8 / 12
第2章 傷と愛に走る
第7話 不幸な少女パール
しおりを挟む
パールという少女は、不幸だった。
彼女の母親は、ある日突然いなくなった。
後に残ったのは、酒とギャンブルにあけくれ、娘に暴力を振るう父親。
そんな父親もいなくなった。
そして残ったのは、莫大な借金だけであった。
複数のカジノや飲食店に対し作られた借金は、膨れ上がる利子と共に少女の肩へのしかかった。
といっても、学校にすら行っていない13歳の少女に、金を生む手立てなどあるはずがない。
パールは家の前にあるゴミ捨て場を漁りながら、限界の状態で日々を過ごしていた。
そんなある夜。
借金の取り立て代行人を名乗る男が現れた。
「仕事を紹介してやる。若い女ならいくらでも稼ぎ道があるからな。……ん? お前その顔」
パールの顔の右側、こめかみから頬のあたりにかけて大きな火傷痕があった。
「火傷か。誰にやられた?」
「お父さん」
「……そうか」
男は闇ギルドのスカウターだった。
闇ギルドとは、主にカジノや売春、薬物売買などを裏で取り仕切る組織だ。
そしてスカウターの仕事は、債務者を働かせて借金を返させること。
それは正しく言えば、借りた額の何倍もの金を半永久的にむしり取ることである。
元々借金の量が莫大な事に加え、まだ幼く判断力の無いパールなど、彼らにとっては格好のエサであった。
「ほら、お前は今日からここで働くんだ」
13歳のパールが連れていかれたのは、東区6番街にある売春宿”マーメイド・ドリーム”。
そこは庶民向けの売春宿の中でも比較的安い方で、所謂“大衆向け”の売春施設だった。
「俺はここを仕切ってるドリドだ。これからは俺の言うことを聞けよ、分かったな?」
店主のドリドは、闇ギルドと太いパイプを持つ強面の男である。
彼女はその店主に命じられるがまま、娼婦としての仕事のみならず、事務仕事や雑用までもをやらされながら住み込みで働いていたのだった。
そして、売春宿での生活が始まって四年が経過した。
17歳になった今でも、そこが彼女の職場だった。
ドリドはその日も、パールの売上が良くない事に腹を立てていた。
「パールよお、もっと本指名されなきゃ稼げねえぞ?」
ドリドは葉巻を吹かしながら言った。
「まーただんまりか。てめえはツラにキズありなんだから、もっと愛想良くしなきゃリピーターがつかねえだろうが」
「はい……ごめんなさい」
パールは何も感じなかった。
怒られるのには慣れていたし、いくら頑張っても借金が減らないことくらい、算術のできない彼女でも察していた。
「今月は利子の分さえギリギリなんだから。もっと頑張ってくれよ」
顔の火傷痕のせいで結婚なんてとっくに諦めていたし、まともな教育も受けていない自分が働けるのはここしかない。
自分はずっと減らない借金を抱えたまま、マーメイド・ドリームに骨を埋めるのだろう。
漠然とそんなことを考えながら、ドリドの説教を聞く日々。
そんな時だった。
「──よーう、邪魔するぜ」
黒髪に黒眼という奇妙な風貌の男が、へらへら笑いながら現れたのは。
彼女の母親は、ある日突然いなくなった。
後に残ったのは、酒とギャンブルにあけくれ、娘に暴力を振るう父親。
そんな父親もいなくなった。
そして残ったのは、莫大な借金だけであった。
複数のカジノや飲食店に対し作られた借金は、膨れ上がる利子と共に少女の肩へのしかかった。
といっても、学校にすら行っていない13歳の少女に、金を生む手立てなどあるはずがない。
パールは家の前にあるゴミ捨て場を漁りながら、限界の状態で日々を過ごしていた。
そんなある夜。
借金の取り立て代行人を名乗る男が現れた。
「仕事を紹介してやる。若い女ならいくらでも稼ぎ道があるからな。……ん? お前その顔」
パールの顔の右側、こめかみから頬のあたりにかけて大きな火傷痕があった。
「火傷か。誰にやられた?」
「お父さん」
「……そうか」
男は闇ギルドのスカウターだった。
闇ギルドとは、主にカジノや売春、薬物売買などを裏で取り仕切る組織だ。
そしてスカウターの仕事は、債務者を働かせて借金を返させること。
それは正しく言えば、借りた額の何倍もの金を半永久的にむしり取ることである。
元々借金の量が莫大な事に加え、まだ幼く判断力の無いパールなど、彼らにとっては格好のエサであった。
「ほら、お前は今日からここで働くんだ」
13歳のパールが連れていかれたのは、東区6番街にある売春宿”マーメイド・ドリーム”。
そこは庶民向けの売春宿の中でも比較的安い方で、所謂“大衆向け”の売春施設だった。
「俺はここを仕切ってるドリドだ。これからは俺の言うことを聞けよ、分かったな?」
店主のドリドは、闇ギルドと太いパイプを持つ強面の男である。
彼女はその店主に命じられるがまま、娼婦としての仕事のみならず、事務仕事や雑用までもをやらされながら住み込みで働いていたのだった。
そして、売春宿での生活が始まって四年が経過した。
17歳になった今でも、そこが彼女の職場だった。
ドリドはその日も、パールの売上が良くない事に腹を立てていた。
「パールよお、もっと本指名されなきゃ稼げねえぞ?」
ドリドは葉巻を吹かしながら言った。
「まーただんまりか。てめえはツラにキズありなんだから、もっと愛想良くしなきゃリピーターがつかねえだろうが」
「はい……ごめんなさい」
パールは何も感じなかった。
怒られるのには慣れていたし、いくら頑張っても借金が減らないことくらい、算術のできない彼女でも察していた。
「今月は利子の分さえギリギリなんだから。もっと頑張ってくれよ」
顔の火傷痕のせいで結婚なんてとっくに諦めていたし、まともな教育も受けていない自分が働けるのはここしかない。
自分はずっと減らない借金を抱えたまま、マーメイド・ドリームに骨を埋めるのだろう。
漠然とそんなことを考えながら、ドリドの説教を聞く日々。
そんな時だった。
「──よーう、邪魔するぜ」
黒髪に黒眼という奇妙な風貌の男が、へらへら笑いながら現れたのは。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる