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2章 ファナエル=???
秋良の変化
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「またファナエルと遊びに行きたいよなぁ~」
俺は自宅のリビングにあるソファーに座り、スマホを眺めていた。。
指をスライドさせているその液晶画面には『デートスポットおすすめ5選』『桜薬駅周辺でデートするなら』なんて言葉が溢れかえっている。
「へぇ、さすが初デートで朝帰りした男は変わるもんだねぇ~」
「……なぁ斬琉、そのネタでいじるのもう勘弁してもらえないか?」
「秋にぃの面白い顔が見れるから辞めてやらないよ~だ。一体何やってたのか気になるな~」
ニマニマとからかってくる妹の顔を見て俺は小さくため息をついた。
斬琉が考えているようなやましいことをした事実はないのだが、馬鹿正直に『ファナエルの髪の毛を食べてました』なんて言えるわけがない。
黙秘権を行使することしか出来なかった俺にこの誤解を解く言葉を恵んでくれる人間がいるというなら今すぐにでも会いに行きたい。
「ま、これ以上秋にぃをいじるとあのゲロクッキー女に何されるか分かんなくて怖いから頻度は少し落としてあげるとしよう」
もしかしたら姉になるかもだから仲良くしないとね、なんて口走りながら斬琉は俺の隣にドスンと座る。
「にしても、最近の転校生ってのは皆キャラが強いよね~」
「アニメ?それともソシャゲの話か?」
「違う違う、現実の話だよ!!ほら、秋にぃの高校にはファナエルさんがいるでしょ」
「いるでしょって……ファナエルはああ見えて結構普通の女の子な所あるぞ、料理が好きで数学の鬼教師が怖くてー」
「あ~はいはい、そう言うのろけ話いいから。恋は盲目だね」
なんの感情もこもっていない恐ろしいほどの棒読みで返事をした斬琉はスマホを取り出して一つの写真を俺に見せる。
そこには改造された制服を着こなし、両手に銀色の指輪を付け、赤いバツ印が書かれた黒い眼帯を左目に付けた一人の女の子が映っていた。
「確かに……これはかなりキャラ強い子だな」
「ね~。あ、秋にぃその遊園地デートスポットとしてオススメだよ」
あらかた言いたいことを共有して満足したのか、斬琉は俺のスマホ画面をのぞき込んで話題を大きく変更させた。
画面に映っていた桜薬遊園地は地元にある結構綺麗な遊園地で、基本ここらに住んでいる人しか遊びに来ない。
アトラクションを待たずに乗れるなんて言われながらも地元民の憩いの場となっている。
「なんと敷地内のレストランにはカップル限定メニューがあるんだよ」
「詳しいんだな」
「もっと僕を頼ってもいいんだよ秋にぃ?」
なぜか誇らしげな顔をしている斬琉は目の前の机に置いてあったお菓子を手に取って口の中に放り込む。
そんなに口に入れたらむせるぞ、と忠告をしようとしたその時、グサリと頭に痛みが走った。
『今度始っちとデートするところでもあるしね』
「え?」
思わず声が出る。
斬琉が考えていることが直接脳に響いてくるような、そんな妙な感覚が俺を襲ったからだ。
「どうしたの秋にぃ、急に変な声出して」
「い、いや……なんでもない」
そっと額を触ってみるが熱があるという訳ではなさそうだ。
それでもなにか、頭がジンジンと痛むような気がする。
「なぁ斬琉、お前もこの遊園地にデートで行こうと思ってたりするのか?」
「勘が鈍い秋にぃにしては珍しいじゃん。ここには始っちとのデートに使おうと思ってマークしてたんだ」
目を見開いて驚く斬琉のその顔は今の俺にとってあまり見たくはないものだった。
その顔はさっき俺の頭に響いてきたものが間違いなく斬琉の心の声であるという証拠になってしまうからだ。
「実は僕、始っちのレンタル彼女してるんだ~。あ、お金取ってるわけじゃないよ、このサイコロ振って偶数がでたらー」
彼女はポケットから緑色のサイコロを取り出して楽しそうに話しているのだが、その内容が頭の中に全然入ってこない。
ただの勘違い?
それじゃあなんで頭に響いた声と妹の証言が一致してるんだ?
たまたま内容が合ってただけなのか?
何かの幻聴だったのか?
「って、ちょっと秋にぃ大丈夫なの!?顔色すっごい悪いんだけど」
「へ?」
心配そうに見つめる彼女の顔を見て、俺は無意識の内に自分の頭を両手で支えていたことに気が付いた。
「頭痛いの?そんなにやばそうなら今日は早めに寝なよ、自分の部屋まで歩ける?」
「い、いや大丈夫。心配してくれてありがと」
俺は妹に心配をかけまいと笑顔を作り、二階にある自分の部屋まで足を運ぶ。
その間、俺の頭を今まで感じたこともないような痛みが襲っていた。
何かが頭の中を這いずるような不快感と脳がオーバーヒートしたみたいな脱力感が合わさっている、そんな妙な痛みだった。
「ま、寝りゃ治るよな」
まるで自分に言い聞かせるようにそう言った俺はベッドにもぐりこむ。
いつもは寝るまで少し時間がかかるのに、今日は一瞬で自分の意識が暗闇に落ちていった。
俺は自宅のリビングにあるソファーに座り、スマホを眺めていた。。
指をスライドさせているその液晶画面には『デートスポットおすすめ5選』『桜薬駅周辺でデートするなら』なんて言葉が溢れかえっている。
「へぇ、さすが初デートで朝帰りした男は変わるもんだねぇ~」
「……なぁ斬琉、そのネタでいじるのもう勘弁してもらえないか?」
「秋にぃの面白い顔が見れるから辞めてやらないよ~だ。一体何やってたのか気になるな~」
ニマニマとからかってくる妹の顔を見て俺は小さくため息をついた。
斬琉が考えているようなやましいことをした事実はないのだが、馬鹿正直に『ファナエルの髪の毛を食べてました』なんて言えるわけがない。
黙秘権を行使することしか出来なかった俺にこの誤解を解く言葉を恵んでくれる人間がいるというなら今すぐにでも会いに行きたい。
「ま、これ以上秋にぃをいじるとあのゲロクッキー女に何されるか分かんなくて怖いから頻度は少し落としてあげるとしよう」
もしかしたら姉になるかもだから仲良くしないとね、なんて口走りながら斬琉は俺の隣にドスンと座る。
「にしても、最近の転校生ってのは皆キャラが強いよね~」
「アニメ?それともソシャゲの話か?」
「違う違う、現実の話だよ!!ほら、秋にぃの高校にはファナエルさんがいるでしょ」
「いるでしょって……ファナエルはああ見えて結構普通の女の子な所あるぞ、料理が好きで数学の鬼教師が怖くてー」
「あ~はいはい、そう言うのろけ話いいから。恋は盲目だね」
なんの感情もこもっていない恐ろしいほどの棒読みで返事をした斬琉はスマホを取り出して一つの写真を俺に見せる。
そこには改造された制服を着こなし、両手に銀色の指輪を付け、赤いバツ印が書かれた黒い眼帯を左目に付けた一人の女の子が映っていた。
「確かに……これはかなりキャラ強い子だな」
「ね~。あ、秋にぃその遊園地デートスポットとしてオススメだよ」
あらかた言いたいことを共有して満足したのか、斬琉は俺のスマホ画面をのぞき込んで話題を大きく変更させた。
画面に映っていた桜薬遊園地は地元にある結構綺麗な遊園地で、基本ここらに住んでいる人しか遊びに来ない。
アトラクションを待たずに乗れるなんて言われながらも地元民の憩いの場となっている。
「なんと敷地内のレストランにはカップル限定メニューがあるんだよ」
「詳しいんだな」
「もっと僕を頼ってもいいんだよ秋にぃ?」
なぜか誇らしげな顔をしている斬琉は目の前の机に置いてあったお菓子を手に取って口の中に放り込む。
そんなに口に入れたらむせるぞ、と忠告をしようとしたその時、グサリと頭に痛みが走った。
『今度始っちとデートするところでもあるしね』
「え?」
思わず声が出る。
斬琉が考えていることが直接脳に響いてくるような、そんな妙な感覚が俺を襲ったからだ。
「どうしたの秋にぃ、急に変な声出して」
「い、いや……なんでもない」
そっと額を触ってみるが熱があるという訳ではなさそうだ。
それでもなにか、頭がジンジンと痛むような気がする。
「なぁ斬琉、お前もこの遊園地にデートで行こうと思ってたりするのか?」
「勘が鈍い秋にぃにしては珍しいじゃん。ここには始っちとのデートに使おうと思ってマークしてたんだ」
目を見開いて驚く斬琉のその顔は今の俺にとってあまり見たくはないものだった。
その顔はさっき俺の頭に響いてきたものが間違いなく斬琉の心の声であるという証拠になってしまうからだ。
「実は僕、始っちのレンタル彼女してるんだ~。あ、お金取ってるわけじゃないよ、このサイコロ振って偶数がでたらー」
彼女はポケットから緑色のサイコロを取り出して楽しそうに話しているのだが、その内容が頭の中に全然入ってこない。
ただの勘違い?
それじゃあなんで頭に響いた声と妹の証言が一致してるんだ?
たまたま内容が合ってただけなのか?
何かの幻聴だったのか?
「って、ちょっと秋にぃ大丈夫なの!?顔色すっごい悪いんだけど」
「へ?」
心配そうに見つめる彼女の顔を見て、俺は無意識の内に自分の頭を両手で支えていたことに気が付いた。
「頭痛いの?そんなにやばそうなら今日は早めに寝なよ、自分の部屋まで歩ける?」
「い、いや大丈夫。心配してくれてありがと」
俺は妹に心配をかけまいと笑顔を作り、二階にある自分の部屋まで足を運ぶ。
その間、俺の頭を今まで感じたこともないような痛みが襲っていた。
何かが頭の中を這いずるような不快感と脳がオーバーヒートしたみたいな脱力感が合わさっている、そんな妙な痛みだった。
「ま、寝りゃ治るよな」
まるで自分に言い聞かせるようにそう言った俺はベッドにもぐりこむ。
いつもは寝るまで少し時間がかかるのに、今日は一瞬で自分の意識が暗闇に落ちていった。
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