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45)ゲームをしよう

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「??? それは私も愛玩奴隷ですから、主人に寝所へ招かれ、御奉仕させていただくのが一番の幸せなのは当たり前で……」
「……。それさぁ、本気で言ってる? だとしたら、それってマインドコントロールとかじゃないの? じゃなきゃ、タチの悪いグルーミング」


 私はそんなに変なことを言っただろうか? 詩月様の口から出た聞き慣れない言葉の意味もよく分からない。
 私は詩月様の仰りたい事が良く分からず、聞き返した。

 
「グルー……ミ……??」
「”グルーミング”。セックスのために、まだ幼い子供を手懐けること。小さい頃からの刷り込みとか洗脳とかさ」
「な……! ち、違います」


 言われた瞬間、何故だか心臓に針をさされたような感覚が私を襲った。
 小さい頃からの刷り込み……。それは、鳥の雛が最初に目に映る動くものを無条件に親として慕うように、私が主人であった土谷田様へ無条件に尽くし、抱かれたがっていたという意味だろうか?
 そして、今度はそれを詩月様にやっているのではと疑われている……?
 私は自らの意思で、望んでここにいるのに……。

 
「違います。私は心から感謝しているのです。親に捨てられた私達を買い、ここまで育ててくださった土谷田様に。そして、路頭に迷う寸前に拾ってくださり、不能者と知ってなおここに雇い置いてくださるこのお屋敷の皆さんに。ですから私は、叶うならば愛玩奴隷本来のお役目を果たし、主人に……詩月様に、お喜び頂きたいのです」
 
 
 私が必死にそう言うと、詩月様は小さなため息と共に、困ったように眉尻をお下げになった。


「うーん。それが洗脳なのか本心なのか、僕には分からない。だから、今夜はそういうことにしておいてあげる。でもね、日和」


 詩月様は私の頬に手を添えて、真っ直ぐにこちらを見つめられた。

 
「これから日和に好きな人が出来て、いち個人としてセックスをしたい相手が見つかったら。その時は、契約の途中でも絶対に隠したりしないで、水湊兄さんに言った方がいいよ」
「……? 私の心と体は、いつだって主人のためにあります。主人に抱いて頂くことが、私の幸せです」
「…………そっか」

 
 表情には出さないけれど、何だか寂しそうにそう仰る詩月様に、私は少し困惑した。
 

「今はそれでもいいよ。けど、気が変わることがもしあったら、ね」


 気が変わる? 私が?? そんなの、あり得ない。

 
 内心そう思ったけれど、私は素直に「分かりました」と返事をした。
 
 夜は永遠ではない。ベッドでこれ以上詩月様とこの話を続けるのが、なんとなく嫌だった。

 私の素直な返事に満足したらしい詩月様は、今度は私に向かって不敵な笑みを浮かべられた。


「ま、それはそれとして。日和がそうまで言ってくれるんなら、今夜は楽しい夜にしよう」


 そう仰った詩月様は、手馴れた様子で私の衣類を剥いでいった。詩月様がベッドサイドランプの光量を絞ると、光は私達のシルエット背後の壁へと大きく映し出す。


「詩月様……」


 詩月様の華奢な指が私の首筋を撫でて、胸元を滑り降りて腹部を優しく撫でた。
 まだあまり兆しのない両脚の間のそれを、やんわりと手の中に包まれて皮ごとゆるりと揺らすように手の中で撫でられる。


「……っ」


 堪えるように小さな吐息を吐いた私は、未だ服を着たままの詩月様を見やる。


「体、随分敏感だね。これは律兄の仕業かな?」

 
 少しの反応ですらそう見抜かれて、私はどう返して良いものかと迷う。
 
 主人が複数いるなんて状況は初めてで、私は他の主人にされた事に関して、謝るべきなのか、それとも肯定すべきなのかが分からないのだ。


「律兄の事だから、優しい顔してエグいことしてそうだよねー」
「そ、そんなことは……っ、んん」


 律火様にいつも服越しに撫でられ、もどかしいばかりだったそこは、詩月様の手に与えられる直接的な快楽を喜んで、ここぞとばかりに貪った。

 もっとして欲しくて、けれど浅ましいとは思われたくなくて。

 熱い吐息で熱を逃がして、眉根を寄せながら私はただ感じた。主人に与えてもらえる快楽が、嬉しくてたまらない。
 だから、それが止まってしまわないように、私は必死に声を抑える。すると詩月様は私の膝に手をお付きになって、左右に大きくお開きになった。


「ん……ぁっ」


 詩月様の行動にうっかり声を上げそうになって、私は咄嗟に手で自分の口を塞ぐ。


「鳴けないって聞いてたけど、声自体が出ない訳じゃないんだね」
「…………っ」
「聞きたいなー。日和のエッチな声」


 私の性器を包む皮をゆっくりと下げるように扱いて、詩月様は楽しそうに笑われている。


「お許し下さい。私の声は低くて醜く、鳴けば主人を萎えさせるのです」
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