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35)愛する君とあの人の想い出*
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静かなリビングのソファの上で、口付けの音が響く。俺の頭にしがみつくようにして唇を貪る由岐は、興奮を帯びた目で間近から俺を見つめた。
「翔李さん……翔李さん、好きです……っ」
何度も名前を呼ばれて、耳や首筋を愛おしそうに舐められる。そんなに切ない声で名前を呼ばれたら、それだけで俺まで心臓がはち切れそうに高鳴ってしまう。高鳴る心臓に送り出された血液は、全てがそこに送られているのではないかというほど、熱を持って俺の腹部へと集まっていく。
「由岐も脱いでくれないか? 肌、合わせたい」
性急に脱がされた俺とは違い、由岐は相変わらず服を着たままだ。俺の言葉に由岐はすぐに自らの服に手をかけた。由岐によってソファの下に雑に放り出されたシャツを見て、俺は笑ってしまった。
いつも俺の方が余裕のないセックスばかりをしてきた。由岐の方に余裕がないセックスは初めてで。それがなんだかとても嬉しい。
「なにニヤニヤしてるんですか?」
上目遣いで可愛く俺を睨む由岐に、俺は更にクスクスと笑う。
「いーや? 俺、思ったよりずっとかなでのこと好きだなぁって」
「…………は?」
素面のままで下の名前で呼ぶのも、思えば初めてだ。由岐は分かりやすく頬を赤らめるから、愛しくなって再びその体を抱きしめた。由岐の肌は成人男性とは思えないほど滑らかで、合わさるだけでもとても気持ちいい。
「拘束されるのも嫌じゃなかったけど、こうしてかなでを好きな時に抱きしめられるセックスって、なんかいいな」
「…………だからっ。なんでそうやって僕を煽るんですか? なんか硬いの、当たってるしっ」
「あ、悪い」
そう言われて、俺は少し体を離す。まだ触れてもいないその部分は、布の内側で窮屈そうに天を向いていた。けれどもそれは由岐のそれも同じで。クスクスと笑った由岐は、俺の上から立ち上がって俺の手を引いた。
「ベッドへ行きましょうか。今夜はちゃんとベッドで抱きたい。愛する貴方を、大切にしたいから」
「改めて言われると、なんか変な感じだな」
由岐はいつだって俺を大事に抱いてくれた。ただのセフレだった時だって、ユウキの事を忘れるための行為だった時だって。
「……? そうですか? あっ、勿論これはリップサービスじゃないですよ」
「はは、分かってるよ」
由岐はそんな話をしながら、いつもの寝室のドアを通り過ぎた。
不思議に思いながら由岐に連れられて着いた先には、もう一つの寝室があった。中には大きなダブルベッドがあって、中に入るとふわりとヴァニラの香りが漂う。
ベッドサイドの灰皿の隣には、愛犬のものらしい写真が飾られている。キョロキョロと室内を見回す俺に、由岐はベッドに腰かけながら言った。
「この家には二つ寝室があるんです。今夜はこちらでもいいですか?」
「え、別にいいけど……。かなで、犬を飼ってたのか?」
「ああ。キクはこの家の主人の忘れ形見です。共に暮らしていたのは事実ですが」
由岐が手招きの仕草をしたので、俺は彼の隣りに座ってベッドの上に寝転んだ。両腕を広げて促すと、由岐はベッドの上に上って俺に覆いかぶさる。
「この家は、元々東塔慶史さんという方の家でした。僕は孤児です。色々あって飲めないお酒を飲んで倒れていたところを、慶史さんに拾われて。高校に通いながら晩年の彼の世話係をしていました」
「由岐が孤児!? いや待って。と、東塔慶史って……!」
東塔慶史は、今俺が勤めている会社の創業者だ。学生時代に今の会社を起こし、一代にして日本有数の大企業へと育て上げた、敏腕経営者だ。
だが彼は生涯結婚することも伴侶を持つこともなく、数年前に直属の部下だった今の社長へと経営権を譲渡し引退したと聞いていた。
「ご存知でしたか。因みに僕が倒れていたのは、翔李さんを拾ったあの路地だったそうですよ」
ぱくりと、由岐が俺の胸元の突起を啄む。執拗に舐められ、愛おしそうに唇で挟まれ、優しく食まれる。
そのくすぐったさと快楽がない混ぜのその感覚は、再び俺を快楽側へと引き戻した。
「ちょっ、いきなり情報過多なんだが」
「ふふ。因みに翔李さんの黒髪は亡くなったキクによく似ています」
「あ……っ、舐めながら喋るな……ぁっ」
尖り始めたそこをチュッと強く吸われて、甘い疼きが生まれる。由岐はベッドサイドに飾られている犬の写真にちらりと視線を送ると、俺に向かってニコリと微笑んだ。
「い、犬に似てるとか……あっ……」
「ふふ、すみません。これでも一目惚れだったんですよ。それに気が付いたのは、本当に最近ですけど」
由岐がそう言いながら布越しにやんわりと興奮を孕むそれを掴む。へその上を滑るように華奢な指が下着の内側に滑り込んで、ひんやりと冷たい指が熱いそれを直に揉んだ。
「ひっ、あ……っ」
「ふふ。冷たかったですか? すみません。……そう言えば、翔李さんのここは好きな人にしか反応しないって聞いたんですけど、本当ですか?」
「や……なに? そんなこと……っ、誰に……」
「えーっと。それは内緒です」
嬉しそうにそう言う由岐は、上機嫌で俺のズボンのボタンとファスナーを寛げる。もはや窮屈を訴えていた俺のペニスは、由岐の手に取り出されるのを待っていたかのように、勢いよくズボンから飛び出す。それが少し恥ずかしくて、俺は視線を逸らした。
「わ、分かんないよ……。だって俺、由岐としかしたことないし……」
「ええ、そう聞いています」
「えっと、だから誰に……?」
「さあ?」
笑ってはぐらかす由岐は、俺のペニスの先に優しいキスをする。焦らすように側面や鼠径部へ啄むようなキスを落とす由岐は、俺の期待の眼差しと目が合うと再び天使のように微笑んだ。
「ココ。僕に舐めてほしいですか?」
「…………っ」
「翔李さんの恥ずかしいおねだり、聞きたいな」
可愛らしくそう促す由岐は少しサディスティックで、けれどもとてつもなく愛らしい。
「あ……かなでに舐めてほしい……いっぱい気持ちよくしてほし……ぁっ……!」
俺が言い終わるのを待ち切れなかったらしい由岐が、その熱を口の中に含む。ぬるりと温かな口腔内に包まれて、俺は伝う快楽と興奮に震えた。
「翔李さん……翔李さん、好きです……っ」
何度も名前を呼ばれて、耳や首筋を愛おしそうに舐められる。そんなに切ない声で名前を呼ばれたら、それだけで俺まで心臓がはち切れそうに高鳴ってしまう。高鳴る心臓に送り出された血液は、全てがそこに送られているのではないかというほど、熱を持って俺の腹部へと集まっていく。
「由岐も脱いでくれないか? 肌、合わせたい」
性急に脱がされた俺とは違い、由岐は相変わらず服を着たままだ。俺の言葉に由岐はすぐに自らの服に手をかけた。由岐によってソファの下に雑に放り出されたシャツを見て、俺は笑ってしまった。
いつも俺の方が余裕のないセックスばかりをしてきた。由岐の方に余裕がないセックスは初めてで。それがなんだかとても嬉しい。
「なにニヤニヤしてるんですか?」
上目遣いで可愛く俺を睨む由岐に、俺は更にクスクスと笑う。
「いーや? 俺、思ったよりずっとかなでのこと好きだなぁって」
「…………は?」
素面のままで下の名前で呼ぶのも、思えば初めてだ。由岐は分かりやすく頬を赤らめるから、愛しくなって再びその体を抱きしめた。由岐の肌は成人男性とは思えないほど滑らかで、合わさるだけでもとても気持ちいい。
「拘束されるのも嫌じゃなかったけど、こうしてかなでを好きな時に抱きしめられるセックスって、なんかいいな」
「…………だからっ。なんでそうやって僕を煽るんですか? なんか硬いの、当たってるしっ」
「あ、悪い」
そう言われて、俺は少し体を離す。まだ触れてもいないその部分は、布の内側で窮屈そうに天を向いていた。けれどもそれは由岐のそれも同じで。クスクスと笑った由岐は、俺の上から立ち上がって俺の手を引いた。
「ベッドへ行きましょうか。今夜はちゃんとベッドで抱きたい。愛する貴方を、大切にしたいから」
「改めて言われると、なんか変な感じだな」
由岐はいつだって俺を大事に抱いてくれた。ただのセフレだった時だって、ユウキの事を忘れるための行為だった時だって。
「……? そうですか? あっ、勿論これはリップサービスじゃないですよ」
「はは、分かってるよ」
由岐はそんな話をしながら、いつもの寝室のドアを通り過ぎた。
不思議に思いながら由岐に連れられて着いた先には、もう一つの寝室があった。中には大きなダブルベッドがあって、中に入るとふわりとヴァニラの香りが漂う。
ベッドサイドの灰皿の隣には、愛犬のものらしい写真が飾られている。キョロキョロと室内を見回す俺に、由岐はベッドに腰かけながら言った。
「この家には二つ寝室があるんです。今夜はこちらでもいいですか?」
「え、別にいいけど……。かなで、犬を飼ってたのか?」
「ああ。キクはこの家の主人の忘れ形見です。共に暮らしていたのは事実ですが」
由岐が手招きの仕草をしたので、俺は彼の隣りに座ってベッドの上に寝転んだ。両腕を広げて促すと、由岐はベッドの上に上って俺に覆いかぶさる。
「この家は、元々東塔慶史さんという方の家でした。僕は孤児です。色々あって飲めないお酒を飲んで倒れていたところを、慶史さんに拾われて。高校に通いながら晩年の彼の世話係をしていました」
「由岐が孤児!? いや待って。と、東塔慶史って……!」
東塔慶史は、今俺が勤めている会社の創業者だ。学生時代に今の会社を起こし、一代にして日本有数の大企業へと育て上げた、敏腕経営者だ。
だが彼は生涯結婚することも伴侶を持つこともなく、数年前に直属の部下だった今の社長へと経営権を譲渡し引退したと聞いていた。
「ご存知でしたか。因みに僕が倒れていたのは、翔李さんを拾ったあの路地だったそうですよ」
ぱくりと、由岐が俺の胸元の突起を啄む。執拗に舐められ、愛おしそうに唇で挟まれ、優しく食まれる。
そのくすぐったさと快楽がない混ぜのその感覚は、再び俺を快楽側へと引き戻した。
「ちょっ、いきなり情報過多なんだが」
「ふふ。因みに翔李さんの黒髪は亡くなったキクによく似ています」
「あ……っ、舐めながら喋るな……ぁっ」
尖り始めたそこをチュッと強く吸われて、甘い疼きが生まれる。由岐はベッドサイドに飾られている犬の写真にちらりと視線を送ると、俺に向かってニコリと微笑んだ。
「い、犬に似てるとか……あっ……」
「ふふ、すみません。これでも一目惚れだったんですよ。それに気が付いたのは、本当に最近ですけど」
由岐がそう言いながら布越しにやんわりと興奮を孕むそれを掴む。へその上を滑るように華奢な指が下着の内側に滑り込んで、ひんやりと冷たい指が熱いそれを直に揉んだ。
「ひっ、あ……っ」
「ふふ。冷たかったですか? すみません。……そう言えば、翔李さんのここは好きな人にしか反応しないって聞いたんですけど、本当ですか?」
「や……なに? そんなこと……っ、誰に……」
「えーっと。それは内緒です」
嬉しそうにそう言う由岐は、上機嫌で俺のズボンのボタンとファスナーを寛げる。もはや窮屈を訴えていた俺のペニスは、由岐の手に取り出されるのを待っていたかのように、勢いよくズボンから飛び出す。それが少し恥ずかしくて、俺は視線を逸らした。
「わ、分かんないよ……。だって俺、由岐としかしたことないし……」
「ええ、そう聞いています」
「えっと、だから誰に……?」
「さあ?」
笑ってはぐらかす由岐は、俺のペニスの先に優しいキスをする。焦らすように側面や鼠径部へ啄むようなキスを落とす由岐は、俺の期待の眼差しと目が合うと再び天使のように微笑んだ。
「ココ。僕に舐めてほしいですか?」
「…………っ」
「翔李さんの恥ずかしいおねだり、聞きたいな」
可愛らしくそう促す由岐は少しサディスティックで、けれどもとてつもなく愛らしい。
「あ……かなでに舐めてほしい……いっぱい気持ちよくしてほし……ぁっ……!」
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