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愛するがゆえに首を絞めるのだよ
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「ハァッハァッ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
奇声を上げて起き上がる。
あぁ、リスポーンで生き返ったな。
ちゃんと体もくっついてる。
これで何回自殺したっけ?
俺の死臭は強くなっているだろうか。
「まだゆっくりしてた方が良いよ」
パタンとドアが開いた。
そこにデスが立っているのを見て、俺はようやく見知らぬ宿舎にいる事に気が付いた。
「結構遠くで復活したね。私が死の妖精じゃ無かったら見つけられなかったよ」
デスは両手でバスケットを抱えていた。
バスケットの中には果物や花。
「顔色は悪いみたいだけど、変な幻覚とかは見てないね。いつもの発作が収まるまでゆっくりしてて。今日はそばに居てあげるから」
デスはそう言って、バスケットからリンゴの様な果実と小さなナイフを取り出した。
シュルシュルと果物の皮が剝かれていく。
「なぁ、それどうしたんだ?」
「最近オーガの様子が変だし、差し入れを持って行った方が良いんじゃないかって言われてさ」
「誰に?」
「スネア君に。心配してたよ、オーガの事」
ドクンと心臓が跳ねる。
分かってる。
ちゃんと分かってる。
デスもスネアも俺を心配してくれている。
だから二人で相談したり、二人で話したりするんだ。
そこに俺からデスを奪ってやろうだとか、俺を捨ててスネアの方に行こうとか、そんなゲスな考えは無い。
分かってる。
分かってる。
俺がそんな邪推をすること自体が間違いだって事も。
こんな事を考えている俺の器が小さい事も。
ちゃんと分かってるんだ。
でも、でも。
スネアと相談を重ねるうちにアイツに惹かれていった妖精達は実際問題沢山いる訳で。
どう考えても、俺があいつに勝てる要素は無くて。
「う、うぅぅ」
「大丈夫?」
「俺は、俺は」
「あ、そうだ。今日スネア君から聞いたんだけど、こういう落ち込んでる時はね、こうやってー」
「アイツの話はもうしないでくれ!!!」
そこからはもう、一瞬の事だった。
気が付けば俺は自分の体を起こしていた。
そして、デスの首をぎゅっと絞めていた。
「あっがぁッ……な……に」
「ハァ!!ハァ!!」
俺が寝ていたベットの上に彼女を叩きつける。
無駄に鍛えた筋肉が華奢な彼女を身体を支配する。
デスの首からはミシミシと悲鳴がなっていた。
彼女の鼻からは血がたれ、必死な顔で俺に何かを訴えかけている。
「俺はもう!!お前が居ないとダメなんだ!!神様から貰ったリスポーンの力に逃場は無い。俺がどれだけ体を鍛えても、強くなっても、金を得ても、死は平等に訪れる。そのたび俺はトラウマを抱えてこの世に蘇る!!」
「あ……オ……ガ……」
「何をやってもどん底だった。それこそ、俺一人では小屋に引きこもって屍の様に生きる事しか出来なかった!!でも、お前が来てから俺の生活は変わったんだ。普通に暮らせる、自信を無くしてた筋トレをする意義も尊厳も取り戻せた!!死へのストレスだってお前と一緒だと別の感情に変換できた」
「…………」
「お前はいつも俺に熱意と興味を全力で向けてくれた。頼んでも無いのに俺の体にへばりついて、俺の筋肉を褒めて、俺と手を繋いでくれて……俺は……俺はそんなお前の態度に無意識に甘えてたんだ!!」
もう自分で自分を抑えきれなかった。
自分のものとは思えない程震えた声。
目から大量にこぼれる涙。
周囲の音は聞こえなくなっていた。
耳に響くのは自分の絶叫だけだった。
「だけど、あの日スネアに会って。他の妖精がスネアに鞍替えす様を見て、俺は不安になったんだ。しかもスネアには妖精を虜に出来るチート能力があって、おまけにあいつは凄く気の利くいい男で。それに比べて俺がお前にしていた事と言えばクソみたいな事ばかりだ」
「……じょう……ぶ」
「何度も自殺して死の匂いを強くすればずっとお前を引き付けられると思っていた。でも、心の中の不安が消えないんだよ!!死のストレスを喰らいながら、必死にお前を振り向かせようとしているのに、そんな方法を取っている俺ではスネアに到底かなわない様な気がして」
生き返った時にいつも不安になる。
スネアをうっとりとした目で見つめるデスの姿と言う悪夢がいつか現実になってしまう事を恐怖してしまう。
そんな光景が自然と頭に浮かんでしまう自分が嫌だった。
今でもその光景が頭の片隅にこびりついて、体は強く拒絶反応を起こしている。
「う、おえぇぇ」
そうして、その拒絶反応は嘔吐と言う形で現実に反映された。
俺に首を絞めれ、ベットに押し倒されているデスの体に俺の口からあふれ出した吐瀉物がビシャリとかかった。
「はぁ……はぁ……」
一度吐いたからスッキリしたのだろうか?
それとも一通り鬱憤を晴らしたのだろうか?
俺は、ここまでの事をやらかしてようやく冷静になれた。
鼻血を出して倒れふしているデスと見てぎょっとした。
慌てて自分の手を引っ込めてみれば、デスの首元には青い青いあざが出来ていた。
あ、あああああああ。
全部、俺がやった事だ。
彼女を取られるのが怖くて、最低な事をしてしまった。
どうしてもっといい男になる事を選択出来なかったのだろう。
どうしてこんなになるまで気持ちをため込んでいたのだろう。
こんな、こんな事でヒステリックを起こす男なんて……少し不安になっただけで相手を傷つける人間なんて……捨てられて当然じゃないか。
「あ、あぁ」
上手く言葉がしゃべれない。
どうしていいのか分からなくなって、なんの行動もとれなかった。
「オーガ」
咳き込みながら、汚物にまみれたデスが起き上がる。
俺に汚された体で、俺に傷つけられた体で、彼女はじっと俺の事を見つめていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい」
俺はなんて都合のいい男だろう。
ここまでの事をしておいて、『ごめんなさい』『あやまるから許してください』『お願いだから見捨てないでください』などと自分勝手な意見しか出てこない。
ゆっくりと彼女の手が動いた。
ぶたれるのだろうか?
あきれ果てられた顔を見せられ『さようなら』と吐き捨てられるのだろうか?
それとも、俺が廃人になるまで殺され続けるのだろうか?
「オーガ」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
「顔、上げて」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
そうして、次の瞬間の事。
俺の体が感じ取った物はー
「大丈夫。大丈夫だよ」
「あ……あぁ」
「私は遠くに行かないからね」
優しく俺を抱擁するデスの暖かな体と。
ゆっくりと頭を撫でられる感覚だった。
奇声を上げて起き上がる。
あぁ、リスポーンで生き返ったな。
ちゃんと体もくっついてる。
これで何回自殺したっけ?
俺の死臭は強くなっているだろうか。
「まだゆっくりしてた方が良いよ」
パタンとドアが開いた。
そこにデスが立っているのを見て、俺はようやく見知らぬ宿舎にいる事に気が付いた。
「結構遠くで復活したね。私が死の妖精じゃ無かったら見つけられなかったよ」
デスは両手でバスケットを抱えていた。
バスケットの中には果物や花。
「顔色は悪いみたいだけど、変な幻覚とかは見てないね。いつもの発作が収まるまでゆっくりしてて。今日はそばに居てあげるから」
デスはそう言って、バスケットからリンゴの様な果実と小さなナイフを取り出した。
シュルシュルと果物の皮が剝かれていく。
「なぁ、それどうしたんだ?」
「最近オーガの様子が変だし、差し入れを持って行った方が良いんじゃないかって言われてさ」
「誰に?」
「スネア君に。心配してたよ、オーガの事」
ドクンと心臓が跳ねる。
分かってる。
ちゃんと分かってる。
デスもスネアも俺を心配してくれている。
だから二人で相談したり、二人で話したりするんだ。
そこに俺からデスを奪ってやろうだとか、俺を捨ててスネアの方に行こうとか、そんなゲスな考えは無い。
分かってる。
分かってる。
俺がそんな邪推をすること自体が間違いだって事も。
こんな事を考えている俺の器が小さい事も。
ちゃんと分かってるんだ。
でも、でも。
スネアと相談を重ねるうちにアイツに惹かれていった妖精達は実際問題沢山いる訳で。
どう考えても、俺があいつに勝てる要素は無くて。
「う、うぅぅ」
「大丈夫?」
「俺は、俺は」
「あ、そうだ。今日スネア君から聞いたんだけど、こういう落ち込んでる時はね、こうやってー」
「アイツの話はもうしないでくれ!!!」
そこからはもう、一瞬の事だった。
気が付けば俺は自分の体を起こしていた。
そして、デスの首をぎゅっと絞めていた。
「あっがぁッ……な……に」
「ハァ!!ハァ!!」
俺が寝ていたベットの上に彼女を叩きつける。
無駄に鍛えた筋肉が華奢な彼女を身体を支配する。
デスの首からはミシミシと悲鳴がなっていた。
彼女の鼻からは血がたれ、必死な顔で俺に何かを訴えかけている。
「俺はもう!!お前が居ないとダメなんだ!!神様から貰ったリスポーンの力に逃場は無い。俺がどれだけ体を鍛えても、強くなっても、金を得ても、死は平等に訪れる。そのたび俺はトラウマを抱えてこの世に蘇る!!」
「あ……オ……ガ……」
「何をやってもどん底だった。それこそ、俺一人では小屋に引きこもって屍の様に生きる事しか出来なかった!!でも、お前が来てから俺の生活は変わったんだ。普通に暮らせる、自信を無くしてた筋トレをする意義も尊厳も取り戻せた!!死へのストレスだってお前と一緒だと別の感情に変換できた」
「…………」
「お前はいつも俺に熱意と興味を全力で向けてくれた。頼んでも無いのに俺の体にへばりついて、俺の筋肉を褒めて、俺と手を繋いでくれて……俺は……俺はそんなお前の態度に無意識に甘えてたんだ!!」
もう自分で自分を抑えきれなかった。
自分のものとは思えない程震えた声。
目から大量にこぼれる涙。
周囲の音は聞こえなくなっていた。
耳に響くのは自分の絶叫だけだった。
「だけど、あの日スネアに会って。他の妖精がスネアに鞍替えす様を見て、俺は不安になったんだ。しかもスネアには妖精を虜に出来るチート能力があって、おまけにあいつは凄く気の利くいい男で。それに比べて俺がお前にしていた事と言えばクソみたいな事ばかりだ」
「……じょう……ぶ」
「何度も自殺して死の匂いを強くすればずっとお前を引き付けられると思っていた。でも、心の中の不安が消えないんだよ!!死のストレスを喰らいながら、必死にお前を振り向かせようとしているのに、そんな方法を取っている俺ではスネアに到底かなわない様な気がして」
生き返った時にいつも不安になる。
スネアをうっとりとした目で見つめるデスの姿と言う悪夢がいつか現実になってしまう事を恐怖してしまう。
そんな光景が自然と頭に浮かんでしまう自分が嫌だった。
今でもその光景が頭の片隅にこびりついて、体は強く拒絶反応を起こしている。
「う、おえぇぇ」
そうして、その拒絶反応は嘔吐と言う形で現実に反映された。
俺に首を絞めれ、ベットに押し倒されているデスの体に俺の口からあふれ出した吐瀉物がビシャリとかかった。
「はぁ……はぁ……」
一度吐いたからスッキリしたのだろうか?
それとも一通り鬱憤を晴らしたのだろうか?
俺は、ここまでの事をやらかしてようやく冷静になれた。
鼻血を出して倒れふしているデスと見てぎょっとした。
慌てて自分の手を引っ込めてみれば、デスの首元には青い青いあざが出来ていた。
あ、あああああああ。
全部、俺がやった事だ。
彼女を取られるのが怖くて、最低な事をしてしまった。
どうしてもっといい男になる事を選択出来なかったのだろう。
どうしてこんなになるまで気持ちをため込んでいたのだろう。
こんな、こんな事でヒステリックを起こす男なんて……少し不安になっただけで相手を傷つける人間なんて……捨てられて当然じゃないか。
「あ、あぁ」
上手く言葉がしゃべれない。
どうしていいのか分からなくなって、なんの行動もとれなかった。
「オーガ」
咳き込みながら、汚物にまみれたデスが起き上がる。
俺に汚された体で、俺に傷つけられた体で、彼女はじっと俺の事を見つめていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい」
俺はなんて都合のいい男だろう。
ここまでの事をしておいて、『ごめんなさい』『あやまるから許してください』『お願いだから見捨てないでください』などと自分勝手な意見しか出てこない。
ゆっくりと彼女の手が動いた。
ぶたれるのだろうか?
あきれ果てられた顔を見せられ『さようなら』と吐き捨てられるのだろうか?
それとも、俺が廃人になるまで殺され続けるのだろうか?
「オーガ」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
「顔、上げて」
「ごめんなさい。ごめんなさい」
そうして、次の瞬間の事。
俺の体が感じ取った物はー
「大丈夫。大丈夫だよ」
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