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もう一人のチート能力持ち現る

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 「いや~流石に魔王幹部は強敵だったねぇ」
 「何楽しそうにしてるんだよ。ガチで死ぬ寸前だったじゃねぇか」
 「え~でもいいじゃん。リベンジ出来たんだし」

 俺は今日もデスと一緒に街を歩く。

 こいつの隣に居ると色んな死を見る。
 心臓が持たないし気分も悪くなる。

 でも、不思議と隣に居てくれると安心出来る。

 こいつが俺に貸してくれる妖精剣が強すぎて戦闘で感じる恐怖心が無くなった。
 それに、死のトラウマに飲み込まれそうになった時にデスはいつも助けてくれる。

 俺へのからかいで始めたであろう恋人つなぎも、そこから感じる温もりで心に余裕をくれる。
 当の本人は、俺の魔力を食べるのに一番楽な姿勢だからと言ってやまないけどな。

 そんなこんなで街を歩く。
 今日もギルドへ行って金稼ぎだ。

 「なんか、ガヤガヤしてるね。お祭りでもあるのかな?」
 「そんな話は聞いてないけどな」

 この街に住んで結構経つが、この時期に祭りなんてした事は無いはずだ。
 この喧噪は一体何が原因なんだ?

 「ごめんなさい……私、もう我儘なあなたについていけないの」
 
 瞬間、女の子の声が聞える。
 そして次に聞えて来たのは、喧騒を消し去るほどの男の怒号だった。

 何ごとかと思って、声のした方向へ歩く。
 そこで目に入ったのは、兵士に捕まっている一人の男と小さな妖精の姿だった。

 「どうして僕を裏切った!!僕が一体何かしたか!!言ってみろよ!!」
 「……貴方が好きなのは火そのものじゃないでしょ。自分の地位を上げるために他の生物を燃やして殺す炎。私は貴方のその執念が苦手だった」

 あのオレンジの妖精は炎の妖精か?

 妖精が口を開くたびに、男は怒号を上げてもがく。
 野次馬が集まって、事態が大事になりかねないその時に一人の男が姿を現した。

 「僕は彼女の悩みを聞いてあげた。君の態度は、同じ妖精を使役する人間として到底看過できない」
 「てめぇ!!僕から妖精を奪いやがったな」
 「奪ってなどいない。これは彼女が決めたことだ」

 凛とした声でそう言い放つ男を見て、俺は驚愕した。
 あいつの周囲に、何種類もの妖精が浮かんでいる。

 これは安っぽい言葉だけど、あの男が妖精達のハーレムを作っているみたいに見える。
 
 現に、押さえつけられている男と口論していた炎の妖精でさえ、ハーレム男の顔を見てうっとりとしている。

 「なんか、凄い物見ちまったな。まぁ暴れた男も捕まったみたいだし良かった良かった」

 嫌な予感がする。
 この場から今すぐ離れろと俺の本能が警鐘を鳴らしていた。

 「さ、ギルドに行こー」

 でも、もうすでに遅かったのだろう。
 
 俺の隣に立っているデスは、目を大きく開いてハーレム男を見つめていた。
 さっきまで握っていた手も、いつの間にか離れている。

 「……デス?」
 「驚いた。あの男、オーガと同じでチート能力持ちだよ」
 「え?」
 「妖精を魅惑するフェロモンだろうね。しかも本人に自覚の無い厄介なタイプだ」

 妖精を……魅惑。
 もしかして、あのハーレム男の周囲に居る妖精全員が別の人間から鞍替えしたタチって可能性もあり得るのか。

 デスも、もしかしてその毒牙に??

 『寝るのが怖いの?大丈夫だよ、睡眠中の君からは死の匂いが香らないから』
 『因みにオーガは『死の記憶』なんて本来ありえない記憶を持ってる。私にとって最上のパートナーなわけ』

 まてまて。
 まてまてまてまて!!

 一体俺は何を焦ってる。

 元々俺はデスの事が嫌いだったはずだろ?
 別に俺の元からいなくなたって何も困る事は……困る事なんて!!

 『ねぇ、騙されたと思って私に付いてこない?』

 「デス!!ギルドに行こう!!」
 「ん?あぁ、そうだね」

 よし。
 ギルドがあるのはハーレム男がいる方向とは逆だ。
 これであいつを俺の世界から離す事が。

 「あれ?君も妖精を連れているのかい?」
 「へ?」

 どうしてこのタイミングで声をかけてくる。
 その苛立ちを隠しながら、俺は後を振り向いた。

 「こんなに大きな妖精を見るのは初めてなんだ!!よかったら話を聞かせて欲しい」
 「えっと、アンタは」
 「おっと、自己紹介がまだだったね。僕の名前はスネア。妖精使いのスネアだ」
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