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第1章 恋は即断即決
第1話 真面目な僕も出会いたい
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嗚呼何故、こんなにも誠実で勤勉な自分に彼女が出来ないのだろう……そう思った事はないだろうか?
答えは分かりきっている。
“出会いが無いから“である。
「はぁー……」
青年トムスはため息をついた。
自分ももう19歳。
結婚とまでは行かなくとも、彼女の一人ぐらいいたことがあって良い歳だと思う。
(せっかくの休みだし、久しぶりに飲みに行くか……)
「いらっしゃいませー。”ビッグハット亭”へようこそ」
酒場に行けば何か出会いがあるかも、なんて期待してはいけない。
“ビッグハット亭”のような大衆酒場で昼間から飲んでいるような女性は、確実にトムスのタイプではない。
彼好みのおしとやかな淑女ともなれば、大方14番街にある女性専用酒場”ヴィーナスの涙”で上品に飲んでいることだろう。
「いらっしゃい……おぉトムスじゃないか、久しぶりだね」
話しかけてきたのは、店長のアーウィン。
「どうしたんだ? 浮かない顔して」
「実は──」
トムスは憂鬱の内訳を語り始めた。
彼は幼い頃から、実家の薬草屋を精力的に手伝ってきた働き者だ。
しかし薬草屋で働くのはほとんど男性であり、女性がいたとしても経理のおばさんくらい。
さらにいくら給料と休暇をもらったって、彼はこの酒場くらいしか遊び方を知らない。
そんな生活をしているから、出会いが無いのである。
「なるほどねえ……そりゃ出会えないわけだ」
アーウィンはウンウンと頷いた。
「ところでトムス、アレは見たかい?」
アーウィンの指さす方を見ると、壁に何やら賑やかな掲示板がかかっている。
トムスが前来た時、あんな派手なものは無かったはずだ。
「何ですかあれ?」
トムスが椅子から腰を浮かせ目を凝らした時。
「おっと、男女の出会いに興味がおありかな?」
そう言ってひょいと現れたのは、黒髪の怪しい男であった。
突然の登場にトムスはのけ反った。
「驚かせちまったか? 俺は、みんなの出会いのギルド“ラヴ・クエスト”代表のリヒトだ。よろしくな」
「えっ……え?」
「せっかくだ、説明だけで良いから聞いてってくれ。エールの一杯でも奢るからよ」
“出会い”という単語に惹かれたトムスは、促されるままにリヒトの説明を受ける事となった。
「さてと……改めまして、俺はラヴクエ代表のリヒトだ」
「僕はトムス。よ、よろしく」
「早速だが、あの掲示板に貼られたクエスト一覧を見てみてくれ」
【出会いの掲示板 ラヴ・クエスト】
一番上にそう書かれた掲示板には、何枚もの長方形の紙が貼り付けられている。
トムスはそのひとつに目を通してみた。
**********
きのこちゃん 22歳
居住:東区14番街
趣味:料理
『一緒に飲める人募集!』
**********
「もちろん“きのこちゃん”ってのは本名じゃなくてニックネームさ。会員の皆さんは、あの掲示……ウチじゃあ”クエスト”って呼んでるんだが。あの中から気に入った人に手紙を出せるってシステムだ。分かりやすいだろ?」
「なるほど」
こんなサービスは聞いたことが無い。
ものすごく画期的だ、とトムスは思った。
本当はすぐにでも入会したいところなのだが、彼はそれを悟られないように平静を装って尋ねた。
「しかし、『一緒に飲める人募集!』だけではどんな人なのか分からないんじゃ?」
「あー、そりゃタイトルだからな」
たしかに冒険者ギルドのクエストでも、『スライム討伐』のようなタイトルがあって、詳細欄に『ノース川付近に出没するスライム10匹の討伐をお願いします。砂をかけてくるので注意』のような詳細が書いてあるものだ。
しかしラヴクエのクエストにはその詳細欄が見当たらない。
そんな心中を見透かしたかのように、リヒトはニヤリと笑って口を開いた。
「ちなみにクエストの詳細は、ラヴコインを5枚使えば見られるぜ」
「ラ、ラヴコイン……?」
答えは分かりきっている。
“出会いが無いから“である。
「はぁー……」
青年トムスはため息をついた。
自分ももう19歳。
結婚とまでは行かなくとも、彼女の一人ぐらいいたことがあって良い歳だと思う。
(せっかくの休みだし、久しぶりに飲みに行くか……)
「いらっしゃいませー。”ビッグハット亭”へようこそ」
酒場に行けば何か出会いがあるかも、なんて期待してはいけない。
“ビッグハット亭”のような大衆酒場で昼間から飲んでいるような女性は、確実にトムスのタイプではない。
彼好みのおしとやかな淑女ともなれば、大方14番街にある女性専用酒場”ヴィーナスの涙”で上品に飲んでいることだろう。
「いらっしゃい……おぉトムスじゃないか、久しぶりだね」
話しかけてきたのは、店長のアーウィン。
「どうしたんだ? 浮かない顔して」
「実は──」
トムスは憂鬱の内訳を語り始めた。
彼は幼い頃から、実家の薬草屋を精力的に手伝ってきた働き者だ。
しかし薬草屋で働くのはほとんど男性であり、女性がいたとしても経理のおばさんくらい。
さらにいくら給料と休暇をもらったって、彼はこの酒場くらいしか遊び方を知らない。
そんな生活をしているから、出会いが無いのである。
「なるほどねえ……そりゃ出会えないわけだ」
アーウィンはウンウンと頷いた。
「ところでトムス、アレは見たかい?」
アーウィンの指さす方を見ると、壁に何やら賑やかな掲示板がかかっている。
トムスが前来た時、あんな派手なものは無かったはずだ。
「何ですかあれ?」
トムスが椅子から腰を浮かせ目を凝らした時。
「おっと、男女の出会いに興味がおありかな?」
そう言ってひょいと現れたのは、黒髪の怪しい男であった。
突然の登場にトムスはのけ反った。
「驚かせちまったか? 俺は、みんなの出会いのギルド“ラヴ・クエスト”代表のリヒトだ。よろしくな」
「えっ……え?」
「せっかくだ、説明だけで良いから聞いてってくれ。エールの一杯でも奢るからよ」
“出会い”という単語に惹かれたトムスは、促されるままにリヒトの説明を受ける事となった。
「さてと……改めまして、俺はラヴクエ代表のリヒトだ」
「僕はトムス。よ、よろしく」
「早速だが、あの掲示板に貼られたクエスト一覧を見てみてくれ」
【出会いの掲示板 ラヴ・クエスト】
一番上にそう書かれた掲示板には、何枚もの長方形の紙が貼り付けられている。
トムスはそのひとつに目を通してみた。
**********
きのこちゃん 22歳
居住:東区14番街
趣味:料理
『一緒に飲める人募集!』
**********
「もちろん“きのこちゃん”ってのは本名じゃなくてニックネームさ。会員の皆さんは、あの掲示……ウチじゃあ”クエスト”って呼んでるんだが。あの中から気に入った人に手紙を出せるってシステムだ。分かりやすいだろ?」
「なるほど」
こんなサービスは聞いたことが無い。
ものすごく画期的だ、とトムスは思った。
本当はすぐにでも入会したいところなのだが、彼はそれを悟られないように平静を装って尋ねた。
「しかし、『一緒に飲める人募集!』だけではどんな人なのか分からないんじゃ?」
「あー、そりゃタイトルだからな」
たしかに冒険者ギルドのクエストでも、『スライム討伐』のようなタイトルがあって、詳細欄に『ノース川付近に出没するスライム10匹の討伐をお願いします。砂をかけてくるので注意』のような詳細が書いてあるものだ。
しかしラヴクエのクエストにはその詳細欄が見当たらない。
そんな心中を見透かしたかのように、リヒトはニヤリと笑って口を開いた。
「ちなみにクエストの詳細は、ラヴコインを5枚使えば見られるぜ」
「ラ、ラヴコイン……?」
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