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番外編-②
しおりを挟む可愛くない台詞を吐く碧の唇を、サクは再び己のそれで塞いだ。
碧の薄い唇が、サクを求めるように薄く開く。
サクはその唇の隙間から舌を滑り込ませると、歯列をぬるりとなぞった。碧の小さな赤い舌が酸素を求めて苦しげに隙間から覗き、サクはそれを絡め取ってぬるりとした感触を楽しむように絡めた。
「は、ぁっ……、もっと……サク……っ」
碧は力の抜けかけた細い両腕でサクの頭を抱えるように抱きしめると、自らも舌を伸ばしてサクのそれに絡めた。
息継ぎを挟んでもどかしそうに何度も繰り返される口付けは、ぬめる水音を絡めて、いやらしい音を室内に響かせる。
「サク……もっとサクが、っ……欲し……っ」
「……っ、ふ……」
吐息混じりに名を呼ばれたサクは、高鳴る己の鼓動に苦笑する。この愛らしい小さな魔王はこうして無意識に男を誘い、理性を狂わせる。
これがゲイ族最強の魔王たる碧の類まれなる才能であり、決して愛などではない。
そう必死に己に言い聞かせてなお、サクの体は碧の求めに堪らず昂ぶる。
「そんな事を言うと、いくら私でも貴方を滅茶苦茶にしてしまいますよ」
「はぁ……っ、サクになら、構わないっ……からっ、早く……」
「……まったく。貴方は本当にいけない人ですね……」
餌をねだる雛鳥のようにあどけないフリをして、どう誘われたらサクがたまらなくなるのかを、碧はよく知っている。
自暴自棄になっていたサクに、生きる意味をくれた人。
そんな彼をサクが大切に思わないはずなどないのに。
胸を飾る小さな赤い実の周りを、サクが中心に触れないように指の腹でそっとなぞる。
じれったいその感覚に、碧はピクリと腰を揺らした。時折指の腹がいたずらに先端を掠めるたび、碧は甘い声を漏らす。
「あ、ぁ……っ」
碧が控えめに上げた嬌声に、サクは優しく微笑む。
可愛らしいその声をもっと聞きたくて、サクはツンと勃ち上がったその中心を優しくつまみ上げた。
そのまま指の腹でやわやわと揉み潰すように弄ぶと、途端に碧の薄い胸板がもじもじと揺れて、指の中の小さな粒が固く存在を主張する。
「や、……さ、くぅ……」
「碧様、愛らしゅうございます」
羞恥に赤らめた頬でサクに縋る碧は堪らなく扇情的で、サクの理性を惑わせる。
サクがたっぷり濡れた舌でその小さな粒を舐めると、途切れ途切れだった碧の甘い声が絶え間なく溢れる。
男の快楽を引きずり出すと言われる魔力を容赦なく込めた舌。
それでチロチロと敏感な先端ばかりを執拗に舐められては、いくら魔王の碧と言えども反応せずにはいられない。
「あっ……あっ、サク……、さ……く、……っ」
碧は快楽にとろける時、気持ち良さに震える指先でサラサラのサクの髪の毛を絡めとる。そのまま与えられる魔力と快楽を享受しながらサクの頭にしがみついて、切ない声でサクの名を呼ぶのだ。
他の従者や部下には恐らく見せないであろうこの姿。今だけの僅かな優越感は、後々後悔に変わる。
分かっていてもサクは、この小さな魔王を愛しいと思うことをやめられずにいるのだ。
「やっ……そこばっかり……」
「……ああ、失礼。もうこんなになられていたのですね」
そう言われて胸元から顔を上げたサクは、碧の下半身に視線を落とす。
碧の欲望は、既にズボンの内側からその布を持ち上げ膨らんでいた。その膨らみを布越しにやわやわと揉み上げると、膨らみはみるみるうちに窮屈そうにズボンを押し退ける。
サクが豪奢な細工の施された碧のベルトを外し前を寛げた途端、碧の分身は勢い良く腹を打った。
「うう、あんまり見ないで……」
「何故です? こんなに愛らしいのに」
サクは既に蕩け切った表情で恥じらう碧にそう言って、うっとりとその熱茎に指を絡めた。神聖なものにするような恭しさで雁首から蜜をこぼす先端へと何度かキスをすると、碧が泣きそうな顔で甘い声を漏らす。
その表情があまりに愛しくて、サクは手の中のものをそのまま深く口腔の粘膜に迎え入れた。
「あっ、や……っ! あ……ぁっ、駄目っ……サク……っ、サク……っ!」
碧の四肢がビクンと震えて、サクが口の中で敏感なところを舐(ねぶ)る度、小ぶりなそれはみるみる固さを増していった。
弱点を口に含まれて、魔力と快楽をたっぷりと与えられる。逃れられないその快楽が欲しくて堪らない癖に、碧はいつもサクの体を案じてくれる。
そんな碧の理性を、快楽で溶かして全て剥ぎ取ってしまいたい……。そんな小さな征服欲が身のうちに湧き上がって、サクはいやらしく舌を動かした。
敏感な裏筋を舌で舐め回し、ちゅっと吸いながら先端の割れ目や段差を唇の内側の粘膜で激しく擦る。
だが碧が射精の兆しを見せると攻めの手を弛めて、決して射精はさせない。
それを繰り返すうち、碧はサクの口の中で煮詰めた蜂蜜のような甘い蜜を零しながら、ただ喘ぎを漏らす愛らしい少年になる。
それで碧はようやく、サクの腕に抱かれてただ素直に快楽を求めるだけの、一人の男になれるのだった。
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