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2人泊まりロケ
気づき 嫌いじゃない
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遼は好意を向けられることに慣れていた。彼の扱いがおかしくなり出したのは幼稚園から。同級生、先輩、後輩、保護者ら、教師、通行人。遼の人生は自らの顔面と切り離せなかった。
両親はお遊戯会だけは楽しそうだと、音楽教室やダンス教室に彼を連れて行っていった。
彼は歌って踊るのが好きで、やりたいのは正直それだけだった。ただそれ以外もやらないと、好きに歌って踊れない。顔が良かろうと甘くない。他にもイケメンなんて腐るほどいた。
好きではない。羞恥心は慣れで消えた、感情のない作業。胸キュン系の言わされるやつ。だが最近は即興劇と捉えている。遼の中で取り組み方を変えた。いつもならメンバーはふざけている。恥ずかしいのだろう。今日は珍しくふざけていない。いや違うふざけ方なのか?BL営業ってやつ?新鮮だ。遼は同じBL営業でもアキにやられるのは何か違った。ただその直後の声の甘さに、目を閉じていてよかったと思った。
泊りの2人ロケ。運営がよりアキとのコンビ売りを強めようとしてきている。チラリとアキを見る。俺らは仕事にNoを言えるほど売れてない。言われればやる。
サービスエリアにて、遼がトイレから戻る。アキの前で親子が泣いていてギョッとする。親子が立ち去った後話を聞くと、子供が駐車場に駆け出したのを止めたらしい。アキは何でもなさそうに笑っている。それがなんかムカついた。ロケバスに戻り「アキが漫画の主人公みたいなことやってた」とカメラに話す。
ロケバスから降りる。山奥の趣ある旅館にやってきた。アキは地元も田舎だから落ち着くと腕を伸ばす。しかし背後に地縛霊のようにくっついてくる遼が気になって仕方ない。
渋々「どうしたの?」と問う。虫が苦手らしい。
真顔で「俺を守れ」と言われ思わず笑う。だが「東京来て、俺も虫は無理になっちゃったんだよね」と噓をついた。
至近距離は心臓に悪い。
遼はそうか、と背後から隣に移動した。旅館に荷物を置いて、ガラス工房へと向かう。
体験ができるらしい。企画で互いにグラスを作りあう。
道中、スタッフに遼くん、アキくん虫大丈夫だよ、嘘ついてるよと告げ口された。
遼が「えっ、お前、嘘つくやつだと思ってなかった」と驚いている。気まずい。
彼に「これからの付き合い方を考えなきゃいけない」と悲しい顔をされる。アキは思わず「わかったわかった、守るから遼くん!」と言い、自らの口を抑えた。遼が「ならいい」とうなづいて先に歩き出す。アキは俺、今誘導された?と首をかしげる。彼に噓をつき返されたのか。なのに嫌ではない。何故かホッとしていた。
ガラス工房に着いた。まずはグラスの色や形を選ぶ。並んでかがみ、机の見本を見る。綺麗だとテンションが上がる。アキが「これとか」と横を向いた。2人の距離が近づく。もう一歩近づけば遼にキスし、と考えがよぎる。自らの思考を訝しむ。そして「やっぱメンカラかな~」とアキは一歩横にずれた。遼は自身のまばたきの数が増えたのを悟り、口角を上げながら目を伏せた。
工房内は暑い。職人に手伝われつつ、グラスが形作られていく。遼は真剣にガラスに息を吹き込んでいる。歌にも活かされている、鍛えた肺活量が光る。アキは自身も負けていられない、と意気込んだ。左手で棒を転がしながら、道具を持つ右手の開く角度を変え、グラスの開き口を調整していく。段々と縁がまっすぐになる。「こんなに形が変わってく、面白いな」と遼に笑いかけられ、うなづいた。
旅館に戻る。明日は寝起きドッキリを撮ると知らされた。撮影は朝から。今日は英気を養うため、早めに部屋へ帰らされた。和室だ。布団が二つ敷かれている。遼は座椅子に座っていた。アキは部屋の奥、窓際の椅子に座る。部屋で2人きり。沈黙が続く。
遼が「お前、俺のこと避けてるだろ」とつぶやいた。「嫌なとこ言って。直す」とまっすぐ見つめてくる。アキはイケメンで性格も良かったら、こっちはどうしたらいいんだよ、と思い唇を噛む。「そんなことないよ」と告げ、話を流そうとする。しかし「傷つく」と言われ思わず顔を向けた。遼が顔を歪めている。彼が息を吐き視線を落とした。
アキは遼の綺麗な顔が、彫刻が自分によってくずれ落ちた。崩れているのに、目が吸い寄せられる。あぁ、このまま遼に傷つき続けて欲しい、俺の手で顔を歪めて欲しい、こちらまで落ちて欲しい、と思いながら口を開ける。だが、壊したいのに笑って欲しい、どうせなら笑うので崩れればいいとも思う。顔を俯かせながら視線をさまよわせた。
本音を言えるわけがない。嫉妬を本人にぶつけてどうする。しかし嘘は本音を混ぜるのがいい。「気を使わせてごめん!」と大声を出す。「すごいシンプルに言うと遼くんがイケメンで緊張する!しょうもないことだけど!」と勢いで押し切る。
遼が「もう何年一緒にいんだよ。ウソつくな、こっちは本気で」と近づく。しかし自身が近づいた際のアキの手の震えを見て止まった。「アキ、アリーナの前も手、震えてたっけ」とつぶやく。
アキが自身の背中に手を隠す。都合よく動かない。昔から他人にわかりやすいと言われる。落ち着くよう息を吐く。そして「嫌ってるとかじゃない、嫌いなわけじゃなくて、嫌いじゃない遼のこと」と首を振る。口に出しながら、繰り返しながら、言っていて自身の心がほころんでいく。根っこにある憧れ。拗らせていた。絡まっているのを解くための、糸の端を見つける。遼に嫉妬し動かないだけの自分になりたくない。「アイドルとしての遼も嫌いじゃない」と繰り返す。
遼が「そんなに繰り返さなくてもいいから。もうわかった」と告げる。彼があくびをした。「なんか安心したら眠くなってきた」と布団へと歩き出す。「お前が俺の顔に慣れれば解決ってことか」と横になった。
アキは「えっ」と叫び思わず遼へ駆け寄る。しかし「疲れた、寝させて」と言われ足を止めた。
静かな部屋に遼の寝息だけが響いている。その音を聞いているとアキも眠くなってきた。
電気を消し、布団に入る。今言われたことについて考えたいはずなのに。疲労によりすぐに眠りへいざなわれた。不安も残したまま、ロケ一日目が終わった。
アキが目を覚ます。時計を確認すると4時。寝起きドッキリは何時だったか。
隣を見ると遼の布団がめくれ、浴衣がはだけている。微動だにせず寝るのかと思っていた。アキ自身の裾や帯も直しながら、遼へと近づく。起きる気配はない。パンツは事務所NGだろうか。
男同士とはいえ、無断でどこまで触れていいか悩む。いつカメラが来るかもわからない。アキは彼の布団の側で膝をついた。顔だけ見れば人形だ。だが寝息と寝相で人形じゃなくなる。生きていた。綺麗な寝顔と大胆な寝相。昨晩言われたことを思い出す。
遼の顔に慣れる?動揺したが冷静になると冗談だろう。一方的に見るのならきっといくらでも、と眺める。遼に布団だけ掛けなおして自身の布団へ戻った。
ドタドタと部屋に人が駆け込んでくる。知っていても驚く。アキは布団から顔を上げた。電気をつけられ眩しさに目を細める。
遼がうぅ~と唸り、嫌そうに寝返りを打った。カメラがそれを追う。まだ起きたくないらしい。それを見てアキの脳裏に以前の胸キュンがよぎる。また遼の布団の中は、浴衣がはだけ、素肌だと思い出す。遠慮せず直すべきだったと後悔しても遅い。アキは知っている以上、見て見ぬふりはできなかった。頭を回転させる。この前の胸キュンでは、
寝ぼけたふりをしながらうつぶせに遼の上に覆いかぶさり、倒れる。ぐえっと声が聞こえる。アキの身体で布団を固定した。行き過ぎたBL営業。遼に絡んで自分が前に出ようとしている。色んな架空の声がアキの脳内を駆け巡る。思考も身体も固まってしまった。
カメラもスタッフも少し距離を開け、息をのみ2人を見守っている。遼がカメラの方へ顔を見せながら微笑む。「お前から俺に近づいてくるなんて珍しいじゃん」と遼がアキの肩に腕を回し引き寄せる。そして頬にキスをした。柔らかい唇の感触がそっと触れて離れる。
「チューしたんで。起きる」と遼が動こうとする。アキは「浴衣!」と叫んだ。遼が布団の中で腕を動かす。状況に気づいたらしい。「映せないんでちゃんと着ます」と自身を押さえているアキの腕を叩く。アキはどきながら、カメラを下げたスタッフを確認しながら周囲に見えないように布団をめくっていく。立ち上がった遼に合わせ、乳首からパンツを隠せるよう布団の位置を調節した。その背後でアキにのみ見える。遼が帯をほどく。浴衣の左が上になるように合わせる。帯をお腹に合わせ、後ろで交差させる。前で再度交差させ、結ぶ。最後にリボン結びをして、後ろへ回した。アキはそれを確認して布団を下ろした。遼が「てってれーん」とカメラに向かってピースサインをする。
無事着替えが完了し、アキはホッとした。本来は着替え中、カメラをオフにしてもいい。だが意図せず放送できる形にしてしまった。何故かモヤモヤする。遼は気にしていない様子だ。「アキ、やりすぎたかも。ごめん」と浴衣の袖で頬を拭われた。「いやいや俺こそ、普通に言えば良かったのに」と首を振る。
遼がスタッフの方へ歩きながら、「キスってライン越えっすか?使えない?」と首を傾げる。スタッフは腕を組みながら、頬はセーフかなぁ、と苦笑いした。後日アキ遼お泊りロケVol.1がプレミア公開された。早朝の部屋に突入した直後、編集で配信の胸キュンシーンが差し込まれる。コメントが数秒止まる。そして直前より勢いよく流れ始めた。
両親はお遊戯会だけは楽しそうだと、音楽教室やダンス教室に彼を連れて行っていった。
彼は歌って踊るのが好きで、やりたいのは正直それだけだった。ただそれ以外もやらないと、好きに歌って踊れない。顔が良かろうと甘くない。他にもイケメンなんて腐るほどいた。
好きではない。羞恥心は慣れで消えた、感情のない作業。胸キュン系の言わされるやつ。だが最近は即興劇と捉えている。遼の中で取り組み方を変えた。いつもならメンバーはふざけている。恥ずかしいのだろう。今日は珍しくふざけていない。いや違うふざけ方なのか?BL営業ってやつ?新鮮だ。遼は同じBL営業でもアキにやられるのは何か違った。ただその直後の声の甘さに、目を閉じていてよかったと思った。
泊りの2人ロケ。運営がよりアキとのコンビ売りを強めようとしてきている。チラリとアキを見る。俺らは仕事にNoを言えるほど売れてない。言われればやる。
サービスエリアにて、遼がトイレから戻る。アキの前で親子が泣いていてギョッとする。親子が立ち去った後話を聞くと、子供が駐車場に駆け出したのを止めたらしい。アキは何でもなさそうに笑っている。それがなんかムカついた。ロケバスに戻り「アキが漫画の主人公みたいなことやってた」とカメラに話す。
ロケバスから降りる。山奥の趣ある旅館にやってきた。アキは地元も田舎だから落ち着くと腕を伸ばす。しかし背後に地縛霊のようにくっついてくる遼が気になって仕方ない。
渋々「どうしたの?」と問う。虫が苦手らしい。
真顔で「俺を守れ」と言われ思わず笑う。だが「東京来て、俺も虫は無理になっちゃったんだよね」と噓をついた。
至近距離は心臓に悪い。
遼はそうか、と背後から隣に移動した。旅館に荷物を置いて、ガラス工房へと向かう。
体験ができるらしい。企画で互いにグラスを作りあう。
道中、スタッフに遼くん、アキくん虫大丈夫だよ、嘘ついてるよと告げ口された。
遼が「えっ、お前、嘘つくやつだと思ってなかった」と驚いている。気まずい。
彼に「これからの付き合い方を考えなきゃいけない」と悲しい顔をされる。アキは思わず「わかったわかった、守るから遼くん!」と言い、自らの口を抑えた。遼が「ならいい」とうなづいて先に歩き出す。アキは俺、今誘導された?と首をかしげる。彼に噓をつき返されたのか。なのに嫌ではない。何故かホッとしていた。
ガラス工房に着いた。まずはグラスの色や形を選ぶ。並んでかがみ、机の見本を見る。綺麗だとテンションが上がる。アキが「これとか」と横を向いた。2人の距離が近づく。もう一歩近づけば遼にキスし、と考えがよぎる。自らの思考を訝しむ。そして「やっぱメンカラかな~」とアキは一歩横にずれた。遼は自身のまばたきの数が増えたのを悟り、口角を上げながら目を伏せた。
工房内は暑い。職人に手伝われつつ、グラスが形作られていく。遼は真剣にガラスに息を吹き込んでいる。歌にも活かされている、鍛えた肺活量が光る。アキは自身も負けていられない、と意気込んだ。左手で棒を転がしながら、道具を持つ右手の開く角度を変え、グラスの開き口を調整していく。段々と縁がまっすぐになる。「こんなに形が変わってく、面白いな」と遼に笑いかけられ、うなづいた。
旅館に戻る。明日は寝起きドッキリを撮ると知らされた。撮影は朝から。今日は英気を養うため、早めに部屋へ帰らされた。和室だ。布団が二つ敷かれている。遼は座椅子に座っていた。アキは部屋の奥、窓際の椅子に座る。部屋で2人きり。沈黙が続く。
遼が「お前、俺のこと避けてるだろ」とつぶやいた。「嫌なとこ言って。直す」とまっすぐ見つめてくる。アキはイケメンで性格も良かったら、こっちはどうしたらいいんだよ、と思い唇を噛む。「そんなことないよ」と告げ、話を流そうとする。しかし「傷つく」と言われ思わず顔を向けた。遼が顔を歪めている。彼が息を吐き視線を落とした。
アキは遼の綺麗な顔が、彫刻が自分によってくずれ落ちた。崩れているのに、目が吸い寄せられる。あぁ、このまま遼に傷つき続けて欲しい、俺の手で顔を歪めて欲しい、こちらまで落ちて欲しい、と思いながら口を開ける。だが、壊したいのに笑って欲しい、どうせなら笑うので崩れればいいとも思う。顔を俯かせながら視線をさまよわせた。
本音を言えるわけがない。嫉妬を本人にぶつけてどうする。しかし嘘は本音を混ぜるのがいい。「気を使わせてごめん!」と大声を出す。「すごいシンプルに言うと遼くんがイケメンで緊張する!しょうもないことだけど!」と勢いで押し切る。
遼が「もう何年一緒にいんだよ。ウソつくな、こっちは本気で」と近づく。しかし自身が近づいた際のアキの手の震えを見て止まった。「アキ、アリーナの前も手、震えてたっけ」とつぶやく。
アキが自身の背中に手を隠す。都合よく動かない。昔から他人にわかりやすいと言われる。落ち着くよう息を吐く。そして「嫌ってるとかじゃない、嫌いなわけじゃなくて、嫌いじゃない遼のこと」と首を振る。口に出しながら、繰り返しながら、言っていて自身の心がほころんでいく。根っこにある憧れ。拗らせていた。絡まっているのを解くための、糸の端を見つける。遼に嫉妬し動かないだけの自分になりたくない。「アイドルとしての遼も嫌いじゃない」と繰り返す。
遼が「そんなに繰り返さなくてもいいから。もうわかった」と告げる。彼があくびをした。「なんか安心したら眠くなってきた」と布団へと歩き出す。「お前が俺の顔に慣れれば解決ってことか」と横になった。
アキは「えっ」と叫び思わず遼へ駆け寄る。しかし「疲れた、寝させて」と言われ足を止めた。
静かな部屋に遼の寝息だけが響いている。その音を聞いているとアキも眠くなってきた。
電気を消し、布団に入る。今言われたことについて考えたいはずなのに。疲労によりすぐに眠りへいざなわれた。不安も残したまま、ロケ一日目が終わった。
アキが目を覚ます。時計を確認すると4時。寝起きドッキリは何時だったか。
隣を見ると遼の布団がめくれ、浴衣がはだけている。微動だにせず寝るのかと思っていた。アキ自身の裾や帯も直しながら、遼へと近づく。起きる気配はない。パンツは事務所NGだろうか。
男同士とはいえ、無断でどこまで触れていいか悩む。いつカメラが来るかもわからない。アキは彼の布団の側で膝をついた。顔だけ見れば人形だ。だが寝息と寝相で人形じゃなくなる。生きていた。綺麗な寝顔と大胆な寝相。昨晩言われたことを思い出す。
遼の顔に慣れる?動揺したが冷静になると冗談だろう。一方的に見るのならきっといくらでも、と眺める。遼に布団だけ掛けなおして自身の布団へ戻った。
ドタドタと部屋に人が駆け込んでくる。知っていても驚く。アキは布団から顔を上げた。電気をつけられ眩しさに目を細める。
遼がうぅ~と唸り、嫌そうに寝返りを打った。カメラがそれを追う。まだ起きたくないらしい。それを見てアキの脳裏に以前の胸キュンがよぎる。また遼の布団の中は、浴衣がはだけ、素肌だと思い出す。遠慮せず直すべきだったと後悔しても遅い。アキは知っている以上、見て見ぬふりはできなかった。頭を回転させる。この前の胸キュンでは、
寝ぼけたふりをしながらうつぶせに遼の上に覆いかぶさり、倒れる。ぐえっと声が聞こえる。アキの身体で布団を固定した。行き過ぎたBL営業。遼に絡んで自分が前に出ようとしている。色んな架空の声がアキの脳内を駆け巡る。思考も身体も固まってしまった。
カメラもスタッフも少し距離を開け、息をのみ2人を見守っている。遼がカメラの方へ顔を見せながら微笑む。「お前から俺に近づいてくるなんて珍しいじゃん」と遼がアキの肩に腕を回し引き寄せる。そして頬にキスをした。柔らかい唇の感触がそっと触れて離れる。
「チューしたんで。起きる」と遼が動こうとする。アキは「浴衣!」と叫んだ。遼が布団の中で腕を動かす。状況に気づいたらしい。「映せないんでちゃんと着ます」と自身を押さえているアキの腕を叩く。アキはどきながら、カメラを下げたスタッフを確認しながら周囲に見えないように布団をめくっていく。立ち上がった遼に合わせ、乳首からパンツを隠せるよう布団の位置を調節した。その背後でアキにのみ見える。遼が帯をほどく。浴衣の左が上になるように合わせる。帯をお腹に合わせ、後ろで交差させる。前で再度交差させ、結ぶ。最後にリボン結びをして、後ろへ回した。アキはそれを確認して布団を下ろした。遼が「てってれーん」とカメラに向かってピースサインをする。
無事着替えが完了し、アキはホッとした。本来は着替え中、カメラをオフにしてもいい。だが意図せず放送できる形にしてしまった。何故かモヤモヤする。遼は気にしていない様子だ。「アキ、やりすぎたかも。ごめん」と浴衣の袖で頬を拭われた。「いやいや俺こそ、普通に言えば良かったのに」と首を振る。
遼がスタッフの方へ歩きながら、「キスってライン越えっすか?使えない?」と首を傾げる。スタッフは腕を組みながら、頬はセーフかなぁ、と苦笑いした。後日アキ遼お泊りロケVol.1がプレミア公開された。早朝の部屋に突入した直後、編集で配信の胸キュンシーンが差し込まれる。コメントが数秒止まる。そして直前より勢いよく流れ始めた。
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