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最終章 罰

【始SIDE】手掛かり

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 季節は10月。
 皆の記憶から居なくなった親友を斬琉キルちゃんと探し始めてもう二ヶ月が経とうとしていたこの日。
 俺は息を切らして全力疾走しながら斬琉キルちゃんの家に向かった。

 「有力な情報を見つけたって、それ本当?!」
 「マジマジ!!これ絶対あいつが関わってる案件だろ」

 目をパチクリしながら驚いている斬琉キルちゃんに見せたのはとある掲示板のオカルトスレ。
 そこには『日本にいる本物の霊媒師上げていけ』と言うタイトル通り、様々な霊媒師の名前や日本各地の霊能事務所を紹介して居る。
 そのスレッドの書き込みの中に一つ気になる記述を俺は見つけたんだ。

 「この牛草霊能事務所って所、すっごい怪しいと思わねぇか」

 そう言って突き出したスマホの画面を斬琉キルちゃんは品定めをするような雰囲気で見つめる。

 「なになに~この事務所はガチで除霊してくれる。フルネームは教えてくれない所も本物感凄いし、同じ苗字名乗ってたけど見た感じ高校生カップルに見えると‥‥‥凄いじゃん始っち。これめっちゃ怪しいよ。てかここにおにぃが居なかったらもうどこに居るのって感じなんだけど?!」
 「な、そうだろ!!」

 牛草と言う苗字。
 高校生と言う身分。
 町の皆があいつの記憶を無くした現象に繋がりそうな『霊能事務所』というオカルト要素。
 そしてオマケに霊能事務所の開業日があいつの記憶が無くなった7月1日以降ときたもんだ。

 断言できる。
 この『牛草霊能事務所』は100%あいつにたどり着く為の手がかりになる。
 
 気付けば俺と斬琉キルちゃんは自然と二人で盛大なハイタッチをしていた。

 「にしても……あいつに彼女が居たのか。おかしいな、俺の記憶では二人そろって彼女いない同盟とかやってた気がするのに」
 「まぁそこらへんの記憶も忘れてるんでしょ。未だにおにぃの名前を思い出せてないぐらいなんだしさ」
 「まぁそれもそうか。つ~か斬琉キルちゃんは驚かないのな」
 「僕は皆の記憶からおにぃって存在が無くなったこの現象、元をたどればこの女なんじゃないかって考えてるからね。見つけたらじっくり女の話合いをしないと」
 
 斬琉キルちゃんすげぇ怖い顔してる。
 怒ってるって感じじゃないけど、確実にろくでも無い事企んでる顔だ。

 「それにしても霊能事務所ねぇ。これも何かの縁なのかな」
 「ん?どういうこと?」
 「いやぁ、それがね」

 彼女はスカートのポケットからスマホを取り出して、その画面をこっちに向ける。
 そこに写っていたのはあいつを探すために作った SNSのホーム画面だった。

 「なんとタイミングの良い事に、昨日このアカウントに自称霊能力者からDMダイレクトメールが届いたんだよ」
 「霊能力者!!それならもしかしてー」
 「牛草霊能事務所の事やおにぃの事、知ってる人かもしれないね」

 この言葉を聞いて俺は小さくガッツポーズを決めてた。
 皆の記憶から居なくなったあいつを捜すなんて今まで雲をつかむような話だったけど、ようやく俺達の手が届いてきたような実感が湧いてきた。

 「この自称霊能力者さん、諸事情あって今この町に居るみたいだよ」
 「マジで?!そんな都合良い事あるのかよ!!」
 「なんでも可愛い恋人連れてるみたいだよ。どうする?会ってみる」
 「そんなの合うに決まってるだろ。目の前のチャンスは全力でつかみ取るべきだからな」
 
 「そう言うと思ってた」と得意げに言った斬琉キルちゃんは、その自称霊能力者さんに送るメッセージを入力し始めた。
 
 「これで、送信っと。後はあっちの返事を待つだけだね~」
 「そういや、その自称霊能力者の人に合ったらなんて呼べばいいんだ?」
 「えっとねぇ……確か最初のメッセージに本名っぽいのが書いてあったような」

 今時SNSに本名載せるって……危機感どうなってるんだその人。
 まぁ、霊能力者って言うぐらいだから老人の可能性だってあるし、もしかしたら芸名みたいな職業用の名前の可能性だってあるし一概には何とも言えないか。

 「あ、見つけた。名字が一ノ瀬いちのせで名前がこころだって」
 「一ノ瀬いちのせさんか。下の名前が心ってなんかいい名前だな」
 「ね~、優しい人だと良いね」

 呑気にそんな話をしていると、斬琉キルちゃんのスマホにピコンと通知の音が鳴る。

 『明日の夕方5時頃、桜薬駅おうやく駅で待ってます』

 彼女のスマホに届いたのは、一ノ瀬いちのせさんのシンプルな返信だった。
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