76 / 114
最終章 罰
愛する君の夢を守る為なら、俺はどれだけ壊れても構わない 前編
しおりを挟む 「あんまり大きい声出さないでくれよ。寝たばかりのファナエルが起きちゃうだろ」
「ーは?」
間の抜けた悪魔の声。
一見、悪魔の頭上に浮かんでいる疑問符の主語は『襲われたのにも関わらず逃げもしない俺』を指し示して居るように見える事だろう。
「なんで‥‥‥この、俺が」
しかしながら悪魔の瞳孔が見つめているのは、彼の体を腹から貫いている銀色の触手だった。
すなわち、俺の背中から伸びている触手を見て心底驚いているのだ。
『なんでただの人間からこんな物が?!』ってな。
その目を見るたびに、あの時のアルゴスの姿が頭によぎる。
罪悪感に飲まれるな‥‥‥‥こいつが襲ってくるように誘導した理由を思い出せ。
「ありがとう。お前のお陰で俺たちの旅が無駄じゃないって証明が出来たよ」
「テメェ‥‥‥俺の事を利用しやがったのか」
「ああ。アルゴスが死んだ事や俺が災厄になった事を天界の連中がどれだけ把握しているかを知るためには現状これしか方法が無いからな」
頭上でパリンと音が鳴る。
左上の方から流れて来るであろう滝のような血がファナエルの顔に掛かってしまわないように俺は首を少し傾けた。
「あのアルゴスが死んだぁ‥‥‥‥なるほどな!!最近、俺達 が人間界に降りやすくなってるのは、そもそも監視役が死んだからなんだなぁ」
何が嬉しいのか、悪魔はニタニタと笑いながら俺の事を見つめている。
「お前は知らねぇだろうから心優しい俺が教えてやるよ。俺達悪魔は人間どもの活動を活発にさせる役割を持ってる。誰にも言えない望みを叶える手伝いをしてやるのさ、人の行動を強制出来る悪魔文字を使ってな!!でも人間って奴は闇が深い、 心の奥底で一生懸命願ってることが『誰かの死』だったり『社会の破壊』だったりする奴も当然居る訳だ」
「‥‥‥‥だからアルゴスは人間界に下る悪魔の数を制限していた。良からぬ願いを持った人間と、その願いを叶えようとする悪魔が接触してしまう事を避ける為に」
「天使みてぇに心読んでんじゃね~よ気持ち悪い。でもまぁここまで聞いたなら分かるだろう?お前がその堕天使なんかの為にしでかした事がどれだけ重罪か」
悪魔は笑う。
神話や伝承などで作られたイメージと遜色ない顔と声で、俺の罪をあざ笑う。
『想像以上に苦しいでしょう?恋人の為に何かを殺した罪を背負うと言うのは』
その笑い声がまた、俺のトラウマを呼び起こす。
「世界の犯罪数がこれから確実にグンと伸びる、お前がその堕天使をかばったせいだ!!ただでさえ不安定な世の中が近いうちに必ず地獄へと変貌する、お前がアルゴスを殺したせいでだ!!お前がそのクソ女を助けたせいで、地球に生きる人間全員が犠牲にー」
「そんな事、とっくの前に覚悟してるさ」
グシャリ。
背中に生えるもう一つの触手が今度は肩から悪魔の体を貫いた。
「人間であろうと悪魔であろうと天使であろうと神であろうとファナエルを傷つける奴は全員殺す。どれだけ世界が壊れても、知らない奴からどれだけ恨まれようとも、それでファナエルの夢を守れるならそれでいい。俺はそんな覚悟で罪を背負ってるんだ。今更お前ごときが俺を動揺させられると思うなよ」
「ハハッ、あの悪名高い堕天使の彼氏だっていうからどれだけ狂った奴なのかと思ったらよぉ。手はプルプル震えてるし、声色は罪に怯えて動揺してる人間のそれなのに、お前の目と触手から感じる殺意はちゃんと本物って‥‥‥‥愛情と本能が上手に噛み合わなくなって単にぶっ壊れてるだけじゃねーか」
「否定も肯定もしない。俺の事はなんと言おうと構わない‥‥‥だけど一つだけ訂正しろ」
「ああん?」
『############################################################################################################################################』
「ファナエルを貶すな」
次の瞬間、悪魔の体が爆音を上げて崩れ去った。
体の内部から発生した黒いノイズにその肉片の一つ一つをえぐられながら、最後は空気を入れすぎた風船の様に破裂したのだ。
『このタイミングなら、彼の心にあるファナエル・ユピテルの恋心を消去出来る』
それと丁度同じタイミングでずっと背後に潜んでいた気配に動きが見えた。
俺が気づいて居ないとでも思っていたのか?
それともあの悪魔に気を取られて反応出来ないとでも考えていたのか?
どちらにせよ、舐められたもんだ。
フリーになってる触手はまだ4本もあるっていうのに。
俺はファナエルの睡眠を邪魔になる体の揺れがおこならいように意識しながら、残りの触手に堕天使の力を纏わせながら背後から迫る光を迎え撃った。
「天使ともあろう存在が不意打ちなんて卑劣な事しても良い訳?」
ぐるりと首を回す。
俺達の背後には真っ白な羽を背中から伸ばし、頭上に光り輝く光輪を浮かべた女性の天使が立っていた。
「あなた方二人の凶行を止める事が最優先ですので」
「ーは?」
間の抜けた悪魔の声。
一見、悪魔の頭上に浮かんでいる疑問符の主語は『襲われたのにも関わらず逃げもしない俺』を指し示して居るように見える事だろう。
「なんで‥‥‥この、俺が」
しかしながら悪魔の瞳孔が見つめているのは、彼の体を腹から貫いている銀色の触手だった。
すなわち、俺の背中から伸びている触手を見て心底驚いているのだ。
『なんでただの人間からこんな物が?!』ってな。
その目を見るたびに、あの時のアルゴスの姿が頭によぎる。
罪悪感に飲まれるな‥‥‥‥こいつが襲ってくるように誘導した理由を思い出せ。
「ありがとう。お前のお陰で俺たちの旅が無駄じゃないって証明が出来たよ」
「テメェ‥‥‥俺の事を利用しやがったのか」
「ああ。アルゴスが死んだ事や俺が災厄になった事を天界の連中がどれだけ把握しているかを知るためには現状これしか方法が無いからな」
頭上でパリンと音が鳴る。
左上の方から流れて来るであろう滝のような血がファナエルの顔に掛かってしまわないように俺は首を少し傾けた。
「あのアルゴスが死んだぁ‥‥‥‥なるほどな!!最近、俺達 が人間界に降りやすくなってるのは、そもそも監視役が死んだからなんだなぁ」
何が嬉しいのか、悪魔はニタニタと笑いながら俺の事を見つめている。
「お前は知らねぇだろうから心優しい俺が教えてやるよ。俺達悪魔は人間どもの活動を活発にさせる役割を持ってる。誰にも言えない望みを叶える手伝いをしてやるのさ、人の行動を強制出来る悪魔文字を使ってな!!でも人間って奴は闇が深い、 心の奥底で一生懸命願ってることが『誰かの死』だったり『社会の破壊』だったりする奴も当然居る訳だ」
「‥‥‥‥だからアルゴスは人間界に下る悪魔の数を制限していた。良からぬ願いを持った人間と、その願いを叶えようとする悪魔が接触してしまう事を避ける為に」
「天使みてぇに心読んでんじゃね~よ気持ち悪い。でもまぁここまで聞いたなら分かるだろう?お前がその堕天使なんかの為にしでかした事がどれだけ重罪か」
悪魔は笑う。
神話や伝承などで作られたイメージと遜色ない顔と声で、俺の罪をあざ笑う。
『想像以上に苦しいでしょう?恋人の為に何かを殺した罪を背負うと言うのは』
その笑い声がまた、俺のトラウマを呼び起こす。
「世界の犯罪数がこれから確実にグンと伸びる、お前がその堕天使をかばったせいだ!!ただでさえ不安定な世の中が近いうちに必ず地獄へと変貌する、お前がアルゴスを殺したせいでだ!!お前がそのクソ女を助けたせいで、地球に生きる人間全員が犠牲にー」
「そんな事、とっくの前に覚悟してるさ」
グシャリ。
背中に生えるもう一つの触手が今度は肩から悪魔の体を貫いた。
「人間であろうと悪魔であろうと天使であろうと神であろうとファナエルを傷つける奴は全員殺す。どれだけ世界が壊れても、知らない奴からどれだけ恨まれようとも、それでファナエルの夢を守れるならそれでいい。俺はそんな覚悟で罪を背負ってるんだ。今更お前ごときが俺を動揺させられると思うなよ」
「ハハッ、あの悪名高い堕天使の彼氏だっていうからどれだけ狂った奴なのかと思ったらよぉ。手はプルプル震えてるし、声色は罪に怯えて動揺してる人間のそれなのに、お前の目と触手から感じる殺意はちゃんと本物って‥‥‥‥愛情と本能が上手に噛み合わなくなって単にぶっ壊れてるだけじゃねーか」
「否定も肯定もしない。俺の事はなんと言おうと構わない‥‥‥だけど一つだけ訂正しろ」
「ああん?」
『############################################################################################################################################』
「ファナエルを貶すな」
次の瞬間、悪魔の体が爆音を上げて崩れ去った。
体の内部から発生した黒いノイズにその肉片の一つ一つをえぐられながら、最後は空気を入れすぎた風船の様に破裂したのだ。
『このタイミングなら、彼の心にあるファナエル・ユピテルの恋心を消去出来る』
それと丁度同じタイミングでずっと背後に潜んでいた気配に動きが見えた。
俺が気づいて居ないとでも思っていたのか?
それともあの悪魔に気を取られて反応出来ないとでも考えていたのか?
どちらにせよ、舐められたもんだ。
フリーになってる触手はまだ4本もあるっていうのに。
俺はファナエルの睡眠を邪魔になる体の揺れがおこならいように意識しながら、残りの触手に堕天使の力を纏わせながら背後から迫る光を迎え撃った。
「天使ともあろう存在が不意打ちなんて卑劣な事しても良い訳?」
ぐるりと首を回す。
俺達の背後には真っ白な羽を背中から伸ばし、頭上に光り輝く光輪を浮かべた女性の天使が立っていた。
「あなた方二人の凶行を止める事が最優先ですので」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる