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10)似合わない煙草
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由岐が俺の中で果てたのち、ゆっくりと楔が抜かれる。
それと同時に弛んだ奥からトロトロとローションが流れ落ちて、シーツに小さなシミを作った。
俺は乱れた呼吸を整えながら、薄目を開けて由岐を見る。
「辛かったですか……? 初めてですもんね?」
「いや……思ったよりは」
思ったより、由岐がしっかり慣らしてくれたから。そんな言葉を飲み込んだ俺はそう言葉を濁しながら、妙な気恥ずかしさにふいと視線をそらす。
「むしろ、男の処女なんて面倒臭かったろ? 手間かけさせて悪かったな」
男の処女は面倒がられて避けられる傾向にある。そのことを俺が知ったのは、由岐とセフレになる約束を交わした後だった。
「いえいえ。僕は翔李さんの初めてが貰えて嬉しかったですよ。それにその分、これから沢山可愛がらせて貰えたら本望です」
由岐はそう答えて脱ぎ捨てたシャツを拾い上げて纏いながら、おもむろに引き出しから煙草とライターを取り出す。慣れた手付きで煙草を咥えた由岐は、やたらと高そうなオイルライターのキャップを開けた。
「えっ……!!?? いや、それは駄目だろ!!」
俺は慌てて由岐から煙草を取り上げようと立ち上がったが、腰が震えて上手く立てずにその場にへたりこむ。
その様子を見た由岐が、こらえ切れずに笑った。
「翔李さんは可愛いですね、本当に。無理して立たなくても良いのに。明日はお仕事お休みなんでしょう?」
由岐は煙草を片脇に置いて、俺の頬を指先で撫でた。
「ちょっ、そうじゃなくて。煙草……っ!」
「ああ、翔李さんは煙草がお嫌いですか?」
「いや、そういう問題じゃなくて! 由岐、お前未成年だろッ」
俺はそう言って、ようやく由岐がベッドサイドに置いた煙草を箱ごと奪い取った。由岐は数秒ほどポカンと口を開けたまま固まったかと思うと、嬉しそうに破顔した。
「ふふっ。僕、未だに未成年に見えますか? じゃあ翔李さんは、未成年の僕とあーんな淫行をしちゃった訳だ?」
由岐はそう言って俺の唇を指先でなぞりながら、蠱惑的な上目遣いで俺を見つめた。
「うっ……。それを言われると……その」
俺が煙草の箱を握りしめたまま視線を泳がすと、由岐は笑ったままの顔を近付けて俺に再び口付けた。
「この体格と外見なので良く間違われるのですが、取り敢えず僕は法に触れるような年齢ではありませんよ」
「な、なんだぁ……」
「ふふ。良かったですね、未成年淫行にならなくて」
由岐は楽しそうにそう笑って、新しい煙草に火をつけて美味しそうに吸った。俺は顔の側に漂ってきた甘い香りのする煙を手で追い払いながら僅かに顔をしかめる。
可愛らしい容姿に似合わぬ由岐の煙草は、未成年ではないと知ってなお、見ていてあまりいい気はしなかった。
「…………まぁ、そうだな。俺、シャワー浴びてくるよ」
俺はそう言い残して、喫煙中の由岐に背を向けた。
由岐には似合わないから禁煙してほしいだなんて、ただのセフレである俺が言える立場ではない。
「はい。あ、洗ってあげましょうか? 奥」
「ぶっ……、いや。やめとく」
「それは残念」
のらりくらりとそんな事を言う由岐を部屋に残して、俺は体中に残る由岐の痕をシャワーで洗い流すのだった。
◇◆◇◆◇◆
「幕の内弁当と唐揚げ単品で一パック、それにこのひじき煮を一パック下さい」
「おや、お兄さん今帰りかい? おかえり、お疲れ様」
人懐っこい笑顔でそう声をかけてくれたのは、良く利用する近所の弁当屋のオバちゃんだ。
俺はあれから、無理な残業をしなくなった。
会社の帰りに買う夕食も、酒のつまみではなく弁当だ。健康に気を使って、一応気持ち程度の野菜も食べるようにしている。
帰り道に通る最寄り駅の商店街は、食べ歩きが出来る商店街と有名なところだ。ここにはいつも、美味しそうな香りを放つ色とりどりの惣菜が並んでいた。
「いつもありがとうね、お兄さん。ご飯大盛りにオマケしといたから!」
「ウス、いつもありがとうございマス!」
根っからの体育会系なせいか、はたまたよく食べそうな外見のせいか。俺はこの手のオバちゃん達には昔から良く可愛がられる。
弁当屋のオバちゃん特製のほんのり温かい弁当を片手にアパートに帰り、ビールを片手に一杯やるのが最近の日課だ。
「あー……っと、そういやビールの買い置きが確かもう無かった気が……」
そんなことを呟きながら、俺はスマホの時計をチラリと見る。
裏通りの激安酒店は、安い反面営業時間が十九時半までと短めだ。だが今日は残業が無かったので、今からならまだ営業時間に間に合いそうだ。
ほんのり温かい弁当を片腕にぶら下げながら、俺は街灯の少ない裏路地の角を曲がった。
「や、やめ…………だ、っ! は、……し……ッ!」
「……えはっ、……だ、……ゃくっ!」
「~……だろッ、……は!!」
ふと、街灯の途切れた薄暗い路地の奥で、誰かが声を潜めて揉めている声が聞こえる。
酔っぱらいに絡まれた女性かと一瞬身構えたが、どうやらどちらも男だ。手前に大人の男が二人、奥にひ弱そうな細身の男が一人。
どうやら手前の男が二人がかりでもう一人の男を組み敷いたまま、何やら言い争いをしているようだ。
ひょっとして、いじめや喧嘩か何かだろうか……? 事情はよく分からないが、いくらなんでもあんな細身の男相手にニ対一はどうなんだよ。
「オイッ」
俺はそう思い至って、思わず路地の奥にそう声をかけていた。
この手のいじめっ子には、昔からユウキが良く絡まれていた。深く考えたわけではなく、学生時代からの癖で反射的に声をかけたに過ぎなかったのだが……。
「えっ……?」
「チッ……」
手前の男二人は俺の姿を値踏みするように見たあと、これみよがしに舌打ちをしてその場を走り去った。
去り行く男の一人にすれ違いざまにじろりと睨まれ、正直殴り合いの喧嘩にでもなったらと冷や冷やした。……が、男達はあっさりとその場を立ち去った。
それと同時に弛んだ奥からトロトロとローションが流れ落ちて、シーツに小さなシミを作った。
俺は乱れた呼吸を整えながら、薄目を開けて由岐を見る。
「辛かったですか……? 初めてですもんね?」
「いや……思ったよりは」
思ったより、由岐がしっかり慣らしてくれたから。そんな言葉を飲み込んだ俺はそう言葉を濁しながら、妙な気恥ずかしさにふいと視線をそらす。
「むしろ、男の処女なんて面倒臭かったろ? 手間かけさせて悪かったな」
男の処女は面倒がられて避けられる傾向にある。そのことを俺が知ったのは、由岐とセフレになる約束を交わした後だった。
「いえいえ。僕は翔李さんの初めてが貰えて嬉しかったですよ。それにその分、これから沢山可愛がらせて貰えたら本望です」
由岐はそう答えて脱ぎ捨てたシャツを拾い上げて纏いながら、おもむろに引き出しから煙草とライターを取り出す。慣れた手付きで煙草を咥えた由岐は、やたらと高そうなオイルライターのキャップを開けた。
「えっ……!!?? いや、それは駄目だろ!!」
俺は慌てて由岐から煙草を取り上げようと立ち上がったが、腰が震えて上手く立てずにその場にへたりこむ。
その様子を見た由岐が、こらえ切れずに笑った。
「翔李さんは可愛いですね、本当に。無理して立たなくても良いのに。明日はお仕事お休みなんでしょう?」
由岐は煙草を片脇に置いて、俺の頬を指先で撫でた。
「ちょっ、そうじゃなくて。煙草……っ!」
「ああ、翔李さんは煙草がお嫌いですか?」
「いや、そういう問題じゃなくて! 由岐、お前未成年だろッ」
俺はそう言って、ようやく由岐がベッドサイドに置いた煙草を箱ごと奪い取った。由岐は数秒ほどポカンと口を開けたまま固まったかと思うと、嬉しそうに破顔した。
「ふふっ。僕、未だに未成年に見えますか? じゃあ翔李さんは、未成年の僕とあーんな淫行をしちゃった訳だ?」
由岐はそう言って俺の唇を指先でなぞりながら、蠱惑的な上目遣いで俺を見つめた。
「うっ……。それを言われると……その」
俺が煙草の箱を握りしめたまま視線を泳がすと、由岐は笑ったままの顔を近付けて俺に再び口付けた。
「この体格と外見なので良く間違われるのですが、取り敢えず僕は法に触れるような年齢ではありませんよ」
「な、なんだぁ……」
「ふふ。良かったですね、未成年淫行にならなくて」
由岐は楽しそうにそう笑って、新しい煙草に火をつけて美味しそうに吸った。俺は顔の側に漂ってきた甘い香りのする煙を手で追い払いながら僅かに顔をしかめる。
可愛らしい容姿に似合わぬ由岐の煙草は、未成年ではないと知ってなお、見ていてあまりいい気はしなかった。
「…………まぁ、そうだな。俺、シャワー浴びてくるよ」
俺はそう言い残して、喫煙中の由岐に背を向けた。
由岐には似合わないから禁煙してほしいだなんて、ただのセフレである俺が言える立場ではない。
「はい。あ、洗ってあげましょうか? 奥」
「ぶっ……、いや。やめとく」
「それは残念」
のらりくらりとそんな事を言う由岐を部屋に残して、俺は体中に残る由岐の痕をシャワーで洗い流すのだった。
◇◆◇◆◇◆
「幕の内弁当と唐揚げ単品で一パック、それにこのひじき煮を一パック下さい」
「おや、お兄さん今帰りかい? おかえり、お疲れ様」
人懐っこい笑顔でそう声をかけてくれたのは、良く利用する近所の弁当屋のオバちゃんだ。
俺はあれから、無理な残業をしなくなった。
会社の帰りに買う夕食も、酒のつまみではなく弁当だ。健康に気を使って、一応気持ち程度の野菜も食べるようにしている。
帰り道に通る最寄り駅の商店街は、食べ歩きが出来る商店街と有名なところだ。ここにはいつも、美味しそうな香りを放つ色とりどりの惣菜が並んでいた。
「いつもありがとうね、お兄さん。ご飯大盛りにオマケしといたから!」
「ウス、いつもありがとうございマス!」
根っからの体育会系なせいか、はたまたよく食べそうな外見のせいか。俺はこの手のオバちゃん達には昔から良く可愛がられる。
弁当屋のオバちゃん特製のほんのり温かい弁当を片手にアパートに帰り、ビールを片手に一杯やるのが最近の日課だ。
「あー……っと、そういやビールの買い置きが確かもう無かった気が……」
そんなことを呟きながら、俺はスマホの時計をチラリと見る。
裏通りの激安酒店は、安い反面営業時間が十九時半までと短めだ。だが今日は残業が無かったので、今からならまだ営業時間に間に合いそうだ。
ほんのり温かい弁当を片腕にぶら下げながら、俺は街灯の少ない裏路地の角を曲がった。
「や、やめ…………だ、っ! は、……し……ッ!」
「……えはっ、……だ、……ゃくっ!」
「~……だろッ、……は!!」
ふと、街灯の途切れた薄暗い路地の奥で、誰かが声を潜めて揉めている声が聞こえる。
酔っぱらいに絡まれた女性かと一瞬身構えたが、どうやらどちらも男だ。手前に大人の男が二人、奥にひ弱そうな細身の男が一人。
どうやら手前の男が二人がかりでもう一人の男を組み敷いたまま、何やら言い争いをしているようだ。
ひょっとして、いじめや喧嘩か何かだろうか……? 事情はよく分からないが、いくらなんでもあんな細身の男相手にニ対一はどうなんだよ。
「オイッ」
俺はそう思い至って、思わず路地の奥にそう声をかけていた。
この手のいじめっ子には、昔からユウキが良く絡まれていた。深く考えたわけではなく、学生時代からの癖で反射的に声をかけたに過ぎなかったのだが……。
「えっ……?」
「チッ……」
手前の男二人は俺の姿を値踏みするように見たあと、これみよがしに舌打ちをしてその場を走り去った。
去り行く男の一人にすれ違いざまにじろりと睨まれ、正直殴り合いの喧嘩にでもなったらと冷や冷やした。……が、男達はあっさりとその場を立ち去った。
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