元・愛玩奴隷は愛されとろけて甘く鳴き~二代目ご主人様は三兄弟~

唯月漣

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49)出口のない快楽

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「あっ……あっ……」


 弛んだ口から小さな喘ぎが漏れた。けれど、両手にガーゼの端を持っている私に口を塞ぐ術は無い。


「なんだ。声、可愛いじゃない。今の、もっと聞きたいな」
「あ、ちが……ッ、ん、ふ……っ」


 優しくそう仰った詩月様は、私の膝頭に優しく口付けて下さった。そのまま色っぽくいやらしい舐め方で、膝頭に舌を這わせる。
 
 それはまるで詩月様に鬼頭を舐められているような錯覚を私に起こさせた。
 
 私の思考は見透かされているらしく、詩月様は私の表情を上目遣いで窺いながら、舌を大きくお出しになってゆっくりと右へ左へ往復するように膝の丸みを舐め、私を焦らす。



「あっ……、ゃ……っ、気持ち、い……っ」
「ふふ。日和はそうやって素直な方が可愛いよ。ほら、もっと鳴いてみてよ」
 

 そう仰って、詩月様がガーゼごしに私のペニスの先に手を当てた。そのまま丸めた掌でクリクリと円を描くようにガーゼを押し当てられて、私は悲鳴じみた嬌声を上げた。


「ひぁ……ッ、あっ、あぁ――――っっ」

 
 ガーゼを持つ手が甘い快楽に痺れて、頭が蕩けて真っ白になる。それでもなお容赦なく先端にぬめりを与えられて、私は何も考えられなくなった。

 同時に催したのは、尿意に似た狂うほどの快楽と衝動。けれど、何故か射精に至ることは出来ず、私はひたすらその快楽に耐える。
 

「ひ……っぐ、ぁ……っ」
「日和、言ったよね? 手を止めちゃダメじゃない」
「あ……、すみ、ま……せ……っ」


 ガーゼを持つ手が痺れて、言うことを聞いてくれない。
 舌の根元が喉の奥に張り付いて、私の意思に反し、ガクガクと痙攣する。

 それでも私は、詩月様のご命令に従わなければという強い意志で、力の抜けた手でもう一度ガーゼを掴み、なんとか行為を続けた。

 ようやく叶った詩月様への夜伽。せめて詩月様には、楽しんで頂きたい……。


「ふふ。また謝った。そんなに気持ちいい? 罰ゲームも三回目だから、ちょっとお仕置のグレードを上げようかな」


 そう仰った詩月様が、おもむろに小さな金属製の洗濯バサミのようなものを取り出された。
 先端にゴム製の滑り止めが付いたそれで、突然きゅっと乳首を挟まれる。

 
「……あ、ぁ……ッ」


 ツンと小さな痛みが走って、金属製のバネに押しつぶされた哀れな赤い実が恥ずかしく尖った。器具の頭には可愛らしい小さな鈴が付いており、私が四肢を揺らす度、小鈴が愛らしくチリンと鳴る。
 
 それが何ともいやらしくて、私は羞恥に頬を染めた。


「可愛いね。ビクビク動く日和に合わせて、鈴が『もっとして』って鳴いてる」
「あ、ゃ……っ、ぁ……っ」


 指先で鈴を弾かれて、掠れ声が漏れる。

 せり上がる快楽は私を確実に追い詰めているはずなのに、いつまで経っても絶頂の波が来てくれない。

 ただだだ続く快楽地獄のようなこの行為の先に、詩月様は何をお求めになっているのだろうか……。


「ひ、ぐ……ッ、あぁ……ゃ、っ」

 
 規則的に左右に動かすガーゼで、赤く熟れた鈴口がなお擦れる。限界まで腫れ上がったペニスが、終わりを求めてじんじんと疼いた。
 お腹の内側から私を追い立てるように、尿意のような何かが何度も何度も込み上げてくる。

 射精という終わりがないことにより、これ以上は頭がおかしくなってしまいそうだった。
 

「詩づ、き……様っ、も……、お許し下さい」
「――どうして? 気持ちいいんでしょう?」
「でっ……、すが……っ」


 射精に至らないまま与え続けられる快楽。
 この快楽への我慢が限界を超えた時、自分がどうなってしまうのかが分からない。
 私はそれが、とても恐ろしかった。


「ねぇ、日和。イキたい?」
「イキ……、ぁ……」


 私がイけば、無限に快楽の続くこの行為は終わりなのだろうか? ならば、すぐにでもイキたい……。
 けれど、それでは私ばかりが気持ちよくて、詩月様は……?


「ほら、早く言いなよ。答えないと……」
「――ああっ、ひ……ッ」


 再びガーゼの上からグリグリと掌で擦られて、私は小さく悲鳴をあげる。


「もっ、申し訳、ありま…………あっ」


  私の謝罪はどうやらすっかり口癖らしい。流石の私も口にした瞬間気がついたけれど、時すでに遅しだった。


「あーあ。日和はよっぽど僕にお仕置きされたいんだね?」


 クスクス笑われて、私は情けなさに唇を噛んだ。
 太ももに添えられていた詩月様の手が、悪戯に私の内股の皮膚に爪を立てる。チクリという痛みに目を開けた私が見たもの。

 それは、サディスティックな微笑みを浮かべた、ドールのように美しい詩月様のお顔だった。
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