元・愛玩奴隷は愛されとろけて甘く鳴き~二代目ご主人様は三兄弟~

唯月漣

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30)律火様のお考え

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「可愛い~っ! 僕の思った通り!」
「あ、あの…………っ」


 私が律火様のお部屋をお訪ねして、はや四十分。
 私は先程から先日律火様に買っていただいたコスプレ衣装のような洋服の数々を身に着けては、色々な角度から写真を撮られていた。


「なーに? あ、喉乾いたかな? なにか飲む?」


 律火様にそう言われたけれど、私は先日の水湊様との一件を思い出して慌てて首を横に振った。


「いえ、そうではなく。……あの」
「うん? 顔が赤いね。どうしたの?」


 いくら水湊様より話しやすい律火様とはいえ、流石にこちらからその行為を求めるの躊躇ためらわれる。
 
 どう誘ったものかと頭を悩ませながら困っていると、ベッドに座る私の顔を覗き込んだ律火様と不意に目があった。


「ふふふ。日和さん、エッチな顔してる。僕に何かを期待しているの?」
「え……」
「ハグ? それとも、キス? もしかして……それ以上のことだったりして」
「あ、いや、その」


 やはり見抜かれている。クスクスと笑う律火様は、私に顔を寄せて間近から私の顔を覗きこまれた。

  
「ねぇ、日和さん。もし嫌じゃなかったら、僕にキスしてみる?」


 私がコクンと頷くと、ゆっくりと律火様の長いまつ毛が目の前に迫った。
 私が促されるままに律火様の口元にそっと啄むようなキスをすると、律火様はふっと表情を緩められた。


「じゃあ、次はハグ」
「し、承知しました」


 私は目の前の律火様にギュッと抱きつきながら、ふわりと鼻腔をくすぐるシャンプーの香りにドキドキしていた。

 
「服を脱がせてもいい?」


 私が頷くと、着ていたシャツの前ボタンを全て外された。次いで律火様の手が私のズボンのボタンにかかる。
 
 私の心臓は期待に高鳴った。

 緊張に固まる体全体が、心臓の音に呼応するように共鳴して、高まる緊張に指先はみるみる冷えていく。

 すると律火様は優しい手付きで私の太ももに手を置かれると、突然反対の手で私の頬をふにっと摘んだ。
 

「ひゃ………」


 頬を摘まれているため、私の声は間抜けな言葉になって口から飛び出す。律火様は楽しげにふにふにと私の頬を引っ張ってお遊びになりながらおっしゃった。


「日和さんはさ。僕に抱かれたいの?」 
「……………! も、もちろんです。新しい主人のお一人である律火様に大人にして頂けるならば、是非……」
「ん? 大人に? それって、どういう意味かな?」


 律火様が不思議そうなお顔で問い返されたので、私は恐る恐る口を開く。


「その……初めてをご主人様に奪っていただく……という意味です」
「――ちょっと待って。日和さん、今”初めて”って言った?」
「はい。こんな年になっても未だ大人にして頂けていないなど、お恥ずかしい話ですが」


 ”大人にして頂く”
 
 前のお屋敷の中では日常的に使われていた言葉だったが、一般的にはあまり使われない言い回しなのかもしれない。
 
 よく考えたら、愛玩奴隷を買い、なおかつ長く囲えるほどの財力がなければ、愛玩奴隷を得る事すら難しい。
 この言葉が一般的でないのは当たり前なのかもしれなかった。


「うーん。因みにそれって、僕のことが好きだから抱かれたいって言うのとは違うんだよね?」
「好き……? 勿論私は私を買って下さり、優しくして下さった律火様が好きです。水湊や詩月様へも、同様に感謝しております」
「ええと。僕が言いたいのはそういう事じゃなくて」
「???」
「……ってことは。前の主人や兄さんとは一度もしてないんだ?」
「あ…………」


 私は俯いて、重い口を開く。


「はい。申し訳ありません。水湊様へはお話したのですが」

 そう前置きをした私は、まっすぐこちらを見つめる律火様の視線を避けるように目を伏せた。
 

「実は私は他の奴隷たちに比べて二次性徴が早く、前の主人の食指を動かすことが出来なかったのです。気付けばすっかりも立っており、先日は水湊様にも抱いて頂けませんでした。途中まではコトが進んでおりましたので、きっと私が何か途中で水湊様の気に入らないことをしてしまったのだと思うのですが……」


 私はそう言って立ち上がり、律火様に向かって深々と頭を下げた。

  
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