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18)テツの孤独*
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「お、ショーリ風呂出た? メシ作ったけど食う?」
風呂から出ると、テツはキッチンにいた。狭い室内には美味しそうなカルボナーラの香りが立ち込めていて、俺はようやく自分が恐ろしく空腹なことに気がついた。
テツに作ってもらったパスタを平らげる頃には、すっかり雨も止み、時刻は深夜に差しかかっていた。
「なぁテツ。一体何があったんだ? そろそろ終電無くなるんじゃ」
「ショーリ、明日休みでしょ? いいじゃん、泊めてよ。お礼はするし」
テツは洗い物で濡れた手をタオルで拭きながら、俺の座るソファへと歩いてきた。
「お礼ならこのパスタで……んんっ、んーーッ!?」
突然テツに唇を奪われた俺は、目を見開いたまま声を上げた。
「そんなに驚かないでよ。ショーリもゲイなんでしょ?」
「なっ、なっ……」
「俺さ、なんとなーく分かっちゃうんだよね。そういうの」
間近で俺を見つめたままへへへ、と笑ったテツは、俺の着ていたスエットのズボンに手をかけた。
「な、何する気だ……っ?」
「だーかーらっ。ナニ、するんでしょう? 実は俺さー、今日会った男に途中で放り出されて、ちょームラムラしてんの。ね、良いでしょ?」
テツはそう言って、ズボンから取り出した俺のペニスをぱくんと口に含んだ。唾液をたっぷり絡めた舌先で飴玉のように雁首を転がされて、俺は慌ててテツの髪の毛を掴んだ。
「やめろって! そういうの!」
テツを力ずくで引き剥がした俺は、勢い余って背後のローテーブルに強かに背中をぶつけたテツに怯む。
「っっっ、痛って……ぇ」
「わっ、悪いッ。力、入り過ぎた……ッ!」
「くくくっ、なーんてね。ヘーキだよ。むしろ俺、痛くされるのスキなんだよね」
「…………は!?」
本人の言葉通り、テツの表情は先程より色濃く興奮を孕んでいるようだった。立ち上がったテツは伸し掛かるような体勢で俺をソファに押し倒す。
「ねぇ……もっと乱暴にしてよ。ぶって、殴って、縛って。そして俺をめちゃくちゃに犯して、俺の全部を支配してよ」
「あ……あ……、ちょっ……」
ズボンからみっともなく顔を出しているモノを再び掴まれて、やわやわと揉まれた。テツのその仕草は驚くほどとても手慣れていた。けれども昼間散々由岐に弄ばれたせいか、俺のそこに勃ち上がる気配はない。
諦めきれない様子で暫くそこに触れていたテツだったが、しばらくして俺にその気が無いと悟ったらしい。
つまらなそうに唇をとがらせて、ちぇっと唇を鳴らしながら体を起こして俺の上から退いた。
「なぁ。ショーリはさ、耐えられないほど寂しい夜とか、無いの?」
「えっ?」
「俺はある。今がそう。寂しくて、寂しくて、何かで気を紛らわさないと生きてられないほど苦しい。こうなっちゃうと、俺にもどうにもならなくてさ。ショーリに迷惑はかけない。だから俺を助けると思って、お願い」
困ったような顔で笑うテツは、俺が貸したスエットの前を寛げた。テツの性器はまだ触れてもいないのに固くそそり勃っている。
それを見てビクリと逃げ腰になる俺に向かって、テツはクスクスと笑った。
「ああ、分かった。ショーリ、バリネコなんだ? 実は俺もそう。……なーんだ、そっか。ははっ」
「や、そう言う訳では……っ」
テツの言葉を男としてのプライドで一瞬否定しかけたが、そもそも俺は童貞だ。由岐のような自分より遥かに小さな体の男に抱かれている事実もある。
そう思ってしまったら、強い否定の言葉は出なかった。
「ふーん? じゃあさ、セックスは諦めるから、ちょっとだけつまみ食いならいい? ね、寂しい俺を慰めてよ」
甘えるようにそう言ったテツの瞳は潤んでいた。思わずコクリと頷いてしまう俺は、やはり押しに弱くて流されやすい。
俺の腕の中に潜り込んで心地よさそうにキスを貪るテツに困惑しながらも、俺はその華奢な四肢を恐る恐る抱きしめ返した。
テツの体は風呂上がりだというのに子犬のように震えていた。俺は少し前の自分を思い出して、胸がぎゅっと絞られるような気持ちになってしまう。
俺はたまたま運が良くて、あの夜由岐と知り合うことができた。けれど、あの日由岐と知り合わなかったら、俺だってこうなっていたかもしれなくて……。
もやもやとそんな考え事をしながら腕の中のテツと目があった時、俺は腹を括った。
「お、俺も……っ。寂しくて悲しくて辛い夜は経験がある、からっ」
「えっ……」
俺は驚いている様子のテツをソファに押し倒す。俺は学生時代色々やった運動部のおかげで、体格だけは良い。細身のテツの体はあっさりと俺に組み敷かれた。
俺の貸したテツのスエットは、テツと俺との体格差のせいで隙間だらけだ。その隙間から手を差し入れた俺は、ズボンの中から再びテツの性器を取り出す。
「あ……あんましたことないから、上手くできるか分からないけど……」
そう断りを入れてから、俺はおずおずとテツの性器に唇を近づけた。
伸ばした舌でその先端を舐めようとした、その時だった。
『ピンポーン』
玄関先で来客を告げるチャイムが鳴った。深夜であることを考えると、来客に心当たりがない。何だか怖いし無視してしまおうか……そんな俺の考えを見透かすかのように、玄関チャイムは連打された。
何度も言うが、時刻は深夜だ。近所迷惑を顧みないらしい迷惑な来客に、俺は慌てて玄関に走った。
「ちょっ、誰だか知らないけど、こんな夜中に近所迷惑なんですけど!」
ドアを開けて、チャイム連打犯である男に俺は開口一番そう言った。だが男は俺を無視して勝手に室内に入り、ソファに座るテツの所へ駆け寄った。
「テツ!!!」
「あれ、ジンだー。なんでここにいるのー?」
「バカ野郎。お前が夕方に鬼電してきたんだろうが。一体何があった?」
男は低い声でそう言って、鋭い眼光を俺に向けた。
黒髪の短髪に厳つい顔。浅黒の日焼けた肌は、ガタイの良さも相まってなんとなく熊を思わせる。
紫色のカラコンを入れた瞳は、俺を無遠慮にじろりと睨みつけていた。
風呂から出ると、テツはキッチンにいた。狭い室内には美味しそうなカルボナーラの香りが立ち込めていて、俺はようやく自分が恐ろしく空腹なことに気がついた。
テツに作ってもらったパスタを平らげる頃には、すっかり雨も止み、時刻は深夜に差しかかっていた。
「なぁテツ。一体何があったんだ? そろそろ終電無くなるんじゃ」
「ショーリ、明日休みでしょ? いいじゃん、泊めてよ。お礼はするし」
テツは洗い物で濡れた手をタオルで拭きながら、俺の座るソファへと歩いてきた。
「お礼ならこのパスタで……んんっ、んーーッ!?」
突然テツに唇を奪われた俺は、目を見開いたまま声を上げた。
「そんなに驚かないでよ。ショーリもゲイなんでしょ?」
「なっ、なっ……」
「俺さ、なんとなーく分かっちゃうんだよね。そういうの」
間近で俺を見つめたままへへへ、と笑ったテツは、俺の着ていたスエットのズボンに手をかけた。
「な、何する気だ……っ?」
「だーかーらっ。ナニ、するんでしょう? 実は俺さー、今日会った男に途中で放り出されて、ちょームラムラしてんの。ね、良いでしょ?」
テツはそう言って、ズボンから取り出した俺のペニスをぱくんと口に含んだ。唾液をたっぷり絡めた舌先で飴玉のように雁首を転がされて、俺は慌ててテツの髪の毛を掴んだ。
「やめろって! そういうの!」
テツを力ずくで引き剥がした俺は、勢い余って背後のローテーブルに強かに背中をぶつけたテツに怯む。
「っっっ、痛って……ぇ」
「わっ、悪いッ。力、入り過ぎた……ッ!」
「くくくっ、なーんてね。ヘーキだよ。むしろ俺、痛くされるのスキなんだよね」
「…………は!?」
本人の言葉通り、テツの表情は先程より色濃く興奮を孕んでいるようだった。立ち上がったテツは伸し掛かるような体勢で俺をソファに押し倒す。
「ねぇ……もっと乱暴にしてよ。ぶって、殴って、縛って。そして俺をめちゃくちゃに犯して、俺の全部を支配してよ」
「あ……あ……、ちょっ……」
ズボンからみっともなく顔を出しているモノを再び掴まれて、やわやわと揉まれた。テツのその仕草は驚くほどとても手慣れていた。けれども昼間散々由岐に弄ばれたせいか、俺のそこに勃ち上がる気配はない。
諦めきれない様子で暫くそこに触れていたテツだったが、しばらくして俺にその気が無いと悟ったらしい。
つまらなそうに唇をとがらせて、ちぇっと唇を鳴らしながら体を起こして俺の上から退いた。
「なぁ。ショーリはさ、耐えられないほど寂しい夜とか、無いの?」
「えっ?」
「俺はある。今がそう。寂しくて、寂しくて、何かで気を紛らわさないと生きてられないほど苦しい。こうなっちゃうと、俺にもどうにもならなくてさ。ショーリに迷惑はかけない。だから俺を助けると思って、お願い」
困ったような顔で笑うテツは、俺が貸したスエットの前を寛げた。テツの性器はまだ触れてもいないのに固くそそり勃っている。
それを見てビクリと逃げ腰になる俺に向かって、テツはクスクスと笑った。
「ああ、分かった。ショーリ、バリネコなんだ? 実は俺もそう。……なーんだ、そっか。ははっ」
「や、そう言う訳では……っ」
テツの言葉を男としてのプライドで一瞬否定しかけたが、そもそも俺は童貞だ。由岐のような自分より遥かに小さな体の男に抱かれている事実もある。
そう思ってしまったら、強い否定の言葉は出なかった。
「ふーん? じゃあさ、セックスは諦めるから、ちょっとだけつまみ食いならいい? ね、寂しい俺を慰めてよ」
甘えるようにそう言ったテツの瞳は潤んでいた。思わずコクリと頷いてしまう俺は、やはり押しに弱くて流されやすい。
俺の腕の中に潜り込んで心地よさそうにキスを貪るテツに困惑しながらも、俺はその華奢な四肢を恐る恐る抱きしめ返した。
テツの体は風呂上がりだというのに子犬のように震えていた。俺は少し前の自分を思い出して、胸がぎゅっと絞られるような気持ちになってしまう。
俺はたまたま運が良くて、あの夜由岐と知り合うことができた。けれど、あの日由岐と知り合わなかったら、俺だってこうなっていたかもしれなくて……。
もやもやとそんな考え事をしながら腕の中のテツと目があった時、俺は腹を括った。
「お、俺も……っ。寂しくて悲しくて辛い夜は経験がある、からっ」
「えっ……」
俺は驚いている様子のテツをソファに押し倒す。俺は学生時代色々やった運動部のおかげで、体格だけは良い。細身のテツの体はあっさりと俺に組み敷かれた。
俺の貸したテツのスエットは、テツと俺との体格差のせいで隙間だらけだ。その隙間から手を差し入れた俺は、ズボンの中から再びテツの性器を取り出す。
「あ……あんましたことないから、上手くできるか分からないけど……」
そう断りを入れてから、俺はおずおずとテツの性器に唇を近づけた。
伸ばした舌でその先端を舐めようとした、その時だった。
『ピンポーン』
玄関先で来客を告げるチャイムが鳴った。深夜であることを考えると、来客に心当たりがない。何だか怖いし無視してしまおうか……そんな俺の考えを見透かすかのように、玄関チャイムは連打された。
何度も言うが、時刻は深夜だ。近所迷惑を顧みないらしい迷惑な来客に、俺は慌てて玄関に走った。
「ちょっ、誰だか知らないけど、こんな夜中に近所迷惑なんですけど!」
ドアを開けて、チャイム連打犯である男に俺は開口一番そう言った。だが男は俺を無視して勝手に室内に入り、ソファに座るテツの所へ駆け寄った。
「テツ!!!」
「あれ、ジンだー。なんでここにいるのー?」
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男は低い声でそう言って、鋭い眼光を俺に向けた。
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