46 / 99
46)気持ちいい時は
しおりを挟む
「萎えるかどうか、聞いてみなきゃ分かんないじゃない。鳴いてみてよ、日和」
「…………」
そこまで言って頂けるのならば……。
そうは思うけれど、自分が声を出した途端、場の雰囲気がスッとしらけるあの感覚が脳裏につい蘇ると、下半身に与えられる気持ちよさとは裏腹につい臆病になって気持ちが萎んでしまう。
それは皮肉にも、詩月様の手の中で膨らみかけていた私の分身にも如実に現れてしまった。それに気がついたらしい詩月様の表情に、私は情けなくなって僅かに俯く。
「あらら……。まぁ、すぐにとは言わないから、そこは少しづつ慣れていこうか」
「はい……」
また、主人に気を使わせてしまった……。
この家の皆さんは律火様も詩月様も本当にお優しくて、それなのにご期待に添えない自分が情けなかった。
そんな私の心情を察したのだろう。詩月様は私の髪に優しく口付けて、華奢なその体で私を抱きしめてくださった。
「そうやって深刻にならないの。せっかくの夜を、二人で夜を楽しもうよ。ね?」
「はい……」
ふんわり笑いかけて下さった詩月様につられて、私も少しだけ気持ちが楽になった。
「ところで日和。僕が面接の時に出した条件、まだ覚えてる?」
「はい、勿論です」
詩月様に初めて会ったあの日。詩月様は面接の最後に私にこう仰った。
『兄さん達の命令に反しない限り、僕の命令には絶対に逆らわないこと』
そんなことは、私にとっては当たり前だ。あの時も、二つ返事で条件を了承したことを覚えている。そのことを詩月様に告げると、詩月様は満足気に微笑まれた。
「ちゃんと覚えてくれてて良かったよ。じゃあさ、鳴けない日和のために、今夜は一つ、ゲームをしよう」
「ゲーム、ですか?」
「そう」
詩月様は人差し指を私の唇におあてになると、秘め事でも持ち掛けるように悪戯に片目を瞑られる。
「日和ってさ、見てるといつも『申し訳ございません』ばっかり言ってるよね。謝らなくていい時も。だから今夜はそれ、禁止」
「え……?」
自分の口癖を指摘されるほど詩月様が私を見てくださっていたことにも驚いたけれど、何より夜伽をゲーム方式で、という提案に驚いた。
「今夜は日和が僕に謝罪をしたら、僕は君には小さな罰を与える」
「えっ」
「その代わり日和が一晩謝らずにいられたら、何でもひとつお願いを聞いてあげる。……嫌だなんて言わないよね?」
意味深に目を細められた詩月様は、そう言って妖艶に微笑まれた。
詩月様は謝られるのがお嫌いなのだろうか? ゲームの意図は良く分からなかったけれど、立場的に私には従う以外の選択肢は無い。
「はい、承知しました」
「それと、これはお願い。今夜は、気持ちいい時は『気持ちいい』『もっと』って答えてほしいな」
「はい。努力致します」
「いい返事。ゲーム中にどうしても無理だと思う事があったら、一回だけギブアップを許してあげる。そしたらその時は別のことで埋め合わせして貰うけどね」
このゲームに、ギブアップ……? それは一体、どういう状況なのだろう。ますますよく分からなかったけれど、私は素直に頷いた。
「OK。じゃあ日和。ちょっと準備をしてくるから、準備が終わったら始めようか。寒いかもだから、布団の中で待ってて」
詩月様はそう言い残して、お風呂場へと消えた。詩月様は夕食後にシャワーは既に浴び終えていたようだったけれど、歯でも磨かれるのだろうか?
詩月様は程なくして、手に洗面器を持ってお戻りになった。洗面器をベッドサイドのテーブルに置いた詩月様は、服を着たまま私の隣に腰を下ろされる。
「これは……?」
「なんだと思う?」
そう返されて洗面器の中を覗き込むと、中には透明な液体の中に白くて薄い布が浮かんでいた。
「…………」
そこまで言って頂けるのならば……。
そうは思うけれど、自分が声を出した途端、場の雰囲気がスッとしらけるあの感覚が脳裏につい蘇ると、下半身に与えられる気持ちよさとは裏腹につい臆病になって気持ちが萎んでしまう。
それは皮肉にも、詩月様の手の中で膨らみかけていた私の分身にも如実に現れてしまった。それに気がついたらしい詩月様の表情に、私は情けなくなって僅かに俯く。
「あらら……。まぁ、すぐにとは言わないから、そこは少しづつ慣れていこうか」
「はい……」
また、主人に気を使わせてしまった……。
この家の皆さんは律火様も詩月様も本当にお優しくて、それなのにご期待に添えない自分が情けなかった。
そんな私の心情を察したのだろう。詩月様は私の髪に優しく口付けて、華奢なその体で私を抱きしめてくださった。
「そうやって深刻にならないの。せっかくの夜を、二人で夜を楽しもうよ。ね?」
「はい……」
ふんわり笑いかけて下さった詩月様につられて、私も少しだけ気持ちが楽になった。
「ところで日和。僕が面接の時に出した条件、まだ覚えてる?」
「はい、勿論です」
詩月様に初めて会ったあの日。詩月様は面接の最後に私にこう仰った。
『兄さん達の命令に反しない限り、僕の命令には絶対に逆らわないこと』
そんなことは、私にとっては当たり前だ。あの時も、二つ返事で条件を了承したことを覚えている。そのことを詩月様に告げると、詩月様は満足気に微笑まれた。
「ちゃんと覚えてくれてて良かったよ。じゃあさ、鳴けない日和のために、今夜は一つ、ゲームをしよう」
「ゲーム、ですか?」
「そう」
詩月様は人差し指を私の唇におあてになると、秘め事でも持ち掛けるように悪戯に片目を瞑られる。
「日和ってさ、見てるといつも『申し訳ございません』ばっかり言ってるよね。謝らなくていい時も。だから今夜はそれ、禁止」
「え……?」
自分の口癖を指摘されるほど詩月様が私を見てくださっていたことにも驚いたけれど、何より夜伽をゲーム方式で、という提案に驚いた。
「今夜は日和が僕に謝罪をしたら、僕は君には小さな罰を与える」
「えっ」
「その代わり日和が一晩謝らずにいられたら、何でもひとつお願いを聞いてあげる。……嫌だなんて言わないよね?」
意味深に目を細められた詩月様は、そう言って妖艶に微笑まれた。
詩月様は謝られるのがお嫌いなのだろうか? ゲームの意図は良く分からなかったけれど、立場的に私には従う以外の選択肢は無い。
「はい、承知しました」
「それと、これはお願い。今夜は、気持ちいい時は『気持ちいい』『もっと』って答えてほしいな」
「はい。努力致します」
「いい返事。ゲーム中にどうしても無理だと思う事があったら、一回だけギブアップを許してあげる。そしたらその時は別のことで埋め合わせして貰うけどね」
このゲームに、ギブアップ……? それは一体、どういう状況なのだろう。ますますよく分からなかったけれど、私は素直に頷いた。
「OK。じゃあ日和。ちょっと準備をしてくるから、準備が終わったら始めようか。寒いかもだから、布団の中で待ってて」
詩月様はそう言い残して、お風呂場へと消えた。詩月様は夕食後にシャワーは既に浴び終えていたようだったけれど、歯でも磨かれるのだろうか?
詩月様は程なくして、手に洗面器を持ってお戻りになった。洗面器をベッドサイドのテーブルに置いた詩月様は、服を着たまま私の隣に腰を下ろされる。
「これは……?」
「なんだと思う?」
そう返されて洗面器の中を覗き込むと、中には透明な液体の中に白くて薄い布が浮かんでいた。
31
お気に入りに追加
677
あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる