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87)毎日コツコツ
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「おう、日和。お前、今日はこれで上がりか?」
ひと仕事を終えた私にそう声を掛けて下さったのは、出勤してきたばかりの佐倉さんだ。
「いえ、夜皆さんがお帰りになる頃にまた戻ります。その前に一旦部屋に帰って、詩月様に出して頂いた宿題をやってしまおうと思いまして」
「あー、また詩月様の宿題か。お前マジでコツコツ宿題やるタイプなんだな。まぁ真面目なお前らしいっちゃ、お前らしいが」
「ええと。コツコツを心掛けてはいますが、私の場合深夜から朝方にかかるお勤めもありますから流石に毎日という訳では……。そういう佐倉さんは?」
「あー? 俺は夏休みの宿題は最後にまとめてやるタイプだったな」
『深夜から明け方にかかるお勤め』というワードに何故か少し照れたように視線を逸らしながら、佐倉さんは頭を掻いた。
「私らしいというか……詩月様が『宿題っていうのはコツコツやらないと後で自分が後悔するんだよ』と」
「うーん……耳が痛いな」
苦笑しながらそう言った佐倉さんに、私は少しだけ微笑み返して肩を竦めた。
「実を言うと、私もです」
「えっ」
「実は最近何かと忙しかったもので、なかなか手を付けられなかった宿題が一つありまして」
「へぇ、それで休憩時間に宿題を……。お前も大変だな」
「詩月様が私のためを想って出して下さった宿題ですから、大変だなんてとんでもないです」
「そっか。ま、頑張ってな」
「はい、ありがとうございます」
因みに佐倉さんが想定しているのは、恐らく詩月様に見て頂いている勉強の方だろう。
今日の私の宿題は、実は佐倉さんの言うそれとは別件だ。
けれど頑張らなきゃいけないことに変わりはない。
佐倉さんと別れて自室に戻ると、ふぅと一息ついてから窓際の机に座る。
少しドキドキしながら私は引き出しの一番下を開けて、ある紙袋を取り出した。
これは以前詩月様に宿題と称して渡されたものだ。中には小さなチューブと変わった形のとある玩具が入っている。
『日和は一日一回、ソレを入れてオナニーをすること』
これが詩月に出された宿題だった。けれどあの日以降業務に追われて、結局使わぬまましまい込んでしまっていた。
「さて、と……」
『オカズは僕じゃなくてもいいよ』
そう詩月様は仰っていたけれど、そうは言われても……。
そもそも私は元来性欲が薄い方だ。なので半端に体を煽られでもしない限り、定期的に自慰行為をする習慣がない。
そんな私だから『自慰のオカズ』と言われても咄嗟にそれらしいものが思い浮かばない。
「どうしよう。こういう時は取り敢えず……ローションから……なのかな」
ぽつんと漏れた独り言がなんだか虚しかったけれど、取り敢えず服がローションで汚れないようズボンと下着を下ろしてみた。
手に取ったエネマグラをまじまじと見つめてから、意を決してその突起部分にローションを塗る。
それから性器の裏側に手を伸ばして、穴の位置を確かめるように尻の間を探ってみた。
目当ての窄まりはすぐに見つかった。
けれど詩月様に触れて頂いてから結構な日数が経ってしまっているせいか、穴の中心に指を潜り込ませようにもなかなか上手くいかない。
『宿題っていうのは、コツコツやらないと。後で自分が後悔するんだよ』
詩月様の言葉が頭の中で蘇る。
「はぁ……」
――――本当に、耳が痛い。
私は座る場所をベッドに移し、四つん這いになってみた。顎と肩で体重を支えて、片手で尻の肉を開くようにして左右に開く。
すかさずその中心に、力を込めた指を差し入れようと頑張ってみた。
けれどもその窄まりはやはり固く閉じ、私自身の指の侵入すらも拒む。
指すら挿入らないのでは、玩具どころではない。
どうしよう……。
ちょっと痛いかもしれないけど、思い切って強引に指を捻じ入れてみようか……。
そんな事を考えてグッと指先に力を入れた時、不意にドアの向こう側からノックが聞こえた。
「!!!!!」
「日和さん、いる? 休憩中にごめんね。ちょっと今、いいかな?」
ビクっと体が跳ねたのが、自分でも分かった。
ドアの向こうに居るのは、お勤め先に出勤されたはずの律火様のようだ。
ひと仕事を終えた私にそう声を掛けて下さったのは、出勤してきたばかりの佐倉さんだ。
「いえ、夜皆さんがお帰りになる頃にまた戻ります。その前に一旦部屋に帰って、詩月様に出して頂いた宿題をやってしまおうと思いまして」
「あー、また詩月様の宿題か。お前マジでコツコツ宿題やるタイプなんだな。まぁ真面目なお前らしいっちゃ、お前らしいが」
「ええと。コツコツを心掛けてはいますが、私の場合深夜から朝方にかかるお勤めもありますから流石に毎日という訳では……。そういう佐倉さんは?」
「あー? 俺は夏休みの宿題は最後にまとめてやるタイプだったな」
『深夜から明け方にかかるお勤め』というワードに何故か少し照れたように視線を逸らしながら、佐倉さんは頭を掻いた。
「私らしいというか……詩月様が『宿題っていうのはコツコツやらないと後で自分が後悔するんだよ』と」
「うーん……耳が痛いな」
苦笑しながらそう言った佐倉さんに、私は少しだけ微笑み返して肩を竦めた。
「実を言うと、私もです」
「えっ」
「実は最近何かと忙しかったもので、なかなか手を付けられなかった宿題が一つありまして」
「へぇ、それで休憩時間に宿題を……。お前も大変だな」
「詩月様が私のためを想って出して下さった宿題ですから、大変だなんてとんでもないです」
「そっか。ま、頑張ってな」
「はい、ありがとうございます」
因みに佐倉さんが想定しているのは、恐らく詩月様に見て頂いている勉強の方だろう。
今日の私の宿題は、実は佐倉さんの言うそれとは別件だ。
けれど頑張らなきゃいけないことに変わりはない。
佐倉さんと別れて自室に戻ると、ふぅと一息ついてから窓際の机に座る。
少しドキドキしながら私は引き出しの一番下を開けて、ある紙袋を取り出した。
これは以前詩月様に宿題と称して渡されたものだ。中には小さなチューブと変わった形のとある玩具が入っている。
『日和は一日一回、ソレを入れてオナニーをすること』
これが詩月に出された宿題だった。けれどあの日以降業務に追われて、結局使わぬまましまい込んでしまっていた。
「さて、と……」
『オカズは僕じゃなくてもいいよ』
そう詩月様は仰っていたけれど、そうは言われても……。
そもそも私は元来性欲が薄い方だ。なので半端に体を煽られでもしない限り、定期的に自慰行為をする習慣がない。
そんな私だから『自慰のオカズ』と言われても咄嗟にそれらしいものが思い浮かばない。
「どうしよう。こういう時は取り敢えず……ローションから……なのかな」
ぽつんと漏れた独り言がなんだか虚しかったけれど、取り敢えず服がローションで汚れないようズボンと下着を下ろしてみた。
手に取ったエネマグラをまじまじと見つめてから、意を決してその突起部分にローションを塗る。
それから性器の裏側に手を伸ばして、穴の位置を確かめるように尻の間を探ってみた。
目当ての窄まりはすぐに見つかった。
けれど詩月様に触れて頂いてから結構な日数が経ってしまっているせいか、穴の中心に指を潜り込ませようにもなかなか上手くいかない。
『宿題っていうのは、コツコツやらないと。後で自分が後悔するんだよ』
詩月様の言葉が頭の中で蘇る。
「はぁ……」
――――本当に、耳が痛い。
私は座る場所をベッドに移し、四つん這いになってみた。顎と肩で体重を支えて、片手で尻の肉を開くようにして左右に開く。
すかさずその中心に、力を込めた指を差し入れようと頑張ってみた。
けれどもその窄まりはやはり固く閉じ、私自身の指の侵入すらも拒む。
指すら挿入らないのでは、玩具どころではない。
どうしよう……。
ちょっと痛いかもしれないけど、思い切って強引に指を捻じ入れてみようか……。
そんな事を考えてグッと指先に力を入れた時、不意にドアの向こう側からノックが聞こえた。
「!!!!!」
「日和さん、いる? 休憩中にごめんね。ちょっと今、いいかな?」
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