【完】死にたがりの少年は、拾われて初めて愛される幸せを知る。

唯月漣

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第一章 常春と真冬編

16)愛するという事。*

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俺はチューブの中から軟膏を絞り出すと、常春に見せつけながら、その窄まりの周囲に塗りつける。
 先程風呂場で丹念に洗ったそこは、ヒクヒクと収縮して己の指を抵抗なく飲み込んだ。


「常春、足……持っててくれる?」


 そう言って、俺は両足を大きく広げたまま常春に押さえていてもらうと、常春の熱い視線を感じながら、その場所をゆっくりと指でほぐしていった。


「んんっ……」


 俺は右手の中指を己の双丘の中心に突き立てると、躊躇いなく挿入してグリグリとかき混ぜるようにして中を拡げる。すぐに二本目の指を深くまで押し挿れると、今度はゆっくりと抜き差しを繰り返した。

 もどかしさを堪えながら三本目の指を突き立てると、左手で自分のペニスをゆるゆると扱く。なるべく前の快楽に集中するように意識を向けながら、俺は突き立てた三本目の指を秘孔に挿入した。


「んっ、ん……ぁ」


 俺のその部分は、あっという間に三本の指を咥え込む。
 常春に間近から見られている……。
 そう考えるだけで、俺の半身はみるみる高ぶっていった。


「ね、常春……お願い、俺の中にきて……」


 俺はうっとりとした視線で常春にそうねだると、見せつけるように三本の指で中をかきまわして、ゆっくりと指を抜いた。
 指が抜かれ、ポッカリと空いたその穴を、俺は常春に見せつけるようにヒクつかせる。
 
 常春は少しだけ緊張したような表情で俺を見つめたが、コクリと頷いて自身のそれにゴムをつけた。


「……ゆっくり挿れるから、キツかったら言えよ?」 


 そう言って、常春は俺のそこへ熱く滾る怒張をあてがった。自分の指に比べて圧倒的質量を誇る常春のそれは、ゆっくりと俺の中に深く沈み込んで行った。


「んん……くぅっ……、深い……っ!」


 自分の指では届かず、慣らしきれなかった深い部分。
 そこに常春のモノが到達すると、めりめりと俺の中が軋んだ。
 俺は堪らず常春の肩に爪を立てると、常春は腰を止めて俺の呼吸が落ち着くのを待ってくれる。俺は圧迫感に顔を歪めながら、ふるふると首を横に振った。


「ちがっ、いいから……っ、いいから早く奥まで常春が欲しい……!」


 裂けても痛くても、苦しくてもいい。俺は今すぐ、常春が欲しかった。


「お願い……っ、深く…、貫いて……っ! 俺の中、常春でいっぱいにして……ッ!」
 

 俺はそう言って、自ら腰を振って常春を求めた。常春はそれに応えるように深々と俺を貫き、何度も何度も俺を深く穿つ。


「あッ、あッ……んん、常春ぅ! 良いっ……常春の、気持ちいいよぉ……!!」

 
 常春に粘膜の内側を擦られるたびに、結合部分が熱くとろけるように常春のそれに絡んだ。俺は両手両足で常春の身体に抱きついて、腰をくねらせて常春の熱い楔を深く貪る。


「く……ッ! 真冬、そんなにしたらっ、あんま保たない……ッ!」


 淫らに常春のペニスを貪る俺に、常春が低くそう呻く。


「だめぇ……もっと突いて……ッッ! 奥、もっと、もっと深く……ッ!」
「無茶言うなよ……、ったく」


 常春は眉根を寄せてそう言いながらも、何度も何度も深く俺を貫いた。
 はぁはぁと獣のような二人の呼吸が入り交じって、ただただ夢中で俺達は快楽を貪りあう。
 

「つね、はるぅ……ッ、んん、つねはる……ッ!」
「うっ……真冬っ、もっ……イクッ……!」
「んんん、常春……ッ、中……中に……っ、一番奥に出してぇ……ッ!」


 俺はそう答えて、ギュッと常春を抱きしめた。


 嫌なことも、悲しいことも、辛いことや苦しいことも。
 何も感じない。
 常春と繋がって、圧倒的に気持ち良くて、幸せな事以外、もう何も分からない。

 俺は常春を、愛している…………。



「真冬、真冬……ッ……もう…………ッ!!」


 常春のそれが深く俺を貫いたまま最奥で果てると、俺の中はきゅうっと締まってヒクヒクと震え、上りつめた。


「ん……ッッ、俺もイクッ……、い……アァ……ッッ!!」



 視界が滲み、体の奥で何かが弾ける。
 その何かは俺の全身に脳内麻薬のように弾け広がって、クラクラするほどの快楽となって全身で荒れ狂った。
 俺は背骨が仰け反り、ピンと伸びた爪先がぶるぶるとくうで震える。


「はぁ……はぁ……っ」


 数秒間の絶頂。
 荒れ狂う快楽の波が徐々に引いていくのを感じながら、俺はまるでずっと欠けていた何かが満たされるような幸福感でとろけていた。







 俺はベッドに沈み、麻痺したように働かない脳みそでぼんやりと窓すらない部屋の景色を見ていた。

 常春がゆっくりと俺の中から自身のものを引き抜く。ゴムを外して出した精の処理をし、気怠そうにタオルを拾って立ち上がった。


「あ……! 待って……常春、行かないで……っ!」


 力の抜けた腕を必死に伸ばして、俺は常春を引き留めようとする。
 常春は目を丸くして振り返り、笑って俺の頭をくしゃりと撫でた。


「行くってなんだ? ちょっと洗面所で口をゆすぐだけだ。 お前のここ、舐めちまったからな。 このままの口じゃ、キス……いやだろ?」



 そう言ってベッドから離れようとする常春の腕を掴んで、俺は力いっぱい引き寄せる。


「わっ……! ま、真冬…………?」


 困惑した表情のままベッドに尻もちをついた常春の唇に、俺は自分のそれを押し当てた。




 ああ。
 愛していることを自覚するということは、同時に失う恐怖に取り憑かれるということなんだ。

 
 俺は常春と深く口付けを交わしながら、俺は再び常春の温もりに溺れるのだった。
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