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番外編 実家への挨拶回りと結婚式
13.日常
しおりを挟むおっぱいを吸いながら眠ってしまったリーリエの口からおっぱいを外す。むずがって抱き付いてくるので頭を撫でたら、また静かになった。
ルディを抱っこしてるとき、なんとなく見られてる気はしてたけどまさかの事態だわ。赤ん坊に取られると思うなんて、トラウマは色んな部分で噴出するな。
家族とは縁を切ってるから結婚の挨拶はいらないと聞いたときは、そうだよねと納得したけど、あらためてクソ親だな。
他の夫がいる状態で愛されたから夫たちは気にならないけど、新しくやってきた愛情を受ける相手は気になるのか。これ、これから子供が生まれるたびに起きるのか? 大変じゃない?
リーリエと子供作るの危険だな。自分の子供ならますます複雑になりそう。欲しくないって言っててよかった。
どうしようかな、これから。あれか? 先住猫扱いみたいに、必ずリーリエから撫でるとかそういうこと必要? 今は大して動かないからいいけど、動き回るようになってずっと気を遣うとかムリでしょ。次の子が生まれたら、リーリエ、ルディ、次の子で可愛がらなきゃいけないとか、ムリでしょ。
あームリムリ。子供はリーリエに全面的に任せよう。私が手を出さなきゃ気にしないだろうから。リーリエは世話焼きだからそれでいいはず。世話焼きなのも構ってほしい気持ちのあらわれなのかも。
それでルディがリーリエを好きになったらいいな。子供の無邪気な愛情は、リーリエにとっていいものだと思うし。
……依存したら子離れできなそう。
先のことはわからん。一先ず子供はリーリエに丸投げすることに決定して眠った。
リーリエに世話を押し付けるのを誤解されないように、後日この考えをラルフに話した。
「まあいいんじゃねぇの。子供に対抗意識燃やすより、世話してるほうがいいだろ」
「ラルフがいるときはラルフに頼むね」
「ああ、もちろん。可愛いなぁ、オレの息子」
ルディを抱っこしておでこを撫でてる。小さいオオカミ族は本当にむちゃくちゃ可愛いので全力で同意する。
「もう少ししたら獣化おぼえて、チョロチョロ走り回るぞ。それがまた大変なんだよ、踏みつけそうで」
「小さいころから獣化するんだね」
「自然とな。なんとなく覚えてるけど、小さいときは獣化したほうが動きやすいんだよ。でも獣化したまんまだと噛みついたりなんだりし始めるから、こまめに解いてやんねぇとダメなんだ」
「どうやって解くの?」
「両腕持って足がつかない高さに持ち上げる。獣化したままだと辛い体勢だから、イヤイヤ解くんだ。オレもよくやられたな。床に降ろされたらすぐ獣化して逃げんだけど、すぐ捕まって怒られんの」
「ふふ。ルディもそうなるかな」
「ルディもやるさ。みんなやる。従弟が、兄貴の嫁さんの弟だけど、アイツもよくやって、オレに捕まえられてた」
楽しそうに話すラルフが愛しい。ラルフの腕の中で欠伸をしてるルディも。
「そろそろ下に降りるか。リーリエが気にしてるだろうし」
「そうだね」
ダイニングにはみんながいて、テーブルに食事の支度をしているところだった。
「今日は何のパン?」
「サヤカの好きなクルミパンだよ」
「嬉しい」
「へへ」
ヨアヒムと笑みを交わす。
「サヤカも飲むか?」
「うん、少し飲もうかな」
サミーがコップに注いでくれた。
「サヤカは酒弱ぇからなぁ。果物入れて温めるか?」
「ホットワインみたいで美味しそう」
「うん? サヤカの国の酒か? ゲルト、ちょっと温めてくれ」
木のカップに果汁の多い果物を切ってくれたサミーが、ゲルトにコップを渡した。ゲルトは魔法でほんの小さな火種を入れて温めてから、スプーンでかき混ぜ手渡してくれる。
「熱くありませんか?」
「大丈夫。そろそろ寒くなってきたから温かいの嬉しい」
「サヤカは寒がりでしたね。そろそろ火鉢も用意します」
「お願い」
ゲルトが頷いて座り、リーリエがスカーフを肩にかけてくれた。
「サヤカの冬用の布団と毛織物もお願いします。ルディもいりますか?」
「ガキのあいだは必要だな。冬毛になっても薄いから」
ラルフがルディを片手に抱いてお酒を飲みながら、リーリエに返事をする。
「ここは神殿より寒いだろう? 全員のぶん用意したほうがいい」
「そうですね」
「私たちの子供は春に産まれたら過ごしやすいんじゃないか?」
ヴェルナーが体を傾け、耳のそばで楽しい計画のように話すのは可愛らしい。
「そうかもね。10か月くらいでしょ。いつ妊娠したらいいんだろう」
「夏か。……待ち遠しい」
「ラルフを見て羨ましくなったの?」
「ああ。可愛いのにあまり抱かせてくれない」
「お前が抱いたらなかなか離さねぇじゃねぇか。なんに対してもしつこいんだよ」
「可愛いのだから仕方がないだろう」
ラルフとヴェルナーが言い合いしてるのを見てたらサミーと目が合った。呆れたように眉を上げて見せるから笑ってしまう。
笑う私にリーリエが首を傾げた。
「どうしました? もう酔いました?」
「酔ってないよ」
「少しだけなら酔ってもいいですよ」
「なんで?」
「甘えて可愛いからです。サミーへ甘えたように私にも甘えてください」
「え」
なんか恥ずかしい。
「あーあれな。にやついたサミーにさんざん自慢されてよ」
「可愛かったって言っただけだろ」
「何したんだ?」
「……内緒」
「言えないことを?」
ヴェルナーが真面目な顔で迫る。美形は迫力あるなぁ。
「恥ずかしいから言わないってこと」
「そんな恥ずかしいことを?」
「変な想像しないでよ。違うから。ほら、食べて。リーリエが作ってくれたんだから」
ヴェルナーが不服そうに引き下がったので、食事を続ける。視線を感じて顔を上げると目が合ったヨアヒムがニッコリ笑った。
これは、何したか聞き出して再現させようとしているか、お願いをされるかの顔だ。ヨアヒムは断りにくい聞き方してくるからな~。もしかしてヴェルナーより危険かもしれない。
「このサラダ美味しいね」
「はい、木の実を混ぜてみました」
「クルミパンも美味しい」
「へへ、良かった」
「これも旨ぇけど、あのパンもいいよな。干し果物が入ってる」
「種と干し果物の?」
「そうそう」
食卓は賑やかで楽しい。私がこんな食事を味わえるなんてと、未だにときどき不思議になる。ぼんやり眺めてたらリーリエに顔を覗き込まれた。
「どうしました?」
「あー、なんか楽しいなぁと思って」
「私もです」
リーリエと顔を見合わせて笑い、みんなを見渡す。すごく幸せで笑ってしまう。色々あるけど頑張ろうって素直に思えた。
「結婚して良かった。ありがとう」
そのあと、みんなからのお返しのキスで溺れそうになり、夜は大変なことになったとだけ。
おしまい
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