元・愛玩奴隷は愛されとろけて甘く鳴き~二代目ご主人様は三兄弟~

唯月漣

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64)寝顔は信頼?

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 ふと太陽の眩しさを感じ、私は体を起こす。
 
 よもや車ごと捨てられたのではと、あわてて隣を見ると、水湊様が運転席のシートを僅かに倒して仮眠を取られていた。
 無防備な寝顔は思いのほか幼くて、どことなく詩月様や律火様とも似ている気がする。
 
 詩月様の時もそうだったけれど、朝まで一緒にいて寝顔を見せて頂けることは、信頼された証拠のようでなんだか嬉しい。ましてや今は車内で二人きりだ。

 私の体にかけられていたコートを水湊様へお返しすると、私はあたりを見回した。遠くにいくつかの民家が見えるけれど、すぐ側にはコンクリートの壁のようなものがあってよく見えない。
 ここは一体どこで、今は何時くらいなのだろう。
 
 そういえば水湊様は、『捕まる前に逃げる』と仰っていたっけ。
 
 私のスマートフォンにはGPSが入っている。以前樫原さんはそう言っていた。そのスマートフォンの電源を切れとお命じになったという事は、水湊様を追っているのは、まさかお屋敷の関係者……? それとも……。

 そう想像を巡らせながら電源の落ちた真っ暗な画面を見つめていると、水湊様が不意に口を開かれた。


「誰かと連絡を取りたいのか?」
「起きていらしたのですね」
「ああ。悪いがそのスマホはもう少しだけ電源を入れずにいてくれないか。今頃樫原達が動いているから、恐らく昼頃には事態は収束するだろう。それまでの辛抱だ」
「……はい」


 少なくとも、屋敷の皆さんは水湊様の味方らしい。それを聞いて、私はなんとなく気が抜けた。

 
 水湊様は後部座席に腕を伸ばして、コンビニの袋を取り出し私に渡してくださる。お礼を言って受け取りながら、私は水湊様に問いかけた。

 
「あの……差し支え無ければ、私を眠らせた理由をお聞きしても?」
「なんだ。気がついていたんだな。夜眠れないと言ったら、かかりつけ医が私にアレを処方した。だが私には全く効く様子がなかったので、ちょっとお前に試してみた」
「――えっ」
「ふふ、冗談だ。少しお前に聞かれては困る業務上の連絡があったんだ。騙すようなことをしてすまな……」
「眠れないって……それはいつ頃からのお話ですか!?」
「――は?」


 私の返事に水湊様は何故か目を丸くされて、それから困ったように笑われる。


「さぁな。母が死んでからなので、もう何年にもなる。日和は薬を盛られたのに怒らないんだな」
「??? 怒る……? なぜです?」


 突然眠らされたことには驚いたけれど、本来水湊様に処方された睡眠薬ならば私の体に害は無いと分かっていたはずだ。業務上必要で眠らせたのならなおのこと、私に怒る理由なんてない。
 それを伝えると、水湊様はしばし目を見開かれたあと、口元を抑えてクスクスとお笑いになった。


「日和は本気でお人好しなんだな。お前を警戒するほうが馬鹿らしくなる」
「ええと。私の何に警戒されていたのかは良く分かりませんが、誤解が解けたのなら何よりです」
「そうだな。とりあえず、車の中で悪いが朝食にしよう」

 
 そう言いながら水湊様はもう一つの袋を開けて、おにぎりを取り出すと器用にフィルムを剥がされる。
 

「なぜ深夜に屋敷を出たのかや、誰から逃げているのかは聞かないのか?」


 私も見よう見まねでおにぎりのフィルムを剥がすと、海苔の欠片を車内に落とさないよう慎重に包装を外していく。

  
「お聞きした方がよろしいのですか?」
「ここまで巻き込んだのだから、少なくともお前には理由を知る権利があるだろう」

 
 そうおっしゃる割に、水湊様はあまり事情を話したそうには見えない。私は軽く微笑むと、首を横に振った。

  
「私はただの愛玩奴隷です。ペットに言いたくない秘密を明かす飼い主はおりません。水湊様が私に言いたくない事ならば、言う必要はございません」


 愛玩奴隷は、愛玩動物と違って言葉を話すことが出来る。知らなくて良いことを知って主人に疎まれても、いい事はない。
 己の分をわきまえる事は、引いては己の身を守ることでもある。
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