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16)早すぎた二次性徴
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すべてを脱ぎ終えた私は、少しだけ手を前に置いて股間を隠した。詩月様との時は面接と聞いて必死だったけれど、改めて考えても、まじまじと体を見られることはとても恥ずかしい。
私は体毛こそ薄いけれど、上背もあり、筋肉もついてしまっている。私の体は、どう頑張っても中性的で美しいとは言い難いのだ。
かと言って佐倉さんのように、鍛え上げられた肉体と言えるほど筋肉質でもない。
前の主人がそれを好まない方であることは分かっていたので、筋肉がつきすぎないよう筋トレの際に加減してしまっていた。
そのせいで私の体は現在、とても中途半端な状態なのだ。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、水湊様は真っ直ぐ私に視線を送られている。
爪先から膝、腹部に胸。そして、羞恥に震える両足の中心……。
数分かけてじっくりと私の体を観察なさった水湊様は、少し考えるような表情で私の顔を見た。
「日和、少しだけ体に触れても良いか?」
「はい……」
「どうしても嫌だと思ったら、言え」
水湊様はそう仰って、大きな掌で私の腹部を撫でた。するりと滑る指先が、触れるか触れないかの絶妙なタッチで肋骨に沿って滑る。
その瞬間、私の中にゾワリとしたなにかが湧き上がった。
水湊様の指が胸の輪郭に沿って這い、桜色の突起を避けて鎖骨まで上ってきた。途端に心臓がドクンと大きく高鳴って、続々と体の奥からジン……と火照るような何かがこみ上げてくる。
「……ふ、っ」
「こうして触れられるのは、不快ではないか?」
「い、いいえ……っ、不快などと……」
首を横に振った私は、どう答えたものかと視線をさまよわせた。普段人に触られることのない場所に這わされた掌のぬくもりは、心地よさと落ち着かなさを併せ持っていた。
「まるで処女のような反応だな」
「………! あ、……その」
ーーーー見抜かれている。
嘘をつくつもりはなかったのだが、こうなっては致し方ない。私は観念して、水湊様へ向かって頭を下げた。
「もっ、申し訳ございません……!!」
「…………?」
突然私が頭を下げたので、水湊様は驚いたように手を引っ込めた。私は驚く水湊様に申し訳無さを覚えつつ、勢いに任せて言葉を繋ぐ。
「その……、私は愛玩奴隷として、長らく不能者だったのでございます」
「不能者?」
「はい。実は」
私は床に視線を落として、ぎゅっと両手を固く結んだ。
雇用契約を交わしてからこんな事を言うのはとても卑怯だと思う。
だが、私に東條院家の皆様を騙そう等という小狡い意図があった訳ではない。
――――ただ、言い出せなかったのだ。
「前の……主人は徹底した少年愛者でした」
「ああ、それは知っている。保護した少年たちも、大半が未成年であったと報告が上がってきている。……それで?」
水湊様は驚いた表情を緩めて、私の顔を真っ直ぐ見てくださった。そうして私が話しやすいように、優しい声音で私の言葉の続きを促して下さる。
「ええと、それで。私は人より二次性徴が早かったようで、ある時から背は伸び、声も低くなって……」
「それは、何歳ごろのことだ?」
「え……と、声変わりが始まったのは十二歳頃です。その頃から身長も伸び始め、恐らく今もまだ止まっておりません。ですので、その……」
私はそこまで話して、続きを言い淀む。どんな言い方をしたら、伝わるだろうか……。
「……つまり、前の主人には抱かれていない、と?」
「…………」
核心をつかれて、私はビクリと肩を震わせた。そして、恐る恐るコクリと頷く。
「主人が私を寝所へ招いて下さったのは、本当に幼いころのみで。背が伸び声変わりをしてからは、その……今のようなマッサージのために呼ばれることはあれど、そういう意図では、一度も」
そこまで言った私は、今にも消えそうな小さな声で「申し訳ありません……」と謝った。
私は体毛こそ薄いけれど、上背もあり、筋肉もついてしまっている。私の体は、どう頑張っても中性的で美しいとは言い難いのだ。
かと言って佐倉さんのように、鍛え上げられた肉体と言えるほど筋肉質でもない。
前の主人がそれを好まない方であることは分かっていたので、筋肉がつきすぎないよう筋トレの際に加減してしまっていた。
そのせいで私の体は現在、とても中途半端な状態なのだ。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、水湊様は真っ直ぐ私に視線を送られている。
爪先から膝、腹部に胸。そして、羞恥に震える両足の中心……。
数分かけてじっくりと私の体を観察なさった水湊様は、少し考えるような表情で私の顔を見た。
「日和、少しだけ体に触れても良いか?」
「はい……」
「どうしても嫌だと思ったら、言え」
水湊様はそう仰って、大きな掌で私の腹部を撫でた。するりと滑る指先が、触れるか触れないかの絶妙なタッチで肋骨に沿って滑る。
その瞬間、私の中にゾワリとしたなにかが湧き上がった。
水湊様の指が胸の輪郭に沿って這い、桜色の突起を避けて鎖骨まで上ってきた。途端に心臓がドクンと大きく高鳴って、続々と体の奥からジン……と火照るような何かがこみ上げてくる。
「……ふ、っ」
「こうして触れられるのは、不快ではないか?」
「い、いいえ……っ、不快などと……」
首を横に振った私は、どう答えたものかと視線をさまよわせた。普段人に触られることのない場所に這わされた掌のぬくもりは、心地よさと落ち着かなさを併せ持っていた。
「まるで処女のような反応だな」
「………! あ、……その」
ーーーー見抜かれている。
嘘をつくつもりはなかったのだが、こうなっては致し方ない。私は観念して、水湊様へ向かって頭を下げた。
「もっ、申し訳ございません……!!」
「…………?」
突然私が頭を下げたので、水湊様は驚いたように手を引っ込めた。私は驚く水湊様に申し訳無さを覚えつつ、勢いに任せて言葉を繋ぐ。
「その……、私は愛玩奴隷として、長らく不能者だったのでございます」
「不能者?」
「はい。実は」
私は床に視線を落として、ぎゅっと両手を固く結んだ。
雇用契約を交わしてからこんな事を言うのはとても卑怯だと思う。
だが、私に東條院家の皆様を騙そう等という小狡い意図があった訳ではない。
――――ただ、言い出せなかったのだ。
「前の……主人は徹底した少年愛者でした」
「ああ、それは知っている。保護した少年たちも、大半が未成年であったと報告が上がってきている。……それで?」
水湊様は驚いた表情を緩めて、私の顔を真っ直ぐ見てくださった。そうして私が話しやすいように、優しい声音で私の言葉の続きを促して下さる。
「ええと、それで。私は人より二次性徴が早かったようで、ある時から背は伸び、声も低くなって……」
「それは、何歳ごろのことだ?」
「え……と、声変わりが始まったのは十二歳頃です。その頃から身長も伸び始め、恐らく今もまだ止まっておりません。ですので、その……」
私はそこまで話して、続きを言い淀む。どんな言い方をしたら、伝わるだろうか……。
「……つまり、前の主人には抱かれていない、と?」
「…………」
核心をつかれて、私はビクリと肩を震わせた。そして、恐る恐るコクリと頷く。
「主人が私を寝所へ招いて下さったのは、本当に幼いころのみで。背が伸び声変わりをしてからは、その……今のようなマッサージのために呼ばれることはあれど、そういう意図では、一度も」
そこまで言った私は、今にも消えそうな小さな声で「申し訳ありません……」と謝った。
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