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2章 ファナエル=???
ドリーム in シスター
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「ん、ここは‥‥いつもの夢か」
奇妙な頭痛に見舞われてベッドに入った俺の意識が次に覚醒したのはいつも見る夢の中だった。
体に巻き付いている銀色の髪の毛は何本かを絡めて一つ束を作り、それを触手のように動かして俺の頭をゆっくりと撫でている。
「もしかして、俺の体を気遣ってくれてるのか?」
髪の毛の束はそっと頭を撫でるのをやめて俺の眼前に移動し、俺の言葉を肯定するようにその先端を上下に動かした。
ゆっくり静かに、しおらしく動くその髪の毛はまるで教室の花瓶を割った小学生のようだと俺は思った。
そこから香るファナエルの匂いも相まって、彼女が申し訳無さそうな顔を浮かべているのを想像してしまうのだ。
「大丈夫、大丈夫だよ。俺はどこにも行かないから」
きっとファナエルならこの言葉が欲しいだろうと思って俺は口を開く。
彼女が寂しそうな顔をするのは、不安そうな顔をするのは似合っていない。
彼女にはいつも笑顔で居てほしい、そんな思いを込めて俺はその言葉を放っていた。
俺の目の前に居るのはファナエルの髪の毛であろう何かであって彼女本人ではないのだが、その言葉を聞いた瞬間躍動するそれの姿を見て俺もなんだか嬉しくなってくるのだ。
『サッキノ、モット。サッキノ、モット。』
「なんだ嬉しかったのか?良いよ、何度だって言うからさ」
俺は嬉しそうにうねる銀色の髪を撫でながら「大丈夫、大丈夫だよ。俺はどこにも行かないから」と歌うように言い続けた。
時間も忘れて髪の毛と触れ合っていいたその時、不意に地面が大きく揺れた。
俺の視界はカーテンを掛けられたみたいに一瞬黒に染まり、気がつけば眼前に大量の星が見える夜空が広がっていた。
地面も湿ったピンク色のものから緑の生い茂る芝生に変わっている。
そんな変化が起こる中でも相変わらず俺の胴体に絡みついて動いている銀色の髪の毛を見て、自分はまだ夢の中に居ることを自覚した。
「もう地面に寝ないで良いのです。貴方は立ち上がれるのですよ」
次の瞬間、辺り一帯に響いたのは小さな女の子の声だった。
自分の夢の中に何か全く知らないものが侵入してきたかのような妙な感覚を覚えた俺はその言葉通りに動くのをためらい、夢の中で寝たふりをしながら様子を見ることにした。
「そんなに警戒しなくていいのです。もし立てないなら手を貸してあげるのですよ」
ジャク、ジャク、ジャク、小さな足音がどんどんとこちらに近づいてくる。
その足音が耳の寸前まで近づいてきたその時、俺の視界に写ったのは黒いシスター服を来た小学2年生ぐらいの女の子だった。
「大丈夫なのです?」
『サワルナ!!!』
その女の子が俺の視界に入った瞬間、銀色の髪の毛達から大きな金切り声が鳴る。
俺の体に巻き付いていた数本の髪の毛たちは5つほどの束を作って、まるで鞭のような動きで女の子を襲う。
それに対して女の子は焦りもせず逃げる姿勢も見せない。
その小さな右手を意味ありげな動作をしながら左の目の上を通過させた。
「るるちゃん、力を借りるのですよ」
次の瞬間、シスター服を着た少女の左目から赤色のまばゆい光が放たれる。
その光に当てられた銀色の髪の毛はみるみる内に生気を失うように倒れていった。
「‥‥‥君は一体何なんだ」
「驚かせてしまって申し訳ないのです。決して悪いものではないのですよ」
パサリと落下してきた髪の毛を拾った俺は上半身を起こして彼女に質問を投げかける。
対する少女は申し訳無さそうな顔をしてこちらを見つめている。
なんだかその顔は、小学2年生からは感じられないほどの哀愁が漂っている印象を受ける物だった。
「私の名前は月光氷雨。氷雨でいいのですよ、牛草秋良さん」
「なんで俺の名前を」
「組織の皆が頑張ってくれたおかげなのです。そのおかげで私はお兄さんの夢に侵入することが出来たのです」
組織?夢の中に侵入してきた?
なんなんだこの子は、いきなり出てきて現実離れしたようなことばっか言って。
そもそもここは夢の中だ、俺が脳内で氷雨って子を勝手に作りだしてる可能性の方が圧倒的に高いんだ、彼女の言葉を真に受ける必要はない……無いはずなんだ。
それでも目の前に映る月光氷雨という少女には、どこか生々しいリアリティが張り付いているような感じがしてならない。
「私達は超能力組織『シンガン』。あなたの身体と未来を守るため、あなたの幸せな日常を壊しに来たのです」
奇妙な頭痛に見舞われてベッドに入った俺の意識が次に覚醒したのはいつも見る夢の中だった。
体に巻き付いている銀色の髪の毛は何本かを絡めて一つ束を作り、それを触手のように動かして俺の頭をゆっくりと撫でている。
「もしかして、俺の体を気遣ってくれてるのか?」
髪の毛の束はそっと頭を撫でるのをやめて俺の眼前に移動し、俺の言葉を肯定するようにその先端を上下に動かした。
ゆっくり静かに、しおらしく動くその髪の毛はまるで教室の花瓶を割った小学生のようだと俺は思った。
そこから香るファナエルの匂いも相まって、彼女が申し訳無さそうな顔を浮かべているのを想像してしまうのだ。
「大丈夫、大丈夫だよ。俺はどこにも行かないから」
きっとファナエルならこの言葉が欲しいだろうと思って俺は口を開く。
彼女が寂しそうな顔をするのは、不安そうな顔をするのは似合っていない。
彼女にはいつも笑顔で居てほしい、そんな思いを込めて俺はその言葉を放っていた。
俺の目の前に居るのはファナエルの髪の毛であろう何かであって彼女本人ではないのだが、その言葉を聞いた瞬間躍動するそれの姿を見て俺もなんだか嬉しくなってくるのだ。
『サッキノ、モット。サッキノ、モット。』
「なんだ嬉しかったのか?良いよ、何度だって言うからさ」
俺は嬉しそうにうねる銀色の髪を撫でながら「大丈夫、大丈夫だよ。俺はどこにも行かないから」と歌うように言い続けた。
時間も忘れて髪の毛と触れ合っていいたその時、不意に地面が大きく揺れた。
俺の視界はカーテンを掛けられたみたいに一瞬黒に染まり、気がつけば眼前に大量の星が見える夜空が広がっていた。
地面も湿ったピンク色のものから緑の生い茂る芝生に変わっている。
そんな変化が起こる中でも相変わらず俺の胴体に絡みついて動いている銀色の髪の毛を見て、自分はまだ夢の中に居ることを自覚した。
「もう地面に寝ないで良いのです。貴方は立ち上がれるのですよ」
次の瞬間、辺り一帯に響いたのは小さな女の子の声だった。
自分の夢の中に何か全く知らないものが侵入してきたかのような妙な感覚を覚えた俺はその言葉通りに動くのをためらい、夢の中で寝たふりをしながら様子を見ることにした。
「そんなに警戒しなくていいのです。もし立てないなら手を貸してあげるのですよ」
ジャク、ジャク、ジャク、小さな足音がどんどんとこちらに近づいてくる。
その足音が耳の寸前まで近づいてきたその時、俺の視界に写ったのは黒いシスター服を来た小学2年生ぐらいの女の子だった。
「大丈夫なのです?」
『サワルナ!!!』
その女の子が俺の視界に入った瞬間、銀色の髪の毛達から大きな金切り声が鳴る。
俺の体に巻き付いていた数本の髪の毛たちは5つほどの束を作って、まるで鞭のような動きで女の子を襲う。
それに対して女の子は焦りもせず逃げる姿勢も見せない。
その小さな右手を意味ありげな動作をしながら左の目の上を通過させた。
「るるちゃん、力を借りるのですよ」
次の瞬間、シスター服を着た少女の左目から赤色のまばゆい光が放たれる。
その光に当てられた銀色の髪の毛はみるみる内に生気を失うように倒れていった。
「‥‥‥君は一体何なんだ」
「驚かせてしまって申し訳ないのです。決して悪いものではないのですよ」
パサリと落下してきた髪の毛を拾った俺は上半身を起こして彼女に質問を投げかける。
対する少女は申し訳無さそうな顔をしてこちらを見つめている。
なんだかその顔は、小学2年生からは感じられないほどの哀愁が漂っている印象を受ける物だった。
「私の名前は月光氷雨。氷雨でいいのですよ、牛草秋良さん」
「なんで俺の名前を」
「組織の皆が頑張ってくれたおかげなのです。そのおかげで私はお兄さんの夢に侵入することが出来たのです」
組織?夢の中に侵入してきた?
なんなんだこの子は、いきなり出てきて現実離れしたようなことばっか言って。
そもそもここは夢の中だ、俺が脳内で氷雨って子を勝手に作りだしてる可能性の方が圧倒的に高いんだ、彼女の言葉を真に受ける必要はない……無いはずなんだ。
それでも目の前に映る月光氷雨という少女には、どこか生々しいリアリティが張り付いているような感じがしてならない。
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