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番外編 実家への挨拶回りと結婚式

8.結婚式 前編 ※

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 帰りも7日かけて家に戻ってきた。
 お風呂にゆっくり入って疲れを取り、久しぶりにみんなで食事をした。全員がそろうとなんだか安心する。
 ひとしきり土産話をした後でお酒を飲みながら、話すかどうか迷っていたことを口にした。

「精霊王の素が子供作ってくれるって精霊王に言われたんだけど、子供欲しい人いる? ホントにできるかどうか分かんないけど」
「……サヤカと私の子供か?」
「私は生き物じゃないから、種から作るみたい」
「精霊王が言ったんならできんだろ。サヤカは自分の子供じゃねぇのにいいのか?」

 サミーが思案顔で聞いてくる。

「うん。みんなの子供ならいいよ」
「……ははっ、嬉しいこと言ってくれんなぁ」
「オレは産んでもらう。好きな女にオレの子供産んでもらうってサイコーだよな」
「私も。私も産んで欲しい」
「俺もいいか? 賑やかなの好きなんだよ。男ばっかりでむさくるしいだろうけど」

 ラルフとヴェルナーとサミーは乗り気らしい。他の三人は戸惑ってるというか、困った顔してる。

「あの、私と同じ体質だと大変なので……。私にはサヤカがいますけど、子供にはいませんし」

 リーリエが目を伏せて小さな声で話した。
 静かになった部屋の中、立ち上がってリーリエを胸に抱きしめた。

「まあ、そういうこともあるよ。気にしないで。私も自分と同じ子供が生まれるって言われたら困るもん」
「……俺も、同じです。体質的にちょっと」
「俺の赤ちゃんはサヤカだけでいいよ」
「ヨアヒム……」

 それは別の意味じゃなかろうか。

「まあ、考えが変わることもあるだろうし、今はそれでいんじゃねぇの。それまでオレの子供いっぱい産んでよ」
「本当にできるかは精霊王の素しだいだから期待しないで待ってて」
「私の子供は3人くらいでいい」
「お前、遠慮しろよ。人族の妊娠期間なげぇだろ」
「違うの?」
「オオカミ族は半年ぐらいだから、いっぱい産めるな」
「私だって10か月くらいだ」
「土妖精はなぁ、一年くらいあんだよ。悪ぃな」
「結構ちがうね」

 腰に抱き付いたままのリーリエを撫でながら話していたら、後ろからヨアヒムがくっついてきた。

「もう寝ようよ、サヤカ。俺の赤ちゃんになって」
「久しぶりなのだから私の番だ。遠慮しろ」
「疲れてるからほどほどにしてくれる?」
「……善処する」

 そんなこんなでなかなか大変な夜を過ごした。

 挨拶回りが一段落したら本格的に新しい生活が始まった。みんなは働き出し、私は家のことをしたり、アクセサリーのデザイン画を描いたりしている。サミーが休みの日は一緒に作ったりもする。リーリエは家のことをしつつ、警備隊が大変なときに救急箱として駆り出されるようになった。
 行きたくないと抵抗してたけど、ヴェルナーたちが働けなくなったあと私を養う手段を持っておいたほうがいいと説得されて、渋々うなずいたらしい。

 その間にも結婚式の衣装合わせや、招待客を決めたりしてたら私のお腹が膨らみ始めた。産婆さんに診てもらったら妊娠してる、こんなに早い成長はオオカミ族なんだけど、と戸惑いながら言われた。みんな、特にラルフは大喜び。

 結婚式はお腹が少し膨らんだ状態で挙げた。

 夫が多くてお客も多いから広いレストランを借り切って昼から始まった。
 私たちはズラッと並んで座り、ゲルトの親族も席についてる。お客は好きなときに来て、好きに飲み食いして、好きなときに帰るスタイル。入れ代わり立ち代わり挨拶されて誰が誰やらだった。でも、みんなの職場の人もお祝いにきてくれたから上手くやってるんだと安心した。

 ゲルトの家族は仕事関係者にめちゃくちゃアピールしている。
 リザにも久しぶりに会ってお喋りした。家に遊びに来てと誘ったら、今は先輩を調教するのに忙しいから落ち着いたら、という爆弾発言をかまされた。オモチャ談義に顔をしかめてたのにな~。感慨深い。
 警備隊でモテるらしい3人の相手がぱっとしない私だとわかって、なんか微妙な態度を取る人もいた。異世界にも既婚関係なく狙ってくる人がいるんだな~と思いつつ、気分は悪い。結婚式なのにさ、ぶつぶつ。

 夜になってやっと片付けになる。
 座って挨拶受けるだけだけど長時間の拘束はめちゃくちゃ疲れる。私は妊娠中ということで気を遣われ、終わって早々に馬車で家まで送られた。一人じゃ不安だろうからと、救急箱リーリエと一緒に。

 ゲルトも一緒にきて、お風呂をあっためて会場に戻って行った。もう少し挨拶してから帰ってくるらしい。

 リーリエと2人でゆっくり湯船に浸かる。

「リーリエ、お疲れ様。警備隊で仲良くやってるみたいだね」
「はい。私は臨時の回復役なので気を遣われています」
「でも仕事は真面目にするから頼られるでしょ」
「そうかもしれません。巫女ももっと私に頼ってください」
「また『巫女』って言った」
「サヤカ」

 リーリエが後ろから抱きしめて頬ずりをする。いつもより静かな感じでなんだか心配になった。

「どうしたの? 疲れた?」
「……はい。……私を、好き、ですか?」
「大好き。不安になった? 何かあったの?」
「……他にも夫がいるのは、あまり、好かれてないからと」
「思ったの? ……誰かに言われた?」
「警備隊、で。……サヤカ、巫女、みこ、本当に?」

 温かいお風呂の中にいるのに、鳥肌を立てるリーリエの腕を握った。

「好きだよ」

 言った誰かにものすごく腹が立ち、他にも夫がいる事実が罪悪感を刺激する。
 でも『好き』って定量化できる? どうだったら最上級になんの? 魂から吸引されてるヴェルナーだって、他の夫に抱かれてる私を見て興奮するろくでもない性癖持ち合わせてんのに。他の夫がいるから? いなくたって最上級に『好き』なわけでもないだろうが。

 ムカつきも私の考えも正当だと思うのに、言い訳に聞こえるのはなんでだろう。苛立ちも罪悪感もいったいどうやったら蹴散らせるかな。

「それを言った人に関わらないで済むようにヴェルナーに頼もう」
「いいのでしょうか?」
「いいよ。臨時の手伝いでしょ。できないなら二度と警備隊に行かせない」
「巫女が?」
「そう。私が許さない」
「でも、私も働かないと巫女が」
「気にしなくていいよ、私も働くし。それでも無理になったら一緒に神殿に入ろう」
「はい」

 嫌な奴とは関わらないのが一番だ。
 ホッとして後頭部にグリグリ頬ずりしてくるリーリエの頭に手を伸ばして撫でた。

 お風呂から上がり私のベッドに一緒に横になる。向かい合って手を繋いだ。

「もうすぐ精霊祭でしょ。大神殿に行く?」
「でもサヤカのお腹が大きくなるから心配です。馬車に揺られるのは危ないでしょう?」
「そんなに危ないかな?」
「移動の途中で産気づいたら……、私は何もわかりませんし。あ、そうです。私が産婆に習えばいいんですね」
「え、ヤダ。なんか恥ずかしい」
「私は大丈夫です」
「私が恥ずかしいの」

 いつもの話を聞かないリーリエの受け答えに安心して笑った。さっきの不安もこんなふうに対処できなかったのかな。

「私のこと好き?」
「好きです、とても」
「精霊王の石に貯めた魔力が持てば、最後まで一緒にいるのってリーリエだよね」
「はい」
「最初からいつもそばにいたけど、最後まで一緒にいてね。リーリエがいないと寂しいから」
「……私もです」

 泣きそうに笑って唇が触れた。少しずつ重なって啄み、舌が絡まる。深く合わせて口の中をまさぐる温かい舌が愛しい。リーリエの頭を抱き寄せて流れ込む唾液を飲み込んだ。

「ぁ、もう、これ以上は」
「して、リーリエ。リーリエが欲しい。お願い」

 妊娠がわかってから軽いキスだけだった体が燻ぶっている。ねだる私に甘く優しく微笑んで、キスをした。

「サヤカ……、優しくします」
「リーリエをちょうだい」

 乳房を揉む手つきは優しく、淡い愛撫に体が焦れる。硬くなった乳首は、少しの刺激にも敏感に反応した。

「あっ、あぁ、ん、リーリエ、ぁんっ、ああ」

 ヌルリとした舌に先端を舐められて背中が仰け反る。ゾクゾクして鳥肌が立ち、リーリエの腕を掴んで助けを求めた。
 乳首を咥えて吸い付かれると腰が揺れる。揺れて疼いてヒクつき出した。久しぶりだからかおかしいくらい、中が飢える。埋め込まれたくてたまらない。

「っあぁ、お願い、お願いリーリエ、ちょうだい」
「サヤカ……こんなに、……私を?」
「うん、リーリエ、お願い」

 足を広げて入り込んだリーリエが、耳元で甘いため息をついた。濡れた声で名前を呼ばれると奥が切なくなって体が捩れる。

「っあ、ああ、サヤカ、あぁっ、ああんっぁ、サヤカっ」
「リーリエっ、あぁぁっ、……んっぁあ、んんっ」
「ああっ、サヤカ、サヤカ、サヤカ、みこっ、あっああんんぁああっ」

 ブルブル震えるリーリエを抱きしめて、私の中で蠕動を味わう。
 荒い息を吐いて潤む金色の目と、少し濁りが混じる目が私を見ている。いつも心配させる愛しい人。

「リーリエ、もっとちょうだい」
「でも」
「リーリエが好きだからもっと欲しいの」

 はにかむ顔は子供っぽくて可愛い。
 神殿から出たけど、目くらましは解かずに生活してる。右の傷痕は私だけのもの。本当のリーリエは私だけのもの。

「他の人の前で目くらましは解かないでね」
「なぜですか?」
「本当の姿は私だけのものだから誰にも見せちゃダメ」
「……巫女」
「私だけのリーリエだから」
「はい。私は巫女のものです。巫女だけの」

 蕩けるように笑って歌うように私を呼ぶ。喜びを浮かべながら動いて、ゆっくり優しく擦り上げる。

「みこみこ、わたしのみこ、……っああ、ああっ、あ、みこ、みこ」
「んっあ、ああっ、リーリエ、っああぁ、あっあ」

 もどかしさに収縮する中をゆっくり擦られ、脈打って熱くなる。もっと欲しくて吸い付いて、もの足りなさが刺激をどんどん拾い集めて私を押し上げた。リーリエが欲しくて中が締まる。気持ち良くておかしくなりそう。

「気持ち良い、ああっ、ぁ、いい、リーリエ、すごく」
「みこっ、あぁっあ、あっ、みこみこっ、ああぁん」
「あぁっ、リーリエ、もっと、あっ、あっああ、アアアぁあっああーーーー」
「んぁあぁっああっ、…………みこっ、んんんっ」

 2人で硬直して溶け合った。嬉しくて幸せで、たまらずに揺れてもう一度昇った。

「っぁ、ぁん、みこ……、んっ」
「……ん、ふっぁ、……好き」
「私も好きです」

 抱き合った肌の暖かさが嬉しい。

「結婚してくれてありがとう。リーリエが、……私と離れても平気だって言われて寂しかった」
「……わかっていませんでした。巫女がいなくなるのがどういうことか。元に戻るだけだと思ったのに、ぜんぜん……」
「リーリエにいてほしい。いてくれなきゃダメ。離れちゃダメ」
「はい。……巫女には私が必要なんですね」
「そうだよ。すごく」
「嬉しいです」

 すごくすごく嬉しそうに笑うリーリエと抱き合う。

「ねぇ、眠るときにおっぱいいらなくなった?」
「……我慢できなくなる気がしたので」
「今日は? どうする?」
「いいですか?」
「うん。実はリーリエを抱っこして寝るの好きなの」
「巫女、……嬉しくておかしくなりそうです」

 おっぱいに頬ずりしてから上げた顔は上気して、艶やかな目の奥が揺らめいている。

「リーリエ。好き」
「私も好きです」

 笑い合って目をつむる。リーリエの静かな声に心地よい眠りが訪れた。


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