」
ザッツロードがロイへ視線を向ける ロイは沈黙している リーザロッテが気を取り直して言う
「なら!私たちが支えるしか無いわ!一刻も早く悪魔力をこの世界から無くして!そのヴィクトール13世らが行おうとしていた事を 達成して差し上げるのよ!」
ザッツロードが微笑して言う
「はい、そうですね 今度は僕らが率先して行かなければ」
リーザロッテが微笑んで言う
「ええ!そして、新世界担当の勇者である私たちは 既にその策を得たのよ!」
リーザロッテの言葉にザッツロードが驚いて声を上げる
「え?策… とは?」
リーザロッテが笑みを強くしてシャルロッテへ向いて言う
「さあシャル!ザッツロード王へ 御説明して差し上げて!」
リーザロッテの言葉にザッツロードがシャルロッテへ顔を向ける シャルロッテがモバイルPCから顔を上げ 焦って答える
「は、はいっ!わ、わわわ私たちの策はっ 先日ソルベキア国にて手に入れたっ 聖魔力圧縮装置にて 悪魔力の霧を退治するものですぅ」
シャルロッテの言葉にザッツロードが驚いて言う
「悪魔力の霧を退治する!?そんな事が可能なのですか!?」
リーザロッテが微笑んで言う
「ええ!バッツスクロイツの案では 聖魔力は陸のより海上の方が濃度が高いので 私たちの策は本来なら 悪魔力の霧を大陸に近づけさせない様 海上へ追い払う事だったの その為にソルベキアの機械を使って 聖魔力の照射が出来る機械を作る予定だったのだけど」
シャルロッテが続きを言う
「そ、そそそそうなるとっ 聖魔力の照射は とても短期間に 度々行う事になるので 装置の操作や 各国の連絡が大変にっ なってしまいますぅ」
リーザロッテが続きを言う
「丁度良い事に 私たちはソルベキアで 悪魔力圧縮装置の設計図を手に入れたわ これを聖魔力に置き換えて作れば バッツスクロツが提案した機械より 強力な聖魔力の照射が可能な機械が作れるのよ」
ザッツロードが問う
「その機械なら 悪魔力の霧をより遠くへ 追い払う事が可能だと 言う事ですか?」
リーザロッテが笑顔で答える
「ええ!シャルの集めた情報によれば この大陸から遠く離れた海上には 周囲を取り巻く様に吹く 一段と強い風が流れているらしいの その風に一度悪魔力の霧を乗せてしまえば!」
シャルロッテが喜んで続きを言う
「もう2度と悪魔力の霧は この大陸へやって来なくてよ!」
ザッツロードが驚いてシャルロッテを見る シャルロッテがハッとして赤面して口を押さえ恥ずかしがる リーザロッテが変化無くザッツロードへ近づき自信を持って問う
「どう!?ザッツロード王!私の戴冠祝いの催しは?」
ザッツロードが苦笑しながら後退って言う
「す、凄いと思います リーザロッテ女王」
ザッツロードの返答を聞いたリーザロッテとシャルロッテが同じ姿で高笑いする ザッツロードが汗をかく レイトとヴェインとロイが呆れている ロイが言う
「…しかし、アバロン帝国への連絡を行う事無く 決行すると言うのは… 俺はやはり 賛同しかねる」
ロイの言葉にザッツロードが驚き リーザロッテへ顔を向けて問う
「アバロンへの連絡を しないと言うのは!?」
ザッツロードの問いに リーザロッテが軽く笑って言う
「そのままの意味でしてよ ザッツロード王!」
ザッツロードが驚いて言う
「何故です!?ヴィクトール14世皇帝陛下へ連絡を入れて バッツにも協力して貰うべきです」
ザッツロードの言葉にリーザロッテがレイトへ視線を送り 説明を促す レイトがリーザロッテの無言のそれに返事をして説明する
「はっ!バッツスクロイツ殿はロスラグ殿の失踪とバーネット殿の殉職に伴い 『何か、やる気無くなっちゃったなー 俺そろそろ帰ろっかなー?』…との事です」
ザッツロードが視線を落として言う
「そ、そんな…」
リーザロッテがザッツロードへ言う
「ええ!そんな適当なバッツスクロイツに手伝って頂いては 成功する物もしなくってよ!」
ザッツロードがリーザロッテへ向き直って言う
「しかし、バッツは手伝わないとしても アバロン帝国の後押しも無しに その様な機械を造る事が 可能なのですか?」
リーザロッテが微笑んで頷き言う
「ええ!貴方も御存知でしょ?ソルベキアのスファルツ卿を」
ザッツロードが驚く
「スファルツ卿!?何故リーザロッテ女王が スファルツ卿を御存知なのですか?!」
ヴェインがザッツロードへ向いて言う
「スファルツ卿はソルベキア国において リーザ様を救出するに当たり そのお力を貸してくださった方なのだ」
リーザロッテが続けて言う
「スファルツ卿は 今も昔もローレシアの味方だと仰ってらしたわよ?私たちが貴方の仲間だと知って 隠密にソルベキア城を案内し 私を助けて下さったの」
ザッツロードが視線を落として言う
「そうでしたか…スファルツ卿が」
ヴェインがザッツロードを見て問う
「何か気に入らぬ事でもあるのか?」
ヴェインの問いにザッツロードが慌てて顔を上げて言う
「い、いえっ リーザロッテ女王が御無事で 何よりでした」
ヴェインが頷きザッツロードから視線を外す ザッツロードがリーザロッテへ向いて言う
「所で、今回のローゼント国 防衛の策はどの様に?」
リーザロッテが微笑んで言う
「策は既に立ててあってよ!貴方も一緒に戦うのだったら 私たちに従って頂戴?」
ザッツロードが苦笑しながら言う
「は、はい もちろんです」
リーザロッテの指示の下 ザッツロードは魔物の群れと戦う 強引な特攻策が終了し 負傷者が多い ザッツロードがリーザロッテへ言う
「リーザロッテ女王、その… あまり負傷者を出すような策は取らない様にと ベネテクト国で共にべーネット陛下から学んだと思いますが」
ザッツロードの言葉にリーザロッテが怒って言う
「貴方に言われなくても 分かっていてよ!?」
ザッツロードが困った表情をして言う
「そ、そうですか では…」
ザッツロードが言い掛けた時 レイトの通信機が着信する 皆の視線がレイトへ向く レイトが通信機に出る
「はい、こちらリーザロッテ女王陛下と仲間たちです」
通信機のモニターにバッツスクロイツが映って言う
『はーい、こちらバッツスクロイツー モンスターの群れに付いて報告でーす』
リーザロッテが通信機に近づき叫ぶ
「バッツスクロイツ!貴方の情報が間違っていてよ!?」
通信機のモニターのバッツスクロイツが軽く驚いて言う
『えー?何か間違ってたー?こっちのデータでは予測通りだったけどー?』
リーザロッテが怒って言う
「貴方が仰った数より魔物の数が多かったわ!」
バッツスクロイツが不満そうに言う
『モンスターの数は増えるかもしれないって言ったじゃーん?こっちは ばっちり予測どおりでしたぁー』
リーザロッテが通信機に詰め寄って言う
「その予測があったのなら先に仰い!それから『モンスター』では無くって『魔物』だと何度教えたら理解できて!?それに そのダラけた態度をいい加減直したらどうなの!?」
通信機のモニターのバッツスクロイツがムッと怒って言う
『なんだよー いつもは予測は余計だとか言うじゃんかー? それに俺の世界では魔物よりモンスターの方がトレンディなの!こっち風に直すのがめんどーだっただけだろぉ?』
リーザロッテが怒って言う
「だったら!さっさと自分の世界へ帰られたらよろしくってよ!?アバロンに居候するのでしたら もう少し謙虚になさったら如何かしら!?」
ザッツロードが驚いて言う
「リーザロッテ女王!それは少し言い過ぎです!」
ザッツロードが通信機のバッツスクロイツへ言う
「バッツ、リーザロッテ女王は 今少し機嫌が悪いんだ 許してあげてくれ」
通信機のモニターのバッツスクロイツがザッツロードへ視線を向けて言う
『知ってるー、女王様になってから 自棄に張りきり過ぎちゃって 失敗の連続ーって 事もねー?』
バッツスクロイツの言葉にザッツロードが苦笑して言う
「そ… そうなんだ?」
リーザロッテが叫ぶ
「余計な情報は 伝えなくて宜しくてよ!!」
通信機のモニターのバッツスクロイツが顔を上げて言う
『はぁーあ、こんな時バーネっちやヴィクトールっちが居てくれればさー?がつーんと女王様に一喝してくれるかもしれないのにー?それか?ロスっちと語り明かしたりとかー?』
ザッツロードが表情を悲しませて言う
「うん… そうだね」
ザッツロードを押し退けて リーザロッテが通信機へ言う
「そんな無駄話は後にして!さっさと連絡事を仰い!」
リーザロッテの言葉にバッツスクロイツが怒って言う
『はいはい!魔物の群れがまだ近くにいるから!撤収はもう一日様子を見る様にー!!以上っ!!』
言い終えると共に通信が切られる リーザロッテが怒って言う
「ちょっと!その魔物の群れについて 詳細な情報を仰い!」
ザッツロードが苦笑しながら言う
「あの… リーザロッテ女王 通信はもう 切れてますから」
リーザロッテが腕組みをし ぷいっと顔を背ける ザッツロードが苦笑する ザッツロードの通信機が着信する ザッツロードが通信機を取り出す リーザロッテが言う
「バッツスクロイツからなら 先ほどの詳細を伝える様に仰い!」
リーザロッテの言葉にザッツロードが言う
「あれ?珍しい ガルバディア国王からの通信だ …はい、ザッツロードです」
リーザロッテたちが呆気に取られて様子を見る 通信機のモニターにガルバディア国王のホログラムが映り言う
『ザッツロード王、片方の宝玉の修理が完了した』
ザッツロードが表情を明るめて言う
「有難う御座います!ガルバディア国王!すぐに参ります!」
ザッツロードの言葉にモニターのガルバディア国王が頷いて言う
『もう一方も 期日には間に合いそうだ』
ザッツロードが微笑んで言う
「助かりました!」
ガルバディア国王が頷き通信を切ろうとする ザッツロードが言う
「しかし、まさか通信を頂けるとは 驚きました」
ガルバディア国王が首を傾げて言う
『私は連絡をすると 言った筈だが?』
ザッツロードが苦笑して言う
「あ、はい、ですから 私の近くにホログラムで現れて下さるものかと?」
ザッツロードの苦笑に ガルバディア国王が微笑して言う
『私が姿を現すのは 私の相棒であるアバロンの王のもとのみだ』
リーザロッテがザッツロードの後ろで言う
「ザッツロード王のもとには 姿を現す気は無いって事ね?」
ザッツロードが苦笑する ガルバディア国王が言う
『では そろそろ通信を切らせて貰う ホログラムを維持した状態で ローテクな通信を繋ぐのは 少々骨だ』
ザッツロードが慌てて言う
「そんなご無理はなさらないで下さいっ!」
ガルバディア国王が微笑して通信が切られる ザッツロードが溜め息を吐く リーザロッテたちが呆れる
ザッツロードがリーザロッテたちへ向いて言う
「では、僕は先に戦線を離脱させて貰うよ ごめん」
リーザロッテが顔を背けて言う
「別に、貴方1人の力など無くっても 問題は無くってよ?」
ザッツロードが苦笑して レイトたちへ向いて言う
「それじゃ、皆 リーザロッテ女王様を 宜しく!」
リーザロッテが驚いてザッツロードへ向いて叫ぶ
「それは!どう言う意味でしてっ!?」
レイトたちが苦笑する
【 ガルバディア国 】
ザッツロードがガルバディア国の移動魔法陣に到着し ガルバディア城へ向かう ザッツロードがガルバディア城の門を越えると 遠くからヘクターが駆け向かって来る ザッツロードがヘクターである事に気付いて その名を呼ぼうとする
「あ、ヘクタ…」
言葉の途中で ヘクターがザッツロードを締め上げて叫ぶ
「おいっ!!お前っ!!一体どう言う事だっ!?」
ザッツロードが自分の首を絞めるヘクターの手を叩く ヘクターがザッツロードの首を絞める手を強め揺らして叫ぶ
「黙ってねーで 説明しろよ!!」
ザッツロードが苦しんでヘクターの手を更に叩く ヘクターが気付いて手を離しながら言う
「あぁ、これじゃ説明出来ねーか」
ザッツロードが床に落ち 咳込みながら顔を上げてヘクターを見る 隣にガルバディア国王のホログラムが現れて言う
『ザッツロード王 ヘクターへ説明をしてはいないのか?』
ザッツロードが呼吸を整えて言う
「あ… すみません、その… 仲間たちの援護に向かってしまったもので」
ザッツロードが表情を困らせる ガルバディア国王が視線を落とす ヘクターがガルバディア国王へ振り返って言う
「それで!どうなんだ!?何でデスの生命維持プログラムを やめたんだよっ!?」
ガルバディア国王がヘクターへ視線を戻して言う
『やめたのではなく 一時的に停止したのだ 2日の後には再開をする …私も 少しは休みたいのだがな?』
ガルバディア国王の言葉にヘクターが怒って言う
「ふざけんなっ!!お前 言ったじゃねーかっ!?デスの命はやべえって!一刻の猶予もねーかもしれねーってっ!!」
ザッツロードがあっと声を上げ 立ち上がってヘクターへ向く ガルバディア国王がザッツロードへ向いて言う
『ザッツロード王 私は作業に専念しなくてはならない ヘクターへ詳しく説明をしている余裕も このホログラムを維持している余裕もないのだ』
ザッツロードが頷いて言う
「はい、ヘクターへの説明は 私に任せて下さい」
ガルバディア国王が溜め息を吐いて言う
『今度こそ しっかり説明と謝罪を頼んだぞ?』
言い終えると共にガルバディア国王がホログラムを消す ヘクターが慌てて叫ぶ
「あっ!!おいっ!どこ行った!?逃げんじゃねーっ!!」
ザッツロードが苦笑しながら ヘクターを呼んで言う
「ヘクター、実は…」
ザッツロードがヘクターへ説明を終える
「…と言う訳なんだ、ヘクター ガルバディア国王は 元は君の依頼を優先していたんだ けど 僕が説得をして 僕が君の怒りを受けると約束した だから」
ヘクターがザッツロードの言葉の途中で歩き始める ザッツロードが驚いて後を追いながら言う
「ヘクター?どこへ?」
ヘクターが顔を向けないまま答える
「お前が俺の怒りを受けるって?…ガルバディア国王ってのは 随分身勝手なんだな?」
ザッツロードが慌てて言う
「いやっ ヘクター 聞いてくれ!ガルバディア国王は 君の依頼であるウィザードの生命維持プログラムを作る事を止めたわけでは無いんだ ただ その前に旧世界の人々を守るための 宝玉の修理をするだけなんだよ」
ヘクターが振り返って言う
「だからなんだよ?ガルバディア国王は 俺に約束したんだぜ?今すぐウィザードに生命維持プログラムを掛ければ 少なくとも回復を行うまでの間は問題ないってよ?俺はそれで安心したんだ それでカイッツ国の防衛戦でも また剣を取って戦えたんだ この戦いが全部終わって 平和になったら 今度こそあいつを助けてやれる可能性があるんだって」
ヘクターが一度言葉を切って ザッツロードを睨み付けて言う
「それなのに!勝手に約束破りやがって!別の作業してただってっ!?ふざけんなっ!!こんなんじゃ!ロボット兵の製作の後に あいつの回復をするって約束も どうなるか分かったもんじゃねーだろっ!?」
ザッツロードが驚き後ずさりながらも 気を取り戻して言う
「それはっ!僕が君へ伝えるべきだったんだ、だから責任は僕にある」
ザッツロードが言うと ヘクターが一度軽く笑い 次の瞬間ザッツロードを殴り飛ばす 床に叩き付けられたザッツロードが 痛みに歯を食いしばる ヘクターがザッツロードを見下ろして言う
「これは お前が俺に伝えなかった分の怒りだ …俺は もう一度ガルバディア国王に約束を取り次ぐ 本人にな!」
ヘクターが言い終えると共に再び歩みを再開させる ザッツロードが立ち上がってヘクターを追いながら言う
「待ってくれ ヘクター!『本人』って…」
ヘクターが玉座へ向かう前の通路で立ち止まる ザッツロードが疑問してヘクターを見る 間を置いてヘクターが叫ぶ
「おいっ!!ガルバディア国王!!開けろっ!!本気で俺と約束する気があるんなら お前本人に会わせろっ!!」
ザッツロードが驚き ヘクターの言葉の後 周囲を見渡し 再びヘクターへ視線を戻して言う
「あ、あの… ヘクター?」
ヘクターが怒り 大剣を抜いて叫ぶ
「俺を入れねぇーつもりならっ!このガルバディア城を 全部ぶっ壊してでも!お前を探し出すぞーっ!!」
言いながらヘクターが自分の前の壁へ剣を振るう 剣が当たるギリギリで扉が開く 空振りした剣が床に刺さる ヘクターが力任せにそれを引抜き 肩に担いで開かれた道を進む ザッツロードが呆気に取られながらも 慌てて後に続く ザッツロードが周囲を見渡しながらヘクターの後に続き問う
「ヘクター?…ここは?」
ヘクターが進行方向を向いたまま答える
「ガルバディアのプログラマーってのは 命が出来てから死んじまうまで ずっと水の入った機械の中で生きてんだ 俺はその中から 俺の相棒だったプログラマーを助け出した」
ヘクターの言葉にザッツロードが頷いて言う
「あ、うん、知ってるよ それでベネテクト国で 治療をさせたのだよね?」
ヘクターが軽く笑って言う
「ああ、そのデスは死んじまったけど …で、ガルバディア国王も 俺の相棒だったプログラマーみてぇに あのホログラムを使うだろ?って事は…」
ヘクターの言葉にザッツロードが驚いて言う
「ま、まさか!?ガルバディア国王をその中から 出してしまおうと言うのではっ!?」
ザッツロードの言葉にヘクターが笑って言う
「そんな事はしねーよ?その後は大変なんだぜ?…って まぁその話は 今は良いとして」
通路にある扉の前にガルバディア国王のホログラムが現れヘクターへ振り返る ヘクターがニッと笑いその前へ行く ガルバディア国王がヘクターへ顔を向けて言う
『私はこの中に居る… 約束は守る ここまで来れば十分だろう?』
ザッツロードがヘクターへ視線を向ける ヘクターが周囲を見渡して言う
「向こうの扉は?」
ヘクターが剣で扉を示して見せる ガルバディア国王が顔を向けて言う
『そちらには 私と共に生き残っているガルバディアの民が居る』
ヘクターが再び周囲を見て 別の扉を示して言う
「んじゃ そっちは?」
ガルバディア国王が同様に顔を向けて言う
『そちらも同じだ 我々3人はここに居る… これで もう十分であろう?私は作業に戻らねば 本当に間に合わなくなるぞ?』
ザッツロードが慌ててヘクターへ言う
「ヘクター!ここまで来れば良い筈だ、これ以上 ガルバディア国王の作業の邪魔をしては 旧世界の人々を守る事が難しくなる!」
ザッツロードの言葉にヘクターが正面の扉へ向き直って言う
「開けろ」
ガルバディア国王が表情を歪ませて言う
『この中は精密機械が充満している お前も知って居るだろう? 乱暴なアバロンの民を入れて 壊されては困るのだ』
ザッツロードが慌ててヘクターへ言う
「ヘクターっもう良いだろう!?ガルバディア国王を信じるんだ!」
ヘクターが間を置いてから剣を構えて言う
「俺だって信じてーよ!けど開けねーってなら… 隣の扉からぶっ壊す!!」
ガルバディア国王が焦って言う
『や、やめろ!大切な民たちを 傷付けるなっ!』
ヘクターが剣を正面の扉へ向けて言う
「なら開けろ、お前のツラ 見るまでは信じねー」
ザッツロードが慌てる ガルバディア国王が困る 一瞬間を置いてから ガルバディア国王が溜め息を吐いて言う
『分かった、では、まず剣をしまえ それから 足下には十分に気を付けろ …い、一本でも切ったら死ぬからなっ!?』
ガルバディア国王が焦って言う ヘクターが苦笑する ザッツロードが呆れる
扉が開かれる ヘクターに続きザッツロードが入る 周囲は機械が密集している 部屋の中心に置かれた液体の入った機械へ行き 顔を覗き込む ザッツロードが隣から覗くが 光りが反射して見えない ガルバディア国王のホログラムが現れて言う
『これで満足だろう?気が済んだのなら さっさと出て行ってくれ それからザッツロード王』
ザッツロードが顔を向けて問う
「え?はい?」
ガルバディア国王がザッツロードの足下を指差して言う
『その配管を踏むな …呼吸が 苦しい…』
ザッツロードが慌てて退きながら言う
「わっ!す、すみません!」
ザッツロードとガルバディア国王がヘクターへ向く ヘクターがガルバディア国王本体の顔をじっと見て言う
「ホログラムが一緒だから もしかしてって思ってたんだ… 俺の相棒だったデスと 同じ顔してんだな?」
ヘクターの言葉にザッツロードが驚き 再びベッドを覗く 光の反射が消え ガルバディア国王の顔が見える ガルバディア国王が言う
『我らは216年前に死に絶えたのだ、ここに有るのは 私の遺伝子情報をから作り出した複製の身体であり お前の相棒であったプログラマーも 私の遺伝子情報にて造られた身体へ 私の意識の複写を与えた生命であった』
ザッツロードが驚き ガルバディア国王のホログラムへ顔を向ける ガルバディア国王がザッツロードへ顔を向け微笑んで言う
『分かっている、ザッツロード王 このような事は許されざる事なのだと… 故に私はこれ以上の複製の製作を取りやめたのだ 我らの生命に与えられた時間は短い もうしばらくすれば私はもちろん 他の2人もその生命を失う これでガルバディア国は完全に終えるのだ』
ヘクターが屈めていた上体を上げて言う
「あいつは、お前と同じ顔をしてたし、同じ感じだった …けど、あいつはあいつだ お前じゃねぇよ」
ザッツロードがヘクターを見る ガルバディア国王が軽く笑って言う
『ああ、不思議な事に 私の意識の複製を与えているにも拘らず 彼らは様々な変化をする 良くなる事も 悪くなる事も… 元である私が判断するのも おかしな話ではあるが そのお陰で私は今までの長き時を 生き抜いて来られた 彼らに救われ 守られ… 私は彼らをガルバディアの民とした だが、やはり許されざる事だ 私1人の勝手で お前達の世界に影響を与えてしまう事は もう止めなければならない』
ザッツロードがヘクターへ向く ヘクターが溜め息を吐いて言う
「なら、俺との約束はどーなんだ?途中で止めて死んじまう気じゃねーよな?」
ガルバディア国王がヘクターへ向いて言う
『私は彼らに比べ生命維持の時間が長い ロボット兵の製作とお前のウィザードを回復してやるまでの間程なら生きていられる お前の依頼を終えたら 私は自ら私の生命維持プログラムを止める これで全て終るのだ …もっとも それまでの間に 私本体の活動を止められてしまっては その時点で終ってしまうのだがな?』
ヘクターが軽く笑って言う
「そっちは安心しろ、俺がぜってー守ってやるよ!」
ガルバディア国王が軽く笑って言う
『だろうな』
ザッツロードが修復された旧世界の宝玉を手に入れ ガルバディア城を出て行く 城の門前でヘクターが立ち止まって言う
「じゃあな?まぁー頑張れよ?」
ヘクターの言葉に ザッツロードが振り返って言う
「はいっ …あの、ヘクター?」
ザッツロードの言葉にヘクターが問う
「あ?」
ザッツロードがヘクターの顔を見て言う
「旧世界の宝玉が揃って 無事 旧世界の悪魔力が中和されたら 僕らと共に 旧世界で戦ってくれませんか?」
ザッツロードの言葉に ヘクターが間を置いて軽く笑って言う
「…そうだな、ウィザードのデスが 元気になったらな?」
ザッツロードが軽く笑って言う
「はい、その時には きっと2人で 僕らの所へ来て下さい」
ヘクターが笑顔で言う
「おう!期待してろって!」
ヘクターの言葉にザッツロードが微笑み ガルバディアを後にする
【 キャリトールの町 】
ザッツロードが町へやって来て 最上級魔法使いたちの下へ向かう 辿り着いた先でソニヤを探す 宝玉の起動を行う5人の魔法使いの中にソニヤを見つける ザッツロードがソニヤへ近づくと 他の魔法使いが声を掛けて来る
「今は 彼女らへ近づいてはいけません」
ザッツロードが立ち止まり 魔法使いへ言う
「あ、はい すみません、えっと… もう1つ 宝玉を持って来たのですが」
ザッツロードが言って宝玉を見せる 魔法使いが宝玉を見てからザッツロードへ顔を向けて言う
「私たちには 現在起動を行っている あの宝玉の他に もう1つ起動されていない宝玉があります テキスツの方が きっとその宝玉を必要としていると思いますので どうかそちらへお持ち下さい ソニヤ様へは 私から伝えておきますので」
ザッツロードが魔法使いの言葉にあった ソニヤの敬称に驚きながらも頷いて言う
「分かりました ソニヤ…様に 宜しく伝えて下さい」
ザッツロードが立ち去ろうとすると 魔法使いが問う
「失礼ですが お名前を お聞かせ頂けますか?」
魔法使いの言葉に衝撃を受けて立ち止まり 振り返る 魔法使いが不審そうな顔でザッツロードを見ている ザッツロードが言い辛そうに言う
「えっと… ザッツロードと申します」
魔法使いが石化する ザッツロードが苦笑して立ち去る
【 テキスツの町 】
テキスツの町へ到着したザッツロードは ラナとセーリアを人づてに探す 辿り着いた先 建物の中 医務室のベッドにセーリアが横になっている 隣にいるラナがザッツロードに気付いて言う
「ザッツ!ソニヤから聞いたわっ 旧世界の宝玉が2つ壊れてしまったって!?」
ザッツロードがラナの下まで行って言う
「うん、でも宝玉は大丈夫だ ガルバディア国王が修理して下さっているから あ、これ、片方先に」
言いながら宝玉をラナへ手渡す ラナがホッと胸を撫で下ろして 受け取って言う
「なら良かったけど… 聞いた時は 本当に驚いたんだから」
ザッツロードが苦笑して言う
「うん、ごめん… それより セーリアは?」
ザッツロードの言葉にセーリアが顔を向けて言う
「私は大丈夫よ、ごめんなさい ちょっと無理をしただけだから」
セーリアの言葉にラナが溜め息を吐いて言う
「ちょっと所じゃないわよ、セーリアったらこの5日間 毎日宝玉の起動に加わっていたんだから 私には休めって言っときながら」
ザッツロードがセーリアへ向いて言う
「え?そうだったのか 無理をさせて ごめん、セーリア」
セーリアが微笑んで言う
「ザッツも皆も頑張っているのだもの、私もってね?でも自己管理も出来ないんじゃ いけないわよね」
ラナが息を吐いて言う
「そーよ!後は私たちに任せて セーリアは休んでなさいっ」
ラナがザッツロードを連れて医務室の外へ向かう ザッツロードが慌ててセーリアへ声を掛ける
「あのっ それじゃっ お大事に!」
ザッツロードの言動にセーリアが軽く笑って頷く
外へ出たザッツロードとラナ ラナがザッツロードへ振り返って言う
「それで?」
ラナの言葉にザッツロードが疑問する
「え?」
ラナがザッツロードに詰め寄って言う
「ザッツ、何か隠してるでしょ?」
ザッツロードが驚いて言う
「えぇええ!?い、いや そんな事無いけど?」
ラナが腕組みをして顔を背けて言う
「嘘おっしゃい!顔に書いてあるわ 『困ってます迷ってます』ってね?」
ザッツロードが苦笑しながら言う
「いや、その… 確かに ちょっと戸惑ってはいるけど だ、大丈夫だよ?」
ラナが体勢を戻して言う
「それじゃ、何に戸惑ってて 何に大丈夫なのかしら?」
ザッツロードが思わず言う
「う…っ」
ザッツロードが焦る ラナが呆れて言う
「ザッツ?私たちは今 離れて行動しているけど 仲間である事は変わらないのよ!?ザッツは その私たちを 信じられないのかしら?」
ラナの言葉に ザッツロードがハッと気付いた後 間を置いて微笑んで言う
「そうか 分かった… ありがとう、ラナ お陰で 迷いは無くなったよ!」
ザッツロードの言葉にラナが疑問して言う
「え?」
ザッツロードが微笑んで背を向けて言う
「ラナ、宝玉の起動とセーリアを よろしく!」
ラナが驚き慌てて声を掛ける
「ちょ、ちょっと!?ザッツ!」
ザッツロードが走り去る ラナがザッツロードの背に叫ぶ
「一体 何が分かって 何の迷いが無くなったのか 説明しなさいよーっ」
【 ローレシア城 】
ザッツロードはキルビーグの下へ行き言う
「父上!旧世界へ行ったら 私は何をするべきなのかを 詳しく教えてください!」
ザッツロードの言葉に キルビーグが呆気に取られつつ言う
「あ、ああ… それはもちろんだが 宝玉の方はどうなのだ?」
ザッツロードがキルビーグの前へ立って言う
「宝玉の起動も、修理も 皆が 必ず間に合わせてくれます!私は その皆を信じて 自分のやるべき事をします!」
ザッツロードを見上げていたキルビーグが 間を置いて微笑み言う
「そうか、分かった 私もお前の仲間たちを信じ お前に この先行うべき事を 伝えよう」
ザッツロードが微笑み頷いて返事をする
キルビーグが機械室のモニターに表示をさせながら言う
「私も実際に行った事は無い 従って 全て情報のみの話となってしまうが 旧世界の宝玉を全て起動させた後 お前達はそれを持って この場所から旧世界へ向かう事となる 転送はこの機械室の装置で行える」
キルビーグが機械を操作して 転送装置を見せる ザッツロードがそちらへ目を向けていると キルビーグが続きを話す
「転送は次の通信の日時 2日後の今頃になるだろう お前たちはここから旧世界の民が居る場所へと転送され そこでお前たちを待っている旧世界の民と出合うだろう 向こうはお前たちが来る事を 想定して居ない可能性もある為 驚かれるやもしれんが 宝玉を持って来たのだと伝えれば問題ない 彼らはお前から宝玉を受け取り 悪魔力中和装置を起動させるだろう 装置の効力が旧世界全土へ行き渡るまで どの程度の時間が掛かるかは分かりかねる だが、お前達は次の通信の日に連絡を入れて欲しい 旧世界の民と共に 旧世界で戦いを開始するのか もしくは一度ガルバディアで作られるロボット兵を取りに戻るか」
キルビーグの言葉にザッツロードが問う
「ガルバディアのロボット兵は いつごろ完成するのでしょう?」
キルビーグが顔を横に振って言う
「当初はソルベキアを攻略すれば 数は少なくともお前たちが向かう次の通信時には 送る事が可能では無いかとの話であったが…」
ザッツロードが言う
「アバロンはソルベキアを攻略しました 当初の予定通りになるのでは?」
キルビーグが1つ息を吐いて言う
「だが、あの日以降 ヴィクトール13世殿とバーネット殿との連絡が繋がらなくなってしまった ザッツ、お前は彼らと連絡を取り次いでいるのか?」
ザッツロードが驚いて言う
「え!?父上は御存知無いのですか!?アバロンからの そちらの連絡は!?」
キルビーグが少し驚いて言う
「ヴィクトール14世皇帝陛下とは連絡を続けている だが、ソルベキア攻略時にバーネット殿が重症を負い、ヴィクトール13世殿も軽症ながら怪我を負ったと言う話しか聞き及んでいない 私としても重症と言うバーネット殿とは無理としても ヴィクトール13世殿とは 何とか連絡を取りたいと思っているのだが」
ザッツロードが戸惑い視線を落とす キルビーグが首を傾げながら言う
「ヴィクトール14世皇帝陛下からは 計画に支障は無く 旧世界 新世界 共に今まで通りの計画で行くと?…まぁ、私が出来る事は 旧世界との橋渡し程度だ 余り意見を言える立場では無いのだがな?」
ザッツロードが一度目を閉じてから再びキルビーグへ視線を向けて言う
「では、私がヴィクトール13世殿と 直接 お話をして参ります それで…」
ザッツロードの言葉にキルビーグが頷き言う
「うむ、よろしく頼む ガルバディアのロボット兵が どうなるのかが一番の問題にもなりかねん そして あちらへ向かったお前達は旧世界の民たちを守り抜いて欲しい 旧世界では人々が武器を持って戦う事を 長きに渡り行っていなかったとの事だ 旧世界の機械兵との戦いはもちろん、旧世界の魔物とも 彼らは戦う術を持たない 旧世界に既に送ってある聖魔力の結界だけが 今は彼らを守っている」
ザッツロードが間を置いて言う
「…もし、ガルバディアのロボット兵が 予定より遅くなった場合は?」
キルビーグが頷いて言う
「その時は 悪魔力が中和された旧世界において 既に悪魔力に制御を乗っ取られている機械兵らの攻撃を防ぐ為に こちらから聖魔力の供給を行い 彼らを守る結界を保持するしかない 旧世界に蔓延している機械兵の数は計り知れない お前達だけではその全てを倒す事は不可能だからな」
ザッツロードが再び問う
「こちらからの聖魔力の供給は 再びアバロンを頼る形で?」
キルビーグが首を傾げて言う
「うむ、そのつもりだが… 何か問題でもあるのか?前回の結界の島を中和するほどの量ではなく 数回に分け各国の宝玉や魔力穴から 聖魔力を抽出して得られる量であっても賄う計算だ それに、その程度ならば 過去と同様に このローレシアであっても可能な事であるしな?」
ザッツロードが視線を強めて言う
「では、いざと言う時は ローレシアで対処する事が 可能なのですね?」
ザッツロードの言葉に キルビーグがザッツロードの顔を見つめ 間を置いて言う
「ああ、可能だ」
ザッツロードが頷き出口へ向かう キルビーグが問う
「ザッツ?」
ザッツロードが立ち止まり 振り返って微笑んで言う
「ヴィクトール13世殿の お見舞いに行って参ります」
【 アバロン帝国 】
ザッツロードが ヴィクトール14世の前に跪いて言う
「旧世界の宝玉は 期日までに間に合うと思われ 私はそれを持ち ローレシアより旧世界へ向かいます」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷いて言う
「そうか、それは何よりだ ザッツロード王 貴公の働きに期待している」
ヴィクトール14世の言葉にザッツロードが顔を上げて言う
「それで、ヴィクトール14世皇帝陛下 ガルバディア国で行う予定のロボット兵の方は そちらも予定通りに進みそうでしょうか?」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が間を置いてから言う
「うん、そうなるだろう」
ザッツロードがヴィクトール14世を見つめて言う
「ロボット兵製作は バッツスクロイツも協力するとの事でしたが 現在はどの辺りまで進んでいるのでしょうか?計画がこのまま進めば ロボット兵が必要になるまでに あまり時間はありません ローレシアへもご連絡を頂きたいのですが」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷いて言う
「分かった、連絡を入れさせよう」
ザッツロードが再びヴィクトール14世を見つめる ヴィクトール14世が目を逸らす ザッツロードが僅かに表情をしかめて言う
「ヴィクトール14世皇帝陛下 ヴィクトール13世様に面会をしたいのですが」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が視線をザッツロードへ戻して言う
「彼は現在 静養中だ 面会は控えて貰いたい」
ザッツロードが身を乗り出して言う
「旧世界… いえ、新世界も含めた 全ての世界を救う事が我々の目標でした もうすぐその片方である旧世界が救われる時が来る筈ですっ 私はその旧世界へ行く前に 今まで共に戦ったヴィクトール13世様に お会いしたいのです!」
ヴィクトール14世が視線を強めて言う
「では尚更 今は会うべきでは無い 貴公を彼に会わせ その覇気を失わせる訳には行かないのだ」
ザッツロードが微笑んで言う
「私には共に戦う仲間がいます 覇気を失う事はありません!例えヴィクトール13世様が 昔の戦意を失っておられても その彼にこそ 私は報告したいのです!」
ヴィクトール14世が間を置き 1つ息を吐いてから言う
「…分かった、面会を許可する だが、私には 貴公の話で 彼を救えるとは思えない」
ザッツロードが軽く微笑み 敬礼して立ち去る
兵の案内を受け 一室のドアまで案内される ザッツロードがノックをして声を掛ける
「ヴィクトール様 ザッツロードです どうかお話を!」
返事は無い 控えの兵が扉を開ける ザッツロードが室内へ入る 室内では椅子に座ったヴィクトール13世が窓の外を見ている ザッツロードがその横に立って言う
「ヴィクトール様、旧世界の宝玉が もうすぐ全て起動されます 私はそれを持って旧世界へ行き 旧世界の悪魔力を中和させます その後には 既に悪魔力に侵された機械兵や魔物との戦いが待っていますが それでも 我々は それらの者から 旧世界の人々を守り 旧世界を完全に悪魔力の脅威から救う事が出来ます」
ザッツロードが言葉を終えヴィクトールの反応を待つ ヴィクトールが言う
「そう… それは 良かったね…」
ヴィクトールは窓の外を見ている ザッツロードが言う
「ヴィクトール様…」
ヴィクトールが微笑して言う
「今日は… 良い天気だね… アバロンは 昨日は雨が降っていたんだよ… 雨の日は ベネテクトへ通信を送るんだ 運が良ければ 東の大陸にも雨が降っていて ベネテクト城の建設作業が中止される …その時なら 彼が返信をくれるんだ 他の日はダメだって… 俺はお前と違って忙しいって… でも アバロンが雨の日は いつも返信が来るんだよ… 不思議だよね 向こうは こっちの 半分くらいしか 雨は降らないのに」
ザッツロードがヴィクトールの視線の先を見る 遠くにアバロン運河が見える ザッツロードが間を置いて言う
「こちらの新世界も リーザロッテ女王たちが 悪魔力の霧を追い払う機械を作り上げると言っていました その後には やはり既に魔物化している者との戦いがあると思いますが それも全て終われば これで、どちらの世界も完全に救われます ヴィクトール様やバーネット様がやろうとしていた 両世界を救う事 それが達成されます これもヴィクトール様やバーネット様が… ずっと戦い続けてきた結果です きっとバーネット様も… 喜んでくれますよ?」
ザッツロードが微笑んでヴィクトールを見る ヴィクトールは窓から視線を離し 自分の前にあるテーブルを見つめて言う
「僕は いつも… 彼がアバロンに来るのを 待っていたんだ… 次に彼が来るまでの間 泣かずに居たら その次もまた… アバロンへ 遊びに来てくれるって… だけど、その反動で 彼が来た時には いつも泣いてしまうんだ… おかしいよね?嬉しいのに いつも泣いてばかりだ でも しょうがないから 俺が居る時は 泣いても良いって… ザッツロード 僕はね?ただずっと… 彼と遊んで居たかっただけなんだよ 世界を救う事なんて きっと… 本当は どうでも良かったんだ 彼と2人で… ずっと遊んで居たかっただけなんだよ ごめんね… 君たちまで 巻き込んでしまって…」
ザッツロードが一瞬呆気に取られた後 間を置いて言う
「…王様は皆 同じですね ガルバディア国王も そうでした 自分の勝手に皆を巻き込んでしまったと… でも、僕らは ガルバディア国王にもヴィクトール様にも たくさん助けて頂きました だから、後は僕たちに任せて下さい」
ヴィクトールがザッツロードへ顔を向けて微笑んで言う
「ザッツロード… 君は 強いね… きっと… 君と一緒に 遊んでくれる人が居るから… でも… 僕は もう ダメだよ…」
言い終えると共に ヴィクトールが涙を流して俯き 手に持っていたバーネットの鞭を抱き テーブルに身を伏せて泣く ザッツロードが悲しそうに言う
「ヴィクトール様…」
ザッツロードが部屋を後にする
【 ガルバディア城 】
ザッツロードがガルバディア城へやって来て 玉座の間へ至る道を進んでいくが 途中で側面の壁の扉が開く ザッツロードが驚き顔を向けて言う
「あれ…?確か こっちは…」
ザッツロードが辺りを見渡してから 足元の床に傷のある側面の通路へ向かう 辿り着いた先 ガルバディア国王の部屋の扉が開いている ザッツロードが驚いて走って向かう 扉の前に辿り着き 室内を見ると ガルバディア国王の眠る機械の上にヘクターが座っている ザッツロードが驚いて言う
「ヘクター!?」
ヘクターが閉じていた目を開いて言う
「よう」
ザッツロードが慌てて 指差して言う
「ヘクターっ!?なっ ななななっ!?何をやってるんですかっ!?」
ザッツロードの慌て様に ヘクターが笑って言う
「何って?ガルバディア国王が寂しくねー様に 付き添ってやってるんじゃねーか?」
ヘクターが言い終えると ヘクターの隣にガルバディア国王のホログラムが現れて叫ぶ
『誰が付き添いなど頼んだのだっ!?お前が周囲の機械類を 破壊したりしないかと 心配で心配で作業が はかどらんわっ!!』
ザッツロードが慌て困りながらヘクターへ向かいつつ言う
「ヘクターっ!ガルバディア国王の邪魔をしないでくれ!君だって 宝玉の作業が終ったら 次に君のウィザードへの …うわっ!」
ザッツロードが足下の配管を一本足に引っ掛けて転ぶ 外れた配管から勢い良く水が吹き出す ガルバディア国王が悲鳴を上げる
『あぁああーーーっ!!』
ザッツロードが焦る ヘクターが駆け付けて配管を戻す ガルバディア国王がザッツロードを指差して叫ぶ
『貴様は2度と入るなぁっ!!』
ザッツロードが焦って部屋の外へ出る
「わわわっ す、すみません!」
ガルバディア国王がヘクターへも指を指して言う
『ついでにお前も出ていけー!』
ヘクターが一息吐いて 元の場所へ戻って言う
「やっぱり デスの世話は俺の役目か?」
ヘクターが笑顔を見せる ガルバディア国王がヘクターへ向き直って言う
『お前も出ていけと 言っとるんだ!』
ヘクターがニヤニヤ笑って言う
「またまたー!デスはやっぱり元も子も 素直じゃねーなー?」
ガルバディア国王が怒って言う
『う、うるさいっ!お前にデスとは 呼ばれたく無いわ!それに『元も子も』の意味が違う!』
ザッツロードが呆れる ヘクターが一切の悪気の無い笑顔を見せる ガルバディア国王がわなわな怒る ザッツロードが言う
「ヘクター、本当に 宝玉が間に合わなかったら困るんだ!取り返しが付かなくなる前に 君もこちらへ」
ヘクターが軽く笑って言う
「あー それなら心配ねーよ?さっき本人が言ってた」
ザッツロードが疑問してガルバディア国王の本体とホログラムへ交互に視線を向ける ヘクターが呆れて言う
「いや、本体は喋れねぇから?」
ガルバディア国王がボソッと言う
『素か?』
ヘクターが答える
「たぶん」
ヘクターが改めて言う
「お前の依頼である宝玉の修理は もうすぐ終るってよ?予定より半日ぐれー早いって」
ザッツロードが表情を明るめて叫ぶ
「ほ、本当ですか!?ガルバディア国王!!」
ガルバディア国王が微笑して言う
『ああ、本当だ』
ザッツロードが微笑む ヘクターが笑んで言う
「だろ?ほらな?やっぱり、俺が付き添ってやったからー」
ヘクターがニヤニヤ笑う ガルバディア国王が怒って言う
『お陰で心配で心配で 夜も休まれず 作業が出来よったわっ!』
ザッツロードが苦笑しながら言う
「でも、良かった… 本当は 少し心配していたんです …色々 信じるって決めたのに…」
ザッツロードがその場に腰を下ろす ヘクターが微笑んで言う
「信じるって 言葉で言ってもよ?難しいもんだからな!ま、俺らは得意だけどよ?」
ガルバディア国王がヘクターを見下ろして言う
『アバロンの民は 昔からその想いが他国の者に比べ強い だが それ故に 一度それを失うと 立ち直るのに時間を有する』
ザッツロードが微笑んで言う
「きっとヴィクトール様も 今はその時間に在るのでしょうね」
ヘクターが苦笑して言う
「ああ …とは言っても あいつの場合は 立ち直れるか 分かんねーけどな?」
ザッツロードがヘクターへ視線を向ける ヘクターが続ける
「あいつは昔っから あーだからよ?ガキの頃から変わんねーんだよ 二言目にはバーネット、バーネット… まぁ先代ヴィクトール12世の頃から そうだったらしいけどよ?」
ガルバディア国王が言う
『…そのヴィクトール12世と 同じ運命を歩まぬ事を 願いたいものだ』
ザッツロードがヘクターへ問う
「ヴィクトール12世と同じ運命とは?」
ザッツロードの問いに2人が視線を逸らす 間を置いてヘクターが言う
「…で?所でお前、仲間たちが宝玉の起動をやってんだろ?こんな所で俺らと世間話なんかしてて良いのかよ?」
ザッツロードが苦笑して言う
「僕は皆の所に居ても 宝玉の起動を手伝えないので」
ヘクターとガルバディア国王が一度顔を見合わせてから ヘクターが言う
「あのなー?いくら仲間を信じるっつったって 傍に居るのが一番なんだぜ?まぁ 仕方ないって時は 信じる気持で乗りきるってのもあるけどよ?居られる時は一緒に居るのが一番だぜ、な?」
ヘクターがガルバディア国王へ顔を向ける ガルバディア国王が焦って言う
『お前の場合は 単なる睡眠妨害だろう!?』
ザッツロードが微笑んで言う
「そうなんだ…?そんなに無理をしなくても 良いものなのですね?」
ザッツロードの言葉に ヘクターとガルバディア国王が振り向いて笑う ザッツロードが軽く笑って立ち上がり言う
「仲間たちの様子を見てきます もしかしたら 僕にも何か手伝える事があるかもしれない」
ザッツロードの言葉にガルバディア国王が言う
『付き添いなら 邪魔にならぬ 最良の場所で行う事が好ましい』
ザッツロードが笑い ヘクターが苦笑する
【 キャリトールの町 】
町に入ると 町の様子がいつもと違う ザッツロードが驚いて魔力者たちの下へ走り向かう 辿り着いた先 町の人々が皆で魔力者たちを取り囲み祈りを捧げている ザッツロードが呆気に取られて 皆の中心に居る魔力者たちを見る ソニヤとラナとセーリアを含む 最上級魔力者が一同に集まり 1つの宝玉を起動させている ザッツロードが驚き立ち尽くす そこへ 過去ザッツロードへ名を聞いてきた魔法使いが現れて言う
「キャリトールとテキスツに分かれていた 最上級魔力者たちが 集まったのです もう5人では 起動作業が出来ないほどに 皆 衰弱してしまっていて しかし それを知った町の人々が彼女らの魔力を調整する事を 手伝ってくれるようになりました お陰で13人の最上級魔力者たち 全員の魔力で宝玉の起動を行えるのです!」
魔法使いが顔を向け嬉しそうに微笑む ザッツロードが呆気に取られて言う
「すごい… 町中の人々が 皆で宝玉の起動を…」
魔法使いがザッツロードの手を引いて言う
「さぁ!ザッツロード陛下も是非!彼女たちに力を お貸し下さい!」
魔法使いがザッツロードの手を引いて 最上級魔力者を取り巻く人々の中へ連れて行く ザッツロードが困惑しながら言う
「あっ いや…っ 僕は…」
魔法使いが手を離し 一度ザッツロードへ笑顔を向けた後 祈るように魔力を集中させ 魔力調整を手伝う ザッツロードが一度彼女を見てから 辺りを見渡して頷き 自分もそれに加わる
宝玉の起動作業が終盤に掛かった頃 ザッツロードの前にガルバディア国王の後姿のホログラムが現れる ザッツロードが驚き 慌てて声を静めて言う
「…ガルバディア国王、宝玉が?」
ザッツロードの言葉に ガルバディア国王が体の向きをザッツロードへ向けて言う
『完了した』
ザッツロードが表情を明るめて言う
「では、すぐに…っ」
ザッツロードの言葉にガルバディア国王が微笑して言う
『その必要は無い』
ザッツロードが疑問する ガルバディア国王のホログラムが消える ザッツロードが驚き辺りを見渡すと後ろ頭に宝玉がぶつけられる 思わず声を上げそうになったザッツロードが 頭を押さえながら振り返って言う
「…っ オライオン!?」
ザッツロードの後ろにオライオンが軽く笑って立っている その後ろからシュライツが現れて奇声を発して喜ぶ ザッツロードが微笑んで言う
「ありがとう、宝玉を持って来てくれたんだね?シュライツも?」
オライオンが笑顔で言う
「ああ、親父の様子を見に言ったら 押し付けられた …あ、後 ガルバディア国王から伝言で『お前との約束は果たした』だってよ?」
オライオンの言葉にザッツロードが苦笑し 宝玉を受け取りながら言う
「うん 分かった、やっぱりガルバディア国王は 約束を守って下さる方だったんだ」
ザッツロードの言葉にシュライツが喜ぶ 周囲の人々が声を上げる ザッツロードが驚いて視線を向ける ソニヤが起動させた旧世界の方玉を手に取って 皆に笑みを向けている ザッツロードが微笑む ソニヤがザッツロードとオライオンに気付いて 笑顔で駆けつける ザッツロードがソニヤへ向き直ると ソニヤが立ち止まって言う
「ザッツ!来てくれてるって 分かってたわよ!」
ザッツロードが驚いて言う
「え?本当に?」
ラナがやって来て言う
「あら、最上級魔力者を あまり舐めて貰っては困るわよね?」
ザッツロードが一度驚き苦笑して頭を掻く セーリアがやって来て微笑む ザッツロードがセーリアへ向いて言う
「セーリア、大丈夫なのかい?」
セーリアが頷いて言う
「ええ、心配を掛けてごめんなさい 私も皆を信じて ちゃんと休みを取るべきだったわ」
ラナが両手を腰に置いて怒って見せる セーリアが苦笑して見せる ソニヤが微笑む ザッツロードが一度視線を落とし すまなそうにオライオンから受け取った宝玉を持つ手を差し出して言う
「それで… せっかく今 終わらせた所に 言い辛いんだけど これを…」
ザッツロードの言動に ソニヤたちが顔を見合わせて笑い ソニヤが言う
「もう!ザッツってば 全然分かって無い!」
ラナが腕組みをして言う
「いつになったら私たちの事 本気で信じてくれるのかしら?」
セーリアが苦笑して言う
「ザッツの場合は 信じているいないに関わらず 照れ屋さんなだけなのよね?」
ザッツロードが呆気に取られて言う
「え?えっと…?」
ザッツロードの言葉にソニヤがザッツロードの持つ宝玉を奪い取り 掲げて言う
「みんなー!最後の一個よー!」
ラナが続けて言う
「皆の力を もう一度だけ 貸して頂戴!」
セーリアが2人の後ろで微笑む ザッツロードが驚いて3人を見る 町の人々がソニヤたちに注目してから わっと歓声を上げる ソニヤたちが顔を見合わせ微笑んでから ザッツロードへ向いて ソニヤが言う
「皆が手伝ってくれるって もっと自信持って 信じなきゃ!」
ラナが微笑んで言う
「そう言う事よ!」
セーリアが微笑んで言う
「ザッツなら 今度は出来るわよね?」
ザッツロードが皆の言葉に笑って言う
「う、うん 頑張るよ」
ザッツロードの言葉に3人が笑う ザッツロードが苦笑する
最上級魔力者たちが宝玉の起動を開始する 周囲を囲う人々が魔力の調整の手助けを開始する ザッツロードが皆を見渡してから ソニヤたちを見て 自分も魔力の調整に加わる オライオンとシュライツが皆から離れて見ている オライオンがシュライツへ顔を向けて言う
「お前も加われよ?俺は魔力なんか全然無いから無理だけど お前なら かなり手助けになるんじゃねーのか?」
オライオンの言葉に シュライツが奇声を上げながら身振り手振りで何かを伝える オライオンが頷きながら翻訳する
「うんうん、自分は?皆とちょっと違うから?むしろ調整を 破壊しちゃう?…でも頑張る!? あわわっ お前は俺と一緒に見学っ!」
オライオンが慌ててシュライツを羽交い絞めにする シュライツが奇声を発して不満を表す オライオンが顔を横に振って否定する
オライオンが腕組みをして 皆を眺めている 皆が力を抜く オライオンが疑問する 最上級魔力者たちが脱力して地に手を付く オライオンがハッとして向かおうとするが ザッツロードがその前に辿り着き 膝を着きそうになったソニヤを支える ソニヤがザッツロードへ顔を向けて言う
「ザッツ、終ったよ!ほらっ!旧世界の宝玉を全部持って ローレシアへ!」
ザッツロードが心配そうな顔で言う
「し、しかし…」
ラナがザッツロードへ宝玉の入った袋を押し付けて言う
「折角 皆で頑張ったんだから!貴方が繋がなきゃダメでしょ!?」
セーリアがザッツロードへ向いて言う
「私たちも 可能な限り急いでローレシアへ向かうわ」
ザッツロードが頷いて言う
「分かった、皆 ありがとう!この宝玉で 必ず旧世界の人々を救うよ!」
皆が頷く ザッツロードが頷く オライオンとシュライツが来て オライオンが言う
「ローレシア城に行くんだな!?俺らも付いてくぜ!」
オライオンの言葉にザッツロードが頷き シュライツの移動魔法でローレシア城へ向かう
【 ローレシア城 】
ザッツロードたちが機械室へ向かう 機械室には既にキルビーグが準備を整えている キルビーグがザッツロードの姿を確認すると 思わず椅子から立ち上がって言う
「ザッツ!待っていたぞ!」
ザッツロードがキルビーグへ向いて言う
「はいっ!父上!皆が間に合わせてくれました!」
ザッツロードがキルビーグの下へ行って 宝玉の入った袋を見せる キルビーグが頷いて部屋の中心にある ローレシアの宝玉を指差して言う
「さあ!宝玉の近くへ!すぐに転送作業を開始する!」
ザッツロードが頷き ローレシアの宝玉の下へ行く オライオンが行くべきかを悩む ザッツロードがオライオンへ向いて言う
「オライオン!皆に伝えてくれ!旧世界との次の通信の時 僕から連絡を送る それまで待っていてくれと!」
ザッツロードの言葉にオライオンが笑顔で頷いて言う
「おうっ!伝えるぜ!その 次の通信 って時までは 1人かもしれねぇけど 頑張れよな!!」
オライオンの言葉に ザッツロードが自信を持った笑みを見せて言う
「僕は1人では無いよ!オライオン、君や ソニヤやラナやセーリア リーザロッテ女王たち 他にもたくさんの仲間が僕には付いている!僕は皆を信じているんだ!」
オライオンが笑んで言う
「ああ!俺の親父やガルバディア国王も付いてるぜ!」
シュライツが奇声を発して怒る オライオンが振り返ってから ザッツロードへ言う
「こいつの名前言い忘れてるってよー?」
シュライツが怒る ザッツロードが笑って言う
「ごめんごめん!シュライツ 君も もちろんだよ!」
シュライツが笑顔で頷く キルビーグがザッツロードへ向いて言う
「ザッツ!旧世界の民へ伝えてくれ もう何も心配はいらないと!」
ザッツロードがキルビーグへ向いて言う
「はいっ!ローレシア帝国皇帝陛下!必ずっ!!」
ローレシアの宝玉が白く光る オライオンとシュライツが眩しそうに光から目を守る 光が消え オライオンが顔を向けた先 ザッツロードの姿が消えている オライオンがザッツロードの居た場所へ向かい 周囲を見渡す キルビーグがモニターへ視線を向けて言う
「うむ、成功だ これで旧世界は悪魔力から救われる!…我ら旧ローレシア帝国の肩の荷も下りると言うものだ」
オライオンがキルビーグの近くへ行き モニターを眺めて言う
「旧世界か… 一体どんな所なんだろーな?」
オライオンの後ろでシュライツが首を傾げる キルビーグが微笑み言う
「ザッツが持って行った 宝玉の力を得て 旧世界の悪魔力が中和されれば いずれ我々も向かい そこに残る魔物や機械兵と戦う事となるだろう お前も我々と共に戦うか?オライオンとやら?」
キルビーグの言葉に オライオンが口角を上げて言う
「ああ!それも良いな!」
オライオンの返答にキルビーグが微笑み モニターを見上げて言う
「一週間後には ザッツや旧世界の民たちから連絡が来る 我々はそれまでに 可能な限りの準備を整えておかなければ」
オライオンが軽く笑って言う
「1週間か、んじゃ またその頃に来るぜ!」
オライオンと共にシュライツが同意の奇声を上げる キルビーグが微笑んで言う
「ああ、貴殿らの戦いはこれからだぞ?」
1週間後――
オライオンが キルビーグへ声を掛ける
「約束の1週間後だぜ?旧世界はどうなったんだ?」
オライオンの言葉にキルビーグが微笑んで言う
「ははっ まぁそう焦らんでくれ 通信が繋がるのはもう少し後だ」
オライオンがキルビーグの近くへ来る キルビーグが機械を操作しながら オライオンへ言う
「ところで、オライオン 貴公はバッツスクロイツと言う者を知らぬか?彼と連絡を取りたいのだが…」
キルビーグの言葉にオライオンが思い出したように言う
「ああ、そう言えばバッツが言ってたぜ?…旧世界の事は任せたって」
オライオンの言葉にキルビーグが手を止め 顔を上げて言う
「それは どう言う意味だ?」
オライオンが両手を頭の後ろに回して言う
「あいつさー 元の世界に帰っちまったんだよ リーザロッテたちが作った機械に怒ってさ?」
キルビーグが驚いて言う
「な!?帰ってしまっただと!?どう言う事だ!?彼が居らねば ガルバディアと共に作る予定であったロボット兵が!?」
キルビーグがオライオンへ掴みかかって言う オライオンが困った表情で言う
「俺に言われてもなー?とにかく あいつは あの聖魔力圧縮装置で 悪魔力の霧を遠くの風に乗せるのはダメだってさ?そうすると その風に乗って たくさんの悪魔力の霧が」
画面が切り替わり バッツスクロイツが自分の世界を見下ろして言う
「…ち くしょ… 間に 合わなかったっ…!」
バッツスクロイツが地に手を着いてうな垂れる
オライオンの声がする
「全部 あいつの国へ流れちまうから あいつの国にある色んな機械が 悪魔力に侵されちまうってさ?それを防ぎに戻ったんだよ」
キルビーグが言う
「そうであったのか…っ では… 仕方が無い バッツスクロイツの協力は諦め 我らだけでロボット兵の製作を進めなければならないと言う事 …何故こちらに連絡が来なかったのだ!?ヴィクトール14世皇帝陛下は何も仰らなかった ヴィクトール13世殿からも依然連絡は来ない… 一体どうなっているっ!?」
キルビーグの言葉にオライオンが首を傾げて言う
「あれ?知らねーのか?ヴィクトール13世は…」
画面が切り替わり 崖の上 バーネットの墓石の前に立つヴィクトールが言う
「バーネット… ザッツロードたちが 世界を救ってくれるって… 僕たちの遊びは もう 終ってしまうね?」
ヴィクトールが涙を流して言う
「でも 良いよ… 君が居ないんじゃ… やっぱり つまらないよ…」
ヴィクトールが崖の淵へ背を向け バーネットの墓石に向き 両手を広げ微笑んで言う
「ねぇ バーネット?新しい遊びを始めようか?今度は何をしよう?世界を救う次は 世界を… 滅ぼすって言うのは?この世界を 闇の世界へ… なんてね?それも面白いかもね?バーネット… 僕はもっと 君と一緒に 遊びたいんだ…」
ヴィクトールが言い終えると共に 後ろに倒れ 崖の下へ落ちて行く
キルビーグが目を見開き言う
「なんと…っ ヴィクトール13世殿が…!?その様な知らせは一切…っ」
キルビーグがオライオンを見上げる オライオンが溜め息と共に俯いて言う
「それに…」
画面が切り替わり ヘクターがウィザードを抱いたまま プログラマーのデスの墓石の前に立っている ヘクターがその場に膝を着く ウィザードの体が溶け ヘクターの手に残ったウィザードの脳が 塵になる ヘクターが両手を地に着いてうな垂れる
画面が切り替わり ガルバディア城 玉座の間 ガルバディア国王のホログラムが閉じていた目を開き 背を向けて消える ガルバディア国王の本体のある部屋の照明が消え 残っていた機械類の光りが全て消える
キルビーグが驚き困惑した様子で オライオンへ手を向けて言う
「で、ではっ ガルバディア国王は!?」
オライオンが言う
「俺の親父との約束が果たせなかったんなら せめて アバロンの王との約束は果たそうとしたらしいけど」
画面が切り替わり アバロン城玉座の間 玉座に座るヴィクトール14世の姿が消え 残った場所に赤いトカゲが残り逃げて行く
オライオンが 視線を落として言う
「ガルバディア国王が俺たちに気付かせてくれたけど 取り逃がしちまってさ?アバロンじゃ今 みんな疑心暗鬼なんだ あんな連中はアバロンの民じゃねぇよ… だから、もし旧世界に行けるんだったら 俺は行くぜ?」
キルビーグが肩の力を落として言う
「何と言う事だ それでは… いや!そうだ!もう1人!?もう1人の勇者はどうした?ツヴァイザー国のリーザロッテ女王だ」
オライオンが首を傾げて言う
「ああ、リーザロッテと連中だったら」
画面が切り替わり シャルロッテが機械の埋め尽くされた場所に座り込んでいる モバイルPCのタイピングを行いながら言う
「フフフ… この…プログラムを使えば…」
言い終えると共にシャルロッテの身体を 数字の羅列が覆い 次の瞬間 リーザロッテの姿になったシャルロッテが立ち上がって言う
「す、すごいっ 凄いわ!これで私は リーザロッテよ!!」
リーザロッテの姿になったシャルロッテが高笑いする その近くをトカゲが通る
画面が切り替わり リーザロッテの前にレイトとヴェインが倒れている リーザロッテが後ずさって言う
「ロイ… どうして…?どうして貴方が!?」
ロイが両手に持った銃をリーザロッテへ向けて言う
「…俺は スプローニ国の兵 敵を倒すのに 理由は不要」
銃声が響く
キルビーグが俯いたまま言う
「何と言う事だ…っ 折角リーザロッテ女王らの力で この大陸から悪魔力が払われたと言うのに スプローニとツヴァイザーが戦争を始めたというのかっ!?」
オライオンが溜め息を吐いて言う
「戦争を始めたのはその2国だけじゃ無いぜ?ツヴァイザーが落ちたって聞き付けた シュレイザーのアンネローゼ女王が ツヴァイザーの友好国であったベネテクトと一緒にスプローニへ仕返しに行ったんだけどよ?」
キルビーグが顔を上げて言う
「シュレイザーとベネテクトが スプローニへ侵略したと言うのか!?」
オライオンが頷いて言う
「ああ、けどシュレイザー国には軟弱な兵しか居ないから 土壇場でぼろぼろ逃げてって… 残った騎士も」
画面が切り替わり シュレイザー国 ベーネットがアンネローゼの前に居る
ベネテクト国の兵によりヴェルアロンスライツァーの遺体がアンネローゼの下に運ばれる アンネローゼが目を見開く ベーネットが何かを言って その場から立ち去ろうとする ベーネットがアンネローゼへ背を向けると ベーネットの体からヴェルアロンスライツァーの長剣が突き出る ベーネットが自国の兵と共に自分の背後を見る そこにはアンネローゼが極度の緊張に息を切らせながら ベーネットの背に ヴェルアロンスライツァーの剣を突き刺して息を切らせている
「…はぁ…はぁ…っ」
ベーネットがアンネローゼの姿を確認し声を絞り出す
「て…めぇ……」
アンネローゼがを上目使いにベーネットを見て言う
「よくも…っ 私のっ 愛する人を…っ!」
言い終えると共に引き抜かれた長剣 べーネットの口から鮮血が吐き出され 膝を付く 傷口からも大量の出血が起き べーネットは倒れる 周囲にどよめきが起こる 未だ息を荒くしていたアンネローゼが その息を整えて言う
「この者を 我らの国から追い出せ!」
キルビーグが頭を抱えて言う
「何と言う事…っ もはや 我らと共に戦った者たちは 残って居ないのか…?」
キルビーグの言葉にオライオンが溜め息を吐いて言う
「オマケにロキの墓にずっと付き添ってたロスラグも」
画面が切り替わり ロキの墓石の横に寄り添っているロスラグが そのまま眠る様に死んで行く
オライオンがキルビーグを見下ろして言う
「みんな綺麗に全滅だ 分かっただろ?もう誰もローレシアに手を貸してくれる奴は居ないんだ」
キルビーグが顔を上げて言う
「分かった、この新世界こそ もはや終わりなのだ 我々は旧世界に生きる事となる 何と言う事か… 助けるつもりが 助けられる事になるとは…」
オライオンが腕組みをして言う
「それじゃ、俺を旧世界に送ってくれ 向こうからの連絡はまだ来ないのか?」
キルビーグが気を取り直し機械へ向き直って操作をして モニターを見ながら言う
「ああ、まだ来て居ない だが今なら向こうも通信の聖魔力を繋いでいる時間だ 貴殿から聞いた話をザッツへ伝えなければ… そして、新たな策を魔力使いの者たちと練ろう この様な事を 折角旧世界を悪魔力から救った者たちへ伝えるのは心許無(こころもとな)いが… 事実の歴史を隠す事は もうしないと 私は誓ったのだっ」
キルビーグが機械を操作する その後ろでオライオンが軽い表情で言う
「向こうからの知らせは来ないのか… 悪魔力中和装置ほどの物を成功させたら 普通 超特急で知らせるよな?それが来ないって事は…」
オライオンの言葉に キルビーグが振り返って言う
「な、何を言っているのだ!?その様な事 戯言でも許さんぞ!!」
キルビーグの目の前で オライオンがニヤリと笑って言う
「戯言ではありませんよ?キルビーグ陛下…」
言い終えると共に オライオンがキルビーグの背にナイフを刺す キルビーグが驚いて目を丸くする オライオンが笑みを続ける キルビーグが苦しそうにオライオンの腕を掴み言う
「な… 何故… き、貴殿が…っ!?」
キルビーグの言葉に オライオンが姿をスファルツへ変える キルビーグが驚く スファルツがナイフを抜いて言う
「お久し振りです キルビーグ陛下… 新世界の支配は間もなく終りますので 旧世界の様子を伺いに参ったのですが… どうやらその必要も無かったようですね?わざわざ勇者様方の消息を調べ上げて参りましたと言うのに こんなにもあっさりカタが着くとは 少々拍子抜けで御座いました」
キルビーグが床に倒れる スファルツがナイフに付いた血を舐め取り ニヤリと笑って言う
「後はあの魔力者たち… 彼女らに何か出来るとは思いませんが… まぁ、様子を見てみますか?」
スファルツが笑いながら姿を消す キルビーグが手を握り締め身体を持ち上げ 機械の操作盤へ手を乗せ少量の操作をして崩れ落ちる 後方の扉の先にソニヤたちが現れる
画面が切り替わり
ザッツロードが仰向けに寝転がっている 手に持った通信機を眺めて言う
「そうなんだ… 皆… 死んでしまったのだね 父上も スファルツ卿に…」
ザッツロードが言い終えると通信機を持った手を下げ 空を見上げる 天気は晴天 ザッツロードが言う
「ソニヤやラナやセーリア… 大丈夫かな… でも 父上も居ないし バッツも、ガルバディア国王も居ないんじゃ… これでは 旧世界へ皆が来る事は もう出来ない 僕が通信を送っても 返信してくれる人も… いや、受信してくれる人すら 居ないんだろうな…」
ザッツロードが目を閉じてふぅと溜め息を吐く 再び目を開いて空を眺めて言う
「ヴィクトール様… 今なら貴方の気持ちが分かります… 雨が降ったら 僕も通信を送ってみようかな?…ああ、向こうも雨が降って無いと 返信は貰えないんだっけ?はは…」
ザッツロードが立ち上がって周囲を見渡している様子 ザッツロードが苦笑して言う
「でも 送っても受信されないのなら 安心して送れる」
画面が切り替わり
プログラマーのデスが使っていた モバイルPCのモニター
『今日は雨が降っているので通信を送ります こちらは 新世界ローレシア王ザッツロード7世 旧世界の悪魔力は 悪魔力中和装置の起動にて 中和されました 機械が作動されて 既に10日が経過 旧世界の民は 私が到着する3日前に 装置を起動させたとの事 それらの事が今も旧世界に残る機械から判明』
モバイルPCの前に座る人物が続きを声に出して読む
「『旧世界の民は全滅 転送装置も旧世界の機械兵に破壊されました 私が持ち込んだ旧世界の宝玉を使用し この通信を送っています もし誰か受信した人が居るのなら この事実を新世界の歴史に』…?冗談じゃねーっての!」
オライオンがそのまま後ろへ倒れて寝転がって言う
「そんな事したら 友情と慈愛のアバロンの民が 疑心暗鬼で殺し合いしちまったって事も 書き残さなきゃなんねーじゃんか なぁ?シュライツ?」
オライオンの視線の先 シュライツの白い翼が鮮血に染まり オライオンの大剣が刺されている オライオンが溜め息混じりに苦笑し モニターへもう一度目を向けて言う
「こんな歴史なら 残さねー方がマシだぜ!だから… ごめんな、ザッツ?俺もお前も 後は1人きりで 何とかするしかねーみてーだ」
言い終えると共に モバイルPCを閉じようとする モニターにあったザッツロードのメッセージが消え 別のメッセージが記される それを見てオライオンが言う
「うん?なんだ?これ…?」
私の名はデス
世界一の大剣使いヘクターの相棒であり
世界一のプログラマーだ
我々に
不可能は無い
この最悪な歴史を
塗り替えたいと願うのなら
その願い
私のプログラムで
叶えよう
オライオンが自身の瞳にモバイルPCの画面を映した状態で2、3度瞬きをして キーボードへ視線を変える
短い沈黙の後 人差し指でエンターを押す
【 アバロン城 城下町 】
活気のある城下町の一角 鋭く振り下ろされる大剣 アバロンの大剣使いが剣の稽古をしている その人物の後方 何もない空間にプログラムが発生し ホログラムのデスが赤い瞳を向けて言う
「見つけたぞ 私の相棒 世界一の大剣使い ヘクター」
ザッツロードたちが部隊を指揮し、自身らもスプローニ城下町の外へ出る ザッツロードの後方でロスラグが周囲の匂いを嗅いで言う
「…ん?…雨が降るッス」
ザッツロードがロスラグの言葉に振り返り 周囲の空を見上げて問う
「雨?…こんなに良い天気なのに?」
ザッツロードの問いにロスラグがもう一度周囲の匂いを嗅いで言う
「こっちに吹いて来る風に雨の匂いがするッスよ 多分 もうちょっとしたら降って来るッス」
ロスラグの隣に居るロキが銃の確認をしながら言う
「…ベル、もうちょっとではなく もう少し正確な時間は分からないのか?」
ロスラグが再度周囲の匂いを嗅いで確認する ザッツロードが疑問して振り返り ロキへ問う
「ロキ?今の『ベル』って言うのは?」
ザッツロードの問いにロキが顔を向けて答える
「…ベルは …コレの名の一部だ」
ロキの言葉にザッツロードが驚いて声を上げる
「え!?ロスラグの名前の一部!?」
ザッツロードの驚きの声に仲間たちが顔を向ける ロスラグが匂いを嗅ぎ終えて報告しようとする その前にロキがザッツロードへ答える
「…ああ、コレの本当の名はベルグ…」
ロスラグが慌てて言う
「あー!!ロキ隊長!言わないって約束ッス!!最初の二文字で呼ぶって約束ッスよー!!」
ロキが軽く笑う ザッツロードがロスラグへ向いて言う
「え?良いじゃないか 教えてくれたって?」
ロスラグがザッツロードへ向いて叫ぶ
「嫌ッス!ヘボ勇者には 絶対教えたく無いッス!」
ザッツロードが苦笑する
雷雲が立ち込める 遠くに魔物の群れが現れる ザッツロードが剣を構える 隣でロスラグが武器を構えて言う
「なーんで俺がヘボ勇者と組むんッスかー!ロキ隊長と組みたかったッスー!」
ザッツロードが顔を向けずに答える
「ヴェルが居ない分 君の剣が必要なんだ 我慢してくれ」
ザッツロードの言葉にロスラグが表情を明るめて言う
「え!?俺がヴェルアロンスライツァー副隊長の代わりッスか!?そー言う事は早く言って欲しいッス!」
ロスラグが言いながら嬉しそうに気合を入れて剣を構える
戦闘が開始され 次第に雨が降り出し強く降る ロスラグが気合を入れて先行する ザッツロードが苦笑しながらそれに続く
戦闘の最中 ザッツロードの通信機が着信する ザッツロードが気付きつつも無視して戦闘を続ける しばらくして 通信が勝手に繋がりバーネットの叫び声がする
『おらぁああ!!てめぇええ!!いつまで待たせんだ この野郎がぁああ!!』
ザッツロードが驚いて通信機を取り出して言う
「バ、バーネット陛下っ!すみませんっ!今戦闘中なので!またっ!」
ザッツロードが通信機を切ろうとする バーネットが慌てて言う
『ぬぁあ!?おいっ!待ちやがれ!!』
バーネットの言葉にザッツロードが周囲を確認して 通信機を持ち直す バーネットが叫ぶ
『今すぐ戦闘中止だ!!総員 町の中へ避難しやがれ!!』
ザッツロードが疑問して声を発する
「え?一体!?」
ザッツロードへ魔物の攻撃が襲い来る ソニヤが叫ぶ
「ザッツ!危ないっ!!」
ザッツロードがハッとして慌てて剣で魔物の攻撃を防ぐ 通信機を忘れて攻撃へ移り魔物を倒してから周囲を見渡し 通信機を拾う 通信機のモニターでは バッツスクロイツを押し除けバーネットが叫ぶ
『早くしろっ!!過ぎ去ったと思われてた 悪魔力の霧が スプローニへ戻って来ちまうんだ!町には宝玉の結界を張らせた!お前らも全員 今すぐ避難しやがれ!!』
ザッツロードが驚きつつも状況を把握し 周囲へ叫ぶ
「みんなー!!作戦中止だ!!全軍 今すぐ町へ撤収!!急げー!!」
ザッツロードの言葉を聞いた仲間たちが驚きつつも 状況を理解して周囲の兵士たちと共に撤収を開始する ザッツロードが同じ言葉を繰り返しながら走る
全軍の撤退を確認したザッツロードが町へ向かう 町の前で仲間たちが待っている ザッツロードが問う
「皆!担当の各部隊の撤収は 確認したかい!?」
仲間たちが頷く ソニヤがザッツロードへ問う
「ザッツ!一体どうしたのよ!?急に!?」
ザッツロードがソニヤへ向いて言う
「バーネット陛下から連絡が来たんだ 悪魔力の霧が スプローニへ戻って来てしまうと」
皆が驚く ラナが言う
「ここに居たら私たちも危険だわ!早く町の…!」
言葉の途中でロキが叫ぶ
「ベル!…ベル!?どこだ!?」
ロキの声にザッツロードが驚いてロキへ顔を向けて言う
「ロキ!?ロスラグが居ないのかい!?」
ザッツロードの言葉に皆が周囲を確認する ロキがザッツロードへ向いて叫ぶ
「奴は何処だ!?お前と一緒では無かったのか!?」
ザッツロードが一瞬呆気に取られてから 気を取り直して言う
「ご、ごめんっ 僕は バーネット陛下からの連絡を伝えるために 奔走していて…」
ザッツロードの言葉の途中でロキが町を出て行く ザッツロードが叫ぶ
「ロキ!」
ザッツロードが慌ててロキを追う ソニヤが驚き言う
「ザッツ!!」
ザッツロードを追おうとしたソニヤをラナが押さえて言う
「駄目よっ!危険だわ!!」
ソニヤがラナを振り返って叫ぶ
「でも!?ザッツやロキやロスラグがっ!」
リーザロッテが来て言う
「落ち着きなさい、ザッツロ-ド王子は宝玉を持っているわ 悪魔力に対抗する結界を張る事が出来てよ!」
リーザロッテの言葉にソニヤが力を抜く ラナが押さえていた手を離す 皆がザッツロードの向かった先へ視線を向ける
ザッツロードが名を呼びながら森の中へ入る
「ロキ!ロスラグ!どこだー!?」
ザッツロードが周囲を見渡していると 遠くで銃声が聞こえる ザッツロードがハッと顔を上げ 銃声がした方へと走る 向かった先でロキがロスラグに肩を貸して歩いているのを見付け呼ぶ
「ロキ!ロスラグ!」
ロキが顔を上げザッツロードを呼ぶ
「ザッツ!」
ザッツロードが2人の下へ向かい走る ロスラグが顔を上げる その目がうつろになっている ザッツロードが走って来るのを見て ロスラグがハッとしてロキから離れる ロキが驚いて振り返り ロスラグを呼ぶ
「ベル!?」
ザッツロードが2人の様子に疑問しつつも走り続ける ロスラグがロキへ顔を向ける ロキがロスラグを見ている ロスラグがザッツロードへ顔を向ける ザッツロードが駆け向かって来る ロスラグがロキとザッツロードを交互に見ながら後退り ザッツロードへ銃を向ける ザッツロードが驚き足を止める ロスラグが悲鳴を上げて叫ぶ
「く、来るなッスー!!」
ロスラグがザッツロードへ銃を放つ ロキが叫ぶ
「ベル!!」
一発の銃声 ザッツロードが目を見開く ロスラグの前に見えたロキが地に倒れる ザッツロードが叫ぶ
「ロキーーッ!!」
ロスラグが呆気に取られたまま ゆっくりと視線を下へ向ける ザッツロードが辿り着き地へ膝を着いて ロキを抱き起こし慌てて呼ぶ
「ロキ!ロキ!?しっかりするんだ!!」
ロスラグが力なく両膝を付く ザッツロードがロスラグを見る ロスラグがうつろな目でロキを見て ゆっくりと声を出す
「ロ…キ…隊…長…?」
ザッツロードがハッとして周囲を見る 黒い霧が辺りを覆っている ザッツロードが宝玉を取り出し魔力を送る 宝玉が白い光を発し 周囲に半円形の結界が張られる ロスラグが宝玉の光を眩しがり 自身の体を掴むように苦しがって言う
「うっ!うぅう~っ!」
ロスラグの体から黒い霧が抜ける ロスラグが苦しそうに息をしてから ロキへ顔を向け 目を丸くし ロキの被弾した箇所へ視線を向けてから ロキの顔を見て言う
「ロ、ロキ隊長…!?」
ロキが閉じていた目を開きロスラグを見る ロスラグが呆気に取られている ロキがホッと息を吐き ロスラグへ手を向けて言う
「ベル… 良かった… お前は… 間に 合 った…」
ロスラグが目に涙を浮かべて ロキの手を取って言う
「ロキ隊長!?俺が?やったッスか…?俺が?俺の銃でっ!?」
ロキがロスラグの言葉に軽く苦笑する ロスラグが焦ってザッツロードへ向いて叫ぶ
「ザッツ!何してるッスか!?早くロキ隊長に!回復魔法ッス!!」
ザッツロードが苦渋の表情で言う
「ロスラグ… 僕は今 結界を張るのに魔力を使ってしまっているんだ 回復魔法は… 使えない」
ロスラグが驚き怒って言う
「な、なら!?結界を止めて回復魔法を使うッスよ!!ロキ隊長が死んじゃうッス!!」
ザッツロードが顔を横に振る ロスラグが驚いて叫ぶ
「何で!?何でやらないッスかっ!?結界なんて要らないッス!!魔物になったって ロキ隊長が無事なら 構わないッス!!」
ロスラグが大粒の涙を流す ザッツロードが俯き顔を横に振って言う
「出来ない… ロスラグ それは出来ないよ」
ロスラグが泣きながら叫ぶ
「何でッスか!?分からないッス!!大切な人を守れるなら!!俺は魔物でも何でも良いッスよ!!」
ロスラグの頬にロキが手を添える ロスラグが驚いてロキへ視線を向ける ロキが軽く笑って言う
「この ままで… 良い…」
ロスラグが涙をこぼしながら言う
「だめッス!!良く無いッス!!このままじゃ 霧が無くなる前に ロキ隊長がっ!!」
ロキが苦笑して言う
「それで… 良い…」
ザッツロードが苦しげに目を閉じる ロスラグが顔を横に振って言う
「嫌… 嫌ッス!俺はっ 俺は そんなの嫌ッスよっ!?ロキ隊長っ!ロキ隊長!!」
ロキが微笑み ロスラグの頭に手を置いて言う
「ベル… ベルグル… 俺は お前の 名は 良いと 思う 隠す 必 要は… 無い」
ロスラグが目を丸くして驚く ザッツロードが2人を見る ロキがロスラグの頭を撫でて言う
「この… 雨が 止ん だら… あいつ にも… 伝えに 行け… ベル… 約 束 だ… 」
言い終えると共に ロキの目が閉じられ ロスラグの頭を撫でていた手が落ちる ロスラグが目を見開く ザッツロードが息を飲む ロスラグが叫ぶ
「うわあぁあああーーー!!!」
ロスラグがロキの服を掴んで強く揺すって叫ぶ
「ロキ隊長!!ロキ隊長!!嫌ッス!!嫌ッスよ!!一緒にっ!!一緒に伝えに行くッス!!俺だけじゃ 絶対 絶対 行かないッスよー!!!」
ザッツロードが宝玉を持たない手を握り締める
霧が薄れる ザッツロードが周囲を見渡しロスラグへ言う
「ロスラグ、悪魔力の霧が薄くなった これなら魔物化の心配は無い筈だ また霧が濃くなる前に 町へ戻ろう」
ザッツロードが立ち上がり宝玉をしまう ロキの体に抱き付いていたロスラグが顔を上げる ザッツロードが苦笑を見せ ロキの身体を担ごうと手を伸ばす ロスラグが叫ぶ
「触るなっ!!」
ザッツロードが驚き手を引く ロスラグが怒りの表情でザッツロードを見上げて言う
「ロキ隊長を 助けてくれなかった… 俺はっ …お前なんか大っ嫌いだ!!」
ザッツロードが驚き 表情を哀しくする ロスラグがロキの身体を担いで立ち上がり 町へ向かう ザッツロードがそれに続く
町の門前
ザッツロードの仲間たちがザッツロードを待っている ソニヤが指差して声を上げる
「ちょ、ちょっと!?あれ!!」
リーザロッテがソニヤの示す方へ向く ロスラグがロキを担ぎ その後ろからザッツロードが続いて町へ向かっている レイトとヴェインが駆け出す ロイが一歩前へ踏み出した足を止め呆気に取られている
ロスラグの前にレイトとヴェインが辿り着く ロスラグが立ち止まり息を切らしながら言う
「レイト、ヴェイン… ちょっと… 手を貸して 欲しいッス…」
レイトとヴェインが一度顔を見合わせてから ロスラグへ向いて頷き 2人がロキの身体を受け取る ロスラグが崩れ 地に両手を着く ザッツロードが手を出そうとして思い止まる レイトとヴェインが顔を見合わせてからザッツロードへ向き レイトが問う
「ザッツ、一体何が…?」
ロスラグが顔を上げないまま言う
「はぁ… はぁ… そいつには 絶対 触らせないで 欲しい ッス…」
ロスラグの言葉にレイトとヴェインが驚き ザッツロードへ顔を向ける ザッツロードが2人の視線を受け苦渋の表情で俯く レイトとヴェインが顔を見合わせ疑問する
宿の部屋に皆が集まっている
ロスラグは居ない ザッツロードが皆に説明を終えている ソニヤが泣いている ラナが涙を堪えている セーリアがソニヤの肩に手を置き ソニヤがセーリアに抱きつく リーザロッテが俯いている シャルロッテが声を殺して泣いている レイトとヴェインが肩を落とし顔を見合わせた後 ロイへ視線を向ける ロイは沈黙している ザッツロードが言う
「アバロンから連絡が来た 魔物の群れが再びスプローニ城の近くへ集まり始めているらしい 明日の朝には各部隊を召集し 再び戦闘に備える …皆 今日は疲れていると思うから 早く休んで明日に備えよう」
ロイがザッツロードへ言う
「…ロキの担当していた部隊は 誰が引き継ぐ?明日の朝 召集を掛けるのなら 今の内に決めて置くのが得策だ」
ロイの言葉に皆が顔を上げ ロイへ視線を向ける ザッツロードが間を置いて答える
「…そう だね?えっと…」
ザッツロードが考える前に ロイが再び言う
「…それと、ロキの部下だったロスラグはどうなる?奴も使えなくなるのなら 我々の配置も大きく変わるだろう」
レイトとヴェインが顔を見合わせ レイトが言う
「私が思うに ロスラグは…」
ヴェインが続きを言う
「あいつは戦えないだろう 自身の銃で… ロキを殺めてしまったのだ 先ほども嘆いていた もう2度と銃は撃てないと」
皆が俯く ザッツロードが言う
「うん… それに 僕とはもう 一緒に戦っては くれないんじゃないかな…?」
リーザロッテが溜め息を吐いて言う
「貴方の判断は間違っていなくてよ?悪魔力が強い状況で 聖魔力の回復魔法を使っても その効果は薄く その間に 実体の小さなロスラグが 魔物化してしまう可能性が高いのでしょう?」
ザッツロードが頷いて言う
「それでもきっと ロスラグは 僕にやって欲しかったんだと思う」
ザッツロードが俯く ロイが言う
「…では、ロキの部隊は俺が引き継ぐ」
ロイが言い終えると部屋から出て行く ザッツロードが呼ぶ
「ロイ…」
ザッツロードが呼びとめようとしていた手を下ろす リーザロッテが言う
「ロイは… ロキに憧れてスプローニの部隊に志願したそうよ 貴方たちと合流して そのロキと一緒に戦えたって言うのに」
ザッツロードがリーザロッテへ向いて言う
「え?そうだったんだ…?ちっともそんな様子 見せなかったから」
レイトが軽く息を吐いて言う
「それでも十分 我々と居た頃より 気分が良かった様に私には見えていた 恐らく今も きっと我々には分からないほど 当人はロキを失った事を 嘆いている筈だ」
シャルロッテが涙を拭いながら言う
「ロイは… いつもロキさんを見てました 一緒に戦うようになってからは 今までよりたくさん 訓練もしてましたし…」
ザッツロードが苦笑して言う
「仲間を失うのは… 辛いね」
ザッツロードがオライオンへ視線を向ける オライオンは黙って窓の外を見ている シュライツがザッツロードの視線に気付き顔を向ける 間を置いて再びオライオンへ向ける 窓の外では雨が降り続けている
翌日 雨は止み、ザッツロードたちが集まる 部隊への連絡を済ませ 各々が配置へ付く ザッツロードが周囲を見渡す 皆 平静を装っている ザッツロードが一度俯くが 気を取り直して戦場へ向かう
防衛戦は楽に終る
ザッツロードたちが玉座の間にてスプローニ国王の前に跪いている スプローニ国王がザッツロードたちへ礼を述べる ザッツロードが敬礼して言う
「それでは 私どもはアバロン帝国へ帰還致します」
スプローニ国王が頷いて言う
「諸卿の助力に感謝する」
ザッツロードが敬礼して立ち去る 仲間たちがそれに続く
ザッツロードたちがスプローニ国の墓地へ行く 広い墓地にある墓石の1つにロスラグが凭(もた)れている ザッツロードが表情を哀しめ 皆に言う
「僕は行けない… 皆、僕の分も ロキにお礼を言っておいて欲しい」
皆が軽く息を吐き ソニヤが頷いて言う
「うん、ザッツの分も伝えとく」
ザッツロードが苦笑して言う
「よろしく」
ザッツロードが見守る先 仲間たちがロスラグの下へ行く
皆が墓石の前で立ち止まり顔を見合わせる ソニヤがロスラグへ声を掛ける
「ロスラグ」
ロスラグが閉じていた目を開いて言う
「…皆が 戦ってる音が 聞こえてたッス… でも、俺は…行けなかったッス… ごめんなさいッス… ロキ隊長も… きっと 行けって 言ってたッス ごめんなさいッス…」
ソニヤが苦笑して顔を横に振って言う
「良いよ 魔物の数も そんなに多くなかったし」
ラナが微笑んで言う
「貴方は ロキを守っていたのでしょ?」
ロスラグが言う
「前日の夜 ロキ隊長に お願いしたんッス… 今度、俺が先住民族の姿になったら 頭を撫でて欲しいって ロキ隊長は 嫌だって言ったッス… 昔飼っていた犬が そうした後に居なくなっちゃったからって でも、俺は居なくならないから そうして欲しいって頼んだッス ロキ隊長は… 最期に約束守ってくれたッス 俺は… 犬の姿じゃなかったスけど」
ソニヤとラナが顔を見合わせ苦笑する ロスラグが笑って言う
「だから 今度は俺が約束を守るッス!ロキ隊長が俺にしてくれたら 俺は一生ロキ隊長を守るって言ったッス!ロキ隊長はやっぱり嫌だって言ってたッス けど 俺はそうしたいからそうするッス!…俺は言う事聞かない悪い犬ッスね?きっと 正直なロキ隊長に また怒られちゃうッス」
リーザロッテらが顔を見合わせ苦笑する セーリアが一歩近づき言う
「私たち これからアバロンへ帰るの その前にロキにお礼を言いに来たのよ ロスラグ、ザッツもロキにお礼を言いたがっていたわ?」
ソニヤとラナが驚いてセーリアへ顔を向ける ロスラグが間を置いて言う
「…分かってるッス あいつは… …悪く無いんッス あいつは… …あいつこそ!いっぱいっいっぱい!ロキ隊長にお礼を言わなきゃいけないッス!!」
ロスラグが途中から顔を上げて叫ぶ ソニヤとラナが驚く セーリアが苦笑して言う
「それじゃ、ザッツを呼んでも良いわね?」
ザッツロードがロキの墓石の前に立つ ロスラグが顔を背ける ザッツロードが一度ロスラグへ視線を向けてから正面を向いて言う
「ロキ スプローニ国は守られたよ これからも いつでも僕らが手を貸すから 安心してくれ …それから 今まで… ありがとう」
ザッツロードが言い終えると 皆がそれぞれの礼を見せる ザッツロードが敬礼する 間を置いて皆が退散する ザッツロードがロスラグへ言う
「ロスラグ…」
ロスラグは顔を背けたまま動かない ザッツロードが一度俯き 再びロスラグへ向いて言う
「ロキを… 守ってあげてくれ」
ザッツロードの言葉にロスラグが言う
「…ヘボ勇者になんか 言われなくったって 分かってるッス ロキ隊長は… ずっと 俺が守るッス…」
ザッツロードが苦笑して頷き もう一度ロキの墓石を見た後に敬礼して立ち去る ロスラグが皆へ一度視線を向けた後 ロキの墓石に再び凭れ 犬の姿に変わり墓石に寄り添う
【 アバロン城 】
報告を終えたザッツロード 玉座に座るヴィクトールが言う
「…そうか、尊い仲間の命が失われてしまった事は とても残念だ 貴公らも 辛い心境で 良くぞスプローニ国を守り抜いてくれた」
ザッツロードたちが一度力を失うが 気を取り戻してザッツロードが言う
「彼の分も、残された我々で 何としても悪魔力の脅威を止めなければならないと思います ヴィクトール陛下 どうか、次のご指示を我々へ!」
ザッツロードの言葉にヴィクトールが一度頷き言う
「貴公らの活躍のお陰で ローレシアの王キルビーグ殿が我々を信頼し ローレシア国の歴史、旧世界の情報を与えてくれた」
ザッツロードたちが顔を上げる ヴィクトールが続ける
「貴公らも知っての通り、我々後住民族の故郷 旧世界においては 現在も我々の同族が過去の過ちである悪魔力の脅威と戦っている ローレシア国は新世界に移り住んだ我らが 故郷である旧世界と そこに残る人々を忘れ行く中 唯一その存在を忘れず かの地に残る彼らを救わんとしていた」
ヴィクトールの話を聞き ザッツロードが表情を険しくする ヴィクトールがザッツロードへ視線を向けて言う
「歴代ローレシアの王は 旧世界に残された人々と連絡を取り合い 現在も旧世界の悪魔力とその力に制御を支配されている 旧世界の機械兵を 排除しようとしている 従って 我がアバロン帝国は かの地に留まり 戦い続けている旧世界の民を ローレシア国と共に支援する事を決定した」
皆が驚く ザッツロードがヴィクトールへ問う
「ヴィクトール皇帝陛下!それではっ」
ザッツロードの言葉に ヴィクトールが頷き 皆へ視線を向けて言う
「ただし、こちらの新世界においても 悪魔力の脅威は依然続いている 従って貴公らには旧世界及び新世界 それら双方への支援及び援護をしてもらう」
ヴィクトールの言葉に仲間たちが顔を見合わせる ヴィクトールがリーザロッテへ視線を向けて言う
「リーザロッテ王女」
名を呼ばれたリーザロッテが驚いて返事をする
「は、はい!ヴィクトール皇帝陛下!」
ヴィクトールが続けて言う
「貴女には新世界の勇者として 現在この世界に蔓延っている悪魔力の脅威と戦う為の 全指揮権を与える」
皆が驚く リーザロッテが目を丸くして言葉を失う ヴィクトールがザッツロードへ視線を移して言う
「そして、ザッツロード7世 貴公は 旧世界の民を支え続けてきたローレシアの王として 旧世界を救う勇者となって貰いたい」
ザッツロードがヴィクトールの言葉に疑問して ヴィクトールを見上げて問う
「恐れながら、ヴィクトール皇帝陛下 私がローレシアの王とは?ローレシア国には、私の前に第一王子である キルビーグ2世がおります 従って ローレシアの王には 兄王子である 彼が…」
ザッツロードの言葉に ヴィクトールが顔を横に振ってから言う
「ザッツロード王子、言い辛い事だが ローレシア国 第一王子キルビーグ2世殿は ソルベキアに幽閉された」
ザッツロードが驚く
「兄上がっ!?」
ヴィクトールが言う
「そして、偵察兵からの情報によると その扱いは酷く ローレシア国へ対する反逆と見なされた」
ザッツロードが呆気に取られる ヴィクトールが続ける
「ソルベキアからは キルビーグ2世王子の釈放に ローレシア国に存在する旧世界との接触に使われる機材、及びローレシア国の保有する宝玉の受け渡しを要求して来た これに対し、ローレシア国キルビーグ王は 要求の一切を拒否し、キルビーグ2世王子からその王位を剥奪、自身の王位も アバロン帝国へ謙譲した」
ザッツロードと仲間たちが驚き言葉を失う ヴィクトールが皆を見渡しザッツロードへ言う
「よって、ローレシア国第二王子ザッツロード7世 我がアバロン帝国は 貴公をローレシア国の新たなる王へと任命する!」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが驚いた表情のまま言葉を漏らす
「ぼ… 僕が ローレシアの… 王…!?」
ソニヤ、ラナ、セーリアが驚く ヴィクトールが続けて言う
「無論、我がアバロン帝国は 貴公の兄 キルビーグ2世の救出に全力を上げる事を約束する 貴公は我らを信じ、貴公の任をまっとうして貰いたい」
ザッツロードが唇を噛み締め敬礼して言う
「アバロン帝国ヴィクトール皇帝陛下、ザッツロード7世 ローレシア国の国王、及び旧世界の救援の任 謹んでお受け致します」
ヴィクトールが頷いて言う
「ローレシア国 新国王ザッツロード7世、貴公の活躍を 引き続き 期待している」
皆が静まり返る 伝令の兵が現れ敬礼する ヴィクトールが顔を向けると兵が言う
「申し上げます!ガルバディア国へ向かわれた バッツスクロイツ殿より ヴィクトール皇帝陛下へ 通信連絡が入っておりますっ」
皆が兵へ顔を向ける ヴィクトールが言う
「ガルバディアへはバーネット第二皇帝も同行している筈だ 連絡は彼からでは無いのか?」
兵が再び声を張って言う
「はっ!通信連絡はバッツスクロイツ殿より承っておりますっ」
ヴィクトールが少し考えてから言う
「そうか、分かった ここへ繋いでくれ」
ヴィクトールの言葉を受け兵が通信機を操作する ヴィクトールがザッツロードらへ顔を向けて言う
「ガルバディアへは バッツスクロツとバーネット第二皇帝、そしてアバロン3番隊元隊長ヘクターを 旧世界にて使用可能なロボット兵の立案の為 向かわせていた」
ヴィクトールの言葉にオライオンが声を上げる
「親父が!?親父は もう戦わねーって!?」
オライオンの言葉にヴィクトールが頷いて言う
「ああ、しかし ヘクターは予てからガルバディア国王と面識があり、更に 結界の島で犠牲となったガルバディア国のプログラマーの相棒でもあった 従って本人の希望もあり ガルバディア城の案内役として同行して貰ったのだ」
ヴィクトールの言葉にオライオンの隣に居るシュライツが嬉しそうな奇声を発する 兵が報告する
「ヴィクトール皇帝陛下、通信を繋ぎます」
兵の報告にヴィクトールが頷き了承する 兵が通信を繋ぐ ザッツロードたちが ヴィクトールへ向けられている通信機の両脇から顔を覗かせ通信モニターへ注目する 通信が繋がりモニターにバッツスクロイツがドアップで映り叫ぶ
『ちょっとぉおーー!!まだぁ!?早く繋いでくれってば~~!』
ザッツロードが驚き皆が呆れる ザッツロードたちの後方でヴィクトールが苦笑する バッツスクロイツがモニター越しにザッツロードたちを確認して言う
『お!よぉー皆 帰ってたのかー!あ~… あの件は本っ当~~に すまん!ゴメン!報告聞いたよ… ロキの事は俺の責任でもある…』
バッツスクロイツが落ち込み俯く ザッツロードが一瞬表情を曇らせるが気を取り直して言う
「ロキの事は 誰のせいでも無いよ ロスラグが僕を許してくれたんだ きっとロキだって 誰にも責任を押し付けたりはしないと思う」
ザッツロードの言葉にバッツスクロイツが苦笑して言う
『うん、そーだよな?あいつは クールなナイスガイだったし きっと誰かを恨んだりーとか カッコ悪い事はしないよな!?』
バッツスクロイツが笑顔になり ザッツロードが微笑んで頷き言う
「僕もそう思うよ …所で、バッツ?ヴィクトール陛下に連絡だったんじゃ?」
バッツスクロイツが一瞬呆気に取られてから ハッとして再び焦って言う
『そ~~なんだよ!ちょっと!ヴィクトールっちに代わってくんない?!』
バッツスクロイツの言動にザッツロードたちが苦笑する ヴィクトールが言う
「バッツスクロイツ、声は聞こえている 何事だ?バーネット第二皇帝はどうした?」
ヴィクトールの声にバッツスクロイツが通信機へ身を乗り出して言う
『その!バーネっちとヘクターのアホが ガルバディア国王の前で喧嘩しちゃっててー もぉ全っ然!話が進まないんだよ~~!』
バッツスクロイツの言葉にザッツロードたちが驚きソニヤが言う
「バーネット陛下とヘクターが!?」
ラナが呆れて言う
「他国の国王様の御前で…」
ザッツロードがヴィクトールを振り返る ヴィクトールが片手で額を押さえ息を吐く ザッツロードが苦笑してモニターへ視線を戻す バッツスクロイツが通信機を向け モニターにバッツスクロイツの後方の様子を映す
ガルバディア城玉座の間 ガルバディア国王が玉座の前にホログラムで立つ その前で ヘクターが両手を握り締めファイティングポーズでいる それと向き合い バーネットが鞭を持ってヘクターを指差し叫んでいる
「てめぇええ!この脳筋アホヘクター!!新旧両世界の民を守ろうってぇえ この時に なぁああにを自分勝手な事抜かしてやがるんだ!?てめぇえはぁああ!?」
バーネットの言葉を受けたヘクターが 片手でバーネットを指差して言い返す
「うるせー!バカーネット!てめーらこそ 新旧世界の前に 両国の友好を死守しろって言うんだ!お陰で俺は毎日!泣き虫ヴィクトールの相手をさせられてたんだぞ!!」
アバロン帝国玉座の間 モニターを見ていたザッツロードたちが苦笑して ゆっくりヴィクトールへ振り返ろうとする 赤面したヴィクトールが怒りを抑えながら声を張る
「バーネット第二皇帝、及び元3番隊隊長ヘクター、状況説明を願いたい!」
ザッツロードたちがヴィクトールへ向き掛けていた顔を急いで元へ戻す モニターの中の2人が通信機へ顔を向け ヘクターが言う
『おー?噂をすれば その泣き虫ヴィクトールじゃねーか!』
ヘクターの言葉にザッツロードたちが苦笑する ヴィクトールが拳を握り堪える モニターの中のバーネットが鞭を床に叩き付けてヘクターへ叫ぶ
『おい!!アホヘクター!!ガキ共が居る所で その呼び方するんじゃねぇえよ!!ヴィクトールが泣いたらどぉおすんだ!?ちっとは考えろ!この脳筋アホヘクターがぁあ!!』
ザッツロードたちが思わず吹き出す ヴィクトールが咳払いをして再び言う
「バーネット第二皇帝!状況説明を!ガルバディア国への ロボット兵製作依頼は受託されたのか!?」
ヴィクトールの声にバーネットが肩の力を抜いて言う
『おう ガルバディア国王曰く、バッツスクロイツの知識を共有し、尚且つソルベキアの物資協力がありゃー可能だって話だ …だってぇえのにっ!!この脳筋アホヘクターが!!』
言い終えると共にヘクターを指差す 指差されたヘクターが再び両手を握り締めて叫ぶ
『うるせぇーー!んないつでも良い事は後にしろってゆーんだ!!こっちは 時間制限があんだよ!!』
ヘクターの言葉にバーネットが怒って鞭を振るって言う
『ざけんなぁあ!自己満カス野郎ぉおお!!』『んだと!?このドS野郎ー!!』
ヘクターがバーネットの鞭を避けて殴りかかる 2人が殴り合いの喧嘩になる モニターの中のバッツスクロイツが頭を抱える ザッツロードたちが呆気に取られヴィクトールへ振り返る ヴィクトールが溜め息を吐いて言う
「バッツクロイス、バーネットが言っていたロボット兵製作は可能だと言う話は本当か?」
ヴィクトールの声にバッツスクロイツが振り向いて言う
『バーネっちの言ってた通り、ソルベキアの協力が必要になるけど それを無しにしても 倍ぐらいの時間があれば作れるって話ー』
バッツスクロイツの言葉を聞いたヴィクトールが頷く オライオンがバッツスクロイツへ問う
「所で、親父が言ってた時間制限がなんとかってーのは?」
オライオンの言葉にバッツスクロイツが考える様子で言う
『えーっと… それはー…』
バッツスクロイツが考えているとモニターの前にガルバディア国王のホログラフが映り言う
『ヘクターは 彼の兄でありながら 過去、我がガルバディア国にて その身を変えられた ウィザードの回復を希望している』
ガルバディア国王の言葉にザッツロードと仲間たちとヴィクトールが反応し ヴィクトールが問う
「彼は… そのウィザードは 先代勇者らと共に結界の島にて魔王と戦い その際受けたダメージのまま 意識が戻らないと聞いていたが その回復が可能なのか?」
皆の視線がガルバディア国王へ向けられる ガルバディア国王が一息置いて言う
『…残念だが、確実に可能とは言い切られない ウィザードの研究を行っていた者たちは 16年ほど前に皆死に絶えてしまった 従って、回復を行うのであれば今の我々が 彼らの残した資料を元に行う事となる』
ザッツロード達が肩を落とす バッツスクロイツが言葉を足す
『その調べる作業だとかー なんだとかーで?実際に行うまでには しばらく時間がかかるしー 成功するかもー分かーんない、オマケに そのウィザードさんの命がいつまで持つかーも分からないんだ、バーネっちは 腹くくって男らしく諦めろってさ?その間にも旧世界の状況は悪化するし、ソルベキアの助力を得られなければー?時間もかかるしー?』
バッツスクロイツの言葉を後方で聞いていたヘクターが叫ぶ
『諦めてなんか堪るか!!プログラマーのデスは助けられなかったんだ!!ウィザードのデスだけは ぜってぇーに助ける!!』
バーネットが怒って言う
『だから自己満だっつってんだ!!てめぇえ1人の自己満で!!全世界の民の命を 奪うつもりかっ!?馬鹿野郎ぉおお!!』
2人が喧嘩を再開する バッツスクロイツがモニターへ向き直って言う
『なぁー ヴィクトールっち?俺ら どうしたら良いー?』
バッツスクロイツの言葉に ガルバディア国王もモニターへ視線を向ける ヴィクトールが沈黙する ザッツロードが視線を落として考える オライオンが立ち上がって言う
「俺が行って来る」
オライオンの言葉に皆が驚き顔を向ける オライオンがヴィクトールへ向いて言う
「ヴィクトール陛下 親父が馬鹿言って すんません 俺が行って 黙らせてきます」
ヴィクトールが問う
「オライオン… 貴公も父であるヘクターの苦悩を つね日頃から見知っていた筈だ それでも行けるのか?」
ヴィクトールの視線にオライオンが一度視線を外し俯く シュライツがオライオンの顔を覗き込む オライオンがシュライツを見上げ 微笑んでから ヴィクトールへ向き直って言う
「親父がずっと苦しんでたのは知ってるし 俺もプログラマーのデスの最期を見た ウィザードのデスを親父がずっと守ってきた事も知ってる …けど、だからこそ 俺が行きます!」
ヴィクトールがオライオンを見つめる ザッツロードたちも見つめる シュライツがオライオンと共に奇声を発して肯定の意思を伝える オライオンがシュライツを見てから言う
「こいつも一緒に説得するって!」
オライオンの言葉をシュライツが肯定して顔を縦に振って見せる ヴィクトールが一度苦笑してから微笑んで言う
「分かった、オライオン 貴公へ任せる」
オライオンが返事をする
「はい!ヴィクトール陛下!」
オライオンに続いてシュライツが喜んで奇声を発する ヴィクトールがモニターへ視線を戻して言う
「バッツスクロイツ、聞いての通りだ ヘクターの息子であるオライオンが説得に向かってくれる それまで待って居てくれ」
バッツスクロイツが首を傾げながら言う
『俺は良いけどさー?バーネっちが持つかの方が心配だぜー?なぁ?デスっち?』
バッツスクロイツが言いながらガルバディア国王へ視線を送る ガルバディア国王が一度苦笑してから言う
『そうだな、彼らの戦闘能力をデータ化すると その能力差は歴然だ 元とは言えアバロンの大剣使いの戦闘値は 昔と代わらず 今も他国の者に比べ 突角秀でている』
話しているガルバディア国王の周囲にデータモニターのホログラフがいくつも浮き上がる ソニヤが思わず言葉を漏らす
「デ…デスっちって…」
ラナが考えながら言う
「同じガルバディアの民だから やっぱりガルバディア国王の名前もデスなのね…」
レイトが表情を引きつらせながら言う
「それよりも他国の国王にまで あの奇妙な呼び方をするとは…」
ヴェインが目を閉じて言う
「バッツスクロイツ… 何処までも我を通す男だ…」
リーザロッテが呆れた様子で言う
「あら?アバロン帝国の2大皇帝を あの呼び方でしているのだから、今更 国王程度には当然なのではなくって?」
セーリアが苦笑しながら言う
「そ、それもそうね…?皇帝陛下を気軽に呼んで 一国の王様へ敬意を表しては それこそ問題かもしれないわね?」
オライオンが出口へ顔を向けて言う
「とにかく、俺が行って 親父をぶっ飛ばすから それまでバーネット第二皇帝陛下には頑張って貰わねーと」
ヴィクトールがオライオンへ向けて言う
「なるべく急いでくれ、オライオン」
オライオンが振り返って言う
「はい!俺が遅れてバーネット第二皇帝陛下がボコボコにされちまったら ヴィクトール皇帝陛下に俺がぶっ飛ばされそうだし!」
ヴィクトールが苦笑する ザッツロードたちが同じく苦笑して顔を見合わせる ザッツロードがオライオンへ言う
「うん、それも大変だけど、ヴィクトール皇帝陛下に 泣かれちゃっても困るしね?」
ザッツロードとオライオンを除く皆がビクッと驚き焦る 後方でヴィクトールが赤面して怒っている ザッツロードは気付かず微笑んでいる オライオンも気付かず笑って言う
「そうだな!親父に続いて 俺までヴィクトール皇帝陛下を泣かせたら 親子揃って縛り首かもな?」
ヴィクトールが我慢の限界を超え 若干涙目で叫ぶ
「今すぐ そうなりたくなければ さっさと行けーっ!!」
皆が驚き硬直する オライオンが慌てて言って走り出す
「はい!はい!今すぐ行ってきまーす!!」
ヴィクトールが拳を振るわせ怒っている ザッツロードの仲間たちが呆れている ザッツロードがきょとんと首を傾げる
改めてザッツロードがヴィクトールの前に跪いている 仲間たちが後ろで苦笑している ヴィクトールが少し頬を赤くしている状態から気を取り直して言う
「それで、貴公らへの任務だが」
ザッツロードが返事をする
「はい!」
皆が呆れている ヴィクトールが皆へ視線を向ける 皆が焦って標準状態に戻る ヴィクトールが言う
「まず、貴公らには2手に分かれて貰う」
皆が少し驚き ソニヤとリーザロッテが顔を見合わせる ヴィクトールが続ける
「新世界を受け持つ勇者であるリーザロッテ王女は 直ちにローゼント国へ向かい ローゼント国の部隊、及び今作戦に置いての協力国であるシュレイザー国の部隊と共に ソルベキア国攻略の任に就いて貰う」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが身を乗り出して言う
「ヴィクトール皇帝陛下!ソルベキアには私の兄が!」
ヴィクトールが頷き言う
「そうだ、そして旧世界を受け持つ勇者ザッツロード 貴公はローレシア国へ向かい 旧世界を救う為の行動を開始してもらう」
ザッツロードが焦って言う
「お言葉ですがヴィクトール皇帝陛下!私はっ」
ザッツロードの言葉を制してヴィクトールが言う
「異論は認めない!ザッツロード王!」
ザッツロードが衝撃を受け 乗り出していた身を引く ヴィクトールが続ける
「ザッツロード、貴公は王となったのだ 国王たるもの私情に流され 任務を放棄するなどと言う事は決して許されない 貴公はローレシア国の新たなる王として 常に新世界のローレシアと旧世界の民を救う事を第一に考えるのだ」
ザッツロードが俯き唇を噛む ヴィクトールがそれを見下ろしたまま言う
「ソルベキアへは貴公の仲間であり 共に戦ってきたリーザロッテ王女とその仲間たちが 貴公らに恩のあるシュレイザー国の騎士と共に行く、貴公はリーザロッテ王女らの力を 信頼出来ないと言うのか?」
ザッツロードが苦渋の表情で後方のリーザロッテらへ視線を向ける リーザロッテが力強く一歩前へ出て言う
「ザッツロード王子!いえ、ザッツロード王!今更 私たちの事を信頼出来無いなどとは言わせなくってよ!」
ソニヤがラナへ耳打ちする
「ザッツが王様になったって言うのに平気で言い張れる所がリーザらしいわよね?」
リーザロッテが怒りの視線をソニヤへ向ける ソニヤが焦る ラナが呆れる ザッツロードが一度強く目を瞑ってから ヴィクトールへ顔を向けて言う
「分かりました リーザロッテ王女たちを信じ 私はローレシアへ向かいます!」
ザッツロードの言葉にヴィクトールが微笑み頷く ヴィクトールが立ち上がって言う
「リーザロッテ王女らは直ちにローゼント国へ、ザッツロード王らは準備の整い次第 アバロン城 門前へ集合せよ!」
ヴィクトールの言葉にザッツロードたちが返事をする
「「はい!」」
アバロン城門前 準備を済ませたザッツロードたちが待機している ソニヤがザッツロードへ言う
「ザッツ!どお?王様になっちゃった気分は?」
ソニヤの言葉に ザッツロードが苦笑して答える
「あ… はは… いや?まったく実感無いよ」
ザッツロードの返答にソニヤが笑う ラナが呆れて言う
「それはそうよね 戴冠式だって無いのだし」
ザッツロードが微笑してラナへ言う
「まぁ、今はこんな時だからね 落ち着いたら もう少し実感も出ると思うんだけど」
セーリアが微笑みながら言う
「でも、落ち着いてしまったら 私たちも今みたいに気軽にザッツとお話は 出来なくなってしまうのでしょうね?」
ソニヤが少し驚いて言う
「あ、そっかー?でも、何だか想像付かないなぁ ザッツの前に跪いて ザッツロード陛下~なんて 言うのかなぁ?」
ソニヤが言い終えると共に思わず笑い出す ザッツロードが苦笑して言う
「え?酷いなぁ それ位言ってくれても…?」
ザッツロードと皆が笑う そこへヴィクトールがやって来る 気が付いたソニヤが驚いて名を呼ぶ
「え?!ヴィクトール陛下!?」
その言葉に皆が振り返り 続いて現れたキルビーグにザッツロードが声を上げる
「父上!?」
呼ばれた二人が微笑んで ヴィクトールが言う
「待たせてしまった様だな?」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが驚いて問う
「え?ま、待たせたとは…!?」
ザッツロードの言葉にヴィクトールに続いてやって来た キルビーグが言う
「ローレシアへは我々も同行する」
キルビーグの言葉にザッツロードとソニヤが声を合わせる
「「えぇええ?!」」
ザッツロードたちの反応に2人が笑って ヴィクトールが言う
「そんなに驚く事は無いだろう?それにローレシアにある 旧世界に関するそれらの機械はキルビーグ殿にしか 操作が出来ないのだ」
ラナが首を傾げて問う
「それは どう言う事?」
キルビーグが答える
「旧世界に関連する機械を動かすには宝玉の聖魔力が必要になる お前達も知って居るかも知れないが 宝玉には各々特性がある それを利用し ソルベキアに悪用される事の無い様 ローレシアの宝玉で無ければ動かぬよう仕組んでおいた」
キルビーグに続きヴィクトールが言う
「そして、そのローレシアの宝玉を利用するには キルビーグ殿に機械を操作して貰わねばならない」
ソニヤが思い出しながら言う
「そういえば 前にレイトが機械を操作すると宝玉が現れて~とか言ってた様な」
ザッツロードが軽く微笑み言う
「分かりました、僕らで御2人を護衛致します」
ザッツロードの言葉に仲間たちが頷く ヴィクトールとキルビーグが顔を見合わせ キルビーグが笑って言う
「まだまだお前達に護衛して貰わなければならないほど 落ちぶれては居ない」
キルビーグの言葉にザッツロード達が驚き顔を見合わせる ヴィクトールが微笑して言う
「キルビーグ殿、きっと彼らには言葉で言っても伝わらない 実力で示さねば」
言い終えると共にヴィクトールが素早く剣を引き抜きザッツロードの首下へ構える ザッツロードが驚いて尻餅を着く 仲間たちが呆気に取られる ヴィクトールとキルビーグが笑う
セーリアが移動魔法の準備をして皆の前に立つが ヴィクトールとキルビーグを見てから恥ずかしそうに言う
「な、なんだか緊張してしまうわ 王族の方々をお連れするなんて」
ソニヤとラナが顔を合わせて笑う ザッツロードが苦笑して言う
「セーリアの移動魔法は僕が保障するよ」
ラナが少し呆れて言う
「そうよ、それに今までだって ずっとザッツロード王子をお連れしてたじゃない?」
セーリアがラナへ向いて焦って言う
「そ、それはそうだけど 今日はヴィクトール皇帝陛下とキルビーグ元国王陛下にザッツロード新国王陛下よ?」
セーリアが胸に手を当てて落ち着かせようとする ラナが苦笑して言う
「そうね、確かにザッツ1人ならまだしも 皇帝陛下と元国王陛下は重いわよね」
ザッツロードが苦笑する ヴィクトールがあっと思い出して言う
「ああ、それなら 私はもうアバロン帝国の皇帝では無くなったのだよ」
ヴィクトールの言葉にザッツロードたちが驚く
「「「「えぇええ!?」」」」
ヴィクトールが苦笑しながら言う
「従って、名前の後に『皇帝陛下』とは付けなくて良い 気軽にヴィクトールと呼んでくれ」
ヴィクトールが笑顔を向ける ザッツロード達が『無理だ』と思う キルビーグが苦笑している キルビーグが気を取り戻して言う
「さて、あまりのんびりもしていられない ヴィクトール殿のお陰で 気も軽くなっただろう?移動魔法を頼もう」
セーリアが慌てて返事をして魔法詠唱に入る ソニヤが軽く笑って言う
「気持ちが軽くなり過ぎて ソイッド村まで飛ばされちゃったりして?」
ラナが苦笑して言う
「それなら良いけど、変なところに落ちて 元皇帝陛下と元国王陛下にお怪我でもさせたら やっぱり大変よ」
ヴィクトールが微笑んで言う
「その時は皆でキルビーグ殿を援護してくれ、私は 少々乱暴な移動魔法に慣れている 上空5メートルから落下をさせられても 対処可能だ」
ヴィクトールの言葉に皆が驚く
「「「えぇええ!?」」」
キルビーグが頭を抱えて言う
「確かに あの移動魔法に慣れてしまえば 上空5メートルも問題ないかもな」
ソニヤがヴィクトールへ叫ぶ
「どんな ど下手な移動魔法よっ!!?」
ソニヤの声に驚くセーリア 移動魔法失敗の破裂音と共に ザッツロード達がローレシア方面へ飛んで行く
【 ローレシア国 】
目的地のローレシア城より手前の荒野上空に ザッツロードたちが魔法破裂音と共に到達して落下する ザッツロードと仲間たちが悲鳴を上げる中 ヴィクトールとキルビーグが華麗に宙を舞い着地 ヴィクトールが落下して来たセーリアを抱き止め キルビーグがラナを抱き止め ザッツロードとソニヤが地面に落下する セーリアとラナが自分を受け止めた相手に 恥ずかしそうに礼を言う ヴィクトールとキルビーグが微笑して答える その横でザッツロードが頭をさすり ソニヤが打ちつけた尻をさすった後 立ち上がってザッツロードへ怒る
「ちょっと!ザッツ!何で私を抱き止めてくれない訳!?」
ザッツロードが苦笑しながら答える
「ご、ごめん」
ヴィクトールとキルビーグが苦笑する ソニヤが振り返って怒る
「そっちの2人も!!なんで私じゃないのよ!?」
ヴィクトールとキルビーグが呆気に取られた後笑う ラナが呆れ セーリアが苦笑する
ザッツロードが周囲を見渡し ローレシア城を見つけて言う
「少し手前ではありますが もう一度移動魔法を使うほどでは無いと思います」
ザッツロードの言葉にヴィクトールとキルビーグが頷く セーリアが慌てて謝る
「も、申し訳有りませんっ」
ヴィクトールとキルビーグが微笑んで ヴィクトールが言う
「いや、この位 大した距離では無い」
キルビーグが言う
「ああ、城はすぐそこだ 気にしなくて良い」
ザッツロード達がローレシア城へ向かう 程なくして魔物が現れる ザッツロードが驚いて言う
「な、なんだ!?あの魔物は!」
今までに見た事の無い魔物の姿に ザッツロードたちが顔を見合わせヴィクトールとキルビーグも顔を見合わせ 顔を横に振る ヴィクトールが剣を引き抜いて構えながら言う
「今までに確認されていない魔物だ、気を付けろ!」
キルビーグが構え 隣にザッツロードが構え 魔力使いたちが後方に構える 間もなく魔物が魔法詠唱を開始する ソニヤが声を上げる
「え、詠唱魔法を使う気!?」
ヴィクトールがキルビーグへ視線を向けて問う
「キルビーグ殿!?」
キルビーグが魔物へ視線を向けたまま答える
「ローレシアでも その様な魔物は確認されてはいない!来るぞ!」
ザッツロードが言うと共に駆け出す
「行きます!」
ザッツロードたちと魔物との戦いが終わる ザッツロードたちが各々に魔物の遺体を前に考える ヴィクトールが言う
「魔法を使用する魔物は存在するが 詠唱魔法を使うとは…」
ソニヤがラナへ視線を向けて言う
「私が相手をした方は 魔術師が使う詠唱を行っていたわ」
ラナが同様にソニヤへ顔を向けて言う
「こっちは魔法使いの詠唱魔法だった」
セーリアが苦渋の表情で言う
「私たちと同じ種類の魔法を使うだなんて… 気味が悪いわね」
ザッツロードがキルビーグへ向いて言う
「父上、もしかしたら 我々が居ない間にローレシア領域に発生した 新種の魔物なのかもしれません 城へ向かい確認をした方が」
キルビーグが頷いて言う
「うむ、その可能性もある、城へ急ごう」
【 ローレシア城 】
ローレシア城へ到着したザッツロードたち フォリオッド大臣が皆を出迎える
「キルビーグ陛下!よくぞ御無事で!!」
フォリオッドが駆け寄って来る キルビーグが苦笑して言う
「フォリオッド、先だって連絡をしておいたであろう?私は王位をアバロン帝国へ謙譲したのだ そして、」
キルビーグが言いながらフォリオッドへザッツロードを示して言う
「このザッツロード7世が ローレシア国の新たな王へと任命された」
フォリオッドが驚いてザッツロードへ顔を向ける ザッツロードが苦笑して言う
「そう言う事なんだ、フォリオッドこれからも よろしく頼むよ」
ザッツロードの言葉にフォリオッドが喜んで言う
「もちろんで御座います!ザッツロード王子…!ああっ いやいや失礼 ザッツロード国王陛下!」
フォリオッドが敬礼する ザッツロードが微笑む キルビーグが言う
「それで、フォリオッド 留守の間 何か問題は無かったか?」
キルビーグの言葉に 後ろでヴィクトールが苦笑する それに気付いたキルビーグが軽く笑って言う
「おっと、いかんな?ザッツロード、これはお前の台詞だ」
キルビーグの言葉にザッツロードが一瞬驚いてから 微笑んで言う
「はい、父上」
フォリオッドが微笑んで言う
「アバロン帝国の方々が 場内を色々とお調べになっていた事以外は特に… ああ、そう言えば?」
フォリオッドがザッツロードへ顔を向けて言う
「2人の女性が 勇者ザッツロード様はどちらかと お見えになられました」
ザッツロードが首を傾げて言う
「2人の女性?名前は?」
フォリオッドが顔を横に振って言う
「お名前は名乗られませんでした しかしお見受けした所 魔力使いの装いの方でした 事前にザッツロード陛下がシュレイザー国の援護に向かっている事を伺っておりましたので その旨をお伝えしました」
フォリオッドの言葉にザッツロードが首を傾げて言う
「そうか… シュレイザー国では特に その様な者とは会わなかったが」
ソニヤが言う
「すれ違いになっちゃったのかな?あの時は結構忙しくて 私たちもすぐに スプローニ国へ移動しちゃったし」
ラナが続けて言う
「用があるなら追い掛けて来るかもしれないわね?」
ザッツロードがしばらく考える キルビーグが問う
「それとは別に、フォリオッド ローレシア周囲で詠唱魔法を使う魔物と遭遇したのだが その様な魔物が確認されているか?」
キルビーグの言葉にフォリオッドが驚いて言う
「詠唱魔法を使用する魔物ですか!?いえ、その様な魔物の話は 聞き及んでおりません」
キルビーグが頷いて言う
「そうか、分かった もし確認がされたら 詳しい情報と連絡を」
フォリオッドが敬礼して返事をする
「はっ 畏まりました」
地下の機械室へ向かう 道中 ザッツロードが言う
「あの魔物… 城の方でも確認はされていなかったと言うし 一体何だったのだろう」
ソニヤがザッツロードへ向いて言う
「お城でも確認されていなくて、もう現れないのなら… 良いんじゃない?」
ラナがソニヤへ言う
「確認されていないからこそ 詳しく調べる必要があるんじゃない!?」
ソニヤが視線を逸らして言う
「でもぉ~ 出来ればもう関わりたく無いなぁ やっぱり同じ種類の魔法を使う魔物なんて 気持ち悪いじゃない?」
ヴィクトールが考えながら魔力使いたちへ問う
「魔法の詠唱というのは 魔物が覚えられる様な物なのだろうか?」
ヴィクトールの問いにソニヤとラナが考えソニヤが答える
「ちゃんとした魔法にしようと思えば難しいけど ある意味適当にやっても 何か起きるって言うのはあるわよね?」
ラナがソニヤの言葉に答えて言う
「でも、あの魔物たちは 適当に唱えている様子は無かったわ 放たれた魔法だって十分強い物だったし」
ヴィクトールが再び考えながら言う
「では 正式な魔法を使えるほどの 知能を持った魔物であるのか もしくは…」
ザッツロードがヴィクトールへ向いて問う
「もしくは…?」
ヴィクトールが皆の視線に気付いて 顔を左右に振ってから言う
「いや… そうでは無い事を祈る」
皆が疑問して顔を見合わせる キルビーグが言う
「人体の魔物化は まだ確認されては居ない そして、そうならない為にも 悪魔力の脅威を一刻も早く 無くさなければならないのだ …さぁ、ここだ」
キルビーグが部屋を示す 皆がそちらへ視線を向ける
過去に破壊された扉は直されている その扉を開きキルビーグが入る ヴィクトールが続きザッツロードたちも入る 部屋に入るとキルビーグが制御装置の下へ向かう ヴィクトールが周囲を確認しながらキルビーグへ続く キルビーグが機械を操作し モニターにデータが流れる ザッツロードたちもそれを見ながら キルビーグの下へ向かう しばらくキルビーグが機械を操作し 送られてきたデータを見ている ヴィクトールがそれらを眺めつつ キルビーグへ問う
「これはプログラマーが使用する プログラムの一種だろうか?」
ヴィクトールの問いにキルビーグが思い出したように振り返って言う
「ああ、申し訳無い 先に伝えておくべきだった このデータはただの文章だ、一応簡単にはその内容が分からぬ様に 細工はしてあるが 大した物では無い 文章の途中にある記号を幾つか外しながら読むのだ、文章は古いローレシア言語で送られている」
キルビーグの言葉に皆がモニターを見て首を傾げる ザッツロードが言う
「あ… 本当だ、私も古いローレシア言語に 詳しくは無いですが 所々読め無い箇所がある程度で 後は理解できます」
ザッツロードの仲間たちが顔を見合わせ ソニヤが言う
「今は大陸の言語は統一されちゃってるし、ローレシア言語ってだけでも分からないのに 古い物だなんて さっぱり分からないわよ」
ラナが頷いて言う
「ローレシアの言語は特殊だし、古い物は文字自体が 今と違うものね?」
ヴィクトールが続いて言う
「私もあいにく分かりかねる、キルビーグ殿 手数だが翻訳を頼む」
キルビーグが頷いて言う
「ああ、勿論だ ザッツロード、お前が何処まで理解しているかも気になる 先に皆へ説明を」
キルビーグの言葉にザッツロードが返事をしてモニターへ目を向けて言う
「はい、…えっと、悪魔力の発生源を 全て付き止めた しかし、我々の存在出来る空間は非常に限られて来ている 今は持てる力でその空間を維持し 新たなる聖魔力の供給を待つ」
キルビーグが頷いて言う
「うむ、それで問題ない」
ザッツロードが続けて言う
「ただ、その上下にある文字が分かりません」
ザッツロードの言葉にキルビーグが言う
「あれば数字を表している 上にあるのが この文章を送信した日時 下にあるのがこの文章に対する 返答を受ける日時だ」
ヴィクトールが問う
「『返答を受ける日時』とは?あらかじめその様な日時を 指定しておかなければならないと 言う事だろうか?」
キルビーグが頷いて言う
「旧世界の正しい位置へ何かを送るには 悪魔力を退ける強い聖魔力と 相手側にもそれを受け取るための聖魔力の発信が必要になる」
ソニヤが表情を渋らせて言う
「なんだか大変そう~ それじゃ、向こうから送る時も こっちは決めた日に受信を待っていなければいけないのね?」
ソニヤの言葉にキルビーグが答える
「そうだな、ただ 場所を特定せずに送るとあれば 聖魔力は使わず 更には 悪魔力を使用して送る事さえ可能だ」
セーリアが考えて言う
「正しい場所へ送る時には強い聖魔力で 何処でも良い場合は悪魔力を利用できるのね」
キルビーグが頷いて言う
「そして、この文章が送られてきたのは3ヶ月前、この文章に対する返答を送る期日は過ぎ 次の文章が送られて来ている」
皆がモニターに注目する ザッツロードが読み始める
「…予てより開発していた悪魔力中和装置が完成した この機械の能力を最大限に使用するには 今の聖魔力の量では不十分である 聖魔力の供給を再び待つ」
ザッツロードが読み終えると キルビーグが頷き 次のデータを映す 再びザッツロードが読む
「連絡が途絶えたまま 残りの聖魔力が定量を迎えてしまった 我々は開発した悪魔力中和装置を何としても使用したい 例えこの世界を救う事が出来ずとも 新世界を救う事は可能である 旧世界の存亡を繋ぐ最後の切り札を そちらの新世界へ送る 万が一新世界において 今までと同等の聖魔力の供給が不可能な状態であるなら そちらへ送った…」
ザッツロードが読んでいる途中でヴィクトールの通信機が鳴る 皆が驚く ヴィクトールが通信機を取り出し 皆に詫びてから繋ぐ
「失礼 …どうした?」
通信機のモニターにヴィクトール14世が映り言う
『申し訳有りません 父上、緊急事態のため 取り急ぎ連絡致します』
皆の視線が強まる ヴィクトールが答える
「何事だ!?」
ヴィクトール14世が言う
『ソルベキア国がロボット兵をガルバディア国へ送り 無差別攻撃を開始 現在アバロン国3番4番隊と交戦中です!』
皆が驚きヴィクトールが言う
「何故ソルベキアが ガルバディアを!?」
ヴィクトール14世が答える
『原因は不明です!ベネテクト国及びシュレイザー国スプローニ国の部隊も 援護に向かっているとの事 現在両アバロン部隊は ガルバディア国王らの支援を受け、雷の剣を有した状態で 元アバロン国3番隊隊長ヘクターと バーネット様が指揮を執り応戦しております!』
ザッツロードが言う
「ヴィクトール陛下!我々も援護に!!」
ヴィクトールが通信へ答える
「ガルバディア国の戦況 及び他国の状況を確認 残りの部隊でアバロンの警戒を強化 変化が有り次第報告しろ」
ヴィクトール14世が返事をして通信が切られる ザッツロードがヴィクトールの下へ駆け寄って言う
「ヴィクトール陛下!」
ヴィクトールがザッツロードへ視線を向けて言う
「落ち着け、ザッツロード王 ガルバディアにはヘクターとバーネットがおり、現在はそこへオライオンらも向かっている 更に他国の部隊も援護に向かっているのだ ガルバディア国王らが支援をしているのなら 魔法剣でしか攻撃の効かないロボット兵へも 部隊兵らの攻撃は有効だ」
ザッツロードが一歩下がりながら言う
「しかし…」
キルビーグが言う
「ヴィクトール殿の仰る通りだ、ザッツロード 各々には各々の役目がある 今の我らの役目は旧世界への支援だ」
ヴィクトールが頷いて言う
「彼らを信じ、我らは我らの役目を行うのだ ザッツロード王 さぁ、先ほどの続きを」
ザッツロードが一度視線を落としてから 再びモニターへ向き直って読む
「…万が一新世界で今までと同等の聖魔力の供給が不可能であるなら そちらへ送った 私の仲間と接触し 預け持たせてある 悪魔力を聖魔力へ変換する宝玉を使用し それを送って欲しい」
ソニヤとラナが驚いて声を上げる
「私の仲間!?」
ラナが言う
「旧世界から人をこちらへ送ったと言うの!?」
ヴィクトールがキルビーグへ問う
「キルビーグ殿、旧世界から人を こちらへ送る事は現在も可能なのか?」
キルビーグが頷いて言う
「ああ、可能だ だが、現在旧世界からこちらへ向かうには 多くの聖魔力が必要だ 従って全ての旧世界の民を こちらの新世界へ送るには 現在有している聖魔力の量ではとても足りない、…それに 彼らもそれは望んでいない事だ」
ザッツロードたちが顔を見合わせ納得する ヴィクトールが続けて問う
「では、次にあった悪魔力を聖魔力へ変換する宝玉とは!?」
キルビーグが機械を操作しながら答える
「こちらの世界から宝玉の情報を送り 旧世界で研究されていた物だ 強い魔力者の協力が必要になるが 悪魔力を聖魔力へ変換する事が出来る宝玉だという」
ザッツロードが驚いて言う
「それは凄いっ 悪魔力を聖魔力へ変換出来るのなら 旧世界はもちろん、新世界をも救う事が可能なのでは?!」
キルビーグが顔を横に振る
「確かに素晴らしい物ではあるが 旧世界において開発に成功した数はたったの10個 そして その宝玉に蓄積された聖魔力は 旧世界を悪魔力から救う 悪魔力中和装置を起動させれば 全ての力を消耗してしまう」
ヴィクトールが言う
「しかし、それらを使用する事によって 少なくとも旧世界の悪魔力は中和されるのだろう 旧世界の民は自らの任を全うした事になる ならば我らも、新世界の悪魔力は 我らが責任を持って処理をするべきだ」
キルビーグが頷いて言う
「ああ、彼らは実に良くやってくれた 新世界へ逃げ出した我らに代わり 旧世界を救う まさに彼らこそ勇者だと言えよう」
ヴィクトールが軽く笑って言う
「新世界の勇者も 負けては居られないな?」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが苦笑する ソニヤが割って入って言う
「あら?新世界の勇者はリーザたちでしょ?私たちは旧世界担当の勇者と仲間たちだもの!」
ラナが続けて言う
「ええ、私たちは私たちの任を 貫かなきゃいけないわ」
2人が声を合わせて言う
「「ね!?勇者ザッツロード!」」
ザッツロードが呆気に取られ問う
「…え?」
ソニヤとラナが顔を見合わせ ソニヤが言う
「だ~か~らっ!!」
ラナが続ける
「私たちは 旧世界から送ったって言う この人の仲間を探さないと!」
ザッツロードがあっと声を上げ言う
「あ、ああ… そうか」
ソニヤとラナが溜め息を付く セーリアが苦笑している ザッツロードが慌てて言う
「ご、ごめん…っ」
ヴィクトールとキルビーグが顔を見合わせ笑う ザッツロードが2人に気付いて苦笑して頭を掻く
ザッツロードがキルビーグへ問う
「それで、父上 この文章にある『私の仲間』と言うのは?」
ソニヤが首を傾げて言う
「それだけじゃ分からないわよね?」
ラナが言う
「過去にそれと分かる連絡を送っているんじゃないの?」
皆の視線の先キルビーグがモニターを見て言う
「恐らくこの者が仲間と称す者は 魔力使いの女性だと思われる」
キルビーグの言葉に皆が驚きソニヤが叫ぶ
「それじゃ!?」
ラナが続ける
「さっきフォリオッド大臣が言っていた!」
ソニヤとラナが顔を見合わせて叫ぶ
「「そうよっ!!」」
2人がザッツロードへ顔を向ける ザッツロードが苦笑するセーリアが苦笑しながら言う
「今は何処にいらっしゃるのかしら?」
ソニヤが言う
「向こうはザッツを追ってくるんだし 私たちが追ったらいつまで経っても会えないんじゃない?」
ラナが問う
「それか私たちが急いで追って 追い付くか…」
キルビーグが言う
「ローレシアを再び訪れた場合は お前達へ連絡し、彼女らをここへ留めておこう」
ヴィクトールが頷いて言う
「アバロンへも私から伝えておく」
ザッツロードが言う
「では我々は 可能な限り急いで追いかけてみます」
キルビーグが頷いて言う
「分かった ヴィクトール殿、貴殿には 現在、旧世界を脅かしている旧世界の機械兵の資料をお渡したい 例え旧世界の悪魔力を全て中和しても 既に洗脳された奴等は動き続ける筈だ」
ヴィクトールが言う
「それは助かる 対機械兵の開発において 貴重な資料となるだろう」
【 シュレイザー国 】
ザッツロードたちがシュレイザー国の移動魔方陣に現れ ソニヤが周囲を見渡しながら言う
「それで~?どうやって探すの?」
ラナが言う
「ローレシアではフォリオッド大臣へ接触したって事は他の国でも同じ様にしてるんじゃない?」
セーリアが微笑んで言う
「それじゃ、お城に行くのね?」
ソニヤが笑顔で言う
「お城に行くんだったら ヴェルにも会えるんじゃない!?」
ソニヤの笑顔にザッツロードが苦笑して答える
「うん、そうだね 連絡は行ってると思うけど ロキの事も… 僕から一言言って置きたいし」
ソニヤが表情を落として言う
「あ~… そう ね…」
ザッツロードたちは城へ向かい、シュレイザー国の大臣と会話をする ザッツロードが驚いて言う
「アンネローゼ女王陛下が ローゼント国へ!?」
ザッツロードたちが驚く 大臣が頷いて言う
「はい、アンネローゼ女王陛下は元々ローゼント国のご出身、今回の戦いは ソルベキア国とローゼント国との歴史の節目になるのでは無いかと 御自分の目で確かめて置きたいとの事です それと、これを機に今まで他国に頼りきりだったシュレイザー国のあり方を変えて行きたいと」
ラナが驚いたまま言う
「シュレイザー国は戦いを行わない国ってイメージがあるから その国の女王様が直接赴くだけでも きっと大きく変わるでしょうね」
ソニヤが大臣へ問う
「アンネローゼ女王様がローゼントへ向かったって事は やっぱりヴェルも… ああ、ヴェルアロンスライツァーも一緒に行ったの?」
大臣がソニヤへ向いて微笑んで言う
「はい、私もヴェルアロンスライツァー殿が一緒だと言う事で こうして安心してアンネローゼ女王陛下の留守を預かっておられます …そ、そうでなかったらっ!?」
大臣がネズミの様にオロオロする ザッツロードたちが苦笑する ザッツロードが気を取り直して言う
「あ、あの それとは別に お伺いしたい事があるのですが」
大臣がハッと気を取り直して ザッツロードへ向いて問う
「はい!我がシュレイザー国をお守り頂いた 勇者ザッツロード様からのお伺いとの事でしたら 私は国中の者から情報をかき集めてまいります!」
大臣の笑顔に ザッツロードが軽く笑って言う
「あ、いや、その… シュレイザー国に 私を探して尋ねて来た者は 居ませんでしたでしょうか?恐らく魔力使いの女性だと?」
ザッツロードの言葉に大臣が少し考えてから言う
「…ええ!おりました!」
ソニヤとラナが大臣に詰め寄って問う
「「ホント!?」」
大臣が驚いてオロオロ怯える ザッツロードとレーミアが苦笑してザッツロードが問う
「それは いつ頃でしょうか?」
大臣がザッツロードへ向き直り答える
「はい、あのシュレイザー国の大戦が終了して 皆様がスプローニ国へ向かわれた翌日でした すぐに向かわれていたので てっきりお会いしているものかと… ご連絡致しませんで申し訳有りませんでした」
大臣が深々と頭を下げる ザッツロードが慌てて両手を自分の前で横に振りながら言う
「あ、いえ 良いんです」
大臣と別れたザッツロードたち ソニヤが問う
「シュレイザー国での戦いが終わって すぐスプローニ国へ向かったなら 私たちと会ってても おかしく無いのに?」
ラナが考えながら言う
「魔力使いであっても 一度も行った事の無い町や国へは 移動魔法が使えないわ」
ザッツロードが気付いて言う
「そうか… ここからスプローニ国へ 歩いて向かうと大分掛かるね?」
セーリアが言う
「そう考えたら あちらがスプローニ国へ辿り着いた頃には きっと私たちはアバロンに居たのでしょうね?」
ソニヤが首を傾げて言う
「ええっと…?それじゃ スプローニ国から歩いてアバロンへ向かったと考えたら~?」
ラナがソニヤへ言う
「最初にローレシアを訪れたのなら アバロンを経由してシュレイザーまで来ていた可能性もあるのじゃない?だとしたら」
セーリアが考えながら言う
「色々考えると やっぱり1つ1つ追って行くのが確実かも知れ無いわね?」
ザッツロードが頷いて言う
「そうだね、確実な方法で辿って行けば アバロンやローレシアでは足止めをして置いてくれるはずだから」
皆が頷き セーリアの移動魔法でスプローニ国へ向かう
【 スプローニ国 】
スプローニ国の大臣の前でソニヤとラナが叫ぶ
「「えぇええ!?」」
大臣が両手で頭の上を押さえながら うるさそうに目を瞑る ザッツロードも呆気に取られながら言葉を溢す
「き… 来て無い?」
セーリアが口に手を当て驚いている 大臣が頭上から手を離しながら言う
「は、はい その様な方はいらしておりません、もし その様な方が訪れておりましたら 我々は即座にザッツロード陛下やアバロン帝国の方へ ご連絡致します」
皆が顔を見合わせ ソニヤが問う
「どうしよう?これじゃ追えないわ」
ザッツロードが考える ラナが言う
「もしかしたら、お城には来ないで 門兵に聞いただけだったとか…?」
ラナの言葉にザッツロードが言う
「そうだね、もしかしたら急いで僕らを追うために 城まで訪れずに兵や誰かに聞いたと言う可能性も…」
ザッツロードたちの様子に 大臣が言う
「人探しと言う事でしたら 城下町の門兵に確認するのが確実だと思われます」
ザッツロードたちは城下町の門兵2人に問う ソニヤとラナが叫ぶ
「「えぇええ!?」」
門兵Aが両手で頭の上を押さえ 門兵Bが両手で耳を塞いで うるさそうに目を瞑る ザッツロードが呆気に取られながら言葉を溢す
「き… 来て無い?」
セーリアが口に手を当て驚いている 門兵らが手を離しながら言う
「は、はい その様な方は いらしておりません」
「もし その様な方が訪れておりましたら 我々は即座にザッツロード陛下やアバロン帝国の方へ…」
ソニヤが言葉の途中でザッツロードへ身を乗り出して言う
「ど、どうしよう!?ザッツ!?」
問われたザッツロードも視線を落として悩む 門兵2人が顔を見合わせ言う
「もしかしたら 皆様に御支援頂いた あの大戦の後にあった 騒ぎに巻き込まれてしまったのかもしれません」
門兵の言葉にザッツロードたちが一度顔を見合わせ ザッツロードが問う
「その騒ぎとは?」
門兵が答える
「あの大戦のすぐ後に とても強力な魔力を持った魔物が2匹 町へ無差別攻撃をしたのです」
皆が驚く ザッツロードが話を急かす
「そ、それで!?町は大丈夫だったのですか!?」
門兵Aが頷いて答える
「町には丁度 あの大戦を終えた他国の兵が多く残っており 彼らの力を得て何とか追い払う事に成功しました とは言え あれほどの魔力を持った魔物が居るとは…」
門兵Bが続けて言う
「おぞましい事に、その魔物たちは 人の使う魔法と同じ種類の魔法 を使って来るのです」
門兵の言葉にザッツロードたちが驚き ザッツロードが言う
「まさかっ!?」
ソニヤが門兵Bへ詰め寄って言う
「その『人の使う魔法と同じ種類の魔法』って!詠唱魔法の事!?」
門兵たちが驚いて答える
「あ、ああ、そうなんだ、呪文を詠唱して 人と同じ魔法を使うんだ」
「それも とても強力な魔法で 多くの者が負傷した」
ザッツロードたちが顔を見合わせ ザッツロードが問う
「その魔物について もっと詳しい事は分かりますか?」
門兵Aが頷いて言う
「先日アバロン帝国へ提出しました 我々では討ち取る事が出来なかった為 周辺の国へも警戒を強めるよう連絡を入れたのです」
門兵Bが言う
「諸卿も この周辺を歩くつもりなら 十分気を付ける事だ」
ザッツロードたちが顔を見合わせ頷き合う
門兵らへ礼を言い その場を離れたザッツロードたち ソニヤがザッツロードへ問う
「ねえ、どうする?この周囲に あの魔物が居るかもしれないって」
ラナが言う
「あら?もう会いたくなかったんじゃ無いの?」
ソニヤが顔をしかめて言う
「そ、それは~ そうだけど…」
セーリアが言う
「詳しい事をアバロン帝国へ提出したって言っていたから もしかしたらアバロンへは 他の国からも 連絡が入っていたりするのではないかしら?」
ザッツロードが考えながら言う
「そうだね、それに僕たちはスプローニ国からアバロンへ向かった もし旧世界の人が 誰かに僕らの動向を聞いていたら アバロンへ向かっているはずだ」
【 アバロン帝国 】
玉座の間 玉座の前で待つザッツロードたち そこへヴィクトール14世が現れ玉座へ座る 皆が呆気に取られて驚き ザッツロードが一度敬礼してから顔を上げて言う
「あ… あの…」
ザッツロードが戸惑っているとヴィクトール14世が微笑んで言う
「ザッツロード王、私も父から帝位を譲られ このアバロン帝国の皇帝となったのだ 貴公らの任や悪魔力に関する事は 一通り聞き及んでいる」
ザッツロードが慌てて再度敬礼する ヴィクトール14世が軽く笑って言う
「畏まる必要は無い、私もヴィクトール13世同様 貴公らと共に悪魔力と戦う仲間だ」
ザッツロードが顔を上げて言う
「はい、有難う御座います ヴィクトール14世皇帝陛下」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷き言う
「それで、貴公らがアバロンを訪れたという事は 何か進展があったと言う事だろうか?ヴィクトール13世からの連絡では 貴公らは旧世界からの使者を探していると聞き及んでいたが?」
ザッツロードが頷いて言う
「はい、我々はその者を追ってシュレイザー国からスプローニ国へ向かいました、しかし、スプローニ国にて その者の情報が途絶えてしまいました」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷き言う
「そうか、今の所このアバロンに その者たちは来て居ない」
ザッツロードたちが驚く ヴィクトール14世が続けて言う
「そして、キルビーグ殿からの連絡では ローレシア国へも再度現れては居ないとの事だ」
ザッツロードの仲間たちが顔を見合わせる ザッツロードが視線を落として言う
「そうですか…」
ヴィクトール14世が言う
「私の方からツヴァイザー国とベネテクト国へ連絡を行い 貴公を捜し求める者があった場合は アバロンやローレシア同様 足止めと連絡を行う様伝えてある キルビーグ殿よりデネシア国及びカイッツ国へも同様の連絡を 行っている それらの国へ現れた際は 私かキルビーグ殿より 即座に貴公らへ伝わるだろう」
ザッツロードが呆気に取られながらも ハッとして言う
「で、では我々は残りの国へ…っ ローゼント国 ソルベキア国 ガルバディア国へ…」
ヴィクトール14世が顔を横に振って言う
「ローゼント国 及び ソルベキア国へは現在ヴィクトール13世が向かっており、彼の口から伝わっているはずだ、そしてガルバディア国へはバッツスクロイツ殿へ伝えてある… ただ、こちらは現在混戦中だ 人探しの余裕は無いと思われる」
ザッツロードが言う
「ヴィクトール13世こう…元皇帝陛下は 現在ローゼント国 及び ソルベキア国へ?」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が軽く笑い答える
「うん、ヴィクトール13世はローゼント国へ向かい リーザロッテ王女らと合流しソルベキア国攻略に参加するとの事だ」
ザッツロードが考えてから言う
「ヴィクトール14世皇帝陛下、ソルベキア国での戦況は伝わっていますか?」
ヴィクトール14世が答える
「ソルベキアは機械技術に秀でた国である為 今作戦中は極力無線連絡を行わぬようにしている 何か急用であるのなら使いの者を向かわせるが?」
ヴィクトール14世の言葉に慌ててザッツロードが否定する
「あっ!い、いえ…っ ただ、もし援護が必要であるなら… ソルベキアには現在 私の兄が幽閉されているのです 国王たる者 私情を用いてはいけないと ヴィクトール13世元皇帝陛下にお叱りを頂いたのですが 申し訳有りません…」
ザッツロードが視線を落とす ヴィクトール14世が少し間を置いてから言う
「今作戦は元々ソルベキア国攻略にあったが それが困難とされた場合でも 貴公の兄君キルビーグ2世殿を救出する事は 最優先とされている」
ザッツロードが驚き顔を上げる ヴィクトール14世が微笑んで言う
「これは機密事項だ 貴公らにも伝える事無く 作戦を遂行したいと言っていた ソルベキアへの情報漏洩を避けるためにな …だが貴公の兄君を心配するその気持ちに 私は心打たれ伝えてしまった」
ヴィクトール14世が苦笑する ザッツロードが微笑んで礼を言う
「有難う御座います ヴィクトール14世皇帝陛下 お陰で安堵出来ました」
ヴィクトール14世も微笑を返して言う
「うん、それで良い、だが もし…」
ヴィクトール14世が言葉を止めるザッツロードが注目する ヴィクトール14世が口角を上げて言う
「私が機密情報漏洩罪に問われ 私の指導官であるバーネット様にお叱りを受ける事になってしまったら 代役を引き受けてくれるかい?」
ザッツロードが慌て声を上げる
「え?…えぇええ!?」
ヴィクトール14世が笑って言う
「ふふ、冗談だ」
ザッツロードがホッと胸を撫で下ろす 後方で仲間たちが呆れている ザッツロードが言う
「それと、ヴィクトール14世皇帝陛下、それらの話とは別に 我々はスプローニ国にて 気になる情報を聞きました」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が首を傾げて問う
「その情報とは?」
ザッツロードが答える
「はい、既にそのスプローニ国からアバロン帝国へ 情報が提出されているとの話ですが スプローニ国にて詠唱魔法を使用する魔物が現れたと 恐らくこの魔物と同じものと我々は一度 ローレシア国にて遭遇しております その際ヴィクトール13世元皇帝陛下もいらしたので この話もアバロン帝国へ伝わっていると思うのですが」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷いて答える
「ああ、双方とも聞き及んでいる 私の方でも調査を行わせているが 今の所その2つ以外の情報は無い」
ザッツロードが気を落として言う
「そうですか…」
ヴィクトール14世がザッツロードへ言う
「何か新しい情報が入った場合は知らせよう そして、貴公らの援護が必要な時も連絡を入れる それまでは独自に 旧世界からの使者を捜し求めてくれ」
ザッツロードが顔を上げて言う
「はい、ヴィクトール14世皇帝陛下 有難うございます」
ヴィクトール14世が頷く ザッツロードが敬礼し玉座の間を後にする
玉座の間を後にしたザッツロードたち 通路を歩きながらソニヤが言う
「旧世界からの使者を独自に探せって言ったって スプローニ国に向かったって事以外 情報が無いのにどうやって探すの?」
ラナが考えながら言う
「シュレイザー国では確認されているけど、その時から随分時間が経ってしまっているし」
セーリアが困った表情で言う
「どこかの国へ立ち寄ってくれれば 今ならアバロンかローレシアに連絡が来るのだけど」
ザッツロードも悩みながら言う
「うん… こんな時 例えばヴィクトール陛下だったら どうするのだろう…?」
ザッツロードの仲間たちが ザッツロードへ視線を向けて苦笑する ソニヤが言う
「ザッツてば、ローレシアでもヴィクトール陛下って呼んでたわよね?」
ソニヤの言葉にザッツロードが疑問して言う
「え?」
ラナとセーリアが苦笑して セーリアが言う
「ヴィクトール13世はもう皇帝陛下では無いのだから ヴィクトール陛下とお呼びするのは ちょっとどうなのかしら?」
ザッツロードがあっと驚き 苦笑して言う
「ああ… そうだったね えっとそれじゃ… ヴィクトール…元皇帝陛下」
ザッツロード以外の者が笑う ザッツロードが苦笑して言う
「きゅ、急にはやっぱり難しいよ あ!ほら、皆だって 僕の事をザッツロード陛下って言うのは難しいだろ?」
ソニヤが苦笑して言う
「え~?それじゃー 呼んであげるよ~?ザッツロード陛下!」
セーリアが苦笑しながら言う
「ええ、ザッツロード陛下!」
ラナが呆れて言う
「それで?ザッツロード陛下、これから如何なさいます?」
ザッツロードが後退って言う
「や、やっぱりザッツで良いよっ それでっ えっと?ど… どうしようか?」
ザッツロード以外が溜め息を吐き ソニヤが言う
「やっぱりザッツに ザッツロード陛下は まだ早いみたいね」
ソニヤの言葉にザッツロードがショックを受けて言う
「う… ご、ごめん」
セーリアが慌ててフォローする
「ま、まぁ?今はこんな時なのだし 仕方が無いわ ね?ほら、今はザッツロード陛下より 勇者ザッツロードなのだから!」
ラナが呆れながら言う
「それはそうとして 本当にどうするの?例えば その ヴィクトール…元皇帝陛下だったら?」
ラナが頬を赤らめる 皆が苦笑する ザッツロードが考えて言う
「うん… ヴィクトール元皇帝陛下なら…」
ザッツロードたちが考える バッツスクロイツの声が響く
「だーから!そんなのいくら俺っちでも無理だって!大体 そんなの 不可能だってばー!」
ザッツロードたちが驚き 声の聞こえた上の階へ顔を向ける バッツスクロイツが通路を走って逃げている 鞭が伸びて来てバッツスクロイツが捕まる バーネットが続いて現れて言う
「うるせぇええ!無理でも不可能でも 作りやがれってんだぁあ!!」
バーネットがバッツスクロイツを締め上げている バッツスクロイツがもがいてワザとらしく言う
「きゃぁー やめてー 誰か ヘルプミーー!って お?あれ?お前らー?」
バッツスクロイツがザッツロードたちに気付いて視線を下の階へ下ろす バーネットがそれに気付いてバッツスクロイツの視線の先を追いながら疑問の声を上げる
「あん?」
ザッツロードたちが上の階に居るバーネットたちを見上げて ザッツロードが言う
「バ、バーネット第二皇帝陛下!?何故アバロンに!?ガルバディアで アバロン部隊の指揮を執っていらしたのでは!?」
バーネットがバッツスクロイツを手放して答える
「ああ、オライオンの奴が来やがったから 代わってやったんだぁ でもって 親父の説得は任せろとか抜かしやがたしなぁ?しょーがねーから 全部任せて俺はこっちに戻って来てやったんだ!」
バッツスクロイツが笑いを抑えて言う
「ぷぷーっ とかなんとか言っちゃってー?本当はバーネっち アホヘクターにボコボコにされたせいで 体力尽きちゃっててさ?フラフラだったのに~?」
バッツスクロイツの言葉にバーネットが焦り赤面して叫ぶ
「ぬなぁ!?て、てめぇえええ!!」
バーネットが鞭を振り上げて叫ぶ
「余計ぇえな事抜かしてねぇえで!さっさとプログラムを作りやがれぇええ!!」
バッツスクロイツが焦って逃げながら叫ぶ
「だからっ そんな無茶なプログラムは 作れ無いってー」
バーネットが追いかけながら叫ぶ
「無茶でも何でも作れっつってんだ!!信じれば何でも出来るんだろうがぁああ!!」
バッツスクロイツが逃げながら言い返す
「それは 先にプログラムがあっての話でー!」
バーネットが追いかけながら言う
「ならプログラムも 出来ると信じて作りやがれぇええ!!」
バッツスクロイツがバーネットに締め上げられながら言う
「んなムチャクチャなー!」
ザッツロードたちが呆気に取られソニヤが言う
「ヴィクトール元皇帝陛下だったら…」
ラナも首を傾げて言う
「もしかしてバーネット第二皇帝陛下に頼ったりも… するのかしら?」
セーリアが微笑んで言う
「お2人は最高の相棒ですものね?」
ザッツロードが苦笑しながら言う
「そ、そうだね 僕の相棒には… 遠慮しようかと… 思うけど」
バッツスクロイツの研究室 バッツスクロイツが機械を操作しながら言う
「バーネっちってばさ?ザッツたちが旧世界からの使者を探してるって聞いて 俺にその使者を見つけるプログラムを作れーとか言うんだぜー?本当はー?そんなの無理だってー分かってるくせにー」
バーネットがバッツスクロイツに背を向ける位置にあるソファに身を沈め凭れながら言う
「直接見付けるのは不可能でも 旧世界から来るってぇ~んだぁ… ちっとは 新世界に居る俺らとは違う 何かが あるかもしれねぇだろがぁ?」
バッツスクロイツがバーネットへ振り返って言う
「だから!その『何か』を見つけて来て貰えないと 無理だって!」
バーネットが振り返って叫ぶ
「るせぇえ!知るかぁあ!!てめぇえで探して来やがれぇえ!!」
ザッツロードたちが呆気に取られる バッツスクロイツが機械へ向き直り バーネットが再びソファに身を静めて言う
「…ってぇ訳で、今回はてめぇらの支援になるプログラムや何かは用意してやれねぇ… 悪ぃな?この鈍くせぇバッツスクロイツが役に立たなくてよぉ?」
バッツスクロイツが勢い良く振り返って叫ぶ
「俺ー!?俺っちのせいー!?」
バーネットが溜め息を吐く バッツスクロイツが再び機械へ向いて肩を落とす ザッツロードが言う
「あ、いえ… 有難う御座います バーネット第二皇帝陛下 僕たちの為に」
バーネットがザッツロードへ向いて言う
「別にてめぇえらの為じゃねぇよ 礼はいらねぇ …ああ、それと 俺はもうアバロン帝国の第二皇帝じゃねぇから…」
ザッツロードが言葉の途中で微笑んで言う
「分かりました バーネット!」
バーネットが驚いて叫ぶ
「おいっ てめぇ!?やけに割り切りが 早ぇえだろがぁああ!?」
ザッツロードの仲間たちが苦笑する
ザッツロードが間を置いて言う
「あの… バーネット…元第二皇帝陛下?」
バーネットが視線を合わせないまま言う
「バーネットで良い …で?」
ザッツロードが苦笑して言う
「旧世界からの使者の情報が途切れてしまって… どこかの国へ訪れた際は連絡が入るよう ヴィクトール14世皇帝陛下や私の父が 手はずを整えてくれているのですが」
バーネットが軽く笑って言う
「それまで のんびり昼寝してる訳には行かねぇよなぁ?」
ザッツロードが苦笑して言う
「はい、ヴィクトール14世皇帝陛下にも 独自に探すよう仰せつかいました ただ、正直何処を探したら良いのか見当が付かなくて」
バーネットが視線を合わせず答える
「だな?こっちも… この鈍くせぇバッツスクロツが…」
言葉の途中でバッツスクロイツが振り返って言う
「またー!?また俺っちのせいー!?」
バーネットが軽く笑ってソファへ身を静める バッツスクロイツが機械に向き直り 言い掛けると気付いて言う
「まったく 信じられねえー …って あらー?バーネっち?その鈍くせぇ俺が 見つけたけどー?」
バッツスクロイツの言葉にバーネットが立ち上がり バッツスクロイツの横へ行ってモニターを見て問う
「どぉだ?」
ザッツロードと仲間たちが顔を見合わせ ザッツロードがバーネットの後ろへ行く バッツスクロイツが機械を操作しながら言う
「うん… やっぱこれっぽい ほら?最初にローレシアに向かって 次にシュレイザー国へ行って スプローニ国へ向かってる」
バッツスクロイツの言葉にザッツロードが驚き バッツスクロイツの下へ行き問う
「ローレシアからシュレイザーに行ったとは まさか!?」
バッツスクロイツが機械の操作をする ザッツロードがバーネットへ視線を向ける バーネットが答える
「何の手がかりも無しじゃぁ、直接その旧世界からの使者とやらを 見つける事は出来ねぇ ってぇ事は分かってたからな?仕方ねぇから今あるプログラムを使って 過去の魔物の様子を確かめさせてたんだ」
バッツスクロイツが顔を向けないまま答える
「聞いた?今の?酷くねー?直接見つけられないのは 分かってたって… そのくせ気に入らない事があると それを理由に俺を虐めるんだぜー?この人ー?」
バッツスクロイツの言葉にザッツロードが苦笑してからバーネットへ問う
「過去の魔物の様子とは?」
バーネットが続ける
「旧世界から送られて来た奴ってぇのは 魔力使いなんだろ?つまり戦えねぇ人間じゃぁねぇんなら 移動する間に魔物をぶっ倒す事になる と、そんな今は、どこの国にも悪魔力の影響が薄くなる半年後まで なるべく移動を控えるように言ってあるんだ そうとなりゃぁ?」
バーネットの説明を聞き ザッツロードが驚いて言う
「し、しかし 世界中の人間の移動となると!?」
ザッツロードの言葉にバッツスクロイツが顔を向けないまま言う
「だろー?普通そう思うってー しかもー?いつの時代も外出禁止を守らない人って 居るからサー?各国の部隊移動履歴や個人に雇われた傭兵らの移動データで 倒された魔物のデータを選別したって その旧世界からの使者さんと出会える可能性 チョー低いってのー?」
続けてバーネットが言う
「だとしても、ローレシアとシュレイザーで確認された日付けだけは分かってんだ、その2つを加えりゃかなり狭められる」
ザッツロードがバッツスクロイツへ視線を向ける バッツスクロイツが苦笑して言う
「それで、結果が出て選別されたのが ざっと18人 昨日の話だぜ?」
ザッツロードと仲間たちが驚く ソニヤが言う
「18人!?それなら」
ラナが溜め息を吐いて言う
「でも、その中から1人を探している間に 残りの17人はまた何処かへ向かってしまって 時間が経過すれば するほど候補に上がる人が増えるんじゃない?」
バッツスクロイツが頷いて言う
「ラナちゃんの言う通りー …でも、誰かさんは諦め悪くって?ガルバディアでヘクターにボコられて ボロボロの癖に その1日の間に17人の確認に成功ー」
ザッツロードたちが驚き ザッツロードが言う
「す、凄い… 世界中に居る17人を1日で確認するなんて」
ザッツロードがバーネットへ顔を向ける バーネットがモニターへ視線を向けたまま答える
「ヴィクトールから宝玉を預かってたお陰だ、俺はあれがねぇと移動魔法が使えねぇからよぉ」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「そのせいでまたアザが増えたんじゃねーの?バーネっちの移動魔法は とんでもない勢いでぶっ飛ぶからー」
バーネットがバッツスクロイツへ向いて怒鳴る
「うるせぇ!宝玉の力が強過んだよぉ!!」
ザッツロードたちが苦笑する ソニヤが言う
「ヴィクトール元皇帝陛下が言ってた 乱暴な移動魔法って」
ラナが呆れながら言う
「バーネット元第二皇帝陛下の使う 移動魔法の事だったみたいね」
バーネットが言う
「だが、何処を探しても最後の1人の確認が出来なかった」
ザッツロードたちがバーネットへ視線を向ける バッツスクロイツが言う
「その1人をー 俺っちが追跡ー!」
ザッツロードたちが驚く モニターにローレシア領域の地図が映し出される 皆が地図に注目する 地図に印が出る ソニヤが叫ぶ
「ここに居るって事!?」
ザッツロードたちが驚く バーネットが言う
「そう焦るな、おいっ こいつはいつの情報だ?」
バッツが答える
「うん、これは3~4日前」
セーリアが言う
「3~4日前って事は 私たちが丁度ローレシア城へ向かった頃ね?」
ソニヤが溜め息を吐いて言う
「なによ もぉ~ 私たちがシュレイザーへ向かった時には とっくにローレシア領域に戻ってたんじゃない!」
ザッツロードが言う
「しかし、ローレシア城には居なかった 旧世界からの使者は ローレシアの城ではなく 他の町や村へ向かったのかもしれない」
バッツスクロイツが首を傾げて言う
「んで、旧世界の使者さんは 3~4日前にはローレシアへ戻ってたんだから そろそろ町や村を尋ね終えて もーいっかいローレシア城へ立ち寄ったりするんじゃ無いか?そうしたらザッツの父ちゃんから連絡が来るんだろ?」
バッツスクロイツが言い終えると同時にザッツロードの通信機が着信する 皆が驚く ザッツロードが慌てて通信機を取り出し通信する
「はい こちらザッツロードと」
言い掛けた所で相手が喋る
『私よ!ザッツロード王子!…じゃなかった ザッツロード王!』
ザッツロードがハッとして言う
「リーザロッテ王女!兄は!?キルビーグ2世は発見されましたか!?」
皆がモニターに注目する リーザロッテが微笑んで言う
『ええ!無事救出したわ!』
皆が安堵する リーザロッテが言う
『ただ、まだ戦いは続いているの 通信は控えるように言われているから 切るわ!』
ザッツロードが慌てて言う
「リーザロッテ王女!あのっ 連絡を有難う御座いました!」
リーザロッテが一瞬驚き微笑んでから言う
『そのお礼ならヴィクトール前皇帝陛下に言って頂戴!貴方が『お兄様の事で気を散らしているかもしれないから』って 連絡をする様に言って下さったのよ!』
通信機の後ろでヴィクトールの声が聞こえる
『リーザロッテ王女、私は『彼らを後押しするために伝えろ』と』
ザッツロードたちが苦笑する リーザロッテが一度後ろを振り返ってから 再び通信モニターへ向き直って言う
『とにかく、そう言う事だから 貴方たちも頑張りなさい!』
リーザロッテの言葉にザッツロードが返答する
「はい!そちらも気を付けて!」
通信が切られる ザッツロードが微笑する バーネットが笑んで言う
「こっちも負けてらんねぇなぁ?」
ザッツロードが通信機をしまいバーネットへ向き直って言う
「はい、バーネット元第二皇帝陛下とバッツのお陰で 旧世界からの使者の居場所が ローレシア領域まで狭められました、僕らも今すぐ向かってみます!」
ザッツロードの仲間たちが顔を見合わせ頷きザッツロードへ向く バーネットがバッツスクロイツへ向いて言う
「おい、悪魔力の霧の確認も 忘れるんじゃねぇぞ?」
バッツスクロイツがため息混じりに返答する
「へいへ~い また固まったら連絡するー バーネっちもあんまりぶっ飛び過ぎ無い様にー」
バーネットが出口へ向かう ザッツロードがバーネットへ問う
「バーネット元第二皇帝陛下も どちらかへ?」
バーネットが振り返って言う
「バーネットで良いっつってんだろ!どこに行くかって?ローレシア領域へ行くんだろーがぁ?」
ザッツロードが思わず疑問の言葉を声に出す
「え…?」
仲間たちも驚いてソニヤが言う
「もしかして 私たちと一緒に?」
バーネットが振り向いて言う
「あん?俺と一緒じゃ行けねぇってぇえのか?あぁあ!?」
バーネットがザッツロードの顔を覗き込む ザッツロードが慌てて言う
「い、いいいいえっ!ぼ、僕は何もっ!!」
セーリアが苦笑しながら言う
「でも… お怪我をなされているのでは?」
バーネットが軽く笑って言う
「ソルベキアではロボット兵やらと戦ってるんだぜ?ガルバディアでもな?こんな時に ゆっくり休んでなんか居られるかってんだっ」
バーネットが部屋から出て行きながら言う
「おら!早くしろ!今度旧世界からの使者に逃げられたら 追えねぇぞ!?」
ザッツロードたちがハッとして急いで部屋を出て行く ザッツロードが部屋を出る前にバッツスクロイツへ言う
「バッツも 本当に有難う!」
バッツスクロイツが笑顔で答える
「はいはーい!旧世界からのレディたちに宜しくなー?」
ザッツロードが微笑み 頷いて仲間たちを追う
アバロン城の外へ出たザッツロードたち セーリアが移動魔法の詠唱を行おうとする ザッツロードがバーネットへ問う
「バーネット…元」
ザッツロードが言い掛ける バーネットが振り向く ザッツロードが焦るバーネットが言う
「その後に何も付けんじゃねぇって言ってんだろ!」
バーネットに指差され ザッツロードが焦りつつ返事をする
「は、はい!」
一度深呼吸して再び言い直す
「バーネットも 移動魔法が使えるのですね?」
ザッツロードの葛藤に仲間たちが軽く微笑む 問われたバーネットが軽く笑って言う
「ああ、昔ソイッドの魔術師に教わったんだ、俺みてぇな魔力の欠片もねぇ奴でも 宝玉の精霊様の力を借りりゃ出来るってよ?けど、最近じゃ魔法アイテムなんてのもあるから 器量の良い奴なら その魔法アイテムの魔力だけでも 移動魔法が使えるらしい」
ソニヤが思い出して言う
「その『器量の良い奴』って もしかして ベーネット陛下の事だったりして!」
ソニヤの言葉にバーネットが軽く笑って言う
「まぁそう言う事だ、あいつに移動魔法を教えたのは俺だしな!」
ラナが問う
「その教えたバーネット…っは 魔法アイテムでは使えないの?」
バーネットが苦笑しながら言う
「ああ なんでかなぁ…?なんっつーかよぉ… 最初に宝玉の精霊様に何だ~ とか教わっちまったせいか 魔法アイテムだと その精霊様と話せねぇんだよなぁ?」
ラナが表情を明るめて言う
「バーネット!貴方 魔術師の素質があるんじゃないの!?」
ソニヤが呆れて言う
「移動魔法だけしか使えない魔術師じゃ 意味無いんじゃな~い?」
ソニヤの言葉にラナが怒る バーネットが軽く笑って言う
「ハッ!それに、移動の度に宝玉を使っちまう訳にはいかねぇからな?俺がこいつで移動魔法使うのは 悪魔力に関する事でどぉしてもって時ぐれぇだ …て事で 今回はてめぇらに同行すんだよ?」
ザッツロードが問う
「本当はローレシア城に… 父上に御用があるのですね?」
バーネットが口角を上げて言う
「まぁ、そう言うこった」
セーリアの移動魔法詠唱が終り ザッツロードたちがローレシア領域へ飛ぶ
【 ローレシア国 】
ローレシアの移動魔方陣へ無事到着したザッツロードたち ラナが言う
「セーリア、今日はザッツロード国王陛下とバーネット元第二皇帝陛下が一緒だったのに 移動魔法は大成功だったわね?」
セーリアがラナに焦って怒り言う
「あ、あれはっ ソニヤが大きな声を出したからっ!」
ソニヤが照れたように笑う ザッツロードが周囲を見渡しながら言う
「旧世界からの使者は ローレシア領域に戻ったのなら この移動魔法陣に戻ったのだろうから ローレシア城以外に一番近いのはキャリトールの町かテキスツの町になるかな?」
ソニヤがザッツロードと同様に周囲を見渡してから言う
「ねぇザッツ、どっちでも良いから 行くなら早くしようよ? またあの変な魔物が出たら嫌だし」
ソニヤの言葉にザッツロードが苦笑する バーネットが問う
「その『変な魔物』ってぇのは 例の詠唱魔法を使う魔物って奴の事かぁ?」
ザッツロードがバーネットへ向いて頷いて言う
「はい、そこの森の中で遭遇したんです」
ザッツロードが森を指差す バーネットがそちらへ向いて少し考えてから向かう ソニヤが驚いて言う
「え!?ちょっ!?ちょっと バーネット!まさか行くって言うの!?」
バーネットが振り返って言う
「その魔物の情報は お前らからのとスプローニ国からの その2つしかねぇんだ、今は色んな所の戦いだの何だので 確認作業にも行かせられねぇし …腐っちまう前に確認しておいた方が良いだろ?」
ソニヤが叫ぶ
「いやぁー!!私、絶対そんなの嫌っ!!」
ザッツロードが苦笑して言う
「ソニヤたちはここで待ってなよ?バーネットと僕で行ってくるから」
ソニヤがラナとセーリアへ顔を向ける 2人が顔を見合わせて表情を歪ませる ザッツロードが苦笑して言う
「すぐに戻るよ、待っていてくれ」
ザッツロードが言い終えると共にバーネットの後を追う
バーネットが魔物の遺体の横にしゃがんで見ている ザッツロードが向かうと バーネットが振り向いて問う
「こいつらか?」
ザッツロードが魔物へ向いて頷いて言う
「はい」
ザッツロードが返事をするとバーネットがナイフを取り出し魔物を切る ザッツロードが驚いて問う
「え!?か、解剖するんですか!?」
ザッツロードの言葉にバーネットが顔を向けないまま答える
「解剖とまではいかねぇが 魔物ってぇのは 野生の動物なんかが悪魔力に侵された時 自分が想像する一番嫌いな相手の姿に変わっちまうらしい っと言ってもあくまで想像だからなぁ 外見だけがその姿になるってぇだけで 中身は変わらねぇ だから猫みてぇな魔物の正体が その猫に襲われる側の ネズミだったりしてな?」
ザッツロードが感心しながら言う
「そうだったんですか… 僕はその魔物にどんな攻撃が有効か?等の事ばかり学ぼうとしていて 魔物の正体がその様な事になっていたとは 考えた事もありませんでした…」
バーネットが軽く笑って言う
「言っても、俺は動物の専門家じゃねぇから 中身見てこれは犬だ狼だなんて細けぇ差は分からねぇ だから大した事は確認できねぇと思うんだが…」
バーネットが話の途中で言動を止める ザッツロードが気付いて問う
「バーネット?どうかしましたか?」
バーネットが困惑して立ち上がる ザッツロードが近くへ来て問う
「バーネット?一体…?」
バーネットが通信機を取り出しバッツスクロイツを呼び出す 呼び出されたバッツスクロイツが不思議そうに問う
『やっほー?こちらバッツスクロイツー バーネっち?どうしたー?忘れ物ー?』
バーネットが真剣な表情で問う
「バッツスクロイツ、今すぐ確認しろ 現在までのローレシア領域への 悪魔力濃度は?」
バッツスクロイツがバーネットの真剣さに気付いて 自身も真剣な表情になり機械を操作して言う
『ローレシア領域は結界の島の悪魔力を中和した日から今日までの間 平均プラス50%前後 警戒レベルは4のまま』
バーネットが続けて問う
「なら、全世界で人が魔物化する可能性のある 警戒レベルに達した シュレイザーとスプローニその2国から 魔法使いの失踪は報告されているか?」
ザッツロードが驚き バッツスクロイツが再び機械を操作して答える
『スプローニにおいての失踪者は無し シュレイザー国の失踪者に魔法使いは居ない』
バーネットが続けて問う
「そうか… ローレシア国内の魔法使いについての詳細は分かるか?」
バッツスクロイツが首を傾げて言う
『ローレシアは最近まで情報を渡さなかったお陰で まだそこまで詳しいデータは解析されて無いんだ 直接キルビーグ殿に聞いた方が早くて確実だと思う 繋ごうか?』
バーネットが一瞬間を置いてから言う
「いや、俺が直接する ヴィクトールからの連絡は?」
バッツスクロイツが即答する
『無し!』
バーネットが魔物の遺体を切りながら言う
「分かった、入り次第 俺へ繋げ」
バッツスクロイツが軽く微笑んで言う
『りょーかい!』
バッツスクロイツとの通信を切ったバーネットが 続けてキルビーグへ繋ぐ ザッツロードが近づいて問う
「バーネット陛下、一体何が?」
ザッツロードが言うと共に通信が繋がり バーネットがキルビーグへ言う
「キルビーグ殿、突然の連絡失礼する 単刀直入だが ローレシア領域にある魔法使いの町において 魔法使いの失踪者の確認は得られるだろうか?」
キルビーグが一瞬驚き 気を取り直して言う
『…あ、ああ 可能だ ただあの町には一言で魔法使いと言っても その能力差によって分けられている それら全てを合わせてとなると 少々時間が掛かるが』
キルビーグの言葉にバーネットが魔物から指輪を取り出して言う
「だったら その能力差ってのは こいつで分かるか?」
バーネットが指輪を通信機に近づけて見せる ザッツロードがそれを見て驚く 通信機のモニターでキルビーグが頷いて言う
『それは最上級魔法使いの指輪だ 確認させよう すぐに分かるはずだ』
キルビーグが言って通信を切ろうとする バーネットが何かに気付いて言う
「おっと… キルビーグ殿、やっぱり良い」
キルビーグとザッツロードが疑問する バーネットがザッツロードへ静かに問う
「ザッツロード、旧世界からの使者って奴らは 悪魔力を聖魔力へ変換する宝玉を 持ってやがるって言ってたな?」
ザッツロードが答える
「は、はい そうですが?それが 何か!?」
バーネットが魔物から 宝玉が入りそうな袋を取り出し それを見ながら立ち上がる ザッツロードがバーネットの手にしている物を見ながら問う
「それは?」
通信機のモニター越しに キルビーグがバーネットの手に持つ物を見て言う
『バーネット殿!まさか!それはっ』
【 ローレシア城 】
ローレシア城地下機械室 ザッツロードたちが居て そこへキルビーグが現れ言う
「何と言う事か… バーネット殿、やはり あの魔物の正体は… 彼女らであった」
キルビーグの言葉にバーネットが視線を逸らして舌打ちする バーネットを見ていたザッツロードがキルビーグへ問う
「父上、一体どう言う…!?」
ザッツロードの問いにキルビーグが向き直って言う
「ザッツ、我々が退治した あの魔物の正体こそ 旧世界からの使者だ」
ザッツロードたちが驚く ソニヤが思わず言う
「そ、そんなっ」
ラナが視線を落として言う
「私たちが…?」
セーリアが言葉を失って後退る ザッツロードが硬直したまま言う
「僕らが… 旧世界からの使者を…!」
間を置いたバーネットが顔を上げて言う
「なるほど、いくら各国からの連絡を待っても現れねぇ訳だ… あの姿じゃぁ国を尋ねる所か 人に会った時点であぁなるしかねぇからな」
ザッツロードが顔を上げバーネットへ言う
「しかし!我々と接触していたにも関わらず 救うどころか 僕らの手でっ」
バーネットがザッツロードへ向き直って言う
「今の所、完全に魔物化した生物を 元の姿に戻す方法は見付かってねぇんだ ああなっちまった以上 奴らが旧世界からの使者だって事が 分からなかったとは言え お前らがした事は 間違って無かった」
ザッツロードが何かを言おうとするが言葉が出ない バーネットがキルビーグへ向いて言う
「それで、キルビーグ殿 奴らが持っていたあの宝玉は?」
バーネットの言葉にキルビーグが頷いて言う
「ああ、もう一体の魔物の遺体からも5つ バーネット殿が先に手に入れられた5つと合わせて10になる 旧世界からの連絡にあった通りだ」
ザッツロードがキルビーグへ向いて問う
「父上、あれからまた旧世界からの連絡はあったのですか?」
キルビーグが頷いて機械へ向かいながら言う
「ああ、悪魔力を聖魔力へ変換する あの宝玉を発動させる方法が 詳しく送られて来た 旧世界の使者である彼女らへも 伝えてあるが念のためと… まさか、この連絡が役立ってしまうとはな」
キルビーグが言い終えると共に モニターにメッセージを映し出す ザッツロードが読む
「こちらから送った旧世界の宝玉を起動させるには 強い魔力者の協力が必要になる 詳しくは彼女らに伝えてあるが いまだ接触されていないとの事 先にその方法を伝えておく 1つの宝玉の起動に必要な魔力の量は 最上級魔力者5名以上の調整された魔力 58000を有する」
ザッツロードの言葉に ラナが驚いて叫ぶ
「58000ですって!?」
ソニヤが続けて言う
「それを10個なんて!ローレシアの3つの町や村を合わせても 最上級魔力者は13人しか居ないのよ?!」
セーリアが皆を落ち着かせようと言う
「でも、不可能では無いわ、時間は掛かってしまうかもしれないけれど それでもその13人が何日も掛ければ」
セーリアの言葉にキルビーグが言う
「残念だが その時間の猶予がないのだ」
皆の視線がキルビーグへ向く キルビーグが機械を操作してモニターのメッセージを変える ザッツロードが読む
「どうか、可能な限り急いで欲しい こちらの現状は連絡してある通り 悪魔力中和装置を使用するに当たり その聖魔力量はもはや限界に達している 次の連絡は送る事が出来るか定かでは無い もし次の期日までに こちらからの連絡が無かった場合は 我々が最終手段を決行したと判断して欲しい 世代を超えての支援 旧世界の民は皆 親愛なるローレシア帝国皇帝へ感謝している」
ザッツロードがキルビーグへ向いて問う
「父上!最終手段とは 以前の連絡にあった」
キルビーグが頷いて言う
「ああ、そうだ 旧世界に残る聖魔力を使用し 悪魔力中和装置を起動させる そうなれば現在 旧世界の民を守っている 聖魔力の結界が失われ 民たちは先に魔物化している 旧世界の悪鬼にその命を奪われてしまうだろう」
バーネットが言う
「その次の連絡ってぇのは 具体的にいつなんだ?」
バーネットの言葉にキルビーグが答える
「…1週間後だ」
皆が驚く バーネットが言う
「時間がねぇ、おいっ!今すぐ旧世界の宝玉を 魔力者の町や村へ持って行きやがれ!」
バーネットが言うと共に 旧世界の宝玉が入った袋をソニヤへ押し付ける ソニヤが受け取りながら言う
「で、でもっ1週間なんて短い期間じゃ全部出来るかどうか!」
バーネットが言う
「『出来るかどうか』じゃねぇ!やるんだ!!魔力者の奴らに全て話せ!きっとやり遂げてくれる!」
ソニヤが驚いて言葉を失う バーネットがキルビーグへ向き直って言う
「おいっもう1つの方は何処だ!?」
キルビーグが驚き言う
「あ、ああ、解剖と確認を任せておいた 大臣のフォリオッドが受け取っている筈だ」
バーネットがザッツロードへ顔を向ける ザッツロードがハッとして言う
「はいっ!すぐにフォリオッドから受け取り 魔力者の下へ!」
ザッツロードたちが走って機械室を出て行く 走りながらソニヤがザッツロードへ言う
「ザッツ!私先にキャリトールへ行って 魔法使いの皆に話して 力を貸してもらうわ!」
ザッツロードが頷いて言う
「うん、頼む!僕らもフォリオッドから宝玉を受け取って ソイッド村やテキスツの町へ向かう!」
ラナとセーリアが頷く ソニヤが頷き 城の出口でソニヤが外へ向かいザッツロードたちが逆方向へ向かう ラナがザッツロードへ問う
「ザッツ!フォリオッド殿は何処に!?」
ザッツロードが振り向いて言う
「解剖と確認を行っていると言っていたから 生物研究室に居るはずだ」
ザッツロードたちが研究室への通路に入る 研究室の外に人が倒れている ザッツロードたちが驚き 皆で顔を見合わせた後 ラナとセーリアが倒れている者に回復魔法を掛ける ザッツロードが部屋の中を確認する 部屋の中が荒らされていて もう1人倒れている ザッツロードが駆け付けて問う
「プリムス!しっかりしろ!何があった!?」
ザッツロードがプリムスに手を触れる プリムスが苦しそうに目を開いて言う
「ザッツ ロード王子… 申し訳 無い… フォ、フォリオッドです 奴は… ソルベキアの…」
ザッツロードが驚き声を上げる
「フォリオッドが!?」
プリムスがザッツロードの腕を掴んで言う
「奴が!旧世界の宝玉をっ!」
駆け付けたラナとセーリアが驚き顔を見合わせる ザッツロードが驚きの声を上げる
「何だって!?」
フォリオッドが苦しそうに言う
「ソルベキアは… ロボット兵を使い この世界を手に入れる気です ザッツロード王子… ザッツロード王… どうか 奴らから… この世界を お救い下さい…」
プリムスが息絶える ザッツロードがハッとして一度俯いてから立ち上がり言う
「フォリオッドを追わなければ!」
ラナが言う
「追うって!?」
ザッツロードが言う
「フォリオッドはソルベキアの密偵だったんだ それなら宝玉を持って向かう先は」
セーリアが続ける
「ソルベキアへ!?しかし、今ソルベキアではリーザたちとの交戦が行われているのでしょ!?」
ザッツロードが言う
「うん、それでも他に行く先は無い筈だ ソルベキアは今や他国との交流の一切を失っている リーザロッテ王女やヴィクトール様と連絡を取って」
ラナが言う
「でも連絡は」
ザッツロードが考えてから言う
「まずはバーネットと父上へ伝えよう!フォリオッドがソルベキアの密偵だったなら 旧世界の事やローレシアの情報がソルベキアへ伝わってしまっている筈だ」
機械室へ戻ったザッツロードたち バーネットとキルビーグへ伝え終える バーネットが他方を向いて言う
「くそっ!この時間のねぇ時に!!」
キルビーグが頭を抱えて言う
「まさかフォリオッドが…」
ザッツロードが言う
「僕らがソルベキアへ向かって フォリオッドを探し出します!」
バーネットが言う
「待て、ソルベキアにはヴィクトールとリーザロッテらが居るんだ そっちはあいつらに任せて お前らは先に行ったソニヤと合流するべきだ」
ザッツロードがバーネットへ言う
「しかしっ!」
バーネットが通信機を取り出し繋ぐ ラナが問う
「バーネット、通信は!」
通信が繋がる バーネットが言う
「ヴィクトール、そっちはどうだ?こっちはちょいと厄介な事になった」
通信の中のヴィクトールが言う
『バーネット、すまない こちらも問題だ、リーザロッテ王女が ソルベキアに捕まってしまった!』
ザッツロードたちが驚く バーネットが間を置いて言う
「分かった、そっちはてめぇらで何とかしやがれ 援護には一切行かねぇ」
ヴィクトールが頷いて言う
『分かった 君たちをあてには一切しない』
ザッツロードたちが驚き ザッツロードがバーネットへ言う
「そんな!こんな時こそ力を合わせなければ!!」
バーネットが通信を切って言う
「分かってる、焦るな おい、そっちの魔力使いの2人」
ラナとセーリアがバーネットへ向く バーネットが2人へ向いて言う
「お前らは先に行ったソニヤから 旧世界の宝玉を受け取り 他の魔力者の町や村でその宝玉の起動をやっといてくれ」
ラナとセーリアが顔を見合わせてからバーネットへ頷いて言う
「分かったわ!」「そうします!」
バーネットが頷きザッツロードへ向いて言う
「てめぇは俺と一緒に ソルベキアへ援護に行く!」
ザッツロードたちが驚く ラナが言う
「バーネット、さっきヴィクトール元陛下に 援護には行かないと」
バーネットが軽く笑って言う
「ありゃー情報漏洩防止策だ ヴィクトールには伝わってる」
ザッツロードたちが顔を見合わせ表情を明るめる バーネットがキルビーグへ向いて言う
「おい、キルビーグ てめぇも旧世界の民へ 通信を送り続けとけ!ギリギリまで待ってろってな!」
キルビーグが驚き苦笑して言う
「しかし、次の通信受信の期日以外に 彼らがこちらからの通信を 確認するかどうか…」
バーネットが続けて言う
「んなのは関係ねぇ!てめぇは旧世界を支えてきた ローレシア帝国の皇帝だろ!?あいつらだって覚悟決めた時には 親愛なるローレシア帝国の お前からの連絡を確認する筈だ!」
バーネットの言葉に驚いたキルビーグが微笑んで言う
「分かった、連絡を送ろう」
ザッツロードたちが呆気に取られる バーネットが振り返って叫ぶ
「何モタモタしてやがる!?てめぇえらぁあ!一発喰らわねぇと 動けねぇのかぁああ!!」
バーネットが言い終えると共に床へ鞭を振るう ザッツロードたちがすくみ上がり ラナとセーリアが慌てて走り言う
「ザ、ザッツ!そっちは任せたわ!」「こちらもなるべく 急いでもらうから!」
ザッツロードが呆気に取られたまま2人を見送る バーネットがザッツロードへ向いて言う
「てめぇえもボケッと見てんじゃねぇえ!さっさと行くぞ!!」
ザッツロードが怯えながら言う
「は、はいー!」
バーネットに続いて ザッツロードが出口へ向かって走り始める キルビーグが呆気に取られていた状態から微笑して言う
「もっと早く 彼らを信じるべきであったな…」
ローレシア城の外へ出たザッツロードとバーネット 目の前でラナとセーリアの移動魔法が発動して2人が飛んで行く バーネットがザッツロードへ向いて言う
「俺らはソルベキアだ!だが移動魔法陣は使えねぇ 直接 ヴィクトールの所へ飛ばせ!」
言われたザッツロードが間を置いて言う
「…え?」
バーネットが一瞬間を置いて怒って言う
「『え?』じゃねぇだろ!?さっさと飛ばせっつってんだよ!!」
バーネットの怒りにザッツロードが怯えつつ言う
「あの…っ バーネット 僕は その… 対人移動魔法は 使えませんが?」
バーネットが一瞬呆気に取られた後 再び怒る
「んだとぉおお!?このボンクラ勇者ぁああ!!」
バーネットが鞭を床に叩きつける ザッツロードが怯えながら謝る
「す、すみませんっ!!」
バーネットが溜め息を吐いてから 宝玉を取り出して言う
「仕方がねぇ なるべく使いたがなかったが 緊急事態だ」
バーネットが宝玉を片手に持って意識を集中させる ザッツロードが気付いて言う
「えぇええ!?バ、バーネットの移動魔法で!?」
バーネットが振り向いて叫ぶ
「うるせぇええ!!地の果てまで飛ばされたくなかったら 俺の気を散らすんじゃねぇええ!!」
ザッツロードが再び謝る
「す、すみませんっ どうか 落ち着いてお願いしますっ!?」
バーネットが再び宝玉へ意識を集中して怒鳴る
「おらぁああ!宝玉ぅうう!!ぶっ壊されたくなかったら 俺をヴィクトールのもとまで ぶっ飛ばしてみやがれぇええ!!」
ザッツロードが驚く
「えぇええ!?」
ザッツロードとバーネットの体が宝玉の光に包まれ飛ばされる
【 ソルベキア国 】
ザッツロードとバーネットが猛スピードでヴィクトールの後方に辿り着く バーネットが地面にスライドしながら着地 ザッツロードがその先の物置まで突っ込む ヴィクトールが振り返って言う
「来たか バーネット!」
ヴィクトールの率いている部隊の者たちが目を丸くしている バーネットが上体を上げながら返事をする
「おう、待たせたな あのボンクラ勇者が のろまでよ?」
ヴィクトールが一度ザッツロードへ顔を向ける ザッツロードが突っ込んだ物置からヴィクトールの率いていた部隊の者に助けられつつ バーネットとヴィクトールの方へと顔を向ける ヴィクトールがバーネットへ顔を向け直して言う
「うん、問題ない 所で、そちらで起きた厄介事とは?」
話を聞き終えたヴィクトールが視線を落として言う
「そうか… 我々が遭遇したあの魔物が 旧世界からの使者だったとは …その上 旧世界の宝玉の半分がソルベキアの手に」
バーネットが頷いて言う
「ああ、おまけにそっちじゃリーザロッテ王女が ソルベキアに捕まったって?あいつの仲間も一緒に捕まったのか?」
ヴィクトールが顔を横に振って言う
「いや、仲間たちは無事だ それとキルビーグ2世殿も」
ザッツロードがハッとして言う
「兄が!?ヴィクトール様 それはどう言う事で!?」
ヴィクトールがザッツロードへ向いて言う
「リーザロッテ王女は ソルベキア城からの脱出の際、貴公の兄君を庇い ソルベキアの兵に捕まってしまったのだ」
ザッツロードが驚く バーネットがヴィクトールへ向いて言う
「てめぇは一緒じゃなかったのか?」
ヴィクトールが一度視線を落としてから言う
「ああ、リーザロッテ王女らへは一度後退させ 怪我を負われていたキルビーグ2世殿を こちらの陣営へ運ばせていたんだ 途中でロボット兵との戦いに巻き込まれ キルビーグ2世殿が敵兵に捕まり リーザロッテ王女が自ら その身代わりとなったらしい」
ザッツロードがヴィクトールの下へ近づき問う
「ヴィクトール様、レイトたちは今どこに!?」
ヴィクトールが間を置いて言う
「リーザロッテ王女の仲間たちは アンネローゼ女王と共に リーザロッテ王女の救出に向かう為 既に配置に付いている」
ヴィクトールの言葉にザッツロードとバーネットが驚く ザッツロードが問う
「アンネローゼ女王陛下が!?」
ヴィクトールが頷いて言う
「アンネローゼ女王にはヴェルアロンスライツァーが付いている そこへ、そのヴェルアロンスライツァーの過去仲間でもあった レイトたちが共に向かうのだ 私は彼らを信じリーザロッテ王女の救出を任せる そして、その間に我らは ソルベキア城へ進行する」
ザッツロードが驚き視線を落として考える バーネットがヴィクトールへ言う
「よし、なら俺も同行する フォリオッドとやらもソルベキア城に居やがるだろぉからなぁ?」
ヴィクトールが頷いて言う
「ああ、宝玉は恐らくソルベキアの王ガライナへ渡されているだろう 彼を討ち旧世界の宝玉を取り戻すと共に 現在ガルバディア国へ送られているロボット兵を撤退させねば」
バーネットがザッツロードへ向いて言う
「おい、聞いてたか?てめぇも付いて来いよ?」
ザッツロードがバーネットを見上げ返事に戸惑う ヴィクトールがザッツロードへ向いて言う
「ザッツロード王、我々の策に不満があるのなら 独自に考え行動してくれて構わない」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが驚き顔を向ける バーネットが軽く笑って言う
「あぁ、そう言えばそうだったな?へっ!まぁ 嫌なら勝手にしろってこった …ああ、ヴィクトール こいつは返しとくぜ」
バーネットが言いながらヴィクトールへ宝玉を渡す ザッツロードがヴィクトールへ向き直って言う
「私も共に行きます、リーザロッテ王女の事は レイトやアンネローゼ女王陛下を …私も信じます!」
ザッツロードの言葉にバーネットとヴィクトールが一度顔を見合わせ微笑んで ヴィクトールが言う
「うん、共に信じ、共に戦おう!」
ヴィクトールの指揮のもと、ヴィクトール、バーネット、ザッツロードが先行して部隊を率いてソルベキア城へ特攻する 戦闘中バーネットが笑いながらヴィクトールへ叫ぶ
「旧世界の宝玉を取り返すだの ソルベキアを落とすだの あるくせに 正面から攻め込むだなんて 何考えてやがるんだてめぇえは!?」
ヴィクトールが笑みながら答える
「これがアバロン式だ!正々堂々と正面から 勝負する!!」
ザッツロードが驚く
「えぇええ!?ヴィクトール様が!?そんな作戦を!?」
ヴィクトールが敵兵を攻撃しながらザッツロードへ問う
「私がその様な策を立てるとは 心外か?ザッツロード王!」
ザッツロードがヴィクトールへ向いて言う
「はい!ヴィクトール様は 常に冷静に物事を分析し 最小限で最良の戦略をお考えになるものかと… どちらかというと この策はバーネットの方が似合っている気が!」
バーネットがザッツロードへ向いて怒る
「てめぇ!そりゃどーいう意味だっ!?大体これのどこが策なんだ!?ただ突っ込んでるだけだろがぁあ!?」
ヴィクトールが笑って言う
「今までは 一応アバロン帝国の皇帝だったからな?あまり自分らしくは行けなかったんだ ヴィクトール14世に譲ったお陰で やっと気が楽になったのだよ!」
ヴィクトールが笑顔で敵を討つ ザッツロードが呆気に取られて言う
「と、とても意外です… しかし 今のヴィクトール様の方が 何と言うか アバロンの方らしい気がします!」
ザッツロードが笑顔で言い切る ヴィクトールが笑って言う
「あっはは そうか、そう言って貰えるのは光栄だな!ついでに そのヴィクトール『様』と言うのも止めて貰えると嬉しいのだが?バーネットはバーネットと呼んでいるじゃないか?」
ザッツロードが少し考え 照れながら言う
「あー… バーネットは比較的呼びやすかったんです あははっ」
ヴィクトールがそれを聞いて同様に言う
「ああ、それはそうかもしれないな?あはは!」
バーネットが2人へ怒って言う
「おい!てめぇえらぁあ!一発ずつ殴らせやがれぇえ!!」
バーネットがザッツロードの代わりに敵兵を殴り付ける
城内を玉座の間へ向かい進行する 途中でリーザロッテ王女らと合流する ザッツロードが声を掛ける
「リーザロッテ王女!御無事でしたか!?」
リーザロッテがザッツロードへ振り向いて言う
「もちろんよ!私には優秀で勇敢な仲間たちと お母様が付いているのですから!」
リーザロッテが言い終えると共に アンネローゼとヴェルアロンスライツァーが現れる ザッツロードがヴェルアロンスライツァーを見て言う
「ヴェル!君が居てくれるなら安心だ!」
ヴェルアロンスライツァーがザッツロードへ顔を向けて言う
「ザッツ!ソルベキア国王には気を付けろ!奴の言葉を信じるな!」
ヴェルアロンスライツァーの言葉にザッツロードが驚きヴェルアロンスライツァーへ向き言う
「え!?それはどういう!?」
ヴィクトールが叫ぶ
「ザッツロード!前を!!」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが慌てて正面へ向き直る ソルベキア兵がザッツロードへ攻撃してくる ザッツロードが慌てて向き直るが間に合わない バーネットがその敵を討ち ザッツロードへ向いて叫ぶ
「ボケッとしてんじゃねぇええ!このボンクラ勇者ぁああ!!」
ザッツロードが慌てて謝る
「す、すみませんーっ!」
ザッツロードたちが玉座の間へ辿り着く 玉座にソルベキア国王ガライナが座っている その横にフォリオッドが控えている ヴィクトールが皆の前に進み出て ガライナへ剣を向けて言う
「ソルベキア国国王ガライナ殿 降伏されよ!貴公に逃れる道は無い!」
ガライナが微笑み言う
「アバロン帝国 前皇帝ヴィクトール13世殿 帝位を息子殿へ譲られ お早い引退をなさるのかと思いきや まさか… 自ら先陣を切ってこのソルベキアへ 討ち入って来られるとは いやはや恐れ入りました」
ヴィクトールが軽く笑い 向けていた剣を払ってから言う
「御冗談を とても我らに恐れをなしている様子には見えない ソルベキアの赤トカゲには 気を付けねばならないからな?」
ガライナが笑って言う
「はっはっは… その様な者は とうにこのソルベキアからは消え去っております 我が国はこの大陸一の科学技術を有する国 いつまでもその様な昔話に 付き合ってはおれません」
バーネットが言う
「残念だが この大陸一の科学技術を持つのはガルバディアだ てめぇらじゃねぇよ」
バーネットの言葉にガライナが口角を上げて言う
「いいや、そうなるのだ もうすぐな?ガルバディア国…とうに滅んだ たった3人の複製の国民しか持たぬ国が いまだ国と名乗っているだけでも片腹痛い」
ガライナの言葉にザッツロードが焦り言う
「もうすぐだって!?」
ヴィクトールがザッツロードへ視線を向けて言う
「ザッツロード、奴の言葉に惑わされてはいけない」
ザッツロードがヴィクトールへ顔を向ける ヴィクトールがガライナへ視線を戻して言う
「ガルバディアには我が国の部隊の他に 志を共にする3国からも部隊が出動し 貴公らのロボット兵部隊を殲滅せんとしている 貴公のソルベキア国がこの戦いで 世界一の冠を有する事は 決して無い!」
ガライナが表情を険しくする ヴィクトールが続けて言う
「そして、我らアバロンの友であるガルバディアの民を貶(けな)した貴様を …私は断じて許さん!」
ヴィクトールが言い終えると共に表情を険しく再び剣を向ける ガライナが立ち上がり言う
「ならばその怒りを見せてみよ ヴィクトール13世 貴殿のその力で このロボット兵が倒せるのならな?」
ガライナが言うと共に 最新のロボット兵が現れる ガライナが言う
「さあ!フェリペゴーランド6号機!憎きアバロン帝国 前皇帝ヴィクトール13世を打ち倒せ!!」
ガライナが言うと共に フェリペゴーランド6号機がヴィクトールへ武器を向ける ヴィクトールが剣を構えて言う
「バーネット、ザッツロード 貴公らはフォリオッドを!」
ザッツロードが焦って言う
「し、しかし相手はロボット兵です!僕らが力を合わせねば!」
バーネットがザッツロードへ言う
「行くぞ!ザッツロード!モタモタしてんじゃねぇえ!」
バーネットが言い放ちフォリオッドの下へ向かう ザッツロードが迷ってからバーネットへ続く バーネットとザッツロードが向かってくる事に気付いたガライナがフォリオッドへ言う
「フェリペゴーランド7号機を使用しろ」
ガライナの言葉にフォリオッドが返事をして 玉座の後方の壁を開いて逃げて行く バーネットがガライナに一度視線を向けてから横をすり抜けフォリオッドを追う ザッツロードが一度後ろを振り返りヴィクトールを見てから バーネットに続く
フォリオッドが通路を抜け 広い空間へ逃げ込む ザッツロードたちが追いかけて入る ザッツロードたちが来たのを確認してから フォリオッドが振り返って言う
「ザッツロード王子、…いや、ザッツロード王とお呼びした方が良いのですかな?」
フォリオッドの言葉にザッツロードが一歩前へ出て言う
「フォリオッド 僕は ずっとお前を信じていたのに」
フォリオッドが笑って言う
「ええ、存じておりますとも 私もずっと貴方様を敬愛しておりましたよ?ソルベキアの民である私を信用して下さる 愚かなローレシアの王子様を」
フォリオッドの言葉にザッツロードが奥歯を噛み締めて怒りを堪える バーネットが前に出てレイピアを向けて言う
「その愚かなローレシアの元王子様に息の根を止められたくなかったら 大人しく てめぇが盗んで行った 旧世界の宝玉を返すんだな」
ザッツロードがバーネットへ視線を向ける バーネットがザッツロードへ視線を向けて言う
「あの野郎の言葉に惑わされるな てめぇの仲間が言ってただろう?」
ザッツロードが驚いてフォリオッドへ向き直る バーネットが言う
「てめぇのその姿は紛れも無く ローレシアの民の姿だ それでもソルベキアの民ってぇ事は てめぇがソルベキアの赤トカゲだな?」
ザッツロードが驚く フォリオッドが笑って言う
「はっはっは!その通りだバーネット元アバロン帝国第二皇帝 貴様の様に言動に似付かわず 頭の切れる後住民族は まるで我らの同族の様だと思わんか?」
バーネットがレイピアを振り払い 吐き捨てる様に言う
「ハッ!見た目だけしか誤魔化せねぇ てめぇらトカゲと一緒にするんじゃねぇ!」
ザッツロードがフォリオッドへ向いて言う
「ヴェルはソルベキア国王の言葉に気を付けろと言っていた… では フォリオッドが!?」
フォリオッドがにやりと笑って言う
「そうだ、ザッツロード王 私がこのソルベキアの王ガライナ7世だ」
ザッツロードが驚く バーネットが再びレイピアを構えて言う
「てめぇが先住民族だろうが ソルベキアの王だろうが どうでも良い こっちは時間がねぇんだ さっさと旧世界の宝玉を返しやがれ!」
ザッツロードも剣を構えて言う
「フォリオッド、例え偽りであったとしても 僕は お前を傷付けたく無い 旧世界の宝玉を返すんだ!」
フォリオッドが微笑んで言う
「有難う御座います ザッツロード王 貴方のお気持ちに 心打たれてしまいました お礼に、貴方方へも このロボット兵を差し上げましょう」
フォリオッドが言うと共に壁のスイッチを操作する フェリペゴーランド7号機が起動する フォリオッドが叫ぶ
「さあ!フェリペゴーランド7号機!憎きローレシア国 新国王ザッツロード7世を 抹殺せよ!」
フェリペゴーランド7号機とザッツロード、バーネットの戦いが開始される
ザッツロードが魔法剣を使わずに戦っているとバーネットが言う
「おい!ザッツロード!宝玉の力を使いやがれ!」
バーネットの言葉にザッツロードが宝玉を取り出し 魔力を送ると宝玉の白い光りがザッツロードの持つ剣へ伝わる ザッツロードが片手に宝玉を持ちロボット兵と戦う バーネットが援護する 後に ヴィクトールが合流する ヴィクトールが叫ぶ
「バーネット!君はこの宝玉を使ってくれ!」
ヴィクトールがバーネットへ宝玉を投げ渡す バーネットが宝玉を握り締めて言う
「おい!宝玉!ぶっ壊されたくなかったら 俺の剣に力を貸しやがれ!!」
バーネットが叫ぶと 宝玉が光り バーネットのレイピアに白い光りが伝わる ヴィクトールがバーネット隣に立ち剣を構える バーネットが振り向いて言う
「てめぇはどぉするつもりだ?」
ヴィクトールがバーネットへ視線を向けて言う
「私の剣には 我らアバロンの相棒が力を貸してくれる!」
ヴィクトールが言うと共に大剣を掲げると大剣に雷が纏わる ヴィクトールの後ろにガルバディア国王のホログラムが現れて言う
『ガルバディアは お前達のお陰で救われた 私もお前たちに力を貸そう』
ザッツロードがガルバディア国王の言葉に表情を明るめる ヴィクトールとバーネットがザッツロードへ向いてヴィクトールが言う
「ザッツロード、次は我々の番だ!」
バーネットが続いて言う
「はっはー 負けてらんねぇぞ!?」
ザッツロードが頷いて言う
「はい!我々で奴を倒し 旧世界の宝玉を取り返しましょう!」
ザッツロードがフェリペゴーランド7号機へ突進する バーネットとヴィクトールが続く
フェリペゴーランド7号機が沈黙する ザッツロードたちが顔を見合わせ微笑んでから フォリオッドへ顔を向ける フォリオッドが悔しそうに後退る ザッツロードが一度俯いてから再び顔を上げ フォリオッドの下へ向かう ヴィクトールとバーネットが後に続く 背に壁を付けたフォリオッドへ ザッツロードが剣を向けて言う
「これで終りだフォリオッド… いや、ソルベキア国国王ガライナ7世、大人しく旧世界の宝玉を渡せ さもなくば!」
ザッツロードが剣を近づける フォリオッドが一度その切っ先に視線を向けてからザッツロードへ視線を向けて言う
「…分かった 私の負けだ ザッツロード王」
フォリオッドの言葉にザッツロードが笑んで少し力を抜く フォリオッドが横目でそれを見る 次の瞬間ザッツロードの両脇からヴィクトールとバーネットがフォリオッドへ剣を向けてヴィクトールが言う
「油断するな!ザッツロード!」
続いてバーネットが言う
「赤トカゲの言葉を信じるんじゃねぇえ!」
ザッツロードとフォリオッドが驚く ザッツロードが返事をして剣を構え直す
「は、はい!」
フォリオッドが慌てて言う
「ま、待て!本当だ 宝玉は返す」
フォリオッドの言葉にザッツロードが剣を近づける フォリオッドが慌てて言う
「そ、そこだっ 機械を操作すれば 宝玉が隠されている壁が開く」
ザッツロードたちが少し剣を引き フォリオッドが機械を操作する 近くの壁が開き 旧世界の宝玉が現れる ザッツロードたちが旧世界の宝玉へ目を向ける フォリオッドが赤トカゲに変身して逃げて行く ザッツロードたちがハッと驚く ヴィクトールが微笑んで言う
「我々であれを追うのは難しい それより今は旧世界の宝玉を手に入れる事が先決だ」
言いながらヴィクトールが剣を鞘へ戻す バーネットが軽く微笑み剣を鞘へ戻しながら言う
「だな、おいボンクラ勇者、早くそいつをお前の仲間の下へ持って行ってやれ 半分盗まれたままじゃ心配で 宝玉の起動に気合が入らねぇだろ?」
ザッツロードが微笑んで言う
「はい!すぐに持って行きます」
ヴィクトールとバーネットが頷く ザッツロードたちが部屋の出入り口へ向かう ヴィクトールが言う
「アバロンへ連絡を入れよう ガルバディアへ向かった部隊がどうなったかも気になる」
バーネットが言う
「通信はやべぇんじゃねぇのか?」
バーネットの言葉にガルバディア国王が言う
『お前達の通信は私が防御する 漏洩の心配は不要だ』
バーネットがヴィクトールへ向いて言う
「へぇ?さすがはアバロンの相棒だな?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「アバロンの相棒ではあるが 残念ながら私の相棒では 無くなってしまったらしい」
ヴィクトールの言葉にザッツロードが首を傾げて言う
「え?先ほどはサポートをなさっていましたが?」
ガルバディア国王が微笑して言う
『あれは前回の借りを返しただけだ、現在のアバロンの王はヴィクトール14世 私の相棒はアバロンの王であるべきだ』
ガルバディア国王の言葉にヴィクトールが苦笑し バーネットとザッツロードが呆気に取られる ザッツロードがヴィクトールとバーネットを見て言う
「しかし、ヴィクトール様にはバーネットが居るので 他に相棒は不要かもしれませんね?」
ザッツロードの笑顔の前で2人が顔を見合わせる ガルバディア国王が軽く笑って言う
『うむ、私もそう思う バーネット殿の先日のガルバディアでの格闘は 相棒への熱意を感じずには おられなかった』
皆の視線が一度ガルバディア国王へ向いてから バーネットへ向く バーネットが赤面してガルバディア国王へ言う
「ばっ!?馬鹿言ってんじゃねぇえ!俺は全世界の民を救うためにだなっ!だいたい相棒への熱意とか言うんじゃねぇ!気持ち悪いぃだろがっ!!」
ザッツロードが苦笑する バーネットがザッツロードへ向き直って叫ぶ
「てめぇえも!だいたい何でヴィクトールが様で 俺が呼び捨てなんだ!?あぁあ!?」
ザッツロードが笑う ヴィクトールが苦笑して言う
「私も呼び捨てにして 貰いたいのだがな?」
ザッツロードがヴィクトールへ向き直って苦笑して言う
「ヴィクトール様を呼び捨てにするのは もう少し慣れてからではないと ちょっと難しいです」
バーネットが腕組みをして そっぽを向きながら言う
「ヴィクトールが呼び捨てになる頃には 俺はどんな扱いにされてるか 分かったもんじゃねぇぜ」
ザッツロードたちが笑う ヴィクトールが気を取り直して言う
「それでは相棒のバーネット様、アバロンへ戻ろうか?」
ヴィクトールの言葉に バーネットが驚いて慌てて叫ぶ
「てめぇに様呼びされる位なら ボンクラ勇者に馬鹿にされた方が まだマシだ!!」
ザッツロードとヴィクトールが笑い ヴィクトールがザッツロードへ問う
「ザッツロードは このままローレシアへ向かうのだな?」
ヴィクトールの問いに ザッツロードが頷いて言う
「はい、旧世界の宝玉が全て起動したら ヴィクトール様へお知らせします」
バーネットが振り返って言う
「お知らせするのは アバロン帝国皇帝のヴィクトール14世の方だろ?俺らは今や、てめぇらと同じ 対悪魔力戦における一兵卒だぁ」
バーネットの言葉にヴィクトールが頷いて続ける
「ああ、バーネットの言う通りだ ザッツロード、帝位は譲ったが、我々はこれからも共に悪魔力と戦う兵であり 同じ仲間だ」
ガルバディア国王がザッツロードへ向いて言う
『お前達が旧世界の宝玉を無事起動させ 旧世界の悪魔力が中和されれば 次に必要になるのが我らガルバディア国が受け持つ 新たなロボット兵 …私もこれからは国王所では無いほどに 忙しくなるのかもな』
ザッツロードが微笑む バーネットが言う
「ああ、皇帝だの第二皇帝だのじゃなくなったってのに 今まで以上に忙しくなるのかもしれねぇ」
ヴィクトールとバーネットが苦笑する ガルバディア国王が頷いて言う
『では、私はガルバディアへ戻らせて貰う 通信類は安心して使うと良い』
ヴィクトールが頷いて言う
「ガルバディア国王 支援を感謝する」
ガルバディア国王が微笑んで言う
『私の相棒はアバロンの王だが お前たちにも多少は力をかしてやろう 用があれば呼べ』
言い終えると共に ガルバディア国王がホログラムを消す ザッツロードたちが微笑む ヴィクトールが言う
「さぁ、我々も急がねば」
ヴィクトールの言葉にザッツロードとバーネットが頷く
玉座の間に戻ったザッツロードたち ソルベキア国王ガライナ6世がアバロン兵に捕らえられている アバロン兵が言う
「ヴィクトール様、城内のソルベキア兵は全て捕らえました 我々はこの者をアバロン帝国へ連行致します」
ヴィクトールが頷いて言う
「分かった、我々もすぐに戻る」
ヴィクトールの言葉にアバロン兵らが敬礼して去って行く ザッツロードがヴィクトールの倒した フェリペゴーランド6号機へ視線を向けてから ヴィクトールへ言う
「ヴィクトール様お1人で ロボット兵を倒すとは… やはり アバロンの大剣使いは凄いですね」
ザッツロードの言葉にヴィクトールが一度ロボット兵を見てから言う
「ああ、もっとも宝玉の力があっての話だがな?」
バーネットが苦笑しながら言う
「だとしてもアバロンの民の怪力は 泣き虫ヴィクトールでも大したもんだがなぁ?」
バーネットの言葉にヴィクトールが勢い良く振り返って怒る
「バーネット!君までっ!!」
バーネットが笑う ザッツロードが隠れて苦笑する ヴィクトールが涙目で振り返って怒る
ヴィクトールが2人から視線を外し玉座の間の出口へ向かう バーネットとザッツロードが後に続く ヴィクトールが出口から中へ入る赤トカげに気付く ヴィクトールが振り返り赤トカゲを目で追う 赤トカゲがフェリペゴーランド6号機の中へ入りこむ フェリペゴーランド6号機の目が光る ヴィクトールが目を見開く フェリペゴーランド6号機が顔を上げザッツロードを確認し 片腕をザッツロードへ向ける ヴィクトールが叫ぶ
「避けろ!ザッツロード!!」
ヴィクトールの言葉にザッツロードとバーネットがフェリペゴーランド6号機へ向く フェリペゴーランド6号機の片腕がザッツロードへ目掛けて飛ぶ フェリペゴーランド6号機の片腕がザッツロードの左腕とその腕に持っていた旧世界の宝玉を砕く ザッツロードが悲鳴を上げる
「うあぁああ!!」
ヴィクトールとバーネットが同時に呼ぶ
「「ザッツロード!!」」
ヴィクトールがザッツロードへ向かう バーネットがフェリペゴーランド6号機へ向く フェリペゴーランド6号機がもう片方の腕を ヴィクトールへ向ける バーネットがヴィクトールへ向き 走りながら叫ぶ
「ヴィクトールっ!!」
ヴィクトールがバーネットの声でフェリペゴーランド6号機へ向き 目を見開く バーネットがヴィクトールを突き飛ばす ヴィクトールが床に倒れる バーネットがフェリペゴーランド6号機の片腕を身に受け 壁に身体を打ち付けられる ヴィクトールが床に手を突き顔を上げて叫ぶ
「バーネット!!」
ザッツロードが左腕を押さえながら床に腰を落とす その横でバーネットが床に崩れ落ちる ヴィクトールがバーネットの下に駆け付ける ヴィクトールがバーネットを抱き起こして叫ぶ
「バーネット!目を開けてくれ!!バーネット!!」
ザッツロードが辛そうな表情で 砕かれた左腕に回復魔法を掛けながら ヴィクトールとバーネットへ視線を向ける ヴィクトールが何度もバーネットを呼ぶ バーネットがようやく目を開いてヴィクトールを見る ヴィクトールがぼろぼろ涙を零しながらバーネットを見下ろして言う
「バーネット…っ!何で…っ!?」
バーネットが苦笑して言う
「ば…か やろ… 泣く んじゃ… ね ぇ… っ!」
バーネットが言い終えると共に口から血を吐きだす ヴィクトールが叫ぶ
「嫌だっ バーネット!君がっ 君が 一緒に居てくれないなら!! バーネット! 僕はっ 泣かずになんか いられないよっ!!」
ヴィクトールが顔を横に振って バーネットへ視線を戻す バーネットが笑って言う
「は…はは… そ だな… 俺 が い…て やら ねぇ …と …て めぇは … すぐ …泣 き やが… るか ら 」
ヴィクトールがぼろぼろと涙を流しながら言う
「そうだよっ バーネット… 君が 一緒に居て 僕を 守ってくれるって言ったから… 僕はっ」
回復を終えたザッツロードが立ち上がり ヴィクトールと反対側に膝を付き バーネットの負傷を確認し目を見開く ヴィクトールが叫ぶ
「バーネット!お願いだ!死なないで!!君が居なくなってしまったら!」
バーネットが笑う ヴィクトールが泣きながら笑って続ける
「バーネット… 言ったじゃないか?一緒に… 世界を救うって …もう 僕と 話をしなくなる事なんか ないって! もう 2度と!! 僕の話を 無視したりしないって!!もう2度と!!…君との事で 僕を泣かせないってっ!! 言ったじゃないかっ!?それ なのに…っ」
ヴィクトールが苦しそうに涙を流す バーネットが微笑んで言う
「あ あ… 一緒に居て やる… 一緒に… 世界を… 守 る… いつ だっ て… 話 して やる …無視 なんて して やらねぇ … もう… 泣かせねぇ…よ ヴィ クトー …ル… だ…から …泣く ん じゃ…ねぇ …よ…」
ヴィクトールが泣き続ける バーネットが苦笑して言う
「…俺 は すぐ…戻る 少し 休ん だら…また… お前の傍 へ 行って… やる から… それ まで… 先に…行って ろよ …たく … お前は… 相 変わ ら…ず 泣き… 虫 …だ な…」
バーネットが眠る様に息を引き取る ヴィクトールが目を見開いて言う
「バーネット…?バーネット?嫌だ 起きて… 起きてよ!!バーネット!!バーネットーーっ!!」
ヴィクトールがバーネットの身体を揺すって呼ぶ ザッツロードが歯を食いしばり俯く ヴィクトールがバーネットの身にしがみ付いて泣き続ける
ザッツロードが静かにヴィクトールへ言う
「ヴィクトール様、そろそろアバロンへ戻りましょう?バーネット様も一緒に」
ザッツロードがヴィクトールの顔を覗き込む ヴィクトールは顔を上げず泣き続けている ザッツロードが一度視線を外してからヴィクトールの手に触れて言う
「ヴィクトール様、ヴィクトール前皇帝陛下!しっかりして下さい、バーネット元第二皇帝陛下も これではヴィクトール様が心配で…」
ヴィクトールは顔を上げない ザッツロードが息を吐き 旧世界の宝玉を確認して息を飲み言う
「ほ、宝玉が!!」
ザッツロードが袋から旧世界の宝玉を取り出して見る 1つの宝玉が割れ、1つの宝玉にヒビが入っている その2つを手に取り ザッツロードが焦ってヴィクトールへ言う
「ヴィクトール様!!旧世界の宝玉が!!」
ザッツロードの言葉にヴィクトールが顔を上げザッツロードの手に持つ宝玉へ視線を送ってから 再びバーネットへ視線を向けて言う
「…バーネット やっぱり… 君が 居な ければ…」
ザッツロードが驚き 宝玉を持つ手を下げてヴィクトールへ問う
「ヴィクトール様?」
ヴィクトールがバーネットの頬に手を触れて言う
「もう… どうでも 良い…」
ザッツロードが驚き ヴィクトールの肩を掴み 引き上げて言う
「しっかりして下さい!ヴィクトール様!!貴方はアバロン帝国のヴィクトール13世です!!バーネットの為にも!我々と一緒に世界を救うんです!!」
ザッツロードがヴィクトールの顔を見る ヴィクトールがザッツロードの顔を見上げたまま涙を流して言う
「知らないよ 勝手にしてくれ… 世界が救われたって… そこに…… … … … 何が あると言うんだ…?」
ザッツロードが驚き手を離す ヴィクトールがそのまま床に座りこみ 俯いて涙を流す ザッツロードが床に転がる旧世界の宝玉を見て言う
「僕は… 皆の所へ 行かなきゃ」
ザッツロードが床に転がる宝玉を拾い 袋に入れて出口へ向かい 一度立ち止まり ヴィクトールへ振り向いて言う
「ヴィクトール様、僕は 旧世界の宝玉を仲間の下へ届けます 貴方は… バーネットと共に アバロンへ戻って下さい」
言い終えると共にザッツロードが玉座の間を出て行く
ソルベキア城を出たザッツロード 移動魔法を使いローレシアへ向かう
【 ローレシア国 】
ローレシアの移動魔法陣へ辿り着いたザッツロード 独り言を言う
「旧世界の宝玉が壊れてしまった… 父上に 報告しないと…」
ザッツロードが1人 ローレシア城を目指す
ローレシア城へ到着したザッツロード 入り口を入り 1階ホールから玉座の間を見上げ フォリオッドの事を思い出す 一度目を閉じ 思い出を払ったザッツロードが地下へ向かう 地下の機械室へ向かうザッツロード 入り口の扉をノックして声を掛ける
「父上!ザッツロードです!」
間もなくキルビーグの声が返って来る
「ザッツ?どうしたのだ?」
ザッツロードが扉を開き中へ入る キルビーグが疑問して向き直っていた状態から ザッツロードの手に持たれている袋に気付き微笑んで言う
「旧世界の宝玉を取り戻したのだな!?」
キルビーグの微笑に ザッツロードが苦笑を返して言う
「はい 取り戻しました… しかし 申し訳有りません…」
ザッツロードが言いながら 壊れた宝玉を取り出して見せる キルビーグが驚く ザッツロードが言う
「これでは…旧世界を救う事が…っ」
ザッツロードが言いながら唇を噛み締める キルビーグが考え顔を上げて言う
「諦めるのはまだ早い!ザッツロード!」
ザッツロードが顔を上げてキルビーグを見る キルビーグが言う
「ガルバディアなら この旧世界の宝玉を直せるやも知れぬ!無事な宝玉を魔力使いらへ託し、お前はガルバディアを頼れ」
ザッツロードが表情を明るめて言う
「はい!父上!」
ザッツロードが走って機械室を後にする
【 キャリトールの町 】
町へ到着したザッツロードがソニヤを探す 町の一角にて 最上級魔力者5人による旧世界の宝玉の起動が行われている ソニヤは5人には加わらずに居る ザッツロードがソニヤを見つけて駆け付けて呼ぶ
「ソニヤ!」
ソニヤが自分を呼ぶ声に顔を向け ザッツロードの姿と彼の持つ旧世界の宝玉が入った袋に気付き 表情を明るめて言う
「ザッツ!ソルベキアから宝玉を取り返したのね!?」
ザッツロードが頷いて言う
「うん!ただ、2つ程傷付けてしまったんだ だから僕はそれをガルバディアへ持って行き 修復して貰う」
ザッツロードの言葉にソニヤが一瞬表情を強張らせる ザッツロードが旧世界の宝玉を3つ手渡して言う
「無事な方の3つを渡しておくから… ソニヤ、今の所宝玉はいくつ終えているんだ?」
ザッツロードの言葉にソニヤが視線を落として言う
「今の所… キャリトールでは2つよ」
ソニヤの言葉にザッツロードが驚いて言う
「え!?2つ!?そんな…後4日しか無いのに」
ソニヤが宝玉の起動を行っている魔法使いたちへ視線を向けて言う
「1つの宝玉を起動させるのに 5人の魔力使いがその5人分の魔力を調整して 宝玉に送らないといけないの とても精神を集中させる作業だから どうしても時間が掛かってしまうのよ」
ザッツロードが少し考えてからソニヤへ問う
「ラナやセーリアたちは?」
ソニヤが答える
「2人はテキスツに居るわ 向こうはさっき2つ目の宝玉の起動を開始したって」
ザッツロードが考えながら言う
「両方を合わせても3日で3つ… これでは… 間に合わないかもしれない」
ザッツロードの言葉に ソニヤが一瞬間を置いてからザッツロードの背を叩いて言う
「何言ってるのよ!こういう時こそ!出来るって信じて頑張らなきゃダメだって!バーネットに言われたじゃない!?」
ザッツロードが驚きソニヤへ顔を向ける ソニヤが微笑んで言う
「そーでしょ?じゃないと、またあの鞭に脅かされるじゃない?ヴィクトール様も バーネットを止めてはくれないんだから~」
ソニヤが笑う ザッツロードが一瞬困った後 笑顔で言う
「う、うん、そうだね こんな時こそ頑張らないと」
ソニヤが頷いて言う
「そうよ!それじゃ、私この3つの内1つを テキスツへ持って行くから!ザッツも、急いで残りの2つを ガルバディアで修理して貰ってきて!」
ソニヤの言葉にザッツロードが微笑して頷き言う
「分かった、そっちは頼むよ ラナとセーリアにも 応援をしておいてくれ 僕もガルバディアで 宝玉を直して貰ったら すぐに戻るから」
ザッツロードの言葉にソニヤが頷き ザッツロードがキャリトールの町を後にする
【 ガルバディア国 】
ザッツロードがガルバディア国の移動魔法陣に到着し 独り言を言う
「ソニヤに バーネットとヴィクトール様の事… 言えなかったな… けど、今は 僕が頑張らないとっ」
ザッツロードが顔を上げ ガルバディア城へ向かう
ガルバディア城の門を抜け 玉座の下へ向かう
ザッツロードが玉座の間に入ると 玉座の前にガルバディア国王のホログラムが現れる ザッツロードが足を止め跪いて敬礼する ガルバディア国王がザッツロードを見て言う
『ローレシア国国王ザッツロード7世 ソルベキアでの会話以来 束の間だが 私に何用か?』
ザッツロードが顔を上げ ガルバディア国王へ言う
「ガルバディア国王 どうか我々に力を お貸し下さい」
ザッツロードが壊れた旧世界の宝玉2つを袋から取り出し 両手で支えガルバディア国王へ向ける ガルバディア国王が目を細める ホログラムが消え ザッツロードの目前に現れる ザッツロードはそのままの姿で待つ ガルバディア国王が宝玉に片手をかざし 周囲にモニターのホログラムがいくつも現れる 束の間の後 ガルバディア国王がかざしていた手を戻し ザッツロードへ視線を向けて言う
『修復は可能だ』
ガルバディア国王の言葉にザッツロードが表情を明るめ顔を上げて言う
「それではっ!」
ガルバディア国王が表情を変えずに言う
『しかし、お前のその依頼 私は引き受けかねる』
ザッツロードが驚いて言う
「そんな!?何故ですっ!?」
ガルバディア国王が答える
『私は現在 別の作業を行っている 仮に、お前の依頼を取り行うのであれは その後になる』
ザッツロードが立ち上がって言う
「ガルバディア国王、聞いて下さい!この旧世界の宝玉は4日後には 魔力者たちの協力を得て全ての宝玉の起動を終えた状態で 旧世界に送らなければいけないのです!そうしなければ 旧世界で長きに渡り悪魔力と戦い続けてきた人々が その尊い命を奪われる事になるのです!」
ザッツロードの言葉に ガルバディア国王が間を置いて答える
『話は分かった だが、私にも 果たさなければならぬ約束があるのだ それを不意にして お前の依頼を優先する事は 私には難しい』
ザッツロードが詰め寄って言う
「約束!?旧世界に残る多くの人々を救う事以上に 大切な約束とは何ですか!?教えてください!ガルバディア国王!!」
ザッツロードの言葉に ガルバディア国王が間を置いて答える
『それは、アバロンの大剣使い ヘクターとの約束だ』
ザッツロードが疑問して言う
「…え?ヘクターとの?」
ガルバディア国王が言う
『そうだ、お前も知っているであろう 先日ヘクターは ウィザードの回復を私に求め そして、バーネットは旧世界で使用するための ロボット兵の開発を私に求めた』
ザッツロードが慌てて言う
「しかし、ガルバディア国王、貴方はソルベキアにおいての会話で ロボット兵の開発をすると言っていたではありませんか!?」
ガルバディア国王が頷いて言う
『そうだ、私はロボット兵の開発を優先すると約束した その代わり、ヘクターの依頼であるウィザードの回復をも引き受ける為 そのウィザードへは生命維持のプログラムを掛ける事にしたのだ これでロボット兵の開発が終了した後でも ウィザードの回復をする事が可能になる』
ザッツロードが落ち着いて問う
「では、現在行っている作業と言うのは そのウィザードへの?」
ガルバディア国王が頷いて言う
『ウィザードへの生命維持プログラムの製作だ 元は現在生き残っている我ら3人のガルバディアの民へ掛けられたプログラムだが それをウィザードへ施すための 修正を施しながら製作を行っている これを終えた後になら お前の依頼をとり行う事が出来る しかし…』
ガルバディア国王が言葉を切る ザッツロードが問う
「しかし?」
ガルバディア国王が言う
『お前の依頼である その宝玉の修理には 本来であるなら4日以上を有する、現在行われている ウィザードへの生命維持プログラムを終了させてからでは 確実に間に合わない よって お前の依頼は受けかねる』
ザッツロードが再び力を入れて言う
「ガルバディア国王 ウィザードへのプログラム製作を停止して、私の依頼に今すぐ取り掛かって下さい!」
ザッツロードの言葉にガルバディア国王が少し驚き言う
『…ザッツロード王、ヘクターは我らのガルバディア国と私を含めた3人の民を ソルベキアのロボット兵らから守ってくれたのだ 私は彼へのその恩を無下にする事は』
ザッツロードがガルバディア国王に詰め寄って言う
「ガルバディア国王!貴方は間違っている!ヘクターは確かに貴方たちを守ったかもしれない!しかし、この旧世界の宝玉を 今 修理しなければ!期日までに旧世界へ送らなければ!旧世界の人々は救えないんだ!貴方は一国王として まずは、より多くの人々を救う事を 考えるべきです!!」
ザッツロードの言葉に ガルバディア国王が間を置いて返答する
『…なるほど 流石は旧ローレシア帝国の皇帝と言った所か 私とは違い 新世界の一国だけではなく 旧世界をも含めた 多くの民を救う使命を背負っているのだな』
ザッツロードが肩の力を抜いて言う
「ガルバディア国王、貴方の力は 今は宝玉の修理に使うべきだ、ヘクターの依頼にはその後でも」
ガルバディア国王が間を置いて言う
『あのウィザードの生命は かなり衰弱している 今まで保っていたのが奇跡的だと言えるまでに その奇跡が万が一にも お前の依頼で潰えた場合 ヘクターはきっと私やお前を許さないだろう それでも構わないのか?』
ガルバディア国王の言葉にザッツロードが強い視線で言う
「その時は 全ての責任を私が!彼の怒りを全て私が受けます!」
ガルバディア国王が間を置いてから ザッツロードへ言う
『…分かった 宝玉をこちらへ運んでくれ』
言い終えると共に ガルバディア国王が道を示し先行する ザッツロードがそれに続く
小型の機械アームが無数に備えられた 機械に埋め尽くされた部屋へ連れて行かれる ガルバディア国王がその部屋にある作業台を示して言う
『そこへ』
ザッツロードがガルバディア国王の示す先へ 2つの宝玉を置く 間もなく数本の機械アームがその宝玉を確認する様に降りて来て動く ザッツロードがそれを眺めているとガルバディア国王が言う
『では、私は宝玉の修理に専念する 損傷の少ない方は2日もあれば修理が終るだろう 先に一方でも必要とあるのなら 連絡を行うが?』
ザッツロードがガルバディア国王へ向いて言う
「はい、1つでも修理が終了したら 連絡をお願いします」
ガルバディア国王が頷いて言う
『分かった そうしよう …もし』
部屋を出ようとしていたザッツロードが振り返り問う
「もし?」
ザッツロードが疑問し ガルバディア国王を見つめる ガルバディア国王が間を置いて視線を落として言う
『お前にそれまでの間、時間があるのなら アバロンへ向かい ヘクターへ この事を伝えて欲しい そして、私が謝っていたと…』
ザッツロードが軽く笑って言う
「ガルバディア国王 貴方は不思議な方ですね」
ガルバディア国王がザッツロードへ向く ザッツロードが続ける
「国王でありながら 他国の1人の兵にそれほど深く謝罪するなんて… それに、とても 恩や約束を大切にされている」
ザッツロードの言葉に ガルバディア国王が視線を強くして言う
『国王にあるましく無いと笑うか ザッツロード …それも良かろう だが己の地位や名誉に溺れ忘れるな 例え、国王であろうと皇帝であろうと 所詮は ただ1人の人間なのだ』
ガルバディア国王がホログラムを消す ザッツロードがあっと声を上げる 隣の作業台では変わらず 機械アームが動いている 周囲を見渡してから肩を落として部屋を後にする
【 アバロン帝国 】
ザッツロードがアバロン帝国の移動魔法陣へ現れ 独り言を言う
「ヴィクトール14世皇帝陛下へ連絡しておこう リーザロッテ王女らも きっと心配しているだろうし」
アバロン城下町を歩くザッツロード ヘクターの家の前で立ち止まり言う
「ガルバディア国王からの言伝を伝えた方が良いかな?でも… 取り合えず ヴィクトール14世皇帝陛下へ 先に報告してからにしよう」
アバロン城 玉座の間 ヴィクトール14世の前にザッツロードが跪いて敬礼している ヴィクトール14世が言う
「ザッツロード王、貴公の父君キルビーグ殿より話は聞いている 破損した旧世界の宝玉の修理は可能なのか?」
ザッツロードが微笑して言う
「はい、ガルバディア国王陛下が現在修理を行って下されてます 損傷の少ない方は2日後に もう片方も 何とか間に合うものだと思われます 他の宝玉は 現在魔力使いの者が その起動作業を行ってます こちらも… きっと間に合うものだと」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷いて言う
「そうか、では、どちらも間に合わせる事が出来ると信じよう」
ザッツロードが強く返事をする
「はいっ!」
ザッツロードの返事にヴィクトール14世が頷いて言う
「現在こちらではバッツスクロイツが確認した 濃度の高い悪魔力の被害を受けた国への援護活動を続けている 前回シュレイザー国やスプローニ国で起きたものと同様だ ザッツロード王もし貴公に 少しでも時間があるのなら 先に援護に向かっているリーザロッテ女王らに 手を貸してやって欲しい」
ザッツロードが驚いて言う
「リーザロッテ『女王』?」
ザッツロードの疑問に ヴィクトール14世が微笑んで言う
「リーザロッテ殿は 先日のソルベキア国での功績を評価され ツヴァイザー国にて その王位を引き継いだとの事だ」
ザッツロードが笑顔を見せる ヴィクトール14世が軽く笑って言う
「貴公からも祝福を送ると良いだろう」
ザッツロードが微笑んで言う
「はい、そうします!」
ヴィクトール14世が頷いて言う
「うん、リーザロッテ女王は現在ローゼント国の警備に付いている バッツスクロイツの情報によれば 本日の夜か、明日の朝にも 魔物の群れがローゼントの城下町へ現れる可能性があるとの事 今回はカイッツ国への警備も同時に行っているため 兵の数が少ない 貴公が向かってくれるのであれば その兵らにとっても 心強き事となるだろう」
ザッツロードが頷いて言う
「はい、ではこれより私は ローゼント国への援護へ向かいます!」
ヴィクトール14世が頷いて言う
「よろしく頼む ザッツロード王」
ザッツロードが敬礼しようとして身を止め 再びヴィクトール14世へ向いて言う
「あ、あの… ヴィクトール14世皇帝陛下」
ヴィクトール14世が微笑み問う
「どうかしたか?ザッツロード王」
ザッツロードが間を置いてから問う
「ヴィクトール13世様は… 如何なさっておられますか?」
ザッツロードの問いに ヴィクトール14世が僅かに驚き視線を逸らす しばらく間を置いて言う
「ヴィクトール13世は… 現在このアバロン城にて幽閉している」
ザッツロードが驚いて声を漏らす
「ゆ…幽閉…?」
ヴィクトール14世が目を瞑り息を吐いてから 再びザッツロードへ視線を向けて言う
「ヴィクトール13世は ソルベキア国攻略の際に 瞑(めい)された バーネット前アバロン帝国第二皇帝の死を いまだ乗り越えられずにいる あの日ソルベキアで保護されてから この2日の間 食事も睡眠も取られずにいる様子 私としても何とかしたいと 思ってはいるのだが…」
ザッツロードが間を置いて言う
「私は、バーネット元第二皇帝陛下が崩御された際 すぐ傍におりました ヴィクトール13世様は とても嘆いておられ」
ヴィクトール14世がザッツロードへ向いていう
「彼は現在、完全に戦意を失っている だが、我々の戦いはまだ終わってはいない ザッツロード王、どうか我が父ヴィクトール13世の分まで その力を存分に奮ってもらいたい」
ザッツロードが顔を上げ 力強く頷いて言う
「分かりました、ヴィクトール14世皇帝陛下!」
ヴィクトール14世が微笑んで言う
「うん、期待している」
ザッツロードがアバロン城を出ると 意思を固め移動魔法を詠唱する
【 ローゼント国 】
ザッツロードはローゼント国の移動魔法陣へ現れ ローゼント国城下町へ向かう 城下町へ辿り着いたザッツロードがリーザロッテを探す 町の宿でリーザロッテらと合流 これまでの事を話す 話を聞いたリーザロッテが視線を落として言う
「そう… ロキに続いて バーネットが…」
皆も視線を落とす レイトが言う
「きっとヴィクトール13世殿は 嘆かれているだろう」
レイトの言葉に ザッツロードが言う
「そうなんだ、アバロンでヴィクトール14世から伺った話では 今も その悲しみを乗り越えられていないと」
ヴェインが言う
「心の支えであった者を失い その悲しみから立ち直るのは 容易な事では無い」
ザッツロードがロイへ視線を向ける ロイは沈黙している リーザロッテが気を取り直して言う
「なら!私たちが支えるしか無いわ!一刻も早く悪魔力をこの世界から無くして!そのヴィクトール13世らが行おうとしていた事を 達成して差し上げるのよ!」
ザッツロードが微笑して言う
「はい、そうですね 今度は僕らが率先して行かなければ」
リーザロッテが微笑んで言う
「ええ!そして、新世界担当の勇者である私たちは 既にその策を得たのよ!」
リーザロッテの言葉にザッツロードが驚いて声を上げる
「え?策… とは?」
リーザロッテが笑みを強くしてシャルロッテへ向いて言う
「さあシャル!ザッツロード王へ 御説明して差し上げて!」
リーザロッテの言葉にザッツロードがシャルロッテへ顔を向ける シャルロッテがモバイルPCから顔を上げ 焦って答える
「は、はいっ!わ、わわわ私たちの策はっ 先日ソルベキア国にて手に入れたっ 聖魔力圧縮装置にて 悪魔力の霧を退治するものですぅ」
シャルロッテの言葉にザッツロードが驚いて言う
「悪魔力の霧を退治する!?そんな事が可能なのですか!?」
リーザロッテが微笑んで言う
「ええ!バッツスクロイツの案では 聖魔力は陸のより海上の方が濃度が高いので 私たちの策は本来なら 悪魔力の霧を大陸に近づけさせない様 海上へ追い払う事だったの その為にソルベキアの機械を使って 聖魔力の照射が出来る機械を作る予定だったのだけど」
シャルロッテが続きを言う
「そ、そそそそうなるとっ 聖魔力の照射は とても短期間に 度々行う事になるので 装置の操作や 各国の連絡が大変にっ なってしまいますぅ」
リーザロッテが続きを言う
「丁度良い事に 私たちはソルベキアで 悪魔力圧縮装置の設計図を手に入れたわ これを聖魔力に置き換えて作れば バッツスクロツが提案した機械より 強力な聖魔力の照射が可能な機械が作れるのよ」
ザッツロードが問う
「その機械なら 悪魔力の霧をより遠くへ 追い払う事が可能だと 言う事ですか?」
リーザロッテが笑顔で答える
「ええ!シャルの集めた情報によれば この大陸から遠く離れた海上には 周囲を取り巻く様に吹く 一段と強い風が流れているらしいの その風に一度悪魔力の霧を乗せてしまえば!」
シャルロッテが喜んで続きを言う
「もう2度と悪魔力の霧は この大陸へやって来なくてよ!」
ザッツロードが驚いてシャルロッテを見る シャルロッテがハッとして赤面して口を押さえ恥ずかしがる リーザロッテが変化無くザッツロードへ近づき自信を持って問う
「どう!?ザッツロード王!私の戴冠祝いの催しは?」
ザッツロードが苦笑しながら後退って言う
「す、凄いと思います リーザロッテ女王」
ザッツロードの返答を聞いたリーザロッテとシャルロッテが同じ姿で高笑いする ザッツロードが汗をかく レイトとヴェインとロイが呆れている ロイが言う
「…しかし、アバロン帝国への連絡を行う事無く 決行すると言うのは… 俺はやはり 賛同しかねる」
ロイの言葉にザッツロードが驚き リーザロッテへ顔を向けて問う
「アバロンへの連絡を しないと言うのは!?」
ザッツロードの問いに リーザロッテが軽く笑って言う
「そのままの意味でしてよ ザッツロード王!」
ザッツロードが驚いて言う
「何故です!?ヴィクトール14世皇帝陛下へ連絡を入れて バッツにも協力して貰うべきです」
ザッツロードの言葉にリーザロッテがレイトへ視線を送り 説明を促す レイトがリーザロッテの無言のそれに返事をして説明する
「はっ!バッツスクロイツ殿はロスラグ殿の失踪とバーネット殿の殉職に伴い 『何か、やる気無くなっちゃったなー 俺そろそろ帰ろっかなー?』…との事です」
ザッツロードが視線を落として言う
「そ、そんな…」
リーザロッテがザッツロードへ言う
「ええ!そんな適当なバッツスクロイツに手伝って頂いては 成功する物もしなくってよ!」
ザッツロードがリーザロッテへ向き直って言う
「しかし、バッツは手伝わないとしても アバロン帝国の後押しも無しに その様な機械を造る事が 可能なのですか?」
リーザロッテが微笑んで頷き言う
「ええ!貴方も御存知でしょ?ソルベキアのスファルツ卿を」
ザッツロードが驚く
「スファルツ卿!?何故リーザロッテ女王が スファルツ卿を御存知なのですか?!」
ヴェインがザッツロードへ向いて言う
「スファルツ卿はソルベキア国において リーザ様を救出するに当たり そのお力を貸してくださった方なのだ」
リーザロッテが続けて言う
「スファルツ卿は 今も昔もローレシアの味方だと仰ってらしたわよ?私たちが貴方の仲間だと知って 隠密にソルベキア城を案内し 私を助けて下さったの」
ザッツロードが視線を落として言う
「そうでしたか…スファルツ卿が」
ヴェインがザッツロードを見て問う
「何か気に入らぬ事でもあるのか?」
ヴェインの問いにザッツロードが慌てて顔を上げて言う
「い、いえっ リーザロッテ女王が御無事で 何よりでした」
ヴェインが頷きザッツロードから視線を外す ザッツロードがリーザロッテへ向いて言う
「所で、今回のローゼント国 防衛の策はどの様に?」
リーザロッテが微笑んで言う
「策は既に立ててあってよ!貴方も一緒に戦うのだったら 私たちに従って頂戴?」
ザッツロードが苦笑しながら言う
「は、はい もちろんです」
リーザロッテの指示の下 ザッツロードは魔物の群れと戦う 強引な特攻策が終了し 負傷者が多い ザッツロードがリーザロッテへ言う
「リーザロッテ女王、その… あまり負傷者を出すような策は取らない様にと ベネテクト国で共にべーネット陛下から学んだと思いますが」
ザッツロードの言葉にリーザロッテが怒って言う
「貴方に言われなくても 分かっていてよ!?」
ザッツロードが困った表情をして言う
「そ、そうですか では…」
ザッツロードが言い掛けた時 レイトの通信機が着信する 皆の視線がレイトへ向く レイトが通信機に出る
「はい、こちらリーザロッテ女王陛下と仲間たちです」
通信機のモニターにバッツスクロイツが映って言う
『はーい、こちらバッツスクロイツー モンスターの群れに付いて報告でーす』
リーザロッテが通信機に近づき叫ぶ
「バッツスクロイツ!貴方の情報が間違っていてよ!?」
通信機のモニターのバッツスクロイツが軽く驚いて言う
『えー?何か間違ってたー?こっちのデータでは予測通りだったけどー?』
リーザロッテが怒って言う
「貴方が仰った数より魔物の数が多かったわ!」
バッツスクロイツが不満そうに言う
『モンスターの数は増えるかもしれないって言ったじゃーん?こっちは ばっちり予測どおりでしたぁー』
リーザロッテが通信機に詰め寄って言う
「その予測があったのなら先に仰い!それから『モンスター』では無くって『魔物』だと何度教えたら理解できて!?それに そのダラけた態度をいい加減直したらどうなの!?」
通信機のモニターのバッツスクロイツがムッと怒って言う
『なんだよー いつもは予測は余計だとか言うじゃんかー? それに俺の世界では魔物よりモンスターの方がトレンディなの!こっち風に直すのがめんどーだっただけだろぉ?』
リーザロッテが怒って言う
「だったら!さっさと自分の世界へ帰られたらよろしくってよ!?アバロンに居候するのでしたら もう少し謙虚になさったら如何かしら!?」
ザッツロードが驚いて言う
「リーザロッテ女王!それは少し言い過ぎです!」
ザッツロードが通信機のバッツスクロイツへ言う
「バッツ、リーザロッテ女王は 今少し機嫌が悪いんだ 許してあげてくれ」
通信機のモニターのバッツスクロイツがザッツロードへ視線を向けて言う
『知ってるー、女王様になってから 自棄に張りきり過ぎちゃって 失敗の連続ーって 事もねー?』
バッツスクロイツの言葉にザッツロードが苦笑して言う
「そ… そうなんだ?」
リーザロッテが叫ぶ
「余計な情報は 伝えなくて宜しくてよ!!」
通信機のモニターのバッツスクロイツが顔を上げて言う
『はぁーあ、こんな時バーネっちやヴィクトールっちが居てくれればさー?がつーんと女王様に一喝してくれるかもしれないのにー?それか?ロスっちと語り明かしたりとかー?』
ザッツロードが表情を悲しませて言う
「うん… そうだね」
ザッツロードを押し退けて リーザロッテが通信機へ言う
「そんな無駄話は後にして!さっさと連絡事を仰い!」
リーザロッテの言葉にバッツスクロイツが怒って言う
『はいはい!魔物の群れがまだ近くにいるから!撤収はもう一日様子を見る様にー!!以上っ!!』
言い終えると共に通信が切られる リーザロッテが怒って言う
「ちょっと!その魔物の群れについて 詳細な情報を仰い!」
ザッツロードが苦笑しながら言う
「あの… リーザロッテ女王 通信はもう 切れてますから」
リーザロッテが腕組みをし ぷいっと顔を背ける ザッツロードが苦笑する ザッツロードの通信機が着信する ザッツロードが通信機を取り出す リーザロッテが言う
「バッツスクロイツからなら 先ほどの詳細を伝える様に仰い!」
リーザロッテの言葉にザッツロードが言う
「あれ?珍しい ガルバディア国王からの通信だ …はい、ザッツロードです」
リーザロッテたちが呆気に取られて様子を見る 通信機のモニターにガルバディア国王のホログラムが映り言う
『ザッツロード王、片方の宝玉の修理が完了した』
ザッツロードが表情を明るめて言う
「有難う御座います!ガルバディア国王!すぐに参ります!」
ザッツロードの言葉にモニターのガルバディア国王が頷いて言う
『もう一方も 期日には間に合いそうだ』
ザッツロードが微笑んで言う
「助かりました!」
ガルバディア国王が頷き通信を切ろうとする ザッツロードが言う
「しかし、まさか通信を頂けるとは 驚きました」
ガルバディア国王が首を傾げて言う
『私は連絡をすると 言った筈だが?』
ザッツロードが苦笑して言う
「あ、はい、ですから 私の近くにホログラムで現れて下さるものかと?」
ザッツロードの苦笑に ガルバディア国王が微笑して言う
『私が姿を現すのは 私の相棒であるアバロンの王のもとのみだ』
リーザロッテがザッツロードの後ろで言う
「ザッツロード王のもとには 姿を現す気は無いって事ね?」
ザッツロードが苦笑する ガルバディア国王が言う
『では そろそろ通信を切らせて貰う ホログラムを維持した状態で ローテクな通信を繋ぐのは 少々骨だ』
ザッツロードが慌てて言う
「そんなご無理はなさらないで下さいっ!」
ガルバディア国王が微笑して通信が切られる ザッツロードが溜め息を吐く リーザロッテたちが呆れる
ザッツロードがリーザロッテたちへ向いて言う
「では、僕は先に戦線を離脱させて貰うよ ごめん」
リーザロッテが顔を背けて言う
「別に、貴方1人の力など無くっても 問題は無くってよ?」
ザッツロードが苦笑して レイトたちへ向いて言う
「それじゃ、皆 リーザロッテ女王様を 宜しく!」
リーザロッテが驚いてザッツロードへ向いて叫ぶ
「それは!どう言う意味でしてっ!?」
レイトたちが苦笑する
【 ガルバディア国 】
ザッツロードがガルバディア国の移動魔法陣に到着し ガルバディア城へ向かう ザッツロードがガルバディア城の門を越えると 遠くからヘクターが駆け向かって来る ザッツロードがヘクターである事に気付いて その名を呼ぼうとする
「あ、ヘクタ…」
言葉の途中で ヘクターがザッツロードを締め上げて叫ぶ
「おいっ!!お前っ!!一体どう言う事だっ!?」
ザッツロードが自分の首を絞めるヘクターの手を叩く ヘクターがザッツロードの首を絞める手を強め揺らして叫ぶ
「黙ってねーで 説明しろよ!!」
ザッツロードが苦しんでヘクターの手を更に叩く ヘクターが気付いて手を離しながら言う
「あぁ、これじゃ説明出来ねーか」
ザッツロードが床に落ち 咳込みながら顔を上げてヘクターを見る 隣にガルバディア国王のホログラムが現れて言う
『ザッツロード王 ヘクターへ説明をしてはいないのか?』
ザッツロードが呼吸を整えて言う
「あ… すみません、その… 仲間たちの援護に向かってしまったもので」
ザッツロードが表情を困らせる ガルバディア国王が視線を落とす ヘクターがガルバディア国王へ振り返って言う
「それで!どうなんだ!?何でデスの生命維持プログラムを やめたんだよっ!?」
ガルバディア国王がヘクターへ視線を戻して言う
『やめたのではなく 一時的に停止したのだ 2日の後には再開をする …私も 少しは休みたいのだがな?』
ガルバディア国王の言葉にヘクターが怒って言う
「ふざけんなっ!!お前 言ったじゃねーかっ!?デスの命はやべえって!一刻の猶予もねーかもしれねーってっ!!」
ザッツロードがあっと声を上げ 立ち上がってヘクターへ向く ガルバディア国王がザッツロードへ向いて言う
『ザッツロード王 私は作業に専念しなくてはならない ヘクターへ詳しく説明をしている余裕も このホログラムを維持している余裕もないのだ』
ザッツロードが頷いて言う
「はい、ヘクターへの説明は 私に任せて下さい」
ガルバディア国王が溜め息を吐いて言う
『今度こそ しっかり説明と謝罪を頼んだぞ?』
言い終えると共にガルバディア国王がホログラムを消す ヘクターが慌てて叫ぶ
「あっ!!おいっ!どこ行った!?逃げんじゃねーっ!!」
ザッツロードが苦笑しながら ヘクターを呼んで言う
「ヘクター、実は…」
ザッツロードがヘクターへ説明を終える
「…と言う訳なんだ、ヘクター ガルバディア国王は 元は君の依頼を優先していたんだ けど 僕が説得をして 僕が君の怒りを受けると約束した だから」
ヘクターがザッツロードの言葉の途中で歩き始める ザッツロードが驚いて後を追いながら言う
「ヘクター?どこへ?」
ヘクターが顔を向けないまま答える
「お前が俺の怒りを受けるって?…ガルバディア国王ってのは 随分身勝手なんだな?」
ザッツロードが慌てて言う
「いやっ ヘクター 聞いてくれ!ガルバディア国王は 君の依頼であるウィザードの生命維持プログラムを作る事を止めたわけでは無いんだ ただ その前に旧世界の人々を守るための 宝玉の修理をするだけなんだよ」
ヘクターが振り返って言う
「だからなんだよ?ガルバディア国王は 俺に約束したんだぜ?今すぐウィザードに生命維持プログラムを掛ければ 少なくとも回復を行うまでの間は問題ないってよ?俺はそれで安心したんだ それでカイッツ国の防衛戦でも また剣を取って戦えたんだ この戦いが全部終わって 平和になったら 今度こそあいつを助けてやれる可能性があるんだって」
ヘクターが一度言葉を切って ザッツロードを睨み付けて言う
「それなのに!勝手に約束破りやがって!別の作業してただってっ!?ふざけんなっ!!こんなんじゃ!ロボット兵の製作の後に あいつの回復をするって約束も どうなるか分かったもんじゃねーだろっ!?」
ザッツロードが驚き後ずさりながらも 気を取り戻して言う
「それはっ!僕が君へ伝えるべきだったんだ、だから責任は僕にある」
ザッツロードが言うと ヘクターが一度軽く笑い 次の瞬間ザッツロードを殴り飛ばす 床に叩き付けられたザッツロードが 痛みに歯を食いしばる ヘクターがザッツロードを見下ろして言う
「これは お前が俺に伝えなかった分の怒りだ …俺は もう一度ガルバディア国王に約束を取り次ぐ 本人にな!」
ヘクターが言い終えると共に再び歩みを再開させる ザッツロードが立ち上がってヘクターを追いながら言う
「待ってくれ ヘクター!『本人』って…」
ヘクターが玉座へ向かう前の通路で立ち止まる ザッツロードが疑問してヘクターを見る 間を置いてヘクターが叫ぶ
「おいっ!!ガルバディア国王!!開けろっ!!本気で俺と約束する気があるんなら お前本人に会わせろっ!!」
ザッツロードが驚き ヘクターの言葉の後 周囲を見渡し 再びヘクターへ視線を戻して言う
「あ、あの… ヘクター?」
ヘクターが怒り 大剣を抜いて叫ぶ
「俺を入れねぇーつもりならっ!このガルバディア城を 全部ぶっ壊してでも!お前を探し出すぞーっ!!」
言いながらヘクターが自分の前の壁へ剣を振るう 剣が当たるギリギリで扉が開く 空振りした剣が床に刺さる ヘクターが力任せにそれを引抜き 肩に担いで開かれた道を進む ザッツロードが呆気に取られながらも 慌てて後に続く ザッツロードが周囲を見渡しながらヘクターの後に続き問う
「ヘクター?…ここは?」
ヘクターが進行方向を向いたまま答える
「ガルバディアのプログラマーってのは 命が出来てから死んじまうまで ずっと水の入った機械の中で生きてんだ 俺はその中から 俺の相棒だったプログラマーを助け出した」
ヘクターの言葉にザッツロードが頷いて言う
「あ、うん、知ってるよ それでベネテクト国で 治療をさせたのだよね?」
ヘクターが軽く笑って言う
「ああ、そのデスは死んじまったけど …で、ガルバディア国王も 俺の相棒だったプログラマーみてぇに あのホログラムを使うだろ?って事は…」
ヘクターの言葉にザッツロードが驚いて言う
「ま、まさか!?ガルバディア国王をその中から 出してしまおうと言うのではっ!?」
ザッツロードの言葉にヘクターが笑って言う
「そんな事はしねーよ?その後は大変なんだぜ?…って まぁその話は 今は良いとして」
通路にある扉の前にガルバディア国王のホログラムが現れヘクターへ振り返る ヘクターがニッと笑いその前へ行く ガルバディア国王がヘクターへ顔を向けて言う
『私はこの中に居る… 約束は守る ここまで来れば十分だろう?』
ザッツロードがヘクターへ視線を向ける ヘクターが周囲を見渡して言う
「向こうの扉は?」
ヘクターが剣で扉を示して見せる ガルバディア国王が顔を向けて言う
『そちらには 私と共に生き残っているガルバディアの民が居る』
ヘクターが再び周囲を見て 別の扉を示して言う
「んじゃ そっちは?」
ガルバディア国王が同様に顔を向けて言う
『そちらも同じだ 我々3人はここに居る… これで もう十分であろう?私は作業に戻らねば 本当に間に合わなくなるぞ?』
ザッツロードが慌ててヘクターへ言う
「ヘクター!ここまで来れば良い筈だ、これ以上 ガルバディア国王の作業の邪魔をしては 旧世界の人々を守る事が難しくなる!」
ザッツロードの言葉にヘクターが正面の扉へ向き直って言う
「開けろ」
ガルバディア国王が表情を歪ませて言う
『この中は精密機械が充満している お前も知って居るだろう? 乱暴なアバロンの民を入れて 壊されては困るのだ』
ザッツロードが慌ててヘクターへ言う
「ヘクターっもう良いだろう!?ガルバディア国王を信じるんだ!」
ヘクターが間を置いてから剣を構えて言う
「俺だって信じてーよ!けど開けねーってなら… 隣の扉からぶっ壊す!!」
ガルバディア国王が焦って言う
『や、やめろ!大切な民たちを 傷付けるなっ!』
ヘクターが剣を正面の扉へ向けて言う
「なら開けろ、お前のツラ 見るまでは信じねー」
ザッツロードが慌てる ガルバディア国王が困る 一瞬間を置いてから ガルバディア国王が溜め息を吐いて言う
『分かった、では、まず剣をしまえ それから 足下には十分に気を付けろ …い、一本でも切ったら死ぬからなっ!?』
ガルバディア国王が焦って言う ヘクターが苦笑する ザッツロードが呆れる
扉が開かれる ヘクターに続きザッツロードが入る 周囲は機械が密集している 部屋の中心に置かれた液体の入った機械へ行き 顔を覗き込む ザッツロードが隣から覗くが 光りが反射して見えない ガルバディア国王のホログラムが現れて言う
『これで満足だろう?気が済んだのなら さっさと出て行ってくれ それからザッツロード王』
ザッツロードが顔を向けて問う
「え?はい?」
ガルバディア国王がザッツロードの足下を指差して言う
『その配管を踏むな …呼吸が 苦しい…』
ザッツロードが慌てて退きながら言う
「わっ!す、すみません!」
ザッツロードとガルバディア国王がヘクターへ向く ヘクターがガルバディア国王本体の顔をじっと見て言う
「ホログラムが一緒だから もしかしてって思ってたんだ… 俺の相棒だったデスと 同じ顔してんだな?」
ヘクターの言葉にザッツロードが驚き 再びベッドを覗く 光の反射が消え ガルバディア国王の顔が見える ガルバディア国王が言う
『我らは216年前に死に絶えたのだ、ここに有るのは 私の遺伝子情報をから作り出した複製の身体であり お前の相棒であったプログラマーも 私の遺伝子情報にて造られた身体へ 私の意識の複写を与えた生命であった』
ザッツロードが驚き ガルバディア国王のホログラムへ顔を向ける ガルバディア国王がザッツロードへ顔を向け微笑んで言う
『分かっている、ザッツロード王 このような事は許されざる事なのだと… 故に私はこれ以上の複製の製作を取りやめたのだ 我らの生命に与えられた時間は短い もうしばらくすれば私はもちろん 他の2人もその生命を失う これでガルバディア国は完全に終えるのだ』
ヘクターが屈めていた上体を上げて言う
「あいつは、お前と同じ顔をしてたし、同じ感じだった …けど、あいつはあいつだ お前じゃねぇよ」
ザッツロードがヘクターを見る ガルバディア国王が軽く笑って言う
『ああ、不思議な事に 私の意識の複製を与えているにも拘らず 彼らは様々な変化をする 良くなる事も 悪くなる事も… 元である私が判断するのも おかしな話ではあるが そのお陰で私は今までの長き時を 生き抜いて来られた 彼らに救われ 守られ… 私は彼らをガルバディアの民とした だが、やはり許されざる事だ 私1人の勝手で お前達の世界に影響を与えてしまう事は もう止めなければならない』
ザッツロードがヘクターへ向く ヘクターが溜め息を吐いて言う
「なら、俺との約束はどーなんだ?途中で止めて死んじまう気じゃねーよな?」
ガルバディア国王がヘクターへ向いて言う
『私は彼らに比べ生命維持の時間が長い ロボット兵の製作とお前のウィザードを回復してやるまでの間程なら生きていられる お前の依頼を終えたら 私は自ら私の生命維持プログラムを止める これで全て終るのだ …もっとも それまでの間に 私本体の活動を止められてしまっては その時点で終ってしまうのだがな?』
ヘクターが軽く笑って言う
「そっちは安心しろ、俺がぜってー守ってやるよ!」
ガルバディア国王が軽く笑って言う
『だろうな』
ザッツロードが修復された旧世界の宝玉を手に入れ ガルバディア城を出て行く 城の門前でヘクターが立ち止まって言う
「じゃあな?まぁー頑張れよ?」
ヘクターの言葉に ザッツロードが振り返って言う
「はいっ …あの、ヘクター?」
ザッツロードの言葉にヘクターが問う
「あ?」
ザッツロードがヘクターの顔を見て言う
「旧世界の宝玉が揃って 無事 旧世界の悪魔力が中和されたら 僕らと共に 旧世界で戦ってくれませんか?」
ザッツロードの言葉に ヘクターが間を置いて軽く笑って言う
「…そうだな、ウィザードのデスが 元気になったらな?」
ザッツロードが軽く笑って言う
「はい、その時には きっと2人で 僕らの所へ来て下さい」
ヘクターが笑顔で言う
「おう!期待してろって!」
ヘクターの言葉にザッツロードが微笑み ガルバディアを後にする
【 キャリトールの町 】
ザッツロードが町へやって来て 最上級魔法使いたちの下へ向かう 辿り着いた先でソニヤを探す 宝玉の起動を行う5人の魔法使いの中にソニヤを見つける ザッツロードがソニヤへ近づくと 他の魔法使いが声を掛けて来る
「今は 彼女らへ近づいてはいけません」
ザッツロードが立ち止まり 魔法使いへ言う
「あ、はい すみません、えっと… もう1つ 宝玉を持って来たのですが」
ザッツロードが言って宝玉を見せる 魔法使いが宝玉を見てからザッツロードへ顔を向けて言う
「私たちには 現在起動を行っている あの宝玉の他に もう1つ起動されていない宝玉があります テキスツの方が きっとその宝玉を必要としていると思いますので どうかそちらへお持ち下さい ソニヤ様へは 私から伝えておきますので」
ザッツロードが魔法使いの言葉にあった ソニヤの敬称に驚きながらも頷いて言う
「分かりました ソニヤ…様に 宜しく伝えて下さい」
ザッツロードが立ち去ろうとすると 魔法使いが問う
「失礼ですが お名前を お聞かせ頂けますか?」
魔法使いの言葉に衝撃を受けて立ち止まり 振り返る 魔法使いが不審そうな顔でザッツロードを見ている ザッツロードが言い辛そうに言う
「えっと… ザッツロードと申します」
魔法使いが石化する ザッツロードが苦笑して立ち去る
【 テキスツの町 】
テキスツの町へ到着したザッツロードは ラナとセーリアを人づてに探す 辿り着いた先 建物の中 医務室のベッドにセーリアが横になっている 隣にいるラナがザッツロードに気付いて言う
「ザッツ!ソニヤから聞いたわっ 旧世界の宝玉が2つ壊れてしまったって!?」
ザッツロードがラナの下まで行って言う
「うん、でも宝玉は大丈夫だ ガルバディア国王が修理して下さっているから あ、これ、片方先に」
言いながら宝玉をラナへ手渡す ラナがホッと胸を撫で下ろして 受け取って言う
「なら良かったけど… 聞いた時は 本当に驚いたんだから」
ザッツロードが苦笑して言う
「うん、ごめん… それより セーリアは?」
ザッツロードの言葉にセーリアが顔を向けて言う
「私は大丈夫よ、ごめんなさい ちょっと無理をしただけだから」
セーリアの言葉にラナが溜め息を吐いて言う
「ちょっと所じゃないわよ、セーリアったらこの5日間 毎日宝玉の起動に加わっていたんだから 私には休めって言っときながら」
ザッツロードがセーリアへ向いて言う
「え?そうだったのか 無理をさせて ごめん、セーリア」
セーリアが微笑んで言う
「ザッツも皆も頑張っているのだもの、私もってね?でも自己管理も出来ないんじゃ いけないわよね」
ラナが息を吐いて言う
「そーよ!後は私たちに任せて セーリアは休んでなさいっ」
ラナがザッツロードを連れて医務室の外へ向かう ザッツロードが慌ててセーリアへ声を掛ける
「あのっ それじゃっ お大事に!」
ザッツロードの言動にセーリアが軽く笑って頷く
外へ出たザッツロードとラナ ラナがザッツロードへ振り返って言う
「それで?」
ラナの言葉にザッツロードが疑問する
「え?」
ラナがザッツロードに詰め寄って言う
「ザッツ、何か隠してるでしょ?」
ザッツロードが驚いて言う
「えぇええ!?い、いや そんな事無いけど?」
ラナが腕組みをして顔を背けて言う
「嘘おっしゃい!顔に書いてあるわ 『困ってます迷ってます』ってね?」
ザッツロードが苦笑しながら言う
「いや、その… 確かに ちょっと戸惑ってはいるけど だ、大丈夫だよ?」
ラナが体勢を戻して言う
「それじゃ、何に戸惑ってて 何に大丈夫なのかしら?」
ザッツロードが思わず言う
「う…っ」
ザッツロードが焦る ラナが呆れて言う
「ザッツ?私たちは今 離れて行動しているけど 仲間である事は変わらないのよ!?ザッツは その私たちを 信じられないのかしら?」
ラナの言葉に ザッツロードがハッと気付いた後 間を置いて微笑んで言う
「そうか 分かった… ありがとう、ラナ お陰で 迷いは無くなったよ!」
ザッツロードの言葉にラナが疑問して言う
「え?」
ザッツロードが微笑んで背を向けて言う
「ラナ、宝玉の起動とセーリアを よろしく!」
ラナが驚き慌てて声を掛ける
「ちょ、ちょっと!?ザッツ!」
ザッツロードが走り去る ラナがザッツロードの背に叫ぶ
「一体 何が分かって 何の迷いが無くなったのか 説明しなさいよーっ」
【 ローレシア城 】
ザッツロードはキルビーグの下へ行き言う
「父上!旧世界へ行ったら 私は何をするべきなのかを 詳しく教えてください!」
ザッツロードの言葉に キルビーグが呆気に取られつつ言う
「あ、ああ… それはもちろんだが 宝玉の方はどうなのだ?」
ザッツロードがキルビーグの前へ立って言う
「宝玉の起動も、修理も 皆が 必ず間に合わせてくれます!私は その皆を信じて 自分のやるべき事をします!」
ザッツロードを見上げていたキルビーグが 間を置いて微笑み言う
「そうか、分かった 私もお前の仲間たちを信じ お前に この先行うべき事を 伝えよう」
ザッツロードが微笑み頷いて返事をする
キルビーグが機械室のモニターに表示をさせながら言う
「私も実際に行った事は無い 従って 全て情報のみの話となってしまうが 旧世界の宝玉を全て起動させた後 お前達はそれを持って この場所から旧世界へ向かう事となる 転送はこの機械室の装置で行える」
キルビーグが機械を操作して 転送装置を見せる ザッツロードがそちらへ目を向けていると キルビーグが続きを話す
「転送は次の通信の日時 2日後の今頃になるだろう お前たちはここから旧世界の民が居る場所へと転送され そこでお前たちを待っている旧世界の民と出合うだろう 向こうはお前たちが来る事を 想定して居ない可能性もある為 驚かれるやもしれんが 宝玉を持って来たのだと伝えれば問題ない 彼らはお前から宝玉を受け取り 悪魔力中和装置を起動させるだろう 装置の効力が旧世界全土へ行き渡るまで どの程度の時間が掛かるかは分かりかねる だが、お前達は次の通信の日に連絡を入れて欲しい 旧世界の民と共に 旧世界で戦いを開始するのか もしくは一度ガルバディアで作られるロボット兵を取りに戻るか」
キルビーグの言葉にザッツロードが問う
「ガルバディアのロボット兵は いつごろ完成するのでしょう?」
キルビーグが顔を横に振って言う
「当初はソルベキアを攻略すれば 数は少なくともお前たちが向かう次の通信時には 送る事が可能では無いかとの話であったが…」
ザッツロードが言う
「アバロンはソルベキアを攻略しました 当初の予定通りになるのでは?」
キルビーグが1つ息を吐いて言う
「だが、あの日以降 ヴィクトール13世殿とバーネット殿との連絡が繋がらなくなってしまった ザッツ、お前は彼らと連絡を取り次いでいるのか?」
ザッツロードが驚いて言う
「え!?父上は御存知無いのですか!?アバロンからの そちらの連絡は!?」
キルビーグが少し驚いて言う
「ヴィクトール14世皇帝陛下とは連絡を続けている だが、ソルベキア攻略時にバーネット殿が重症を負い、ヴィクトール13世殿も軽症ながら怪我を負ったと言う話しか聞き及んでいない 私としても重症と言うバーネット殿とは無理としても ヴィクトール13世殿とは 何とか連絡を取りたいと思っているのだが」
ザッツロードが戸惑い視線を落とす キルビーグが首を傾げながら言う
「ヴィクトール14世皇帝陛下からは 計画に支障は無く 旧世界 新世界 共に今まで通りの計画で行くと?…まぁ、私が出来る事は 旧世界との橋渡し程度だ 余り意見を言える立場では無いのだがな?」
ザッツロードが一度目を閉じてから再びキルビーグへ視線を向けて言う
「では、私がヴィクトール13世殿と 直接 お話をして参ります それで…」
ザッツロードの言葉にキルビーグが頷き言う
「うむ、よろしく頼む ガルバディアのロボット兵が どうなるのかが一番の問題にもなりかねん そして あちらへ向かったお前達は旧世界の民たちを守り抜いて欲しい 旧世界では人々が武器を持って戦う事を 長きに渡り行っていなかったとの事だ 旧世界の機械兵との戦いはもちろん、旧世界の魔物とも 彼らは戦う術を持たない 旧世界に既に送ってある聖魔力の結界だけが 今は彼らを守っている」
ザッツロードが間を置いて言う
「…もし、ガルバディアのロボット兵が 予定より遅くなった場合は?」
キルビーグが頷いて言う
「その時は 悪魔力が中和された旧世界において 既に悪魔力に制御を乗っ取られている機械兵らの攻撃を防ぐ為に こちらから聖魔力の供給を行い 彼らを守る結界を保持するしかない 旧世界に蔓延している機械兵の数は計り知れない お前達だけではその全てを倒す事は不可能だからな」
ザッツロードが再び問う
「こちらからの聖魔力の供給は 再びアバロンを頼る形で?」
キルビーグが首を傾げて言う
「うむ、そのつもりだが… 何か問題でもあるのか?前回の結界の島を中和するほどの量ではなく 数回に分け各国の宝玉や魔力穴から 聖魔力を抽出して得られる量であっても賄う計算だ それに、その程度ならば 過去と同様に このローレシアであっても可能な事であるしな?」
ザッツロードが視線を強めて言う
「では、いざと言う時は ローレシアで対処する事が 可能なのですね?」
ザッツロードの言葉に キルビーグがザッツロードの顔を見つめ 間を置いて言う
「ああ、可能だ」
ザッツロードが頷き出口へ向かう キルビーグが問う
「ザッツ?」
ザッツロードが立ち止まり 振り返って微笑んで言う
「ヴィクトール13世殿の お見舞いに行って参ります」
【 アバロン帝国 】
ザッツロードが ヴィクトール14世の前に跪いて言う
「旧世界の宝玉は 期日までに間に合うと思われ 私はそれを持ち ローレシアより旧世界へ向かいます」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷いて言う
「そうか、それは何よりだ ザッツロード王 貴公の働きに期待している」
ヴィクトール14世の言葉にザッツロードが顔を上げて言う
「それで、ヴィクトール14世皇帝陛下 ガルバディア国で行う予定のロボット兵の方は そちらも予定通りに進みそうでしょうか?」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が間を置いてから言う
「うん、そうなるだろう」
ザッツロードがヴィクトール14世を見つめて言う
「ロボット兵製作は バッツスクロイツも協力するとの事でしたが 現在はどの辺りまで進んでいるのでしょうか?計画がこのまま進めば ロボット兵が必要になるまでに あまり時間はありません ローレシアへもご連絡を頂きたいのですが」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が頷いて言う
「分かった、連絡を入れさせよう」
ザッツロードが再びヴィクトール14世を見つめる ヴィクトール14世が目を逸らす ザッツロードが僅かに表情をしかめて言う
「ヴィクトール14世皇帝陛下 ヴィクトール13世様に面会をしたいのですが」
ザッツロードの言葉にヴィクトール14世が視線をザッツロードへ戻して言う
「彼は現在 静養中だ 面会は控えて貰いたい」
ザッツロードが身を乗り出して言う
「旧世界… いえ、新世界も含めた 全ての世界を救う事が我々の目標でした もうすぐその片方である旧世界が救われる時が来る筈ですっ 私はその旧世界へ行く前に 今まで共に戦ったヴィクトール13世様に お会いしたいのです!」
ヴィクトール14世が視線を強めて言う
「では尚更 今は会うべきでは無い 貴公を彼に会わせ その覇気を失わせる訳には行かないのだ」
ザッツロードが微笑んで言う
「私には共に戦う仲間がいます 覇気を失う事はありません!例えヴィクトール13世様が 昔の戦意を失っておられても その彼にこそ 私は報告したいのです!」
ヴィクトール14世が間を置き 1つ息を吐いてから言う
「…分かった、面会を許可する だが、私には 貴公の話で 彼を救えるとは思えない」
ザッツロードが軽く微笑み 敬礼して立ち去る
兵の案内を受け 一室のドアまで案内される ザッツロードがノックをして声を掛ける
「ヴィクトール様 ザッツロードです どうかお話を!」
返事は無い 控えの兵が扉を開ける ザッツロードが室内へ入る 室内では椅子に座ったヴィクトール13世が窓の外を見ている ザッツロードがその横に立って言う
「ヴィクトール様、旧世界の宝玉が もうすぐ全て起動されます 私はそれを持って旧世界へ行き 旧世界の悪魔力を中和させます その後には 既に悪魔力に侵された機械兵や魔物との戦いが待っていますが それでも 我々は それらの者から 旧世界の人々を守り 旧世界を完全に悪魔力の脅威から救う事が出来ます」
ザッツロードが言葉を終えヴィクトールの反応を待つ ヴィクトールが言う
「そう… それは 良かったね…」
ヴィクトールは窓の外を見ている ザッツロードが言う
「ヴィクトール様…」
ヴィクトールが微笑して言う
「今日は… 良い天気だね… アバロンは 昨日は雨が降っていたんだよ… 雨の日は ベネテクトへ通信を送るんだ 運が良ければ 東の大陸にも雨が降っていて ベネテクト城の建設作業が中止される …その時なら 彼が返信をくれるんだ 他の日はダメだって… 俺はお前と違って忙しいって… でも アバロンが雨の日は いつも返信が来るんだよ… 不思議だよね 向こうは こっちの 半分くらいしか 雨は降らないのに」
ザッツロードがヴィクトールの視線の先を見る 遠くにアバロン運河が見える ザッツロードが間を置いて言う
「こちらの新世界も リーザロッテ女王たちが 悪魔力の霧を追い払う機械を作り上げると言っていました その後には やはり既に魔物化している者との戦いがあると思いますが それも全て終われば これで、どちらの世界も完全に救われます ヴィクトール様やバーネット様がやろうとしていた 両世界を救う事 それが達成されます これもヴィクトール様やバーネット様が… ずっと戦い続けてきた結果です きっとバーネット様も… 喜んでくれますよ?」
ザッツロードが微笑んでヴィクトールを見る ヴィクトールは窓から視線を離し 自分の前にあるテーブルを見つめて言う
「僕は いつも… 彼がアバロンに来るのを 待っていたんだ… 次に彼が来るまでの間 泣かずに居たら その次もまた… アバロンへ 遊びに来てくれるって… だけど、その反動で 彼が来た時には いつも泣いてしまうんだ… おかしいよね?嬉しいのに いつも泣いてばかりだ でも しょうがないから 俺が居る時は 泣いても良いって… ザッツロード 僕はね?ただずっと… 彼と遊んで居たかっただけなんだよ 世界を救う事なんて きっと… 本当は どうでも良かったんだ 彼と2人で… ずっと遊んで居たかっただけなんだよ ごめんね… 君たちまで 巻き込んでしまって…」
ザッツロードが一瞬呆気に取られた後 間を置いて言う
「…王様は皆 同じですね ガルバディア国王も そうでした 自分の勝手に皆を巻き込んでしまったと… でも、僕らは ガルバディア国王にもヴィクトール様にも たくさん助けて頂きました だから、後は僕たちに任せて下さい」
ヴィクトールがザッツロードへ顔を向けて微笑んで言う
「ザッツロード… 君は 強いね… きっと… 君と一緒に 遊んでくれる人が居るから… でも… 僕は もう ダメだよ…」
言い終えると共に ヴィクトールが涙を流して俯き 手に持っていたバーネットの鞭を抱き テーブルに身を伏せて泣く ザッツロードが悲しそうに言う
「ヴィクトール様…」
ザッツロードが部屋を後にする
【 ガルバディア城 】
ザッツロードがガルバディア城へやって来て 玉座の間へ至る道を進んでいくが 途中で側面の壁の扉が開く ザッツロードが驚き顔を向けて言う
「あれ…?確か こっちは…」
ザッツロードが辺りを見渡してから 足元の床に傷のある側面の通路へ向かう 辿り着いた先 ガルバディア国王の部屋の扉が開いている ザッツロードが驚いて走って向かう 扉の前に辿り着き 室内を見ると ガルバディア国王の眠る機械の上にヘクターが座っている ザッツロードが驚いて言う
「ヘクター!?」
ヘクターが閉じていた目を開いて言う
「よう」
ザッツロードが慌てて 指差して言う
「ヘクターっ!?なっ ななななっ!?何をやってるんですかっ!?」
ザッツロードの慌て様に ヘクターが笑って言う
「何って?ガルバディア国王が寂しくねー様に 付き添ってやってるんじゃねーか?」
ヘクターが言い終えると ヘクターの隣にガルバディア国王のホログラムが現れて叫ぶ
『誰が付き添いなど頼んだのだっ!?お前が周囲の機械類を 破壊したりしないかと 心配で心配で作業が はかどらんわっ!!』
ザッツロードが慌て困りながらヘクターへ向かいつつ言う
「ヘクターっ!ガルバディア国王の邪魔をしないでくれ!君だって 宝玉の作業が終ったら 次に君のウィザードへの …うわっ!」
ザッツロードが足下の配管を一本足に引っ掛けて転ぶ 外れた配管から勢い良く水が吹き出す ガルバディア国王が悲鳴を上げる
『あぁああーーーっ!!』
ザッツロードが焦る ヘクターが駆け付けて配管を戻す ガルバディア国王がザッツロードを指差して叫ぶ
『貴様は2度と入るなぁっ!!』
ザッツロードが焦って部屋の外へ出る
「わわわっ す、すみません!」
ガルバディア国王がヘクターへも指を指して言う
『ついでにお前も出ていけー!』
ヘクターが一息吐いて 元の場所へ戻って言う
「やっぱり デスの世話は俺の役目か?」
ヘクターが笑顔を見せる ガルバディア国王がヘクターへ向き直って言う
『お前も出ていけと 言っとるんだ!』
ヘクターがニヤニヤ笑って言う
「またまたー!デスはやっぱり元も子も 素直じゃねーなー?」
ガルバディア国王が怒って言う
『う、うるさいっ!お前にデスとは 呼ばれたく無いわ!それに『元も子も』の意味が違う!』
ザッツロードが呆れる ヘクターが一切の悪気の無い笑顔を見せる ガルバディア国王がわなわな怒る ザッツロードが言う
「ヘクター、本当に 宝玉が間に合わなかったら困るんだ!取り返しが付かなくなる前に 君もこちらへ」
ヘクターが軽く笑って言う
「あー それなら心配ねーよ?さっき本人が言ってた」
ザッツロードが疑問してガルバディア国王の本体とホログラムへ交互に視線を向ける ヘクターが呆れて言う
「いや、本体は喋れねぇから?」
ガルバディア国王がボソッと言う
『素か?』
ヘクターが答える
「たぶん」
ヘクターが改めて言う
「お前の依頼である宝玉の修理は もうすぐ終るってよ?予定より半日ぐれー早いって」
ザッツロードが表情を明るめて叫ぶ
「ほ、本当ですか!?ガルバディア国王!!」
ガルバディア国王が微笑して言う
『ああ、本当だ』
ザッツロードが微笑む ヘクターが笑んで言う
「だろ?ほらな?やっぱり、俺が付き添ってやったからー」
ヘクターがニヤニヤ笑う ガルバディア国王が怒って言う
『お陰で心配で心配で 夜も休まれず 作業が出来よったわっ!』
ザッツロードが苦笑しながら言う
「でも、良かった… 本当は 少し心配していたんです …色々 信じるって決めたのに…」
ザッツロードがその場に腰を下ろす ヘクターが微笑んで言う
「信じるって 言葉で言ってもよ?難しいもんだからな!ま、俺らは得意だけどよ?」
ガルバディア国王がヘクターを見下ろして言う
『アバロンの民は 昔からその想いが他国の者に比べ強い だが それ故に 一度それを失うと 立ち直るのに時間を有する』
ザッツロードが微笑んで言う
「きっとヴィクトール様も 今はその時間に在るのでしょうね」
ヘクターが苦笑して言う
「ああ …とは言っても あいつの場合は 立ち直れるか 分かんねーけどな?」
ザッツロードがヘクターへ視線を向ける ヘクターが続ける
「あいつは昔っから あーだからよ?ガキの頃から変わんねーんだよ 二言目にはバーネット、バーネット… まぁ先代ヴィクトール12世の頃から そうだったらしいけどよ?」
ガルバディア国王が言う
『…そのヴィクトール12世と 同じ運命を歩まぬ事を 願いたいものだ』
ザッツロードがヘクターへ問う
「ヴィクトール12世と同じ運命とは?」
ザッツロードの問いに2人が視線を逸らす 間を置いてヘクターが言う
「…で?所でお前、仲間たちが宝玉の起動をやってんだろ?こんな所で俺らと世間話なんかしてて良いのかよ?」
ザッツロードが苦笑して言う
「僕は皆の所に居ても 宝玉の起動を手伝えないので」
ヘクターとガルバディア国王が一度顔を見合わせてから ヘクターが言う
「あのなー?いくら仲間を信じるっつったって 傍に居るのが一番なんだぜ?まぁ 仕方ないって時は 信じる気持で乗りきるってのもあるけどよ?居られる時は一緒に居るのが一番だぜ、な?」
ヘクターがガルバディア国王へ顔を向ける ガルバディア国王が焦って言う
『お前の場合は 単なる睡眠妨害だろう!?』
ザッツロードが微笑んで言う
「そうなんだ…?そんなに無理をしなくても 良いものなのですね?」
ザッツロードの言葉に ヘクターとガルバディア国王が振り向いて笑う ザッツロードが軽く笑って立ち上がり言う
「仲間たちの様子を見てきます もしかしたら 僕にも何か手伝える事があるかもしれない」
ザッツロードの言葉にガルバディア国王が言う
『付き添いなら 邪魔にならぬ 最良の場所で行う事が好ましい』
ザッツロードが笑い ヘクターが苦笑する
【 キャリトールの町 】
町に入ると 町の様子がいつもと違う ザッツロードが驚いて魔力者たちの下へ走り向かう 辿り着いた先 町の人々が皆で魔力者たちを取り囲み祈りを捧げている ザッツロードが呆気に取られて 皆の中心に居る魔力者たちを見る ソニヤとラナとセーリアを含む 最上級魔力者が一同に集まり 1つの宝玉を起動させている ザッツロードが驚き立ち尽くす そこへ 過去ザッツロードへ名を聞いてきた魔法使いが現れて言う
「キャリトールとテキスツに分かれていた 最上級魔力者たちが 集まったのです もう5人では 起動作業が出来ないほどに 皆 衰弱してしまっていて しかし それを知った町の人々が彼女らの魔力を調整する事を 手伝ってくれるようになりました お陰で13人の最上級魔力者たち 全員の魔力で宝玉の起動を行えるのです!」
魔法使いが顔を向け嬉しそうに微笑む ザッツロードが呆気に取られて言う
「すごい… 町中の人々が 皆で宝玉の起動を…」
魔法使いがザッツロードの手を引いて言う
「さぁ!ザッツロード陛下も是非!彼女たちに力を お貸し下さい!」
魔法使いがザッツロードの手を引いて 最上級魔力者を取り巻く人々の中へ連れて行く ザッツロードが困惑しながら言う
「あっ いや…っ 僕は…」
魔法使いが手を離し 一度ザッツロードへ笑顔を向けた後 祈るように魔力を集中させ 魔力調整を手伝う ザッツロードが一度彼女を見てから 辺りを見渡して頷き 自分もそれに加わる
宝玉の起動作業が終盤に掛かった頃 ザッツロードの前にガルバディア国王の後姿のホログラムが現れる ザッツロードが驚き 慌てて声を静めて言う
「…ガルバディア国王、宝玉が?」
ザッツロードの言葉に ガルバディア国王が体の向きをザッツロードへ向けて言う
『完了した』
ザッツロードが表情を明るめて言う
「では、すぐに…っ」
ザッツロードの言葉にガルバディア国王が微笑して言う
『その必要は無い』
ザッツロードが疑問する ガルバディア国王のホログラムが消える ザッツロードが驚き辺りを見渡すと後ろ頭に宝玉がぶつけられる 思わず声を上げそうになったザッツロードが 頭を押さえながら振り返って言う
「…っ オライオン!?」
ザッツロードの後ろにオライオンが軽く笑って立っている その後ろからシュライツが現れて奇声を発して喜ぶ ザッツロードが微笑んで言う
「ありがとう、宝玉を持って来てくれたんだね?シュライツも?」
オライオンが笑顔で言う
「ああ、親父の様子を見に言ったら 押し付けられた …あ、後 ガルバディア国王から伝言で『お前との約束は果たした』だってよ?」
オライオンの言葉にザッツロードが苦笑し 宝玉を受け取りながら言う
「うん 分かった、やっぱりガルバディア国王は 約束を守って下さる方だったんだ」
ザッツロードの言葉にシュライツが喜ぶ 周囲の人々が声を上げる ザッツロードが驚いて視線を向ける ソニヤが起動させた旧世界の方玉を手に取って 皆に笑みを向けている ザッツロードが微笑む ソニヤがザッツロードとオライオンに気付いて 笑顔で駆けつける ザッツロードがソニヤへ向き直ると ソニヤが立ち止まって言う
「ザッツ!来てくれてるって 分かってたわよ!」
ザッツロードが驚いて言う
「え?本当に?」
ラナがやって来て言う
「あら、最上級魔力者を あまり舐めて貰っては困るわよね?」
ザッツロードが一度驚き苦笑して頭を掻く セーリアがやって来て微笑む ザッツロードがセーリアへ向いて言う
「セーリア、大丈夫なのかい?」
セーリアが頷いて言う
「ええ、心配を掛けてごめんなさい 私も皆を信じて ちゃんと休みを取るべきだったわ」
ラナが両手を腰に置いて怒って見せる セーリアが苦笑して見せる ソニヤが微笑む ザッツロードが一度視線を落とし すまなそうにオライオンから受け取った宝玉を持つ手を差し出して言う
「それで… せっかく今 終わらせた所に 言い辛いんだけど これを…」
ザッツロードの言動に ソニヤたちが顔を見合わせて笑い ソニヤが言う
「もう!ザッツってば 全然分かって無い!」
ラナが腕組みをして言う
「いつになったら私たちの事 本気で信じてくれるのかしら?」
セーリアが苦笑して言う
「ザッツの場合は 信じているいないに関わらず 照れ屋さんなだけなのよね?」
ザッツロードが呆気に取られて言う
「え?えっと…?」
ザッツロードの言葉にソニヤがザッツロードの持つ宝玉を奪い取り 掲げて言う
「みんなー!最後の一個よー!」
ラナが続けて言う
「皆の力を もう一度だけ 貸して頂戴!」
セーリアが2人の後ろで微笑む ザッツロードが驚いて3人を見る 町の人々がソニヤたちに注目してから わっと歓声を上げる ソニヤたちが顔を見合わせ微笑んでから ザッツロードへ向いて ソニヤが言う
「皆が手伝ってくれるって もっと自信持って 信じなきゃ!」
ラナが微笑んで言う
「そう言う事よ!」
セーリアが微笑んで言う
「ザッツなら 今度は出来るわよね?」
ザッツロードが皆の言葉に笑って言う
「う、うん 頑張るよ」
ザッツロードの言葉に3人が笑う ザッツロードが苦笑する
最上級魔力者たちが宝玉の起動を開始する 周囲を囲う人々が魔力の調整の手助けを開始する ザッツロードが皆を見渡してから ソニヤたちを見て 自分も魔力の調整に加わる オライオンとシュライツが皆から離れて見ている オライオンがシュライツへ顔を向けて言う
「お前も加われよ?俺は魔力なんか全然無いから無理だけど お前なら かなり手助けになるんじゃねーのか?」
オライオンの言葉に シュライツが奇声を上げながら身振り手振りで何かを伝える オライオンが頷きながら翻訳する
「うんうん、自分は?皆とちょっと違うから?むしろ調整を 破壊しちゃう?…でも頑張る!? あわわっ お前は俺と一緒に見学っ!」
オライオンが慌ててシュライツを羽交い絞めにする シュライツが奇声を発して不満を表す オライオンが顔を横に振って否定する
オライオンが腕組みをして 皆を眺めている 皆が力を抜く オライオンが疑問する 最上級魔力者たちが脱力して地に手を付く オライオンがハッとして向かおうとするが ザッツロードがその前に辿り着き 膝を着きそうになったソニヤを支える ソニヤがザッツロードへ顔を向けて言う
「ザッツ、終ったよ!ほらっ!旧世界の宝玉を全部持って ローレシアへ!」
ザッツロードが心配そうな顔で言う
「し、しかし…」
ラナがザッツロードへ宝玉の入った袋を押し付けて言う
「折角 皆で頑張ったんだから!貴方が繋がなきゃダメでしょ!?」
セーリアがザッツロードへ向いて言う
「私たちも 可能な限り急いでローレシアへ向かうわ」
ザッツロードが頷いて言う
「分かった、皆 ありがとう!この宝玉で 必ず旧世界の人々を救うよ!」
皆が頷く ザッツロードが頷く オライオンとシュライツが来て オライオンが言う
「ローレシア城に行くんだな!?俺らも付いてくぜ!」
オライオンの言葉にザッツロードが頷き シュライツの移動魔法でローレシア城へ向かう
【 ローレシア城 】
ザッツロードたちが機械室へ向かう 機械室には既にキルビーグが準備を整えている キルビーグがザッツロードの姿を確認すると 思わず椅子から立ち上がって言う
「ザッツ!待っていたぞ!」
ザッツロードがキルビーグへ向いて言う
「はいっ!父上!皆が間に合わせてくれました!」
ザッツロードがキルビーグの下へ行って 宝玉の入った袋を見せる キルビーグが頷いて部屋の中心にある ローレシアの宝玉を指差して言う
「さあ!宝玉の近くへ!すぐに転送作業を開始する!」
ザッツロードが頷き ローレシアの宝玉の下へ行く オライオンが行くべきかを悩む ザッツロードがオライオンへ向いて言う
「オライオン!皆に伝えてくれ!旧世界との次の通信の時 僕から連絡を送る それまで待っていてくれと!」
ザッツロードの言葉にオライオンが笑顔で頷いて言う
「おうっ!伝えるぜ!その 次の通信 って時までは 1人かもしれねぇけど 頑張れよな!!」
オライオンの言葉に ザッツロードが自信を持った笑みを見せて言う
「僕は1人では無いよ!オライオン、君や ソニヤやラナやセーリア リーザロッテ女王たち 他にもたくさんの仲間が僕には付いている!僕は皆を信じているんだ!」
オライオンが笑んで言う
「ああ!俺の親父やガルバディア国王も付いてるぜ!」
シュライツが奇声を発して怒る オライオンが振り返ってから ザッツロードへ言う
「こいつの名前言い忘れてるってよー?」
シュライツが怒る ザッツロードが笑って言う
「ごめんごめん!シュライツ 君も もちろんだよ!」
シュライツが笑顔で頷く キルビーグがザッツロードへ向いて言う
「ザッツ!旧世界の民へ伝えてくれ もう何も心配はいらないと!」
ザッツロードがキルビーグへ向いて言う
「はいっ!ローレシア帝国皇帝陛下!必ずっ!!」
ローレシアの宝玉が白く光る オライオンとシュライツが眩しそうに光から目を守る 光が消え オライオンが顔を向けた先 ザッツロードの姿が消えている オライオンがザッツロードの居た場所へ向かい 周囲を見渡す キルビーグがモニターへ視線を向けて言う
「うむ、成功だ これで旧世界は悪魔力から救われる!…我ら旧ローレシア帝国の肩の荷も下りると言うものだ」
オライオンがキルビーグの近くへ行き モニターを眺めて言う
「旧世界か… 一体どんな所なんだろーな?」
オライオンの後ろでシュライツが首を傾げる キルビーグが微笑み言う
「ザッツが持って行った 宝玉の力を得て 旧世界の悪魔力が中和されれば いずれ我々も向かい そこに残る魔物や機械兵と戦う事となるだろう お前も我々と共に戦うか?オライオンとやら?」
キルビーグの言葉に オライオンが口角を上げて言う
「ああ!それも良いな!」
オライオンの返答にキルビーグが微笑み モニターを見上げて言う
「一週間後には ザッツや旧世界の民たちから連絡が来る 我々はそれまでに 可能な限りの準備を整えておかなければ」
オライオンが軽く笑って言う
「1週間か、んじゃ またその頃に来るぜ!」
オライオンと共にシュライツが同意の奇声を上げる キルビーグが微笑んで言う
「ああ、貴殿らの戦いはこれからだぞ?」
1週間後――
オライオンが キルビーグへ声を掛ける
「約束の1週間後だぜ?旧世界はどうなったんだ?」
オライオンの言葉にキルビーグが微笑んで言う
「ははっ まぁそう焦らんでくれ 通信が繋がるのはもう少し後だ」
オライオンがキルビーグの近くへ来る キルビーグが機械を操作しながら オライオンへ言う
「ところで、オライオン 貴公はバッツスクロイツと言う者を知らぬか?彼と連絡を取りたいのだが…」
キルビーグの言葉にオライオンが思い出したように言う
「ああ、そう言えばバッツが言ってたぜ?…旧世界の事は任せたって」
オライオンの言葉にキルビーグが手を止め 顔を上げて言う
「それは どう言う意味だ?」
オライオンが両手を頭の後ろに回して言う
「あいつさー 元の世界に帰っちまったんだよ リーザロッテたちが作った機械に怒ってさ?」
キルビーグが驚いて言う
「な!?帰ってしまっただと!?どう言う事だ!?彼が居らねば ガルバディアと共に作る予定であったロボット兵が!?」
キルビーグがオライオンへ掴みかかって言う オライオンが困った表情で言う
「俺に言われてもなー?とにかく あいつは あの聖魔力圧縮装置で 悪魔力の霧を遠くの風に乗せるのはダメだってさ?そうすると その風に乗って たくさんの悪魔力の霧が」
画面が切り替わり バッツスクロイツが自分の世界を見下ろして言う
「…ち くしょ… 間に 合わなかったっ…!」
バッツスクロイツが地に手を着いてうな垂れる
オライオンの声がする
「全部 あいつの国へ流れちまうから あいつの国にある色んな機械が 悪魔力に侵されちまうってさ?それを防ぎに戻ったんだよ」
キルビーグが言う
「そうであったのか…っ では… 仕方が無い バッツスクロイツの協力は諦め 我らだけでロボット兵の製作を進めなければならないと言う事 …何故こちらに連絡が来なかったのだ!?ヴィクトール14世皇帝陛下は何も仰らなかった ヴィクトール13世殿からも依然連絡は来ない… 一体どうなっているっ!?」
キルビーグの言葉にオライオンが首を傾げて言う
「あれ?知らねーのか?ヴィクトール13世は…」
画面が切り替わり 崖の上 バーネットの墓石の前に立つヴィクトールが言う
「バーネット… ザッツロードたちが 世界を救ってくれるって… 僕たちの遊びは もう 終ってしまうね?」
ヴィクトールが涙を流して言う
「でも 良いよ… 君が居ないんじゃ… やっぱり つまらないよ…」
ヴィクトールが崖の淵へ背を向け バーネットの墓石に向き 両手を広げ微笑んで言う
「ねぇ バーネット?新しい遊びを始めようか?今度は何をしよう?世界を救う次は 世界を… 滅ぼすって言うのは?この世界を 闇の世界へ… なんてね?それも面白いかもね?バーネット… 僕はもっと 君と一緒に 遊びたいんだ…」
ヴィクトールが言い終えると共に 後ろに倒れ 崖の下へ落ちて行く
キルビーグが目を見開き言う
「なんと…っ ヴィクトール13世殿が…!?その様な知らせは一切…っ」
キルビーグがオライオンを見上げる オライオンが溜め息と共に俯いて言う
「それに…」
画面が切り替わり ヘクターがウィザードを抱いたまま プログラマーのデスの墓石の前に立っている ヘクターがその場に膝を着く ウィザードの体が溶け ヘクターの手に残ったウィザードの脳が 塵になる ヘクターが両手を地に着いてうな垂れる
画面が切り替わり ガルバディア城 玉座の間 ガルバディア国王のホログラムが閉じていた目を開き 背を向けて消える ガルバディア国王の本体のある部屋の照明が消え 残っていた機械類の光りが全て消える
キルビーグが驚き困惑した様子で オライオンへ手を向けて言う
「で、ではっ ガルバディア国王は!?」
オライオンが言う
「俺の親父との約束が果たせなかったんなら せめて アバロンの王との約束は果たそうとしたらしいけど」
画面が切り替わり アバロン城玉座の間 玉座に座るヴィクトール14世の姿が消え 残った場所に赤いトカゲが残り逃げて行く
オライオンが 視線を落として言う
「ガルバディア国王が俺たちに気付かせてくれたけど 取り逃がしちまってさ?アバロンじゃ今 みんな疑心暗鬼なんだ あんな連中はアバロンの民じゃねぇよ… だから、もし旧世界に行けるんだったら 俺は行くぜ?」
キルビーグが肩の力を落として言う
「何と言う事だ それでは… いや!そうだ!もう1人!?もう1人の勇者はどうした?ツヴァイザー国のリーザロッテ女王だ」
オライオンが首を傾げて言う
「ああ、リーザロッテと連中だったら」
画面が切り替わり シャルロッテが機械の埋め尽くされた場所に座り込んでいる モバイルPCのタイピングを行いながら言う
「フフフ… この…プログラムを使えば…」
言い終えると共にシャルロッテの身体を 数字の羅列が覆い 次の瞬間 リーザロッテの姿になったシャルロッテが立ち上がって言う
「す、すごいっ 凄いわ!これで私は リーザロッテよ!!」
リーザロッテの姿になったシャルロッテが高笑いする その近くをトカゲが通る
画面が切り替わり リーザロッテの前にレイトとヴェインが倒れている リーザロッテが後ずさって言う
「ロイ… どうして…?どうして貴方が!?」
ロイが両手に持った銃をリーザロッテへ向けて言う
「…俺は スプローニ国の兵 敵を倒すのに 理由は不要」
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キルビーグが俯いたまま言う
「何と言う事だ…っ 折角リーザロッテ女王らの力で この大陸から悪魔力が払われたと言うのに スプローニとツヴァイザーが戦争を始めたというのかっ!?」
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キルビーグが顔を上げて言う
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オライオンが頷いて言う
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「この者を 我らの国から追い出せ!」
キルビーグが頭を抱えて言う
「何と言う事…っ もはや 我らと共に戦った者たちは 残って居ないのか…?」
キルビーグの言葉にオライオンが溜め息を吐いて言う
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オライオンがキルビーグを見下ろして言う
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キルビーグが顔を上げて言う
「分かった、この新世界こそ もはや終わりなのだ 我々は旧世界に生きる事となる 何と言う事か… 助けるつもりが 助けられる事になるとは…」
オライオンが腕組みをして言う
「それじゃ、俺を旧世界に送ってくれ 向こうからの連絡はまだ来ないのか?」
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「ああ、まだ来て居ない だが今なら向こうも通信の聖魔力を繋いでいる時間だ 貴殿から聞いた話をザッツへ伝えなければ… そして、新たな策を魔力使いの者たちと練ろう この様な事を 折角旧世界を悪魔力から救った者たちへ伝えるのは心許無(こころもとな)いが… 事実の歴史を隠す事は もうしないと 私は誓ったのだっ」
キルビーグが機械を操作する その後ろでオライオンが軽い表情で言う
「向こうからの知らせは来ないのか… 悪魔力中和装置ほどの物を成功させたら 普通 超特急で知らせるよな?それが来ないって事は…」
オライオンの言葉に キルビーグが振り返って言う
「な、何を言っているのだ!?その様な事 戯言でも許さんぞ!!」
キルビーグの目の前で オライオンがニヤリと笑って言う
「戯言ではありませんよ?キルビーグ陛下…」
言い終えると共に オライオンがキルビーグの背にナイフを刺す キルビーグが驚いて目を丸くする オライオンが笑みを続ける キルビーグが苦しそうにオライオンの腕を掴み言う
「な… 何故… き、貴殿が…っ!?」
キルビーグの言葉に オライオンが姿をスファルツへ変える キルビーグが驚く スファルツがナイフを抜いて言う
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キルビーグが床に倒れる スファルツがナイフに付いた血を舐め取り ニヤリと笑って言う
「後はあの魔力者たち… 彼女らに何か出来るとは思いませんが… まぁ、様子を見てみますか?」
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画面が切り替わり
ザッツロードが仰向けに寝転がっている 手に持った通信機を眺めて言う
「そうなんだ… 皆… 死んでしまったのだね 父上も スファルツ卿に…」
ザッツロードが言い終えると通信機を持った手を下げ 空を見上げる 天気は晴天 ザッツロードが言う
「ソニヤやラナやセーリア… 大丈夫かな… でも 父上も居ないし バッツも、ガルバディア国王も居ないんじゃ… これでは 旧世界へ皆が来る事は もう出来ない 僕が通信を送っても 返信してくれる人も… いや、受信してくれる人すら 居ないんだろうな…」
ザッツロードが目を閉じてふぅと溜め息を吐く 再び目を開いて空を眺めて言う
「ヴィクトール様… 今なら貴方の気持ちが分かります… 雨が降ったら 僕も通信を送ってみようかな?…ああ、向こうも雨が降って無いと 返信は貰えないんだっけ?はは…」
ザッツロードが立ち上がって周囲を見渡している様子 ザッツロードが苦笑して言う
「でも 送っても受信されないのなら 安心して送れる」
画面が切り替わり
プログラマーのデスが使っていた モバイルPCのモニター
『今日は雨が降っているので通信を送ります こちらは 新世界ローレシア王ザッツロード7世 旧世界の悪魔力は 悪魔力中和装置の起動にて 中和されました 機械が作動されて 既に10日が経過 旧世界の民は 私が到着する3日前に 装置を起動させたとの事 それらの事が今も旧世界に残る機械から判明』
モバイルPCの前に座る人物が続きを声に出して読む
「『旧世界の民は全滅 転送装置も旧世界の機械兵に破壊されました 私が持ち込んだ旧世界の宝玉を使用し この通信を送っています もし誰か受信した人が居るのなら この事実を新世界の歴史に』…?冗談じゃねーっての!」
オライオンがそのまま後ろへ倒れて寝転がって言う
「そんな事したら 友情と慈愛のアバロンの民が 疑心暗鬼で殺し合いしちまったって事も 書き残さなきゃなんねーじゃんか なぁ?シュライツ?」
オライオンの視線の先 シュライツの白い翼が鮮血に染まり オライオンの大剣が刺されている オライオンが溜め息混じりに苦笑し モニターへもう一度目を向けて言う
「こんな歴史なら 残さねー方がマシだぜ!だから… ごめんな、ザッツ?俺もお前も 後は1人きりで 何とかするしかねーみてーだ」
言い終えると共に モバイルPCを閉じようとする モニターにあったザッツロードのメッセージが消え 別のメッセージが記される それを見てオライオンが言う
「うん?なんだ?これ…?」
私の名はデス
世界一の大剣使いヘクターの相棒であり
世界一のプログラマーだ
我々に
不可能は無い
この最悪な歴史を
塗り替えたいと願うのなら
その願い
私のプログラムで
叶えよう
オライオンが自身の瞳にモバイルPCの画面を映した状態で2、3度瞬きをして キーボードへ視線を変える
短い沈黙の後 人差し指でエンターを押す
【 アバロン城 城下町 】
活気のある城下町の一角 鋭く振り下ろされる大剣 アバロンの大剣使いが剣の稽古をしている その人物の後方 何もない空間にプログラムが発生し ホログラムのデスが赤い瞳を向けて言う
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想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
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* 2019年12月15日、作品完結しました。ありがとうございました。2019年12月22日時点で完結後のシークレットストーリーも更新済みです。
* 2019年12月22日投稿の同シリーズ後日談短編『元ハーレム勇者のおっさんですがSSランクなのにギルドから追放されました〜運命はオレを美少女ハーレムから解放してくれないようです〜』が最終話後の話とも取れますが、双方独立作品になるようにしたいと思っています。興味のある方は、投稿済みのそちらの作品もご覧になってください。最終話の展開でこのシリーズはラストと捉えていただいてもいいですし、読者様の好みで判断していただだけるようにする予定です。
この作品は小説家になろうにも投稿しております。カクヨムには第一部のみ投稿済みです。
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