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1章 最強のウィザード様

嗚呼、私のウィザードさま 「初めての灯魔儀式とウィザード様」

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翌日  会社

マリアが時計を見て溜息を吐く
「はぁ~…」
マキがやって来て言う
「マーリア!」
マリアが振り向くと マキが嬉しそうに言う
「昨日はどうだった?ウィザード様は… 結局 偽物だったの?」
マリアが困りつつ言う
「う~ん 残念ながら 本物… みたい 昨日 今日の儀式の時間を伝えに行ったんだけど …やっぱり アノ人が 普通に 居たし」
マキが首を傾げて言う
「普通に居たって?」
マリアが溜息を付いて言う
「てっきり 講習会の先生が ”どっきり罰ゲームでした~”なんて 出てきてくれるのを 期待してたんだけど」
マキが一瞬呆気に取られた後笑って言う
「あははっ 面白い!でも もし そうだったら マリアは奉者様じゃ なくなっちゃうんでしょ?だったら 本物で良かったじゃん!?」
マリアが言う
「うーん… それは そうだけど …これから 毎回アレが続くのかと思うと」
マリアの脳裏に マリアに抱きついてくるレイの姿が思い出される マリアが溜息を付いて独り言の様に言う
「昨日だって アノ後 時間を伝えて さっさと逃げて来たけど… このままじゃ何時 向こうの思い通りにされちゃうか 分からないし… はぁ… 一体どうしたら良いんだろう?」
マキが疑問してから 気を取り直して言う
「それで 今日の儀式の時間を伝えて来たって事は 午後の半休は やっぱり それに行く為だったんだ?」
マリアが気付いて言う
「あ、うん 仕事 割り振っちゃって御免ね ちゃんと3日以上前に申請したんだけど」
マキが微笑して言う
「良いよ良いよー!丁度シフト空いてたし マリア頑張ってね!」
マリアが微笑して言う
「うん!ありがと!それじゃ 行ってきます!」
マリアが立ち上がる マキが微笑して言う
「行ってらっしゃ~い!」

マンション

マンション前にタクシーが止まると マリアが降りてエレベータへ向かう

最上階

エレベータが到着の音を鳴らしドアが開く マリアが出て来て部屋のドアの前で思う
(ここまで来て ”やっぱり 嘘でした” なんて事は もう無い筈だから…)
マリアが正面を見据えてからインターフォンを押して思う
(こうなったら 私が!何が何でも あの人を ウィザードに見えるようにっ 何とかしないと!)
マリアが気合を入れて思う
(そうよ!私は 奉者なんだからっ!私がしっかりして!例え あんな…っ 軟派な人でも… やっぱり ウィザード様なんだから!)
マリアが頷き 鍵を探しドアを開けると言う
「ウィザード様?お迎えに上がりまし た…」
マリアが顔を上げると 一瞬で空気が変わり 神聖な空間にレイがウィザードらしい冷たい表情で歩く マリアが驚き言葉を失っていると レイが横まで来てマリアを見る マリアがハッとして慌てて言う
「エ、…エリーム村の灯魔台神館へ向け お、お車の用意が… されていますっ」
マリアが視線を泳がせた後 押さえていたドアを更に開けて道を譲る レイがドアを出ると マリアがドアに鍵をかけ 横目にレイを見る レイは正面を向いたまま居る マリアが戸惑いつつ慌ててエレベータへ向かう レイがゆっくりとマリアを追う

エレベータ内

マリアが回数ボタンの近くに立っていて 回数表示が下がるのを見つめつつ思う
(どうなってるの?この人… ”アノ” ウィザード様… だよね?本当に…?)
マリアが横目に見ようとして止めて思う
(そういえば 初めてお迎えした時も こんな感じで…)
マリアが視線を落とす エレベータの到着音が鳴る マリアが顔を上げ 開扉延長ボタンを押して待つ レイがエレベータを出て行く マリアが続き外へ視線を向けると車が見える

マンション 外

レイが車の近くへ歩いて来ると マリアが助手席側へ走り乗り込んで 運転手へ言う
「お疲れ様です エリーム村の灯魔台神館へ お願いします」
運転手がマリアへ向き言う
「お疲れ様です 奉者様 目的地まで 私が責任を持って お送り致します」
マリアが微笑すると 後部座席にレイが乗り込む マリアが一度視線を向ける レイは視線を向けずに居る 後部座席のドア付近に風が舞い ドアが閉まる 運転手が言う
「では 発車致します」
マリアが言う
「はい」
車が動き出す マリアが周囲を見てからレイを見るが レイの表情は帽子のつばに隠れて見えない マリアが表情を落としてから気を取り直して正面を向く

エリーム村 灯魔台神館 外

車が到着すると マリアが車を降り神館を見上げ 呆気に取られて言う
「これが灯魔台神館…」
マリアがハッとして言う
「あっ いけないっ!」
マリアが思う
(今の私は 観光に来てるんじゃないんだからっ!)
マリアが振り返ると 車の後部座席のドアが開きレイが降り ゆっくりと歩いてマリアの近くまで来る マリアが一度レイを見てから言う
「で、では 行きましょう!」
マリアが灯魔台神館へ向き歩き出す レイが続く

通路

案内がマリアの先を歩きながら言う
「奉者様からご連絡を頂き 村民一同 今日のこの日を心待ちにしておりました 既に 灯魔台巡礼者の方々が 儀式の成功と安全を祈願して集まっています」
マリアが疑問して言う
「巡礼者の方々が 集まって?」
案内が微笑して言う
「はい 10年振りに 灯魔台へ力が戻るとあって 皆喜びと期待に胸を高鳴らせています 何処の神館も同じかと思われますが このエリーム村を優先して頂けた事を とても有り難く思っております マリア奉者様」
マリアが慌てて言う
「あ、い、いえっ こちらのエリーム村からの 灯魔儀式要望書は 要望受付当日に着ていたのはもちろんでしたが そこに記載されていた文章が とても 印象的で」
案内が一瞬驚いた後微笑して言う
「文章まで読んで下さっていたとは 光栄です あちらは私が記入したのですが この村の皆の強い要望を 十分に伝えきれていないと 心配していたので」
マリアが微笑して言う
「いえ!とっても強く 伝わって来ました!私 それで…っ」
マリアが慌てて口を隠して周囲を見る 案内が目的地のドアの前に立ち微笑して言う
「マリア奉者様が この区域の奉者様で 本当に良かったです どうか宜しくお願いします」
案内が一礼する マリアが一瞬驚いた後 戸惑いながら 自分の後方に居るレイを伺いつつ言う
「あ、は、はいっ こちらこそ えっと…っ」
案内がドアを開く マリアが開かれたドアの先を見て驚く 大勢の人々の視線が向く マリアが息を飲むと その横をレイが過ぎる マリアが驚く レイが会場内に入ると 人々が息を飲み周囲がしんと静まる 

レイが堂々と灯魔台へ向かって行く マリアが言葉を失っていると 案内がマリアに先を促し マリアが慌てて一歩入ると 案内がドアを閉める

マリアが見つめる視線の先 レイが一度灯魔台へ左手をかざし 軽く5大魔力の性質を確かめると 火の反応が僅かに高い 

レイが僅かに目を細めてから 灯魔台と距離を取り 向き直ると 魔力を収集する マリアが呆気に取られて見つめる先 レイの前に杖が浮き上がり会場内に火の魔力が集まり始める 

人々が見つめる先 周囲の装置から火柱が立ち上がる マリアが驚き周囲を見渡してからレイを見る レイは無表情に居る 人々が息を飲む中 炎が渦巻き灯魔台の上部に大量に結集する 

人々が怯え始める マリアが目を見開き怯えると 炎が一気にレイへ向かって来る マリアが息を飲む 炎がレイの前にある杖に突っ込むと 杖が光り炎を全て押さえ込む 人々が思わず驚愕の声を上げる 

マリアが驚き言葉を失っていると レイが杖を掴み一振りする 押さえられていた炎が舞い上がり 灯魔台に上部から叩き込まれる 

激しい衝撃に人々やマリアが思わず目を閉じると 一瞬の後 静まった館内の灯魔台に静かに炎が灯る

人々が言葉を失う レイが向き直り来た道を戻り歩く 人々が慌ててレイへ信仰の眼差しを向け 祈るようにレイの歩みを見守る マリアが驚きに言葉を失って思う
(凄い…っ!これが 灯魔儀式っ それに… 他を圧倒する 魔力と存在感… 間違いないっ この人は!やっぱり ウィザード様なんだ!…こんな 凄い人が 私の… 私の ウィザード様っ!?)

マリアがハッとして顔を上げると レイがマリアの前で立ち止まっている マリアが一度レイの顔を見上げた後 慌てて言う
「お、お疲れ様で 御座いました…っ」
いつの間にか開かれていたドアを押さえ 案内が深く頭を下げて言う
「有難う御座いました 奉者様 これでエリーム村も 平穏を得られます」
マリアが一瞬驚いて案内を見てから ホッとして微笑する レイがマリアと案内を一瞥してから立ち去る マリアが思わず言う
「あ…っ」
マリアが慌てて追う

エリーム村 灯魔台神館 外

マリアが神館から急いで出て来て バックから携帯を取り出しながら言う
「す、すぐに車を呼びますのでっ 少々お待ち下さい!」
レイがマリアの後ろに来て マリアの耳元で小さく言う
「必要ない」
マリアが疑問して振り返りながら言う
「え…?」
レイが杖を持った片腕で マリアを包む様に抱く マリアが驚いて言う
「あ!あの…っ!?」
マリアが驚いていると目の前で杖の魔鉱石が光る マリアが驚くと体が浮き上がり マリアが思わず言う
「キャッ!?」
レイとマリアの周囲に風が舞い マリアが思わずレイにしがみ付いて思う
(な、何っ!?私っ どうなって…っ!?)

マリアが強く目を瞑っていると ふと疑問して思う
(あ、あれ?)
マリアが地に足の着いている感覚に目を開き 横を見て言う
「こ… ここは…」
マリアの視線の先に レイの部屋が見えている マリアが呆気に取られると レイが言う
「マリアー!」
マリアが呆気に取られて言う
「え?」
マリアが向き直ろうとすると レイがマリアに抱き付く マリアが思わず言う
「なぁっ!?」
レイがマリアの頭を撫でつつ言う
「やっぱ 外はお堅くて メンドクサイよなぁ~?マリアもそう思うだろ~?」
マリアが困惑しながら言う
「あ あの… ウィザード… 様…?」
マリアが思う
(あ、あれ?…えっと…?この人 さっきと 同じ… 人… よね?)
レイがマリアの顔を見て言う
「でも これでマリアも 俺の力を認めたよな!?」
マリアが呆れつつ言う
「あ… は、はい… 残念ながら… あんな凄い事 ウィザード以外の人に 出来る訳無いですし… …認めるしか…」
レイが言う
「あー… けどさ?あれ 俺 思ったんだけど ウィザードじゃなくても 出来るな?」
マリアが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
レイが得意げに言う
「だって 俺 実力の5割も出さなかったぜ?あんなのが ウィザードの灯魔儀式だったなんて なんか すげぇ 拍子抜けって感じ?」
マリアが驚いて言う
「そ、それって… つまり あんな凄い事でも 余裕があったって事ですか?」
レイが笑んで言う
「全然余裕!」
マリアが驚く レイが言う
「一応 初めてだったからさ?丁寧にやったつもりだけど あんなもんなら もっと ちゃっちゃと終わらせて それこそ マリアとお茶でもしてる方が よっぽど有意義だな?」
マリアが衝撃を受け 慌てて怒って言う
「神聖なる灯魔儀式をっ 女の子との お茶の時間と 一緒にしないで下さいっ!」
レイが言う
「だって 俺にとっては そっちの方が大切だもん?」
マリアが怒って思う
(こ、この人はーっ!!)
レイが言う
「って事で 俺の実力は分かっただろ?マリア?」
マリアが疑問して言う
「はい?えっと… 常人の私には 魔法の事は分かりませんが… とりあえず 凄いと言う事は分かりました」
レイが言う
「うーん なら それでも良いや?…で?そう言う事だからさ?例の望みは撤回するよな?」
マリアが言う
「は?」
レイが言う
「は?じゃなくて あの 奉者のマリアから ウィザードの俺への お願いって奴だよ」
マリアが気付いて言う
「あ… あぁ… あれは」
レイが言う
「あんなお願いは 俺には必要ない!さぁ マリア 改めて マリアの望みを訊こう!」
マリアがレイを見上げる レイが微笑して言う
「そうしないと 何時まで経っても マリアは 俺を名前で 呼べないだろう?」
マリアが視線を逸らして言う
「それは… そうですけど…」
レイが微笑して言う
「な?だから さぁ!」
マリアが気付いて言う
「あ、でも…?」
レイが疑問して言う
「ん?」
マリアがレイへ向き直って言う
「今日の感じだと 私がウィザード様のお名前を知らなくても 何も不都合は無かったですよね?」
レイが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
マリアがそっぽを向いて言う
「それなら 私 このままでも 良いような気がします!」
レイがマリアへ言う
「ダーメー!」
マリアが言う
「何でですか?」
レイが言う
「何でってっ!?」
マリアが言う
「それに 私のお願いは ”私の”お願い なんですから ウィザード様が 名前で呼んでくれって言うのでしたら それは ”ウィザード様の”お願いですから それで良いじゃないですか?」
レイが衝撃を受けて言う
「えっ!?それはそうだけど…っそれじゃっ マリアからのお願いじゃ 無いじゃないかっ!?そんなんじゃ 始まらないだろ!?」
マリアが言う
「始まらなくて 結構ですっ!…大体 ウィザード様は 何で そうなんですか!?ついさっきまでは とっても ウィザード様らしかったのに それこそ お名前で呼び始めたりなんてしたら 儀式の時まで このままになりそうで困ります!」
レイが言う
「別に良いじゃないか~?ウィザードだろうが何だろうが 灯魔台に火でも水でも灯れば良いんだろぉ~?」
マリアが慌てて言う
「駄目ですよっ!?」
レイが言う
「何で!?」
マリアが言う
「な、何でって それはっ!」
レイが言う
「”それは”?」
マリアが悩んで言う
「そ… それは…」
レイがマリアを見る マリアが言う
「それは 貴方が ウィザード様 だからですっ!」


続く
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