【完】大きな俺は小さな彼に今宵もアブノーマルに抱かれる

唯月漣

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32)彼の変化*(由岐視点)

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 僕は浴槽の縁に腰を掛けて、先程から声にならない声で呻く翔李さんを眺めていた。リングギャグで開きっぱなしの唇からは、ダラダラと唾液が流れ落ちる。唾液に濡れるはだけた胸元はとても扇情的で、僕の中の黒い感情を少しだけ和らげた。


「あ……あ、ああ………!」


 唾液だけではない。翔李さんの頬は涙でびっしょりと濡れている。
 彼のペニスを包むように装着された、半透明の柔らかい玩具。それをぷにぷにと弄ぶように揉んだ僕は、一定のリズムで振動するそれが彼の熱棒から滑り落ちないように手を添えて、時折振動に強弱を与えて彼を弄ぶ。

 二度目の射精のあと浴槽の底に座り込んでしまった翔李さんに、僕は黒く微笑みかけた。


「どうですか? 電動テンガのお味は」
「…………っ、あ…………ぁぅ」


 翔李さんにそう問うけれど、間近で顔を覗き込んでも彼は小さく喘ぐばかりだ。


「そろそろ中にも欲しくなってきました?」


 僕の言葉に視線を上げた翔李さんは、僕が取り出したモノを見て再び首を横に振る。


「ふーん。今日は嫌々をする日なんですね? そんな煽るような顔で嫌がられたら、むしろ虐めるのが楽しくなってしまいますけど」


 僕はそう言いながら取り出したエネマグラをポッカリと開いた翔李さんの口に押し込んで、口の中に溜まった唾液をたっぷりと絡める。


「舐めて」


 僕の言葉に、それでも翔李さんは健気に舌を伸ばして玩具を舐める。エネマグラの小さな黒いボディに、翔李さんのピンク色の舌がいやらしく絡む。いつもならば楽しいその光景も、その舌が他の男に這わされたかもしれないと思った途端、興奮は黒い感情に絡め取られてしまう。

 先程散々指で慣らした窄まりは、テンガから流れ落ちた精液でいやらしく光っていた。なんの抵抗もなくエネマグラを飲み込んだ翔李さんの秘蕾は、ヒクヒクと物欲しそうに僕を誘う。
 リングに指をかけてぐちゅぐちゅと中をかき混ぜて、三度目の射精に向けて再び中が締まっていく感覚を確かめる。


「嫌々をする割に、感度はビンビンみたいですよ。ほら、中で玩具を締め付けて、奥まで咥え込んでる」
「…………!! っあ、あーーーっ、っが……ぁ」


 我ながら翔李さんに酷いことをしている自覚はあった。

 今日もし、とても優しく彼を抱いていたならば。
 このまま遠距離恋愛中のユウキさんの代わりに、彼を慰めるセフレとして、翔李さんと関係を続けらていたかもしれない。
 けれど、きっともうそれは僕の方が耐えられない……。僕はもう二度と『泥棒猫』にはなりたくないんだ……。
 だからこそ、僕達の関係は『潮時』なのだ。

 どうせ今日で最後ならば、いっそこのまま翔李さんに嫌われる方が楽になれる。





 結局翔李さんがイキ過ぎて気を失うまで、僕は何度も何度もその精を搾り取ったのだった。

 ただ一つ誤算があったとするならば、完全に気を失っている翔李さんを抱き上げてベッドに運ぶのは、僕の力ではどうしようもなく無理だったということだ。

 酔い潰れた翔李さんを拾った時は、かろうじてまだ彼は肩を貸せば車椅子までは歩ける状態だった。だが、浴槽内で眠っている翔李さんは僕の力ではどう頑張っても持ち上がるわけもなく。

 彼に風邪を引かれては困る。体を清め終えたあと、考えた末に僕は湯船に温かいお湯を張ることにした。





 人肌より少しだけ温かく沸かしたお湯に、お気に入りの入浴剤を入れる。眠っている翔李さんが浴槽で溺れないように見守りながら、僕は首輪のせいで僅かに赤くなってしまった翔李さんの首筋にそっとキスを落とす。

 彼が目を覚ましたら、これで本当にさよならだ。
 彼の口からそれを言われたら、きっと僕はみっともなく泣いてしまう。そうなるぐらいなら、いっそ自分から……。


「……愛しています、翔李さん。出来ることなら、僕だけのものになってほしかった……、な」


『見えるところにはキスマークを付けない』


 その約束を破って、僕は彼の首元の薄い皮膚を強く吸った。


「…………気が済んだか?」
「……っ! …………起きたんですね。ええ、済みました。色々無理をさせてすみません」
「……別に。誤解は後で解くとして、とりあえずそれで由岐がスッキリしたならいいよ。イキ過ぎてあちこちヤバいけど」


 照れ隠しなのか、珍しく翔李さんはそう言って苦笑いする。


「すみません。お風呂、良かったらこのまま入って行ってください。僕はリビングにいますから」


 そう言って去ろうとする僕の手を、翔李さんの温かい手が掴む。


「あー……えっと。良かったら一緒に風呂、入らないか?」
「…………は?」
「嫌か?」


 僕の家のお風呂は慶史さんの趣味により一般家庭にしてはかなり広い。小柄な僕であれば、男二人で入れないことはないだろう。


「まぁ、翔李さんがそうしたいのなら、良いですけど」


 予想外の誘いに驚きつつも、僕は承知して脱衣所で服を脱いだ。

 僕の身体は白くて華奢だ。
 翔李さんのように男らしくバランスの良い筋肉の付いた体と並ぶのは、少しだけコンプレックスで。けれど折角の翔李さんからの誘いならば、最後くらいは彼の誘いに乗るのもいい。
 バスルームの扉を開けた僕に、翔李さんがほんのり上気した顔で頬を緩める。かけ湯をしている僕の側に来た翔李さんは、ボディソープのボトルを手に取った。


「今日は、俺が由岐を洗いたい」
「……良いですけど。ただ、僕の身体は翔李さんみたいにカッコよくないですよ」


 浴室の椅子に腰掛けた僕は、翔李さんに背中を向けた。僕の言葉に目を丸くした翔李さんは、再び口元を緩めて優しく微笑む。


「へぇ、意外だな。由岐ってそう言うの、気にするタイプだったんだ」
「はぁ。翔李さんは一体、僕を何だと……」
「はは、ごめんごめん」


 そう笑いながら、ソープの泡がついた大きな手でぬるりと背中を撫でられた。お湯でふやけた優しい手のひらが心地良くて、僕はうっとりと目を閉じる。


 しばらくされるがままに洗われていたら、下腹のあたりで翔李さんの手が彷徨っている。
 目を開けて彼を振り返って見ると、彼は躊躇ったあと、するりと僕の性器へと手を伸ばしてきた。


「あ……あの。今日、由岐……シテないだろ? 俺、ぬ……抜こうか?」


 お別れの言葉が紡がれると思っていたら、翔李さんはそんな可愛いことを言ってくるのだから、ずるい。そんな事を言われたら、いくらセフレの身だって期待してしまう。
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