出会い系アプリの無い異世界は退屈すぎるので、俺が作ります!

ラケット

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第1章 恋は即断即決

第2話 ようこそラヴクエへ

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「ラヴコイン……?」

 聞き慣れないコインの名前に、トムスは眉をひそめた。
 リヒトがニヤニヤと笑いながら説明する。

「ラヴクエスト内で使える仮想通貨さ。1枚あたり銅貨1枚ってことにしてる。今ならなんと、入会しただけで50コインをプレゼント! 他にも誕生日やら聖夜祭なんかにはタダで配布していくぜ」
「なるほどな。もしかして手紙を書くのにもそのコインが必要なのか?」
「ペンと専用の紙一枚は無料。紙の追加は1コイン、配達には3コインだ」

 トムスは薬草屋で鍛えた算術スキルを駆使して暗算した。

 例えば、クエスト詳細を3人分閲覧したとする。
 そのうちの一人と手紙のやりとりを5回、別の二人と3回したとして合計48コイン。
 入会時にプレゼントされる50コインだけで足りる額だ。

「それにしても配達が3コイン、ってことは銅貨3枚分か……普通の配達より格段に安いな」
「安いが質は確かだぜ。その辺の配達屋より迅速で正確さ。もちろん中身を見るなんてマネはしねえ。マナー違反などの通告があった場合は例外だがな」

 それが本当ならかなり良心的だ、とトムスは思った。

「僕、入会するよ」
「おっそうか! じゃあこの利用規約を読んでくれ」

 そう言って差し出されたのは、細かい字がぎっしり書いてある紙。
 普段から字を見慣れているトムスでも嫌気がさすほど、それは難しい文章に見えた。

「よ、読まなきゃダメか?」
「あとでトラブルがあった時のためだ。全員に読んでもらってる」
「うーん……」

 真面目な性格のトムスは、一応すべての文に目を通した。
 しかしその内の何割が頭に残っているかは怪しかった。

「……読めました」
「よし。じゃああとはこれを書けば完了だ」

 トムスは登録用紙に名前、性別、生年月日、住所、職業を書いた。
 ニックネームはとりあえず”トースト”としておいた。

「登録ありがとう! じゃあまず、これが君の会員証だ。ラヴコインを使いたいときには、必ずカウンターでこれを提示してくれ」

 そう言って渡されたのは、手のひらサイズの薄い木の板。
“会員番号01010053 トムス・ハリアード”と書いてある。

「失くすと再発行に1ポイントかかるぜ。本人確認とかもめんどいから、紛失だけは充分に注意してくれよ」
「あの、もらえるって言ってた50コインは?」
「安心しろ。君の会員情報として、残コイン数は常に保存される仕組みだ」
「本物のコインが渡されるわけじゃないんだな」
「ああ、失くしたら面倒だろ? それに何より、会員同士での譲渡をさせたくないからな」

 本当によく考えられたシステムだ。
 19歳のトムスと歳もそう変わらないように見えるが、リヒトからは突出した商才とカリスマ性を感じる。

(一体何者なんだ、この男は……?)

「コホン。では改めまして、ご登録ありがとうございます。ようこそ、”ラヴ・クエスト”へ」
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