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2章 魔法使いのウィザード様

嗚呼、私のウィザードさま 「突然の告白」

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翌朝

TVでニュースが放送されていて 映像にダムの様子が映り キャスターが言う
『現場から中継いたします!この所降り続いた大雨の影響で こちら レンデン町のポルト村のダムが 貯水量を遥かに超え ポルト村の住民には 昨日から避難指示がなされています』

マリアがTVへ向けていた視線を 窓の外へ向けて言う
「今日も止む気配は無いみたい…」

マリアが思う
(この町には ダムは無いけど 何だか心配… でも 大灯魔台の灯魔儀式が成功すれば もしかしたら?)

TVに村人が映っていて言う
『…から こったら ダムなんか要らないって 言ったんだよぉ~ なのに 村長さんの 道楽息子が…っ』

マリアがTVを消して立ち上がって言う
「そろそろ時間かな?」


玄関

マリアが外に出て 玄関に鍵を閉め傘をさして歩き出す

レイの声が聞こえる
「マリアー!」

マリアが振り返ると レイが抱き付いて言う
「お早うー!マリアー!水の魔力の怒りも そろそろ 限界だなー!?」

マリアが苦笑してから言う
「お早う御座います ウィザード様… いつもお迎え有難う御座います それで その 水の魔力の怒りって言うのは 今日の大灯魔台の 灯魔儀式が成功して 結界が強まれば 落ち着いたりも するのでしょうか?」

レイが言う
「それとこれとは 全く別の問題だよ マリア!本物のウィザードと 偽物のウィザードの違い位 違う事だよ!」

マリアが衝撃を受けて思う
(その前に その例えの方が 全く 分からないのですが…!?)

マリアが言う
「その… 本物のウィザードと 偽物のウィザード と言うのは…?」

レイが言う
「ん?そうだな!それじゃ まずは その違いから見に行くか!マリア!」

マリアが困惑しつつ言う
「は、はい…?」

マリアが思う
(その違いよりも前に 水の魔力に付いて聞きたかったんだけど… まぁ今は 良いかな?今日はお休みだし 時間はあるものね?)

レイがマリアを包み風に消える


大灯魔台神館

レイとマリアが現れる 館内のアナウンスが薄っすら聞こえる

レイが言う
「お?丁度良い時間みたいだな!これなら 急がなくても大丈夫だ」

マリアが言いながら歩き始める
「はい でも 早く行きましょう?これ以上濡れると 見学している間に 風邪を引いちゃいそうですから」

マリアが思う
(どう言う訳か 移動の間には 雨に濡れなかったけど その前に 誰かさんの マリアー のお陰で…)

マリアが苦笑して息を吐く

レイが言う
「ああ、それなら大丈夫だよ!マリア」

レイとマリアが神館の入り口に到着して マリアが傘を畳むと レイが軽く杖を動かす

レイとマリアの衣服に付いていた水分が 弾かれたように外れて地面に落ちる

マリアが呆気に取られていると レイが言う
「だから言っただろ?水と風は仲が良いんだって!さあ 行こう マリア!もうすぐ始まりそうだぞ?」

レイが向かう マリアが言う
「は、はい」

マリアがレイの後を追う


見学スペース

レイに続きマリアがやって来て 見学スペース最前部へ向かうと 同じくして 大灯魔台の台座に ウィザードたちが出て来る マリアが視線を向ける

レイがマリアを見て言う
「マリア 寒いのか?」

マリアが反応してレイを見て言う
「え?いえ?お陰さまで 大丈夫です」

レイが言う
「そうか 寒いなら 暖めてやるからな?」

マリアが衝撃を受け慌てて言う
「え!?あ、あのっ!…分かってはいますが!」

マリアが頬を赤らめて顔を逸らす レイが疑問する

マリアが思う
(もぉ… ウィザード様って そう言う言葉の意味 分かってて 言ってるのかな?)

レイが疑問して言う
「ん?今度は暑いのか?それなら 冷やしてやろうか?」

マリアが言う
「だ、大丈夫ですっ!」

レイが不思議そうに言う
「そうか?無理はするなよ?マリア?」

マリアが苦笑する


灯魔口

ウィザードに続きウィザードたちが集まり 皆がレイを一瞥してから ウィザード2が言う
「今日も見学スペースに 居るみてぇだが… と言う事は?」

ウィザード3が言う
「また 基本魔法の火で行くか?けど そうするとな… 結局 誰かさんに 良い評価が集中するんだよな?」

ウィザードたちが ウィザードを見る

ウィザードが言う
「この大灯魔台の属性は 水であると 私は思っている 従って 一属性で通すのなら 水で行こう」

ウィザードたちが一瞬驚いてから ウィザード2が言う
「ンで?水だと?」

ウィザード4が言う
「大灯魔台の属性は 起動を終えるまでは 分からないんじゃなかったのか?」

ウィザード5が言う
「貴方が言った筈だが?」

ウィザードが言う
「そうだな 嫌なら 全ての属性で起動した後 火から順に行おう …水で灯る筈だ」

ウィザード2が言う
「灯らなかったら?3灯目は 出来ねぇぜ?」

ウィザード5が言う
「このメンバーじゃ 2灯目すらキツイかもしれない」

ウィザード6が言う
「法衣の色は相変わらずでも 先輩は今回はホンキなんだから 俺は任せるよ」

ウィザード4が言う
「前回あれだけの事をやっておいて またその色で 1番の控え出口に立つのは 当て付けか?手元に見える 白い法魔帯が 余計に目立つな?」

ウィザードが言う
「私は今回を持って引退する」

ウィザードたちが驚いて言う
「「え…っ!?」」

ウィザードが言う
「従って もし 水で灯らなければ 全ての責任を私が負おう …そうだな やはり全てを灯して 2属性を試すか?その方が 万が一 水で灯らなくとも その時点で 火と水が候補から外れるだろう?その方が後に繋がるか?」

ウィザードたちが顔を見合わせ ウィザード4が言う
「どうする?」

ウィザード2が言う
「2属性を試すなら 最初に水をやって それが灯らなければ 引退する先輩に頼って 火ではなく もっと上の属性を…」

ウィザード7が言う
「まさかこんな話し合いをしていたなんて 知らなかったが… 俺は 火の一属性でやるもんだと思ってた 全ての属性を灯すだなんて …俺はやりたくないんだが?」

ウィザードが言う
「水の大灯魔台に 対極の火の一属性では 8回の灯魔でも 灯らないと言う事が分かっている 従って 一属性なら 水で行く」

ウィザード3が言う
「折角 先輩がしょってくれるって言うんだ 失敗に備えた方が特じゃないか?全てを灯すべきだ」

ウィザード7が言う
「水の一属性で行ったって良いだろう?その方が楽じゃないか?」

ウィザード6が言う
「なんだ やっぱり7番は 精神力に自信なしか?」

ウィザード7が言う
「何とでも言えっ」

ウィザードが言う
「…水の一属性で行こう」

ウィザードたちが視線を合わせた後 ウィザード2が言う
「根拠は?」

ウィザードが苦笑して言う
「経験と感だ …とでも?」

ウィザード4が言う
「引退するつもりでも 教える気は無しか」

ウィザードが言う
「ウィザードならば 3箇所目の属性は 自然と分かるべきだ」

ウィザードが立ち去る ウィザードたちが思わず合わせそうになった視線を逸らして立ち去る


見学スペース

マリアが微笑して言う
「ウィザードの皆さんの会話は ここからでは聞こえませんけど… でも 良いですよね?あのようにして 事前に打ち合わせしている姿って 何だか 意気込みを感じると言うか?協力性を感じるようで!」

レイが言う
「きっと あれだぞ?先輩が 全部の責任を引き受けるから 後の連中は 適当にやれって 言ってるんだよ?」

マリアが衝撃を受けてて言う
「なっ!?何でそんな事 言うんですかっ!?…って言うか そうなんですかっ?」

レイが言う
「ああ、それ位の事言わないと あいつらは 誰かの言う事なんか 聞かないからな?下手したら 灯魔の邪魔さえ しかねないぜ?14年前だってそうだった 先輩の9投目は成功してたのに 他の奴が邪魔をしたんだ… って言っても わざとじゃなくて 本当に能力不足だったのかも しれないけどな?」

マリアが表情を困らせてから言う
「そ、それでは…っ 今回は 大丈夫でしょうか?」

レイが言う
「マリアは 何も心配しなくて良い!俺が居るだろ?」

マリアが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「…そうですね?」

レイが言う
「ああ!」

マリアが視線を大灯魔台へ向ける


大灯魔台 台座

ウィザードが構えると ウィザードたちが続いて構える 全員が魔力を集め 周囲に水が集まる


見学スペース

マリアが言う
「水の魔法…」

レイが言う
「水の一属性で通すつもりだな それなら 6回の灯魔で終わりだから 早く帰れて良かったよ!」

マリアがレイを見て言う
「水の一属性で?それでは この前みたいに 8回行うのでは?」

レイが言う
「水の一属性でやるなら 6回しかやらないよ 水の場合は8回で灯るとしたら 風属性の代わりって事になるけど それだったら 全部の属性で起動をさせてから 6灯目に風魔法を灯魔した方が 断然楽なんだ」

マリアが呆気に取られて言う
「そうなんですか… でも 水の魔法より 風の魔法の方が 難しいのですよね?」

レイが言う
「風の魔法は取得するのに難しいから 5番目の魔法って言われてて 水の魔法は 順番的には2番目の魔法になるけど 灯魔儀式では 一番抑えの負担が大きい魔法なんだ 先輩以外が あのメンバーじゃ 6回がギリギリかもな?」

マリアが心配して言う
「6回がギリギリ… それでは また ウィザード様が お手伝いに行った方が 良いのでは?」

レイが言う
「大丈夫だって あそこにはマリアの お母さんも居るんだぜ?やばくなれば 先輩がちゃんと手を打つって!」

マリアが言う
「そうは言いましても… その先輩が お1人だけでは やっぱり 大変じゃないですか!?前回だって ウィザード様が お手伝いをしたから!?」

レイが言う
「心配ないよ マリア ほら 本物のウィザードと偽物のウィザードの違いが もうハッキリしてきたぞ?」

マリアが疑問して言う
「え?」

マリアがレイの視線の先 ウィザードたちを見て呆気に取られる 台座に居るウィザードたちは ウィザード以外が疲れを見せている

レイが言う
「これなら 何の心配も無い!俺としては もう マリアの家に帰って お茶でもしたい位なんだけどな?」

マリアが衝撃を受けて言う
「い、言っておきますがっ!ちゃんと 最後まで見ますからねっ!?」

マリアが視線を戻して思う
(それにしても… あの様子は?まるで ウィザード様が居た 最初の灯魔儀式の時みたい… でも それじゃ 結局 魔力の強さが 本物のウィザードと 偽物ウィザードの違いって事?)

マリアが見つめる


台座

ウィザードが杖を構え魔力を収集する

ウィザード7が何とか杖を構えて思う
(水の一属性で通すのは… こんなにキツイのか…っ 余計な事言わなければ… でも全部の属性なんて事になったら 俺は起動にすら… 何とか 後2回…っ)

ウィザードが軽く杖を振り上げ 灯魔口に水の魔力を投下する ウィザード2~6が何とか続く ウィザード7がギリギリ堪えた後水の魔法を投下すると 補助灯魔台に5つ目の水が灯る ウィザード7が膝を着く

他のウィザードたちが息を切らす中 ウィザードが余裕を持って構える

ウィザード4が苦笑して言う
「流石 先輩… 完敗だよ」

ウィザード3が言う
「何で 引退するなんて言うんだ?このまま儀式に参加すれば 間違いなく神に選ばれる…」

ウィザードが魔力を収集する

ウィザード2が苦笑して言う
「もしかしたら その神に 選ばれたくねぇのかもな…?」

ウィザード3が驚き言葉を失う ウィザード2が杖を構える ウィザード3が不満そうに杖を構えて言う
「そんな奴が 何で ウィザードになんか なるんだよ?」

ウィザード4が杖を構えて言う
「キツイな… 意識が飛びそうだ…」

ウィザード5が言う
「飛ばすなら 次を堪えてからにしてくれ 隣で失敗されたら その魔力は 俺に向かって来るだろ」

ウィザード6が言う
「けど、心配しなくても 見ろよ」

ウィザード5が6の視線の先 ウィザードの左手を見る

ソニアが気付いて言う
「水の灯魔を行っているのに… どうして火の魔力が 左手に…?」

ウィザード6が言う
「6灯目は 先輩が受け持ってくれるんだろ?俺たちは 前回の8灯目と 同じ位の負担じゃないか?」

ウィザード5が言う
「それじゃ やっぱり あの風のエキスパートが 7番の杖を?」

ウィザード5と6がウィザード7を見る ウィザード7が何もせず立ち尽くしている ウィザード7が思う
(駄目だ… もう… 意識すら 遠い…)

ウィザード5と6が疑問する ウィザード4が言う
「おいっ 集中しろよっ!」

ウィザード5と6がハッとして上空を見上げる 水の魔力が7つに別れウィザードたちへ向かって行く ウィザードたちが構える ウィザードに強い魔力が向かって来るが ウィザードが受け止め 杖を振り上げると 灯魔口に水が落ち飛沫が舞う

ウィザード2が思う
(やっぱり 対極の火の魔法を含ませて 自分へ… 大分助かったな?これで灯れば…)

ウィザード2が灯魔口を見てから 他のウィザードへ顔を向ける ウィザード5がホッとして思う
(何とか ギリギリ…)

ウィザード5が肩の力を抜くと 灯魔口へ向かっていた水魔法が 横から飛んで来た水魔法に吸収されて 持っていかれる ウィザード5が驚いて言う
「え…っ?」

ウィザード6が驚いて言う
「なっ!やられたのかっ!?」

ウィザード6の言葉に ウィザード2~5が驚いて見ると ウィザード7が倒れている 

ウィザード5が言う
「おいっ 馬鹿っ!意識を逸らすなっ!」

ウィザード6がハッとして向き直った瞬間 向かって来ていた水魔法に弾かれ床に倒れる 人々が息を飲む


マリアがレイへ向いて言う
「ウィザード様っ!」

レイが微笑して言う
「大丈夫だ マリア 見てろよ!」

マリアが驚き言う
「えっ!?」

マリアが視線を戻す

ウィザードが左手に灯していた火の魔法を 暴走した水魔法へ放ち ルートを変えさせ 自分へ向かって来た水魔法を次々に 灯魔口へ落とす 人々が息を飲む中 灯魔口に水が灯る


マリアが呆気に取られていると レイが言う
「火の魔法を餌に 水の魔法をおびき寄せたんだ 本物なら これくらいやらなきゃな?自然界の力を ただ借りるだけじゃなくて 使いこなす… 流石 年の功って奴だよ!」

マリアが衝撃を受け怒って言う
「ウィ、ウィザード様っ!?それは 褒めているのかっ 失礼なのか どっちなんですかっ!?」

レイが言う
「良いじゃないか?マリア?ウィザードは 年寄りの方が 強いんだぜ?やっぱ 経験は力なんだよ!」

マリアが一瞬驚いてから表情を困らせて言う
「な… なるほど… では…?」

マリアが思う
(一応 褒めてるって 事なのかなぁ… なら 良いんだけど…?)

マリアがウィザードを見る ウィザードが灯魔口を見上げていた状態から 人々に背を向け苦笑し 控え出口へ向かって行く


控え出口

ソニアが微笑して言う
「お疲れ様でした」

ウィザードが微笑して言う
「ああ…」

ソニアが気付き苦笑して言う
「しかし 他の皆さんが あれ程 お疲れですのに… 一番負担を負われていらした 貴方様は お疲れには見えませんね?」

ウィザードが軽く笑って言う
「そうだな 今日は楽しかったよ」

ソニアが驚いて言う
「え…?」

ウィザードが軽く視線を上げて言う
「思うままに 魔法を使い 楽しんだ… 今はそんな気分だ」

ソニアが呆気に取られる

ウィザードが苦笑して言う
「神聖たるウィザードには 程遠い台詞だな?」

ソニアが軽く笑って言う
「良いではありませんか?たまには そんな時が有られても?」

ウィザードが苦笑して言う
「そうか… では その様にしておいてくれ」

ソニアが軽く笑う

ウィザードが言う
「…もう 結果など どうでも良いのだが」

アナウンスが響く
『大灯魔台 灯魔儀式は 無事成功致しました 続いて この度の灯魔儀式を用いまして ウィザード様の不認定投票を行います 投票に先立ちまして 各ウィザード様へお仕えする 奉者様のお名前を…』

ソニアが微笑して言う
「確認をしなくとも お分かりになるからですか?」

ウィザードが一瞬置いてから 微笑して言う
「いや… だが もうしばらく 眺めさせてもらおう」

ソニアが微笑して言う
「はい 完全に貴方様が成功させた 大灯魔台ですからね?」

ソニアが台座へ向かう  アナウンスが言う
『その後方 ソニア・ノーチス奉者様』

ソニアがキリッと人々へ向いてから静かに礼をする ウィザードがソニアを見て言う
「これで 最後だからな…」

ソニアが顔を上げ人々を見る  そのソニアの姿を ウィザードが微笑して見つめている


見学スペース

レイが言う
「なー?マリアー?もう良いだろう?早く帰らないか?それで 俺と一緒に…」

マリアが言う
「まだですよ!折角 ここに居られるんですから!ちゃんと 不認定票を確認してから 帰った方が スッキリするじゃないですか?」

レイが言う
「不認定になる ウィザードなんて あの 新入り7番に決まってるだろ?あいつ 最後の灯魔を受けるどころか その前に失神してたんだから」

マリアが一瞬呆気に取られた後言う
「え…っ?そうだったんですか?私、あの瞬間 ”お母さんのウィザード様”に向かって行った 水魔法の勢いへ気を取られていて その他の皆さんの事を 見ている余裕がありませんでした 気が付いたら 2人のウィザードが床に倒れていらして…」

レイが言う
「そうか… 俺は むしろ あの7番が 本当に5大魔法使えるのか?って事の方が 気になってたけどな?」

マリアが言う
「え?5大魔法使えるのかって… ウィザードになれば 皆さん使えるのではないのですか?確か以前 ウィザード様 ご自身が言ってらしたじゃないですか?」

レイが言う
「ああ、それが普通なんだけど… 何か あいつは足りない感じがした ただの偽物ウィザードなだけじゃなくて もっと足りない …そんな奴を使ってまで 何をそんなに 急いでいるんだろうな?」

マリアが呆気に取られて言う
「そうなんですか?あっ でも そう言えば?急いではいるみたいですよね?ウィザード様が 町の灯魔儀式を全て終えない内に 大灯魔台の灯魔儀式に参加したのも それが理由でしたし?」

レイが言う
「まぁ 俺はどうでも良いけどな?マリアと居られればさ?」

マリアが一瞬疑問した後 苦笑して言う
「ウィザードでも 魔法使いでも ”マリアのウィザード様”だって 意味ですか?」

レイが軽く笑って言う
「ああ!そうだよ!マリアー!だから 早く 俺と一緒に!」

マリアがプイッと顔を背けて言う
「お茶は ちゃんと 結果を聞いてからです!」

レイが言う
「それも もちろんだけどさ?それよりも」

マリアが疑問して言う
「それよりも…?」

レイが言う
「ああ、帰ったら 俺と一緒に」

マリアがドキッとする レイが言い掛ける
「ひ…」

マリアが慌ててレイの口を押さえて言う
「あー!結果が発表されますよ!ウィザード様っ!」

レイが口をふさがれて言う
「にゅねを…」

アナウンスが言う
『長らくお待たせ致しました これより 各奉者様のお名前をお借りし お仕えするウィザード様への不認定票数を 発表させて頂きます 不認定票総数は200票で御座います それでは 発表をさせて頂きます 不認定票数…』

マリアが集中する アナウンスが言う
『0票 ソニア・ノーチス奉者様』

おぉーと言う歓声の後 自然と拍手が鳴り響く マリアが喜んで拍手をする 控え出口の前で ソニアが観衆へ頭を下げてから振り向いて ウィザードを見て微笑する ウィザードが苦笑する

レイが台座へ背を向けた状態で 不満そうに言う
「なぁ~?マリア~?まだ~?もぉ 良いよぉ~ 帰ろ~よ~?」

アナウンスが続く
『不認定票数 4票 アリル・レイン奉者様 不認定票数…』

マリアが軽く肩の力を抜いた後 苦笑して言う
「もう… 子供みたいですよ?ウィザード様?」

レイが言う
「だって~」

マリアが苦笑した後 台座へ向く アナウンスが言う
『従いまして この大灯魔台 灯魔儀式に置きます ウィザード認定審査の結果は 最も多くの不認定票数 78票を持ちまして…』

マリアが苦笑してから軽く息を吐き 頷いてから言う
「分かりました それじゃ 帰ってお茶にしましょう!ウィザード様!」

レイが言う
「うん!そうしよう!マリア!」

レイとマリアが会場を後にする


自宅前

レイとマリアが現れる レイが言う
「マリアー!お疲れさ…」

マリアが苦笑していた状態からハッとして 回避する レイが玄関ドアに激突して言う
「まぎゃっ!?」

マリアが玄関の鍵を開けながら言う
「さ、すぐに入って お茶にしましょう ウィザード様」

マリアがドアを開ける レイが疑問していると 玄関前の通りをおばさん集団が通り過ぎる


リビング

マリアがティーセットを持って来ると レイが向かいのソファに座っていて言う
「マリア?」

マリアが苦笑して言う
「家の前だって 外です …って言ったじゃありませんか?しかも、最近 ちょっと噂になっているらしいですよ? ”ノーチスさんの娘さんが お家の前で…” って」

マリアが溜息を吐く

レイが疑問して言う
「俺はそんなの どうでも良いと 思うけどなぁ?」

マリアが言う
「ウィザード様は 良いとしても 私は 気になりますから」

レイが言う
「何で?」

マリアが言う
「何でって言われましても…」

マリアがソファに腰を下ろし ティーポットにお湯を注ぎつつ思う
(何でだろう…)

マリアの横にレイが座っていて マリアがお湯を注ぎ終えると レイが抱き付いて言う
「まぁ 良いや!マリアがそう言うなら これからは こうやって家の中で 仲良くすれば良いもんな?」

マリアが思う
(まぁ 確かに… 家の前で抱き付かれているのを 見られて 笑われて 挙句 噂をされるより こっちの方が ずっと良いかも…)

レイがティーポットに魔法を掛ける

マリアが思う
(それに ウィザード様は 普通の男の人と違って 神聖なウィザード様で… 一緒に一緒にって 誘われるのは いつも お茶だった訳で…)

レイが言う
「所で マリア?お茶も良いんだけどさ?そろそろ 一緒に」

マリアが思う
(いつも お茶だった 訳で)

レイが言う
「寝ないか?」

マリアが衝撃を受けて思う
(いつも… お茶… だった? …訳 …なのにっ!?)

マリアが慌てて言う
「なっ!?なななななっ!?」

マリアが一瞬間を置いた後 思う
(何を!?そんな…っ!?そんな急にっ!?しかも よりによって 神聖な大灯魔台の灯魔儀式を見て戻って 更に 神聖なウィザード様の お茶を ご一緒しようと言う この瞬間にっ!?)

マリアが慌てて言う
「なっ!?何を 言ってるんですかっ!?そんな 急にっ!前置きもなしに 早過ぎですよっ!!」

マリアが思う
(そ、そうよっ!イキナリよ!?いくらなんでも 急過ぎるわっ!私はっ… 何の心の 備えもしていなかったのにっ!?今日は2人で 一緒に 大灯魔台の灯魔儀式を 見に行こうって!本当に そ… それだけ だったのにっ!?)

レイが紅茶を注ぎながら言う
「え?そうかなぁ?俺としては 朝から一緒に出かけて 帰って来たんだし… このお茶を飲んだ後で 丁度 良いと思うんだけど?」

マリアが言う
「そ、そんな…っ 事…っ 言われましても…っ だ、大体っ!ここはっ 私とお母さんが い、一緒に住んでいる家ですしっ!?そ、それに… あっ!そ、そうですよ!?先輩がっ!あの ウィザード様の”先輩”が 結界魔法を 張っているんですからっ!」

マリアが思う
(そうよっ!お母さんが帰ってくればっ そんな事を しているなんて事は もちろんっ あの ”お母さんのウィザード様” が!お母さんの帰った この家にっ!わ、悪い魔力 が居るって…!)

レイが言う
「ああ!そうだな!何か有れば 例え 俺が無防備な状態でも 先輩が居るから 丁度良いだろ?」

マリアが思う
(何んで 丁度良いんですかっ!?)

マリアが言う
「と、とにかくっ!駄目ですっ!そんな 急なのはっ!私… やっぱり 受け入れられませんからっ!」

レイが言う
「そうかぁ… じゃぁ しょうがない マリアがそう言うなら… また今度で!」

レイが紅茶を飲む マリアが困惑しながら思う
(ま、また今度っ!?)

レイが言う
「でも マリア?俺もしかしたら 耐えられなくなって…」

マリアがギクッとする レイが言う
「…寝ちゃったら ゴメンな?俺 いつも昼寝をしてる時間が もう 過ぎちゃってるからさ?」

マリアが疑問して言う
「え?」

レイが言う
「10時のお茶を飲んだら いつも その後 1時間 昼寝をするんだ 今日は 2時になっちゃったけど これを飲んだら 10時みたいに眠くなりそうで」

マリアが衝撃を受け思う
(ま… まさか また…?)

レイが紅茶を飲んでから言う
「マリアは いつも忙しいからさぁ?折角の 休みなら 一緒に昼寝でもしたら 疲れも取れて 丁度良いと思ったんだけど… やっぱ いつも起きてる時間には 眠れないもんか?まぁ そうかもな?」

マリアが言う
「昼寝…」

レイが言う
「うん!昼間に1時間 昼寝をするとさ?体が 良く休まるんだよ!1時間なら 夜眠るのにも 問題ないし でも ちょっとでも 寝過ぎちゃうと 夜の眠りにも 影響が出ちゃうから その辺が 難しい 所なんだよな~?」

マリアが落ち込んで思う
(あぁ… この話し振りからして 間違いなく 神聖なお昼寝だわ… それなのに…)

レイが嬉しそうに紅茶を飲んでいる マリアが息を吐いてから 紅茶を一口飲んで思う

(でも まぁ… 一緒にって… それは いくら 神聖なお昼寝だとしても やっぱり無理だし… それに 私は ウィザード様に)

マリアが言う
「あ、あの… ウィザード様?」

レイが言う
「ん?何だ?マリア?」

マリアが言う
「唐突ですが ウィザード様は ウィザードになる前の 魔法使いの時には アウターサイドの村で 修行をなさっていたんですよね?」

マリアが思う
(今日は今日で 幾つか聞いておきたい事が あったんだったっ …ウィザード様が耐え切れずに 眠ちゃうって言うなら その前に 聞いておかなきゃっ)

レイが言う
「うん まぁ そうかもな?でも 俺は あんまり 魔法使いの修行らしい修行なんて してなかったし… ただ のんびり 空を飛び回って遊んでいた だけだよ~?」

マリアが衝撃を受けて思う
(空を飛び回って遊んでいた だけって…?それで修行に?)

マリアが気を取り直して言う
「そ、そうですか …あ、でもっ!?それなら やっぱり ”探求者”の人なんかも 良く… 見かけたり しましたよね?空の上からなら 良く見えるでしょうし!?」

レイが言う
「探求者?」

マリアが言う
「はい… 私の友人の… 彼が その探求者になったそうで… アウターへ行って この世界に悪影響を与えている 異常魔力の元を 探し出そうとしている そうなです」

レイが言う
「ふ~ん?…あっ あいつ等の事か?なるほど そうだったのか~?」

マリアが言う
「…あ、やっぱり ウィザード様は 探求者の事 ご存知なんですね?」

レイが言う
「うん あいつらが その探求者って 奴だったのかな~って?今 マリアの話を聞いていて 思っただけだけど アウターに物騒な道具を持って 出て行く連中だろ?何か探しているな~ とは思ってたけど そっか 異常魔力の元を探してたのか …無謀な連中だな?」

マリアが思う
(無謀… なんだ…?そうかもしれないけど…)

マリアが言う
「…確かに 危険なお仕事ですが この世界の為にって 必死なのは 私にも分かります …それで もしかして ウィザード様なら そのお仕事に 協力出来るんじゃないかな?って 私、思ったんですけど?」

レイが言う
「協力って?」

マリアが言う
「探求者の方々は 自分で武器を持って行くのも もちろんですが アウターサイドの村に居る魔法使いに 護衛をお願いしたりするそうなんです でも その魔法使いの方々は 皆さん ウィザードになる事を目的として 修行をして居るそうなので 探求者の護衛は 断られてしまう事も 多いらしくて …しかし」

マリアがレイを見て言う
「ウィザード様は 以前 アウターからの 大量の野生動物の襲撃を 退治する事も出来ましたし 魔法使いになっても ウィザード級の実力があると言う事は きっと アウターサイドに居る魔法使いさんより ずっと強くて 探求者の護衛も 出来ちゃったりするんじゃないかなって?」

レイが言う
「ああ、そう言う事か でも それは無理だな?」

マリアが呆気に取られて言う
「え?どうしてですか?」

マリアが思う
(もしかして… やっぱり ”マリアのお願いじゃないから” とか ”マリアの護衛しかしない”とか そう言う…?)

レイが言う
「だって、そいつらは アウターに行くんだろ?アウターって言うのは 元々灯魔台の結界が 届かない所を言うんだから そこへ行く奴らの護衛なんて 出来ないよ」

マリアが言う
「え?どう言う事ですか?ウィザード様の魔法なら 以前の様に 沢山の野生動物に襲われたって また…」

レイが言う
「アウターでは 魔法は使えないからさ?」

マリアが驚いて言う
「…え?」

レイが言う
「魔法は 正常な自然の力を 借りるものなんだから その自然の力が狂っちゃってる 結界の外 アウターでは使えないんだよ だから 居るんだよな?たまに アウターサイドで修行しているつもりが うっかり アウターまで行っちゃって そこで 野生動物にやられちゃう 魔法使いがさ?」

マリアが呆気に取られる

レイが言う
「だから 探求者なんて 無謀だよ 死にたくなかったら 止めておけって そいつにも 言ってやれば良いんじゃないか?」

マリアが言う
「そう… ですか… そうですね?…でも」

マリアが視線を落として思う
(もしかしたら 探求者の人たちは もう とっくにその事には 気付いているのかもしれない… だから護衛は無しでも… 自分たちだけでも… って)

レイが言う
「そんな事しないで 結界の中に居れば良いだろう?それだけだよ?結界の中の土地だけでも 人は十分生きていけるんだからさ?大体 外の事を考える位なら もっと 中の事を考えれば良いのにな?そいつらもさ?」

マリアがレイを見て言う
「結界の… 中の事…?」

マリアが窓の外を見て思い出して思う
(あ、そう言えば…)

マリアがレイを見て言う
「ウィザード様 今朝 言っていた この雨のお話… 今日成功させた 大灯魔台の灯魔儀式とは 関係がないのですよね?…と、言う事は 結局 何をしたら 水の魔力は怒りを静めてくれるんですか?」

レイが言う
「うん!流石マリアだな!そう言う事だよ まずは 結界の中からってな!」

レイが紅茶を注ぐ マリアが言う
「水の魔力が怒って… 人に危害を与えようと言う事は 原因は人に有る訳ですよね?それでしたら 当然 それを取り除くべきだと思いますが その… 何が原因か?って言うのは ウィザード様には 分かるんですか?」

レイが言う
「ああ、それを 解決するのが ウィザードの役目だよ ウィザードの役目は 結界を張るだけじゃないんだから」

マリアが一瞬呆気に取られた後 慌てて言う
「で、でしたらっ!こんな所で 悠長にお茶なんかして居ないで 今すぐ そちらを行うべきなのでは 無いんですかっ!?」

レイが言う
「うん でも 俺はウィザードじゃないし そもそも この雨は この町に危害を与えるものじゃないから この町の雨は ただの とばっちりって奴だよ?」

マリアが言う
「この町の雨は とばっちり?では…」

レイが言う
「今 雨が降ってる この町も 隣の町も 関係ない 原因がある町には もっとハッキリ 影響が出てるよ それを解決するのは その町のウィザードの役目だ」

マリアが思う
(この町でも 隣の町でもない… もっとハッキリ影響が出ている… と言う事は やっぱり レンデン町?だとしたら その町のウィザードの役目… そのレンデン町のウィザードって?もしかしたら 今日あの場所に…?でも 奉者の名前は紹介されても 町の名前までは…)

マリアがハッと思い出して言う
「そう言えば!以前 ウィザード様と一緒に 大灯魔台の灯魔儀式に出席した時 私、あの場所に居た他の5人の奉者と ご挨拶をして その時」

マリアが立ち上がり 荷物の下へ行って 手帳を取り出しページをめくりながら言う

「私、あの時 お名前と一緒に何処の町を担当していると言うのも 話したんです それで メモをしておいて… 今まですっかり忘れていたんですが… あっ!」

マリアが思う
(あったっ!レンデン町のウィザードに仕える奉者は リア・サインさんだ …あの時 3番の控え室を使っていた …って言う事は 実力は ウィザード様を除けば あの中で2番目っ!これなら大丈夫かもっ!?…でも ウィザード様は ”先輩”以外は偽物だって言っていたし… それじゃ…?)

レイが眠そうに言う
「マリア~?俺は マリアの居る この町の事じゃないんだし ついでに マリアのお母さんの居る 隣町でもないんだからさぁ…?」

マリアが戻って来て言う
「それは そうですがっ やっぱり 気になるじゃないですか!?水の魔力が怒っていても ”リア・サインさんのウィザード様”では 対処が出来なかったりしたらっ!?」

レイがマリアに抱き付いて言う
「だから この町のマリアは 他の町の事まで 考えなくても良いのに 考えたり心配したりするんだから… やっぱり マリアはマリアだよな…?」

マリアが手帳を見つつ言う
「この町であっても 他の町であっても 皆… 所で ウィザード様?その マリアはマリアって どう言う意味ですか?私が それだけ心配性だ って事ですか?それとも…?」

レイが言う
「マリアは 自分の事じゃなくて 他の奴の事や 他の町の事まで心配する… そんな奴は居ないと思ってたんだけど… マリアは 居たって事だよ… だから俺は…」

レイがマリアに近付いて言う
「そんなマリアの事が 大好きだよ」

マリアが驚き 目を見開いて思う
(えっ!?)

マリアが思う
(い、今… 何て?)

マリアが呆気に取られたまま言う
「ウィ、ウィザード様っ!?今 何て… えっ!?」

マリアがレイへ向くと驚く レイがマリアの唇に近付き目を閉じる

マリアが驚いて思う
(う、嘘っ!?今まで一度も そんな事…っ!?で、でもっ!今更と言えば 今更でっ ずっと そんな感じだとは 思っていたけど…っ!?で、でもっ!?だからってっ!?やっぱり そんな 急で… わ、私 ど… どうし…)

マリアがレイの唇を見ていると レイが脱力して眠る

マリアが衝撃を受けて思う
(…って 寝たんですねっ!!)

レイがマリアにもたれかかる マリアが慌てて レイの体を抑えて思う
(本当に寝てるし…っ お、重い…っ)

マリアが怒りを押さえて思う
(もうっ やっぱりと言えば やっぱりだけどっ …本当にっ)

マリアが苦笑して言う
「もうっ …ウィザード様?これから1時間も ここで寝ていては 本当に お母さんが帰って来ちゃうかも しれませんよ?良いんですか?”先輩” に 怒られちゃいますよ?」

レイが言う
「う~ん… マリア~…」

マリアが苦笑する


マリアの部屋

マリアがベッドに倒れ込んで言う
「ふぅ~ 重かったぁ 人って本当に 眠っちゃうと重いのよね… しょうがないから お昼寝させてあげようと思ったけど あのまま1時間なんて押さえていたら ウィザード様だって寝違えちゃうだろうし …私も筋肉痛所じゃなかっただろうし」

マリアが寝返りを打って言う
「まぁ 少し動いたら 起きてくれたから 良かったけど…」

マリアが軽く息を吐くと あくびが出る

マリアが思う
(あ… 何だか 私まで 眠くなっちゃった… そう言えば 今日は久し振りの休暇だったのに 朝もそこそこ早かったし 心配事が多くって 最近は夜も 遅かったから…)

マリアが布団に入りながら思う
(私も少し お昼寝をしてみよう… お昼寝は 1時間だっけ…?気を付けないと… ね…?)

マリアが眠りに付く


夜 

マリアが夢を見ている アナウンスが言う
『それでは 本物のウィザード様!灯魔台への灯魔を お願いします!』

マリアが顔を向けると ウィザードが杖を振り上げる 次々に6台の灯魔台に炎が灯る

アナウンスが言う
『有難う御座います!では 続きまして!』

マリアの視線の先 ウィザードとソニアが微笑を合わせている マリアがそれを見て微笑する

アナウンスが言う
『これより 神に選ばれた ウィザード様を 天国へお届け致します!それでは ウィザード様!どうぞ壇上へ!』

マリアが思う
《神に選ばれた ウィザード様?それは…?》

マリアにレイが抱き付いて言う
『マリアー!それじゃ 俺 行って来るなー!マリア!』

マリアが思う
《え?ウィザード様?》

レイがマリアから離れ壇上へ向かう

マリアが思う
《どうして?だって ウィザード様は ウィザードじゃないのに?》

マリアの視線の先 レイが魔法使いの姿からウィザードへ変わり 振り返って言う
『マリア ありがとう』

マリアが思う
《…え?》

レイが壇上に居て微笑して言う
『さようなら』

マリアが驚き思う
《え?そんな…っ!?待って?私、何も… 聞いてない… それに ”大好きだよ”って 言ってくれたのにっ!?それなのに どうしてっ!?》

マリアが叫ぶ
『待って!行かないで!ウィザード様っ!』

レイが風に消える


マリアが飛び起きて言う
「ウィザード様ーーっ!!」

マリアが息を切らして驚きながら周囲を見渡し ホッとして言う
「ゆ… 夢…?」

マリアが息を吐いて言う
「なんだ… …良かった」

マリアが胸を落ち着かせると ハッとして言う
「あ、あれ?私…?あ、そうだ 私も1時間だけ お昼寝をしようって…?」

マリアが時計を見て衝撃を受ける


通路

マリアが落ち込みながら思う
(はぁ… 1時間のお昼寝の予定が… ぐっすり寝ちゃった これじゃ もう…)

マリアがキッチンから漏れる明かりを見て 疑問して言う
「あれ?お母さん?」

マリアがキッチンへ入る


キッチン

ソニアが椅子に座り視線を落として考えている

マリアがやって来て思う
(お母さん… どうしたんだろう?いつもなら 少しでも早く寝ようって… あっ)

マリアが気付いて視線を向ける マリアの視線の先 ソニアが左手薬指の指輪を無意識に触っている

マリアが思う
(そう言えば 昔も こんな事があった… お母さん… お父さんが 死んじゃった後 よく1人で…)

マリアが一歩近付いて言う
「お母さん?」

ソニアがハッとしてマリアを見て苦笑して言う
「あ、あら… マリア どうしたの?こんな時間に… あ、そうね?マリアはもう 子供じゃないんだから… 今帰ったの?」

マリアが言う
「え?う、ううんっ?ずっと部屋に居たんだけど お昼寝のつもりが こんな時間まで 眠っちゃってて」

ソニアが苦笑して言う
「あら… そうだったのね?お母さん 全然気が付かなかった…」

マリアが言う
「あ、うん…?」

マリアが思う
(もう ずっと こんな事無かったのに… お母さん また1人で泣いてたのかな…?)

マリアが言う
「あの… お母さん …どうしたの?いつもなら 朝早いから 少しでも早く寝られるようにって… あ、そっか?今日は 大灯魔台の灯魔儀式があったから また 明日は お休みしなさいって ”お母さんのウィザード様”に 言われたの?それなら…」

ソニアが一瞬息を飲む

マリアが気付いて言う
「…お母さん?」

ソニアが苦笑して言う
「…昔も良く こんな事が有ったわね… お母さんが夜中に お父さんの事で 1人で泣いていると どう言う訳か マリアが起きて来て ”お母さん どうしたの?”って…」

マリアが思う
(ああ… やっぱり それじゃ また…)

ソニアが言う
「もう何年ぶりかしらね?マリアもすっかり大きくなって… お母さん 本当に… あの時 マリアが居てくれなかったら… きっと お父さんの所へ行っちゃってたわ… でも、マリアが居てくれたから… この子と一緒に 生きていかなきゃって…」

マリアが微笑して思う
(お母さんは やっぱり お父さんの事 それだけ 大好きだったんだ… お父さんの所へ行っちゃいたい位… だけど きっとそんな事したら お父さんだって喜ばなかった筈 私だって…)

ソニアが苦笑して言う
「でもね?お母さん マリアと違って とっても不器用で それまでに家事以外のお仕事も した事が無かったから 何をやっても 上手く行かなくて 大変だったわ… …それに 気が付くと お母さん いつも お父さんの事を 思い出しちゃって…」

マリアが思う
(あ… 私と同じ… 私も良く 仕事中に…)

マリアが苦笑する

ソニアが言う
「だから 色んなお仕事をやってみたけど どれも上手く行かなくて… それで」

マリアが言う
「…奉者に?」

ソニアが言う
「ええ… でも 本当に 偶然だった… もしかしたら 天国のお父さんが 泣き虫なお母さんの為に めぐり合わせてくれたのかも しれないわね?」

マリアが言う
「え?」

ソニアが言う
「だって… マリアもそうだったと思うけど ウィザードに仕える奉者は 年齢の近い人が候補になるから …魔法使いがウィザードになるのは 殆どの場合20歳前後 …だけど お母さんは 結婚もしていて マリアも5歳になっていて… だから年齢的に奉者になるには 相応しくなかったの …それなのに 偶然 1人の奉者が 結婚して 奉者を辞めるって」

マリアが呆気に取られる

ソニアが微笑して言う
「それで 代わりにお母さんが 仕える事になったの …それが あのウィザード様 ”お母さんのウィザード様”」

マリアが呆気に取られて思う
(そっか… そんな事もあるのね?でも それはそうよね?他の人と結婚した状態で 朝から晩まで ウィザード様に仕える事なんて 出来ない… あれ?それなら?)

ソニアが言う
「面白いでしょう?普通 そんな事 ある筈も無いのに… でも、あの人は 何も言わない人だから きっと 自分の奉者が ちゃんと仕事をしていなくても 何も言わなかったのだと思うわ?それで 代わって入った お母さんにも やっぱり 何も言わない人で…」

マリアが苦笑して言う
「…何も言わない?」

ソニアが微笑して言う
「そう、何も言わない… だから 何も聞かれないで… その頃のお母さんには それが とっても楽だったの… 他の仕事では 色々な人に 聞かれてね?その度に… 凄く辛かったから…」

ソニアが無意識に指輪に触れる

マリアが気付いて思う
(そっか… お父さんの事… …居なくなってしまった 大好きだった人の事を 聞かれなくて済んだから 楽だったんだ…)

ソニアが言う
「それに 人と神様との間と言われる程の ウィザード様は とても神秘的で 今では時間的に お見掛けする事は出来なくなってしまったけど 早朝と夕暮れに 自然と調和を行うような その修行風景を見ているとね?とても心が癒されて… その内 お母さん これからも マリアと一緒に 頑張って生きて行こうって 思えるようになったの」

マリアが思う
(修行風景か… 私、ウィザード様の 修行風景って見た事が無いけど 早朝と夕暮れ… あ、夕暮れって事は ”お母さんのウィザード様”は 火の属性じゃない…)

マリアが微笑して言う
「”お母さんのウィザード様”って… 何の魔法が得意なの?もしかして…」

マリアが思う
(私のウィザード様と 仲が良いし… それに 今日の あの大灯魔台の灯魔儀式… もしかして ”お母さんのウィザード様”は…)

ソニアが苦笑して言う
「そうね… はっきりと聞いた事は無いけどね?きっと 水の魔法がお得意なんじゃないかしら?傍に居ると 心が洗われる 癒される… そんな感じがするのよ」

マリアが微笑して思う
(やっぱり…)

ソニアが微笑して言う
「それに そんな風に考えると 貴方の風の魔法使いさんも 本当にそんな感じよね?風の魔法で 嫌な事も 何もかもを 全て吹き飛ばしてくれそうだものね?」

マリアが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「あ… そ、そうかも…?」

マリアが思う
(そう言えば そんな感じ… かな?)

ソニアが苦笑して言う
「でも いずれ 神様の下へ向かう ウィザード様とは お別れする事になる そう… 分かっていたつもりだった… だから その時まで 誠心誠意 お仕えしようって 決めていたの… その日が来るって事は 考えないようにしながら… だけど 今日」

マリアが疑問して言う
「今日?」

マリアが思う
(今日は… お母さんのウィザード様は あの凄い灯魔儀式をして見せた そのウィザード様が?)
 
ソニアが言う
「ウィザードを辞めるって 言われちゃって…」

マリアが呆気に取られて言う
「え…?」

ソニアが苦笑して言う
「突然でしょ?あんなに 完璧な灯魔儀式を成功させて… 不認定票0票を 2回も取って 神様にだって きっと選ばれる… そう思っていた 矢先に」

マリアが言う
「ど、どうしてっ!?そんな急に!?」

ソニアが言う
「分からないわ… でも 嘘なんかじゃないの それで 奉者協会の本部へ向かう私に ”今までの事を感謝する”って 杖を渡されちゃって…」

マリアが驚いて言う
「つ、杖をっ!?だって ウィザード様から 杖を離したらっ!」

ソニアが言う
「お母さん 驚いちゃって… でも その杖に支えられて 奉者協会まで 杖を持って行った… ウィザードの杖の返納は 奉者の役目だから 辛くとも 果たさなきゃいけないって…」

マリアが言う
「それじゃ… もうっ!?」

マリアが思う
(”お母さんのウィザード様”は ウィザードではなくなっちゃったっ!?)

ソニアが顔を左右に振る

マリアが疑問して言う
「…え?」

ソニアが言う
「奉者協会には ちゃんと伝えて 杖の返納をしようとしたんだけどね?そうしたら 今は ウィザードの数が足りて居ないから どうか 少し 待って欲しいって」

マリアが呆気に取られて言う
「数が足りて居ないから…?」

ソニアが苦笑して言う
「今は 無理に大灯魔台の灯魔儀式を続けているでしょう?だから 各町に配備するウィザードの数が ギリギリなんですって 今日も そんな訳で 大灯魔台で 本来なら1人のウィザードを 解任するはずだったけど 処分は保留になっているの 票数のカウントだけは続けるらしいけど」

マリアが言う
「え?それじゃ…?」

ソニアが言う
「奉者協会からは そんな訳で 今は杖を返して置く様にって… だから お母さん」

マリアが疑問する

ソニアが微笑して言う
「灯魔作業を終えて ぐっすりお休みの あの人の横に こっそり 杖を返しちゃいました!」

マリアが呆気に取られた後 苦笑してから笑い出す ソニアが一緒に笑う

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