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12章

アールスローン戦記 アールスローン戦記Ⅱ プロローグ

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盛大なオペラホール アリアに扮した少女が歌っている 観客たちがうっとりしている中 メディアカメラが動いてている 少女が歌いながらカメラを気にする

歌が終わると盛大な拍手が送られる 幕が下り暗くなっても拍手は鳴り止まない

舞台裏へ少女がやって来ると イベント管理者が駆け寄って来て言う
「いやぁ~ 流石はアールスローン1の歌姫様!すばらしい歌声を有難うございました!お陰さまで 今日の突然のイベント中止にも 観客たちは大満足で!クレームなどもまったく無いでしょう!それはこの 賞賛の拍手が物語っておりますとも!はいっ!」
少女が間を置いて言う
「…愚かだな」
イベント管理者が衝撃を受けて言う
「いっ!?ア、アリア様…?」
少女が澄まして言う
「紛い物の歌声に 賞賛の拍手を送り続けるとは 奴らはコピーとオリジナルの違いも 分からないのか」
イベント管理者が呆気に取られて言う
「紛い…物…?」

【 国防軍レギスト駐屯地 休憩所 】

TVにニュースが流れていて キャスターが言う
『この様に突如中止となりました本日のオーケストラ公演も 代替として用意されたスペシャルゲスト アールスローン1の歌姫と賞賛される アリア・ヴォール・ライトニア・ハブロス様の歌声に観客たちは…』
隊員Bが言う
「ほらほらー!やっぱ 少佐の言ってた通りー 今回のイベント代替も アリアちゃんだってー」
隊員Aが言う
「ああ、けどそうは言っても この所の国防軍が警備に付くイベントの代替は 皆アリアちゃんだろ?」
隊員Cが言う
「兄貴の情報によると イベントの中止が発表されてからの方が チケットが売れたりするらしいぜ?元々ソールドアウトのイベントなら 倍の額で取引されたりもするらしい」
隊員Bが言う
「えー?じゃぁ ここに居る人たちは 皆 アリアちゃんの歌を聴く為に来てるって事ー?ねー?アッちゃんー?」
隊員Aが言う
「そうみたいだな?イベントの中止は事前に分かる訳だし その危険を犯してまで聞きに来るなんて …それだけ アリアちゃんの歌は凄いって事だ」
隊員Fが苦笑して言う
「それにしても 襲撃予告があったから イベントは中止にするって言うのに その代替に ご自分の娘を使うだなんて 総司令官って やっぱりちょっと凄い人だな?」
隊員Bが言う
「だよねー!流っ石!帝国の皇帝を仲間にしちゃった 国防軍総司令官ー!」
隊員Aが苦笑して言う
「確かに そういう意味ではハブロス総司令官は凄いけど… それとこれとは違くないか?だって普通 いくら国防軍の警備を付けているにしても こんな危険な役に ご自分の娘を立たせられないだろう?これでもし 本当に襲撃があったりなんかしたら…」
TV映像に 明るくなった舞台が映り 少女が礼をする 観客たちがスタンディングオベーションしている 

【 オペラホール 】

盛大な拍手の中 少女が礼を終え 観客席を見渡すと 突如 客席から襲撃犯たちが手に武器を持って舞台へ駆け込んで来る 観客たちが悲鳴を上げる

【 国防軍レギスト駐屯地 休憩所 】

TV映像が乱れ キャスターが慌てて言う
『た、大変です!たった今 観客席から 手に武器を持った男たちが!』
隊員たちが驚き駆け寄る

【 オペラホール 】

襲撃犯が舞台上で少女を押さえナイフを突きつけて 観客席へ言う
「全員動くなっ!我々はっ!イベントを中止しろと言ったんだっ それなのに実行した!これは そのお前たちと!イベントを中止させなかった 政府と国防軍への報復だ!」
少女が目を細めて言う
「政府と国防軍… 狙いは その両者か」
襲撃犯が少女を押さえつけて言う
「黙れっ!我々は 要求を通すためなら 手段は選ばん!これがその証拠だ!アールスローン1の歌姫 アリア・ヴォール・ライトニア・ハブロスは その愚かな国防軍総司令官と 貪欲なお前たちのせいで …こうなるんだっ!」
襲撃犯が少女へナイフを振り下ろす 少女がナイフを見る 観客たちが息を飲む ナイフに銃弾が当たり ナイフが吹っ飛ぶ 襲撃犯が驚いて言う
「なっ!?」
観客席からハイケルが飛び出して来て 襲撃犯へ殴り掛かる

【 国防軍レギスト駐屯地 休憩所 】

隊員たちが喜んで言う
「「少佐ぁあーっ!?」」
TV映像に 襲撃犯とハイケルの交戦が映されている キャスターが言う
『あ!あれはっ!国防軍レギスト機動部隊のハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐ではないでしょうか!?国防軍きっての英雄 ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐が たった今 襲撃犯の男を!』
隊員たちが喜んで言う
「良いぞー!少佐ぁー!」 「少佐に掛かれば 楽勝ーっ!」

【 オペラホール 】

襲撃犯が後づ去りながら言う
「くそ…っ 警備にレギストが居ないからと 油断したっ 今日の所は …退却だっ!」
襲撃犯の仲間たちが逃げ出す 国防軍11部隊隊員たちが駆け込んで来る ハイケルが振り向いて言う
「もう大丈夫だ アリア 後は…」
少女が言う
「やはり 欠陥品か」
ハイケルが疑問して言う
「アリア?」
少女が言う
「アリアではない」
少女がかつらを外す ハイケルが驚いて言う
「なっ!?」

【 帝国 玉座の間 】

アリアが歌っていて横目に見ると 視線の先でアースが居眠りをしている アリアが思わず笑う
「…ふふふっ」
皇帝が目を開いて言う
「…うん?」
アリアが微笑して言う
「陛下と違って お父様は 静かなお歌は苦手なの 折角 アリアが魂を込めて歌っておりますのに!」
皇帝がゆっくりアースの方へ向いてから 微笑して言う
「労しておるのであろう この程 奇怪な事件があり そちらへ 気を配って居ると 申しておった」
アリアが言う
「違いますの!だって お父様はお疲れでいらっしゃらない時だって アリアのお歌を聴いているとお眠りをしてしまいますのよ!それに もう そちらの事件にだって お気を配る必要はありませんのでしてよ!」
皇帝が微笑して言う
「ほう…?」

【 オペラホール 】

無線機から国防軍11部隊隊員たちの声が聞こえる
『こちら 国防軍11部隊A班 襲撃犯の一部を拘束!』 『同じくB班 周辺警戒異常なし!』 『同じくC班… 申し訳ありません 襲撃犯のリーダーと思われる人物を 取り逃がしました』
少女がイヤホンを押さえて言う
「了解 任務完了 お前たちは帰還しろ」
無線機から国防軍11部隊隊員たちの声が聞こえる
『11部隊A班 了解』 『同じくB班 了解』 『同じくC班了解 国防軍メイス駐屯地へ帰還します』
ハイケルが言う
「11部隊の隊長だったのか…」
少女が言う
「借りの隊長だ この作戦が成功すれば 正式にそうとなる予定だった」
ハイケルが視線をそらして言う
「…すまなかった まさか国防軍に 女の機動隊員が… それも隊長候補の者が居たとは …それに あの歌声は 確かに アリアの…」
少女が言う
「欠陥品か」
ハイケルが一瞬驚いた後ムッとして言う
「作戦の邪魔をした事は 謝罪するが 俺は国防軍レギスト機動部隊の隊長であり 断じて欠陥品などでは…っ」
少女が言う
「お前では 不足だ」
ハイケルが驚いて言う
「なっ!?」
少女が言う
「今作戦の失敗は 私から 総司令官へ報告をする」
ハイケルが反論の言葉を失いながら言う
「あ… ああ…」
少女が立ち去って行く ハイケルが表情を落として言う
「欠陥品… か… そう言えば 以前にも その様な言われ方をしたな …奴に」
ハイケルが少女の後姿を見て エルムの姿と交錯させる

【 帝国 玉座の間 】

アースが目を覚まして言う
「…そろそろ終わったか?」
アリアが不満そうに言う
「お父様?その様なお言葉は 酷いですわっ!?」
アースが苦笑して言う
「お前の歌へ対してではない 国防軍の部隊作戦へ対して言ったんだ」
アリアが不満そうに言う
「そうでありましても 酷いですわ!お父様は今日も途中から お眠りをされてしまって アリアのお歌を 聴いて下さらなかったのですもの!?」
アースが苦笑して言う
「ああ そちらは… すまなかった 怒らないでくれアリア お前の歌声は眠りを誘うほどに 心地が良いと言う事だろう?」
アリアが言う
「そうなのかしら?」
アースが軽く笑いながらアリアの頭をなでる アリアが嬉しそうに微笑む 皇帝が微笑して言う
「確かに アリアの歌声は その方の騒がしき雑音とは 打って異なる」
アースが衝撃を受けて言う
「グッ… 悪かったなっ 皇帝っ」
警報が鳴る アリアが一瞬驚いた後不安そうにアースを見上げる アースが微笑して言う
「丁度良い これから総司令本部へ向かう前に 一曲キメてやりたいと思っていた所だ」
皇帝が軽く笑って言う
「アリアの心地良き眠りの調べに対し その方のは… 騒がしき目覚めの騒音 と言った所か?」
アースがムッとして言う
「騒音と言うな 戦いに立ち向かうにはっ 強く激しいソウルが必要なんだ!言葉で分からなければ 魂で感じろっ!」
アースがエレキギターを掻き鳴らす 皇帝が微笑して言う
「やはり 騒がしき 目覚めの騒音よ…」
アリアが楽しそうに笑う
「うふふっ」

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

軍曹が叫ぶ
「どうしたー!?お前たちーっ!これ程度で音を上げるとは情けないー!それでもお前たちは 少佐の率いるレギスト機動部隊の隊員であるかーっ!?気合を入れよーっ!」
隊員たちが必死に懸垂をしている ジープの音がして軍曹が振り返ると気付いて言う
「おお!あのジープは 少佐お気に入りのっ!」
軍曹が隊員たちへ向いて言う
「よーし お前たち!自分は少佐へ 基本訓練の完了をお知らせして来る!それまでに各自 懸垂600回を終えておくのだー!」
隊員たちが懸垂をしながら言う
「りょ、了解ぃ 軍曹ぉ~っ!」
軍曹が頷いて言う
「うむっ!」
軍曹が立ち去る 隊員たちが鉄棒から落下してへたる

【 国防軍レギスト駐屯地 通路 】

ハイケルが歩きながら独り言を言う
「今頃 総司令官へは俺の独断のせいで 国防軍11部隊の任務が失敗した …と伝えられているだろう そうとなったら…」
ハイケルの脳裏にアースの姿が思い浮かぶ 後方からバックスが声を掛ける
「ハイケル少佐」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「はっ!?はーっ!?」
ハイケルが慌てて敬礼して顔を向け呆気に取られる バックスが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「戻っていたのか?君が半休を申請したのは これまでで初めての事だったからな?もしや何か問題でも…?と、心配していたのだが」
ハイケルが視線を泳がせつつ言う
「いや… その… 少し気になる事が…」
バックスが微笑して言う
「総司令官から」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ!?」
バックスが続けて言う
「特別任務を受けていたのか?今回はイベント中止会場の特別警戒にレギストを ご指名されなかった… そこで 君が特別にアリアお嬢様の護衛を …と言った所かな?」
ハイケルが言う
「い、いや… あれは 俺の独断で…」
バックスが疑問して言う
「うん?独断…?…ほう?そう言えば ずっと以前にも その様な事があったな?あの時も 君が 単身乗り込んでいったお陰で 防長閣下をお守りする事が出来た 今回もまた同じか?」
ハイケルが顔をそらして言う
「い、いや… 今回は… 俺の独断で…」
バックスが微笑して言う
「それに今回は あの車両ナンバー1のジープの使用許可も申請しており 且つ 速度違反や 器物損壊も無い!成長したではないか ハイケル少佐ー!?あっはっはっは!」
バックスが笑う ハイケルがバツの悪そうに言う
「い、いや… だから… 今回は…」
バックスが微笑して言う
「今や君の事は 国防軍きっての英雄であると メディアでも普通に言われている そんな君を部下に持つ 私も鼻が高い!…とは言え そもそも君は このアールスローンを守る 悪魔の兵士なのだからな?今更と言えば今更なのだが…」
ハイケルが衝撃を受け視線をそらして言う
「いや… 優秀な2世代目の悪魔の兵士より 様々な点で劣る ”真に不甲斐なく申し訳ない” 初世代の悪魔の兵士である 俺へ その様に言ってもらえる事は 嬉しく思うのだが…」
バックスが疑問して言う
「うん?…どうした ハイケル少佐?もっといつもの君ように …そう!正に 可愛くない部下のように 堂々としたまえ!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「可愛くない堂々とした部下で 悪かったなっ」
バックスが笑って言う
「はっはっはっ!それでこそ ハイケル少佐だ」
ハイケルが衝撃を受けて表情を顰めて言う
「グッ…」
バックスが言う
「…それに 独断であったのなら尚更だ 与えられた任務を遂行するだけに留まらず 必要な処理を全て行った上で それ以上の活躍が出来る …君はもう少佐の域を十分に超えているな?ともすれば…」
ハイケルが疑問する 館内放送が流れる
『ピンポンパンポ~ン♪バックス中佐 バックス中佐 至急 司令室へおいで下さい バックス中佐 バックス中佐 至急 司令室へおいで下さい』
バックスが館内放送に軽く顔を上げてから 微笑してハイケルへ言う
「先日の特別昇格試験のお陰で この所 総司令本部からの連絡が多いんだ ともすれば これも また新たな昇格通知かも知れないが… 試験は受けなかったとは言え 時機に 君へも声が掛かるだろう?中佐への昇格通知がな?」
バックスが微笑してから立ち去る ハイケルが言う
「私が中佐に…?あのエルム少佐を超える 軍階になると言うのか?」
ハイケルの脳裏にエルムの姿が映った後 少女の姿に切り替わり 衝撃を受けて言う
「うっ… それも …今回の失態で 流れるだろう… やはり私は…?」
ハイケルの脳裏でエルムと少女が言う
『『やはり 欠陥品か』』
ハイケルが衝撃を受けて言う
「黙れっ」

【 国防軍総司令本部 通路 】

アースが歩いていると秘書が言う
「…と、それから 本日も多くの企業から 国防軍への融資を試みたいと ご連絡を頂いております」
秘書がアースへ書類を手渡す アースが書類を眺めながら言う
「うん …大方 予想の範囲だな」
秘書が言う
「そちらの方々へは 総司令官が戻り次第 折り返しご連絡をさせて頂くと」
アースが言う
「ああ、どのような小さな企業や階級が下る者であろうとも 我々の国防軍へ協力を願い出てくれた者へは 私が直接礼を言う」
秘書が微笑して言う
「はい」
秘書が別の書類を用意して言う
「それから 既に融資を開始していただいております 企業の方々から恐らく 様子を伺いたいと言った意味合いかと思われますが ご連絡が入っております そちらが…」
秘書がアースへ書類を渡す アースが一瞬呆気に取られて言う
「…多いな?何か特別言っていたか?」
秘書が言う
「大半がアールスローンの叡智えいちの結晶と言える 開発状況等の確認と言った内容でしたが それらの中に置かれまして そちらの印の付けられております企業に関しましては 自分たちの技術を紹介したい もしくは 良い素材があると言った お話が含まれておりました」
アースが言う
「これらの企業は既に材料の提携を行っている各社のライバル企業と言った所だ まったく有り得ないとは言えないが 恐らくは私へのコネクト目当てだな」
秘書が言う
「それらの企業から そう言った連絡があったと言う旨は 開発を受け持っています 国防軍のマスターたちへと知らせてあります」
アースが微笑して言う
「良い機転を利かせてくれた それなら十分だ」
秘書が微笑して言う
「有難うございます …では リストにあります企業へは どの様に対処を致しましょう?」
アースが言う
「そうだな… 数も増えて来た これ以上となれば手が回らなくなる… とは言え、例え小額であろうとも 彼らの融資は馬鹿にはならない」
秘書が苦笑して言う
「小額と仰られましても そちらの企業各社からは 最低額1億の融資を頂いております 従いまして… 総司令本部の将官軍階の者でありましても 対応は難しいかと」
アースが言う
「ああ… だが生憎私も そちらの相手ばかりをしている暇は無いんだ 半分程度ならまだしも… こんな時 同じく国防軍長である アーヴァインを使えれば良いのだが… あいつでは… な?」
秘書が苦笑を隠してから言う
「防長閣下は 国防軍の象徴にして 国家家臣第一位  陛下の盾にございますので 融資元への挨拶へ狩り出す事は 少々失礼かと…?」
アースが苦笑して言う
「ふっ… そうか?確かに過去に置いてはそうであったかもしれないが… 今や対とされる あの政府の攻長閣下は 随分とその枠を逸脱しているではないか?」

【 撮影スタジオ 】

ラミリツがモデルになり 写真撮影がされている 

休憩場所でラミリツがくつろいで携帯で話していて言う
「えぇえ!?失敗したのぉっ?なんでぇ!?」
携帯から少女の声が聞こえる
『予定外の邪魔が入った』
ラミリツが言う
「予定外の?任務に予定外は付き物 …そんな事 言われなくったって分かってるだろ?」
ラミリツがジュースを飲む 少女が言う
『そうだな しかし その者が 犯人拘束能力及び戦闘能力を保持している可能性は極めて低い …従って 対処判断処理へ 停滞をもたらした』
ラミリツが言う
「言い訳?らしくないね?お前は何時だって 誰かに頼るのではなく 自分で行う事を優先していたのに… まさかとは思うけど そいつは お前より戦力が上だったって言うの?」
少女が言う
『その可能性を考慮した 恐らくそれ故に 対処判断処理へ停滞をもたらした その結果…』
スタッフがラミリツを呼ぶ
「攻長閣下!お待たせを致しました!それでは お願い致しますっ!」
ラミリツが反応して言う
「あぁ ごめん 待ち時間が終わったみたい 詳しい事は また夜にでも聞くよ」
少女が言う
『了解』
ラミリツが立ち上がってから気付いて言う
「…あ、でも 夜はもう こっちには帰らないんだっけ?」
少女が言う
『任務報告は任務を請け負った隊長の責務 …だ』
ラミリツが微笑してう
「うん その通り!じゃ また!」
少女が言う
『了解 ラミリツ・エーメレス・攻長閣下』
ラミリツが苦笑してから通話を切り撮影場所へ向かう スタッフたちが恭しく迎え入れる

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

部屋の扉が開かれ アースが入ると秘書が続いて言う
「…と言う事でしたので、ご連絡の通り室内にて お待ちを頂きました」
アースが言う
「分かった …では 単刀直入に訊くが 任務失敗の原因は何だ?」
少女が言う
「欠陥品による干渉 …だ」

【 スタジオ 外 】

女性ファンたちが大量に押し寄せていて わっと黄色い声を上げる
「攻長閣下ー!」 「きゃー!攻長閣下ー!」 「ラミリツ様ーっ!」
ファンたちの視線の先 スタジオから出てきたラミリツが微笑して軽く手を振る ファンたちが喜んで騒ぐ ラミリツが厳重警備の中 車に乗り込むと車が発車する

【 車内 】

ラミリツが電話をしていて言う
「話は半分くらい聞いたけど 予定外の邪魔があったんだって?けど…」
ラミリツが視線を執事へ向けてからカーTVを示す 執事が了承の礼をしてカーTVを操作すると モニターにニュースが流れる ラミリツが言う
「どんな理由があったにしても 部隊任務の失敗は 任務を請け負った隊長の失敗… それは つまり 彼女を機動隊員として育て上げた 僕の失敗だからね 言い訳はしないよ …ごめん」
受話器からアースの声が聞こえる
『ほう… 相変わらず 潔いな 攻長閣下?』
ラミリツが苦笑して言う
「攻長閣下は止めてよ …それより これからの事なんだけど」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースが言う
「引き続き 同手口の犯行予告へ対しては 我々国防軍も手を貸そう」
受話器からラミリツの声が聞こえる
『ありがと そうしてもらえると凄く助かる 犯行予告が入ってから いちいち警備部隊を変更してたら 余計な手間になっちゃうし 犯人たちの思う壺って感じで 気に入らないから』
アースが言う
「国防軍と政府は 今や1つの国家組織として陛下の下に共存して居る それを 事件の度に 互いの警備部隊を変更している様では 共同戦線とは言えないだろう」
受話器からラミリツの声が聞こえる
『うん!そうだよね!』
アースが言う
「…しかし」

【 車内 】

ラミリツが疑問する 受話器からアースの声が聞こえる
『アールスローンの国や民を守るために 協力して戦いはするが 我々国防軍の使命は その名の通り防衛にある 従って 政府警察の担当である ”犯人逮捕”に関しては 我々にとっての 最重要指令にはならない よって… 今作戦に置いて 犯人を取り逃がした事に関しては 観客及び出演者の保護を優先したと言う事で 処理をさせてもらう』
ラミリツが少し考えてから言う
「え?うーん そっか… うん」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースが相手の反応をうかがっている 受話器から何の疑いも無いラミリツの声が聞こえる
『分かった!それじゃ 何かあったら 僕の名前を出してくれて良いから』
アースが呆気に取られた後 苦笑して言う
「…おい そう簡単に 攻長閣下の名を使うな 攻長は防長と同じく 陛下の親兵にして 国家家臣だぞ?」
ラミリツが言う
『それはそうだけどさ?攻長だろうと国家家臣だろうと 僕は政府警察を含む政府のトップでもある訳だし アールスローンへ危害をもたらす 凶悪犯を逮捕できないんじゃ ただのお飾りでしょ?だから やるからには責任を持ちたいんだ そうとなれば 今回の失敗は 僕の責任 それで良い』
アースが苦笑して言う
「…分かった そこまで言うのなら こちらも 相応に協力をする」
ラミリツが言う
『え?』
アースが言う
「今後もし 国防軍の警備を行う会場にて 同脅迫があった際には そちらの政府警察の隊員を無条件にて受け入れよう …そして 双方がそれぞれの任務を全うする 即ち 国防軍が観客やその他の保護を そちらが 犯人の逮捕を …だ この状態であるならば?」
ラミリツが喜んで言う
『うん!それなら完璧だねっ!』
アースが苦笑して言う
「それから、万が一 そちらの件に関して メディアやその他の取材があった場合には 今後の共同戦線へ向けての訓練 もしくは 試験導入であったと 話を合わせろよ?」
ラミリツが言う
『え?何で?そんなのめんどくさい 良いじゃない?犯人逮捕のために 両者が協力したって言えばさ?』
アースが言う
「政府や国防軍はイベント妨害犯1人を捕らえるのに 両者が協力しなければ敵わないと 笑われたいのか?」
ラミリツが言う
『あぁ そっかぁ… 両者が協力出来るのは 凄い良い事なのに 力不足だって思われちゃうって事?』
アースが言う
「その様に解釈される可能性があると言う事だ …お前も政府の長なら そう言った事を考えろよ?」
ラミリツが言う
『そっちは 兄上や あいつに任せてあるからさ?』
アースが言う
「そちらの2人より目立っている お前だからこそ 気を付けろと言っているんだ」
アースが視線を向けると TVにラミリツがモデルとなっているCMが流れている 受話器からラミリツの声が聞こえる
『一応 取材やその他の時は その2人にお膳立てしてもらってるんだけど… そうだね?分かった!気を付ける ありがとっ!』
アースが驚き呆気に取られてから苦笑して頭を押さえて言う
「まったく… お前と話していると 調子が狂う」
ラミリツが軽く笑って言う
『え?そうなの?でも良いじゃない 別に?今は2人だけで話してるんだしさ?』
アースが言う
「そちらはそうかもしれないが こちらには…」
アースが視線を向けた先 少女が沈黙している アースが言う
「では 話を戻すが 本日 我々国防軍11部隊と共に 一足先に そちらの共同戦線を行った…」

【 車内 】

カーTVに事件のニュースが流れている ラミリツがそれを見ながら言う
「丁度 今それをニュースの映像で見てる ついさっきまでスチール撮影で忙しくて 確認出来なかったものだから」
受話器からアースの声が聞こえる
『こちらも 同じだ …まぁ 私は帝国へ行っていた為だが?』
ラミリツが映像を見ながら苦笑して言う
「あ 酷いの?それじゃ まるで僕が遊んでるって 言ってるみたいじゃない?」
アースが言う
『そうは言わないが …資金集めとは言え 国家家臣攻長閣下が モデルとはな…?』
ラミリツが言う
「良いじゃない?自分たちの象徴は かっこいい方が良いでしょ?」
アースが苦笑して言う
『言ってくれる』
ラミリツが微笑して言う
「別にそっちの象徴がカッコ悪いって言ってる訳じゃないよ?それに… 知ってる!?ハブロス総司令官?」
アースが言う
『内容を言う前に 知っているか?などと聞かれても 答えようが無いだろう?』
ラミリツが笑って言う
「あっははっ そうだよね?それじゃ 言っちゃうけどさ?国防軍の 今の一番人気が 誰だか?」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

TVに事件の映像が映っていて ハイケルが舞台へ飛び込みアリアに扮した少女をかばっている TVからキャスターが言う
『…と、一時は騒然となった会場でしたが こちらの国防軍レギスト機動部隊隊長 ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐の登場で 観客たちは皆一同に…!』
アースが映像を見てから 苦笑して言う
「…なるほど 欠陥品とは 管轄外であった ハイケル少佐の乱入の事か…」
受話器からラミリツの声が聞こえる
『え?ハブロス総司令官?聞いてる~?折角 教えてあげようと思ったのに~?』
アースが言う
「聞いている それより今映像で確認した 国防軍11部隊の予てよりの作戦では アリアに扮した彼女を 一度犯人らへ捕らえさせる事で 油断を誘い 犯人一味を捕らえる と言う作戦だった それがハイケル少佐の乱入により 犯人らの逃亡を誘ってしまった …過去の事件等で すっかり有名になっていた 国防軍の英雄の姿だ 犯人らを逃亡させるには十分だっただろう」
受話器からラミリツの声が聞こえる
『…あ、そっか 彼女には ハイケル少佐のその情報は教えてなかったや… それじゃ やっぱ今回は僕のミス ごめん 彼女には怒らないであげて?その情報を与えていれば きっと 対処判断は出来た筈だから』
アースが言う
「事前の情報収集はもちろん 普段からのそれらも 作戦を構築する部隊長には不可欠な能力だ お前のミスではない …やはり 歳相応と言う事だな?」
少女が沈黙する アースが言う
「…とは言え こちらは予定の通りで良い 今後 政府と共同で何かあれば 彼女の持つそちらの情報も役に立つだろう ラミリツ・エーメレス・攻長 彼女の機動隊員としての育成を感謝する」

【 車内 】

ラミリツが呆気に取られてから微笑して言う
「…どういたしまして!それに 彼女へ訓練を付けた事は エルムやラゼル様への恩返しでもあるからね!僕の方こそ それをさせてもらえた事に 感謝してる!」
受話器からアースの声が聞こえる
『ともすればこれも エルム少佐の作戦であったのかも しれないがな?』
ラミリツが呆気に取られた後苦笑して言う
「ハブロス総司令官… 国防軍の癖に 腹黒過ぎだよ?エルムもラゼル様も そんなんじゃなかったんだから?」
アースが言う
『腹黒いと言うな 当然の考慮だ …まぁ 祖父上はその様な事は考えなかったかもしれないが エルム少佐は…』
ラミリツが言う
「エルムは優しいよ?もしかしたら ラゼル様より優しいかも?」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースが国防軍のブローチを見てから間を置いて苦笑して言う
「…そうか …いや?甘いと言うんだ」
受話器からラミリツの笑い声がする
『え?…ははっ そうかもねっ?』
アースが言う
「では 切るぞ?事件やその他に関して何かあれば また連絡を」
受話器からラミリツの声がする
『うん!…あ、ちょっと 待って!さっき言いそびれちゃったけど!』
アースが言う
「うん?何だ?」

【 車内 】

カーTVの映像に 公式会見を行っているアースの姿が映っている ラミリツが微笑して言う
「国防軍の 今の1番人気が 誰だか!」
受話器からアースの声が聞こえる
『ハイケル少佐だろう?お前とも歳が近い 何しろ 国防軍の英雄だそうだ …国防軍の象徴にして 国防軍長である防長閣下を差し置いてだ …まったく』
ラミリツが軽く笑って言う
「ふふふっ!やっぱ知らないの!駄目だなぁ?情報収集は大切でしょう?」
アースが言う
『…違うのか?では… …もしや アリアの事か?それなら国防軍の者とは言わないぞ?』
ラミリツが微笑して言う
「違う違う!分かってないの!」
受話器から沈黙が聞こえる ラミリツが言う
「最近 政府の攻長と引き合いに出される 国防軍のアース・メイヴン・ハブロス総司令官!」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースが呆気に取られている 受話器からラミリツの嬉しそうな声が聞こえる
『国防軍だけじゃなくて 政府の武力を司る 攻長とも仲が良くて 時には 最前線で両組織の戦力を総括する!今までに無い国防軍総司令官で 戦傷を隠す眼帯が似合っててカッコ良いって!』
アースが驚き羞恥に頬を染める ラミリツが続けて言う
『お陰で最近は 公式記者会見を楽しみしている女性ファンも多いんだってさ?スタジオで話題になってたよ?今度 ハブロス総司令官も モデルをやってみたらどう?かなりの資金源になるんじゃない?』
アースが恥ずかしさを隠して咳払いをして言う
「う、うんっ 私を煽てても 何も出ないぞ?それに 何か有れば国防軍として 協力すると言っただろう?」
ラミリツが軽く笑って言う
『ふふふっ!素直に喜んで良いと思うんだけどな?まぁ そんな所が ハブロス総司令官らしいよね?』
アースが言う
「情報収集は大切だが 間違った情報では むしろ任務への妨げにもなりかねない 十分に注意をする事だ …切るぞっ?」
ラミリツが言う
『了~解!総司令官!』
アースが受話器を置いて息を吐いて言う
「まったく 子供の攻長はこれだから」
アースがTVに映っているアースの公式記者会見の映像を見てから言う
「…と もう子供ではなかったか」

【 政府本部 】

車が到着するとドアが開かれ ラミリツが降り立つ 本部周囲に集まっているファンたちが騒ぐと ラミリツが軽くそちらへ手を振ってから政府本部へ入って行く ファンたちが喜んでいる 門警備がラミリツへ言う
「お帰りなさいませ 攻長閣下!」
門警備2人が敬礼する ラミリツが言う
「うん ただいま マスターシュレイゼスとフレイゼス外交長は来てる?」
門警備が言う
「はっ!お二方とも お見受けを 致しました!」
ラミリツが言う
「そ?ありがと」
門警備が言う
「はっ!」
ラミリツが向かおうとすると 門警備が気付いて言う
「あ、あの… 攻長閣下?」
ラミリツが振り向いて言う
「ん?何?」
門警備が言う
「本日は… エリ… いえっ お付のSPの方は?」
ラミリツが気付いて言う
「え?SP?…ああ、エリーナなら もう僕のSP役は解任 これからは…」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースがTVモニターを消して言う
「さて、待たせたな?作戦失敗の経緯は確認した 君の国防軍入隊は 今作戦の成功を持って執り行う予定だったが… まぁ 当初の犯人逮捕の作戦は兎も角として 国防軍としての最重要指令は達成させてくれた よって国防軍11部隊の今作戦は成功  達成ランクはSランクと認定 共に君の特別入隊試験も 合格とする」
エリーナが間を置いて言う
「…了解」
アースがエリーナを見てから苦笑して言う
「ふむ… 国防軍にも女性隊員は居ない事は無いが 最前線の機動隊員として働くものは少ない 増して 隊長候補とはな?従って少々華々しい舞台を用意したつもりだったが 結果は結果だ 取り合えず今日から国防軍の機動隊員として まずは軍曹あたりの軍階から…」
エリーナが踵を返す アースが気付いて言う
「…ん?何処へ行く?」
エリーナが立ち止まって言う
「国防軍の作戦及び 国防軍11部隊の仮の隊長としての任務は完了した 帰還する」
アースが呆気に取られて言う
「帰還だと?」
エリーナが立ち去ろうとする アースが言う
「お前の所属は既に国防軍へと替えられている 今更 政府警察へは戻れないぞ?」
エリーナが立ち止まって言う
「では 国防軍隊員として 政府警察機動部隊へ協力をして来る」
アースが衝撃を受けて言う
「なっ?何を勝手な事をっ!?」
エリーナが言う
「勝手ではない お前は先ほど 政府長 ラミリツ・エーメレス・攻長閣下へ 国防軍として政府へ協力すると伝えた 従って これより 私は そちらの作戦を遂行する」
アースがムッとして言う
「そうは言ったが その指示を出すのは 国防軍総司令官である私だ お前は国防軍の隊員である以上 私の命令なくして 勝手な行動は許されない!」
エリーナが言う
「では お前は 私へ命令をしろ 国防軍隊員として 政府警察へ協力をして来いと」
アースが言う
「…それは出来ないな?エリーナ隊員」
エリーナが言う
「何故だ?お前は国防軍総司令官だ お前は お前の部下である私へ その命令を下せる立場にある」
アースが言う
「それは正しい しかし 私がお前へ そちらの命令を 下すには1つ問題がある」
エリーナが言う
「何だ?」
アースが言う
「お前の能力 及び その思想が 私の信用を得るには 不足だ」
エリーナが間を置いて言う
「…了解 総司令官」
エリーナが立ち去る アースが息を吐いて言う
「ふぅ… 相変わらず 勝手か?」
アースが苦笑してモニターへ視線を向ける モニターにハイケルとエリーナのデータが映っていて その横にエルムの人形が置かれている

【 政府本部 攻長室 】

ラミリツが言う
「まさか失敗しちゃうだなんて 誤算だったって言うか… ちょっと 僕も 過剰評価しちゃってたかも?」
TVに事件のニュースがやっている メルフェスが苦笑して言う
「この失敗は 一概にエリーナ殿の失敗とは 言い切られないと思いますよ?ハイケル少佐は 国防軍の隊員であると共に ハブロス総司令官にとっては ご家族でもある訳ですから 事前に作戦内容を 話す事も可能であった筈です そちらをしてさえいれば この時 ハイケル少佐が飛び込む事も無かったでしょう?」
ラミリツが言う
「え?あ、そっか… そう言えば…?」
シェイムが言う
「エーメレス お前の悪い癖だ ハブロス総司令官に そうと言われると 何事も鵜呑みにしてしまう… もっと 彼の事を」
ラミリツが言う
「だって ハブロス総司令官は 政府の誰かさんたちと違って 僕に嘘なんて吐かないから?」
メルフェスとシェイムが衝撃を受ける シェイムが怒りを抑える メルフェスが苦笑して言う
「痛い所を突いて来ますね…?しかし あの一件は 作戦であったのだと…」
ラミリツが言う
「うん、分かってる お陰で 僕はそのハブロス総司令官と仲良くなれたし 2人には感謝してる …けど 2人掛りで 思いっきり僕らに 嘘を吐かれた事は変わらないし?また 同じ様な事される可能性もあるからね?だから もう 油断はしなーい」
メルフェスが困り苦笑する シェイムが言う
「エーメレスっ」
ラミリツが言う
「ごめんごめん 半分は嘘だから!…それより また 脅迫があったって?」
シェイムが言う
「半分…?」
メルフェスが言う
「はい、オペラホールの事件が片付いて間もなく 何時もの様に…」
メルフェスが書類を渡す ラミリツが受け取って言う
「”マイルズ地区の野外ライブイベントを中止させろ さもなくば アールスローンの偽りの平和に笑う お前たちと その元凶へ 鉄槌を下す”…また同じ脅迫文って事は?」
シェイムが言う
「当然 犯人も同じと言う事になる… 同じ手口で 今までに5回の犯行を 未遂とは言え 行わせて来た …そろそろ 犯人を検挙しなければ 政府警察の名が落ちる」
ラミリツが書類を見て言う
「そうだね それじゃ えっと… 会場警備は 国防軍 …しかも17部隊 レギストだ!やったね!これなら 完璧!」
メルフェスとシェイムが疑問し メルフェスが言う
「完璧 …とは?むしろまた 犯人逮捕に支障が生じてしまわれるのでは?」
シェイムが言う
「イベントの日時は明日 これからでは 警備隊員の切り替えも難しい」
ラミリツが言う
「大丈夫!警備隊員の切り替えはしないよ!これで ハブロス総司令官との作戦を 早速 実行出来るんだから!」
シェイムが衝撃を受ける メルフェスが呆気に取られてから 微笑して言う
「何か 良い作戦でもあるのですか?ラミリツ殿?」
ラミリツが言う
「うん!さっき丁度話してたんだ 今度こそ 必ず犯人を逮捕するよ!任せておいて!それじゃ ハブロス総司令官に!…あ、政府長攻長として 国防軍総司令官に 連絡を繋いでくれる?」
秘書が言う
「はい、ただいま」
シェイムが悔しそうに言う
「ク…ッ エーメレスが頼る先が 我々ではなく 寄りによって ハブロス総司令官…っ」
メルフェスが苦笑して言う
「シェイム殿 どうか 抑えて下さいね?これも 我々の作戦が 成功した 証ですから?」
シェイムが言う
「それはそうですが…っ」
ラミリツが受話器を受け取って言う
「あ!ハブロス総司令官?度々ごめんね!さっきの作戦の話なんだけどさ!?」
ラミリツが楽しそうに電話をしている シェイムが言う
「…しかし、何だかすっかり あちらへと懐いてしまった様で …このままでは エーメレスが 本当にハブロス総司令官に 奪われてしまうのではないかと…っ」
メルフェスが苦笑して言う
「大丈夫ですよ シェイム殿 ラミリツ殿は何があっても シェイム殿のご兄弟ですよ?」
シェイムが言う
「それは分かってはいるのですが…っ」
ラミリツが楽しそうに電話をしている シェイムが悔しがっている メルフェスが苦笑する

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの執務室 】

TVで事件のニュースがやっている ハイケルがそれを見た後息を吐いて言う
「明日はマイルズ地区でイベントがあるが… 奴らは我々国防軍レギスト機動部隊… いや、国防軍17部隊が警備に当たっているイベントは 狙わないと言うデータが 既に取られている …となれば 次に奴らが狙うイベントは?」
ハイケルがノートPCを操作している ドアがノックされ 室外から軍曹の声が届く
「アーヴァイン軍曹であります!少佐ぁ!」
ハイケルが視線を替えないまま言う
「入れ」
ドアが開かれ軍曹が入って来て敬礼して言う
「はっ 入ります!お帰りなさいませーっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが顔を向けて言う
「ああ、私が居ない間に 何かあったのか?…特に無いとは思うが?」
軍曹が言う
「はーっ!少佐が居られない間に レギスト機動部隊には特段変わった事はありません!…であります!」
ハイケルが言う
「そうか では 何だ?」
軍曹が言う
「はっ!基本訓練の他 自分が取り入れました 腕力強化訓練も終わりましたので 少佐に後のご指示を頂きたく 参りましたであります!」
ハイケルが言う
「そうか 君が取り入れたそちらの訓練も終了したのであれば… メインアームの訓練は 1日置きに行う事にしてある それ以外の訓練であれば 再び君が選んでくれても構わないが?」
軍曹が言う
「はーっ!そのー… 自分には少々そちらの考えが及びませんでして… …真に不甲斐なく 申し訳ありません!少佐ぁーっ!」
軍曹が頭を下げる ハイケルが衝撃を受けて言う
「い、いや… それは… 私も似たような者だ 従って君が その私へ謝罪する事は…」
軍曹が衝撃受けてから慌てて言う
「なあっ!?何を仰いますかーっ!?少佐ぁーっ!?少佐は 真に素晴らしき 我々の隊長にして 我々の 初世代の悪魔の兵士であります!」
ハイケルが表情を顰めて言う
「あ、ああ… そうだな その初世代の悪魔の兵士… 本当にそちらを 改良する事が出来ない事は 真に残念な事だが それでも その私が君を含む 国防軍レギスト機動部隊の隊長である事は間違いない 従って …後の訓練内容くらいは考えるか」
軍曹が言う
「はっ!宜しくお願い致します!少佐ぁーっ!」
ハイケルが気を取り直して言う
「うん… そうだな では… 我々の警備するイベントには無い事ではあったが 今後は発生すると言う可能性も完全否定は出来ない よって就業時間後半はそちらへ向けての訓練を」
館内放送が流れる
『ピンポンパンポ~ン♪国防軍17部隊隊長 ハイケル少佐 ハイケル少佐 至急 ミーティングルームへお越し下さい 繰り返します 国防軍17部隊隊長 ハイケル少佐…』
ハイケルと軍曹が放送に反応すると ハイケルが言う
「…うっ」
軍曹が言う
「少佐へ 呼び出しでありますね?」
ハイケルが表情を落として言う
「…あ、ああ …もしかしたら 今日のイベント事件に関する事かもしれん」
軍曹が喜んで言う
「おお!ではっ 少佐がアリアをお守りした事に対して!アリアの父親にして 国防軍総司令官である 自分の兄が!少佐の昇格や昇給を 考えたのかもしれません!」
ハイケルが顔をそらして言う
「…いや むしろ その逆である可能性の方が 高いのだが…」
軍曹が疑問して言う
「は…っ?逆… と 仰いますと?そちらは…?」
ハイケルが立ち上がって言う
「とは言え 呼び出しを無視する訳にはいかない …訓練後半はイベント会場に似た施設における訓練を …と思ったのだが そちらの訓練は後へ回す 従って やはりメインアームの訓練をさせて置け」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!了解でありますっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが言う
「では そちらは頼んだぞ 軍曹」
ハイケルが歩き出す 軍曹が敬礼して言う
「はっ!お任せ下さいっ!いってらっしゃいませーっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが部屋を出て行く

【 国防軍レギスト駐屯地 ミーティングルーム 】

バックスが窓の外を見ている 窓の外駐屯地訓練所では 軍曹と隊員Xが盾と重石を背負って走っている ドアがノックされ ハイケルの声が聞こえる
「国防軍17部隊隊長 ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐であります!」
バックスが振り返って言う
「入れ」
ハイケルが入室してドアの前で敬礼する バックスが苦笑して言う
「何かあったのか?珍しく 呼び出しへの反応が遅かった様だが?」
ハイケルが言う
「は…っ いえ 申し訳ありません 少々こちらへ向かう… 足が重く…」
バックスが疑問した後苦笑して言う
「ん?…そうか 君にもその様な事があるのだな?それこそ エルム少佐は どれ程大きな失敗があった時でも 澄まして堂々とされていらしたが?」
ハイケルが衝撃を受けた後視線を逸らして言う
「…流石は 奴だ…」
バックスが微笑して言う
「まぁ 良いだろう 君はエルム少佐とは異なり 我々と同じ感覚を持つ それは… とても 好感の持てる事だ エルム少佐に勝る事として 誇らしく思って良いだろう」
ハイケルが呆気に取られて言う
「その事が…?」
バックスが言う
「勿論だとも 我々は皆 同じ国防軍の仲間だ 人間離れした強く逞しい隊長は 心強くはあるが 同じ感情や体を持つと言う事は それ以上に 同じ仲間である我々へ共感をもたらす」
ハイケルが呆気に取られた後 苦笑して言う
「…有難うございます バックス中佐」
バックスが呆気に取られた後 笑って言う
「あっははっ その 礼の言葉だが あのエルム少佐の口から出た事は 1度も無かったな?まぁ 何か施された事に対して 感謝すると仰った事はあったが そう言う所が本当に 君は優れている …いや 我々と同じであるのだろう?」
ハイケルが微笑する バックスが頷いた後 思い出したように言う
「おっと いかんな?たまにはこう言った話も良いが 今日は それをしたくて 君を呼び出した訳ではないんだ …先ほど 総司令官から」
ハイケルが衝撃を受ける バックスが続けて言う
「明日のマイルズ地区のイベント警備を行う 諸君 国防軍17部隊へ指令が入った」
ハイケルが疑問して言う
「我々の警備するイベントに?」
バックスが言う
「うむ そちらのイベントへ 例のイベント襲撃の予告が入ったとの事だ」
ハイケルが驚いた後 表情を強める

【 政府警察基地 】

ラミリツが言う
「…従って 我々GPTは 国防軍17部隊の警備する マイルズ地区のイベント会場へ予め待機し 事件が発生した際は 国防軍17部隊の彼らと 合同戦を行う!」
GPT隊員たちが言う
「はっ!了解っ!」
ラミリツが言う
「元々 同じ管轄に滞在する部隊とは言え 共同相手は国防軍17部隊 …諸君も知っての通り 別名国防軍レギスト機動部隊だ 我々との合同任務は10年振りになる」
GPT隊員たちが反応する ラミリツが微笑して言う
「久しぶりの合同任務だね?今回は以前とは異なり 両部隊が同じ場所に居るから 以前より もっと強い連携が必要になるかもしれない でも 国防軍のハブロス総司令官からは 互いに協力し 互いの力を出しきられる様に尽くそうと 話を進めている 彼ら国防軍は観客や出演者の保護を優先 我々政府警察は犯人の逮捕を優先する その上に置いて 互いで協力すると言う予定だから 君たちも… 良いね?」
GPT隊員たちが言う
「了解っ!」
ラミリツが頷いてから 声高々に言う
「我ら政府警察の最高部隊 政府警察特殊機動部隊の威信に賭け!明日こそは 必ず 凶悪な犯人らを 逮捕するっ!」
GPT隊員たちが言う
「はっ!攻長閣下っ!」

GPTの訓練が終了し ラミリツが立ち去る

ラミリツが歩いて行った先で気付き 足を止めて言う
「あれ?エリーナ?」
エリーナがGPT隊員たちを見ていた視線をラミリツへ向ける ラミリツが微笑して言う
「ああ、そっか?報告に来てくれたんだね?それなら 一応 中で…」
ラミリツが建物へ向かおうとすると エリーナが言う
「先ほどの作戦は?」
ラミリツが気付いて言う
「ん?ああ… 実は明日 また 例の犯行予告があったんだよ イベント会場で」
エリーナが言う
「イベント会場… 明日のイベントと言う事は」
ラミリツが言う
「マイルズ地区で行われる 音楽イベントだよ …レギストが警備についているから 無いと思っていたんだけど」
エリーナが言う
「レギスト…」
ラミリツが言う
「うん、それで 今度はそのレギストとGPTが 合同で任務を行う事になったんだ …だから これで 今度こそ!」
エリーナが言う
「その作戦は 推奨出来ない」
ラミリツが疑問して言う
「え?何でさ?この両者は 現アールスローンに置ける 最高のタックだよ?」
エリーナが言う
「レギスト機動部隊の隊長は 欠陥品だ 任務は失敗する」
ラミリツが呆気に取られた後笑って言う
「欠陥品…?あっははっ 相変わらずだね?」
エリーナが言う
「何の話だ?」
ラミリツが気付き苦笑して言う
「あぁ… ごめん エリーナと話してると ついね?けど、その話し方なんかは 元々のデフォルトだったなんて… やっぱちょっと 残酷だよね?」
エリーナが言う
「何の話だ?」
ラミリツが微笑して言う
「ううん 良いんだ …え~と それで?お前は 国防軍の隊員になったんだから これからは もう堂々と 政府警察の基地には 入っちゃ駄目なんだよ?本当はさ?」
エリーナが沈黙する ラミリツが苦笑して言う
「とは言っても お前の事はずっと連れて政府の各施設へ行っていたから 今更 顔パスを禁止するって言うのも難だし …まぁ いっか?お前なら 何も政府へ 悪い事はしないだろうから」
エリーナが言う
「当然だ」
ラミリツが言う
「うん …え~と それで 任務報告に来てくれたんだよね?とは言っても もう大体はニュースの映像で分かってるよ 作戦工程で予定外のハイケル少佐の乱入があって お前がどうしようかって悩んでいる間に 犯人たちが逃げちゃったんだろ?それで… 他には?」
エリーナが言う
「…以上だ」
ラミリツが苦笑して言う
「うん じゃぁそれで良いよ?その他の事なら 任務を請け負っていた国防軍で報告する事だから ハブロス総司令官に伝えるんだ 良いね?」
エリーナが言う
「…了解」
ラミリツが微笑してから言う
「それで?国防軍はどう?国防軍11部隊の指揮を取ったんだろ?隊長として」
エリーナが言う
「そうだな 問題ない」
ラミリツが呆気に取られた後苦笑して言う
「う~ん そっかぁ… 僕は 正直 エルムが現役時代にレギスト機動部隊を どんな風に指揮していたかは知らないから 何とも言えないんだけどさ…?なんて言うかな?その… まだ 慣れていないせいかもしれないけど …仲良く ね?」
エリーナが疑問して言う
「”仲良く” とは 何だ?」
ラミリツが言う
「え?え~と~… う~ん まぁ 何て言うか ”大切にする”って言う事かな?」
エリーナが言う
「”大切にする”…保護をしろと言う事なら 戦場へは連れて行かれない それは 機動隊員とは言わない」
ラミリツが苦笑して言う
「あぁ~ えっと そうじゃなくて…?う~ん… 何て言ったら良いのかなぁ?」
エリーナが沈黙する ラミリツが苦笑して言う
「…分からないや?それじゃ… 僕も もう少し考えてみるけど エリーナも国防軍で 仲間たちに慣れて来れば 自然に分かるかもね?」
エリーナが沈黙する ラミリツが気を取り直して言う
「他に報告は無い?だったら …その為にも 早く国防軍へ帰った方が」
エリーナが言う
「国防軍と政府は協力する」
ラミリツが疑問して言う
「え?…うん そうだけど?」
エリーナが言う
「従って 次の 合同任務へは 私も参加をする」
ラミリツが疑問した後言う
「あれ?そうなの?なら尚更?お前は お前の指揮官である ハブロス総司令官に」
エリーナが言う
「ハブロス総司令官は 私を信用出来ないと言った 与えられた任務を失敗したのでは 当然だ」
ラミリツが呆気に取られて言う
「ハブロス総司令官が?…そう?…でも 国防軍の隊員として 入隊は認められただろ?それこそ 当然だし?」
エリーナが言う
「私に任務の失敗は許されない 従って 私は 政府警察機動部隊隊員としての最後の任務であり 同時に 国防軍機動部隊への入隊試験であった イベント襲撃犯の逮捕拘束任務を続行する」
ラミリツが驚き呆気に取られた後苦笑して言う
「えぇ!?…もう しょうがないなぁ?…相変わらず 我が侭なんだから?」
エリーナが言う
「何の話だ?」
ラミリツが微笑して笑う
「ふふふ…っ 良いの良いの!」
エリーナが沈黙する

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

軍曹が声を上げる
「よーしっ!それではこれより 1時間の休憩である!一時解散!」
隊員たちが敬礼して言う
「了解!有難うございましたぁ!軍曹ーっ!」
軍曹が頷きハイケルへ振り向くと ハイケルが考えていた状態から顔を上げて言う
「軍曹」
軍曹がハッとして敬礼して言う
「はっ!少佐ぁっ!」
ハイケルが言う
「総司令官は… 何時ごろまで 国防本部に滞在して居るだろうか?…分かるか?」
軍曹が呆気に取られて言う
「は?総司令官… で ありますか?」
ハイケルが言う
「ああ… やはり 明日の任務の前に 今日の事について 話をして置きたいと」
軍曹が言う
「ほう…?なるほど?そうでありましたか!流石は少佐っ!」
ハイケルが時計を見てから言う
「既に通常勤務の就業時間からは 1時間ほど経過している これから総司令本部へ向かうとなると 凡そ25分ほど掛かるだろう… となれば その頃には既に 総司令官は国防本部を後にしてしまっている と言う可能性もあるだろう」
軍曹が言う
「は…?少佐 あの~?」
ハイケルが言う
「…とは言え 任務に関する事ではあるが どちらかと言えば 私の個人的な話と言うか… もちろん 国防軍の隊員として事ではあるのだが… しかし そうは言っても これから向かうと連絡をして 足止めをする訳にもいかないのだが…」
軍曹が言う
「少佐 お言葉ではありますが」
ハイケルが言う
「何だ?軍曹?」
軍曹が言う
「総司令官… つまり その… 自分の兄ですが 兄は自分とは違って とても 自分らの父に似た考え方を 持って居りまして」
ハイケルが言う
「…そうか それで?」
軍曹が言う
「はっ 自分も勿論ですが 兄は 国防軍を大切に考えると共に それと同等に ハブロス家の家や家族の事も大切に考えております」
ハイケルが言う
「そうか …それは良い事だと思うが それで?」
軍曹が言う
「はっ 従いまして 兄は 国防軍のトップである 総司令官の立場ではありますが… よほどの重要案件でもありません限り 終業時間をきっかりと守り …今頃はとっくに屋敷へと  帰宅しております」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?」

【 ハブロス家 エントランス 】

使用人たちが礼をする中 執事が微笑して言う
「お帰りなさいませ 旦那様」
アースが言う
「ああ」
アリアが駆け寄って来て言う
「お父様~!お帰りなさいませ!」
アースがアリアを抱き上げ微笑して言う
「ああ、ただいま アリア 今日はご苦労だったな?」
アリアが嬉しそうに微笑む

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

ハイケルが困って言う
「…そうか では 国防軍の業務の方も 今日はもう 終業と言う事か…」
軍曹が言う
「あ、いえっ!終業ではありますが 兄は何処に居りましても 常に 国防軍の事を気に掛け そちらの業務なども行っておりますので 何か任務やその他の事で お話があるようでしたら 就業時間に関わらず屋敷内にて お話をなさっても 特に問題はございませんかと!」
ハイケルが軍曹を見て言う
「そうなのか では…」
ハイケルが一瞬考えてから言う
「…よし、そう言う事なら 私はこの休憩の間に 総司令官の下へ行って来る …軍曹」
軍曹が言う
「はっ!少佐ぁっ!」
ハイケルが言う
「距離的には1時間で戻られる範囲だが …この時間では あちらも夕食の頃だろう?従って その間は待たされる可能性もある 後半の訓練の開始までに 私が戻られなかった際は 私が戻るまで部隊を頼む」
軍曹が言う
「はっ!了解でありますっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが言う
「後半の訓練は 明日の任務を踏まえ 武器を所持する犯人へ対する 体術による格闘訓練だ 隊員らは何時もの各班へ別け 模擬訓練を行わせるようにしろ」
軍曹が言う
「了解っ!」
ハイケルが言う
「なるべく急いで戻るが それまでの間は頼んだぞ?」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!お任せ下さいっ!いってらっしゃいませーっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが立ち去る

【 ハブロス家 通路 】

アースが着替えを済ませた状態で歩いて執事へ言う
「変わりは無いか?」
執事が微笑して言う
「はい お変わりは御座いません ハブロス家は 通常通り平穏に御座います」
アースが言う
「そうか それなら結構だ …昔は良く エルム少佐の新作の銃声で その平穏も 邪魔をされていたものだが」
執事が軽く笑って言う
「そちらも 平穏の証であられましたかと …お懐かしゅう御座いますね?」
アースが言う
「そうだな 悪魔の兵士は今も居るが …彼は大人しいからな?」
執事が微笑して言う
「アース様は度々 エルム少佐と和やかになされておられましたから …少々 お寂しいのでは御座いませんか?」
アースが言う
「ふっ 和やかに か… そうかもな?それに あの頃は辺りを見渡せば いつもあの… 無愛想な人形が 私を見ていたものだ」
執事が軽く笑って言う
「っふふ… その様な事を仰いましては きっと そちらのお人形様からは ”悪かったな” と?」
アースが微笑して言う
「ああ 間違いなく そうと言うだろうな?まったく… だが あれと話すのも 私は… 楽しんでいたのかもしれない」
執事が微笑して言う
「私の目には 十分そちらの様にと お見受けを致しておりましたが?」
アースが呆気に取られてから 苦笑して言う
「なんだ… 当時の私自身より 私の本心を見抜いていたのか?お前も 相変わらずだな?」
執事が微笑して言う
「アース様のお気持ちは きっとエルム少佐にも 伝わっておられましたかと」
アースが言う
「そうか… なら良いか …それに 帝国へ行けば 今でも そんなやり取りが出来るのだからな?」
執事が疑問して言う
「…はい?そちらは?」
アースが微笑して言う
「秘密だ」
執事が呆気に取られた後微笑して言う
「畏まりました」
アースが苦笑し アースと執事がエントランスへ来ると ファーストの声が掛かる
「父上」
アースが振り向くと ファーストが言う
「お帰りなさいませ」
ファーストが電動車椅子に座っていて 近くにエレナが居る アースが微笑して言う
「ああ、何か変わりは無いか?ファースト」
アースがファーストの近くへ行き ファーストの肩へ手を置く ファーストが微笑して言う
「でしたら 父上 宜しければ お夕食の後に是非とも 一局お相手を願えませんでしょうか?」
アースが微笑して言う
「うん?では また チェスの腕を上げたのか?」
ファーストが微笑して言う
「はい 今度こそ 父上にも勝利出来ますかと?」
アースが言う
「ほう?そうか それなら夕食の後に」
アリアがやって来て言う
「あーっ お兄様だけ ずるいですわっ!」
アリアがアースに抱き付く アースがアリアの頭をなでる アリアがアースを見上げて言う
「それなら お父様!お夕食の後は アリアのお歌も聴いて下さいませ!」
アースが微笑して言う
「ああ、もちろんだとも」
ファーストが言う
「アリア 歌はもう 陛下の御前で父上にも お聞かせしたのだろう?」
アリアが言う
「でも お父様は お眠りをされていらしたのだもの!それに アリアだって 今日はお歌のレッスンを頂いたのですから お父様に聴いて頂きたいのっ」
ファーストが言う
「アリア 父上は お忙しいのだから 歌は1日1回で十分だ」
アリアが言う
「お兄様だって 昨日は2局もお相手を頂いてらしたわ?」
アースが微笑して言う
「構わないさ チェスも歌も… 何曲(局)だろうと 屋敷に居る間は 家族と共に過ごすものだ」
アリアが微笑する ファーストが苦笑する 執事が微笑して言う
「旦那様 お食事のご用意が整いました」
アースが言う
「ああ、では 家族皆で夕食にしよう」
アリアが微笑して言う
「はいっ お父様!」
ファーストが微笑して言う
「はい 父上」
エレナが微笑する 皆が食堂へ向かう

【 ハブロス家 門前 】

国防軍のジープがやって来て門前で停車する 監視カメラがドライバーを見ると ハイケルが監視モニターへ顔を向ける 一瞬の後門が開き ジープが入って行く

【 ハブロス家 食堂 】

食事にフォークやナイフが当てられる アリアが嬉しそうに話している
「アリアがそうお伝えしたら 陛下はとてもお喜び下されたの!とっても綺麗な微笑で アリアは 思わず そちらの陛下のお顔に 見惚れてしまったら またお歌の歌詞を忘れてしまって!」
ファーストが苦笑して言う
「それでは 何時までたっても 姫の恋心は 伝わらないじゃないか?」
アリアが言う
「それでも 伝わるのっ!」
アースが軽く笑う ファーストが疑問して言う
「肝心の愛の言葉を歌わなかったら 何度会って歌おうとも その思いは伝わらないだろう?」
アリアが言う
「伝わるんだったらっ ねぇ?お父様?」
アリアとファーストがアースを見る アースが微笑して言う
「そうだな 言葉ではなく ソウ… …いや 魂で伝わると言うモノは あると思うが?」
ファーストが疑問して言う
「魂で…?」
アリアが得意になって言う
「ほらぁっ!お父様だって そう仰るのだもの!だから お姫様の恋心は ちゃんと伝わるのっ!」
ファーストが首を傾げて悩んで言う
「う~ん…」
アースが軽く笑ってグラスをあおる エレナがファーストを見てからアリアを見て アースを伺う アースがエレナの視線に気付いて言う
「ん?どうかしたのか?」
エレナがハッとして言う
「あっ いえ… その… アリアがうっかり お歌の歌詞を忘れてしまうほどの… それほどに綺麗な微笑とは どれ程のものかと…」
アースが苦笑して言う
「あぁ… そうだな?男の私からでは それ程のものとは 思われないが… まぁ アリアが綺麗だと言うのは 元々の 皇帝の姿の方ではないのか?」
エレナが言う
「姿…?」
ファーストが言う
「そう言えば アリアはいつも 陛下はとても綺麗だと言うけれど… いくら 帝国の皇帝と言っても 男性が綺麗だなんて 僕には想像出来ないな?」
エレナが苦笑して言う
「皇帝陛下がお召しの お洋服や… 装飾が綺麗だという事かしら?」
アリアが言う
「違いましてよっ?お洋服なんかは 特別に綺麗と言う事はありあませんですわ!?そうではなくて 陛下は とっても お綺麗なのっ!だって陛下はっ!」

【 ハブロス家 エントランス 】

執事2が礼をして言う
「お帰りなさいませ ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「総司令官に用があって 一時的に帰還しただけだ 直ぐに 国防軍レギスト駐屯地へ戻る予定だが… 総司令官は?」
執事2が言う
「はい 旦那様はただ今お食事中にございますが 何か 国防軍の事で 急を要するご用件で御座いましょうか?」
ハイケルが言う
「いや… 国防軍の事ではあるのだが 急を要する事ではない …とは言え 私は 出来れば 早く駐屯地へ戻りたいのだが… やはり 食事が済むのを待つべきか?」
執事2が言う
「お話の内容如何にも よりましょうかと思いますが… お食事の場に 差し障りの無いお話に御座いませば 恐らく 旦那様は…」

【 ハブロス家 食堂 】

アースが慌てて咳払いをして言う
「う、ううんっ!…アリア?」
アリアが気付き 微笑して言う
「…ふふふっ でも それは秘密なのっ!」
ファーストとエレナが呆気に取られた後 ファーストが苦笑して言う
「…また ”秘密”か?アリアは父上との ”秘密”が一杯だな?」
アリアが嬉しそうに微笑する
「うふふっ!」
エレナが苦笑する アースが言う
「いつかは 皆にも知らせられるかもな?…まぁ ファーストは次期 国防軍総司令官だ そうとなれば いずれは知る事になるだろう」
ファーストが気を入れなおして言う
「はいっ 父上!」
エレナが微笑する アースが言う
「そして、ファーストも 総司令官となれば 色々と忙しくもなるだろうが 家族との時間は大切にな?」
ファーストが微笑して言う
「はいっ 私も 父上に倣いたいと思っております!」
アースが微笑して言う
「ああ、ハブロス家の皆で この場所で食事が取られるという事は とても大切な事だ… 父上がそうしておられた理由が 今の私には良く分かる… とは言え 欠けている家族も相変わらずだが?」
執事が苦笑して言う
「アース様?アーヴァイン様とハイケル少佐が 欠けていらっしゃいます事は そちらの国防軍レギスト機動部隊の就業時間が 昼夜体勢である事が ご問題にて御座いますかと…?」
アースが気付いて言う
「ん?…そうだったな …とは言え あいつは通常の就業体制であった際も 隊員たちと夕食を取りたいと 駐屯地の食堂で済ませていただろう?」
執事が苦笑して言う
「はい 確かに そちらの ご様子は御座いましたが そちらの中に置かれましても 月に数回ほどは お屋敷の食堂にて お召し上がりであられました」
アースが言う
「そうか… では 戻しておくか?今更とは言え 帝国との… マスターブレイゼスとの戦いは終わり 実の所 アールスローン国内に置いての マシーナリーとの戦いは有り得ない状態だった 帝国との一件が片付いて間もなくして変えるのでは 不振がられるだろうと 少し置くつもりが… そのまま すっかり 忘れていたな」
執事が苦笑して言う
「しかし、国防軍レギスト機動部隊とGPT 共に アールスローンの1位を争う両部隊が あえて就業時間をずらす事で 24時間体勢にて 構えておられると言う事は 心強くも御座いますが?」
アースが言う
「ああ、それはそうだが そのレギスト機動部隊の隊員たちにも 家族が居るだろう?昼夜体勢として 夜の時間を奪うとなれば それは 家族との夕食の時も奪うと言う事になる それは とても 心苦しい事だ 隊長のハイケル少佐へ伝え 直ぐにでも 変えさせて置こう」
執事が微笑していると 執事2がやって来て耳打ちする アリアが微笑して言う
「そうなりましたら今度は 本当に 家族皆で お夕食が食べられるのかしら?ねぇ?お父様!?」
アースが言う
「ああ、そうだな?今ここに居る者に加えて アーヴァインやハイケル少佐 それに…」
執事が言う
「アース様 お話の途中では御座いますが 一足先に そちらのハイケル少佐が…」
アースが疑問して言う
「うん?ハイケル少佐がどうした?」

【 ハブロス家 エントランス 】

ハイケルが言う
「折角の家族だけの… 確か ”家族水入らず”と言うのだったか?その場所に 私が入ると言う訳には」
執事2が言う
「ご心配には及びません 確かに 家族水入らずと言われます そちらのお言葉に置かれての 家族と申しますのは 本来であれば ご自分の配偶者や子供に対する言葉に 近くありますが 旦那様にとっての”家族”とは…」
執事がやって来て微笑して言う
「ハイケル少佐 旦那様より お話でしたら ハイケル少佐も夕食を ご一緒にされる様にと」
ハイケルが呆気に取られる 執事2が微笑して言う
「ハブロス家に住まう者が 全て に御座いますかと」
ハイケルが苦笑して言う
「なるほど 流石は あのハブロス総司令官だ」
執事がハイケルへ道を示す ハイケルが帽子を取ると執事2へ預け 示しに従う

【 メイリス家 食堂 】

ラミリツが言う
「こうやって4人で食事をするのもさ?今日で最後だと思うと ちょっと 寂しいね?」
シェイムが苦笑して言う
「そうだな 長く続いたエーメレスと私の2人きりであった所へ フレイゼス殿を含めて 3人となった所へ 更に1人増え 4人となり このメイリス家の食堂では 過去最多人数となった訳だったが …それも あのっ」
シェイムが怒りを抑える ラミリツが疑問する メルフェスが苦笑して言う
「シェイム殿 どうかそう… 突っ掛かりません様に?」
シェイムが言う
「はい…っ 分かってはいるのですがっ」
メルフェスが言う
「それに ラミリツ殿は 最後と仰いましたが たまには 食事へお呼びするのも良いではありませんか?夕食を食べにおいでと… ラミリツ殿のお誘いであれば?」
ラミリツが苦笑して言う
「それじゃ 駄目だよ 僕が言ったら 命令になっちゃうでしょ?そう言う所は やっぱ 相変わらずなんだからさ?…な?エリーナ?」
エリーナが言う
「何の話だ?」
エリーナが無表情に食事を食べる メルフェスが苦笑して言う
「ラミリツ殿が 彼女の育成をすると仰った時には どうなる事かと思いましたが… すっかり ご立派になられましたね?」
エリーナが言う
「当然だ」
ラミリツが言う
「僕が教えた事は 全部 幼い頃に 僕自身が父上から教わった事だよ …あぁ 剣術に関しては エルムに教わった事も入ってるけど」
シェイムが苦笑して言う
「エーメレスが 突然 幼い彼女を連れて帰って来た時には驚いたが… そのエーメレスも父上から訓練を受け始めたのが 5歳の誕生日を迎えた翌日からだった それを考えれば 同じ事だったのだな?」
ラミリツが言う
「そう言う事!でも 兄上から 父上がつけていたと言う 僕の訓練日誌の事を聞かなかったら 5歳になったばかりの彼女へ訓練を開始しようだなんて 思わなかったけどね?」
シェイムが苦笑する メルフェスが苦笑して言う
「シェイム殿は… ラミリツ殿が何処かの女性と作った 隠し子を連れて帰ったと …それは 凄い 怒り様でしたね?」
シェイムが衝撃を受けて慌てて言う
「フ、フレイゼス殿っ そちらの話はっ!」
ラミリツが言う
「はぁ?隠し子って…?僕はそんな… 大体あの頃は そんな余裕なんて 全然無かったし?」
メルフェスが微笑して言う
「ええ、確かに そうでしたね?」
シェイムが言う
「ま、まぁ… もちろん 大体 あの頃のエーメレスは まだ 20歳にも満たない 子供で…」
ラミリツが言う
「ま、お陰で 今なら そんな余裕も出来たけどさ?」
シェイムが衝撃を受けて慌てて言う
「そっ それは どういう意味だ エーメレス!?私は お前をそんな ふしだらな男に 育てた覚えはっ!」
メルフェスが苦笑して言う
「まぁまぁ シェイム殿 折角の 食卓ですから 抑えて 抑えて…?」
エリーナが無表情に食事を続けている

【 ハブロス家 食堂 】

ハイケルが沈黙している アースが言う
「どうした?ハイケル少佐 欠けている者が居るとは言え こうして家族皆と 夕食を共にする事は とても嬉しく 心休まる事だろう?」
ハイケルが言う
「そ、そうだな… とても嬉しく… 心… 休まる…?」
ハイケルが視線を上げると アースがグラスを傾ける中 食卓の両脇に正妻副妻がいてそれぞれの子供も居る ハイケルが表情を強張らせて言う
「この状態で 心休まる …のかっ?」
ハイケルがぎこちなく夕食に手を付ける イリーナが言う
「ハイケル少佐?本日は アリアを助けようと  働いて下さった事へ アリアの母として お礼を申し上げますわ」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ… いや… それは…」
アースが言う
「お陰で 11部隊の作戦は 失敗したそうだがな?」
ハイケルが俯いて言う
「あ、ああ… 私の独断のせいで 別部隊の作戦を失敗させてしまった… 従って…」
アースが微笑して言う
「それでも アリアを助けようと お前が独自に考え 備え動いてくれた事は事実だ その想いには 私も娘の父親として 感謝する… まぁ 家族としては当然だとも 思うが?」
アースが食事を食べる ハイケルが衝撃を受けて言う
「それは結局 どちらなんだ…っ?」
イリーナがアリアへ言う
「アリア?ハイケル少佐に お礼は?」
アリアが微笑して言う
「はい!お母様!ハイケル少佐!アリアを助けて下さって 有難う御座いますわ!」
ハイケルが微笑する アースが言う
「とは言え あちらは 替え玉だった訳だが…?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ…」
アースが食事を続ける ハイケルが言い辛そうに言う
「その… 11部隊の作戦を邪魔した事は すまなかったと思っている しかし まさか… 国防軍に女の機動隊員が… いや、それ以前に あの歌声は 間違い無くアリアの声だった」
アースが言う
「間違い無く… か?なるほど?流石は 同じ遺伝子情報を 使用しているだけの事はあるようだ」
ハイケルが疑問して言う
「同じ遺伝子情報?」
ファーストが言う
「しかし、父上は あちらの替え玉の歌声と アリアの歌声は異なると… 事前の実験の際には 直ぐにお分かりになられましたよね?」
ハイケルが驚く アースが言う
「もちろんだ 如何に音を似せようとも 両者の歌はまったく異なる 偽者の歌声には まったくソウルが足りていない」
ハイケルが疑問して言う
「ソウル?」
アースがはっとして衝撃を受け顔をそらして言う
「ああ …あ、いや…?ソウ… そ、そうっ!魂が足りないんだ」
ハイケルが言う
「魂…?」
アリアが気付いて言う
「それでは 駄目でしてね?魂が足りなくては お歌を歌っても お姫様の想いは 神様へは届かなくてよ?」
アースが微笑して言う
「そう言う事だ」
ハイケルが沈黙して疑問する ファーストが苦笑して言う
「はぁ…?私には分かりかねますが …やはりそちらも 父上とアリアの”秘密”ですか?父上?」
アースが言う
「想いの力は 魂で感じ取られなければ 言葉では説明が出来ない物だ ファーストも… 何か歌や音楽をやってみてはどうだ?きっと分かるだろう 私の息子なのだからな?」
ハイケルが沈黙している アリアが嬉しそうにしている ファーストが苦笑して言う
「歌や音楽… ですか… では、何か考えてみます」
アースが苦笑して言う
「あまり乗り気ではないな?無理はしなくて良い そちらでは 魂も込められない」
ファーストが苦笑して言う
「私はどちらかと言いますと 静かな場所で 落ち着いて何かに集中する事の方が 好きなもので」
アースが言う
「そうか では ファーストは私の父に似た タイプだな?」
ファーストが言う
「はい 祖父上とお話しをする事や チェスのお相手をしていただく時間は とても心が休まります」
アースが微笑して言う
「なるほど?」
エレナが微笑して言う
「ファーストは お義父様と過ごさせて頂いております時間が 長く御座いますので」
アースが言う
「そうか 最近はすっかり 父上とのお話は ファーストへ任せきりだったな?」
ファーストが言う
「祖父上からは 父上の様な 立派な国防軍総司令官になるようにと 応援を頂いております」
アースが微笑して言う
「そうか… 父上のご病気が良くなって 本当に良かった 今では父上がご病気であられた事すら 夢の様だ」
ハイケルが沈黙しながら食事をする

食堂から皆が出て来る アリアが言う
「ハイケル少佐!本日のお礼に アリアはハイケル少佐へ お歌をお聞かせして差し上げてよ!」
ハイケルがアリアへ振り向く アースが気付いて言う
「うん?アリア?歌は私に聞かせるのでは なかったのか?」
アリアが微笑して言う
「もちろん お父様にも!」
アースが苦笑して言う
「ふっ それでは 私へはハイケル少佐へ聞かせる そのついでか?お姫様にとっては 父親よりも自分を助けに立ち向かってくれる ナイト殿の方が上の様だな?」
アリアが微笑して言う
「うふふっ でも アリアは 分かっていますわ?ハイケル少佐は アリアではなくて アーヴァイン叔父様のナイト様ですもの!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「わ、私が軍曹の… ナイトっ?」
ハイケルが困惑する アースが微笑して言う
「ああ そうだな?」
ハイケルが言う
「それは… そうかもしれないが…」
アリアがハイケルを見て言う
「だから アリアは ハイケル少佐には お礼としてでしてよ?」
ハイケルが微笑して言う
「分かった では 礼なら その気持ち… いや、想いだけで十分だ」
アリアが言う
「想いは お歌じゃないと 伝わらないわ?ハイケル少佐?」
ハイケルが苦笑して言う
「いや 伝わる… 伝わっている 少なくとも 私には伝わった …それに 私は レギストの部隊訓練へ戻らなければならない」
アリアが言う
「まぁ これかですの?もう夜なのに?」
ハイケルが言う
「レギスト機動部隊は 基本 昼夜の時間帯に 訓練や任務を請け負っている」
アースが思い出して言う
「あぁ そうだった ハイケル少佐?」
ハイケルがアースへ向く アースが微笑して言う
「家族としての語らいをしていた為 すっかり忘れていたが 国防軍の業務連絡だ」
ハイケルが気を取り直して言う
「それなら 私も 明日の任務に当たり 確認しておきたい事がある」
アースが言う
「ほう?そう言えば そちらの用があって 一時帰宅をしていたのだったな?では 先に言うと良い」
ハイケルが言う
「了解 では 確認をする 明日のイベントでは…」

【 ハブロス家 門前 】

車がやって来て門前で停車する 監視カメラがドライバーを見ると 一瞬の後門が開き 車が入って行く

【 ハブロス家 エントランス 】

ハイケルが言う
「…そうか では 今度こそ アリアは勿論 アリアの替え玉も 使用はしないのだな?」
アースが言う
「ああ、それに 今度こそ お前を含む レギスト機動部隊には 観客及び演出者の保護を 最大限にて行ってもらいたい …これなら 何も案ずる事はないだろう?ハイケル少佐?」
ハイケルが微笑して言う
「了解 感謝する」
アースが一瞬疑問してから 苦笑して言う
「…感謝か?」
ハイケルが言う
「”案ずる事は無いと” …つまり 私が 今回のような失敗を考慮し 不安に思っていると言う事を 察しての言葉であると …その様に解釈をしたのだが?」
アースが気付いて言う
「うん?…そうか 特に 意識して言ったつもりは無いが 確かに そちらの想いはあったな?」
ファーストが微笑して言う
「では やはり 言葉で伝わる想いは ありますね?父上?」
アースが言う
「ふ…っ そうかもしれないな?」
アリアが言う
「違うわ!お父様の場合は 言葉にも魂が込められている と言う事でしてよ?」
ファーストが呆れて言う
「やっぱり 魂かぁ…?」
アースとアリアが笑う ハイケルが囁く
「魂…」
エントランスの扉が開く音がする 皆が顔を向けると ハイケルが驚いて言う
「お、お前はっ!?」
執事がそちらへ向いて言う
「お帰りなさいませ エリーナ様」
エリーナがやって来る ハイケルが呆気に取られて言う
「…エリーナ?」
アリアが大喜びで言う
「エリィ!」
ハイケルが声に振り向いてアリアを見ると アリアがエリーナへ駆け寄る ハイケルが驚くと アリアがエリーナに飛び付いて言う
「帰って来たのねっ!?エリィ!?」
エリーナが言う
「帰還した」
ハイケルが呆気に取られて言う
「どういう 事だ…?」
アースが言う
「攻長閣下には 何か言われたか?エリーナ?」
エリーナが言う
「”国防軍でハブロス総司令官に苛められたら いつでも 政府警察に帰っておいで”…だ」
アースが衝撃を受けて言う
「…っ あのガキ…っ」
ハイケルが言う
「ハブロス総司令官っ 何故 11部隊の隊長が この屋敷にっ!?」
エリーナが言う
「”11部隊の隊長”ではない 私は…」
アースが言う
「そうか そう言えば ハイケル少佐には 会わせた事が無かったか?彼女はエリーナ …エリーナ・アリア・ヴォール・ライトニアだ」
ハイケルが驚いて言う
「”アリア・ヴォール・ライトニア”!?ではっ!?」
アースが言う
「ああ 彼女はアリアの養女にして このハブロス家の家族 そして…」
アリアが微笑して言う
「エリィは 私のナイト様なのっ!」
ハイケルが驚いて言う
「ナイト様…っ では やはり それはっ!?」
ハイケルがアースを見る アースが微笑する エリーナが言う
「”ナイト様”ではない 私は ”悪魔の兵士” …だ」
ハイケルが驚く アリアがエリーナを見上げて言う
「エリィ!こちらのお屋敷に帰って来たと言う事は もう 攻長閣下のお屋敷へは 向かわなくても宜しくてね?」
ハイケルが言う
「攻長閣下の…?」
ハイケルがアースを見る アースがハイケルを見ると エリーナが言う
「ラミリツ・エーメレス・攻長閣下の任務… 2世代目の悪魔の兵士へ訓練を行う作戦は 完了した」
ハイケルがエリーナを見ると アースが言う
「そちらの連絡は受けている そうとなれば 当然 今日からは このハブロス家の屋敷が お前の帰還する屋敷となる」
エリーナが言う
「了解」
アリアが喜んで言う
「わぁ 嬉しいわ!それなら エリィ?今夜はアリアと一緒のベッドで寝ましょう?教会に居た時みたいに!」
エリーナが言う
「了解」
アリアが喜んでエリーナへ抱き付く エリーナは無表情に微動だにしない ハイケルが気付いて言う
「教会に居た時?…そうか アリアの存在は 彼女がこのハブロス家へやって来た 5歳になるまでを秘密裏にしていた …それは アールスローン戦記の原本を保有する彼女の身を案じての隔離であったのだろうが その間を 悪魔の兵士に 守らせていたという事か?」
アースが苦笑して言う
「同じく悪魔の兵士である お前の言葉にしては 随分と的外れだな ハイケル少佐?私であれば 例え アリアがアールスローン戦記の原本を有していると言う その情報がリークしていようとも 家族であり 増して 私の娘であるアリアを 遠ざけておく事など我慢なら無い」
ハイケルが疑問して言う
「…では?何故?」
アースが言う
「それは…」
ハイケルが言う
「それは?」
アースが言う
「秘密だ」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「なぁっ!?」
ファーストが苦笑して言う
「父上…」
アースが苦笑して言う
「…と、言いたい所だが 世間にはそうとしていようとも 家族のお前たちにまで隠す必要は無い 情報の共有は必要な事であると… 優秀なハイケル少佐のお陰で 本日痛感出来た所でもあるからな?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ… 悪かったな…っ」
アースが言う
「では 結論から言えば ”その様にしろ”と… いや ”していた”と言う それこそ”情報”が 書かれていたんだ …アーヴィンの持つ アールスローン戦記の原本に」
ハイケルが言う
「では やはり その様にして アリアを守っていた と言う事だろう?」
アースが言う
「さぁな?」
ハイケルが疑問して言う
「は?」
アースが言う
「先ほども言ったが ただ 守りたいと 匿って置きたいだけならば 私は その様な手段は使わない そもそも、警備のなっていない そこらの教会より初世代とは言え 現役の悪魔の兵士も居る このハブロス家の屋敷の方が 断然安全だろうと 私はそう思うが?」
ハイケルが言う
「俺は アリアの居た教会が何処であるかは知らないが それを度外視したとしても そちらの意見に同意出来る」
アースが微笑して言う
「では そう言う事だ」
ハイケルが言う
「いや それなら尚更 何故 仮にも国防軍の者であるアリアを 教会へ?」
アースが言う
「それは 正直 分からない」
ハイケルが驚いて言う
「”分からない”だと!?」
アースが言う
「原本には ”その様にしていた”と書かれていた それ以上の説明は無かった …だが それでも 私は その文章に従ったんだ」
ハイケルが言う
「文章に従った?…ただそれだけなのか?理由もなしに?」
ハイケルがアースを見る アースが言う
「ああ 理由も 書かれてはいなかった上に 私には分からなかった しかし その文章には 魂が宿っていたんだ …だから 私はそれに従った」
ハイケルが呆気に取られて言う
「文章に 魂が…?」
ファーストが呆気に取られてから苦笑して言う
「父上 そちらは流石に ご冗談で…?」
ハイケルがファーストを見る アースが苦笑して言う
「嘘は言っていないさ?私は 国防軍の者 政府の連中とは違って 出来る事なら嘘は吐きたくない 嘘は …ソウルを弱める」
ハイケルが沈黙する

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員たちが訓練をしている グレイゼスがノートPCを操作しながら言う
「ああ 勿論知ってる エリーナ・アリア・ヴォール・ライトニア …お前にとっては姪って事になるな?ハイケル?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「知っていたのかっ!?何故言わなかった!?仮にも俺の姪だぞっ!?」
グレイゼスが言う
「それは勿論… てっきり 知ってると思ってたんだぁ~?それと 彼女が5歳の時に 一時的にラミリツ攻長に引き取られて 攻長閣下のお屋敷で警機の訓練を受けていたって事もな?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「警機の訓練を!?しかも ラミリツ攻長の屋敷で!?」
グレイゼスが言う
「なんだ そっちも聞いていなかったのか?」
ハイケルが言う
「10年の年月を経て 先ほど聞いて驚いた所だ」
グレイゼスが苦笑して言う
「ラミリツ攻長のメイリス家は 歴代の政府警察機動部隊のお家だ 屋敷の庭には警機の基地顔負けの訓練施設があるって噂で そこでは次期警機隊長となるべく メイリス家のご子息が幼い頃から訓練を受けてるってな?…まぁ こっちは 政府のトップシークレットだけど」
ハイケルが言う
「…そうだったのか 政府トップである長官や攻長の名は知られても その下である 政府警察のその話までは知らなかった… それに 大体 警機隊長と一言で言っても 向こうにだって 国防軍の部隊と同じかそれ以上の部隊数があり 共に その隊長らが居るだろう?」
グレイゼスが言う
「それはそうだが 政府警察のメイリス部隊と言えば 過去の大戦時には 国防軍のレギスト機動部隊と作戦を同じくした 特別部隊だ 国防軍トップのレギストと同じく 政府警察のトップ部隊と言っても過言じゃない」
ハイケルが視線をそらして言う
「…知らなかった」
グレイゼスが一瞬驚いてからハイケルを見て言う
「本気で言ってるのか?」
ハイケルが表情を顰めて言う
「政府警察は国防軍とは異なり 気の長い説得や何やらで降伏させる政府警察機動部隊か ただ犯人の逮捕ばかりを優先する刑事どもの集団であると… 従って 実践的な作戦を行うのが国防軍の機動部隊であると… 俺はそう考えていた」
グレイゼスが呆気に取られてから笑って言う
「あっはははっ!ハイケル!お前 ちょっと メディアの見過ぎじゃないかぁ?」
ハイケルが衝撃を受ける グレイゼスが言う
「そんな偏見なんかで常識を作っていたら その政府警察機動部隊との合同作戦で ヘマでもしちまうぞ?」
ハイケルが不満そうに言う
「それなら 本日既に 実行した」
グレイゼスが衝撃を受けて言う
「あぁ… そういや そうだったな…?」

【 ハブロス家 サロン 】

チェス盤に駒が置かれる アースが微笑して言う
「ほう…?手堅いな?」
ファーストが微笑して言う
「防衛は国防の要 守りは強固であるに 越した事はありませんかと?」
アースが駒を手に言う
「しかし その様な場所に 突入して来る者も 居ると言うものだが?」
チェス盤にナイトの駒が置かれる ファーストが反応して言う
「え?…随分と無謀な?こちらには 弱いとは言え これだけのポーンが居るのに?」
TV映像にニュースが流れている アースが微笑して言う
「まるで 今日の彼の様だろう?」
ファーストが疑問してから アースの視線の先のTV映像に気付いて苦笑して言う
「では そちらの作戦は やはり失敗かと?」
ファーストがナイトの進む先にあったクイーンの駒を下げる

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員Aが観客役の隊員たちをかばって言う 
「総員 観客の警護だ!」
隊員Bが言う
「了解ー!アッちゃん 仮隊長ぉー!」
犯人役が逃げる ハイケルがグレイゼスを見て言う
「まさかとは思うが 今日の11部隊の作戦を お前も知っていたのか?」
グレイゼスが苦笑して言う
「いんや まさか?…大体知ってたら お前にあのチケットを取ってやった時に 伝えていたさ?」
ハイケルが言う
「そうか… では 今回は替え玉だった訳だが …以前もそうであったかどうかは 分からないか?」
グレイゼスが疑問して言う
「以前も?」
ハイケルが言う
「以前もそうであったと言うのなら 明日の音楽イベントの出演者も アリアではなくとも 別の替え玉を用意するのだろう?」
グレイゼスが言う
「あぁ そう言う事?さぁ… どうだろうな?そもそも 明日のイベントの警備は お前たちレギスト機動部隊なんだろう?だったら?」
ハイケルが言う
「そちらに関しては 総司令官が政府警察の者と相談すると… しかし、我々国防軍17部隊の行う事に 変わりはないと言われた …それはもちろん 俺も分かってはいるのだが」
グレイゼスが言う
「明日のイベントに対して 今日脅迫を受けた訳だから 恐らく まだ決まっていないと言う事だろうけど… 俺の知る限り 今日の事は別として 今までの中止イベントの代替に 総司令官の娘でもある アールスローン1の歌姫 本物のアリア・ヴォール・ライトニア・ハブロス嬢を立てていた事は事実だ」
ハイケルが疑問して言う
「では 先ほどは否定をされたが 話し合いの結果次第では 再びそうとなる可能性も…」
グレイゼスが言う
「いや 明日のイベントに関しては そうは行かないだろう」
ハイケルが言う
「何故だ?明日も音楽イベントである以上 今までと同様に」
グレイゼスが言う
「そいつは 明日のイベントが 音楽イベントとは言え 彼女では代替が利かない モノだからさ?」
ハイケルが疑問する グレイゼスがノートPCの画面を見せる ハイケルが反応する

【 政府警察本部 応接室 】

ナルが叫ぶ
「冗談じゃねぇっ!どんな理由があろうとも んな唐突に ライブを中止にするなんて 出来るかぁあっ!」
警察長が言う
「そうは仰いましても イベントを実行する事は 出演者であるあなた方は勿論の事 観客の方々にまで 危険を与えるという事になるのです ですから…」
ナルがテーブルを叩いて言う
「大丈夫だっ!心配ねぇ!イベントには アニキが仕切る 国防軍が警備に就いてるんだっ!んな イベント妨害野郎なんざに 舐めた真似を許す筈がねぇえっ!」
警察長が苦笑して言う
「ア、アニキが仕切る…?」
ナルが言う
「おうよっ!」

応接室 外

ラミリツがドアを覗いている 婦警がお茶を持って来て ラミリツに気付くと疑問して言う
「あの… 攻長閣下?」
ラミリツが衝撃を受け慌てて言う
「うわあっ!?」
婦警が一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「何か御用があられるのでしたら 室内の者へ声掛けを致しますが…?」
ラミリツが頬を染め慌てて言う
「あぁっ いやっ!別に その…っ!?」
婦警が疑問する

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員Aがイヤホンを押さえる真似をして言う
「レギスト機動部隊A班!状況を!」
隊員Bが言う
「はーっ!こちらA班ーっ!え~とぉ… はーっ!たった今 犯人が目の前を逃げて行きましたーっ!」
隊員Cが衝撃を受け怒って言う
「逃がしちゃ駄目だろっ!?」
隊員Bが言う
「えー?」
ハイケルがノートPCを見ていて言う
「”ナックキラー凱旋ライブ2ndステージ” ナックキラーとは… 確か デスメタルバンドだったな?」
グレイゼスが苦笑して言う
「ああ いくらなんでも デスメタルを聞きに来た連中に オペラの歌で代替とはな?行かないだろう?」
ハイケルが言う
「確かにそれは 代替とは言い難いのかもしれないが… そうとなれば アリアを使うと言う可能性は やはり無いと言う事か…」
グレイゼスが言う
「とは言え 他の代替を用意するにしても 代替なしでイベントを強行するにしても レギスト機動部隊のやる事は それこそ同じだ」
ハイケルが頷いて言う
「…そうだな」
ハイケルとグレイゼスが顔を向ける 2人の視線の先 隊員Bが言う
「だってー 俺たちの任務は 観客と出演者の保護だしー?だったら 犯人が目の前を逃げて行っても そっちの拘束を優先しちゃ 駄目なんじゃないー?ねー?アッちゃん?」
隊員Cが呆気に取られて言う
「え…?」
隊員Cが隊員Aを見る 隊員Aが微笑して言う
「ああ、それで良い筈だ 今回は バイちゃんの方が正しいみたいだな?サキ?」
隊員Cが不満そうに言う
「なんだよ… ”今回は”…って お前は何時だって バイスン隊員の味方だろう?」
隊員Aが呆気に取られて言う
「え?」
隊員Bが喜んで言う
「もっちろ~ん?だって 俺とアッちゃんは 今や誰もが知る仲なんだからー?ねー?アッちゃんー?」
隊員たちが衝撃を受ける 隊員Aが慌てて言う
「バ、バイちゃんっ だから その言い方は 誤解を招くってっ!」
隊員Cが青ざめて言う
「お、お前ら やっぱり…っ!?」
隊員Aが慌てて否定して言う
「ち、違うっ違うっ!」
隊員Bが言う
「えー?違うってー?つまり アッちゃん 俺との仲は遊びだったって事ー?俺 信じてたのにー?」
隊員Cが衝撃を受ける 隊員Aが怒って言う
「バイちゃんっ!」
隊員Bが笑う
「にひひっ」

【 ハブロス家 サロン 】

アリアがサロンに現れて言う
「お父様!」
アースが振り向くと アリアがエリーナの手を引きながらやって来る アースがエリーナを見てからアリアを見て言う
「随分と仲が良いみたいだな?まるで 姉妹の様だ」
アリアが一瞬驚きエリーナを見てから嬉しそうに言う
「はい!光栄ですわっ!お父様っ!」
アースが微笑する ファーストが苦笑して言う
「しかし 姉妹と言うのなら どう見ても アリアの方が妹に見えるな?」
アリアが言う
「もうっ お兄様ったら アリアに意地悪ばっかり!」
アースが軽く笑ってから言う
「同じ遺伝子情報を使っているとは言え 悪魔の兵士は 根本的な肉体はデフォルトのままだ 女性型とあっても 通常の3倍もの筋力があるのでは 可愛気も無くなる …アリアの方が妹に見えるという事は それだけアリアが愛らしいという事だろう?ファーストは アリアを褒めているんだ」
アリアとファーストが一瞬驚き顔を見合わせた後 アリアが喜んで言う
「まぁっ!そうでしたの?アリアはすっかり誤解をしてしまって 失礼をいたしましたわっ お兄様!」
ファーストが苦笑してアースへ言う
「父上…」
アースが微笑して言う
「私はお前の 魂の言葉を伝えたまでだが?」
アリアが微笑してファーストを見る ファーストが僅かに頬を染め顔をそらす エリーナが沈黙している

【 政府警察本部 応接室 】

ラミリツが言う
「…では 仕方が無い 今回は急過ぎると言うのもあるし イベントは… 強行しよう」
ナックキラーのバンドメンバーが喜んで叫ぶ
「よっしゃあっ!」 「ひゃっはーっ!」 「流石 攻長閣下っ!話が分かるぜっ!」
警察長が慌てて言う
「しかしっ 攻長閣下っ!?」
ラミリツが言う
「その代わり 作戦を用意する そちらを 貴方方にも協力してもらいたい」
皆が疑問する ナルが言う
「作戦…?」

【 ハブロス家 サロン 】

アリアが歌を歌っている ファーストが悩んだ後言いながら駒を動かす
「この陣営なら… 何処から来られてもっ!」
ファーストが駒を置き顔を上げると 一瞬驚き苦笑する アリアが歌いながら顔を向け 気付くと歌を止めて言う
「…あっ!お父様っ!」
ファーストがアリアを見て言う
「ほら やっぱり… お前が歌うと 父上は睡魔に襲われてしまうんだ だから この対局が終わるまで 待ってくれと言ったのに…」
アースが居眠りをしている アリアが不満そうに言う
「だってぇ~ お兄様 悩んでばかりで 中々 終わらなそうだったのですもの… あのまま待っていたら きっと 今夜はアリアのお休みする時間に なってしまっていたわ?」
ファーストが不満そうに言う
「お前は今日は1度 帝国へ父上とご一緒して その時 歌もお聞かせしたのだろう?僕は今日1日 父上がお戻りになるのを この屋敷の中で ずっと待っていたと言うのに」
アリアが一瞬反応してから表情を落として言う
「…ごめんなさい お兄様…」
ファーストが反応し 視線をそらして言う
「…あっ いや… まぁ しょうがない 父上は お疲れなのだろう 今日も結局 あの犯人を捕まえられなかった そして 明日も…?」
ファーストがチェス盤へ視線を向け気付いて言う
「…っ 守りは完璧 そうとなれば… どうやって犯人を捕まえる?捕まえるには こちらから動かないと… でも 動ける駒は…」
ファーストの駒は守りだけで攻撃駒が無い ファーストが悩むと 執事2が現れ執事へ伝える 執事が頷くと アースの近くへ来て言う
「旦那様」
ファーストが顔を上げ不満そうに言う
「おいっ 父上は 今 お休みでっ」
執事がファーストへ微笑し軽く頭を下げて言う
「申し訳ございません ファースト様 しかしながら…」
アースが目を覚まして言う
「…うん?どうかしたか?レミック?」
執事が微笑し軽く頭を下げて言う
「お寛ぎの所 大変申し訳ございません 攻長閣下より 明日の作戦に 追加したい作戦があるとの ご連絡が入っております」
アースが言う
「そうか では…」
アースが立ち上がると アリアとファーストが見詰めている事に気付き 微笑して言う
「アリア お前の歌はやはり心地良い 出来る事なら 夢の中まで連れて行きたいものだ」
アリアが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「はいっ!アリアは お父様がご所望でしたら お父様の夢の中でだって 歌いますわ!」
アースが微笑して言う
「それは嬉しいな?では 今度は 私の夢の中にも お前専用のステージを用意して置こう」
アリアが微笑む ファーストが言う
「と言う事は 攻長閣下の作戦は 明日のイベントの代役に また アリアを使うと言う事ですか?父上?」
アースが言う
「さぁ どうだろうな?明日の作戦… いや 犯人逮捕に置かれる作戦は 政府警察へ一任すると伝えてあるが 明日の音楽イベントは アリアを代役へ立てるには 少々色が合わない …しかし 必要とあれば」
アリアとファーストがアースを見上げると アースがチェス盤を見て微笑して言う
「私の国防軍は 進軍あるのみ 使える駒は全てを扱い 全てを守り …必ず勝つ」
アースが駒を置き立ち去る アリアがアースの立ち去った先を見てからファーストへ向くと疑問して言う
「…お兄様?」
ファーストが呆気に取られていた状態から苦笑して言う
「流石は父上… 歴代国防軍1位と言われる総司令官 …僕はあの背に 追い付けるのだろうか?」
ファーストがアースの居なくなった先を見る エリーナが沈黙している チェス盤にはキングが飛び出し 相手を追い詰めた勝利がある

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

軍曹が敬礼して言う
「少佐ぁーっ!レギスト機動部隊 イベント警備模擬訓練 完了致しましたでありますーっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが言う
「了解 軍曹 では イベント警備模擬訓練の 結果報告を行え」
軍曹が言う
「はっ!報告を致しますっ!模擬訓練の結果 予測負傷者数ゼロ名 共に… 犯人は 取り逃しましたぁーっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルが衝撃を受けてから言う
「…ぐっ …了解」
グレイゼスが笑いを抑える
「プクク…ッ」
隊員Cが隊員たちへ向いて言う
「やっぱり 観客や出演者の保護だけじゃなくて 犯人の拘束へ向かう班を作った方が 良いんじゃないか?これじゃ 明日も…」
隊員たちがハイケルを見る グレイゼスがハイケルを見ると ハイケルが間を置いて言う
「…しかし、模擬訓練とは言え シチュエーションを変え3回行ったそれらに置いて 予測負傷者数は共にゼロ名だ これなら 明日の本番に置いても 保護対象へ対する負傷者を出す可能性は極めて低い そうとなれば 我々国防軍17部隊は 明日もこの作戦を決行する」
隊員たちが顔を見合わせる 隊員Nが言う
「しかし 少佐ぁー?本当にこのままで良いんですか?これでまた 捕まえられなかったなんてなったら…?」
隊員Fが言う
「今回は GPTと合同のレギスト… このスペシャルな2チームで取り逃したとなれば 正直 キツイな…」
ハイケルが言う
「我々 国防軍17部隊の任務は あくまで 観客及び出演者の保護だ 犯人の拘束は 任務に入らない そして…」
隊員たちがハイケルを見る グレイゼスがハイケルを見ると ハイケルが言う
「犯人に関する事は 政府警察へ全面的に協力し委託しろと 国防軍総司令官の命令だ 従って 我々レギスト機動部隊は 犯人の逃亡先や 保持している武器弾薬などの情報 その他 伝えられる情報は全て GPTへ通信連絡をする事で協力をする」
隊員たちが反応して顔を見合わせる ハイケルが言う
「本来であれば 今連絡する事ではないが 明日の無線周波数は 特殊無線周波数を使い レギスト機動部隊だけではなくGPTとも リアルタイムにて通信を行う よって 各自 …無線通信には十分注意を」
隊員Bが言う
「えー?それじゃ 俺の技である 密かに無線スイッチオン作戦は 禁止でありますかー?少佐ぁー?」
隊員Cが怒って言う
「当たり前だろっ!?」
ハイケルが言う
「…無線通信には十分注意を」
隊員たちが衝撃を受け 隊員Nが言う
「2回言った…」
隊員Fが苦笑して言う
「少佐も技を…」
隊員Aが苦笑して隊員Bへ言う
「分かったな?バイちゃん?」
隊員Bが言う
「えー?」
ハイケルが気を取り直して言う
「今日の訓練は これで終了とする 明日は予定通り 13時までに各自装備を整え 車両保管庫へ集合しろ 一時解散」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!了解っ!少佐ぁーっ!」
隊員たちが解散する グレイゼスがノートPCを閉じて言う
「さて それじゃ 俺も一時解散しますか」
ハイケルが言う
「お前たちの方はどうなっているんだ?」
グレイゼスが言う
「うん?」
ハイケルが言う
「トリプルトップシークレットとは言え 順調であるかどうか位は 聞いても良いだろう?」
グレイゼスが苦笑して言う
「うーん そうだなぁ~?それじゃ 言っちまうと… 政府の方は順調で 国防軍の方は… ちょっと 手間取ってる」
ハイケルが不満そうに言う
「おい」
グレイゼスが苦笑して言う
「まぁ そう怒るなよ?こっちの方が 難しい事やってるんだからさ?」
ハイケルが言う
「だったら 久しぶりに レギストの様子を眺めになど 来ている暇は無いのではないのか?」
グレイゼスが言う
「うん… まぁ これにもちょっと 理由があってな…?」
ハイケルが間を置いてから言う
「…何かの作戦か?」
グレイゼスが言う
「いずれ伝える」
ハイケルが言う
「…了解」
グレイゼスが苦笑する ハイケルが立ち去ろうとして止まって言う
「何かあれば…」
グレイゼスが疑問して言う
「うん?」
ハイケルが言う
「俺は お前に味方をする」
グレイゼスが呆気に取られる ハイケルがハッとして羞恥しながら言う
「い、いやっ… だからっ 何か協力出来る事があれば 言えとっ …そ、それだけだっ!」
ハイケルがぎこちなく立ち去る グレイゼスが呆気に取られた後苦笑して言う
「へぇ…?有り難いねぇ?言葉にしなくても 俺の不安を感じ取った …悪魔の兵士は やっぱり 戦いの道具なんかじゃない」
グレイゼスが微笑してから ハイケルを追い駆けて言う
「おーいっ ハイケルーっ!だったら たまには 店に寄ってけってー!お前好みの美味いコーヒー 淹れてやるぞー?」
グレイゼスがハイケルの肩を抱き頭を撫で回す ハイケルが驚き恥ずかしがって言う
「なっ 何をするっ!?止めろっ!わ、分かったっ 寄って行く!だから 止めろと 言っているっ!」
グレイゼスが嬉しそうにハイケルをからかっている ハイケルが困り怒っている

翌日

【 イベント会場 舞台裏 】

ナルがやって来て気付くと 一瞬驚いてから 笑んで言う
「おうっ!レッテかぁ?てっきり 本物のアニキが居るのかと思っちまったぜ!?」
アニキのメイクをしたレッテが振り返り 困って言う
「ナル~ やっぱ無理だ… いくら見た目は誤魔化せても 俺にアニキの真似をしろだなんて…」
ナルがレッテの肩を叩いて言う
「心配するなって?攻長閣下も言ってたじゃねぇか?作戦が終わったら 観客の連中に事情を話して侘びを入れるって」
レッテが困って言う
「そうは言っても 犯人の野郎どもが仕掛けて来るまでは 俺がアニキの真似をしてスペシャルゲストとして1曲キメなきゃいけねぇんだ… その時点でバレて ファンの連中に騒がれたら… 犯人の野郎どもは仕掛けて来ねぇかもしれねぇ… そうなったら?」
ナルが言う
「そうならそうで そのままイベントは続行だ!だから お前は何も心配しねぇで アニキの真似をして最初に1曲キメれば良いんだよ!もしファンの連中が気付いたとしても そのままイベントに突入しちまえば 後はナックソウルで ぶっ飛ばしちまえっ!」
レッテが言う
「でもよぉ… やっぱ自信がねぇよ…」
ナルが困って言う
「なんだよ?そのツラは?そんなんじゃステージに立った時点で 皆にバレちまうぜ?自信持って行けよ!?お前のギターは 今やアニキに匹敵してるんじゃないのか!?」
レッテが言う
「んな事言われたって… そもそも俺とアニキじゃ違い過ぎるんだ 姿や何かじゃない… 言葉では言い表せない その… 俺らナックキラーとしての… 何かがよぉ!?」

【 イベント会場 ステージ前 】

ラミリツが言う
「奴らはいつもイベントが開始されて 1つ目の催しが終わった後 観客からの拍手が起きた直後に犯行を行う だから その最初は1人だけに やってもらう事にしたから …これなら 保護する主催者が少なくなって だいぶ楽でしょ?」
ハイケルが言う
「心遣いは感謝する だが その他のメンバーの保護も やはり行わねばならない その彼らは?」
ラミリツが言う
「本来ならイベントが開始したら 終わりまで舞台裏に居るらしいんだけど 今回は最初の1曲の間だけは 楽屋に待機してくれって言ってある そっちは入り口も1つだし」
ハイケルが言う
「了解 では ステージ上と楽屋それら2箇所と共に 観客たちの保護は我々国防軍17部隊が執り行う …それで そちらの作戦は?」
ラミリツが言う
「うん、僕らの方は…」

【 イベント会場 舞台裏 】

レッテが言う
「やっぱり俺じゃ 敵わないんだよ だからこそナッククルーの連中だって 未だに…」
ナルが言う
「今更 何言ってやがるっ!?攻長閣下に言われた時は あんなに自信たっぷりに ”任せておけ”って言ったじゃねぇえかっ!?」
レッテが言う
「俺はてっきり音源は 攻長閣下が用意してくれると思ったんだっ だから俺はアニキの姿だけを 真似すれば良いと思って…っ アニキの今のツラじゃ この格好は出来ねぇから って事だと…」
ナルが気付いて言う
「あ… ああ、そうか …そうだな?」
レッテが言う
「攻長閣下はアニキと仲が良いんだろ?今回だって その攻長閣下の政府警察と アニキの国防軍が協力してるんだ …だからぁ その上での作戦なら きっと そうなんだろうってよぉ?」
ナルが言う
「…うん だが、もう こうなっちまったら お前が弾くしかねぇだろ?」
レッテが顔を振って言う
「無理だって…っ 俺には出来ねぇよ… 今でもメステゲレンダーは インディーズの音源に敵わねぇんだ それは ファンの連中だって言ってる 俺にはどう足掻いても アニキの代わりは…」
ナルが表情を落として言う
「レッテ…」
アースの声が聞こえる
「それは お前が今でも 俺の真似をしようだなんて つまらねぇ考えで 弾いているからだ」
ナルとレッテが驚き顔を向ける アースがやって来て微笑して言う
「よう?」
ナルとレッテが驚いて言う
「「アニキーーッ!?」」

【 イベント会場 ステージ前 】

ハイケルが言う
「了解 では 犯人に関する情報は 全て無線通信にて伝える …既に隊員らへは その様に説明してあるが」
ラミリツが言う
「そ?ありがと 助かるよ」
ハイケルが言う
「しかし そちらは本当に?その様な後手後手の作戦で 大丈夫なのか?いくら周囲の幹線道路へ検問を設置しようとも 会場内で捕らえられなければ…」
ラミリツが言う
「むしろ逆だよ ここじゃ人が多過ぎる 守るべき人々が多い所で 危険は犯せないだろう?」
ハイケルが言う
「その守るべき人々は 我々国防軍が死守する」
ラミリツが微笑して言う
「分かってる だからこそ本物の犯人… 主犯格は泳がせる 他の犯人たちは きっと 会場内に留まる筈だから …そいつらだって 勿論 逮捕するけどね?」
ハイケルが疑問して言う
「犯人は2グループだという事か?」
ラミリツが言う
「真に実力のある犯人なら 必ず使い捨てにする駒を用意している そして その駒たちは派手な動きをするんだ だから そっちには惑わされない事 …これ 大物を捕らえる時の鉄則!」
ハイケルが言う
「…そうなのか」
ラミリツが微笑して言う
「そう言う事!でも こっちは僕らに任せておいてよ?ね?」
ハイケルが頷いて言う
「了解」
ラミリツが頷いて言う
「うん!それじゃ!」
ラミリツが腕時計を確認してから立ち去る ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「レギスト機動部隊 周辺状況の報告を」
イヤホンに隊員たちの声が聞こえる
『こちらレギストA班!会場メインゲート前 異常なし!』 『同じくB班!会場サブゲート前 異常なし!』 『同じくC班 会場西方位 異常なし!』 『同じくD班 会場東方位 異常なし!』
ハイケルが言う
「レギスト機動部隊 各班了解だ 間もなく開場10分前となる レギスト機動部隊各班は イベント会場内へ移動 会場内の最終チェックを行え」

【 イベント会場 舞台裏 】

アースが微笑して言う
「攻長閣下から追加の作戦を聞いて 様子を見に来てみたのだが やはりな…?」
レッテが言う
「助かったぜ!本物が来てくれたって事は 俺はこれで!?」
アースが苦笑して言う
「おいおい 作戦を受け入れたのは お前だろう?まさか土壇場で 逃げ出すつもりか?」
レッテが驚いて言う
「えぇえっ!?い、いやっ だってっ アニキっ!?」
アースが微笑して言う
「最初から ”レッテ1人のギターソロステージを用意する”と そうしていたのなら何の問題も無かったものを ”スペシャルゲストのアニキを演出させる”と その様な作戦を立てられてしまったのではしょうがない …作戦は決行する」
ナルが言う
「決行するって?それじゃ…?」
アースが苦笑して言う
「当初のお前の憶測通り 音源だけは俺が受け持とう そして… 表向きの姿の方は 頼んだぞ?」
レッテがホッとしてから微笑して言う
「なんだ そう言う事か… ああっ!そっちは任せておいてくれ!何しろ俺は 今まで ずっと!」
ナルが苦笑する アースが言う
「だが、今回限りだ」
レッテが疑問して言う
「え?」
アースが言う
「これが終わったら 今後は二度と ”アニキの真似をしよう”なんて考えるなよ?姿は勿論 ギターパフォーマンスも … ナックキラーのギターは ”レッテに変わった”んだ 何時までも 過去を引きずる必要は無い お前は お前のままで行けば良いんだ」
レッテが驚き呆気に取られる アースがナルを向いて言う
「そうだろ?ナル?」
ナルが呆気に取られた後苦笑し頷いてから言う
「…ああ そうだな?」
ナルがレッテへ向いて言う
「レッテ 今回でアニキの真似や身代わりとはオサラバだ この凱旋は俺らナックキラーの 新しい出発点にしよう!」
レッテが言う
「ナル…」
アースとナルがレッテを見て頷く レッテが頷いて言う
「分かったよ 有難う ナル… アニキ…」
アースとナルが微笑する アースがレッテの肩を叩いて言う
「最後の代役だ しっかり頼むぜ?」
レッテが頷いて言う
「任せてくれ 15年間 アンタを追い続けて来た 俺の終わりと始まりのステージだ!」
アースが微笑する

【 イベント会場 】

観客たちが入り ステージが整っている

【 イベント会場 舞台袖 】

レッテがギターを握って言う
「…よしっ」
レッテが立ち上がると 警備に就いているハイケルがイヤホンを押さえて言う
「こちらレギスト隊長 イベント準備が完了した 間もなく開始される」
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『こちらGPT隊長 レギスト隊長 了解だ GPT各班は 最初の催しとその後に向けて 最大警戒をっ!』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「レギスト機動部隊各班も 同様に」
イヤホンに隊員Bの声が聞こえる
『了解!少佐ぁーっ!』
ハイケルが頷いた後レッテを見る レッテがギターの準備をしてから 機材のスイッチを2つオフにして 振り返りハイケルの後ろを見る ハイケルが疑問して振り返ると エリーナβが居るハイケルが驚いて言う
「お前はっ!?何故 ここにっ!?」
エリーナβがぎこちなく言う
「『総司令官 命令 …だ』」
ハイケルが反応して言う
「…デコイか?」
エリーナβが沈黙する レッテがステージへ出て行くと歓声が上がる ハイケルがそちらへ向くと エリーナのイヤホンからアースの声が聞こえる
『スイッチは確認したか?』
エリーナβが言う
「『問題ない』」
ハイケルが疑問して振り向くと エリーナβがレッテがオフにしたスイッチを1つ上げる ハイケルが驚いて言う
「お、おいっ!?何を勝手にっ!?」
エリーナβが言う
「『作戦 …だ』」
ハイケルが疑問して言う
「作戦?総司令官の… か?」
歓声が上がる ハイケルがハッとしてステージへ向くと レッテが拳を突き上げた状態からギターを構える ハイケルの横に人影が立つ ハイケルが振り向くと一瞬驚いて言う
「レッテっ!?何故!?どういう事だ!?」
レッテに扮したアースが ハイケルを見て微笑する エリーナβが言う
「『作戦 開始』」
ステージのレッテがギターを弾くのと同時に 舞台裏でアースがギターを弾く アースがギターを弾きながらエリーナβへ向く エリーナβが言う
「『了解』」
エリーナβがスイッチをもう1つオンにする アースがステージへ向かう ハイケルが呆気に取られて見送る

【 イベント会場 ステージ上 】

スピーカーから2つのギター音が鳴る アニキに扮したレッテが一瞬驚いて言う
「なっ!?何で!?スイッチは切ったのに 俺の音まで?…っ!?」
ステージにレッテに扮したアースがギターを弾きながら現れる レッテが驚くと 観客たちが喜んで叫ぶ
「レッテーっ!」 「アニキーっ!」 「最高ーっ!」
レッテがハッと気付いて言う
「まさかっ アニキ!?」
アースが微笑してギターを弾く レッテが慌ててギターを弾く 2つのギターでアレンジされた曲が弾かれ 観客たちが喜ぶ レッテが慣れると拳を突き上げて叫ぶ
「ナックキラーッ!」
観客たちが叫ぶ
「最高ーっ!!」
レッテの真似をして叫ぶ振りをしていたアースが 笑んでレッテを見る レッテが笑う

【 イベント会場 警備サイド 】

隊員NとVが大喜びで叫ぶ
「おおぉおっ!最高ーっ!」 「アニキとレッテの最強コンビが 手を組むなんて 今日のイベントは 最高ー!」
隊員Fが苦笑して言う
「おいおい… 曲が終わった今こそ 最大警戒だぞ?お前ら…?」

【 イベント会場 舞台袖 】

ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「レギスト機動部隊各班 状況をっ!」
イヤホンに隊員たちの声が聞こえる
『こちらレギスト機動部隊A班 異常なし!』 『同じくB班 異常なし!』
イヤホンに隊員Fの声が聞こえる
『同じくC班 異常な…』
イヤホンに隊員NとVの叫び声が混じる
『最高ー!』 『アニキもレッテも 最高ーっ!』
ハイケルが言う
「どうした?C班?」
イヤホンに隊員Fの声が聞こえる
『C班 異常なしでありますっ!…こらっ お前らっ!』
ステージ上では レッテとアースが握手をしている ハイケルが言う
「よし 各班 最大警戒態勢を維持しろ ステージ上 異常なし」
エリーナβが言う
「『総司令官 …は 私が 警護する』」
ハイケルが疑問して言う
「”総司令官は”だと?どういう意味だ?」
エリーナβがハイケルを見る

【 イベント会場 ステージ上 】

アースが観客席を見てハッと気付くと 舞台袖へ向けて言う
「エリーナっ!」
エリーナβが瞬時に走り出す ハイケルが驚いて言う
「今の声はっ!?」
銃声が鳴る 観客たちが悲鳴を上げる ハイケルがハッとして慌ててステージへ向かって走る

観客たちが驚く レッテに扮したアースの前で エリーナβが身を盾にして銃弾を防ぐと ステージへ向かって来た犯人たちを素手で退治する 犯人が驚いて言う
「ば、馬鹿なっ!?銃弾を受けた筈なのにっ!?」
レッテが驚いていると アースがレッテをかばって言う
「下がって居ろ …エリーナ まだ行けるか?」
エリーナβが格闘しながら言う
「『視界 低下… 損傷ランク BランクからCランクへ移行 …応援を要請する』」
アースがハイケルへ向いて言う
「ハイケル少佐!」
ハイケルがハッとして言う
「りょ、了解っ!」
ハイケルがエリーナβと共に犯人たちを退治する 軍曹が走って来て叫ぶ
「少佐ぁーっ!」
ハイケルが軍曹へ言う
「軍曹!演出者2名の保護だっ!」
軍曹が叫ぶ
「了解っ!少佐ぁーっ!」
軍曹がアースの前に盾を構え 振り向いて言う
「案ずるなっ!お前たちは 必ずや 自分が死守するのであるっ!」
アースが言う
「アーヴィン GPTは どの様に動いている?」
軍曹が一瞬疑問してレッテとアースを交互に見てから気付いて言う
「む?兄貴…?こちらのアニキが 兄貴では無いと言う作戦は 聞いていたのだが… なるほど?では 先程の演奏は録音ではなかったのか?…それにしても 何故 兄貴がレッテの格好を?」
アースが微笑して言う
「それは こちらの作戦だ… それで?GPTは?」

【 イベント会場 観客席 】

主犯がステージ上の光景を見て舌打ちをして言う
「くっ… デコイの使えない ハイケル少佐が警備に就いているからと 襲撃メンバーをステージへ向かわせたが 2世代目の悪魔の兵士まで構えていたとは 誤算だった…っ」
無線に犯人たちの声が聞こえる
『どうする?俺たちも行くか?』
主犯が言う
「いや 作戦は中止 撤退方法も変更だ まずは いつもの様に狙いを観客たちへ向けろ 奴らがそちらの警備へ向かうのを確認したら 銃を撃ち鳴らし 十分威嚇をしてから引き上げろ」
無線に犯人たちの声が聞こえる
『分かった』
周囲で銃声が鳴り響く 観客たちが悲鳴を上げる 主犯が逃げ出す

【 イベント会場 ステージ上 】

ハイケルが犯人らを退治すると エリーナβが脱力して倒れる ハイケルが振り向くと エリーナβが言う
「『任務 完了…』」
エリーナβが青白い炎に焼かれて白い灰になる アースが近くへ来て言う
「良くやった 任務達成ランクはSランク 上出来だ」
ハイケルがアースを見ると アースのイヤホンに エリーナの声が聞こえる
『まだ 任務は終わっていない』
アースが微笑して言う
「私からの命令には 十分な働きをしてくれたと 褒めてやったんだ …素直に喜べば 可愛げもあると言うもの」
イヤホンにエリーナの沈黙が聞こえる アースが苦笑して言う
「ふっ… 遠慮せずに ”悪かったな”と 言っても良いのだぞ?」
イヤホンにエリーナの声が聞こえる
『そうか ”悪かったな”』
アースが苦笑する ハイケルがアースの様子を見た後 観客側へ向き イヤホンを押さえて言う
「レギスト機動部隊 各班 状況を 応援が必要な箇所はないか?」
イヤホンに隊員Bの声が聞こえる
『こちらレギストA班!状況 大丈夫でありまーす!少佐ぁー!』
ハイケルが言う
「大丈夫とは?それでは 状況の説明になっていない ”大丈夫である”と判断される その内容を伝えろ」

【 イベント会場 A班 】

隊員Bが観客たちを庇いながら言う
「はーっ!ではー ”大丈夫である”の 内容はーっ」
隊員Bの前でGPT隊員たちが 次々と犯人たちを格闘術で押し倒し手錠を掛けている 隊員Bが喜んで言う
「GPTの隊員たちが 目の前で ジャンジャン犯人たちを 逮捕しているでありまーす!少佐ぁーっ!」

【 イベント会場 ステージ上 】

ハイケルのイヤホンに隊員Bの声が届く
『…でもって あんまりにも そんなんだから 俺らちょっと 立場無しでありまーす!少佐ぁー?』
イヤホンに隊員Aの怒った声が聞こえる
『バイちゃんっ!』
イヤホンに隊員Bの声が聞こえる
『だってー ホントの事だし~?』
ハイケルが言う
「状況は把握した レギスト機動部隊は引き続き 観客及び演出者の保護を」
イヤホンに隊員Bの声が聞こえる
『了解ー!少佐ぁー!』
ハイケルが言う
「共に ゲート前の各班は ゲートの封鎖を続行 万が一抜け出そうというものが現れたら…っ」
イヤホンに隊員Cの声が聞こえる
『少佐ぁーっ!こちらメインゲート前 B班!武器を所持した者が3名 ゲートを強行突破しようとしているであります!捕らえますかっ!?』
ハイケルが言う
「いや お前たちは動くな …GPT!」
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『こちらGPT隊長 通信は届いている メインゲート前 GPT3班 起動!』
イヤホンにGPT3の声が聞こえる
『GPT3班 了解!武器を所持した者3名を 確保します!』
イヤホンに隊員Cの声が聞こえる
『少佐ぁー!更に3名ゲートを抜けようと言う者が!こっちは武器を所持している様子はありません 観客かもしれません!?』
ハイケルが言う
「よし、では そちらは お前たちが確保 確認をしろ!レギストB班 起動!」
イヤホンに隊員Cの声が聞こえる
『了解 少佐ぁー!』
ハイケルが言う
「観客の可能性と共に そちらに扮した 犯人であると言う可能性もある 油断はするな」
イヤホンに隊員Iの声が聞こえる
『少佐ぁー!こちらサブゲート前 D班!観客と見られる者が ゲートを抜けようとしています!』
ハイケルが言う
「D班了解だ レギストD班 起動!その者の確保・確認を行え!」
イヤホンに隊員Iの声が聞こえる
『了解!少佐ぁー!』
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『同じくサブゲート前のGPT4班 レギストD班の状況を確認 万が一の際は お前たちも動ける様 備えを!』
イヤホンにGPT4の声が聞こえる
『こちらGPT4班!レギストD班が相手をしている 観客に見える者の様子が不審です こちらも起動の許可を!』

【 イベント会場 サブゲート前 】

隊員Iが言う
「すまないがイベントが終了するまで ゲートは開けられないんだ 事前に説明があったと思うけど 犯人たちはもう捕らえられているから 大丈夫で…」
観客Aが言う
「お前たちなんかじゃ 頼りにならないって言ってるんだ そこを退けっ!」
隊員Vが苦笑して言う
「でも もう 犯人たちは捕らえられてるんですから イベントだって続行されますよ?…チケット取るの大変だったでしょう?」
観客Aが言う
「イベントなんて どうでも良いんだっ 退けと言っているっ!」
隊員Vが呆気に取られて言う
「どうでも良いって… 競争率50倍のチケットを取ったてぇのに…?」
GPT4が来て言う
「ちょっと 失礼 そちらの方 申し訳ないが チケットの確認を…」
隊員Iと隊員VがGPT4を見る イヤホンにハイケルの声が聞こえる
『レギストD班 任務をGPT4班へ移行しろ』
隊員Iがイヤホンを押さえて言う
「レギストD班 了…」
観客Aがチケットを出そうとしていた様子から 急に手を振り払って逃げ出す 隊員Iと隊員Vが驚いて言う
「あっ!?」 「逃げたっ!?」
GPT4が追い駆ける 隊員Iがイヤホンを押さえて叫ぶ
「少佐ぁあっ!対象が逃げましたぁーっ!」
隊員Vが隊員Iへ向いて言う
「俺たちも 追い駆け…っ!」
イヤホンにGPT14の声が聞こえる
『こちらGPT14班 逃亡者を追います!』
白バイがサイレンを鳴らす イヤホンにハイケルの声が聞こえる
『レギストD班!お前たちは待機だ!』
隊員Vと隊員Iがハッとして 隊員Iが言う
「了解 少佐っ」
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『そちらは僕らが追うっ!GPT14班!応答を!』
イヤホンにGPT14の声が聞こえる
『こちらGPT14班 ターゲットをロックオン 追走良好 いつでも捕らえられます』
隊員Fと隊員Iが呆気に取られて顔を見合わせる イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『GPT14班了解だ 検問まで距離が短い 直ぐに確保を』
イヤホンにGPT14班の声が聞こえる
『GPT14班 了解 対象を確保します』
イヤホンに隊員Cの声が聞こえる
『少佐ぁーっ!』

【 イベント会場 ステージ上 】

ハイケルのイヤホンに隊員Cの声が聞こえる
『こちらメインゲート前 レギストB班!観客と思われる5名がゲートを強行突破!』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「レギストB班了解だ 観客と思われる者は 全て先にお前たちが…」
軍曹の後ろでイヤホンを聞いているアースが観客たちを見る 観客たちはレギスト隊員たちに守られた状態で GPTの活躍に楽しんでいる様子 アースが目を細めて言う
「この現状で あえて人気の少ない会場外へ 逃げ出そうなどとする観客… いや?ナッククルーなど… 居るとすれば そいつは…」
アースがハイケルを見る ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「サブゲート前 D班も同じく まずはお前たちが…」
アースのイヤホンに隊員Iの声が聞こえる
『少佐ぁー!こちらD班!今また3名の観客がゲートを!どうします?もうイベントは再開ですよね!?強引に連れ戻しますか!?』
ハイケルが言う
「観客に対しての暴力行為は許されない イベント入場ルールの説明を行い それに則った行動を依頼し…」
アースが軍曹へ向いて言う
「アーヴィン」
軍曹が疑問して振り返って言う
「む?何であるか?兄貴?」
アースが軍曹へ伝える 軍曹が驚く ハイケルが表情を困らせイヤホンを押さえて言う
「…しかし それは入場時に説明してある 従って」
軍曹が慌てて言う
「はぇえ!?じ、自分が 少佐にっ!?…ムグッ!」
ハイケルが一瞬後方の軍曹を気にするが 再びイヤホンに集中する アースが軍曹の口を押さえた状態で密かに言う
「アーヴィンっ お前も一応はレギスト機動部隊の副長だろうっ!?副長とは 隊長の補佐をすると共に 時には作戦に対する進言も許される立場だ お前には何十年経とうが 出来ない事だと分かっているが 今この場所でこの格好では 私が総司令官としてハイケル少佐へ命じる事は出来ないっ」
軍曹が困って言う
「う、うむ… それはそうかも知れぬが… しかし 兄貴 自分が少佐に命令をするなど…っ」
アースが言う
「だから 進言をしろと言っているっ ナックキラーのファンである お前ならっ 奴らナッククルーの気持ちも分かる筈だ!ナックソウルのあるあいつらが 既に大半が捕らえられているイベント襲撃犯などに 怯えて逃げ出そうなどとする筈が無い!今のあいつらには それこそイベント襲撃犯どもを一発殴ってやろうと言う 熱いソウルがあるっ!」
軍曹が観客たちを見る 観客たちが盛り上がり一部がイベント襲撃犯たちへ殴りかかろうとするのをレギスト隊員たちが押さえている 軍曹が言う
「う、うむ… 確かに…」
アースが言う
「では ハイケル少佐へ伝えるんだっ アーヴィンっ 命令だっ!」
軍曹が言う
「う、うむ …了解なのだ 兄貴!」
軍曹がハイケルへ向かいながらふと気付き 疑問しながら言う
「…と それならもう 兄貴がその様に 少佐へ直接 命令してしまっても 良い様に思うのだが… …少佐ぁっ!」
軍曹がハイケルへ敬礼する ハイケルが呼び声に振り返って言う
「どうした 軍曹!?襲撃犯は捕まりつつあるが 油断はするなっ」
軍曹がハッとして言う
「りょ、了解っ!…と そ、それから~ で、ありますね…?」
ハイケルが疑問して言う
「何だ?任務中の連絡事項は 単純明確に伝達しろ」
軍曹がハッとして慌てて敬礼して言う
「はっ!了解!では、お伝えいたしますっ!少佐ぁっ!単純明確に 結論から申しますと!現状のイベント会場から逃げ出す者は 全て犯人と断定して捕らえろ!との事であります!少佐ぁーっ!」
ハイケルが言う
「了解っ!ではGPT!」
ハイケルが呼んだ後ハッとして疑問する イヤホンからラミリツの声が聞こえる
『通信は聞こえていた!GPTゲート前 各班!逮捕作戦 第二段階開始っ!会場から逃げ出す者は 全て 逮捕ーっ!』
イヤホンからGPT隊員たちの声が聞こえる
『『了解!隊長っ!』』
ハイケルが呆気に取られてから言う
「あ… いや?…良いのか?それで…?」
軍曹が呆気に取られたまま言う
「さぁ…?」

【 イベント会場 観客席 】

ラミリツがイヤホンを押さえて言う
「イベント会場外 GPT各班 状況を!」
イヤホンにGPT10の声が聞こえる
『こちらGPT10班!メインゲートを抜けた 5名を確保しました!』
イヤホンにGPT15の声が聞こえる
『こちらGPT15班!サブゲートを抜けた 6名を確保しました!』
ラミリツが言う
「GPT10班15班 共に了解だ 引き続きゲートの警戒を行いつつ その者たちの所持品検査を行え その他GPT各班は会場内で捕らえた犯人らを輸送トラックへ」
逮捕された犯人たちが連行されて行く ファンたちが騒いでいる ステージ上にナックキラーのメンバーが揃い ナルが叫ぶ
「ナックソウルのある てめぇらと 警備に就いていた国防軍!更には 犯人逮捕に駆けつけた 攻長閣下の政府警察!この3つが揃えば 恐いものなしってもんよ!野郎ども!景気付けに1曲キメるぜ!もちろん その曲はーっ!?」
観客たちが叫ぶ
「「メステゲレンダーッ!」」
自分のメイクに戻ったレッテがギターを掻き鳴らす ステージの演出が始まり 曲が開始される 観客たちが盛り上がる

【 イベント会場 舞台袖 】

ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「レギスト各班 警戒態勢を維持しろ」
イヤホンに隊員Bの声が聞こえる
『了解!少佐ぁーっ!』
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『GPT各班 同じく 警戒態勢を維持!』
イヤホンにGPT隊員の声が聞こえる
『了解!隊長!』
ハイケルが横を向くと レッテの姿をしたアースがステージを見て微笑する ハイケルがステージのレッテを見てからアースを見て言う
「貴方は… 一体?」
アースがハイケルを見てから苦笑して言う
「秘密 だ」
ハイケルが驚くと アースが立ち去る ハイケルが言う
「ま、まさか…っ!?」
軍曹がやって来て言う
「少佐ぁ!自分は この場所の反対側の舞台袖にて 構えますっ!」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「軍曹」
軍曹が向かおうとしていた身を止めて言う
「…はっ!?少佐っ!」
ハイケルが言う
「君は確かナックキラーのファンだったな?それも 特に ギターの…?」
軍曹が微笑して言う
「はっ!自分はナックキラーのギターで活躍していた アニキのファンでありました!…あ、もちろん今でもナックキラーのファンではありますが …やはりアニキが居りました あの頃の方が…」
ハイケルが言う
「その アニキとは まさか…?」
軍曹が微笑して言う
「はっ!アニキは兄貴であります!」
ハイケルが困惑しながら言う
「そ、そうか… そうなのか…?まさか 本当に…?」
軍曹が笑んで言う
「はっ ”まさか 本当に” であります!しかし そちらの事は秘密でありますので 自分が万が一うっかりにも 人前で 呼んでしまっても気付かれぬ様にと 兄貴はアニキなのであります!」
ハイケルが言う
「…そうか そう言う事か」
軍曹が言う
「はっ!少佐ぁ!では 自分は対側へ向かいます!」
軍曹が立ち去る ハイケルが言う
「…なるほど 国防軍のトリプルトップシークレットにも なる訳だな?」
ハイケルがアースの去った先を見る イヤホンに隊員Bの声が聞こえる
『少佐ぁ!こちら レギストA班!』
ハイケルがハッとしてイヤホンを押さえて言う
「レギストA班 どうしたっ?」

【 イベント会場 観客席 】

隊員Bがイヤホンを押さえて言う
「観客の中に 不審な人物が居るとの事でありますー 少佐ぁー?でもって その”不審な人物”とされる理由はー?俺にはちょっと分からないでありま~す 少佐ぁー?」
イヤホンにハイケルの声が聞こえる
『どうした バイスン隊員っ?作戦時の伝達事項は…』
隊員Bが言う
「はーっ!少佐ぁーっ!単純明確に伝えたいのでありますがー ナッちゃんが 間違いなく 不審だって言うんでありますー 少佐ぁー?」
イヤホンにハイケルの声が聞こえる
『では ナクス隊員の言葉を そのまま復唱しろ 特殊無線周波数は各班リーダーのマイクしか拾わない A班のリーダーはお前だ バイスン隊員!』
隊員Bが言う
「はーっ!了解でありまーす!少佐ぁーっ!…って事で ナッちゃん?俺なんて伝達したら良いのぉー?」
隊員Nが振り返って言う
「だから言ってるだろ!?あいつには ナックソウルが足りない!いや!まったく 感じられないんだっ!」
隊員Bが困って言う
「だからその ナック何とかってー 俺分かんないしー?多分そのまま伝えたんじゃ 少佐や無線を聞いてるGPTにも 分かんないよー?」
隊員Nが怒って言う
「ここに居る 野郎どもを見れば分かるだろ!?ナックキラーファンでありながら 競争率50倍のチケットをゲットしやがった コイツらが!?ナックキラーの魂の曲である このメステゲレンダーを聴いて!あんなスカしてなんか居られるかって言うんだぁあっ!?うおぉおー!ナックキラー!最高ーっ!」
曲の盛り上がりに 思わず隊員Nが観客と投合する 隊員Bが呆気に取られて言う
「えー?あー… えーっとぉー…?」
隊員Aが言う
「バイちゃん つまり 任務中のナクス隊員さえ叫んじゃう様な この状態で まったく その音楽に盛り上がっていない あの観客は怪しいって事だよ」
隊員Bが言う
「と言う事でありますー!少佐ぁー?」
イヤホンにハイケルの声が聞こえる
『アラン隊員 了解だ』
隊員Aが衝撃を受けて言う
「え!?聞こえてたのかっ!?」
イヤホンにハイケルの声が聞こえる
『…しかし 騒ぎを起こした訳でもなく 更には ゲートを突破しようとした訳でもない …ただ曲に盛り上がっていないという事が理由では 現状その者へ対し 何らかの手段を講じると言う訳には…』
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『いや 逮捕だね』
隊員Aが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?」
隊員Bが呆気に取られる 隊員Nが叫ぶ
「よっしゃぁあっ!逮捕だぁあ!」
隊員Aが慌てて隊員Nを押さえて言う
「ま、待てっ!ナクス隊員!大体 俺たち国防軍には 逮捕の権限は無いからっ!それに 少佐も言った通り 逮捕権限のある政府警察だって 一体どんな罪状で!?」
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『罪状なんて 後で何とでもするよっ この曲で盛り上がらないなんて そいつは 十分 怪しい!そいつは 即 逮捕っ!』
隊員Aが衝撃を受けて叫ぶ
「攻長閣下ぁーっ!?」
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『レギストのバイちゃん隊員 対象の居場所を伝達してくれ!共に 近場のGPT隊員は現場へ急行をっ』
隊員Aが呆れて言う
「本気なのか…?」
ステージ上でナルが叫ぶ
「ナックキラーッ!」
観客たちが叫ぶ
「「最高ーっ!!」」
曲が終わる 観客たちが盛り上がる GPT7班が隊員Bの下にやって来る GPT7が言う
「対象は何処にっ?」
隊員Aが言う
「あ、ああ そこの… あっ ちょっと 今見えないな!?この奥13番目の席に居る…」
隊員Nが叫ぶ
「ナックソウルの足りねぇ あの野郎だっ!さっさと とっ捕まえてくれっ!なんなら 俺がっ!」
隊員Bが隊員Nを押さえて言う
「ナッちゃんっ だから駄目だってー?」
隊員Aが言う
「バイちゃん ナイス!」
隊員Nが叫ぶ
「うおぉおーっ!離せー!バイちゃん隊員っ!」
観客たちが僅かに落ち着くと GPT7が言う
「13番目と言うと あの… 少し空いている辺りか?」
隊員Aと隊員Bが呆気に取られ言う
「あ、あれ…?」 「居なくなっちゃったー?」
隊員Nが叫ぶ
「おらあぁあっ!逃がしてたまるかーっ!何処行ったぁあーっ!?」
隊員Nが走り去る 隊員Bが言う
「あっ!ナッちゃんっ!少佐の命令無しで 持ち場を離れちゃ駄目だってーっ」
GPT7がイヤホンを押さえて言う
「隊長っ!申し訳ありません 対象を見失いました!」
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『何だってーっ!間違いない そいつが主犯だっ!そうだって僕の魂が叫んでいる!何があろうと 絶対 そいつを逮捕するーっ!』
隊員Aが呆気に取られて言う
「いや… 叫んでるのは魂じゃなくて 攻長閣下の口だと思うけど…」
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『だから レギストのアラン隊員!対象の特徴を伝達!言われなくても 対象を確認したお前が さっさと伝えろよ!?』
隊員Aが衝撃を受けてから慌てて言う
「は、はいっ!そうですね すみませんっ えっと 対象は… 衣服は黒を基調とした全体的に目立たない服装で… って言うか 何で俺?しかも 名前で呼ばれたし…!?」
隊員Bが言う
「でもって 帽子をかぶっててー なんだか 体調悪いみたいに 青白い顔しててー?」
隊員Aが隊員Bの言葉に言う
「あぁ… そう言えばそうだったな?…って言うか だから ノリが悪かったんじゃないのか?」
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『GPT各班っ 対象の特徴は把握したか!?直ぐに 周囲を確認っ!』
GPT7がイヤホンを押さえて言う
「了解 隊長!周囲を確認します!」
イヤホンにハイケルの声が聞こえる
『レギスト各班も 班員の内1名は対象の探索へ その他の者は引き続き観客の保護 及び 周囲警戒を』
隊員Aがイヤホンを押さえて言う
「了解 隊長!…じゃ無かった 少佐ぁ!…って 俺 今日はリーダーじゃなかった」
隊員Bが笑って言う
「にひっ… って言うか 俺たちの班は ナッちゃんが探索に行っちゃったから 俺たちは引き続き観客の保護と警戒で 良いよねー?アッちゃんー?」
隊員Aが言う
「ああ、良いんじゃないか?それで?」
イヤホンに隊員Nの声が聞こえる
『こちら レギスト ナクス隊員!対象を発見!メインゲート前!』
隊員Aと隊員Bが反応して 隊員Bが笑んで言う
「ナッちゃん 今日はノリノリだねー!?」
隊員Aが苦笑して言う
「ああ、今日は最初から張り切ってたからな?…って ほら バイちゃん?特殊無線周波数は リーダーしか通信出来ないんだから…」
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『レギスト ナクス隊員 了解だ!GPT探索班!メインゲート前へ急行!』
イヤホンにGPT隊員の声が聞こえる
『了解!隊長!』
隊員Aが呆気に取られて言う
「…って 聞こえてる?」
隊員Bが笑んで言う
「にひ…っ 実は 無線は全員特殊無線周波数で マイクも繋がってて スイッチさえ押せば 繋がるんだよ~?今朝 少佐に聞いたんだー?でも 秘密だよー?アッちゃん?」
隊員Aが苦笑して言う
「何だ そう言う事かよ… それじゃ リーダー用だって わざわざイヤホン渡したのだって 本当は意味が無かったじゃないか?」
隊員Bが言う
「うん!けど 最初から全員同じだって言っちゃうと 無線が混線するから その対策なんだってさ?」
隊員Aが言う
「なるほど それじゃ 俺も その話は聞かなかった事にするよ じゃないと何かある度に 思わず少佐へ報告しちゃいそうだからな?」
イヤホンにGPT隊員の声が聞こえる
『こちらGPT探索班!対象と思われるものが複数居て 絞り込めません!更なる対象の特徴を求めます!』
隊員Aと隊員Bが反応する 隊員Aが考えて言う
「更なる特徴か… えっと… 確か身長は…」
イヤホンにハイケルの声が聞こえる
『アラン隊員 対象の更なる特徴を 追加連絡しろ』
隊員Aがハッとしてイヤホンを押さえて言う
「はっ!少佐っ!更なる対象の特徴は まず 身長は…っ!」
隊員Bが笑って言う
「にっひひっ やっぱり 少佐もアッちゃんも頭じゃなくて… 無意識に 通信出来ると思っちゃってるんだねー?これじゃ 俺がリーダーに指名された理由 無しって感じー?」
隊員Aが続けて言っている
「それから 髪の色は…っ」

【 イベント会場 メインゲート前 】

ラミリツが走って来て言う
「GPT何してるっ!?まだ 対象を逮捕したという連絡が 入っていないよっ!?どうなってるのっ!?」
GPT7がラミリツへ振り返って言う
「申し訳ありません 攻長閣下 追加の特徴であります 身長約170センチ前後 細身で 髪色がダークブロンドの者と言うのは もっとも アールスローン国民男子には多い 標準的な特徴でありますので それに…」
GPT8が言う
「どう言う訳か 急に体調を崩したような者たちや 疲れを見せた観客が大勢…っ」
ラミリツが言う
「ナックキラーのライブでは 良くある事だよ 代表曲のメステゲレンダーを生で聴けたと 脱力する者やヘッドバンギングで疲れ切った者が 救護室や人気の少ないゲート前で休憩するんだ 対象は 恐らくそれを知っていて…」
イヤホンにGPT4の声が聞こえる
『こちらGPT4班!』
ラミリツがイヤホンを押さえて言う
「GPT4班 どうしたっ?」
イヤホンにGPT4の声が聞こえる
『ゲート外に メステゲレンダーを聴けたから もう良いと 調子が悪いので帰るという観客が… チケットも保持しております イベントルールに置いても 体調不良による退場は許可されておりますし… どうしたら?』
ラミリツが困って言う
「犯人である可能性は 限りなく高い… しかし 決定打が…っ …分かった 取り合えず 私が確認をするまで待たせる様に もしその間に抵抗したら 業務執行妨害で逮捕を」
イヤホンにGPT4の声が聞こえる
『了解!隊長!』
ラミリツがメインゲートへ向かって走る 隊員Nが走って来て言う
「くそっ 後一歩の所で 急に居なくなって…っ もう 外に行ったのか!?」
イヤホンにハイケルの声が聞こえる
『GPT隊長 必要とあれば 犯人を確認した隊員を向かわせるが?』
隊員Nがイヤホンを押さえて言う
「少佐ぁー!俺が行きます!今すぐっ!」
隊員Nがラミリツの向かったメインゲートへ向かう

【 イベント会場 メインゲート 】

GPT4が言う
「今確認をするので もう少しだけ待っていて下さい」
観客Aが言う
「分かりました… それなら すみません ちょっと ゲートの外で 空気を吸わせてください 中は凄い熱気で… 正直もう 吐きそうで… う…っ」
GPT4が反応して言う
「あ…っ そうですね では 取り合えず ゲートは開けますから 少し 外で…」
ゲートが上がり 観客Aが言う
「有難うございます… 助かります」
GPT4が苦笑して言う
「いえ… こちらこそ 調子の悪い所 待たせてしまって 申し訳…」
観客Aがゲートを出た所へラミリツが走って来て言う
「何してるんだっ?ゲートは開けないようにって!」
GPT4が言う
「ゲートの先には 14班がバリケードを構えていますので」
隊員Nが走りながらハッとして言う
「そいつだっ!そいつが!さっきのっ!」
GPT4とラミリツが驚き隊員Nを振り返る 観客Aが逃げ出す GPT4がハッとして言う
「あっ!」
ラミリツがハッとして言う
「待てっ!」
ラミリツが追い駆ける 観客Aが凄い速さで走る GPT4と隊員Nが驚いて言う
「なっ!?」 「速ぇえっ!?」
GPT14班リーダーが叫ぶ
「総員 構えーっ!」
観客AがGPT14班のバリケードを飛び越える GPT14班が驚いて言う
「なあっ!?」
ラミリツが追い駆けて来て叫ぶ
「まあてぇええーっ!」
GPT14班が慌てて道を空ける ラミリツが突っ切る 隊員Nが呆気に取られて言う
「って… 攻長閣下も はえぇえ…?少佐と良い勝負かも?」
GPT4が苦笑して言う
「隊長は この15年間 無敗の犯人追走グランプリ勝者ですから きっと 大丈夫です!」
隊員Nが呆気に取られて言う
「犯人追走グランプリ…?」
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『こちらGPT隊長っ 作戦は第三段階へ移行!同時に現時刻を持って GPTの指揮権を GPT副隊長シュナイゼルへ委託する!』
隊員Nがイヤホンに意識を向ける

【 イベント会場 ステージ袖 】

ハイケルのイヤホンにシュナイゼルの声が聞こえる
『こちらGPT副隊長シュナイゼルです GPT指揮権の移行を 受託します!』
イヤホンにラミリツの声が聞こえる
『ハイケル少佐!悪いけど 後はGPT副隊長と作戦の続行を!…シュナイゼル!GPTを頼んだよっ!』
イヤホンにシュナイゼルの声が聞こえる
『了解 隊長!』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「こちらレギスト隊長 GPT指揮権移行の旨 了解した」
イヤホンに回線の切れた音が聞こえる ハイケルが言う
「あちらは 他にも作戦を備えていたという事か… 確かに 主犯は泳がせ 人の少ない会場外で捕らえると言っていたが… では これも作戦通りなのか…?」
ハイケルがメインゲートの方を見る

【 道路 】

観客Aが走りながら携帯端末を見て言う
「主幹線道路は全て封鎖か… ふっ …ただ 逃げるだけと思ったかっ?馬鹿な連中めっ  そんな奴らに制裁を与えるには …よし ここならイベント会場の それ以上の効果だっ!」
観客Aが走る ラミリツが追い駆けながら言う
「このルートは… 思った通りっ エリーナの情報が役に立ったよ!」
ラミリツのイヤホンにエリーナの声が聞こえる
『情報の共有は 当然 …だ』
ラミリツが微笑して言う
「仲間 だからね!」
エリーナが間を置いて言う
『…そうだな』
ラミリツが走り抜ける

【 教会 】

観客Aがドアを開け広げる 教会の中ではパイプオルガンの演奏とソロの声楽が歌われている 観客Aが走って向かうと 歌っていた幼女を人質に取ってナイフを向けて言う
「動くなっ!」
ナイフの先 ラミリツが立ち止まる 観客Aがナイフを幼女へ向けて言う
「元は政府の管轄である 教会で… そこを孤児院として経営する国防軍 …この下級な教会は 正にお前たちの 現状の様だな?」
ラミリツが言う
「その両者に守られる子供へ武器を向けると言う事は お前は政府と国防軍に加え このアールスローンの女帝陛下の民へ対しても 武器を向けているという事になる …お前の望みは何だ?」
観客Aが言う
「俺の望み…?俺は… 俺はもう 何も望んではいない」
ラミリツが言う
「何だって?」
観客Aが言う
「俺は… 俺たちはもう 何もしなくとも やがてその時は訪れる… 俺はその前に 愚かなお前たちへ この世界の現状と それを隠し 更には正義の名の下に購おうとする お前たちの愚かしさを 人々へ教えてやろうと思った… だが…」
ラミリツが疑問して言う
「精神異常者か…?…分かった お前の話は聞こう だから その子は離すんだ 例え 政府や国防軍… その他 お前の気に入らない者たちが 何であろうとも 何も知らない無垢な子供に 罪は無い筈だ」
観客Aが言う
「罪…?そうだな 罪があるのは やはり お前たち… お前でもある!ラミリツ・エーメレス・攻長!」
ラミリツが言う
「僕が?」
観客Aが言う
「そうだっ お前は 総司令官と共に このアールスローンの国民を騙しっ 挙句の果てには 罪深き 皇帝… あの堕天使に協力し 世界の粛清に刃向かおうなどとっ!」
ラミリツが驚いて言う
「お前は…っ?何故その事をっ?」
観客Aが薄ら笑って言う
「本当に 愚かで 救いようの無い連中だ!何も知らずに ただ殺されるだけなら 良かったものをっ!…そうだっ この子供も同じだっ!何も知らないまま… ここで死するべきなのだぁああっ!」
観客Aが幼女へナイフを振り下ろすラミリツが叫ぶ
「逮捕ーっ!」
観客Aが一瞬呆気に取られて言う
「なっ!?」
幼女が観客Aの腕を掴み 背負い投げをして押さえつけると 手際よく手錠を掛ける 観客Aが呆気に取られて言う
「な… に…?」
ラミリツがやって来て微笑して言う
「さて 何でそんな秘密を知っているのか… 詳しい事は 署の方で聞かせてもらおうか?」
観客Aが呆気に取られて言う
「何が… 起きた…?こんな 子供に…?」
ラミリツが幼女へ向いて言う
「上出来だ エリーナ …けど 本体で危険を犯させちゃって ごめんね?痛くしなかった?」
幼女が言う
「問題ない」
ラミリツが微笑する 止まっていた演奏が再び始まる ラミリツが気付き 演奏マリオネットの近くへ行って言う
「折角 老後を満喫してた所 ごめんね エルム …けど 協力を ありがとっ」
演奏マリオネットは無反応に演奏を続ける ラミリツが微笑する 幼女が横目に見てから言う
「”何の話だ?”」
ラミリツが微笑して言う
「うん なら 良いんだ…」
ラミリツが演奏マリオネットを見る 演奏マリオネットは澄まして演奏を続けている

【 イベント会場 ステージ袖 】

ハイケルのイヤホンにシュナイゼルの声が聞こえる
『こちらGPT副隊長 レギスト隊長ハイケル少佐へ GPT隊長からの伝達です』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「こちらレギスト隊長 伝達を頼む」
イヤホンにシュナイゼルの声が聞こえる
『はっ!伝達内容は イベント襲撃犯の主犯とされる 先ほどの者を 無事逮捕したとの事です!』

無線を聞いていたレギスト隊員とGPT隊員たちが喜びを合わせる

ハイケルが一瞬微笑してから気を取り直して言う
「了解 伝達を感謝する では 引き続き レギスト機動部隊は イベントの警備警戒を続行する」
イヤホンにシュナイゼルの声が聞こえる
『了解 GPTも同じく 万が一の 残留襲撃犯へ備えます』
ハイケルが言う
「了解 レギスト各班は GPTへの協力体制を続行しろ」
イヤホンにシュナイゼルの声が聞こえる
『GPT各班も 同じく レギストへの協力を』
ハイケルが頷いてから ステージへ視線を戻す ステージ上ではライブが続けられている

【 国防軍総司令本部 】

アースが電話をしている 受話器からラミリツの声が聞こえる
『けどさ?流石に 怒られちゃうかと思ったよ いくら悪魔の兵士でも デコイと同じ年齢になるまでは 本体に無理は禁止だもんね?』
アースが言う
「ほう?そうなのか?」
ラミリツが言う
『あれ?もしかして 知らなかった?』
アースが言う
「生憎 私が知る事が出来るのは アーヴァインの持つ 初世代の悪魔の兵士の情報だけだからな?」
ラミリツが言う
『そ?けど 今は もう 2世代目の悪魔の兵士の情報だって 読み解けるんでしょ?なんて言ったって そっちには アールスローン戦記の原本が 2つともあるんだからさ?』
アースが言う
「確かに そうではあるが アリアはまだ 原本の読み方が分かっていない アーヴァインと同じ方法では 読み解く事は出来なかった」
ラミリツが言う
『え?そうなの?』
アースが言う
「今までは さして急ぐ理由も無かった事から 無理に調べ上げようとはしなかったのだが…」
ラミリツが言う
『捕らえた犯人は 今も事情聴取をしてるけど でも 黙秘してるって言うか… 精神状態が正常じゃなくて それでも あいつが口にした事は…』
アースが言う
「そちらの内容は 国防軍と政府  両者における トリプルトップシークレット… そして このアールスローン帝国に関わる 重大な秘密だ 何処から漏洩したのかを 調べ上げる事は勿論だが 現状の我々を超える情報を口にしたとなれば… 我々も 更なる情報を調べ上げなければならない」
ラミリツが言う
『皇帝から 直接 聞く事は出来ないの?』
アースが言う
「如何に原本を与えた 皇帝その人であっても そこに記された内容を知る事は出来ないとの事だ 内容は… このアールスローンの地に生き続けようと模索した 我々の先祖の知識 それは 皇帝の知る範囲ではない」
ラミリツが言う
『そうなんだ… それじゃ…?』
アースが言う
「何とかして近い内に 原本を読み解く方法を調べ上げる それまでは現状を維持だ」
ラミリツが言う
『分かった …こっちも 犯人から聞き出せるかどうか やってみるから …お互いに報告を!』
アースが言う
「そうだな …それから 警備体制を強化して置け こちらもその様にする」
ラミリツが言う
『そっか 分かった 強化させる』
アースが言う
「戦力に不足があれば」
ラミリツが言う
『うん 分かってる GPT以外は 国防軍の部隊の方が 対戦能力は高いからね?』
アースが微笑して言う
「そう言う事だ」
ラミリツが言う
『あ、…その代わりさ?もし 捕まえたい奴が居たりしたら こっちに依頼してよね?』
アースが苦笑して言う
「ああ、分かっている …こちらには 犯人逮捕の権限が無いからな?」
ラミリツが言う
『能力もでしょ?』
アースが言う
「言ってくれる」
ラミリツが言う
『ふふっ それじゃ!』
アースが言う
「ああ」
アースが受話器を置くと 顔を向けて言う
「…で、折角なら その本体の方ででも 報告に来てもらいたかったのだがな?」
エリーナが言う
「”無理だな”」
アースが苦笑して言う
「…ふっ まぁ良い 攻長閣下から伺う所では 機動部隊の制服を着せるには 抵抗がある程の普通の少女だそうだが その様な姿を見せられては 次にまた そのお前を盾にする事に 私も抵抗を覚える事も有りそうだ」
エリーナが間を置いて言う
「”悪かったな”」
アースが苦笑した後言う
「ああ、それで良い …それと 改めて 国防軍の入隊試験を 受け直した と言った事か?その心意気は評価しよう 国防軍の部隊… 特に レギスト機動部隊に置いて 最も重要な意識だ ”任務は…”」
エリーナが言う
「”確実に遂行する”」
アースが微笑して言う
「その為には?」
エリーナβが言う
「”手段は選ばない”」
アースが言う
「”上出来だ”」

【 政府本部 攻長室 】

シェイムが表情を引きつらせて言う
「エーメレス 何度も言う様だが あまり ハブロス総司令官とは…っ そもそも お前は 政府の象徴であって 国防軍の… 攻撃の兵士と される事はあったとしても 決して 悪魔の兵士では無いのであって…」
ラミリツが秘書に書類を渡しながら言う
「…これでよし それから 一応 他の犯人たちに対しても 事情聴取をしっかりね?」
秘書が言う
「畏まりました 攻長閣下」
メルフェスが苦笑して言う
「ラミリツ殿は… 聞いて居られませんね?シェイム殿?」
シェイムがテーブルを叩いて言う
「エーメレスっ!」
ラミリツが苦笑して言う
「一応 聞いてるよ 兄上」
シェイムが言う
「一応…っ」
メルフェスが苦笑して言う
「ラミリツ殿…」
ラミリツが言う
「けどさ?もう大丈夫だから」
シェイムが疑問する ラミリツが言う
「僕は 例え何があっても 兄上やフレイゼス… それに 僕を応援してくれる皆が居る このアールスローンを守りたいって そう思ってるんだ その為だったら どんな相手にだって 立ち向かえる」
シェイムが呆気に取られて言う
「エーメレス…」
ラミリツがシェイムを見て言う
「だから 兄上?兄上も 昔みたいに 僕を応援してよ?いつも 父上に叩かれて泣いた時 兄上は僕を応援してくれたでしょ?お前なら出来るって 頑張れって言ってくれたじゃない?僕にとっては あの頃の たった一つの救いだったんだ だから これからも」
メルフェスが微笑してシェイムを見る シェイムが微笑して言う
「ああ、勿論だとも エーメレス 私は何があっても お前なら必ず出来ると 応援を…」
ラミリツの足元にゴ●ブリが通る ラミリツがハッとして足元を見ると ゴ●ブリが見上げる ラミリツが青ざめ 悲鳴を上げる
「ぎゃあぁああーっ!!出たぁああーっ!!」
ラミリツがシェイムに抱き付いて言う
「ゴ、ゴ●ブリっ!ゴ●ブリがっ!兄上ぇえーっ!」
シェイムが呆れて言う
「エ、エーメレス…」
ラミリツが泣きながらシェイムに縋る メルフェスが呆気に取られて言う
「ラミリツ殿…?」
シェイムが呆れ困って言う
「エーメレスは 男子の割りに 虫が苦手なのです 特に この… ゴ●ブリと言う奴が」
メルフェスが苦笑して言う
「な、なるほど…?まぁ それら昆虫の中に置いても これを好む方は 中々居られませんが…」
ラミリツが叫ぶ
「助けてーっ エリーナー!」
エリーナβが無表情に新聞紙でゴ●ブリを退治する メルフェスが言う
「おお!流石は 悪魔の兵士 おみごとです!」
ラミリツがホッとする シェイムが咳払いをして言う
「う、うんっ エーメレス?私は お前なら出来ると 応援を したいのだが?」
ラミリツが苦笑して言う
「あ、いや… そこは 応援してくれなくても 良いから…  えっと~ あ、あれ~?書類は~?どこだったっけ…?」
TVにラミリツがモデルのCMが流れている シェイムが言う
「…君、この事は 政府のトリプルトップシークレットだ 良いな?」
秘書が苦笑して言う
「…畏まりました」
メルフェスが苦笑して言う
「なるほど そう言った事も トリプルトップシークレットに なっていたのですね…?」

【 ハブロス家 アリアの部屋 】

アリアが言う
「それから 他には?攻長閣下のお屋敷では エリィは どの様な事をしていたのでして?」
エリーナβが言う
「”ゴ●ブリ退治”…だ」
アリアが疑問して言う
「ゴ●ブリ?そちらは何ですの…?」
アリアが執事を振り返る 執事が苦笑して言う
「はい、そちらは… 昆虫の一種に御座いまして 民家に置きましては割りと多く寄生しておりますものかと… このハブロス家にも きっと 何匹かは居ると思われますが 常に清潔を保ち そう言った害虫が寄生しない様にと 使用人一同 心掛けております」
アリアが言う
「まぁ そうなのでして?それでは 攻長閣下のお屋敷の使用人たちは そちらの心掛けが足りないのかしら?」
エリーナβが言う
「先ほども 遂行した」
アリアが言う
「あら?…では 攻長閣下はもう お屋敷に?…お父様より お早いのね?」
エリーナβが言う
「攻長閣下は 現在 政府本部 攻長室内 …だ」
アリアが言う
「政府本部に?では そちらにも ゴ●ブリ殿はいらっしゃるの?」
エリーナβが言う
「奴らは 神出鬼没 …だ 従って 命令も 唐突に行われる 個室へ入室した際は 必要な武器の所在を 把握する事が重要」
アリアが言う
「必要な武器…?ゴ●ブリ殿には 武器が必要なのでして?」
エリーナβが言う
「武器は… これが 最適 …だ」
エリーナβが新聞紙を丸める アリアが呆気に取られて言う
「まぁ…」
執事が苦笑する アリアが喜んで言う
「凄いわ エリィ!悪魔の兵士に掛かれば その様な紙の筒さえ 武器になるのでしてね!?」
エリーナβが言う
「攻長閣下を救出する 重要な武器 …だ」
アリアが言う
「攻長閣下を 救出?」
アリアがTVモニターを見る モニターにはラミリツがモデルのCMが流れている エリーナβが言う
「…政府のトリプルトップシークレット だ」
アリアが疑問する 執事が苦笑する 新聞にはイベントの記事が載っている

【 国防軍レギスト駐屯地 休憩所 】

TVニュースでイベント事件の事が言われている
『…と 一時は騒然となったイベント会場も 会場警備に就いていた 国防軍の部隊と 今後の合同任務へ向け 試験的に導入されていた 政府警察特殊機動部隊 GPTの迅速なる対処にて 犯人らはその場で取り押さえられると共に 観客に扮し会場外へ逃亡を企てようとした犯人らも 両部隊の協力の下 間もなく逮捕されたとの事です』
隊員Nが喜んで言う
「おお!俺たちの活躍が 早速ニュースになってるぜ!」
隊員Bが言う
「けどー?なんだかー ちょっと足りなくないー?いつもなら GPTだけじゃなくて 俺たちの事だって レギスト機動部隊って 言われるのにー?今日は 国防軍ってー?」
隊員Aが言う
「それは バイちゃん 今回のイベント警備が 元々国防軍だったから その部隊名までは強調しないんだよ」
隊員Bが言う
「えー?」
隊員Cが言う
「それに 今回 こっちは特別レギストだから 凄い!なんて強調される様な事も してないしな?」
隊員Bが言う
「そうかなー?だって 今日も少佐が1人で ステージ上の敵を 全員倒したんでしょー?」
隊員Cが言う
「え?そうだったのか?」
隊員Nが言う
「俺は 正直 自分の担当してた観客たちの保護で そこまで見てる余裕が無かった」
隊員Aが言う
「ああ 俺も… 特に後半なんて 観客たちが犯人らに襲い掛かりそうで 正直 どっちを守ってるんだか 分からなくなってた程だったよ?」
隊員Bが言う
「あー それは俺もさぁー?少佐の事を直接 見てる余裕は無かったけどー 元々ステージ上は 保護対象が1名だけだって理由で 少佐と軍曹だけだったでしょー?でー?軍曹は戦えないから 実質 犯人たちを倒したのは 少佐だけかなーって?」
隊員Cが言う
「そう言う事かよっ」
隊員Aが言う
「けど、流石バイちゃん!少佐の事になると 詳しいよな?情報から状況を把握出来るなんて 大した者だよ」
隊員Bが苦笑して言う
「えー?そんな 褒められると… 俺 もっと アッちゃんの事 好きになっちゃうよー?アッちゃんー?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「う…っ いや、それは…」
隊員Cが青ざめて言う
「や、やっぱりっ お前らっ!?」
隊員Aが慌てて言う
「だ、だから 誤解するなって サキッ!バイちゃんが言ってる 好きとかっていうのは そう言う事じゃなくて!」
隊員Bが疑問して言う
「えー?」

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】

TVでイベント事件のニュースがやっている ハイケルがそれを見た後軽く息を吐き ノートPCを操作して言う
「任務は成功 負傷者は無し… …”アレ”も負傷者に入るのだろうか?…いや 向こうは向こうの作戦だったのだろう それに アレは 我々レギスト機動部隊の保護対象者ではなかった …と言う事は やはり 任務達成ランクは Sランク …か?」
ハイケルがノートPCを操作して言う
「任務達成ランクは 隊員のあいつ等にとっての 昇給昇格の参考となる …悪魔の兵士である私にとっては 昇給や昇格など もはや どうでも良い事だが あいつらの隊長である私は その為にも 部隊に置ける達成ランクを 可能な限り引き上げてやらなければ…」
ハイケルがノートPCを操作していると 放送が鳴る
『ピンポンパンポ~ン♪国防軍17部隊隊長 ハイケル少佐 ハイケル少佐 至急 司令室へお越し下さい 繰り返します 国防軍17部隊隊長 ハイケル少佐 ハイケル少佐 至急 司令室へお越し下さい』
ハイケルが顔を上げて言う
「…司令室か?バックス中佐には 任務報告を済ませたが 達成評価は後ほど伝えると… 恐らくGPTとの連携に置かれる評価も加わるのだろう …特に問題は無かったと思うが わざわざ 司令室へ呼び出されるというのは 少し気になる所だな… あの場所には とても 嫌な記憶が…」
ハイケルの脳裏に1千6百万の支払いを請求された記憶が蘇る ハイケルが一瞬青ざめた後顔を振って気を取り直して言う
「いやっ 何を今更!俺はもう  それら大金にだって 怯える必要は無い筈だっ 俺は ハイケル・ヴォール・アーヴァイン!ハブロス家の御曹司である 軍曹の養子だっ 1千6百万だろうが1億6千万だろうがっ!お… お父様が支払ってくださるっ!」
ハイケルが立ち上がって言う
「…よし 行くぞっ」
ハイケルが職務室を出て行く

【 国防軍レギスト駐屯地 休憩所 】

軍曹がくしゃみをする
「へぇ~くしっ!」
隊員Xが言う
「風邪でありますか?軍曹?」
軍曹が鼻をすすりながら言う
「うむ?いや!自分は 馬鹿である為 風邪は引かぬ筈なのだが?」
隊員Nが言う
「それじゃ 誰かが 噂でもしてるのかもっ!?」
隊員Bが言う
「誰かってー?」
隊員Nが困って言う
「え?そりゃぁ~ 色々居るだろう?なんてったって 軍曹は 防長閣下でもある訳だし… あっ ほらさっ!?」
隊員NがTVを指差す 映像にはラミリツがモデルになっているCMが流れている 隊員Nが言う
「ひょっとして 攻長閣下の次は 軍曹が TVCMに出るようになったりして!?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えぇえーーっ!?じ、自分がっ!?」
隊員Nが面白そうに言う
「きっと TV局のプロデューサーとかがさ?噂してるんじゃねぇ!?次は 防長閣下だー!とかって!?」
軍曹が慌てて否定して言う
「い、いやあっ!じ、自分にはっ むむむっ 無理であるっ!自分はこう見えても 恥ずかしがり屋のあがり症なのであるっ!ラミリツ攻長の様に カメラの前で カッコを付けるなど 自分にとっては それこそ柔軟と同じくらい 無理なのであるっ!」
隊員Nが笑って言う
「冗談だって!軍曹?」
軍曹がホッとして言う
「ホッ… 何だ… 冗談であるのか… それなら実に 良かったのである…」
隊員Aが苦笑して言う
「ナクス隊員…」
隊員Nが言う
「それに どっちかっつったら 国防軍の英雄とか言われてる ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐の方が モデルには選ばれそうだし~?なぁ?」
隊員Aが言う
「おい それは いくらなんでも 軍曹に失礼だろ?」
軍曹が言う
「いや!自分は それで まったく持って 構わないのだ!それに 少佐が国防軍の英雄とされるのは 自分は実に嬉しいのである!そもそも少佐は それこそ ラミリツ攻長の様に 大いに持て囃されても 当然なのだ!何と言っても 少佐は このアールスローンを守る 悪魔の兵士なのである!」
隊員Bが言う
「そうそうー!少佐は 真に不甲斐なく申し訳ない 初世代の悪魔の兵士で やっぱ 俺たち レギスト機動部隊の隊長だしー!」
隊員Aが言う
「バイちゃん… その言い方じゃ 少佐の事 褒めてるんだか 貶してるんだが 微妙だって」
隊員Bが言う
「えー?俺は 全面的に 褒めてるんだけどー?」
軍曹が言う
「うむ!バイスン隊員の気持ちは 良く分かるのだ!自分も 少佐は いくら 真に不甲斐なく申し訳ない 初世代の悪魔の兵士であっても やはり 自分らの世代の悪魔の兵士にして 自分らの レギスト機動部隊の隊長であると思っているのだ!うむ!それで何も 問題はない のである!」
隊員Aが言う
「い、いや… だから…」
軍曹が言う
「しかし、今日は そんな少佐の下へ 真に優秀な2世代目の悪魔の兵士が 初世代の悪魔の兵士である少佐には 逆立ちしても出来ぬ真似である デコイを遠隔操作して現れたのだ!その彼女が来なければ 兄貴は襲撃犯の銃弾に倒れていた可能性が 実に高いのである!そうとなれば やはり 2世代目の悪魔の兵士は優秀にして あの技は 素晴らしいのである!」
隊員たちが一瞬の沈黙の後言う
「「…えっ?」」
軍曹が疑問して言う
「む…?」

【 国防軍レギスト駐屯地 司令室 】

ハイケルが呆気に取られて言う
「…えっ?」
アースが微笑して言う
「聞こえなかったか?では もう一度言うが ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐 本日現時刻を持って お前を 国防軍17部隊 通称 レギスト機動部隊から 除名する」
ハイケルが驚いたまま言う
「わ… 私… が…?で、では レギスト機動部隊は?その隊長は?…まさか 軍曹が!?」
アースが苦笑して言う
「まさかな?あいつは お前の下に付く事を 好む程度の者だ 一部隊の隊長など… 増して レギスト機動部隊の隊長など 勤まる筈がない」
ハイケルが言う
「では 一体 誰がっ!?」
ドアがノックされる アースが言う
「入れ」
ドアが開かれる ハイケルが驚いて言う
「お前はっ その格好はっ!?何故…っ!?」
エリーナがレギスト隊長の制服を着て立っている アースが苦笑して言う
「ほう?馬子にも衣装と言った所か?少々若過ぎるが 良く似合っている」
ハイケルがアースへ向いて言う
「総司令官っ!?まさかっ!?」
アースが言う
「本日の試験導入で分かった事だ やはり 人身を守る レギスト機動部隊の隊長には 複数のデコイを遠隔操作出来る 2世代目の悪魔の兵士が 相応しい」
ハイケルがアースへ掴み掛かって言う
「そんな理由でっ 俺を レギストからっ!?」
アースが言う
「何が”そんな理由”だ?ハイケル少佐」
ハイケルが疑問する アースが言う
「あの時 エリーナが盾にならなければ イベント演出者であった 舞台上の2名 …内1名は確実に被弾していた お前は 遅かった」
ハイケルがハッとして言う
「そ、それは…っ」
アースが言う
「どのような理由があるにしろ あの銃撃を彼女が防がなければ 彼女の後ろに居た演出者は負傷していただろう …レギスト機動部隊に求められるモノはなんだ?ハイケル少佐?」
ハイケルが視線を落とす アースが言う
「任務は確実に遂行する …お前を育て上げたと言う 今は亡きサロス・アレクサー・レーベット大佐も その様に教えたのではないのか?更には 前レギスト機動部隊隊長であり お前と同じく 悪魔の兵士と呼ばれた あのエルム少佐も 同じく …しかし お前には出来ない」
ハイケルが歯を食いしばって言う
「ク…ッ」
ハイケルが手を握り締める アースが言う
「とは言え お前は 悪魔の兵士ではあるが 初世代のそれだ どうあっても そちらの部分に置いては 2世代目の悪魔の兵士に引けを取る事は否めないのだろう 従って 私は 2世代目の悪魔の兵士である エリーナ・アリア・ヴォール・ライトニア少佐へ そちらの任を与え お前を レギスト機動部隊 及び その隊長から 除名する 異論があると言うのなら 聞くが?」
ハイケルが悔しさを押し殺して言う
「…異論は …無い」
バックスが表情を落とす アースが言う
「結構 では 早速彼女へ レギスト機動部隊 隊長の任を引き継いでくれ 国防軍の部隊に休業は無い 引継ぎは迅速に 最低限で良い 今日中に終わらせてくれ」
アースが立ち上がって言う
「エリーナ少佐 引継ぎが完了したら まずは私へ そちらの報告を行なえ」
エリーナが言う
「了解 総司令官」
アースが微笑してから 一度ハイケルを見て立ち去る バックスがハッとしてからアースへ敬礼した後 ハイケルを見る エリーナがハイケルへ向いて言う
「総司令官命令 …を 実行しろ」
ハイケルが間を置いて言う
「…了解」
ハイケルが一度部屋を出ようとしてから バックスを振り返り 一時の後 敬礼して言う
「失礼致します」
バックスが表情を落とし頷いてから敬礼して言う
「…うむ 総司令官命令を …それと 何かあれば 私の下へ来給え ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「…了解」
ハイケルが部屋を出て行く エリーナが続く バックスが表情を落として言う
「まさか… この様な事になるとは …私は 何も出来ないのか?このままでは…っ 私は レーベット大佐に 合わせる顔が無い…っ」
バックスが制服にあるレギストの印を握り締める

【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの執務室 】

ハイケルが部屋へ入りエリーナが続く ハイケルが言う
「…と 言われたが あまりに唐突過ぎて 一体何から引き継いだら良いのか…?」
エリーナが言う
「この部屋の暗証番号を」
ハイケルがハッとして言う
「そうだったな… つい 何時もの癖で… 出入り口ドアの暗証番号は9766842 …それから端末認識コードはGGA3762 パスコードは…」
エリーナが黙って聞いている

【 国防軍レギスト駐屯地 休憩所 】

隊員たちと軍曹がTVを見ている 軍曹がふと思い立ち疑問しながら胸を押さえる 隊員Xが言う
「軍曹…?やはり 何処か調子が?」
隊員たちが軍曹を見る 軍曹が言う
「あ~?いや… 調子と言うか… 何と言うか 妙に胸が苦しいのだ… 何か物悲しい様な…?」
隊員たちが疑問して言う
「え?」
隊員たちが顔を見合わせて言う
「何かあったっけ?」 「任務は成功したしGPTとの協力もばっちり!」 「きっと達成ランクはSランク!今年のボーナスも上がりそうだな!?」
隊員たちが盛り上がる 軍曹が言う
「う、うむ… そうであるな?なのに 何やら…?」
隊員たちが疑問する 軍曹が立ち上がって言う
「よしっ では 自分は 少佐の下へ 何かご指示等は無いかと 伺って来るのである!」
隊員たちが軽く敬礼して言う
「了解 軍曹ー!」
軍曹が立ち去ろうとする 隊員が言う
「何だ 軍曹は少佐が居なくて 寂しかったのか?」 「あーそれなら 俺も俺もー!」 「バイちゃんは 少佐が好きだなぁ?」 「うん!大好きー!」 「お、おい…っ」
軍曹が驚き立ち止まって言う
「しょ、少佐っ!?」
隊員たちが軍曹の声に再び軍曹を見て驚く 休憩所を出ようとした軍曹の前に ハイケルがエリーナと共に居て ハイケルが言う
「やはり 何を置いても 先に 伝えるべき事がある」
エリーナが言う
「総司令官命令は… ”引継ぎは迅速に 最低限で良い”…だ」
ハイケルが言う
「最低限と言うのなら 尚更 重要な事だ レギスト機動部隊ならば」
エリーナが沈黙する 軍曹が呆気に取られつつ言う
「しょ、少佐!?一体 何事で…っ!?そ、それにっ …彼女の姿は まるでっ!?」
隊員たちが顔を見合わせ 隊員Fが言う
「コスプレ …じゃ ないよな?」
隊員Bが疑問して言う
「コスプレってー?アッちゃんー?」
隊員Aが慌てて言う
「バイちゃんっ!今だけは ちょっと黙っててっ!」
隊員Bが言う
「えー?今こそ 俺の出番だと思うんだけどー?」
ハイケルが言う
「レギスト機動部隊 隊員のお前たちへ 伝える事がある」
隊員たちがしんと静まる ハイケルが言う
「お前たち レギスト機動部隊の隊長は… エリーナ・アリア・ヴォール・ライトニア少佐へと 引き継がれた」
隊員たちが驚き息を飲む ハイケルが言う
「私は レギスト機動部隊から 除名処分となった …今まで 世話になったな」
隊員たちが言う
「少佐っ!?」 「少佐ぁーっ!?」
隊員Fが言う
「少佐っ!嘘ですよねっ!?そんな冗談は 笑えないですよっ!」
隊員Eが言う
「そうですよ!そんな冗談なんかっ!」
エリーナが言う
「”冗談”ではない レギスト機動部隊の隊長は 先ほど 私が 総司令官により 任命を受託した」
隊員Bが言う
「そんな…っ そんなっ 少佐ぁー!?だって ハブロス総司令官は 少佐の ご家族でっ!?軍曹だってっ!」
軍曹が言う
「少佐っ!自分がっ!」
ハイケルが言う
「止めろ 軍曹」
軍曹が言う
「しかし 少佐っ!!」
ハイケルが言う
「総司令官の判断は正しい 私では レギスト機動部隊の任務は 成功させられない …奴に エルム少佐に警告された事は この事だった… 私は 甘いんだ… だから 咄嗟の判断に 己の身を犠牲に出来ない」
隊員Aが言う
「そんな事はありませんっ!少佐っ!少佐は以前 俺たち全員を守る為にっ!」
隊員Bが言う
「そうだよ!少佐は あのプロイム駐屯地の別荘で キャッチアンドリリースを成功させて 俺たちや第7部隊の隊員たちを守ってくれたんだし!?」
隊員Cが言う
「そうですよっ!帝国での任務の時だって 俺と兄貴を守る為に 死ぬまで戦ってくれましたっ!」
ハイケルが言う
「それはっ!保護の対象者が お前たちだったからだっ 私は…っ お前たちを守る事しか 出来なかった… それだけでは レギストの隊長は務まらない…っ」
エリーナが言う
「それが 人の限界 …だ 私であるなら それ以上が 可能」
ハイケルが苦笑して言う
「…そうだろうな 私は レギストの隊長としても 悪魔の兵士としても …欠陥品だ」
隊員たちが言葉を飲む 隊員Fが言う
「そんな…」
隊員Cが言う
「嘘だろ…?」
ハイケルが苦笑して言う
「…以上だ よく考えれば これ以上にもこれ以下にも 引き継ぐ事などは何も無い …ハブロス総司令官へ 引継ぎの完了を伝えろ レギストの任務には スピードも重要だ」
エリーナが言う
「そうだな 内容は兎も角 予測より完了時間は大幅に速まった 評価されるだろう」
エリーナが軽く顔を上げる

【 車内 】

アースの隣のシートに座っているエリーナβが言う
「『総司令官命令 レギスト機動部隊隊長の引継ぎ …は 完了した』」
アースが書類から視線を上げて言う
「うん?もう か?」
エリーナβが言う
「『完了した』」
アースが苦笑して言う
「そうか 随分と速かったな?まぁ お陰で…」
車が総司令本部の前に到着する ドアが開けられるとアースが出ながら言う
「こちらの処理も スムーズに済むと言うものだ… この時間の無い時に助かった …うん?」
アースの前に バックスが居て言う
「総司令官 どうか 一時でも お話のお時間を…っ!たかが1駐屯地の 中佐軍階の自分めには 到底許される事では無いと 心得ておりますが どうか…っ!」
バックスが頭を下げる アースが呆気に取られた後微笑して言う
「もしやと思うが 先ほどの ハイケル少佐の辞令の件か?」
バックスが言う
「はい」
アースが言う
「分かった …だが 私は今忙しい 話なら作業の合間に 聞かせてもらうと言う事となるが?」
バックスが言う
「構いません」
アースが微笑して言う
「そうか それなら… しかし そうだな?今この時に 貴方が来てくれた事は 丁度良かった バックス中佐」
バックスが疑問してアースを見る アースが微笑する エリーナβが沈黙している

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

エリーナが沈黙している エリーナの前にレギスト隊員2班たちがぎこちなく整列している

【 国防軍レギスト駐屯地 休憩所 】

軍曹がノートPCを操作している レギスト隊員1班たちが軍曹の周りを囲っていて 隊員Xが言う
「軍曹っ 如何でありますか!?」
軍曹が表情を曇らせて言う
「うむ…っ それが…っ 何処を探しても 少佐のお名前が在らぬのだっ」
隊員Xが言う
「そ… それではっ?」
隊員Bが言う
「あー!でも 俺!聞いた事あるよ!国防軍の情報は 軍階によって見られる範囲が変わるんだって!だから!」
隊員Cが言う
「そっかっ!軍曹は 軍曹だから もっと上の軍階である 少佐の情報は!」
軍曹が言う
「いや それはっ …真に自分は 本来であるなら 少佐の足元にも及ばぬ者ではあるのだが …このIDは 軍曹の自分ではなく ヴォール・アーヴァイン・防長のIDなのである 従って このIDであるなら 国防軍総司令官と同等に 国防軍の情報は全てが閲覧出来るのである …しかし そのIDを使っても 少佐のお名前を 見付けられぬ…」
隊員Cが言う
「それって つまり…」
隊員Aが言う
「少佐は… レギストの隊長だけじゃなくて 国防軍から… 除名された?」
隊員Bが言う
「そんなっ!?何でーっ!?」
隊員Aが表情を落とす 隊員Bが言う
「だって そんなの可笑しいでしょ!?今日だって任務を成功させてっ 今までだって 任務は全部成功させて来たじゃない!?なのに何でっ!?」
隊員Aが言う
「俺に言われても 分からないよ バイちゃん… それに ここに居る皆が 今はバイちゃんと同じだ 俺だって… 答えが分かる奴が居るなら 問い詰めたい」
皆が沈黙する 軍曹が立ち上がって言う
「やはり自分が 行って来るのであるっ!」
隊員Xが言う
「軍曹っ!?」
軍曹が言う
「少佐には 止められたが 少佐をレギストから追放するなどっ 国防軍の… 我々の仲間から除名するなどっ どう考えても 間違っているのである!」
皆が喜んで言う
「「軍曹っ!」」
軍曹が言う
「自分はこれより!総司令官の下へと向かう!お前たちは 再び 少佐が戻るであろう レギスト機動部隊にて 訓練を行い 吉報を待っておるのだっ!」
隊員たちが敬礼して叫ぶ
「「了解!軍曹ぉーっ!!」」
軍曹が言う
「うむっ!」

【 元 ハイケルの隠れ家 】

ハイケルが呆気に取られてから苦笑して言う
「…そうか 政府は再生し 新たな政府国土管理局は とても評判が良い …違法居住者が住まう廃墟など とっくに…」
ハイケルの視線の先 綺麗な住宅街や公園が広がっている ハイケルが息を吐いてから立ち去る

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

軍曹がデスクを叩いて言う
「何故なのだっ!?兄貴っ!?」
アースが一瞬ノートPCを操作する手を止めてから再び再開させつつ言う
「行儀が悪いぞ?アーヴィン それに この作業内容が飛んだりなどしたら… 今日一日の作業が水の泡だ 勘弁してくれ」
軍曹が怒って言う
「そんなものなどよりっ!何故 少佐をレギストから追放したのかとっ!俺はそちらを聞いているのだっ!」
アースが作業をしながら言う
「替わりの隊長ならば 入れただろう?」
軍曹が言う
「自分らレギストの隊長はっ 少佐以外におられぬのだっ!それは 隊員たちだって言っているのであるっ!」
アースが言う
「それでは困るな?国防軍は国家部隊だ 時には異なる隊長の下 任務を遂行する必要もあるだろう ハイケル少佐にしか従えない もしくは ハイケル少佐が居なければ 任務が遂行出来ない などと その様に言われるのではな?」
軍曹が言う
「それは…っ」
アースが言う
「それは 更に言うのであれば 総司令官である 私の命令にも従え無いと言う事だろう?今の様に?」
軍曹が言う
「それは… それは 兄貴が勝手だからであるっ!」
アースが言う
「当然だろう?トップに立つ者が 何かを行うのに 一つ一つ部下へ伺いを立てろというのか?」
軍曹が言う
「そ、そうは言わぬが…」
アースが言う
「共に 任務を遂行させるために 最善の人選を行うのも 上に立つ者の責務 …今回の事も その1つだ」
軍曹が言う
「それならばっ!俺も 国防軍長にして 国家家臣の防長であるっ!従って 上に立つ者として 最善の方法として 少佐の レギスト復帰を提唱するのだっ!」
アースが微笑して言う
「ふん?そうだな?なかなか良い心構えだ 防長閣下」
軍曹が表情を和らげて言う
「ではっ!?」
アースが言う
「しかし 同じ国防軍長ではあろうとも 国防軍の部隊編成や任務 その他 国防軍に関わる全ての事は 総司令官へ一任されている 従って 防長のお前では 国防軍に置かれる総司令官である私の決定を 覆せない」
軍曹が衝撃を受けて言う
「う…っ」
アースが作業をしながら言う
「レギスト機動部隊の隊長は エリーナ少佐だ この決定に変わりは無い 彼女こそ レギスト機動部隊の隊長として相応しい 2世代目の悪魔の兵士なのだからな?」
軍曹が言う
「で、ではっ せめて 少佐を 同じレギストの隊員へっ」
アースが言う
「それでは 部隊の統括が取られなくなるだろう?お前は勿論の事 今もハイケル少佐を慕う隊員たちは エリーナ少佐の指揮の妨げとなる」
軍曹が言う
「で、では…っ 何処か他のっ!?現行の国防軍には 第1部隊から20部隊まで レギストを除いたとしても19の部隊があるのだ その何処かへなら!?」
アースが言う
「それら国防軍部隊の隊員として受け入れようとも 彼は独断行動が多い事が特徴だ 今までの事は勿論だが 元々 初世代の悪魔の兵士には その気が強いそうだ そして 通常の人間が指揮する部隊の隊員としては それは 好ましい事ではない 重要な任務の最中に 命令を聞かず独断行動をされれば その部隊の秩序も乱れる つまり 彼は1部隊の隊員としては使えないと言う事だ」
軍曹が言う
「そんな…っ だからと言って これほど急に少佐を…っ」
アースが言う
「特に驚く事は無いだろう?彼は 悪魔の兵士だ 適材適所の判断の下 一時的に 国防軍レギスト機動部隊の隊長とされ その国防軍レギスト機動部隊の隊長に 本来在るべき 2世代目の悪魔の兵士が就きさえすれば…」
軍曹が怒り アースの胸倉を掴む アースが一瞬驚くと 苦笑して言う
「…機動部隊の隊員として訓練を受けた者が 非戦闘員へ暴力を振るう事は 武器を用いてのそれと同じ… お前は ラミリツ攻長の政府警察に 逮捕されたいのか?」
軍曹が言う
「…少佐を戻してくれ」
アースが言う
「無理だな」
軍曹が手に力を入れる アースが軍曹を見詰める 軍曹がやがて手を離す アースが軽く息を吐き乱れた服を払ってから作業に戻って言う
「国防軍レギスト機動部隊の隊長は エリーナ少佐であり そちらを維持する 変更はない お前も辞めると言うのなら 早々に脱退処理を行う事だ アーヴァイン軍曹」
軍曹が悔しがりつつ部屋を出て行く

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

隊員たちが腕立てをしている エリーナが見ている 隊員たちが顔を見合わせ皆視線を落としつつ 腕立てを続ける エリーナが沈黙している

【 マスターの店 】

ドアが開き来客鈴が鳴ると マリが振り向いて言う
「いらっしゃいませ!喫茶店マリーシアへようこそ!…あっ ハイケル君!いらっしゃい!」
ハイケルが店のドアを押さえていて 店内を見て僅かに驚きつつ マリへ向いて言う
「…あいつは 何時ごろ戻る?」
マリが言う
「マスターなら最近は遅いから 急用なら携帯にメッセージを残して置いたら 良いんじゃないかしら?着信があれば 休憩の時に折り返すって!」
ハイケルが言う
「そうか… 忙しい様だな?」
マリが言う
「うん そうなの!でも マスターも グレイゼスも 今のお仕事は大好きみたいで!何だかいつも楽しそうに 大変だけど 張り切ってるみたい!」
ハイケルが言う
「そうか… では…」
客がマリへ言う
「マリーニちゃん とんかつサンド1つ頼むよ」
マリが言う
「あっ はーい!畏まりました!」
客が言う
「こっちは コーヒーのおかわりね?」
マリが言う
「はいっ ただいま!」
ハイケルが沈黙してから言う
「…お前も忙しそうだな?邪魔をした」
マリが言う
「また いつでも来てね!ハイケル君!」
ハイケルが苦笑して言う
「ああ…」
ハイケルが立ち去る マリが疑問して言う
「あら…?ハイケル君 何だか何時もと違った気もするけど…?」
客が言う
「マリーニちゃん?とんかつサンド焦げてるよ?」
マリが慌てて言う
「きゃぁっ!いけなーいっ!」
客たちが笑う

ハイケルが道を歩いている 公園の前で ふと立ち止まり言う
「俺は… 何処へ行ったら 良いんだ?」
ハイケルの視線の先 白い花が風に吹かれる

【 国防軍総司令本部 前 】

軍曹が携帯で電話をしている 携帯から音声メッセージが流れる
『こちらの番号は 現在使用されておりません 番号をお確かめの上…』
軍曹が携帯のディスプレイを見る ディスプレイには少佐と書かれている 軍曹が携帯を切って言う
「少佐のデータだけではない 携帯も… 少佐ご愛用の携帯は 盗聴防止がなされた 国防軍からの支給品 …少佐は国防軍から除名されたため こちらも使えなくなってしまったと言う事か…」
軍曹が携帯を掛け直す 間もなくして執事の声が聞こえる
『お疲れ様に御座います アーヴァイン様』
軍曹が言う
「少佐は 屋敷に戻られては居らぬか?」
執事が言う
『ハイケル少佐のお戻りは 確認されて御座いません』
軍曹が言う
「そうか… 少佐がお戻りになったら 俺へ連絡をしてくれ」
執事が言う
『畏まりました アーヴァイン様』
軍曹が携帯を切り 考えて言う
「屋敷には戻っていない… 少佐はどちらへ向かわれたのだ?」
軍曹が周囲を見渡してから走って向かう

【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】

エリーナが言う
「通常訓練の1が終了した者は 通常訓練の2を開始しろ」
レギスト隊員2班たちが敬礼して言う
「了解!」
レギスト隊員2班たちが腹筋を開始する エリーナがレギスト隊員1班たちを見る レギスト隊員1班たちが顔を見合わせ 隊員Cが言う
「なんだよ… 俺ら あいつらに負けてるじゃないか?何でだ?」
隊員Bが言う
「なんかー 全然 気合が入らないって感じでー?」
隊員Aが苦笑して言う
「バイちゃんが それを言っちゃうか?」
隊員Bが言う
「えー?だってぇ~?」
隊員Xが言う
「軍曹の号令も無く 少佐の指示もなし… 自分は… なんだか力が入らないであります」
隊員Fが苦笑して言う
「ゼクス隊員に 力が入らないって 言われちゃうとなぁ?」
隊員Nが言う
「俺らは もっとだって… なー?」
隊員Bが言う
「そうそう~?」
エリーナが1班たちを黙って見る 1班たちが衝撃を受け 隊員Cが言う
「何も言わない所が 逆に こえぇ~っ!?」
隊員Fが苦笑して言う
「あぁ… 流石は 悪魔の兵士…」
隊員Aが苦笑して言う
「確かに」
1班たちが腕立てを続ける エリーナが沈黙して見詰める

【 喫茶店 マリーシア 】

マリが言う
「ええ、ハイケル君なら ちょっと前に!」
軍曹が言う
「そ、それでっ!?少佐はっ!?」
マリが言う
「丁度 お店に何時もの常連の方々が来ていたものだから あまりお話が出来なくて… ハイケル君も ”邪魔をしたな”って 直ぐに行ってしまったから 引き止めることも出来なかったの」
軍曹が言う
「そうであるか… その… 何か~?」
マリが言う
「そう言えば 何だか 元気が無かったみたいだけど 国防軍で何か?」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「あっ いやっ そのぉ~っ」
マリが言う
「もしかして~ 任務を失敗しちゃった!なーんて?うふふっ」
軍曹が言う
「い、いや… 少佐に限って その様な事は無いのだが…」
マリが微笑して言う
「そうよね?ハイケル君は スーパーマンなんだから!」
軍曹が言う
「う、うむ… では 少佐は特に…?何処へ行くとか 何とかは…?」
マリが言う
「何かマスターに御用だったみたいだけど 遅くなるって言ったら ”そうか”って?電話をして置いたら良いって 言っては置いたけど?大丈夫だったかしら?」
軍曹が言う
「おお!そうであった!では 自分も!マスターへ 伺ってみるのである!助かったのだ!感謝する!」
軍曹が立ち去ろうとする マリが言う
「こちらこそ!どうか ハイケル君を守ってあげて下さい!防長閣下!」
マリが敬礼の真似をする 軍曹が一瞬驚いた後笑んで言う
「うむ!任せるのだっ!」
軍曹が敬礼を返してから立ち去る マリが微笑して言う
「良かった… 防長閣下が守って下さるのなら… それなら 大丈夫よね?ハイケル君?」
マリが胸を撫で下ろしてから作業へ戻る

【 墓地 】

レーベットの墓標の下に花が投げられる ハイケルがそれを見詰めてから言う
「レーベット大佐… 俺は… レギストを… 大佐に託された国防軍レギスト機動部隊を 守り切れませんでした …すみません 俺は… … 」
ハイケルが間を置いて自問して言う
「…どうしたら良いんだ?今まで レギストを… 国防軍を抜ける事など 考えても見なかった… 俺に出来る事など… 戦う事以外に何がある?…悪魔の兵士は 戦う為に作られたのではなかったのか?」
ハイケルがハッと気付いて言う
「そうか… 2世代目が… 改良された 優秀な2世代目が現れたら それで… 終わり… か」
ハイケルの脳裏に エルムとエリーナの姿が思い出され ハイケルが言う
「俺は あの2人の間を取り持つだけの 隊長だったのか… ならば もう…」
ハイケルが銃を手に取り 国防軍のマークを見詰めてから 自分の頭に突き付け 目をつぶり 指に意識を向ける 

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースが息を吐いて言う
「よし、これで…」
内線電話が鳴り 秘書の声が聞こえる
『総司令官 国防軍レギスト機動部隊の隊員内29名を代表し アラン隊員とバイスン隊員の2名が 総司令官へお伝えしたい事があるとの事ですが?』
アースが言う
「うん?レギスト機動部隊の隊員か?大方 ハイケル少佐の件だろうが… フ…ッ だが面白い たかが一兵卒の分際で 総司令官へ意見しようとは そうとなれば直々に話を聞いてやろう …通せ」
秘書が言う
『畏まりました』

総司令官室 前

秘書が言う
「では どうぞお通り下さい」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「えっ!?本当にっ!?」
隊員Bが言う
「やったね!アッちゃん!」
隊員Aが緊張して言う
「ま、まさか 本当に 下っ端の俺たちが 国防軍トップの総司令官と 話が許されるなんて…っ」
隊員Bが言う
「何言ってるんだよ?アッちゃん?俺たち いつも その 国防軍トップの軍曹と 話してるじゃーん?」
隊員Aが言う
「軍曹と総司令官じゃ 違うからっ!」
隊員Bが言う
「えー?だって どっちも 同じ国防軍長だしー?総司令官は 軍曹のお兄さんでしょー?だったら きっと 大丈夫だよー?」
隊員Aが言う
「そ、そうだと 良いんだけど…」
隊員Aと隊員Bがドアへ向かう

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースが言う
「それで?」
隊員Aが立ちすくむ アースが微笑して言う
「一兵士の諸君が 総司令官である  この私に 話 とは?一体 何だろうか?」
隊員Aが言葉を失って思う
(…こ、声がっ 出ねぇえっ!?)
隊員Aが隊員Bを見る 隊員Bが呆気に取られた後 隊員Aの背を押す 隊員Aが衝撃を受けて思う
(バイちゃんっ!!)

【 墓地 】

途端に携帯が鳴る ハイケルが驚き 疑問して言う
「…どういう事だ?携帯は もう… 通じなかった筈?」
軍曹の叫び声が聞こえる
「少佐ぁあーーっ!」
ハイケルが振り向いて言う
「軍そ… ぐあっ!?」
軍曹がハイケルを抱きしめて言う
「少佐ぁあーっ!早まってはいけませんっ!少佐ぁーっ!少佐はぁあっ 少佐はぁあっ!如何に 改良の利かぬ 真に申し訳ない 初世代の悪魔の兵士でありましょうともーっ!改良の聞く 2世代目の悪魔の兵士には とても真似出来ぬ技が有るのだと言う理由から どうしても必要にして重要で!大切な!初世代の悪魔の兵士なのでありますーっ!少佐ぁああーっ!!」
ハイケルが言う
「に、”2世代目の悪魔の兵士には とても真似出来ぬ技”だと!?どういう事だっ!?順を追って説明をっ その前に く、苦しい…っ 軍曹ぉ…っ!」
軍曹が締め付けているハイケルに気付いて ハッとする ハイケルが脱力する 軍曹が慌てて言う
「しょっ 少佐ぁーっ!?」

【 国防軍総司令本部 総司令官室 】

アースの前に名簿が出される アースが一瞥いちべつした後言う
「こちらは?」
隊員Aが生唾を飲み込んだ後 何とか言う
「…っ こ、国防軍っ レ、レギスト機動部隊 う、内っ 隊員29名は…っ ハ、ハイケル少佐に同行し!こ、国防軍を…っ だっ …脱退しますっ!!」
隊員Bが言う
「そうでありまーすっ!」
隊員Aが言う
「…し、しかしっ もしっ 少佐が…っ!?ハイケル少佐が レギストに 戻られるのでしたら…っ!」
隊員Aが思う
(俺たちに出来る事として 唯一の方法 …地位や権力が足りない俺たちでも 数さえ揃えれば 勝てるかもしれないって!?バックス中佐… 俺たちは 今っ!貴方からの その言葉に全力を賭け…!)
アースが言う
「分かった では お前たちを含む こちらの29名は現時刻を持って国防軍から 除名処分 とする」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「げっ!?」
隊員Bが呆気に取られて言う
「即決~?」
隊員Aが困惑して言う
「あ、あの… 一応 そのリストの隊員たちは… 結構 良い評価を… 得ていたりとか…?」
アースがニヤリと笑んで言う
「その代わり お前たちは 私に付いて来い」
隊員Aが呆気に取られて言う
「え?」
隊員Aと隊員Bが顔を見合わせる アースが言う
「お前たちを含む こちらの29名へは 新たな部隊 アールスローン帝国軍 レギスト特殊機動部隊への入隊を許可する」
隊員Aが呆気に取られて言う
「アールスローン帝国軍 レギスト …特殊機動部隊?」
隊員Bが言う
「それって~…?」
アースが言う
「もちろん 諸君の隊長は 同部隊隊長 ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐となる」
ドアが開かれ ハイケルと軍曹が現れる 隊員Aと隊員Bが振り返り 隊員Bが喜んで叫ぶ
「少佐ぁーっ!」
ハイケルが呆気に取られて言う
「アラン隊員 バイスン隊員も…?」
隊員Aが笑んで言う
「俺たちだけじゃないですよ 少佐ぁ!」
隊員Bが言う
「ナッちゃんもフッちゃんも!レギスト機動部隊の先行小隊は 皆!サッちゃんだって ちゃんと 署名させたしー?」
ハイケルが苦笑して言う
「署名は 無理強いするものではないが… 話は外で聞かせてもらった …有難う 感謝する」
隊員Aと隊員Bが笑みを見合わせる アースが言う
「仲が良いのは結構だが 言っておくが 新生ARTの司令官は私だ その私の命令を聞かないようでは 本当に除名処分とするからな?」
隊員Aと隊員Bが衝撃を受けアースを見る アースが立ち上がって言う
「そして…」
アースが軍曹の前に来て言う
「これからの国防軍は 頼んだぞ?国防軍総司令官ヴォール・アーヴァイン・防長閣下?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なぁああっ!?じ、自分が 総司令官ーーっ!?」
アースが署名リストを見せて言う
「都合良く お前の名は入っていなかった… 実は この作戦を決行するに当たり  もっとも 頭を悩ませていた所だったのだが… お前が彼らから離れていた  とても 良いタイミングで作戦を実行させてくれた 早速だが アラン隊員は 2階級昇格で 軍曹軍階へと昇進させる」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「俺が 軍曹っ!?」
軍曹が慌てて言う
「あ、兄貴っ!待ってくれっ!?自分に国防軍の総司令官などっ!勤まるはずが無いのだっ それに 自分は 少佐と共にっ!」
アースが言う
「アーヴィン 何時までも甘えた事を言っているんじゃない アールスローンはこれから 防戦ではなく 抗戦へ転じる」
軍曹が驚く ハイケルが表情を強める 隊員Aと隊員Bが驚き顔を見合わせる アースが言う
「今回の事は 急ではあったが それだけ事態はひっ迫していると言う事だ その為にも ハイケル少佐と共に戦える 最も高い士気を有した兵士の選択は重要だった 従って 少々強引ではあったが 作戦は上手く行った様だな …いや これがハイケル少佐の人徳と言うべきか?」
ハイケルが驚いて言う
「総司令官…」
アースが言う
「もちろん エルム少佐であっても 可能であっただろうが?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「ぐ…っ 褒めているのかいないのか どちらなんだっ?」
アースが言う
「さて こちらへ署名した者たちが 本当に国防軍から除名処分をされたと聞けば 先ほどの諸君と同様に 最高の反応を見せてくれるのだろうが… 残念ながら そちらを見物する時間は取られそうにない 事態はひっ迫しているとは言え 既に終業時間を1時間超過している 従って 私は さっさと 帰宅させてもらう」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「それって ひっ迫してるのか…?」
軍曹が慌てて言う
「ちょ、ちょっと 待ってくれなのだっ!?兄貴っ!?本当に自分にはっ 国防軍総司令官などっ!」
アースが軍曹の肩へ手を置いて言う
「心配するな アーヴィン 私は歴代国防軍総司令官1位と言われた者だ 抜かりは無い お前は お前を補佐する 総司令官補佐官の言う通りに 命令を下していれば問題ない様 既にセッティングを済ませてある」
軍曹が呆気に取られて言う
「そ、総司令官補佐官とは…?」
ドアが開かれ ファーストが現れて言う
「ハブロス総司令官 国防軍の新たな部隊編成と伝達 共に 政府やその他への連絡は 全て完了させました」
軍曹が驚いて言う
「ライヴィン!?何故 ライヴィンが 国防軍総司令本部に…っ?」
隊員Aが言う
「ラ、ライヴィンって…?」
隊員Bが言う
「だれー?この子ー?」
アースが言う
「ファースト 私は もう 国防軍の総司令官ではなくなった これからは ARTの司令官だ」
ファーストが言う
「失礼致しました では 改めまして ハブロス司令官」
アースが頷く ハイケルが言う
「まさかと思うが… たった10歳の子供を 国防軍総司令官補佐官に?」
アースがファーストから書類を受け取って言う
「よし 良いだろう 短い時間に 良く済ませてくれた 流石は 私の息子だ」
ファーストが苦笑して言う
「有難うございます 父上 しかし 1時間ほど予定時間を押してしまいました…」
隊員Aが言う
「父上って事は…」
隊員Bが言う
「えー?でも ハブロス司令官は アリアちゃんの お父さんだけどー?」
ハイケルが言う
「ファースト・ライヴァイン・ハブロスは アース・メイヴン・ハブロス司令官の長男にして アリアの兄でもある」
皆がアースとファーストを見る アースがファーストへ言う
「慣れない内は仕方が無い 1時間で済んだのなら上出来だ …では 帰るぞ?お前と共に この国防軍総司令本部から帰宅するのは 今日が最初で最後だな?」
ファーストが微笑して言う
「はい 父上」
アースが軍曹へ振り返って言う
「アーヴィン お前もたまには 早く帰って 家族との夕食を共にしろよ?」
軍曹が言う
「う、うむ 了解なのだ …って いやっ!?違うのだっ 兄貴っ!?自分はっ!総司令官などっ!いや それよりも 自分は少佐とっ!?レギストの皆とーっ!?」
アースとファーストが立ち去りドアが閉まる 軍曹が呆気に取られる 隊員Aと隊員Bが顔を見合わせてからハイケルを見る ハイケルが言う
「では 我々は… 私を慕い 共にARTの隊員となってくれた 元国防軍レギスト機動部隊 先行小隊の隊員たちへ 人事異動の伝達へと向かう …アラン隊員、バイスン隊員 お前たちも同行しろ」
隊員Aと隊員Bが敬礼して言う
「「了解!少佐ぁーっ!」」
ハイケルが微笑する 軍曹が泣きながら叫ぶ
「しょ、少佐ぁーっ!?お待ち下さいっ!?アラン隊員っ!?バイスン隊員っ!?じ、自分もっ!?少佐と共にーっ!?」
ハイケルと隊員Aと隊員Bが立ち去る 軍曹があたふたした後叫ぶ
「じ、自分は!?自分は一体 どうしたら良いのかーっ!?」
夜空に軍曹の悲鳴が響く


to be… アールスローン戦記Ⅱ
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