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2章 魔法使いのウィザード様

嗚呼、私のウィザードさま 「大切な定期券入れ」

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翌朝

マリアが玄関を開けて言う
「ん~… 良いお天気!」

マリアが思う
(やっぱり 朝は お天気の良い方が良いよね?今日も一日頑張ろうって気分になるし!時間はいつも通りだけど… これなら ウィザード様に 連れて行ってもらえれば かなり早くに着けるから!)

レイの声が聞こえる
「マリアー!」

レイがマリアに抱き付いて言う
「お早う!マリア!今日は早いな!どうかしたのか!?」

マリアが言う
「はい お早う御座います ウィザード様!今日から私 新しい仕事をする事になって それに!」

マリアが気付いて思う
(あ… でも ウィザード様に 主任になったって言っても 意味が分からないかな?それこそ ウィザード様たちには 全く関係ないものね?…それより)

レイが言う
「ん?どうした?マリア?新しい仕事をする事になったから これからは早く行くのか?」

マリアが言う
「まぁ そんな感じですね!会社に行くのは 出来るだけ早い方が 良いですから!」

レイが言う
「そうか!それじゃ 早速 連れて行ってやるぞ!マリア!」

マリアが言う
「はい、お願いします!ウィザード様!」

レイがマリアを包み 2人が風に消える


会社

マリアが出勤して来て言う
「お早う御座います!」

課長が一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「ああ お早う マリア主任 今日は早いな?プロジェクト企画が始まるとあって 気合が入っているのかね?」

マリアが言う
「はいっ!課長に推薦して頂いたのですから 私、頑張ります!」

課長が言う
「うむ、その調子で 大いに頑張ってくれたまえ」

マリアが言う
「はいっ」

課長が言う
「では早速 この資料を 昨日遅くに 急遽送られてきた物だ 丁度良かったな?会議の前に 目を通して置くと良い」

マリアが書類を受け取りながら言う
「あ、はいっ 分かりました」

マリアが書類を持って席に戻りながら思う
(こんな急に資料が 送られる事もあるのね?やっぱり これからは 早めに出社した方が良いみたい… それで?)

マリアが書類を見ながら思う
(ミッシェルリンク社の資料だわ?業績予測数値の変更… あ… 随分 落ちちゃってる 何でだろう?昨日までの数値と比べると かなり…)

マリアが書類を見比べてから思う
(…って 言っても やっぱり ダントツの業績 うちの会社のライバル社…って言うか この調子なら 近い内に 同企業の中では 最大の会社になりそう)

マリアが資料を確認して作業をする


中央公園

マキが言う
「えぇえ!?自分から望んで ”永在ウィザード様”にっ!?」

マリアが苦笑して言う
「うん… 結局 そうなったらしいよ ”お母さんのウィザード様”」

マキが呆気に取られて言う
「信じられない… ニュースで見たけど あの濁流を防ぐ程の 魔力があるのに?」

マリアが言う
「うん それに 大灯魔台の灯魔儀式で 史上初の 不認定票0票を 2回も取ったウィザードさま なんだけどね?」

マキが溜息を吐いて言う
「はぁ… 私のウィザード様が聞いたら 卒倒しちゃうよぉ~」

マリアが苦笑して言う
「その ”マキのウィザード様”は どうなの?あ、でも?最近お天気が悪かったから 火の魔力を上げるのは 難しかったのかな?」

マキが苦笑して言う
「う~ん どうなのかなぁ?お陰さまで 睡眠の方は 取られるようになったから 体調なんかは良くなったけど 魔力がどうかって言うのは 聞かないようにしてる」

マリアが言う
「そうなんだ… えっと…?それじゃ 灯魔儀式の方は?」

マキが言う
「そっちは おととい 2回目の灯魔儀式に行ってみたんだけど 前よりは 上手く行ったかな?相変わらず 大変そうではあるけど… 2回目だから 少しは」

マリアが言う
「そっか… それなら 慣れれば もっと楽に行くようになるかもね?ちなみに 何の属性の灯魔をしたの?」

マキが言う
「え?何の属性って?」

マリアが言う
「え…?だって 灯魔台の灯魔は5種類あるでしょう?火と 水と 土と 雷… それから 風 今回は 何の属性を灯したの?」

マキが言う
「えっと… 今回って言うか 前回も今回も 火の魔法で 火の灯魔をしたって言うのかな?」

マリアが言う
「え?両方とも?」

マキが言う
「うん」

マリアが言う
「…そうなんだ?」

マリアが思う
(火の灯魔が2回続くって言うのは 珍しいような… そう言えば ウィザード様の時も 1度あったかな?結局 あれは後に変更したんだけど… でも ”マキのウィザード様”だって ちゃんと 確認してやってるんだろうし?)

マリアが言う
「それじゃ また 何日かしたら 今度は3回目だね?場所は何処をやっているの?センターサイド?それとも?」

マキが言う
「センターサイドは 後で良いかなって?やっぱり アウターサイドに近い所って事で 今は南東の方からやってるの」

マリアが言う
「そうなんだ そうだね?やっぱり なるべくアウターに近い方から 結界を強化して置いた方が 良いかもね?」

マキが言う
「うん そう思って」

マリアが言う
「そっか… さて、それじゃ 私 そろそろ 行くね?」

マキが言う
「あれ?随分早くない?」

マリアが言う
「うん やっぱり 主任になったからには ちょっと頑張らなきゃって 少し早く帰って 書類を見直しておこうかと思うの」

マキが言う
「相変わらず マリアは 仕事一筋だね?ちゃんと 魔法使いの彼と 仲良くしてあげてるの?」

マリアが苦笑して言う
「う、うーん どうかな?毎日朝と夜に会ってるけど お互い忙しくって」

マリアが思う
(主に 仕事と食堂の時間に 追われて… とは なんか言い辛いから 止めて置こう…)

マキが言う
「マリアは考えが固いから たまには 彼の言う事とか聞いてあげないと 折角の恋が成就しないよ~?これは 恋愛の先輩 マキ先輩からの アドバイス~ にゃははっ」

マリアが衝撃を受けて言う
「だ、だからっ 私とウィザード様はっ ”彼氏とか恋愛とか” じゃ ないんだったらっ!」

マキが言う
「え~?それじゃぁ ”何とか何とか” なのかな~?」

マリアが言う
「”お友達とか お友達とか” ですっ!」

マキが言う
「えー?ホントに~?」

マリアが言う
「ホントだったらっ!?」


会社

マリアが溜息を付いて言う
「はぁ~」

マリアが書類を見て思う
(もう… どうして 奉者になったのに マキは 相変わらずなんだろう?もしかして… 本当に ウィザードになった 彼と そういう関係に… なっちゃってるのかな?)

マリアが書類を変えて思う
(…大体 それって良いの?相手は 神様の下へ向かう 神聖なウィザード様よ?あらゆる禁欲をして 魔力の向上に励まなきゃいけなくて …それを支える奉者が それを犯してしまうんじゃ 本末転倒なんだから…っ)

マリアが書類を見比べて思う
(そうよ… そんな事していたら 魔力の上昇所か 下向しちゃっても知らないよ?マキ?それこそ ”永在ウィザード様”になっちゃっても 知らな… …え?)

マリアがハッとして思う
(そう言えばっ ”永在ウィザード様”って もう神様の下へは行かない訳だから 今までの神聖なウィザード様とは 一線を引かれて… それらが 全て 無くなるのよね?それって?…まさか それで!?あの ”お母さんのウィザード様”が お母さんと!?そ、そんな事に なっちゃったり… して!?それに もしっ そんな事に なったり したら?お母さんの娘である わ、私はっ!?そ、そんなのはっ!)

マリアが言い掛ける
「だっ!」

マリアがハッとして 口を押さえる 会議中の人々が顔を向けて 司会役が言う
「…だ?」

マリアが衝撃を受け周囲を見ながら言う
「あ、い、いえ… その…」

マリアが書類を見て慌てて言う
「だ… だ… 大丈夫 で… しょうか?ミッシェルリンク社の… す、数値は… とても 急に下がってますが…っ!?こ、これは 何か… 大きな事でも有ったのでは?」

司会役が言う
「ええ、その点に付いては 既に確認が取られています なんでも 公共事業と共同で行っていた場所で 事故があったとか しかし、そちらも修理や復旧がなされれば 元の数値に戻る筈です 費用の方は 確かに掛かるでしょうが やはり 公共事業と共同と言うのが 大きな強みですね?ミッシェルリンク社が負うのは 半分の費用で済む訳ですから」

マリアが言う
「な、なるほど… そうですね 失礼しました…」

重役が言う
「いや、事業提携を考えるのなら 細かい所を気にする事は大切だ 気になった所は どんどん発言してくれて構わない マリア主任を見習い 我々も慎重に行こう」

マリアが視線を落として思う
(う…っ 別の事を考えていて 思わず声に出しそうになった言葉を 誤魔化しました… なんて 絶対 言えない…)

マリアが気を取り直して思う
(会議中は 仕事に集中しなきゃ…っ)

――…

マリアが席に戻って来て 息を吐いて思う
(ふぅ… 今日はこれで終わり… 直接の商談は無いけど 流石に 重役を交えての会議って言うのは 重々しいと言うか…)

マリアが苦笑して言う
「緊張した…」

課長が近くに居て言う
「慣れるまではしょうがないな?」

マリアが驚いて言う
「か、課長っ!?」

課長が苦笑して言う
「お疲れ マリア主任 一息入れている所に すまないが また プロジェクトに関連する資料の変更が届けられた …と言っても 今朝 渡した資料のまま とも言うのだが?」

マリアが資料を受け取り見て言う
「今朝の ミッシェルリンク社の 数値変更ですよね?さっきの午後の会議で 私も発言した所だったんですが」

マリアが思う
(実際は 口に出しかけた言葉を 誤魔化す為だったんだけど…)

課長が言う
「昨日までは 復旧を行うと思われていたが 今日になって 行えなくなったと 完全撤廃になったそうだ それにより 数値の修正はなしで その数値で決定となった」

マリアが呆気に取られて言う
「そうだったんですね…?会議でも復旧されるだろうって 公共事業と共同であるから…って 言ってましたが それでも駄目だったんですね?」

課長が言う
「うむ 例え公共事業であろうとも その村の住民が反対するのでは 再びダムを作る事は出来ないそうだ」

マリアが反応して言う
「ダム?」

課長が言う
「ああ、昨日決壊した ポルト村のダムだよ あのダムは 公共事業としては有事の際の貯水池として ミッシェルリンク社としては 水力発電を見越して建設された物だったらしい それが あの大雨で決壊してしまった …しかし 修復は可能だと言われていたのだが」

マリアが思う
(あのポルト村のダムだったんだ… そうよね 村民が反対するのは 無理も無いわ だって ”お母さんのウィザード様”が 力を貸して下さらなかったら 村は 大変な事になっていたんだから…)

マリアが言う
「あんな怖い事が有ったのでは 村民が反対するのも 無理は無いですよね?」

課長が言う
「うむ… そうだな しかし ダムその物の損傷は それ程でもなかったそうだが 今日になって そのダムも 完全に破壊されてしまったらしい」

マリアが驚き言う
「は、破壊って…?」

課長が言う
「それではもう 村民がどうと言うのも 実際は 後付けの言い訳かも知れないな?以前より 村長の息子以外は 全村民が 反対していたそうだよ?」

マリアが言う
「で、では… ダムを破壊したのは その… 村民… ですか?」

マリアが思う
(TVで見たから 大きさなんかは 良く分からなかったけど… ダムって そんな… 村民の人の手で壊せる物… なんだ…?)

課長が言う
「いや、何でも 強力な魔法で 壊されてしまったとか?」

マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?」

マリアが思う
(強力な魔法って…っ まさかっ!?)

マリアの脳裏にレイの姿が浮かぶ マリアが表情を困らせて言う
「ま、まさか…?」

課長が言う
「私も 魔法使いや魔法と言うものを 見た事は無かったのだが あの映像には驚いた… それも関連会社の施設を壊されたりする様では堪らない 今回は 未然だった訳だが ミッシェルリンク社とは ともすれば 提携を結ぶ可能性もある訳だし これからは 気にするべきなのだろうか?」

マリアが言う
「は… はぁ…」

マリアが思う
(私は どちらにも かなり 関係しているんだけど… でも まさか 仕事と魔法が関連するだなんて そんな日が来るなんて事は…)

課長が言う
「では とりあえず 資料はそちらを使うように」

マリアがハッとして言う
「はいっ 分かりました!」

課長が立ち去る マリアが席に付いて息を吐く


――…

マリアが仕事を終え言う
「これで終わりっと!」

マリアが思う
(今日はプロジェクト企画への初参加だったから 気になる所もあえて発言しなかったけど これからは個人で事前に調べを進めて 配布できる資料を作った上で参加したら もっと…?)

後輩1が来て言う
「マリア先輩?」

マリアが反応して言う
「ん?何?何か分からない事でも あった?」

後輩1が苦笑して言う
「いえ、もう今日は… って言うか お仕事のお話じゃなくて… マリア先輩 今日これから 何かありますかぁ?」

マリアが言う
「え?う、ううん?今日は もう家へ 帰るだけだけど?」

後輩1が言う
「それなら!これから 私たち3人で 食事に行こうって話してて!もし良かったら お仕事を教えて頂いた マリア先輩にも ご一緒頂けないかな?って!」

マリアが言う
「そうなんだ?…それじゃ」

マリアが思う
(そう言えば 歓迎会も やってあげてなかったし…?)

マリアが微笑して言う
「うん!一緒に 行こうかな?行って良い?」

後輩1が喜んで言う
「はい!是非 是非!…皆!マリア先輩も来てくれるって!」

後輩たちが喜ぶ マリアが微笑する


会社外

後輩が言う
「一応 1次会の店は予約してあるんで サウスサイドストリートの方へ」

マリアが思う
(サウスサイドストリートか そう言えば昔は良く行ってたけど… あっ!?)

マリアがハッとして周囲の空を見上げてからホッとする 後輩1が疑問する

マリアが思う
(よ、良かった… 皆と一緒に 会社から出ちゃって 時間的にも ウィザード様が 飛んで来ちゃうかと思ったけど…)

マリアが改めて周囲を見てからホッとして思う
(居ないみたい… そう言えば ウィザード様自身でも 確認するって言ってたっけ?それじゃ 今は皆と一緒に居るから 来ないって事かな?)

後輩1が言う
「マリア先輩 彼氏さんには 先に連絡していたんですね?全然気が付かなかったです もしかして こっそり メールで… ですかぁ?」

マリアが衝撃を受けてから慌てて言う
「え!?そ、そんな… こっそりだなんて… 大体 彼は メールの前に携帯とか… って」

マリアがハッとして言う
「だ、だからっ!”彼氏さん” じゃないったらっ!」

後輩1が笑って言う
「冗談ですよぉ マリア先輩いつも 凄い反応してくれるから 面白くって つい… ごめんなさーいで~す」

マリアが苦笑して言う
「もぅっ」

後輩2が言う
「バスが来てますよ~ 2人とも 急いで~」

マリアと後輩1が気付いて急ぐ




後輩たちとマリアがグラスを合わせて言う
「「かんぱーい!」」

後輩たちとマリアが微笑して飲み物を飲む マリアが言う
「これからも 何か分からない事があったら 何でも聞いてね?別の部署の事でも 確認ぐらいなら出来るから」

後輩たちが言う
「有難う御座います!」
「マリア先輩 頼りにしてます!」

マリアが軽く笑って言う
「課長に聞いた方が 早いかもしれないけど 結構 忙しいらしいから」

後輩が言う
「課長は そんな感じしますよね?この前も マリア先輩がお休みの時 忙しそうだったんで 中々声が掛けられなくて…」
「あ、でも どうしようかな~?って思ってると 課長の方から声を掛けてくれたりして」

マリアが言う
「うん、そうでしょ?課長 忙しくても 良く見てるから… だから 仕事中はしっかり 仕事の事を考えて居ないと 私みたいに 怒られちゃうからね?」

後輩たちが笑う


店前

後輩たちとマリアが出て来て 後輩が言う
「それじゃ 2次会に行きましょー!」
「何処に行く?何か 美味しい物食べたい~」

マリアが思う
(やっぱり こう言う時は… 2次会はパスするべきよね?後輩たちだけで 話したい事もあるだろうし…)

マリアが言う
「それじゃ 私はそろそろ帰るね?」

後輩たちが言う
「え~?何でですか~?」
「マリア先輩も 2次会行きましょうよー?」

後輩1が言う
「そうですよぉ 私、マリア先輩に聞きたい事が 山ほどあるですからぁ まだまだ 足りてないですぅ~!」

マリアが苦笑して思う
(う… でも それって また ”あの魔法使いさん” とか ”彼氏さん”の 事じゃないかなぁ…?)

マリアが言う
「ああ… でも、ごめんね?え~と… そう!私、最近ちょっと寝不足だから!早く帰って寝ないと!」

後輩たちが言う
「え~ そっかぁ 明日にすれば良かったですね そうすれば…」

マリアが言う
「皆も明日は出勤でしょ?飲み過ぎは注意よ?」

後輩たちが笑って言う
「はーい 注意しま~す!」

マリアが言う
「それじゃ…」

マリアがふと気付いて言う
「あ、そうそう 美味しいお料理のお店なら そこの 155のお店とか ちょっと お勧めかな?昔 同僚の子と 良く行ってたの」

後輩が言う
「155ですね!?分かりましたー!行ってみまーす!」

マリアが微笑して頷く 後輩1が言う
「それじゃ マリア先輩 また明日!お疲れ様でしたぁ!」

マリアが言う
「うん!また明日!お疲れ様!」

後輩たちが去って行く

マリアが逆方向へ足を向けながら思う
(さて… 駅は 向こうだから…)

マリアが歩いていると 店に気付いて足を止めて見て言う
「あれ…?こんなお店が…?」

マリアが店のショーウィンドウを見ながら思う
(魔法使いの杖や衣装… こんなお店があったんだ?今まで気が付かなかった でも、良く考えたら この通りには 魔法使いの養成所があるんだから 不思議じゃないかも…?)

マリアがショーウィンドウから杖の値札を見て 衝撃を受けて思う
(うっ… 値段1億… 本当だったんだ…)

マリアがショーウィンドウの展示衣装を見ながら言う
「それじゃ やっぱり 他の衣装なんかも それなりのお値段なのかなぁ?でも… 見た感じは そんな… 確かにコレは良い生地みたいだけど」

マリアが思う
(ウィザード様が着ている服や ローブなんかは 特別良い生地なんかじゃないし …あのウィザードの法衣の方は 確かに高そうだったけど…)

マリアが息を吐き歩き出して言う
「もう アレは着られないものね…?それこそ 魔法使いみたいな 黒色であっても…」

マリアが立ち止まって思う
(でも… それなら せめて良い生地の 魔法使いの衣装を…)

マリアがハッとして言う
「いやっ 別にっ!?その…っ 私が 気にする事じゃっ 大体…っ」

マリアが思う
(ウィザード様は 杖のローンがあるとは言え 大金を得るのにも それ程苦労をしない人なんだから… きっと 良い生地の衣装が欲しいと思うなら 自分で…)

マリアがハッとして顔を左右に振ってから言う
「って 何考えてるんだろう 私…っ」

マリアが歩きながら思う
(どうして いつも ウィザード様の事を 考えちゃうんだろう?今の私なら もっと… そう!明日のプロジェクト企画で 何か自分にも発表出来る事が無いか?とか… リナの調子は良くなったかな~?とかっ 考える事は 一杯…)

マリアが間を置いて 息を吐いて言う
「はぁ… 駄目だ 何でだろう?どうしても…」

マリアが思う
(考えちゃうなぁ… 特に 今日は… 会社の帰りに 会えなかったから…)

マリアが息を吐く レイの声が聞こえる
「マリアー!」

マリアが驚いて言う
「え?ウィザード様っ!?」

レイがマリアの前に下りて来て喜んで言う
「やっぱり マリアだっ!マリア お疲れ様!今日は会社の奴らと 外で仕事か?こんな時間まで仕事なんて やっぱり マリアは仕事熱心だな?」

マリアが言う
「ウィザード様!?どうして ここが!?」

レイが言う
「ああ!たまたまだよ!寮に帰るのに 飛んでたらさ?マリアの魔力っぽいのを見つけて もしかしてっ!?てな!」

マリアが言う
「そ… そうだったんですか」

マリアが思う
(魔力を見つけて か… ”マリアを見掛けて” では無いのね?やっぱり 魔法を使う人は 違うのね…)

レイがマリアの横に来て言う
「けど マリア こんな時間に 1人で歩いてたら 危ないぞ?一緒に出た 奴らはどうしたんだ?」

マリアが気を取り直して言う
「あ、はい 皆は2次会に行くって 私だけ 先に帰る事にしたんです」

レイが言う
「そうか なら 丁度 良かったな!俺が連れて帰ってやるよ!」

マリアが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「…はい では、お願いします」

レイが言う
「ああ!任せとけ!」

レイとマリアが風に消える


自宅 前

レイとマリアが現れる レイが言う
「はい、到着ー!」

マリアが言う
「わざわざ 有難う御座いました」

レイが言う
「礼には及ばないよ マリア!俺は ”マリアのウィザード様” なんだから いつでも力を貸してやるぞ!」

マリアが苦笑して思う
(”マリアのウィザード様”か… ウィザード様も 相変わらず…)

マリアが微笑する レイが少し考えてから言う
「う~ん けど そうだなぁ?やっぱ 少し足りないよなぁ?」

マリアが疑問して言う
「え?足りないって… 何がですか?ウィザード様」

レイが言う
「俺が マリアと一緒に居られる 時間だよ」

マリアが衝撃を受けて思う
(え?それって…っ)

レイが言う
「今まではさぁ?時間は少なくても マリアとここで仲良くしていられたから 良かったけど… マリアやっぱり ここも外だって言うから…」

マリアが苦笑して思う
(…つまり いつもの マリアーがしたいって事ね?)

マリアが言う
「分かりました それでは とりあえず… 玄関を開けますんで… えっと… こんな時間なので お茶は無いですが …ここじゃ寒いですし お話なら中で」

マリアが思う
(今日はもう時間的に 夕食は食べた後だろうから …後は ウィザード様が眠くなるまで …って事かな?あぁ… 出来れば 本当に 私も 早めに寝たかったんだけど…)

レイが言う
「いや、そろそろ マリアのお母さんが 帰って来るから  俺は中には入れないな?そうなると… 時間も無いし もう寝る時間だから 俺 やっぱ 帰るよ」

マリアが言う
「え?そうですか?…そうですね?8時過ぎなので」

マリアが思う
(確かに お母さんが 帰って来るまで 1時間は無いかな…?)

レイが言う
「なぁ マリア?次の休みは何時だ?あさってか?」

マリアが一瞬疑問した後言う
「…その予定です もしかしたら 新しい仕事の影響で 変更があるかもしれませんが」

マリアが思う
(今度は 課長から何も言われて居ないから あさっての休みはそのままで 大丈夫だと思うけど…?)

レイが言う
「そうか それじゃ あさっての午後は 俺とずっと一緒に居られるか?それくらい一緒に居ないと やっぱ 駄目だからな?」

マリアが衝撃を受けて思う
(だ…っ 駄目…って?)

マリアが言う
「あの… ウィザード様 その… 駄目って 何が…」

レイがハッとして言う
「あっ もうすぐそこだっ!それじゃ マリア!お仕事お疲れ様!お休み!また明日な!」

レイが風に消える マリアが一瞬驚いてから言う
「え?あ…っ お… お休みなさい… って」

マリアが思う
(何を そんなに急いで…?)

マリアが言う
「食堂の時間じゃないでしょうに…?」

マリが疑問しつつ玄関へ向かうと 家の門の前にハイヤーが止まる マリアが振り返って言う
「あれ?お母さん?」

ハイヤーからソニアが降りて来て言う
「あら マリア お帰りなさい 同じ時間だったわね?お仕事 忙しかったの?」

ソニアがマリアの下へ来る マリアが言う
「あ、ううん?今日は 会社の新入社員たちと… まぁ 歓迎会みたいな感じかな?ちょっと外で 食事をしてきたの」

マリアとソニアが家の中へ入る

ソニアが言う
「そう 新入社員?それじゃ お仕事なんか教えてるの?マリアが?」

マリアが言う
「そうだよ 私しか 教えられる社員が居ないから リナもマキも 退職しちゃって」

ソニアが言う
「あら?そうだったの?それは 残念ね…?大学の時から仲の良かった子達でしょう?」

マリアが言う
「うん… でも 付き合いは続けていくつもりだし あ、それに マキは 奉者になったんだよ!凄いでしょ?それに リナは寿退職だし!」

ソニアが言う
「あらあら いつの間にか 色々変わって行くものね?マリアもいつの間にか奉者になって マキさんも?リナさんは ご結婚したの?」

マリアが言う
「うん、あ~ でも リナは まだ 正式じゃなくて 結婚予定って感じかな?」

ソニアが言う
「そう… なら マリアも その予定かしら?うふふっ」

マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?わ、私はっ そんなっ!だ、大体っ 相手だって居ないしっ!」

ソニアが言う
「あら?そうなの?てっきり 風の魔法使いさんと…」

マリアが言う
「違いますからっ」

ソニアが笑って言う
「うふふっ マリアは分かりやすいわね?」

マリアが言う
「だ、だからっ!違うって言ってるのにっ どうしてっ!?」

ソニアが言う
「毎日会って 休日も一緒に居るんだから 誰が見たって そう思うでしょう?」

マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?毎日って… なんで お母さん 知っているのっ!?」

マリアが思う
(朝は お母さんが出て行った後だし… 帰りは いつも お母さんが 帰って来るより前なのに…)

ソニアが言う
「あら だって…」

マリアが言う
「だって?」

ソニアが言う
「貴方 電車の定期券を 戸棚に置き忘れて そのままだから」

マリアが衝撃を受けて言う
「あっ!」

ソニアが笑って言う
「期限はとっくに過ぎちゃっているけど あの定期券入れは お父さんの形見なのだから 取り替えるにしたって マリアなら ちゃんと保管をするでしょう?それを 忘れたままにしているって事は 定期券を置き忘れた事さえ 忘れてる… 定期券を使わずに 通勤しているのかな~?なんてね?」

マリアが思う
(相変わらず 鋭いわ… お母さん…)

ソニアが言う
「それに 風の魔法使いさんなら 風の移動魔法も お得意なんじゃない?」

マリアが衝撃を受け思う
(う…っ お母さん 凄い…っ)

マリアが苦笑して言う
「もう… お母さんは 何でも お見通しだね?敵いません!」

ソニアが軽く笑って言う
「だから お母さんが お見通しじゃなくて 貴方がそれだけ 分かりやすいって事よ?」

マリアが言う
「そ、そうなのかな?」

ソニアが言う
「ええ そんな所 お父さんに そっくりね?」

マリアが一瞬驚いてソニアを見る ソニアが微笑する マリアが苦笑して言う
「お父さんも 分かりやすい人… だったんだ?」

マリアが思う
(お母さんから お父さんの 話を聞くのって 何だか久し振り… それに…)

マリアがソニアを見る ソニアが微笑して言う
「ええ、嘘が下手で すぐに 表に出ちゃうの それで 一生懸命 誤魔化すんだけど どんどん墓穴を掘ってしまって… うふふっ  可笑しかったわ?」

ソニアが軽く笑う マリアが思う
(お母さん 何だか嬉しそう… もう 思い出しても 辛くないんだ?乗り越えたって事なのかな?)

マリアが微笑して言う
「なんか… 自分の事 言われてるみたい… 自分でも分かるもん?」

ソニアが言う
「素直な証拠よ 無理に誤魔化したりなんかしないで 自信を持ちなさい?貴方なら きっと大丈夫 助けてくれる人も おのずと集まるわ お父さんと同じ様に…」

マリアが一瞬驚いた後微笑して言う
「…うん」

ソニアが言う
「ただ…」

マリアが疑問する ソニアが悲しい微笑をして言う
「どんな事でも 頼まれると 嫌と言えないから… 何でも引き受けちゃって… 元から持ち合わせている 正義感も強いから 無理をしちゃう事も多いでしょう?そんな時は 周りの人を頼りなさい?…きっと力になってくれるわ 一人で無理をする事は 無い様にね?」

マリアが呆気に取られた後言う
「うん… お父さんも 同じだったの?」

ソニアが言う
「ええ…」

マリアが間を置いて 気持ちを切り替えて言う
「…あ、大丈夫だよ!?お母さんっ!私には マキやリナ エリナも居る それに… ウィザード様も居るからっ 1人で無理する事なんて 絶対に無いよ!」

ソニアが微笑して言う
「そう… それなら良かった… そうね?マリアには”マリアのウィザード様”が 付いてるものね?何も心配は無いわ」

マリアが苦笑して言う
「うん… お、お友達っ …だけどね?」

ソニアが軽く笑う マリアが困り苦笑する

翌朝

マリアが家を出て微笑して思う
(今日も早く起きられた!また早めに出社して プロジェクト企画会議に出る前に 昨日リストアップした企業の資料を 用意しておこう!…自信を持って 発表出来るかは 分からないけど)

マリアがバックから定期券入れを取り出し 入れられている写真を見て 微笑して言う
「私も 頑張ってみようっ」

マリアが歩き出すと レイの声が聞こえる
「マリアー!」

マリアが微笑して振り向く レイが到着して言う
「お早う!マリア!今日も早いな!新しい仕事の為に マリアは頑張ってるんだな!」

マリアが言う
「はいっ 今日は特に もっと積極的に 仕事に挑もうと思って!」

マリアが定期券入れを見る レイが疑問して見て言う
「ん?それは 何だ?」

マリアが微笑して言う
「はい、定期券入れです」

レイが疑問して言う
「テイキケンイレ?」

マリアが苦笑して言う
「電車に乗る為の チケットを入れておくケースなんですけど」

レイが言う
「へぇ?そうなのか?」

マリアが言う
「でも今は 写真入れ… と言いますか 言ってしまうと 亡くなった父の形見なんです」

レイが言う
「そうか マリアの父さんは 死んじゃったって 言ってたもんな?形見って言うと そいつが持ってた物か それを大切にしてやるなんて マリアはやっぱり 優しいんだな!」

マリアが苦笑して言う
「優しいと言うか 思い出の品ですから… でも 正直言うと あまり父の事は覚えて居ないんです 私が5歳の頃でしたから 顔も覚えているのか 写真で見知っているだけなのか よく分からない感じで」

レイが定期券入れを覗き込んで言う
「それが写真か?」

マリアがレイに見せて言う
「はい」

レイが言う
「お?真ん中の これが マリアだな?こっちに居るのが マリアのお母さんだ じゃぁ こいつが…」

マリアが苦笑して言う
「はい、この人が 私のお父さんです」

レイが疑問した後ハッとする マリアが疑問して言う
「ウィザード様?」

レイが思い出して言う
「あっ!マリアっ!」

マリアが驚いて言う
「は、はいっ!?」

レイが言う
「マリアは こうやって ゆっくり話してたら 駄目なんじゃないか?」

マリアが衝撃を受けて言う
「え?あっ!そ、そうでしたっ!」


会社

マリアが出勤して来て言う
「お早う御座います!」

課長が言う
「お早う 今日も張り切っているな?マリア主任?」

マリアが苦笑して言う
「はい まだ2日目ですけど」

課長が軽く笑って言う
「その調子で 頑張ってくれたまえ」

マリアが言う
「はい」

課長が言う
「と、それから また 変更資料が送られてきた それも 同じく ミッシェルリンク社の数値変更だな」

マリアが言う
「え?またですか?」

マリアが課長から資料を受け取る 課長が言う
「うむ… まぁ 新会社と言うものは 最初の頃は多少落ち着かないものなんだが…」

マリアが資料を見て言う
「この数値変更の割合だと 先日のダム事業からの撤廃に近い数字ですね?また 事故でもあったのでしょうか?」

課長が言う
「そんな感じだな?とは言え 今回は そのダムの様な ニュース沙汰にはなっていないから 何らかの事故があったにしても 復旧は可能だろう… 従って その数値は 一応の現状と言う事で 以前の数値を基準にしておいたら 良いだろう」

マリアが言う
「はい 分かりました」


プロジェクト企画会議

社員が言う
「と、言う事で 今回のプロジェクトには やはり ミッシェルリンク社への介入を主たるものとし 可能な限りの…」

マリアが思う
(やっぱり ミッシェルリンク社ね… 確かに…?)

マリアが資料を見て思う
(水力発電や風力発電なんかの 発電企業だけかと思っていたら 製造業もやっていたんだ… それに 元々は そっちが主体の会社で その為の電力確保の為に 発電事業を始めて それが 公共事業との共同運営を始める 切欠になって… お陰で この数年間で こんなに大きな会社に…)

社員が言う
「確かに 急成長を遂げる会社と言うのは 相応のリスクを持ち合わせてはいますが 今 このミッシェルリンク社と 手を組んでおかなければ 他の企業に先を越されるでしょう 従って 早期の介入を決行し いち早く我が社との提携を結び 今後の…」

マリアが息を吐いて思う
(そうよね… 誰が見ても そう思う きっと うちだけじゃなくて 他の企業も提携を狙っているはずだから 先を越されない内に 早めに手を打たないと…)

マリアが別の資料を見ながら思う
(ああ… 折角 今まで私が商談して 感じの良かった会社の資料を 作ってきたけど… 何処も ミッシェルリンク社には遠く及ばない… 今期のプロジェクトは ミッシェルリンク社で決まりだろうな…)

マリアが息を吐いて言う
「ふぅ… 何だか残念…」

社員が言う
「うん?何か?」

マリアが衝撃を受けて言う
「はっ!?い、いえっ!何もっ!」

司会役が言う
「では、これで 休憩として 次の会議は午後3時から 同じく この場所で」

社員たちが席を立つ マリアがホッとして思う
(危ない危ない… つい 口に出ちゃうのよね… 気を付けなきゃ)

マリアが立ち上がって思う
(さて、気を取り直して お昼だから マキに会いに行こう!)

マリアが立ち去る


中央公園

マキが言う
「あ~ 私も 知ってるよ~ ミッシェルリンク社」

マリアが言う
「え?そうなんだ?どうして?もしかして マキが会社に居た時に…?」

マキが言う
「そうそう って 言っても 私が直接商談したー とかじゃなくて お爺ちゃんにね?土地を譲って欲しいって 来てたの」

マリアが驚いて言う
「え?…って 事は?」

マキが言う
「あ、でもね?うちのお爺ちゃん 家とか会社とか建てる分には構わないけど 工場とか そう言うのは 絶対嫌だって 断固 断ったんだ~」

マリアが言う
「へぇ~ そうだったんだ?」

マキが言う
「でも なんか 凄い怖くって 私 お爺ちゃんが心配だったよ~ ホント 何も無くて良かったぁ…」

マリアが疑問して言う
「怖いって 何が?」

マキが言う
「強引って言うのかな?それ以上?なんか 最初のうちは どうしてもお願いしますー みたいな感じだったんだけど その内 怖い人とか家に来て… 凄い強要されてて 私、怖かった…」

マリアが驚き言う
「そんな 強引な会社なんだ?」

マキが言う
「そうみたいだよ?まぁ… 急成長している会社だから 裏とかあるのかもね…?マリアも プロジェクトで関係するようになるなら 本当に気を付けてね?」

マリアが言う
「う、うん… 分かった 心配してくれて 有難う マキ」


会社

マリアが調べ物をしながら思う
(今まで仕事で 色んな会社を見てきて 確かに困った会社はあったけど… マキが言う様な会社は無かった… ”裏とかある” 裏って?どんな感じなんだろう?裏って評されるくらいだから こんな表立った調べ方じゃ 分からないかな?)

マリアがモニターを見て言う
「う~ん… 難しいなぁ?」

マリアが時計を見てから 操作をして思う
(とりあえず ミッシェルリンク社で見つかる範囲の資料を揃えて置こう きっと午後の会議も ミッシェルリンク社の話になる筈だから…)


プロジェクト企画会議

社員が言う
「と、ミッシェルリンク社には 予てより そう言った話は多く見られますが 元より 工場類の立地には 地元住民の反対と言うものは 付き物でして…」

マリアが思う
(う~ん やっぱり 調べる事は皆同じ… そうよね?一企業の推薦が有れば その企業に関する 良い部分と悪い部分を 洗い出すと言うのは 当然の事)

社員が言う
「しかし、ミッシェルリンク社は その土地の購入には 表沙汰に出来ない手法を取っていると言う 噂もあります そちらの方の確認は 取られているのでしょうか?もし我が社と提携を結ぶとなれば…」

マリアが思う
(そう、私もそれが気になって… それで 調べてみたんだけど… 見つからなくて)

社員が言う
「噂は噂でしょう?急成長を遂げる会社には 同企業などより そう言った ”嘘偽りの” 噂を付けられると言う事は 良くある話です」

マリアが衝撃を受けて思う
(え?嘘?偽り?…違う!…だって マキが言っていたものっ マキのお爺ちゃんが 強要されたって…っ マキは怖かったって言ってた…っ 嘘偽りの 噂なんかじゃないわっ)

社員が続けて言う
「では、実際 その様な 噂の確認は取られていますか?私の方でも その辺りは調べましたが その様な事実は 確認されていません」

マリアが言う
「い、いえ…っ 有ります!有りますよっ!」

社員たちがマリアを見る マリアがハッとして思う
(あっ!お、思わず…っ)

――…

マリアが席に戻りホッとして身を静めて思う
(良かった… 怒られちゃうかと思って 緊張しちゃった… でも 一応 発言出来て良かった… でもマキに もっと詳しく教えてもらうべきかな?出来れば マキのお爺さんに 直接聞けたら良いんだけど…)

後輩1が言う
「あの… マリア先輩…?」

マリアが気付いて振り返って言う
「あ うん?何?どうかした?」

後輩1が言う
「その… まだ お仕事中ですか?」

マリアが疑問して時計を確認して思う
(もう こんな時間だったんだ… 帰らなきゃ…)

マリアが言う
「ううん?もう退社時間だね 考え事してて気が付かなかった」

後輩1が言う
「実は マリア先輩に お願いがあるんですが…」

マリアが疑問して言う
「え?私に?」

マリアが思う
(お願いってなんだろう?仕事に関する事なら…?)

後輩1が言う
「でも… 仕事に関する事じゃないんですけど… 良いでしょうか?」

マリアが思う
(仕事に関する事じゃないんだ?それで 私に…?)

マリアが言う
「う、うん?私に分かる事なら 構わないけど?」

後輩1が言う
「有難う御座います!あの!先日 皆でお食事行って 2次会のお店を マリア先輩が紹介してくれたじゃないですか?あのお店 とっても美味しくて!」

マリアが微笑して言う
「そう?良かった!あのお店は 自信持って お勧め出来るお店だったから 昔良く行ってたし」

後輩1が言う
「はいっ それで マリア先輩 もしかして この辺りのお店とか 詳しいのかな~?って思って!」

マリアが思う
(何だ そんな事ね…?それなら!)

マリアが言う
「そうだね 少しは分かるかな?大学もこの町だったし 幼馴染の友達とも 色んなお店に行ってて それに 食べ物関係のお店に詳しい友人と ファッション関係に詳しい友人が居たものだから 特に!」

マリアが微笑して思う
(マキとリナがね?)

後輩1が言う
「わぁ~ そうなんですか!通りで!凄いっ 羨ましいですぅ!」

マリアが言う
「お店の紹介くらいなら出来るよ?何かお店を 探しているの?」

後輩1が言う
「はい!実は ファッション関係のお店を!」

マリアが言う
「そうなんだ それなら 今一番新しいのは イーストエンドストリートの延長線にある マキリンストリートのお店が一番新しいよ?通りが新しいから!ついでに 美味しいイタリアンのお店もあるし!」

マリアが思う
(あぁ… こういう会話 何だか懐かしいな…)

後輩1が言う
「わぁ!そうなんですか!じゃぁ そこにしようかなぁ!?」

マリアが言う
「うん、お勧めだよ 後 以前行ってた所としては~」

後輩1が言う
「あ、あのっ マリア先輩っ!?」

マリアが言う
「うん?何?」

後輩1が言う
「不躾ですけど… もしかして 明日のお休みは ちょっと時間あったりしませんか?」

マリアが言う
「え?明日…?」

マリアがハッと思い出す

レイが言う
『そうか それじゃ あさっての午後は 俺とずっと一緒に居られるか?それくらい一緒に居ないと やっぱり 駄目だからな?』

マリアが言う
『あの… ウィザード様 その… 駄目って 何が…』

マリアが思う
(そ… そう言えば 昨日の夜 ウィザード様から あさっての午後はって… 一緒に居ないと駄目って …結局 何が駄目なのかは 分からず仕舞いだったけど…)

後輩1が言う
「その… マリア先輩に …手伝って頂きたくて」

マリアが疑問して言う
「え?手伝うって お店を教えるって事じゃなくて?」

後輩1が言う
「それもあるんですけど 出来たら 一緒に選んでもらいたいんです」

マリアが言う
「選ぶって…?」

マリアが思う
(…お洋服かな?)

後輩1が言う
「探すのが 自分の服とかなら お店だけでも十分なんですけど… 明日選ぶのは その… 好きな人へのプレゼントなんです …キャァ~ 言っちゃったっ」

マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?好きな人への… プレゼント… そ、それって…?」

マリアが思う
(まさかっ ”あの魔法使いさん”だったり して…?)

後輩1が言う
「実は 先日 初めての商談で 私、すっごく 緊張していて…っ 商談は全然駄目だったんですけど その… その時の 相手方の社員さんが とっても素敵な人で…っ!」

マリアが呆気に取られて言う
「え?…あ、そ、そうなんだ?」

マリアが思う
(ああ… 良かった… いつも 仕事以外の話となると ”あの魔法使いさん”についての 質問ばかりだから てっきり… でも 違うなら… って?)

後輩1が言う
「男の人へのプレゼントって 私 買った事が無くて… どんなのが良いのか 分からなくて それで…」

マリアが慌てて言う
「え!?そ、それで 私にっ!?ごめんっ 私 無理だわ!?その…っ 私もっ 買った事 無いから…っ」

後輩1が言う
「でも、1人で選ぶより ずっと良いと思うんですっ ですから お願いしますっ マリア先輩っ!」

マリアが言う
「え… えぇ~とっ」

マリアが思う
(ど、どうしようっ!?)

後輩1がマリアを見つめる マリアが困って思う
(う… こんな時 リナが居てくれたら… あ… リナ 調子悪いんだよね …大丈夫かなぁ?心配だなぁ …あ、そっ それじゃぁ!?)

マリアが言う
「それじゃ… そう言う事に詳しい 友人に聞いてみようか?でも… その… 今ちょっと調子が悪いみたいだから あの…」

マリアが思う
(こう言った事を理由に リナの調子を 聞いてみようかな?)

後輩1が言う
「わぁあっ!有難う御座います!でも 本当に!マリア先輩が来てくれるだけでも 十分なんで!是非 お願いします!」

マリアが言う
「え~と~… それじゃ 明日 少しで良いんだよね?午後はちょっと…」

マリアが思う
(でも… リナに連絡取れなかったら 午前中は難しいな…)

マリアが言う
「あ~ その~… 午後の早い時間とか?」

マリアが思う
(う~ん 仕方が無いよね?それに ウィザード様には ちゃんと返事はしていないし… その… いつものお礼とは言え… 午後の時間ずっと 抱き付かれて お茶してるって言うのも ちょっと辛いし… それなら これくらいで 丁度良いかも?)

後輩1が言う
「はいっ!有難う御座います!それじゃ 明日の午後1時に!会社の前で待ち合わせで 良いですかぁ!?」

マリアが言う
「うん、分かった それじゃ それで…」

マリアが苦笑して思う
(…これで 良いよね?)


会社 外


後輩1が言う
「それじゃ また明日!お疲れ様でした!マリア先輩!」

マリアが言う
「うん お疲れ様 また明日」

後輩1が走ってバスへ向かう マリアが息を吐いて言う
「ふぅ…」

レイの声が聞こえる
「マリアー!」

マリアが苦笑する レイがマリアの横に降り立って言う
「マリア お疲れ様!迎えに来たぞ!」

マリアが言う
「はい お疲れ様です ウィザード様 お迎え 有難う御座います」

レイが言う
「礼なんて要らないよ マリア!俺が やりたくて やっているだけなんだからさ!」

マリアが思う
(やりたくて やっているだけ… か… でも 本当は…)

レイが言う
「それで マリア 今日はこの後 何かあるのか?それとも 早速家に帰るか?」

マリアが言う
「それでは 早速 家へお願いします」

レイが言う
「よし!それじゃ!」


自宅前

レイが言う
「はい 到着ー!」

マリアが思い出して言う
「あ、そうでした ウィザード様 実は 明日なんですが…」

レイが言う
「ああ!明日はマリア休みだろ?それとも 仕事になったのか?」

マリアが言う
「いえ… 仕事ではないんですが…」

レイが言う
「そうか!それなら 午後は一日一緒に居られるよな?灯魔儀式もないし やっと ゆっくりお茶が飲めるな!それとも どっか行くか?マリアが行きたい所なら 何処でも連れてってやるぞ!」

マリアが思う
(あ… それなら ミッシェルリンク社の!…じゃなくて!)

マリアが言う
「そうではなくてっ その… 明日の 午後一日は ちょっと 難しくなってしまいまして…」

レイが言う
「うん?そうなのか?」

マリアが苦笑して言う
「はい 会社の後輩に ちょっと頼まれ事をされて… それに 付き合う事になってしまって…」

レイが言う
「う~ん そうなのかぁ それじゃ ちょっと短くなっちゃうか… でも しょうがないな?マリアは優しいから 後輩の面倒も 見てやってるんだったな!それなら… 俺も 何か考えるよ!」

マリアが衝撃を受けて思う
(え?か… 考えるって… ウィザード様が 前回考えた事って言ったら)

レイが言う
「うん!それじゃ やっぱ俺も これからは この家で!」

マリアが言う
「ですから!それは駄目ですからっ!」

レイが言う
「え?そうなのか?マリアと一緒に寝られれば それで足りると思うんだけど?」

マリアが衝撃を受けて言う
「なっ!?そ、そんなの もっと 駄目ですよっ!?」

レイが言う
「何で?」

マリアが慌てて言う
「何でもっ!」

マリアが思う
(あぁ… でも きっと ウィザード様の事だから 一緒に寝るって言っても 本当に ”一緒に寝るだけ” なんだろうけど… でも、そうだとしても…)

マリアが言う
「と、とにかくっ それも駄目ですからっ」

レイが言う
「あ、それに 俺… マリアに話があってさ?」

マリアが言う
「え…?」

レイが言う
「その… 俺 軽い話なら 何でも言えるんだけど …こういう話って ちょっと苦手で…」

マリアが衝撃を受けて思う
(えっ!?そ、それって まさか…っ!?で、でも… ウィザード様の事だから きっとまた 神聖な…!?)

レイが視線を逸らす マリアが衝撃を受けて思う
(し、視線逸らしたっ!?こんな事って あったっけっ!?無かったと思うっ だって ウィザード様といえば 自信過剰で いつも 何にでも 怖じける事がなくってっ!?)

レイが困って言う
「あぁ… やっぱ 駄目だ …明日にしよう」

マリアが衝撃を受けて思う
(えっ!?そんなっ!?『この家に住みたい』とか 『一緒に寝たい』とか 簡単に言える人がっ 日時を改めるってっ!?)

レイが苦笑して言う
「明日 ゆっくり話すよ その方が 俺 ちゃんと 言えると思うから」

マリアが思う
(それは まさかっ!?)

マリアが呆気に取られたまま言う
「は… はい…?」

レイが言う
「それじゃ 俺 帰るな!お仕事お疲れ様!お休み!マリア!」

マリアが困惑しつつ言う
「お、お休みなさい…」

レイが風に消える マリアが言う
「明日… 私、何を 言われるんだろう…?」

マリアが不安げに玄関へ向かう

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