元・愛玩奴隷は愛されとろけて甘く鳴き~二代目ご主人様は三兄弟~

唯月漣

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6)世間知らず

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「あー……。縦割れっていうのはまぁ、女で言うところのヤリマンの証みたいなもんだね」
「『ヤリマン』……?」
「ゲッ、マジ? キミ、本当に何にも知らないんだねぇ」
「はぁ……あまりそういった俗物的な言葉に触れる機会がなかったもので」


 前の主人は僕達を屋敷の中では自由にさせてくれていた。
 けれども、テレビやスマートフォン、インターネットなど外の情報が得られるものは基本的に主人の部屋にしかなく、私達は触ることを禁じられていた。
 そのため、そういった言葉を知る機会がなかったのだ。
 

「俗物的で悪かったね。因みにヤリマンっていうのは一般的に、見境なく男とヤリまくってる女の蔑称かな」
「あ……。申し訳ありません。樫原さんを俗物扱いする意図はなかったのですが……」
「あはは、そこまで真剣に謝ることでもないけど。まぁそういう分かんないことがあれば、これからもボクに聞いていいよ。坊っちゃま達に聞きづらい事って、今後も結構あるだろうし」


 樫原さんがそう答えてくれたとき、彼のポケットの中でスマートフォンが鳴った。樫原さんはスマートフォンに向かって一言二言応答すると、今度は私の方を見て言った。


「次男の律火りつか様がお戻りだそうだ。ボクはちょっと行って話を通してくるから、さっきの部屋で待ってて。あ、一人で戻れる?」
「はい」


 樫原さんを見送って、私は言われた通りに先程の部屋に戻った。
 
 数分して戻ってきた樫原さんは、律火様との面接が許された旨を伝え、私を連れて先程とはまた違う廊下を進んでいく。

 着いた先は、かなり広い部屋だった。
 観音開きのドアはすでに左右に開け放たれており、部屋の真ん中には大きな長テーブルといくつもの椅子がズラリと据えられている。

 どうやらここは個人の居室ではなく、人々が揃って食事をとるダイニングルームのような場所らしい。
 十数人が一度に食事を摂れるような広い部屋の奥の方に人影が見える。
 
 私が樫原さんを仰ぎ見ると、樫原さんは『行ってらっしゃい』と言うようにひらひらと私に手を振った。
 私はコクリと頷いて、奥にいる人影に向かって声をかける。


「律火様、失礼します。ちょっとお時間を頂いてもよろしいでしょうか」
「ああ、早速来たの? いいよ、入って」


 扉の前で声をかけると、聞こえてきたのは穏やかで優しそうな若い男性の声だった。

 観葉植物に水やりをしていたらしい長身の男性……律火様は、こちらを振り向いて柔らかく私に微笑みかけて下さった。


「初めまして。僕はこの家の次男の東條院律火とうじょういんりつかです。改めて、名前を聞いてもいいかな?」
「あ……藤倉日和と申します」
「そう。よろしくね、日和さん」


 そう気さくに話しかけてくださった律火様は、私に目の前の椅子を勧めてくださった。手に持っていた霧吹きをテーブルに置いて、優しい眼差しでふわりと微笑む。

 律火様の年齢は二十代前半といったところだろうか。

 体格は私とそう変わらないが、身長は私より少しだけ高い。
 アッシュカラーの少しくすんだ髪色に、詩月様と同じくホクロ一つない白い肌。鼻筋の通った上品なお顔立ちは、かっこいいというよりは美しいという形容詞が合っている気がする。

 少し長めの髪を優雅な仕草で耳にかけ直した律火様は、側にあったベルをチリンと鳴らした。
 
 すると執事らしき男性が入ってきて、私と律火様の前に高そうなカップに入った紅茶とクッキーを置いてくれる。彼に下がるように伝えた律火様は、私の方へ向いて再び柔らかく微笑まれた。


「本当は僕の作ったスコーンをご馳走したかったのだけれど、今回は急だったからこれで許して」
「そんな。私こそ、急に押しかけてしまった事をお許し下さい。それに、愛玩奴隷の身で主人と同じテーブルでお茶を戴くなど……」
「ふふふ。日和さんは本当に愛玩奴隷志望なんだねぇ。とても謙虚でなかなかに真面目」


 律火様はそうおっしゃって、私の側に歩んでこられた。私は詩月様の時の事を想像して少し緊張しながら俯いたが、律火様は私の肩に手を置いて、目の前に顔を寄せた。


「……うん。元愛玩奴隷というだけあって、整ったきれいなお顔」
「そ、そのようなことは……」


 律火様のほうが私などより余程綺麗なお顔をしていらっしゃるのに……。
 私がうっとりと律火様のお顔に見惚れていると、その顔がどんどん近づいてきた。
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