出会い系アプリの無い異世界は退屈すぎるので、俺が作ります!

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第1章 恋は即断即決

第3話 クエスト掲示板

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「じゃあとりあえず掲示板を見てみなよ」

 トムスはリヒトに促されるまま、掲示板の前へと移動した。
 他にも何人かの男がそれを見ていたが、彼らはきっと会員なのだろう。

 トムスは言われた通り、掲示板に並んだクエストタイトルを眺めてみた。

「あのーリヒトさん」
「何だ?」
「見たところ、この掲示板にあるのは全部女性会員からのクエストっぽいが……僕がクエストを出して、女性から手紙が来るのを待つ、ってこともできるのか?」
「ああ。男性が依頼したクエストはここではなく、14番街にある女性専用酒場”ヴィーナスの涙”に掲示される」
「提携してるのか?」
「まっ、ビジネス風に言えばそういうことだ。さすが薬草屋だな」

 なるほど、思ったよりも広域に展開している商売だ。
 トムスはまたも感心した。

「じゃ、気に入ったのがあれば教えてくれ」

 リヒトはそう言ってカウンターの向こうに戻った。
 トムスは高鳴る胸を抑えながら、クエストに目を走らせる。

**********
人魚姫 23歳
居住:東区8番街
趣味:歌
『楽器できる人いないかな』
**********

**********
すらりん 18歳
居住:東区14番街
趣味:スケッチ
『バーでもどうですか?』
**********

 本当に色々なクエストがある。
 上から順に眺めていたトムスの目は、その中のひとつに止まった。

***********
のんのん 20歳
居住:東区11番街
趣味:ファッション
『ごはん行きませんか?』
***********

 いきなり酒の場や遠出するのには勇気がいるが、食事に行く程度ならトムスでも頑張れそうだ。
 ひとつ年上というのも、トムス的にはポイントが高い。

「リヒトさん」
「おう、決まったか?」
「67番クエストの詳細を見たい」
「オーケー、さっき言った通り5コイン使うが良いな? よし、じゃあ入れ」

 そう言ってリヒトは、カウンターの横にある小さい扉を指さした。
 どう見ても従業員用の出入り口だが、本当に入って良いのだろうか。

「クエストの詳細情報を外へ持ち出したり、他のヤツと見せ合う輩がいるんでな。それを防ぐために、詳細の閲覧と手紙を書くのはこの中でやってもらってる」
「そんなことまで……本当にしっかりしてるな」
「情報は命だからなぁ。守るためなら何だってするさ」

 横の扉から入ると細い廊下があり、奥の小スペースがさらに小さなブースに区切られていた。
 トムスはブースのひとつに入り、簡素なテーブルについた。

「さてと、これが67番のクエスト詳細だ。読んでみてどうするか決めたら、このベルを鳴らしてくれ。ちなみにここじゃ手紙の事を“メッセージ”と呼んでる」

 それだけ言うとリヒトはいなくなった。
 きっとカウンターに戻ったのだろう。
 トムスはワクワクしながら、渡された封筒から一枚の板を取り出した。
 それは長方形に切り取られたコルクボードで、片面に紙が貼り付けられている。

**********
のんのん 20歳
居住:東区11番街
趣味:ファッション

『ごはん行きませんか?』

本日の夜20刻頃、夕飯をご一緒してくれる方を探してます。
場所は10~14番街でお願いします。
仕事の話や趣味の話など、楽しく過ごしましょう。
私も働いてますので、お金は割勘で構いません。
歳が近くて、誠実な方。
良かったらメッセージください!
**********

 真面目そうな文面を見て、トムスはほっとした。
 一応誠実だという自覚はあるし、歳も近い。
 割勘で良いと書いてくれているのも安心できる。
 トムスはすぐにベルを押した。

──チリーン

「決めた。この人にするよ」

 こうして、トムスの記念すべき初メッセージの相手が決定した。
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