【完】メスイキTrip!〜メスイキした瞬間フリ○んで異世界に飛ばされて魔王を目指す羽目になるとかちょっと意味が分からない〜

唯月漣

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2)パンツを求めて三千里!?①

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「さ、着いたわ。ここよ」


 そう言って男が俺の手を離したのは、市役所(仮)から15分ほど移動した、町外れにある大きな家の前だった。

 年季の入ったその家は、外壁には蔦が這い窓ガラスにはヒビが入っていた。庭には鬱蒼と草が茂り、長年手入れされていないらしき庭木は枝を大きく伸ばして、家全体に陰気な影を落としている。

 男に誘われるまま中に入ると、中はそれなりに家具や生活道具なんかが揃っていた。

 男は小さな丸椅子に腰掛けると、俺にも隣にある同じ椅子を勧めた。
 うっかり腰みののまま椅子に座った俺は、チクチクとした葉っぱが金タ…………デリケートゾーンに刺さってしまい、「ひゃん!」と小さな悲鳴を上げながら慌てて立ち上がる。
 そんな理由から勧められた椅子を丁重にご遠慮申し上げつつ、俺はキョロキョロとあたりを見回す。

 男が1人で暮らしている家にしては、テーブルも大きくキッチンもとても広い。家というより、ちょっとした集会所ぐらいの広さはありそうだ。
 室内には同じような形の椅子が複数あるようだったが、ほとんどの椅子は片隅に積み上げられて埃を被っており、長く使われていないようだった。


「ねぇ、貴方。メスイキの森に飛ばされて来たんでしょ? この世界には居ない、その髪の色。獣混じりのない、耳や手足の形。つまりは異世界人。そしてアタシと同じ、ゲイ族」


 隣に座るファンキーな姿のその男は、そう言って好奇心をたっぷり含んだ眼差しで俺を見つめた。

 男はいわゆる女装家のようで、くっきり二重の目元は、カラフルなアイシャドウと丁寧にカールさせた長いまつ毛で飾られ、口元は紫の口紅にたっぷりのグロスが塗られていた。
 そんなメイクに、男らしさあふれる凛々しい眉毛としなやかな筋肉質の体が、ちょっとアンバランスだ。
 きっとメイクを落とせば物凄いイケメンであろうに、勿体ない……。


「うーん。良く分からんが、どうやらそうらしいな」


 俺はゲイ族とやらになった覚えはないが、おそらく彼はあちらの世界で言うところのゲイのことを言っているのだろう。
 俺が薄々勘付いていたように、俺が彼にとっての異世界からこちらへ来たことはもはや間違いなさそうだ。
 俺はとりあえずコクリと頷いて、道中に思った事をいくつか口にした。


「んで、あんたは誰? 何で俺を助けてくれたんだ?」
「アタシの名前はカヴァよ。貴方を助けたのは、貴方が言い伝えにある、『メスイキの森の"男根の大樹"のもと現れしゲイ族の魔王候補』……平たく言うと、転移者だから。この世界にはいくつかの『ニ・チョーメ』と呼ばれる、転移者が飛ばされてきやすい磁場の強い場所があるの。メスイキの森は、その一つよ」
「え、えーっと」

 
 あのーっ、すみません! とりあえず俺、どっからツッコんだら良いんでしょうか先生っ!? 
 異世界ファンタジーって、もっと何ていうか、こう夢とか希望とかあってさぁっ、キラキラし(略)。


「うふふ、混乱してるわね。で、他に聞きたいことは?」


 混乱のあまり1人で百面相をしている俺に、ガヴァは椅子から立ち上がって、部屋の隅にある水差しからコップに水を入れ始めた。その中に柑橘に似た香りの果物の果汁を数滴絞り入れると、優しく微笑みながら俺に勧めてくれる。


「うーん。聞きたいことはあり過ぎて脳みそがショートしそうなんだが、とりあえず今は先にパンツとズボンが欲しい」


 人間、混乱し過ぎると脳みそがマトモに働かなくなるらしい。
 色々考えた末に俺の頭に真っ先に浮かんだのは、何故か一緒に異世界転移を成し遂げられなかった、パンツとズボンの事だった。

 この世界に飛ばされた際腰に巻いた葉っぱは、長く走ったせいで葉が乾いて縮み、イチモツを隠すにはいよいよ心許ないものとなっていた。


「あらー、確かに凄いことになってるわね。取り敢えずズボンはアタシので良ければあげるわ。パンツは流石にあげられないから、今度街で新品を買いましょうか」


 ガヴァはそう言ってクスクスと笑い、木箱から衣類を取り出した。俺は有難くその中の無難な1枚を選びだし、足を通してみた。
 …………の、だが。

 
「あらー! うふふふふ」
「ん!!??」


 俺の着替えを真後ろで見ていたガヴァが、不意に俺を指差して楽しげに笑った。


「随分とセクシーになっちゃったわね! そういうセクシーさ、アタシは嫌いじゃないけど」 
「は? 何が!!?」

 そう言われた俺は、不思議に思いながら部屋の片隅に置かれていた姿見に己の姿を映してみる。

 上はとってもスタイリッシュなリーマン風。
 下は、まぁまぁ無難な黒のスキニーパンツ風。

 若干前がもっこりしているのは、スキニーパンツの性質上、仕方ない。なんせ、ズボン直履きだし。


「コレ、そんなに気になるか? 仕方無いだろ、パンツが無いんだ」


 気まずくなって前を隠し気味に振り返った俺に向かって、ガヴァは後ろを指さした。


「違うわ。後ろよ、う・し・ろ!」


 ガヴァは笑いを噛み殺し、目尻に滲む涙を拭ってから、俺の尻を指差した。
 鏡の前でくるりと振り返った俺が見たものは…………。

 なんと、セクシーにポロリしている、ぷりんとしたお尻の割れ目だった。


「ひぃっ!?」


 この谷間が女性の乳房のそれなら、それはそれはセクシーなファッションと言えるだろう。
 だが残念な事に、この谷間は引き締まった男の尻の割れ目だ。
 息子隠して、尻隠さず。
 うーん、流石は異世界。セクシーだねぇ!(ヤケ)
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