【完】死にたがりの少年は、拾われて初めて愛される幸せを知る。

唯月漣

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第一章 常春と真冬編

20)乾き。*

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「それで? 真冬はどうしたい?」


 常春が俺を抱きしめながらそう問う。


「分からないよ……。別に母さんに復讐しようなんて思わないし。けど、悲しいのとか、辛いのとか、苦しいのは嫌だ」


 俺は常春の胸に抱きついて、頬で常春の温もりを感じる。常春の優しいお日様の匂いが鼻孔を満たし、強張っていた体から力が抜けた。


「もっと幸せになりたい。……常春と」


 俺が小さくそう漏らすと、常春に触れるだけの口付けをした。常春はコクリと頷いて、俺の額にキスを返す。


「常春も脱いでよ。俺も常春に、したい」


 俺はそう言って、常春の厨房着の合わせを撫でる。

 濃紺の厨房着は前合わせのボタンで留められており、先程まで煮込んでいたスープの匂いが染み付いていた。常春は俺に求められるままにボタンを外すと、俺は待ちきれずにその隙間から手を差し入れた。


「いいけど、店から真っ直ぐ来たから汗臭いぞ?」


 そう言いながら、常春は全てのボタンを外して、前を大きくはだけた。俺は目の前に現れた常春の胸板に頬を擦り寄せるように甘える。


「いいよ。俺、常春の匂い、すげー好き」


 そう言って胸元に舌を這わせれば、常春のそこは微かに塩の味がした。


「っ……、変態かよ」


 常春はクスクスと笑いながら、くすぐったそうに身をよじった。それでも常春が俺を拒絶することはなくて、座ったまま後ろに手をついて俺が胸元を愛撫しやすいような体勢を取ってくれる。

 俺は常春の胸の飾りにペロペロと舌を伸ばして何度も舐めると、唇を付けてちゅうっと音を立てて吸った。

 しばらくそうして俺の好きなようにさせてくれていた常春だったが、不意に肘を曲げて俺を巻き込む形で後ろに倒れ込むと、腕を伸ばして俺の尻の狭間に手を伸ばした。


「あぁっ、ちょ……っ」


 俺は少しだけ顔を離すと、常春の体を跨ぐようにして大きく足を開く。両腕を常春の顔の両側に付いて己の体重を支え、正面から常春の顔を見つめた。


「今日は俺が慣らしてみてもいいか?」


 常春はそう言って、自らの指を口に含みたっぷりの唾液を絡ませた。その色っぽい仕草に、俺は頬が紅潮するのを自覚しながらもコクコクと頷く。
 そろりと尻の狭間を這う常春の濡れた指が、そっとその中心部にあてがわれた。


「痛かったら言えよ?」

 
 そう前置きをして、常春はそろりと俺の中に指を侵入させた。
 初めは爪の先ほどの深さで何度か抜き差しをして、そこから俺を傷付けないように慎重にくにくにと指の先を潜り込ませてくる。
 目の前の常春は、まっすぐに俺の表情を見ていた。
 恐らく俺が少しでも顔をしかめやしないかと、様子をうかがっているのだろう。


「痛くないから、もっと奥まで挿れて……っ」


 俺は強気な表情でそう言って、布団の裏に隠していたローションのチューブを手探りで引っ張り出す。
 俺は取り出したチューブのキャップを口で開けて、常春の胸の上に中身を僅かに垂らした。
 それをすくい取るように自分の指に絡めて、俺の中に既に挿入っていた常春の指に沿わせるようにして己の中へ挿入する。


「んっ……ああっ……」


 秘孔の深部、ペニスで突かれると堪らなくなるその場所を、俺は敢えて自分の指で刺激した。常春に己の快楽の源となる場所を教えるように、絡めた指の腹で、何度もその内壁を押す。
 

「ここがイイのか……?」


 そう言って、常春がその場所を探るように撫でた。


「ん、ひぁぁっ……!」


 俺はビクリと体を跳ねさせながら、コクコクと頷く。常春は探るように二本目の指を挿入すると、俺の指を合わせた三本で執拗にそこを刺激した。


「あ……ぅ、ぐっ……んぁ……は、ぁ……! すご……気持ちぃ……っあ……!」


 内部の弱い部分を指で愛撫される度、打ち寄せる波のような濃厚な快楽が俺の中に走る。
 腹の奥の深い部分から込み上げる快楽で、脳が麻痺しそうなほど甘く痺れた。
 腰だけを高く突き出したその体勢で、俺の性器は既にとろりと先走りを漏らし、常春の腹の上に粘質な透明の糸を落とす。
 常春は俺の体の下で快楽に歪む俺の表情を見つめていたが、俺と目が合うとキスを促すように赤い舌先をチラつかせた。
 俺は促されるままに常春の唇を貪ると、体を支えていた両腕がブルブルと震え、俺はついに力尽きて常春の胸の上に突っ伏してしまう。
 

「ああ……、常春ぅ……っ、俺もうっ、……早く中に……中に来て」
「ははっ。本当にここ、弱いんだな……。ちょっと待って」


 力の抜けた四肢で俺がそうねだると、常春は俺の中に入っていた指をそっと抜いた。ジーンズの前をくつろげて自身のものを取り出し、軽く扱く。
 硬く屹立したそこを俺の尻に当たるようにして示すと、常春はとろけたままの俺に言った。


「真冬。欲しいなら自分で挿れてみな?」
「あ……」

 
 俺は常春の胸に手をついて、なんとか上体を起こした。尻に当たる硬く熱い常春のそれを掴み、おずおずと狭間の窄まりに添える。


「う……ん、く……っ」


 力の入らない俺の膝が、己の体重を支えきれずにブルブルと震えた。窄まりの入り口を雁首が通ると、質量のあるそれは重力に任せて俺の中に侵入してくる。半ばまで満たされると同時に、俺は足の力が抜けてペタリと畳に足をついてしまった。
 支えるものを失った俺の体は必然的に、滾るものを深々と咥え込む。そしてそのまま、俺は常春の腹の上に座り込んでしまった。


「あぐっ……! ふ、深……ぃ……ッ」


 腹の奥深くに常春の硬い熱を感じて、俺は背をのけぞらせる。そのまま後ろに倒れそうになったところを、常春が両腕で支えてくれた。
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