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56)詩月様からの宿題
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小さく萎んだままの私の性器を優しく手に取られた詩月様は、そっと間近に顔をお寄せになって、まるで検分するようにその部分を見られた。
「昨日は初めての鬼頭責めだったから、傷が付いたりしてないか心配だったんだよね」
「えっ……?」
下手をしたら、吐息すらかかってしまいそうな至近距離。そんな距離からしばらく私のその部分をご覧になった詩月様は、次に私の胸元に触れる。
昨夜器具を付けた箇所を丹念にチェックされた詩月様は、傷や鬱血がないことを確認なさると安心したように仰った。
「うん、大丈夫そう。ちょっと赤くなってはいるけど、一晩寝れば治るでしょ」
そう笑った詩月様は、そっと布団をかけ直して下さる。
「もしや、私の身をご心配下さったのですか?」
「当たり前でしょ」
「……っ。詩月様はとてもお優しいのですね」
自分さえ行為を楽しんだら、事後の奴隷の体がどうなろうとも主人は関心がない。愛玩奴隷たるもの、体のメンテナンスや体調管理は当然自分でするもの。
それが普通だと思っていたから、詩月様のお心遣いがとても嬉しい。
「あの……優しくして下さってありがとうございます」
ホッとしながらそう答えた私の言葉を、詩月様は少し困ったような顔で突っぱねる。
「別に日和を心配した訳じゃないよ。社員に怪我なんてさせたら、水湊兄さんに叱られちゃうからね」
「あ、以前お聞きしたことがあります。勤務中の怪我は、労災……というものになってしまうのでしたか?」
「そ。あの人あれでも東條院家の後継者らしいから、そーゆーのうるさいんだよ」
労災というものが私にはイマイチよく分からないけれど、屋敷の皆さんが私にお優しいのは決してそういう理由だけではないと私は思う。特に詩月様は、そういうタイプではない気がした。
けれども詩月様は私がそれを言うのを嫌がる気がしたので、今は黙っておく。
すると詩月様はベッドの縁に腰をかけて、欠伸をしながら私の方を見た。
「日和がいい反応をするから、久しぶりについ明け方まで遊んじゃった。僕は一旦寝室に戻って寝るよ。日和も今日はシャワーを浴びてゆっくり休んで」
「はい、ありがとうございました」
「あ、そうだ。それと……」
詩月様は引き出しを開けると、小さな紙袋を私に示した。
「日和、これは僕からの宿題」
「宿題……?」
「そう。開けてみて」
勉強やパソコンを教わっている時、詩月様は私にちょっとした宿題を出されることがあった。今回もそういった類かと思いながら紙袋を開けた私は、中を確認して僅かに動揺する。
「日和は一日一回、ソレを入れてオナニーをすること」
「………………っ!」
「ふふ。いい顔。あ、その時のオカズは僕じゃなくてもいいよ。……じゃ、僕はもう行くね」
――――渡された紙袋の中に入っていたもの。それは、昨夜使用したエネマグラと、ローションのチューブだった。
***
「おかえりなさいませ、水湊様」
私はその夜、いつものように玄関で水湊様をお出迎えした。
「椎名、例のアレを藤倉君に渡しておいてくれ」
「かしこまりました」
椎名さんは水湊様の秘書だ。基本的に自宅へ来ることは稀だけれど、帰りの車内でミーティングをする際などに、稀に自宅までいらっしゃることがあった。
年齢は樫原さんと同じくらいに見えるけれど、樫原さんや佐倉さんとは違い、水湊様を『坊っちゃま』とは呼ばない。
彼が傍にいる時、水湊様は私を藤倉君とお呼びになる。単に公私を分けていらっしゃるだけかもしれないが、二人の間に何となく距離を感じることもあることから、彼は古株の社員という訳ではないのかもしれない。
「藤倉さん。初給与、おめでとうございます」
「えっ……」
椎名さんに渡された封筒に印刷された『給与』の二文字。何となく忘れていたけれど、そういえば私はこのお屋敷に『雇用』されているのだった。
頭で理解していても、本当に給与を頂けるのはなんだか感慨深い。
「昨日は初めての鬼頭責めだったから、傷が付いたりしてないか心配だったんだよね」
「えっ……?」
下手をしたら、吐息すらかかってしまいそうな至近距離。そんな距離からしばらく私のその部分をご覧になった詩月様は、次に私の胸元に触れる。
昨夜器具を付けた箇所を丹念にチェックされた詩月様は、傷や鬱血がないことを確認なさると安心したように仰った。
「うん、大丈夫そう。ちょっと赤くなってはいるけど、一晩寝れば治るでしょ」
そう笑った詩月様は、そっと布団をかけ直して下さる。
「もしや、私の身をご心配下さったのですか?」
「当たり前でしょ」
「……っ。詩月様はとてもお優しいのですね」
自分さえ行為を楽しんだら、事後の奴隷の体がどうなろうとも主人は関心がない。愛玩奴隷たるもの、体のメンテナンスや体調管理は当然自分でするもの。
それが普通だと思っていたから、詩月様のお心遣いがとても嬉しい。
「あの……優しくして下さってありがとうございます」
ホッとしながらそう答えた私の言葉を、詩月様は少し困ったような顔で突っぱねる。
「別に日和を心配した訳じゃないよ。社員に怪我なんてさせたら、水湊兄さんに叱られちゃうからね」
「あ、以前お聞きしたことがあります。勤務中の怪我は、労災……というものになってしまうのでしたか?」
「そ。あの人あれでも東條院家の後継者らしいから、そーゆーのうるさいんだよ」
労災というものが私にはイマイチよく分からないけれど、屋敷の皆さんが私にお優しいのは決してそういう理由だけではないと私は思う。特に詩月様は、そういうタイプではない気がした。
けれども詩月様は私がそれを言うのを嫌がる気がしたので、今は黙っておく。
すると詩月様はベッドの縁に腰をかけて、欠伸をしながら私の方を見た。
「日和がいい反応をするから、久しぶりについ明け方まで遊んじゃった。僕は一旦寝室に戻って寝るよ。日和も今日はシャワーを浴びてゆっくり休んで」
「はい、ありがとうございました」
「あ、そうだ。それと……」
詩月様は引き出しを開けると、小さな紙袋を私に示した。
「日和、これは僕からの宿題」
「宿題……?」
「そう。開けてみて」
勉強やパソコンを教わっている時、詩月様は私にちょっとした宿題を出されることがあった。今回もそういった類かと思いながら紙袋を開けた私は、中を確認して僅かに動揺する。
「日和は一日一回、ソレを入れてオナニーをすること」
「………………っ!」
「ふふ。いい顔。あ、その時のオカズは僕じゃなくてもいいよ。……じゃ、僕はもう行くね」
――――渡された紙袋の中に入っていたもの。それは、昨夜使用したエネマグラと、ローションのチューブだった。
***
「おかえりなさいませ、水湊様」
私はその夜、いつものように玄関で水湊様をお出迎えした。
「椎名、例のアレを藤倉君に渡しておいてくれ」
「かしこまりました」
椎名さんは水湊様の秘書だ。基本的に自宅へ来ることは稀だけれど、帰りの車内でミーティングをする際などに、稀に自宅までいらっしゃることがあった。
年齢は樫原さんと同じくらいに見えるけれど、樫原さんや佐倉さんとは違い、水湊様を『坊っちゃま』とは呼ばない。
彼が傍にいる時、水湊様は私を藤倉君とお呼びになる。単に公私を分けていらっしゃるだけかもしれないが、二人の間に何となく距離を感じることもあることから、彼は古株の社員という訳ではないのかもしれない。
「藤倉さん。初給与、おめでとうございます」
「えっ……」
椎名さんに渡された封筒に印刷された『給与』の二文字。何となく忘れていたけれど、そういえば私はこのお屋敷に『雇用』されているのだった。
頭で理解していても、本当に給与を頂けるのはなんだか感慨深い。
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