31 / 99
31)愛玩の意味
しおりを挟む
「私にはもう、愛玩奴隷としての価値はないのかもしれません。ですが私は、路頭に迷いそうになっていた所を救っていただいた恩返しがしたいのです。律火様がもしお嫌でなければ、私を大人に……いえ、せめて口でのご奉仕だけでもお許し頂ければ……」
そう言って跪いた私を制して、律火様は口を開かれた。
「ごめんね。そういうことなら、それはやめておくよ」
「あ…………」
こんな私を可愛いと言ってくださった律火様へ抱いた、淡い期待。
瞬間、それは私の中でハラハラと音を立てて砕け散った。
「……そうですか。奴隷の分際で、図々しいことを申し上げました。どうかお許しください」
お優しい律火様に付け込もうとしてしまった自分が悪いのだから、私には泣く権利などないのに。悔しさと悲しさで視界が滲むのは、私にはどうしようも出来ない。
「違うよ……そうじゃない。さっきの話、兄さんにもしたんでしょう?」
「はい……」
「それを知った上で兄さんが日和さんを抱かなかったんだったら、それはあの人も多かれ少なかれ、僕と同じ考えに至ったんじゃないかなって思う」
「…………同じお考え?」
首を傾げた私の側に、ふわりと律火様の香りが香った。
金木犀のようなその甘い香りが私を優しく包み込んで、数秒遅れで私は自分が抱きしめられていることに気が付く。
「律火、さま……?」
触れ合った耳や首筋から、じんわりと伝う律火様の体温。優しく背中を撫でられて、強張っていた体の力が抜けていくのが分かった。
「リラックスしていてね」
左耳の穴に吐息を吹き込むように、律火様の優しく甘い声が鼓膜を揺らす。
「その顔……なにか勘違いしてるでしょ? 僕はね、日和さんはこんなに可愛いんだから、もっと、愛玩……愛されて可愛がられるべきだって思うんだ」
パクリと耳朶を甘噛みされて、僅かに肩が強ばる。けれども柔らかな薄いそれを味わうように食まれて、私はその心地よさに目を閉じた。
「『愛玩』って言葉はね。確かに『おもちゃとして慰みものにする』って意味もある。けどね」
「……ん、……っ」
律火様に舌先で耳の内側のくぼみをチロリと舐められて、背筋にゾクリと疼きが走る。
漏れそうな吐息をなんとか堪えると、その仕草に微笑まれた律火様が尖らせた舌先で、耳の中心にある小さな穴をチロチロとくすぐった。
「ひっ…………ん、っ……んんん」
勝手に漏れ出る声を手で必死に抑えて、眉根を寄せながら込み上がるくすぐったい感覚に耐える。
喘ぐ声を抑える事は出来ても、くすぐったい時に反射的に出てしまう声を抑えるのは、また別の難しさがあるようだ。
「愛玩には、『大切にして、可愛がること』って意味もあるんだ。……ふふ。耳、こうして舐められるの、好き? もし少しでも声が出せるなら、聴きたいな。日和さんの気持ちいい声」
「で、です、が……ぁ……っ」
唇を塞いでいた手を掴まれて、私は声を漏らさぬよう慌てて唇を噛んだ。
律火様はちらりとその様子に視線を送られたけれど、窘める事はせず、そのまま再び右耳の内側に舌を這わせる。
くちゅくちゅと粘質な水音がダイレクトに鼓膜を刺激して、私の内側へと甘く伝う。
その卑猥な音だけでもとろけてしまいそうなのに、律火様の手は優しく首や脇、腹や剥き出しの太腿を撫でて、時折弄るように私の体を探った。
「日和さんの肌。すべすべで、絹のように手触りがいいね。触れられて気持ちいいところ、あったら教えて」
囁くような甘い声で言われて、耳の中に熱い吐息を吹き込まれる。その熱さにゾクゾクとした色気を感じ、私は無意識に身をよじった。
けれど、逃さないとでも言うように反対の手で頭を固定されて、耳軟骨を甘噛みされる。
私はどんな顔をしてよいか分からなくて、思わず固く目を瞑ったけれど。
耳から入る甘い吐息や濡れた音。
そして柔らかな唇の感触や体温は、目を瞑ることによって逆に私の中で鮮明な快楽の火種となって、内側からゆらゆらと私の欲情を炙った。
そう言って跪いた私を制して、律火様は口を開かれた。
「ごめんね。そういうことなら、それはやめておくよ」
「あ…………」
こんな私を可愛いと言ってくださった律火様へ抱いた、淡い期待。
瞬間、それは私の中でハラハラと音を立てて砕け散った。
「……そうですか。奴隷の分際で、図々しいことを申し上げました。どうかお許しください」
お優しい律火様に付け込もうとしてしまった自分が悪いのだから、私には泣く権利などないのに。悔しさと悲しさで視界が滲むのは、私にはどうしようも出来ない。
「違うよ……そうじゃない。さっきの話、兄さんにもしたんでしょう?」
「はい……」
「それを知った上で兄さんが日和さんを抱かなかったんだったら、それはあの人も多かれ少なかれ、僕と同じ考えに至ったんじゃないかなって思う」
「…………同じお考え?」
首を傾げた私の側に、ふわりと律火様の香りが香った。
金木犀のようなその甘い香りが私を優しく包み込んで、数秒遅れで私は自分が抱きしめられていることに気が付く。
「律火、さま……?」
触れ合った耳や首筋から、じんわりと伝う律火様の体温。優しく背中を撫でられて、強張っていた体の力が抜けていくのが分かった。
「リラックスしていてね」
左耳の穴に吐息を吹き込むように、律火様の優しく甘い声が鼓膜を揺らす。
「その顔……なにか勘違いしてるでしょ? 僕はね、日和さんはこんなに可愛いんだから、もっと、愛玩……愛されて可愛がられるべきだって思うんだ」
パクリと耳朶を甘噛みされて、僅かに肩が強ばる。けれども柔らかな薄いそれを味わうように食まれて、私はその心地よさに目を閉じた。
「『愛玩』って言葉はね。確かに『おもちゃとして慰みものにする』って意味もある。けどね」
「……ん、……っ」
律火様に舌先で耳の内側のくぼみをチロリと舐められて、背筋にゾクリと疼きが走る。
漏れそうな吐息をなんとか堪えると、その仕草に微笑まれた律火様が尖らせた舌先で、耳の中心にある小さな穴をチロチロとくすぐった。
「ひっ…………ん、っ……んんん」
勝手に漏れ出る声を手で必死に抑えて、眉根を寄せながら込み上がるくすぐったい感覚に耐える。
喘ぐ声を抑える事は出来ても、くすぐったい時に反射的に出てしまう声を抑えるのは、また別の難しさがあるようだ。
「愛玩には、『大切にして、可愛がること』って意味もあるんだ。……ふふ。耳、こうして舐められるの、好き? もし少しでも声が出せるなら、聴きたいな。日和さんの気持ちいい声」
「で、です、が……ぁ……っ」
唇を塞いでいた手を掴まれて、私は声を漏らさぬよう慌てて唇を噛んだ。
律火様はちらりとその様子に視線を送られたけれど、窘める事はせず、そのまま再び右耳の内側に舌を這わせる。
くちゅくちゅと粘質な水音がダイレクトに鼓膜を刺激して、私の内側へと甘く伝う。
その卑猥な音だけでもとろけてしまいそうなのに、律火様の手は優しく首や脇、腹や剥き出しの太腿を撫でて、時折弄るように私の体を探った。
「日和さんの肌。すべすべで、絹のように手触りがいいね。触れられて気持ちいいところ、あったら教えて」
囁くような甘い声で言われて、耳の中に熱い吐息を吹き込まれる。その熱さにゾクゾクとした色気を感じ、私は無意識に身をよじった。
けれど、逃さないとでも言うように反対の手で頭を固定されて、耳軟骨を甘噛みされる。
私はどんな顔をしてよいか分からなくて、思わず固く目を瞑ったけれど。
耳から入る甘い吐息や濡れた音。
そして柔らかな唇の感触や体温は、目を瞑ることによって逆に私の中で鮮明な快楽の火種となって、内側からゆらゆらと私の欲情を炙った。
41
お気に入りに追加
677
あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる