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最終章 罰
【始SIDE】それは本当に頼れる仲間であったか???
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俺の人生はいたって平凡なものだった。
それこそアニメや漫画にしたら面白くないって苦情が来るほど平凡なものだ。
そんな俺の生活が激変したのは最近の話。
街の人全員が俺の親友に関する記憶を無くしてしまったという大事件が発生したのだ。
当の俺も親友の下の名前を思い出せず、『牛草』と言う苗字だけを頼りに右往左往。
親友の妹である斬琉ちゃんや別の要件で『牛草』を探していた霊媒師の一ノ瀬さんとヘルちゃんの仲間と共に親友が居るかもしれない『牛草霊能事務所』と言う手掛かりを発見することに成功。
そして今、俺達はその『牛草霊能事務所』に向かうために新幹線に乗っている。
「おお、これが!!」
「新幹線で食べると噂の駅弁だぁ!!」
俺と斬琉ちゃんは目を輝かせながら弁当の蓋を開けている。
綺麗な椅子。
全ての席で使えるテーブル。
大量の商品をワゴンで運ぶ車内販売員。
初めて乗った新幹線は地元で乗る電車と何もかもが違っていて俺達二人はかなりテンション爆上がりだった。
「あと20分のすれば東京に付くからな。そしたら東北新幹線に乗り換えるで」
通路を挟んで反対側の席に座る一ノ瀬さんは随分新幹線の旅には慣れてるみたいで、時々こっちの様子を伺いながら色々声をかけてくれていた。
人見知りと言っていたヘルちゃんは窓側の席で静かに景色を眺めている。
「もう東京かぁ。僕初めて新幹線に乗ったけど凄い速いんだね。人類の英知の結晶って感じがする」
「分かる分かる。いや~、マジで交通費出してくれた一ノ瀬さんには感謝しかない」
「気にせんでええよ~。二人には僕が無理を言って着いて来てもらってるんやから」
実は今日、俺らしくも無くちょっと緊張していて少しばかりの不安もある。
もし俺の親友である牛草##に出会えたとして、このぼやけた記憶は本当に元通りになるのか?
仮に記憶が戻ったとして、今の牛草##を俺が受け入れる事が出来るのか?
朝起きた時はそんな事ばかり考えてた。
でも、今こうやって皆と話しながら新幹線の度をしている内にそんな不安の声はどんどん小さくなっていって。
『やらない後悔よりもやる後悔!!』みたいな俺の気質も戻ってきてくれた。
こんなに頼れる味方がいっぱい居るんだ、きっとこの先何かが起きても何とかなるよな。
「あ、始っち!!東京着いたみたいだよ」
「お、本当だ。すげー都会」
「それじゃぁここで乗り換えやね。ヘルちゃんも準備してな」
「あ……う、うん。分かったよココロ」
そんなわちゃわちゃとした会話を交わしながら俺達は新幹線の席を立ちあがった。
◇
「一ノ瀬さん……僕達が乗り換える新幹線これで合ってるよね?」
「合ってるで。指定席の場所も間違えてないはずや」
「確かに番号は合ってるみたいだけど……なんかスゲー静かだな」
「お、お客さん……私達以外に居ない??」
一ノ瀬さんに導かれて乗った乗り換えの東北新幹線。
そこは奇妙な事にすごく静かだった。
さっきまで乗っていた新幹線は色んな人が乗っていたのに対し、この新幹線には俺達4人以外に人の気配を感じない。
少しだけ気味が悪い様に感じるな。
「それって……実質僕達の貸し切りってこと!!なんか特別感あるなぁ」
斬琉ちゃんがこの空気にそぐわないポジティブな言葉を吐いたのと同時刻、新幹線が動き出す。
高速で動いていく窓の外の景色。
やがて新幹線を包み込んでいた駅のホームも東京の街並みも全く見えなくなったその瞬間、怒号の様にも聞こえる車内放送の音が鳴り響いた。
『お前たちは完全に包囲されている。そこを動くな!!』
「へ?!なに、包囲??」
「うわっ、急に大きな音が出るからビックリした」
俺と斬琉ちゃんが声を上げて驚くのもつかの間、俺達の席がある車両の前と後ろのドアから銃を武装した警察官数人がなだれ込んで来た。
「一般人が二人巻き込まれています」
「お前達二人は一般人の警護へ!!超能力者部隊は一ノ瀬心を包囲しろ!!」
スピーカーを持った刑事さんの怒号がまた響く。
俺と斬琉ちゃんの前には「もう大丈夫だよ」と繰り返す女の刑事さんが二人。
一ノ瀬さんとヘルちゃんの周りには数十人の刑事さん達が立ちふさがっていた。
その十人の刑事の内、一番エリートっぽい人が一ノ瀬さんに向かって大声を上げる。
「お前が一ノ瀬心だな。お前が罪のない人々から魂を奪っている事に関して全て証拠がー」
「裏拍手 開門」
一ノ瀬さんはそのエリート刑事の言葉を遮って、何か呪文のような物を唱える。
すると一ノ瀬さんの背中に薄暗いゲートの様な形成され、そこから現れた20体ほどの悪霊たちが刑事さん達に向かって襲い掛かった。
「君らも僕と同じで特別な力持っとるんやろ?やったら普通悠長に話さずに攻撃するべきやと僕は思うけどな」
一ノ瀬さんの冷たい声が響き渡る。
さっきまで彼を包囲していた刑事さんがその場でバタバタと倒れていく。
俺はその恐ろしい光景を目の当たりにして、とっさに声を張り上げた。
「一ノ瀬さん?!ちょっと何やってるんですか!!」
「ん?何って、襲われたから対処してるだけやで」
「対処してるって、人が死んでるじゃないですか」
突然色んな事が起こりすぎて、若干頭の中がパニックになっている。
意味があるのか分からないけど斬琉ちゃんを庇う様に立ち位置を動かして、とにかく出来る事はしないとって意識だけが頭を支配していた。
「そう言えば、始君達には『牛草』を見つけたら僕達が何をするのか言ってなかったなぁ」
「い、いきなり何の話だよ」
この時一ノ瀬さんが見せた笑顔を俺はきっと忘れる事が出来ないだろう。
見ているだけで底知れない恐怖を感じさせるような狂気的なあの笑顔を。
「僕達は『牛草』を見つけたら殺すつもりなんや。ヘルちゃんの新しい人生を歩む為の第一歩としてな」
それこそアニメや漫画にしたら面白くないって苦情が来るほど平凡なものだ。
そんな俺の生活が激変したのは最近の話。
街の人全員が俺の親友に関する記憶を無くしてしまったという大事件が発生したのだ。
当の俺も親友の下の名前を思い出せず、『牛草』と言う苗字だけを頼りに右往左往。
親友の妹である斬琉ちゃんや別の要件で『牛草』を探していた霊媒師の一ノ瀬さんとヘルちゃんの仲間と共に親友が居るかもしれない『牛草霊能事務所』と言う手掛かりを発見することに成功。
そして今、俺達はその『牛草霊能事務所』に向かうために新幹線に乗っている。
「おお、これが!!」
「新幹線で食べると噂の駅弁だぁ!!」
俺と斬琉ちゃんは目を輝かせながら弁当の蓋を開けている。
綺麗な椅子。
全ての席で使えるテーブル。
大量の商品をワゴンで運ぶ車内販売員。
初めて乗った新幹線は地元で乗る電車と何もかもが違っていて俺達二人はかなりテンション爆上がりだった。
「あと20分のすれば東京に付くからな。そしたら東北新幹線に乗り換えるで」
通路を挟んで反対側の席に座る一ノ瀬さんは随分新幹線の旅には慣れてるみたいで、時々こっちの様子を伺いながら色々声をかけてくれていた。
人見知りと言っていたヘルちゃんは窓側の席で静かに景色を眺めている。
「もう東京かぁ。僕初めて新幹線に乗ったけど凄い速いんだね。人類の英知の結晶って感じがする」
「分かる分かる。いや~、マジで交通費出してくれた一ノ瀬さんには感謝しかない」
「気にせんでええよ~。二人には僕が無理を言って着いて来てもらってるんやから」
実は今日、俺らしくも無くちょっと緊張していて少しばかりの不安もある。
もし俺の親友である牛草##に出会えたとして、このぼやけた記憶は本当に元通りになるのか?
仮に記憶が戻ったとして、今の牛草##を俺が受け入れる事が出来るのか?
朝起きた時はそんな事ばかり考えてた。
でも、今こうやって皆と話しながら新幹線の度をしている内にそんな不安の声はどんどん小さくなっていって。
『やらない後悔よりもやる後悔!!』みたいな俺の気質も戻ってきてくれた。
こんなに頼れる味方がいっぱい居るんだ、きっとこの先何かが起きても何とかなるよな。
「あ、始っち!!東京着いたみたいだよ」
「お、本当だ。すげー都会」
「それじゃぁここで乗り換えやね。ヘルちゃんも準備してな」
「あ……う、うん。分かったよココロ」
そんなわちゃわちゃとした会話を交わしながら俺達は新幹線の席を立ちあがった。
◇
「一ノ瀬さん……僕達が乗り換える新幹線これで合ってるよね?」
「合ってるで。指定席の場所も間違えてないはずや」
「確かに番号は合ってるみたいだけど……なんかスゲー静かだな」
「お、お客さん……私達以外に居ない??」
一ノ瀬さんに導かれて乗った乗り換えの東北新幹線。
そこは奇妙な事にすごく静かだった。
さっきまで乗っていた新幹線は色んな人が乗っていたのに対し、この新幹線には俺達4人以外に人の気配を感じない。
少しだけ気味が悪い様に感じるな。
「それって……実質僕達の貸し切りってこと!!なんか特別感あるなぁ」
斬琉ちゃんがこの空気にそぐわないポジティブな言葉を吐いたのと同時刻、新幹線が動き出す。
高速で動いていく窓の外の景色。
やがて新幹線を包み込んでいた駅のホームも東京の街並みも全く見えなくなったその瞬間、怒号の様にも聞こえる車内放送の音が鳴り響いた。
『お前たちは完全に包囲されている。そこを動くな!!』
「へ?!なに、包囲??」
「うわっ、急に大きな音が出るからビックリした」
俺と斬琉ちゃんが声を上げて驚くのもつかの間、俺達の席がある車両の前と後ろのドアから銃を武装した警察官数人がなだれ込んで来た。
「一般人が二人巻き込まれています」
「お前達二人は一般人の警護へ!!超能力者部隊は一ノ瀬心を包囲しろ!!」
スピーカーを持った刑事さんの怒号がまた響く。
俺と斬琉ちゃんの前には「もう大丈夫だよ」と繰り返す女の刑事さんが二人。
一ノ瀬さんとヘルちゃんの周りには数十人の刑事さん達が立ちふさがっていた。
その十人の刑事の内、一番エリートっぽい人が一ノ瀬さんに向かって大声を上げる。
「お前が一ノ瀬心だな。お前が罪のない人々から魂を奪っている事に関して全て証拠がー」
「裏拍手 開門」
一ノ瀬さんはそのエリート刑事の言葉を遮って、何か呪文のような物を唱える。
すると一ノ瀬さんの背中に薄暗いゲートの様な形成され、そこから現れた20体ほどの悪霊たちが刑事さん達に向かって襲い掛かった。
「君らも僕と同じで特別な力持っとるんやろ?やったら普通悠長に話さずに攻撃するべきやと僕は思うけどな」
一ノ瀬さんの冷たい声が響き渡る。
さっきまで彼を包囲していた刑事さんがその場でバタバタと倒れていく。
俺はその恐ろしい光景を目の当たりにして、とっさに声を張り上げた。
「一ノ瀬さん?!ちょっと何やってるんですか!!」
「ん?何って、襲われたから対処してるだけやで」
「対処してるって、人が死んでるじゃないですか」
突然色んな事が起こりすぎて、若干頭の中がパニックになっている。
意味があるのか分からないけど斬琉ちゃんを庇う様に立ち位置を動かして、とにかく出来る事はしないとって意識だけが頭を支配していた。
「そう言えば、始君達には『牛草』を見つけたら僕達が何をするのか言ってなかったなぁ」
「い、いきなり何の話だよ」
この時一ノ瀬さんが見せた笑顔を俺はきっと忘れる事が出来ないだろう。
見ているだけで底知れない恐怖を感じさせるような狂気的なあの笑顔を。
「僕達は『牛草』を見つけたら殺すつもりなんや。ヘルちゃんの新しい人生を歩む為の第一歩としてな」
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